【文献】
J. Immunol.,2006年,vol.177,p.6129-6136
【文献】
Biochem. Pharmacol.,2006年,vol.72,p.1570-1576
【文献】
Transfus. Med. Hemother.,2013年,vol.40,p.388-402
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0034】
発明の詳細な説明
本明細書において特に定義のない限り、使用される技術用語および科学用語は全て、遺伝子療法、生化学、遺伝学、および分子生物学の分野の当業者に一般的に理解されているものと同じ意味を有する。
【0035】
本明細書に記載のものと類似のまたは同等の全ての方法および材料を本発明の実施または試験において使用することができ、適切な方法および材料を本明細書において説明する。本明細書において言及された全ての刊行物、特許出願、特許、および他の参考文献が、その全体が参照により組み入れられる。矛盾する場合は、定義を含む本明細書が優先される。さらに、材料、方法、および実施例は例示にすぎず、特に定めのない限り、限定することが意図されない。
【0036】
本発明の実施では、特に定めのない限り、当業者の技術の範囲内にある細胞生物学、細胞培養、分子生物学、トランスジェニック生物学、微生物学、組換えDNA、および免疫学の従来法を用いる。このような技法は文献において十分に説明されている。例えば、Current Protocols in Molecular Biology (Frederick M. AUSUBEL, 2000, Wiley and son Inc, Library of Congress, USA); Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Third Edition, (Sambrook et al, 2001, Cold Spring Harbor, New York: Cold Spring Harbor Laboratory Press); Oligonucleotide Synthesis (M. J. Gait ed., 1984); Mullis et al. 米国特許第4,683,195号; Nucleic Acid Hybridization (B. D. Harries & S. J. Higgins eds. 1984); Transcription And Translation (B. D. Hames & S. J. Higgins eds. 1984); Culture Of Animal Cells (R. I. Freshney, Alan R. Liss, Inc., 1987); Immobilized Cells And Enzymes (IRL Press, 1986); B. Perbal, A Practical Guide To Molecular Cloning (1984); the series, Methods In ENZYMOLOGY (J. Abelson and M. Simon, eds.-in-chief, Academic Press, Inc., New York)、特に、Vol.154および155 (Wu et al. eds.)ならびにVol.185, 「Gene Expression Technology」(D. Goeddel, ed.); Gene Transfer Vectors For Mammalian Cells (J. H. Miller and M. P. Calos eds., 1987, Cold Spring Harbor Laboratory); Immunochemical Methods In Cell And Molecular Biology (Mayer and Walker, eds., Academic Press, London, 1987); Handbook Of Experimental Immunology, Volume I-IV (D. M. Weir and C. C. Blackwell, eds., 1986)、ならびにManipulating the Mouse Embryo, (Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y., 1986)を参照されたい。
【0037】
操作されたT細胞を調製するための方法
一般的な局面において、本発明は、操作されたT細胞、特に、ドナーから得られた同種異系T細胞を調製するための方法に関する。
【0038】
従って、本発明は、操作されたT細胞、好ましくは、ドナーから得られた同種異系T細胞を調製するための方法を提供し、本方法は、
(a)T細胞、好ましくは、ドナーから得られた同種異系T細胞を準備する工程、ならびに
(b)前記T細胞におけるβ2-ミクログロブリン(B2M)および/またはクラスII主要組織適合遺伝子複合体トランスアクチベーター(CIITA)の発現を阻害する工程
を含む。
【0039】
ある特定の態様によれば、前記方法は、β2-ミクログロブリン(B2M)の発現を阻害する工程を含む。代わりに、またはさらに、前記方法は、クラスII主要組織適合遺伝子複合体トランスアクチベーター(CIITA)の発現を阻害する工程を含んでもよい。
【0040】
ある特定の態様によれば、B2Mの発現の阻害は、ゲノム改変によって、さらに具体的には、B2Mをコードする遺伝子(例えば、SEQ ID NO:2に示したヒトβ2m遺伝子)をDNA切断によって選択的に不活性化することができるレアカットエンドヌクレアーゼをT細胞において発現させることによって成し遂げられる。
【0041】
ある特定の他の態様によれば、CIITAの発現の阻害は、ゲノム改変によって、さらに具体的には、CIITAをコードする遺伝子(例えば、ヒトCIITA遺伝子)をDNA切断によって選択的に不活性化することができるレアカットエンドヌクレアーゼをT細胞において発現させることによって成し遂げられる。
【0042】
遺伝子を「不活性化する」または遺伝子「の不活性化」とは、関心対象の遺伝子(例えば、B2Mをコードする遺伝子またはCIITAをコードする遺伝子)が機能的なタンパク質の形で発現されないことが意図される。特定の態様において、前記方法の遺伝子組換えは、レアカットエンドヌクレアーゼが、ある標的化遺伝子の切断を触媒し、それによって、この標的化遺伝子を不活性化するような、操作しようとする準備された細胞における前記レアカットエンドヌクレアーゼの発現に頼る。前記エンドヌクレアーゼによって引き起こされる核酸鎖切断は、一般的に、相同組換え末端結合または非相同末端結合(NHEJ)の別々の機構によって修復される。しかしながら、NHEJは、切断部位のDNA配列を変えることが多い不完全な修復プロセスである。機構は、直接的な再連結(Critchlow and Jackson 1998)によって、または、いわゆるマイクロホモロジー媒介末端結合(Betts, Brenchley et al. 2003; Ma, Kim et al. 2003)を介して2つのDNA末端の残存物を再結合することを伴う。非相同末端結合(NHEJ)を介した修復は小さな挿入または欠失をもたらすことが多く、特異的遺伝子ノックアウトを作り出すことに使用することができる。前記組換えは少なくとも1つのヌクレオチドの置換、欠失、または付加でもよい。切断によって誘導される変異誘発事象、すなわち、NHEJ事象に続く変異誘発事象が起こった細胞は、当技術分野において周知の方法によって特定および/または選択することができる。
【0043】
β2m遺伝子を不活性化するために本発明に従って用いられるレアカットエンドヌクレアーゼは、例えば、TAL-ヌクレアーゼ、メガヌクレアーゼ、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、またはRNAガイドエンドヌクレアーゼ(例えば、Cas9)でもよい。
【0044】
特定の態様によれば、レアカットエンドヌクレアーゼはTAL-ヌクレアーゼである。
【0045】
別の特定の態様によれば、レアカットエンドヌクレアーゼは、メガヌクレアーゼの名前でも知られるホーミングエンドヌクレアーゼである。
【0046】
別の特定の態様によれば、レアカットエンドヌクレアーゼはジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZNF)である。
【0047】
別の特定の態様によれば、レアカットエンドヌクレアーゼはRNAガイドエンドヌクレアーゼである。好ましい態様によれば、RNAガイドエンドヌクレアーゼはCas9/クリスパー複合体である。
【0048】
具体的な態様によれば、レアカットエンドヌクレアーゼは、SEQ ID NO:67に示したヌクレオチド配列を含む核酸分子によってコードされるTAL-ヌクレアーゼである。別の具体的な態様によれば、レアカットエンドヌクレアーゼは、SEQ ID NO:68示したヌクレオチド配列を含む核酸分子によってコードされるTAL-ヌクレアーゼである。さらに別の具体的な態様によれば、レアカットエンドヌクレアーゼは、SEQ ID NO:67に示したヌクレオチド配列を含む核酸分子によってコードされるTAL-ヌクレアーゼと、SEQ ID NO:68に示したヌクレオチド配列を含む核酸分子によってコードされるTAL-ヌクレアーゼの組み合わせである。
【0049】
前記T細胞において発現させるために、前記レアカットエンドヌクレアーゼは、前記レアカットエンドヌクレアーゼをコードするヌクレオチド配列を含む外因性核酸分子を介して前記細胞に導入されてもよい。特定の態様によれば、本発明の方法は、レアカットエンドヌクレアーゼ、好ましくは、B2Mをコードする遺伝子(例えば、SEQ ID NO:2に示したヒトβ2m遺伝子)をDNA切断によって選択的に不活性化することができるレアカットエンドヌクレアーゼをコードするヌクレオチド配列を含む外因性核酸分子を前記T細胞に導入する工程をさらに含む。例えば、外因性核酸分子は、SEQ ID NO:67またはSEQ ID NO:68に示したヌクレオチド配列を含んでもよい。
【0050】
結果として、レアカットエンドヌクレアーゼ、好ましくは、B2Mをコードする遺伝子をDNA切断によって選択的に不活性化することができるレアカットエンドヌクレアーゼを発現する、操作されたT細胞が得られる。結果として、前記レアカットエンドヌクレアーゼによってB2M遺伝子が不活性化されると、操作されたT細胞においてB2Mの発現が阻害される。従って、B2Mの発現が阻害されていることを特徴とする、操作されたT細胞が得られる。
【0051】
CIITA遺伝子を不活性化するために本発明に従って用いられるレアカットエンドヌクレアーゼは、例えば、TAL-ヌクレアーゼ、メガヌクレアーゼ、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、またはRNAガイドエンドヌクレアーゼ(例えば、Cas9)でもよい。
【0052】
特定の態様によれば、レアカットエンドヌクレアーゼはTAL-ヌクレアーゼである。
【0053】
別の特定の態様によれば、レアカットエンドヌクレアーゼは、メガヌクレアーゼの名前でも知られるホーミングエンドヌクレアーゼである。
【0054】
別の特定の態様によれば、レアカットエンドヌクレアーゼはジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZNF)である。
【0055】
別の特定の態様によれば、レアカットエンドヌクレアーゼはRNAガイドエンドヌクレアーゼである。好ましい態様によれば、RNAガイドエンドヌクレアーゼはCas9/クリスパー複合体である。
【0056】
前記T細胞において発現させるために、前記レアカットエンドヌクレアーゼは、前記レアカットエンドヌクレアーゼをコードするヌクレオチド配列を含む外因性核酸分子を介して前記細胞に導入されてもよい。特定の態様によれば、本発明の方法は、レアカットエンドヌクレアーゼ、好ましくは、CIITAをコードする遺伝子(例えば、ヒトCIITA遺伝子)をDNA切断によって選択的に不活性化することができるレアカットエンドヌクレアーゼをコードするヌクレオチド配列を含む外因性核酸分子を前記T細胞に導入する工程をさらに含む。
【0057】
結果として、レアカットエンドヌクレアーゼ、好ましくは、CIITAをコードする遺伝子をDNA切断によって選択的に不活性化することができるレアカットエンドヌクレアーゼを発現する、操作されたT細胞が得られる。結果として、前記レアカットエンドヌクレアーゼによってCIITA遺伝子が不活性化されると、操作されたT細胞においてCIITAの発現が阻害される。従って、CIITの発現が阻害されていることを特徴とする、操作されたT細胞が得られる。ある特定の他の態様によれば、B2Mの発現の阻害は、細胞条件下で、B2Mをコードする細胞mRNAおよび/またはゲノムDNAと特異的にハイブリダイズ(例えば、結合)し、それによって、前記遺伝子の転写および/または翻訳を阻害する核酸分子を用いることによって(例えば、T細胞に導入することによって)成し遂げられる。特定の態様によれば、B2Mの発現の阻害は、アンチセンスオリゴヌクレオチド、リボザイム、または干渉RNA(RNAi)分子を用いることによって(例えば、T細胞に導入することによって)成し遂げられる。
【0058】
特定の態様によれば、前記核酸分子はアンチセンスオリゴヌクレオチドである。
【0059】
他の特定の態様によれば、前記核酸分子はリボザイム、好ましくは、ハンマーヘッド型リボザイムである。
【0060】
他の特定の態様によれば、前記核酸は、干渉RNA(RNAi)分子、例えば、マイクロRNA(miRNA)、低分子干渉RNA(siRNA)、またはショートヘアピンRNA(shRNA)である。
【0061】
従って、好ましい態様によれば、前記核酸分子はマイクロRNAである。別の好ましい態様によれば、前記核酸分子は低分子干渉RNAである。別の好ましい態様によれば、前記核酸分子はショートヘアピンRNAである。
【0062】
結果として、B2Mの発現が阻害されていることを特徴とする、操作されたT細胞が得られる。
【0063】
B2Mは主要組織適合遺伝子複合体(MHC)の重要な構造成分であるので、B2M発現が阻害されると、操作されたT細胞の表面にあるMHC分子が低減するか、または無くなる。結果として、操作されたT細胞は、表面に、CD8+細胞によって認識される抗原を提示しなくなる。特に、ドナーから得られた同種異系T細胞の場合、前記T細胞の表面にある、非自己抗原を提示するMHC分子が低減するか、または無くなると、操作されたT細胞は同種異系宿主に注入された時に宿主CD8+細胞により認識されなくなる。このため、操作されたT細胞は、特に、宿主免疫系による拒絶反応のリスクが低いので同種移植に特に適している。
【0064】
ある特定の他の態様によれば、CIITAの発現の阻害は、細胞条件下で、CIITAをコードする細胞mRNAおよび/またはゲノムDNAと特異的にハイブリダイズ(例えば、結合)し、それによって、前記遺伝子の転写および/または翻訳を阻害する核酸分子を用いることによって(例えば、T細胞に導入することによって)成し遂げられる。特定の態様によれば、CIITAの発現の阻害は、アンチセンスオリゴヌクレオチド、リボザイム、または干渉RNA(RNAi)分子を用いることによって(例えば、T細胞に導入することによって)成し遂げられる。
【0065】
特定の態様によれば、前記核酸分子はアンチセンスオリゴヌクレオチドである。
【0066】
他の特定の態様によれば、前記核酸分子はリボザイム、好ましくは、ハンマーヘッド型リボザイムである。
【0067】
他の特定の態様によれば、前記核酸は、干渉RNA(RNAi)分子、例えば、マイクロRNA(miRNA)、低分子干渉RNA(siRNA)、またはショートヘアピンRNA(shRNA)である。従って、好ましい態様によれば、前記核酸分子はマイクロRNAである。別の好ましい態様によれば、前記核酸分子は低分子干渉RNAである。別の好ましい態様によれば、前記核酸分子はショートヘアピンRNAである。
【0068】
結果として、CIITAの発現が阻害されていることを特徴とする、操作されたT細胞が得られる。本発明の操作されたT細胞は、その細胞表面に機能的なT細胞受容体(TCR)を発現しないことも本発明により意図される。T細胞受容体は、抗原提示に応答したT細胞活性化に関与する細胞表面受容体である。TCRは、一般的に、集合してヘテロ二量体を形成する2本のα鎖およびβ鎖から作られ、CD3伝達サブユニットと結合して、細胞表面に存在するT細胞受容体複合体を形成する。TCRのα鎖およびβ鎖はそれぞれ、免疫グロブリンに似たN末端可変(V)領域および定常(C)領域、疎水性膜貫通ドメイン、ならびに短い細胞質領域からなる。免疫グロブリン分子と同様に、α鎖およびβ鎖の可変領域は、T細胞集団内に抗原特異性の大きな多様性を生み出すV(D)J組換えによって生じる。しかしながら、インタクトな抗原を認識する免疫グロブリンとは対照的に、T細胞は、MHC分子と結合した処理ペプチド断片によって活性化される。これによって、MHC拘束と知られる、T細胞による抗原認識にさらなる要素が導入される。T細胞受容体を介してドナーとレシピエントとのMHC不一致が認識されると、T細胞が増殖し、場合によっては移植片対宿主病(GVHD)が発症する。正常なTCR表面発現は、複合体の7つ全ての成分の協調した合成および集合に依存することが示されている(Ashwell and Klusnor 1990)。TCRαまたはTCRβを不活性化するとT細胞表面からTCRが無くなり、それによって、アロ抗原の認識が阻止され、従って、GVHDが阻止される。従って、TCR成分をコードする少なくとも1種類の遺伝子が不活性化されると、操作されたT細胞はアロ反応性が低くなる。遺伝子を「不活性化する」または遺伝子「の不活性化」とは、関心対象の遺伝子(例えば、TCR成分をコードする少なくとも1種類の遺伝子)が機能的なタンパク質の形で発現されないことが意図される。
【0069】
従って、本発明の方法は、特定の態様によれば、T細胞受容体の成分をコードする少なくとも1種類の遺伝子を不活性化する工程をさらに含む。さらに具体的には、不活性化は、T細胞受容体(TCR)の成分をコードする少なくとも1種類の遺伝子をDNA切断、好ましくは、二本鎖切断によって選択的に不活性化することができるレアカットエンドヌクレアーゼを用いることによって(例えば、T細胞に導入することによって)成し遂げられる。特定の態様によれば、レアカットエンドヌクレアーゼは、TCRαをコードする遺伝子またはTCRβをコードする遺伝子をDNA切断によって選択的に不活性化することができる。好ましい態様によれば、レアカットエンドヌクレアーゼは、TCRαをコードする遺伝子をDNA切断によって選択的に不活性化することができる。特に、ドナーから得られた同種異系T細胞の場合、TCRの成分、特に、TCRαをコードする少なくとも1種類の遺伝子を不活性化すると、同種異系宿主に注入された時に、非アロ反応性の操作されたT細胞が得られる。このため、操作されたT細胞は、特に、移植片対宿主病のリスクが低いので同種移植に特に適している。
