(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
強化繊維とマトリックス樹脂とから成る長尺シート状の強化繊維材料の供給装置であって、前記強化繊維材料が巻回されて形成された原反ロール、及び該原反ロールから引き出された前記強化繊維材料を切断して前記強化繊維材料から強化繊維材料片を切り出すための切断機構を含む供給装置において、
前記切断機構は、ロール体の周面から突出する刃部を有すると共に前記刃部が前記ロール体の円周上における同じ位置で前記ロール体の軸線方向に延在するように形成されたカッタロールであって前記強化繊維材料の引き出し方向に対し前記軸線方向が予め定められた角度を為すように配置されたカッタロールと、前記軸線方向に延在すると共に前記カッタロールと対向させて設けられた受け部材と、前記カッタロールを回転駆動するための回転駆動機構とを含み、
さらに、前記切断機構は、少なくとも前記強化繊維材料の切断時において前記カッタロールを前記軸線方向における前記強化繊維材料の引き出し方向側へ変位させるスライド機構を備える
ことを特徴とする強化繊維材料の供給装置。
強化繊維とマトリックス樹脂とから成る長尺シート状の強化繊維材料の供給装置であって、前記強化繊維材料が巻回されて形成された原反ロール、及び該原反ロールから引き出された前記強化繊維材料を切断して前記強化繊維材料から強化繊維材料片を切り出すための切断機構であってロール体の周面から突出する刃部を有すると共に前記刃部が前記ロール体の円周上における同じ位置で前記ロール体の軸線方向に延在するように形成されたカッタロール及び前記軸線方向に延在すると共に前記カッタロールと対向させて設けられた受け部材を備えた切断機構を含む供給装置において、
前記切断機構における前記カッタロールが前記強化繊維材料の引き出し方向に対し前記軸線方向が予め定められた角度を為すように配置され、
前記原反ロールからの前記強化繊維材料の引き出し長さが予め設定された長さに達した時点で前記強化繊維材料の切断が行われるように前記カッタロールを回転駆動すると共に、少なくとも前記強化繊維材料の切断時において前記カッタロールを前記軸線方向における前記強化繊維材料の引き出し方向側へ変位させる
ことを特徴とする強化繊維材料の供給装置における強化繊維材料の切断方法。
【背景技術】
【0002】
前記のような強化繊維材料の供給装置として、例えば、特許文献1に開示された装置がある。その特許文献1に開示された供給装置は、複数本の強化繊維(炭素繊維、ガラス繊維等)にマトリックス樹脂を含浸させて形成された強化繊維材料としてのプリプレグを積層するための自動積層装置におけるプリプレグを供給するための装置である。そして、その供給装置は、長尺シート状のプリプレグ(プリプレグシート)が巻回されるかたちで形成された原反ロールを搭載すると共に、プリプレグの積層が行われるテーブル上を移動するように設けられている。さらに、その供給装置は、テーブル上において積層されたプリプレグシートの部分と原反ロールに連なるプリプレグシートとを切り離し、積層された部分であるプリプレグシート片を原反ロールにおけるプリプレグシートから切り出す切断機構を備えている。
【0003】
その上で、その自動積層装置においては、テーブル上において供給装置を積層方向へ移動させることで、プリプレグシートが原反ロールから引き出されつつテーブル上で積層され、予め定められた長さのプリプレグシートが引き出された時点で切断機構によってプリプレグシートが切断されることで、その予め定められた長さのプリプレグシート片がテーブル上で積層された状態となる。但し、ここで言う積層とは、既にテーブル上に敷置きされたプリプレグシート片上に重ねる場合に限らず、テーブル上に敷置きされたフィルム等のシート材上に重ねる場合や、テーブル上に直接敷置きする場合も含む。また、その供給装置の場合、プリプレグシート(強化繊維材料)の引き出し方向は、前記の積層方向(供給装置の移動方向)に対し平行な逆方向(その移動方向の後方側へ向けた方向)となっている。
【0004】
なお、その強化繊維材料(プリプレグ)は、繊維強化プラスチック(FRP)等の繊維強化複合材の基材であり、その繊維強化複合材は、前記のような原反ロールにおける長尺シート状の強化繊維材料から切り出された強化繊維材料片が複数枚積層される積層工程を伴って成形される。従って、その繊維強化複合材は、強化繊維材料片による多層構造を有している。因みに、その強化繊維材料としては、強化繊維を経糸及び緯糸として形成された織物にマトリックス樹脂を含浸させた織物材や、強化繊維を一方向に引き揃えた状態でマトリックス樹脂を含浸させて集束させた所謂UD材がある。さらに、その強化繊維材料としては、前記織物や一方向に引き揃えられた強化繊維にマトリックス樹脂を含浸させた前記プリプレグの他に、強化繊維の集束性を維持する程度にマトリックス樹脂を添着させた所謂セミプレグとして形成されたものもある。
【0005】
また、繊維強化複合材を成形するにあたっては、その各層を成す強化繊維材料片における強化繊維の配向方向を異ならせた状態で強化繊維材料片が積層されたかたちとすることで、強化繊維の配向方向を一致させた状態で強化繊維材料片が積層されたものと比べ、それによって成形される繊維強化複合材が剛性や強度の面において優れたものとなることが知られている。
【0006】
そして、そのような繊維強化複合材を成形するための強化繊維材料の積層方法としては、例えば、同じ強化繊維材料を用いてその強化繊維材料(片)を順次積層していくにあたり、積層しようとする強化繊維材料を、その強化繊維材料が積層される積層済みの強化繊維材料片(繊維強化複合材において下層を為す強化繊維材料片)とは強化繊維が配向方向が異なるような積層方向で積層する、といったことが考えられる。
【0007】
また、別の方法としては、例えば特許文献2に開示されているような強化繊維材料から成るバイアスプライ材料(角度層材料)を用いて、前記のような強化繊維の配向方向を異ならせた強化繊維材料片が積層された繊維強化複合材を成形する、といったことも考えられる。詳しくは、その角度層材料は、ベース材料であるシート状の支持部材(ポリエチレンフィルム、紙等のシート材)に対し強化繊維材料がその支持部材の長手方向と角度を為した状態で積層されることで、強化繊維の配向方向がその長手方向に対し角度を為す材料として形成されている。そこで、そのような角度層材料であって強化繊維の配向方向を異ならせて形成された複数種類の角度層材料を準備し、それらを同じ積層方向で積層することで、前記のような繊維強化複合材が得られる。
【0008】
ところで、前述の特許文献1における強化繊維材料の供給装置では、その切断機構は、シート状の強化繊維材料(プリプレグシート)の幅方向と平行な方向で(長手方向と直交する方向で)強化繊維材料を切断するように設けられている。しかしながら、前記のように積層済みの強化繊維材料片に対し積層方向を異ならせて(強化繊維の配向方向を異ならせて)強化繊維材料(片)を積層する場合や、支持部材上にその長手方向に対し強化繊維の配向方向が角度を為すようにして強化繊維材料を積層する場合において、そのように前記幅方向と平行に強化繊維材料を切断するものでは、
図5に示すように、その積層される強化繊維材料片の両端縁が一直線状に揃わず、被積層側の材料(積層済みの強化繊維材料片、支持部材)の両側縁に対し、その強化繊維材料片の両端部(図示の斜線の部分)がはみ出た状態となる。その場合、その後の工程でそのはみ出た部分を切断するといったことを行わなければならなくなり、また、その切断された部分は廃棄されることとなって無駄に強化繊維材料が消費されることとなるため好ましくない。従って、前記のように強化繊維の配向方向を異ならせて強化繊維材料を積層する場合には、その積層方向に応じて幅方向及び長手方向に対し角度を為すかたちで強化繊維材料が切断されることが求められる。
【0009】
また、その切断機構について、特許文献1の供給装置における切断機構は、カッタを強化繊維材料に対し進退させて強化繊維材料を切断する構成となっている。しかし、その自動積層装置においては、そのカッタによる強化繊維材料の切断の時点は未だ積層が完了する前の時点(積層途中)であり、その時点では原反ロールからの繊維強化材料の引き出しが継続されている、すなわち、繊維強化材料が移動している。そして、そのように移動する強化繊維材料の切断に対し、前記のようにカッタを強化繊維材料に対し進退させて強化繊維材料を切断するように構成された切断機構では、確実に(完全に)強化繊維材料を切断することができなかったり、カッタが繊維強化材料の移動に干渉するといった問題が生じる。
【0010】
