(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ステップ1において、前記塩基は、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水素化カリウム、水素化ナトリウム、トリエチルアミン、ジメチルピリジン、ジイソプロピルエチルアミン、又は1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エンであり、及び/又は、前記ステップ1において、反応溶媒は、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、N,N−ジメチルホルムアミド、アセトニトリル、及びアセトンからなる群より選ばれ、及び/又は、前記ステップ2において、前記触媒は、Pd(PPh3)4、PdCl2(PPh3)2、PdCl2(PhCN)2、Pd(OAc)2、Pd/C、及びPdCl2(dppf)2からなる群より選ばれ、及び/又は、前記ステップ2において、前記塩基は、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸セシウム、酢酸カリウム、酢酸ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水素化ナトリウム、又は水素化カリウムであり、及び/又は、前記ステップ2において、反応溶媒は、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、アセトニトリル、アセトン、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド、N−メチルピロリドン、又はエチレングリコールジメチルエーテルと水との混合溶媒である、請求項1に記載のイブルチニブの製造方法。
前記光延反応試薬は、トリフェニルホスフィン、トリブチルホスフィン、及びトリメチルホスフィンからなる群より選ばれる第1試薬と、アゾジカルボン酸ジイソプロピル、アゾジカルボン酸−ジ−tert−ブチル、アゾジカルボン酸ジエチル、アゾジカルボン酸ジ−p−クロロベンジル、1,1’−(アゾジカルボニル)ジピペリジン、N,N,N’,N’−テトライソプロピルアゾジカルボキサミド、N,N,N’,N’−テトラメチルアゾジカルボキサミド、及び4,7−ジメチル−3,4,5,6,7,8−ヘキサヒドロ−1,2,4,7−テトラゾシン−3,8−ジオン(4,7−dimethyl−3,4,5,6,7,8−hexahydro−1,2,4,7−tetrazocin−3,8−dione)からなる群より選ばれる第2試薬とからなり、及び/又は、前記式7化合物を製造するための溶媒は、テトラヒドロフラン、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、N−メチルピロリドン、アセトニトリル、及び1,4−ジオキサンからなる群より選ばれ、及び/又は、前記式7化合物を脱保護する際に用いられる酸は、塩酸、臭化水素酸、硫酸、リン酸、酢酸、メタンスルホン酸、及びトリフルオロ酢酸からなる群より選ばれる、
請求項5に記載のイブルチニブの製造方法。
【背景技術】
【0002】
イブルチニブは、経口投与型ブルトンチロシンキナーゼ(BTK)阻害剤であり、前期治療を受けたマントル細胞リンパ腫(MCL)、前期治療を受けた慢性リンパ球性白血病やdel17p欠失変異を持っている慢性リンパ球性白血病(CLL)の治療に用いられる。
【0003】
CN101610676Aには、4−フェノキシ安息香酸を出発原料として、塩化後にマロノニトリルと縮合し、次に無水ヒドラジンと環化してピラゾール中間体を得た後、ホルムアミドと環化して4−アミノピラゾロ[3,4−d]ピリミジン母核を得、光延反応を行ってキラルアルコールと縮合し、Boc保護基除去及びアクリル化等のステップを経て生成物を得ることが開示されており、その合成経路は以下の通りである。
【化1】
【0004】
該合成経路は長くて、そのステップが多く、光延反応ステップの収率が低く(34%)、全収率がわずか8.1%であり、かつ高価で入手しにくいトリフェニルホスフィン樹脂を必要となり、最後にイブルチニブを得るためにクロマトグラフィーで精製しなければならないことから、該経路の産業化コストが高くて作業が複雑になっている。
【0005】
CN103121999Aには、3−ブロモ−4−アミノピラゾロ[3,4−d]ピリミジンを出発原料として、順次に、鈴木反応を行って4−フェノキシベンゼンボロン酸と結合し、炭酸セシウムを塩基とする条件下でキラルアルコールと縮合し、トリフルオロアセチル基によって保護し、Boc保護基を除去し、アクリル化し、そしてトリフルオロアセチル基の保護を除去する等のステップを経てイブルチニブを得ることが開示されており、その合成経路は以下の通りである。
【化2】
【0006】
該合成経路は長くて、その中でPdCl
2(PhCN)
2を触媒として用いた鈴木反応を繰り返すことが困難であり、且つ多量の触媒が必要となり、炭酸セシウムを塩基とした縮合ステップを行うために24時間が必要で反応時間が長く、アミノ基に対する保護及び脱保護のステップにより反応経路が長くなり、経路の全収率を低下させてしまい(3−ブロモ−4−アミノピラゾロ[3,4−d]ピリミジンを出発原料とする場合、21.5%であり)、そのため、該プロセスは工業的大規模生産に適していない。
【0007】
