(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記粒子及び前記ドーピングされたリンの総重量に対する前記炭素系導電層の含量は4.5重量%〜32重量%の範囲内である、請求項1に記載のシリコン系負極活物質。
【背景技術】
【0002】
二次電池は、可逆性に優れた電極材料を用いて充電及び放電が可能な電池であって、代表的にリチウム二次電池が商用化された。前記リチウム二次電池は、スマートフォン、携帯用コンピューター、及び電子紙などのIT機器の小型電力源としてのみならず、自動車などの移動手段に搭載されたり、スマートグリッドなどの電力供給網の電力貯蔵所に使用される中大型電力源としてもその応用が期待されている。
【0003】
リチウム二次電池の負極材料としてリチウム金属を使用する場合、デントライトの形成によって電池短絡が発生したり、爆発の危険性があるので、負極には、前記リチウム金属の代わりに、リチウムの挿入及び脱離が可能な372mAh/gの理論容量を有する黒鉛及び人造黒鉛などの結晶質系炭素又はソフトカーボン及びハードカーボンなどの非晶質系炭素のような炭素系活物質が多く使用されている。しかし、二次電池の応用が拡大されるにつれて二次電池の高容量化及び高出力化がさらに要求されており、これによって、炭素系負極材料の理論容量に取って代わる500mAh/g以上の容量を有するシリコン(Si)、スズ(Sn)又はアルミニウム(Al)のようなリチウムとの合金化が可能な非炭素系負極材料が注目を受けている。
【0004】
前記非炭素系負極材料のうちシリコンは、理論容量が約4,200mAh/gに至り、容量の側面で高容量の電池応用時に重要である。しかし、シリコンは、充電時に体積が4倍ほど膨張するので、充・放電過程で体積変化によって活物質間の電気的連結が破壊されたり、集電体から活物質が分離され、電解質による活物質の浸食による固体性電解質インターフェース(Solid Electrolyte Interface、SEI)層の形成のような非可逆反応の進行及びそれによる寿命劣化により、その実用化において障壁を有する。
【0005】
活物質の体積膨張及び収縮を最小化することによって寿命を改善しながら、比較的高容量の電池を具現するために既存に多くの方法が提案されてきたが、商業的に最も可能性がある方法は、酸素欠乏のシリコン酸化物(SiO
x)を母体とし、ナノサイズのシリコン(Si)が分散された複合活物質材料を用いた方法である。しかし、SiO
xを含む材料は、体積膨張の抑制を通じて寿命の改善効果を有しているが、純粋シリコンに比べて容量及び充放電効率を低下させるという限界を有する。よって、シリコン材料の適用のためには、充・放電時の体積変化を抑制し、寿命を確保しながらも容量及び充放電効率を向上させることが要求される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする技術的課題は、シリコンを用いて、寿命を改善しながら高い容量及び高い充放電効率を有すると同時に、律速特性に優れたシリコン系負極活物質を提供することにある。
【0007】
また、本発明が解決しようとする他の技術的課題は、上述した利点を有するシリコン系負極活物質を経済的且つ迅速に大量に形成できる製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の実施例によると、シリコン及び前記シリコンと結合された酸素を含み、最外郭に炭素系導電層がコーティングされた粒子;及び前記粒子内にドーピングされたリン;を含む。この場合、前記粒子及び前記ドーピングされたリンの総重量に対する前記リンの含量は0.01重量%〜15重量%の範囲内で、前記酸素の含量は9.5重量%〜25重量%の範囲内である。前記粒子及び前記ドーピングされたリンの総重量に対する前記リンの含量は0.01重量%〜5重量%の範囲内であることが好ましい。前記粒子及び前記ドーピングされたリンの総重量に対する前記炭素系導電層の含量は4.5重量%〜32重量%の範囲内であり得る。
【0009】
一実施例において、前記粒子は、前記シリコンのコア、前記シリコンのコア上のシリコン酸化物のシェル、及び前記シェル上の前記炭素系導電層を含み得る。前記シリコン酸化物のシェルの少なくとも一部は、リン化シリコン酸化物(Phospho Silicate)を含み得る。前記リン化シリコン酸化物の厚さは3nm〜15nmの範囲内であり得る。また、前記リンは、前記シリコンのコア内にドーピングされ得る。
