(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【図面の簡単な説明】
【0016】
本発明は、添付図面によってさらに説明される。様々な特徴が必ずしも一定の縮尺で描かれているわけではないことが強調される。
【
図1】
図1は、無機層(3)が
図1a〜
図1dで異なる位置に配置された、基板上の封止構造を示す。
図1e及び1fは、
図1aの配置の好ましい実施態様であって、
図1eでは偏光層の下に追加の接着層を、そして
図1fでは偏光層の下に配向層を有している。
【
図2】
図2は、偏光フィルム(6)が基板として利用される、封止構造を示す。無機層(3)は、
図2a〜2cで異なる位置に配置される。
【
図3】
図3は、OLEDデバイス上の封止構造の実施態様を示す。無機層(3)は、
図3a〜3cで異なる位置に配置される。
図3dは、偏光層の下に追加の配向層を有する、
図3aの配置の好ましい実施態様である。
【
図4】
図4は、OLEDデバイスに適用された追加の基板を含む封止構造の実施態様を示す。無機層(3)は、
図4a〜4dで異なる位置に配置される。
【
図5】
図5は、
図2の封止構造をOLEDマトリックスに適用することによって生じうる、OLEDマトリックス上の封止構造の実施態様を示す。
【
図6】
図6は、1つ以上の層が横方向に構築され、そして側面漏出を防ぐために全構造が無機層で覆われている、実施態様の一例を示す。
【
図7】
図7は、81個のカルシウム正方形を含む、Ca試験基板上の封止構造の写真を示す。
【
図8】
図8は、60℃及び相対湿度90%で885時間保存後の、Ca試験基板上の3種の異なる封止構造の写真を示す。
【0017】
発明の詳細な説明
本発明の第1の態様により、酸素及び水分に対する充分なバリア性並びに反射防止性を提供する、OLEDディスプレイ用の封止構造が提供される。
【0018】
本発明の封止構造は、直線偏光層、無機層、光配向物質を含む層及びLCP層を含むが、ここで、LCP層における液晶配向は、光配向物質を含む層との接触に起因して生み出されている。
【0019】
光配向物質を含む層は、バリアスタック内の有機層の機能を有する。例えば、ピンホールの発生を低減する、平坦化層として役立つかもしれない。
【0020】
好ましくは、光配向物質を含む層の厚さは、100nmより大きく、更に好ましくは500nmより大きく、そして最も好ましくは5μmより大きい。
【0021】
反射防止性を組み入れた封止構造の全厚さは、好ましくは50μm未満、更に好ましくは20μm未満、そして最も好ましくは10μm未満である。
【0022】
好ましくは、本発明の封止構造において、無機層、光配向物質を含む層及びLCP層、並びにこれらの層の間の任意の層の全厚さは、60μm未満、更に好ましくは40μm未満、そして最も好ましくは30μm未満である。充分なバリア性を達成するために必要とされることがあり、そして上記の層の間にはない、追加の無機層及び/又は有機層は、無機層、光配向物質を含む層及びLCP層の全厚さの計算において考慮されない。
【0023】
誤解を避けるため、反射防止性を有する封止構造は、OLEDディスプレイ用であり、したがって、OLEDディスプレイ用の封止構造の一部であるとして上記した層は、アクティブOLED構造の一部ではない。特に、封止構造の無機層は、OLEDディスプレイの電極ではなく、OLED電極間の他のどの層も、本発明の封止構造の層と見なすべきではない。同様に、ガラス基板は、本発明の封止構造の無機層と見なすべきではない。
【0024】
本出願に関連して、「光配向可能な物質」は、配向光への露光により異方性を誘導することができる材料である。同様に、「光配向可能な層」は、配向光への露光により異方性を誘導することができる層である。更に、「光配向物質」及び「光配向層」という用語は、配向光への露光により配向されている、それぞれ光配向可能な物質及び光配向可能な層を指すために使用される。本発明では、誘導された異方性は、液晶材料に配向能力を提供するようなものでなければならない。「配向方向」という用語は、光配向層と接触している液晶が配向する方向を指すものとする。
【0025】
本出願に関連して、「配向光」という用語は、光配向可能な物質に異方性を誘導することができ、そして少なくとも部分的に直線偏光又は楕円偏光されているか、かつ/又は斜め方向から光配向可能な物質の表面に入射する光を意味するものとする。好ましくは、配向光は、5:1を超える偏光度で直線偏光される。配向光の波長、強度及びエネルギーは、光配向可能な物質の感光性に応じて選択される。典型的には、波長は、UV−A、UV−B及び/又はUV−C範囲あるいは可視範囲にある。好ましくは、配向光は、450nm未満の波長の光を含む。更に好ましくは、配向光は、420nm未満の波長の光を含む。
【0026】
配向光が直線偏光されているならば、配向光の偏光面は、配向光の伝搬方向と偏光方向とによって画定される平面を意味するものである。配向光が楕円偏光されている場合、偏光面は、光の伝搬方向と偏光楕円の長軸とによって画定される平面を意味するものである。
【0027】
光配向可能な物質を含む層は、任意の適切な方法によって適用することができる。適切なコーティング方法は、例えば、スピンコーティング、ブレードコーティング、ナイフコーティング、キスロールコーティング、キャストコーティング、スロットオリフィスコーティング、カレンダーコーティング、ダイコーティング、ディッピング、ブラッシング、バーキャスティング、ローラーコーティング、フローコーティング、ワイヤーコーティング、スプレーコーティング、ディップコーティング、旋回コーティング(whirler-coating)、カスケードコーティング、カーテンコーティング、エアーナイフコーティング、ギャップコーティング、ロータリースクリーン、リバースロールコーティング、グラビアコーティング、メータリングロッド(Meyerバー)コーティング、スロットダイ(押出)コーティング、ホットメルトコーティング、ローラーコーティング、フレキソコーティングである。適切な印刷方法には、シルクスクリーン印刷、フレキソ印刷のような凸版印刷、インクジェット印刷、直接グラビア印刷若しくはオフセットグラビア印刷のような凹版印刷、オフセット印刷のような平版印刷、又はスクリーン印刷のような孔版印刷が含まれる。
【0028】
好ましくは、光配向可能な物質を含む層は、ゲッター材料を含む。好ましくは、ゲッター材料は親水性であり、そして金属、金属酸化物、メタロイド、メタロイド酸化物、金属炭化物、メタロイド炭化物、金属ハロゲン化物、金属塩、金属過塩素酸塩、金属窒化物、メタロイド窒化物、金属酸素窒化物、メタロイド酸素窒化物、金属酸素ホウ化物又はメタロイド酸素ホウ化物粒子、ゼオライト、シリカゲル、活性アルミナ及び活性炭のいずれかを含む。好ましくは、ゲッター材料は、酸化物粒子、好ましくはアルカリ土類金属酸化物粒子、好ましくは酸化カルシウム(CaO)又は酸化バリウム(BaO)又は酸化マグネシウム(MgO)を含む。好ましくは、ゲッター材料はナノ粒子の形態である。ゲッター粒子のサイズは、1〜1000nmの間であろう。しかしながら、平均粒径は、300nm未満であることが好ましく、そして200nm未満であることが更に好ましい。更に、平均粒径は、100nm〜250nmの間であることが好ましく、そして150〜200nmの間であることが最も好ましい。
