(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
通常、業務用車両には、種々の工具類や計測器などが多数積載されている。また、一般に保安帽のための専用の積載位置は定められていない。このため、保安帽は、工具類の隙間や工具収納箱の上などに積載されることが多々ある。この場合、車両運転時の振動によって保安帽が揺れ動いたり転がったりすることから、工具類と衝突して保安帽にキズが入る、或いは破損することがあった。とりわけ、防災面は強度的に弱いので、破損が多く発生する。また、新型の保安帽では、合成樹脂製の透明鍔部も強度的な弱点部となり、破損の可能性が高い部分となる。
【0005】
上記の破損を抑止するために、保安帽を市販されているファスナー付きのヘルメットバッグに収容させることも考えられる。しかし、当該バッグへの保安帽の出し入れに手間を要することから、その使用が敬遠されることが想定される。また、保安帽をバッグに収容しただけで、その積載態様が従前と同じく工具類の隙間等であれば、防災面の破損の可能性をさほど低減することにはならない。
【0006】
本発明は上記の点に鑑みて為されたものであって、車両内で保安帽を破損等の怖れなく安定して保管でき、しかも保安帽の出し入れをスムースに行うことができる保安帽収納袋を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一局面に係る保安帽収納袋は、座部及び背部を備えた車両のシートに取り付けられる保安帽収納袋であって、保安帽を収納する袋部と、この袋部を前記シートの背部に結着する結着具とを含み、前記袋部は、前記結着具によって前記シートに取り付けられた状態において、上方に開口した姿勢を取り、前記保安帽の出し入れが可能となるものであって、前記背部に沿う平板状の部分からなり、前記保安帽の出し入れの際に当該保安帽をガイドする基板部と、前記上方に開口する部分に、前記保安帽の出し入れを可能とする開口形状を維持する保形性を付与する開口板と、前記開口板の下方に配置され、前記袋部に収納された前記保安帽の下方部分を支持する底袋部と、
前記底袋部の下端に設けられ、前記保安帽を通過させることのない小開口と、を備えることを特徴とする。
また、本発明の他の局面に係る保安帽収納袋は、座部及び背部を備えた車両のシートに取り付けられる保安帽収納袋であって、保安帽を収納する袋部と、この袋部を前記シートの背部に結着する結着具とを含み、前記袋部は、前記結着具によって前記シートに取り付けられた状態において、上方に開口した姿勢を取り、前記保安帽の出し入れが可能となるものであって、前記背部に沿う平板状の部分からなり、前記保安帽の出し入れの際に当該保安帽をガイドする基板部と、前記上方に開口する部分に、前記保安帽の出し入れを可能とする開口形状を維持する保形性を付与する開口板と、前記開口板の下方に配置され、前記袋部に収納された前記保安帽の下方部分を支持する底袋部と、を備え、前記底袋部が吸水性を備える素材から形成されていることを特徴とする。
【0008】
この保安帽収納袋によれば、袋部の基板部がシートの背部にフィットする態様で、当該保安帽収納袋が結着具によってシートに取り付けられる。このような保安帽収納袋に保安帽を収納させるようにすることで、車両での移動中における保安帽の独立した積載箇所が確保され、且つ、車両内の他の部材と保安帽との衝突が生じないようにすることができる。従って、保安帽の破損を防止することができる。そして、前記取り付け状態において、開口板にて付与される保形性によって、上方の開口部分はその開口形状が維持される。このため、使用者は、前記開口部分の開閉操作を行うことなく、保安帽を袋部に対して出し入れすることができる。また、前記出し入れの際には平板状の前記基板部がガイドの役目を果たす。従って、使用者はストレスなく確実且つスムースに保安帽の出し入れを行うことができる。さらに、前記袋部に収納された保安帽は底袋部によって支持されるので、保安帽を安定的に保管した状態を形成することができ、防災面や鍔部の破損を防止することができる。