【0070】
T細胞受容体の成分をコードする少なくとも1種類の遺伝子を不活性化するために本発明に従って用いられるレアカットエンドヌクレアーゼは、例えば、TAL-ヌクレアーゼ、メガヌクレアーゼ、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、またはRNAガイドエンドヌクレアーゼ(例えば、Cas9)でもよい。
【0071】
特定の態様によれば、レアカットエンドヌクレアーゼはTAL-ヌクレアーゼである。
【0072】
別の特定の態様によれば、レアカットエンドヌクレアーゼは、メガヌクレアーゼの名前でも知られるホーミングエンドヌクレアーゼである。
【0073】
別の特定の態様によれば、レアカットエンドヌクレアーゼはジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZNF)である。
【0074】
別の特定の態様によれば、レアカットエンドヌクレアーゼはRNAガイドエンドヌクレアーゼである。好ましい態様によれば、RNAガイドエンドヌクレアーゼはCas9/クリスパー複合体である。
【0075】
前記T細胞において発現させるために、前記レアカットエンドヌクレアーゼは、前記レアカットエンドヌクレアーゼをコードするヌクレオチド配列を含む外因性核酸分子を介して前記細胞に導入されてもよい。特定の態様によれば、本発明の方法は、T細胞受容体(TCR)の成分をコードする少なくとも1種類の遺伝子をDNA切断、好ましくは、二本鎖切断によって選択的に不活性化することができるレアカットエンドヌクレアーゼをコードするヌクレオチド配列を含む外因性核酸分子を前記T細胞に導入する工程をさらに含む。
【0076】
結果として、T細胞受容体(TCR)の成分をコードする少なくとも1種類の遺伝子をDNA切断によって選択的に不活性化することができるレアカットエンドヌクレアーゼをさらに発現する、操作されたT細胞が得られる。結果として、少なくとも、T細胞受容体(TCR)の成分をコードする少なくとも1種類の遺伝子が不活性化されていることを特徴とする、操作されたT細胞が得られる。
【0077】
操作されたT細胞は、悪性細胞または感染細胞の表面に発現している少なくとも1種類の抗原に対して向けられたキメラ抗原受容体(CAR)をさらに発現することも本発明により意図される。従って、ある特定の態様によれば、本発明の方法は、悪性細胞または感染細胞の表面に発現している少なくとも1種類の抗原に対して向けられたキメラ抗原受容体(CAR)をコードするヌクレオチド配列を含む外因性核酸分子を前記T細胞に導入する工程をさらに含む。
【0078】
本発明に従って改変されるT細胞は任意の適切なT細胞でよい。例えば、T細胞は、炎症性Tリンパ球、細胞傷害性Tリンパ球、制御性T細胞、またはヘルパーTリンパ球でよい。特に、T細胞は細胞傷害性Tリンパ球である。ある特定の態様において、前記T細胞は、CD4+Tリンパ球およびCD8+Tリンパ球より選択される。前記T細胞は血液から抽出されてもよく、幹細胞に由来してもよい。幹細胞は、成人幹細胞、胚性幹細胞、さらに詳細には、非ヒト幹細胞、臍帯血幹細胞、前駆細胞、骨髄幹細胞、人工多能性幹細胞、全能性幹細胞、または造血幹細胞でもよい。代表的なヒト細胞はCD34+細胞である。特定の態様において、本発明に従って改変されるT細胞はヒトT細胞である。本発明の細胞の増殖および遺伝子組換えの前に、様々な非限定的な方法によって対象、例えば、患者から細胞供給源を得ることができる。T細胞は、末梢血単核球、骨髄、リンパ節組織、臍帯血、胸腺組織、感染部位に由来する組織、腹水、胸水、脾臓組織、および腫瘍を含む多数の非限定的な供給源から得ることができる。本発明のある特定の態様では、入手可能であり、かつ当業者に公知の任意の数のT細胞株を使用することができる。別の態様において、前記細胞は健常ドナーから得られてもよく、癌と診断された患者または感染症と診断された患者から得られてもよい。別の態様において、前記細胞は、異なる表現型特徴を示す細胞の混合集団の一部である。
【0079】
レアカットエンドヌクレアーゼ
本発明のある特定の態様によれば、関心対象の遺伝子、例えば、B2Mをコードする遺伝子をDNA切断によって選択的に不活性化することができるレアカットエンドヌクレアーゼが用いられる。
【0080】
「レアカットエンドヌクレアーゼ」という用語は、DNA分子またはRNA分子、好ましくは、DNA分子の内部にある、核酸間の結合の加水分解(切断)を触媒することができる野生型酵素または変種酵素を指す。特に、前記ヌクレアーゼは、エンドヌクレアーゼ、より好ましくは、高度に特異的であり、長さが10〜45塩基対(bp)、通常、長さが10〜35塩基対、さらに通常、12〜20塩基対の核酸標的部位を認識するレアカットエンドヌクレアーゼでもよい。本発明によるエンドヌクレアーゼは特定のポリヌクレオチド配列を認識し、前記エンドヌクレアーゼの分子構造に応じて、これらの標的配列の内部で、またはこれらの標的配列に隣接する配列の内部で核酸を切断する。この特定のポリヌクレオチド配列は「標的配列」とさらに呼ばれる。レアカットエンドヌクレアーゼは、特定のポリヌクレオチド配列を認識し、ここで一本鎖切断または二本鎖切断を生成することができる。
【0081】
特定の態様において、本発明による前記レアカットエンドヌクレアーゼは、RNAガイドエンドヌクレアーゼ、例えば、Cas9/クリスパー複合体である。RNAガイドエンドヌクレアーゼは、エンドヌクレアーゼがRNA分子と結合する次世代ゲノム操作ツールを構成する。この系では、RNA分子ヌクレオチド配列によって標的特異性が決定され、エンドヌクレアーゼが活性化される(Gasiunas, Barrangou et al. 2012; Jinek, Chylinski et al. 2012; Cong, Ran et al. 2013; Mali, Yang et al. 2013)。Cas9はCsn1とも呼ばれ、crRNAの生合成および侵入DNAの破壊の両方に関与する大きなタンパク質である。Cas9は、S.サーモフィラス(S.thermophiles)、リステリア・イノクア(Listeria innocua)(Gasiunas, Barrangou et al. 2012; Jinek, Chylinski et al. 2012)、およびS.ピヨゲネス(S.Pyogenes)(Deltcheva, Chylinski et al. 2011)などの様々な細菌種において述べられている。この大きなCas9タンパク質(>1200アミノ酸)は、タンパク質の中央にある2つの推定ヌクレアーゼドメイン、すなわち、HNH(McrA様)ヌクレアーゼドメインと、分割されたRuvC様ヌクレアーゼドメイン(RNアーゼHフォールド(RNase H fold))を含有する。Cas9変種は、天然で自然界に存在せず、タンパク質工学またはランダム変異誘発によって得られるCas9エンドヌクレアーゼでもよい。本発明によるCas9変種は、例えば、変異、すなわち、S.ピオゲネスCas9エンドヌクレアーゼのアミノ酸配列(COG3513)からの欠失、またはS.ピオゲネスCas9エンドヌクレアーゼのアミノ酸配列における、少なくとも1つの残基の挿入もしくは置換によって得ることができる。
【0082】
他の特定の態様において、前記レアカットエンドヌクレアーゼは、メガヌクレアーゼの名前でも知られるホーミングエンドヌクレアーゼでもよい。このようなホーミングエンドヌクレアーゼは当業者に周知である(Stoddard 2005)。ホーミングエンドヌクレアーゼは高度に特異的であり、長さが12〜45塩基対(bp)、通常、長さが14〜40bpのDNA標的部位を認識する。本発明によるホーミングエンドヌクレアーゼは、例えば、LAGLIDADGエンドヌクレアーゼ、HNHエンドヌクレアーゼ、またはGIY-YIGエンドヌクレアーゼに対応してもよい。本発明による好ましいホーミングエンドヌクレアーゼはI-CreI変種でもよい。「変種」エンドヌクレアーゼ、すなわち、天然で自然界に存在せず、遺伝子工学またはランダム変異誘発によって得られるエンドヌクレアーゼは、野生型エンドヌクレアーゼによって認識されるDNA配列とは異なるDNA配列に結合することができる(国際出願WO2006/097854を参照されたい)。
【0083】
他の特定の態様において、前記レアカットエンドヌクレアーゼは、通常、IIS型制限酵素であるFokIの切断ドメインと、3つ以上のC2H2ジンクフィンガーモチーフを含有するDNA認識ドメインとの融合である「ジンクフィンガーヌクレアーゼ」(ZFN)でもよい。2つのZFNそれぞれが正確な方向および間隔でDNAの特定の位置でヘテロ二量体化するとDNAの二本鎖切断(DSB)が起こる。このようなキメラエンドヌクレアーゼの使用は、Urnov et al.(Genome editing with engineered zinc finger nucleases(2010) Nature reviews Genetics 11:636-646)により概説されるように当技術分野において広範囲にわたって報告されている。標準的なZFNは切断ドメインと各ジンクフィンガードメインのC末端とを融合する。2つの切断ドメインが二量体化して、DNAを切断できるようになるために、2つのZFNがそれぞれDNAの反対鎖に結合する。これらのC末端は、ある一定の距離をあけて離れている。ジンクフィンガードメインと切断ドメインとの間にある、最も一般的に用いられるリンカー配列は、それぞれの結合部位の5'末端が5〜7bp隔てられていることを必要とする。新たなジンクフィンガーアレイを作製する最も簡単な方法は、特異性が分かっている小さなジンクフィンガー「モジュール」を組み合わせることである。最も一般的なモジュール集合プロセスは、それぞれが3塩基対DNA配列を認識することができる3つの別個のジンクフィンガーを組み合わせて、9塩基対標的部位を認識することができる3フィンガーアレイを作製することを伴う。望ましい配列を標的とすることができるジンクフィンガーアレイを作製するために、非常に多くの選択方法が用いられてきた。初期の選択の取り組みでは、部分的にランダム化されたジンクフィンガーアレイの大きなプールから、ある特定のDNA標的に結合したタンパク質を選択するためにファージディスプレイが利用された。つい最近の取り組みでは、酵母1ハイブリッド系、細菌1ハイブリッド系および2ハイブリッド系、ならびに哺乳動物細胞が利用された。
【0084】
他の特定の態様において、前記レアカットエンドヌクレアーゼは、典型的には転写アクチベーター様エフェクタータンパク質(TALE)に由来するDNA結合ドメインまたはモジュラー塩基対塩基結合ドメイン(MBBBD)に由来するDNA結合ドメインと、エンドヌクレアーゼ活性を有する触媒ドメインとの融合に起因する、「TALE-ヌクレアーゼ」または「MBBBD-ヌクレアーゼ」である。このような触媒ドメインは、通常、例えば、I-TevI、ColE7、NucA、およびFok-Iなどの酵素に由来する。TALE-ヌクレアーゼは、選択された触媒ドメインに応じて単量体または二量体の形で形成することができる(WO2012138927)。このような操作されたTALE-ヌクレアーゼは、商品名TALEN(商標)(Cellectis, 8 rue de la Croix Jarry, 75013 Paris, France)で市販されている。一般的に、DNA結合ドメインは、配列特異性が、非限定的な例としてザントモナス属(Xanthomonas)またはラルストニア属(Ralstonia)の細菌タンパク質AvrBs3、PthXo1、AvrHah1、PthA、Tal1cに由来する一連の33〜35アミノ酸の反復によって動かされる転写アクチベーター様エフェクター(TALE)に由来する。これらの反復は、本質的に、塩基対との相互作用を特定する2つのアミノ酸位置だけ異なる(Boch, Scholze et al. 2009; Moscou and Bogdanove 2009)。DNA標的内にあるそれぞれの塩基対には1個の反復が接触し、この特異性は反復の2つの変種アミノ酸(いわゆる反復可変ジペプチド(repeat variable dipeptide)、RVD)に起因する。TALE結合ドメインは、標的化配列の1番目のチミン塩基(T0)の要求を担うN末端移行ドメイン(translocation domain)、および核移行シグナル(NLS)を含有するC末端ドメインをさらに含んでもよい。TALE核酸結合ドメインは、通常、複数のTALE反復配列を含む操作されたコアTALEスキャフォールドに対応し、それぞれの反復は、TALE認識部位のそれぞれのヌクレオチド塩基に特異的なRVDを含む。本発明において、前記コアスキャフォールドのそれぞれのTALE反復配列は、30〜42個のアミノ酸、より好ましくは33個または34個のアミノ酸で作られ、位置12および13に配置された2つの重要なアミノ酸(いわゆる反復可変ジペプチド、RVD)が前記TALE結合部位配列の1つのヌクレオチドの認識を媒介する。特に、33アミノ酸長または34アミノ酸長より長いTALE反復配列では、12および13以外の位置に等価な2つの重要なアミノ酸が配置されてもよい。好ましくは、異なるヌクレオチドの認識に関連するRVDは、Cを認識する場合はHD、Tを認識する場合はNG、Aを認識する場合はNI、GまたはAを認識する場合はNNである。別の態様において、ヌクレオチドA、T、C、およびGに対する特異性を調整するために、特に、この特異性を増強するために、重要なアミノ酸12および13は他のアミノ酸残基に変異されてもよい。TALE核酸結合ドメインは、通常、8〜30個のTALE反復配列を含む。より好ましくは、本発明の前記コアスキャフォールドは8〜20個のTALE反復配列を含み、より好ましくは15個のTALE反復配列を含む。本発明の前記コアスキャフォールドはまた、前記TALE反復配列セットのC末端に配置された20個のアミノ酸で作られた、さらなる1個の切断型TALE反復配列、すなわち、さらなるC末端半TALE反復配列も含んでもよい。他のモジュラー塩基対塩基特異的核酸結合ドメイン(MBBBD)がWO2014/018601に記載されている。前記MBBBDは、例えば、内部共生体菌類であるブルクホルデリア・リゾキシニカ(Burkholderia Rhizoxinica)の最近、配列決定されたゲノムに由来する新たに特定されたタンパク質、すなわち、EAV36_BURRH、E5AW43_BURRH、E5AW45_BURRH、およびE5AW46_BURRHタンパク質から操作されてもよい。これらの核酸結合ポリペプチドは、塩基特異的な約31〜33個のアミノ酸のモジュールを含む。これらのモジュールはザントモナス属TALE共通反復と40%未満の配列同一性を示し、ザントモナス属TALE共通反復より大きなポリペプチド配列可変性を示す。特定の核酸配列に対して結合特性を有する新たなタンパク質またはスキャフォールドを操作するために、ブルクホルデリア属(Burkholderia)およびザントモナス属に由来する上記タンパク質に由来する異なるドメイン(モジュール、N末端およびC末端)が有用であり、キメラTALE-MBBBDタンパク質を形成するために組み合わされてもよい。
【0085】
阻害性核酸分子
本発明のある特定の他の態様によれば、B2Mの発現を阻害する核酸分子が用いられる。さらに具体的には、前記核酸はアンチセンスオリゴヌクレオチド、リボザイム、または干渉RNA(RNAi)分子でもよい。好ましくは、このような核酸分子は、SEQ ID NO:3の相補鎖の少なくとも10個の連続したヌクレオチドを含む。
【0086】
特定の態様によれば、阻害性核酸は、B2Mの発現を阻害するアンチセンスオリゴヌクレオチドである。このようなアンチセンスオリゴヌクレオチドは、細胞条件下で、B2Mをコードする細胞mRNAおよび/またはゲノムDNAと特異的にハイブリダイズ(例えば、結合)し、それによって、前記遺伝子の転写および/または翻訳を阻害する核酸(DNAまたはRNAのいずれか)である。結合は従来の塩基対相補性によるものでもよい。または、結合は、例えば、DNA二重鎖の場合には、二重らせんの主溝における特異的相互作用によるものでもよい。完全に相補することが好ましいが、必要とされない。
【0087】
CIITAの発現を阻害する核酸分子が用いられることも本発明により意図される。さらに具体的には、前記核酸は、アンチセンスオリゴヌクレオチド、リボザイム、または干渉RNA(RNAi)分子でもよい。好ましくは、このような核酸分子は、SEQ ID NO:5の相補鎖の少なくとも10個の連続したヌクレオチドを含む。
【0088】
本発明に従って用いられるアンチセンスオリゴヌクレオチドはDNAもしくはRNAまたはそのキメラ混合物もしくは誘導体もしくは改変されたバージョンでもよく、一本鎖または二本鎖でもよい。従って、好ましい態様によれば、アンチセンスオリゴヌクレオチドは一本鎖DNA分子または二本鎖DNA分子であり、より好ましくは、二本鎖DNA分子である。別の好ましい態様によれば、アンチセンスオリゴヌクレオチドは一本鎖RNA分子または二本鎖RNA分子であり、より好ましくは、一本鎖RNA分子である。
【0089】
好ましい態様によれば、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、内因性ヌクレアーゼ、例えば、エキソヌクレアーゼおよび/またはエンドヌクレアーゼに対して耐性のある、改変されたオリゴヌクレオチドであり、従って、インビボおよびインビトロで安定している。
【0090】
アンチセンスオリゴヌクレオチドは、例えば、分子の安定性を改善するために、塩基部分、糖部分、またはリン酸バックボーンにおいて改変されてもよい。アンチセンスオリゴヌクレオチドは、ペプチド(例えば、宿主細胞受容体を標的化するためのペプチド)、または細胞膜を通過する輸送を容易にする薬剤などの他の付加された基を含んでもよい。従って、アンチセンスオリゴヌクレオチドはペプチドまたは輸送薬剤などの別の分子に結合体化されてもよい。
【0091】