【0010】
前記他の課題を解決するための本発明の一実施例に係るシリコン系負極活物質の製造方法は、出発物質であるシリコンの第1粒子を提供する段階;前記シリコンの第1粒子の酸化のために、水、酸素含有液状炭化水素又はその混合物を含む溶媒を提供する段階;前記溶媒内に前記シリコンの第1粒子を添加することによって混合溶液を形成する段階;前記混合溶液から前記シリコンの第1粒子のスラリーを収得する段階;前記スラリーに対する粉砕又は研磨工程を通じて、前記シリコンの第1粒子の表面を化学的に酸化させることによって、シリコンのコア及び前記シリコンのコアを取り囲むシリコン酸化物のシェルを含む中間粒子を形成する段階;リンドーピングのためのリン前駆体であるリン含有化合物を提供する段階;前記中間粒子上に前記リン含有化合物がコーティングされたシリコンの第2粒子を形成する段階;及び前記シリコンの第2粒子に対する熱処理を行うことによって前記シリコンの第2粒子の内部にリンが拡散される段階;を含み得る。
【0011】
一実施例において、前記熱処理前又は前記熱処理後に前記シリコンの第2粒子上に炭素系導電層を形成する段階がさらに行われ得る。前記酸素含有液状炭化水素は、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール(IPA)、及び過酸化水素(H
2O
2)のうちいずれか一つ又は2以上の混合物を含み得る。前記リン含有化合物は、H
2PO
4(phosphoric acid)又はP
2O
5を含み得る。前記熱処理は600℃〜1,100℃の温度範囲内で行われ得る。
【0012】
他の実施例に係るシリコン系負極活物質の製造方法は、出発物質であるシリコンの第1粒子を提供する段階;前記シリコンの第1粒子を酸化させることによって、シリコン及びシリコン酸化物を含む中間粒子を形成する段階;前記中間粒子上にリン犠牲層をコーティングする段階;及び前記リン犠牲層がコーティングされた中間粒子に対する熱処理を行うことによって、前記中間粒子の内部にリンが拡散される段階;を含み得る。この場合、前記熱処理前又は前記熱処理後に前記中間粒子上に導電層を形成する段階がさらに行われ得る。
【0013】
前記リン犠牲層は、H
2PO
4(phosphoric acid)、P
2O
5、H
2PO
4、H
4P
2O
7及びHPO
3のうちいずれか一つ又は2以上の固状のリン前駆体を含み得る。前記熱処理は600℃〜1,100℃の温度範囲内で行われ得る。
【発明の効果】
【0014】
本発明の実施例によると、シリコン及びシリコンの少なくとも一部が酸化されたシリコン酸化物を含み、最外郭に炭素系導電層がコーティングされた粒子であって、酸素によってシリコンの充放電による体積膨張を抑制することによって寿命を改善しながら、前記粒子内にリンをドーピングすることによって寿命と共に充放電効率を改善し、その結果、高い容量維持率を示し、律速特性が改善されたシリコン系負極活物質が提供され得る。
【0015】
また、本発明の各実施例によると、液状リン前駆体又は固状リン前駆体を用いた熱処理を通じてリンをドーピングすることによって、上述した利点を有するシリコン系負極活物質を大量に得られる経済的なシリコン系負極活物質の製造方法が提供され得る。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付の図面を参照して本発明の好ましい実施例を詳細に説明する。
【0018】
本発明の各実施例は、当該技術分野で通常の知識を有する者に本発明をさらに完全に説明するために提供されるものである。下記の実施例は、多くの他の形態に変形可能であり、本発明の範囲が下記の実施例に限定されることはない。むしろ、これらの実施例は、本開示をさらに充実且つ完全にし、当業者に本発明の思想を完全に伝達するために提供されるものである。
【0019】
また、以下の図面において、各層の厚さやサイズは、説明の便宜及び明確性のために誇張したものであり、図面上の同一の符号は同一の要素を称する。本明細書で使用された「及び/又は」という用語は、該当の列挙された項目のうちいずれか一つ及び一つ以上の全ての組み合わせを含む。
【0020】
