特許第6681807号(P6681807)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6681807
(24)【登録日】2020年3月26日
(45)【発行日】2020年4月15日
(54)【発明の名称】籾殻処理装置および籾殻処理方法
(51)【国際特許分類】
   C10B 53/02 20060101AFI20200406BHJP
   C10B 49/08 20060101ALI20200406BHJP
   B09B 3/00 20060101ALI20200406BHJP
【FI】
   C10B53/02ZAB
   C10B49/08
   B09B3/00 303Z
【請求項の数】4
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-172632(P2016-172632)
(22)【出願日】2016年9月5日
(65)【公開番号】特開2018-39861(P2018-39861A)
(43)【公開日】2018年3月15日
【審査請求日】2019年4月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000192590
【氏名又は名称】株式会社神鋼環境ソリューション
(74)【代理人】
【識別番号】100141173
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 啓一
(72)【発明者】
【氏名】成澤 道則
【審査官】 森 健一
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭52−98003(JP,A)
【文献】 実開昭52−1849(JP,U)
【文献】 特開昭52−902(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10B 53/02
B09B 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
籾殻を粉砕処理する粉砕装置と、
前記粉砕装置で生成する籾殻粉砕物を部分燃焼させると共に熱分解処理するバーナと、
前記バーナの出口に接続されて、該出口より排出される燃焼ガス、および、未燃の固定炭素を含んだ炭素含有灰を冷却する冷却装置と、
前記炭素含有灰を前記燃焼ガスより分離して回収する灰回収装置と、を備えること
を特徴とする籾殻処理装置。
【請求項2】
前記冷却装置は、前記バーナの出口より排出される前記燃焼ガスおよび前記炭素含有灰を800℃以下に冷却する機能を備える
請求項1記載の籾殻処理装置。
【請求項3】
前記粉砕装置は、平均粒径が100μm〜1500μmとなる前記籾殻粉砕物を生成する機能を備える
請求項1または2記載の籾殻処理装置。
【請求項4】
籾殻を粉砕装置で粉砕処理して籾殻粉砕物を生成する工程と、
前記籾殻粉砕物を部分燃焼させると共に熱分解処理して燃焼ガスと、未燃の固定炭素を含んだ炭素含有灰とを生成する工程と、
前記燃焼ガスおよび炭素含有灰を冷却装置で冷却する工程と、
前記炭素含有灰を前記燃焼ガスより分離して回収する工程と、を行うこと
を特徴とする籾殻処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、籾殻を原料として燻炭などとして使用可能な炭素含有灰を製造する処理を行う籾殻処理装置および籾殻処理方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
籾殻は、腐りにくいという特性を有している。そのため、籾殻は、堆肥などとして土壌に還元することが難しいことから、多くは焼却処理されている。
【0003】
籾殻の有効利用を図るための手法の1つとしては、籾殻を炭化処理することにより燻炭を製造し、この燻炭を土壌改良剤などとして利用することが行われている。
【0004】
この種の燻炭を製造する装置としては、たとえば、円筒状の炉本体と、炉本体の一端側に設けられた籾殻供給部および着火バーナと、炉本体の他端側に設けられた燃焼排ガスの排気部と、炉本体の内周壁に設けられて、炉本体内に空気の旋回流を形成する複数の空気穴と、炉本体の下部に設けられた炭化物コンベヤとを備えた構成の籾殻炭化装置が従来提案されている(たとえば、特許文献1参照)。