WO2014022390A1には、4−アミノピラゾロ[3,4−d]ピリミジンを出発原料として、ヨウ素化して中間体である3−ヨード−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−4−アミンを製造し、次に、順次に鈴木反応を行って4−フェノキシベンゼンボロン酸と結合し、光延反応を行ってキラルアルコールと縮合し、さらに、塩酸でBoc保護を除去して塩を形成し、最後にアクリル化してイブルチニブを得ることが報告されており、合成経路は以下の通りである。
【化3】
【0008】
該経路は、鈴木反応に用いられた触媒であるテトラトリフェニルホスフィンパラジウムの使用量が高く、反応時間が24時間と長く、光延反応ステップの時間がかかり、収率が低く(38%)、経路の全収率がわずか9.3%であり、且つクロマトグラフィー精製が必要であるため、工業的生産に適していない。
【0009】
また、市販される塩化アクリロイルに通常3−クロロプロピオニルクロリド1%〜3%を含むことにより、生成物であるイブルチニブには3−クロロプロピオニル化した不純物が存在することになり、したがって精製しにくくなり、産業応用が困難となっている。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、それぞれ開示された実施形態を全体的に理解するために、具体的な詳細を含んで説明したが、当業者は、これらの詳細の一部又は複数の部分を用いずに他の方法、部品、材料などを用いても、これらの実施形態を実現することができると理解すべきである。
【0015】
特に断らない限り、本明細書及び特許請求の範囲のすべてにわたって、用語「含む/包含する/包括する/備える/からなる/構成する」及び英語の変形例(comprise、comprises、comprising)は、いずれも開放(オープンエンド)式の、包含式の意味、すなわち「…を含むがこれらに限定されない」として解釈されるべきである。
【0016】
本明細書にわたって記載された「一実施形態」又は「実施形態」、あるいは「別の実施形態において」又は「いくつかの実施形態において」とは、少なくとも1つの実施形態に、当該実施形態に記載の関連する具体的な参照要素、構造、又は特徴を含むことを意味する。したがって、明細書の全体にわたって異なる位置に記載の「一実施形態において」、「実施形態において(実施形態では)」、「他の実施形態において」又は「いくつかの実施形態において」という語句は、必ずしも同じ実施形態を指すことではない。また、具体的な要素、構造又は特徴は、任意の適切な方式で1つ以上の実施形態の中に組み合せられる。
【0017】
本発明の明細書及び添付の特許請求の範囲に用いられた単数形の冠詞「一」、「1つ(の)」、「1個(の)」(英語の「a」、「an」、及び「the」などに相当する) は、特に断らない限り、複数の対象(オブジェクト)が含まれていると理解すべきである。したがって、例えば、かかる「触媒」が含まれる反応には、1種の触媒、または2種以上の触媒が含まれている。また、用語「又は」などは、特に断らない限り、通常「及び/又は」の意味を含んで用いられる。
【0018】
本発明は、塩基の存在下で式1化合物を原料として式2化合物とを反応させて式3化合物を生成するステップ1
【化12】
と、
塩基及び触媒の存在下で式3化合物と式4化合物とを反応させてイブルチニブを生成するステップ2
【化13】
とを含むイブルチニブの製造方法を提供する。
(但し、X
1はそれぞれ独立にCl、Br及びI、好ましくはCl及びBrからなる群より選ばれ、X
2はそれぞれ独立にCl及びBrからなる群より選ばれ、R’は
【化14】
及び
【化15】
からなる群より選ばれ、X
3はそれぞれ独立にCl、Br及びI、好ましくはCl及びBrからなる群より選ばれる。)
【0019】
本発明の一実施形態において、ステップ1では、前記式2化合物の量は、式1化合物の量に対して、0.9〜2当量であり、好ましくは1〜1.2当量である。
【0020】
本発明の一実施形態において、ステップ1では、前記塩基は無機塩基及び/又は有機塩基であり、無機塩基は、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水素化カリウム、及び水素化ナトリウム等を含むが、これらに制限されない。有機塩基は、トリエチルアミン、ジメチルピリジン、ジイソプロピルエチルアミン、及び1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン等を含むが、これらに制限されない。好ましくは無機塩基であり、より好ましくは、炭酸水素ナトリウム及び炭酸水素カリウムである。
【0021】
本発明の一実施形態において、ステップ1では、前記塩基の量は、式1化合物の量に対して、1〜5当量であり、好ましくは1.5〜3当量であり、より好ましくは2当量である。
【0022】
本発明の一実施形態において、ステップ1では、反応溶媒は、極性非プロトン性溶媒であり、好ましくはテトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、N,N−ジメチルホルムアミド、アセトニトリル、又はアセトン等であり、より好ましくは2−メチルテトラヒドロフランである。
【0023】
本発明の一実施形態において、ステップ2では、前記式4化合物の量は、式3化合物の量に対して、1〜3当量であり、好ましくは1.2〜2当量であり、より好ましくは1.5当量である。
【0024】
本発明の一実施形態において、ステップ2では、前記触媒は、Pd(PPh
3)
4、PdCl
2(PPh
3)
