【課題を解決するための手段】
【0024】
したがって、本発明は、成形組成物、好ましくはPMMA成形組成物を提供する。ここで、前記成形組成物は、いずれの場合も以下の成分の総重量を基準として、
I.(後述の通り定義される)少なくとも1種のコア−シェル−シェル粒子10.0〜35.0重量%、好ましくは12.0〜33.0重量%、さらに好ましくは14.0〜30.0重量%、殊に好ましくは15.0〜25.0重量%と、
II.少なくとも1種の(メタ)アクリルポリマー1.0〜90.0重量%、好ましくは1.0〜85.0重量%、より好ましくは1.0〜80.0重量%と、
III.スチレン−アクリロニトリルコポリマー0.0〜45重量%、好ましくは0.0〜30重量%、より好ましくは0.0〜10重量%と、
IV.さらに他の添加剤0.0〜10.0重量%と、
を含み、
成分I.〜IV.の重量の割合を合計すると100.0重量%になり、
II.、またはII.、III.、および/もしくはIV.の混合物は、屈折率をISO 489(A法)により測定すると、Iの屈折率との差が、0.01単位以下、好ましくは0.002単位以下、より好ましくは0.001単位以下となる屈折率を有するように選択される。
【0025】
ISO 489(A法)により屈折率を測定した。全ての測定は、浸漬液として1−ブロモナフタレンを使用して、厚さ3mmに成形加工した物体で実施した。
成形加工した物体の製造:
a)コア−シェル−シェル粒子の場合:
コア−シェル−シェル粒子を使用して、測定に使用する押型小板(厚さ3mm、直径50mm、100kN、210℃、押圧時間20分で製造)を製造した。
b)ベース成形組成物(=マトリックスポリマー;II、またはII、III,および/またはIVの混合物に対応)の場合:
寸法65mm×40mm×3mmに成形加工した物体が得られるよう、射出成形小板を、ISO 294により溶融温度250℃で射出成形機Battenfeld BA上で射出成形した。
【0026】
本発明の範囲で使用するコア−シェル−シェル粒子I.は、
a)最初に水および乳化剤を投入し、
b)成分A)、B)、C)、およびD)を含む第1組成物20.0〜45.0重量部を添加し、成分A)、B)、C)、およびD)の総重量を基準として、少なくとも85.0重量%の転化率にまで重合させ、
c)成分E)、F)、およびG)を含む第2組成物35.0〜55.0重量部を添加し、成分E)、F)およびG)の総重量を基準として、少なくとも85.0重量%の転化率にまで重合させ、
d)成分H)、I)、およびJ)を含む第3組成物10.0〜30.0重量部を添加し、成分H)、I)およびJ)の総重量を基準として、少なくとも85.0重量%の転化率にまで重合させる、
プロセスであって、
b)、c)およびd)の組成物の前記重量の割合を合計すると100.0重量部になり、
物質A)〜J)全ての相対的割合は、コールター法により測定した総半径が、>125.0nmかつ<180nm、好ましくは>128.0nmかつ<160nm、より好ましくは>135.0nmかつ<150nmの範囲にあるコア−シェル−シェル粒子が得られるように選択され、
I.によるプロセスにおける各重合は、>60℃かつ<95℃、好ましくは>70℃かつ<90℃、さらに好ましくは≧75℃かつ≦85℃の温度範囲で実施される、
プロセスにより、製造される、または製造可能である。
【0027】
各工程における重合反応の進行は、公知の方法、例えば重量測定法またはガスクロマトグラフィーにより監視することができる。
【0028】
本発明は、請求項1に記載の成形組成物を提供し、前記成形組成物は、いずれの場合もその総重量を基準として、
I.10.0〜35.0重量%、好ましくは12.0〜33.0重量%、さらに好ましくは14.0〜30.0重量%、殊に好ましくは15.0〜25.0重量%の少なくとも1種のコア−シェル−シェル粒子であって、
a)最初に水および乳化剤を投入し、
b)第1組成物であって、
A)アルキルラジカル中に炭素原子1〜20個を有するアルキルメタクリレート50.0〜99.9重量部、好ましくは71.0〜99.9重量部と、
B)アルキルラジカル中に炭素原子1〜20個を有するアルキルアクリレート0.0〜40.0重量部、好ましくは0.0〜19.0重量部と、
C)架橋性モノマーであって、Cは、好ましくはアリルメタクリレートであるか、または、Cは、いずれの場合もCの総重量を基準として、少なくとも50重量%、好ましくは少なくとも65重量%、より好ましくは少なくとも80重量%、さらに好ましくは少なくとも90重量%のアリルメタクリレートを含む、架橋性モノマー0.1〜10重量部と、
D)一般式(I)で表されるスチレン系モノマー0.0〜8.0重量部
【0029】
【化1】
【0030】
(式中、ラジカルR
1〜R
5は、それぞれ独立して、水素、ハロゲン、炭素数1〜6のアルキル基、または炭素数2〜6のアルケニル基であり、ラジカルR
6は、水素または炭素数1〜6のアルキル基である)と、
を含む第1組成物20.0〜45.0重量部を添加し、成分A)、B)、C)、およびD)の総重量を基準として、少なくとも85.0重量%の転化率に達するまで重合させ、
c)第2組成物であって、
E)(メタ)アクリレートであって、Eは好ましくはブチルアクリレートであるか、または、Eは、いずれの場合もEの総重量を基準として、少なくとも50重量%、好ましくは少なくとも65重量%、より好ましくは少なくとも80重量%、さらに好ましくは少なくとも90重量%のブチルアクリレートを含む、(メタ)アクリレート80.0〜100.0重量部と、
F)架橋性モノマーであって、Fは好ましくはアリルメタクリレートであるか、または、Fは、いずれの場合もFの総重量を基準として、少なくとも50重量%、好ましくは少なくとも65重量%、より好ましくは少なくとも80重量%、さらに好ましくは少なくとも90重量%のアリルメタクリレートを含む、架橋性モノマー0.05〜5.0重量部と、
G)一般式(I)で表されるスチレン系モノマー0.0〜25.0重量部と、
を含む第2組成物35.0〜55.0重量部を添加し、成分E)、F)、およびG)の総重量を基準として、少なくとも85.0重量%の転化率に達するまで重合させ、
d)第3組成物であって、
H)アルキルラジカル中に炭素原子1〜20個を有するアルキルメタクリレート50.0〜100.0重量部と、
I)アルキルラジカル中に炭素原子1〜20個を有するアルキルアクリレート0.0〜40.0重量部と、
J)一般式(I)で表されるスチレン系モノマー0.0〜10.0重量部と、
を含む第3組成物10.0〜30.0重量部を添加し、成分H)、I)およびJ)の総重量を基準として、少なくとも85.0重量%の転化率に達するまで重合させる、
プロセスであって、
b)、c)、およびd)の組成物の前記重量の割合を合計すると100.0重量部になり、