そこで、そのような移動する強化繊維材料を切断するための切断機構としては、例えば特許文献3に開示されているような、ロール体(カッタドラム)及びそのロール体の周面から突出するように形成された刃部(カッタブレード)から成るカッタロールと、そのカッタロールに対向させて設けられた受け部材(アイドラドラム)とを含み、そのカッタロールを回転させて強化繊維材料(帯状材料)を切断するように構成されたものが好適な装置として用いられる。
【0011】
なお、そのような切断機構が用いられる場合において、移動するシート状の強化繊維材料を前述のようにその幅方向及び長手方向に対し角度を為すかたちで切断する場合、そのカッタロールを、特許文献3の
図5に描かれているような、刃部がロール体の円周上における同じ位置でロール体の軸線方向(以下、単に「軸線方向」とも言う。)に延在する、すなわち、刃部が直線状に形成されているものとすると、そのカッタロールは、前記軸線方向をその切断する角度(切断角度)に一致させた状態で配置されることとなる(例えば、
図6)。しかし、その場合、強化繊維材料の厚さ方向に見て、ロール体の回転に伴う刃部の変位方向(特に、前記軸線方向に見てロール体の軸心よりも強化繊維材料側での刃部の変位方向)と強化繊維材料の移動方向(引き出し方向)とが大きく異なる状態となる。そのため、強化繊維材料を確実に(完全に)切断することができなかったり、さらには、繊維強化材料の幅方向の位置がズレるといった問題が生じてしまう。そこで、特許文献3では、前記のような切断角度で強化繊維材料を切断する場合には、カッタロールを、刃部がロール体の周面上で螺旋状に形成された構成とする(参考:特許文献4)と記載されている。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明による強化繊維材料の供給装置、及びその供給装置における強化繊維材料の切断方法に関し、一実施形態(実施例)を説明する。なお、以下で説明する実施例(本実施例)は、その供給装置が、
図1、2に示す自動積層装置であってその供給装置から供給されるシート状の強化繊維材料をテーブル上で積層する自動積層装置に搭載されている例である。また、本実施例では、その強化繊維材料は、強化繊維としての炭素繊維にマトリックス樹脂としてのエポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂を含浸させたプリプレグによるシート材(プリプレグシート)であるものとする。その上で、その自動積層装置は、テーブル上に供給された支持部材としてのフィルム等のシート材上に、プリプレグシート片をそのシート材の幅方向及び長手方向に対し角度を為した状態で積層し、それによって炭素繊維強化プラスチック(CFRP)の基となる角度層材料としてのシート状の炭素繊維基材を製造する装置となっているものとする。
【0028】
先ず、本実施例に関し、本発明による供給装置が搭載される自動積層装置について説明する。
【0029】
図1に示すように、自動積層装置は、前記したプリプレグシートPSの原反ロール21を搭載する供給ヘッド20と、プリプレグシートPS(後述のプリプレグシート片PS’)が順次並べられるかたちで積層されて炭素繊維基材CMが形成されるテーブル40と、供給ヘッド20を吊り下げるかたちで支持する(吊持する)門型の支持機構50であってテーブル40の上面上においてプリプレグシートPSを積層するために供給ヘッド20を移動させる支持機構50とを備えている。また、その自動積層装置は、プリプレグシートPSが積層される前記したシート材SMをテーブル40上へ供給するための送出機構、及びテーブル40上でシート状に形成された炭素繊維基材CMを巻き取る巻取機構を備えている。
【0030】
それらの各構成要素について、テーブル40は、平面視において矩形状を為す天板41と、天板41を支持する支持台43とで構成されている。そして、そのテーブル40は、その天板41の長手方向がシート材SMの供給方向と平行を為す向きで配置されている。その上で、その天板41の上面上において、シート材SM上へのプリプレグシートPSの積層が行われる。
【0031】
支持機構50は、前記のように門型の構造を有しており、一対のサイドレール51、51、各サイドレール51に対応させて設けられた一対のコラム53、53、及び両コラム53、53間に架設されたクロスビーム55から成るガントリ部と、ガントリ部におけるクロスビーム55上に設けられて供給ヘッド20を支持するサドル部57とを備えている。
【0032】
その支持機構50について、ガントリ部における一対のサイドレール51、51は、支持機構50のベースとなる部分であって、長尺角柱状の基部51aを主体とする部分である。そして、その一対のサイドレール51、51は、その長手方向がテーブル40における天板41の長辺方向と平行を為す向きで、テーブル40に対し、天板41の短辺方向における両側において床面上に設置されている。また、その各サイドレール51において、基部51aの上面には、対応するコラム53の前記長手方向における移動を案内するためのガイドレール51bが設けられている。なお、前記のようにテーブル40(天板41)の長辺方向とサイドレール51の長手方向とは同じ方向であり、それらの方向は自動積層装置における前後方向に一致する。そこで、以下では、それらの方向及びそれと平行な方向を「前後方向」と称して説明する。
【0033】
各コラム53は、台座部53a、及び台座部53a上に立設された一対の支柱53b、53bで構成されている。そして、各コラム53は、その台座部53aにおいて、対応するサイドレール51における基部51a上に載置された状態で設けられている。また、各コラム53における台座部53aは、サイドレール51におけるガイドレール51bに案内されるかたちで、サイドレール51の前記前後方向に移動可能に設けられている。
【0034】
また、クロスビーム55は、長尺角柱状の梁部材であって、その両端部のそれぞれがコラム53における各支柱53bの上端に取り付けられるかたちで、一対のコラム53、53間に架設されている。但し、そのようにクロスビーム55が架設された状態において、両コラム53、53は、サイドレール51の前記前後方向における位置が一致する状態となっており、それにより、クロスビーム55は、その長手方向がサイドレール51の前記前後方向と直交する方向(テーブル40(天板41)の短辺方向)に一致する状態となっている。
【0035】
そして、そのような梁構造を有するガントリ部において、各サイドレール51とそれに対応するコラム53との間には、例えばラック、ピニオンギア、駆動モータ等から成る駆動機構(いずれも図示略)が設けられている。すなわち、ガントリ部は、一対のコラム53、53及び両コラム53、53間に架設されたクロスビーム55が、その駆動機構により、サイドレール51の前記前後方向に沿って移動するように駆動される構成となっている。なお、前記のように、クロスビーム55の長辺方向とテーブル40(天板41)の短辺方向とは同じ方向であり、それらの方向は自動積層装置における幅方向に一致する。そこで、以下では、それらの方向及びそれと平行な方向を「幅方向」と称して説明する。
【0036】
サドル部57は、供給ヘッド20を支持機構50に対し支持された状態とするための機構であり、ガントリ部におけるクロスビーム55上に設けられている。そのサドル部57は、クロスビーム55上で前記幅方向に移動可能に設けられた板状のサドルベース57aを主体とする。また、そのサドル部57は、サドルベース57aにおけるクロスビーム55側の面から下方へ向けて突出するようなかたちで、サドルベース57aに対し回転自在に支持された支持シャフト57bを有している。そのため、ガントリ部におけるクロスビーム55には、その支持シャフト57bの配置を許容すると共に前記幅方向におけるサドル部57の移動を許容するために、クロスビーム55を上下方向に貫通すると共にその前記幅方向に延在する孔55aが形成されている。そして、サドル部57における支持シャフト57bは、その孔55aに挿通され、クロスビーム55の下方まで延びている。
【0037】
また、サドル部57は、サドルベース57a上に設けられたヘッド駆動機構を有している。そのヘッド駆動機構は、支持シャフト57bを回動させるための機構であり、駆動モータ57c及び駆動モータ57cと支持シャフト57bとを連結して駆動モータ57cの出力軸の回転を支持シャフト57bに伝達する駆動伝達機構57dとで構成されている。従って、サドル部57は、その支持シャフト57bが、鉛直方向に延びる自身の軸心を回転中心として、そのヘッド駆動機構によって回動される構成となっている。
