(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6681904
(24)【登録日】2020年3月26日
(45)【発行日】2020年4月15日
(54)【発明の名称】複雑なウエルが設けられた先端を含むタービンエンジンブレードの製造方法
(51)【国際特許分類】
F02C 7/00 20060101AFI20200406BHJP
F01D 25/00 20060101ALI20200406BHJP
F01D 5/18 20060101ALI20200406BHJP
F01D 9/02 20060101ALI20200406BHJP
B22D 29/00 20060101ALI20200406BHJP
B22C 9/10 20060101ALI20200406BHJP
B22C 9/24 20060101ALI20200406BHJP
【FI】
F02C7/00 D
F01D25/00 X
F01D5/18
F01D9/02 102
B22D29/00 F
B22C9/10 F
B22C9/24 C
【請求項の数】5
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2017-532815(P2017-532815)
(86)(22)【出願日】2015年12月15日
(65)【公表番号】特表2018-506671(P2018-506671A)
(43)【公表日】2018年3月8日
(86)【国際出願番号】FR2015053517
(87)【国際公開番号】WO2016097586
(87)【国際公開日】20160623
【審査請求日】2018年12月6日
(31)【優先権主張番号】1462614
(32)【優先日】2014年12月17日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】516227272
【氏名又は名称】サフラン・エアクラフト・エンジンズ
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】特許業務法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】コイ,ドミニク
(72)【発明者】
【氏名】バリオー,クリスチャン
(72)【発明者】
【氏名】ベニシュー,サミー
(72)【発明者】
【氏名】アニー,ジャン−クロード・マルセル・オーギュスト
【審査官】
高吉 統久
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2007/0025851(US,A1)
【文献】
特開平01−195902(JP,A)
【文献】
特開2011−185129(JP,A)
【文献】
特開2008−051096(JP,A)
【文献】
特開2003−181599(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22C 9/10
B22C 9/24
B22D 29/00
F01D 5/18
F01D 9/02
F01D 25/00
F02C 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷却空気の循環のための内側空間によって互いに分離された圧力側壁および吸込側壁を含むタービンエンジンブレード(25)を製造する方法にして、このブレード(25)は、閉鎖壁(29)を備えた先端部(S)を含み、閉鎖壁は、この先端部(S)の領域内で圧力側壁および吸引側壁を接合してウエル形状を画定し、この閉鎖壁(29)は貫通孔(38、39)を含み、この方法は、ウエルのような形状を画定するコア(28)と、各々の貫通孔(38、39)を画定するアルミナロッド(31、32)とを与えて成形するステップと、成形後にこのコアおよびこれらのロッドを除去するためのコア(28)の化学エッチング工程およびアルミナロッド(31、32)の化学エッチング工程と、を含む、方法であって、コア(18)には各々の貫通孔(38、39)において突起が設けられ、それによって成形によってそのように得られた閉鎖壁上(29)に、ブレードの他の壁の厚さよりも大きい公称厚さ(D)と、各々の貫通孔(38、39)において低減された厚さ(d)とを付与し、方法は、ウエルの底部において隆起パターンまたは複数のパターンを形成するためのその閉鎖壁(29)の機械加工工程を含むことを特徴とする、方法。
【請求項2】
コア(18)が、閉鎖壁上に公称厚さ(D)と、貫通孔(38、39)において低減された厚さ(d)を付与するように適合され、これらの厚さは、低減された厚さ(d)に対する公称厚さ(D)の比が、2.5以上であるようなものである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