【0009】
上記の保安帽収納袋において、前記基板部は、前記袋部が前記シートに取り付けられた状態において上下方向に延在する一対の側辺を備え、前記開口板は、前記基板部の上端付近において、前記一対の側辺から当該基板部に対して膨出するように延び出すU字型の形状を有し、前記基板部の上端部分とトンネル型の開口を形成するものであり、前記底袋部は、前記基板部の少なくとも下方部分において、前記一対の側辺から当該基板部に対して膨出し、前記トンネル型の開口の部分の下方を実質的に塞ぐ態様とすることができる。
【0010】
一般に、保安帽の帽子本体部分は半球状の形状を有している。上記の保安帽収納袋によれば、帽子本体部分の湾曲した頂部を前記開口板のU字型の谷形状に沿わせると共に、帽子本体部分の下縁部を前記基板部に沿わせる態様で、保安帽の前記袋部への出し入れを行わせることができる。また、保安帽が前記袋部に収容された状態では、当該保安帽の下方部分を前記底袋部で支持し、上方部分を前記開口板で支持するという保管態様を実現することができる。従って、一層保安帽の出し入れをスムースとし、また保安帽の保管状態の安定性を向上させることができる。
【0011】
上記の保安帽収納袋において、前記開口板は、前記基板部に対して先下がりに傾斜した状態で、前記基板部から膨出していることが望ましい。
【0012】
この保安帽収納袋によれば、前記開口板が先下がりに傾斜している分だけ、斜め方向から保安帽の出し入れを行うことが可能となる。このため、前記開口板が基板部に対して水平に膨出している場合に比較して、保安帽の出し入れを一層容易にすることができる。
【0013】
上記の保安帽収納袋において、前記開口板は、前記袋部に収納された前記保安帽に対して軽押圧する形状を有することが望ましい。
【0014】
この保安帽収納袋によれば、前記袋部に収納された保安帽を、前記開口板で軽く押さえ付けた状態とすることができる。従って、保安帽が前記袋部内で揺動せず、安定的に収納された状態とすることができる。
【0015】
上記の保安帽収納袋において、前記底袋部の下端に設けられ、前記保安帽を通過させることのない小開口をさらに備えることが望ましい。
【0016】
この保安帽収納袋によれば、前記小開口を通して、前記袋部内からゴミや異物を逃がすことができる。従って、前記袋部内を清浄に保つことができ、また異物等との接触によって防災面が損傷といった不具合を未然に防止することができる。
【0017】
上記の保安帽収納袋において、前記底袋部が吸水性を備える素材から形成されていることが望ましい。
【0018】
この保安帽収納袋によれば、保安帽が水濡れしている状態で袋部内に収納された場合に、前記底袋部によって水分を吸収させることができ、車両内に水滴が滴下しないようにすることができる。
【0019】
上記の保安帽収納袋において、前記基板部は、前記一対の側辺間の間隔が上端部分よりも下端部分の方が狭くなるようなテーパ形状を有していることが望ましい。
【0020】
この保安帽収納袋によれば、鍔部を下方にして保安帽が前記袋部へ収納されること想定した場合に、前記基板部が半球状の保安帽の形状に沿う形状となる。従って、前記袋部へ収納された保安帽が遊動し難くなり、また当該保安帽の取り出しも一層スムースにすることができる。
【0021】
上記の保安帽収納袋において、前記結着具は、前記シートの背部を用いて締結部を形成することが可能なベルトを備えることが望ましい。
【0022】