【0038】
さらに、そのサドル部57とクロスビーム55との間には、サドル部57を前記幅方向に沿って移動させるための駆動機構が設けられている。図示の例はその一例であって、その駆動機構は、サドル部57におけるサドルベース57aの側面に対し出力軸の軸心を鉛直方向に向けて取り付けられた駆動モータ59a、クロスビーム55の側面に取り付けられたラック59b、及び駆動モータ59aの出力軸に取り付けられると共にラック59bと噛合するピニオンギア59cで構成されている。従って、支持機構50は、その駆動機構により、クロスビーム55上においてサドル部57が前記幅方向に移動するように駆動される構成となっている。
【0039】
送出機構及び巻取機構については、その構成自体は公知の装置と同様のものであるために詳細な説明は省略するが、その送出機構と巻取機構とは、前記前後方向においてテーブル40を挟む配置で設けられている。すなわち、自動積層装置は、前記前後方向に関し、テーブル40の一端側(後方側)に送出機構を備え、他端側(前方側)に巻取機構を備える構成となっている。
【0040】
送出機構は、送出軸44を支持する支持機構、及び支持機構に支持された送出軸44を回転駆動する駆動機構(いずれも図示略)等で構成されている。また、送出機構は、その送出軸44とテーブル40との間に設けられたガイドロール46を有している。その上で、送出機構には、シート材SMがロール状に巻かれたシートロールSRが、送出軸44によって支持されている。
【0041】
巻取機構は、送出機構44と同様に、巻軸45を支持する支持機構、及び支持機構に支持された巻軸45を回転駆動する駆動機構(いずれも図示略)等で構成されている。また、巻取機構は、その巻軸45とテーブル40との間に設けられたガイドロール47を有している。
【0042】
そして、送出機構上のシートロールSRから引き出されたシート材SMは、ガイドロール46によって案内されるかたちでテーブル40側へ導かれ、テーブル40(天板41)上を通過して巻取機構に至っている。但し、そのシート材SMは、テーブル40上においては、天板41上に載った状態となっており、その天板41の上面上を摺動するかたちで巻取機構側へ移動する。また、前記のようにテーブル40上においては、後記において詳述するように、シート材SM上へのプリプレグシートPSの積層が行われる。従って、テーブル上におけるその積層位置よりも巻取側においては、シート材SM単体ではなく、シート材SMにプリプレグシートPSが積層された炭素繊維基材CMとなっている。そして、その炭素繊維基材CMは、テーブル40よりも前方において、ガイドロール47によって案内されるかたちで巻軸45側へ導かれ、巻軸45上に巻き取られる。
【0043】
因みに、シート材SM(炭素繊維基材CM)は、巻取機構において巻軸45が回転駆動されて巻軸45上で巻き取られることにより、巻取機構側へ牽引される。そして、その巻取機構によるシート材SMの牽引に応じて送出機構における送出軸44が回転駆動されることで、シート材SMは、適当な張力状態に維持され、テーブル40上において皺や弛みの無い状態で移動する。
【0044】
前記のようにテーブル40上においてプリプレグシートPSの積層を行う供給ヘッド20は、支持機構50におけるサドル部57の支持シャフト57bに取り付けられることで、支持機構50におけるクロスビーム55に吊持された状態で設けられている。そして、支持機構50において、両コラム53、53がサイドレール51、51上で前記前後方向に移動するように駆動される、及び/又は、サドル部57がクロスビーム55上で前記幅方向に移動するように駆動されることで、供給ヘッド20は、テーブル40の上方において、前記前後方向、前記幅方向、あるいは前記前後方向及び前記幅方向と交差する方向へ移動する。
【0045】
その供給ヘッド20は、一対の支持板23、23を含む支持フレームを主体としており、その支持板23、23間で、本発明の供給装置の一部である原反ロール21を支持している。なお、その原反ロール21は、前記したシート状(テープ状)のプリプレグシートPSがリール(巻枠)に対し巻回されるかたちで形成されている。そして、その原反ロール21は、支持板23、23間に架設されるかたちで回転可能に設けられた支持軸21aに対しその前記リール部分が相対回転不能に嵌装されることで、支持フレームに対し回転可能に支持されている(
図2)。
【0046】
なお、本実施例におけるプリプレグシートPSは、前述のように熱可塑性樹脂をマトリックス樹脂としており、粘着性を有している。そのため、原反ロール21上で巻回されて巻層を為すプリプレグシートPSが互いにくっつかないように、プリプレグシートPSの一方の面には、剥離紙(離形紙とも言う。)RPが貼着されている。そして、プリプレグシートPSは、原反ロール21上において、その剥離紙RP側の面を半径方向における内側にして巻回されている。
【0047】
その上で、自動積層装置においては、その供給ヘッド20における原反ロール21からプリプレグシートPSが引き出されると共に、そのプリプレグシートPSから切り出された強化繊維材料片としてのプリプレグシート片PS’がテーブル40(天板41)上に順次積層される。そのため、供給ヘッド20は、そのようなプリプレグシート片PS’のテーブル40上への積層を実現するための各構成を支持フレームの内部(支持板23、23間)に備えている。
【0048】
図2は、そのような供給ヘッド20における支持フレーム内の構成を概略的に示した図である。
図2に示すように、供給ヘッド20においては、原反ロール21から引き出されたプリプレグシートPSは、ガイドロール22、24に巻き掛けられることによって転向され、その積層を実行する積層機構側へ向けて送り出されている。
【0049】
また、供給ヘッド20は、プリプレグシートPSが予め定められた長さのプリプレグシート片PS’として積層されるように、プリプレグシートPSからプリプレグシート片PS’を切り出すための切断機構30(構成に関する詳細は後述)であって本発明の供給装置の一部である切断機構30を備えている。すなわち、供給ヘッド20は、本発明による強化繊維材料としてのプリプレグシートPSの供給装置を備え、その供給装置は、前記した原反ロール21と切断機構30とを備えている。
【0050】
その切断機構30は、供給ヘッド20内のプリプレグシートPSの経路中におけるガイドロール22とガイドロール24との間に設けられている。なお、前記のように、プリプレグシートPSには、その一方の面に対し剥離紙RPが貼着されている。そして、切断機構30は、プリプレグシートPSのみを切断し、剥離紙RPを切断しないように構成されている。
【0051】
積層機構は、テーブル40上における予め定められた積層位置で、シート材SM上にプリプレグシートPSを敷置するための敷置機構26と、その敷置されたプリプレグシートPSをシート材SMに対し圧接する圧接機構28とを備える。
【0052】
それらの構成について、敷置機構26は、テーブル40上の前記積層位置においてシート材SMに対し接触させるかたちでプリプレグシートPSを案内する敷置ガイド26aを備える。また、敷置機構26は、その敷置ガイド26aがボールねじ機構によって支持されて上下方向に変位するように駆動される構成となっている。より詳しくは、敷置機構26は、駆動モータ26b、駆動モータ26bの出力軸に連結されたねじ軸26c、及びねじ軸26cに螺合されたナット26dから成るボールねじ機構を含み、敷置ガイド26aがブラケット26eを介してボールねじ機構におけるナット26dに支持された構成となっている。但し、そのボールねじ機構は、ねじ軸26cが鉛直方向の下方へ向けて延びるような向きで、支持フレーム内に設けられている。
【0053】
また、その敷置機構26は、ねじ軸26cの回転に対するナット26d及びブラケット26eの共周りを阻止すると共にブラケット26e及び敷置ガイド26aの上下方向の移動を案内するガイド(図示略)を備えている。その構成により、敷置機構26においては、駆動モータ26bによるねじ軸26cの回転駆動に伴い、その回転方向によってナット26d及びブラケット26eが上方又は下方へ向けて変位し、それに従って敷置ガイド26aが上下方向に変位する。そして、その敷置機構26は、敷置ガイド26aの上下方向における位置に関し、プリプレグシートPSを敷置する際の位置であってテーブル40の上面(積層面)に近接した位置である作動位置、及びテーブル40の前記積層面から上方へ離間した位置である退避位置の2位置間で敷置ガイド26aが変位するように、駆動モータ26bの駆動が制御される。
【0054】
