特許第6681854号(P6681854)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6681854積層体及びその製造方法、並びに紙ロール
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6681854
(24)【登録日】2020年3月26日
(45)【発行日】2020年4月15日
(54)【発明の名称】積層体及びその製造方法、並びに紙ロール
(51)【国際特許分類】
   B32B 29/00 20060101AFI20200406BHJP
   A47K 10/16 20060101ALI20200406BHJP
   B32B 3/30 20060101ALI20200406BHJP
【FI】
   B32B29/00
   A47K10/16 C
   B32B3/30
【請求項の数】10
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2017-118956(P2017-118956)
(22)【出願日】2017年6月16日
(65)【公開番号】特開2018-34499(P2018-34499A)
(43)【公開日】2018年3月8日
【審査請求日】2019年5月17日
(31)【優先権主張番号】特願2016-167876(P2016-167876)
(32)【優先日】2016年8月30日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】397042735
【氏名又は名称】特種東海エコロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100134544
【弁理士】
【氏名又は名称】森 隆一郎
(72)【発明者】
【氏名】大石 進也
【審査官】 鶴 剛史
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2012/032555(WO,A1)
【文献】 国際公開第2000/031341(WO,A1)
【文献】 特開2016−010573(JP,A)
【文献】 特開2015−123346(JP,A)
【文献】 特開2010−220799(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 29/00
A47K 10/16
B32B 3/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の紙シートの積層体であって、
前記紙シートの積層体は複数の紙シートを固着させる1つの圧着領域を有し、
前記圧着領域は、前記積層体の一方向の長さに対して101〜120%の長さを有し、
前記1つの圧着領域の幅が、1〜10mmであることを特徴とする、積層体。
【請求項2】
前記圧着領域が、エッジエンボスにより形成されている、請求項1に記載の積層体。
【請求項3】
前記1つの圧着領域が、折線状、S字状又は波状の形状を有する、請求項1又は2に記載の積層体。
【請求項4】
前記紙シートの積層体が長方形であり、
前記圧着領域は、前記紙シートの積層体の長手方向に対して101〜120%の長さを有する、請求項1からのいずれか一項に記載の積層体。
【請求項5】
前記圧着領域が不連続である、請求項1からのいずれか一項に記載の積層体。
【請求項6】
前記圧着領域がドット状又はスジ状の圧着点の集合体である、請求項に記載の積層体。
【請求項7】
トイレットペーパー又はペーパータオルである、請求項1からのいずれか一項に記載の積層体。
【請求項8】
請求項1からのいずれか一項に記載の積層体からなる紙ロール製品。
【請求項9】
複数の紙シートの積層体あたり1つの圧着領域を形成する工程
を含む、請求項1からのいずれか一項に記載の積層体の製造方法。
【請求項10】
一枚の紙シートを形成する工程、
複数の前記紙シートを積層する工程、
積層した前記複数の紙シートを固着させて圧着領域を形成する工程、及び
1つの積層体あたり1つの前記圧着領域を有するように、固着させた前記複数の紙シートを切断する工程
を含む、請求項1からのいずれか一項に記載の積層体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の紙シートを積層した積層体及びその製造方法、並びに紙ロールに関する。
【背景技術】
【0002】
トイレットペーパー及びキッチンペーパーなどの紙シートは、一般的にロール状の形態で使用される。これらの紙シートには、一枚の紙シートをロール状としたシングルのものと、複数の紙シートを積層して積層体とした後にロール状としたものとが存在する。
【0003】
ここで、複数の紙シートの積層体は、ロール状に巻き取られる際に内側の紙シートと外側の紙シートで円周が異なること、また収縮性のあるクレープ紙であることから紙シートの積層体を切断するために形成されたミシン目の位置がずれることがある。また、紙シートの巻圧によっては、使用時に巻き戻す際にもミシン目の位置がずれることがある。こうして紙シートの積層体のミシン目の位置がずれた結果、紙シートの積層体を一体としてきれいに切断することができないという問題があった。