この保安帽収納袋によれば、前記ベルトを用いて、前記シートの背部の座部に向く側、或いはその背面側に前記袋部を結着することが可能となる。従って、前記袋部の据え付け箇所の自由度を高めることができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、車両内で保安帽を破損等の怖れなく安定して保管でき、しかも保安帽の出し入れをスムースに行うことができる保安帽収納袋を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面に基づいて、本発明の実施形態に係る保安帽収納袋を詳細に説明する。先ずは、
図1を参照して、前記保安帽収納袋に収納されるが適用される保安帽について説明する。ここでの保安帽は、例えば電気事業者の技術サービス員等の使用者が、業務用車両等で移動しながら、様々な現場に出向いて業務を遂行する際に、安全確保のために自身の頭部に装着する保安帽を想定している。
【0026】
図1(A)は、一般的な防災面付きの保安帽1Aを示す斜視図である。保安帽1Aは、帽子本体部分11、防災面12及び上部カバー13を含む。帽子本体部分11は、保安帽1Aが使用者に装着された状態において、当該使用者の頭頂部を覆う半球状の部分であり、剛性の高い樹脂などで形成された部材からなる。防災面12は、視認性を確保しつつ使用者の顔面を保護するための、例えばポリカーボネートで形成された透明で半円筒状に湾曲した板状部材である。
【0027】
上部カバー13は、例えば合成樹脂などにより形成され、防災面12の上端面を保持する半環状の部材である。上部カバー13における半環状の両端部には、当該上部カバー13を帽子本体部分11の底面11B付近に回動自在に連結する回動連結部131が備えられている。すなわち、保安帽1Aは、上部カバー13で保持された防災面12が、帽子本体部分11の外表面に沿って、その底面11Bから頂面11Tの方向へ回動可能なように帽子本体部分11に外付けされた保安帽である。
【0028】
図1(B)は、防災面内蔵型の保安帽1Bの一例を示す斜視図である。保安帽1Bは、帽子本体部分14、防災面15及び透明鍔部16を含む。帽子本体部分14は頭頂部を覆う半球状の部分であり、防災面15は視認性を確保しつつ使用者の顔面を保護する部材である。上記の保安帽1Aと相違する点は、防災面15が帽子本体部分14の内側に収容される点である。透明鍔部16は、例えばポリカーボネートで形成された透明な部材であり、使用者の斜め上方の視認性を確保するべく、帽子本体部分14の前方に取り付けられている。
【0029】
上述の保安帽1A、1Bは、使用者が現場に向かう際には業務用車両の適所に積載され、現場において当該作業者の頭部に装着される。その現場での業務を終えると、作業者は保安帽1A、1Bを外し、これを業務用車両の適所に積載し、次の現場へ移動する、という作業ルーチンが繰り返される。
【0030】
このような作業ルーチンにおいて、保安帽1A、1Bに破損が生じることがある。破損が生じ易いのは、保安帽1A、1Bの車載中に車両にブレーキングや悪路走行により大きな振動が発生したり、或いはコーナリング等によって大きな揺動が発生したりする際である。前記振動や揺動が発生すると、保安帽1A、1Bも揺動乃至は転動するので、これにより車両内の物品工具類との衝突が発生する。衝突時の衝撃が大きいと、保安帽1A、1Bを破損させることがある。また、作業者が保安帽1A、1Bの着脱を行う際にも破損が生じがちである。例えば、保安帽1A、1Bの車載姿勢が不安定な場合等には、装着のための掴み出しの際に作業者が保安帽1A、1Bを落下させてしまい、取り外し後の車載の際に載置箇所が適当でない場合等には同様に落下させてしまうことがある。このような落下の際の衝撃によっても、保安帽1A、1Bを破損し得る。
【0031】
破損箇所として多いのは、衝撃への耐性が想定されている帽子本体部分11、14以外の部分である。保安帽1Aの場合は、比較的耐性が脆い防災面12や上部カバー13に破損が生じ易い。また、防災面内蔵型保安帽1Bの場合は、防災面15の他、透明鍔部16も破損が生じ易い。防災面12を外付けしている保安帽1Aでは、防災面12や上部カバー13が破損した場合、これを交換することが可能であるが、防災面内蔵型保安帽1Bでは交換は容易ではない。このため、防災面15や透明鍔部16に破損が生じると、使用者は新たな保安帽1Bを取得するために、わざわざ現場からサービスセンター等に戻るという工数が発生することすらある。