圧接機構28は、シート材SM上に敷置されたプリプレグシートPSをシート材SMに対し圧接する圧接ローラ(コンパクションローラ)28aを含む。また、圧接機構28は、その圧接ローラ28aがエアシリンダ等の流体圧シリンダ28bによって支持された構成となっている。すなわち、圧接機構28は、流体圧シリンダ28b及び圧接ローラ28aを含み、圧接ローラ28aが流体圧シリンダ28bのロッドに対しブラケット28cを介して回転可能に支持された構成となっている。そして、その流体圧シリンダ28bは、敷置機構26に対し、プリプレグシートPSの引き出し方向における下流側において、ロッドが鉛直方向の下方へ向けて延びるような向きで、支持フレーム内に設けられている。なお、敷置機構26と圧接機構28とは、供給ヘッド20の幅方向(プリプレグシートPSの幅方向)に関し、敷置ガイド26a及び圧接ローラ28aの両者の中心が一致する配置で設けられている。
【0055】
因みに、その圧接機構28について、流体圧シリンダ28bは、例えば単動式のエアシリンダであり、ロッドを後退方向(上方)へ付勢するバネ等の付勢手段を内蔵している。そして、その圧接機構28においては、流体圧シリンダ28bに対し圧縮空気が供給されることにより、その流体圧シリンダ28bのロッドが下方へ向けて前進し、圧接ローラ28aがシート材SM上に敷置されたプリプレグシートPSに対し押接された状態となる。その上で、供給ヘッド20が積層方向に移動することにより、その圧接機構28における圧接ローラ28が、プリプレグシートPSに対し押接された状態で、回転しつつ既に敷置されたプリプレグシートPS上をなぞるかたちで移動する。その結果として、敷置されたプリプレグシートPSは、シート材SMに対し圧着されて積層された状態となる。なお、プリプレグシートPS(プリプレグシート片PS’)の積層時以外の供給ヘッド20の移動時には、その流体圧シリンダ28bに対する圧縮空気の供給が停止され、それによるロッドの後退方向への変位に伴い、圧接ローラ28aは、テーブル40に対し上方へ離間した配置とされる。
【0056】
また、供給ヘッド20は、積層されたプリプレグシートPSから剥離された剥離紙を巻き取って回収する回収部を備えている。すなわち、供給ヘッド20は、前記のように切断機構30がプリプレグシートPSのみを切断するように構成されていることによって連続的な長尺の状態が維持されている剥離紙RPを巻き取るための巻取リール25を含む回収部を備えている。なお、その回収部における巻取リール25は、支持フレームにおける支持板23、23間に架設されるかたちで回転可能に設けられた支持軸25aに対し、相対回転不能に嵌装されるかたちで支持されている。
【0057】
また、その回収部は、剥離紙RPの経路を案内するためのガイドロール27を含んでいる。但し、そのガイドロール27は、敷置ガイド26aよりも上方に配置され、剥離紙RPを敷置機構26における敷置ガイド26aの先端から上方へ向けて案内するように設けられている。また、そのガイドロール27は、敷置ガイド26aからガイドロール27に至る剥離紙RPの経路が、前記のように前記下流側に配置された圧接機構28に干渉しないように配置されている。その上で、巻取リール25(支持軸25a)は、そのように配置されたガイドロール27によって案内された剥離紙RPを巻き取ることが可能な位置に配置されている。
【0058】
なお、その回収部は、巻取ロール25を回転駆動するための駆動モータ25bであって、巻取リール25を支持する支持軸25aに連結された駆動モータ25bを含んでいる。また、前記した原反ロール21を含むプリプレグシートPSの供給部は、原反ロール21を回転駆動するための駆動モータ21bであって、原反ロール21を支持する支持軸21aに連結された駆動モータ21bを含んでいる。
【0059】
因みに、その供給部における駆動モータ21b及び回収部における駆動モータ25bについて、プリプレグシートPSは、敷置機構26における敷置ガイド26aによってシート材SM上に敷置されると共に圧接機構28における圧接ローラ28aによってシート材SMに対し圧接された状態で、供給ヘッド20が積層方向に移動することにより、原反ロール21から引き出されることとなる。そのような供給ヘッド20の移動に伴う原反ロール21からのプリプレグシートPSの引き出しにおいて、原反ロール21を支持する支持軸21aに連結された駆動モータ21bは、原反ロール21から積層位置(敷置ガイド26aの下端)に至るプリプレグシートPSが所望の張力で弛みや捩れ等が発生しない状態となるように、原反ロール21を回転駆動するその駆動が制御される。また、巻取リール25を支持する支持軸25aに連結された駆動モータ25bは、積層時における供給ヘッド20の移動に伴ってプリプレグシートPSから順次剥離される剥離紙RPが弛み等を生じることなく適切に巻取リール25に巻き取られるように、巻取リール25を回転駆動するその駆動が制御される。
【0060】
以上で説明した各構成を含む自動積層装置において、シート材SM上へのプリプレグシートPSの積層を開始するにあたっては、先ずは、供給ヘッド20が、敷置機構26における敷置ガイド26aをシート材SMの側縁上に位置する積層開始位置に位置させた状態とされる。さらに、供給ヘッド20は、その積層開始位置において、敷置機構26の敷置ガイド26aが前記作動位置へ下降した状態とされる。それにより、原反ロール21に連なるプリプレグシートPSは、その敷置ガイド26aにより、前記積層開始位置においてテーブル40上のシート材SMに対し押さえ付けられた状態となる。
【0061】
その上で、供給ヘッド20が前記のようにして支持機構50によって積層方向に移動されることにより、供給ヘッド20内で原反ロール21から引き出されたプリプレグシートPSが、テーブル40上におけるシート材SMに対し、その積層方向に沿って敷置される。因みに、そのように敷置されるプリプレグシートPSの引き出し方向について、本実施例の自動積層装置においては、プリプレグシートPSは、供給ヘッド20における供給装置から積極的に引き出されるのではないが、前記のようにシート材SM上に敷置された状態で供給ヘッド20が積層方向に移動することにより、相対的に見て、供給ヘッド20における供給装置から引き出される状態となる。従って、そのプリプレグシートPSの引き出し方向は、供給ヘッド20の移動方向(積層方向)に対し平行な逆方向(その移動方向の後方側へ向けた方向)となっている。
【0062】
また、その供給ヘッド20の移動時において、敷置機構26よりも前記下流側に設けられた圧接機構28においては、流体圧シリンダ28aに対し圧縮空気が供給されることによって圧接ローラ28aが下方へ向けて付勢された状態となっている。それにより、シート材SM上に敷置されたプリプレグシートPSは、その圧接ローラ28aによってシート材SMに対し順次圧接され、自身の粘着性によってシート材SMに対し圧着された状態となってシート材SMに積層された状態となる。
【0063】
そして、そのような積層過程において、予め定められた長さのプリプレグシートPSが原反ロール21から引き出された時点で、原反ロール21に連なるプリプレグシートPSが切断機構30によって切断される。但し、その切断は、前述のように、プリプレグシートPSに貼着された剥離紙RPは切断されず、プリプレグシートPSのみが切断されるように行われる。なお、プリプレグシートPSは切断されていない剥離紙RPに貼り付いた状態となっているため、その切断後も、その切断位置よりも上流側のプリプレグシートPS(原反ロール21に連なるプリプレグシートPS)及び下流側のプリプレグシートPS(原反ロール21に連なるプリプレグシートPSから切り出されたプリプレグシート片PS’)は、その切断端が敷置ヘッド26a側へ向けて移動するように、剥離紙RPと共に移動する。
【0064】
その後、供給ヘッド20の移動に伴い、敷置機構26における敷置ガイド26aがシート材SMの側縁の位置に達するが、その時点までは敷置ガイド26aが前記作動位置に位置する状態に維持されるため、プリプレグシート片PS’は、前記切断端までがその上面を敷置ガイド26aになぞられるかたちでシート材SM上に敷置される。そして、敷置機構26においては、敷置ガイド26aが前記のようにシート材SMの側縁の位置に達した時点で、駆動モータ26bが駆動され、敷置ガイド26aが前記退避位置へ向けて変位される。また、圧接機構28においても、圧接ローラ28aがシート材SMの側縁の位置を通過する時点までは、圧接ローラ28aが流体圧シリンダ28bによって下方へ向けて付勢された状態に維持される。それにより、プリプレグシート片PS’は、前記切断端までが圧接ローラ28aによってシート材SMに対し圧接されることとなり、その全体に亘ってシート材SMに対し圧着されて積層された状態となる。なお、圧接機構28においては、圧接ローラ28aがシート材SMの側縁の位置を通過した時点で、流体圧シリンダ28bに対する圧縮空気の供給が停止され、圧接ローラ28aが上方へ変位した状態とされる。