特定の態様によれば、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、5-フルオロウラシル、5-ブロモウラシル、5-クロロウラシル、5-ヨードウラシル、ヒポキサンチン、キサンチン、4-アセチルシトシン、5-(カルボキシヒドロキシトリエチル)ウラシル、5-カルボキシメチルアミノメチル-2-チオウリジン、5-カルボキシメチルアミノメチルウラシル、ジヒドロウラシル、β-D-ガラクトシルキュエオシン、イノシン、N6-イソペンテニルアデニン、1-メチルグアニン、1-メチルイノシン、2,2-ジメチルグアニン、2-メチルアデニン、2-メチルグアニン、3-メチルシトシン、5-メチルシトシン、N6-アデニン、7-メチルグアニン、5-メチルアミノメチルウラシル、5-メトキシアミノメチル-2-チオウラシル、β-D-マンノシルキュエオシン、5-メトキシカルボキシメチルウラシル、5-メトキシウラシル、2-メチルチオ-N6-イソペンテニルアデニン、ウラシル-5-オキシ酢酸(v)、ワイブトキソシン(wybutoxosine)、プソイドウラシル、キューオシン、2-チオシトシン、5-メチル-2-チオウラシル、2-チオウラシル、4-チオウラシル、5-メチルウラシル、ウラシル-5-オキシ酢酸メチルエステル、ウラシル-5-オキシ酢酸(v)、5-メチル-2-チオウラシル、3-(3-アミノ-3-N-2-カルボキシプロピル)ウラシル、(acp3)w、および2,6-ジアミノプリンを含むが、これに限定されない群より選択される少なくとも1種類の修飾塩基部分を含む。
【0092】
他の特定の態様によれば、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、アラビノース、2-フルロアラビノース(fluoroarabinose)、キシルロース、およびヘキソースを含むが、これに限定されない群より選択される少なくとも1種類の改変された糖部分を含む。
【0093】
他の特定の態様によれば、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、ホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、ホスホルアミドチオエート、ホスホルアミダート、ホスホルジアミデート、メチルホスホネート、アルキルホスホトリエステル、およびホルマセタール(formacetal)を含むが、これに限定されない群より選択される少なくとも1種類の改変されたリン酸バックボーン、またはその類似体を含む。
【0094】
アンチセンスオリゴヌクレオチドは、細胞に、例えば、前記細胞の中で転写された時に、B2Mの細胞mRNAの少なくとも独特の部分に相補的なRNAを産生する発現ベクター、例えば、プラスミドまたはウイルスベクターの形をとって送達されてもよい。または、アンチセンスオリゴヌクレオチドはエクスビボで作製され、当技術分野において公知の任意の手段によって前記細胞に導入されてもよい。アンチセンスオリゴヌクレオチドは、当技術分野において公知の標準的な方法によって、例えば、自動DNA合成機(例えば、自動DNA合成機は、例えば、Applied Biosystemsから市販されている)を用いることによってエクスビボで合成されてもよい。例えば、直接注射することによって、または望ましい細胞を標的とするように設計された改良版(例えば、標的細胞表面に発現している受容体または抗原に特異的に結合するペプチドまたは抗体に連結したアンチセンスオリゴヌクレオチドを用いる)によって、アンチセンスDNAまたはRNAを細胞に送達するための多数の方法が開発されている。
【0095】
好ましい態様によれば、B2MまたはCIITAの発現を阻害するアンチセンスオリゴヌクレオチドをコードするヌクレオチド配列がプロモーター、例えば、強力なpolIIIプロモーターまたはpolIIプロモーターの制御下に置かれている組換えDNAベクターが用いられる。このような構築物を用いて、T細胞などの標的細胞をトランスフェクトすると、内因性転写物と相補的塩基対を形成する十分な量の一本鎖RNAが転写され、それによって、B2M mRNAまたはCIITA mRNAの翻訳が阻止される。これらの態様によれば、アンチセンスオリゴヌクレオチドをコードするヌクレオチド配列を含むDNAベクターが前記細胞に導入され、前記細胞においてアンチセンスRNAが転写される。このようなベクターはアンチセンスRNAを産生するように転写することができる限り、エピソームのままでもよく、染色体に組み込まれてもよい。アンチセンスRNAをコードする配列の発現は、哺乳動物、好ましくはヒト細胞において働くことが当技術分野において知られている任意のプロモーターによるものでよい。このようなプロモーターは誘導的でもよく構成的でもよい。例示的なプロモーターには、SV40初期プロモーター領域、ラウス肉腫ウイルスの3'長末端反復を含有するプロモーター、ヘルペスチミジンプロモーター、およびメタロチオネイン(methallothionein)遺伝子の制御配列が含まれるが、これに限定されない。
【0096】
代替として、使用したプロモーターに応じてアンチセンスRNAを構成的または誘導的に合成するアンチセンスcDNA構築物を前記細胞に導入することができる。
【0097】
好ましい態様によれば、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、SEQ ID NO:3の相補鎖の少なくとも10個の連続したヌクレオチドを含む。二本鎖分子の場合、このような二本鎖アンチセンスオリゴヌクレオチドは、SEQ ID NO:3の少なくとも10個の連続したヌクレオチドを含む第1の鎖と、前記第1の鎖に相補的な第2の鎖を含む。一本鎖分子の場合、このような一本鎖オリゴヌクレオチドは、SEQ ID NO:3の相補鎖の少なくとも10個の連続したヌクレオチドを含む。
【0098】
他の好ましい態様によれば、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、SEQ ID NO:5の相補鎖の少なくとも10個の連続したヌクレオチドを含む。二本鎖分子の場合、このような二本鎖アンチセンスオリゴヌクレオチドは、SEQ ID NO:5の少なくとも10個の連続したヌクレオチドを含む第1の鎖と、前記第1の鎖に相補的な第2の鎖を含む。一本鎖分子の場合、このような一本鎖オリゴヌクレオチドは、SEQ ID NO:5の相補鎖の少なくとも10個の連続したヌクレオチドを含む。
【0099】
アンチセンスオリゴヌクレオチドは、B2M mRNAまたはCIITA mRNAの非コード領域またはコード領域に相補的なヌクレオチド配列を含んでもよい。好ましい態様によれば、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、B2M mRNAまたはCIITA mRNAの5'末端、例えば、AUG開始コドンまでの、およびAUG開始コドンを含む5'非翻訳配列に相補的なヌクレオチド配列を含む。他の好ましい態様によれば、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、B2M mRNAまたはCIITA mRNAの3'非翻訳配列に相補的なヌクレオチド配列を含む。他の好ましい態様によれば、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、B2M mRNAまたはCIITA mRNAのコード領域に相補的なヌクレオチド配列を含む。B2M mRNAまたはCIITA mRNAの5'側、3'側、またはコード領域にハイブリダイズするように設計されているかどうかに関係なく、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、長さが少なくとも6ヌクレオチド、好ましくは長さが少なくとも10ヌクレオチドでなければならず、好ましくは長さが約100ヌクレオチドより少なく、より好ましくは、約50ヌクレオチド、25ヌクレオチド、20ヌクレオチド、15ヌクレオチド、または10ヌクレオチドより少ない。好ましい態様によれば、アンチセンスオリゴヌクレオチドは長さが6〜25ヌクレオチド、例えば、10〜25ヌクレオチドである。
【0100】
他の特定の態様によれば、前記T細胞におけるB2MまたはCIITAの翻訳および発現を阻止するために、それぞれ、B2M mRNA転写物またはCIITA mRNA転写物を触媒作用により切断するように設計されたリボザイム分子が用いられる(一般的なガイダンスについては、例えば、WO90/11364およびUS5,093,246を参照されたい)。好ましい態様によれば、リボザイムはハンマーヘッド型リボザイムである。ハンマーヘッド型リボザイムは、標的mRNA、例えば、B2M mRNA、例えば、SEQ ID NO:3に示したヒトB2M mRNAと相補的塩基対を形成する隣接領域によって決まる場所でmRNAを切断する。唯一の要件は、標的mRNAが、2塩基の以下の配列: 5'-UG-3'を有することである。ハンマーヘッド型リボザイムの構築および生成は当技術分野において周知であり、Haseloff and Gerlach(1988)においてさらに詳しく説明されている。好ましい態様によれば、リボザイムは、切断認識部位がB2M mRNAの5'末端付近にあるように操作される。好ましい他の態様によれば、リボザイムは、切断認識部位がCIITA mRNAの5'末端付近にあるように操作される。これにより、効率が高まり、非機能的なmRNA転写物の細胞内蓄積が最小限になる。
【0101】
アンチセンスオリゴヌクレオチドと同様に、本発明に従って用いられるリボザイムは、例えば、安定性を改善するために、改変されたオリゴヌクレオチドで構成されてもよい。リボザイムは、当技術分野において公知の任意の手段によって前記細胞に送達されてもよい。リボザイムは、前記細胞内で転写された時にリボザイムを産生する発現ベクター、例えば、プラスミドまたはウイルスベクターの形で前記T細胞に送達されてもよい。好ましい態様によれば、リボザイムをコードするヌクレオチド配列が、プロモーター、例えば、強力なpolIIIプロモーターまたはpolIIプロモーターの制御下に置かれている組換えDNAベクターが用いられ、その結果、トランスフェクトされた細胞は、内因性mRNAを破壊し、翻訳を阻害するのに十分な量のリボザイムを産生する。リボザイムはアンチセンスオリゴヌクレオチドと異なり触媒作用があるので、効率のためには低い細胞内濃度が必要とされる。
【0102】
他の特定の態様によれば、阻害性核酸は干渉RNA(RNAi)分子である。RNA干渉は、RNA分子が遺伝子発現を阻害して、典型的には、特異的mRNAを破壊する生物学的プロセスである。例示的なタイプのRNAi分子には、マイクロRNA(miRNA)、低分子干渉RNA(siRNA)、およびショートヘアピンRNA(shRNA)が含まれる。好ましい態様によれば、RNAi分子はmiRNAである。別の好ましい態様によれば、RNAi分子はsiRNAである。さらに別の好ましい態様によれば、RNAi分子はshRNAである。インビボおよびインビトロでのRNAi分子の産生ならびにRNAi分子の使用方法は、例えば、US6,506,559、WO01/36646、WO00/44895、US2002/01621126、US2002/0086356、US2003/0108923、WO02/44321、WO02/055693、WO02/055692、およびWO03/006477に記載されている。
【0103】
好ましい態様によれば、RNAi分子は、SEQ ID NO:3に相補的な干渉RNAである。別の好ましい態様によれば、RNAi分子は、SEQ ID NO:3の相補鎖の少なくとも10個の連続したヌクレオチドを含むリボ核酸分子である。別の好ましい態様によれば、RNAi分子は、SEQ ID NO:3の20〜25個、例えば、21〜23個の連続ヌクレオチドと同一の第1の鎖と、前記第1の鎖に相補的な第2の鎖を含む二本鎖リボ核酸分子である。
【0104】
好ましい態様によれば、RNAi分子は、SEQ ID NO:5に相補的な干渉RNAである。別の好ましい態様によれば、RNAi分子は、SEQ ID NO:5の相補鎖の少なくとも10個の連続したヌクレオチドを含むリボ核酸分子である。別の好ましい態様によれば、RNAi分子は、SEQ ID NO:5の20〜25個、例えば、21〜23個の連続ヌクレオチドと同一の第1の鎖と、前記第1の鎖に相補的な第2の鎖を含む二本鎖リボ核酸分子である。
【0105】
T細胞調節のPD1/PDL1経路の操作
本発明は、好ましくは、TCRの不活性化と組み合わせてB2Mおよび/またはCIITAの発現を阻害することによって、T細胞、特に、同種異系T細胞の生着を容易にすることを目的とする。
【0106】
このアプローチに代わるものとして、またはこのアプローチと組み合わせて、本発明者らは、T細胞のPD1(プログラム細胞死タンパク質1。PD1; PD-1; CD279; SLEB2; hPD-1;hPD-IまたはhSLE1とも知られる)を破壊できることを発見した。PD1は、PDCD1遺伝子(NCBI-NC_000002.12)によってコードされる288アミノ酸の細胞表面タンパク質分子である。このタンパク質はT細胞上およびプロB細胞上で発現しており、T細胞応答を負に調節することが見出されている(Carter L, et al., 2002)。PD-1受容体/PD-L1リガンド複合体が形成すると阻害シグナルが伝達され、それによってT細胞の増殖が低減する。
【0107】
プログラム死リガンド(programmed death ligand)1(PD-L1)は、妊娠、組織同種移植、自己免疫疾患、および他の疾患状態、例えば、肝炎などの特定の事象間の免疫系抑制において主な役割を果たすと考えられている40kDaの1型膜貫通タンパク質である。PDL-1(CD274またはB7H1とも呼ばれる)はCD274遺伝子(NCBI-NM_014143)によってコードされる。
【0108】
特定の局面によれば、本発明の操作されたT細胞においてPD-1およびTCR両方の発現が阻害される。これには、同種移植の一環として前記T細胞を活性化するという二重の効果がある。しかしながら、T細胞の自家移植の一環としてPD-1の不活性化または阻害も実行することができる。この場合、TCRの阻害または破壊は必要とされないだろう。
【0109】
本発明のさらなる局面によれば、移植T細胞において、PD1の阻害または破壊が、そのリガンドであるPDL-1の過剰発現と組み合わされる。この過剰発現は、例えば、PD-1が阻害もしくは破壊されるレンチウイルス形質転換もしくはレトロウイルス形質転換をT細胞において行うと、または当技術分野において報告された他の任意の手段によって得ることができる。従って、前記T細胞によって過剰発現されるPDL1は[PD1
-]移植細胞に影響を及ぼさず、患者に由来する[PD1
+]T細胞にだけ影響を及ぼす。結果として、患者に由来するT細胞は阻害され、移植細胞に抵抗して活性化せず、このため、宿主への移植細胞の生着および残存が容易になる。
【0110】
好ましい態様によれば、本発明は、[PD1
-][TCR
-]であると同時に、患者への移植を容易にするために、特に、免疫療法の一環としてPDL1を過剰発現する操作されたT細胞を提供する。
【0111】
少なくとも1種類の非内因性免疫抑制ポリペプチドの発現
一部の好ましい態様によれば、β-2mおよび/またはCIITAの発現の阻害は、前記T細胞において、少なくとも1種類の非内因性免疫抑制ポリペプチドを発現させる、さらなる工程と共に行われる。
【0112】
「非内因性」ポリペプチドとは、ドナー免疫細胞により通常は発現されないポリペプチド、好ましくは、免疫細胞ゲノムに移入された外因性ポリヌクレオチドにより発現されるポリペプチドを意味する。例えば、IL12は、ドナー免疫細胞に由来する既存の遺伝子から発現されるので、本明細書では非内因性ポリペプチドであるとみなされない。
【0113】
「免疫抑制」とは、前記非内因性ポリペプチドの発現には、ドナー免疫細胞に抵抗して患者宿主の免疫応答を緩和する効果があることを意味する。
【0114】
従って、本発明の方法は、少なくとも1種類の非内因性免疫抑制ポリペプチド、例えば、ウイルスMHCホモログまたはNKG2Dリガンドをコードするヌクレオチド配列を含む外因性核酸分子を前記T細胞に導入する工程を含んでもよい。
【0115】
ウイルスMHCホモログの発現
特に好ましい態様によれば、前記T細胞において発現される前記非内因性免疫抑制ポリペプチドは、ウイルスMHCホモログ、例えば、UL18(NCBIタンパク質データベースではNP_044619と呼ばれる)である。
【0116】
これらの態様によれば、従って、本発明の方法は、ウイルスMHCホモログ、例えば、UL18をコードするヌクレオチド配列を含む外因性核酸分子を前記T細胞に導入する工程を含んでもよい。外因性核酸分子は、SEQ ID NO:89と少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%の同一性を有するポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含んでもよい。
【0117】
同種異系T細胞と宿主免疫細胞との相互作用を、この状況に関して
図8(ウイルスMHCホモログの発現)〜
図7(発現なし)に模式的に示した。両図とも、好ましくは、β2M遺伝子を破壊(KO)することによってMHCクラスIが不活性化される。
【0118】
NKG2Dリガンドの発現
サイトメガロウイルスなどの一部のウイルスは、NK細胞によって媒介される免疫監視を回避し、NKG2Dリガンドに結合し、その表面発現を阻止することができるタンパク質を分泌することによってNKG2D経路を妨害する機構を獲得している(Welte, S.A.; Sinzger, C; Lutz, S.Z.; Singh-Jasuja, H.; Sampaio, K.L.; Eknigk, U.; Rammensee, H.G.; Steinle, A. 2003 「Selective intracellular retention of virally induced NKG2D ligands by the human cytomegalovirus UL16 glycoprotein」. Eur. J. Immunol., 33, 194-203)。腫瘍細胞では、ULBP2、MICB、またはMICAなどのNKG2Dリガンドを分泌することによってNKG2D応答から逃れるために、いくつかの機構が進化した(Salih HR, Antropius H, Gieseke F, Lutz SZ, Kanz L, et al. (2003) Functional expression and release of ligands for the activating immunoreceptor NKG2D in leukemia. Blood 102: 1389-1396)。
