【文献】
Cancer Genetics and Cytogenetics,2010年,Vol.202, No.1,p.1-10
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
個体からのサンプル中の所定の細胞タイプに由来するDNA種の量を定量的に検出する方法であって、該サンプルは前記DNA種を前記細胞タイプに由来しない異なるメチル化DNAとの混合物中に含み、前記DNA種が胎児の細胞および/または胎児の胎盤に由来し、前記サンプルが妊娠女性由来であり;前記方法は下記工程を含み:
(a)メチル化DNAおよび非メチル化DNAを特異的に修飾する試薬を用いて、前記サンプル中に存在するDNAを処理する工程であって、前記試薬が少なくとも1つのメチル化感受性制限酵素を含む、工程;
(b)前記DNA種と前記細胞タイプに由来しないDNAとの間で異なるメチル化がされている2つ以上の特異的メチル化領域(DMR)で前記DNA種におけるメチル化の存在を前記サンプル中で定量的に検出する工程であって、前記試薬によるそのDMRのDNAの修飾はDNAのメチル化に感受性があり、1つ以上の前記DMRにおけるメチル化DNAの存在が前記サンプル中に前記DNA種の量が存在することを示し、前記DMRにおけるメチル化DNAの非存在が前記サンプル中に前記DNA種が存在しないことを示し、前記DMRが胎児DNAでは高度にメチル化され、母体DNAでは低メチル化されている、工程;および、
(c)前記メチル化感受性制限酵素によって認識されるメチル化部位を含まない少なくとも一つの他の領域を用いて前記サンプル中に存在する全DNA量を定量的に検出する工程;
工程(b)の前記検出および工程(c)の前記検出が、前記サンプルのDNAの同じアリコートを用いて、同じ容器内で、そのDMRおよび他の領域について実質的に同時に、(x)前記DMRの各々について同一の検出可能な標識および(y)前記他の領域について異なる検出可能な標識を用いて実施され;
(A)前記検出工程(b)および(c)の一部として、前記DMRおよび前記他の領域を含む各DNA領域が増幅され;
(B)工程(b)および工程(c)で使用される各検出可能な標識が、蛍光標識であり;
(C)工程(b)の前記検出が、前記DMRの1つにそれぞれ特異的である少なくとも2つの標識プローブを用いるプローブベースの多重リアルタイム定量PCRを含み、;
(D)工程(c)の前記検出が、前記他の領域の1つに特異的である少なくとも1つの標識プローブを用いるプローブベースのリアルタイム定量PCRを含む方法。
前記他の領域が、少なくとも1つの前記DMRの約20bp〜約20kbの間の上流または下流に、および/または、少なくとも1つの前記DMRと同じ遺伝子内に位置する、請求項1又は2に記載の方法。
工程(c)の前記検出が、前記他の領域の少なくとも2つを使用することを含み、好ましくは前記他の領域の1つは、工程(b)で使用されるDMRの約20bp〜約20kbの上流または下流に位置し、そして、別の前記他の領域はそれぞれ別の前記DMRの約20bp〜約20kbの上流または下流に位置する、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
工程(c)の前記検出および工程(b)の前記検出が、前記サンプルのDNAの同一アリコートを用いて、同じ反応/検出容器内で、および、互いに実質的に同時に、そして、前記DMRおよび他の領域のそれぞれに特異的な少なくとも1つの標識プローブを使用するプローブベースの多重リアルタイム定量PCRによって行われる、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
前記妊娠女性が、妊娠関連の疾患に感染しやすく、好ましくは前記妊娠関連の疾患が、子癇前症、早期陣痛、子宮内発育遅延およびバニシングツインからなる群から選択される、請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
前記サンプルが組織サンプルまたは全血、血液画分、尿、唾液、汗、涙、痰、膣分泌物、膣洗浄液および結腸洗浄液からなる群から選択される生物学的液体のサンプルであり;好ましくは、前記サンプルは血漿または血清サンプルである、請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
前記試薬が、AatII、AciI、AclI、AfeI、AgeI、AgeI−HF、AscI、AsiSI、AvaI、BceAI、BmgBI、BsaAI、BsaHI、BsiEI、BsiWI、BsmBI、BspDI、BsrFI、BssHII、BstBI、BstUI、ClaI、EagI、FauI、FseI、FspI、HaeII、HgaI、HhaI、HinP1I、HpaII、Hpy99I、HpyCH4IV、KasI、MluI、NaeI、NarI、NgoMIV、NotI、NotI−HF、NruI、Nt.BsmAI、Nt.CviPII、PaeR7I、PluTI、PmlI、PvuI、PvuI−HF、RsrII、SacII、SalI、SalI−HF、SfoI、SgrAI、SmaI、SnaBI、TspMIおよびZraIからなる群から選択されるメチル化感受性酵素を含む、請求項1〜10のいずれか一項に記載の方法。
前記検出工程の各々が定量的検出を含み、また前記DNA種の前記検出量が、前記サンプル中の全DNAに対する前記DNA種の相対濃度として表される、請求項1〜11のいずれか一項に記載の方法。
前記DMRが、少なくとも1つ、または少なくとも2つの前記メチル化感受性制限酵素によって認識されるメチル化部位を含み、少なくとも1つの前記DMRが、配列番号15〜187からなるリストから選択される領域および/または遺伝子に位置する、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
少なくとも1つの前記DMRが、配列番号15〜53および148〜187からなるリストから選択される領域および/または遺伝子に位置する、請求項17に記載の方法。
前記DMRが、少なくとも1つ、または少なくとも2つの前記メチル化感受性制限酵素によって認識されるメチル化部位を含み、少なくとも1つの前記DMRが、配列番号188〜199からなるリストから選択される領域および/または遺伝子に位置する、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
前記DMRの少なくとも1つが、RASSF1A,TBX3,ZFY,CDC42EP1,MGC15523,SOX14およびSPNからなるリストから選択される領域および/または遺伝子に位置する、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
[(x)疾患の罹患もしくは発症のリスク上昇;および/または(y)所定の細胞タイプに由来するDNA種における異常の診断を実施する場合、前記細胞タイプに由来しない異なるメチル化DNAとの混合物中に所定の細胞タイプに由来するDNA種を含む個体由来の各々のサンプルにおいて(前記DNA種は胎児の細胞および/または胎児の胎盤に由来し、前記サンプルは妊娠女性由来である。)、メチル化DNAおよび非メチル化DNAを異なって修飾する試薬で処理される該サンプル中に存在するDNA]を診断するための動作を、実行および/または管理するコンピュータシステムを制御する複数の命令でコード化されたコンピュータ可読媒体を含むコンピュータプログラム製品であって、前記試薬が少なくとも1つのメチル化感受性制限酵素を含み、前記動作が下記工程を含むコンピュータプログラム製品:
・(i)請求項1〜19および25のいずれか一項に記載の工程(b)における2つ以上のDMRのメチル化の実質的に同時の定量的検出を表すプローブベースのリアルタイム定量PCRからの1つのシグナル;および、(ii)請求項1〜19および25のいずれか一項に記載の工程(c)における少なくとも1つの他の領域を用いた全DNAの実質的に同時の定量的検出を表すプローブベースのリアルタイム定量PCRからの1つのシグナルを受信する工程;
・(i)および(ii)のシグナルからパラメータを決定する工程であって、前記パラメータが前記DNA種の定量的な量を表す工程;
・前記パラメータを量の閾値及び/又は量の基準分布と比較する工程;および、
・その比較に基づいて、(x)個体における疾患の罹患もしくは発症のリスク上昇が存在するか否か;および/または(y)胎児の細胞および/または胎児の胎盤に由来するDNA種の異常が診断できるか否かの分類を決定する工程。
個体からのサンプル中の所定の細胞タイプに由来するDNA種の量を定量的に検出する方法であって、該サンプルは前記DNA種を前記細胞タイプに由来しない異なるメチル化のDNAとの混合物中に含み、前記DNA種は胎児の細胞および/または胎児の胎盤に由来し、前記サンプルは妊娠女性由来であり;前記方法は下記工程を含み:
(a)メチル化DNAおよび非メチル化DNAを特異的に修飾する試薬を用いて、前記サンプル中に存在するDNAを処理する工程であって、前記試薬が少なくとも1つのメチル化感受性制限酵素を含む工程;および、
(b)前記DNA種と前記細胞タイプに由来しないDNAとの間で異なるメチル化がされている2つ以上のDMRで前記DNA種におけるメチル化の存在を前記サンプル中で定量的に検出する工程であって、前記試薬によるそのDMRのDNAの修飾はDNAのメチル化に感受性があり、前記1つ以上のDMRにおけるメチル化DNAの存在が前記サンプル中の前記DNA種の量が存在することを示し、前記DMRにおけるメチル化DNAの非存在が前記サンプル中に前記DNA種が存在しないことを示し、前記DMRが胎児DNAでは高度にメチル化され、母体DNAでは低メチル化されている工程;
工程(b)の前記検出が、前記サンプルのDNAの同じアリコートを用いて、同じ反応/検出容器内で、それらのDMRについて実質的に同時に、(x)多重リアルタイム定量PCR;および(y)それぞれが前記DMRの1つに特異的であり、前記DMRの各々について同じ検出可能な標識で標識される少なくとも2つの標識プローブを用いて実施される、方法。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明、特にその非限定的な態様および/または実施形態は、さらに詳細に以下のように説明することができる:
【0024】
第1の態様では、本発明は、個体からのサンプル中の所定の細胞タイプに由来するDNA種の量を検出する方法であって、該サンプルは前記DNA種を前記細胞タイプに由来しない異なるメチル化のDNAとの混合物中に含み;前記方法は下記工程を含み:
(a)メチル化DNAおよび非メチル化DNAを特異的に修飾する試薬を用いて、前記サンプル中に存在するDNAを処理する工程;
(b)前記DNA種と前記細胞タイプに由来しないDNAとの間で異なるメチル化がされている1つ以上の特異的メチル化領域(DMR)で前記DNA種におけるメチル化の存在を前記サンプル中で検出する工程であって、前記試薬によるそのDMRのDNAの修飾はDNAのメチル化に感受性があり、前記DMRにおけるメチル化DNAの存在が前記サンプル中の前記DNA種の量が存在することを示し、前記DMRにおけるメチル化DNAの非存在が前記サンプル中に前記DNA種が存在しないことを示す工程;および、
(c)前記DNA種と前記細胞タイプに由来しないDNAとの間で異なるメチル化がされていない少なくとも一つの他の領域を用いて前記サンプル中に存在する全DNA量を検出する工程であって、前記試薬による領域の修飾がDNAのメチル化に非感受性である工程;
前記他の領域が前記DMRの約20bp〜約20kbの間の上流または下流に位置する方法である。
【0025】
第2の態様では、本発明は、個体からのサンプル中の所定の細胞タイプに由来するDNA種の量を検出する方法であって、該サンプルは前記DNA種を前記細胞タイプに由来しない異なるメチル化のDNAとの混合物中に含み;前記方法は下記工程を含み:
(a)メチル化DNAおよび非メチル化DNAを特異的に修飾する試薬を用いて、前記サンプル中に存在するDNAを処理する工程;
(b)前記DNA種と前記細胞タイプに由来しないDNAとの間で異なるメチル化がされている2つ以上の特異的メチル化領域(DMR)で前記DNA種におけるメチル化の存在を前記サンプル中で検出する工程であって、前記試薬によるそのDMRのDNAの修飾はDNAのメチル化に感受性があり、前記1つ以上のDMRにおけるメチル化DNAの存在が前記サンプル中の前記DNA種の量が存在することを示し、前記DMRにおけるメチル化DNAの非存在が前記サンプル中に前記DNA種が存在しないことを示す工程;および、
(c)前記DNA種と前記細胞タイプに由来しないDNAとの間で異なるメチル化がされていない少なくとも一つの他の領域を用いて前記サンプル中に存在する全DNA量を検出する工程であって、前記試薬による領域の修飾がDNAのメチル化に非感受性である工程;
工程(b)の前記検出および工程(c)の前記検出が、前記サンプルのDNAの同じアリコートを用いて、同じ容器内で、そのDMRおよび他の領域について実質的に同時に、(x)前記DMRの各々について同一の検出可能な標識および(y)前記他の領域について異なる検出可能な標識を用いて実施される方法である。
【0026】
本明細書に記載される用語は、別段の指示がない限り、通常その一般的な意味によって理解されるべきである。用語「含む(comprising)」または「含む(comprising of)」が本明細書中で使用される場合、他の要素を排除するものではない。本発明の目的では、用語「からなる(consisting of)」は、用語「含む(comprising of)」の具体的な実施形態であると考えられる。本明細書の以下に、1つの群が特定の数以上の実施形態を含むと定義される場合、またこれは、これらの実施形態の全ておよび/または実施形態のみからなる群を開示するものと理解されるべきである。「および/または」が本明細書で使用される場合、2つの具体的な特徴または構成要素のそれぞれが、もう1つの具体的な特徴または構成要素を伴う場合と伴わない場合の具体的な開示であると解釈されるべきである。
【0027】
例えば「Aおよび/またはB」は、それぞれが個別に本明細書に記載されているかのように、(i)A、(ii)B、(iii)AおよびBのそれぞれの具体的な開示として解釈されるべきである。本発明の文脈において、「約」および「およそ」という用語は、問題となっている特徴の技術的効果をさらに確実にするために、当業者が理解する精度の幅を示す。この用語は、典型的には、示された数値から±20%、±15%、±10%、および、例えば±5%外れることを示す。当業者に理解されるように、所定の技術的効果の数値についての具体的なこのような誤差は、技術的効果の性質に依存する。例えば、自然または生物学的な技術的効果は、人工的または工学的な技術的効果の場合よりも、一般的に、このような誤差が大きい場合がある。単数名詞に言及するときに不定冠詞または定冠詞が使用される場合、例えば、「a」、「an」または「the」は、他に明記のない限り、その名詞の複数形を含む。
【0028】
本発明の特定の実施形態では、個体はヒトまたは非ヒト動物であり、その非ヒト動物は、特定の実施形態では、ウマ、ヒツジ、ウシ、ブタ、ニワトリ、マウスおよびラットからなる群より選択できる。より具体的な実施形態では、その個体は、本明細書に開示された疾患の1つ以上等の疾患を罹患する(または患う)または発症するリスクが高いと疑われる妊娠女性であるヒトまたはヒトの個体である。本発明のこの方法は、ヒトまたは動物の生体上で実施されることを意図しない。例えば、in−vitroの方法で実施されることが意図される。
【0029】
本発明のすべての態様において、所定の細胞タイプは、同じ個体の特定の器官または組織の細胞であってもよい。例えば、その細胞は個体の腫瘍細胞であってもよい。あるいは、その細胞は、異なる個体または生物に由来してもよい。例えば、個体が妊娠女性である場合、所定の細胞タイプは、その胎児の胎盤を含む胎児の細胞であってもよく、別の実施形態では、細胞タイプは、細菌または原生動物等の病原体でであってもよい。
【0030】
本発明の特定の実施形態では、前記DNA種および/または前記の異なるメチル化のDNAは無細胞DNAであり、この実施形態では特に循環無細胞DNAである。1つの特定の実施形態では、前記DNA種およびそれと混合される異なるメチル化のDNAは、両者とも循環無細胞DNAである。用語「無細胞DNA」(または「cfDNA」)は当該分野で認識されており、個体の生物学的液体(例えば、血液または血液画分)中などの細胞外でみられるDNAも意味する。また「循環(する)」は技術的に認識された用語であり、実体または物質(例えば、cfDNA)が、血液系やリンパ系等の個体の循環系に存在し、検出もしくは同定され、または、単離されることを意味する。特に、cfDNAが「循環する」とき、それは細胞内には位置しないで、血液の血漿もしくは血清中に存在するか、またはリンパ液のリンパ液中に存在し得る。
【0031】
用語「特異的メチル化領域」または「DMR」は当業者に認識され、サンプル中で、前記DNA種とそれが混合される他のDNAとの間に存在する、特異的にメチル化された(例えば、CpGモチーフで)染色体DNA内の領域をいうことも意図される。例えば、1つの実施形態では、本発明で使用されるDMRは、胎児DNAと母体DNAとの間で異なるメチル化がされるか、または、同じ個体の腫瘍由来DNAと非腫瘍由来DNAとの間で異なるメチル化がされる。本発明の特定の実施形態では、DMRは、胎児DNAにおいて高度にメチル化され、母体DNAにおいて低メチル化される。または、個体の腫瘍由来DNAにおいて高度にメチル化され、非腫瘍組織に由来するDNAにおいて低メチル化される。すなわち、この領域では、前記DNA種(例えば、胎児または腫瘍のcfDNA)が、他のDNA(例えば、母体または非腫瘍DNA)と比較して、より大きな程度(すなわち、より多く)のメチル化を示す。例えば、他のDNAの同じ部位と違って、前記DNA種の所定のDMRにおけるメチル化可能な部位では、約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%もしくは100%またはそれ以上がメチル化される。
【0032】
メチル化されていないDNAと比較して、特異的に(例えば、選択的に)メチル化されたものを修飾をする試薬が本発明で使用される。例えば、亜硫酸水素塩(bisulphite)[亜硫酸水素塩(bisulfite)]を含む試薬を用いたDNAの処理は、シトシン残基をウラシルに変換するが、5−メチルシトシン残基は影響を受けない。したがって、亜硫酸水素塩の処理は、各々のシトシン残基のメチル化状態によってDNA配列の特異的変化を導入するので、DNAセグメントのメチル化状態について、単一のヌクレオチドの分析情報をもたらす。変化した配列について様々な分析を行うことで、この単一のヌクレオチドの変化を識別することができるPCRプライマーおよび/またはプローブの使用などの情報を得ることができる。
【0033】
このような試薬の代わりとしては(またはそれに加えて)DNAのメチル化状態に感受性である制限酵素を含むことができる。その制限酵素による認識配列の切断は、その酵素の認識部位の特定の塩基が例えばメチル化などで修飾された場合、阻害されるか障害されうる。本発明の全ての態様の特定の実施形態において、試薬には本明細書に開示されるメチル化感受性制限酵素等のメチル化感受性制限酵素を含むことができ、そのメチル化感受性制限酵素を2,3,4,5またはそれ以上含むそのような実施形態が含まれる。
【0034】
工程(a)の前に、サンプルを処理して、その中に存在するDNAを単離、濃縮および/または精製することができる。例えば、cfDNA単離の方法またはキットを用いて血漿サンプルを処理し、細胞型に由来しない異なるメチル化がされたDNAと前記DNA種との混合物を含む次の(非天然)溶液を準備することができる。工程(a)の処理工程は、前記試薬(例えば、メチル化感受性制限酵素)を含む別の溶液を、サンプルの混合DNA(例えば、その混合DNAを含む非天然溶液)に添加する工程を含むことができる;および/または特定の状態を維持する(または変化させる)ことを含むことができる。特に、前記試薬が1つ以上のメチル化感受性制限酵素を含む場合、工程(a)の処理工程は、DNAと酵素を共に約37℃で約5分〜300分、例えば約30分〜90分または約60分の間、インキュベートすることを含み、また酵素を失活させるために、この混合物をより高温(例えば約50℃〜90℃、例えば約80℃)でインキュベートする工程を任意に含むこともできる。
【0035】
特定の実施形態において、工程(a)の処理工程のために形成される組成物は、天然に存在しないものでもよい。例えば、成分が特定の塩である溶液(または緩衝液);および/または(例えば、ヒトの)cfDNAと1つ以上の細菌由来の制限酵素(またはその非天然変異体)との混合物は、非天然の組成物または混合物であってもよい。さらに、本発明のいずれの方法も、(すなわち本発明の組成物が含むことができる)in vitroで産生した核酸分子、例えばPCR反応のDNA産物(例えば、「PCR産物」)を産生することができる。
【0036】
このin vitroで産生された核酸分子の1つ以上は非天然である。なぜなら、これらは、少なくとも1つの検出可能な標識を含むヌクレオチドプライマーおよび/またはプローブを含み、この核酸分子は、その標識されたプライマーおよび/またはプローブのポリメラーゼ伸長(または部分的ヌクレアーゼ消化)によって生成さるので、この核酸分子の核酸配列が天然に存在する配列(またはその断片)を含む場合もあるが、提供されるこの核酸分子の少なくとも一部が検出可能な標識を含む。そのin vitroで産生された核酸分子は、(少なくとも)それが含む非天然の検出可能な標識のために非天然である。
【0037】
対照的に、本発明で使用される「他の領域」(「OR」)は、前記DNA種とそれがサンプル中で混合される他のDNAとの間では、(有意に)異なるメチル化はされない。例えば、使用される試薬の条件と性質の下では、混合されるDNA(例えば、母体DNA)の他の領域と比較して、前記DNA種(例えば、胎児DNA)の他の領域では、その試薬による修飾の間に検出できる差異はない。この差異のないことは、他の領域がメチル化される部位を含まない場合、そのような部位が存在するときにはメチル化の程度に差がない場合、または他の領域に存在するメチル化される部位を認識しない試薬を使用することによって成されうる。したがって、本発明の別の実施形態では、工程(c)で使用される少なくとも1つの他の領域では、前記DNA種と他のDNAとの間のメチル化の(有意な)差異は、前記試薬を用いて認識もしくは検出されない(または、できない)(または認識可能もしくは検出可能ではない)。
【0038】
本発明で使用される(それほど特異的にメチル化されない)他の領域は、(特に、本発明の第1の態様に照らして)本発明で使用されるDMRと重複すべきではなく、または、(特に、本発明の第2の態様に照らして)本発明で使用されるDMRと重複しない場合がある。例えば、他の領域は、特に、本発明の第1の態様に照らして使用される場合、DMRから離れて、約10bp、20bp、50bpまたは100bp、500bp、1kbもしくは10kbを超えて、それよりも遠くに位置する。例えば、前記DMRの約20bp〜約20kbの上流または下流に位置する(同じ遺伝子内に位置する実施形態を含む)。特に、本発明の第1の態様で使用される他の領域のゲノム位置は、通常、ゲノムの同じ部分、例えば、本明細書で使用される少なくとも1つのDMRのゲノム位置の約20bp〜約20kbの上流または下流に位置する(同じ遺伝子内に位置する実施形態を含む)。
【0039】