【0065】
そして、供給ヘッド20は、前記のようなプリプレグシート片PS’の1回の積層動作が完了した後、前記した積層開始位置へ移動されて再びその積層動作が開始し、その積層動作を繰り返し実行する。そのように、自動積層装置においては、シート材SMに対しプリプレグシート片PS’が前記前後方向に並べられるかたちで順次積層されることで、前記したシート状の炭素繊維基材CMが形成される。さらに、そのように形成された炭素繊維基材CMは、前述のようにテーブル40上を移動すると共に、テーブル40の前方側に設けられた巻取機構における巻軸45に巻き取られる。
【0066】
ところで、前記のような積層動作が行われる自動積層装置において、供給ヘッド20は、前記のように、プリプレグシートPS(強化繊維材料)を供給するための供給装置を備える。また、その供給装置は、プリプレグシートPSが引き出される原反ロール21に加え、そのプリプレグシートPSからプリプレグシート片PS’を切り出すための切断機構30を備えている。そして、本発明では、その強化繊維材料の供給装置における切断機構は、ロール体及びロール体の周面から突出する刃部を有すると共に刃部がロール体の円周上における同じ位置でロール体の軸線方向に延在するように形成されたカッタロール、及びそのカッタロールにおけるロール体の軸線方向に延在すると共にカッタロールと対向させて設けられた受け部材を含むと共に、そのカッタロールを回転駆動する回転駆動機構を含み、そのカッタロールと受け部材とで強化繊維材料(プリプレグシートPS)を切断するように構成される。
【0067】
具体的には、本実施例の供給ヘッド20における切断機構30は、その一例として
図3に示すように、カッタロール31と、受け部材としてのアンビルロール32とを備えている。カッタロール31は、ロール体31aを主体とし、そのロール体31の周面から突出するようにしてロール体31aと一体的に形成された刃部31bを有している。但し、その刃部31bは、ロール体31aの周面上において、その円周方向における同じ位置でロール体31aの軸線方向に延在するように形成されている。すなわち、刃部31は、その刃先がロール体31aの軸線方向に一直線状に延びるようなかたちで、ロール体31aの周面上に形成されている。
【0068】
また、カッタロール31は、ロール体31aの両端のそれぞれから前記軸線方向に突出するように形成された軸部31c、31cを有している。そして、カッタロール31は、その両端の軸部31c、31cにおいて、軸受等(図示略)を介して支持枠33に対し回転可能に支持されている。なお、その支持枠33は、平面視及び側方視において矩形状を為すと共に、その奥行方向(
図3(a):紙面と垂直な方向/
図3(b):紙面と平行な方向)における両側が開放された筐体であり、その内部にカッタロール31を収容可能な大きさに形成されている。そして、カッタロール31は、その支持枠33の長手方向における両側の側壁33a、33aに支持されている。
【0069】
受け部材としてのアンビルロール32は、ロール状の受けロール32aを主体としており、その受けロール32aの両端のそれぞれから前記軸線方向に突出するように形成された軸部32b、32bを有している。そして、アンビルロール32は、カッタロール31と同じく、その両端の軸部32b、32bにおいて、軸受等(図示略)を介し、支持枠33の両側の枠壁33a、33aに支持されている。従って、アンビルロール32は、その支持状態においては、その受けロール32aの軸線がカッタロール31におけるロール体31aの軸線と平行を為す、すなわち、ロール体31aの軸線方向に延在するように設けられた状態となっている。また、前記奥行方向に関し、支持枠33(側壁33a)に対するカッタロール31及びアンビルロール32の支持位置は同じとなっている。従って、カッタロール31とアンビルロール32とは、支持枠33の高さ方向(側壁33aの長辺方向)において対向した状態となっている。
【0070】
また、切断機構30は、カッタロール31を回転駆動するための回転駆動機構34を含んでいる。その回転駆動機構34は、駆動源である駆動モータ34aと、駆動モータ34aの出力軸に固定された駆動ギア34bと、カッタロール31に対し取り付けられた従動ギア34cとで構成されている。なお、その回転駆動機構34における従動ギア34cは、カッタロール31における両側の軸部31c、31cのうちの一方に対し相対回転不能に嵌装されており、カッタロール31が支持枠33に支持された状態において、ロール体31aと支持枠33における側壁33aの内側面と間に位置している。そして、駆動モータ34aは、その出力軸が支持枠33における側壁33aの板厚方向を向くと共に、その出力軸に固定された駆動ギア34bが従動ギア34cと噛合するような配置で、ブラケット34dによって支持枠33に取り付けられている。従って、駆動ギア34aが駆動されてその出力軸が回転することにより、その回転が駆動ギア34b、従動ギア34cを介してカッタロール31に伝達され、カッタロール31が回転駆動される。
【0071】
また、本実施例では、アンビルロール32にも、その両側の軸部32b、32bの一方であって、支持枠33に支持された状態において、カッタロール31における従動ギア34cが取り付けられる側の軸部31cと同じ側の軸部32bに対し、従動ギア34eが取り付けられている。そして、その従動ギア34eは、カッタロール31及びアンビルロール32が支持枠33に支持された状態において、カッタロール31に取り付けられた従動ギア34cと噛合している。従って、回転駆動機構34によってカッタロール31が回転駆動されることに伴い、アンビルロール32も回転駆動される。
【0072】
そして、その切断機構30は、供給ヘッド20において、前記のようにプリプレグシートPSの経路におけるガイドロール22とガイドロール24との間で、プリプレグシートPSが前記のように対向するカッタロール31とアンビルロール32との間を通過するように設けられる。なお、そのプリプレグシートPSが通過するカッタロール31とアンビルロール32との間隔(両者の周面の間隙)は、カッタロール31のロール体31aから突出する刃部31bによって前述のようにプリプレグシートPSのみが切断される(剥離紙RPが切断されない)ように設定されている。
【0073】
また、前述のように本実施例の自動積層装置では、強化繊維としての炭素繊維の配向方向が前記のように製造される炭素繊維基材CMの長手方向及び幅方向に対し角度を為す角度層材料として炭素繊維基材CMが製造される。そのため、プリプレグシートPS(プリプレグシート片PS’)のシート材SM上への積層方向は、
図4(a)に示すように、シート材SMの幅方向及び長手方向に対し角度を為す方向となっている。因みに、
図4に示す例では、その積層方向がシート材SMの幅方向及び長手方向に対し為す角度は、45°となっている。但し、その角度は、その炭素繊維基材CMを用いて成形される繊維強化複合材に応じて適宜に設定されるものであり、例えば、60°、45°、30°、−30°、−45°、−60°といった角度で設定される。
【0074】
さらに、その自動積層装置では、前記のような角度(積層方向)で積層されたプリプレグシート片PS’の切断端がシート材SMの側縁と一致するように、プリプレグシートPSは、その幅方向及び長手方向に対しその積層方向がシート材SMに対し為す角度に応じた切断角度(
図4の例では45°)で、切断機構30によって切断される。そのため、切断機構30は、供給ヘッド20内において、プリプレグシートPSの引き出し方向と平行な方向に対し、カッタロール31におけるロール体31aの軸線が前記切断角度を為すように設けられている。
【0075】
その上で、その切断機構30は、プリプレグシートPSの切断動作時において、カッタロール31が前記のように回転駆動機構34によって回転駆動されるが、それに合せ、その回転駆動されるカッタロール31をロール体31aの軸線方向であってプリプレグシートPSの引き出し方向側へ変位(スライド)させる構成となっている。
【0076】
なお、ここで言うプリプレグシートPS(強化繊維材料)の引き出し方向側とは、前述の通り、プリプレグシートPSの長手方向に関し、カッタロール31が全体としてそのプリプレグシートPSの引き出し方向へ移動する側である。具体的には、