【0005】
この籾殻炭化装置によれば、籾殻は、籾殻供給部より炉本体の一端側に供給して、着火バーナにより着火させ、各空気穴より吹き込まれる空気によって炉本体内に形成される旋回流中で燃焼させて炭化させる。この燃焼により生成した燻炭は、自重により炉本体の下部へ落下させて、炭化物コンベヤによって回収するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2011−84629号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、籾殻は、反応性の高い二酸化ケイ素(SiO)を含んでおり、この二酸化ケイ素が籾殻の燃焼時に800℃を超えるような高温の燃焼場に曝される時間が長くなると、二酸化ケイ素のクリストバライトへの結晶化が進行する。
【0008】
クリストバライトは、発がん性が示唆されている物質である。そのため、籾殻を燃焼させて処理する際には、クリストバライトの生成はできるだけ抑制することが望まれる。
【0009】
しかし、籾殻は粒径が数ミリメートル程度あり、特許文献1に示された装置は、炉本体内に籾殻をそのまま供給して燃焼させるようにしてある。そのため、特許文献1に示された装置は、籾殻を着火させるための安定した着火源として、火炎が形成される1000℃程度の高温場が必要とされる。また、籾殻が着火してから籾殻全体が炭化するまでに時間を要する。しかも、炉本体内で移動しながら燃焼して炭化した籾殻のくん炭は、炉本体内の底部に落下して炭化物コンベヤで受けられるが、くん炭が該炭化物コンベヤで炉本体の外部まで搬送される間は、炉本体内の高温の燃焼場の熱に長く曝されることになる。更に、くん炭は、籾殻がそのまま炭化された粒径を備えているため、炉本体から取り出されたくん炭が1000℃程度から800℃以下までに温度低下するのに時間を要する。そのため、特許文献1に示された装置では、籾殻中に含まれている二酸化ケイ素からクリストバライトが生成されやすくなる。
【0010】
そこで、本発明は、籾殻を原料として未燃の炭素を含有した炭素含有灰を製造することができると共に、籾殻に含まれる二酸化ケイ素が高温の燃焼場に曝される時間の短縮化を図ることができて、クリストバライトの生成の防止化を図ることができる籾殻処理装置および籾殻処理方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、前記課題を解決するために、籾殻を粉砕処理する粉砕装置と、前記粉砕装置で生成する籾殻粉砕物を部分燃焼させると共に熱分解処理するバーナと、前記バーナの出口に接続されて、該出口より排出される燃焼ガス、および、未燃の固定炭素を含んだ炭素含有灰を冷却する冷却装置と、前記炭素含有灰を前記燃焼ガスより分離して回収する灰回収装置と、を備える構成を有する籾殻処理装置とする。
【0012】
前記冷却装置は、前記バーナの出口より排出される前記燃焼ガスおよび前記炭素含有灰を800℃以下に冷却する機能を備える構成としてある。
【0013】
前記粉砕装置は、平均粒径が100μm〜1500μmとなる前記籾殻粉砕物を生成する機能を備える構成としてある。
【0014】
また、籾殻を粉砕装置で粉砕処理して籾殻粉砕物を生成する工程と、前記籾殻粉砕物を部分燃焼させると共に熱分解処理して燃焼ガスと、未燃の固定炭素を含んだ炭素含有灰とを生成する工程と、前記燃焼ガスおよび炭素含有灰を冷却装置で冷却する工程と、前記炭素含有灰を前記燃焼ガスより分離して回収する工程と、を行う籾殻処理方法とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明の籾殻処理装置および籾殻処理方法によれば、籾殻を原料として未燃の炭素を含有した炭素含有灰を製造することができると共に、籾殻に含まれる二酸化ケイ素が高温の燃焼場に曝される時間の短縮化を図ることができて、クリストバライトの生成の防止化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】籾殻処理装置の第1実施形態を示す図である。
図2】籾殻処理装置におけるバーナと灰冷却装置と灰回収装置の構成例を示す図である。