本明細書で使用された用語は、特定の実施例を説明するためのものであり、本発明を制限するためのものではない。本明細書で使用された単数の形態は、文脈上、他の場合を明確に指摘するものでない限り、複数の形態を含み得る。また、本明細書で使用された「含む(comprise)」及び/又は「含む(comprising)」という用語は、言及した各形状、数字、段階、動作、部材、要素及び/又はこれらのグループの存在を特定するものであり、一つ以上の他の形状、数字、動作、部材、要素及び/又はグループの存在又は付加を排除するものではない。
【0021】
図1a及び
図1bは、それぞれ本発明の多様な実施例に係る各シリコン系負極活物質100A、100Bを示す断面図である。
【0022】
図1a及び
図1bを参照すると、シリコン系負極活物質100A、100Bは粒子構造を有する。
図1aのシリコン系負極活物質100Aは、シリコンのコア10、及びコア10を取り囲むシリコン酸化物のシェル20Aを含み得る。他の実施例において、
図1bに示したように、シリコン系負極活物質100Bは、シリコンのマトリックス10、及びマトリックス10に分散されたシリコン酸化物20Bを含んでもよい。シリコン系負極活物質の総重量に対する酸素の含量は9.5重量%(又はwt%ともいう)〜25重量%の範囲内である。前記酸素の含量が9.5重量%未満である場合は、シリコン系負極活物質の体積膨張抑制力が十分でないので、容量維持率の劣化及びこれによる寿命劣化をもたらし、酸素含量が25重量%超過である場合は、シリコン系負極活物質の充電及び放電容量が急速に減少する。
【0023】
シリコンのコア10及びシリコンのマトリックス10は一次粒子であってもよく、前記一次粒子が凝集した二次粒子であってもよい。シリコン系負極活物質100A、100Bは、最外郭に炭素系導電層30をさらに含み得る。炭素系導電層30は、互いに接触する各シリコン系負極活物質100A、100B間の電気的連結のためのものであり、集電体(図示せず)までの内部抵抗を減少させる。炭素系導電層30は、黒鉛、ソフトカーボン、グラフェン、非晶質炭素膜、及び少なくとも部分的な結晶質炭素膜であり得る。前記非晶質又は低結晶質炭素膜は電解質に対して化学的耐食性を有するので、充・放電時に前記電解液の分解が抑制され、その結果、負極の寿命を向上できるという利点がある。また、炭素系導電層30は、導電性を有するSP2黒鉛構造と絶縁性を有するSP3のダイヤモンド構造とが混在したものであり得る。炭素系導電層30が導電性を有するためには、前記SP2がSP3より大きいモル分率を有するようにすることもでき、これは熱処理工程を通じて調節され得る。
【0024】
前記粒子構造のシリコン系負極活物質100A、100Bの平均粒径は10nm〜10μmの範囲内であり得るが、本発明がこれに限定されることはない。前記粒子構造のシリコン系負極活物質100A、100B内にリンがドーピングされる。一実施例において、前記粒子構造のシリコン系負極活物質100A、100Bの総重量に対するリンの含量は0.01重量%〜15重量%未満であり得る。前記リンの含量が0.01重量%未満である場合は重量比容量及び律速特性が低下し、前記リンの含量が15重量%以上である場合にも重量比容量が低下し得る。これは、過度なリン含量によるシリコン含量の減少に起因するものと推測される。
【0025】
ドーピングされたリンは、シリコン内に浸透してドーピングされたり、シリコン酸化物との結合によってリン化シリコン酸化物(Phospho−silicate)を形成することができる。シリコン内に浸透したリンは、シリコンの伝導度を向上させ、シリコン系負極活物質100A、100Bの表面から内部までの電位サイズの減少を最小化し、リチウムの還元又は酸化のための十分な電位を活物質層全体に維持させることができ、その結果、初期充電容量及び充放電効率が改善され、体積膨張の抑制のためのシリコン酸化物による減少した容量を補償することができる。また、シリコン系負極活物質100Aのように、コアシェル構造でリン化されたリン化シリコン酸化物(Phospho−silicate)のシェル20Aは、シリコン酸化物に比べてより強いガラス層を形成することによって電解質の浸食防止による負極活物質の粉塵化を防止し、これによる寿命劣化を改善し、電気伝導性及びイオン伝導性を有することによって律速特性を改善することができる。
【0026】
リンシリケートのシェル20Aの厚さは3nm〜15nmの範囲内であり得る。リンシリケートのシェル20Aの厚さが3nm未満である場合は、体積膨張の抑制及びSEI層の形成が効果的でなく、リンシリケートのシェル20Aの厚さが15nmを超える場合は、むしろ、リチウムの挿入及び脱離に対する障壁層として逆機能することによって充電率及び充電速度の減少をもたらし得る。また、リンシリケートのシェル20Aと導電層である炭素系導電層30との間には、非常に薄い連続的又は不連続的なシリコン炭化物層(SiC)が形成されてもよい。
