(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0005】
PSDおよびFTIR技術によって、安価であり、かつ薄型でありながら比較的大きなタッチ表面(例えば、3〜100インチ)を有し得る複数検出タッチスクリーン/タッチパネルを得ることが可能となる。
【0006】
これらの2つの技術には、
(i)例えば、1つ以上の端縁から出発する赤外線に対して透明である基板へのLEDによる赤外(IR)線の注入;
(ii)全反射の光学現象を介して、(次いで、導波管として作用する)前記基板内部での赤外線の伝播(放射線は基板から「出ない」);
(iii)全方向における放射線の散乱による局所的混乱を生じる、いずれかの対象(例えば、指または針)との基板の表面の接触(偏向された光線のいくつかは、したがって、基板から「出る」ことが可能である)
が関与する。
【0007】
FTIR技術では、偏向された光線は、タッチ表面の反対側の基板のより低い表面において赤外光スポットを形成する。これらは、デバイスの下に位置する特別なカメラによって見られる。
【0008】
PSD技術自体は、その一部分に関して、段階(i)〜(iii)に続く2つの追加的な段階:
(iv)基板の端縁において得られたIR線の検出器による分析;および
(v)検出される放射線から出発して、表面と接触する対象の位置のアルゴリズムによる計算
が関与する。この技術は、特に、米国特許出願公開第2013/021300A1号明細書に明示される。
【0009】
基本的に、ガラスは、その機械的特性、その耐久性、その引掻きに対する耐性、およびその光学的透明性の結果として、およびそれが化学的または熱的に強化可能であるため、タッチパネルのための選択材料である。
【0010】
PSDまたはFTIR技術のために使用され、かつ非常に大きい表面を有し、したがって、比較的大きい長さ/幅を有するガラスパネルの場合、注入したIR線は、長い光路長を有する。したがって、この場合、ガラスの材料によるIR線の吸収は、タッチパネルの感応性に有意に影響し、次いで、パネルの長さ/幅が、望ましくないことに減少し得る。PSDまたはFTIR技術のために使用され、かつより小さい表面を有し、したがって、注入したIR線の光路長がより短いガラスパネルの場合も、ガラスの材料によるIR線の吸収が、特にガラスパネルを組み込むデバイスのエネルギー消費に影響を及ぼす。
【0011】
したがって、これに関して、赤外線に対して高度に透明であるガラスシートは、表面が大きい場合、全タッチ表面上での無傷または十分な官能性を保証するために、非常に有用である。特に、1m
−1以下の、一般にこれらの技術で使用される780〜1200nm(より特には、850〜1050nm)の波長範囲の吸収係数を有するガラスシートが理想的である。
【0012】
さらにまた、赤外線に対して高度に透明、可視領域において透明、またはわずかに着色から強く着色した、実際には不透明でさえあるガラスシートは、サイズが多少大きいパネルを必要とし、かつ主要表面を通して(次いで、光路長はシートの厚さに相当する)、またはそれらの端縁から出発してのいずれかで、前記パネルを通して赤外線の非常に良好な透過を必要とする技術を使用する他のデバイスにおいても非常に有用であることが証明される。
【0013】
赤外線領域(および可視領域)において高い透過を得るためには、低鉄ガラスを得るために、ガラス中の鉄の全含有量(当該分野における慣例に従って、Fe
2O
3に換算して示される)を低下させることが知られている。ケイ酸塩型のガラスは、鉄を常に含んでなる。これは、使用される大部分の出発材料(砂、石灰石、ドロマイトなど)において、鉄が不純物として存在するためである。鉄は、第二鉄Fe
3+イオンおよび第一鉄Fe
2+イオンの形態でガラスの構造中に存在する。ガラス上での第二鉄Fe
3+イオンの存在は、低波長可視光のわずかな吸収、および近紫外線領域(380nmを中心とする吸収帯)におけるより強い吸収に関与し、一方、第一鉄Fe
2+イオン(酸化物FeOとして表示されることもある)の存在は、近赤外線領域(1050nmを中心とする広吸収帯)におけるより強い吸収をもたらす。したがって、全鉄含有量(両形態)の増加は、可視領域および赤外線領域における吸収を強調する。さらにまた、第一鉄Fe
2+イオンの高濃度は、赤外線領域(特に、近赤外線領域)における透過で減少をもたらす。しかしながら、全鉄含有量のみを影響することによって、タッチ用途のために十分に低い780〜1200nmの波長範囲における吸収係数を達成するためには、このような全鉄含有量の著しい減少が必要とされるが、(i)非常に純粋な出発材料(これは十分純粋に存在しないことさえもある)が必要とされるため、非常に高い生産コストがもたらされるか、あるいは(ii)製造問題(特に、炉の早期摩耗および/または炉でガラスを加熱することの困難)を提示するかのいずれかである。
【0014】