コア(18)が、閉鎖壁上に、低減された厚さ(d)に対する公称厚さ(D)の比が5以上であるような厚さ(d、D)を付与するように適合される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
閉鎖壁の機械加工工程が、1つまたは複数のリブまたは内側仕切りをその中に形成するように構成される、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
請求項1に記載のコアの形状と対応する形状を有するコアボックスであって、そのコアを製造するように構成されたコアボックスを備える、請求項1から4のいずれか一項に記載のブレードの製造のための成形手段。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばターボジェットエンジンまたはターボプロップなどのタービンエンジンタイプの航空機エンジンのブレードの製造に関する。
【背景技術】
【0002】
図1において1で示されるこのようなエンジンでは、空気は、入口スリーブ2に導入され、一連の回転ブレード3を含む送風機を通過してから、中央の一次流れと一次流れを取り囲む二次流れに分離される。
【0003】
一次流れは、燃焼室7に達する前にタービン4および6によって圧縮され、その後、タービン8を通過することによって膨張され、その後推力を発生させることによって排出される。追加の推力を発生させるために、二次流れは送風機によって直接推進される。
【0004】
各タービン8は、ユニットを取り囲む外部ケーシング9によって担持された回転シャフトAXの周りに半径方向にかつ規則的に離間されて配向された一連のブレードを含む。
【0005】
ブレードの冷却は、燃焼の上流で取り込まれ、ブレード根元部において流入された空気を各ブレード内で循環させることによって提供され、この空気は、これらのブレードの壁を通過する孔によって排出される。
【0006】
図2に11で示されるこのようなブレードは、回転体がそれを通して固定される根元Pと、この根元Pによって担持されたベーン12とを備え、根元部およびベーンはプラットホーム13によって分離されている。
【0007】
ベーン12は、軸線AXに垂直な翌長方向軸線と呼ばれる軸線EVの周りに左ねじれ形状を有する。これは、ベースを含み、このベースによってプラットホーム13に接続され、このベースは、このベーンの自由端である先端Sまで半径方向に延ばされる。ベーンの2つの主壁は、互いに分離された圧力側壁14およびその吸込側壁である。
【0008】
ブレード11の先端Sは、方向EVに垂直であり、かつ圧力側壁および吸引側壁を連結する閉鎖壁を含む。
図2では見ることができないこの閉鎖壁は、圧力側壁および吸引側壁の自由端に対して軸線AXに向かって後退している。これは、これらの縁部と一緒に、ブレードの頭部に位置するウエルと呼ばれる、軸線AXと反対方向に開く中空部分を画定する。
【0009】
このようなブレードは、
図3に概略的に示されるように、その内側空間およびゾーンをウエルとして画定するために、特に第1および第2のコア17および18を用いて、金属材料を成形することによって製造される。これらの2つのコア17および18は、dと記されている短い距離だけ翌長方向EVに沿って互いに離間しており、
図3の19で示される閉鎖壁に対応する。
【0010】
第2のコア18は、軸線EVに平行なアルミナロッド21が通過し、アルミナロッド21は、閉鎖壁19の領域を通過し、その端部は、第1のコア17内に取り込まれる。これらのロッドは、一方では、鋳造作業中にこれらのコアを互いに対して所定の位置に維持することを可能にし、他方では、ブレードが作動しているときに塵を除去する孔を形成することを可能にする。
【0011】
ブレードを含む合金の鋳造および冷却の後、コア17および18は、化学エッチングによって除去され、これは、
図4の状況を招き、つまり、閉鎖壁19を通過するアルミナロッドの部分は、依然として存続する。シェイクアウトと呼ばれる残りのアルミナロッドの部分の除去は、第2の化学エッチングによって行われる。
【0012】
次いで、
図5に見られ得るように、ブレードは、成形に使用された細工を完全に除去し、その閉鎖壁19には、除去されたアルミナロッドに対応する2つの貫通孔22を有する。これらの孔22は、埃を除去するための孔であり、それによって、いかなる埃も確実に排出して、ブレードが作動しているとき、埃がブレードの内側に堆積することを防止する。
【0013】
性能に関するニーズの増大は、例えば、ウエル底部、すなわち閉鎖壁19によって担持されるリブまたは内側仕切りを設けることによって、ウエルの冷却を最適化することにつながる。
図6の象徴的な例における23および24で示されるこれらの仕切りまたはリブは、その冷却を均質化するように空気の流れを受けるために、ウエル内の空気力学を最適化することを目的とする。
【0014】