【0032】
以上のような現状より、車両での移動中における保安帽1A、1Bの独立且つ安定した積載箇所を確保すること、その積載位置からの保安帽1A、1Bの取り出し及び積載位置への戻し置きが容易であること、並びに、振動や揺動が不可避的に生じる車両の走行時に当該車両内の他の部材と保安帽1A、1Bとの衝突が生じないこと、などが、保安帽1A、1Bの車両内における保管態様として望まれるところである。本発明に係る保安帽収納袋は、このような要請に立脚して案出されたものである。以下、本発明の保安帽収納袋の一つの具体例について説明する。
【0033】
図2は、本発明の実施形態に係る保安帽収納袋2の正面図、
図3は、保安帽収納袋2の側面図である。これらの図には、上下、左右、前後の方向表示を付している。この方向表示は説明の便宜のためであり、保安帽収納袋2の態様を何ら限定的にするものではない。但し、保安帽収納袋2の車両のシートへの装着態様において、上下方向が反転することはない。また、
図4及び
図5は、保安帽収納袋2の斜視図、
図6は、保安帽収納袋2の上面図である。
図4〜
図6においては、保安帽収納袋2が取り付けられる車両のシート5が仮想線で描かれている。
【0034】
保安帽収納袋2は、座部及び背部を備えた車両のシート5に取り付けられるものであって、上述の保安帽1A、1Bを収納する袋部3と、この袋部3をシート5の背部に結着する結着具4とを備えている。後記で詳述するが、袋部3は、結着具4によってシート5の背部に取り付けられた状態において、上方に開口した姿勢を取り、保安帽1A、1Bの速やかな出し入れが可能となるものである。
【0035】
袋部3は、基板部31、開口板32及び底袋部33を備えている。基板部31は、シート5の背部の前面側(座部と座席面を形成する側)若しくはその背面側に沿うよう、平板状の形状を有する部分である。この基板部31から開口板32及び底袋部33が前方に膨出することで、上方に向けて開口する開口部3Hを備えた袋体を形成している。開口板32は、前記上方に開口する部分に配置され、開口部3Hの開口形状を維持する保形性を付与する役目を果たす。底袋部33は、開口板32の下方に配置され、袋部3の底部(下部)を形成する部分である。
【0036】
基板部31は、正面視で大略的に矩形の平板であり、袋部3がシート5の背部に取り付けられた状態において上下方向に延在する左側辺31L及び右側辺31R(一対の側辺)と、左側辺31L及び右側辺31Rの上端間に水平方向に延在する上辺31Tと、下端間に水平方向に延在する底辺31Bと、を備える。左側辺31Lと右側辺31Rとは、上辺31T付近において平行な側辺であるが、上下方向の中央から底辺31Bに向けて互いに接近する方向に緩く傾いたテーパ部311とされている。すなわち、基板部31は、左側辺31Lと右側辺31Rとの間の間隔が、上端部分よりも下端部分の方が狭くなるようなテーパ形状を有している。
【0037】
基板部31は、開口板32及び底袋部33の保持ベースとなるだけでなく、保安帽収納袋2がシート5へ装着された状態において、背部とほぼ密着した状態となり、保安帽1A、1Bが開口部3Hを通して出し入れされる際に当該保安帽1A、1Bをガイドする機能を果たす。基板部31は、上記の機能を果たし得る平板であれば、各種の材料で作成された平板を用いることができる。上記の機能の良好に発揮させるためには、背部に対するフィット性を確保できる可撓性、前記ガイド時における保安帽1A、1Bの衝突や摺接に対する耐性、すなわち所定の引っ張り強度や破断強度等を有することが望ましい。また、基板部31は、シート5への装着及び取り外し時の取り扱いを容易とするため軽量であることが望ましく、さらには保安帽1A、1Bが雨水に濡れることも多々あることから耐水性に優れることが望ましい。以上の観点から、好ましい基板部31として、樹脂或いは発泡樹脂プレートを例示することができる。