物質A)〜J)全ての相対的割合は、コールター法により測定した総半径が、>125.0nmかつ<180nm、好ましくは>128.0nmかつ<160nm、より好ましくは>135.0nmかつ<150nmの範囲にあるコア−シェル−シェル粒子が得られるように選択され、
I.によるプロセスにおける各重合は、>60℃かつ<95℃、好ましくは>70℃かつ<90℃、さらに好ましくは≧75℃かつ≦85℃の温度範囲で実施される、
プロセスにより、製造される、または製造可能であるコア−シェル−シェル粒子と、
II.1.0〜90.0重量%、好ましくは1.0〜85.0重量%、さらに好ましくは1.0〜80.0重量%の少なくとも1種の(メタ)アクリルポリマーと、
III.0.0〜45重量%、好ましくは0.0〜30重量%、より好ましくは0.0〜10.0重量%のスチレン−アクリロニトリルコポリマーと、
IV.0.0〜10.0重量%のさらに他の添加剤と、
を含み、
成分I)〜IV)の重量の割合を合計すると100.0重量%になり、
II.、またはII.、III.、および/もしくはIV.の混合物は、屈折率をISO 489(A法)により測定した際に、Iの屈折率との差が、0.01単位以下、好ましくは0.002単位以下、より好ましくは0.001単位以下となる屈折率を有するように選択される。
【0031】
本発明による成形組成物は、所望の特性という点で、種々な態様において改良されている。まず、本発明による成形組成物、好ましくは本発明によるPMMA成形組成物に含まれる少なくとも1種の耐衝撃性改良剤は、前記コアおよび前記2種のシェルの組成によって、具体的に選択されている。さらに、この最適な耐衝撃性改良剤は、上述した熱重合プロセスにより、少なくとも>60℃で製造される、または製造可能でなければならない。本発明による成形組成物、好ましくは本発明によるPMMA成形組成物中の耐衝撃性改良剤の重量の割合は、最大35重量%に限定されている。したがって、先行技術において一般に報告されているよりも比較的低い割合で耐衝撃性改良剤を有する成形組成物が、本発明による成形組成物の形で存在していたとしても、本発明によるこの成形組成物は、具体的にはその耐衝撃性に関して、予想外に高い値を達成する。特に、本発明による用途の耐衝撃性改良剤は、比較的小さい粒子半径、すなわち、125〜180nm、好ましくは128〜160nmの範囲の半径を有しているので、本発明による成形組成物がそのように高い耐衝撃性を有することは全く驚くべきことである。前記成形組成物は、さらに、その構成成分において、屈折率が適合している。耐衝撃性改良剤の屈折率と、その周囲のマトリックスの屈折率とが適合すると、特に曇り度に良好な影響が及ぼされる。
【0032】
本発明によるさらに好ましい一実施形態は、上記の説明による成形組成物であって、I.によるコア−シェル−シェル粒子の第2組成物が、G)として、一般式(I)で表されるスチレン系モノマー8.0重量部超、かつ、19.95重量部以下、好ましくは15.0〜19.95重量部を含むことを特徴とする成形組成物である。
【0033】
さらに、上記の説明による本発明の成形組成物は、好ましくは、I.によるコア−シェル−シェル粒子の第2組成物が<−10℃のTgを有することを特徴とする。さらに好ましくは、本発明による成形組成物は同様に、>80℃のTgを有する、I.のコア−シェル−シェル粒子の第1組成物を含む。同様に好ましくは、I.によるコア−シェル−シェル粒子の第2組成物が<−10℃のTgを有する本発明の成形組成物は、同様に、>80℃のTgを有する、I.のコア−シェル−シェル粒子の第3組成物を含む。殊に好ましくは、本発明による成形組成物は、I.によるコア−シェル−シェル粒子の第2組成物が<−10℃のTgを有し、I.によるコア−シェル粒子の第1組成物が>80℃のTgを有し、I.によるコア−シェル粒子の第3組成物が>80℃のTgを有することを特徴とする。
【0034】
前記重合b)、c)、および/またはd)は、乳化重合用標準開始剤を使用して行うことができる。好適な有機開始剤は、例えば、t−ブチルヒドロペルオキシドまたはクメンヒドロペルオキシド等のヒドロペルオキシドである。好適な無機開始剤は、過酸化水素、ならびにペルオキソ二硫酸のアルカリ金属塩およびアンモニウム塩、特にペルオキソ二硫酸ナトリウムおよびペルオキソ二硫酸カリウムである。該開始剤は、単独でも、混合物としても使用することができる。その前駆体は、単独または混合して使用することができる。開始剤は、特定の段階において前記モノマーの総重量を基準として、0.05〜3.0重量%の量で使用するのが好ましい。
【0035】
さらに好ましい一実施形態では、工程b)からd)における重合は、ペルオキソ二硫酸塩、好ましくはペルオキソ二硫酸アンモニウムおよび/またはアルカリ金属ペルオキソ二硫酸塩を使用して行われる。
【0036】
重合開始剤として、例えば、水相を基準として0.01〜0.5重量%のアルカリ金属ペルオキソ二硫酸塩またはペルオキソ二硫酸アンモニウムを使用してもよく、前記重合開始剤は、60〜95℃の温度で前記重合を引き起こす。レドックス系、例えば、0.01〜0.05重量%の有機ヒドロペルオキシドおよび0.05〜0.15重量%のRongalit(登録商標)からなるレドックス系を使用して、70〜85℃の温度で作業するのが好ましい。硬質相の重合においては、一般に、好適な量の連鎖移動剤、例えばメルカプタンを併用して、硬質相ポリマーの分子量を、前記三相の乳化重合体により改良される成形組成物の分子量に適合させる。
【0037】
前記開始剤を最初に投入または計量投入してもよい。また、前記開始剤の一部を最初に投入し、残りを計量投入してもよい。
【0038】
乳化剤および/または保護コロイドによって、前記混合物を安定させてもよい。低い分散液粘度を得るために、乳化剤を使用して安定させるのが好ましい。
【0039】
I.を得るための前記プロセスにおいて、アニオン性および/または非イオン性乳化剤を使用してもよい。
【0040】
I.を得るための前記プロセスにおいて、工程a)では、水90.00〜99.99重量部および乳化剤0.01〜10.00重量部を最初に投入することが好ましく、その際、上述した重量の割合を合計すると100.00重量部になる。
【0041】
乳化剤の総量は、モノマーA)〜J)の総重量を基準として、好ましくは0.1〜5重量%、特に0.5〜3重量%である。特に好適な乳化剤は、アニオン性および/もしくは非イオン性乳化剤またはこれらの混合物であり、特に、
【0042】
・アルキル硫酸塩、好ましくはアルキルラジカル中に炭素原子8〜18個を有するアルキル硫酸塩、アルキルラジカル中に炭素原子8〜18個を有し、かつ、酸化エチレン単位1〜50個を有するアルキルエーテル硫酸塩およびアルキルアリールエーテル硫酸塩、