本発明者らは、特に本発明の第1の態様の状況で、他の領域がDMRの1つと同じゲノム部分に位置している場合に、DNA種の検出(および特に定量)が改善されたことを見出した(例えば、感度、精度および/または正確さに関して)。理論に拘束されるものではないが、このように同様に位置するDMRおよび他の領域を用いると、特に本発明の第1の態様の状況で使用する場合、ゲノムを渡るクロマチン/ヌクレオソームパッキングの変化の影響、すなわち異なる領域のゲノムDNAの安定性/劣化が緩和されると考えられる。例えば、他の領域(全DNAの検出)と比較したDMR(すなわち、DNA種の検出)の安定性/劣化の違いは、より小さくなる。そして、DMRと他の領域との間のゲノムに渡る(大きく)異なるクロマチン/ヌクレオソームパッキングによりもたらされる量的な相違によって、(有意に)誤ることなく、相対的(および絶対的)に定量することができる。
【0040】
本発明の1つの実施形態では、様々なDNA領域、すなわちDMRおよび他の領域の検出は、簡易化された工程で行うことができる。同様に、本発明の1つの特徴は、様々なDNA領域、すなわちDMRおよび他の領域の検出が、簡易化された工程で行われることである。例えば、サンプルのDNAの単一のアリコートを使用して、そのDNA領域を単一の容器内で検出することができる。この特徴は、方法を簡略化することができ、(特に検出が量的である実施形態において)より効率的で正確な検出を提供することができる。用語「容器」は、当該技術分野で認識されており、当該方法に含まれるプロセスまたは手順、例えば本発明の方法の反応および/または検出プロセスまたは工程が行われる容器の実施形態(チューブ、マイクロタイター法のプレートのウェル、ナノウェル、キャピラリー反応容器等)を含む。他のそのような容器としては、使用する検出技術に応じて適切に、油/水エマルションの液滴、ナノ粒子またはハイブリダイゼーションチャンバを挙げることができる。本発明の第1の態様の特定の実施形態において使用される検出可能な標識は、各々のDMRについて同じであってもよく、および/または、各々の他の領域について同じであってもよいが、ただし実質的に同時に検出する場合、他の領域に使用する標識は、DMRに使用する標識と異なる(すなわち、別々に検出できる)という条件となる。またあるいは、本発明の第1の態様の特定の実施形態において、使用される検出可能な標識は、各々のDMRについて異なっていてもよく(例えば、同じではない)(または、本発明の第2の態様の特定の実施形態については、2つ以上のDMRの各々のセットについて同じであってもよい)、および/または、各々の他の領域について異なっていてもよい(例えば、同じではない)。
【0041】
第2の態様の方法で使用される検出可能な標識は、各々のDMRについて同じであり、特定の実施形態では、他の領域に使用される標識がDMRに使用される標識と異なる(すなわち、別々に検出できる)という条件において、各々の他の領域について同じである。また「同じ」である検出可能な標識には、構造的には異なるが、採用された検出技術によっては有意には区別されないために機能的に(本質的に)類似する標識を含むことができる。例えば、構造的に異なる蛍光色素は、それらの励起および発光スペクトルが(実質的もしくは本質的に)類似するか、または、同じ波長を用いて同時に励起および検出できる程度に重複する場合、「同じ」とみなすことができる。さらに、適切な標識(および検出方法)については、本明細書の別の箇所に記載する。好ましくは、DMRおよび他の領域の検出は、実質的に同時に行うことができる。例えば、同じ(反応/検出)容器内において、全てのこの領域(すなわち、前記DNA種および全DNA)は、例えば、容器もしくは反応物/混合物を次の容器、アッセイもしくは機器に移動させることなく、または、例えば、(いかなる/いずれかの)DMRもしくは他の領域の検出プロセスを別々に適合もしくは再調整することなく、互いに、約5s、1s、0.5s、100ms、10ms、1ms、100us、10usまたは1us未満で検出することができる。
【0042】
(少なくとも)2つの検出可能な標識(1つは前記DMR用であり、もう1つは他の領域用である)の使用は、非天然の成分、プロセスおよび/または工程を利用する。例えば、特定の2つの標識と特定のDNA領域との組成物は(通常)天然には見られない。特に、プローブベースの定量PCRで使用される短いプローブは、天然ゲノムでみられるフラグメントであるDNA配列を含み得るが、1つ以上の標識(例えば、蛍光色素)に結合すると、非天然の特異的に標識されたフラグメントを形成する。
【0043】
まとめると、本発明の特徴は、従来技術の方法に対して明白な優位性を提供する。これらには、メチル化(すなわち、検出すべきDNA種)の高感度な検出、および/または、検出された全DNA量に照らした前記DNA種の量の定量の精密なおよび/または改善された正確さを含むことができる:(1)本発明の第1の態様においては、場合により同一のアッセイ内で、混合DNAの同一のアリコートから、一緒に位置する他の領域を使用し、実質的に同時に2つ以上のDMRを検出する;および/または(2)本発明の第2の態様においては、同一のアッセイ内で、混合DNAの同一のアリコートから、実質的に同時に2つ以上のDMRを検出し、同じ場所に位置する他の領域を場合により使用する。
【0044】
図示的説明として、本発明の第1の態様に使用される、DMR、他の領域および検出可能な標識の一般的な配置の概略図を
図1(a)に示す。(1)DMR1のDNAにおけるメチル化の存在は、他の領域(「OR1」)がDMR1のゲノムの同じ部分(例えば、約20bp〜約20kbの上流または下流)に位置することで検出される。(2)別のDMRおよび/またはOR(DMR2および/またはOR2、ならびに、DMRnおよびORnまで)を任意に検出することができ、このような別のDMRおよびORの対は、互いにゲノムの同じ部分(例えば、約20bp〜約20kbの上流または下流)において、各々、一緒に位置しうる。場合により(3)DNA中のメチル化の存在は、同一の検出可能な標識を用いて複数のDMRで検出される、および/または、(4)少なくとも1つのOR(OR1および任意にOR2またはORnまで)を用いて検出された全DNA量は、DMRでメチル化の検出に用いられるものとは異なる検出可能な標識を用いて検出される(場合により、使用される検出可能な標識は全てのORについて同一である)。
【0045】
本発明の第1の態様の特定の実施形態では、工程(b)における前記検出は、2つ以上の前記DMRの使用を含み、この2つ以上のDMRは、前記DMRの各々と同じ検出可能な標識を用いて、または、前記DMRの各々と同じではない検出可能な標識を用いて、この工程で検出することができる。本発明の第1の態様の特徴(同様に位置するDMRおよび他の領域)と、1つ以上の本発明の別の特徴との組み合わせ[例えば、少なくとも2つのDMRの使用、および/または、工程(b)における検出および工程(c)における検出は、サンプルのDNAの同一アリコートを用いて、同じ反応/検出容器内で、および、そのDMRおよび他の領域について実質的に同時に、および/または(x)前記DMRの各々と同じ検出可能な標識、および/または、(y)前記他の領域と異なる検出可能な標識を用いて行われる]は、各々、本発明の好ましい実施形態である。本発明におけるその特徴の組み合わせの使用は、効率の改善および/または結果の相乗的魅力の機会を提供する。例えば、この組み合わせの使用により、検出の改善された感度および/または精度および/または正確さ(例えば、定量的な量の検出)または前記DNA種を得ることができる。改善の度合いは、各特徴の単独の利用と比較して相乗的であろう。例えば、組み合わせた特徴の使用によって得られる改善は、個別に各々の特徴を利用することによって得られる各々の改善の合計よりも大きい。
【0046】
図示的説明として、本発明の第2の態様に使用されるDMR、他の領域および検出可能な標識の一般的な配置の概略図を
図1(b)に示す。(1)2つ以上のDMR、DMR1およびDMR2(および任意にDMRnまで)におけるDNAのメチル化の存在は、いずれの場合にも、同じ検出可能な標識を用いて検出される。(2)場合により、他の領域(「OR」)は、ゲノムの同じ部分(例えば、1つのDMRの約20bp〜約20kbの上流または下流)に位置する。(3)少なくとも1つのOR(OR1および任意にOR2またはORnまで)を用いて検出された全DNA量は、DMRでメチル化の検出に使用するものとは異なる検出可能な標識を用いて検出される(場合により、使用する検出可能な標識はすべてのORで同じである)。(4)場合により、2つ以上のDMRでメチル化が検出され、および/または、2つ以上のORで全DNA量が検出される。
【0047】
特定の実施形態では、本発明のいずれかの方法の工程(b)および/または工程(c)の一部として行われる検出の前にまたはその一部として、前記DMRおよび/または前記他の領域をそれぞれ含む各DNA領域は増幅される。DNAの増幅は、任意の適切な複製プロセスを用いて実施することができ、特にこの実施形態では、DMRおよび/または他の領域のそれぞれは、DMRおよび/または他の領域ごとに適切に設計されたプライマーを用いて、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によって増幅される。当業者は、例えば、Clone Manager Professional 9(Sci−Ed Software)、Vector NTI(Life Technologies)またはwww.ncbi.nlm.nih.gov/tools/primer−blast/もしくはmolbiol−tools.ca/PCR.htmから入手できるものなどのウェブベースのツール等のプライマー設計のアルゴリズムおよびプログラムを用いて、本発明の方法で使用するこのPCRプライマーを容易に設計することができる。PCRの増幅を含む本発明のこれらの実施形態は、本明細書に記載のいずれか等のPCRの実施に関連する特定の工程、または、特に下記工程をさらに含むことができる:(A)二本鎖標的DNA、そのDNAの領域(本明細書に記載のDMRまたは他の領域等)の増幅のために設計されたプライマー対(例えば、本明細書に開示されたプライマー対)を含む反応混合物を準備する工程(第1のプライマーは標的DNAの第1鎖の配列に相補的であり、第2のプライマーは、標的DNAの第2鎖の配列、Taqポリメラーゼならびにアデニン、チミン、シトシンおよびグアニンを含む複数の遊離ヌクレオチドに相補的である);(B)標的DNAの鎖を互いに分離させるために、反応混合物を第1の規定温度で第1の規定時間加熱する工程;(C)第1および第2のプライマーが標的DNAの第1および第2の鎖上のそれらの相補的配列とハイブリダイズでき、Taqポリメラーゼがプライマーを伸長できる条件下で、反応混合物を第2の規定温度まで第2の規定時間冷却する工程;および(D)工程(B)および工程(C)を20回以上繰り返す工程。
【0048】
別の実施形態では、本発明の方法の工程(b)および/または工程(c)で使用される検出可能な標識は、蛍光、タンパク質、低分子または放射性標識からなる群から独立して選択される。例えば、DMRには、同じ(同様のまたは重複する励起および/または発光スペクトルを有することを含む)蛍光標識を用いることができ、励起および/または発光スペクトル(特に、異なる発光スペクトル)を有する蛍光標識は、他の領域の検出に使用することができる。当業者は、本発明で使用する適切なその蛍光標識を、例えば、FAM、TET、JOE、VIC、HEX、NED、PET、ROX、TAMRA Quasar(商標)、Texas Red(商標)からなる群から選択することができる。別の実施形態では、検出可能な標識は、例えば特異的抗体およびELISA型検出方法を使用して検出できるタンパク質または小分子タグであってもよい。各々のDMRについて同じタンパク質または小分子を使用すること、および、他の領域について異なるタンパク質または小分子を検出可能に使用することは、本発明で使用される検出可能な標識に利用することができる。異なる放射性標識は、それらの発光エネルギー、透過/励起特性および粒子タイプ(例えば、α粒子とβ粒子との区別による)によって区別することができる。他の検出可能な標識(例えば、核酸コード化タグ)も本発明で採用することができる。
【0049】
本発明の特定の実施形態では、実施形態の方法の工程(b)における検出は、例えばDMRの1つに特異的な少なくとも1つの標識プローブを用いることによって、プローブベースの定量リアルタイムPCRを含む。複数のDMRのPCR増幅が同じ反応で行われる実施形態では、このPCRは「多重」(または、2つのDMRのみが増幅される場合は「二重」)と考えることができる。同様に、本発明の方法における工程(c)の検出は、追加的または代替的に、例えば前記他の領域の1つに特異的な少なくとも1つの標識プローブを用いることによって、プローブベースの定量リアルタイムPCRを含むことができる。本発明の第2の態様の特定の実施形態では、実施形態の方法の工程(b)における検出は、例えばそれぞれが前記DMRの1つに特異的である少なくとも2つの標識プローブを用いることによって、プローブベースの定量リアルタイムPCRを含む。
【0050】
用語「プローブベースの」定量PCRは、当該技術分野で認識されており、様々な商標名(Rocheの「TaqMan」PCRなど)で表示され販売される様々な態様を包含し、所定の単位複製配列(amplicon)(例えば、DMRまたは他の領域)の検出に特異的な(例えば蛍光)レポータープローブを使用する。プローブベースの定量PCRは、レポーターとして二本鎖DNA結合色素(例えば、SYBR Green(商標))を用いる定量PCRとは異なる。その二本鎖DNA結合色素は、任意の二本鎖の単位複製配列に非特異的に結合するので、例えば、他の領域の検出(すなわち全DNAの検出)からDMR(すなわち前記DNA種)の検出を区別するためには使用できないからである。当業者が理解するように、PCRの特異的単位複製配列は、単一のプローブを用いて、または単位複製配列に対する複数のプローブ(例えば、2つもしくは3つのプローブ)を用いて、検出することができる。特に、プローブベースの定量PCRは、標識されたオリゴヌクレオチドを用いて標的核酸を検出する方法が組み込まれた増幅反応を含み、核酸ポリメラーゼの5’から3’へのヌクレアーゼ活性を用いて、アニールした標識されたオリゴヌクレオチド(例えば、プローブ)をハイブリダイズした二本鎖から切断し、検出するために標識されたオリゴヌクレオチド断片を放出する。このような方法およびプロセスは当該技術分野で公知であり、Gelfandら(米国特許第5804375号、欧州特許第0543942号および関連ファミリー)および/またはLivakら(米国特許第6258569号、欧州特許第0792374号および関連ファミリー)によってより一般的な言葉で説明されており、それは、プローブが、結合すると標識の検出可能性を消失させるクエンチャー分子と共に検出可能な標識を含む場合に、検出可能な標識が反応混合物(クエンチャーからの)中に放出される前に、5’から3’へのヌクレアーゼ(すなわち増幅)が働き、検出できることが必要であることを含む。さらに、「プローブベースの」定量PCRの方法は、Reedら(米国特許第6727356号、欧州特許第1235938号および関連ファミリー)に記載されているオリゴヌクレオチド‐蛍光色体‐クエンチャー‐マイナー・グルーブバインダー複合体を含むプローブの使用によって、代替的または追加的に改善されうる。
【0051】
このプローブベースの定量PCRは、信号の強度(例えば、経時の)を測定し、定量的に検出を測定するために使用するLightCycler等の機械を用いてアナログの方法で行うことができる。このような検出のためのシステムや方法は、Woudenbergら(米国特許第6929907号、欧州特許第0706649号および関連ファミリー)および/またはHiguchi(米国特許第5994056号、欧州特許第0512334号および関連ファミリー)により記載されている。あるいは、デジタルPCR(dPCR)、すなわち、検出されたDNAの量を定量する方法として増幅事象の数を測定するために、複数の事象で実施されるPCR。例えば、ナノウェルまたは液滴(ddPCR)中で実施されるdPCR。
【0052】
当業者は、DMRおよび/または他の領域のプローブベースの定量PCR検出の用の適切なプライマーおよびプローブ(および適切な標識、例えば色素)を設計することができる。例えば、本明細書の別の箇所に記載されているプライマー/プローブ設計ソフトウェアを用いることによって設計することができる。公知のように、PCRプライマーは、この方法で使用されるメチル化特異的修飾試薬に特異的なメチル化部位と重複することができる(特に、試薬が、本明細書中に開示されるもの(またはその組み合わせ)などの1つ以上のメチル化感受性制限酵素を含む場合)。特にその実施形態では、所定のDMR用のPCRプライマーの一方または他方は(または両方を考慮すると)、2つまたは3つのそのメチル化部位(例えば、各々がメチル化部位を含みうるメチル化感受性制限酵素のための2または3つの制限部位)と重複しうる。あるいはまたはさらに、DMR用のプライマーは、1つ、2つ、3つまたはそれ以上のそのメチル化部位(例えば、10,15,20,25または50までのそのメチル化部位)に隣接するように設計することができる(特に、例えば、各々がメチル化部位を含みうる10、15、20、25または50のメチル化感受性制限酵素等の1つ、2つ、3つまたはそれ以上のそのメチル化部位のための制限部位に隣接する。)
【0053】
本発明の第2の態様の特定の実施形態では、他の領域のゲノム位置は、そのような態様で使用される場合、通常、ゲノムの同じ部分、例えば、本明細書で使用される少なくとも1つのDMRのゲノム位置の約20bp〜約20kbの上流または下流に位置する(同じ遺伝子内の実施形態を含む)。この態様の特定の実施形態では、他の領域は、本発明の第2の態様で使用される場合、DMRと重複しない。本発明者らは、本発明の第2の態様において、他の領域がDMRの1つと同じゲノム部分に位置している場合に、DNA種の検出(および特に定量)が改善されたことを見出した(例えば、感度、精度および/または正確さに関して)。理論に拘束されるものではないが、本発明の第2の態様において使用される場合、このように同様に位置するDMRおよび他の領域を用いると、ゲノムを渡るクロマチン/ヌクレオソームパッキングの変化の影響、すなわち異なる領域のゲノムDNAの安定性/劣化が緩和されると考えられる。例えば、他の領域(全DNAの検出)と比較したDMR(すなわち、DNA種の検出)の安定性/劣化の違いは、より小さくなる。そして、DMRと他の領域との間のゲノムに渡る(大きく)異なるクロマチン/ヌクレオソームパッキングによりもたらされる量的な相違によって、(有意に)誤ることなく、相対的(および絶対的)に定量することができる。この特徴(同様に位置するDMRおよび他の領域)と、本発明の別の特徴との組み合わせ[少なくとも2つのDMRの使用、および、工程(b)における検出および工程(c)における検出は、サンプルのDNAの同一アリコートを用いて、同じ反応/検出容器内で、および、そのDMRおよび他の領域について実質的に同時に、および(x)前記DMRの各々と同じ検出可能な標識、および、(y)前記他の領域と異なる検出可能な標識を用いて行われる]は、本発明の好ましい実施形態である。本発明におけるその特徴の組み合わせの使用は、効率の改善および/または結果の相乗的魅力の機会を提供する。例えば、この組み合わせの使用により、検出の改善された感度および/または精度および/または正確さ(例えば、定量的な量の検出)または前記DNA種を得ることができる。改善の度合いは、各特徴の単独の利用と比較して相乗的であろう。例えば、組み合わせた特徴の使用によって得られる改善は、個別に各々の特徴を利用することによって得られる各々の改善の合計よりも大きい。
【0054】
本発明は、混合物中の全DNA量の検出を提供するための1つの他の領域の使用を含む。しかし、本発明は、2つ以上の他の領域を使用する実施形態をも包含する。例えば、本発明は、工程(c)における前記検出が、前記他の領域の少なくとも2つ(例えば、2つ、3つまたは4つの他の領域)を使用することを含む、その実施形態を含む。本発明のすべての態様の特定の実施形態では、前記他の領域の数は、工程(b)で使用されるDMRの数と同じである。例えば、2つのDMRが使用される場合、その実施形態では2つの他の領域が使用され、3つのDMRが使用される場合、3つの他の領域が使用される(
図1に示すように)。
【0055】
本明細書の他の箇所に記載されるように、本発明の第1の態様は、他の領域が通常ゲノムの同じ部分に位置する場合、例えば、本明細書で使用される少なくとも1つのDMRのゲノム位置の約20bp〜約20kbの上流または下流に位置する場合を含む(同じ遺伝子内の実施形態を含む)。また、本明細書の他の箇所に記載されているように、本発明の第2の態様の特定の実施形態は、他の領域が通常ゲノムの同じ部分に位置する場合、例えば、本明細書で使用される少なくとも1つのDMRのゲノム位置の約20bp〜約20kbの上流または下流に位置する場合を含む(同じ遺伝子内の実施形態を含む)。この第2の態様の特定の実施形態では、他の領域はDMRと重複しない。したがって、本発明において複数の他の領域が使用される場合、その2つ以上の他の領域が2つ以上のDMRと同様にゲノムに位置する実施形態が含まれる。例えば、前記他の領域の1つは、工程(b)で使用されるDMRの約20bp〜約20kbの上流または下流に位置し(同じ遺伝子内の実施形態を含む)、前記他の領域の別の領域(例えば、第2の他の領域)は、それぞれ、別の前記(例えば、重複していない)DMR(例えば、第2のDMR)の約20bp〜約20kbの上流または下流に位置する(同じ遺伝子内の実施形態を含む)。特定の実施形態では、さらなる他の領域は、DMRと重複してもよい。
【0056】
本発明で使用される他の領域は、通常、DMRと同じゲノム部分に位置する場合、1つの前記DMRの上流または下流に、下記群から選択される距離内で位置することができる:約16kb〜約20bp,約14kb〜約20bp,約12kb〜約20bp,約10kb〜約20bp,約8kb〜約20bp,約6kb〜約20bp,約5kb〜約20bp,約4kb〜約20bp,約3kb〜約2bp,約16kb〜約20bp,約1kb〜約20bp,約500bp〜約20bp,約200bp〜約20bp,約20kb〜約15kb,約15kb〜約10kb,約12kb〜約8kb,約10kb〜約8kb,約11kb〜約7kb,約11kb〜約10kb,約9kb〜約8kb,約8kb〜約6kb,約6kb〜約4kb,約4kb〜約2kb,約2kb〜約500bp,約1kb〜約100bp,約500bp〜約50bp,約400bp〜約200bpおよび約500bp〜約100bpならびに約500bp〜約300bp。特定の実施形態では、通常、本発明で使用される他の領域のそれぞれは、異なった、使用されるDMRに位置する。
【0057】
複数の他の領域が使用される場合、本発明は、工程(c)における検出が、前記他の領域の各々について同じ検出可能な標識を使用して行われる、および/または、それぞれが前記他の領域の1つに特異的である少なくとも2つの標識プローブを用いた多重リアルタイム定量PCRを含む、実施形態を包含する。
【0058】
特定の実施形態では、全ての検出工程(すなわち、全てのDMRおよび全ての他の領域に必要なもの)は、プローブベースの多重定量PCR(例えば、TaqMan)を使用して、効率的かつ効果的な方法で、1つのプロセス工程または反応で実施される。例えば、工程(c)における検出および工程(b)における検出は、前記サンプルのDNAの同一アリコートを用いて、同じ反応/検出容器内で、および、互いに実質的に同時に、そして、多重リアルタイム定量PCRにより、前記DMRおよび他の領域のそれぞれに特異的な少なくとも1つの標識プローブを使用して行われる。特にこの実施形態では、試薬は、本明細書に開示されるひとつ(またはその組み合わせ)等の1つ以上のメチル化感受性制限酵素を含む。