【0029】
本出願に関連して使用されるとき液晶ポリマー(LCP)材料とは、液晶モノマー及び/又は液晶オリゴマー及び/又は液晶ポリマー及び/又は架橋液晶を含む、液晶材料を意味するものとする。液晶材料が液晶モノマーを含む場合、そのようなモノマーは、典型的には、光配向物質との接触に起因してLCP材料中に異方性が生み出された後に、重合されうる。重合は、熱処理によって、又は好ましくはUV光を含む化学線に露光することによって開始されうる。LCP材料は、単一タイプの液晶化合物からなっていてよいが、追加の重合しうる化合物及び/又は重合しえない化合物を含んでいてもよく、そしてこの中で全ての化合物が液晶性を有する必要はない。更に、LCP材料は、添加剤、例えば、光開始剤あるいは等方性又は異方性の蛍光色素及び/又は非蛍光色素を含有してもよい。好ましくは、このLCP材料はゲッター材料を含む。好ましくは、このゲッター材料は親水性であり、そして金属、金属酸化物、メタロイド、メタロイド酸化物、金属炭化物、メタロイド炭化物、金属酸素窒化物、メタロイド酸素窒化物、金属ハロゲン化物、金属塩、過塩素酸金属、金属窒化物、メタロイド窒化物、金属酸素窒化物、メタロイド酸素窒化物、金属酸素ホウ化物又はメタロイド酸素ホウ化物粒子、ゼオライト、シリカゲル、活性アルミナ及び活性炭のいずれかを含む。好ましくは、ゲッター材料は、酸化物粒子、好ましくはアルカリ土類金属酸化物粒子、好ましくは酸化カルシウム(CaO)又は酸化バリウム(BaO)又は酸化マグネシウム(MgO)を含む。好ましくは、ゲッター材料はナノ粒子の形態である。ゲッター粒子のサイズは、1〜1000nmの間であろう。しかしながら、平均粒径は、300nm未満であることが好ましく、そして200nm未満であることが更に好ましい。更に、平均粒径は、100nm〜250nmの間であることが好ましく、そして150〜200nmの間であることが最も好ましい。
【0030】
光配向物質を含む層はまた、重合された配向LCP分子を含んでもよい。配向LCP分子の複屈折に起因して、光配向物質を含む層はまた、光学的位相差板としても作用する。好ましくは、光配向物質を含む層は、光の可視スペクトルの少なくとも1つの波長に対して1/4波長位相差板として作用する。後者の場合、光配向物質を含む層はまた、LCP層の機能を有しており、そしてこのことは、別個のLCP層が必要でないことを意味する。
【0031】
本出願に関連して、「重合しうる」及び「重合された」という用語は、それぞれ「架橋しうる」及び「架橋された」の意味を含むものとする。同様に、「重合」は「架橋」の意味を含むものとする。
【0032】
図1は、基板(2)を含む、本発明による封止構造の異なる実施態様を示す。この基板は、例えば、可撓性箔、好ましくはポリマー箔又は薄膜ガラスであってもよい。基板は、好ましくは光学的に等方性である。
図1aにおいて、無機層(3)は基板の上にあり、次に光配向可能な物質を含む層(4)が続くが、これが光配向され、そして重合された液晶層(5)の液晶を配向させるために使用されている。更に、液晶層の上には偏光層(6)が配置されている。
【0033】
図1b〜1dは、
図1aの実施態様の代替の実施態様であり、ここで
図1aの実施態様との唯一の相違点は、無機層(3)の位置である。
図1bの実施態様では、無機層は、液晶層と偏光層との間にある。
図1cにおいて、無機層は偏光層の上にあるが、これは液晶層の反対側を意味する。
図1dにおいて、無機層は、層(4)、(5)及び(6)に関して基板の反対側に配置されている。当然、
図1a〜1dの任意の組合せが可能であるが、このことは封止構造が、
図1a〜1dに示された位置に配置されてよい、複数の無機層を含んでもよいことを意味している。例えば、封止構造は、4つの無機層を含んでよいが、ここで、
図1aのように、1つの無機層は、基板(2)と光配向可能な物質を含む層(4)との間にあり;
図1bのように、第2の無機層は、液晶層(5)と偏光層(6)との間に配置されてよく;
図1cのように、第3の無機層は、偏光層(6)の上に配置されてよく;そして
図1dのように、第4の無機層は、基板(2)の下に位置してよい。好ましくは、
図1a、1c又は1dの実施態様の液晶層(5)と偏光層との間に、あるいは
図1bの実施態様の無機層(3)と偏光層との間に接着層が存在する。
【0034】
偏光層は、好ましくは、2つのポリマーフィルム、例えばTAC(トリアセテート)フィルムの間に挟むことができる、ポリビニルアルコールの層を含む偏光箔であってもよい。そのような偏光子は、ロールツーロールで製造され、そして
図1a、1c及び1dの実施態様のLCP層の上に、又は
図1bの無機層の上に積層されてもよい。しかしながら、それぞれLCP層と偏光子の間に、又は無機層と偏光子の間に追加の層、例えば、硬質コーティングが存在してもよく、このため偏光子は、必ずしもそれぞれLCP層又は無機層の上に積層されない。積層のために、接着層を偏光子シートと接触させることができる。
図1eは、接着層(9)がLCP層(5)と偏光子シート(6)との間にある、
図1aの実施態様に対応する一例を示す。
【0035】
好ましくは、コーティング可能な偏光子を偏光層(6)として使用する。コーティング可能な偏光子は、典型的には、ホスト材料に溶解されているカーボンナノチューブ又は二色性色素のような異方性吸収分子を含む。コーティング可能な偏光子の配向は、基板への適用中若しくは適用後に材料を剪断するか、又はコーティング可能な偏光子材料を、配向能を持つ表面(例えば、刷毛塗りされたか、光配向されたか、又は異方性表面構造を有する表面など)を有する基板に適用するなどの様々な方法により行うことができる。好ましくは、コーティング可能な偏光子材料は、重合しうる液晶及び二色性色素を含む。偏光層を生成するためには、光配向後に配向能を持つ表面を提供する、光配向可能な物質を含む追加の層を用い、そしてその上に重合しうる液晶及び二色性色素を含む組成物をコーティングすることが好ましい。
図1fは、光配向可能な物質を含む追加の層(8)が、コーティング可能な偏光材料から作られた偏光層と接触している、