【0119】
他の特に好ましい態様によれば、前記T細胞において発現される非内因性免疫抑制ポリペプチドはNKG2Dリガンドである。
【0120】
これらの態様によれば、従って、本発明の方法は、NKG2Dリガンドをコードするヌクレオチド配列を含む外因性核酸分子を前記T細胞に導入する工程を含んでもよい。前記核酸分子は、SEQ ID NO:90〜97のいずれか1つと少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%の同一性を有するポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含んでもよい。
【0121】
同種異系T細胞と宿主免疫細胞との相互作用を、この状況に関して
図9(可溶性NKG2Dリガンドの発現)〜
図7(発現なし)に模式的に示した。両図とも、β2M遺伝子を破壊(KO)することによってMHCクラスIが不活性化される。
【0122】
さらに本文に示した表10は、ウイルスMHCホモログ(UL18)および一群のNKG2Dリガンドならびに本発明に従って発現されるこれらのポリペプチド配列を表す。
【0123】
キメラ抗原受容体(CAR)
養子免疫療法は、エクスビボで作製された自己由来の抗原特異的T細胞を導入することを伴い、癌またはウイルス感染症を処置する有望な戦略である。養子免疫療法に用いられるT細胞は、抗原特異的T細胞を増殖させることによって、または遺伝子工学によってT細胞を方向付け直すことによって作製することができる(Park, Rosenberg et al. 2011)。ウイルス抗原特異的T細胞の導入は、移植に関連するウイルス感染症と稀なウイルス関連悪性疾患を処置するのに用いられる十分に確立した手順である。同様に、腫瘍特異的T細胞の単離および導入は黒色腫を処置することに成功したことが示されている。
【0124】
T細胞における新たな特異性は、トランスジェニックT細胞受容体またはキメラ抗原受容体(CAR)を遺伝子導入することによって首尾良く作製されている(Jena, Dotti et al. 2010)。CARは、1つの融合分子の形をとる、1つまたは複数のシグナル伝達ドメインに結合した標的化部分からなる合成受容体である。通常、CARの結合部分は、可動性リンカーによってつながっているモノクローナル抗体の軽鎖可変断片を含む単鎖抗体(scFv)抗原結合ドメインからなる。受容体またはリガンドドメインをベースとする結合部分も首尾良く用いられている。第1世代CAR用のシグナル伝達ドメインはCD3ζまたはFc受容体γ鎖の細胞質領域に由来する。第1世代CARはT細胞の細胞傷害性を首尾良く方向付け直すことが示されているが、インビボで長期増殖および抗腫瘍活性をもたらさなかった。CAR改変T細胞の生存率を向上させ、増殖を増やすために、CD28、OX-40(CD134)、および4-1BB(CD137)を含む共刺激分子に由来するシグナル伝達ドメインが単独で(第二世代)または組み合わせて(第三世代)加えられている。CARを用いると、リンパ腫および固形腫瘍を含む様々な悪性疾患に由来する腫瘍細胞の表面に発現している抗原にT細胞を首尾良く方向付け直すことができた(Jena, Dotti et al. 2010)。
【0125】
B急性リンパ芽球性白血病(B-ALL)の大多数が一様にCD19を発現するのに対して、非造血細胞、ならびに骨髄系細胞、赤血球細胞、およびT細胞、ならびに骨髄幹細胞では発現は存在しないので、CD19は免疫療法の魅力的な標的である。B細胞悪性疾患上にあるCD19を標的とする臨床試験が有望な抗腫瘍応答を伴って進行中である。ほとんどが、CD19特異的マウスモノクローナル抗体FMC63のscFv領域に由来する特異性をもつキメラ抗原受容体(CAR)を発現するように遺伝子組換えされたT細胞を注入する(WO2013/126712)。
【0126】
従って、ある特定の態様によれば、操作されたT細胞によって発現されるキメラ抗原受容体はBリンパ球抗原CD19に対して向けられたものである。
【0127】
ある特定の態様によれば、キメラ抗原受容体は単鎖キメラ抗原受容体である。本発明による操作されたT細胞において発現される単鎖キメラ抗原受容体の一例は、少なくとも1つの細胞外リガンド結合ドメイン、膜貫通ドメイン、および少なくとも1つのシグナル伝達ドメインを含む単一のポリペプチドである。前記細胞外リガンド結合ドメインは、特異的抗CD19モノクローナル抗体4G7に由来するscFVを含む。このCARは、例えば、レトロウイルス形質導入またはレンチウイルス形質導入を用いてT細胞に形質導入されると、リンパ腫または白血病に関与する悪性B細胞の表面に存在するCD19抗原の認識に寄与する。
【0128】
特定の態様によれば、キメラ抗原受容体は、SEQ ID NO:6に示したアミノ酸配列を含むポリペプチド、またはSEQ ID NO:6の全長にわたってSEQ ID NO:6に示したアミノ酸配列と少なくとも70%、例えば、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、その変種である。好ましくは、前記変種はCD19に結合することができる
【0129】
特に好ましいキメラ抗原受容体は、SEQ ID NO:7に示したアミノ酸配列を含むポリペプチド、またはSEQ ID NO:7の全長にわたってSEQ ID NO:7に示したアミノ酸配列と少なくとも80%、例えば、少なくとも90%、少なくとも95%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、その変種である。このような変種は、少なくとも1個、少なくとも2個、または少なくとも3個のアミノ酸残基が置換されている点でSEQ ID NO:7に示したポリペプチドを異なってもよい。好ましくは、前記変種はCD19に結合することができる。
【0130】
ある特定の他の態様によれば、キメラ抗原受容体は、悪性細胞または感染細胞の表面に発現している別の抗原、例えば、分化クラスター分子、例えば、CD16、CD64、CD78、CD96、CLL1、CD116、CD117、CD71、CD45、CD71、CD123、およびCD138、腫瘍関連表面抗原、例えば、ErbB2(HER2/neu)、癌胎児抗原(CEA)、上皮細胞接着分子(EpCAM)、上皮増殖因子受容体(EGFR)、EGFR変種III(EGFRvIII)、CD19、CD20、CD30、CD40、ジシアロガングリオシドGD2、管上皮ムチン、gp36、TAG-72、スフィンゴ糖脂質、神経膠腫関連抗原、β-ヒト絨毛性ゴナドトロピン、αフェトプロテイン(AFP)、レクチン反応性AFP、チログロブリン、RAGE-1、MN-CA IX、ヒトテロメラーゼ逆転写酵素、RU1、RU2(AS)、腸カルボキシルエステラーゼ、mut hsp70-2、M-CSF、プロスターゼ(prostase)、プロスターゼ特異的抗原(PSA)、PAP、NY-ESO-1、LAGA-1a、p53、プロステイン(prostein)、PSMA、サバイビンおよびテロメラーゼ、前立腺癌腫瘍抗原-1(PCTA-1)、MAGE、ELF2M、好中球エラスターゼ、エフリンB2、CD22、インシュリン増殖因子(IGF1)-I、IGF-II、IGFI受容体、メソテリン、腫瘍特異的ペプチドエピトープを提示する主要組織適合遺伝子複合体(MHC)分子、5T4、ROR1、Nkp30、NKG2D、腫瘍間質抗原、フィブロネクチンのエクストラドメイン(extra domain)A(EDA)およびエクストラドメインB(EDB)、ならびにテネイシン-CのA1ドメイン(TnC A1)および線維芽細胞関連タンパク質(fap);細胞系列特異的抗原または組織特異的抗原、例えば、CD3、CD4、CD8、CD24、CD25、CD33、CD34、CD133、CD138、CTLA-4、B7-1(CD80)、B7-2(CD86)、GM-CSF、サイトカイン受容体、エンドグリン、主要組織適合遺伝子複合体(MHC)分子、BCMA(CD269、TNFRSF17)、多発性骨髄腫抗原もしくはリンパ芽球性白血病抗原、例えば、TNFRSF17(UNIPROT Q02223)、SLAMF7(UNIPROT Q9NQ25)、GPRC5D(UNIPROT Q9NZD1)、FKBP11(UNIPROT Q9NYL4)、KAMP3、ITGA8(UNIPROT P53708)、およびFCRL5(UNIPROT Q68SN8)より選択される抗原、ウイルス特異的表面抗原、例えば、HIV特異的抗原(例えば、HIV gp120); EBV特異的抗原、CMV特異的抗原、HPV特異的抗原、ラッサ(Lasse)ウイルス特異的抗原、インフルエンザウイルス特異的抗原、ならびにこれらの表面抗原の任意の誘導体または変種に対して向けられてもよい。
【0131】
ある特定の他の態様において、キメラ抗原受容体は多鎖キメラ抗原受容体である。T細胞に導入される先行技術のキメラ抗原受容体は、シグナル伝達ドメインの連続付加を必要とする単鎖ポリペプチドから形成された。しかしながら、シグナル伝達ドメインがその自然の膜近傍位置から動くと、その機能が妨げられる可能性がある。この欠点を克服するために、出願人は、最近、全ての関係するシグナル伝達ドメインの正常な膜近傍位置を可能にするために、FcεRIに由来する多鎖CARを設計した。WO2013/176916に記載のように、この新たな構造では、FcεRIα鎖の高親和性IgE結合ドメインは、T細胞特異性を細胞標的に方向付け直すためにscFvなどの細胞外リガンド結合ドメインと交換され、共刺激シグナルを正常な膜近傍位置に配置するためにFcεRIβ鎖のN末端テールおよび/またはC末端テールが用いられる。
【0132】
従って、本発明による操作されたT細胞が発現するCARは、特に、本発明の操作されたT細胞の作製および増殖に合わせられた多鎖キメラ抗原受容体でもよい。このような多鎖CARは、以下の成分:
(a)FcεRIα鎖の膜貫通ドメインおよび細胞外リガンド結合ドメインを含む1つのポリペプチド、
(b)FcεRIβ鎖のN末端細胞質テールおよびC末端細胞質テールの一部ならびに膜貫通ドメインを含む1つのポリペプチド、ならびに/または
(c)それぞれが、FcεRIγ鎖の細胞質内テールの一部および膜貫通ドメイン含み、異なるポリペプチドが自発的に一緒になって多量体化して二量体CAR、三量体CAR、または四量体CARを形成する、少なくとも2つのポリペプチド
の少なくとも2つを含む。
【0133】
このような構造によれば、リガンド結合ドメインおよびシグナル伝達ドメインは別個のポリペプチドに載って運ばれる。異なるポリペプチドは近接して膜内に固定されるので互いに相互作用することが可能になる。このような構造では、シグナル伝達ドメインおよび共刺激ドメインは膜近傍位置にあってもよい(すなわち、細胞膜に隣接し、細胞膜の内側にあってもよい)。これは、共刺激ドメインの機能の改善を可能にすると考えられる。このマルチサブユニット構造はまた、さらに大きな融通性と、T細胞活性化をさらに厳密に制御するCARを設計する可能性ももたらす。例えば、多重特異性CAR構造を得るために、異なる特異性を有するいくつかの細胞外抗原認識ドメインを含めることが可能である。多鎖CARの中に入る異なるサブユニット間の相対比を制御することも可能である。このタイプの構造は、最近、出願人によってPCT/US2013/058005で詳述された。
【0134】
1つの多鎖CARの一部として異なる鎖を集合することは、例えば、シグナル伝達ドメインおよび共刺激ドメインと融合した、IgEの高親和性受容体(FcεRI)(Metzger, Alcaraz et al. 1986)の異なるα鎖、β鎖、およびγ鎖を用いることによって可能になる。γ鎖は、膜貫通領域と、1個の免疫受容体チロシンベース活性化モチーフ(ITAM)(Cambier 1995)を含有する細胞質テールを含む。
【0135】
多鎖CARは、標的中の異なる要素に同時に結合し、それによって、免疫細胞の活性化および機能を増大するように、いくつかの細胞外リガンド結合ドメインを含んでもよい。一態様において、細胞外リガンド結合ドメインは同じ膜貫通ポリペプチド上にタンデムに置かれてもよく、任意で、リンカーで分けられてもよい。別の態様において、前記異なる細胞外リガンド結合ドメインは、多鎖CARを構成する異なる膜貫通ポリペプチド上に置かれてもよい。
【0136】
本発明の多鎖CARのシグナル伝達ドメインまたは細胞内シグナル伝達ドメインは、細胞外リガンド結合ドメインが標的に結合した後に、免疫細胞および免疫応答の活性化をもたらす細胞内シグナル伝達を担う。言い換えると、シグナル伝達ドメインは、多鎖CARが発現している免疫細胞の正常エフェクター機能の少なくとも1つの活性化を担う。例えば、T細胞のエフェクター機能は、細胞溶解活性、またはサイトカイン分泌を含むヘルパー活性でもよい。
【0137】
本願において、「シグナル伝達ドメイン」という用語は、エフェクターシグナル機能シグナルを伝達し、特殊化した機能を実行するように細胞を誘導するタンパク質部分を指す。
【0138】
単鎖CARまたは多鎖CARにおいて使用するためのシグナル伝達ドメインの好ましい例は、抗原受容体結合後にシグナル伝達を開始するために協調して働く、Fc受容体またはT細胞受容体および補助受容体の細胞質配列、ならびにこれらの配列の任意の誘導体または変種、および同じ機能をもつ任意の合成配列でもよい。シグナル伝達ドメインは、抗原依存的一次活性化を開始する細胞質シグナル伝達配列、および二次シグナルまたは共刺激シグナルを供給するように抗原非依存的に働く細胞質シグナル伝達配列である2つの別々のクラスの細胞質シグナル伝達配列を含む。一次細胞質シグナル伝達配列は、免疫受容体チロシンベース活性化モチーフであるITAMとして知られるシグナル伝達モチーフを含んでもよい。ITAMは、syk/zap70クラスチロシンキナーゼの結合部位として役立つ、様々な受容体の細胞質内テールにおいて発見された詳細に明らかにされたシグナル伝達モチーフである。本発明において用いられるITAMの例には、非限定的な例として、TCRζ、FcRγ、FcRβ、FcRε、CD3γ、CD3δ、CD3ε、CD5、CD22、CD79a、CD79b、およびCD66dに由来するITAMが含まれ得る。特定の態様によれば、多鎖CARのシグナル伝達ドメインはCD3ζシグナル伝達ドメインを含んでもよく、FcεRIβ鎖またはγ鎖の細胞質内ドメインを含んでもよい。
【0139】
特定の態様によれば、本発明の多鎖CARのシグナル伝達ドメインは共刺激シグナル分子を含む。共刺激分子は、効率的な免疫応答に必要な、抗原受容体またはそのリガンド以外の細胞表面分子である。
【0140】
リガンド結合ドメインは、文献において言及された単鎖CARに関して、以前に使用および言及された任意の抗原受容体、特に、モノクローナル抗体に由来するscFvでよい。
【0141】
操作されたT細胞
本発明の結果として、改善された特徴を有する、操作されたT細胞を得ることができる。特に、本発明は、B2Mおよび/またはCIITAの発現が阻害されていることを特徴とする、操作された、好ましくは、単離されたT細胞を提供する。
【0142】
ある特定の態様によれば、本発明は、B2Mをコードする遺伝子をDNA切断、好ましくは、二本鎖切断によって選択的に不活性化することができるレアカットエンドヌクレアーゼを発現する、操作された、好ましくは、単離されたT細胞を提供する。特定の態様によれば、前記T細胞は、前記レアカットエンドヌクレアーゼをコードするヌクレオチド配列を含む外因性核酸分子を含む。さらに特定の態様によれば、前記レアカットエンドヌクレアーゼは、TAL-ヌクレアーゼ、メガヌクレアーゼ、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、またはRNAガイドエンドヌクレアーゼである。従って、具体的な態様によれば、レアカットエンドヌクレアーゼはTAL-ヌクレアーゼである。別の具体的な態様によれば、レアカットエンドヌクレアーゼはメガヌクレアーゼである。別の具体的な態様によれば、レアカットエンドヌクレアーゼはジンクフィンガーヌクレアーゼである。さらに別の具体的な態様によれば、レアカットエンドヌクレアーゼは、RNAガイドエンドヌクレアーゼ、例えば、Cas9である。
【0143】
ある特定の他の態様によれば、本発明は、B2Mの発現を阻害する外因性核酸分子を含む、操作された、好ましくは、単離されたT細胞を提供する。特定の態様によれば、前記T細胞は、B2Mの発現を阻害する核酸分子をコードするヌクレオチド配列を含む外因性核酸分子を含む。さらに特定の態様によれば、B2Mの発現を阻害する核酸分子は、アンチセンスオリゴヌクレオチド、リボザイム、または干渉RNA(RNAi)分子である。従って、具体的な態様によれば、B2Mの発現を阻害する核酸分子はアンチセンスオリゴヌクレオチドである。別の具体的な態様によれば、B2Mの発現を阻害する核酸分子はリボザイムであり、好ましくは、ハンマーヘッド型リボザイムである。別の具体的な態様によれば、B2Mの発現を阻害する核酸分子は干渉RNA分子である。
【0144】
ある特定の態様によれば、本発明は、CIITAをコードする遺伝子をDNA切断、好ましくは、二本鎖切断によって選択的に不活性化することができるレアカットエンドヌクレアーゼを発現する、操作された、好ましくは、単離されたT細胞を提供する。特定の態様によれば、前記T細胞は、前記レアカットエンドヌクレアーゼをコードするヌクレオチド配列を含む外因性核酸分子を含む。さらに特定の態様によれば、前記レアカットエンドヌクレアーゼは、TAL-ヌクレアーゼ、メガヌクレアーゼ、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、またはRNAガイドエンドヌクレアーゼである。従って、具体的な態様によれば、レアカットエンドヌクレアーゼはTAL-ヌクレアーゼである。別の具体的な態様によれば、レアカットエンドヌクレアーゼはメガヌクレアーゼである。別の具体的な態様によれば、レアカットエンドヌクレアーゼはジンクフィンガーヌクレアーゼである。さらに別の具体的な態様によれば、レアカットエンドヌクレアーゼは、RNAガイドエンドヌクレアーゼまたはDNAガイドエンドヌクレアーゼ、例えば、Cas9またはアルゴノート(Argonaute)である。
【0145】