さらにガラスの透過を増加させるために、ガラスに存在する鉄を酸化させること、すなわち、第二鉄イオンの含有量のために、第一鉄イオンの含有量を低下させることも既知である。ガラスの酸化の程度は、その酸化還元によって与えられ、ガラスに存在する鉄原子の全重量に対するFe
2+原子の重量による比率(Fe
2+/全Fe)として定義される。
【0015】
ガラスの酸化還元を低下させるために、バッチの出発材料に酸化成分を添加することが既知である。しかしながら、大部分の既知の酸化剤(硫酸塩、硝酸塩など)は、特にFTIRまたはPSD技術を使用するタッチパネル用途のために所望のIR透過値を達成するためには十分に強くない酸化動力を有するか、または極端に多い量で添加されなければならないため、例えば、コスト、製造プロセスとの不適合性などの副次的な不都合が生じる。
【0016】
そのうえ、多少強く着色するか、または不透明でさえあるガラスシートを得るために、実質的に一般的な解決策は、鉄が非常に有効であり、かつ安価な着色剤であるため、比較的多量の鉄をベースとするガラス組成を使用することである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本明細書を通して、範囲が示されるとき、末端は含まれる。加えて、明白に記載される場合、数値的な範囲の全ての整数値および副範囲は明白に含まれる。また本明細書を通して、明白にその他の場合(例えば、ppm)が明示されない限り、含有量の値はパーセントである。同様に、また本明細書を通して、パーセントの含有量の値は重量により、すなわち、ガラスの全重量に関して表される。
【0027】
また本明細書を通して、
− (%で表される)光透過は、380〜780nmの波長範囲に対して、2°の立体観測角において、4mmのガラスシート厚さ(TLD4)に関して、発光物D65を用いて(ISO9050規格に従って)考慮され;
− (%で表される)IR透過は、780〜2500nmの波長範囲に対して、4mmの厚さ(TIR4)に関して、(ISO9050規格に従って)考慮され;そして
− (ガラスシートの色の特徴を決定する)CIELabパラメータL
*a
*b
*は、5mmの厚さに関して、かつ発光物D65(10°)を用いた透過において考慮される。
【0028】
本発明の他の特性および利点は、実例および非限定的な実施例として与えられる以下の説明、実施例および図面を読み取ることによって明らかになるであろう。
【0029】
本発明によるガラスシートは、様々な種類に属し得るガラスから製造される。したがって、ガラスは、ソーダ石灰−シリカ、アルミノシリケートまたはボロシリケート型などのガラスであることができる。好ましくは、ガラスシートの組成は、ガラスの全重量のパーセントとして表される含有量で、以下の基本成分:
SiO
2 55〜78%
Al
2O
3 0〜18%
B
2O
3 0〜18%
Na
2O 0〜20%
CaO 0〜15%
MgO 0〜10%
K
2O 0〜10%
BaO 0〜5%
を含む。
【0030】
より好ましくは、より低い生産コストの理由で、本発明によるガラスシートは、ソーダ石灰−シリカガラスのシートである。有利には、この実施形態によると、ガラスシートの組成は、ガラスの全重量のパーセントとして表される含有量で、以下の基本成分:
SiO
2 60〜75%
Al
2O
3 0〜6%
B
2O
3 0〜4%
CaO 0〜15%
MgO 0〜10%
Na
2O 5〜20%
K
2O 0〜10%
BaO 0〜5%
を含むことができる。
【0031】
「ガラス」という用語は、本発明の意味の範囲内で、完全非晶質材料を意味するものとして理解され、したがって、いずれの結晶材料、部分的結晶材料(例えば、ガラス−結晶またはガラス−セラミック材料)さえも排除される。
【0032】
ガラスシートの組成は、特に出発材料に存在する不純物に加えて、少量の添加剤(例えば、ガラスの溶解または精製を促進する薬剤)、または溶融炉を形成する耐火性材料の溶解に由来する成分を含むことができる。
【0033】
本発明によるガラスシートは、フローティングプロセス、ドローイングプロセス、ローリングプロセス、または溶融ガラス組成物からのガラスシートを製造するためにいずれかの他の既知のプロセスによって得られるガラスシートであることが可能である。本発明による好ましい実施形態によると、ガラスシートは、フロートガラスシートである。「フロートガラスシート」という用語は、還元条件で溶融ガラスを溶融スズの浴上に注ぎ入れることからなるフロートプロセスによって形成されたガラスシートを意味するものとして理解される。既知の様式で、フロートガラスのシートは、「スズ表面(tin face)」、すなわち、シートの表面の付近のガラス体においてスズが濃縮された表面を含む。「スズ濃縮」という用語は、実質的にゼロ(スズがない)であり得るか、またはゼロであり得ないコアにおけるガラスの組成に対するスズの濃度の増加を意味するものとして理解される。
【0034】