・スルホン酸塩、好ましくはアルキルラジカル中に炭素原子8〜18個を有するアルキルスルホン酸塩、アルキルラジカル中に炭素原子8〜18個を有するアルキルアリールスルホン酸塩、スルホコハク酸とアルキルラジカル中に炭素原子4〜15個を有する1価アルコールまたはアルキルフェノールとのエステルおよびモノエステルであり、これらのアルコールまたはアルキルフェノールは、任意選択で、酸化エチレン単位1〜40個でエトキシ化されていてもよい、
・リン酸部分エステル、ならびにそのアルカリ金属塩およびアンモニウム塩、好ましくはアルキルラジカルまたはアルキルアリールラジカル中に炭素原子8〜20個を有し、かつ、酸化エチレン単位1〜5個を有するアルキルリン酸塩およびアルキルアリールリン酸塩、
・アルキルポリグリコールエーテル、好ましくはアルキルラジカル中に炭素原子8〜20個を有し、かつ、酸化エチレン単位8〜40個を有するアルキルポリグリコールエーテル、
・アルキルアリールポリグリコールエーテル、好ましくはアルキルラジカルまたはアルキルアリールラジカル中に炭素原子8〜20個を有し、かつ、酸化エチレン単位8〜40個を有するアルキルアリールポリグリコールエーテル、
・酸化エチレン/酸化プロピレンコポリマー、好ましくは8〜40個の酸化エチレン単位および/または酸化プロピレン単位を有する酸化エチレン/酸化プロピレンコポリマー、好ましくはブロックコポリマー。
【0043】
本発明の一実施形態では、乳化重合は、パラフィンスルホン酸塩、アルキルスルホコハク酸塩、アルコキシル化パラフィン、および硫酸化パラフィンからなる群から選択されるアニオン性乳化剤の存在下で行われる。
【0044】
好ましくは、アニオン性乳化剤と非イオン性乳化剤との混合物を使用する。アニオン性乳化剤として、スルホコハク酸とアルキルラジカル中に炭素原子4〜15個を有する一価アルコールまたはアルキルフェノールとのエステルまたはモノエステルと、非イオン性乳化剤として、アルキルポリグリコールエーテル、好ましくはアルキルラジカル中に炭素原子8〜20個を有し、かつ、酸化エチレン単位8〜40個を有するアルキルポリグリコールエーテルとの、重量比8:1〜1:8の混合物が特に好ましいことが分かっている。
【0045】
任意選択で、前記乳化剤は保護コロイドと混合して使用してもよい。好適な保護コロイドとして、例えば、部分加水分解ポリビニルアセテート、ポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、デンプン、タンパク質、ポリ(メタ)アクリル酸、ポリ(メタ)アクリルアミド、ポリビニルスルホン酸、メラミンホルムアルデヒドスルホン酸塩、ナフタレンホルムアルデヒドスルホン酸塩、スチレン−マレイン酸コポリマー、およびビニルエーテル−マレイン酸コポリマーが挙げられる。保護コロイドを使用する場合、モノマーA)〜J)の総量を基準として0.01〜1.0重量%の量の保護コロイドを使用するのが好ましい。前記保護コロイドは、重合開始前に最初に投入または計量投入することができる。
【0046】
好ましい一実施形態では、I.を得るためのプロセスにおいて、アルキルラジカル中に炭素原子12〜20個を有するアルキルアルコールを含有する水性エマルションを最初に投入する。
【0047】
前記混合物を前記重合温度に加熱し、かつ、開始剤を好ましくは水溶液の形で計量投入することにより、前記重合を開始するのが好ましい。乳化剤およびモノマーは、別個に、または混合物として計量添加することができる。乳化剤とモノマーとの混合物を計量添加する場合、重合反応器の上流に接続された混合器中で乳化剤とモノマーとを予め混合する手順で行われる。最初に投入されなかった乳化剤の残りおよびモノマーの残りを、重合開始後、別個に計量投入するのが好ましい。前記計量添加は、重合が開始してから15〜35分後に始めるのが好ましい。
【0048】
さらに、最初の投入物が、好ましくはアルキル(メタ)アクリレートを重合することによって得られる、いわゆる「シードラテックス」を含有することが、本発明の目的にとって特に有利である。
【0049】
シードラテックスを含有する水性エマルションa)を最初に投入するのが好ましい。好ましい一実施形態では、コールター法によって測定した粒径が10.0〜40.0nmの範囲にあるシードラテックスを最初に投入する。
【0050】
この小さな半径は、シードラテックスへの所定の重合の後に算出することができる。すなわち、シードラテックスの周囲にシェルを形成し、そのようにして製造した粒子の半径をコールター法によって測定した。文献に公知の、粒子サイズを算出するこの方法は、狭い測定開口部を前記粒子が通過する際に特徴的に変化する電気抵抗の測定に基づく。より詳細な内容については、例えば、Nachr.Chem.Tech.Lab.43,553−566(1995)に見出すことができる。
【0051】
実際のコアのモノマー構成成分、つまり第1組成物を、好ましくは粒子が新たに形成されるのを回避する条件下で、シードラテックスに添加する。これにより、第1プロセス段階で形成されたポリマーは、シードラテックスの周囲にシェル状に堆積する。同様に、第1シェル材料(第2組成物)のモノマー構成成分を、粒子が新たに形成されるのを回避する条件下で、乳化重合体に添加する。これにより、第2段階で形成されたポリマーは、すでに形成されているコアの周囲にシェル状に堆積する。この手順を、さらに追加されるシェル毎に対応して繰り返す。
【0052】
本発明のさらに好ましい一実施形態では、本発明によるコア−シェル−シェル粒子は、シードラテックスの代わりに、長鎖脂肪族アルコール、好ましくは炭素原子12〜20個を有する長鎖脂肪族アルコールを乳化した形で最初に投入する乳化重合法によって得られる。このプロセスの好ましい一実施形態では、長鎖脂肪族アルコールとしてステアリルアルコールを使用する。コア−シェル−シェル構造は、上述の手順と同様に、粒子が新たに形成されるのを回避しながら、対応するモノマーを段階的に添加および重合させることにより得られる。重合方法のさらなる詳細については、当業者は、独国特許第DE3343766号、第DE3210891号、第DE2850105号、第DE2742178号、および第DE3701579号特許明細書に見出すことができる。
【0053】
しかし、本発明の範囲において、前記の具体的な手順とは関係なく、I.を得るためのプロセスで、特に好ましくは、((c)による)第2の組成物および((d)による)第3の組成物を、その消費量の程度に応じて計量投入することであることが分かっている。
【0054】