ある特定の他の態様によれば、本発明は、CIITA発現を阻害する外因性核酸分子を含む、操作された、好ましくは、単離されたT細胞を提供する。特定の態様によれば、前記T細胞は、CIITAの発現を阻害する核酸分子をコードするヌクレオチド配列を含む外因性核酸分子を含む。さらに特定の態様によれば、CIITAの発現を阻害する核酸分子は、アンチセンスオリゴヌクレオチド、リボザイム、または干渉RNA(RNAi)分子である。従って、具体的な態様によれば、CIITAの発現を阻害する核酸分子はアンチセンスオリゴヌクレオチドである。別の具体的な態様によれば、CIITAの発現を阻害する核酸分子はリボザイムであり、好ましくは、ハンマーヘッド型リボザイムである。別の具体的な態様によれば、CIITAの発現を阻害する核酸分子は干渉RNA分子である。
【0146】
ある特定の態様によれば、操作されたT細胞は、DNA切断、好ましくは、二本鎖切断によって選択的に不活性化することができるレアカットエンドヌクレアーゼ、T細胞受容体(TCR)、例えば、TCRαの成分をコードする少なくとも1種類の遺伝子をさらに発現する。特定の態様によれば、前記T細胞は、前記レアカットエンドヌクレアーゼをコードするヌクレオチド配列を含む外因性核酸分子を含む。
【0147】
ある特定の態様によれば、操作されたT細胞は、悪性細胞または感染細胞の表面に発現している少なくとも1種類の抗原に対して向けられたキメラ抗原受容体(CAR)をさらに含む。特定の態様によれば、前記T細胞は、前記CARをコードするヌクレオチド配列を含む外因性核酸分子を含む。
【0148】
一部の態様によれば、本発明は、少なくとも1種類の非内因性免疫抑制ポリペプチドを発現する、操作された、好ましくは、単離されたT細胞を提供する。特定の態様によれば、前記非内因性免疫抑制ポリペプチドは、ウイルスMHCホモログ、例えば、UL18である。従って、前記T細胞は、SEQ ID NO:89と少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%の同一性を有するポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む外因性核酸分子を含んでもよい。他の特定の態様によれば、前記非内因性免疫抑制ポリペプチドはNKG2Dリガンドである。従って、前記T細胞は、SEQ ID NO:90〜97のいずれか1つと少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%の同一性を有するポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む外因性核酸分子を含んでもよい。
【0149】
特に、B2Mをコードする遺伝子をDNA切断によって選択的に不活性化することができるレアカットエンドヌクレアーゼ、B2Mの発現を阻害する核酸分子、T細胞受容体(TCR)の成分をコードする少なくとも1種類の遺伝子をDNA切断によって選択的に不活性化することができるレアカットエンドヌクレアーゼ、およびキメラ抗原受容体について本明細書において示された詳しい内容が本発明のこの局面にも適用されることが理解される。
【0150】
さらに、本発明の範囲には、好ましくは、これらの表現型:
[b2m]
-[TCR]
-
[TCR]
-[PD1]
-[PDL-1]
+
[b2m]
-[TCR]
-[PD1]
-
[b2m]
-[TCR]
-[PD1]
-[PDL-1]
+
[b2m]
-[ウイルスMHCホモログ]
+
[b2m]
-[TCR]
-[ウイルスMHCホモログ]
+
[b2m]
-[NKG2Dリガンド]
+
[b2m]
-[TCR]
-[NKG2Dリガンド]
+
の1つを示す、本発明による操作されたT細胞から得られた細胞または細胞株も包含される。
【0151】
本発明によるT細胞は、好ましくは[CAR]
+、すなわち、腫瘍細胞の特異的認識を方向付けるようにキメラ抗原受容体で武装されている。
【0152】
送達方法
本発明者らは、本発明に従って用いられる核酸分子を細胞内に、または前記細胞の細胞下区画に送達するために当技術分野において公知の、あらゆる手段を考えた。これらの手段には、非限定的な例として、ウイルス形質導入、エレクトロポレーションが含まれ、リポソーム送達手段、ポリマー担体、化学的担体、リポプレックス、ポリプレックス、デンドリマー、ナノ粒子、エマルジョン、天然のエンドサイトーシスまたはファゴサイトース(phagocytose)経路も含まれる。
【0153】
本発明によれば、本明細書において詳述された核酸分子は、当技術分野において公知の任意の適切な方法によってT細胞に導入することができる。核酸分子をT細胞内に導入する適切な非限定的な方法には、核酸分子が細胞ゲノムに組み込まれる安定形質転換法、核酸分子が細胞ゲノムに組み込まれない一過的形質転換法、およびウイルスを介した方法が含まれる。前記核酸分子は、例えば、組換えウイルスベクター(例えば、レトロウイルス、アデノウイルス)、リポソームなどによって前記細胞に導入されてもよい。一過的形質転換法には、例えば、マイクロインジェクション、エレクトロポレーション、またはパーティクルボンバードメントが含まれる。ある特定の態様において、核酸分子は、ベクター、例えば、ウイルスベクターまたはプラスミドである。適宜、前記ベクターは、T細胞による、本明細書において詳述された、それぞれのポリペプチドまたはタンパク質の発現を可能にする発現ベクターである。
【0154】
T細胞に導入される核酸分子はDNAでもよくRNAでもよい。ある特定の態様において、T細胞に導入される核酸分子はDNAである。ある特定の態様において、T細胞に導入される核酸分子は、RNA、特に、本明細書において詳述されたポリペプチドまたはタンパク質をコードするmRNAであり、このmRNAは、例えば、エレクトロポレーションによって、T細胞に直接導入される。適切なエレクトロポレーション技法は、例えば、国際公開WO2013/176915(特に「エレクトロポレーション」ブリッジングという表題のセクション、29〜30頁)に記載されている。mRNAでもよい特定の核酸分子は、B2Mをコードする遺伝子をDNA切断によって選択的に不活性化することができるレアカットエンドヌクレアーゼをコードするヌクレオチド配列を含む核酸分子である。mRNAでもよい別の特定の核酸分子は、CIITAをコードする遺伝子をDNA切断によって選択的に不活性化することができるレアカットエンドヌクレアーゼをコードするヌクレオチド配列を含む核酸分子である。mRNAでもよい、さらに他の特定の核酸分子は、T細胞受容体(TCR)の1成分をコードする少なくとも1種類の遺伝子をDNA切断によって選択的に不活性化することができるレアカットエンドヌクレアーゼをコードするヌクレオチド配列を含む核酸分子である。
【0155】
本発明の好ましい態様として、一過的に発現させて、外来DNAの染色体組込みを回避するために、本発明のエンドヌクレアーゼをコードする核酸分子は、mRNAの形で、例えば、エレクトロポレーションによってトランスフェクトされる。本発明者らは、表1に示した、T細胞におけるmRNAエレクトロポレーションに最適な様々な条件を確かめた。本発明者は、パルス電場を用いることで、材料を細胞に送達するために生細胞を一過的に透過処理するのを可能にするcytoPulse技術を使用した(米国特許第6,010,613号およびWO2004/083379)。高いトランスフェクション効率と最低限の死のための最高条件に達するために、パルス持続時間、強度、ならびにパルス間の間隔は変更することができる。基本的には、最初の高電場パルスによって孔が形成するのに対して、その後の低電場パルスによってポリヌクレオチドは細胞内に移動する。本発明の一局面において、本発明者は、T細胞におけるmRNAの>95%トランスフェクション効率の達成につながった工程、およびT細胞において様々な種類のタンパク質を一過的に発現させるためのエレクトロポレーションプロトコールの使用について説明する。特に、本発明は、T細胞を形質転換する方法に関し、本方法は、
前記T細胞をRNAと接触させる工程と、
(a)電圧範囲が2250〜3000V/センチメートルであり、パルス幅が0.1msであり、工程(a)の電気パルスと(b)の電気パルスとの間のパルス間隔が0.2〜10msである、1回の電気パルス、
(b)電圧範囲が2250〜3000Vであり、パルス幅が100msであり、工程(b)の電気パルスと工程(c)の最初の電気パルスとの間のパルス間隔が100msである、1回の電気パルス、および
(c)電圧が325Vであり、パルス幅が0.2msであり、4回それぞれの電気パルス間のパルス間隔が2msである、4回の電気パルス
からなる素早いパルスシーケンスをT細胞に適用する工程
を含む。
【0156】
特定の態様において、T細胞を形質転換する方法は、
前記T細胞をRNAと接触させる工程と、
(a)電圧が2250V、2300V、2350V、2400V、2450V、2500V、2550V、2400V、2450V、2500V、2600V、2700V、2800V、2900V、または3000V/センチメートルであり、パルス幅が0.1msであり、工程(a)の電気パルスと(b)の電気パルスとの間のパルス間隔が0.2ms、0.5ms、1ms、2ms、3ms、4ms、5ms、6ms、7ms、8ms、9ms、または10msである、1回の電気パルス;
(b)電圧範囲が2250V、2250V、2300V、2350V、2400V、2450V、2500V、2550V、2400V、2450V、2500V、2600V、2700V、2800V、2900V、または3000Vであり、パルス幅が100msであり、工程(b)の電気パルスと工程(c)の最初の電気パルスとの間のパルス間隔が100msである、1回の電気パルス;および
(c)電圧が325Vであり、パルス幅が0.2msであり、4回それぞれの電気パルス間のパルス間隔が2msである、4回の電気パルス
からなる素早いパルスシーケンスをT細胞に適用する工程を含む。
【0157】
前記の値の範囲に含まれる任意の値が本願において開示される。エレクトロポレーション培地は当技術分野において公知の任意の適切な培地でよい。好ましくは、エレクトロポレーション培地の伝導率は0.01〜1.0ミリシーメンスの範囲である。
【0158】
(表1)PBMC由来T細胞におけるエレクトロポレーションに必要な最低電圧を求めるために使用した様々なcytopulseプログラム
【0159】
非アロ反応性T細胞
本発明の方法は、遺伝子療法の一環として、例えば、血液循環中で、特異的レアカットエンドヌクレアーゼを発現する遺伝子配列と、例えば、CARを発現する他の遺伝子配列を含む、T細胞を標的とするウイルスベクターを用いることによってインビボで行うことができるが、本発明の方法は、さらに一般的には、患者またはドナーから入手可能な培養T細胞に対してエクスビボで実施されることが意図される。エクスビボで操作された、操作されたT細胞は、自家処置の一環として、これが得られた患者に再移植されてもよく、同種異系処置の一環として用いられてもよい。この後者の場合では、細胞が確実に正しく生着するように非アロ反応性になるように細胞をさらに操作することが好ましい。従って、本発明の方法は、ドナーからT細胞を獲得し、かつ、例えばWO2013/176915に記載のように、MHC認識に関与するおよび/または免疫抑制薬物の標的であるT細胞遺伝子を不活性化する、さらなる工程を含んでもよい。
【0160】
T細胞受容体(TCR)は、抗原提示に応答したT細胞活性化に関与する細胞表面受容体である。TCRは、一般的に、集合してヘテロ二量体を形成する2本のα鎖およびβ鎖から作られ、CD3伝達サブユニットと結合して、細胞表面に存在するT細胞受容体複合体を形成する。TCRのα鎖およびβ鎖はそれぞれ、免疫グロブリンに似たN末端可変(V)領域および定常(C)領域、疎水性膜貫通ドメイン、ならびに短い細胞質領域からなる。免疫グロブリン分子と同様に、α鎖およびβ鎖の可変領域は、T細胞集団内に抗原特異性の大きな多様性を生み出すV(D)J組換えによって生じる。しかしながら、インタクトな抗原を認識する免疫グロブリンとは対照的に、T細胞は、MHC分子と結合した処理ペプチド断片によって活性化される。これによって、MHC拘束と知られる、T細胞による抗原認識にさらなる要素が導入される。T細胞受容体を介してドナーとレシピエントとのMHC不一致が認識されると、T細胞が増殖し、場合によってはGVHDが発症する。正常なTCR表面発現は、複合体の7つ全ての成分の協調した合成および集合に依存することが示されている(Ashwell and Klusnor 1990)。TCRαまたはTCRβを不活性化するとT細胞表面からTCRが無くなり、それによって、アロ抗原の認識が阻止され、従って、GVHDが阻止される。
【0161】
従って、さらに本発明によれば、T細胞の生着は、TCR成分をコードする少なくとも1種類の遺伝子を不活性化することによって改善され得る。TCRα遺伝子および/またはTCRβ遺伝子を不活性化することによって、TCRは細胞内で機能しなくなる。
【0162】
Cas9/クリスパー系の使用に関して、本発明者らは、TCRをコードする3つのエキソンの中に適切な標的配列を確かめており、そのため、切断効率を保持しながら、生細胞において毒性を大幅に低減することが可能になった。好ましい標的配列を表2に示した(TCR陰性細胞の比が低い場合は+、比が中間の場合は++、比が高い場合は+++)。
【0163】
(表2)T細胞においてCas9を用いるガイドRNAの適切な標的配列
【0164】
MHC抗原はまた、移植反応において主な役割を果たすタンパク質でもある。拒絶反応は、T細胞が、移植された組織の表面にある組織適合抗原と反応することによって媒介され、これらの抗原の大きなグループは主要組織適合抗原(MHC)である。これらのタンパク質は全ての高等脊椎動物の表面に発現しており、ヒト細胞ではHLA抗原(ヒト白血球抗原)と呼ばれる。TCRと同様に、MHCタンパク質はT細胞刺激において重要な役割を果たしている。抗原提示細胞(多くの場合、樹状細胞)は、細胞表面にあるMHCに載せて、外来タンパク質の分解産物であるペプチドを呈する。共刺激シグナルの存在下でT細胞は活性化され、同様に同じペプチド/MHC複合体を呈する標的細胞に作用する。例えば、刺激されたTヘルパー細胞が、抗原をMHCと共に呈するマクロファージを標的とするか、または細胞傷害性T細胞(CTL)が、外来ウイルスペプチドを呈するウイルス感染細胞に作用する。
【0165】
従って、アロ反応性の低いT細胞を提供するために、本発明の方法は、あるHLA遺伝子を不活性化する、または変異させる工程をさらに含んでもよい。
【0166】
ヒトのクラスI HLA遺伝子クラスターは3つのメジャー遺伝子座B、C、およびAと、いくつかのマイナー遺伝子座を含む。クラスII HLAクラスターも3つのメジャー遺伝子座DP、DQ、およびDRを含み、クラスI遺伝子クラスターおよびクラスII遺伝子クラスターは両方とも、集団内にクラスI遺伝子およびクラスII遺伝子両方のいくつかの異なるアレルがある点で多型である。同様にHLA機能において役割を果たす、いくつかのアクセサリータンパク質もある。Tap1およびTap2サブユニットは、ペプチド抗原をクラスI HLA複合体に装填するのに必要不可欠なTAP輸送体複合体の一部である。LMP2およびLMP7プロテオソームサブユニットは、HLAに載せて呈するために抗原からペプチドへのタンパク質分解において役割を果たしている。LMP7の低減は、おそらく、安定化の欠如により、細胞表面にあるMHCクラスIの量を低減することが示されている(Fehling et al. (1999) Science 265:1234-1237)。TAPおよびLMPの他に、その産物がTAP複合体とHLAクラスI鎖との架橋を形成し、ペプチドの装填を増強するタパシン遺伝子がある。タパシンが低減すると、MHCクラスI集合が損なわれ、MHCクラスIの細胞表面発現が低減し、免疫応答が損なわれた細胞が生じる(Grandea et al. (2000) Immunity 13:213-222およびGarbi et al. (2000) Nat. Immunol. 1:234-238)。上記の遺伝子はいずれも、開示されたように、例えば、WO2012/012667に開示されたように本発明の一部として不活性化することができる。
【0167】
従って、ある特定の態様によれば、本発明の方法は、RFXANK、RFX5、RFXAP、TAP1、TAP2、ZXDA、ZXDB、およびZXDCからなる群より選択される少なくとも1種類の遺伝子を不活性化する工程をさらに含む。不活性化は、例えば、ゲノム改変を用いることによって、さらに具体的には、RFXANK、RFX5、RFXAP、TAPl、TAP2、ZXDA、ZXDB、およびZXDCからなる群より選択される遺伝子をDNA切断によって選択的に不活性化することができるレアカットエンドヌクレアーゼをT細胞において発現させることによって成し遂げられてもよい。
【0168】
T細胞の活性化および増殖
本発明による方法は、T細胞を活性化および/または増殖するさらなる工程を含んでもよい。これは、T細胞を遺伝子組換えする前または遺伝子組換えした後に、例えば、米国特許第6,352,694号;同第6,534,055号;同第6,905,680号;同第6,692,964号;同第5,858,358号;同第6,887,466号;同第6,905,681号;同第7,144,575号;同第7,067,318号;同第7,172,869号;同第7,232,566号;同第7,175,843号;同第5,883,223号;同第6,905,874号;同第6,797,514号;同第6,867,041号;および米国特許出願公開第20060121005号に記載の方法を用いて行うことができる。これらの方法に従って、CD3 TCR複合体に関連するシグナルを刺激する作用物質およびT細胞表面にある共刺激分子を刺激するリガンドが接着された表面と接触させることによって、本発明のT細胞を増殖することができる。
【0169】