図3】籾殻処理装置の第2実施形態として、バーナと灰冷却装置の別の構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の籾殻処理装置および籾殻処理方法について、図面を参照して説明する。
【0018】
[第1実施形態]
図1は籾殻処理装置の第1実施形態を示す概要図である。図2は籾殻処理装置におけるバーナと灰冷却装置と灰回収装置の構成の一例を示す概略切断側面図である。
【0019】
本実施形態の籾殻処理装置は、図1に示すように、籾殻1が供給される粉砕装置2と、バーナ3と、冷却装置4と、灰回収装置5とを備えた構成とされている。粉砕装置2は、籾殻1を粉砕処理して籾殻粉砕物1aを生成する機能を備えるものである。バーナ3は、籾殻粉砕物1aを部分燃焼させて、燃焼ガス6と、未燃の固定炭素を含む炭素含有灰7とを生成する機能を備えるものである。冷却装置4は、バーナ3で生成された炭素含有灰7を、速やかに800℃以下の温度まで冷却する機能を備えるものである。灰回収装置5は、冷却装置4で冷却処理された後の炭素含有灰7を、燃焼ガス6より分離して回収する機能を備えるものである。
【0020】
粉砕装置2は、籾殻1が供給されると、籾殻1を粉砕処理して籾殻粉砕物1aを生成する。この際、籾殻粉砕物1aは、平均粒径が100μm〜1500μmであることが好ましく、平均粒径が200μm〜1000μmであることがより好ましく、平均粒径が350μm〜600μmであることが更に好ましい。
【0021】
このような平均粒径が好ましい理由は、籾殻粉砕物1aの燃焼をバーナ3で行うときに、バーナ3の燃焼室8に付着物が発生することを抑制すること、籾殻粉砕物1aより生成させる炭素含有灰7の収量の増加を図ること、および、籾殻粉砕物1aの生産性を高めて生成時のコストの低減を図ることを目的としている。
【0022】
すなわち、籾殻粉砕物1aの平均粒径が100μm未満の場合は、籾殻粉砕物1aがバーナ3に供給されて燃焼されるときに、着火した後、粒子全体の燃焼が急速に進行する小粒径の粒子の割合が多いものとなる。
【0023】
そのため、バーナ3の燃焼室8では、小粒径の籾殻粉砕物1aの燃焼が過度に進行しやすくなり、籾殻1に含まれるカリウムなどの低融点物質が溶融して、燃焼室8の内面にクリンカ状の付着物として付着しやすくなる。このようにして燃焼室8に生じた付着物は、燃焼室8に留まって籾殻粉砕物1aの高温の燃焼場に曝される時間が長くなるため、この付着物においてクリストバライトの生成が進行する虞が生じてしまう。
【0024】
更に、籾殻粉砕物1aにて、前記したように粒子全体の燃焼が急速に進行する小粒径の粒子の割合が多いということは、バーナ3の燃焼室8で燃え尽きてしまう粒子の割合が多いことになるので、燃焼室8の出口9より排出される固形分では、残留する未燃の固定炭素の量が少なくなることにつながる。また、籾殻粉砕物1aは、平均粒径を小さくすればするほど、生成に要する工程と時間が増加し、籾殻粉砕物1aの生成コストの上昇を招くことになる。
【0025】
したがって、籾殻粉砕物1aは、平均粒径が100μm未満であることは好ましくない。
【0026】
一方、籾殻粉砕物1aは、平均粒径が1500μmを超えることが好ましくないのは、以下の理由による。
【0027】
後述するように、バーナ3の燃焼室8では、籾殻粉砕物1aの部分燃焼の燃焼熱を用いて、籾殻粉砕物1aは可燃性ガスと、固定炭素および灰分を含む固形分とに熱分解される。このとき、籾殻粉砕物1aの平均粒径が1500μmを超えている場合は、前記熱分解に時間を要する大粒径の粒子の割合が多いものとなる。そのため、この場合は、籾殻粉砕物1aにおいて、粒子全体の熱分解が十分に進行しないうちに燃焼室8を通過して冷却装置4に到達する粒子が多くなり、この熱分解が不十分な籾殻粉砕物1aが、灰回収装置5で回収される炭素含有灰7に残るようになるため、有効な炭素含有灰7の収量の減少につながってしまう。
【0028】
また、本実施形態では、炭素含有灰7は、冷却装置4で堆積せずに、燃焼ガス6の流れに乗って灰回収装置5まで移動することが望まれるため、籾殻粉砕物1aから生成する炭素含有灰7は、燃焼ガス6の流れの中に浮遊できるような粒径および見かけ比重であることが望まれる。この点からも、籾殻粉砕物1aは、平均粒径が1500μmを超えることは好ましくない。
【0029】