鎖長の調節、特に第2シェル(第3組成物)の(コ)ポリマーの鎖長の調節は、分子量調節剤(連鎖移動剤)の存在下、例えば特にその目的のため公知のメルカプタン、例えばn−ブチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、2−メルカプトエタノール、2−エチルヘキシルチオグリコレート、またはペンタエリトリトールテトラチオグリコレートの存在下で、モノマーまたはモノマー混合物を重合することにより実施することができ、このとき、モノマー混合物を基準として、一般に0.05〜5重量%の量、好ましくは0.1〜2重量%の量、よりに好ましくは0.2〜1重量%の量の分子量調節剤を使用する(例えば、H. Rauch−Puntigam, Th. Volker著「Acryl− und Methacrylverbindungen(アクリルおよびメタクリル化合物)」、Springer, Heidelberg, 1967、 Houben−Weyl著「Methoden der organischen Chemie(有機化学の方法)」第XIV/1巻、66頁、Georg Thieme、Heidelberg、1961、または「Kirk−Othmer, Encyclopedia of Chemical Technology(カークオスマー化学工学百科事典)」第1巻、29611頁、J. Wiley, New York, 1978参照)。分子量調節剤として、n−ドデシルメルカプタンを使用するのが好ましい。
【0055】
本発明によれば、I.を得るためのプロセスにおいて、物質A)〜J)全ての相対的割合は、コールター法により測定した総半径が、>125.0nmかつ<180nm、好ましくは>128.0nmかつ<160nm、より好ましくは>135.0nmかつ<150nmの範囲にあるコア−シェル−シェル粒子が得られるように選択される。
【0056】
I.を得るためのプロセスにおいて、物質A)〜J)全ての相対的割合を、物質A)〜J)の全重量が、水性分散液の総重量を基準として、少なくとも30重量%、好ましくは40〜50重量%であるように選択することが、本発明の目的には特に有利である。
【0057】
この点に関連して、用語「凝集物」は、水不溶性構成成分、好ましくは、DIN4188による濾布第0.90号が張られたフィルタースリーブを介して適切に分散液を濾過することによって濾別することができる水不溶性成分を意味する。本発明によるコア−シェル−シェル粒子は、例えば、噴霧乾燥、凍結凝集、電解液の添加による析出、または、独国特許出願公開第DE2750682A1号または米国特許第US4110843号により実施可能なベント式押出機を使用した機械的または熱的負荷によって、分散液から得ることができる。噴霧乾燥のプロセスは、最も一般的によく用いられるが、上述した他のプロセスも、水溶性重合助剤を少なくとも部分的にポリマーから除去するという利点を有する。
【0058】
I.によるコア−シェル−シェル粒子の、b)による第1組成物は、
A)アルキルラジカル中に炭素原子1〜20個、好ましくは1〜12個、特に1〜8個を有するアルキルメタクリレート50.0〜99.9重量部、好ましくは71.0〜99.9重量部と、
B)アルキルラジカル中に炭素原子1〜20個、好ましくは1〜12個、特に1〜8個を有するアルキルアクリレート0.0〜40.0重量部、好ましくは0.0〜19.0重量部と、
C)架橋性モノマー0.1〜10.0重量部と、
D)一般式(I)で表されるスチレン系モノマー0.0〜8.0重量部と、
を含む。
【0059】
【化2】
【0060】
ラジカルR
1〜R
5は、それぞれ独立して、水素、ハロゲン、特にフッ素、塩素、臭素、炭素数1〜6のアルキル基、または炭素数2〜6のアルケニル基であり、好ましくは水素である。ラジカルR
6は、水素または炭素数1〜6のアルキル基であり、好ましくは水素である。特に好適な炭素数1〜6のアルキル基は、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、シクロペンチル基、およびシクロヘキシル基である。
【0061】
このように、一般式(I)で表されるスチレン系モノマーとして、スチレン、側鎖にアルキル置換基を有する置換スチレン、例えばα−メチルスチレンおよびα−エチルスチレン、環にアルキル置換基を有する置換スチレン、例えばビニルトルエンおよびp−メチルスチレン、ならびに、ハロゲン化スチレン、例えばモノクロロスチレン、ジクロロスチレン、トリブロモスチレン、およびテトラブロモスチレンが挙げられる。
【0062】
I.により本発明に従って使用されるコア−シェル−シェル粒子の特定の一実施形態では、第1組成物は、
A)アルキルラジカル中に炭素原子1〜20個、好ましくは1〜12個、特に1〜8個を有するアルキルメタクリレート75.0〜99.9重量部、好ましくは85.0〜99.8重量部と、
B)アルキルラジカル中に炭素原子1〜20個、好ましくは1〜12個、特に1〜8個を有するアルキルアクリレート0.0〜24.9重量部、特に0.1〜14.9重量部と、
C)架橋性モノマー0.1〜5.0重量部、特に0.1〜2.0重量部と、
D)一般式(I)で表されるスチレン性モノマー0.0〜8.0重量部と、
を含み、
上述した重量の割合を合計すると100.0重量部になる。
【0063】
本発明によれば、化合物A)、B)、C)、およびD)は、互いに異なり、特に化合物A)およびB)としては、架橋性モノマーC)は含まれない。
【0064】
上述のアルキルメタクリレート(A)は、メタクリル酸エステル類、例えば、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、sec−ブチルメタクリレート、tert−ブチルメタクリレート、ペンチルメタクリレート、ヘキシルメタクリレート、ヘプチルメタクリレート、オクチルメタクリレート、2−オクチルメタクリレート、エチルヘキシルメタクリレート、ノニルメタクリレート、2−メチルオクチルメタクリレート、2−tert−ブチルヘプチルメタクリレート、3−イソプロピルヘプチルメタクリレート、デシルメタクリレート、ウンデシルメタクリレート、5−メチルウンデシルメタクリレート、ドデシルメタクリレート、2−メチルドデシルメタクリレート、トリデシルメタクリレート、5−メチルトリデシルメタクリレート、テトラデシルメタクリレート、ペンタデシルメタクリレート、ヘキサデシルメタクリレート、2−メチルヘキサデシルメタクリレート、ヘプタデシルメタクリレート、5−イソプロピルヘプタデシルメタクリレート、5−エチルオクタデシルメタクリレート、オクタデシルメタクリレート、ノナデシルメタクリレート、エイコシルメタクリレート、シクロアルキルメタクリレート類、例えばシクロペンチルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、3−ビニル−2−ブチル−シクロヘキシルメタクリレート、シクロヘプチルメタクリレート、シクロオクチルメタクリレート、ボルニルメタクリレート、およびイソボルニルメタクリレートを意味すると解釈される。