【0038】
開口板32は、基板部31の上端付近において、左側辺31L及び右側辺31Rから当該基板部31に対して前方に膨出するように延び出す略U字型の形状を有する板状部材である。すなわち、U字型に湾曲された平板である開口板32の左端縁32Lが左側辺31Lの上端付近に、右端縁32Rが右側辺31Rの上端付近に各々繋がっている。これにより開口板32は、
図6に示すように、基板部31の上端部分とトンネル型の開口部3Hを形成している。開口板32の最も膨出した部分であるU字頂部32Tが、基板部31に対して最も離間した部分となっている。
【0039】
開口板32は、開口部3Hを通した保安帽1A、1Bの出し入れを常時可能とするために、開口部3Hの開口形状を維持(保形)する役目を果たす。開口部3Hに保形性が無い場合、例えば芯材の無い布地だけで開口端が形成されている場合、使用者は保安帽1A、1Bの出し入れの度に袋部3の開口を確保する必要がある。しかし、開口板32によって袋部3の開口形状を常時維持することができるので、使用者はストレスなく保安帽1A、1Bの出し入れを行うことができる。とりわけ、保安帽1A、1Bの帽子本体部分11、14が半球状の形状を有していることに鑑み、開口部3Hも当該形状にマッチするようトンネル型の形状を有しているので、保安帽1A、1Bの出し入れを一層スムースに行わせることができる。
【0040】
開口板32は、上述の保形性を担保できる平板部材であれば、特に材料等に制限はない。但し、基板部31と同様に、保安帽1A、1Bの衝突等への耐性を有すると共に軽量の部材であることが望ましく、例えばU字型に湾曲成形された樹脂或いは発泡樹脂プレートを用いることができる。また、袋部3に収納された保安帽1Aの頂面11Tを挟み込むように保持して軽押圧できるよう、開口板32は、U字の開口を閉じる方向にバネ性を有することが望ましい。
【0041】
図3に示すように、開口板32は、基板部31に対して前方向に先下がりに傾斜した状態で、基板部31から膨出している。ここでは、基板部31と直交する線分に対する傾き角θが30°程度である例を示している。これにより、開口部3Hの指向方向も上下方向に対して傾いている。また、U字頂部32Tは、開口板32の上縁部において、最も下方に位置している。
【0042】
この傾き角θが存在しない場合、つまり開口板32が基板部31に対して水平に膨出している場合、開口部3Hは真上を指向することになる。この場合、使用者は、真上方向において保安帽1A、1Bの出し入れを行うこととなり、当該出し入れ操作に窮屈感を覚えることが多くなる。これに対し、本実施形態のように開口板32を先下がりに傾斜させることで、斜め方向から保安帽1A、1Bの出し入れを行なわせることができる。従って、使用者は、開口部3Hを通した保安帽1A、1Bの出し入れを一層容易に実行することができる。傾き角θは、15°〜40°程度の範囲から選択することが望ましい。
【0043】
底袋部33は、袋部3に収納された保安帽1A、1Bの下方部分を支持する役目を果たす。底袋部33は、基板部31の左側辺31L及び右側辺31Rの中央から下端部分(少なくとも下方部分)において、左側辺31L及び右側辺31Rから基板部31に対して前方に膨出している。より詳しくは、底袋部33は、左側辺31L及び右側辺31Rのテーパ部311が形成されている部分に両側端縁が繋がり、前方に向けて延び出している。一対のテーパ部311間が下方に向けて幅狭になることに伴い、底袋部33の左右幅も下方に向かうに連れて幅狭となっている。
【0044】
