特許第6681787号(P6681787)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6681787
(24)【登録日】2020年3月26日
(45)【発行日】2020年4月15日
(54)【発明の名称】水洗式便器および異物ストッパ
(51)【国際特許分類】
   E03D 11/02 20060101AFI20200406BHJP
   A47K 17/02 20060101ALI20200406BHJP
【FI】
   E03D11/02 Z
   A47K17/02 Z
【請求項の数】6
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2016-105765(P2016-105765)
(22)【出願日】2016年5月27日
(65)【公開番号】特開2017-210825(P2017-210825A)
(43)【公開日】2017年11月30日
【審査請求日】2019年4月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000221616
【氏名又は名称】東日本旅客鉄道株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】特許業務法人光陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】原 基
(72)【発明者】
【氏名】河合 秀智
(72)【発明者】
【氏名】清水 誠
(72)【発明者】
【氏名】高村 将司
【審査官】 七字 ひろみ
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−322722(JP,A)
【文献】 実開昭50−043542(JP,U)
【文献】 特開2003−245223(JP,A)
【文献】 特開2007−077793(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0113331(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03D 11/02
A47K 17/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水を貯めるボウル部と、前記ボウル部の底部に接続された管状のトラップと、を備えた水洗式便器であって、
前記ボウル部と前記トラップとの接続部に、
該接続部の内壁に沿って略環状となるように設けられた枠と、
前記枠よりも小さい断面を有し、前記枠の一端部と他端部との間に弛んだ状態で取り付けられた線状部材と、を備えた異物ストッパが設置されていることを特徴とする水洗式便器。
【請求項2】
前記線状部材は、前記枠の上端部と下端部との間に略鉛直に延設されていることを特徴とする請求項1に記載の水洗式便器。
【請求項3】
前記ボウル部の底部には、前記トラップ内へ向かって水を噴射する噴射口が設けられており、
前記異物ストッパは、前記噴射口から噴射された水の流れの中心に、前記線状部材が位置するように設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載の水洗式便器。
【請求項4】
前記異物ストッパは、前記枠の下端部から前記トラップの奥へ延びるように、かつ、前記トラップの内壁面に接するように延設された姿勢安定棒状部材を備えることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の水洗式便器。
【請求項5】
水を貯めるボウル部と、前記ボウル部の底部に接続された管状のトラップと、を備えた水洗式便器の前記ボウル部と前記トラップとの接続部に取り付けられる異物ストッパであって、
該接続部の内壁に沿って略環状となるように設けられた枠と、
前記枠よりも小さい断面を有し、前記枠の一端部と他端部との間に弛んだ状態で取り付けられた線状部材と、を備えたことを特徴とする異物ストッパ。
【請求項6】
前記線状部材は、ステンレスワイヤーであることを特徴とする請求項5に記載の異物ストッパ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、異物詰まりを防止可能な水洗式便器、およびそれに用いられる異物ストッパに関する。
【背景技術】
【0002】