【0065】
本発明の特に好ましい一実施形態では、第1組成物は、成分A)〜D)の総重量を基準として、少なくとも50重量%、好適には少なくとも60重量%、好ましくは少なくとも75重量%、特に85重量%のメチルメタクリレートを含有する。
【0066】
上述のアルキルアクリレート(B)は、アクリル酸エステル類、例えば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、イソプロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、sec−ブチルアクリレート、tert−ブチルアクリレート、ペンチルアクリレート、ヘキシルアクリレート、ヘプチルアクリレート、オクチルアクリレート、2−オクチルアクリレート、エチルヘキシルアクリレート、ノニルアクリレート、2−メチルオクチルアクリレート、2−tert−ブチルヘプチルアクリレート、3−イソプロピルヘプチルアクリレート、デシルアクリレート、ウンデシルアクリレート、5−メチルウンデシルアクリレート、ドデシルアクリレート、2−メチルドデシルアクリレート、トリデシルアクリレート、5−メチルトリデシルアクリレート、テトラデシルアクリレート、ペンタデシルアクリレート、ヘキサデシルアクリレート、2−エチルヘキサデシルアクリレート、ヘプタデシルアクリレート、5−イソプロピルヘプタデシルアクリレート、5−エチルオクタデシルアクリレート、オクタデシルアクリレート、ノナデシルアクリレート、エイコシルアクリレート、シクロアルキルアクリレート類、例えばシクロペンチルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、3−ビニル−2−ブチルシクロヘキシルアクリレート、シクロヘプチルアクリレート、シクロオクチルアクリレート、ボルニルアクリレート、およびイソボルニルアクリレートを意味すると解釈される。
【0067】
架橋性モノマー(C)としては、本重合条件下で架橋を引き起こすことが可能な全ての化合物が含まれる。このような架橋性モノマー(C)として、特に以下の化合物が挙げられる。
(a)二官能性(メタ)アクリレート、好ましくは下記一般式で表される化合物:
【0068】
【化3】
【0069】
式中、Rは、水素またはメチルラジカルであり、nは、2以上の正の整数、好ましくは3〜20であり、特にプロパンジオール、ブタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、ノナンジオール、デカンジオール、およびエイコサンジオールのジ(メタ)アクリレート、
以下の一般式で表される化合物:
【0070】
【化4】
【0071】
式中、Rは、水素またはメチルラジカルであり、nは1〜14の正の整数であり、特に、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ドデカエチレングリコール、テトラデカエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピルグリコール、およびテトラデカプロピレングリコールのジ(メタ)アクリレート、
グリセロールジ(メタ)アクリレート、2,2′−ビス[p−(γ−メタクリロイルオキシ−β−ヒドロキシプロポキシ)フェニルプロパン]またはビス−GMA、ビスフェノールAジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1分子当たり2〜10個のエトキシ基を有する2,2′−ジ(4−メタクリロイルオキシポリエトキシフェニル)プロパン、および1,2−ビス(3−メタクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)ブタン、
(b)三官能性または多官能性(メタ)アクリレート、特にトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートおよびペンタエリトリトールテトラ(メタ)アクリレート、
(c)異なる反応性のC−C二重結合を少なくとも2つ有するグラフト架橋剤、特にアリルメタクリレートおよびアリルアクリレート、ならびに
(d)芳香族架橋剤、特に1,2−ジビニルベンゼン、1,3−ジビニルベンゼン、および1,4−ジビニルベンゼン。
【0072】
好ましくは、第1組成物のモノマーおよびモノマーA)〜D)の重量の割合は、第1組成物の重合によって得られるポリマーが、少なくとも10℃、好ましくは少なくとも30℃のガラス転移温度Tgを有するように選択する。ここで、前記ポリマーのガラス転移温度Tgは、示差走査熱量測定(DSC)によって公知の方法で求めることができる。さらに、ガラス転移温度Tgは、Foxの式によっても予め近似的に算出することができる。Fox T. G.著、 Bull. Am. Physics Soc.
1, 3、123頁(1956)によると、以下の式が成立する。
【0073】
【化5】
【0074】
式中x
nは、モノマーnの質量分率(重量%/100)であり、Tg
nは、モノマーnのホモポリマーのケルビン絶対温度で示されるガラス転移温度である。
当業者は、さらなる有用な情報を、最も一般的なホモポリマーのTg値について記載している「Polymer Handbook」 第2版、J. Wiley & Sons、New York(1975)により得ることができる。
【0075】
本発明によれば、特に断りのない限り、以下の具体的な数値は、Foxの式により算出された値と関連する。
【0076】
I.によるコア−シェル−シェル粒子の、c)による第2組成物は、
E)(メタ)アクリレート80.0〜99.95重量部と、
F)架橋性モノマー0.05〜5.0重量部と、
G)一般式(I)で表されるスチレン系モノマー0.0〜19.95重量部と、
を含む。
【0077】
本発明によれば、化合物E)、F)、およびG)は、互いに異なり、特に、化合物E)としては、架橋性モノマーF)は含まれない。
【0078】
特定の一実施形態では、I.によるコア−シェル−シェル粒子の第2組成物は、
E)(メタ)アクリレート80.0〜91.9重量部と、
F)架橋性モノマー0.1〜2.0重量部と、
G)一般式(I)で表されるスチレン系モノマー8.0〜19.9重量部と、
を含み、
上述した重量の割合を合計すると、好ましくは100.0重量部になる。
【0079】
本発明の範囲では、(メタ)アクリレートは、アクリレートおよびメタクリレート、ならびにこの2つの混合物を意味する。したがって、そのような(メタ)アクリレートとして、以下の式で表される少なくとも1つの基を有する化合物が挙げられる。
【0080】
【化6】
【0081】