また、底袋部33は、開口板32の下部にも繋がり、トンネル型の開口部3Hの下方を実質的に塞いでいる。「実質的に塞ぐ」とは、保安帽1A、1Bの下方部分を安定的に支持できる限りにおいて小孔等が存在していても良いことを意味する。本実施形態では、後述の小開口34が底袋部33の下端に開口されている例を示している。
【0045】
底袋部33は、保安帽1A、1Bを支持することができる強度を備えていれば、特にその材料材等に制限はない。好ましい材料は、保安帽1Aの防災面12を傷付ける恐れがなく、保安帽1A、1Bとの接触或いは車両内に積載される工具と接触による摩擦や磨耗に強い材料である。例えば、底袋部33を柔軟性に乏しい部材や、表面の平滑性が乏しい部材で形成した場合、防災面12に擦り傷や引っ掻き傷などを発生させてしまう場合がある。また、摩擦や磨耗で底袋部33に破れなどが生じると、保安帽1A、1Bを落下させてしまうことがある。例えば、所定の強度を有する合成繊維の織布(布地)は、上述の不具合が生じ難く、底袋部33として好ましい材料である。この場合、耐熱性、耐水性に優れ、色落ち等が生じない布地を用いることがより好ましい。
【0046】
さらに、底袋部33が吸水性を備える素材から形成されていることが望ましい。上述の通り、保安帽1A、1Bは水濡れする場合があり、そのまま車両内に持ち込まれることがある。吸水性を備えた底袋部33とすることで、保安帽1A、1Bが水濡れしている状態で袋部3内に収納された場合でも、当該底袋部33によって水分を吸収させることができる。従って、車両内に水滴が滴下しないようにすることができる。
【0047】
底袋部33の下端には、小開口34(
図2、
図5参照)が備えられている。小開口34は、底袋部33の下端縁を基板部31に繋がないようにすることによって形成されたスリット状の開口であって、保安帽1A、1Bを通過させることのない開口である。保安帽収納袋2は、上方に向けて開口する大きな開口部3Hを有するので、袋部3内にはゴミや異物が進入し易い。或いは、保安帽1A、1Bに付着した異物類が袋部3内において剥がれて、残存することも生じ得る。この場合、異物類との接触によって防災面12が損傷を受ける場合がある。しかし、本実施形態によれば、小開口34を通して袋部3内からゴミや異物を逃がすことができるので、袋部3内を清浄に保つことができ、また防災面12の損傷を未然に防止することができる。
【0048】
本実施形態では、基板部31及び開口板32が、カバーの布地で覆われている。すなわち、基板部31及び開口板32を構成するプレートが芯材とし、その上が布地で覆われている。この布地は、底袋部33を構成している布地と同じ布地である。開口板32を覆っている布地と、底袋部33とは一体に繋がっている。開口板32の上縁部3Aは、より摩擦や磨耗に対する耐性が高い縁部用の織布の縫製によって補強されている。なお、上縁部3A内に補強用のワイヤー類を内蔵させるようにしても良い。基板部31の左側辺31L、右側辺31R、上辺31T及び底辺31Bも、前記縁部用の織布の縫製によって補強されている。開口板32及び底袋部33の布地の左右の側端縁は、それぞれ左側辺31L、右側辺31Rの前記縁部用の織布によって基板部31と一体化するよう縫製されている。基板部31及び開口板32は、必ずしも布地で覆われた構成としなくても良いが、プレートのエッジがシート5を損傷したり、使用者にケガを負わせたり、さらには保安帽1A、1Bにキズを与えたりしないようにするためには、布地で覆うことが望ましい。
【0049】
結着具4は、袋部3をシート5の背部にワンタッチで結着させるためのバックル付きのベルトであって、
図2に示すように、基板部31の上方側に位置する上ベルト41と、下方側に位置する下ベルト42とを備えている。上ベルト41は、基板部31の左側辺31Lの上端付近から左方に延び出す上側左ベルト41Lと、右側辺31Rの上端付近から右方に延び出す上側右ベルト41Rとからなる。下ベルト42は、左側辺31Lの下端付近から左方に延び出す下側左ベルト42Lと、右側辺31Rの下端付近から右方に延び出す下側右ベルト42Rとからなる。