なお、粉砕装置2は、籾殻1を粉砕して前記所定の平均粒径の籾殻粉砕物1aを生成することができるようにしてあれば、粉砕機構として、既存の各種ミルに採用されているような任意の粉砕機構を備えるものを採用してよいことは勿論である。更に、粉砕装置2は、粉砕機構に加えて、籾殻粉砕物1aの分級手段を備えるようにしてもよいことは勿論である。
【0030】
粉砕装置2で生成した籾殻粉砕物1aは、バーナ3へ直接供給するようにしてもよいが、図1に示すように、粉砕装置2の下流側に備えた籾殻粉砕物貯留部10に一旦貯留し、籾殻粉砕物貯留部10からバーナ3へ籾殻粉砕物1aを供給する構成としてもよい。この籾殻粉砕物貯留部10を備えた構成によれば、粉砕装置2による籾殻粉砕物1aの生成量の変化に関わらず、たとえば、粉砕装置2がバッチ処理形式ものであっても、バーナ3への籾殻粉砕物1aの定量的な供給を行うことができる。
【0031】
バーナ3は、たとえば、図2に示すように、内部に円筒状の燃焼室8を備えている。燃焼室8の軸心方向の一端側(図2では左端側)は端壁8aで閉塞され、軸心方向の他端側(図2では右端側)は開放されて出口9とされている。
【0032】
更に、バーナ3は、籾殻粉砕物1aを燃焼室8に供給する供給管11と、燃焼室8に空気12を供給する空気供給管13と、図示しない点火バーナなどの点火手段とを備えた構成とされている。
【0033】
供給管11の上流側には、籾殻粉砕物貯留部10(図1参照)が搬送ライン14を介して接続されている。搬送ライン14では、籾殻粉砕物貯留部10より切り出される籾殻粉砕物1aを、空気等の搬送気体を用いて空気輸送するようにすればよい。なお、籾殻粉砕物貯留部10を備えない構成の場合は、供給管11の上流側に、粉砕装置2が搬送ライン14を介して接続された構成とすればよい。
【0034】
これにより、バーナ3の燃焼室8には、供給管11から、籾殻粉砕物1aが搬送気体と共に吹き込まれて供給される。
【0035】
空気供給管13は、燃焼室8の周壁における端壁8a寄り位置に、燃焼室8の内径と同様か、または、その内径よりも小さい円の接線方向に沿う配置で設けられていることが好ましい。更に、このように配置された空気供給管13は、図示しないが、燃焼室8の周壁における周方向の複数個所に設けられた構成としてもよい。この構成によれば、空気供給管13より燃焼室8内に空気12を供給すると、燃焼室8内に空気12による旋回流を形成することができる。この場合、供給管11は、空気12の旋回流の内側に籾殻粉砕物1aを供給可能な配置とすることが好ましい。
【0036】
空気供給管13の上流側には、送風機15が空気ライン16を介して接続されている。空気ライン16には、空気12の供給量を調整する流量調整弁17が設けられている。
【0037】
空気供給管13から燃焼室8への単位時間あたりの空気12の供給量は、同じ単位時間で供給管11より燃焼室8へ供給される籾殻粉砕物1aに含まれる揮発分の燃焼に必要とされる酸素を含む空気量と同等か、それよりも多い空気量とするが、籾殻粉砕物1aの粒度に応じて燃焼が維持され、且つ製造される炭素含有灰7の性状に合わせて適切に調整される。
【0038】
これにより、バーナ3では、燃焼室8にて、供給管11より供給される籾殻粉砕物1aを、空気供給管13より供給される空気12と混合すると共に、前記点火手段で点火させることができる。
【0039】
籾殻粉砕物1aは、空気12と混合された状態で点火されると、粒径の小さい粒子ほど速やかに燃焼し、その燃焼熱により、より大きな粒径の粒子では、揮発分が可燃性ガスとなり、それに伴って固定炭素および灰分を含む固形分が生成する熱分解が進行する。
【0040】
このように可燃性ガスと固形分が生成すると、可燃性ガスが主に燃焼することで火炎が発生する。一方、この可燃性ガスの燃焼により空気12の酸素が消費されるため、固形分中の固定炭素は、燃焼の進行が抑制される。また、火炎は、冷却装置4へ導入されると速やかに冷却されるため、籾殻粉砕物1aの熱分解反応が進行する滞留時間が短く、このことによっても固定炭素の燃焼の進行が抑制される。
【0041】
したがって、バーナ3の出口9からは、前記可燃性ガスが主に燃焼されることで生じた燃焼ガス6と、未燃の固定炭素を含む炭素含有灰7とが排出されるようになる。
【0042】