式中、Rは、水素またはメチルラジカルである。これらの化合物として、特に、上述のアルキルアクリレートおよびアルキルメタクリレートが挙げられる。さらに、アリールアルキルアクリレート、特にベンジルアクリレート、フェニルエチルアクリレート、フェニルプロピルアクリレート、フェニルペンチルアクリレート、および/またはフェニルヘキシルアクリレートもまた、本発明の目的のために特に有用であることが分かっている。これらの化合物を、好ましくは、成分E)およびF)の総重量を基準として、0.1〜40.0重量%の範囲の量で使用する。
【0082】
本発明によれば、架橋性モノマーF)は、上述の架橋性モノマーC)を含む。
【0083】
好ましくは、E)は、アルキルラジカル中に炭素原子3〜8個を有するアルキルアクリレートおよび/またはアルキルラジカル中に炭素原子7〜14個を有するアルキルメタクリレートを含む。
【0084】
本発明のさらに特に好ましい一実施形態では、I.によるコア−シェル−シェル粒子の第2組成物は、
E)アルキルラジカル中に炭素原子3〜8個を有するアルキルアクリレートおよび/またはアルキルラジカル中に炭素原子7〜14個を有するアルキルメタクリレート、特にブチルアクリレートおよび/またはドデシルメタクリレート90.0〜99.9重量部と、
F)架橋性モノマー0.1〜2.1重量部と、
G)一般式(I)で表されるスチレン系モノマー0.0〜9.9重量部、好ましくは8.0〜9.9重量部と、
を含み、
前記重量の割合を合計すると、好ましくは100.0重量部になる。
【0085】
さらに、第2組成物のモノマーおよびモノマーE)〜F)の重量の割合は、好ましくは、第2組成物の重合によって得られるポリマーが、30℃未満、好ましくは10℃未満、特に0〜−75℃の範囲にあるガラス転移温度Tgを有するように選択する。ポリマーのガラス転移温度Tgは、ここでは、上述した通り、示差走査熱量測定(DSC)によって求める、かつ/またはFoxの式によって予め近似的に算出することができる。本発明によれば、前記測定は、Foxの式を介して行われる。
【0086】
I.によるコア−シェル−シェル粒子の、d)による第3組成物は、
H)アルキルラジカル中に炭素原子1〜20個、好ましくは1〜12個、特に1〜8個を有するアルキルメタクリレート50.0〜100.0重量部と、
I)アルキルラジカル中に炭素原子1〜20個、好ましくは1〜12個、特に1〜8個を有するアルキルアクリレート0.0〜40.0重量部と、
J)一般式(I)で表されるスチレン系モノマー0.0〜10.0重量部と、
を含む。
【0087】
好ましい一実施形態では、I.によるコア−シェル−シェル粒子の第3組成物は、
H)アルキルラジカル中に炭素原子1〜20個、好ましくは1〜12個、特に1〜8個を有するアルキルメタクリレート60.0〜100.0重量部、好ましくは77.0〜99.9重量部、特に85.0〜99.5重量部と、
I)アルキルラジカル中に炭素原子1〜20個、好ましくは1〜12個、特に1〜8個を有するアルキルアクリレート0.0〜30.0重量部、特に0.1〜15.0重量部と、
J)一般式(I)で表されるスチレン系モノマー0.0〜10.0重量部、好ましくは0.0〜8.0重量部と、
を含み、
前記重量の割合を合計すると、好ましくは100.0重量部になる。
【0088】
本発明の特に好ましい一実施形態では、I.によるコア−シェル−シェル粒子の第3組成物は、成分H)〜J)の総重量を基準として、メチルメタクリレートを少なくとも50重量%、好適には少なくとも60重量%、好ましくは少なくとも75重量%、特に85重量%含有する。
【0089】
さらに、第3組成物のモノマーおよびモノマーH)〜J)の重量の割合は、好ましくは、第3組成物の重合によって得られるポリマーが、少なくとも10℃、好ましくは少なくとも30℃のガラス転移温度Tgを有するように選択する。ポリマーのガラス転移温度Tgは、ここでは、上述した通り、示差走査熱量測定(DSC)によって求める、かつ/またはFoxの式によって予め近似的に算出することができる。特に断りのない限り、前記測定は、Foxの式を介して行われる。
【0090】
コア−シェル−シェル粒子I.は、好ましくは本発明による成形組成物、例えばポリ(メタ)アクリレート成形組成物、特にポリメチルメタクリレートにおいて、硬質相と相溶性のある硬質の熱可塑性プラスチックの耐衝撃性を改良する働きをする。
【0091】
好ましくは、II.による少なくとも1種の(メタ)アクリルポリマーは、いずれの場合もその総重量を基準として、
a)アルキルラジカル中に炭素原子1〜20個、好ましくは1〜12個、好適には1〜8個、特に1〜4個を有するアルキルメタクリレート繰返し単位52.0〜100.0重量%と、
b)アルキルラジカル中に炭素原子1〜20個、好ましくは1〜12個、好適には1〜8個、特に4個以下を有するアルキルアクリレート繰返し単位0.0〜40.0重量%と、
c)一般式(I)で表されるスチレン系繰返し単位0.0〜8.0重量%と、
を含み、
前記重量の割合を合計すると、好ましくは100.0重量%になる。
【0092】
より好ましくは、II.による少なくとも1種の(メタ)アクリルポリマーは、いずれの場合もその総重量を基準として、
a)アルキルラジカル中に炭素原子1〜20個、好ましくは1〜12個、好適には1〜8個、特に1〜4個を有するアルキルメタクリレート繰返し単位68.0〜100.0重量%、好ましくは75.0〜99.9重量%、特に85.0〜99.5重量%と、
b)アルキルラジカル中に炭素原子1〜20個、好ましくは1〜12個、好適には1〜8個、特に4個以下を有するアルキルアクリレート繰返し単位0.0〜25.0重量%、好ましくは0.1〜17.0重量%、特に0.5〜15.0重量%と、
c)一般式(I)で表されるスチレン系繰返し単位0.0〜8.0重量%と、
を含み、
前記重量の割合を合計すると、好ましくは100.0重量%になる。
【0093】
本発明のさらに特に好ましい一実施形態では、II.による少なくとも1種の(メタ)アクリルポリマーは、その総重量を基準として、メチルメタクリレート繰返し単位を少なくとも50.0重量%、好適には少なくとも60.0重量%、好ましくは少なくとも75.0重量%、特に少なくとも85.0重量%含有する。
【0094】
本発明のさらに同様に好ましい一実施形態では、II.による少なくとも1種の(メタ)アクリルポリマーは、いずれの場合もII.による前記(メタ)アクリルポリマーの総重量を基準として、アルキルラジカル中に炭素原子1〜20個を有するアルキルアクリレート繰返し単位を≦8重量%、好ましくは≦6重量%、さらに好ましくは≦4重量%、殊に好ましくは≦2重量%、最も好ましくは≦1重量%含有する。前記アルキルアクリレート繰返し単位は、メチルアクリレート繰返し単位であることがより好ましい。
【0095】