【0027】
上述したように、シリコン系負極活物質100A、100Bにドーピングされたリンは、シリコン系負極活物質100A、100Bの初期充電率を改善することによって、体積膨張を改善するために導入された酸素の含有によるシリコン系負極活物質の容量低下を解消し、その結果、長寿命を有しながら高容量のシリコン活物質を提供することができる。前記リンの初期充電率の改善は、真性シリコンの導電性を向上させることに起因するものと推測されるが、本発明がこのような理論的説明によって限定されることはない。
【0028】
上述したように、前記シリコン系負極活物質の総重量に対する酸素の含量が9.5重量%〜25重量%に維持されながらリンの含量が0.01重量%〜15重量%の範囲内であるとき、重量比容量が少なくとも1,500mAh/gを満足しながら体積膨張の抑制による容量維持率が改善されることによって、初期充放電効率がいずれも85%以上に維持され、商用化に適切でありながら長寿命を有するシリコン系負極活物質が提供され得る。
【0029】
試料を王水(硝酸:塩酸=1:3)に溶解させた後、誘導結合プラズマ分光分析機(ICP−AES)を用いて前記サンプル内に存在する前記リンの含量を定量化した。
【0030】
前記酸素の含量は、商用の元素分析機(ELTRA ONH−2000)を用いて赤外線検出方式で測定される。具体的には、試料量2mg〜10mg、熱量8kW、キャリアガスとしてヘリウム(純度99.995%)を用いてサンプル内に存在する酸素を二酸化炭素に変化させ、二酸化炭素の発生量を測定することによって酸素量を定量化した。
【0031】
商用のカーボン分析機(c/s meter)を用いて炭素を燃焼して得られたCO
2の量が赤外線検出方式で測定され得る。最後に、シリコンの含量は、粒子全体の重さから酸素、リン及び炭素の測定された含量を除いた残量であると評価され得る。
【0032】
図2は、本発明の一実施例に係るシリコン系負極活物質の製造方法を示すフローチャートである。
【0033】
図2を参照すると、出発物質となるシリコンの第1粒子が提供される(S10)。前記シリコンの第1粒子は、ポリシリコン又は単結晶シリコン粗粒子であってもよく、結晶性が低い非晶質であってもよい。又は、前記粗粒子を粉砕工程又は研磨工程を通じてナノ粒子化したり、大きな体積のシリコン材料、例えば、シリコンロッド又はウェハーに対する電気爆発によって前記シリコンの粒子が準備され得る。前記シリコンの各粒子においては、後述するシリコン酸化物の形成工程を通じて形成されるシリコン系負極活物質が10nm〜10μmの範囲内の平均粒径を有し、20nm〜300nmの範囲内の平均粒径を有することが好ましい。
【0034】
前記シリコンの第1粒子の酸化のために、水、酸素含有液状炭化水素又はその混合物を含む溶媒が提供される(S20)。前記酸素含有液状炭化水素は、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール(IPA)、及び過酸化水素(H
2O
2)のうちいずれか一つ又は2以上の混合溶媒を含み得る。前記溶媒は水又はメタノールであることが好ましい。前記メタノールは、炭素に比べて酸素の含有量が最も大きい炭化水素であって、他の炭化水素に比べると、炭素成分を抑制し、シリコンのコア及び前記コア上に形成されたシリコン酸化物のシェルを有するシリコン系負極活物質複合体を形成するのに有利である。実際に他の炭化水素の場合、シリコンのコア上に形成されるシリコン酸化物の形成を妨害したり、シリコン酸化物の形成のために炭素を除去するための別途の熱処理を必要とし、熱酸化によって初期充放電効率を低下させる緻密なSiO
2が形成されるという問題がある。
【0035】
その後、前記溶媒内に前記シリコンの第1粒子を添加して撹拌することによって混合溶液を形成する(S30)。前記混合溶液から前記シリコンの第1粒子のスラリーを収得する(S40)。
【0036】