【0004】
この問題を解決するため、例えば複数の紙シートが積層されたトイレットペーパーでは、複数の紙シートにエンボス加工を施すことによって、ミシン目の位置をずれないようにする方法が知られている(特許文献1)。しかし、紙シート同士の接着力が強くなりすぎ、トイレットペーパーの水解性が悪化することがあった。また、エンボス加工が目立つことにより、トイレットペーパーの外観が損なわれることがあった。
【0005】
上記の問題に加え、エンボス加工を施すためには専用の設備が必要であり、製造前に設備を調整するためのメンテナンスに大きな手間がかかるという問題があった。さらに、エンボス加工を施す際には大きな騒音及び振動が発生するという問題もあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−227099号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記従来技術の課題を解決すべくなされたものであり、複数の紙シートを積層した場合の紙シート同士の接着力を維持しつつ、紙シートの積層体の外観を保ったまま、トイレットペーパーとして使用した場合に必要とされる水解性を改善した、複数の紙シートの積層体を提供することを目的とする。
【0008】
また、複数の紙シートの積層体を製造する前のメンテナンスの手間を低減し、製造中の騒音及び振動を低減した、複数の紙シートの積層体の製造方法を提供することも本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は上記課題について鋭意検討した結果、本発明に到達した。すなわち、本発明の目的は、複数の紙シートの積層体であって、
前記紙シートは複数の紙シートを固着させる1つの圧着領域を有し、
前記圧着領域は、前記積層体の一方向の長さに対して101〜120%の長さを有することを特徴とする、積層体によって達成される。
【0010】
前記圧着領域は、エッジエンボスにより形成されていることが好ましい。
【0011】
前記1つの圧着領域は、折線状、S字状又は波状の形状を有することが好ましい。
【0012】
前記1つの圧着領域の幅は、1〜10mmであることが好ましい。
【0013】
前記紙シートの積層体が長方形であり、前記圧着領域は、前記紙シートの積層体の長手方向に対して101〜120%の長さを有することが好ましい。
【0014】
前記圧着領域は不連続であることが好ましい。
【0015】
前記圧着領域はドット状又はスジ状の圧着点の集合体であることが好ましい。
【0016】
好ましくは、本発明の積層体は、トイレットペーパー又はペーパータオルである。
【0017】
本発明は、前記積層体からなる紙ロール製品にも関する。
【0018】
また、本発明は、
複数の紙シートの積層体あたり1つの圧着領域を形成する工程
を含む、前記積層体の製造方法にも関する。
【0019】
さらに、本発明は、
一枚の紙シートを形成する工程、
複数の前記紙シートを積層する工程、
積層した前記複数の紙シートを固着させて圧着領域を形成する工程、及び
1つの積層体あたり1つの前記圧着領域を有するように、固着させた前記複数の紙シートを切断する工程
を含む、前記積層体の製造方法にも関する。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、トイレットペーパーとして使用した場合の水解性に優れ、かつ剥がれにくく、圧着領域が目立たないため、外観に優れた複数の紙シートの積層体及びその製造方法を提供することができる。具体的には、トイレットペーパーを水に流した際に容易に水中で分解することができ、複数の紙シートを紙ロールとした場合でも、内側と外側のミシン目がずれることがない。
【0021】
また、本発明の複数の紙シートの積層体の製造方法は、従来のエンボス加工で必要とされていたメンテナンスの負担を低減することができ、さらに積層体の製造中に発生する騒音及び振動を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の一実施形態における積層体の例を示す。
図2】本発明の別の実施形態における積層体の例を示す。
図3】本発明のさらに別の実施形態における積層体の例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の紙シートの積層体は、複数の紙シートを固着させる1つの圧着領域を有し、圧着領域は、積層体の一方向の長さに対して101〜120%の長さを有することを特徴とする。
【0024】
紙シートとしては、一般的な衛生用紙として用いられているものを制限なく使用することができ、トイレットペーパー、ティッシュペーパー、及びペーパータオルなどを挙げることができる。本発明における紙シートとしては、トイレットペーパー又はペーパータオルが好ましい。