図1aの実施態様に対応する一例を示す。好ましくは、コーティング可能な偏光材料はゲッター材料を含む。好ましくは、ゲッター材料は親水性であり、そして金属、金属酸化物、メタロイド、メタロイド酸化物、金属炭化物、メタロイド炭化物、金属ハロゲン化物、金属塩、金属過塩素酸塩、金属窒化物、メタロイド窒化物、金属酸素窒化物、メタロイド酸素窒化物、金属酸素ホウ化物又はメタロイド酸素ホウ化物粒子、ゼオライト、シリカゲル、活性アルミナ及び活性炭のいずれかを含む。好ましくは、ゲッター材料は、酸化物粒子、好ましくはアルカリ土類金属酸化物粒子、好ましくは酸化カルシウム(CaO)又は酸化バリウム(BaO)又は酸化マグネシウム(MgO)を含む。好ましくは、ゲッター材料はナノ粒子の形態である。ゲッター粒子のサイズは、1〜1000nmの間であろう。しかしながら、平均粒径は、300nm未満であることが好ましく、そして200nm未満であることが更に好ましい。更に、平均粒径は、100nm〜250nmの間であることが好ましく、そして150〜200nmの間であることが最も好ましい。
【0036】
コーティング可能な偏光子材料の吸収特性に応じて、標準的なシート偏光子よりも実質的に薄い、コーティングされた偏光子を作製することができる。好ましくは、コーティングされた偏光子の厚さは、10μm未満、更に好ましくは5μm未満、そして最も好ましくは2μm未満である。
【0037】
図2は、偏光層(6)が基板として使用される実施態様を示す。好ましくは、偏光層は、上記のような1つ以上のポリマーフィルムを含む可撓性シート偏光子である。
図2aでは、光配向可能な物質を含む層(4)が偏光層の上に配置され、続いて重合された液晶層(5)が配置される。無機層(3)は、偏光層とは反対側の液晶層上に配置される。
【0038】
図2aと比較した
図2b及び2cの実施態様の差は、やはり偏光層(6)と液晶層(4)との間(
図2b)、又は偏光層の下(液晶層の反対側を意味する)(
図2c)にあってもよい、無機層(3)の位置である。
図1の実施態様に関して論じたように、
図2a〜2cの任意の組合せが可能であるが、このことは封止構造が、
図2a〜2cに示された位置に配置されてよい、複数の無機層を含んでもよいことを意味している。
【0039】
図3は、OLEDマトリックスを含むデバイス(7)に適用された封止構造の異なる実施態様を示す。例えば、OLEDデバイス上に次々に異なる層を適用することができる。その結果、光配向可能な物質を含む層(4)は、OLEDデバイス(7)と重合された液晶層(5)との間にある。偏光層(6)は、OLEDデバイスとは反対側の液晶層の側にある。1つ以上の無機層(3)は、OLEDマトリックス(7)と光配向可能な物質を含む層(4)との間(
図3a)及び/又は液晶層(5)と偏光層(6)との間(
図3b)及び/又は液晶層の反対側の偏光層の上(
図3c)に配置されていてもよい。好ましくは、偏光層は、上記のようなコーティングされた偏光子である。
図3dは、光配向可能な物質を含む追加の層(8)が、コーティング可能な偏光材料から作られた偏光層と接触している、
図3aに対応する一例を示す。
図3dの封止構造は、追加の基板なしでOLEDデバイス上に全ての層が次々に適用されるため、非常に薄い。各層が数ミクロンの範囲内にあるため、反射防止性を組み入れた封止構造の全厚さは、20μm未満又は実に10μm未満であってもよい。
【0040】
図4は、
図1a〜1dの封止構造がOLEDデバイス(7)に適用された、封止OLEDディスプレイの実施態様を示す(
図4a〜
図4d)。OLEDデバイスと封止構造との間に、接着層があってもよい。
【0041】
好ましい実施態様では、偏光層は、構造の上に積層される箔である。接着層は、
図1eの実施態様に関して上記のとおり、偏光箔の下にあってもよい。別の好ましい実施形態では、偏光層は、好ましくは重合しうる液晶及び二色性色素を含む、コーティング可能な偏光子材料から作られる。好ましくは、このようなコーティング可能な偏光子は、
図1fに関して上で論じられたとおり、好ましくは光配向可能な物質を含む偏光子層の下の追加の層によって配向される。
【0042】
図5は、液晶層(5)がOLEDデバイスと偏光層との間にあるように、
図2a〜2cの封止構造がOLEDデバイス(7)に適用された(
図5a〜
図5c)、封止OLEDディスプレイの実施態様を示す。OLEDデバイスと封止構造との間に、接着層があってもよい。
【0043】
本発明の反射防止性を組み入れた封止構造の更なる利点は、1つ以上の層が横方向に容易に構築されることである。これは、例えば、オフセット若しくはインクジェットのような印刷方法、又は物理的若しくは化学的蒸着によって、所望の形状及び位置に個々の層を局所堆積させることにより行うことができる。あるいは、適用が望まれる、より大きな領域に層を適用し、続いて望まれない領域の層の材料を除去してもよい。これは、フォトリソグラフィー法を含む、当該分野における様々な周知の方法によって行うことができる。本発明による層の大部分は重合しうる化合物を含むため、望まれない材料を除去する好ましい方法は、望まれる領域の層内の材料を、特に局所的なUV照射により、局所的にのみ重合し、続いて望まれる領域の外の非重合材料を、例えば適切な溶媒を用いて除去することによる。
【0044】
本発明の薄層を横方向に構築することによって、層の端部を経る側面漏出を防止することにより酸素及び水分に対する耐性を高めることが可能である。
図6は、OLEDマトリックスを含むOLEDデバイス(7)が無機層(3)で完全に覆われている、封止OLEDディスプレイの一例を示す。しかしながら、光配向可能な物質を含む第1及び第2の層の(4)及び(8)、液晶層(5)並びに偏光層(6)は、横方向に構築され、OLEDデバイスの小さな領域、特にOLEDマトリックスの領域を覆う。構造全体の上に堆積される無機層(1)は、OLEDマトリックスに平行な広い表面領域だけでなく、各層の端部においてもバリア層として作用する。したがって、
図7の全ての層は、相乗的にバリア性に寄与することができる。最先端のシート位相差板及び偏光子を有する類似の層構造の製造は、もっと複雑であることが明らかであり、そして本発明による封止構造のバリア性は、最先端の位相差板及び偏光子で、例えば、シート位相差板及び偏光子の表面を平滑化するための、追加の層を加えることによってのみ達成できることが期待できるが、このことはまた、追加の製造工程を加える。
【0045】
図1〜
図6において互いに隣接して描かれた層は、直接接触していてもよい。しかしながら、光配向可能な物質を含む層(4)と液晶層(5)との間を除いて、また光配向可能な物質を含む追加の層(8)と偏光層(6)との間を除いて、追加の層が封止構造のどの一対の層の間に配置されることも可能である。
【0046】
無機層は、プラズマ増強及びプラズマ支援の化学的蒸着、スパッタリング並びに電子ビーム物理的蒸着を含む、物理的又は化学的蒸着のような真空蒸着技術によって適用することができる。
【0047】