前記スラリーに対する粉砕又は研磨工程と同時に、前記粉砕又は研磨工程時に前記シリコンの第1粒子の表面に誘導される圧縮及びせん断応力のうち少なくともいずれか一つを用いて前記シリコンの第1粒子の表面が前記溶媒によって化学的に酸化されることによって、シリコンのコア及び前記コアを取り囲むシリコン酸化物のシェルを含む中間粒子を形成する(S50)。前記中間粒子の形成のための圧縮及びせん断応力は、ミリング工程の回転速度、回転時間及び圧力のうち少なくともいずれか一つを通じて制御され得る。
【0037】
リンドーピングのためのリン前駆体であるリン含有化合物が提供される(S60)。一実施例において、前記リン含有化合物はH
2PO
4(phosphoric acid)又はP
2O
5を含み得る。前記リン含有化合物と前記中間粒子とを混合することによって混合物を形成する。前記混合物は、前記中間粒子の表面を液状のリン含有化合物でコーティングしたり、上述した水又はエタノールなどの溶媒に前記中間粒子と前記リン含有化合物を添加することによって混合溶液を形成して提供されてもよい。前記混合物を乾燥することによって、リン含有化合物がコーティングされた前記シリコンの第2粒子を形成することができる(S70)。
【0038】
その後、前記シリコンの第2粒子に対する熱処理を行い、リンが前記シリコンの第2粒子の内部に拡散されるようにする(S80)。前記熱処理は600℃〜1,100℃の範囲内で行われ得る。前記熱処理は、アルゴン又はヘリウムなどの非活性ガスを用いて行われ得るが、本発明がこれに限定されることはない。例えば、酸素又はオゾンを使用する酸化性雰囲気であってもよく、水素又は窒素ガスを用いた還元性雰囲気であってもよい。前記熱処理の間、リンは、シリコン酸化物のシェルとの反応によってリンシリケート層を形成してもよい。また、リンは、前記シリコン酸化物のシェルを透過し、シリコンのコアの内部に拡散されてドーピングされ得る。必要に応じて、熱処理された各粒子を再び解砕する工程を行ってもよい。
【0039】
その後、シリコン系負極活物質100A上に炭素系導電層を形成する工程がさらに行われ得る。他の実施例において、前記リンのドーピングのための熱処理前に、まず、前記炭素系導電層を形成する工程が行われてもよい。
【0040】
適切な溶媒にバインダーと共に前駆体である導電材が分散された溶液を製造し、前記溶液内に前記シリコン系負極活物質を分散させ、これを収得した後で乾燥させることによって前記炭素系導電層が提供され得る。他の実施例において、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリエチレン(PE)、又はポリアクリル酸(PAA)、ポリビニルピロリドン(PVP)などの高分子前駆体物質を適切な溶媒に溶かした後、これにシリコン系負極活物質を分散させ、前記高分子前駆体物質で濡らされた中間粒子を収得した後、乾燥及び熱処理によって前記炭素系導電層を獲得してもよい。その結果、
図1aに示したシリコン系負極活物質100Aが製造され得る。
【0041】
図3は、本発明の他の実施例に係るシリコン系負極活物質の製造方法を示すフローチャートである。
【0042】
図3を参照すると、出発物質であるシリコンの第1粒子が提供される(S10)。その後、前記シリコンの第1粒子に酸素を結合させる酸化工程を行い、シリコン及びシリコン酸化物を含む中間粒子が製造される(S20)。前記酸化工程は、酸素含有液状溶媒内で前記シリコンの第1粒子を化学的に酸化させることによって達成され得る。前記酸素含有液状溶媒は、水、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール(IPA)、過酸化水素(H
2O
2)、又はこれらのうち2以上の混合溶媒であり、水又はメタノールであることが好ましい。この場合、シリコンのコア及び前記シリコンのコア上のシリコン酸化物のシェルが形成された中間粒子が製造され得る。
【0043】
他の実施例において、前記酸化工程は、酸素イオン注入工程によって製造され得る。前記シリコンの第1粒子はシリコンマトリックスとなり、イオンが注入された酸素は、前記シリコンマトリックス内に分散されたシリコン酸化物を含む中間粒子が提供され得る。前記イオン注入時には、製造されたシリコン系負極活物質の総重量に対する酸素の含量が16重量%〜29重量%に制限されるようにイオン注入エネルギー及び密度が調節される。シリコンの熱酸化を排除しながらシリコンマトリックスと注入された酸素との結合のために、50℃〜200℃以下の低温で熱処理がさらに行われてもよい。
【0044】