このようなリブまたは仕切りを追加することは、セラミック製の第2のコア18の精巧さを実質的に複雑にする。実際には、後者は、コアボックス、すなわち二部分モールドによって製造され、二部分モールドは、一方を他方から、ただし型外しの方向にしたがって分離することによって開き、ベーンの翌長方向軸線に垂直な平面内に延在する。この型外し方向は、
図6の矢印Dで示されている。
【0015】
製造指示の結果である、この型外し方向の制約は、ウエルの底部のリブを画定するスロットを第2のコアの端部に設けることができないようにする。このようなスロットはアンダーカットを形成し、それによってその製造中に第2のコアの型外しはできない。その理由は、それらの向きが型外し方向と異なるからである。
【0016】
セラミックアセンブリのいくつかの部分内に第2のコアを、両者を接着によって製造する可能性も存在する。これは、製造を実質的に複雑にし、その結果廃棄率を増加させる傾向がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明の目的は、コストおよび廃棄率を犠牲にすることなく、ウエル上に多種多様な内部形状を実施することを可能にする製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
この目的のために、本発明は、目的として、冷却空気の循環のための内側空間によって互いに分離された圧力側壁および吸込側壁を含むタービンエンジンブレードを製造する方法にして、このブレードは、閉鎖壁を備えた先端部を含み、閉鎖壁は、この先端部の領域内で圧力側壁および吸引側壁を接合してウエル形状を画定し、この閉鎖壁は貫通孔を含み、この方法は、ウエルのような形状を画定するコアと、各々の貫通孔を画定するアルミナロッドとを与えて成形するステップと、成形後にこのコアおよびこれらのロッドを除去するためのコアの化学エッチング工程およびアルミナロッドの化学エッチング工程と、を含む、方法であって、コアには各々の貫通孔において突起が設けられ、それによって成形によってそのように得られた閉鎖壁上にブレードのこれらの他の壁の厚さよりも大きい公称厚さと、各々の貫通孔において低減された厚さとを付与し、方法は、ウエルの底部において隆起パターンまたは複数のパターンを形成するためのその閉鎖壁の機械加工工程を含むことを特徴とする、方法を有する。
【0019】
そのように製造するこの方法は、ブレードが形成される未処理部分の成形に関する工程やツールの基本的な変更を伴うことなく、複雑な内部形状を有するウエルを含むブレードを製造することを可能にする。
【0020】
本発明はまた、そのように規定される方法であって、閉鎖壁上に公称厚さおよび貫通孔上に低減された厚さを付与するように適合され、これらの厚さは、低減された厚さに対する公称厚さの比が、2.5以上であるようなものである、方法にも関する。
【0021】
本発明はまた、そのように規定される方法であって、コアが、閉鎖壁上に、低減された厚さに対する公称厚さの比が5以上であるような厚さを付与するように適合される、方法に関する。
【0022】
本発明はまた、そのように規定される方法であって、閉鎖壁を機械加工する工程が、その中に1つまたは複数のリブまたは内側仕切りを形成するように構成される方法に関する。
【0023】
本発明はまた、そのように規定されるコアを製造するように構成されたコアボックスを含む、そのように規定されるブレードの製造のための成形手段に関する。
【0024】
本発明はまた、そのように規定される方法にしたがって製造されたブレードを含むタービンエンジンタービンに関する。
【0025】
本発明はまた、そのように規定されるタービンを備えるタービンエンジンに関する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】すでに説明された、ターボファンエンジンの概略横方向断面図である。
【
図2】すでに説明された、リアクタブレードの概略図である。
【
図3】すでに説明された、技術水準のブレードの成形中のブレードの断面図である。
【
図4】すでに説明された、成形に使用されるコアを除去した後の技術水準のブレードの断面図である。
【
図5】アルミナロッドを除去した後の技術水準のブレードの断面図である。
【
図6】追加の内側リブが設けられたブレードウエルの上面図である。
【
図7】本発明によるブレードの成形中の断面図である。
【
図8】成形に使用されるコアを除去した後の、本発明によるブレードの断面図である。
【
図9】アルミナロッドを除去した後の本発明によるブレードの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
図7に25で示される本発明によるブレードもまた、根元部によって担持され、
図2〜
図6のブレードのものに全体的に対応する形状を有するベーン26を含む。以下に使用される用語「下側」および「上側」は、図の配向にしたがって理解されるものとし、この場合ベーンは、上方向であり、下方に位置する根元部によって担持されるが、これは図示されない。