【0025】
紙シートを2から8枚重ね合わせて長尺の積層体(マルチプライ)とすることができる。重ね合わせの枚数は、好ましくは2から4枚であり、より好ましくは2から3枚であり、更により好ましくは2枚(2プライ)である。
【0026】
紙シートとしては、柔軟性と強度の観点から、坪量が10から30g/m、好ましくは15から25g/mのものを使用することができる。坪量が上記範囲より小さいと強度が弱くなってしまい、坪量が上記範囲より大きいと柔軟性が低下して、触感が悪くなってしまう。また、トイレットペーパーとして使用する場合、坪量は10g/m以上であることが好ましく、12g/m以上であることがより好ましく、14g/m以上であることが更により好ましい。
【0027】
また、紙シートの原料パルプとしては、グランドパルプなどの機械パルプ、針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)及び広葉樹晒クラフトパルプ(LUKP)などの化学パルプを使用することができる。また、複数のパルプを配合して使用することもできる。
【0028】
本発明の複数の紙シートの積層体が有する圧着領域は、1つである。2つ以上の圧着領域を形成した場合には、紙シート同士の接着力が強くなりすぎてしまうため、例えばトイレットペーパーとして使用する際には、水解性が悪く、紙詰まりを引き起こしてしまうおそれがある。また、圧着領域が紙シートの積層体のふくらみ等を生じさせることにより、外観を損なうおそれがある。圧着領域を1つとすることにより、圧着領域が目立ちにくくなるとともに、切断用のミシン目が複数の紙シートでずれることなく、かつ水に流した際の水解性にも優れた紙シートの積層体を得ることができる。
【0029】
本発明の複数の紙シートの積層体が有する圧着領域は、積層体の一方向の長さに対して101〜120%、好ましくは101〜115%、より好ましくは102〜110%の長さを有することを特徴とする。圧着領域の長さが長すぎると、紙シート同士の接着力が強くなりすぎて水解性が悪化してしまい、トイレットペーパーとして使用した場合に紙詰まりを引き起こすおそれがある。また、長さが短すぎると紙シート同士の接着力が弱くなり、切断用のミシン目がずれることがある。
【0030】
本発明において、積層体の一方向の長さとは、積層体が円筒形状の場合はその両端のいずれか一方の円形の円周方向の長さを意味する。また、積層体が矩形の場合は当該矩形を規定するいずれかの辺の長さを意味する。
【0031】
複数の紙シートの積層体は長方形であることが好ましく、長手方向の長さが幅方向に対して非常に長い、長尺のロール状であることが好ましい。この態様において、本発明の複数の紙シートの積層体の圧着領域は、長手方向に対して101〜120%、好ましくは101〜115%、より好ましくは102〜110%の長さを有することを特徴とする。
【0032】
圧着領域を形成する方法は特に限定されないが、エッジエンボスにより形成されることが好ましい。複数の紙シートにエッジエンボス加工を施すことにより、積層された紙シート同士が剥がれることを効果的に防止することができる。
【0033】
1つの圧着領域の形状は特に限定されないが、圧着領域が全体として折線状、S字状又は波状であることが好ましい。圧着領域の形状を複雑な形状とすることは、例えばエッジエンボス加工により圧着領域を形成する場合に、製造時の騒音や振動が増加するため好ましくない。したがって、折線状、S字状又は波状等の単純な形状によって、積層体の一方向の長さに対して101〜120%の長さをもたらすことが好ましい。
【0034】
また、圧着領域の幅は1〜10mmであることが好ましく、1.5〜7.5mmであることがより好ましく、2〜5mmであることが特に好ましい。圧着領域の幅が広すぎると接着力が強くなりすぎて、トイレットペーパーとして使用した場合の水解性が悪化するおそれがある。また、圧着領域の幅が狭すぎると接着力が弱くなるため、切断用のミシン目がずれることがある。一態様において、積層体が有する圧着領域とは、1〜10mmの幅で形成される圧着領域又は1〜10mmの幅に含まれる圧着点の集合体を意味する。
【0035】
本発明の複数の紙シートの積層体の圧着領域は連続又は不連続であることができるが、不連続であることが好ましく、ドット状又はスジ状の圧着点の集合体であることが好ましい。すなわち、ドット状又はスジ状の圧着点が集合して、全体として折線状、S字状又は波状の圧着領域を構成していてもよい。圧着点を構成するそれぞれのドット又はスジの形状及び大きさは特に限定されないが、ドット状の場合、例えば直径0.5〜5mmの円状、及び一辺の長さが0.5〜5mmの正方形状などが挙げられる。スジ状の場合には、例えば長軸の長さが1〜10mm、短軸の長さが0.1〜4mmの楕円形状、及び長辺の長さが1〜10mm、短辺の長さが0.1〜4mmの長方形状などが挙げられる。
【0036】