更に他の実施例において、前記シリコンの第1粒子は、シリコンの粗粒子の粉砕又は研磨工程と同時に、前記工程から誘導される圧縮及びせん断応力のうち少なくともいずれか一つによって化学的に酸化され得る。例えば、上述した酸素含有液状溶媒を使用してシリコンの粒子のスラリーを作り、前記スラリーに対してミリング工程による粉砕及び研磨工程を行うと、粒子が細粒化されながら応力の感度が増加し、前記シリコンの第1粒子の化学的酸化が容易に誘導され得る。この場合、シリコンのコア及び前記シリコンのコア上のシリコン酸化物のシェルが形成された中間粒子が製造され得る。
【0045】
その後、前記中間粒子上にリン犠牲層を形成する(S30)。前記リン犠牲層は、H
2PO
4(phosphoric acid)、P
2O
5、H
4P
2O
7及びHPO
3のうちいずれか一つ又は2以上の混合物である固状のリン前駆体を含み得る。これらのリン犠牲層の形成は、適切な溶媒を用いて前記中間粒子上に前記リン前駆体をコーティングすることによって達成され得る。
【0046】
その後、前記リン犠牲層が形成された中間粒子に対する熱処理を行い、リンがドーピングされたシリコン系負極活物質を製造することができる(S40)。前記熱処理は600℃〜1,100℃の範囲内で行われ得る。前記熱処理の間、リン犠牲層は分解され、リンは、シリコンの内部に拡散され、シリコン酸化物との反応によってリンシリケートが形成されてもよい。その後、熱処理されたシリコン系負極活物質を微粒化するための粉砕工程がさらに行われ得る。また、シリコン系負極活物質100B上に導電層を形成する工程がさらに行われ得る。前記導電層の形成には上述した工程が参照され得る。これによって、
図1bに示したシリコン系負極活物質100Bが提供され得る。
【0047】
以下、実験例を通じて、本発明の各実施例に関してさらに具体的に説明する。下記の実験例の具体的な数値は例示的なものであり、本発明がこれに限定されるものでないことを明らかに理解すべきである。
【0048】
−実験例及び比較実験例−
シリコンパウダー(平均粒径が5μm、純度は99.9%である)をメタノールに分散させた後、ナノ粉砕分散機(KM−5L)を用いてナノ粒子サイズ10nm〜300nmの範囲で粉砕・分散を進行し、撹拌及び循環を通じてシリコン酸化物を形成した。
【0049】
湿式酸化されたシリコン粒子を含む分散液にリン酸(99.9%)を添加して溶解させた後、これを乾燥することによってシリコン粒子の表面にリン酸をコーティングし、これをアルゴン(Ar)ガス雰囲気で約900℃で約3時間処理し、シリコン系粒子の内部へのリンの拡散を誘導した。
【0050】
前記リン化処理まで完了したシリコン粒子にポリビニルピロリドン(PVP)をコーティングし、アルゴン(Ar)ガス雰囲気で約900℃で約3時間にわたって処理することによって、最外郭に炭素膜が形成されたコアシェル構造のリンが拡散されたシリコン系負極活物質を製造した。前記シリコン系負極活物質の粒子は約10nm〜300nmの範囲のサイズを有する。比較サンプルは、リンドーピングが省略されたものであり、シリコン及びシリコン酸化物を含む粒子上に炭素膜が形成された粒子構造のシリコン系負極活物質である。前記サンプルの準備過程でシリコンパウダーのサイズ、シリコンの湿式酸化のための溶媒、リン酸の濃度、及び炭素膜前駆体の濃度を調節することによって各構成元素の含量を制御することができる。
【0051】
サンプル及び比較サンプルの重量比容量は、サンプル及び比較サンプル、導電材、及びバインダーを混合することによって負極スラリーを製造し、これを集電体にコーティングすることによって負極を製造し、対極をリチウムメタルとするハーフコインセルを製造し、容量及び初期効率特性を0.1C充電及び0.1C放電の条件で測定した。寿命特性及び律速特性の測定のために対極をNCM424としてフルセルを製造した後、寿命特性は0.5C充電及び0.5C放電の条件で測定し、律速特性は0.2C充電及び0.5C放電容量と0.2C充電及び5C放電容量で測定し、0.5C放電容量に対する5C放電容量をパーセントで計算した。
【0052】