【0050】
上側、下側左ベルト41L、42Lの延出端には各々雄バックル43が、上側、下側右ベルト41R、42Rの延出端には各々雌バックル44が備えられている。これら雄バックル43と雌バックル44とが結合されることで、
図4〜
図6に示すように、上ベルト41及び下ベルト42はループ状となり、シート5の背部に袋部3を締結する締結部を形成することが可能となる。なお、前記背部に対する締結力は、上側、下側左ベルト41L、42Lのベルト長の調整によって加減することができる。
【0051】
図7(A)、(B)は、保安帽収納袋2に保安帽1Aが収納される様子を示す図である。保安帽収納袋2は、開口部3Hが上方を向くように、シート5の背部に結着具4によって装着されている。開口部3Hは、開口板32の先下がり傾斜によって斜め上方向に向けて開口し、且つ、U字型を有する開口板32の保形性によってトンネル型の形状を呈している。
【0052】
図7(A)に示すように、保安帽収納袋2への収納時において保安帽1Aは、防災面12が頂面11T側に回り込んだ状態とされる(防災面内蔵型の保安帽1Bの場合は、防災面15が帽子本体部分14内に収容された状態とされる。)。そして、帽子本体部分11の底面11Bが基板部31と対向し、頂面11TがU字頂部32Tを向き、帽子本体部分11の鍔部が下方を向く姿勢で、開口部3Hを通して袋部3内に挿入される。上述の保安帽1Aの姿勢は、使用者が図略の顎紐を摘んで保安帽1Aを持ち上げれば、自ずとそのようになる姿勢でもある。
【0053】
袋部3への挿入の際、帽子本体部分11の底面11Bが基板部31と摺接する。既述の通り、基板部31は、所定の強度を有する平板である。このため、底面11Bが基板部31によってガイドされ、保安帽1Aは重力作用も相俟って袋部3内に滑り込むように収まる。この際、保安帽1Aの頂面11T側もまた、トンネル型の開口部3Hが作るU字頂部32T付近の湾曲形状によって、つかえることなくスムースに袋部3内に進入できる。従って使用者は、殆ど保安帽1Aを袋部3に投入するような動作にて、ストレスなく保安帽1Aを袋部3内に収納させることができる。
【0054】
図7(B)は、保安帽1Aが保安帽収納袋2へ収納された状態を示している。収納状態においては、帽子本体部分11の鍔部が底袋部33で支持され、後頭部が開口部3Hにおいて表出している。また、底面11Bは基板部31と当接し、頂面11T側に位置する防災面12は、底袋部33及び開口板32と当接する。
【0055】
図8は、保安帽収納袋2への保安帽1Aの収納状態を示す上面図である。帽子本体部分11の底面11Bが基板部31に接面していることに加え、
図6との比較において明らかな通り、防災面12の形状に沿うように開口板32のU字形状が拡張変形している。この開口板32の変形は、当該開口板32が防災面12を軽押圧していることを示す。つまり、開口板32の弾性変形に伴うバネ力によって、防災面12が軽くグリップされている状態となる。なお、防災面内蔵型の保安帽1Bの場合は、帽子本体部分14の外周面が開口板32によって軽押圧されることになる。
【0056】
上記の底面11Bの基板部31への接面、前記鍔部の底袋部33での支持、及び防災面12の開口板32による軽押圧によって、保安帽1Aは袋部3内において固定された状態となる。つまり、保安帽1Aは袋部3内で遊動せず、安定的に保持された状態となる。また、防災面12を含めて保安帽1Aの周囲が袋部3で囲われた状態となるので、保安帽1A(とりわけ防災面12)を外傷から保護することができる。さらに、帽子本体部分11の後頭部が開口部3Hにおいて表出する状態で袋部3に収納されているので、保安帽1Aの取り出し時に使用者は、帽子本体部分11の後端付近を摘むことで、直ちに保安帽1Aを袋部3から取り出すことができる。
【0057】
図9及び