【0059】
本発明は、1つ以上の制御手順等のさらなる手順を含むこともできる。例えば、本発明は、修飾工程の制御(例えば、制限酵素消化の制御)の役割を果たすDNA領域の第3のクラスの検出を対象とする1つ以上の工程を含むことができる。この実施形態は、例えば、その制御領域が増幅され、その領域のクラスに使用される第3の検出可能な標識を有する第3のプライマー/プローブによって検出されるプローブベースの多重リアルタイム定量PCRを用いて実施することもできる。
【0060】
特定の関連性を有する本発明の一実施形態では、前記DNA種は、胎児の細胞および/または胎児の胎盤に由来し、前記サンプルは妊娠女性由来である。その実施形態では、サンプルは非侵襲的方法で得ることができる。例えば、前記DNA種は、採血管などの従来法によって妊娠女性から得られた血液または血液画分(例えば、血漿または血清)のサンプルから検出された循環無細胞DNAである。この実施形態では、サンプルは、母体起源のDNA(例えば、前記他のDNA)を含むであろう。それは妊娠女性の細胞(すなわちゲノム)に由来する。
【0061】
本発明は、DMRが胎児DNAでは高度にメチル化され、母体DNAでは低メチル化されている態様を含む。特定の実施形態では、そのDMRは、本明細書に開示される遺伝子等の遺伝子のプロモーター、エンハンサー領域またはエクソンに位置しうる。あるいは、DMRは、その遺伝子のイントロンまたはゲノムの非コード領域に位置しうる。本発明の全ての態様の特定の実施形態において、そのゲノムおよび/または遺伝子は、ヒトゲノムまたは遺伝子である。特に本発明は、前記DMRが、少なくとも1つ、好ましくは少なくとも2つの前記試薬に特異的なメチル化部位を含み、そして前記DMRの少なくとも1つが、RASSF1Aおよび/またはTBX3である、または、RASSF1A、TBX3、HLCS、ZFY、CDC42EP1、MGC15523、SOX14およびSPNおよびDSCAMからなる群から選択されるゲノムおよび/または遺伝子(例えば、ヒトゲノムまたは遺伝子)の一部に位置する実施形態を含む。また、前記DMRが、前記試薬に特異的な少なくとも1つ、好ましくは少なくとも2つのメチル化部位を含み、少なくとも1つの前記DMRが、AIRE、SIM2、ERG、VAPA−APCDDI、国際公開第2011/034631号に開示されている母体DNAに比べて胎児DNAで高度にメチル化されているもの(例えば、国際公開第2011/034631号の配列番号1〜59、90〜163、176、179、180、184、188、189、190、191、193、195、198、199、200、201、202、203、205、206、207、208、209、210、211、212、213、214、221、223、225、226、231、232、233、235、239、241、257、258、259および/または261)ならびに国際公開第2011/092592号に開示されているもの(例えば、Lim et al 2014,BMC Medical Genomics 7:1においてさらに研究されている国際公開第2011/092592号のEP1,EP2,EP3,EP4,EP5,EP6,EP7,EP8,EP9,EP10,EP11および/またはEP12(国際公開第2011/092592号の配列番号33〜44))からなる群から選択される領域および/または遺伝子に位置する実施形態も含まれる。表Aは、国際公開第2011/034631号および国際公開第2011/092592号で使用される配列識別子の、本発明で使用される配列識別子への変換を示す。
【0067】
本発明の別の態様において、前記DMRの少なくとも1つは、第21染色体、第18染色体、第13染色体、X染色体およびY染色体からなるリストから選択されるヒト染色体上に位置し、好ましくは、前記DMRの少なくとも1つは、第21染色体、第18染色体または第13染色体に位置し、より好ましくは、前記DMRの少なくとも1つは、第21染色体に位置する。本発明の別のまたはさらなる実施形態では、前記DMRの少なくとも1つは、前記試薬に特異的な少なくとも1つ、好ましくは少なくとも2つのメチル化部位を含み、そして前記DMRは、マスピン(および好ましくは、胎児とその母親の間で異なるメチル化がされていることが欧州特許第1751307号に記載されたマスピン(別名「SERPINB5」)遺伝子の一部)、CGI137、PDE9A、PPP1R2P2、Fem1A(C.elegans)と類似するもの、CGI009、CBR1、DSCAM、C21またはf29およびCGI13(または、例えば、国際公開第2007/132167号の表1またはChimら(2008)に開示されている遺伝子および/または領域(母体の血液細胞ではメチル化されず、胎盤ではメチル化されている))からなるリストから選択される領域および/または領域に位置する。
【0068】
ヒトの第21染色体、第18染色体、第13染色体およびX染色体は、染色体異数性(特に胎児の)に関連すると一般的に考えられており、その染色体の遺伝子または領域に位置する少なくとも1つのDMRを用いることは、第21染色体のトリソミー(ダウン症候群としても知られる)を含む染色体トリソミー等の染色体異数性に関連する、および/または、染色体異数性の(特に胎児の)診断のための、DNA種の検出、同定または定量のための本発明の方法に特に好ましい。したがって、本発明の特定の実施形態では、前記DMRの少なくとも1つは、以下からなるリストから選択される領域および/または遺伝子に位置する:国際公開第2011/034631号の配列番号1〜39、176、179、180、184、188、189、190、191、193、195、198、199、200、201、202、203、205、206、207、208、209、210、211、212、213、214、221、223、225、226、231、232、233、235、239、241、257、258、259および/または261;好ましくは以下からなるリストから選択される:国際公開第2011/034631号の配列番号33〜39、176、179、180、184、188、189、190、191、193、195、198、199、200、201、202、203、205、206、207、208、209、210、211、212、213、214、221、223、225、226、231、232、233、235、239、241、257、258、259および/または261;より好ましくは以下からなるリストから選択される:国際公開第2011/034631号の配列番号184、191、201、202、208、209、210、211、212、214、235、241および258。本発明の別のまたはさらなる実施形態において、前記DMRの少なくとも1つは、前記試薬に特異的な少なくとも1つ、好ましくは少なくとも2つのメチル化部位を含み、前記DMRの少なくとも1つは、EP1、EP2、EP3、EP4、EP5、EP6、EP7、EP8、EP9、EP10、EP11およびEP12(国際公開第2011/092592号の配列番号33〜44)からなるリストから選択されるものを含む、国際公開第2011/092592号に開示された領域および/または遺伝子に位置する。本発明のさらに別のまたはさらなる実施形態では、前記DMRの少なくとも1つは、前記試薬に特異的な少なくとも1つ、好ましくは少なくとも2つのメチル化部位を含み、そして前記DMRの少なくとも1つは、AIRE、SIM2、ERGおよびVAPA−APCDDIからなるリストから選択されるかHLCSである領域および/または遺伝子に位置する。
【0069】
本発明の特定の実施形態では、前記DMRの少なくとも1つは、染色体異数性に関連しない(または、ほとんど関連しない)ヒト染色体上に位置する。その実施形態では、その染色体は、母体DNAと比較して、例えば、胎児の二倍体DNA全ての推定値を反映するDNA種を検出、同定または定量できる「基準染色体」(二倍体)と考えることができる。その検出、同定または定量されたDNA種(その「基準」染色体由来の)のパラメータ(例えば、相対量または絶対量)は、検出、同定、または定量された染色体異数性(例えば、トリソミー)に関連する染色体またはその一部に由来するDNA種の対応するパラメータと比較することができる;その比較されたパラメーターの有意差(例えば、1つの染色体量がもう1つの染色体量に対して過剰である)が、染色体異数性が存在する可能性があることを示す。したがって、本発明の特定の実施形態において、前記DMRの少なくとも1つは、第1染色体〜第12染色体、第14染色体〜第17染色体、第19染色体、第20染色体、第22染色体および第23染色体からなるリストから選択されるヒト染色体上に位置し、好ましくは前記DMRは、ヒトの第2染色体、第3染色体または第12染色体上に位置する。本発明の別のまたはさらなる実施形態では、前記DMRの少なくとも1つは、前記試薬に特異的な少なくとも1つ、好ましくは少なくとも2つのメチル化部位を含み、そして前記DMRは、以下からなるリストから選択される領域および/または遺伝子に位置する:CD48、FAIM3、ARHGAP25、SELPLG、APC、CASP8、RARB、SCGB3A1、DAB2IP、PTPN6、THY1、TMEFF2およびPYCARD。本発明の代替的または追加的な別の実施形態では、前記DMRの少なくとも1つは、以下からなるリストから選択される領域および/または遺伝子に位置する:RASSF1A、TBX3、ZFY、CDC42EP1、MGC15523、SOX14およびSPN;および/または前記DMRは、以下からなるリストから選択される領域および/または遺伝子に位置する:国際公開第2011/034631号の配列番号40〜59および90〜163。
【0070】
2つのDMRが使用される場合、本発明の全ての態様の特定の実施形態では、これらは、ゲノムおよび/または遺伝子の同じ部分に位置しない。例えば、このDMRは、別々の染色体上に位置してもよいし、約20kb以上または約15kb、10kb、8kb、6kb、4kb、2kb、1kb、500bpもしくは200bp以上離れていてもよい。あるいは、2つ(またはそれ以上)のDMRが本発明で使用される場合、特定の実施形態において、それらは同じ領域または遺伝子(例えば、本明細書に記載されるもの)に位置することができ、さらに、互いに重複することができることが想定される。
【0071】
本発明の特定の実施形態では、複数のDNA種が前記サンプル中で検出される。例えば、本発明の方法を用いた前記サンプル中では、2種(またはそれ以上)のDNA種を検出(同定または定量)することができる。各々のDNA種は、別々の染色体上に存在(または由来)していてもよい。例えば、染色体異数性に関連する染色体(例えば、ヒトの第21染色体,第18染色体,第13染色体またはX染色体)上の(または、由来の)第1のDNA種や、基準染色体(例えば、ヒトの第1染色体〜第12染色体、第14染色体〜第17染色体、第19染色体、第20染色体、第22染色体または第23染色体)上の(または、由来の)第2のDNA種である。染色体異数性に関連する染色体上の(または、由来の)第1のDNA種、および、基準染色体上の(または、由来の)第2のDNA種の検出、同定または定量は、この検出、同定または定量のそれぞれによる各パラメータ(例えば、相対量または絶対量)の(例えば、相対量または比率による)比較を可能とするので、したがって、特に胎児における染色体異数性の検出、同定または診断に有用である。
【0072】
本発明の特定の実施形態では、2つの前記DMRが使用される場合(または2つ以上のDMRが使用される場合)、それぞれが、RASSF1Aおよび/またはTBX3であるゲノムおよび/または遺伝子の一部(好ましくはヒトの)に位置するか、RASSF1A、TBX3、HLCS、ZFY、CDC42EP1、MGC15523、SOX14およびSPNならびにDSCAMからなる群より選択されるゲノムおよび/または遺伝子の一部(好ましくはヒトの)に位置する;および/または前記DMRの少なくとも1つは、RASSF1A(NCBI基準配列:NG_023270.1:Homo sapiens Ras関連(RalGDS/AF−6)ドメインファミリーメンバー1(RASSF1)、第3染色体上のRefSeqGene;配列番号:13)の約4,700bpと5,600bpの位置の間、もしくは、TBX3(NCBI基準配列:NG_008315.1:Homo sapiens T−box 3(TBX3)、第12染色体上のRefSeqGene;配列番号:14)の約1,660bpおよび2,400bpの位置の間に位置するか、または、DSCAM(ダウン症候群細胞接着分子;NCBI基準配列Homo sapiens第21染色体、GRCh38.p2 Primary Assembly:NC_000021.9 GI:568815577、領域40,010,999〜40,847,113;配列番号200)の約40,841,584および40,842,020の位置の間に位置する。さらに特定の実施形態では、2つ(またはそれ以上)のDMRが使用され、第1のDMRはRASSF1Aの約4,700bpと5,600bpの位置の間に位置するものを含み、第2のDMRはTBX3の約1,660bpと2,400bpの位置の間に位置するものを含む。
【0073】
特定の実施形態では、DMRは、RASSF1Aの約4,900bp〜5,500bp、5,000bp〜5,400bpまたは5,100bp〜5,300bpの位置の間のRASSF1Aに位置し、および/または、TBX3(例えば、配列番号203)の約1,800bp〜2,260bp、1,920bp〜2,160bpまたは1,920bp〜2,080bpの位置の間のTBX3に位置する;および/または、配列番号201等のDSCAM(Homo sapiens 第21染色体、GRCh38.p2 Primary Assembly:NC_000021.9 GI:568815577の領域に関連する)の約40,841,600bp〜40,841,900bp、40,841,625bp〜40,841,840bpまたは40,841,650bp〜40,841,790bpの位置の間のDSCAMに位置する。
【0074】
本発明の一実施形態で使用されるDMRおよび他の領域(「OR」)の一般的な配置を
図2に図式的に示す:(1a)RASS1Aゲノム配列(NCBI基準配列:NC_000003.12 Homo sapiens 第3染色体、GRCh38 Primary Assembly)の50,340,672bp〜50,340,784bpの位置の間に位置するDMR1と、50,331,604bp〜50,331,702bpの位置の間に位置するOR1と共に(DMR1とOR1は8,969bp離れている)、DMR1はRASSF1Aのエクソン2内に存在し、OR1はRASSF1Aのエクソン4内に位置する。(1b)TBX3ゲノム配列(NCBI 基準配列:NC_000012.12 Homo sapiens 第12染色体、GRCh38 Primary Assembly)の114,687,095bp〜114,687,189bpの位置の間に位置するDMR2と、114,676,384bp〜114,676,454bpの位置の間に位置するOR2と共に(DMR2とOR2は10,640bp離れている)、DMR2はTBX3のプロモーター領域に存在する。(2)2つのDMRにおけるDNAのメチル化は、それぞれのフォワード(F)およびリバース(R)PCRプライマーおよび各々が同じ標識(P
*)で標識された領域特異的プローブを使用したプローブベースの定量PCRを用いて検出される。(3)全DNAは、各々のフォワード(F)およびリバース(R)PCRプライマーおよび領域特異的プローブを用いたプローブベースの定量的PCRを用いて2つのORで検出される。各プローブは、2つのDMRに使用する標識(P
**)とは異なるOR用の同じラベルで標識される。プライマーおよびプローブの配列ならびにプローブ標識の詳細を表1に示す。
【0075】
本発明の別の実施形態で使用されるDMRおよび他の領域(「OR」)の一般的な配置を
図6に図式的に示す。(1)DSCAMゲノム配列(ダウン症候群細胞接着分子;NCBI基準配列Homo sapiens 第21染色体、GRCh38.p2、Primary Assembly:NC_000021.9 GI:568815577,領域40010999〜40847113;配列番号200)の40,841,691bp〜40,841,781bpの位置の間に位置するDMR1と、40,841,286bp〜40,841,772bpの位置の間に位置するOR1と共に(DMR1とOR1は約300bp〜500bp離れている)、DMR1は例えばDSCAMに存在し、OR1は例えばDSCAMに位置する。(1’)TBX3ゲノム配列(NCBI基準配列:NC_000012.12 Homo sapiens第12染色体,GRCh38 Primary Assembly)の114,687,093bp〜114,687,191bpの位置の間に位置するDMR1’と、114,676,384bp〜114,676,454の位置の間に位置するOR1’と共に(DMR1’とOR1’は約10,600bp〜10,810bp離れている)、DMR1’はTBX3に存在し、OR1’はTBX3に位置する。
【0076】
本発明の特定の実施形態は、その方法、組成物、キットおよび/またはコンピュータプログラム製品に関して、前述のDMR、OR、プライマーおよび/またはプローブの配列、特に表1または表8に記載されたもの1つ以上の使用を含む。その特定の実施形態では、所定のプローブは、表1または表8に記載の配列および表1または表8に記載の標識とクエンチャーの対(場合により、マイナー結合グルーブ部を有する)のいずれか1つを含む。特にプローブは、そのプローブについて表1または表8に示すように、配列および標識とクエンチャーの対(場合により、マイナー結合グルーブ部を有する)の組み合わせを含むことができる。本発明の別の実施形態は、特に、その方法、組成物、キットおよび/またはコンピュータプログラム製品に関して、2つ以上の(例えば、全ての)前述のDMR、OR、プライマーおよび/またはプローブの配列の特定の組合せの使用を含み、特に、表1に示すプライマー/プローブの組み合わせ、または、表8に示すプライマー/プローブの組み合わせの使用を含む。
用語「メチル化部位」は、当該技術分野で認識されており、例えば、好ましくは例えば本明細書の他の場所に開示されているメチル化感受性制限酵素によって認識される短いヌクレオチド配列(例えば、4,6,8,10または12bpの長さのもの)内のCpGモチーフを包含する意味を有する。
【0077】
同様に、特に本発明の第1の態様に関して、他の領域は、ゲノムの特定の部分および/または遺伝子に位置するとき、遺伝子のプロモーター、エンハンサー領域またはエキソンに位置することができ、あるいは、その遺伝子のイントロンもしくはゲノムの非コード領域に位置することができる。本発明の全ての態様の特定の実施形態において、そのゲノムおよび/または遺伝子は、ヒトのゲノムまたは遺伝子である。特定の実施形態では、本発明で使用される他の領域が、1つ以上のDMRを特徴とするゲノムおよび/または遺伝子の同じ部分(好ましくは、本発明で使用するDMRと重複しない部分)に位置する場合、RASSF1Aおよび/またはTBX3である遺伝子(例えば、ヒトおよび/または特に前記DNA種が胎児cfDNAである場合)またはRASSF1A、TBX3、HLCS、ZFY、CDC42EP1、MGC15523、SOX14およびSPNならびにDSCAMからなる群から選択される遺伝子等のゲノムおよび/または遺伝子の一部に位置する。DMRと一緒に位置していない場合(例えば、第2の領域または複数の他の領域が使用される場合)、当該他の領域は、特定の実施形態では、(例えば、ヒトの)ハウスキーピング遺伝子(例えば、GAPDH、βアクチン、ALB、APOEまたはRNASEP)に位置する。同様に、特に本発明の第2の態様に関しては、他の領域は、ゲノムの特定の部分および/または遺伝子に位置することができ、また遺伝子のプロモーター、エンハンサー領域またはエクソンに位置することができ、あるいは、その遺伝子のイントロン内またはゲノムの非コード領域に位置することができる。本発明の全ての態様の特定の実施形態において、そのゲノムおよび/または遺伝子は、ヒトゲノムまたは遺伝子である。特定の実施形態では、本発明で使用される他の領域は、(例えば、ヒトの)ハウスキーピング遺伝子(例えば、GAPDH、βアクチン、ALB、APOEまたはRNASEP)に位置する。あるいは(および特に前記DNA種が胎児cfDNAである場合)、前記他の領域は、1つ以上のDMR(例えば、RASSF1A、TBX3、HLCS、ZFY、CDC42EP1、MGC15523、SOX14もしくはSPNまたはDSCAM)を特徴とするゲノムおよび/または遺伝子の同じ部分に位置することができ、また好ましくは本発明で使用されるDMRと重複しない。
【0078】
本発明の全ての態様の特定の実施形態において、前記他の領域は、前記試薬に特異的なメチル化部位を有さないゲノムの一部を含み、また前記他の領域は(例えば、ヒトの)遺伝子RASSF1AもしくはTBX3(例えば、配列番号:それぞれ13および14)またはDSCAM(配列番号:200)に位置する。また、2つ以上の前記他の領域が検出工程(c)で使用され、第1の他の領域がそのRASSF1Aの約14,220bp〜13,350bpの位置の間に位置し、第2の他の領域がそのTBX3の約12,400bp〜13,000bpの位置の間に位置する、さらなる特定の実施形態を含む。特定の実施形態では、他の領域は、そのRASSF1Aの約14,230bp〜14,340bp、14,230bp〜14,330bp、14,230bp〜14,320bpまたは14,230bp〜14,310bpの位置の間のRASSF1Aに位置し;および/またはそのTBX3(例えば、配列番号204)の約12,400bp〜12,940bp、12,700bp〜12,850bpまたは12,710bp〜12,790bpの位置の間のTBX3に位置し;および/または例えば、配列番号202のDSCAM(Homo sapiens第21染色体、GRCh38.p2 Primary Assembly:NC_000021.9 GI:568815577の領域に関連する)の約40,841,150bp〜40,841,525bp、40,841,200bp〜40,841,475bpまたは40,841,250bp〜40,841,425bpの位置の間のDSCAMに位置する。あるいは、他の領域は、そのRASSF1Aの約13,790bp〜13,880bpもしくは14,490bp〜14,600bpの位置の間、または、そのTBX3の約8,040bp〜8,180bpもしくは6,230bp〜6,350bpの位置の間等のエクソンに位置することができる。または他の領域は、そのRASSF1Aの約10,500bp〜11,90bpの位置の間、もしくは、そのTBX3の約10,000bp〜11,000bpの位置の間等のイントロンに位置することができる。
【0079】