さらに、II.による少なくとも1種の(メタ)アクリルポリマーは、10,000〜1,000,000g/mol、好ましくは50,000〜500,000g/mol、特に60,000〜100,000g/molの範囲の数平均分子量を有することが好ましい。ここで、前記分子量は、例えば、標準ポリスチレンを使用して較正するゲル浸透クロマトグラフィーにより測定することができる。
【0096】
最も好ましくは、構成成分II.は、2種以上の異なる(メタ)アクリルポリマーを含む。少なくとも1種の他の(メタ)アクリルポリマーが含まれる場合、この(メタ)アクリルポリマーは、分子量が小さいことが特に好ましい。低分子量の前記(メタ)アクリルポリマーは、1,000〜70,000g/mol、好ましくは5,000〜60,000g/molの範囲の数平均分子量を有することが特に好ましい。低分子量の前記(メタ)アクリルポリマーは、(メタ)アクリルポリマーII.の総重量を基準として、2〜20重量%、好ましくは5〜10重量%を占めてもよい。低分子量の(メタ)アクリルポリマーを比例添加すると、射出成形または射出圧縮成形全体において得られる成形材料の加工性が改良される。低分子量の(メタ)アクリルポリマーの形をとる標準流動性向上剤は、当業者に周知である。
【0097】
好ましくは、II.による少なくとも1種の(メタ)アクリルポリマーは、少なくとも1種のコポリマー、好ましくは少なくとも1種の高Tgコポリマーの形をとっていてもよい。本発明の範囲において、「高Tg」とは、ISO 11357による窒素雰囲気下での示差走査熱量測定により求めた、高TgコポリマーのTg(ガラス転移温度)が、ポリメチルメタクリレートのTgよりも高い、好ましくは少なくとも110℃、より好ましくは少なくとも115℃、さらに好ましくは少なくとも120℃、特に好ましくは少なくとも125℃でさえあることを意味すると解釈される。「高Tg」組成物は、a)メチルメタクリレートと少なくとも1種の他のモノマーとからなる「高Tg」コポリマーであり、結果として生じた前記コポリマーは約105℃のポリメチルメタクリレートのTgよりも高いTgを有するか、またはb)(メタ)アクリルポリマーと少なくとも1種の混合可能な、部分的に混合可能な、または相溶性のポリマーとからなる混合物であり、混合可能なポリマーの場合には全体のTgが、または部分的に混合可能なポリマーの場合には各Tgのうち少なくとも1つが110℃よりも高いか、またはc)任意に重合したPMMAよりもシンジオタクティシティのレベルがより高いポリメチルメタクリレートである。
【0098】
コポリマー中、高いTgを付与することができる好適なモノマーとして、メタクリル酸、アクリル酸、イタコン酸、置換スチレン、α−メチルスチレン、無水マレイン酸、イソボルニルメタクリレート、ノルボルニルメタクリレート、t−ブチルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、置換シクロヘキシルメタクリレート、ビニルシクロヘキサン、フェニルメタクリレート、アクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、メタクリルアミド、置換マレイミド、グルタルイミド、およびマレイミドが挙げられるが、これらに限定されない。
【0099】
好ましい一実施形態では、本発明による成形組成物は、前記成形組成物の総重量を基準として、III.によるスチレン−アクリロニトリルコポリマーを45重量%以下、特に1.0〜45重量%含有する。特に好ましくは、III.によるスチレン−アクリロニトリルコポリマーは、混合物の重合により得られる、かつ/または得ることが可能であり、前記混合物は、いずれの場合もその総重量を基準として、
スチレン70〜92重量%と、
アクリロニトリル8〜30重量%と、
他のコモノマー0〜22重量%と、
を含む。
【0100】
本発明による成形組成物は、好適にその特性を改良するために、IV.によるさらに他の添加剤、特にポリマーを含有してもよい。
【0101】
IV.による従来の添加剤は、目的に合ったいずれの加工段階において添加してもよい。これら従来の添加剤として、染料、顔料、充填剤、強化繊維、潤滑剤、紫外線安定剤などが挙げられる。
【0102】
本発明による成形組成物の総重量を基準として、この成形組成物は、IV.による添加剤として、他のポリマー(AP)を0.1〜10.0重量%、好ましくは0.5〜5.0重量%、特に1.0〜4.0重量%含有してもよく、前記ポリマーは、II.による少なくとも1種の(メタ)アクリルポリマーと比較して、少なくとも10%、好ましくは少なくとも50%、特に少なくとも100%高い重量平均分子量を有する。ここで、前記分子量は、例えば、標準ポリスチレンを使用して較正するゲル浸透クロマトグラフィーによって測定することができる。
【0103】
本発明に従って特に好適なポリマー(AP)は、いずれの場合もその総重量を基準として、好ましくは、
a)アルキルラジカル中に炭素原子1〜20個、好ましくは1〜12個、好適には1〜8個、特に1〜4個を有するアルキルメタクリレート繰返し単位52.0〜100.0重量%、好適には60.0〜100.0重量%、好ましくは75.0〜99.9重量%、特に85.0〜99.5重量%と、
b)アルキルラジカル中に炭素原子1〜20個、好ましくは1〜12個、好適には1〜8個、特に1〜4個を有するアルキルアクリレート繰返し単位0.0〜40.0重量%、好適には0.0〜32.0重量%、好ましくは0.1〜17.0重量%、特に0.5〜7.0重量%と、
c)一般式(I)で表されるスチレン系繰返し単位0.0〜8.0重量%と、
を含み、
前記重量の割合を合計すると100.0重量%になる。
【0104】
本発明の特に好ましい一実施形態では、前記ポリマー(AP)は、その総重量を基準として、メチルメタクリレート繰返し単位を少なくとも50.0重量%、好適には少なくとも60.0重量%、好ましくは少なくとも75.0重量%、特に少なくとも85.0重量%含有する。
【0105】
さらに、前記ポリマー(AP)は、10,000〜100,000,000g/mol、好ましくは50,000〜5,000,000g/mol、好適には100,000〜1,000,000g/mol、特に250,000〜600,000g/molの範囲の重量平均分子量を有するのが好ましい。ここで、前記分子量は、例えば、標準ポリスチレンを使用して較正するゲル浸透クロマトグラフィーによって測定することができる。
【0106】
他の好適なポリマー(AP)は、ポリアクリロニトリル、ポリスチレン、ポリエーテル、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリテトラフルオロエチレン、およびポリ塩化ビニルである。前記ポリマーは、単独でも、混合物としても使用することもできる。