特に、T細胞集団は、例えば、表面に固定化された抗CD3抗体もしくはその抗原結合断片または抗CD2抗体との接触によってインビトロで刺激されてもよく、プロテインキナーゼCアクチベーター(例えば、ブリオスタチン)とカルシウムイオノフォアとの接触によってインビトロで刺激されてもよい。T細胞表面にあるアクセサリー分子を同時刺激するために、アクセサリー分子に結合するリガンドが用いられる。例えば、T細胞増殖を刺激するのに適した条件下で、T細胞集団と抗CD3抗体および抗CD28抗体を接触させることができる。CD4+ T細胞またはCD8+ T細胞のいずれかの増殖を刺激するために、抗CD3抗体および抗CD28抗体。例えば、各シグナルを提供する作用物質は、溶液中にあってもよく、または表面に結合していてもよい。当業者が容易に認識し得るように、粒子と細胞の割合は、標的細胞に対する粒子のサイズに依存し得る。本発明のさらなる態様において、細胞、例えばT細胞は、薬剤コーティングビーズと組み合わされ、ビーズおよび細胞は後で分離され、次いで、細胞は培養される。別の態様では、培養前に薬剤コーティングビーズおよび細胞は分離されず、一緒に培養される。抗CD3および抗CD28が取り付けられている常磁性ビーズ(3x28ビーズ)がT細胞と接触するのを可能にすることで、細胞表面タンパク質が連結される場合がある。一態様において、細胞(例えば、4〜10個のT細胞)およびビーズ(例えば、1:1比のDYNABEADS(登録商標)M-450 CD3/CD28 T常磁性ビーズ)が、緩衝液中、好ましくは、PBS(カルシウムおよびマグネシウムなどの二価カチオンを含まない)の中で組み合わされる。これもまた、任意の細胞濃度を使用できることを当業者は容易に理解することができる。混合物は数時間(約3時間)〜約14日間、培養されてもよく、その間の任意の整数値の時間にわたって培養されてもよい。別の態様では、混合物は21日間、培養されてもよい。T細胞培養に適した条件には、血清(例えば、胎仔ウシ血清または胎児ヒト血清)、インターロイキン-2(IL-2)、インシュリン、IFN-g、1L-4、1L-7、GM-CSF、-10、-2、1L-15、TGFp、およびTNF-、または当業者に公知の細胞増殖のための他の任意の添加物を含む、増殖および生存に必要な因子を含有し得る適切な培地(例えば、最小必須培地またはRPMI培地1640またはX-vivo 5(Lonza))が含まれる。細胞増殖のための他の添加物には、界面活性剤、プラスマネート(plasmanate)、および還元剤、例えば、N-アセチル-システインおよび2-メルカプトエタノールが含まれるが、これに限定されない。培地には、アミノ酸、ピルビン酸ナトリウム、およびビタミンが添加され、無血清の、あるいは適量の血清(もしくは血漿)、または規定された一組のホルモン、ならびに/またはT細胞の成長および増殖に十分な量のサイトカインが加えられた、RPMI 1640、A1M-V、DMEM、MEM、a-MEM、F-12、X-Vivo 1、およびX-Vivo 20、Optimizerが含まれ得る。抗生物質、例えば、ペニシリンおよびストレプトマイシンは実験的培養物にだけ含まれ、対象に注入される細胞の培養物には含まれない。標的細胞は、増殖を支援するのに必要な条件、例えば、適切な温度(例えば、37℃)および雰囲気(例えば、空気+5%CO2)の下で維持される。異なる刺激時間に曝露されたT細胞は異なる特徴を示す場合がある。
【0170】
別の特定の態様において、これらの細胞は、組織または細胞と共培養することによって増殖させることができる。これらの細胞はまた、インビボ、例えば前記細胞を対象に投与した後に対象の血液中で増殖させることができる。
【0171】
治療用途
本発明に従って入手可能なT細胞は、医薬、特に、必要とする患者において癌、感染症(例えば、ウイルス感染症)、または免疫疾患を処置するための医薬として用いられることが意図される。従って、本発明は、医薬として使用するための、操作されたT細胞を提供する。特に、本発明は、癌、例えば、リンパ腫、またはウイルス感染症の処置において使用するための、操作されたT細胞を提供する。少なくとも1つの本発明の操作されたT細胞を含む組成物、特に、薬学的組成物も提供される。ある特定の態様において、組成物は、本発明の操作されたT細胞の集団を含んでもよい。
【0172】
前記処置は、寛解させる処置でもよく、根治的処置でもよく、予防的処置でもよい。前記処置は自家免疫療法の一環でもよく、同種異系免疫療法処置の一環でもよい。自家とは、患者の処置に用いられる細胞、細胞株、または細胞集団が前記患者またはヒト白血球抗原(HLA)適合ドナーに由来することを意味する。同種異系とは、患者の処置に用いられる細胞または細胞集団が前記患者に由来しないが、ドナーに由来することを意味する。
【0173】
本発明は、典型的にはドナーから得られたT細胞を形質転換して非アロ反応性細胞にすることができる限り、同種異系免疫療法に特に適している。これは標準的なプロトコール下で行われ、必要に応じて何回でも再現される場合がある。結果として得られた改変されたT細胞はプールされてもよく、1人または数人の患者に投与されてもよく、「既製の」治療製品として利用することができる。
【0174】
処置は、主として、癌と診断された患者を処置することを目的とする。癌は、好ましくは、液性腫瘍を有するが、固形腫瘍にも関係することがある白血病およびリンパ腫である。本発明の遺伝子操作されたT細胞を用いて処置される癌のタイプには、癌腫、芽腫、および肉腫、ならびにある特定の白血病またはリンパ系腫瘍、良性腫瘍および悪性腫瘍、ならびに悪性疾患、例えば、肉腫、癌腫、および黒色腫が含まれるが、これに限定されない。成人腫瘍/癌および小児科腫瘍/癌も含まれる。
【0175】
前記処置は、抗体療法、化学療法、サイトカイン療法、樹状細胞療法、遺伝子療法、ホルモン療法、レーザー光療法、および放射線療法の群より選択される1つまたは複数の療法と組み合わせて行うことができる。
【0176】
ある特定の態様によれば、本発明のT細胞は患者に投与されると活発にインビボでT細胞増殖することができ、長期間にわたって、好ましくは、1週間、より好ましくは、2週間、さらにより好ましくは、少なくとも1ヶ月にわたって体液中に残り続けることができる。本発明によるT細胞は、これらの期間にわたって残り続けると予想されるが、患者の体内での寿命は、1年、好ましくは、6ヶ月、より好ましくは、2ヶ月、さらにより好ましくは、1ヶ月を超えないことが意図される。
【0177】
本発明による細胞または細胞集団の投与は、エアロゾル吸入、注射、摂取、輸血、移植(implantation)、または移植(transplantation)を含む任意の従来のやり方で行われてもよい。本明細書に記載の組成物は、患者に、皮下に、皮内に、腫瘍内に、結節内に、髄内に、筋肉内に、静脈内注射もしくはリンパ内注射によって、または腹腔内に投与されてもよい。一態様において、本発明の細胞組成物は、好ましくは、静脈内注射によって投与される。
【0178】
細胞または細胞集団の投与は、体重1kgにつき104〜109個の細胞を、好ましくは、体重1kgにつき105〜106個の細胞を、この範囲内にある全ての整数値の細胞数を含めて投与することからなってもよい。前記の細胞または細胞集団は1回の投与または複数回の投与で投与されてもよい。別の態様において、前記有効量の細胞は単回投与として投与される。別の態様において、前記有効量の細胞は、ある期間にわたって複数回投与として投与される。投与のタイミングは、管理を行っている医師によって判断され、患者の臨床状態に左右される。前記の細胞または細胞集団は、血液バンクまたはドナーなどの任意の供給源から得ることができる。個々のニーズは異なるが、特定の疾患または状態に対する特定の細胞タイプの有効量の最適範囲の決定は当技術分野の技術の範囲内にある。有効量とは、治療的利益または予防的利益をもたらす量を意味する。投与される投与量は、レシピエントの年齢、健康状態、および体重、併用処置がもしあれば、その種類、処置の頻度、ならびに望ましい効果がどういったものかに左右される。
【0179】
別の態様において、前記有効量の細胞または細胞を含む組成物が非経口投与される。前記投与は静脈内投与でもよい。前記投与は腫瘍内に注射することによって直接行われてもよい。
【0180】
ある特定の態様において、細胞は、薬剤、例えば、抗ウイルス療法、シドホビルおよびインターロイキン-2、シタラビン(ARA-Cとも知られる)、またはMS患者の場合はナタリジマブ(nataliziimab)処置もしくは乾癬患者の場合はエファリズチマブ(efaliztimab)処置もしくはPML患者の場合は他の処置を含むが、これに限定されない任意の数の関係のある治療モダリティーと一緒に(例えば、その前に、それと同時に、またはその後に)患者に投与される。さらなる態様において、本発明のT細胞は、化学療法、放射線、免疫抑制剤、例えば、シクロスポリン、アザチオプリン、メトトレキセート、ミコフェノール酸、およびFK506、抗体、または他の免疫除去剤(immunoablative agent)、例えば、CAMPATH、抗CD3抗体、または他の抗体療法、サイトキシン(cytoxin)、フルダリビン(fludaribine)、シクロスポリン、FK506、ラパマイシン、ミコプリノール酸(mycoplienolic acid)、ステロイド、FR901228、サイトカイン、ならびに放射線照射と併用されてもよい。これらの薬物はカルシウム依存性ホスファターゼカルシニューリンを阻害するか(シクロスポリンおよびFK506)、または増殖因子誘導性シグナル伝達に重要なp70S6キナーゼを阻害する(ラパマイシン)(Liu et al., Cell 66:807-815, 11; Henderson et al., Immun. 73:316-321, 1991; Bierer et al., Citrr. Opin. mm n. 5:763-773, 93)。さらなる態様において、本発明の細胞組成物は、骨髄移植、化学療法剤、例えば、フルダラビン、外部ビーム放射線療法(XRT)、シクロホスファミド、または抗体、例えば、OKT3もしくはCAMPATHのいずれかを用いたT細胞除去療法(ablative therapy)と共に(例えば、その前に、それと同時に、またはその後に)患者に投与される。別の態様において、本発明の細胞組成物は、B細胞切除療法、例えば、CD20と反応する薬剤、例えば、リツキサンの後に投与される。例えば、一態様において、対象は、高用量化学療法を用いた標準的な処置を受けた後に、末梢血幹細胞移植を受けてもよい。ある特定の態様において、移植後に、対象には、増殖された本発明の遺伝子操作されたT細胞が注入される。さらなる態様では、増殖された細胞が外科手術前または外科手術後に投与される。
【0181】
処置を必要とする患者において処置するための方法も本発明のこの局面に包含され、本方法は、(a)少なくとも1つの本発明の操作されたT細胞、好ましくは、前記T細胞の集団を準備する工程、および(b)前記T細胞または集団を前記患者に投与する工程を含む。
【0182】
少なくとも1つの本発明の操作されたT細胞、好ましくは、前記T細胞の集団を用いた医薬を調製するための方法も本発明のこの局面に包含される。従って、本発明は、医薬の製造における、少なくとも1つの本発明の操作されたT細胞、好ましくは、前記T細胞の集団の使用を提供する。好ましくは、このような医薬は、癌、例えば、リンパ腫、またはウイルス感染症の処置において使用するためのものである。
【0183】
他の定義
ポリペプチド配列中のアミノ酸残基は一文字表記に従って本明細書において指定される。例えば、QはGlnまたはグルタミン残基を意味し、RはArgまたはアルギニン残基を意味し、DはAspまたはアスパラギン酸残基を意味する。
【0184】
アミノ酸の置換とは、あるアミノ酸残基と別のアミノ酸残基との交換を意味する。例えば、ペプチド配列中のアルギニン残基とグルタミン残基との交換はアミノ酸置換である。
【0185】
ヌクレオチドは以下の通りに指定される。ヌクレオシドの塩基を指定するのに一文字表記が用いられる。すなわち、aはアデニンであり、tはチミンであり、cはシトシンであり、gはグアニンである。縮重ヌクレオチドの場合、rはgまたはa(プリンヌクレオチド)を表し、kはgまたはtを表し、sはgまたはcを表し、wはaまたはtを表し、mはaまたはcを表し、yはtまたはc(ピリミジンヌクレオチド)を表し、dはg、a、またはtを表し、vはg、a、またはcを表し、bはg、t、またはcを表し、hはa、t、またはcを表し、nはg、a、t、またはcを表す。
【0186】
本明細書で使用する「核酸」または「ポリヌクレオチド」とは、ヌクレオチドおよび/またはポリヌクレオチド、例えば、デオキシリボ核酸(DNA)またはリボ核酸(RNA)、オリゴヌクレオチド、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によって生じた断片、ならびに連結、切断、エンドヌクレアーゼ作用、およびエキソヌクレアーゼ作用のいずれかによって生じた断片を指す。核酸分子は、天然ヌクレオチド(例えば、DNAおよびRNA)もしくは天然ヌクレオチドの類似体(例えば、天然ヌクレオチドのエナンチオマー型)の単量体で構成されてもよく、両方の組み合わせで構成されてもよい。改変ヌクレオチドは糖部分および/またはピリミジン塩基部分もしくはプリン塩基部分の変化を有することがある。糖の改変には、例えば、1つまたは複数のヒドロキシル基と、ハロゲン、アルキル基、アミン、およびアジド基との交換が含まれる。または、糖はエーテルまたはエステルとして官能化されてもよい。さらに、糖部分全体が、アザ糖および炭素環式糖類似体などの立体的および電子的に似た構造と交換されてもよい。塩基部分の改変の例には、アルキル化されたプリンおよびピリミジン、アシル化されたプリンもしくはピリミジン、または他の周知の複素環式置換基が含まれる。核酸単量体がホスホジエステル結合またはこのような連結の類似体によって連結されてもよい。核酸は一本鎖でも二本鎖でもよい。
【0187】
「前記二本鎖切断の上流側にある配列と相同な第1の領域、前記細胞のゲノムに挿入しようとする配列、および前記二本鎖切断の下流側にある配列と相同な第2の領域を連続して含むポリヌクレオチド」とは、インサイチューでDNA標的の5'側および3'側の領域と相同な第1の部分および第2の部分を含むDNA構築物またはマトリックスを意味することが意図される。DNA構築物はまた、インサイチューで、対応するDNA配列といくらかの相同性を含むか、またはインサイチューでDNA標的の5'側および3'側の領域と相同性を含まない、第1の部分と第2の部分との間に配置される第3の部分も含む。DNA標的が切断された後に、関心対象の遺伝子座に含まれる標的化遺伝子を含有するゲノムと、このマトリックスとの間で相同組換え事象が刺激され、DNA標的を含有するゲノム配列は、マトリックスの第3の部分ならびに前記マトリックスの第1の部分および第2の部分の可変部と交換される。
【0188】
「DNA標的」、「DNA標的配列」、「標的DNA配列」、「核酸標的配列」、「標的配列」、または「プロセシング部位」とは、本発明によるレアカットエンドヌクレアーゼによって標的化および処理することができるポリヌクレオチド配列を意図する。これらの用語は、細胞内にある特定のDNA場所、好ましくは、ゲノム場所だけでなく、遺伝物質の本体とは独立して存在することができる遺伝物質部分、例えば、非限定的な例として、プラスミド、エピソーム、ウイルス、トランスポゾン、またはミトコンドリアなどの細胞小器官の中にある遺伝物質部分も指す。RNAガイド標的配列の非限定的な例は、RNAガイドエンドヌクレアーゼを望ましい遺伝子座に向けるガイドRNAにハイブリダイズすることができるゲノム配列である。
【0189】
「送達ベクター」は、本発明において必要とされる薬剤/化学物質および分子(タンパク質または核酸)を細胞に触れ合わせる(すなわち、細胞と「接触させる」)か、または細胞内もしくは細胞下区画内に送達する(すなわち、「導入する」)のに本発明において使用することができる任意の送達ベクターであることが意図される。「送達ベクター」には、リポソーム送達ベクター、ウイルス送達ベクター、薬物送達ベクター、化学的担体、ポリマー担体、リポプレックス、ポリプレックス、デンドリマー、マイクロバブル(超音波造影剤)、ナノ粒子、エマルジョン、または他の適切な導入ベクターが含まれるが、これに限定されない。これらの送達ベクターによって、分子、化学物質、高分子(遺伝子、タンパク質)、または他のベクター、例えば、プラスミド、または透過性ペプチドの送達が可能になる。これらの後者の場合、送達ベクターは分子担体である。
【0190】
「ベクター」またはという用語は、連結している別の核酸を輸送することができる核酸分子を指す。本発明における「ベクター」には、ウイルスベクター、プラスミド、RNAベクター、または染色体、非染色体、半合成、もしくは合成の核酸からなってもよい直鎖もしくは環状のDNA分子もしくはRNA分子が含まれるが、これに限定されない。好ましいベクターは、連結している核酸の自律的な複製が可能なベクター(エピソームベクター)および/または連結している核酸の発現が可能なベクター(発現ベクター)である。多数の適切なベクターが当業者に公知であり、市販されている。
【0191】
ウイルスベクターには、レトロウイルス、アデノウイルス、パルボウイルス(例えば、アデノ随伴ウイルス)、コロナウイルス、マイナス鎖RNAウイルス、例えば、オルソミクソウイルス(例えば、インフルエンザウイルス)、ラブドウイルス(例えば、狂犬病ウイルスおよび水疱性口内炎ウイルス)、パラミクソウイルス(例えば、麻疹およびセンダイ)、プラス鎖RNAウイルス、例えば、ピコルナウイルスおよびアルファウイルス、ならびにアデノウイルス、ヘルペスウイルス(例えば、単純ヘルペスウイルス1型および2型、エプスタイン-バーウイルス、サイトメガロウイルス)ならびにポックスウイルス(例えば、ワクシニア、鶏痘、およびカナリアポックス)を含む二本鎖DNAウイルスが含まれる。他のウイルスには、例えば、ノーウォークウイルス、トガウイルス、フラビウイルス、レオウイルス、パポバウイルス、ヘパドナウイルス、および肝炎ウイルスが含まれる。レトロウイルスの例には、トリ白血病肉腫ウイルス、哺乳動物C型、B型ウイルス、D型ウイルス、HTLV-BLV群、レンチウイルス、スプーマウイルスが含まれる(Coffin, J. M., Retroviridae: The viruses and their replication, In Fundamental Virology, Third Edition, B. N. Fields, et al., Eds., Lippincott-Raven Publishers, Philadelphia, 1996)。
【0192】
「レンチウイルスベクター」とは、パッケージング能が比較的大きく、免疫原性が低く、高効率で広範囲の異なる細胞タイプに安定して形質導入を生じさせる能力があるために遺伝子送達に非常に有望な、HIVをベースとするレンチウイルスベクターを意味する。レンチウイルスベクターは、通常、3つのプラスミド(パッケージング、エンベロープ、および導入)またはそれより多いプラスミドをプロデューサー細胞に一過的にトランスフェクトした後に作製される。HIVと同様に、レンチウイルスベクターは、ウイルス表面糖タンパク質と、細胞表面にある受容体との相互作用を介して標的細胞に入る。ウイルスRNAが入ったら、ウイルス逆転写酵素複合体によって媒介される逆転写を受ける。逆転写産物は、感染細胞のDNAにウイルスが組み込まれるための基質である二本鎖直鎖ウイルスDNAである。「組込みレンチウイルスベクター(またはLV)」とは、非限定的な例として、標的細胞のゲノムに組み込むことができるベクターを意味する。反対に、「非組込みレンチウイルスベクター(またはNILV)」とは、ウイルスインテグラーゼの働きによって標的細胞のゲノムに組み込まれない効率的な遺伝子送達ベクターを意味する。