妊娠女性の循環系(例えば、血漿中)に存在する胎児cfDNA(および/または全cfDNA)のレベルは、早発性子癇前症、軽度および/または重度の子癇前症等の1つ以上の子癇前症のタイプのマーカーであるという強力な証拠が存在する(Hahn et al 2011,Placenta 32(Supl):S17参照)。本発明は、妊娠女性の血漿中に存在する胎児cfDNAの、効率の高い、効果的な、精度が高いおよび/または変動性の低い検出/定量における特定の有用性を示し、また本発明はその中の特定の有用性を有する。したがって、本発明の特定の実施形態では、個体は妊娠女性であり、妊娠に関連する疾患の罹患または発症に感受性がある;特に前記妊娠関連の疾患は子癇前症である。また本明細書中で使用される、疾患に「感受性がある(susceptible to)」個体は、疾患の罹患または発症の「疑いがある(is suspected to)」または「感受性のリスクがあるとみられる(be considered at risk of being susceptible to)」と記載することもできる。また特定の実施形態では、本発明は、疾患の罹患もしくは発症のリスクまたは罹患もしくは発症の感受性について個体をスクリーニングおよび/または診断するために使用される。
【0080】
別の実施形態では、個体は妊娠女性であり、早期陣痛、子宮内発育遅延およびバニシングツインからなる群から選択される妊娠関連の疾患に罹患または発症しやすい(または、しやすいリスクがあると考えられる)。特に、本発明者らは、本発明の方法で測定したcfDNAレベルと、大規模並列配列決定法で決定したY染色体配列の数で測定したcfDNAレベルとの間の相違が、それまでは単胎妊娠と思われた(男女の)双胎妊娠におけるバニシングツインの1つ以上の症例の同定、および/または、その(男女の)双胎妊娠のどちらかの相対的な発達および健康の観察に有用であったという本願発明の感度に驚いた。また本発明は、cfDNAから決定したY染色体配列の数(例えば、並列配列決定法を用いる)と比較した胎児cfDNAの相対値を考慮することにより、双胎妊娠の性別判定に利用することもできる。これらの点において、母体血液中のランダムなcfDNAで大規模並列配列決定法を用いる手法は、特定のY染色体の短い配列が他の染色体と相同性を有するために、すべての妊娠女性において、通常、常に「Y染色体」配列の非常に低い頻度(例えば、全配列の約0.003%〜0.004%または全配列の約0.0015%〜0.01%もしくは0.002%〜0.005%)をカウントしていることに留意する必要がある。したがって、「Y染色体」配列数の約0.005%または約0.003%、0.004%、0.006%もしくは0.007%の間のカットオフ値を雌性サンプルに用いることができる。
【0081】
本明細書の他の箇所に記載されるように、特定のDMRにおけるメチル化DNAの存在および量が、妊娠に関連しない特定の疾患の指標または兆候であるという証拠が増加している。したがって、本発明の別の特定の実施形態では、前記DNA種は、その疾患に関連する細胞タイプ由来であり、特にその実施形態では、前記DNA種は循環無細胞DNAであり、前記サンプルは血漿または血清等の血液画分である。例えば、その疾患は、腫瘍または癌等の細胞増殖性障害であってもよい。特定の実施形態では、その疾患は、肝臓、肺、乳房、結腸、食道、前立腺、卵巣、子宮頸部、子宮、精巣、脳、骨髄および血液からなるリストから選択される組織の腫瘍または癌である。および/または、前記DNA種は、腫瘍細胞に由来してもよい。特に、腫瘍は、肝臓、肺、乳房、結腸、食道、前立腺、卵巣、子宮頸部、子宮、精巣、脳、骨髄および血液からなる群から選択される組織の癌腫または癌である。
【0082】
腫瘍または癌である疾患で使用される場合、本発明は、前記DMRが前記試薬に特異的な少なくとも1つ、好ましくは少なくとも2つのメチル化部位を含む実施形態を含み、また前記DMRの少なくとも1つは、下記からなる群から選択されるゲノムおよび/または遺伝子(特に、そのゲノムおよび/または遺伝子がヒトのゲノムまたは遺伝子である場合)の部分に位置する:腫瘍抑制遺伝子、p16、SEPT9、RASSF1A、GSTP1、DAPK、ESR1、APC、HSD17B4およびH1C1。特に、前記DMRの1つ、または2つ以上のDMRは、RASSF1A(例えば、配列番号13)に位置してもよい。例えば、そのRASSF1Aの約4,700bp〜5,600bpの位置の間に位置し;および/または、前記他の領域は、そのRASSF1Aの約14,220bp〜13,350bpの位置の間に位置する。この実施形態で使用するRASSF1A内のDMRおよび/または他の領域の別の特定の位置は、本明細書の別の箇所に開示されている。さらに当業者は、別の遺伝子のゲノムの他の部分に位置する別のDMRおよび/または他の領域は、関連する科学文献で確認できることを認識するであろう(例えば、検討のためにElshimali 2013参照)。特に、疾患が腫瘍または癌である状況で使用する場合、本発明は、少なくとも1つ以上の(さらなる)他の領域(好ましくは2つ以上)が(例えばヒトの)ハウスキーピング遺伝子(例えば、GAPDH、βアクチン、ALB、APOEまたはRNASEP)に位置する実施形態を含む。あるいは、その状況のために、前記(さらなる)他の領域は、1つ以上のDMR(例えば、p16、SEPT9、RASSF1A、GSTP1、DAPK、ESR1、APC、HSD17B4およびH1C1)を特徴とするゲノムおよび/または遺伝子の同じ部分に位置することができる。
【0083】
本発明のさらに別の特定の実施形態では、前記DNA種は、下記からなる群から選択される疾患と関連する細胞タイプに由来する:感染/感染性疾患、消耗性疾患、変性疾患、(自己)免疫不全症、腎疾患、肝疾患、炎症性疾患、急性毒性、慢性毒性、心筋梗塞およびこれらの任意の組み合わせ(例えば、敗血症)および/または細胞増殖性疾患との組み合わせ;特にこれらの実施形態では、前記DNA種は循環無細胞DNAであり、前記サンプルは血漿または血清等の血液画分である。例えば、疾患は、細菌性、ウイルス性または原生動物病原体によって引き起こされる感染/感染症であってもよく、含まれる病原体は下記からなる群から選択される:レトロウイルス(例えば、HIV)、ヘルペスウイルス(例えば、HSV、EBV、CMV、HHVまたはVSV)、デングウイルス、マイコバクテリア(例えば、結核菌)およびハンタウイルス。特定の実施形態では、疾患は敗血症であり、および/または、腎臓疾患を除外する。
【0084】
本発明の全ての態様において、サンプルが組織サンプルまたは体液のサンプルである実施形態が存在する。特に、サンプルは、全血または血液画分(例えば、血漿または血清)である。代替的な実施形態では、サンプルは、尿、唾液、汗、精液、涙、痰、膣分泌物、膣洗浄液および結腸洗浄液からなる群から選択される生物学的液体である。さらに特定の実施形態では、サンプルは個体由来の血漿または血清サンプルであり、または、個体由来の尿である。別の実施形態では、サンプルは、ほとんど(または本質的に)細胞を含まず、および/または、全血および/または精液サンプルではない。特定の実施形態では、個体が女性の場合はサンプルは精液ではなく、個体が男性の場合はサンプルは膣洗浄液ではない。
【0085】
本発明の全ての態様において、メチル化および非メチル化DNAを特異的に修飾する試薬は、亜硫酸水素塩および/またはメチル化DNAと比較して非メチル化DNAを選択的に消化する薬剤(例えば、非メチル化DNAを消化できるがメチル化DNAを消化できない薬剤)を含むことができる。特定の実施形態では、試薬試薬は下記を含む:少なくとも1つのメチル化感受性酵素;少なくとも1つのメチル化感受性制限酵素;および/またはAatII、AciI、AclI、AfeI、AgeI、AgeI−HF、AscI、AsiSI、AvaI、BceAI、BmgBI、BsaAI、BsaHI、BsiEI、BsiWI、BsmBI、BspDI、BsrFI、BssHII、BstBI、BstUI、ClaI、EagI、FauI、FseI、FspI、HaeII、HgaI、HhaI、HinP1I、HpaII、Hpy99I、HpyCH4IV、KasI、MluI、NaeI、NarI、NgoMIV、NotI、NotI−HF、NruI、Nt.BsmAI、Nt.CviPII、PaeR7I、PluTI、PmlI、PvuI、PvuI−HF、RsrII、SacII、SalI、SalI−HF、SfoI、SgrAI、SmaI、SnaBI、TspMIおよびZraIからなる群から選択される薬剤。特定の実施形態では、前記試薬は、BstUI、HhaIおよびHpaIIからなる群から選択される試薬である。
【0086】
関連する実施形態では、その試薬は、本明細書に開示される試薬の2つ以上を含むことができる。例えば、1,2,3、4、5またはそれ以上(例えば、7,8または10まで)のメチル化感受性制限酵素を含むことができ、本質的に2または3の、BstUI、HhaIおよびHpaIIからなる群から選択されるメチル化感受性制限酵素からなる試薬を含む。
【0087】
重亜硫酸塩またはメチル化感受性制限酵素を使用して特異的メチル化を研究することは当業者に周知であり、標準的なテキストの教示や、Poonら(2002)、Nygrenら(2010)またはYegnasubramanianら(2006,Nuc Acid Res 34:e19)等の開示された方法の応用を適用することができる。実例として、本発明者らは、メチル化および非メチル化DNAを特異的に修飾する試薬としてメチル化感受性制限酵素の使用する実施例を本明細書に示す。試薬として重亜硫酸塩を使用するさらなる実例として、重亜硫酸塩修飾DNAメチル化部位が、例えば、メチル化特異的PCR(例えば、重亜硫酸塩修飾配列に選択的に結合するプライマーおよび/またはプローブを使用する)を用いて、および/または、続いてその重亜硫酸塩修飾がされた認識部位に制限酵素を使用して検出できることは、当業者には明らかである。メチル化特異的PCR(「MSP」)は、Hermanら(米国特許第6200756号、欧州特許第0954608号および関連ファミリー)に記載されている。また、プローブベースのPCR(「MethylLight」として知られる)を使用するMSPのさらなる開発品は、Lairdら(米国特許第6331393号、欧州特許第1185695号および関連ファミリー)に記載されている。
【0088】
本発明の全ての態様の特定の実施形態では、前記DNA種(および/または前記全DNA)の定量的な量は、検出および/または測定される。したがって、その実施形態では、前記検出工程の1つ以上(例えば、各々)が定量的検出を含み、また前記DNA種の前記検出量は、前記サンプル中に存在する全DNAに対する前記DNA種の相対濃度として表される。
【0089】
全DNAの絶対量が既知の場合、それに応じて、相対濃度からDNA種の絶対量(例えば、μg/mLまたはEg/mL等のゲノム当量などの濃度で表す)を算定できる。特定の実施形態では、サンプルの全DNAの絶対量は、下記のさらなる工程を含むことで決定できる:工程(c)で使用したものと同じ他の領域を使用して、既知量のDNAの標準サンプル中の全DNA量を検出する工程;および、前記DNAの標準サンプルから検出したシグナルを工程(c)で検出したシグナルと比較する工程。このDNAの標準サンプル(既知の量/既知の濃度)は、商業的供給源から容易に入手できる。また特に希釈系列を用いて準備、分析する場合、容易かつ効率的に使用して、サンプル中に存在する全DNAの絶対量を(検量線の補間/推定により)算定することができる。実際には、この検量線は、実質的に他の領域において説明したように(但し、標準の容器/反応は別のセットで)、好ましくはDMR/他の領域の検出と同じ操作で、準備、分析することができる。さらに、同じ反応のマスターミックスを使用することもできる。したがって、対照DNAである「DMR」はその標準DNAについて検出できるが、そのシグナルは検量線の作成に必要ではない。したがって、前記検出工程の各々が定量的検出を含む特定の実施形態では、その標準DNAサンプルのシグナルを用いて比較する場合、前記DNA種の前記検出量は、前記サンプル中の前記DNA種の絶対量として表すことができる。
【0090】
測定した前記DNA種の定量的な量は、特定の疾患に対する個体のリスクの評価に有用であり、および/または、サンプル中にこのDNA種が十分に存在する場合、このDNA種のさらなる分析を効率的に、正確におよび/または費用効果の高い方法で行うことができる。
【0091】
したがって、本発明の特定の実施形態は、検出された前記DNA種の量を、量の閾値および/または量の基準分布と比較する工程をさらに含む。前記DNA種の(または異常な)量の増加は、個体が疾患に罹患または発症するリスクが上昇していることを示す。基準分布を作成するための量の閾値および/または一連の量は、公開された文献および/または実験的研究から得ることができる。例えば、公表された閾値(Papantoniou et al 2013,Prenat Diag 33:682)を使用すると、全cfDNAが約7,500Eg/mL血漿の量を超える場合、または、胎児cfDNAの割合が約500Eg/mL血漿の量を超える場合、この女性はこのリスクが上昇していると判断できる。このリスクは、代替的または追加的に下記を考慮して評価できる:(i)胎児cfDNAの倍増率(例えば1.5、3、3.5または4倍の増加)(その女性について量の閾値と比較して算出する)。後期妊娠では、胎児cfDNAのより高い倍増率が使用されうるという判断を考慮する(Zeybek et al 2013,J Obstet Gynaecol Res 39:632);(ii)低リスクの女性または子癇前症の罹患もしくは発症がない女性から得られた量などの量の基準分布を考慮して、その女性で決定したcfDNAの量をパーセンタイル値にする。例えば、胎児cfDNAの割合がこの分布の90パーセンタイル以内の場合、その女性は、軽度または重度の子癇前症に罹患するリスクが高いと考えられる(Jakobsen et al 2013, Transfusion 53:1956)。適切な閾値量の決定において他の関連する要因を考慮できる。例えば、乳癌に罹患している妊娠女性もまた、両方の要因のために、血漿中に存在するRASSF1Aのメチル化の偏りが高くなりうる。
【0092】
同様に、本発明の特定の実施形態は、さらに下記工程を含む:検出された前記DNA種の量を、量の閾値および/または量の基準分布と比較する工程。前記閾値(または前記集団と比較して異常値ではない値)を超える前記DNA種の量は、前記サンプル中に存在する前記DNA種の異常の診断が、好ましくは前記サンプルのDNAの別々のアリコートで行うことができることを示す。例えば、胎児cfDNAの割合が、母体血漿中に存在する全cfDNAの約10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%または0.5%よりも大きい場合、胎児cfDNAの1つ以上の特性を調査する、例えば、その胎児cfDNA内に含まれる突然変異の染色体異常の可能性または存在を調査するその後の検査を(例えば、大規模並列配列ベースのNIPTを用いて)効果的に行うための十分な割合の胎児cfDNAが存在しているであろう。双胎妊娠の場合、双胎妊娠のNIPT用の胎児cfDNAの最小割合は、8%または約5%、6%、7%、9%もしくは10%であると考えることができ、適合した遺伝子型を有する単一絨毛膜性の双胎妊娠では(まれな例外を除いて、Chen et al,2013,Am J Med Genet A,161A:1817)、十分な胎児cfDNAの割合は、4%または約2%、3%もしくは5%であろうと本発明者らは判断した。特定の実施形態では、量の閾値は、標準対照によって確立することができる:例えば、1つの既知のサンプル(または複数の既知のサンプル)から一度にまたは別々に実験的に確立する。および/または、1つの検査サンプル(または複数の検査サンプル)とほぼ同時に(例えば、1つのまたは複数の既知のサンプルから)、例えば同じ操作で、量の閾値を確立する。特に、1つ以上の既知のサンプルが1つ以上の(別々の)ウェルにセットされ、1つ以上の検査サンプルが他のウェルにセットされているマイクロタイター法のプレートのウェルに含まれるサンプルについて本発明の方法を実施することによって量の閾値を確立する。本発明の別の実施形態では、量の閾値および/または量の基準分布との比較は、第2のDNA種の量に対する第1のDNA種の量の相対量(例えば、その比)である。例えば、ヒトの第21染色体の正常な2本組に由来する第1のDNA種の量は、例えば、第2染色体である基準(2本組)に由来する第2のDNA種の量に対して、約2:2(すなわち1:1)の比を示すことが期待される。しかし、トリソミー21の場合、その比率は約3:2であると予想される。当業者に理解されるように、別の染色体(または部分的染色体)異数性は別の比を示すことが期待される。例えば、完全な染色体の欠失の場合または部分的欠失の場合(例えば、第2のDNA種のその部位を含む基準染色体と比較した第1のDNA種のその部位の部分的な欠失)は、1:2である。特定の実施形態では、例えばメチル化の差異などによる区別ができない場合、他のDNAの存在(すなわち、当該他のDNAとの混合物中)により、例えば、異数性胎児cfDNAと混合した正倍数性母体cfDNAは、母体cfDNA(正倍数性)および胎児cfDNA(異数性)の相対量に依存して、その比が改変されうる。当業者に理解されるように、当該比の改変は、それぞれの単位複製配列の相対的反応(例えば、PCR反応)効率などの他の要因から生じうる。したがって、その実施形態の特定のものでは、量の閾値は(検出可能に、および/または、有意に)2:2(100%)より大きいかまたは小さい比である。例えば、約3:2(150%)、約2:3(66%)、約1:2(50%)または約2:1(200%)である。例えば、量および/または比の閾値は、約200%より大きく、約50%未満よりも小さい。または、約190%、180%、170%、160%、150%、140%、130%、120%、110%、105%、95%、90%、85%、80%、75%、70%、65%、60%および55%からなるリストから選択される。あるいは、特定の実施形態では、量の閾値は、例えばターナー症候群(完全な正倍数「46、XX」核型ではなく「45、X」核型を有するヒト雌型)等、第1のDNA種(または第2のDNA種)の検出可能量が存在しないことによってのみ決定することができる。
【0093】
サンプルの分布と基準の分布との間の差異、または、基準の分布からのサンプルの異常値を比較し検出することは、当業者には公知であり、パラメトリックおよびノンパラメトリック統計検定の使用(例えば、(片側または両側)t検定、Mann−Whitney Rank Sum検定およびその他の使用)や、zスコア(例えば、Median Absolute Deviationを基準としたzスコア(例えば、Stumm et al 2014,Prenat Diagn 34:185において使用))の使用が含まれる。本発明の特定の実施形態では、基準分布と分布(または、基準分布からの異常値)を比較する場合、平均値、中央値または各々のサンプルの解離が、約1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、1.95、1.97、2.0より大きい場合、または、基準分布の標準分布(「SD」)が約2.0より大きい場合、および/または、各々のサンプルの基準分布からの解離が、zスコアで約1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2.0、2.5、2.7、2.8、2.9、3.0、3.1、3.2、3.3、3.4、3.5、3.75、4.0、4.5、5.0よりも大きいか、約5.0よりも大きい場合、比較は区別される(および/または有意に異なると確認される)。
【0094】
特定の実施形態では、各々の操作、プレートまたは検出/分析データセット内のサンプルのセットに関して、パラメータ(例えば、平均値、中央値、標準偏差、中央絶対偏差またはzスコア)が計算される。その実施形態の特定のものでは、この計算されたパラメータは、その操作、プレートまたはデータセット(例えば、「操作個別の」分析)において検出/分析された検査サンプルからの異常値(例えば、トリソミーのサンプル)の同定に使用される。特定の実施形態では、そのパラメータは、全ての異常値の確認の認識なしに(例えば、「マスクされた」分析)、すべての検査サンプルから計算される。別の特定の実施形態では、このパラメータは、(異常値ではない)標準(例えば、正倍数性胎児由来のcfDNAを含むことが既知のサンプル)であると認識されている基準サンプルのセット、または、その標準であると思われる(または、その見込みのない)検査サンプルから計算される。
【0095】
特定の実施形態では、データセットに関して、zスコア(またはパラメータの反復の分布パターンに基づく同等の統計値)を計算して、異常値のデータポイントを識別することができる(例えば、子癇前症の罹患または発症のリスク上昇が予測される妊娠女性を識別する検査等におけるDNA種の過剰量を示す、または、染色体の異数性を有する胎児を識別する検査等における基準染色体に対する1つの染色体の過剰量を示す)。そのデータポイントを表すデータはデータセットから削除され、次いで、該データセットに対してzスコア分析が行われ、さらに異常値が識別される。この反復的なzスコア分析は、本発明の方法を用いた胎児の染色体異数性の検出において特に有用であろう。1回の実行では、時々、2つ以上の異数性サンプルが単一のzスコア分析を歪曲する可能性があり、および/または、フォローアップ検査を利用して偽陽性を確認できるので、(初期の)偽陽性の識別よりも偽陰性の回避が潜在的により重要である。
【0096】
したがって、本発明の1つの別の態様は、個体からのサンプルのセットから異常値として少なくとも1つのサンプルを同定する方法であって、前記方法は下記工程を含む:(i)本発明の方法(例えば、第1の態様、第2の態様またはさらなる態様)を用いて、前記セットの各サンプル中の前記DNA種の絶対量または相対量を計算する工程;(ii)該セット中のすべてのサンプルに関して、前記量の平均量(または中央値)および標準偏差(または中央絶対偏差)を計算する工程;(iii)該セット中のすべてのサンプルについてzスコア分析を行う工程;(iv)約1.7より大きいzスコアを有する全てのサンプルを同定する工程;(v)工程(ii)〜(iv)を1回以上繰り返し、毎回、工程(ii)の計算から、約1.70を超えるzスコアを有する追加のサンプルに関する全てのデータを削除する工程。その態様の特定の実施形態では、zスコアは、約1.75、1.80、1.85、1.90、1.95、2.00、2.05、2.10、2.15、2.20、2.25、2.30、2.35、2.40、2.45または2.50よりも大きい;および/または、工程(ii)〜工程(iv)は、2回、3回、4回、5回または5回〜約8回繰り返される。特定の実施形態では、工程(ii)〜(iv)は、追加のサンプルが異常値として識別されなくなるまで繰り返される。その態様の一実施形態では、zスコアのカットオフ値は、各々の反復工程のセットにおいて引き上げられる(例えば、約0.05、0.10、0.15、0.20、0.25、0.30、0.35、0.40、0.45または0.50)。その態様の特定の実施形態において、前記DNA種の量は、全胎児cfDNAの相対量であり、異常値のサンプルは、子癇前症、早期陣痛、子宮内発育遅延およびバニシングツイン等の疾患(特に、子癇前症)を発症するリスクが高い妊娠女性を示す。その態様の特定の実施形態では、前記DNA種の量は、染色体異数性に関連する染色体上に位置する、または、染色体異数性に関連する染色体のセクション内に位置する第1の胎児cfDNA種の基準染色体上に位置する第2の胎児cfDNAに対する相対量である。また異常値のサンプルは、異数性胎児(例えば、トリソミー21、トリソミー18またはトリソミー13を有する胎児)を宿しているリスクの高い妊娠女性を示す。当業者が理解するように、対応するその態様には、zスコアが負のカットオフ値よりも小さい場合(例えば約−1.7より小さい場合)に異常値が特定される場合が含まれる。本発明の関連する他の態様は、上記態様の少なくとも工程(ii)〜(v)を実施するための動作を実行および/または管理するコンピュータシステムを制御する複数の命令でコード化されたコンピュータ可読媒体を含むコンピュータプログラム製品である。特定の実施形態では、そのプログラム製品は、工程(i)を実施するための動作を実行および/または管理するコンピュータシステムを制御する命令をさらに含む。