2、PdCl
2(PhCN)
2、Pd(OAc)
2、Pd/C又はPdCl
2(dppf)
2等からなる群より選ばれ、好ましくはPd(PPh
3)
4である。
【0025】
本発明の一実施形態において、ステップ2では、前記触媒の量は、式3化合物の量に対して、0.001〜0.1当量であり、好ましくは0.005〜0.05当量であり、より好ましくは0.01当量である。
【0026】
本発明の一実施形態において、ステップ2では、前記塩基は、無機塩基であり、好ましくは炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸セシウム、酢酸カリウム、酢酸ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水素化ナトリウム、又は水素化カリウムであり、より好ましくはリン酸カリウム又は炭酸カリウムである。
【0027】
本発明の一実施形態において、ステップ2では、前記塩基の量は、式3化合物の量に対して、1〜5当量であり、好ましくは2〜4当量であり、より好ましくは3〜3.5当量である。
【0028】
本発明の一実施形態において、ステップ2では、反応溶媒は、極性非プロトン性溶媒と水との混合溶媒であり、好ましくはテトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、アセトニトリル、アセトン、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド、N−メチルピロリドン、又はエチレングリコールジメチルエーテル等と水との混合溶媒、より好ましくは1,4−ジオキサンと水、又はエチレングリコールジメチルエーテルと水との混合溶媒である。
【0029】
本発明の一実施形態において、ステップ1では、反応温度は15℃以下であり、好ましくは−10℃〜5℃であり、より好ましくは−5℃〜0℃である。
【0030】
本発明の一実施形態において、ステップ2では、反応温度は60℃〜120℃であり、好ましくは80℃〜100℃である。
【0031】
また、本発明の別の態様では、塩基及び触媒の存在下で式1化合物と式4化合物とを反応させて式8化合物を生成するステップ1
【化16】
と、
塩基の存在下で式8化合物と式2−1化合物とを反応させてイブルチニブを生成するステップ2
【化17】
とを含むイブルチニブの他の製造方法を提供する。
(但し、X
1はそれぞれ独立にCl、Br及びI、好ましくはCl及びBrからなる群より選ばれ、X
2はそれぞれ独立にCl及びBrからなる群より選ばれる。)
【0032】
本発明の一実施形態において、前記式4化合物の量は、式1化合物の量に対して、1〜3当量であり、好ましくは1.2〜2当量であり、より好ましくは1.5当量である。
【0033】
本発明の一実施形態において、前記触媒は、Pd(PPh
3)
4、PdCl
2(PPh
3)
2、PdCl
2(PhCN)
2、Pd(OAc)
2、Pd/C又はPdCl
2(dppf)
2等からなる群より選ばれ、好ましくはPd(PPh
3)
4である。
【0034】
本発明の一実施形態において、前記触媒の量は、式1化合物の量に対して、0.001〜0.1当量であり、好ましくは0.005〜0.05当量であり、より好ましくは0.01当量である。
【0035】
本発明の一実施形態において、ステップ1で使用される塩基は、無機塩基であり、好ましくは炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸セシウム、酢酸カリウム、酢酸ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水素化ナトリウム、又は水素化カリウムであり、より好ましくはリン酸カリウム又は炭酸カリウムである。
【0036】
本発明の一実施形態において、ステップ1で使用される塩基の量は、式1化合物の量に対して、1〜5当量であり、好ましくは2〜4当量であり、より好ましくは3〜3.5当量である。
【0037】
本発明の一実施形態において、ステップ1で使用される反応溶媒は、極性非プロトン性溶媒と水との混合溶媒であり、好ましくはテトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、アセトニトリル、アセトン、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド、N−メチルピロリドン、又はエチレングリコールジメチルエーテル等と水との混合溶媒、より好ましくは1,4−ジオキサンと水、又はエチレングリコールジメチルエーテルと水との混合溶媒である。
【0038】
本発明の一実施形態において、ステップ2では、前記式2−1化合物の量は、式8化合物の量に対して、0.9〜2当量であり、好ましくは1〜1.2当量である。
【0039】
本発明の一実施形態において、ステップ2で使用される塩基は無機塩基及び/又は有機塩基であり、無機塩基は、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水素化カリウム、又は水素化ナトリウム等からなる群より選ばれ、有機塩基は、トリエチルアミン、ジメチルピリジン、ジイソプロピルエチルアミン、又は1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン等からなる群より選ばれ、好ましくは無機塩基であり、より好ましくは炭酸水素ナトリウム及び炭酸水素カリウムである。
【0040】