圧着領域が不連続な圧着点の集合体として構成される場合には、集合体としての圧着領域の幅が1〜10mmであることが好ましく、1.5〜7.5mmであることがより好ましく、2〜5mmであることが特に好ましい。本発明においては、圧着点が上記幅の範囲内に含まれている場合には、例えば圧着点が2列又はそれ以上の列に並んで圧着領域を構成していた場合であっても、圧着領域としては1つである。
【0037】
複数の紙シートの積層体が長方形である場合、圧着領域は長手方向に沿って形成されていることが好ましい。また、圧着領域の幅方向における位置は特に限定されず、任意の位置とすることができる。すなわち、圧着領域の幅方向の位置は、中央又はその周辺であってもよく、或いは右端若しくは左端又はその周辺であってもよい。
【0038】
以下において、本発明の圧着領域を有する紙シートの積層体の例を、図面を参照して説明する。図1は、本発明の一実施形態における積層体の例を示す。複数の紙シートが積層して1つの積層体1を形成しており、長手方向に沿った方向にS字状の圧着領域2が形成されている。本実施形態において、圧着領域2は連続的に形成されており、黒い線で示された部分において、複数の紙シートが圧着されて接着している。
【0039】
図2は、本発明の別の実施形態における積層体の例を示す。図1と同様に複数の紙シートが積層して1つの積層体1を形成しており、長手方向に沿った方向に折線状の圧着領域2が形成されている。図2において、圧着領域2は不連続な圧着点3の集合体として形成されており、圧着点3はドット状の形状を有する。また、本実施形態において、圧着領域2は、圧着点3が2列に並んで構成されている。図2に示すとおり、本発明の複数の紙シートの積層体に形成される圧着領域は、ドット又はその他の形状が2列又はそれ以上の列が並んだ構成を有していてもよいが、圧着領域全体の幅、すなわち図2においては幅方向に並んだ2つのドット状の圧着点3の一方の端部から他方の端部までの長さは1〜10mmであることが好ましく、1.5〜7.5mmであることがより好ましく、2〜5mmであることが特に好ましい。
【0040】
図3は、本発明のさらに別の実施形態における積層体の例を示す。図1及び図2と同様に複数の紙シートが積層して1つの積層体1を形成しており、長手方向に沿った方向に波線状の圧着領域2が形成されている。図3において、圧着領域2は不連続な圧着点3の集合体として形成されており、圧着点3はスジ状の形状を有する。本実施形態において、圧着点3は幅方向に細長い形状を有しているが、長手方向に細長い形状を有していてもよい。或いは、スジ状の圧着点3は、幅方向及び長手方向のいずれの方向にも沿わない方向に細長い形状を有していてもよい。
【0041】
図2及び図3に示すとおり、圧着領域は不連続な圧着点の集合体であってもよく、圧着点同士の間隔は、0.1〜5.0mmが好ましく、0.2〜3.0mmがより好ましく、0.5〜1.5mmが特に好ましい。
【0042】
本発明の紙シートの積層体はシート状又はロール状であってもよいが、好ましくはロール状に巻き取られて使用される。ロール状に巻き取られた紙シートの積層体は、必要な長さを引き出して使用することができる。一実施形態において、本発明は、本発明の積層体からなる紙ロール製品にも関する。
【0043】
本発明は、
複数の紙シートの積層体あたり1つの圧着領域を形成する工程
を含む、複数の紙シートの積層体の製造方法にも関する。ここで、複数の紙シートの積層体の圧着領域は、紙シートの一方向の長さに対して101〜120%、好ましくは101〜115%、より好ましくは102〜110%の長さを有する。
【0044】
また、本発明は、
一枚の紙シートを形成する工程、
複数の前記紙シートを積層する工程、
積層した前記複数の紙シートを固着させて圧着領域を形成する工程、及び
1つの積層体あたり1つの前記圧着領域を有するように、固着させた前記複数の紙シートを切断する工程
を含む、複数の紙シートの積層体の製造方法にも関する。ここで、複数の紙シートの積層体の圧着領域は、紙シートの一方向の長さに対して101〜120%、好ましくは101〜115%、より好ましくは102〜110%の長さを有する。
【0045】
本発明の紙シートの積層体の製造方法においては、圧着領域は1つである。そのため、2つ以上の圧着領域を有する紙シートの積層体の製造方法と比較して、圧着領域を形成するための設備を減らすことができる。本発明の一態様において、圧着領域がエッジエンボスにより形成される場合、圧着領域を形成する工程はエッジエンボス加工を施すことにより行われる。エッジエンボス加工時には非常に大きな騒音と振動を生じるため、2つ以上の領域のエッジエンボスを形成する場合と比較して、1つのエッジエンボス加工においては騒音と振動を大きく低減することができる。また、エッジエンボス加工を施す際の装置の調整の手間も同時に低減することができる。
【0046】
エッジエンボス加工は公知の方法を使用して行うことができ、例えば圧着領域を形成するための凹凸が形成されたエンボスローラと平滑なローラとの間に複数の紙シートを挿入し、これら2つのローラを押し付けて複数の紙シートを固着させることによって圧着領域を形成することができる。