【0097】
したがって、また本発明は下記工程をさらに含む実施形態を含む:好ましくは、DNAの別々のアリコートを用いて、前記サンプル中に存在する前記DNA種の異常について、前記サンプルのin vitro診断を行う工程;好ましくは、前記DNA種は、胎児の細胞および/または胎児の胎盤に由来し、前記サンプルは妊娠女性由来であり、そして前記診断は出生前診断である。存在する前記DNA種に対するその診断は、下記からなる群から選択される検出技術を使用する工程を含むことができる:DNA配列決定、SNP分析、デジタルPCRおよびハイブリダイゼーション。また特定の実施形態では、前記検出技術は、DNAの大規模並列配列決定法である(例えば、ランダムおよび/または(エキソン)富化DNAの大規模並列配列決定法)。本発明の特定の実施形態では、そのin vitro診断が同じアリコートのDNAに対して行われる。例えば、本発明の方法は、さらなる検出技術を必要としないその方法の実施によってその診断が可能となるように、実施(または、そのように実施するように改変)することができる。この方法は、その診断検査を提供する必要性、または、より迅速で簡単で安価な方法を解決する特に有利な解決方法を提供する。この有利な解決方法を提供する本発明の特定の態様および/または実施形態は、本明細書に記載される。
【0098】
このような診断または検査は、胎児DNAの遺伝子変異または染色体異常を同定するために胎児DNAに向けられてもよい。したがって、特定の実施形態では、前記DNA種は胎児の細胞および/または胎児の胎盤由来であり、前記サンプルは妊娠女性由来であり、前記異常は遺伝子変異または染色体異常(例えば、胎児の異常および/または先天性障害に関連する染色体トリソミー)である。特に、この実施形態では、遺伝子変異は、以下からなる群から選択される:色盲、嚢胞性線維症、ヘモクロマトーシス、血友病、フェニルケトン尿症、多発性嚢胞腎、鎌状赤血球病、テイ・サックス病。および/または染色体異常は、以下からなる群から選択される:トリソミー(例えば、トリソミー21、トリソミー18またはトリソミー13)、性染色体異常(例えば、ターナー症候群、クラインフェルター症候群、[ヌーナン症候群]、トリプルX症候群、XXY症候群または脆弱性X症候群またはXYY症候群またはXXYY症候群)、染色体欠失(例えば、Prader−Willi症候群、Cris−du−Chat症候群、Wolf−Hirschhorn症候群または22q11欠失症候群、Duchenne筋ジストロフィー)、Beckwith−Wiedemann症候群、Canvan症候群および神経線維腫症。他の実施形態では、遺伝子変異または染色体異常は、EuroGentest2イニシアチブ(www.eurogentest.org)の臨床的有用性遺伝子カード(clinical utility gene card/CUGC)を有するものから選択される1つ以上であってもよい。特定の実施形態では、染色体異常は、トリソミー(例えば、トリソミー21、トリソミー18もしくはトリソミー13)、性染色体異常または染色体欠失である。
【0099】
このような診断または検査は、疾患に関連する細胞または細胞タイプに由来するそのDNAの遺伝子変異または染色体異常を同定するために、DNA種を対象とすることができる。したがって、その実施形態の1つでは、前記DNA種は腫瘍の細胞に由来し、前記異常は、癌腫または癌の診断、予後診断または予測的治療に関連する遺伝的変異または染色体異常である。特定のこの実施形態では、遺伝子変異は、下記からなる群から選択される:腫瘍抑制遺伝子(例えば、TP53(p53)、BRCA1、BRCA2、APCまたはRB1)の変異、癌原遺伝子(例えば、RAS、WNT、MYC、ERKまたはTRK)およびDNA修復遺伝子(例えば、HMGA1、HMGA2、MGMTまたはPMS2)の変異;および/または染色体異常は転座である(例えば、t(9;22)(q34;q11)[すなわち,フィラデルフィア染色体もしくはBCL−ABL]、t(8;14)(q24;q32)、t(11;14)(q13;q32)、t(14;18)(q32;q21)、t(10;(多種))(q11;(多種))、t(2;3)(q13;p25)、t(8;21)(q22;q22)、t(15;17)(q22;q21)、t(12;15)(p13;q25)、t(9;12)(p24;p13)、t(12;21)(p12;q22)、t(11;18)(q21;q21)、t(2;5)(p23;q35)、t(11;22)(q24;q11.2−12)、t(17;22)、t(1;12)(q21;p13)、t(X;18)(p11.2;q11.2)、t(1;19)(q10;p10)、t(7,16)(q32−34;p11)、t(11,16)(p11;p11)、t(8,22)(q24;q11)もしくはt(2;8)(p11;q24))。
【0100】
本発明の特定の実施形態は下記である:
・例えば本発明の方法の検出工程(b)で検出された第1のDMR(または2つ以上のDMRの第1のセット)におけるメチル化DNAの存在は、前記サンプル中の第1のDNA種の量の存在を示すことに使用され、また前記第1のDMR(または第1のDMRセット)におけるメチル化DNAの非存在は、前記サンプル中の第1のDNA種の非存在を示すことに使用される;好ましくは、前記第1のDNA種は、胎児の細胞および/または胎児の胎盤に由来し(例えば、ヒト第21染色体等の染色体異数性に関連する染色体由来)、前記サンプルは妊娠女性に由来し、前記第1のDMR(第1のDMRセット)の少なくとも1つは、本明細書に記載される;そして、
・例えば本発明の方法の同一のまたは異なる検出工程(b)で検出された第2のDMR(または2つ以上のDMRの第2のセット)におけるメチル化DNAの存在は、前記サンプル中の第2のDNA種の量の存在を示すことに使用され、また前記第2のDMR(または第2のDMRセット)におけるメチル化DNAの非存在は、前記サンプル中の第2のDNA種の非存在を示すことに使用される;好ましくは、前記第2のDNA種は、胎児の細胞および/または胎児の胎盤に由来し(例えば、ヒト第21染色体等の染色体異数性に関連する染色体由来)、前記サンプルは妊娠女性に由来し、前記第2のDMR(第2のDMRセット)の少なくとも1つは、本明細書に記載される;そして、
・例えば、本発明の方法の検出工程(c)において、前記第1のDNA種と前記細胞タイプに由来しないDNAとの間で異なるメチル化がされない第1の領域を用いて、前記サンプル中に存在する第1の全DNA量を検出する;前記試薬による第1の他の領域の修飾は、DNAのメチル化に非感受性であり、前記第1の他の領域は、前記第1のDMR(または1つ以上のDMRの第1のセット)の約20bp〜約20kbの間の上流または下流に位置する;そして、
・例えば、本発明の方法の同一のまたは異なる検出工程(c)において、前記第2のDNA種と前記細胞タイプに由来しないDNAとの間で異なるメチル化がされない第2の領域を用いて、前記サンプル中に存在する第2の全DNA量を検出する;前記試薬による第2の他の領域の修飾は、DNAのメチル化に非感受性であり、前記第2の他の領域は、前記第2のDMR(または1つ以上のDMRの第2のセット)の約20bp〜約20kbの間の上流または下流に位置する。
【0101】
図示的説明として、本発明の第1の態様のその実施形態に使用される、DMR、他の領域および検出可能な標識の一般的な配置の概略図を
図6に示す。(1)DMR1の第1のDNA種(例えば、ヒト第21染色体等の特定の染色体)におけるメチル化の存在は、DMR1のゲノムの同じ部分(例えば、約20bp〜約20kbの上流または下流)に位置する他の領域(「OR1」)との関係で検出される。(2)別のDMRおよび/またはOR(例えば、DMR2および/またはOR2、ならびに、DMRnおよびORnまで)を任意に検出することができ、このような別のDMRおよびORの対は、互いにゲノムの同じ部分(例えば、約20bp〜約20kbの上流または下流)において、各々、一緒に位置しうる。いずれの場合も、全て同じ第1のDNA種(例えば、ヒト第21染色体等の同じ染色体)を検出する。場合により(3)その第1のDNA種の中のメチル化の存在は、同一の検出可能な標識を用いて複数のDMRで検出される、および/または、(4)少なくとも1つのOR(OR1および任意にOR2またはORnまで)を用いて検出された第1の全DNA量は、第1のDNA種を示すDMRでメチル化の検出に用いられるものとは異なる検出可能な標識を用いて検出される(場合により、使用される検出可能な標識は全てのORについて同一である)。(1’)この実施形態では、第1のDNA種は、第2のDNA種(例えば、ヒト第2染色体等の基準染色体)のものと比較して検出、同定および/または定量される。この第2のDNA種は、第1のDNA種に関して記載するように、但し、異なるDMRおよびOR(それぞれの図の後に「プライム(prime)」と示される)を説明ラベルを参照して使用し、検出される。このような実施形態のものでは、DMR、OR、DMR’およびOR’の検出は、前記サンプルのDNAの同一アリコートを用いて、同じ反応/検出容器内で、および/または、互いに実質的に同時に(例えば、本明細書に記載されるプローブベースの多重リアルタイム定量PCRにより、例えば、前記DMRおよび他の領域のそれぞれに特異的な少なくとも1つの標識プローブを使用して)行われ、そして、その実施形態は、検出可能な標識(3)、(4)、(3)’および(4)’が異なり、および/または、検出および/または定量を別々に行うことが可能なものを含む。
【0102】
図示的説明として、本発明の第2の態様のその実施形態に使用される、DMR、他の領域および検出可能な標識の一般的な配置の概略図を
図7に示す。(1)2つ以上のDMR、DMR1およびDMR2(および場合によってはDMRnまで)の第1のDNA種(例えば、ヒト第21染色体等の特定の染色体)におけるメチル化の存在は、それぞれの場合において同じ検出可能な標識を用いて検出される。(2)場合により、1つのDMRのゲノムの同じ部分(例えば、約20bp〜約20kbの上流または下流)に位置する他の領域(「OR」)。(3)少なくとも1つのOR(OR1および任意にOR2またはORnまで)を用いて検出された第1の全DNA量は、DMRでメチル化の検出に用いられるものとは異なる検出可能な標識を用いて検出される(場合により、使用される検出可能な標識は全てのORについて同一である)。(4)場合により、2つ以上のDMRのメチル化が検出され、および/または、1つ以上のORで第1の量の全DNAが検出される。(1’)この実施形態では、第1のDNA種は、第2のDNA種(例えば、ヒト第2染色体等の基準染色体)のものと比較して検出、同定および/または定量される。この第2のDNA種は、第1のDNA種に関して記載するように、但し、異なるDMR、および、場合によりOR(それぞれの図の後に「プライム(prime)」と示される)を説明ラベルを参照して使用し、検出される。このような実施形態のものでは、DMR、OR、DMR’およびOR’の検出は、前記サンプルのDNAの同一アリコートを用いて、同じ反応/検出容器内で、および/または、互いに実質的に同時に(例えば、本明細書に記載されるプローブベースの多重リアルタイム定量PCRにより、例えば、前記DMRおよび他の領域のそれぞれに特異的な少なくとも1つの標識プローブを使用して)行われ、そして、その実施形態は、検出可能な標識(3)、(4)、(3)’および(4)’が異なり、および/または、検出および/または定量を別々に行うことが可能なものを含む。
【0103】
前の段落に記載した方法の実施は、第1のDNA種(例えば、ヒト第21染色体等の染色体異数性に関連する染色体またはその一部由来)と第2のDNA種(例えば、基準染色体(例えば第2染色体)またはその一部由来)の相対的な検出(または量)を可能にすることができる。したがって、胎児の染色体異数性などの染色体異常についての迅速で安易で費用効果の高い検出、同定または診断の助けとなる。この方法は、例えば、比較的簡単で信頼性あり費用効果の高い定量的PCR装置を必要とする多くの研究所で、より容易に確立し実行することができる。そして、高価で特殊な高処理の次世代配列決定装置を必要としない。実際に、本発明のその特定の実施形態では、前記第1および第2のDMR(またはDMRのセット)の工程(b)における検出および前記第1および第2の他の領域の工程(c)における検出は、前記サンプルのDNAの同じアリコートを用いて、同じ反応/検出容器内で、そのDMRおよび他の領域について実質的に同時に、そして(x)前記第1および第2のDMR(またはDMRのセット)の各々について異なる検出可能な標識;および(y)さらに前記第1および第2の他の領域の各々について異なる検出可能な標識を用いて実施する。第1および第2のDNA種の(第1のDMR(のセット)および第2のDMR(のセット)を介した)相対的な検出、同定または定量は、同じ反応/検出容器内で実質的に同時に実施されるこれらの実施形態では、第1および第2のDMR(のセット)の間とそれらの対応する第1および第2の他の領域の間を区別することができる検出可能な標識を使用することによって有利に行われる。さらなる特定のその実施形態では、検出(b)および(c)が同じ反応/検出容器内で実質的に同時に実施され、工程(b)における前記検出および工程(c)における前記検出を、プローブベースの多重リアルタイム定量PCRにより、前記DMRおよび他の領域のそれぞれに特異的な少なくとも1つの標識プローブを使用して行う工程を含む。
【0104】
本発明の全ての実施形態において、特に、サンプル中の複数の(例えば2つ以上の)DNA種を検出するものでは、試薬は、メチル化感受性制限酵素を少なくとも1つ(例えば、本明細書の他の箇所に記載されたものの1つ以上)含むことができる。代替的にまたは追加的に、この実施形態において、特に本明細書に記載のMSPまたはMethylLight検出法を利用する方法ついて、当該試薬は、特に本明細書に記載のMSPまたはMethylLight検出法を利用するそれらの方法ついて重亜硫酸塩を含むことができる。
【0105】
本発明のすべての実施形態において、特にサンプル中の複数の(例えば2つ以上の)DNA種を検出するものでは、前記検出工程の1つ以上(好ましくは各々)が定量的検出を含む。例えば、特定の実施形態では、前記DNA種それぞれの前記検出された量は、それぞれの他の領域からの前記サンプル中で検出された全DNAのそれぞれの量に対する前記DNA種の相対濃度として表される。この実施形態のさらに別のものでは、本発明の方法は、工程(c)で使用した同じ他の領域を使用して、既知量のDNAの標準サンプル中の全DNA量を検出する工程;および、前記DNAの標準サンプルから検出したシグナルを、他の領域のそれぞれについて工程(c)で検出した各々のシグナルと比較する工程をさらに含むことができる。別の特定の実施形態では、前記検出工程の1つ以上(好ましくはそれぞれ)が定量的検出を含み、そして、前記DNA種の前記検出量が、前記サンプル中の前記DNA種のそれぞれの絶対量として表される。
【0106】
サンプル中の複数の(例えば、2つ以上の)DNA種を定量的に検出する本発明の実施形態では、その方法は、下記工程をさらに含むことができる:
・(x)第1のDMR(または2つ以上のDMRの第1のセット)で検出された前記第1のDNA種;および(y)第2のDMR(または2つ以上のDMRの第1のセット)で検出された前記第2のDNA種の相対量、好ましくは比を決定する工程;および、
・前記相対量または比を、量または比の閾値および/または基準分布と比較する工程であって、前記量または比の閾値および/または基準分布よりも高いまたは低い相対量または比が、前記サンプル中に存在する前記第1のDNA種および/または第2のDNA種に異常が存在することを示す工程。
【0107】
この態様は、本方法によって示される異常の存在が、染色体異常である場合(例えば、染色体異常が胎児の異常および/または先天性障害に関連する)が、特に好ましい。例えば、その染色体異常は、以下からなる群から選択される:トリソミー(例えば、トリソミー21、トリソミー18またはトリソミー13)、性染色体異常(例えば、ターナー症候群、クラインフェルター症候群、[ヌーナン症候群]、トリプルX症候群、XXY症候群または脆弱性X症候群またはXYY症候群またはXXYY症候群)、染色体欠失(例えば、Prader−Willi症候群、Cris−du−Chat症候群、Wolf−Hirschhorn症候群または22q11欠失症候群、Duchenne筋ジストロフィー)、Beckwith−Wiedemann症候群、Canvan症候群および神経線維腫症。患者数の点で最も関連性があり、したがって医学的および社会的に重要なものは、染色体異常が、トリソミー21、トリソミー18またはトリソミー13からなるリストから選択されるトリソミーの場合である。
【0108】
本発明の別の態様は、妊娠女性が宿す胎児の染色体異数性を検出する方法であって、前記方法は下記工程を含む:
(A)本明細書に(または他に)記載された実施形態のいずれかにおける本発明の方法(例えば、本発明の第1および/または第2の態様の方法)を用いて、前記妊娠女性から採取したサンプル中の胎児の細胞および/または胎児の胎盤に由来する第1のDNA種の量を測定する工程であって、前記第1のDNA種が染色体異数性に関連する染色体上または染色体異数性に関連する染色体の部分内に位置し、胎児の細胞および/または胎児の胎盤に由来する前記第1のDNA種が、DNAのメチル化の違いによってサンプル中の母親由来のものと区別される工程;
(B)本明細書に(または他に)記載された実施形態のいずれかにおける本発明の方法(例えば、本発明の第1および/または第2の態様の方法)を用いて、前記サンプル中の胎児の細胞および/または胎児の胎盤に由来する第2のDNA種の量を測定する工程であって、前記第2のDNA種が基準染色体上に位置し、胎児の細胞および/または胎児の胎盤に由来する前記第2のDNA種が、DNAのメチル化の違いによってサンプル中の母親由来のものと区別される工程;
(C)(A)および(B)の量の相対量、好ましくはその比を決定する工程;および、
(D)前記相対量または比を、量または比の閾値および/または基準分布と比較する工程であって、前記量または比の閾値および/または基準分布よりも高いまたは低い相対量または比が、胎児の染色体異数性の存在を示す工程。
【0109】
この別の態様において、前記第1のDNA種の量および前記第1のDNA種の量は、本発明の第1および/または第2の態様の方法(またはその任意の実施形態)を用いて測定される。したがって、本発明の第1の態様の方法を用いる場合、第1のDNA種の量は、少なくとも1つのDMRの使用(その方法の工程(b)において)および少なくとも1つのORの使用(その方法の工程(c)において)により、測定することができる;そのORは、前記DMRの約20bp〜約20kbの間の上流または下流に位置する;そして、この別の態様では、他の領域およびDMRが、染色体異数性に関連する染色体上または染色体異数性に関連する染色体の部分内に位置する。あるいは、本発明の第2の態様の方法を用いる場合、第1のDNA種の量は、2つ以上のDMRの使用(その方法の工程(b)において)および少なくとも1つのORの使用(その方法の工程(c)において)により、測定することができ;工程(b)の前記検出および工程(c)の前記検出は、前記サンプルのDNAの同じアリコートを用いて、同じ容器内で、そのDMRおよび他の領域について実質的に同時に、(x)前記DMRの各々について同一の検出可能な標識および(y)前記他の領域について異なる検出可能な標識を用いて実施され;そして、少なくとも2つのDMRが、染色体異数性に関連する染色体上または染色体異数性に関連する染色体の部分内に位置する。その各々の別の態様に関して、適切なDMRおよびその染色体または染色体の領域に位置する他の領域の例は、本明細書の他の箇所に記載されており、その例は、このさらなる態様の実施形態に具体的に包含される。ここで、当業者に理解されるように、第2のDNA種の量は、本発明の第1または第2の態様の方法を用いて測定することができる。それと同様に、DMR(および、本発明の第1の態様の方法がその測定に使用される場合、少なくとも1つのOR)が基準染色体上に位置することを除いて、第1のDNA種の量の測定について記載されている。したがって、このさらなる態様には、その基準染色体上に位置するものとして本明細書の他の箇所に記載されるDMRおよび/またはORを使用する実施形態も含まれる。本発明の第1または第2の態様のいずれかの方法を使用し、このさらなる態様の工程(A)において第1のDNA種の量を測定すること、および/または、このさらなる態様の工程(B)において第2のDNA種の量を測定することによって、そのDNA種の量は、従来技術の方法(例えば、DMRがひとつ)のみに基づく量の測定に比べてより適切に(例えば、より正確におよび/または精密に)測定される。
【0110】
このさらなる態様のために、本発明の第1の態様の方法に基づいて使用することができる特異的にメチル化された領域(「DMR」)および他の領域(「OR」)の概略図を、上述の通り、
図6に示す。これに対して、このさらなる態様のために、本発明の第2の態様の方法に基づいて使用することができる特異的にメチル化された領域(「DMR」)および他の領域(「OR」)の別の概略図を、上述の通り、
図7に示す。
【0111】
本発明の第2の態様に関する別の態様は、個体からのサンプル中の所定の細胞タイプに由来するDNA種の量を検出する別の方法であって、該サンプルは前記DNA種を前記細胞タイプに由来しない異なるメチル化のDNAとの混合物中に含み;前記方法は下記工程を含み:
(a)メチル化DNAおよび非メチル化DNAを特異的に修飾する試薬を用いて、前記サンプル中に存在するDNAを処理する工程;および、
(b)前記DNA種と前記細胞タイプに由来しないDNAとの間で異なるメチル化がされている2つ以上のDMRで前記DNA種におけるメチル化の存在を前記サンプル中で検出する工程であって、前記試薬によるそのDMRのDNAの修飾はDNAのメチル化に感受性があり、前記1つ以上のDMRにおけるメチル化DNAの存在が前記サンプル中の前記DNA種の量が存在することを示し、前記DMRにおけるメチル化DNAの非存在が前記サンプル中に前記DNA種が存在しないことを示す工程;
工程(b)の前記検出が、前記サンプルのDNAの同じアリコートを用いて、同じ反応/検出容器内で、それらのDMRについて実質的に同時に、(x)多重リアルタイム定量PCR;および(y)それぞれが前記DMRの1つに特異的であり、前記DMRの各々について同じ検出可能な標識で標識された少なくとも2つの標識プローブを用いて実施される方法である。本発明のこの別の方法は、ヒトまたは動物の生体上で実施されることを意図しない。例えば、in vitroの方法で実施されることが意図される。本発明のこの別の方法の特徴のいずれか(またはその特徴の任意の組み合わせ)のさらなる特徴は、本発明の第1の態様に関して本明細書の別の箇所に記載された特徴(およびそれらの組み合わせ)を含むことができる。本発明のこの別の方法の特定の実施形態では、試薬は、本明細書に開示するひとつ(またはその組み合わせ)である1つ以上のメチル化感受性制限酵素を含む。
【0112】
別の態様では、本発明は、個体の疾患の罹患または発症のリスク上昇を検出する方法であって、前記方法は下記工程を含み:
(i)サンプル中の前記DNA種(および/または全DNA)の定量的な量を測定する本発明の方法を実施する工程;および、