本発明の一実施形態において、ステップ2で使用される塩基の量は、式8化合物の量に対して、1〜5当量であり、好ましくは1.5〜3当量であり、より好ましくは2当量である。
【0041】
本発明の一実施形態において、ステップ2で使用される反応溶媒は、極性非プロトン性溶媒であり、好ましくはテトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、N,N−ジメチルホルムアミド、アセトニトリル、又はアセトン等であり、より好ましくは2−メチルテトラヒドロフランである。
【0042】
本発明の一実施形態において、ステップ1では、反応温度は60℃〜120℃であり、好ましくは80℃〜100℃である。
【0043】
本発明の一実施形態において、ステップ2では、反応温度は15℃以下であり、好ましくは−10℃〜5℃であり、より好ましくは−5℃〜0℃である。
【0044】
本発明の一実施形態において、前記のイブルチニブの製造方法は、
式1化合物を製造するために、光延反応試薬の存在下で式5化合物と式6化合物とを反応させて式7化合物を生成し、次に、酸の存在下で式7化合物に対して保護基を除去して式1化合物を生成するステップをさらに含む。
【化18】
(但し、Rはアミノ保護基であり、X
1はそれぞれ独立にCl、Br及びI、好ましくはCl及びBrからなる群より選ばれる。)
【0045】
本発明の一実施形態において、前記式6化合物の量は、式5化合物の量に対して、0.5〜3当量であり、好ましくは1〜2当量であり、より好ましくは1.5当量である。
【0046】
本発明の一実施形態において、前記光延反応試薬は、トリフェニルホスフィン(TPP)、トリブチルホスフィン(TBP)、及びトリメチルホスフィン(TMP)からなる群より選ばれる第1試薬と、アゾジカルボン酸ジイソプロピル(DIAD)、アゾジカルボン酸−ジ−tert−ブチル(DBAD)、アゾジカルボン酸ジエチル(DEAD)、アゾジカルボン酸ジ−p−クロロベンジル(DCAD)、1,1’−(アゾジカルボニル)ジピペリジン(ADDP)、N,N,N’,N’−テトライソプロピルアゾジカルボキサミド(TIPA)、N,N,N’,N’−テトラメチルアゾジカルボキサミド(TMAD)、及び4,7−ジメチル−3,4,5,6,7,8−ヘキサヒドロ−1,2,4,7−テトラゾシン−3,8−ジオン(DHTD)からなる群より選ばれる第2試薬とからなり、好ましくはTPPとDIADとからなる。
【0047】
本発明の一実施形態において、前記光延反応試薬における第1試薬の量と第2試薬の量とは互いに等モル量であり、且つ、式5化合物に対して、それぞれ1〜5当量であり、好ましくは2〜5当量であり、より好ましくは3〜4当量である。
【0048】
本発明の一実施形態において、式7化合物を製造するための溶媒は、極性非プロトン性溶媒及び水からなる群より選ばれ、好ましくはテトラヒドロフラン(THF)、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、N−メチルピロリドン、アセトニトリル又は1,4−ジオキサン等であり、より好ましくはテトラヒドロフランである。
【0049】
本発明の一実施形態において、Rはtert−ブトキシカルボニル基(Boc)であることが好ましい。
【0050】
本発明の一実施形態において、式7化合物を脱保護する際に使用された酸は、塩酸、臭化水素酸、硫酸、リン酸、酢酸、メタンスルホン酸、及びトリフルオロ酢酸からなる群より選ばれ、好ましくは塩酸である。
【0051】
また、本発明の別の態様では、イブルチニブの製造に使用できる以下のような中間体化合物を提供する。
【化19】
(但し、X
1及びX
3はそれぞれ独立にCl、Br及びIからなる群より選ばれる。)
【0052】
本発明の一実施形態において、前記のイブルチニブの製造に使用できる中間体化合物は、下記構造で表示される化合物からなる群より選ばれる。
【化20】
【0053】
さらに、本発明の他の態様では、以下のような中間体化合物のイブルチニブの製造における使用を提供する。
【化21】
(但し、X
1及びX
3はそれぞれ独立にCl、Br及びIからなる群より選ばれる。)
【0054】
本発明に係るイブルチニブの製造方法では、使用される原料は安価で入手しやすく、且つアシル化反応及び鈴木反応のみでイブルチニブを製造できる。本発明に係るイブルチニブの製造方法は下記利点を有する。
【0055】
1.アシル化反応は官能基のさらなる保護を必要とせず、生成物の収率及び純度のいずれも高い。
2.鈴木反応に使用された触媒の投入量が、先行文献で報道した投入量よりもずっと少なく、且つ1〜5時間反応するだけで原料の転化率は100%に達する。
3.アシル化反応を行った後に鈴木反応を発生させる場合、鈴木反応を発生させると同時にハロゲン化水素を除去する反応が起こり、それにより、反応ステップや生成物における不純物含有量を減少させ、全収率を向上させる。
4.式5化合物を原料として、先ず光延反応を行うことにより、原料の転化率を著しく向上させ、さらに、反応生成物を反応液から直接に析出できることから、光延反応の生成物をクロマトグラフィー法で精製する必要があるという従来技術の欠点を解決する。特にXがBrである場合、生成物の収率を向上させ、精製方法を簡素化させるとともに、原料コストを削減させる。
5.式1化合物と式4化合物とを反応させて式8化合物を製造するステップでは、触媒の投入量が、先行文献で報道された投入量よりも遥かに少なく、且つ、1〜5時間反応させるのみで原料の転化率が100%に達すことができ、反応中に生じた不純物が極めて少量であるので、生成物が単に対応の塩に形成させるのみで精製でき、生成物の純度が高い。