駅等の不特定多数の人が利用する施設の便所においては、利用客が定期券やポイントカード等のICカード、錠菓のプラスチックケース、眼鏡等の装飾品、携帯電話といった異物を誤って水洗式便器(以下便器)に落とし、水で流してしまうという事象が多く見られる。このような異物の多くは、他に流されることのある紙おむつや下着等と異なり変形しにくいので、便器の奥、とりわけ、フランジと呼ばれる便器と便所の配管との接合部に引っ掛かり、便器を詰まらせてしまう原因となっている。
【0003】
便器の奥に引っかかった異物を、落とした本人或いは施設の人間が回収することは非常に困難であるため、異物による便器の詰まりが生じた場合には、専門の業者に依頼して異物を除去してもらうことになる。業者は、主に、先端に鉤爪の付いたワイヤーを便器の奥に通し、異物をワイヤーの先端に引っ掛けて回収するといった手法を用いるが、こうした作業は手間がかかるため、作業時間、すなわち、便器を利用できない期間が比較的長期に及んでしまう。また、業者に作業を依頼することで修繕費用が発生してしまう。
【0004】
また、異物が便器の奥に引っかかった状態は一見しただけでは判別できないことが多い。このため、便器が詰まっていることを知らない利用客が当該便器を利用してしまい、引っかかっている異物に更に汚物が引っかかり、便器の詰まりが酷くなってしまうことがある。詰まり具合が余りに酷くなると、もはやワイヤーでの詰まり解消は困難なので、便器を一旦取り外し、異物を別の場所で除去した後に設置し直すといった大掛かりな修繕が必要となる。そうなると、便器を利用できない期間は更に長期化する上、修繕費用も高額になってしまう。
【0005】
このような事態を防ぐため、最近では、便器のボウル部の下部に網状の異物流出ストッパを取り付けるといったことが行われている(例えば、特許文献1参照)。こうすることで、異物を便器に落としたとしても、異物が異物流出ストッパに引っかかるので、異物が便器の奥へと流されるのを防ぐことができる。そして、異物を落とした利用客本人あるいは施設の人の手で異物を容易に回収することができるようになり、異物による便器の詰まりが原因で便器が長期間利用できなくなるという事態を少なくすることができる。また、専門の業者の手を借りる必要がなくなるので、修繕費用を抑えることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−199689号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に示したような異物流出ストッパは、トイレットペーパー等も引っ掛けてしまうことが多く、便器に水を流した後も、汚物が便器内に残ってしまうことがあった。すなわち、特許文献1に記載されたような従来の異物流出ストッパを用いると、汚物を水で押し流すという、水洗式便器本来の水洗機能が損なわれてしまう事態が頻繁に発生するおそれがあるという問題があった。
【0008】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたもので、水洗式便器において、汚物を押し流す水洗機能を損なうことなく、便器の奥へ異物が流されにくくすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
以上の課題を解決するため、本出願に係る一の発明は、水を貯めるボウル部と、前記ボウル部の底部に接続された管状のトラップと、を備えた水洗式便器であって、前記ボウル部と前記トラップとの接続部に、該接続部の内壁に沿って略環状となるように設けられた枠と、前記枠よりも小さい断面を有し、前記枠の一端部と他端部との間に弛んだ状態で取り付けられた線状部材と、を備えた異物ストッパが設置されていることを特徴とする。
【0010】
本発明のボウル部に異物が落とされた状態で水が流されると、異物は水によってトラップの方へと流されていくが、異物は高い確率で線状部材に引っかかり、それ以上奥へ流されることが無くなる。
また、本発明は、線状部材が弛むように取り付けられているので、便器に水が流されると、線状部材が水流を受けて振動する。線状部材がぴんと張られた状態にすると、線状部材は振動することができないので、引っかかった汚物を水流の力で引きちぎることで切断することになるが、本発明によれば、汚物が振動する線状部材に擦られることで容易に切断されるので、線状部材に引っかかることなく流される。つまり、異物ストッパを設けたことにより、便器の水洗機能が低下するという事態を防ぐことができる。
【0011】
また、上記発明において、前記線状部材は、前記枠の上端部と下端部との間に略鉛直に延設されているものとしてもよい。