(ii)検出された前記DNA種の量を、量の閾値および/または量の基準分布と比較する工程;
前記DNA種(および/または全DNA)の量の増加(または異常値)が、個体の前記疾患の罹患または発症のリスク上昇を示す方法である。
【0113】
本発明のさらなる別の態様は、組成物(例えば、本発明の方法に有用であるか、または本発明の方法において使用される組成物)であって、前記本発明の組成物は、下記の(1)または(2)を含む:
(1)
・本明細書に記載されている、前記DMRの1つを増幅するための1対のPCRプライマー;
・本明細書に記載されている、前記他の領域を増幅するための1対のPCRプライマー;
・プローブベースの定量PCR用の、前記DMRに特異的な、1つの標識プローブ;および、
・プローブベースの定量PCR用の、前記他の領域に特異的であり、前記DMR用のプローブとは異なる検出可能な標識で標識された、1つの標識プローブ。
(2)
・本明細書に記載されている、前記2つ以上のDMRの1つをそれぞれの対が増幅する、2対のPCRプライマー;
・本明細書に記載されている、前記他の領域を増幅するための1対のPCRプライマー;
・プローブベースの定量PCR用の、それぞれが前記DMRの1つに特異的であり、各々について同じ検出可能な標識で標識されている、2つの標識プローブ;および、
・プローブベースの定量PCR用の、前記他の領域に特異的であり、前記DMR用のプローブとは異なる検出可能な標識で標識された、1つの標識プローブ。
【0114】
この本発明の組成物は、さらに下記の(1)または(2)を含むことができる:
(1)
・本明細書に記載されている、第2のDMRを増幅するための追加のPCRプライマー対;および、プローブベースの定量PCR用の、前記DMRに特異的な、検出可能な標識で標識された、追加の標識プローブ(場合により、前記第1の他の領域に特異的なプローブに使用されるものと同じである);および/または、
・本明細書に記載されている、第2の他の領域を増幅するための追加のPCRプライマー対;および、プローブベースの定量PCR用の、前記他の領域に特異的な、前記DMR用のプローブとは異なる検出可能な標識で標識された、追加の標識プローブ(場合により、前記第1の他の領域に特異的なプローブに使用されるものと同じである)。
(2)
・本明細書に記載されている、第2の他の領域を増幅するための追加のPCRプライマー対;および、
・プローブベースの定量PCR用の、前記他の領域に特異的な、前記DMR用のプローブとは異なる検出可能な標識で標識された、追加の標識プローブ(場合により、第1の他の領域に特異的なプローブに使用されるものと同じである)。
【0115】
また本発明のさらなる別の態様は、キット(例えば、別々の構成要素のキット;例えば、キットの異なる構成要素をそれぞれ保持するホルダーまたは容器のキット)であって、そのキットは、1組のプライマーおよび本発明の組成物に含まれるプローブを含む。本発明のキットは、追加の要素を含むことができる。例えば、キットは、(i)本発明の方法の実施および/または本発明の組成物の製造もしくは使用を含む、前記プライマーおよびプローブを使用するための説明書を含む印刷されたマニュアルまたはコンピュータ読み取り可能なメモリ、および/または、(ii)本発明の方法の実施および/または本発明の組成物の製造もしくは使用に有用な1つ以上の他の品物、要素または試薬;例えば、本明細書に開示された全てのその品物、要素または試薬(例えば、本明細書に記載されている、メチル化および非メチル化DNAを異なる形で修飾する試薬)。
【0116】
組成物またはキットの特定の実施形態では、それに含まれるプライマーまたはプローブの1つ以上は、表1および/または表8に記載のものから選択されるプライマーまたはプローブ配列を含む(または、それらからなる)。この特定の実施形態では、組成物またはキットは、(x)DMRの1つおよび(y)ORの1つの各々について、表1に示すプライマーの対とプローブを含む。さらにこの実施形態では、(x)2つのDMRおよび(y)2つのORの全てについて、表1に示すプライマーの対とプローブを含む。別の実施形態では、組成物またはキットは、(x)2つのDMRおよび(y)2つのORの全てについて、表8に示すプライマーの対とプローブを含む。この実施形態のいずれにおいても、プローブは、そのプローブについて各々の表に記載されるように、標識/クエンチャー(および場合によりマイナーグルーブ結合部分)で標識できる。
【0117】
本発明のさらなる別の態様は、下記[(x)疾患の罹患もしくは発症のリスク上昇;および/または(y)所定の細胞タイプに由来するDNA種における異常の診断を実施する場合、前記細胞タイプに由来しない異なるメチル化DNAとの混合物中に所定の細胞タイプに由来するDNA種を含む個体由来の各々のサンプルにおいて、本明細書に記載のメチル化DNAおよび非メチル化DNAを異なって修飾する試薬で処理される該サンプル中に存在するDNA]を診断するための動作を、実行および/または管理するコンピュータシステムを制御する複数の命令でコード化されたコンピュータ可読媒体を含むコンピュータプログラム製品であって、前記動作が下記工程を含むコンピュータプログラム製品である。
・(i)本明細書に記載の工程(b)における1つ以上の(または2つ以上の)DMRのメチル化の(実質的に同時の)定量的検出を表す1つのシグナル;および、(ii)本明細書に記載の工程(c)における少なくとも1つの他の領域を用いた全DNAの(実質的に同時の)定量的検出を表す1つのシグナルを受信する工程;
・(i)および(ii)のシグナルからパラメータを決定する工程であって、前記パラメータが前記DNA種(および/または前記全DNA)の定量的な量を表す工程;
・前記パラメータを量の閾値及び/又は量の基準分布と比較する工程;および、
・その比較に基づいて、(x)個体における疾患の罹患もしくは発症のリスク上昇が存在するか否か;および/または(y)所定の細胞タイプに由来するDNA種の異常が診断できるか否かの分類を決定する工程。
【0118】
本発明のコンピュータプログラム製品の特定の実施形態では、さらに前記動作は下記工程を含む:本明細書に記載されるDNAの標準サンプル中の全DNAの定量的検出を表す追加のシグナルを受信する工程;および、前記DNA種の絶対量を表す前記パラメーターを決定するために、前記シグナルと、少なくとも1つの他の領域を用いた全DNAの実質的に同時の定量的検出を表すシグナルとを比較する工程。
【0119】
本発明のコンピュータプログラム製品の特定の実施形態では、動作は、前記DNA種における異常の診断が行われうるか否かを決定するものであり、さらに前記動作は、前記パラメータから、前記診断の一部として、前記サンプル(好ましくは、DNAの別々のアリコート)から配列が決定される多量のランダムおよび/または富化されたDNA分子を決定する工程を含む。
【0120】
本発明のコンピュータプログラム製品の別の特定の実施形態では、動作は、下記工程をさらに含む:
・(i)上記工程(b)における1つの(または2つ以上のセットの)第2のDMRのメチル化の定量的検出を表す1つのシグナル;および、(ii)上記工程(c)における1つの第2の他の領域を用いた全DNAの定量的検出を表す1つのシグナルを受信する工程;
・(i)および(ii)のシグナルから第2のパラメータを決定する工程であって、前記パラメータが前記第2のDNA種の定量的な量を表す工程;
・前記パラメータと前記第2のパラメータの相対量、好ましくは比を決定する工程;
・前記相対量または比を、量もしくは比の閾値及び/又は基準分布と比較する工程;および、
・その比較に基づいて、前記DNA種の異常または前記サンプル中に存在する第2のDNA種の異常の分類を決定する工程。
【0121】
このコンピュータプログラム製品のこの実施形態では、特に好ましくは、本方法によって示される異常の存在が、染色体異常(例えば、染色体異常が、胎児の異常および/または先天性障害に関連する)である。例えば、その染色体異常は、染色体異常は、以下からなる群から選択することができる:トリソミー(例えば、トリソミー21、トリソミー18またはトリソミー13)、性染色体異常(例えば、ターナー症候群、クラインフェルター症候群、[ヌーナン症候群]、トリプルX症候群、XXY症候群または脆弱性X症候群またはXYY症候群またはXXYY症候群)、染色体欠失(例えば、Prader−Willi症候群、Cris−du−Chat症候群、Wolf−Hirschhorn症候群または22q11欠失症候群、Duchenne筋ジストロフィー)、Beckwith−Wiedemann症候群、Canvan症候群および神経線維腫症。
患者数の点で最も関連性があり、したがって医学的および社会的に重要なものは、染色体異常が、トリソミー21、トリソミー18またはトリソミー13からなるリストから選択されるトリソミー、特にトリソミー21の場合である。
【0122】
本発明のコンピュータプログラム製品によって実行および/または制御される動作の一実施形態を
図5に示す。動作(A)は、DMRおよび全DNAにおけるメチル化をそれぞれ表すシグナル(1)および(2)を受信し、場合により、シグナル(3)は、標準サンプルからの全DNA量を表す。動作(A)は、DNAの相対量または絶対量(例えば、胎児DNA対全DNA)を表す、シグナル(1)、(2)および任意の(3)からのパラメータ(4)を決定する。このパラメータ(4)は、動作(B)によって、量の閾値(5)および/または量の基準集団(6)と比較され、疾患に罹患する個体のリスク、および/または、サンプル中のいずれかのDNAにおいて異常の診断を行うことができるかどうかが分類(7)される。
【0123】
本発明の教示の特定の問題または環境への応用、ならびに、本発明のバリエーションまたは追加的特徴(さらなる態様および実施形態)の包含は、本明細書に含まれる教示を考慮して当業者の能力の範囲内にあることが理解されるべきである。
【0124】
他に記載のない限り、上に記載した特徴の説明および定義は、本発明の特定の態様または実施形態に限定されず、記載されるすべての態様および実施形態に等しく適用される。
【0125】
本明細書で引用した全ての参考文献、特許および刊行物は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0126】
ここで、本発明の特定の態様および実施形態を、実施例として、本明細書に記載された説明、図および表を参照して説明する。本発明の方法、使用および他の態様のその実施例は、単なる代表例であり、本発明の範囲をその代表的実施例に限定するものではない。
【実施例】
【0127】
実施例1:多胎妊娠におけるNIPTでの本発明の方法の使用(バニシングツインの場合を含む)
【0128】
サンプル採取、処理およびDNA抽出:
【0129】
2012年11月6日から2013年11月16日の間に、研究開発(R&D)目的で、通常の非侵襲的出生前検査(NIPT)の研究手技の一部として、多胎妊娠(一絨毛膜,二絨毛膜,三絨毛膜双胎および三胎)の妊娠女性から36の血液サンプルを採取した。1つの血液サンプルは、三胎を妊娠した女性から得られ、残りの35サンプルは、双胎を妊娠した女性から採取した。多胎妊娠の各妊娠女性から、7〜10mlの静脈血の2つのサンプルを、Streck社の無細胞DNA採血管(Streck)を用いて採集した。血液サンプルは、最大4日間の輸送時間で診断検査室に送られた。本明細書で分析された妊娠女性からの他の血液サンプルも同様に収集した。
【0130】
血漿の調製は、遠心分離(4℃で1600g、10分間)によって行い、続いて第2の遠心分離ステップ(4℃で10分間、16000g)によって血漿を分離した。QIAamp Circulating Nucleic Acid Kit(Qiagen)を用いて、60μlのAVE緩衝液(Qiagen)の最終溶出体積で、3.0〜4.0mlの血漿を用いる製造業者のプロトコルに従って全無細胞DNA(cfDNA)の抽出を実施した。
【0131】
DNA定量:
【0132】
本発明の方法を用いて、胎児cfDNAの割合の相対濃度および絶対量の両方を調べるために、胎児無細胞DNA(胎児cfDNA)を検出し、全無細胞DNA(全cfDNA)に関して定量した。溶出された無細胞DNAから11μlを、CpG−メチル化感受性酵素HhaI(0.4U/μl)、HpaII(0.3U/μl)およびBstUI(0.3U/μl)で、CutSmartTM緩衝液(New England Biolabs)を用いた22μlの反応液中で切断した。その反応は、37℃で60分間および60℃で60分間インキュベートした。切断反応液からの10μlをプローブベースの定量PCRの鋳型DNAとして使用した(反応は2連で行った)。以下に簡単に記載する。
【0133】
2倍に濃縮したPCRマスターミックス(QuantiFast Multiplex PCR Kit、Qiagen)を用いて、25μlのPCR反応を行った。胎児と母親のDNAの間で特異的にメチル化されたそれぞれの領域(DMR)のCpGメチル化感受性制限酵素部位にまたがるプライマーを、そのDMRのFAM標識プローブとの組み合わせで使用し、制限酵素部位にまたがらないプライマー、胎児と母体DNAとの間で特異的にメチル化されていない他の領域(OR)を、そのようなORのためのVIC標識プローブと組み合わせて使用する。この実施例で使用されるプライマーおよび標識プローブの配列は表1に記載されており、プローブベースの定量(TaqMan)PCR(LightCycler 480 II Instrument;Roche)に使用されるサーモサイクラープロファイルは表2に記載される。本実施例で、2つのDMRの存在を検出するために使用されるプローブは、それぞれ同じ検出可能なフルオレセインアミダイト(FAM)蛍光部分で標識され、それぞれ同じマイナー結合グローブ(MGB)非蛍光クエンチャー(NFQ)部分を有し、2つのORの存在を検出するために使用されるプローブは、それぞれ、同じ検出可能なVIC(life Technologies)蛍光部分で標識され、それぞれ同じMGBNFQ部分で標識される。
【0134】
【表6】
【0135】
【表7】
【0136】
【表8】
【0137】
この実施例で使用されるアッセイデザインは、母体DNAでは低メチル化され、胎児DNAでは過剰メチル化されることが記載されている2つのマーカーDMR(Nygren,et al,2010:Clin Chem 56,1627;Chan et al,2006:Clin Chem 42,2211;Chiu et al,2007:Am J Pathol 170,941)および、それぞれ約20bp〜20kbのDMRの間に位置する母体DNAと胎児DNAとの間で特異的にメチル化されない2つの他の領域(OR)に基づいた。特に、RASSF1Aに位置するメチル化非感受性遺伝子座は、RASSF1Aに位置するメチル化感受性遺伝子座の8kb〜9kb(8.97kb)の間の下流に位置し、TBX3に位置するメチル化非感受性遺伝子座は、TBX3に位置するメチル化感受性遺伝子座の10kb〜11kp(10.64kb)の間の下流に位置する。
図2は、本実施例で使用される2つのDMRおよび2つの他の領域のそれぞれの配置および検出様式を示す。
【0138】
標準品として既知の濃度の雄性ゲノムDNA(Promega)の連続希釈液を鋳型に用いて、平行プローブベースの定量PCR反応を行った(同じPCR操作内で別々に反応)。FAMチャネル(DMR;すなわち胎児cfDNAの検出)とVICチャネル(OR;すなわち全cfDNAの検出)のシグナルの相対的な定量によって胎児cfDNAの割合を算出し、既知の濃度の標準DNAの希釈系列から得られたVICチャネルと比較したサンプルから得られたVICチャネルの絶対的定量シグナルによって、絶対的な全cfDNA量を算出した。この相対的および絶対的定量は、LightCycler 480ソフトウェアリリース1.5.0(Roche)を用いて行った。
【0139】
胎児異数性を同定するための母体血漿DNA配列決定およびデータ分析:
【0140】
IlluminaのNEBNext Ultra(商標)DNA Library Prep Kitを使用してDNA配列決定ライブラリを調製した。ライブラリは、Hamilton STARplusロボットで自動化された製造業者のプロトコルに従って調製した。ライブラリーの質および量は、Bioanalyzer装置(Agilent)およびQbit蛍光光度計(Invitrogen)を用いて測定した。ライブラリに基づいて、1プールあたり12サンプルの定量希釈および等モルプールを調製した。プールしたサンプルを、Illumina HiSeq2000シーケンサーのIllumina v3フローセルの1レーンで配列決定した。クローン集団は、製造元のプロトコルに従ってcBot Cluster生成システムのTruSeq SR Cluster Kit v3−cBot−HSを使用して生成した。胎児染色体の異数性を同定するためのバイオインフォマティクス解析は、前述のように、胎児トリソミー21の存在を示すzスコア>3を用いて実施した(Stumm et al 2014、Prenat Diag 34:185)。この方法による胎児異数性の検査結果が陽性の場合、結果は侵襲的な診断法によって確認された。
【0141】
結果:
【0142】
血液サンプルの特性、胎児cfDNAの割合%、および、異数性試験の結果を表3に示す。胎児トリソミー21を示す2つの陽性の試験結果があった。両方とも羊水穿刺後の染色体分析によって確認した。したがって、この試験の偽陽性率は0%であった。1つの血液サンプルは、一致する核型[47、XY、+21]を持つ一絨毛膜双胎を示し、もう1つは、不一致の核型[47,XY,+21および46,XX]を持つ二絨毛膜双胎を示した。両方のサンプルにおいて、胎児の割合はそれぞれ18.0%および24.8%と高かった。他の全てのNIPTの結果は、トリソミー21,18及び13に関しては陰性であった。本試験に含まれる妊娠において偽陰性のNIPTの結果に関する証拠はない。それでもなお、多くの妊娠が継続中であり(患者の最後の出産は2014年5月中旬に予定されている)、したがって、最終的な検出率はまだ不確実である。
【0143】
【表9】
【0144】
【表10】
【0145】
NIPTによる双胎中の胎児異数性の信頼性のある検出は、母体の血液中の各胎児からの胎児cfDNA量が十分に高いことに依存する。各双胎児の寄与が検出閾値を上回ることを確実にするために、胎児cfDNAの割合の下限値をどう定義するかについて、様々なデータおよび考察が公表されている(Leung et al 2013,Prenat Diag 33:675;Qu et al 2007,Am J Pathol 170:941;Struble et al 2013,Fetal Diagn Ther Dec 7 Epub ahead of print)。これは、不一致の核型を有する二絨毛膜双胎妊娠において特に重要である。上記研究では、2つの胎児のひとつのみが雄性である場合のY染色体表現型に由来する双胎妊娠ための最小の胎児cfDNAの割合を定義するために、サポート情報が使用された。本発明の方法を用いて、両方の胎児に由来する胎児cfDNAの合計を反映する全胎児cfDNAの割合を決定することができる。次世代配列決定法によるY染色体表現型を用いて、雄性胎児の胎児cfDNA量を測定することができる(Stumm et al 2014に記載のように)。すなわち、胎児の性別が男女の場合、各胎児の寄与量は、本発明の方法によって測定された胎児cfDNAの割合から、Y染色体表現型によって決定された胎児cfDNA量を減算することによって算出できる。本発明の方法によって決定された胎児cfDNAの割合を、既知の性別を有する場合について、次世代配列決定法によるY染色体の読み取りから得られた値と比較した(
図3参照)。雄性特異的cfDNA量(y軸)は、本発明の方法によって測定された胎児cfDNAの割合(x軸)に対して相関がある。すなわち、男性/男性の性別が恐らく正しい双胎妊娠の場合:[y=x]、女性/男性の性別の場合:[y=0.5x]、および、女性/女性の場合:[y=1]である。類似の値の場合の性別は男性/男性であり、Y染色体表現型が低い異なる値の場合、性別は女性/女性である。Y染色体表現型の胎児割合のパーセンテージが約半分を示す中間の場合は男女である。
図3に示されるデータは、双胎妊娠のNIPT結果を用いて胎児性別を判定することが可能であることを示すだけではなく、本発明の方法によって決定されるcfDNAの胎児の割合量の測定が、Y染色体配列の頻度数と比較すると驚くほど正確であることを示す。一方、これらのデータは、双胎妊娠の各胎児が、概ね、全胎児cfDNAの割合の約半分に寄与するという仮説を裏付ける。このことは、双胎妊娠では胎児cfDNAの2倍量が必要であるという結論を導く。したがって、双胎妊娠のNIPT用のcfDNAの胎児の割合の望ましい最小値は8%であると考えられる。
【0146】
一致した遺伝子型を有する一絨毛膜双胎妊娠では(まれな例外を除き、Chen et al 2013,Am J Med Genet A 161A:1817)、ひとつの妊娠につき胎児の異数性の検出には4%の胎児cfDNAの割合で十分である。しかしながら、ルーチンのNIPT検査サービスでは、一絨毛膜妊娠と二絨毛膜妊娠に対するその様々な質的基準が暗示することに対して、ひとつの重要な問題が示される:絨毛性の判定は、妊娠期間と超音波検査を行う医師の実務経験に依存する。絨毛性は、多胎妊娠の最初の3カ月間に明らかな検出が可能であるが、後期には検出がより困難になる(Sperling et al 2001,Acta Obstet Gynecol Scand 80:287)。したがって、双胎妊娠の胎児cfDNAの割合の最小値を一般的に定義することは、より安全な戦略であり、一絨毛膜および二絨毛膜の多胎妊娠に適用することができる。
【0147】
バニシングツインの同定:
【0148】
本発明の方法を用いて胎児cfDNAの割合を測定したNIPT異数性検査の2つのケースでは、トリソミー21(それぞれzスコア13.5および3.4)を同定したが、本発明の方法で測定した全胎児cfDNAの割合とY染色体表現型で測定されたcf−胎児−DNA量の間に、著しい矛盾が観察された。
【0149】
症例Aでは、本発明の方法で測定した全胎児cfDNAの割合を評価した血液サンプル(第1のサンプルおよびバックアップサンプル)の2つの分析は、それぞれ20.7%及び24.8%であった。一方、次世代配列決定法のY染色体表現型によると、胎児cfDNAはそれぞれ9.2%および9.3%であった。それは、妊娠が男女双胎妊娠であり、10週目の超音波検査で、死亡した双子の片方を観察したことが確認された可能性が推測され、医師に報告された。妊娠の第3期に採取した追加の血液サンプル(38+2)は、トリソミー21について陰性となり、Y染色体発現によって測定された胎児cfDNA量は、QuantYfeXによって測定された胎児量と相関し(21.7%および21.4)、これは生存している胎児の染色体分析によって決定された男性の性別と一致した。出生時に、細胞培養およびその後のGTG結合のために、十分な量の細胞が単離できる胎盤組織に紙様児がみられ、トリソミー21陽性、雌性核型が確認された(47、XX、+21)。
【0150】