無機層は、単一の無機材料又は2つ以上の無機材料の組成物を含むことができる。適用可能な無機材料の例は、酸化アルミニウム、酸化ケイ素及び酸化インジウムスズのような金属又は半導体酸化物、窒化ホウ素及び窒化ケイ素のような金属又は半導体窒化物、あるいは酸窒化アルミニウム又は酸窒化ケイ素のような金属又は半導体酸窒化物である。SixOy、SixNy又はAlxOyを含む無機層が好ましい。特に、窒化ケイ素(SixNy)が好ましい。この組成物は、化学量論的であってもそうでなくともよい。
【0048】
無機層の厚さは、典型的には1nm〜1000nmの間にある。好ましくは、この厚さは10nm〜500nmの間、更に好ましくは50nm〜300nmの範囲に、そして最も好ましくは100nm〜250nmの間である。液晶層(5)は、好ましくは、光の可視スペクトルの少なくとも1つの波長に対して1/4波長位相差板として作用する。液晶材料の強い複屈折のために、液晶の1/4波長位相差板層は、典型的には、液晶材料の光学異方性に依存して、0.4μm〜3μmの範囲の厚さを有する。好ましくは、液晶層は、収色性位相差板として機能する。収色性を有さない液晶材料を使用する場合、封止構造内に第2の液晶層を加えることによって収色性位相差を達成することが可能であり、そしてこれは位相差板としても機能する。好ましくは、第2の位相差板層の光軸方向は、第1の位相差板層の光軸方向とは異なる。2つの液晶位相差板層の厚さ及び光軸方向を適切に設計することにより、収色性位相差板性能を達成することが可能である。好ましくは、第2の液晶層は、光配向可能な物質を含む別の層によって配向される。
【0049】
本発明の更なる利点は、液晶層が配向パターンを有しうることである。これは、光配向可能な物質を含む層の異なる領域を異なる方向に選択的に光配向させることによって達成できる。生成された配向パターンは、液晶層に適合し、その結果、領域的に異なる光軸方向を有するパターン化位相差板を、液晶層が形成する。光配向プロセスの高い分解能のために、個々の領域は非常に小さく、例えば、人間の目が解像できるよりも小さいこともある。したがって、このパターンは、人間の目に見えるか見えない、特に光電子工学システムによる認識のための、あらゆる種類の情報を符号化するのに有用であろう。
【0050】
本発明の第2の態様により、反射防止性を組み入れた封止OLEDディスプレイを製造する方法であって、
−基板上にOLEDディスプレイデバイスを生成する工程、
−反射防止性を提供する封止構造であって、液晶ポリマー層が、OLEDデバイスと偏光層の間にあるように、無機層、光配向物質を含む層、光配向物質を含む層と接触している液晶ポリマー層、及び直線偏光層を含む構造で、OLEDデバイスを封止する工程
を含む方法が提供される。
【0051】
本発明の好ましい実施態様では、封止構造は、
図1及び2に示される構造のように別個の基板上に製造され、続いてOLEDデバイスに適用されるが、その結果、例えば、
図4及び5に示される実施態様のような封止OLEDが得られる。好ましくは、この構造は、積層によりOLEDデバイスに適用される。OLEDデバイスと封止スタックの間に、接着層があってもよい。好ましくは、別個の基板は、可撓性箔、好ましくはポリマー箔又は薄膜ガラスのように、可撓性である。好ましくは、別個の基板は、偏光箔である。
【0052】
本発明の別の好ましい実施態様では、封止構造がOLEDデバイス上に直接形成されるように、封止構造に必要な個々の層をOLEDデバイス上に次々に堆積させる。あるいは、OLEDデバイス上に1つ以上の層を直接堆積させ、残りの層を積層により加えることが可能である。例えば、無機層、光配向物質を含む層及び液晶ポリマー層をOLEDデバイス上に形成させるが、一方で偏光層を偏光箔の積層により適用する。
【0053】
光配向可能な物質を含む層は、光配向可能な物質の分子を配向させるために、所望の偏光方向の配向光に露光させる。
【0054】
光配向可能な物質を含む層は、適切な材料のコーティング、印刷又は注型によって生成することができる。材料は、支持体の全領域にわたるか、又はその一部のみに適用されてよい。適切な方法は、スピンコーティング、ブレードコーティング、ナイフコーティング、キスロールコーティング、キャストコーティング、スロットオリフィスコーティング、カレンダーコーティング、ダイコーティング、ディッピング、ブラッシング、バーキャスティング、ローラーコーティング、フローコーティング、射出成形、ワイヤーコーティング、スプレーコーティング、ディップコーティング、旋回コーティング(whirler-coating)、カスケードコーティング、カーテンコーティング、エアーナイフコーティング、ギャップコーティング、ロータリースクリーン、リバースロールコーティング、グラビアコーティング、メータリングロッド(Meyerバー)コーティング、スロットダイ(押出)コーティング、ホットメルトコーティング、ローラーコーティング、フレキソコーティング、シルクスクリーンプリンター、フレキソ印刷のような凸版印刷、インクジェット印刷、3D印刷、直接グラビア印刷若しくはオフセットグラビア印刷のような凹版印刷、オフセット印刷のような平版印刷、又はスクリーン印刷のような孔版印刷を含む。容易に堆積させるために、材料を溶媒に希釈してもよい。材料の堆積は、標準大気圧下又は真空条件下で行われよう。後者の場合、材料は溶媒を含まない方が好ましい。
【0055】
溶媒を留去するため、又は硬化させるための加熱工程は、特にこの組成物がOLED構造を含む組立体にコーティングされる場合には、上記組成物がコーティングされる層構造と相性がよくないことがあるため、無溶媒組成物もまた好ましい。更に、溶媒自体が、この組成物から作られた層の下の層構造の材料に損傷を与えることもある。
【0056】
好ましくは、材料組成物は、少なくとも1つの光配向可能な物質及び少なくとも1つの追加の物質を含むが、ここで、この物質は、少なくとも1種の光配向可能な物質の濃度が、層のバルクよりも支持体の反対側の表面近くで高くなるように、支持体上に材料で形成される層において相分離が起こりうるように選択される。
【0057】
好ましくは、光配向可能な物質を含む材料は、重合しうるが光配向可能ではない、1つ以上の物質を含む。好ましくは、重合しうるが光配向可能でない物質の重量と、重合しうるが光配向可能でない物質と光配向可能な物質の重量の合計との比は、10%より高く、更に好ましくは30%より高く、そして最も好ましくは70%より高い。追加の重合しうる物質に起因して、上記方法は、光配向可能な物質を含む材料から生成される層内で、該物質の重合が開始される、追加の工程を含むかもしれない。好ましくは、重合は、化学線への露光により開始される。重合の工程は、層を配向光に露光する工程の前か、後か又は同時にあってよい。本方法の好ましい実施態様では、光配向可能な物質を配向させるため、及び追加の重合しうる物質の重合を開始させるために、配向光が使用される。別の好ましい実施態様では、追加の物質が重合する工程は、光配向可能な物質を含む層を配向光に露光させる工程の後にある。好ましくは、周囲雰囲気は、配向光への層の露光中には酸素を含む。好ましくは、酸素の量は、追加の物質の重合中に自然の酸素含量と比較して、周囲雰囲気中では減少している。更に好ましくは、追加の物質の重合は、不活性雰囲気で、又は真空で行われる。好ましくは、追加の光配向可能でない物質の重合を開始させるのに使用される光の波長範囲は、光配向可能な物質の光配向を開始させるのに使用される配向光の波長範囲とは異なる。このことは、光の波長によって、追加物質の重合の開始及び光配向に起因する異方性の生成に個別に対処することができるという利点を有する。