【0047】
本発明の積層体の製造方法において、複数の紙シートの積層体は、1つの積層体あたり1つの前記圧着領域を有するように、所定の幅に切断される。例えばトイレットペーパーの場合、幅は105mm〜120mmであることが好ましく、105mm〜114mmであることがより好ましい。なお、JIS規格に適合させる場合は幅が114mmと定められているため、巻き取られた広幅の紙ロールを114mmの幅に切断することが好ましい。
【実施例】
【0048】
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
【0049】
[騒音試験]
2プライのトイレットペーパーを製造する際に、エッジエンボス加工により1ロールあたり1つの圧着領域を形成する場合と、2つの圧着領域を形成する場合に発生する騒音レベルを測定した。騒音レベルとはJIS Z 8731に規定する方法で求められる値であり、単位はデシベル(dB)である。エッジエンボス装置から60cmほど離れた位置に測定器を設置し、それぞれの場合においてエッジエンボス加工時における騒音レベルの測定値を記録した。測定は40秒間行い、その間の最大値をそれぞれの場合における騒音レベルとした。結果を振動試験の結果と合わせて以下の表1に示す。
【0050】
[振動試験]
2プライのトイレットペーパーを製造する際に、エッジエンボス加工により1ロールあたり1つの圧着領域を形成する場合と、2つの圧着領域を形成する場合に発生する振動レベルを測定した。エッジエンボス装置から60cmほど離れた位置に測定器を設置し、それぞれの場合においてエッジエンボス加工時における振動レベルの測定値を記録した。また、振動レベルの大きさは気象庁の震度階級として表した。測定は50秒間行い、その間の最大値をそれぞれの場合における振動レベル(震度相当)とした。結果を騒音試験の結果と合わせて以下の表1に示す。
【0051】
【表1】
【0052】
表1の結果から、圧着領域を1つのみ形成する場合には、圧着領域を2つ形成する場合と比較して、騒音レベル及び振動レベルを大きく低減することが可能であることが分かった。
【0053】
[水解性試験]
水解性試験は、試験片の投入まではJIS P 4501で規定する、ほぐれやすさの試験に準拠して行った。すなわち、20℃±5℃の水300mLを入れた300mLのビーカーをマグネチックスターラーに載せ、回転子の回転数を600±10回転/分になるように調整した。その中に一辺が114±2mm角のトイレットペーパーの試験片を投入し、ストップウォッチを押した。その後、投入した試験片の繊維が完全に分解することを目視で確認し、0.1秒単位で記録した。試験は試験片ごとに30回繰り返し、その平均値を求めた。
【0054】
(実施例)
積層体として、エッジエンボス加工により1ロールあたり1つの圧着領域を形成した2プライのトイレットペーパーを使用して、上記水解性試験を行った。使用した積層体の圧着領域は、幅が2mmのS字状の形状を有しており、ドット状の圧着点の集合体であった。また、圧着領域の長さは、その一端の円形の円周方向の長さに対して108%であった。水解性試験の結果、試験片がほぐれるまでにかかった時間は15.8秒であった。
【0055】
(比較例)
積層体として、1ロールあたり2つの圧着領域を有する2プライのトイレットペーパーを使用した以外は、実施例1と同様の積層体の試験片を使用して水解性試験を行った。水解性試験の結果、試験片がほぐれるまでにかかった時間は17.5秒であった。
【0056】
また、実施例と比較例のトイレットペーパーの外観を比較した結果、比較例のトイレットペーパーではエッジエンボス加工による圧着領域が目立ち、また、エンボス加工によるふくらみを容易に確認することができた。これに対し、実施例のトイレットペーパーでは、トイレットペーパーを巻いた場合にエンボス加工による圧着領域の重なる点が少なくなるため、エッジエンボス加工による圧着領域は目立ちにくく、ふくらみもほとんど確認することができなかった。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明の複数の紙シートの積層体は、トイレットペーパー及びペーパータオルなどのロール状で使用される積層体として好適に用いることができる。また、その優れた特性により、外観上の変化がないにもかかわらず、切断用のミシン目がずれることなく、積層体を容易かつきれいに切ることができる。さらに、トイレットペーパーとして使用する場合には、水解性に優れ、紙詰まりを引き起こすことがない。
【0058】
また、本発明の複数の紙シートの積層体の製造方法は、トイレットペーパー及びペーパータオルなどのロール状で使用される積層体の製造方法として好適に用いることができる。また、製造時に特にエンボス加工で問題となる騒音や振動を低減することができる。
【符号の説明】
【0059】
1 積層体
2 圧着領域
3 圧着点
図1
図2
図3