症例Bでは、わずかに増加したY染色体表現型がモニターされ、雄性特異的cf−胎児−DNAがそれぞれ3.0%および2.7%であることが示された。本発明の方法によって測定された胎児cfDNAの割合の推定値は、測定された胎児の割合の当該矛盾から仮定したそれをはるかに上回るので(13.4%および10.0%)、性別が一致しない2つの胎児は、胎児の割合に寄与し、その男性胎児はトリソミー21に影響される。この示唆は、3.0のカットオフ値付近で上昇したzスコアと約3%のY染色体特異的胎児cfDNA量の相関に由来した。その検査は明らかに単胎妊娠に求められたので、雄性特異的な胎児cfDNAは、バニシングツイン(おそらく、21トリソミーのキャリア)に起因すると疑われ、NIPTの同意書では、認識されなかったか、または示されなかった。したがって、その結果は、第21染色体について明らかではないと報告され、矛盾するデータは、超音波を用いたさらなる解明に向けて、バニシングツインの可能性に関する知見を含めて担当医師に報告された。続いて、担当医師は、双胎としてが妊娠が始まり、その後、単胎妊娠として継続したことを確認した。生存している明らかに健康な胎児の性別は女性であることが確認された。したがって、トリソミー21のためにzスコアの増加の原因となった胎児cfDNAは、疑いなく、死亡した男性胎児に割り当てることができる。今もなお妊娠は持続しており、まだ生存胎児の胎盤組織および血液のさらなる分析は可能ではない。
【0151】
実施例2:特異的にメチル化される各領域の同じ検出可能部位を用いて、2つの特異的にメチル化された領域を用いる改良された検出感度。
【0152】
本発明者らは、驚くべきことに、前記DMRのそれぞれについて同じ検出可能部位を用いた2つのDMR(および特異的にメチル化されていない2つの他の領域(OR))を検出する複合および多重反応が、単一のDMR(および単一のOR)をそれぞれ検出した従前の検出反応(別々のPCR反応)よりもcfDNAの割合の検出に対してより感受性が高いことを観察した(
図4)。
【0153】
本発明の方法では、(4倍以上の希釈の)同じDNAのアリコートを用いて、2つのDMR(実施例1に記載のRASSF1AおよびTBX3にみられたもの)を検出した。また反応は、2つのOR(実施例1に記載のRASSF1AおよびTBX3にみられたもの)と実質的に同時に(プローブベースの定量PCR(例えば、TaqMan)を用いて)、(x)それぞれの前記DMRについて同じ検出可能部位、および、(y)前記DMRに用いられる検出可能部位とは異なる、少なくとも1つの前記ORについて検出可能部位を用いて、行った。一方、各DMR(および対応するOR)が別々の反応で独立して検出された場合、胎児cfDNAの割合の検出は、より高いサイクル数(Cp)での検出に示されるように、比較的感度が低かった。単一の遺伝子座反応のものを除いて、領域/マーカー、プライマー/プローブおよび検出方法は実質的に実施例1に記載されている。所定の遺伝子(RASSF1AまたはTBX3)由来のDMRおよびORのみが、単一の反応で、同時に検出された。
【0154】
反対に、異なる検出可能部位(例えば、RASSF1A遺伝子座のFAM、TBX3遺伝子座のVIC)を用いる2つのDMRの多重反応を用いた胎児cfDNAの割合の検出は、より感度が低く、さらに、ORと同時に検出することが困難であると判断される。理論に拘束されるものではないが、色の補正の比較的高い複雑性のために、別々に検出できる蛍光マーカーの数の制限および/または非常に多くの蛍光マーカーからの「退色」の影響が、同じ反応に存在すると考えられる。
【0155】
定量的PCR検出の指数関数性を考慮すると、また、より高い検出感度(すなわち、より小さいサイクル数)は、標準曲線に対する補正で、より正確性が高い定量と等しく、そして、データのポイントの間の補間は、より高いサイクル数における検出に対応するDNA量について生じるものよりもより少ない誤差となる。
【0156】
実施例3:妊娠女性の子癇前症の罹患または発症リスク上昇の検出(理論上の実施例)
【0157】
本実施例の方法を用いて、以下のように、妊娠女性の子癇前症の罹患または発症のリスクを評価する。第一に、このリスクを評価される女性の血液サンプルを収集し、実施例1に記載した手順に実質的に従い、その血漿サンプルから全cfDNAを抽出する。第二に、実施例1に記載された実質的な方法を用いて、血漿中に存在する胎児cfDNAおよび全cfDNAの相対量および/または絶対量を測定する。胎児および/または全cfDNAの絶対量は、ゲノム当量(「Eq」)として表すことができる。第三に、その測定されたcfDNAおよび/または全cfDNA量を、閾値量または基準分布量と比較し、胎児cfDNAまたは全cfDNA量が、そのな閾値を超えているか、および/または、その分布の異常値である場合、当該女性は子癇前症の罹患および/または発症のリスクが上昇していると判定される。
【0158】
例えば、公表された閾値(Papantoniou et al 2013,Prenat Diag 33:682)を用いて、全cfDNAが約7,500Eg/mL血漿の量を超える場合、または、胎児cfDNAの割合が約500Eg/mL血漿の量を超える場合、当該女性はこのリスクが高いと判断される。このリスクは、下記を考慮することで代替的にまたは付加的に評価される:(i)胎児cfDNAの増加倍率(例えば、1.5倍、3倍、3.5倍または4倍の増加)(当該女性について、閾値と比較して算出する)後期妊娠では、胎児cfDNAの高い増加倍率が使用されることを算定に組み入れる(Zeybek et al 2013, J Obstet Gynaecol Res 39:632);および/または(ii)当該女性から算出した胎児cfDNA量のパーセンタイルは、リスクの低い女性または子癇前症に罹患または発症していない女性で測定された基準分布量の検討から、例えば、胎児cfDNAの割合がその分布の90パーセンタイルの範囲に含まれる場合、当該女性は軽度または重度の子癇前症に罹患するリスクが高いとみなされる(Jakobsen et al 2013,Transfusion 53:1956)。
【0159】
この実施例では、リスクの検出は、
図5に示す動作を行うコンピュータプログラム製品を用いて実施される。動作(A)は、胎児cfDNAおよび全cfDNAをそれぞれ表すシグナル(1)および(2)を受信し、当該女性の血漿中に存在する胎児(または全)cfDNAの相対量および/または絶対量を表すパラメータ(4)を決定するためにコンピュータプログラム製品によって使用される。この動作は、任意に、標準DNAの絶対量を表すシグナル(3)を受信することができる。第2の動作(B)は、この決定されたパラメータ(4)を閾値量(5)および/または量の基準集団(6)と比較し、その比較に基づいて、当該女性が子癇前症の罹患または発症のリスクが高いと判断されるか否かを判定および報告する(7)。
【0160】
実施例4:癌患者由来のサンプル中の腫瘍関連DNAの検出(理論上の実施例)。
【0161】
RASSF1Aのメチル化およびER−β(エストロゲンレセプターβ)、RAR−β2(レチノイン酸レセプターβ2)および/またはサイクリンD2などの少なくとも1つの他のDMRが、腫瘍に由来するcfDNAの検出、および、女性が乳癌に罹患するリスクの評価に用いられる。そのDMRの特異的メチル化は、腫瘍由来のcfDNAの特徴であり、また本発明の方法は、女性の血漿中の腫瘍由来のcfDNA量の検出および定量に用いられ、そして上昇した(または異常値値の)腫瘍由来cfDNA量は、乳癌の罹患または発症のリスクが高いと判定される。本質的に、DMR2およびOR2がTBX3ではなく、ER−β、RAR−β2またはサイクリンD2の1つに位置することを除いて、実施例3に記載されたプロセスに従う。本発明のこの実施形態で使用される、そのDMR2およびOR2を検出するプライマーおよびプローブは、当業者によって設計可能である。
【0162】
この実施例では、実施例3に記載されたものと同じコンピュータプログラム製品を、女性の血液中に存在する腫瘍由来のcfDNA量に基づいて、所定の女性のリスクを評価するために用いることができる。しかし、この実施例では、このパラメータは、対照および乳癌患者に存在する腫瘍由来のcfDNA量の研究に由来する閾値量または分布量と比較する。そして、腫瘍由来のcfDNAの量が増加している(または異常値の)女性は、乳癌に罹患または発症するリスクが高いと考えられる。
【0163】
実施例5:トリソミー21を検出するNIPTにおける本発明の方法の使用
【0164】
本発明者らは、驚くべきことに、本発明の方法のさらなる応用が、トリソミー21の胎児を宿す妊娠女性から得られるcfDNAサンプルの同定に使用できることを見出した。
【0165】
ひとつの多重PCR反応において、138名の妊娠女性(ヒト)から得られたcfDNAサンプル中に存在する胎児の第21染色体DNA種の量を本発明の方法を用いて測定し、そして、cfDNAサンプル中に存在する胎児の第12染色体DNA種の量(基準染色体として)も、本発明の方法を用いて、各妊娠女性に関して測定した。その胎児第21染色体種およびその胎児第12染色体種の相対量を比として算出し、正倍数体サンプルの内部標準セットを用いて、操作特異的zスコア(run−specific z−score)分析を実施した。約3より大きいzスコアを示すサンプルを「陽性」と判定した。
図8の第2の散布図は、異常値の陽性サンプルは、138のセットのうち、トリソミー21(「T21」)を有する胎児を宿していることが既知の8名の妊娠女性から得たものであることを示す。すべての8つのサンプルは、偽陰性または偽陽性ではないように、うまく分類された。
【0166】
本実施例の方法では、ヒト第21染色体上に位置するDSCAM遺伝子(ダウン症の細胞接着分子:NCBI Reference Sequence Homo sapiens chromosome 21,GRCh38.p2 Primary Assembly:NC_000021.9 GI:568815577,region 40010999 to 40847113;SEQ ID No.:200)に存在するDMRおよびDMRの約300bp〜500bpの間に位置する他の領域を用いて、胎児の第21染色体DNA種の量を決定した。本実施例の方法において、胎児の第12染色体DNA種の量は、ヒト第12染色体上に位置する(上記の)TBX3遺伝子に存在するDMRおよび約10KbのDMRの間に位置する他の領域を用いて決定した。使用した各DMRおよびORの配列を表7に記載する。
【0167】
【表11】
【0168】
実施例1に記載のように、138名の妊娠女性(T21を有する胎児を宿すことが既知である8名を含む)のcfDNAサンプルを収集、調製し、CpG−メチル化感受性酵素であるHhaI、HpaIおよびBstUIを用いて切断した。使用するPCR緩衝液がPerfeCTa MultiPlex qPCR ToughMix(Quanta BioSciences)であったことを除いて実施例1に記載したように、表8に示すPCRプライマーおよび標識プローブ(クエンチャーを含む)を用いて、各サンプルの複製(n=6)を、表7に記載の4つの別々の遺伝子座のプローブベースの多重定量PCR反応で行った。
【0169】
【表12】
【0170】
このアッセイの構成を
図6に概略的に示す。この図のDMR1およびOR1は、ヒト第21染色体のDSCAM遺伝子内に位置し、また、この図のDMR1’およびOR1’は、ヒト第12染色体のTBX3遺伝子内に位置している(この実施例では、各染色体は1つのDMR/OR対のみで検出される。したがって、この図の(2)および(2’)によって表されるどのような2番目の対も本実施例には含まれない)。表8から分かるように、第21染色体のDMRのプローブは、第12染色体のDMRのプローブとは異なり、標識されている(また、各ORは異なって標識される)。これにより、各染色体特異的ORに対する染色体特異的DMRの相対的定量によって、各染色体特異的DNA種に対するcfDNAの胎児の割合を別々に計算することができる。そして、各染色体の全cfDNAの絶対量を、試験サンプルとして各qPCRプレート(操作)に準備した既知の濃度の標準DNAの希釈系列(実施例1に記載)から得た各ORのシグナルと比較したサンプルの各ORの絶対量の定量シグナルによって算出した。この相対的および絶対的定量は、LightCycler 480ソフトウェアリリース1.5.0(Roche)を用いて実施した。胎児cfDNAの第21染色体DNA種の%と胎児cfDNAの第12染色体DNA種の%のサンプル特異的割合の平均[n=6の複製]を各サンプルについて計算し、そして、各プレートについて、既知の正倍数体サンプルのその割合の全体平均および標準偏差を計算した。そのパラメータから、そのqPCRプレート(操作)上の全ての試験サンプルを別々に分析し、各試験サンプル(トリソミー21であることが既知の試験サンプルを含む)の(プレートごとの)Zスコアを得た。
図8の第2の散布図は、正倍数体サンプルからの全てのトリソミーサンプルの分離を示す各試験サンプルの(プレートごとに計算した)zスコアを示す。
【0171】
実施例6:既知の内部正倍数体標準を参照しないNIPTにおけるトリソミー21を検出するための反復zスコア分析
【0172】
本発明者らは、反復zスコア法の適用によって、zスコア分析の平均と標準偏差の推定について、既知の正倍数体サンプルの参照なく、試験サンプルから全ての既知のトリソミー21サンプルを同定できた。
【0173】
実施例5で分析したサンプルの各操作(qPCRプレート)のデータを以下のように再解析した。第1に、各サンプルの複製産物(n=6)の基準染色体に対する第21染色体の比の平均を計算し、その操作(プレート)に存在するすべてのサンプルについて、全体の平均および標準偏差を、正倍数体であるかトリソミーであるかが既知のサンプルの参照なく算出した。全ての操作にわたる全てのサンプルについて、各サンプルの第1の平均割合を
図8の第1の散布図に示した(正倍数体およびT21サンプルを異なる記号でプロットする)。第2に、この操作に特異的な平均値および標準偏差に基づき、操作内に存在する各サンプルの(操作特異的)zスコアを算出した。
図8の第3の散布図は、全ての実験にわたる全てのサンプルについて、そのマスクされたzスコアを示す。第3に、約1.9を超えるzスコアを示すサンプルをデータセットから除外し、データセットの残りのサンプルに関するデータについて、第2の平均値および標準偏差を算出し、そのセットのすべてのサンプルの第2のzスコア分析の実施に使用した。
図8の第4の散布図は、その第1の反復的な除外に続くすべての操作にわたる全サンプルのzスコアを示す。第4に、第1の反復的な除外の約1.9を超えるzスコアを示すこれらのサンプルもデータセットから除外し、データセットの残りのサンプルに関するデータについて、第3の平均値および標準偏差を算出し、そのセットのすべてのサンプルの第3のzスコア分析の実施に使用した。
図8の第5の散布図は、その第2の反復的な除外に続くすべての操作にわたる全サンプルのzスコアを示し、正倍数体であることが事前に既知のあらゆるサンプルを参照することのない、正倍数体とT21サンプルの完全な分離(約3.0より大きいzスコアで表される)を示す。
【0174】
上記観点において、本発明はまた、以下の項目に関することが理解される。
1.個体からのサンプル中の所定の細胞タイプに由来するDNA種の量を検出する方法であって、該サンプルは前記DNA種を前記細胞タイプに由来しない異なるメチル化DNAとの混合物中に含み;前記方法は下記工程を含み:
(a)メチル化DNAおよび非メチル化DNAを特異的に修飾する試薬を用いて、前記サンプル中に存在するDNAを処理する工程;
(b)前記DNA種と前記細胞タイプに由来しないDNAとの間で異なるメチル化がされている2つ以上の特異的メチル化領域(DMR)で前記DNA種におけるメチル化の存在を前記サンプル中で検出する工程であって、前記試薬によるそのDMRのDNAの修飾はDNAのメチル化に感受性があり、1つ以上の前記DMRにおけるメチル化DNAの存在が前記サンプル中に前記DNA種の量が存在することを示し、前記DMRにおけるメチル化DNAの非存在が前記サンプル中に前記DNA種が存在しないことを示す工程;および、
(c)前記DNA種と前記細胞タイプに由来しないDNAとの間で異なるメチル化がされていない少なくとも一つの他の領域を用いて前記サンプル中に存在する全DNA量を検出する工程であって、前記試薬による領域の修飾がDNAのメチル化に非感受性である工程;
工程(b)の前記検出および工程(c)の前記検出が、前記サンプルのDNAの同じアリコートを用いて、同じ容器内で、そのDMRおよび他の領域について実質的に同時に、(x)前記DMRの各々について同一の検出可能な標識および(y)前記他の領域について異なる検出可能な標識を用いて実施される方法。
2.工程(b)および/または工程(c)の前記検出の前にまたはその一部として、前記DMRおよび/または前記他の領域をそれぞれ含む各DNA領域が増幅される、項目1に記載の方法。
3.工程(b)および/または工程(c)で使用される各検出可能な標識が、蛍光、タンパク質、低分子または放射性標識からなる群から独立して選択される、項目1または2に記載の方法。
4.工程(b)の前記検出が、前記DMRの1つにそれぞれ特異的である少なくとも2つの標識プローブを用いたプローブベースの多重リアルタイム定量PCRを含む、項目1〜3のいずれか1つに記載の方法。
5.工程(c)の前記検出が、前記他の領域の1つに特異的である少なくとも1つの標識プローブを用いたリアルタイム定量PCRを含む、項目1〜4のいずれか1つに記載の方法。
6.前記他の領域が、少なくとも1つの前記DMRの約20bp〜約20kbの間の上流または下流に、および/または、少なくとも1つの前記DMRと同じ遺伝子内に位置する、項目1〜5のいずれか1つに記載の方法。
7.工程(c)の前記検出が、前記他の領域の少なくとも2つを使用することを含み、好ましくは前記他の領域の数は、工程(b)で使用されるDMRの数と同じであり、より好ましくは前記他の領域の1つは、工程(b)で使用されるDMRの約20bp〜約20kbの上流または下流に位置し、そして、別の前記他の領域はそれぞれ別の前記DMRの約20bp〜約20kbの上流または下流に位置する、項目1〜6のいずれか1つに記載の方法。
8.工程(c)の前記検出が、(x)前記他の領域の各々について同一の検出可能な標識、または、(y)前記他の領域の各々について異なる検出可能な標識を用いて実施される、項目7に記載の方法。
9.工程(c)の前記検出が、それぞれが前記他の領域の1つに特異的である少なくとも2つの標識プローブを用いたプローブベースの多重リアルタイム定量PCRを含む、項目7または8に記載の方法。
10.工程(c)の前記検出および工程(b)の前記検出が、前記サンプルのDNAの同一アリコートを用いて、同じ反応/検出容器内で、および、互いに実質的に同時に、そして、前記DMRおよび他の領域のそれぞれに特異的な少なくとも1つの標識プローブを使用するプローブベースの多重リアルタイム定量PCRによって行われる、項目1〜9のいずれか1つに記載の方法。
11.前記DNA種が、胎児の細胞および/または胎児の胎盤に由来し、前記サンプルが妊娠女性由来であり、好ましくは、前記DNA種が循環無細胞DNAであり、前記サンプルが血漿または血清等の血液画分である、項目1〜10のいずれか1つに記載の方法。
12.前記DMRが、少なくとも1つ、好ましくは少なくとも2つの前記試薬に特異的なメチル化部位を含み、そして前記DMRの少なくとも1つが、RASSF1A、TBX3、HLCS、ZFY、CDC42EP1、MGC15523、SOX14およびSPNからなる群から選択されるゲノムおよび/または遺伝子の一部に位置し;好ましくは、
・前記DMRのそれぞれが、RASSF1A、TBX3、HLCS、ZFY、CDC42EP1、MGC15523、SOX14およびSPNからなる群から選択されるゲノムおよび/または遺伝子の一部に位置し;および/または、
・少なくとも1つの前記DMRが、RASSF1Aの約4,700bpと5,600bpの位置の間に位置するか、もしくは、TBX3の約1,660bpと2,400bpの位置の間に位置し;より好ましくは、
・2つ以上の前記DMRが、RASSF1Aの約4,700bpと5,600bpの位置の間に位置するもの、および、TBX3の約1,660bpと2,400bpの位置の間に位置するものを含む;項目11に記載の方法。
13.前記他の領域が、GAPDH,βアクチン,ALB,APOE,RNASEP,RASSF1A,TBX3,HLCS,ZFY,CDC42EP1,MGC15523,SOX14およびSPNからなる群から選択されるゲノムおよび/または遺伝子の一部に位置し;好ましくは、
・前記他の領域が、前記試薬に特異的なメチル化部位を有さない領域を含み、また前記遺伝子座が遺伝子RASSF1AもしくはTBX3に位置し;より好ましくは、
・2つ以上の前記他の領域が検出工程(c)で使用され、そして、RASSF1Aの約14,220bp〜13,350bpの位置の間に位置するもの、および、TBX3の約12,400bp〜13,000bpの位置の間に位置するものを含む;項目11または12に記載の方法。
14.前記妊娠女性が、妊娠関連の疾患に感染しやすく、好ましくは前記妊娠関連の疾患が、子癇前症、早期陣痛、子宮内発育遅延およびバニシングツインからなる群から選択される、項目11〜13のいずれか1つに記載の方法。
15.前記DNA種が、疾患に関連する細胞タイプ由来であり、好ましくはその疾患が、細胞増殖性障害、感染/感染性疾患、消耗性疾患、変性疾患、(自己)免疫不全症、腎疾患、肝疾患、炎症性疾患、急性毒性、慢性毒性、心筋梗塞およびこれらの任意の組み合わせからなる群から選択されるひとつであり、より好ましくは、前記DNA種は循環無細胞DNAであり、前記サンプルは血漿または血清等の血液画分である、項目1〜10のいずれか1つに記載の方法。
16.前記DNA種が、腫瘍細胞由来であり、好ましくはその腫瘍は、肝臓、肺、乳房、結腸、食道、前立腺、卵巣、子宮頸部、子宮、精巣、脳、骨髄および血液からなる群から選択される組織の癌腫または癌である、項目15に記載の方法。
17.前記DMRが前記試薬に特異的な少なくとも1つ、好ましくは少なくとも2つのメチル化部位を含み、前記DMRの少なくとも1つが、下記からなる群から選択されるゲノムおよび/または遺伝子の部分に位置し:腫瘍抑制遺伝子、p16、SEPT9、RASSF1A、GSTP1、DAPK、ESR1、APC、HSD17B4およびH1C1;好ましくは、前記2つ以上のDMRの1つがRASSF1A内に位置し;より好ましくは、前記2つ以上のDMRの1つがRASSF1Aの約4,700bpと5,600bpの位置の間に位置し;および/または、より好ましくは、前記他の領域がRASSF1Aの約14,220bp〜13,350bpの位置の間に位置する、項目16に記載の方法。
18.前記サンプルが組織サンプルまたは生物学的液体のサンプルであり、好ましくは、前記サンプルが、全血、血液画分、尿、唾液、汗、精液、涙、痰、膣分泌物、膣洗浄液および結腸洗浄液からなる群から選択される生物学的液体のサンプルであり;より好ましくは、前記サンプルは血漿または血清サンプルである、項目1〜17のいずれか1つに記載の方法。
19.前記試薬が、メチル化および非メチル化DNAを特異的に修飾し、亜硫酸水素塩を含む、項目1〜18のいずれか1つに記載の方法。
20.前記試薬が、メチル化および非メチル化DNAを特異的に修飾し、メチル化DNAと比較して非メチル化DNAを選択的に消化する薬剤を含み;好ましくは、前記試薬が下記を含む、項目1〜18のいずれか1つに記載の方法:
・少なくとも1つのメチル化感受性酵素;
・少なくとも1つのメチル化感受性制限酵素;および/または、
・AatII、AciI、AclI、AfeI、AgeI、AgeI−HF、AscI、AsiSI、AvaI、BceAI、BmgBI、BsaAI、BsaHI、BsiEI、BsiWI、BsmBI、BspDI、BsrFI、BssHII、BstBI、BstUI、ClaI、EagI、FauI、FseI、FspI、HaeII、HgaI、HhaI、HinP1I、HpaII、Hpy99I、HpyCH4IV、KasI、MluI、NaeI、NarI、NgoMIV、NotI、NotI−HF、NruI、Nt.BsmAI、Nt.CviPII、PaeR7I、PluTI、PmlI、PvuI、PvuI−HF、RsrII、SacII、SalI、SalI−HF、SfoI、SgrAI、SmaI、SnaBI、TspMIおよびZraIからなる群から選択される薬剤。