なお、バーナ3は、定常運転時に、籾殻粉砕物1aの熱分解により生じた固定炭素の燃焼室8内に留まる時間、すなわち、燃焼室8内で籾殻粉砕物1aの燃焼部の熱に曝される時間が、長くとも数秒、より好ましくは1秒以下となるように、燃焼室8の容積や軸心方向の長さが設定されている。
【0043】
本実施形態の冷却装置4は、バーナ3の出口9より排出される炭素含有灰7を、燃焼ガス6と一緒に受け入れて、冷却媒体としての水18との熱交換により、燃焼ガス6ごと炭素含有灰7の温度を800℃以下の温度まで冷却する煙管ボイラ型式の熱交換器としてある。
【0044】
そのため、冷却装置4は、図2に示すように、水18が貯留される缶体19と、缶体19内に配置された燃焼ガス導入部20、複数の煙管21、ガス集合部22とを備えた構成とされている。なお、図2では、図示する便宜上、水18にドットのハッチングが付してある。
【0045】
缶体19は、たとえば、上下に延びる円筒形状とされ、燃焼ガス導入部20は缶体19の下部に配置され、ガス集合部22は缶体19の上部に配置され、複数の煙管21は、燃焼ガス導入部20とガス集合部22との間に配置された構成としてある。
【0046】
燃焼ガス導入部20は、天井壁部20aと底壁部20bと側壁部20cとを備えて、内部に空間部が形成された構成とされている。
【0047】
燃焼ガス導入部20は、缶体19の内径寸法よりも小径で中空の円筒形状とされている。天井壁部20aは、側壁部20cの外周面より外方へ張り出していて、天井壁部20aの外周面が缶体19の側壁の内面と接続されている。天井壁部20aの張り出している外周縁部には、円周方向の複数個所に孔20dが設けられており、孔20dを通して天井壁部20aの上下方向に水18が通過可能となっている。したがって、燃焼ガス導入部20は、天井壁部20aと底壁部20bと側壁部20cの外面が水18に接して冷却される構造となっている。
【0048】
側壁部20cの周方向の1個所と、その外周側に位置する缶体19の側壁との間には、横向きの筒状部材23が設けられている。缶体19の中心寄りに位置する筒状部材23の一端側(図2では右端側)は、側壁部20cに、燃焼ガス導入部20の内部空間と連通するように取り付けられている。筒状部材23の他端側(図2では左端側)は、缶体19の側壁に貫通するように取り付けられている。
【0049】
筒状部材23には、缶体19の外側からバーナ3の出口9側が挿入して取り付けられている。これにより、冷却装置4は、バーナ3の出口9から排出される燃焼ガス6と炭素含有灰7を、燃焼ガス導入部20に導入することができる。
【0050】
複数の煙管21は、燃焼ガス導入部20とガス集合部22との間に、上下方向に延びる姿勢で平行に配置されている。各煙管21の下端側は、燃焼ガス導入部20の内部空間と連通する状態で、天井壁部20aに取り付けられている。これにより、天井壁部20aが各煙管21の下端側の管寄せとなり、燃焼ガス導入部20内の燃焼ガス6とそれに搬送される炭素含有灰7は、各煙管21内に分散して流入する。
【0051】
ガス集合部22は、天井壁部22aと底壁部22bと側壁部22cとを備えて、内部に空間部が形成された構成とされている。
【0052】
ガス集合部22は、缶体19の内径寸法よりも小径の円筒形状とされている。ガス集合部22の底壁部22bは、側壁部22cの外周面より外方へ張り出していて、底壁部22bの外周面が缶体19の側壁の内面と接続されている。底壁部22bの張り出している外周縁部には、円周方向の複数個所に孔22dが設けられており、孔22dを通して底壁部22bの上下方向に水18が通過可能となっている。
【0053】
各煙管21の上端側は、ガス集合部22の内部空間と連通する状態で、ガス集合部22の底壁部22bに取り付けられている。これにより、底壁部22bが各煙管21の上端側の管寄せとなり、各煙管21内を流通した燃焼ガス6および炭素含有灰7は、その後、ガス集合部22に入り集合する。
【0054】
側壁部22cの周方向の1個所には、その外周側で缶体19の側壁に内外方向に貫通するように取り付けられたガス排出ダクト24の一端側(図1では左端側)が、ガス集合部22の内部空間と連通するように取り付けられている。これにより、ガス集合部22に集合した燃焼ガス6および炭素含有灰7は、ガス集合部22からガス排出ダクト24を通して缶体19の外部へ排出することができる。
【0055】