【0056】
本発明では、前記式1化合物、式3化合物、又は式8化合物は、遊離塩基として存在しても、無機酸又は有機酸で形成される塩として存在してもよく、いずれも本発明の保護範囲に属する。
【0057】
本明細書では、前記当量とはモル量換算の物質量である。例えば、本明細書に記載の式2化合物の量が式1化合物に対して0.9〜2当量であることは、式2化合物のモル量が、式1化合物のモル量に対して、0.9〜2倍であることを意味する。
【実施例】
【0058】
以下の実施例は、本発明を例示的に説明するためのものに過ぎず、本発明の範囲を制限するものではない。
【0059】
実施例1
【化22】
窒素ガスの保護下で、式5−Br化合物(60g,0.28mol)、式6−Boc化合物(84.6g,0.42mol)及びトリフェニルホスフィン(257.4g,0.98mol)を無水THF(10eq体積)に加え、淡褐色の懸濁液を得た。反応温度を0℃に下げて、温度を5℃以下に維持しながらDIAD(198.4g,0.98mol)を滴下し、溶液が徐々に淡黄色の澄み溶液になった。滴下終了後、徐々に20℃に昇温しながら撹拌して3時間反応させ、濃塩酸(10eq)を加えて、50℃に昇温して撹拌し続けて2時間反応させ、次に温度を室温に下げて濾過した。濾過ケーキを少量のTHFで洗浄した後、真空濃縮させて恒量(固定重量)になるまで乾燥させ、オフホワイト色固体74.0g(収率71.0%、化学純度98.5%)を得た。オフホワイト色固体30gに、炭酸水素ナトリウム水溶液を加えて、遊離した塩基22.9g(収率95.1%、化学純度98.5%)を得た。m/z(MH+)297,1HNMR(400MHz,DMSO)δ1.94−2.11(m,4H),2.92−2.98(m,1H),3.01−3.36(m,2H),3.45−3.47(m,1H),5.12−5.19(m,1H),8.50−8.51(s,1H),9.61−9.87(dd,2H)。
【0060】
実施例2
【化23】
窒素ガスの保護下で、式5−Br化合物(60g,0.28mol)、式6−Boc化合物(84.6g,0.42mol)及びトリフェニルホスフィン(257.4g,0.98mol)を無水THF(10eq体積)に加え、淡褐色の懸濁液を得た。反応温度を0℃に下げて、温度を5℃以下に維持しながらDEAD(170.8g,0.98mol)を滴下し、溶液が徐々に淡黄色の澄み溶液になった。滴下終了後、徐々に20℃に昇温しながら撹拌して3時間反応させ、濃塩酸(10eq)を加えて、50℃に昇温して撹拌し続けて2時間反応させ、次に温度を室温に下げて濾過した。濾過ケーキを少量のTHFで洗浄した後、真空濃縮させて恒量になるまで乾燥させ、オフホワイト色固体70.3g(収率67.8%、化学純度98.3%)を得た。
【0061】
実施例3
【化24】
窒素ガスの保護下で、式5−Br化合物(20g,0.093mol)、式6−Boc化合物(28.21g,0.14mol)及びトリフェニルホスフィン(85.79g,0.33mol)を無水THF(200mL)に加え、淡褐色の懸濁液を得た。反応温度を0℃に下げて、温度を5℃以下に維持しながらDIAD(66.14g,0.33mol)を滴下し、溶液が徐々に淡黄色の澄み溶液になった。滴下終了後、徐々に0〜10℃に昇温しながら撹拌して3時間反応させ、濃塩酸(78mL)を加え、50℃に昇温して撹拌し続けて2時間反応させ、次に温度を室温に下げて濾過した。濾過ケーキに水を加えて溶解した後、6N水酸化ナトリウム溶液でpHを8に調整し、次に、ジクロロメタンで抽出して、無水硫酸ナトリウムで有機相を乾燥させて濾過し、乾くまで真空濃縮させてオフホワイト色固体19.5g(収率70%)を得た。
【0062】
実施例4
【化25】
窒素ガスの保護下で、式1−Br化合物(5g,0.017mol)を2−メチルテトラヒドロフラン(50mL)に溶解して、7%の炭酸水素ナトリウム(2.83g,0.034mol)水溶液(40mL)を加え、次に温度を−5℃に下げて、塩化アクリロイル(1.52g,0.017mol)の2−メチルテトラヒドロフラン(5mL)溶液をゆっくりと滴下した。滴下終了後、反応温度を0℃以下に維持しながら撹拌して1時間反応させた。反応液が層化し、水相を2−メチルテトラヒドロフラン(50mL)で抽出した後、有機相を合わせ、7%の炭酸水素ナトリウム水溶液(50mL)及び水(50mL)を用いて有機相を順次洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、乾くまで真空濃縮させて、淡黄色固体5.03g(収率85.1%)を得、HPLCで検出したところ、1.05%の不純物
【化26】
を含有した。
m/z (MH+) 351, 1H NMR (400MHz, DMSO) δ 1.56 − 1.59 (m, 1H), 1.88 − 1.99 (m, 1H), 2.05 − 2.22 (m, 3H), 2.91 (m, 0.5H) & 3.59−3.62 (m, 0.5H), 3.07 − 3.19 (m, 1H), 4.05 − 4.08 (m, 0.5H) & 4.51 − 4.57 (m, 0.5H), 4.60 − 4.63 (m, 1H), 5.61 − 6.15 (dd, 2H), 6.69 − 6.88 (m, 1H), 8.23 (s, 1H)。
【0063】
実施例5
【化27】