【0028】
このベーンはまた、互いに離間され、
図7から
図9に29で示される閉鎖壁によってベーンSの先端で合流する圧力側壁および吸引側壁を備える。この閉鎖壁は、ベーンの翌長方向EVに垂直であり、ベーンの回転軸線AXに向かって、圧力側および吸引側の壁の自由縁に対して、後方に置かれている。
【0029】
この閉鎖壁は、圧力側および吸引側の自由縁と共に、ウエルと呼ばれる軸線AXと反対の方向に開く中空部分を画定する。
【0030】
ブレードは、ここでも、
図7に示すように、内側空間およびウエルを画定する第1および第2のコア27および28を用いて、金属材料を成形することによって製造される。これら2つのコア27,28は、29で示す閉鎖壁を画定するために、翌長方向EVに沿って互いに離間されている。
【0031】
この閉鎖壁29は、ここではDとして示されている公称厚さを有しており、これは、
図6に示すものなどの仕切りまたは追加のリブをその中に形成するように機械加工することができるような従来技術のブレードの場合よりもかなり大きい。
【0032】
この閉鎖壁を、2つのコア27および28内に取り込まれた2つのアルミナロッド31,32が通過し、それによってブレード自体を構成する合金の鋳造の間、これらのコアを互いに対して適所に維持する。
【0033】
合金の鋳造および冷却の後、コア27および28は、化学エッチングによって除去され、これは、閉鎖壁29を通過するアルミナロッドの部分が依然として存続する
図8の状況に至る。シェイクアウトと呼ばれる残りのアルミナロッドの部分の除去は、第2の化学エッチングによって行われ、それによって、その成形に使用された要素のブレードを完全に取り去ることが可能になる。
【0034】
ロッドのシェイクアウト工程を可能にするために、閉鎖壁29の厚さは、アルミナロッドの各通路においてdとして示される値で低減され、この値は、この閉鎖壁29の公称厚さDよりもかなり小さい。
【0035】
シェイクアウト厚さに対応する厚さdは、好ましくは10分の6ミリメートルより大きくかつ10分の8ミリメートルより小さく、一方で壁29の公称厚さは、約2ミリメートル、好ましくは3ミリメートル以上であることができる。
【0036】
したがって、アルミナロッド31,32の各通路上のこの壁の低減された厚さに対する閉鎖壁29の公称厚さDの比は、2.5以上であり、好ましくは5以上である。
【0037】
より詳細には、閉鎖壁29の下面33、すなわち、軸線AXに最も近く、ブレードの内側空間に与える表面は、この表面を画定するコア27の端部と同様に実質的に平面である。この壁の上面34、すなわち軸線AXから最も遠くかつウエルの底を画定するものは、一方、アルミナロッドの各通路上に中空またはくぼみを含み、これらのくぼみは36および37で示されている。
【0038】
図に示すように、くぼみを有する上面のこの特定の形状は、アルミナロッドの各通路上でコア28の端部で実施される2つの隆起パターンまたは対応する突起の結果である。これらの突起は、第2のコアの製造に使用される、コアボックス、すなわちモールドの対応するゾーン上に凹部を実施するだけで得られ得る。
【0039】
各くぼみは、基本的な浴であるシェイクアウト液を受けるリザーバをシェイクアウト工程のために構成するために、先細の円錐形の円筒形状またはその他のものを有することができる。dと記された各くぼみの底部の壁の厚さは、ロッドのシェイクアウトを確実にするのに可能な最大限厚さに対応する。
【0040】
図面の例では、各くぼみは、円筒形側面によって延長された半球形の底部を含むが、特に、ブレードを形成しようとする未処理部分の製造のために提供される成形プロセスによる制約に応じて、異なる形状が考えられ得る。
【0041】
図8および
図9に概略的に示されるように、くぼみ36および37により、閉鎖壁29は、アルミナロッドの各通路上に局部的に小さい厚さを有し、これらのロッドを塩基による化学エッチングによって除去することを可能にして38および39で示される対応する埃除去孔を形成する。
【0042】
図9に示されるような粗ブレードは、その先端にウエルを示すが、その底部はかなりの公称厚さを有する。ウエルの底部を整合させるだけで、例えば
図6のような複雑な形状のリブまたは仕切りをこの底部29内に形成することが可能である。
【0043】
言い換えれば、本発明は、成形プロセスを複雑にすることなく、事実上任意のタイプのリブ、細工、流れ妨害物などが設けられ得る内部領域を有するウエルをその先端部に有するブレードを製造することを可能にする。実際、第2のコア28の端部に設けられた突起36,37により、閉鎖壁29は、成形後にこの閉鎖壁からアルミナロッドを除去するための特定のプロセスを必要とせずに大きい公称厚さを有することができる。したがって、本発明は、コアの成形および製造プロセスに犠牲を与えることなく、複雑なウエルを有するブレードを製造することを可能にする。