ところで、冷却装置4では、燃焼ガス6および炭素含有灰7との熱交換により、缶体19内の水18が昇温する。このため、冷却装置4は、図示しないが、缶体19と、外部の熱の需要先との間で水18を循環させる循環ラインを備えて、缶体19内の昇温した水18の熱を、熱の需要先へ供給できるようにしてある。この熱の需要先としては、たとえば、農業用ハウスの暖房用熱源があるが、昇温した水18の熱を利用する設備や機器であれば、暖房用熱源に限られるものではない。また、冷却装置4で昇温する水18は、空冷式や水冷式の放熱器に循環供給して放熱させるようにしてもよい。
【0056】
なお、冷却装置4は、燃焼ガス導入部20の内部の温度を常時800℃以下に冷却できるように、缶体19内の水18の容量、および、外部の熱の需要先への熱の供給量や放熱器での放熱量が設定されている。
【0057】
ガス流通方向下流側となるガス排出ダクト24の他端側(図1では右端側)には、灰回収装置5が接続されている。本実施形態では、灰回収装置5は、たとえば、サイクロン25とされている。
【0058】
サイクロン25は、上部が円筒形状とされ、下部が下方へ向けて縮径する円錐筒形状とされた外筒25aと、外筒25aの上端側を閉塞する天井壁25bと、天井壁25bの中央部を貫通させて上方から外筒25aの中心部に同心状に挿入配置された内筒25cとを備えた構成とされている。サイクロン25の外筒25aの下端側には、炭素含有灰7を捕集する捕集ボックス26が設けられている。これにより、ガス排出ダクト24を通して排出される燃焼ガス6および炭素含有灰7は、灰回収装置5に導かれると、サイクロン25内で燃焼ガス6中から固体粒子である炭素含有灰7が分離される。炭素含有灰7は、捕集ボックス26に捕集されるので、捕集ボックス26から回収することができる。燃焼ガス6は、図示しない処理部に送って適宜処理するようにすればよい。
【0059】
灰回収装置5としてのサイクロン25の外筒25aおよび天井壁25bの外側には、外筒25aにおけるガス排出ダクト24の接続部を除く領域に、ジャケット27が設けられている。サイクロン25の内筒25cの外側と、捕集ボックス26の外側には、それぞれジャケット28とジャケット29が設けられている。ジャケット29は、ジャケット27に直接連通する構成としてもよく、ジャケット29とジャケット27とを独立させ、図示しない循環ラインで連通させる構成としてもよい。図2では、ジャケット29はジャケット27に直接連通させた構成を示している。
【0060】
また、ガス排出ダクト24における缶体19の外方へ突出している部分の外側には、ジャケット30が設けられている。
【0061】
ジャケット29の底面部には、冷却用の水18の入口29aが設けられている。ジャケット27の上端側に設けられた出口27aは、ジャケット28の入口28aに、接続ライン31を介して接続されている。ジャケット28の出口28bは、ジャケット30の入口30aに接続ライン32を介して接続されている。ジャケット30の出口30bは、図示しない熱利用設備に接続されている。
【0062】
なお、灰回収装置5は、燃焼ガス6中から炭素含有灰7を分離して回収することができる機能を備えていれば、バグフィルタや、その他の既存の集塵装置など、サイクロン以外の任意の形式の灰回収装置5を採用してもよいことは勿論である。
【0063】
図2において、33は缶体19内への給水手段である。また、冷却装置4は、図示しないが、各部の温度変化に伴う寸法の変化を吸収して過大な応力集中が生じないようにするための手段を適宜備えている。
【0064】
以上の構成としてある本実施形態の籾殻処理装置を使用して籾殻処理方法を実施する場合は、まず、籾殻1を粉砕装置2へ供給する。粉砕装置2では、籾殻1を粉砕処理して前記所定の平均粒径の籾殻粉砕物1aとする。粉砕装置2で生成した籾殻粉砕物1aは、籾殻粉砕物貯留部10に一旦貯留する。
【0065】
次に、籾殻粉砕物1aは、搬送ライン14を経て供給管11からバーナ3の燃焼室8へ供給し、空気供給管13から供給される空気12により部分燃焼させるとともに、その燃焼熱を利用して籾殻粉砕物1aを熱分解処理して、可燃性ガスと、固定炭素および灰分を含んだ固形分とに熱分解する。この熱分解により可燃性ガスと固形分が生成すると、主に可燃性ガスが燃焼して火炎が発生するため、その燃焼熱が順次供給される籾殻粉砕物1aの熱分解処理用の熱源として利用される。よって、この可燃性ガスの燃焼による火炎を保炎できる場合は、バーナ3における点火手段を休止させるようにしてもよい。