ICカードやこれに類似する形状の異物は、上方を向く、すなわち短辺を水平にした状態で流されることが多い。このため、上述したようにすれば、ICカードやこれに類似する形状の異物が線状部材と直交した状態で当接することになるので、異物が線状部材に引っかかる確率を更に高めることができる。
【0012】
また、上記発明において、前記ボウル部の底部には、前記トラップ内へ向かって水を噴射する噴射口が設けられており、前記異物ストッパは、前記噴射口から噴射された水の流れの中心に、前記線状部材が位置するように設けられているものとしてもよい。
このようにすれば、噴射口から噴射される水が異物ストッパの前に差し掛かった汚物に直接当たることになるので、噴射された水の高い圧力を利用してより更に容易に汚物を切断することができる。
【0013】
また、上記発明において、前記異物ストッパは、前記枠の下端部から前記トラップの奥へ延びるように、かつ、前記トラップの内壁面に接するように延設された姿勢安定棒状部材を備えるものとしてもよい。
このようにすれば、枠の姿勢をより安定した状態とすることができる。
【0014】
また、本出願に係る他の発明は、水を貯めるボウル部と、前記ボウル部の底部に接続された管状のトラップと、を備えた水洗式便器の前記ボウル部と前記トラップとの接続部に取り付けられる異物ストッパであって、該接続部の内壁に沿って略環状となるように設けられた枠と、前記枠よりも小さい断面を有し、前記枠の一端部と他端部との間に弛んだ状態で取り付けられた線状部材と、を備えたことを特徴とする。
【0015】
本発明を取り付けた便器のボウル部に異物が落とされた状態で水が流されると、異物は水によってトラップの方へと流されていくが、異物は高い確率で線状部材に引っかかり、それ以上奥へ流されることが無くなる。
また、本発明は、線状部材が弛むように取り付けられているので、本発明が取り付けられた便器に水が流されると、線状部材が水流を受けて振動する。線状部材がぴんと張られた状態にすると、線状部材は振動することができないので、引っかかった汚物を水流の力で引きちぎることで切断することになるが、本発明を備えた便器によれば、汚物が振動する線状部材に擦られることで容易に切断されるので、線状部材に引っかかることなく流される。つまり、異物ストッパを設けたことにより、便器の水洗機能が低下するという事態を防ぐことができる。
【0016】
なお、上記発明において、前記線状部材は、ステンレスワイヤーとしてもよい。
ステンレスワイヤーは、細いステンレス線の撚り線であるため、表面に凹凸がある。従って、上述したようにすれば、表面の凹凸によって汚物を擦って切断する機能をより一層顕著なものとすることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、水洗式便器において、汚物を押し流す水洗機能を損なうことなく、便器の奥へ異物が流されにくくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の実施形態に係る水洗式便器の縦断面図である。
図2】(a)は図1の水洗式便器を構成する異物ストッパの一例を示した斜視図であり、(b)は(a)の側面図である。
図3図2の異物ストッパを構成する部材の一例、およびこの異物ストッパの組み立て工程の一部を示した斜視図である。
図4図2の異物ストッパによって、異物が便器の奥へ流されるのを防いでいる状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
まず、本実施形態の水洗式便器(以下便器1)の概略構成について説明する。図1は、便器1が設置された便所の一部を便器1の側方から見たときの縦断面図である。なお、ここでは、便器1として、サイホンゼット式のものを例に説明するが、本発明は、洗い落とし式、サイホン式、サイホンボルテックス式といった他の形式の水洗式便器にも適用可能である。
【0020】
便器1は、前部をなす鉢状のボウル部10、ボウル部10の下端部からボウル部10の後方へと延設されたトラップ20、ボウル部10とトラップ20との接続部に取り付けられた異物ストッパ30、ボウル部10の上に設けられた便座40等で構成されている。
また、便器1は、便所の床Fから上方へ突出するように設けられた汚物排出用の配管2の接続口と接続され、ボウル部10から流されてきた汚物を配管2へと排出できるようになっている。また、便器1は、図示しない水タンクと給水管3で接続され、水タンクから水の供給を受けられるようになっている。
【0021】