表1は、本発明の実施例に係る各サンプル及び比較例に係る各サンプル(各比較サンプル)の活物質のシリコン、酸素及びリンの含量及びシリコン系負極活物質の放電容量を示す。性能評価時には、最初放電容量(mAh/g)、1回の充放電効率(%、初期効率という)、50回の充放電サイクル以後の容量維持率(retention、%)、及び律速特性(%)を評価した。本発明の実施例に係る各サンプルのリンの含量は、本発明の実施例に係る0.005重量%〜17重量%の範囲内の0.005、0.01、0.05、0.1、0.5、1、5、10、及び15重量%であり、酸素の含量は9重量%〜25重量%の範囲内の9.8、10.0、12.1、18.2、18.3、18.4、19.3、19.6、及び20.4重量%である。また、本発明の実施例に係る各サンプルにおいて、前記粒子及び前記ドーピングされたリンの総重量に対する前記炭素膜の含量は、4.5重量%〜32重量%の範囲内から選ばれた14.2、14.6、14.8、14.9、15.2、及び15.4重量%である。
【0054】
図4は、表1の各サンプル及び各比較サンプルのリン含量による重量比容量を示すグラフである。前記グラフのX軸のリン含量はログスケールで表示したものである。
【0055】
図4を参照すると、リンが0.01重量%〜15重量%の範囲の各サンプルにおいて、1,500mAh/g以上のSi/C重量比容量を観察することができる。リンが含有されていない比較サンプル1、比較サンプル2、及び比較サンプル3とリンが著しく少なく含有されている比較サンプル4の場合、Si/C重量比容量はそれぞれ1,290.0mAh/g、1194.2mAh/g及び1138.0mAh/gと1402.1mAh/gであって、Si/C重量比容量が各サンプルに比べて著しく低いことが示された。これと同様に、リン含量が15重量%を超える比較サンプル5(21重量%)、比較サンプル6(20重量%)、及び比較サンプル7(22重量%)の場合にも、Si/C重量比容量がそれぞれ1,290.0mAh/g、1194.2mAh/g及び1138.0mAh/gに減少する。
【0056】
図5は、表1の各サンプル及び各比較サンプルのリン含量による初期効率(1st効率)を示すグラフである。前記グラフのX軸のリン含量はログスケールで表示したものである。
【0057】
図5を参照すると、リンが0.01重量%〜15重量%の範囲の各サンプルにおいては、いずれも85.8%以上の初期効率を示す。その一方で、リンが0.01重量%未満又は15重量%超過である各比較サンプルにおいては、初期効率は各サンプルに比べて著しく低くなることを観察することができる。但し、比較サンプル1の場合、リンが含有されていないにもかかわらず、初期効率が86.5%と示されたが、これは、著しく低い酸素含量による非可逆容量の減少に起因したものであり、上述した重量比容量、後述する容量維持率、及び律速特性が各サンプルに比べて減少する。
【0058】
図6は、表1の各サンプル及び各比較サンプルの酸素含量による50サイクル以後の容量維持率(retention、%)に関するグラフで、
図7は、表1の各サンプル及び各比較サンプルのリン含量による50サイクル以後の容量維持率に関するグラフである。
図7の各グラフのX軸のリン含量はログスケールで表示したものである。
【0059】
図6を参照すると、酸素が9.5重量%〜25重量%の各サンプルにおいては、少なくとも86.3重量%の容量維持率を示す。酸素含量が低い比較サンプル1、2、5においては、各サンプルに比べて容量維持率が減少したことが観察され、酸素含量が高い比較サンプル3、4、6、及び7においては、容量維持率は高いが、表1に示したように、重量比容量及び初期効率が減少することが示された。
【0060】
図7を参照すると、リンが0.01重量%〜15重量%の範囲の各サンプルは、少なくとも87.2重量%の容量維持率を示す。リンが含有されていない比較サンプル1、2、3、リンの含量が著しく低い比較サンプル4、及びリンの含量が高い比較サンプル5、6、7においては、リンの含有量による容量維持率の特定傾向性は示さないが、リンが0.01重量%〜15重量%の範囲で含有される場合、容量維持率が高く示された。
【0061】
図8は、表1の各サンプル及び各比較サンプルのリン含量による律速特性に関するグラフである。前記グラフのX軸のリン含量はログスケールで表示したものである。
図8を参照すると、リンが0.01重量%〜15重量%の範囲の各サンプルは、少なくとも65%以上の律速特性を示すことを観察することができる。
【0062】
以上で説明した本発明は、上述した実施例及び添付の図面に限定されるものではなく、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲内で多様な置換、変形及び変更が可能であることは、本発明の属する技術分野で通常の知識を有する者にとって明白であろう。