【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するためのメタン回収装置は、地中のメタンハイドレート層に存在するメタンハイドレート中のメタンを回収するメタン回収装置であって、その特徴構成は、
作動媒体が充填され音波が伝播する音響筒に、前記作動媒体を外部から加熱する加熱器と前記作動媒体を外部から冷却する冷却器と前記加熱器と前記冷却器との間で音波の音響エネルギを増幅する第1再生器とから成る原動機を少なくとも1つ以上設けると共に、前記作動媒体が外部から吸熱する吸熱器と前記作動媒体が外部へ放熱する放熱器と前記吸熱器と前記放熱器との間で音波が音響エネルギを消費する形態で圧縮及び膨張する第2再生器とから成る音響ヒートポンプ部を少なくとも1つ以上設ける熱音響機関を備え、
温熱源から発生する温熱を保有する第1熱媒を前記加熱器へ導く第1熱媒通流路と、
前記冷却器及び前記放熱器の少なくとも一方を通過した第2熱媒を前記メタンハイドレート層へ導く第2熱媒通流路と、
前記メタンハイドレート層の前記メタンハイドレートから分離してガス化した前記メタンの一部を燃料として前記温熱源へ導くと共に、ガス化した前記メタンの残部を前記吸熱器へ導いて液化するメタン通流路とを備える点にある。
【0007】
以下、まずもって、第2熱媒通流路が、冷却器及び放熱器の双方からメタンハイドレート層へ第2熱媒を導く構成について、作用効果を説明する。
当該構成によれば、熱音響機関の原動機において、例えば海水等の比較的低温の第2熱媒が冷却器に導かれる共に、温熱源から発生する温熱を保有する第1熱媒が加熱器に導かれるから、加熱器と冷却器との間で十分な温度差を発生させ、音響筒に当該温度差から生じる大きい音響エネルギを有する音波を発生させることができる。
一方、熱音響機関の音響ヒートポンプ部において、例えば海水等の比較的低温の第2熱媒がヒートシンクとして放熱器へ供給されると共に、メタンハイドレート層にてメタンハイドレートから分離して回収されたメタンガスが、吸熱器を通流することで、メタンガスを冷却し液化できる。即ち、当該構成にあっては、メタンガスの液化に必要な冷却を、コンプレッサを設けない簡易な構成で、電力を供給することなく実現できる。
更に、第2熱媒通流路は、原動機の冷却器と音響ヒートポンプ部の放熱器とにおいて温熱を回収した第2熱媒をメタンハイドレート層へ導いて、メタンハイドレート層にてメタンハイドレートを良好に加熱し、メタンをガス化して回収できる。
以上より、比較的簡易な構成でありながらも、地中のメタンハイドレートを加熱法にて適切に加熱しつつメタンをガス化し、ガス化したメタンガスを貯留及び運搬の目的で良好に液化する工程を、高いエネルギ効率で実行できるメタン回収装置を実現できる。
【0008】
因みに、本発明にあっては、温熱源としてはバーナ等の燃焼装置やエンジン等の熱電併給装置を想定しており、メタン通流路を介してメタンハイドレート層からガス化したメタンが燃料として供給される構成を採用している。このような構成においては、メタンハイドレート層からガス化したメタンが温熱源へ供給されるまでの間は、例えば、補助燃料源から温熱源へ燃料を供給する構成を採用する。
【0009】
尚、これまで説明した作用効果にあっては、第2熱媒通流路において、原動機の冷却器と音響ヒートポンプ部の放熱器との双方からメタンハイドレート層へ第2熱媒を導く構成について説明した。しかしながら、第2熱媒通流路は、第2熱媒を、冷却器と放熱器との少なくとも何れかを通過した第2熱媒をメタンハイドレート層へ導くものであっても構わない。ただし、比較的高温で多くの熱量を有する第2熱媒を、メタンハイドレート層へ導いて、多くのメタンをガス化する観点からは、第2熱媒通流路は、冷却器及び放熱器のうち、少なくとも比較的多くの温熱を回収できる冷却器を通過した後の第2熱媒をメタンハイドレート層へ導く構成を採用することが好ましい。
【0010】
メタン回収装置の更なる特徴構成は、
前記メタンハイドレート層から流体を吸引する形態で前記メタンハイドレート層を減圧する減圧ポンプを備える点にある。
【0011】
上記特徴構成によれば、メタンハイドレート層を、第2熱媒を導くことにより加熱できるのに加え、減圧ポンプの吸引作用により減圧することができるから、加熱・減圧の双方の作用により、メタンハイドレート層にてメタンをガス化して、より一層良好に回収することができる。
【0012】
メタン回収装置の更なる特徴構成は、