ボウル部10の内壁はトラップ20の内壁と滑らかに連続しており、ボウル部10の底部には、トラップ20へ通じる開口11が形成されている。また、ボウル部10とトラップ20との接続部における前方寄りの内壁面には、トラップ20の方を向くゼット孔12が形成されており、水タンクから供給された水Jをトラップ20内へ向かって噴射できるようになっている。
トラップ20は、ボウル部10との接続部から後方へ向かう水平部21、後方に向かうに従って上昇していく上昇部22、逆U字型に湾曲する湾曲部23、下方に向かう鉛直部24からなる管である。鉛直部24の下端には、内側に窄むような形状のフランジ24aが形成されており、配管2の接続口に嵌合している。
ボウル部10の下部、トラップ20の水平部21および上昇部22には、封水Wが満たされている。
【0022】
次に、異物ストッパ30の具体的構成について説明する。図2は異物ストッパ30の一例を示した斜視図および側面図であり、図3は異物ストッパ30を構成する部材の一例およびこの異物ストッパ30の組み立て工程の一部を示した斜視図である。
異物ストッパ30は、図2(a)に示したように、略円環状の枠31、枠31の一端部(上端部)に設けられた第1支持部材33、枠31の他端部(下端部)に設けられた第2支持部材34、第1支持部材33と第2支持部材34との間に設けられた線状部材35、枠31の下端部に設けられた姿勢安定棒状部材(以下棒状部材32)等で構成されている。
【0023】
枠31は、便器1の水流の力では変形しない程度の剛性を有する銅線で、ボウル部10の開口11周囲の壁面にぴったりと接する環状に形成されている。枠31がこのような剛性を有するようにするには、例えば、直径1.6mm程度の銅線を用いるとよい。枠31の直径は、トラップ20の内径よりもやや大きくなるように、かつ、一般的なICカードの短手方向の長さの2倍を超えない大きさとされている。
棒状部材32は、枠31と同じ銅線で、図2(b)に示したように、枠31下端部の銅線の延設方向と略直交する方向(後方)に延設されている。なお、棒状部材32は、枠31の銅線を延長したものであってもよいし、枠31とは別の銅線を溶接、部材でかしめる等して取り付けたものであってもよい。
【0024】
第1支持部材33は、図3(a)に示したように、円筒部33a、円筒部33aの側面中央部に形成された突起部33bで構成されている。円筒部33aと突起部33bは金属で一体形成されている。突起部33bには孔33cが形成されている。
第1支持部材33は、円筒部33aに枠31の銅線を通した状態で、円筒部33aをかしめることにより枠31に固定されている。なお、図3(a)には、枠31の銅線の両端を第1支持部材33においてつなげる様子を示したが、銅線の中間部においてかしめてもよい。
【0025】
第2支持部材34は、図3(b)に示したように、軸方向に沿って形成された第1スリット34aと、第1スリット34aの中央から第1スリット34aと直交するように形成された第2スリット34bとを有する円筒状に形成されている。
第2支持部材34は、中に枠31の銅線を通すとともに、第1スリット34aに棒状部材32を通した状態でかしめることにより枠31に固定されている。
なお、支持部材33,34は、枠31の上端部と下端部に鉛直方向に並ぶように取り付けるのが好ましいが、枠31の両側端部に水平方向に並ぶように取り付けるなど、枠31の中心を通る直線と枠31との2交点上にそれぞれ位置する配置であればよい。
【0026】
線状部材35は、枠31の銅線よりも細い(例えば0.5mm程度)、すなわち、小さい断面を有し、枠31の鉛直方向の直径よりも、10〜20%程度長い線材である。用いる線材としては、ステンレスワイヤーのように、細い線材を撚ったもの(表面に細かな凹凸のあるもの)を用いるのが好ましい。この線状部材35の一端部は、図3(a)に示したように、第1支持部材33の孔33cに通されるとともに玉結びにされている。一方、他端部は、図3(b)に示したように、第2支持部材34の第1スリット34aに通されるとともに、第2支持部材34の端から出たところで玉結びにされている。こうすることで、線状部材35は、弛みを持ちつつ、枠31の中心を通る略直線状に延設された状態となる。
【0027】