【0193】
送達ベクターはソノポレーション(sonoporation)もしくはエレクトロポレーションまたはこれらの技法の派生物などの任意の細胞透過処理法と関連づけられてもよく、組み合わされてもよい。
【0194】
「細胞」とは、インビトロ培養するための任意の真核生物の生細胞、これらの生物に由来する初代細胞および細胞株であることが意図される。
【0195】
「初代細胞」とは、ごくわずかな集団倍化を経ており、従って、連続して腫瘍を形成する細胞株または人工的に不死化された細胞株と比較して、細胞が得られた組織の主要な機能成分および特徴をよく表している、生組織(すなわち、生検材料)から直接採取され、インビトロで増殖するように樹立された細胞であることが意図される。
【0196】
非限定的な例として、細胞株は、CHO-K1細胞;HEK293細胞;Caco2細胞;U2-OS細胞;NIH3T3細胞;NSO細胞;SP2細胞;CHO-S細胞;DG44細胞;K-562細胞、U-937細胞;MRC5細胞;IMR90細胞;ジャーカット細胞;HepG2細胞;HeLa細胞;HT-1080細胞;HCT-116細胞;Hu-h7細胞;Huvec細胞;Molt4細胞からなる群より選択することができる。
【0197】
これらの細胞株は全て、関心対象の遺伝子またはタンパク質を産生する、発現する、定量する、検出する、研究するための細胞株モデルを提供するために本発明の方法によって改変することができる。これらのモデルはまた、研究および産生において、ならびに非限定的な例として化学物質、バイオ燃料、治療剤学、および農学などの様々な分野において関心対象の生物学的に活性な分子をスクリーニングするのに使用することもできる。
【0198】
「変異」とは、ポリヌクレオチド(cDNA、遺伝子)配列またはポリペプチド配列への1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個、14個、15個、20個、25個、30個、40個、50個までの、またはそれより多いヌクレオチド/アミノ酸の置換、欠失、挿入が意図される。変異は、遺伝子のコード配列またはその制御配列に影響を及ぼすことができる。変異はまた、ゲノム配列の構造またはコードされるmRNAの構造/安定性に影響を及ぼすこともある。
【0199】
「変種」とは、反復変種、変種、DNA結合変種、TALE-ヌクレアーゼ変種、親分子のアミノ酸配列中にある少なくとも1つの残基の変異または交換によって得られたポリペプチド変種であることが意図される。
【0200】
「機能的変種」とは、タンパク質またはタンパク質ドメインの触媒活性変異体が意図される。このような変異体は、親タンパク質またはタンパク質ドメインと比較して同じ活性、またはさらなる特性、あるいはより高い活性または低い活性を有してもよい。
【0201】
「遺伝子」とは、特定のタンパク質またはタンパク質セグメントをコードする、染色体に沿って直線的に並べられたDNAセグメントからなる遺伝の基本単位を意味する。遺伝子は、典型的に、プロモーター、5'非翻訳領域、1つまたは複数のコード配列(エキソン)、任意で、イントロン、3'非翻訳領域を含む。遺伝子は、ターミネーター、エンハンサー、および/またはサイレンサーをさらに含んでもよい。
【0202】
本明細書で使用する「遺伝子座」という用語は、染色体上にあるDNA配列(例えば、遺伝子)の特定の物理的な場所である。「遺伝子座」という用語は、染色体上にあるレアカットエンドヌクレアーゼ標的配列の特定の物理的な場所を指すことがある。このような遺伝子座は、本発明によるレアカットエンドヌクレアーゼによって認識および/または切断される標的配列を含んでもよい。本発明の関心対象の遺伝子座は、細胞の遺伝物質の本体(すなわち、染色体)に存在する核酸配列だけでなく、前記遺伝物質の本体とは独立して存在することができる遺伝物質部分、例えば、非限定的な例として、プラスミド、エピソーム、ウイルス、トランスポゾン、またはミトコンドリアなどの細胞小器官の中にある遺伝物質部分も適することが理解される。
【0203】
「切断」という用語は、ポリヌクレオチドの共有結合バックボーンの破壊を指す。ホスホジエステル結合の酵素的加水分解または化学的加水分解を含むが、これに限定されない様々な方法によって切断を開始することができる。一本鎖切断および二本鎖切断がいずれも可能であり、二本鎖切断は2つの別個の一本鎖切断事象の結果として発生してもよい。二本鎖DNA、RNA、またはDNA/RNAハイブリッド切断によって平滑末端または付着末端のいずれかが生じる可能性がある。
【0204】
「融合タンパク質」とは、元々は別々のタンパク質またはその一部をコードする2種類以上の遺伝子を結合することにある当技術分野において周知のプロセスの結果が意図される。前記「融合遺伝子」が翻訳されると、元のタンパク質のそれぞれに由来する機能的特性を有する1本のポリペプチドが生じる。
【0205】
「同一性」とは、2つの核酸分子間または2つのポリペプチド間の配列同一性を指す。同一性は、比較する目的でアラインメントされ得る各配列中の位置を比較することによって求めることができる。比較配列中の位置が同じ塩基またはアミノ酸を占める時には、これらの分子はその位置で同一である。核酸配列間またはアミノ酸配列間の類似性または同一性の程度は、それぞれ、核酸配列またはアミノ酸配列が共有する位置にある同一のヌクレオチドもしくはアミノ酸またはマッチしたヌクレオチドもしくはアミノ酸の数の関数である。2つの配列間の同一性を計算するために、GCG配列解析パッケージ(University of Wisconsin, Madison, Wis.)の一部として利用可能であり、例えば、デフォルト設定で使用することができるFASTAまたはBLASTを含めて、様々なアラインメントアルゴリズムおよび/またはプログラムが用いられる場合がある。例えば、本明細書に記載の特定のポリペプチドと少なくとも70%、85%、90%、95%、98%、または99%の同一性を有する、好ましくは、実質的に同じ機能を示すポリペプチド、ならびにこのようなポリペプチドをコードするポリヌクレオチドが意図される。
【0206】
B2Mの発現の「阻害」またはB2Mの発現を「阻害する」とは、前記細胞におけるB2Mの発現が少なくとも1%、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも99%、または100%低減することを意味する。さらに具体的には、B2Mの発現の「阻害」またはB2Mの発現を「阻害する」とは、前記細胞におけるB2Mの量が少なくとも1%、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも99%、または100%低減することを意味する。細胞におけるタンパク質の発現または量は、B2M特異的抗体を用いたELISA、免疫組織化学、ウェスタンブロッティング、またはフローサイトメトリーなどの当技術分野において公知の任意の適切な手段によって確かめることができる。このような抗体は、Merck Millipore, Billerica, MA, USA;またはAbcam plc, Cambridge, UKなどの様々な供給元から市販されている。
【0207】
CIITAの発現の「阻害」またはCIITAの発現を「阻害する」とは、前記細胞におけるCIITAの発現が少なくとも1%、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも99%、または100%低減することを意味する。さらに具体的には、CIITAの発現の「阻害」またはCIITAの発現を「阻害する」とは、前記細胞におけるCIITAの量が少なくとも1%、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも99%、または100%低減することを意味する。細胞におけるタンパク質の発現または量は、CIITA特異的抗体を用いたELISA、免疫組織化学、ウェスタンブロッティング、またはフローサイトメトリーなどの当技術分野において公知の任意の適切な手段によって確かめることができる。このような抗体は、Abcam plc, Cambridge, UK;またはSanta Cruz Biotechnology, Inc., Santa Cruz, CA, USAなどの様々な供給元から市販されている。
【0208】
「シグナル伝達ドメイン」または「共刺激リガンド」は、T細胞上のコグネイト共刺激分子に特異的に結合し、それによって、一次シグナル、例えば、TCR/CD3複合体と、ペプチドが搭載されたMHC分子との結合によって供給される一次シグナルに加えて、増殖活性化、分化などを含むが、これに限定されないT細胞応答を媒介するシグナルを供給する、抗原提示細胞上の分子を指す。共刺激リガンドには、CD7、B7-1(CD80)、B7-2(CD86)、PD-L1、PD-L2、4-1BBL、OX40L、誘導性共刺激リガンド(inducible costimulatory igand)(ICOS-L)、細胞間接着分子(ICAM、CD30L、CD40、CD70、CD83、HLA-G、MICA、M1CB、HVEM、リンホトキシンβ受容体、3/TR6、ILT3、ILT4、Tollリガンド受容体に結合するアゴニストまたは抗体、およびB7-H3と特異的に結合するリガンドが含まれ得るが、これに限定されない。共刺激リガンドはまた、特に、CD27、CD28、4-IBB、OX40、CD30、CD40、PD-1、ICOS、リンパ球機能関連抗原-1(LFA-1)、CD2、CD7、LTGHT、NKG2C、B7-H3、CD83に特異的に結合するリガンドなどがあるが、これに限定されない、T細胞上に存在する共刺激分子に特異的に結合する抗体も包含する。
【0209】
「共刺激分子」とは、共刺激リガンドに特異的に結合し、それによって、増殖などがあるが、これに限定されない細胞による共刺激応答を媒介する、T細胞上のコグネイト結合パートナーを指す。共刺激分子には、MHCクラスI分子、BTLA、およびTollリガンド受容体が含まれるが、これに限定されない。
【0210】
本明細書で使用する「共刺激シグナル」は、TCR/CD3連結などの一次シグナルと組み合わせて、T細胞増殖および/または重要な分子のアップレギュレーションもしくはダウンレギュレーションを引き起こすシグナルを指す。
【0211】
「二重特異性抗体」とは、1つの抗体分子の中に、2つの異なる抗原に対する結合部位をもつ抗体を指す。標準的な抗体構造に加えて、2つの結合特異性をもつ他の分子が構築され得ることが当業者によって理解されるだろう。二重特異性抗体による抗原結合は同時に起こってもよく、連続して起こってもよいことがさらに理解されるだろう。二重特異性抗体は化学的技法によって作製されてもよく(例えば、Kranz et al. (1981) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 78,5807を参照されたい)、「ポリドーマ(polydoma)」法(米国特許第4,474,893号を参照されたい)によって作製されてもよく、組換えDNA法によって作製されてもよい。これらの技法は全てそれ自体が公知である。非限定的な例として、それぞれの結合ドメインは、抗体重鎖に由来する少なくとも1つの可変領域(「VH領域またはH領域」)を含み、第1の結合ドメインのVH領域はCD3などのリンパ球マーカーに特異的に結合し、第2の結合ドメインのVH領域は腫瘍抗原に特異的に結合する。
【0212】
本明細書で使用する「細胞外リガンド結合ドメイン」という用語は、リガンドに結合することができるオリゴペプチドまたはポリペプチドと定義される。好ましくは、このドメインは細胞表面分子と相互作用することができる。例えば、細胞外リガンド結合ドメインは、特定の疾患状態に関連する標的細胞上の細胞表面マーカーとして働くリガンドを認識するように選択されてもよい。従って、リガンドとして働き得る細胞表面マーカーの例には、ウイルス感染症、細菌感染症、および寄生生物感染症、自己免疫疾患、ならびに癌細胞に関連する細胞表面マーカーが含まれる。
【0213】
本明細書で使用する「対象」または「患者」という用語は、非ヒト霊長類およびヒトを含む動物界の全メンバーを含む。
【0214】
本発明の上記の記載は、当技術分野のどんな当業者でも本発明を作製および使用することができるように、本発明を作製および使用するやり方およびプロセスを提供する。この実施可能性(enablement)は、特に、最初の説明の一部を構成する、添付の特許請求の範囲の対象(subject matter)に向けて提供される。
【0215】
数値の限界または範囲が本明細書において述べられている場合、終点が含まれる。数値の限界または範囲の中にある全ての値および部分範囲も、明瞭に書かれているように明確に含まれる。
【0216】
本発明を大まかに説明したが、ある特定の実施例を参照することによって理解を深めることができる。実施例は例示のためだけに本明細書で示され、特に定めのない限り、限定することが意図されない。
【実施例】
【0217】
ヒトCIITAを切断するTALE-ヌクレアーゼ
ヒトCIITA遺伝子のエキソンを標的とするTALE-ヌクレアーゼをコードするmRNAをCellectis Bioresearch(8, rue de la Croix Jarry, 75013 PARIS)に注文した。以下の表3は、2つの独立した実体(半TALE-ヌクレアーゼと呼ぶ)それぞれによって切断される標的配列を示す。それぞれの実体は、15bpスペーサーで分けられた2つの17bp長配列(半標的と呼ぶ)からなる標的配列に結合し、標的配列間で切断するように操作された反復配列を含有した。エキソン2およびエキソン3はCIITAの全転写物バリアントに共通してあるので、エキソン2およびエキソン3に対して2つのTALEN対を設計した。これらの配列を標的とするTALE-ヌクレアーゼを用いて、ヒトゲノム中の明らかなオフサイト(offsite)標的化は予想されなかった。
【0218】
(表3)CIITA TALE-ヌクレアーゼおよび関連する標的配列の説明
【0219】
ヒトβ2mを切断するTALE-ヌクレアーゼ
ヒトβ2m遺伝子のエキソンを標的とするTALE-ヌクレアーゼをコードするmRNAをCellectis Bioresearch(8, rue de la Croix Jarry, 75013 PARIS)に注文した。以下の表4は、2つの独立した実体(半TALE-ヌクレアーゼと呼ぶ)それぞれによって切断される標的配列を示す。それぞれの実体は、15bpスペーサーで分けられた2つの17bp長配列(半標的と呼ぶ)からなる標的配列に結合し、標的配列間で切断するように操作された反復配列を含有した。
【0220】
(表4)β2m TALE-ヌクレアーゼおよび関連する標的配列の説明
【0221】
ヒトTCR遺伝子(TRACおよびTRBC)を切断するTALE-ヌクレアーゼ
ヒトゲノムは2つの機能的なT細胞受容体β鎖(TRBC1およびTRBC2)を含有する。α/βTリンパ球が発達している間に、これらの2つの定常鎖のうちの1つが各細胞において選択されてTCR-β可変領域にスプライスされ、機能的な完全長β鎖を形成する。以下の表5は、TRACおよび2つのTRBC標的配列ならびにこれらの対応するTALEN配列を示す。対応するTALE-ヌクレアーゼがTRBC1およびTRBC2を両方とも同時に切断するように、2つのTRBC標的はTRBC1とTRBC2との間で保存された配列において選択された。
【0222】
(表5)TRACおよびTRBC TALE-ヌクレアーゼならびにヒト対応遺伝子にあるTALE-ヌクレアーゼ標的部位の配列の説明
【0223】
TRAC遺伝子およびCD52遺伝子の中にある他の標的配列が設計されており、表6に示した。
【0224】
(表6)TRAC TALE-ヌクレアーゼのさらなる標的配列
【0225】
Cytopulse技術を用いた活性化した精製T細胞へのmRNAのエレクトロポレーション
T細胞の効率的なDNAエレクトロポレーションを可能にする最良のcytopulseプログラムを決定した後に、本発明者らは、この方法がmRNAエレクトロポレーションに適用可能かどうかを試験した。
【0226】
PHA/IL2によって6日間、予め活性化した5x106個の精製T細胞をcytoporation buffer T(BTX-Harvard apparatus)に再懸濁し、0.4cmキュベットに入れて、GFPをコードするmRNA 10μgまたはGFPをコードするプラスミドもしくはpUC 20μgと、表7の好ましいcytopulseプログラムを用いてエレクトロポレーション処理した。
【0227】
(表7)精製T細胞をエレクトロポレーション処理するために使用したCytopulseプログラム
【0228】
トランスフェクションの48時間後に、細胞を生死判別色素(eFluor-450)で染色し、細胞の生存および生GFP+細胞の%をフローサイトメトリー分析によって求めた。
【0229】
ここで確かめられた最適条件を用いたRNAエレクトロポレーションは毒性が無く、生細胞の95%超をトランスフェクトできた。
【0230】
合成において、全データセットから、T細胞をDNAまたはRNAで効率的にトランスフェクトできることが分かる。特に、RNAトランスフェクションは細胞の生存に影響を及ぼさず、細胞集団における関心対象のトランスフェクトされた遺伝子の均一な発現レベルを可能にする。
【0231】
効率的なトランスフェクションは、使用した活性化方法(PHA/IL-2またはCD3/CD28コーティング-ビーズ)とは独立して、細胞活性化後、早い時点で成し遂げることができる。本発明者らは、活性化の72時間後から>95%の効率で細胞をトランスフェクトすることに成功した。加えて、同じエレクトロポレーションプロトコールを用いて、解凍および活性化後の効率的なT細胞トランスフェクションも得ることができる。
【0232】
TALE-ヌクレアーゼ機能的発現のための初代ヒトT細胞におけるmRNAエレクトロポレーション