図4(b)に基づいて説明すると、カッタロール31におけるロール体31aの軸線方向への変位としては、その図面における上方向及び下方向の2方向への変位が考えられるが、前記上方向へ変位させた場合、カッタロール31は、プリプレグシートPSの長手方向に関しては、その全体の各部がプリプレグシートPSの引き出し方向とは反対の方向(=積層方向)へ移動することとなる。一方で、前記下方向へ変位させた場合には、カッタロール31は、プリプレグシートPSの長手方向に関し、その全体の各部がプリプレグシートPSの引き出し方向へ移動することとなる。従って、この例の場合の前記軸線方向におけるプリプレグシートPSの引き出し方向側は、前記下方向(矢印sで示す方向)となる。
【0077】
そして、そのようにプリプレグシートPSの切断時においてカッタロール31を前記引き出し方向側へスライドさせることにより、カッタロール31がプリプレグシートPSの引き出し方向に対し前記のように角度を為して設けられている場合でも、そのプリプレグシートPSの切断が確実に行われると共に、刃部31bとプリプレグシートPSとの接触に伴うプリプレグシートPSの幅方向の位置ズレが可及的に防止される。
【0078】
より詳しくは、
図4に示すように、本実施例の自動積層装置における供給ヘッド20にいては、切断機構30は、前記のようにカッタロール31におけるロール体31bの軸線が供給ヘッド20の移動方向に対し45°の角度を為すように設けられている。従って、カッタロール31の回転に伴うプリプレグシートPSの切断時(プリプレグシートPSと刃部31bとの接触時)における刃部31bの移動方向は、
図4(b)において矢印rで示すように、プリプレグシートPSの厚さ方向に見て、プリプレグシートPSの引き出し方向に対し45°の角度を為す方向となる。そのため、カッタロール31の回転のみでプリプレグシートPSを切断しようとすると、プリプレグシートPSの引き出し方向(相対的な移動方向)と刃部31bの移動方向とが異なることに起因して切断が完全に行われない切断不良を生じる場合がある。また、前記のように両移動方向が異なる結果として、前記切断時に刃部31bがプリプレグシートPSに対し引き出し方向とは異なる方向へ力を作用させることとなり、プリプレグシートPSの幅方向の位置ズレを発生させる場合がある。
【0079】
それに対し、前記切断時にカッタロール31を前記のように前記引き出し方向側(矢印sの方向)へスライドさせることにより、その前記切断時にプリプレグシートPSと接触する刃部31b上の各点で考えると、その各点は、カッタロール31の回転に伴って矢印rの方向へ変位しつつ、カッタロール31のスライドに伴って矢印sの方向へ変位するため、その両変位の合成により、その各点の変位方向は、矢印rsで示すようにプリプレグシートPSの引き出し方向に対し近付いた方向となる。因みに、本実施例の場合は、前記ロール体31aの積層方向に対し成す角度が45°であるため、その合成された変位の方向は、プリプレグシートPSの引き出し方向に対し一致した方向となる。それにより、前記のようなプリプレグシートPSの切断不良や幅方向の位置ズレが防止される。
【0080】
なお、そのようにカッタロール31を前記軸線方向にスライドさせるための切断機構30の構成について、本実施例では、その一例としての
図3に示す構成が採用されている。その
図3に示すカッタロール31をスライドさせるための切断機構30の構成は、詳しくは以下の通りである。
【0081】
本実施例では、切断機構30において、前述のようにカッタロール31及びアンビルロール32を支持する支持枠33は、角度調整用の駆動モータ38を介して供給ヘッド20に対し支持されている。なお、この角度調整用の駆動モータ38は、前記切断角度(プリプレグシートPSの幅方向(長手方向)に対するカッタロール31におけるロール体31aの軸線が為す角度)を調整するためのものであり、出力軸を鉛直方向下方へ向けるかたちで、ブラケット等(図示略)によって供給ヘッド20の支持フレームにおける両支持板23、23に対し支持されている。
【0082】
その駆動モータ38の出力軸には、ブラケット38aを介し、板状であって板厚方向に見て矩形状のベースプレート38bが、その板厚方向を出力軸の軸線方向に一致させる向きで取り付けられている。すなわち、支持フレームに支持された駆動モータ38は、ブラケット38aを介してベースプレート38bを支持している。なお、そのベースプレート38bは、その板厚方向に見て、板面の中央において駆動モータ38に支持されている。
【0083】
一方、支持枠33には、板状であって板厚方向に見て矩形状の支持用プレート33bが取り付けられている。但し、その支持用プレート33bは、その板厚方向における両板面の一方を支持枠33の上面に当接させると共に、正面及び側方から見てその中心が支持枠33の中心に一致するような配置で、支持枠33に固定されている。また、その支持用プレート33bは、その板面の長辺方向の寸法がベースプレート38bにおける板面の長辺方向の寸法と一致する大きさとなっている。
【0084】
そして、支持用プレート33bは、前記のように駆動モータ38に支持されたベースプレート38bの下面(駆動モータ38側とは反対側の面)に対し、その上面(支持枠33側とは反対側の面)を対向させた状態に配置され、ベースプレート38bとの間に介装された一対のLMガイド37、37により、ベースプレート38bに支持されている。
【0085】
具体的には、ベースプレート38bの下面(駆動モータ38側とは反対側の面)に対しLMガイド37におけるLMレール37aが取り付けられると共に、支持用プレート33bの上面(支持枠33側とは反対側の面)に対しLMガイド37におけるLMブロック37bが取り付けられている。但し、その一対のLMガイド37、37における両LMレール37a、37aは、その延在方向をベースプレート38bの前記長辺方向と一致させた向きで、ベースプレート38bの板面の短辺方向に間隔を空けると共に前記短辺方向の中央に対し対称的な配置で、ベースプレート38bに対し固定されている。また、LMブロック37bは、各LMレール37に対し2つを1組として設けられ、その2組が支持用プレート33bの板面の短辺方向において前記した一対のLMレール37a、37aと同じ間隔で且つ前記短辺方向の中央に対し対称的に配置されると共に、その各組における2つのLMブロック37b、37bが前記長辺方向に間隔を空けて配置されるかたちで、支持用プレート33bに対し固定されている。
【0086】
その構成により、支持用プレート33bは、LMガイド37により、その前記短辺方向における中央がベースプレート38bの前記短辺方向における中央と一致した配置で、前記長辺方向に変位可能に支持された状態となる。そして、その結果として、支持枠33及びその支持枠33に支持されたカッタロール31は、駆動モータ38に支持されたベースプレート38bに対し、一対のLMガイド37、37及び支持用プレート33bを介し、ベースプレート38bの前記長辺方向に変位可能に支持された状態となっている。なお、その支持状態において、カッタロール31におけるロール体31aの軸線方向は、ベースプレート38bの前記長辺方向と一致している。従って、カッタロール31は、その支持状態において、その前記軸線方向に変位可能となっている。
【0087】
その上で、切断機構30は、カッタロール31を前記軸線方向へ変位させるためのスライド機構35を備えている。そのスライド機構35は、駆動モータ35aと、その駆動モータ35aの出力軸の回転を伝達する駆動伝達機構としてのラック・ピニオン機構とを含む構成となっている。なお、前記した支持枠33(カッタロール31)を前記軸線方向に変位可能に支持するためのLMガイド37も、このスライド機構35に含まれる。
【0088】
そのスライド機構35について、より詳しくは、支持枠33に固定された支持用プレート33bにおける前記長辺方向に延在する側面の一方には、ラック・ピニオン機構を構成するためのラック35cが取り付けられている。また、駆動モータ35aは、その出力軸を鉛直方向下方へ向けるかたちで、ベースプレート38bに取り付けられたブラケット35dによって支持されている。すなわち、駆動モータ35aは、ベースプレート38bに対し固定配置されている。そして、その駆動モータ35aの出力軸には、ラック・ピニオン機構を構成するためのピニオン35bが取り付けられている。
【0089】