図10は、自動車のシート5に保安帽収納袋2が取り付けられている様子を示す斜視図である。シート5は、背部51、座部52及びヘッドレスト53を含む。
図9は、背部51の前面側、つまり背部51において座部52と座席面を形成する面に保安帽収納袋2が取り付けられ、保安帽1Aが収納されている様子を示している。上ベルト41は、背部51の上端部とヘッドレスト53との境界付近に締結され、下ベルト42は、背部51の下端部付近に締結されている。これにより、基板部31が背部51の前面側に沿い、袋部3が座部52の上方に浮くように、保安帽収納袋2がシート5に取り付けられている。また、基板部31は、背部51のリクライニングに沿って後ろ側傾いた状態となっているが、先下がりの開口板32で区画されている開口部3Hは、やや前下がりの状態となっている。従って、開口部3Hへのアクセス性は良好である。
【0058】
図10は、背部51の背面側に保安帽収納袋2が取り付けられ、袋部3に対して保安帽1Aが出し入れされている様子を示している。基板部31が背部51の背面に沿った状態で、上ベルト41が背部51の上端部付近、下ベルト42が背部51の下端部付近に締結されている。開口部3Hは、ヘッドレスト53の後面下方において、後ろ下がりの状態で開口している。使用者は、このような開口部3Hを通して、ストレスなく袋部3に対して保安帽1Aの出し入れを行うことができる。このように、結着具4は、シート5の背部51を用いて、背部51の前面側又は背面側のいずれにも袋部3を取り付けることができる。
【0059】
以上説明した本実施形態に係る保安帽収納袋2によれば、袋部3の基板部31が車両のシートの背部にフィットする態様で、保安帽収納袋2が結着具4によってシートに取り付けられる。このような保安帽収納袋2に保安帽1A、1Bを収納させるようにすることで、車両での移動中における保安帽1A、1Bの独立した積載箇所が確保され、且つ、車両内の他の部材と保安帽1A、1Bとの衝突が生じないようにすることができる。従って、保安帽1A、1Bの破損、とりわけ防災面12の損傷を防止することができる。
【0060】
そして、保安帽収納袋2がシートに取り付けられた状態において、開口板32にて付与される保形性によって、上方に開口する開口部3Hは、その開口形状が維持される。このため、使用者は、保安帽収納袋2の開口部分の開閉操作を行うことなく、保安帽1A、1Bを袋部3に対して出し入れすることができる。また、前記出し入れの際には平板状の基板部31がガイドの役目を果たす。従って、使用者はストレスなく確実且つスムースに保安帽1A、1Bの出し入れを行うことができる。さらに、袋部3に収納された保安帽1A、1Bは底袋部33によって支持されるので、保安帽1A、1Bを安定的に保管した状態を形成することができ、防災面12や透明鍔部16の破損を防止することができる。
【0061】
また、本実施形態の保安帽収納袋2によれば、帽子本体部分11の湾曲した頂面11Tを開口板32のU字型の谷形状に沿わせると共に、帽子本体部分11、14の底面11Bを基板部31に沿わせる態様で、保安帽1A、1Bの袋部3への出し入れを行わせることができる。また、保安帽1A、1Bが袋部3に収容された状態では、当該保安帽1A、1Bの下方部分(鍔部)を底袋部33で支持し、上方部分を開口板32で支持するという保管態様を実現することができる。従って、一層保安帽1A、1Bの出し入れをスムースとし、また保安帽1A、1Bの保管状態の安定性を向上させることができる。
【0062】
さらに、基板部31は、左側辺31Lと右側辺31Rとの間の間隔が上端部分よりも下端部分の方が狭くするテーパ部311を有している。このため、鍔部を下方にして保安帽1A、1Bが袋部3へ収納されること想定した場合に、基板部31並びに底袋部33が、半球状の保安帽1A、1Bの形状に沿う形状となる。従って、袋部3へ収納された保安帽1A、1Bが遊動し難くなり、また当該保安帽1A、1Bの取り出しも一層スムースにすることができる。