【0066】
一方、固形分は、固定炭素が未燃状態で残留した炭素含有灰7となる。この際、炭素含有灰7では、籾殻1に含まれる灰分のうち、カリウムなどの低融点物質が局部的に溶融して、固定炭素を包み込むようになる。
【0067】
バーナ3にて主に可燃性ガスの燃焼により生じた燃焼ガス6と、炭素含有灰7は、燃焼室8の出口9から排出されると、直ちに冷却装置4の燃焼ガス導入部20に導かれるため、速やかに800℃以下の温度まで冷却される。これにより、炭素含有灰7では、灰分として含まれている二酸化ケイ素のクリストバライトへの結晶化が防止される。
【0068】
前記のように燃焼ガス導入部20で温度低下した炭素含有灰7は、同様に温度低下した燃焼ガス6の流れにより搬送されて、各煙管21を通過してからガス集合部22に導かれる。このとき、炭素含有灰7および燃焼ガス6は、各煙管21とガス集合部22の外側に存在している水18と熱交換することで更に冷却される。
【0069】
冷却装置4にて冷却された後、ガス排出ダクト24を通して排出される燃焼ガス6と、この燃焼ガス6の流れにより搬送される炭素含有灰7は、その後、灰回収装置5であるサイクロン25に導かれる。この際、燃焼ガス6と炭素含有灰7は、ガス排出ダクト24を通過するとき、ジャケット30内を流れる水18と熱交換することで冷却される。
【0070】
サイクロン25では、炭素含有灰7を燃焼ガス6から分離する作用が行われる。燃焼ガス6中から分離された炭素含有灰7は、捕集ボックス26に捕集される。この間、サイクロン25内における燃焼ガス6と炭素含有灰7は、捕集ボックス26の外側のジャケット29から、サイクロン25の外筒25aおよび天井壁25bの外側のジャケット27、サイクロン25の内筒25cの外側のジャケット28を流れる水18と熱交換することで更に冷却される。捕集ボックス26に捕集されて堆積された炭素含有灰7は、捕集ボックス26の外側のジャケット29を流れる水18と熱交換することで冷却されて回収される。
【0071】
これにより、本実施形態の籾殻処理装置では、籾殻1を原料として、炭素含有灰7を製造することができる。
【0072】
このように、本実施形態の籾殻処理装置および籾殻処理方法によれば、籾殻1を予め粉砕処理して籾殻1よりも粒径の小さい籾殻粉砕物1aとしてからバーナ3で熱分解処理を行うようにしてあるので、籾殻粉砕物1aの熱分解に要する時間を、籾殻1をそのまま炭化処理する場合に比して短縮することができる。
【0073】
更に、バーナ3では、燃焼室8にクリンカ状の付着物が生じること防止すると共に、籾殻粉砕物1aの熱分解処理によって生じる炭素含有灰7は、燃焼室8に留まる時間の短縮化を図ることができる。更に、炭素含有灰7は、燃焼室8の出口9から出た時点で、冷却装置4にて速やかに800℃以下にすることができる。
【0074】
したがって、本実施形態の籾殻処理装置および籾殻処理方法は、籾殻1に含まれる二酸化ケイ素について、燃焼室8における籾殻粉砕物1aの燃焼部の熱に曝される時間の短縮化を図ることができるため、二酸化ケイ素の結晶化によるクリストバライトの生成の防止化を図ることができる。したがって、製造される炭素含有灰7は、クリストバライトを含まないものとすることができる。
【0075】
この炭素含有灰7は、燻炭と同様に、土壌に混ぜることで土壌の保水性を高めたり、土壌中の菌を増やしたりするための土壌改良材として使用することができる。また、籾殻1から製造した炭素含有灰7を土壌に戻すことで、炭素を土壌中に固定化することができる。
【0076】
更に、炭素含有灰7は、固定炭素が含まれた黒色の灰であるため、融雪剤としても利用することができる。
【0077】
本実施形態の籾殻処理装置および籾殻処理方法では、籾殻1を所定の平均粒径の籾殻粉砕物1aとしてから熱分解処理しているので、製造される炭素含有灰7は粒度が整ったものとすることができる。
【0078】
また、本実施形態の籾殻処理装置および籾殻処理方法では、籾殻粉砕物1aを部分燃焼させて炭素含有灰7を製造しているので、従来多く行われている籾殻を単に焼却処理する場合に比して、二酸化炭素排出量を低減することができる。