mRNAエレクトロポレーションによって初代ヒトT細胞においてGFPを効率的に発現できることを証明した後に、本発明者らは、この方法が関心対象の他のタンパク質の発現に適用可能かどうかを試験した。転写アクチベーター様エフェクターヌクレアーゼ(TALE-ヌクレアーゼ)は、TAL DNA結合ドメインとDNA切断ドメインとの融合によって作製された部位特異的ヌクレアーゼである。これらは、実質的に任意の望ましいDNA配列において二本鎖切断を誘導するので強力なゲノム編集ツールである。これらの二本鎖切断は、エラープローンDNA修復機構である非相同末端結合(NHEJ)を活性化し、これによって、潜在的に、関心対象の任意の望ましい遺伝子が不活性化される。または、十分な修復テンプレートが細胞に同時に導入されるのであれば、TALE-ヌクレアーゼによって誘導されるDNA切断は相同組換えによって修復することができ、従って、遺伝子配列を好きなように改変する可能性が生じる。
【0233】
本発明者らは、T細胞抗原受容体α鎖(TRAC)をコードするヒト遺伝子内の配列を特異的に切断するように設計されたTALE-ヌクレアーゼを発現させるためにmRNAエレクトロポレーションを使用した。この配列に含まれる変異は、遺伝子不活性化および細胞表面からのTCRαβ複合体の消失をもたらすと予想される。TRAC TALE-ヌクレアーゼRNAまたは対照として非コードRNAを、Cytopulse技術を用いて活性化初代ヒトTリンパ球にトランスフェクトした。エレクトロポレーションの順序は、表7に記載のように1200Vの2回のパルスに続いて130Vの4回のパルスからなった。
【0234】
エレクトロポレーションして7日後のTCR表面発現のフローサイトメトリー分析によって(
図4、上パネル)、本発明者らは、T細胞の44%がTCRαβ発現を失ったことを観察した。本発明者らは、TRAC遺伝子座をPCR増幅し、その後に454ハイスループットシークエンシングを行うことによって、トランスフェクトされた細胞のゲノムDNAを分析した。配列決定された対立遺伝子のうち33%(2153のうち727)がTALE-ヌクレアーゼ切断部位に挿入または欠失を含んでいた。
【0235】
これらのデータから、cytopulse技術を用いたmRNAエレクトロポレーションによってTRAC TALE-ヌクレアーゼが機能的に発現することが分かる。
【0236】
HEK293細胞におけるTRAC-TALE-ヌクレアーゼおよびTRBC-TALE-ヌクレアーゼの活性
それぞれのTALE-ヌクレアーゼ構築物を、制限酵素消化を用いて、pEF1αロングプロモーター制御下で哺乳動物発現ベクターに入れてサブクローニングした。トランスフェクションの1日前に百万個のHEK293細胞を播種した。細胞を、EF1-αプロモーター制御下で、T細胞受容体α定常鎖領域(TRAC)もしくはT細胞受容体β定常鎖領域(TRBC)にある関心対象のゲノム配列内の2つの半標的を認識するTALE-ヌクレアーゼをコードする、それぞれ2.5μgの2つのプラスミド、または5μgの対照pUCベクター(pCLS0003)で、25μlのリポフェクタミン(Invitrogen)を用いて製造業者の説明書に従ってトランスフェクトした。TRACコード配列においてTALE-ヌクレアーゼによって生じる二本鎖切断は、生細胞では、エラープローン機構である非相同末端結合(NHEJ)によって修復される。生細胞におけるTALE-ヌクレアーゼの活性は、標的とされたゲノム遺伝子座での挿入または欠失の頻度によって測定される。トランスフェクションの48時間後に、トランスフェクトされた細胞からゲノムDNAを単離し、以下のプライマー:
TRACの場合:
、TRBC1の場合:
、またはTRBC2の場合:
、およびリバースプライマー、TRACの場合:
TRBC1およびTRBC2の場合:
を用いて、遺伝子座特異的PCRを行った。PCR産物を454シークエンシングシステム(454 Life Sciences)によって配列決定した。PCR産物あたり約10,000個の配列を入手し、次いで、部位特異的な挿入事象または欠失事象の存在について分析した。結果を表8に示した。
【0237】
(表8)TRAC_T01、TRBC_T01、およびTRBC_T02標的を標的とするTALE-ヌクレアーゼについてのインデルのパーセント。
【0238】
初代Tリンパ球におけるβ2mおよびTRAC-TALE-ヌクレアーゼの活性
【0239】
それぞれのTALE-ヌクレアーゼ構築物を、制限酵素消化を用いて、T7プロモーター制御下で哺乳動物発現ベクターに入れてサブクローニングした。
【0240】
β2m、TRAC、およびTRBCゲノム配列を切断するTALE-ヌクレアーゼをコードするmRNAを、T7プロモーターから下流に、これらのコード配列を有するプラスミドから合成した。末梢血から単離したTリンパ球を、抗CD3/CD28アクチベータービーズ(Life technologies)を用いて5日間、活性化し、次いで、5百万個の細胞を、CytoLVT-P機器を用いてエレクトロポレーションによって、両方とも半TALE-ヌクレアーゼをコードする、それぞれ10μgの2つのmRNA(または対照として非コードRNA)でトランスフェクトした。NHEJによって誘導された挿入および欠失の結果として、β2mおよび/またはTRACのコード配列は細胞の一部においてフレーム外(out of frame)になり、その結果、遺伝子が機能しなくなる。エレクトロポレーションの5日後に、細胞表面にβ2mまたはTCRが存在するかどうかフローサイトメトリーによって、細胞を蛍光色素結合抗β2m抗体または抗TCR抗体で標識した。末梢血から増殖させた全てのTリンパ球は、通常、β2mおよびTCRを発現するので、β2m陰性細胞またはTCR陰性細胞の割合はTALE-ヌクレアーゼ活性の直接の尺度である。
【0241】
TRAC遺伝子が標的化されたT細胞の機能分析
TRAC遺伝子不活性化の目的は、Tリンパ球をT細胞受容体刺激に反応しなくなるようにすることである。前段落に記載のように、Tリンパ球を、TRACを切断するTALE-ヌクレアーゼをコードするmRNAでトランスフェクトした。トランスフェクションの16日後に、細胞を、T細胞受容体を介して作用するT細胞マイトジェンである5μg/mlまでのフィトヘマグルチニン(PHA, Sigma-Aldrich)で処理した。機能的T細胞受容体をもつ細胞のサイズはPHA処理後に大きくなるはずである。3日間インキュベートした後に、細胞を蛍光色素結合抗TCR抗体で標識し、TCR陽性細胞とTCR陰性細胞との間で細胞サイズ分布を比較するためにフローサイトメトリーによって分析した。
図3は、TCR陽性細胞のサイズがPHA処理後に著しく大きくなるのに対して、TCR陰性細胞のサイズが未処理細胞と同一であることを示す。このことから、TRAC不活性化によって細胞はTCRシグナル伝達に反応しなくなることが分かる。
【0242】
β2m遺伝子が標的化されたT細胞の機能分析
上記と同様に、TALENでトランスフェクトした細胞および対照細胞(RNA無しでトランスフェクトした)を、蛍光色素で標識した、B2Mタンパク質に対する抗体ならびに3種類全てのクラスMHC-I分子(HLA-A、-B、または-C)を認識する抗体で染色した。TALENトランスフェクションは、T細胞の37%超においてB2M分子およびMHC-I分子の表面発現の喪失を誘導した。
図5を参照されたい。
【0243】
初代Tリンパ球におけるβ2m-TALE-ヌクレアーゼおよびTRAC-TALE-ヌクレアーゼのゲノム安全性
本発明者らの構築物はヌクレアーゼサブユニットを含むので、重要な疑問は、複数のTALE-ヌクレアーゼトランスフェクションによって、遺伝毒性および「ぴったり一致する(close match)」標的配列でのオフターゲット切断または半TALE-ヌクレアーゼの誤対合が生じる可能性があるかどうかである。細胞ゲノムの完全性に及ぼすTRAC-TALE-ヌクレアーゼおよびβ2m-TALE-ヌクレアーゼの影響を評価するために、本発明者らは、オフサイト切断の可能性を示すヒトゲノム内配列を列挙した。このリストを作成するために、本発明者らは、オリジナルの半標的と比較して4個までの置換を有するゲノム内配列を全て特定し、次いで、互いに9〜30bpのスペーサーのある、ヘッドトゥーヘッド方向の潜在的な半標的ペアを特定した。この分析は、1種類の半TALE-ヌクレアーゼ分子からなるホモ二量体、または1種類のβ2m半TALE-ヌクレアーゼおよび1種類のTRAC半TALE-ヌクレアーゼによって形成されるヘテロ二量体によって潜在的に標的化される部位を含んだ。本発明者らは、個々の置換のコストおよび置換の位置を考慮して特異性データに基づいて潜在的なオフサイト標的をスコア付けした(半標的の3'末端にある塩基のミスマッチの方が許容される)。本発明者らは切断の可能性の推定値を反映するスコアをもつ173個のユニークな配列を入手した。本発明者らは上位15位のスコアを選択し、β2m TALE-ヌクレアーゼおよびTRAC TALE-ヌクレアーゼで同時にトランスフェクトし、β2m陰性、TCRαβ陰性として磁気分離によって精製したT細胞において、ディープシークエンシングによって、これらの遺伝子座において発見された変異の頻度を分析した。結果から、挿入/欠失の最高頻度は7x10
-4であることが分かった。これらの結果から、推定オフサイト標的が変異している可能性は、意図された標的の少なくとも1/600であることが分かった。従って、この研究において使用したTALE-ヌクレアーゼ試薬は極めて特異的であるように思われる。
【0244】
抗CD19単鎖キメラ抗原受容体(CAR)をコードするモノシストロニックmRNAを用いたT細胞のエレクトロポレーション:
抗CD3/CD28コーティングビーズおよびIL2によって数日間(3〜5日間)、予め活性化した5X106個のT細胞をcytoporation buffer Tに再懸濁し、0.4cmキュベットに入れて、mRNA無しで、または単鎖CARをコードするmRNA(SEQ ID NO:6)10μgと表7に記載のプログラムを用いてエレクトロポレーション処理した。
【0245】
エレクトロポレーションの24時間後に、細胞を、固定可能な生死判別色素eFluor-780、および生細胞上のCARの細胞表面発現を評価するために特異的なPE結合ヤギ抗マウスIgGF(ab')2断片で染色した。データを
図6に示した。Aは、前記のモノシストロニックmRNAでエレクトロポレーション処理した生T細胞の圧倒的多数が表面にCARを発現することを示している。エレクトロポレーションの24時間後に、T細胞をダウジ(CD19+)細胞と6時間、共培養し、表面における脱顆粒マーカーCD107aの発現を検出するためにフローサイトメトリーによって分析した(Betts, Brenchley et al. 2003)。
【0246】
図6に示したデータから、前記のモノシストロニックmRNAでエレクトロポレーション処理した細胞の大多数は、CD19を発現する標的細胞の存在下で脱顆粒することが分かる。これらの結果から、エレクトロポレーション処理済みT細胞の表面に発現しているCARには活性があることがはっきりと証明された。
【0247】
以下の実施例では、生存を延ばし、治療活性を増強するために、本発明者らは、特異的TALENを用いたB2M遺伝子の不活性化と、(i)UL18およびβ2M B2M-UL18で構成されるキメラ単鎖分子の発現または(ii)NKG2Dリガンドの分泌の組み合わせによって同種異系T細胞を操作することによって、NK細胞によって媒介される治療用同種異系T細胞の拒絶反応を阻止する方法について説明する。この独自性は、通常は腫瘍細胞またはウイルス感染細胞において生じる機構を初代T細胞に適用することにある。従って、作用機構は異なる可能性がある。すなわち、腫瘍細胞では、NKG2Dリガンドが脱落すると、表面における、その存在が減少するのに対して、操作された細胞では、分泌型NKG2Dリガンドは、T細胞表面に依然として存在する可能性がある、他のいくつかのNKG2Dリガンドのデコイとして働くだろう。
【0248】
特異的B2M TALENを用いた効率的なB2M遺伝子ノックアウト
B2M遺伝子(GenBankアクセッション番号NC_000015)の第1のコードエキソン内にある配列(T01、SEQ ID NO:81)を標的とする特異的TALENが作製されている(左DNA結合ドメインRVD:
SEQ ID NO:82、および右DNA結合ドメインRVD:
SEQ ID NO:83)。以下の表9は、T01標的化配列の配列、ならびに2つのさらなる標的T02およびT03、ならびにこれらの対応する左TALE配列および右TALE配列を報告する。
【0249】
(表9)さらなるβ2m TALE-ヌクレアーゼ配列の説明
【0250】
このB2M特異的TALENがB2M遺伝子座においてエラープローンNHEJ事象を促進できることを試験するために、2μgまたは10μgのTALENコードmRNAを、初代T細胞において、Pulse Agile技術を用いて製造業者のプロトコールに従ってエレクトロポレーション処理した。トランスフェクションの3日後に、細胞を回収し、フィコエリトリン蛍光色素と結合した特異的β2-ミクログロブリン抗体で標識した。次いで、細胞をフローサイトメトリーによって生存およびβ2-m発現について分析する。結果を
図10に示した。上パネルには、トランスフェクトされていないT細胞のほぼ100%がβ2-mを発現する(右上パネル)。2μgのTALEN mRNAでトランスフェクトされた時にはT細胞の38%(右真ん中)、10μgのTALEN mRNAでトランスフェクトされた時にはT細胞の80%(右下パネル)がβ2-m陰性になるので、T細胞を特異的B2M TALENでトランスフェクトするとβ2-m発現は劇的に低下する。これらのデータから、T細胞においてB2Mを高い効力でノックアウトできることが分かる。
【0251】
T細胞における単鎖分子B2M-UL18の産生および発現
HCMV UL18は、β2-mと結びつき、内因性ペプチドに結合する、MHCクラスI分子と高レベルのAA配列同一性を有するI型膜貫通糖タンパク質をコードする。本発明者らの目標は、この分子を、B2M遺伝子が不活性化されているT細胞において発現させることであるので、本発明者らの戦略は、β2-mおよびUL18が単鎖ポリペプチドとして融合されたキメラ分子を産生することである。SEQ ID NO:89は、このキメラタンパク質のアミノ酸配列を示す。キメラB2M-UL18を含有するレンチウイルス粒子をT細胞に形質導入する。トランスジーンの発現は、β2-m抗体を用いたFACS分析によってモニタリングされる。この実験からの結果は、B2M-UL18キメラタンパク質がT細胞において効率的に発現されることを示すことを目的としている。
【0252】
T細胞におけるNKG2Dリガンドの産生および発現
NKG2D天然リガンドは膜貫通タンパク質またはGPIアンカータンパク質である。これらの分子をT細胞によって分泌させるために、NKG2Dリガンドの細胞外ドメインのN末端を分泌ペプチド型と融合させた。分泌型キメラNKG2Dリガンドのアミノ酸配列を以下に列挙した(SEQ ID NO:90〜SEQ ID NO:97)。キメラNKG2Dリガンドを含有するレンチウイルス粒子をT細胞に形質導入した。培養上清中のトランスジーンの発現は特異的抗体を用いたウエスタンブロット分析によってモニタリングされる。この実験からの結果は、キメラNKG2Dリガンドタンパク質がT細胞において効率的に発現されることを示すことを目的としている。
【0253】
β2-M欠損CAR T細胞は同種異系T細胞によって認識されない
健常ドナーAに由来するPBMCを、ドナーBに由来する放射線照射済みの、またはマイトマイシン処理済みの操作されたβ2-m欠損T細胞と共培養する。対照として、健常ドナーAに由来するPBMCを、ドナーBに由来する放射線照射済みの、またはマイトマイシン処理済みの操作されたβ2-m陽性T細胞と共培養する。7日後に、ドナーAに由来する細胞の増殖をXTT比色アッセイまたはCFSE希釈(FACS分析)によって測定する。対照では細胞増殖が観察されたが、操作されたT細胞がβ2-mを発現しない時には細胞増殖は観察されなかったか、または限られた細胞増殖が観察された。この実験からの結果は、アロ反応性T細胞がβ2-m欠損T細胞を認識することができず、β2-m欠損T細胞に抵抗して増殖できないことを示すことを目的としている。
【0254】
NKによって媒介される操作されたT細胞の溶解の効率的な阻害
NK細胞を健常ドナーAのPBMCから精製する。標的として、健常ドナーBに由来する操作されたT細胞を作製し、以下に列挙した。a)操作されたT細胞(負の対照)、b)β2-m欠損の操作されたT細胞(正の対照)、c) B2M-UL18(SEQ ID NO:89)を発現する、β2-m欠損の操作されたT細胞、d-k)β2-m欠損の操作されたT細胞。それぞれ、SP-MICAed(SEQ ID NO:90)、SP-MICBed(SEQ ID NO:91)、SP-ULBPled(SEQ ID NO:92)、SP-ULBP2ed(SEQ ID NO:93)、SP-ULBP3ed(SEQ ID NO:94)、SP-N2DL4ed(SEQID NO:95)、SP-RETlGed(SEQ ID NO:96)、SP-RAETILed(SEQ ID NO:97)を発現する。これらの配列を以下の表10に報告する。
【0255】
(表10)本発明に従って発現されるウイルスMHCホモログ(UL18)および一群のNKG2Dリガンドのポリペプチド配列
【0256】
NK細胞によって媒介される細胞傷害性をCFSE標識アッセイによって確かめた。標的細胞をCFSEで標識し、PBSで洗浄し、NK細胞と様々なE:T細胞比で混合し、37℃で4時間インキュベートした。次いで、細胞をフローサイトメトリーによって分析し、CFSE陽性の操作されたT細胞のパーセントを測定する。これは、NK細胞の存在下での操作されたT細胞の生存を示す。正の対照(β2-m欠損の操作されたT細胞)では、NKによって媒介される細胞溶解が観察されたが、β2-m欠損の操作されたT細胞操作されたT細胞が、B2M-UL18(SEQ ID NO:89)または分泌型NKG2Dリガンド(SP-MICAed(SEQ ID NO:90)、SP-MICBed(SEQ ID NO:91)、SP-ULBP1ed(SEQ ID NO:92)、SP-ULBP2ed(SEQ ID NO:93)、SP-ULBP3ed(SEQ ID NO:94)、SP-N2DL4ed(SEQ ID NO:95)、SP-RET1Ged(SEQ ID NO:96)、SP-RAETILed(SEQ ID NO:97)を発現する時には、NKによって媒介される細胞溶解は観察されなかったか、または限られたる細胞溶解しか観察されなかったことが意図される。この実験からの結果は、操作されたT細胞においてキメラ分子が発現し、阻害シグナル受容体のデコイ(B2M-UL18)または刺激シグナル受容体のデコイ(NKG2Dリガンド)として働く時に、同種異系NK細胞の細胞傷害活性が損なわれることを示すことを目的としている。
【0257】
説明において引用した参考文献のリスト