窒素ガスの保護下で、式1−I化合物(5g,0.0145mol)を2−メチルテトラヒドロフラン(50mL)に溶解して、7%の炭酸水素ナトリウム(2.44g,0.029mol)水溶液(34.8mL)を加え、次に温度を−5℃に下げて、塩化アクリロイル(1.31g,0.0145mol)の2−メチルテトラヒドロフラン(5mL)溶液をゆっくりと滴下し、滴下終了後、反応温度を0℃以下に維持しながら撹拌して1時間反応させた。反応液が層化し、水相を2−メチルテトラヒドロフラン(50mL)で抽出した後、有機相を合わせ、7%の炭酸水素ナトリウム水溶液(50mL)及び水(50mL)を用いて有機相を順次洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、乾くまで真空濃縮させて、淡黄色固体4.67g(収率80.7%)を得、HPLCで検出したところ、1.01%の不純物
【化28】
を含有した。
m/z ( MH+ ), 1H NMR(400 MHz, DMSO) δ 8.22 (s, 1H), 6.82 − 6.86 (m, 1H), 6.11 − 6.15 (m, 1H), 5.63 − 5.72 (m, 1H), 4.63 − 4.69 (m, 1H), 4.05 − 4.19 (m, 0.5H), 4.59 − 4.63 (m, 0.5H), 3.84 (m, 0.5H), 3.10 − 3.16 (m, 1H), 1.85 − 1.94 (m, 2H), 2.04 − 2.08 (m, 1H), 1.55 − 1.58 (m, 1H)。
【0064】
実施例6
【化29】
実施例4で得られた式3−1−Br化合物(3g,8.54mmol)(HPLCで検出したところ、1.05%の不純物
【化30】
を含有する)、式4化合物(2.74g,12.81mmol)及びリン酸カリウム(5.44g,25.63mmol)を1,4−ジオキサン(30mL)と水(12mL)との混合溶媒に加え、窒素ガスを導入して20分間バブリングした後、Pd(PPh
3)
4(98.7mg,0.085mmol)を加え、さらに窒素ガスを導入して5分間バブリングし、次に加熱還流して撹拌しながら1時間反応させた。次に、反応混合物が層化し、有機相を蒸発乾燥させた後、エタノールで残滓を結晶化させ、オフホワイト色固体3.2g(収率85%、純度99.8%)を得、HPLCで検出したところ、不純物
【化31】
がなかった。
【0065】
実施例7
【化32】
窒素ガスの保護下で、式1−Br化合物(5g,0.017mol)を2−メチルテトラヒドロフラン(50mL)に溶解して、7%の炭酸水素ナトリウム(2.83g,0.034mol)水溶液(40mL)を加え、次に温度を−5℃に下げて、3−クロロプロピオニルクロリド(2.14g,0.017mol)の2−メチルテトラヒドロフラン(5mL)溶液をゆっくりと滴下し、滴下終了後、反応温度を0℃以下に維持しながら撹拌して1時間反応させた。反応液が層化し、水相を2−メチルテトラヒドロフラン(50mL)で抽出した後、有機相を合わせ、7%の炭酸水素ナトリウム水溶液(50mL)及び水(50mL)を用いて有機相を順次洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、乾くまで真空濃縮させて淡黄色固体5.61g(収率86.6%)を得た。
m/z (MH+) 1H NMR (400 MHz, DMSO) δ 8.24 (s, 1H), 4.47 − 4.56 (m, 1H), 4.00 − 4.04 (m, 1H), 4.69 (m, 0.5H), 4.21 − 4.27 (m, 0.5H), 3.80 − 3.82 (m, 0.5H), 3.51 − 3.57 (m, 0.5H), 3.76 − 3.80 (m, 1H), 2.70 − 3.14 (m, 4H), 2.05 − 2.16 (m, 2H), 1.48 − 1.64 (m, 2H)。
【0066】
実施例8
【化33】
窒素ガスの保護下で、式1−Br化合物(5g,0.017mol)を2−メチルテトラヒドロフラン(50mL)に溶解して、7%の炭酸水素ナトリウム(2.83g,0.034mol)水溶液(40mL)を加え、次に温度を−5℃に下げて、3−ブロモプロピオニルブロミド(3.63g,0.017mol)の2−メチルテトラヒドロフラン(5mL)溶液をゆっくりと滴下し、滴下終了後、反応温度を0℃以下に維持しながら撹拌して1時間反応させた。反応液が層化し、水相を2−メチルテトラヒドロフラン(50mL)で抽出した後、有機相を合わせ、7%の炭酸水素ナトリウム水溶液(50mL)及び水(50mL)を用いて有機相を順次洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、乾くまで真空濃縮させて、淡黄色固体6.12g(収率84.1%)を得た。
m/z (MH+) 1H NMR (400 MHz, DMSO) δ 8.31 (s, 1H), 4.71 − 4.76 (m, 1H), 4.48 − 4.59 (m, 1H), 4.20 − 4.23 (m, 0.5H), 4.00 − 4.02 (m, 0.5H), 3.86 − 3.89 (m, 0.5H), 3.51 − 3.55 (m, 0.5H), 3.55 − 3.67 (m, 1H), 2.81 − 3.17 (m, 1H), 2.06 − 2.21 (m, 2H), 1.81 − 1.91 (m, 1H), 1.46 − 1.68 (m, 1H)。
【0067】
実施例9
【化34】