【0058】
液晶ポリマー材料を含む層は、光配向層の上に適用される。液晶物質が、光配向層により提供される配向方向を適切に順応させた後、重合しうる液晶材料の重合が開始される。
【0059】
好ましくは、LCP層に関するパラメーターは、1/4波長位相差板が、所望の波長について有効となるように選択される。更に好ましくは、LCP層は、収色性であり、そして大抵の可視波長範囲について実質的に1/4波長位相差を提供する。
【0060】
好ましくは、LCP材料は、ゲッター材料を含む。好ましくは、ゲッター材料は、親水性であり、そして金属、金属酸化物、メタロイド、メタロイド酸化物、金属炭化物、メタロイド炭化物、金属ハロゲン化物、金属塩、金属過塩素酸塩、金属窒化物、メタロイド窒化物、金属酸素窒化物、メタロイド酸素窒化物、金属酸素ホウ化物又はメタロイド酸素ホウ化物粒子、ゼオライト、シリカゲル、活性アルミナ及び活性炭のいずれかを含む。好ましくは、ゲッター材料は、酸化物粒子、好ましくはアルカリ土類金属酸化物粒子、好ましくは酸化カルシウム(CaO)又は酸化バリウム(BaO)又は酸化マグネシウム(MgO)を含む。好ましくは、ゲッター材料はナノ粒子の形態である。ゲッター粒子のサイズは、1〜1000nmの間であろう。しかしながら、平均粒径は、300nm未満であることが好ましく、そして200nm未満であることが更に好ましい。更に、平均粒径は、100nm〜250nmの間であることが好ましく、そして150〜200nmの間であることが最も好ましい。
【0061】
LCP材料は、溶媒を伴うか又は伴わずに、コーティング及び/又は印刷によって適用されてよく、そして、光配向物質を含む層の全領域にわたるか、又はその一部のみに適用されてよい。LCP材料は、例えば、印刷、コーティング又は注型方法であって、スピンコーティング、ブレードコーティング、ナイフコーティング、キスロールコーティング、キャストコーティング、スロットオリフィスコーティング、カレンダーコーティング、ダイコーティング、ディッピング、ブラッシング、バーキャスティング、ローラーコーティング、フローコーティング、射出成形、ワイヤーコーティング、スプレーコーティング、ディップコーティング、旋回コーティング(whirler-coating)、カスケードコーティング、カーテンコーティング、エアーナイフコーティング、ギャップコーティング、ロータリースクリーン、リバースロールコーティング、グラビアコーティング、メータリングロッド(Meyerバー)コーティング、スロットダイ(押出)コーティング、ホットメルトコーティング、ローラーコーティング、フレキソコーティング、シルクスクリーンプリンター、フレキソ印刷のような凸版印刷、インクジェット印刷、3D印刷、直接グラビア印刷若しくはオフセットグラビア印刷のような凹版印刷、オフセット印刷のような平版印刷、又はスクリーン印刷のような孔版印刷を含むがこれらに限定されない方法によって適用されてよい。
【0062】
好ましくは、本方法は、光配向物質を含む層にLCP材料を適用する前又は後にこの材料を加熱することを伴う。LCP材料の性質に応じて、窒素のような不活性雰囲気下、又は真空下での重合を実施することが有用であろう。
【0063】
好ましくは、基板は、可撓性箔であり、そして反射防止性を提供する封止構造は、ロールツーロール製法で製造される。得られたフィルムは最終的に、基板箔と一緒にロールに巻かれてもよく、又は封止構造を形成する層は、基板から剥離され、次に基板なしの独立フィルムとして巻き取られてもよい。
【0064】
好ましくは、基板は、偏光層の機能を有する可撓性偏光箔である。これは、他に基板を必要としないという利点を持ち、そして封止構造に必要な層は、好ましくはロールツーロール製法で、偏光箔上に次々に適用することができる。
【0065】
本発明の第3の態様により、本発明の方法及びデバイスに使用するための、光配向可能な物質を含む材料組成物が提供される。
【0066】
光配向可能な物質を含む材料組成物は、複数タイプの光配向可能な物質を含むことができる。
【0067】
好ましい実施態様では、光配向可能な物質を含む材料組成物は、更に液晶モノマーを含む。好ましくは、溶媒のない組成物は、室温以上で液晶相を有する。
【0068】
光配向可能な物質を含む材料組成物は、光配向可能な部分を含まない追加の物質を含んでもよい。このような物質は、層の製造中か製造後に重合されうる、ポリマー、デンドリマー、オリゴマー、プレポリマー及びモノマーを含む。適切なポリマーの分類の例は、ポリアルキレン(ポリエチレン、ポリプロピレンなど)、ポリシクロオレフィンのCOP/COC、ポリブタジエン、ポリ(メタ)アクリレート、ポリエステル、ポリスチレン、ポリアミド、ポリエーテル、ポリウレタン、ポリイミド、ポリアミド酸、ポリカーボネート、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニル、セルロース及びセルロース誘導体(三酢酸セルロースなど)であるが、これらに限定されない。適切な分類のモノマーの例は、単官能基及び多官能基のアクリラート及びメタクリラート、エポキシ、イソシアナート、アリル誘導体及びビニルエーテルである。好ましくは、光配向可能な物質を含む組成物は、ゲッター材料を含む。好ましくは、ゲッター材料は親水性であり、そして金属、金属酸化物、メタロイド、メタロイド酸化物、金属炭化物、メタロイド炭化物、金属ハロゲン化物、金属塩、金属過塩素酸塩、金属窒化物、メタロイド窒化物、金属酸素窒化物、メタロイド酸素窒化物、金属酸素ホウ化物又はメタロイド酸素ホウ化物粒子、ゼオライト、シリカゲル、活性アルミナ及び活性炭のいずれかを含む。好ましくは、ゲッター材料は、酸化物粒子、好ましくはアルカリ土類金属酸化物粒子、好ましくは酸化カルシウム(CaO)又は酸化バリウム(BaO)又は酸化マグネシウム(MgO)を含む。好ましくは、ゲッター材料はナノ粒子の形態である。ゲッター粒子のサイズは、1〜1000nmの間であろう。しかしながら、平均粒径は、300nm未満であることが好ましく、そして200nm未満であることが更に好ましい。更に、平均粒径は、100nm〜250nmの間であることが好ましく、そして150〜200nmの間であることが最も好ましい。組成物の性質は、好ましくはインクジェット印刷に最適化される。
【0069】