なお、その駆動モータ35aの上下方向及びベースプレート38bの前記短辺方向における配置は、その出力軸に取り付けられたピニオン35bがラック35cに噛合する位置とされている。また、ベースプレート38bの前記長辺方向における駆動モータ35aの配置は、前記長辺方向におけるベースプレート38bの中央と支持枠33の中央とが一致する初期配置において、ラック35cにおける一端側であってその中央に対するカッタロール31のスライド方向側の端部に対しピニオン35bが噛合する位置とされている。
【0090】
そのスライド機構35の構成によれば、駆動モータ35aが駆動されてピニオン35bが回転駆動されることにより、そのピニオン35bと噛合するラック35cが取り付けられた支持用プレート33b及びその支持用プレート33bが取り付けられた支持枠33が、ベースプレート38bに対し固定配置された駆動モータ35aに対し、ベースプレート38bの前記長辺方向に変位駆動される。その結果として、カッタロール31は、供給ヘッド20における支持フレームに駆動モータ38を介して支持されたベースプレート38に対し、そのロール体31aの軸線方向へ変位駆動される。
【0091】
なお、本実施例の切断機構30においては、受け部材としてのアンビルロール32も、カッタロール31と共に支持枠33に支持されている。従って、前記のように駆動モータ35aが駆動されて支持枠33が変位駆動されることにより、アンビルロール32もカッタロール31と一体的に前記軸線方向へ変位駆動される。
【0092】
因みに、本実施例における切断機構30は、カッタロール31を間欠的に回転駆動してプリプレグシートPSの切断動作を行うものとなっている。より詳しくは、カッタロール31は、切断動作時以外では、
図3(b)に示す位置(待機位置)に刃部31bが位置する状態となっている。但し、その図示の例における刃部31bの待機位置は、ロール体31aの軸線方向に見て、ロール体31aの軸心とアンビルロール32における受けロール32の軸心とを通る直線がロール体31aの周面と交差する2位置のうちの、アンビルロール32側とは反対の側の位置である。そして、回転駆動機構34によるカッタロール31の回転駆動は、予め定められた長さのプリプレグシートPSが原反ロール21から引き出された時点で刃部31bがプリプレグシートPSと接触するようなタイミングで開始されると共に、カッタロール31が1回転して刃部31が再び前記待機位置に位置する状態となった時点で停止される。すなわち、回転駆動機構34においては、そのようなカッタロール31の回転駆動が行われるように、駆動モータ34aが駆動される。なお、その駆動モータ34aの駆動は、駆動制御装置(図示略)によって制御される。
【0093】
その上で、スライド機構35によるカッタロール31の前記軸線方向への変位駆動は、本実施例では、前記したカッタロール31の回転駆動に合せて行われるものとする。すなわち、スライド機構35による前記変位駆動は、カッタロール31の回転駆動が開始されると共に開始され、予め設定された速度でカッタロール31が前記軸線方向へ変位するように行われ、カッタロール31の回転駆動が停止された時点で停止されるものとする。
【0094】
但し、そのスライド機構35による前記変位駆動について、刃部34が前記待機位置へ再び戻る回転駆動機構34による1回転の回転駆動とは異なり、前記変位駆動後においては、ベースプレート38bの前記長辺方向における支持枠33及び支持枠33に支持されたカッタロール31等の位置は、前記初期配置の位置から変位した位置となっている。そのため、スライド機構35においては、次のプリプレグシートPSの切断動作(カッタロール31の回転駆動)が開始される前に、ベースプレート38bの前記長辺方向におけるカッタロール31の位置を前記初期配置の位置へ戻す動作が行われる。なお、前記のようなカッタロール31の前記変位駆動及びカッタロール31を前記初期配置の位置へ戻すためのスライド機構35における駆動モータ35aの駆動は、前記駆動制御装置によって制御される。
【0095】
因みに、回転駆動機構34によるカッタロール31の回転駆動及びスライド機構35によるカッタロール31の前記変位駆動は、前述のように、カッタロール31の回転駆動に伴い、予め定められた長さのプリプレグシートPSが原反ロール21から引き出された時点で刃部31bがプリプレグシートPSと接触するようなタイミングで開始されるが、その開始タイミングは、プリプレグシートPSの長さに関する設定値として前記駆動制御装置に設定されているものとする。その上で、例えば、供給ヘッド20(供給装置)には原反ロール21からプリプレグシートPSが引き出されるのに伴ってその引き出し長さを検出するための検出器(図示略)が設けられており、前記駆動制御装置は、その検出器の検出値及び前記設定値等に基づき、回転駆動機構34における駆動モータ34a及びスライド機構35における駆動モータ35aの駆動の開始を制御する。
【0096】
また、回転駆動機構34による回転駆動におけるカッタロール31の回転速度は、原反ロール21からのプリプレグシートPSの引き出し速度(積層時における供給ヘッド20の移動速度)に応じた速度として前記駆動制御装置に設定される。そして、前記駆動制御装置は、その設定された回転速度でカッタロール31が1回転するように、回転駆動機構34における駆動モータ34aを制御する。
【0097】
また、スライド機構35による前記変位駆動におけるカッタロール31の変位速度は、プリプレグシートPSの前記引き出し速度、前記切断角度等を考慮した上で、例えば試験や解析等によって適当な速度を導き出した上で、その導き出された変位速度が前記駆動制御装置に設定される。そして、前記駆動制御装置は、その設定された変位速度でカッタロール31が前記変位駆動されるように、スライド機構35における駆動モータ35aの駆動を制御する。その上で、前記駆動制御装置は、前記切断動作の完了後、前記変位駆動時における回転量と同じ回転量で駆動モータ35aを逆転駆動する。
【0098】
以上では、本発明に基づく強化繊維材料の供給装置、及びその供給装置における強化繊維材料の切断方法について、その一実施形態(以下、「前記実施例」と言う。)を説明したが、本発明は、前記実施例には限定されず、以下のような他の実施形態(変形例)での実施も可能である。
【0099】
(1)前記実施例では、本発明による供給装置によって供給される強化繊維材料を、強化繊維としての炭素繊維にマトリックス樹脂としての熱硬化性樹脂を含浸させたプリプレグによるシート材(プリプレグシート)としている。しかし、本発明では、その強化繊維材料は、そのような炭素繊維による熱硬化性プリプレグのシート材に限らない。具体的には、その強化繊維材料における強化繊維は、前記実施例における炭素繊維に限らず、例えば、ガラス繊維、アラミド繊維、ポリエチレン繊維等であっても良い。なお、その強化繊維材料における強化繊維の形態は、その強化繊維が一方向に引き揃えられた形態を為すものや、強化繊維を経糸及び緯糸として形成された織物の形態を為すもののいずれであっても良い。
【0100】
また、その強化繊維材料は、例えば、強化繊維の集束性を維持する程度にマトリックス樹脂を添着させた所謂セミプレグによるシート材であっても良い。さらに、その強化繊維材料は、前記マトリックス樹脂として熱可塑性樹脂が用いられた熱可塑性プリプレグ(又はセミプレグ)のシート材であっても良い。因みに、強化繊維材料が熱可塑性のマトリックス樹脂を用いたものである場合、その積層にあたっては、例えば熱溶着が行われる。すなわち、その積層は、被積層材料(シート材等)上に敷置された熱可塑性プリプレグシートに対し熱等を加え、その熱可塑性プリプレグシートを被積層材料に対し溶着することで積層状態が維持されるように行われる。
【0101】
(2)本発明による供給装置が適用される装置について、前記実施例では、送出機構から供給される支持部材(シート材SM)上に強化繊維材料片を積層してシート状の炭素繊維基材を製造する自動積層装置としている。しかし、本発明による供給装置が自動積層装置に適用される場合でも、その自動積層装置は、前記のような支持部材の送出機構、及び巻取機構を備えたものに限らず、テーブル上で強化繊維材料を多層に積層するものであっても良い。
【0102】
その場合、その装置構成は、前記実施例の自動積層装置から送出機構及び巻取機構を省いたものとなる。そして、その自動積層装置においては、テーブルへの貼り付き等の防止のためにテーブル上に載置されたシート材上に、前記前後方向に位置を異ならせて強化繊維材料片を敷置し、さらに、その敷置された下層を成す強化繊維材料片上に、前記前後方向に位置を異ならせて強化繊維材料片を積層するといったかたちで積層が行われる。なお、その自動積層装置の場合、積層される層毎に積層方向(強化繊維材料片が前記前後方向及び前記幅方向に為す角度)を異ならせることが考えられるが、その場合には層毎の積層において、前記切断角度がその積層方向に対応したものとなるように、切断機構の配置角度(カッタロールの軸線が強化繊維材料の引き出し方向に対し成す角度)が変更される。