窒素ガスの保護下で、式1−I化合物(5g,0.0145mol)を2−メチルテトラヒドロフラン(50mL)に溶解して、7%の炭酸水素ナトリウム(2.44g,0.029mol)水溶液(34.8mL)を加え、次に温度を−5℃に下げて、3−クロロプロピオニルクロリド(1.84g,0.0145mol)の2−メチルテトラヒドロフラン(5mL)溶液をゆっくりと滴下し、滴下終了後、反応温度を0℃以下に維持しながら撹拌して1時間反応させた。反応液が層化し、水相を2−メチルテトラヒドロフラン(50mL)で抽出した後、有機相を合わせ、7%の炭酸水素ナトリウム水溶液(50mL)及び水(50mL)を用いて有機相を順次洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、乾くまで真空濃縮させて、淡黄色固体5.29g(収率83.8%)を得た。
m/z (MH+), 1H NMR (400 MHz, DMSO) δ 8.23 (s, 1H), 4.66 − 4.71 (m, 0.5H), 4.47 − 4.58 (m, 1H), 4.21 − 4.24 (m, 0.5H), 3.99 − 4.03 (m, 0.5H), 3.87 − 3.90 (m, 0.5H), 3.76 − 3.82 (m, 2H), 2.71 − 3.15 (m, 4H), 1.99 − 2.21 (m, 2H), 1.80 − 1.89 (m, 1H), 1.48 − 1.64 (m, 1H)。
【0068】
実施例10
【化35】
窒素ガスの保護下で、式1−I化合物(5g,0.0145mol)を2−メチルテトラヒドロフラン(50mL)に溶解して、7%の炭酸水素ナトリウム(2.44g,0.029mol)水溶液(34.8mL)を加え、次に温度を−5℃に下げて、3−ブロモプロピオニルブロミド(3.14g,0.0145mol)の2−メチルテトラヒドロフラン(5mL)溶液をゆっくりと滴下し、滴下終了後、反応温度を0℃以下に維持しながら撹拌して1時間反応させた。反応液が層化し、水相を2−メチルテトラヒドロフラン(50mL)で抽出した後、有機相を合わせ、7%の炭酸水素ナトリウム水溶液(50mL)及び水(50mL)を用いて有機相を順次洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、乾くまで真空濃縮させて、淡黄色固体6.01g(収率86.3%)を得た。
m/z ( MH+ ), 1H NMR (400 MHz, DMSO) δ 8.23 (s, 1H), 4.69 (m, 0.5H), 4.47 − 4.55 (m, 1H), 4.20 − 4.24 (m, 0.5H), 3.97 − 3.98 (m, 0.5H), 3.86 − 3.89 (m, 0.5H), 3.52 − 3.67 (m, 2H), 2.83 − 3.12 (m, 4H), 2.06 − 2.19 (m, 2H), 1.86 − 1.89 (m, 1H), 1.64 − 1.84 (m, 1H)。
【0069】
実施例11
【化36】
式3−2−Br−Cl化合物(3g,7.74mmol)、式4化合物(2.48g,11.61mmol)及びリン酸カリウム(5.75g,27.09mmol)を1,4−ジオキサン(30mL)と水(12mL)との混合溶媒に加え、窒素ガスを導入して20分間バブリングした後、Pd(PPh
3)
4(89.4mg,0.077mmol)を加え、さらに窒素ガスを導入して5分間バブリングし、次に加熱還流して撹拌しながら1時間反応させた。次に、反応混合物が層化し、有機相を蒸発乾燥させた後、エタノールで残滓を結晶化させ、オフホワイト色固体2.87g(収率84.2%)を得た。
【0070】
実施例12
【化37】
式3−2−Br−Br化合物(3g,6.94mmol)、式4化合物(2.23g,10.41mmol)及びリン酸カリウム(5.16g,24.3mmol)を1,4−ジオキサン(30mL)と水(12mL)との混合溶媒に加え、窒素ガスを導入して20分間バブリングした後、Pd(PPh
3)
4(80.3mg,0.069mmol)を加え、さらに窒素ガスを導入して5分間バブリングし、次に加熱還流して撹拌しながら1時間反応させた。次に、反応混合物が層化し、有機相を蒸発乾燥させた後、エタノールで残滓を結晶化させ、オフホワイト色固体2.64g(収率86.2%)を得た。
【0071】
実施例13
【化38】
式1−Br化合物の二塩酸塩(20g,0.054mol)、式4化合物(17.35g,0.081mol)及びリン酸カリウム(40.15g,0.19mol)を1,4−ジオキサン(200mL)と水(80mL)との混合溶媒に加え、窒素ガスを導入して20分間バブリングした後、Pd(PPh
3)
4(0.62g,5.4×10
−4mol)を加え、さらに窒素ガスを導入して5分間バブリングし、次に加熱還流して撹拌しながら5時間反応させた。次に、反応液を濃縮させて、残留物に酢酸エチル(100mL)及び水(100mL)を加え、塩酸でpHを2〜3に調整して、層化させて、水相に酢酸エチル(100mL)を加えて1回抽出し、分液後の水相にジクロロメタン(200mL)を加え、6N水酸化ナトリウム溶液でpHを9〜10に調整し、撹拌して分液し、有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥させて、溶媒を蒸発乾燥させ、化合物8の遊離塩基としてオフホワイト色固体18.8g(収率90.0%、化学純度98.5%)を得た。この遊離塩基とHClのエタノール溶液とを反応させて塩を形成し、化合物8の塩酸塩18.9g(収率92%、化学純度99.1)を得た。