【0107】
本発明による成形組成物は、多様な方法で製造することができる。例えば、コア−シェル−シェル粒子I.の分散液と、混合成分の水性分散液とを混合し、得られた混合物を凝集させ、水相を除去し、凝集物を合体させて成形組成物を形成することができる。このプロセスにおいては、前記2種の成分を特に均質に混合することができる。また、前記成分は、別個に製造し、分離しておき、そして、その溶融物の形で、または粉末もしくは顆粒として混合し、多軸スクリュー押出機またはロールミルで均質化することもできる。
好ましくは、本発明による成形組成物は、以下の特性を有する。
a.ISO 179によるシャルピー衝撃強さが、23℃で、少なくとも40.0kJ/m
2、好ましくは少なくとも60.0kJ/m
2、より好ましくは少なくとも80.0kJ/m
2であり、
b.ASTM D 1003(1997)による曇り度が、23℃で≦3%、好ましくは23℃で≦2%、さらに好ましくは23℃で≦1.5%、殊に好ましくは23℃で≦1.0%であり、かつ、ASTM D 1003(1997)による曇り度が、80℃で≦21%、好ましくは80℃で≦20%、さらに好ましくは80℃で≦18%、殊に好ましくは80℃で≦16%であり、
c.DIN ISO 306(1994年8月)によるビカー軟化温度が、≧98℃、好ましくは≧99℃、より好ましくは≧100℃、殊に好ましくは≧102℃であり、かつ、
d.ISO 1133(230℃;3.8kg)による溶融体積流量(MVR)が、≧1.5cm
3/10min、好ましくは≧2.0cm
3/10min、さらに好ましくは≧2.5cm
3/10minである。
【0108】
本発明の範囲においては、本発明による成形組成物の曇り度は、常に、3mmの射出成形物で測定する。
【0109】
本願は、さらに、本発明による成形組成物から得ることができる成形品を提供する。
【0110】
本発明による成形組成物は、成形品、好適には1mm超の壁厚を有する成形品、例えば良好に打抜き加工でき、かつ例えば電化製品用の印刷可能なカバープレートを製造するのに有用である1〜10mmの厚さの押出シートを製造するのに特に好適であり、または、高品質の射出成形物、例えば自動車用パネルを製造するのに特に好適である。例えば50μmの厚さの薄膜も同様に前記成形組成物から製造することができる。
【0111】
本発明の成形品は、好ましくは、以下の特性を有する。
a.ISO 179によるシャルピー衝撃強さが、23℃で、少なくとも40.0kJ/m
2、好ましくは少なくとも60.0kJ/m
2、より好ましくは少なくとも80.0kJ/m
2であり、
b.ASTM D 1003(1997)による曇り度が、23℃で≦3%、好ましくは23℃で≦2%、さらに好ましくは23℃で≦1.5%、殊に好ましくは23℃で≦1.0%であり、かつ、ASTM D 1003(1997)による曇り度が、80℃で≦21%、好ましくは80℃で≦20%、さらに好ましくは80℃で≦18%、殊に好ましくは80℃で≦16%であり、
c.DIN ISO 306(1994年8月)によるビカー軟化温度が、≧98℃、好ましくは≧99℃、より好ましくは≧100℃、殊に好ましくは≧102℃であり、
d.ISO 1133 (230℃;3.8kg)による溶融体積流量(MVR)が、≧1.5cm
3/10min、好ましくは≧2.0cm
3/10min、さらに好ましくは≧2.5cm
3/10minである。
【0112】
本発明の範囲では、本発明による成形品の曇り度は、製造した3mmの射出成形物で測定する(前記射出成形物は、成型品を再度顆粒状にした後、射出成形して所望の形にすることによって得られる)。
【0113】
驚くべきことに、高温での曇り度の増加が明らかに低いという特性が分かっており、そのような特性により、製品は、照明およびグレージング等の用途に特に好適である。製品を信号色の照明用途で使用する場合、曇り度の増加によって色軌跡が変化することはないと予想される。
【0114】
本発明に従って耐衝撃性が改良された成形組成物の他の利用分野は、自動車グレージングである。靭性への要求は、耐熱変形性と、例えば高い透明度と高温でも極めて低い曇り度とが両立しているといった光学特性とを組み合わせることで満たされる。
【0115】
したがって、本発明はさらに、本発明による成形組成品の使用に関し、かつ、発明による成形品の使用に関する。
【0116】
特に、本発明は、本発明による成形組成物の使用であって、射出成形における、大きく、かつ/または薄い壁に囲まれた部材の製造、およびガラス板/グレージングの製造(例えば、
乗り物のライト、すなわち、ヘッドライトまたはテールライト用カバー、自動車のライト用着色カバー、また、特に破損、熱安定性、および良好な加工性に関する高い要求を満たさなくてはならない、建物の屋内および/または屋外照明器具用のさらに様々な照明用途)のための前記成形組成物の使用に関する。
【0117】
射出成形または射出圧縮成形による前記成形物の製造において、多くの場合、成形物の寸法は大きく、壁厚は薄いので、溶融した成形組成物が良好な流動特性を有することが特によく必要とされる。
【0118】
自動車のライト用着色ガラスカバーは、SAEおよびECEによる色軌跡に関する公的、法的要件を満たさなければならないので、その着色ガラスカバーの製造のために本発明による成形組成物を使用することは特に適切である。
【0119】
本発明は、さらに、通信機器、特にPDA、携帯電話、好ましくはスマートフォン、タブレットPC、TV機器、台所用電気機器、および他の電子機器用のディスプレイの製造のための、本発明による成形組成物の使用に関する。
【0120】
特に好ましくは、本発明は、射出成形において、大きく、かつ/または薄い壁に囲まれた部材を製造するための、本発明による成形組成物の使用に関し、前記部材は、熱媒体および/または放射熱(例えば、照明結合)に接触するので、特に熱安定性に関して高い要求を満たさなくてはならない。
【0121】
特に、本発明はさらに、耐衝撃性が改良され、大きく、かつ/または薄い壁に囲まれた、射出成形による部材の形、およびガラス板/グレージング(例えば、自動車のライト、すなわち、ヘッドライトまたはテールライト用ガラスカバー、自動車のライト用着色ガラスカバー、また、特に破損、熱安定性、および良好な加工性に関する高い要求を満たさなくてはならない、建物の屋内および/または屋外照明器具用のさらに様々な照明用途)の形をとった本発明による成形品の使用に関する。
【0122】
本発明はさらに、通信機器、特にPDA、携帯電話、好ましくはスマートフォン、タブレットPC、TV機器、台所用電気機器、および他の電子機器用のディスプレイの形をとった本発明による成形品の使用に関する。
【0123】
以下の実施例により、本発明を詳細に説明する。