光配向可能な部分を含まず、そしてバリア性を支持する、適切な物質及び物質の混合物は、特にWO 2014012931(参照により本明細書に取り込まれる)に開示されるものである。特に、WO 2014012931は、OLED封止のための多層バリアスタック中の水捕捉層用の無溶媒放射線硬化性樹脂組成物を製造するための処方を開示している。
【0070】
光配向可能な物質を含む材料組成物に関して物質という用語は、溶媒を含むものではない。
【0071】
本発明に関連して、溶媒とは、組成物を希釈し、そして組成物を含む配合物の調製に、及び組成物の層をコーティング又は印刷するのに役立つが、後で、例えば、乾燥により除去される化合物である。言い換えると、物質という用語の意味は、最終の層に残存する化合物だけを含む。
【0072】
特に、以下の化合物は溶媒として考えられる:ヘキサン、ベンゼン、トルエン、ジエチルエーテル、クロロホルム、酢酸エチル、ジクロロメタン、クロロベンゼン、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン(THF)、アセトン、アセトニトリル(MeCN)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N−メチルピロリドン(NMP)、エチルピロリドン、N−ビニルピロリドン、2−ブトキシエタノール(BC)、γ−ブチロラクトン(BL)、N−メチルモルホリン、アセトニトリル、エチルカルビトール、ブチルカルビトール、エチルカルビトールアセタート、エチレングリコール、プロピレングリコールモノアセタート、プロピレングリコールジアセタート、ジプロピレングリコール、及びジプロピレングリコールモノメチルエーテル、1,2−ジクロロベンゼン、テトラヒドロフラン、N,N−ジメチルアセトアミド、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、シクロペンタノン(CP)、メチルエチルケトン(MEK)、酢酸エチル(EA)、アニソール(AN)、シクロヘキサノン(CHN)、メチルイソブチルケトン(MIBK)、1−メトキシ−2−プロパノールアセタート(MPA)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、酢酸、n−ブタノール、イソプロパノール、n−プロパノール、エタノール、メタノール、ギ酸、水、シクロペンタン、ペンタン、石油エーテル、ヘプタン、ジエチルアミン、tert−ブチルメチルエーテル、シクロヘキサン、tert−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、イソアミルアルコール、ジエチルケトン、1−オクタノール、p−キシレン、m−キシレン、ジメトキシエタン、酢酸ブチル、1−クロロブタン、o−キシレン、2−エトキシエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、2−メトキシエタノール、ピリジン、プロパン酸、酢酸2−メトキシエチル、ベンゾニトリル、ヘキサメチルホスホルアミド、無水酢酸、ジエチレングリコール、炭酸プロピレン、1,2−ジクロロエタン、グリセリン、二硫化炭素、塩化メチレン、ニトロメタン、ニトロメタン、クロロホルム、1,1,2−トリクロロトリフルオロエタン、四塩化炭素及びテトラクロロエチレン。
【0073】
光配向可能な物質を含む材料組成物は、接着性を向上させるための添加物及び/又は光開始剤を含有してもよい。
【0074】
組成物中の物質のタイプに応じて、光配向可能な物質と他の物質の間の相分離が起こりうる。材料組成物の適正な選択により、層を製造する際に、大部分の光配向可能な物質が層の自由表面に分離するように、相分離を制御することが可能である。これによって、組成物中の光配向可能な物質の量を更に減少させることが可能になる。好ましくは、光配向可能な物質の合計対他の物質の合計の重量比は、50%未満、更に好ましくは20%未満、そして最も好ましくは10%未満である。この材料組成物で作られた層の厚さに応じて、光配向可能な物質の量は、1重量%未満、又は実に0.1重量%未満であってもよい。極端な場合、満足な配向性をなおも達成するには、0.01重量%の光配向可能な物質で充分である。好ましくは、光配向可能な物質は、相分離を支持するために、フッ素化部分及び/又はシロキサン部分を含むか、かつ/あるいはポリシロキサンである。
【0075】
好ましい実施態様では、本発明の組成物は、光配向可能な物質、及び光配向可能であってもなくともよい別の物質を含む。光配向可能な物質と他の物質は両方とも、ポリマー、デンドリマー、オリゴマー、プレポリマー又はモノマーであってよい。相分離を支持するために、光配向可能な物質及び他の物質は、光配向可能な物質と他の物質のモノマー双極子モーメントが互いに異なるように選択される。モノマー双極子モーメントとは、モノマーの双極子モーメント、又はポリマー、オリゴマー及びプレポリマーの場合には、それぞれこのようなポリマー、オリゴマー及びプレポリマーのモノマー単位の双極子モーメントのことをいうものである。好ましくは、モノマー双極子モーメントの差は、0.5Debyeより大きく、更に好ましくは1Debyeより大きく、そして最も好ましくは1.5Debyeより大きい。組成物は、追加の光配向可能な物質又は光配向可能でない物質を含有してもよい。
【0076】
本発明の層を製造するための組成物用の光配向可能な物質は、配向光への露光により、光反応機構とは独立に、LCP材料に配向性を提供する異方性が生み出されうる、任意の種類の感光性材料であってよい。したがって、適切な光配向可能な物質は、例えば、配向光への露光により、光二量化、光分解、trans-cis異性化又は光フリース転位によって異方性が誘導される材料である。
【0077】
上記のような光配向可能な物質は、配向光への露光により好ましい方向を発生させることができ、そして異方性を生み出すことができる、光配向可能な部分を組み入れる。このような光配向可能な部分は、好ましくは異方性吸収性を有する。典型的には、このような部分は、230〜500nmの波長範囲内で吸収を示す。好ましくは、光配向可能な部分は、300〜450nmの波長範囲内の光の吸収を示し、更に好ましいのは、350〜420nmの波長範囲内で吸収を示す部分である。
【0078】
好ましくは、光配向可能な部分は、炭素−炭素、炭素−窒素、又は窒素−窒素二重結合を有する。
【0079】
例えば、光配向可能な部分は、置換又は非置換のアゾ色素、アントラキノン、クマリン、メロシアニン、2−フェニルアゾチアゾール、2−フェニルアゾベンゾチアゾール、スチルベン、シアノスチルベン、フルオロスチルベン、シンナモニトリル、カルコン、シンナマート、シアノシンナマート、スチルバゾリウム、1,4−ビス(2−フェニルエチレニル)ベンゼン、4,4’−ビス(アリールアゾ)スチルベン類、ペリレン、4,8−ジアミノ−1,5−ナフトキノン色素、アリールオキシカルボン酸誘導体、アリールエステル、N−アリールアミド、ポリイミド、2個の芳香環と共役したケトン部分又はケトン誘導体を有するジアリールケトン類(例えば、置換ベンゾフェノン類、ベンゾフェノンイミン類など)、フェニルヒドラゾン類、及びセミカルバゾン類である。