この異物ストッパ30は、図1に示したように、ボウル部10とトラップ20との接続部に、棒状部材32がトラップ20の奥へ向かうように、かつ、枠31が開口11に沿って接続部の壁面にぴったりと接するように取り付けられる。上述したように、異物ストッパ30の枠31の直径は、トラップ20の内径よりも大きいので、枠31が何らかの理由で便器1から外れてしまっても、枠31がトラップ20に入り込むことはない。また、取り付けに際しては、棒状部材32は、トラップ20内壁下部にぴったりと接するように適宜湾曲させる。こうすれば、枠31の姿勢をより安定した状態とすることができる。異物ストッパ30がこのように取り付けられると、線状部材35は、開口11の略中心を開口11の径(鉛直)方向に通るよう配置された状態になる。
【0028】
このように構成された便器1のボウル部10に異物C(図4参照)が落とされた状態で水が流されると、異物Cは水によってトラップ20の方へと流されていくが、異物は高い確率で線状部材35に引っかかり、それ以上奥へ流されることが無くなる。
また、上述したように、枠31の直径がICカードの短手方向の長さの2倍よりも短いので、枠31の側端と線状部材35との距離は、最も離れる個所においても、ICカードの短手方向の長さよりも短くなる。このため、水平に流れてきたICカードや、これに近い大きさをした錠菓のプラスチックケース、ICカードよりも大きな異物の多くを、高い確率で線状部材35に引っ掛かけることができる。
なお、異物ストッパ30の手前においては、ICカードやこれに類似する形状の異物Cは、図4に示したように、上方を向く、すなわち短辺を水平にした状態で流されることが多い。このため、線状部材35を鉛直方向に延設すれば、ICカードやこれに類似する形状の異物Cが線状部材35と直交した状態で当接することになるので、異物Cが線状部材35に引っかかる確率を更に高めることができる。
【0029】
また、線状部材35がわずかに弛むように取り付けられているので、便器1に水が流されると、線状部材35が水流を受けて振動する。線状部材35がぴんと張られた状態にすると、線状部材35は振動することができないので、引っかかった汚物を水流の力で引きちぎることで切断することになるが、本実施形態のようにすれば、汚物が振動する線状部材35に擦られることで容易に切断されるので、線状部材35に引っかかることなく流される。つまり、異物ストッパ30を設けたことにより、便器1の水洗機能が低下するという事態を防ぐことができる。
特に、線状部材35をステンレスワイヤーとすれば、表面の凹凸によって汚物を擦って切断する機能をより一層顕著なものとすることができる。
【0030】
また、異物ストッパ30は、ボウル部10とトラップ20の接続口という、ボウル部10内に比べて強い水流が生じる箇所に取り付けられているので、線状部材35の振動に加え、水流からの圧力を使って汚物の切断が可能となる。
特に、便器1を、図1に例示したサイホンゼット式のものとすれば、ゼット孔12から噴射された水Jが異物ストッパ30の前に差し掛かった汚物に直接当たることになるので、噴射された水Jの高い圧力を利用してより更に容易に汚物を切断することができる。
また、線状部材35が鉛直方向に張られるとともに、枠31がボウル部10とトラップとの接続部、すなわち、トラップ20に入る前の箇所に配置されることで、異物Cがトラップ20内に入る前に引っ掛けられる。このため、水流が止まった後、封水の水位が上昇するのに伴って異物Cが浮力でトラップ20の奥へ入って行ってしまうのを防ぐことができる。
【0031】
以上、本発明を実施形態に基づいて具体的に説明してきたが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で変更可能である。
例えば、本実施形態では、上下で異なる構造の支持部材33,34を用いたが、上下逆に用いてもよいし、上下両方とも同じものにしてもよい。
また、本実施形態では、支持部材33,34を用いて線状部材35を取り付けたが、枠31に小さく切り込みを入れ、そこに引っかかるように線状部材35を結びつけるようにしてもよい。こうすれば、支持部材33,34を用いなくても、線状部材35が切り込みに引っかかるので、線状部材35がずれてしまうのを防ぐことができる。なお、線状部材35をステンレスワイヤーとする場合には、枠31に溶接してもよい。
【符号の説明】
【0032】
1 水洗式便器
2 配管
3 給水管
10 ボウル部
11 開口
12 ゼット孔(噴出口)
20 トラップ
21 水平部
22 上昇部
23 湾曲部
24 鉛直部
24a フランジ
30 異物ストッパ
31 枠
32 姿勢安定棒状部材
33 第1支持部材
33a 円筒部
33b 突起部
33c 孔
34 第2支持部材
34a 第1スリット
34b 第2スリット
35 線状部材
40 便座
C 異物
F 床
J 噴出された水
W 封水
図1
図2
図3
図4