前記第2熱媒通流路は、前記冷却器及び前記放熱器の少なくとも一方と前記メタンハイドレート層との間で第2熱媒を循環させる第2熱媒循環路として構成され、
前記第2熱媒循環路は、前記第2熱媒を前記メタンハイドレート層へ導く地中側第2熱媒通流路を通流した後の前記第2熱媒を前記冷却器へ導く冷却器側第2熱媒通流路と、前記地中側第2熱媒通流路を通流した後の前記第2熱媒を前記放熱器へ導く放熱器側第2熱媒通流路とを、並列に備え、
前記メタン通流路にて前記吸熱器を通流する前の前記メタンを圧縮する圧縮機を備え、
前記メタン通流路の前記吸熱器と前記圧縮機との間を通流する前記メタンと、前記放熱器側第2熱媒通流路で前記放熱器を通流した後の前記第2熱媒とを熱交換する第1熱交換器を備える点にある。
【0013】
上記特徴構成によれば、第2熱媒は、冷却器側第2熱媒通流路と放熱器側第2熱媒通流路との双方に、並列に導かれることとなるから、例えば、直列に導く場合と比較して、冷却器と放熱器との双方へ、メタンハイドレート層から冷熱を回収して比較的低温となった第2熱媒を供給することができる。これにより、原動機にあっては、冷却器と加熱器との温度差を十分に大きくして、大きい音響エネルギの音波を発生でき、音響ヒートポンプ部にあっては、ヒートシンクとして放熱器へ比較的低温の第2熱媒を導くことで、吸熱器に導かれるメタンの温度をより低い温度へ冷却できる。
ここで、メタンを液化するには、大気圧近傍では−162℃程度まで冷却する必要があるため、昇圧しつつ冷却することが好ましい。上記特徴構成によれば、メタンハイドレート層にてメタンハイドレートをガス化して得られたメタンは、圧縮機にて圧縮し比較的高圧(例えば、3MPa以上8MPa以下)へ昇圧した後、第1熱交換器にて第2熱媒と熱交換する形態で粗熱をとる形態で冷却し、音響ヒートポンプ部の吸熱器にて冷却することで、良好に液化できる。
一方で、第2熱媒放熱器側通流路を通流する第2熱媒は、放熱器にてヒートシンクとして働いて温熱を回収した後、第1熱交換器にて、圧縮機にて昇圧後のメタンの粗熱を回収し、それらの温熱をメタンハイドレート層へ良好に供給できる。
【0014】
メタン回収装置の更なる特徴構成は、
前記第2熱媒通流路は、前記冷却器及び前記放熱器の少なくとも一方と前記メタンハイドレート層との間で第2熱媒を循環させる第2熱媒循環路として構成され、且つ少なくとも前記冷却器と前記メタンハイドレート層との間で前記第2熱媒を循環するものであり、
前記第1熱媒通流路で前記加熱器を通流した後の前記第1熱媒と、前記第2熱媒循環路において前記冷却器を通流した後で前記メタンハイドレート層へ導かれる前の前記第2熱媒とを熱交換する第2熱交換器を備える点にある。
【0015】
本発明にあっては、温熱源としてはバーナ等の燃焼装置や、エンジン等の熱電併給装置を想定しており、第1熱媒としては、燃焼装置や熱電併給装置の燃焼排ガスを用いることを想定している。この場合、加熱器を通流した後の第1熱媒は、比較的高温で回収可能な熱を保有している場合が想定される。
そこで、上記特徴構成にあっては、第2熱交換器により、第1熱媒通流路で加熱器を通流した後の第1熱媒と、第2熱媒循環路において冷却器を通流した後でメタンハイドレート層を通流する前の第2熱媒とを熱交換することで、第1熱媒に残存する排熱を第2熱媒にて適切に回収し、メタンハイドレート層にてメタンハイドレートの加熱の用に供することができる。
【0016】
メタン回収装置の更なる特徴構成は、
前記温熱源が、前記メタンを燃焼して燃焼排ガスを排出する燃焼装置であり、
前記第1熱媒通流路は、前記燃焼排ガスを前記第1熱媒として前記加熱器に通流自在に構成されている点にある。
【0017】
上記特徴構成によれば、供給する燃焼用空気の酸素濃度等にもよるが、加熱器へ1500℃以上の高い燃焼排ガスを第1熱媒として供給することができ、原動機の冷却器と加熱器との間にて大きな温度差をとり、大きい音響エネルギを発生できる。
【0018】
メタン回収装置の更なる特徴構成は、
前記温熱源が、前記メタンを燃料として熱と電力を発生する熱電併給装置であり、
前記第1熱媒通流路は、前記熱電併給装置が発生する熱を保有する前記第1熱媒を前記放熱器に通流自在に構成されている点にある。
【0019】
上記特徴構成によれば、温熱源として熱電併給装置を備えることで、メタンを燃料として熱のみならず電力を発生することもできるから、当該電力を装置の補機(例えば、メタンを圧縮する圧縮機)に供給することで、装置のトータルでのエネルギ効率をより高めることができる。