21.前記検出工程の各々が定量的検出を含み、また前記DNA種の前記検出量が、前記サンプル中の全DNAに対する前記DNA種の相対濃度として表される、項目1〜20のいずれか1つに記載の方法。
22.さらに下記工程を含む、項目1〜20のいずれか1つに記載の方法:
・工程(c)で使用したものと同じ他の領域を使用して、既知量のDNAの標準サンプル中の全DNA量を検出する工程;および、
・前記DNAの標準サンプルから検出したシグナルを工程(c)で検出したシグナルと比較する工程。
23.前記検出工程の各々が定量的検出を含み、前記DNA種の前記検出量が、前記サンプル中の前記DNA種の絶対量として表される、項目22に記載の方法。
24.さらに下記工程を含む、項目21または22に記載の方法:
・検出された前記DNA種の量を、量の閾値および/または量の基準分布と比較する工程であって、(x)前記DNA種の量の増加または異常値が、前記個体の疾患の罹患または発症のリスク上昇を示し;および/または、(y)前記閾値を超える前記DNA種の量または前記分布からの異常値が、好ましくは前記サンプルのDNAの別々のアリコートで、前記サンプル中に存在する前記DNA種の異常の診断を実施できることを示す工程。
25.さらに下記工程を含む、項目21〜24のいずれか1つに記載の方法:
・好ましくは前記サンプルのDNAの別々のアリコートを用いて、前記サンプル中に存在する前記DNA種の異常について診断を行う工程;好ましくは、前記DNA種は、胎児の細胞および/または胎児の胎盤に由来し、前記サンプルは妊娠女性由来であり、そして前記診断は出生前診断である。
26.前記診断が、下記からなる群から選択される検出技術を使用する工程を含み:DNA配列決定、SNP分析、デジタルPCRおよびハイブリダイゼーション;好ましくは、前記検出技術が、DNAの大規模並列配列決定法であり;より好ましくは、前記検出技術が、ランダムおよび/または富化DNAの大規模並列配列決定法である、項目25に記載の方法。
27.下記である、項目25または26に記載の方法:
(x)前記DNA種が、胎児の細胞および/または胎児の胎盤由来であり、前記サンプルは妊娠女性由来であり、前記異常が、胎児の異常および/または先天性障害に関連する染色体トリソミー等の遺伝子変異または染色体異常であり、好ましくは、
・前記遺伝子変異は、下記からなる群から選択される:色盲、嚢胞性線維症、ヘモクロマトーシス、血友病、フェニルケトン尿症、多発性嚢胞腎、鎌状赤血球病、テイ・サックス病;および/または、
・前記染色体異常は、下記からなる群から選択される:トリソミー(例えば、トリソミー21、トリソミー18またはトリソミー13)、性染色体異常(例えば、ターナー症候群、クラインフェルター症候群、[ヌーナン症候群]、トリプルX症候群、XXY症候群または脆弱性X症候群またはXYY症候群またはXXYY症候群)、染色体欠失(例えば、Prader−Willi症候群、Cris−du−Chat症候群、Wolf−Hirschhorn症候群または22q11欠失症候群、Duchenne筋ジストロフィー)、Beckwith−Wiedemann症候群、Canvan症候群および神経線維腫症;または、
(y)前記DNA種が腫瘍の細胞に由来し、前記異常は、癌腫または癌の診断、予後診断または予測的治療に関連する遺伝的変異または染色体異常であり;好ましくは、
・前記遺伝子変異が、下記からなる群から選択される:腫瘍抑制遺伝子(例えば、TP53(p53)、BRCA1、BRCA2、APCまたはRB1)の変異、癌原遺伝子(例えば、RAS、WNT、MYC、ERKまたはTRK)およびDNA修復遺伝子(例えば、HMGA1、HMGA2、MGMTまたはPMS2)の変異;および/または、
・染色体異常が転座である(例えば、t(9;22)(q34;q11)[すなわち,フィラデルフィア染色体もしくはBCL−ABL]、t(8;14)(q24;q32)、t(11;14)(q13;q32)、t(14;18)(q32;q21)、t(10;(多種))(q11;(多種))、t(2;3)(q13;p25)、t(8;21)(q22;q22)、t(15;17)(q22;q21)、t(12;15)(p13;q25)、t(9;12)(p24;p13)、t(12;21)(p12;q22)、t(11;18)(q21;q21)、t(2;5)(p23;q35)、t(11;22)(q24;q11.2−12)、t(17;22)、t(1;12)(q21;p13)、t(X;18)(p11.2;q11.2)、t(1;19)(q10;p10)、t(7,16)(q32−34;p11)、t(11,16)(p11;p11)、t(8,22)(q24;q11)もしくはt(2;8)(p11;q24))。
28.前記DMRが胎児DNAでは高度にメチル化され、母体DNAでは低メチル化されている、項目11に記載の方法。
29.前記DMRが、前記試薬に特異的な少なくとも1つ、好ましくは少なくとも2つのメチル化部位を含み、少なくとも1つの前記DMRが、母体DNAに比べて胎児DNAで高度にメチル化されているとして国際公開第2011/034631号に開示されているもの(例えば、国際公開第2011/034631号の配列番号1〜59、90〜163、176、179、180、184、188、189、190、191、193、195、198、199、200、201、202、203、205、206、207、208、209、210、211、212、213、214、221、223、225、226、231、232、233、235、239、241、257、258、259および/または261)から成るリストから選択される領域および/または遺伝子に位置する、項目28に記載の方法。
30.少なくとも1つの前記DMRが、下記から成るリストから選択される領域および/または遺伝子に位置する:国際公開第2011/034631号の配列番号1〜39,176,179,180,184,188,189,190,191,193,195,198,199,200,201,202,203,205,206,207,208,209,210,211,212,213,214,221,223,225,226,231,232,233,235,239,241,257,258,259および/または261;好ましくは、下記から成るリストから選択される領域および/または遺伝子に位置する、項目29に記載の方法:国際公開第2011/034631号の配列番号33〜39,176,179,180,184,188,189,190,191,193,195,198,199,200,201,202,203,205,206,207,208,209,210,211,212,213,214,221,223,225,226,231,232,233,235,239,241,257,258,259および/または261。
31.前記DMRが、前記試薬に特異的な少なくとも1つ、好ましくは少なくとも2つのメチル化部位を含み、少なくとも1つの前記DMRが、国際公開第2011/092592号に開示されている領域および/または遺伝子(例えば、国際公開第2011/092592号のEP1,EP2,EP3,EP4,EP5,EP6,EP7,EP8,EP9,EP10,EP11およびEP12(配列番号33〜44)から成るリストから選択される)に位置する、項目11または28に記載の方法。
32.前記DMRが、前記試薬に特異的な少なくとも1つ、好ましくは少なくとも2つのメチル化部位を含み、そして前記DMRの少なくとも1つは、AIRE、SIM2、ERGおよびVAPA−APCDDIからなるリストから選択されるかHLCSである領域および/または遺伝子に位置する、項目11または28に記載の方法。
33.前記DMRの少なくとも1つが、
・第21染色体、第18染色体、第13染色体、X染色体およびY染色体からなるリストから選択されるヒト染色体、好ましくは、第21染色体、第18染色体または第13染色体、より好ましくは、第21染色体に位置する;および/または、
・前記試薬に特異的な少なくとも1つ、好ましくは少なくとも2つのメチル化部位を含み、そして前記DMRが、マスピン(好ましくは、胎児とその母親の間で異なるメチル化がされていることが欧州特許第1751307号に記載されたマスピン(別名「SERPINB5」)遺伝子の一部)、CGI137、PDE9A、PPP1R2P2、Fem1A(C.elegans)と類似するもの、CGI009、CBR1、DSCAM、C21またはf29およびCGI13からなるリストから選択される領域および/または遺伝子に位置する;項目11または項目28〜32のいずれか1つに記載の方法。
34.前記DMRの少なくとも1つが、RASSF1A,TBX3,ZFY,CDC42EP1,MGC15523,SOX14およびSPNからなるリストから選択される領域および/または遺伝子に位置する、項目11または28に記載の方法。
35.前記DMRの少なくとも1つが、国際公開第2011/034631号の配列番号40〜59および90〜163からなるリストから選択される領域および/または遺伝子に位置する、項目11または28に記載の方法。
36.前記DMRの少なくとも1つが、
・第1〜12染色体、第14〜17染色体、第19染色体、第20染色体、第22染色体および第23染色体からなるリストから選択されるヒト染色体に位置する;および/または、
・前記試薬に特異的な少なくとも1つ、好ましくは少なくとも2つのメチル化部位を含み、そして前記DMRは、CD48、FAIM3、ARHGAP25、SELPLG、APC、CASP8、RARB、SCGB3A1、DAB2IP、PTPN6、THY1、TMEFF2およびPYCARDからなるリストから選択される領域および/または遺伝子に位置する;項目11、28、29、34または35に記載の方法。
37.複数のDNA種が前記サンプル中で検出される;好ましくは、前記サンプル中で2種のDNA種が検出される、項目1〜36のいずれか1つに記載の方法。
38.項目37に記載の方法であって、
・少なくとも1つの検出工程(b)において:
・2つ以上のDMRの第1のセットにおけるメチル化DNAの存在は、前記サンプル中の第1のDNA種の量の存在を示すことに使用され、また前記第1のDMRセットにおけるメチル化DNAの非存在は、前記サンプル中の第1のDNA種の非存在を示す;好ましくは、前記第1のDNA種は、胎児の細胞および/または胎児の胎盤に由来し、前記サンプルは妊娠女性に由来し、前記第1のDMRセットの少なくとも1つは、項目30〜33のいずれか1つに記載されたものである;そして、
・2つ以上のDMRの第2のセットにおけるメチル化DNAの存在は、前記サンプル中の第2のDNA種の量の存在を示すことに使用され、また前記第2のDMRセットにおけるメチル化DNAの非存在は、前記サンプル中の第2のDNA種の非存在を示す;好ましくは、前記第2のDNA種は、胎児の細胞および/または胎児の胎盤に由来し、前記サンプルは妊娠女性に由来し、前記第2のDMRセットの少なくとも1つは、項目34〜36のいずれか1つに記載されたものである;そして、
・少なくとも1つの検出工程(c)において:
・前記第1のDNA種と前記細胞タイプに由来しないDNAとの間で異なるメチル化がされない第1の領域を用いて、前記サンプル中に存在する第1の全DNA量を検出する;前記試薬による第1の他の領域の修飾は、DNAのメチル化に非感受性であり、前記第1の他の領域は、1つ以上のDMRの前記第1のセットの約20bp〜約20kbの間の上流または下流に位置する;そして、
・前記第2のDNA種と前記細胞タイプに由来しないDNAとの間で異なるメチル化がされない第2の領域を用いて、前記サンプル中に存在する第2のDNAの全量を検出する;前記試薬による第2の他の領域の修飾は、DNAのメチル化に非感受性であり、前記第2の他の領域は、1つ以上のDMRの前記第2のセットの約20bp〜約20kbの間の上流または下流に位置する。
39.前記第1および第2のDMRのセットの工程(b)における検出および前記第1および第2の他の領域の工程(c)における前記検出が、前記サンプルのDNAの同じアリコートを用いて、同じ反応/検出容器内で、そのDMRおよび他の領域について実質的に同時に、そして(x)前記第1および第2のDMRのセットの各々について異なる検出可能な標識;および(y)さらに前記第1および第2の他の領域の各々について異なる検出可能な標識を用いて実施される、項目38に記載の方法。
40.前記工程(c)における検出および前記工程(b)における前記検出が、前記DMRおよび他の領域のそれぞれに特異的な少なくとも1つの標識プローブを用いて、プローブベースの多重定量リアルタイムPCRで実施される、項目39に記載の方法。
41.前記試薬が、少なくとも1つのメチル化感受性制限酵素を含む、項目37〜40のいずれか1つに記載の方法。
42.前記検出工程の各々が、定量的検出を含み、また前記DNA種の前記検出量が、それぞれの他の領域からの前記サンプル中に検出された全DNAのそれぞれの量に対する前記DNA種の相対濃度として表される、項目38〜41のいずれか1つに記載の方法。
43.さらに下記工程を含む、項目38〜41のいずれか1つに記載の方法:
・工程(c)で使用したものと同じ他の領域を使用して、既知量のDNAの標準サンプル中の全DNA量を検出する工程;および、
・前記DNAの標準サンプルから検出したシグナルを、それぞれの他の領域について工程(c)で検出した各シグナルと比較する工程。
44.前記検出工程の各々が、定量的検出を含み、また前記DNA種の前記検出量が、前記サンプル中の前記DNA種のそれぞれの絶対量として表される、項目43に記載の方法。
45.さらに下記工程を含む、項目42または44に記載の方法:
・(x)2つ以上のDMRの第1のセットで検出された前記第1のDNA種;および(y)2つ以上のDMRの第2のセットで検出された前記第2のDNA種の相対量、好ましくは比を決定する工程;および、
・前記相対量または比を、量または比の閾値および/または基準分布と比較する工程であって、前記量または比の閾値および/または基準分布よりも高いまたは低い相対量または比が、前記サンプル中に存在する前記第1のDNA種および/または第2のDNA種に異常が存在することを示し;好ましくは、前記異常が染色体異常であり;より好ましくは、前記染色体異常は、胎児の異常および/または先天性障害に関連し;さらにより好ましくは、前記染色体異常は、下記からなる群から選択され:トリソミー(例えば、トリソミー21、トリソミー18またはトリソミー13)、性染色体異常(例えば、ターナー症候群、クラインフェルター症候群、[ヌーナン症候群]、トリプルX症候群、XXY症候群または脆弱性X症候群またはXYY症候群またはXXYY症候群)、染色体欠失(例えば、Prader−Willi症候群、Cris−du−Chat症候群、Wolf−Hirschhorn症候群または22q11欠失症候群、Duchenne筋ジストロフィー)、Beckwith−Wiedemann症候群、Canvan症候群および神経線維腫症;最も好ましくは、前記染色体異常は、例えば、トリソミー21、トリソミー18またはトリソミー13からなるリストから選択されるトリソミーである。
46.妊娠女性が宿す胎児の染色体異数性を検出する方法であって、下記工程を含む方法:
(A)上記項目のいずれか1つに記載の方法を用いて、前記妊娠女性から採取したサンプル中の胎児の細胞および/または胎児の胎盤に由来する第1のDNA種の量を測定する工程であって、前記第1のDNA種が染色体異数性に関連する染色体上または染色体異数性に関連する染色体の部分内に位置し、胎児の細胞および/または胎児の胎盤に由来する前記第1のDNA種が、DNAのメチル化の違いによってサンプル中の母親由来のものと区別される工程;
(B)上記項目のいずれか1つに記載の方法を用いて、前記サンプル中の胎児の細胞および/または胎児の胎盤に由来する第2のDNA種の量を測定する工程であって、前記第2のDNA種が基準染色体上に位置し、胎児の細胞および/または胎児の胎盤に由来する前記第2のDNA種が、DNAのメチル化の違いによってサンプル中の母親由来のものと区別される工程;
(C)(A)および(B)の量の相対量、好ましくはその比を決定する工程;および、
(D)前記相対量または比を、量または比の閾値および/または基準分布と比較する工程であって、前記量または比の閾値および/または基準分布よりも高いまたは低い相対量または比が、胎児の染色体異数性の存在を示す工程。
47.個体の疾患の罹患または発症のリスク上昇を検出する方法であって、下記工程を含み:
(i)項目21または23に記載の方法を実施する工程;および、
(ii)検出された前記DNA種の量を、量の閾値および/または量の基準分布と比較する工程;
前記DNA種の量の増加または異常値が、個体の前記疾患の罹患または発症のリスク上昇を示す方法。
48.下記を含む組成物:
・項目1〜47のいずれか1つに記載の前記2つ以上のDMRの1つをそれぞれの対が増幅するための2対のPCRプライマー;
・項目1〜47のいずれか1つに記載の前記他の領域を増幅するための1対のPCRプライマー;
・項目4に記載の2つの標識プローブ;および、
・項目5に記載の1つの標識プローブ。
49.さらに下記を含む、項目48に記載の組成物:
・項目9〜47のいずれか1つに記載の第2の他の領域を増幅するための追加のPCRプライマー対;および、
・項目9に記載の追加の標識プローブ。
50.下記を含むキット:
・項目48または49に記載のプライマーおよびプローブ;および、
・場合により、(i)前記プライマーおよびプローブの使用、項目1〜47のいずれか1つに記載の方法の実施および/または項目48または49に記載の組成物の製造もしくは使用のための指示を含む印刷されたマニュアルまたはコンピュータ読み取り可能なメモリ、および/または、(ii)項目1〜47のいずれか1つに記載の方法の実施および/または項目48または49に記載の組成物の製造もしくは使用に有用な1つ以上の他の品物、要素または試薬;例えば、本明細書に開示された全てのその品物、要素または試薬(例えば、項目1〜47のいずれか1つに記載のメチル化および非メチル化DNAを異なる形で修飾する試薬)。
51.下記[(x)疾患の罹患もしくは発症のリスク上昇;および/または(y)所定の細胞タイプに由来するDNA種における異常の診断を実施する場合、前記細胞タイプに由来しない異なるメチル化DNAとの混合物中に所定の細胞タイプに由来するDNA種を含む個体由来の各々のサンプルにおいて、項目1〜47のいずれか1つに記載のメチル化DNAおよび非メチル化DNAを異なって修飾する試薬で処理される該サンプル中に存在するDNA]を診断するための動作を、実行および/または管理するコンピュータシステムを制御する複数の命令でコード化されたコンピュータ可読媒体を含むコンピュータプログラム製品であって、前記動作が下記工程を含むコンピュータプログラム製品:
・(i)項目1〜47のいずれか1つに記載の工程(b)における2つ以上のDMRのメチル化の実質的に同時の定量的検出を表す1つのシグナル;および、(ii)項目1〜47のいずれか1つに記載の工程(c)における少なくとも1つの他の領域を用いた全DNAの実質的に同時の定量的検出を表す1つのシグナルを受信する工程;
・(i)および(ii)のシグナルからパラメータを決定する工程であって、前記パラメータが前記DNA種(および/または前記全DNA)の定量的な量を表す工程;
・前記パラメータを量の閾値及び/又は量の基準分布と比較する工程;および、
・その比較に基づいて、(x)個体における疾患の罹患もしくは発症のリスク上昇が存在するか否か;および/または(y)所定の細胞タイプに由来するDNA種の異常が診断できるか否かの分類を決定する工程。
52.さらに前記動作が下記工程を含む、項目51に記載のコンピュータプログラム製品:
・項目22に記載のDNAの標準サンプル中の全DNAの定量的検出を表す追加のシグナルを受信する工程;および、
・前記DNA種の絶対量を表す前記パラメーターを決定するために、前記シグナルと、項目51の(ii)に記載のシグナルとを比較する工程。
53.前記動作が、前記DNA種における異常の診断が行われうるか否かを決定するためのものであり、さらに、前記パラメータから、前記診断の一部として、前記サンプル、好ましくはDNAの別々のアリコートから配列が決定される多量のランダムおよび/または富化されたDNA分子を決定する工程を含む、項目51または52に記載のコンピュータプログラム製品。
54.前記動作が、下記工程をさらに含む項目51または52に記載のコンピュータプログラム製品:
・(i)項目38〜46のいずれか1つに記載の工程(b)における2つ以上のセットの第2のDMRのメチル化の定量的検出を表す1つのシグナル;および、(ii)項目38〜46のいずれか1つに記載の工程(c)における1つの第2の他の領域を用いた全DNAの定量的検出を表す1つのシグナルを受信する工程;
・(i)および(ii)のシグナルから第2のパラメータを決定する工程であって、前記パラメータが前記第2のDNA種の定量的な量を表す工程;
・前記パラメータと前記第2のパラメータの相対量、好ましくは比を決定する工程;
・前記相対量または比を、量もしくは比の閾値及び/又は基準分布と比較する工程;および、
・その比較に基づいて、前記DNA種の異常または前記サンプル中に存在する第2のDNA種の異常の分類を決定する工程;好ましくは、前記異常が染色体異常であり;より好ましくは、前記染色体異常は、胎児の異常および/または先天性障害に関連し;さらにより好ましくは、前記染色体異常は、下記からなる群から選択され:トリソミー(例えば、トリソミー21、トリソミー18またはトリソミー13)、性染色体異常(例えば、ターナー症候群、クラインフェルター症候群、[ヌーナン症候群]、トリプルX症候群、XXY症候群または脆弱性X症候群またはXYY症候群またはXXYY症候群)、染色体欠失(例えば、Prader−Willi症候群、Cris−du−Chat症候群、Wolf−Hirschhorn症候群または22q11欠失症候群、Duchenne筋ジストロフィー)、Beckwith−Wiedemann症候群、Canvan症候群および神経線維腫症;最も好ましくは、前記染色体異常は、例えば、トリソミー21、トリソミー18またはトリソミー13からなるリストから選択されるトリソミーである。
55.個体からのサンプル中の所定の細胞タイプに由来するDNA種の量を検出する方法であって、該サンプルは前記DNA種を前記細胞タイプに由来しない異なるメチル化のDNAとの混合物中に含み;前記方法は下記工程を含み:
(a)メチル化DNAおよび非メチル化DNAを特異的に修飾する試薬を用いて、前記サンプル中に存在するDNAを処理する工程;および、
(b)前記DNA種と前記細胞タイプに由来しないDNAとの間で異なるメチル化がされている2つ以上のDMRで前記DNA種におけるメチル化の存在を前記サンプル中で検出する工程であって、前記試薬によるそのDMRのDNAの修飾はDNAのメチル化に感受性があり、前記1つ以上のDMRにおけるメチル化DNAの存在が前記サンプル中の前記DNA種の量が存在することを示し、前記DMRにおけるメチル化DNAの非存在が前記サンプル中に前記DNA種が存在しないことを示す工程;
工程(b)の前記検出が、前記サンプルのDNAの同じアリコートを用いて、同じ反応/検出容器内で、それらのDMRについて実質的に同時に、(x)多重リアルタイム定量PCR;および(y)それぞれが前記DMRの1つに特異的であり、前記DMRの各々について同じ検出可能な標識で標識される少なくとも2つの標識プローブを用いて実施され;好ましくは、前記試薬は項目20に記載の薬剤を含む、方法。