【0079】
[第2実施形態]
図3は籾殻処理装置の第2実施形態として、バーナと冷却装置の別の構成例を示す概略切断側面図である。
【0080】
なお、図3において、第1実施形態と同一のものには同一符号を付してその説明を省略する。
【0081】
本実施形態の籾殻処理装置は、第1実施形態と同様の構成において、冷却装置4を煙管ボイラ型式の熱交換器とする構成に代えて、冷却ジャケット34を有する形式の冷却装置4aを備える構成としたものである。
【0082】
冷却装置4aは、一軸方向に延びる筒状として、軸心方向の一端側を入口36とし、他端側を出口37とした燃焼ガス導入部35と、燃焼ガス導入部35の外周に設けた冷却ジャケット34とを備える構成とされている。
【0083】
冷却装置4aは、燃焼ガス導入部35の内底部における炭素含有灰7の堆積防止を図るために、図3に示すように入口36側よりも出口37側の方が低くなるように傾斜させた姿勢とすることが好ましい。
【0084】
バーナ3は、第1実施形態と同様の構成を備え、冷却装置4aの傾斜に応じた傾斜姿勢で、出口9が燃焼ガス導入部35の入口36に接続されている。これにより、冷却装置4aは、バーナ3の出口9から排出される燃焼ガス6と炭素含有灰7を、燃焼ガス導入部35に導入することができる。
【0085】
燃焼ガス導入部35の出口37には、第1実施形態と同様の灰回収装置5が接続されている。
【0086】
冷却ジャケット34には、冷却媒体として、たとえば水18が満たされている。なお、図3では、図示する便宜上、水18にドットのハッチングが付してある。
【0087】
更に、冷却ジャケット34には、図示しないが、外部の熱の需要先や放熱器との間で水18を循環させる循環ラインが接続されている。これにより、本実施形態では、冷却ジャケット34を通過する間に燃焼ガス導入部35内の燃焼ガス6と炭素含有灰7の冷却に供されて昇温する水18の熱を、外部の熱の需要先へ供給したり、放熱器で放熱させたりすることができるようにしてある。
【0088】
なお、冷却ジャケット34は、燃焼ガス導入部35の内部の温度を常時800℃以下に冷却できるように、水18の容量、および、外部の熱の需要先への熱の供給量や放熱器での放熱量が設定されている。
【0089】
以上の構成としてある本実施形態の籾殻処理装置は、第1実施形態と同様に使用して同様の効果を得ることができる。
【0090】
なお、本発明の籾殻処理装置は、前記各実施形態にのみ限定されるものではなく、バーナ3と冷却装置4と灰回収装置5の形状や寸法と、それぞれの寸法比は、図示するための便宜上のものであり、実際の装置構成を反映したものではない。
【0091】
図2図3に示したバーナ3の燃焼室8の形状は一例であり、図示した以外の燃焼室形状としてもよい。また、籾殻粉砕物1aの供給管11の配置や、空気供給管13の配置は、図示した以外の配置としてもよいことは勿論である。
【0092】
バーナ3は、燃焼室8にて空気12の気流中で籾殻粉砕物1aの部分燃焼と熱分解処理とを行うことができるようにしてあれば、燃焼室8内に形成させる空気12の気流は旋回流に限られない。
【0093】
冷却装置4,4aは、燃焼ガス6および炭素含有灰7を、冷却媒体としての水18と間接的に熱交換させる形式のものを例示したが、水18以外の流体を冷却媒体として用いる形式のものとしてもよい。また、燃焼ガス6や炭素含有灰7の温度を速やかに800℃以下に温度低下させることができるようにしてあれば、たとえば、冷却媒体と燃焼ガス6や炭素含有灰7を直接接触させる形式の冷却装置を採用してもよい。
【0094】
また、冷却装置4,4aは、燃焼ガス導入部20,35における炭素含有灰7の落下物の堆積を防ぐために、燃焼ガス導入部20,35の内底部に向けて、たとえば、温度低下させた燃焼ガスのような不活性ガスを吹き込む手段を備えるようにしてもよい。あるいは、燃焼ガス導入部20,35に堆積した炭素含有灰7の回収手段を備えるようにしてもよい。
【0095】
その他、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0096】
1 籾殻
1a 籾殻粉砕物
2 粉砕装置
3 バーナ
4,4a 冷却装置
5 灰回収装置
6 燃焼ガス
7 炭素含有灰
9 出口
図1
図2
図3