【0080】
上に列挙された異方性吸収材料の調製は、例えば、Hoffmanらにより米国特許第4,565,424号に、Jonesらにより米国特許第4,401,369号に、Cole, Jr.らにより米国特許第4,122,027号に、Etzbachらにより米国特許第4,667,020号に、及びShannonらにより米国特許第5,389,285号に示されるとおり周知である。
【0081】
好ましくは、光配向可能な部分は、アリールアゾ、ポリ(アリールアゾ)、スチルベン、シアノスチルベン、シンナマート又はカルコンを含む。
【0082】
光配向可能な物質は、モノマー、オリゴマー又はポリマーの形態をとってよい。光配向可能な部分を、ポリマー又はオリゴマーの主鎖内又は側鎖内で共有結合することができるか、あるいはこれらはモノマーの一部であってよい。光配向可能な物質は更に、異なるタイプの光配向可能な部分を含むコポリマーであってよいか、又は光配向可能な部分を含む側鎖と含まない側鎖とを含むコポリマーであってもよい。
【0083】
ポリマーは、例えば、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリイミド、ポリウレタン、ポリアミド酸、ポリマレインイミド、ポリ−2−クロロアクリレート、ポリ−2−フェニルアクリレート;非置換の又はC
1−C
6アルキルで置換されたポリアクリルアミド、ポリメタクリルアミド、ポリ−2−クロロアクリルアミド、ポリ−2−フェニルアクリルアミド、ポリエーテル、ポリビニルエーテル、ポリエステル、ポリビニルエステル、ポリスチレン誘導体、ポリシロキサン、ポリアクリル酸又はポリメタクリル酸の直鎖又は分岐アルキルエステル;1〜20個の炭素原子のアルキル残基を持つ、ポリフェノキシアルキルアクリレート、ポリフェノキシアルキルメタクリレート、ポリフェニルアルキルメタクリレート;ポリアクリロニトリル、ポリメタクリロニトリル、シクロオレフィンポリマー、ポリスチレン、ポリ−4−メチルスチレン又はこれらの混合物を意味する。
【0084】
光配向可能な物質はまた、光増感剤、例えば、ケトクマリン類及びベンゾフェノン類を含んでもよい。
【0085】
更に、好ましい光配向可能なモノマー又はオリゴマー又はポリマーは、米国特許第5,539,074号、米国特許第6,201,087号、米国特許第6,107,427号、米国特許第6,632,909号及び米国特許第7,959,990号に記載されている。
【実施例】
【0086】
本発明の封止構造の性能の評価のために、“Experimental comparison of high-performance water vapor permeation measurement methods”, Nisato et. al., Organic Electronics 15 (2014), 3746-3755 に記載されている、「カルシウム試験」を利用している。純粋な金属カルシウムは、水と反応することにより透明な水酸化カルシウムを形成する、不透明材料である。バリア構造により遮断される場合、カルシウム薄膜の腐蝕速度は、バリア構造の水蒸気透過度(WVTR)の尺度である。残留カルシウムの厚さを算出することができる、カルシウム薄膜を通る光透過度の変化を測定することにより、これを求めることができる。以下の実施例におけるWVTRに関する試験は、本発明の反射防止構造の一部である、偏光子なしで行われている。偏光子がWVTRに影響を及ぼすとすれば、これは封止構造の追加の層であるため、WVTRを下げるだけであろう。したがって、偏光層を含む封止構造は、以下の実施例と比較してWVTR特性を向上させるであろう。
【0087】
無溶媒放射線硬化性樹脂組成物RES1の調製
重合しうる材料の組成物RES1は、WO 2014012931の表IIdの実施例F20の処方及び指示(ただしCaOを含まない)により調製された。
【0088】
組成物RES1は、51重量% SR262、9.6重量% SR351、21.1重量% SR421a、17.3重量% SR307及び1重量% Irgacure 369からなる。市販の物質の詳細は、以下の表1に列挙される。RES1は、溶媒を含有せず、室温で液体である。
【表1】
【0089】
光配向可能な組成物PAC1の調製
光配向可能な組成物PAC1は、94.5重量% RES1、5重量% 光配向可能な物質PA1を混合して、0.5% 酸化カルシウム(CaO)粒子を加えることにより調製された。この組成物を室温で16時間撹拌した。組成物PAC1は溶媒を含まない。
【0090】
ポリマーPA1は、以下の構造を有しており、WO 2015024810A1中の説明により調製された。
【化1】
【0091】
光配向可能な材料PA2を含む溶液PAC2の調製
溶液PAC2は、3重量%の光配向可能なポリマーPA2を97重量%の溶媒混合物(50重量% 酢酸ブチル/50重量% 酢酸エチル)に希釈することにより調製された。次にこの溶液を室温で30分間撹拌する。
【0092】
ポリマーPA2は、以下の構造を有する:
【化2】
【0093】
LCP溶液LCP1の調製
95.475重量% 2,5−ビス[[4−[[6−[(1−オキソ−2−プロペニル)オキシ]ヘキシル]オキシ]ベンゾイル]オキシ]−安息香酸ペンチルエステル、2重量% Irgacure OXE02(BASF)、0.5重量% TEGO Flow 300(Evonik)、0.025重量% 2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール(Sigma Aldrich)及び2重量% Kayarad DPCA-20(Nippon Kayaku)からなる25重量%の混合物を75重量% 酢酸n−ブチルに溶解して、室温で90分間撹拌することにより、LCP溶液LCP1が得られる。この溶液を0.45μm PTFEフィルターにより濾過する。
【0094】
Ca試験基板の調製
窒化ケイ素(SiN)の100nm薄層を、130℃でプラズマ増強化学的蒸着法(PECVD)により清浄な15cm×15cm ガラス基板(厚さ1.1mm)の上に適用する。セラミック層の上にそれぞれ9個の正方形のカルシウムの9群を、マスクを通して蒸発する。81個の正方形のカルシウムのそれぞれは、5mm×5mmの横寸法及び約50nmの厚さを有する。カルシウムの下のSiN層は、以下に記載されるとおりカルシウムの上に調製されることになるバリア構造のバリア性に寄与しない。
【0095】
Ca試験基板上の封止構造ES1の調製