【0103】
また、本発明による供給装置は、前記実施例のようなテーブル上を移動する供給ヘッドにより強化繊維材料片の積層が行われる形式の自動積層装置を対象としてその積層を行う供給ヘッドに搭載されるものに限らず、例えば特開2011−219269号公報に開示されているような、配置が固定された原反ロールからシート状の強化繊維材料を引き出し、その引き出された強化繊維材料から切り出された強化繊維材料片を、シート状の被積層材上に、その被積層材の長手方向及び幅方向に対し角度を為した状態で積層する自動積層装置にも適用可能である。そして、そのような形式の自動積層装置の場合には、その固定配置された原反ロール(及びその配置で原反ロールを支持、回転駆動する機構)、並びにその原反ロールから引き出された強化繊維材料の経路上に設けられる切断機構を含む部分が、本発明の供給装置に相当する。
【0104】
さらに、本発明による供給装置が適用される装置は、以上のような被積層材上に強化繊維材料片を積層する自動積層装置に限らず、本出願人が先に出願した特願2016−097023号で提案されているような、熱可塑性の強化繊維材料片をテーブル上においてテーブルの長手方向(前記前後方向)に並べるかたちで敷置すると共に、その長手方向において隣接する強化繊維材料片の側縁同士を熱溶着等によって接合して強化繊維基材を製造する装置であっても良い。
【0105】
(3)なお、前記のように強化繊維材料(プリプレグ)が熱可塑性の場合、前記実施例の熱硬化性のプリプレグのように剥離紙は貼着されていないため、供給装置における切断機構による切断は、原反ロールから引き出された強化繊維材料を完全に切断するかたちで行われる。すなわち、本発明による供給装置における切断機構は、前記実施例のように原反ロールから引き出された材料(強化繊維材料+剥離紙)の一部のみ(強化繊維材料のみ)を切断するように構成されたものに限らず、原反ロールから引き出された材料を完全に切断するように構成されたものであっても良い。
【0106】
(4)前記実施例の供給装置における切断機構30では、カッタロール31は、その周面上における1箇所にのみ刃部31bを有し、強化繊維材料の切断動作毎に1回転するように、間欠的に回転駆動されている。しかし、例えば、固定配置された原反ロールから強化繊維材料が引き出される装置に本発明が適用される場合であって、その装置における敷置される強化繊維材料の長さが一種類に固定されているような場合には、切断機構は、カッタロールが連続的に回転駆動されて強化繊維材料を切断するように構成されたものであっても良い。すなわち、本発明による供給装置における切断機構は、カッタロールが間欠的に回転駆動されるものに限らず、カッタロールが連続的に回転駆動されるものであっても良い。なお、カッタロールが連続的に回転駆動される場合には、原反ロールからの強化繊維材料の引き出し速度は、そのカッタロールの回転速度に応じた速度に設定される。
【0107】
また、カッタロールは、前記実施例のように、その周面上の1箇所にのみに刃部が形成されたものに限らず、周面上の複数の箇所に刃部が形成されたもの、すなわち、周面上に複数の刃部を有するように構成されたものであっても良い。なお、カッタロールが間欠駆動される場合において、その回転の制御(開始時期、回転量等)を一様とする上で、その複数の刃部の周方向における間隔は、等間隔(例えば、刃部が2つである場合には180°間隔、刃部が3つである場合には120°間隔、等)である方が好ましい。但し、回転駆動の制御で対応できる場合には、その間隔は等間隔でなくても良い。
【0108】
(5)前記実施例の供給装置における切断機構30では、カッタロール31をその軸線方向へ変位させるスライド機構35として、駆動モータ35aを駆動源とするラック・ピニオン機構が採用されている。しかし、本発明による供給装置において、その切断機構に備えられるスライド機構は、前記実施例のような構成に限らず、カッタロールを支持する支持体をカッタロールの軸線方向に変位させることが可能な機構であれば、例えばボールねじ機構等、他のどのような構成であっても良い。
【0109】
また、前記実施例のスライド機構35は、カッタロール31及び受け部材としてのアンビルロール32を支持する支持体(支持枠33)をカッタロール31の軸線方向に変位させるように構成されており、その結果として、カッタロール31と共に受け部材も前記軸線方向に変位させるものとなっている。但し、本発明においては、スライド機構は、カッタロール及び受け部材のうちのカッタロールのみを前記軸線方向に変位させるものであっても良い。言い換えれば、本発明による供給装置における切断機構は、カッタロールを支持する支持体と受け部材を支持する支持体とが独立した構成となっており、スライド機構がカッタロールを支持する支持体を前記軸線方向に変位させるように構成されているものであっても良い。
【0110】
さらに、本発明におけるスライド機構について、前記実施例では、スライド機構35は、強化繊維材料(プリプレグシートPS)を切断するためにカッタロール31が1回転する期間に亘ってカッタロール31が前記軸線方向に変位するように、その駆動が制御されている。しかし、本発明においては、カッタロールの前記変位は、そのような期間全体に亘って行われる必要は必ずしも無く、少なくとも強化繊維材料の実際の切断時、すなわち、カッタロールの刃部が強化繊維材料に接触を開始した時点から離間するまでの間の期間において少なくとも行われれば良い。従って、本発明におけるスライド機構の駆動の制御は、カッタロールが1回の切断動作のための回転を開始した時点よりも後であってその回転に伴って刃部が強化繊維材料に最初に接触する時点以前に、カッタロールが前記変位を開始するように行われても良い。また、そのスライド機構の駆動の制御は、1回の切断動作のためのカッタロールの回転が停止されるよりも前の時点であってその回転に伴って刃部が強化繊維材料から離間する時点以降に、カッタロールが前記変位を停止するように行われても良い。
【0111】
(6)本発明による供給装置のその他の構成について、前記実施例の供給装置における切断機構30では、カッタロール31は、支持枠33等を介して角度調整用の駆動モータ38によって供給ヘッド20における支持フレームに支持されている。すなわち、前記実施例では、切断機構は、カッタロールによる強化繊維材料の前記切断角度が調整可能な構成となっている。しかし、本発明の供給装置が適用される自動積層装置、あるいは前記した熱可塑性の強化繊維材料による強化繊維基材を製造する装置が、例えば、その強化繊維材料が敷置されるテーブルの長手方向(前記前後方向)及び幅方向(前記幅方向)に対し特定の角度で強化繊維材料の敷置が行われるように用いられるものである場合には、その供給装置において、切断機構における前記切断角度を調整する機構は省略可能である。
【0112】
また、前記実施例の供給装置における切断機構30では、受け部材としてアンビルロール32が採用されると共に、カッタロール31を回転駆動する回転駆動機構34がそのカッタロール31の回転駆動に伴ってアンビルロール32も回転駆動される構成となっている。しかし、本発明による供給装置における切断機構において、受け部材としてアンビルロールが採用される場合であっても、その切断機構における回転駆動機構は、アンビルロールを回転駆動するように構成されたものに限らず、カッタロールのみを回転駆動するように構成されたものであっても良い。そして、その切断機構は、その受け部材としてのアンビルロールが回転不能に支持された構成とされたものであっても良い。
【0113】
また、前記のように、本発明による供給装置の切断機構は、カッタロールと受け部材とが同じ支持体で支持されている構成には限られない。すなわち、その切断機構は、カッタロールを支持する支持体と受け部材を支持する支持体とが独立した構成であっても良い。従って、受け部材は、例えば前記実施例の供給ヘッド20の支持フレームにおける支持板23、23に支持されて設けられたものであっても良い。さらに、その切断機構における受け部材は、前記実施例において採用されているアンビルロールのようなロール形状の部材に限らず、板状の部材や断面が多角形状の部材であっても良い。
【0114】
また、本発明は、以上で説明したいずれの実施形態にも限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて種々に変更することが可能である。