【0072】
実施例14
【化39】
式1−Br化合物(16.1g,0.054mol)、式4化合物(17.35g,0.081mol)及びリン酸カリウム(48.5g,0.23mol)をエチレングリコールジメチルエーテル(200mL)と水(80mL)との混合溶媒に加え、窒素ガスを導入して20分間バブリングした後、Pd(PPh
3)
4(0.62g,5.4×10
−4mol)を加え、さらに窒素ガスを導入して5分間バブリングし、次に加熱還流して撹拌しながら5時間反応させた。次に、反応液を濃縮させて、残留物に酢酸エチル(100mL)及び水(100mL)を加え、塩酸でpHを2〜3に調整して、層化させて、水相に酢酸エチル(100mL)を加えて1回抽出し、分液後の水相にジクロロメタン(200mL)を加えて、6N水酸化ナトリウム溶液でpHを9〜10に調整し、撹拌して分液し、有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥させて、溶媒を蒸発乾燥させ、化合物8の遊離塩基としてオフホワイト色固体18.2g(収率87.1%、化学純度98.8%)を得た。
【0073】
実施例15
【化40】
式1−Br化合物の二塩酸塩(20g,0.054mol)、式4化合物(17.35g,0.081mol)及びリン酸カリウム(40.15g,0.19mol)をDMF(200mL)と水(80mL)との混合溶媒に加え、窒素ガスを導入して20分間バブリングした後、Pd(PhCN)
2Cl
2(0.21g,5.5×10
−4mol)を加え、さらに窒素ガスを導入して5分間バブリングし、次に加熱還流して撹拌しながら5時間反応させた。次に、反応液を濃縮させて、残留物に酢酸エチル(100mL)及び水(100mL)を加え、塩酸でpHを2〜3に調整して、層化させて、水相に酢酸エチル(100mL)を加えて1回抽出し、分液後の水相にジクロロメタン(200mL)を加えて、6N水酸化ナトリウム溶液でpHを9〜10に調整し、撹拌して分液し、有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥させて、溶媒を蒸発乾燥させ、オフホワイト色固体13.6g(収率65.1%)を得た。
【0074】
実施例16
【化41】
式1−Br化合物の二塩酸塩(20g,0.054mol)、式4化合物(17.35g,0.081mol)及び炭酸カリウム(26.14g,0.19mol)を1,4−ジオキサン(200mL)と水(80mL)との混合溶媒に加え、窒素ガスを導入して20分間バブリングした後、Pd(PPh
3)
4(0.62g、5.4×10
−4mol)を加え、さらに窒素ガスを導入して5分間バブリングし、次に加熱還流して撹拌しながら5時間反応させた。次に、反応液を濃縮させて、残留物に酢酸エチル(100mL)及び水(100mL)を加え、塩酸でpHを2〜3に調整して、層化させて、水相に酢酸エチル(100mL)を加えて1回抽出し、分液後の水相にジクロロメタン(200mL)を加えて、6N水酸化ナトリウム溶液でpHを9〜10に調整し、撹拌して分液し、有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥させて、溶媒を蒸発乾燥させ、オフホワイト色固体16.8g(収率80.4%)を得た。
【0075】
実施例17
【化42】
窒素ガスの保護下で、式8化合物(10g,0.026mol)を2−メチルテトラヒドロフラン(100mL)に溶解して、7%の炭酸水素ナトリウム(4.37g,0.052mol)水溶液(62mL)を加え、次に温度を−5℃に下げて、塩化アクリロイル(2.34g,0.026mol)の2−メチルテトラヒドロフラン(10mL)溶液をゆっくりと滴下し、滴下終了後、反応温度を0℃以下に維持しながら撹拌して1時間反応させた。反応液が層化し、水相を2−メチルテトラヒドロフラン(100mL)で抽出した後、有機相を合わせ、7%の炭酸水素ナトリウム水溶液(50mL)及び水(50mL)を用いて有機相を順次洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、乾くまで真空濃縮させて、白色泡状固体10.5g(収率92.1%)を得、酢酸エチル及びn−ヘプタンを用いて再結晶させて、白色結晶10.0g(収率95.0%、化学純度99.6%、光学純度99.5%)を得た。
【0076】
実施例18
【化43】
窒素ガスの保護下で、式8化合物の塩酸塩(11g,0.026mol)を2−メチルテトラヒドロフラン(100mL)に溶解して、7%の炭酸水素ナトリウム(5.04g,0.06mol)水溶液(72mL)を加え、次に温度を−5℃に下げて、塩化アクリロイル(2.34g,0.026mol)の2−メチルテトラヒドロフラン(10mL)溶液をゆっくりと滴下し、滴下終了後、反応温度を0℃以下に維持しながら撹拌して1時間反応させた。反応液が層化し、水相を2−メチルテトラヒドロフラン(50mL)で抽出した後、有機相を合わせ、7%の炭酸水素ナトリウム水溶液(50mL)及び水(50mL)を用いて有機相を順次洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、乾くまで真空濃縮させて、白色泡状固体10.2g(収率89.9%)を得、酢酸エチル及びn−ヘプタンを用いて再結晶させ、白色結晶9.7g(収率95.0%、化学純度99.7%、光学純度99.6%)を得た。