RES1の厚さ20μmの平坦化層を、Ca試験基板上にインクジェット印刷する。この材料を、不活性雰囲気下で395nm及び4J/cm
2のLEDランプを用いて硬化させる。硬化後、150nmの無機SiN層を130℃でPECVDにより堆積させる。
【0096】
次に光配向可能な物質PA2の層を、溶液PAC2から1000rpmで30秒間+2000rpmで2秒間スピンコーティングし、80℃で4分間加熱板上で熱硬化させる。このポリマーを60mJ/cm
2のエネルギーで直線偏光UV−B光に露光すると、PA2層に光配向が起こる。配向PA2層の上に、溶液LCP1を1400rpmで30秒間スピンコーティングして、加熱板上で55℃で4分間アニーリングすることにより、厚さ1.3μmのLCPフィルムを適用する。次に温度を室温まで15分間でゆっくり低下させて、LCP層を窒素雰囲気下で、これを1.5J/cm
2のUV−A光で照射することにより架橋させる。
【0097】
LCP層の上に厚さ150nmのSiN層をPECVDにより適用する。最後に、RES1の厚さ20μmの層をSiN層の上にインクジェット印刷する。この材料を、不活性雰囲気下で395nm及び4J/cm
2のLEDランプを用いて硬化させる。
【0098】
図7は、交差偏光子の間のCa試験基板上の最終封止構造ES1であって、偏光子の偏光方向に対して45°のPA2層の誘導配向方向を持つ構造の写真を示す。ガラスの外側の領域は、偏光子が交差しているため暗い。ガラスの内側では81個のカルシウム正方形は、これらが透明でないため暗く見える。カルシウムに覆われていないガラスの領域は、PA2層により配向されているLCP材料の複屈折のため明るく見える。傾斜補償器によってこの領域で測定される光学的位相差は、約140nmであり、これが緑色光の1/4波長位相差板として作用する。
【0099】
Ca試験基板上の封止構造ES2の調製
RES1の厚さ20μmの平坦化層を、Ca試験基板上にインクジェット印刷する。この材料を、不活性雰囲気下で395nm及び4J/cm
2のLEDランプを用いて硬化させる。硬化後、150nmの無機SiN層を130℃でPECVDにより堆積させる。
【0100】
次に光配向可能な組成物PAC1の厚さ20μmの層をSiN層の上にインクジェット印刷する。波長395nm及び4J/cm
2のエネルギーの光でPAC1層を照射することにより、アクリルモノマーの重合を開始させる。次にPAC1層を、60mJ/cm
2のエネルギーの直線偏光UV−B光に露光させることにより、PAC1層に光配向可能な物質PA1の光配向が起こる。
【0101】
配向PAC1層の上に、溶液LCP1を1400rpmで30秒間スピンコーティングして、加熱板上で55℃で4分間アニーリングすることにより、厚さ1.3μmのLCPフィルムを適用する。次に温度を室温まで15分間でゆっくり低下させて、LCP層を窒素雰囲気下で、これを1.5J/cm
2のUV−A光で照射することにより架橋させる。
【0102】
LCP層の上に厚さ150nmのSiN層をPECVDにより適用する。最後に、RES1の厚さ20μmの層をSiN層の上にインクジェット印刷する。この材料を、不活性雰囲気下で395nm及び4J/cm
2のLEDランプを用いて硬化させる。
【0103】
偏光子の偏光方向に対して45°のPAC1層の誘導配向方向を持つ、Ca試験基板上の最終封止構造ES2が交差偏光子の間に観測されるとき、ガラスは、透明でないために暗く見える81個のカルシウム正方形を除いて、明るく見える。カルシウムに覆われていないガラスの領域は、PA1層により配向されているLCP材料の複屈折のため明るく見える。傾斜補償器によってこの領域で測定される光学的位相差は、約140nmである。
【0104】
Ca試験基板上の封止構造ES3の調製
RES1の厚さ20μmの平坦化層を、Ca試験基板上にインクジェット印刷する。この材料を、不活性雰囲気下で395nm及び4J/cm
2のLEDランプを用いて硬化させる。硬化後、150nmの無機SiN層を130℃でPECVDにより堆積させる。
【0105】
次に光配向可能な物質PA2の層を、溶液PAC2から1000rpmで30秒間+2000rpmで2秒間スピンコーティングし、そして80℃で4分間加熱板上で熱硬化させる。このポリマーを60mJ/cm
2のエネルギーの直線偏光UV−B光に露光すると、PA2層に光配向が起こる。配向PA2層の上に、溶液LCP1を1400rpmで30秒間スピンコーティングして、加熱板上で55℃で4分間アニーリングすることにより、厚さ1.3μmのLCPフィルムを適用する。次に温度を室温まで15分間でゆっくり低下させて、LCP層を窒素雰囲気下で、これを1.5J/cm
2のUV−A光で照射することにより架橋させる。
【0106】
偏光子の偏光方向に対して45°のPA2層の誘導配向方向を持つ、Ca試験基板上の最終封止構造ES3が交差偏光子の間に観測されるとき、ガラスは、透明でないために暗く見える81個のカルシウム正方形を除いて、明るく見える。カルシウムに覆われていないガラスの領域は、PA2層により配向されているLCP材料の複屈折のため明るく見える。傾斜補償器によってこの領域で測定される光学的位相差は、約140nmである。
【0107】
封止構造ES1、ES2及びES3のWVTR性能の評価
Ca試験基板上の封止構造ES1、ES2及びES3を、60℃及び相対湿度90%の気候室で885時間保存した。試験基板の外観を
図8の写真に示すが、ここで、
図8aは構造ES1を持つ基板を示し、
図8bは構造ES2を持つ基板を示し、そして
図8cは構造ES3を持つ基板を示す。それぞれの基板上で、カルシウム正方形の幾つかは、全部か又は部分的に消失している。Nisatoらの説明によると、これは、ピンホール及び欠陥部を経由する水の浸透のために起こる。よってCa領域の消失は、いわゆる外因性WVTRの尺度である。その一方で、固有WVTRは、カルシウム正方形の無欠陥部分の透過度変化の測定から求められる。よって固有WVTRは、構造にピンホール又は欠陥部のない最良の場合の特定の封止構造に対する特性値である。
【0108】
外因性WVTRの尺度として、各基板上の残存カルシウム領域の合計が求められ、そして以下の表に要約される:
【表2】
【0109】
封止構造ES2の外因性WVTRは、ES1のそれよりわずかに良好である。ES1とES2は両方とも、ES3に比較して外因性WVTRの改善を示しているが、これはほぼ確実にES1及びES2の追加の無機SiN層に起因する。
【0110】
固有WVTRは、無欠陥カルシウム部分内の平均透過度変化から求められた。結果は以下に列挙される:
【表3】
【0111】
固有WVTRの値は、互いに非常に近く、そして測定の不確実性内で同一と考えることができる。したがって、本発明の封止構造ES1、ES2及びES3のそれぞれは、優れた固有WVTRを有する。明らかに、構造ES1及びES2の追加の無機SiN層は、固有WVTRを更に改善することはない。