本発明によるガラスシートは、様々な比較的大きいサイズを有することができる。例えば、3.21m×6m、もしくは3.21m×5.50m、もしくは3.21m×5.10m、もしくは3.21m×4.50m(「ジャンボサイズ」ガラスシートと呼ばれる)、または例えば、3.21m×2.55m、もしくは3.21m×2.25m(「レアエンド(lehr end)サイズ」ガラスシートと呼ばれる)の範囲のサイズを有することができる。
【0035】
本発明によるガラスシートは、0.1〜25mmの範囲の厚さを有することができる。有利には、タッチパネル用途の場合、本発明によるガラスシートは、0.1〜6mmの範囲の厚さを有することができる。好ましくは、タッチスクリーン用途の場合、重量の理由のため、本発明によるガラスシートの厚さは、0.1〜2.2mmである。あるいは、好ましくは、スクリーン用途以外のいずれかの用途に関して、本質的に機械強度の理由のため、本発明によるガラスシートの厚さは、2.8〜12mmである。
【0036】
本発明によると、組成は、ガラスの全重量に対して、0.002重量%〜1重量%の範囲の全鉄(Fe
2O
3の形態で表される)含有量を含む。1%以下の全鉄(Fe
2O
3の形態で表される)含有量によって、赤外線領域での高い透過を維持することが可能となる。最小値によって、鉄の少ない出発材料の価格のため、ガラスのコストに悪影響を与えないことが可能となる。本明細書中、「全鉄」は、ガラス組成の全鉄含有量を示すために、「Fe
2O
3」と同様に使用される(Fe
2O
3の形態で表される)ことは留意すべきである。
【0037】
代わりに、かつ有利には、組成は、好ましくは、0.002%≦Fe
2O
3≦0.7%、またはより良好には、0.002%≦Fe
2O
3≦0.3%のような全鉄(Fe
2O
3の形態で表される)含有量を含む。非常に好ましくは、組成は、0.002%≦Fe
2O
3≦0.15%、またはより良好には、0.002%≦Fe
2O
3≦0.1%のような全鉄含有量を含む。より好ましくは、本発明の組成は、0.002%≦Fe
2O
3≦0.06%、またはさらには、0.002%≦Fe
2O
3≦0.04%,またはさらにより良好には、0.002%≦Fe
2O
3≦0.02%のような全鉄含有量を含む。なおより好ましくは、組成は、0.002%≦Fe
2O
3≦0.015%、またはさらには、0.002%≦Fe
2O
3≦0.01%のような全鉄含有量を含む。そのような鉄の最大値の減少によって、ガラスシートのIR透過および光透過のさらなる増加が可能となる。
【0038】
代わりに、かつ有利には、また組成は、好ましくは、0.01%≦Fe
2O
3≦1%、またはより良好には、0.01%≦Fe
2O
3≦0.7%、またはさらにより良好には、0.01%≦Fe
2O
3≦0.3%のような全鉄含有量を含む。非常に好ましくは、組成は、0.01%≦Fe
2O
3≦0.15%、またはより良好には、0.01%≦Fe
2O
3≦0.1%のような全鉄含有量を含む。なおより好ましくは、本発明の組成は、0.01%≦Fe
2O
3≦0.06%、またはさらには、0.01%≦全鉄≦0.04%、またはさらにより良好には、0.01%≦Fe
2O
3≦0.02%のような全鉄含有量を含む。
【0039】
代わりに、かつ有利には、また組成は、好ましくは、0.02%≦Fe
2O
3≦1%、またはより良好には、0.02%≦Fe
2O
3≦0.7%、またはさらにより良好には、0.02%≦Fe
2O
3≦0.3%のような全鉄含有量を含む。非常に好ましくは、組成は、0.02%≦Fe
2O
3≦0.15%、またはより良好には、0.02%≦Fe
2O
3≦0.1%のような全鉄含有量を含む。なおより好ましくは、本発明の組成は、0.02%≦Fe
2O
3≦0.06%、またはさらには、0.02%≦Fe
2O
3≦0.04%のような全鉄含有量を含む。
【0040】
代わりに、かつ有利には、また組成は、好ましくは、0.04%≦Fe
2O
3≦1%、またはより良好には、0.04%≦Fe
2O
3≦0.7%、またはさらにより良好には、0.04%≦Fe
2O
3≦0.3%のような全鉄含有量を含む。非常に好ましくは、組成は、0.04%≦Fe
2O
3≦0.15%、またはより良好には、0.04%≦Fe
2O
3≦0.1%のような全鉄含有量を含む。なおより好ましくは、本発明の組成は、0.04%≦Fe
2O
3≦0.06%のような全鉄含有量を含む。
【0041】
代わりに、かつ有利には、また組成は、好ましくは、0.06%≦Fe
2O
3≦1%、またはより良好には、0.06%≦Fe
2O
3≦0.7%、またはさらにより良好には、0.06%≦Fe
2O
3≦0.3%のような全鉄含有量を含む。非常に好ましくは、組成は、0.06%≦Fe
2O
3≦0.15%、またはより良好には、0.06%≦Fe
2O
3≦0.1%のような全鉄含有量を含む。
【0042】
本発明の有利な実施形態によると、ガラスシートの組成は、Fe
2O
3≦7
*Cr
2O
3(Fe
2O
3は全鉄含有量であり、かつCr
2O
3はクロム含有量であり、これらは重量パーセントで表される)を含む。好ましくは、ガラスシートの組成は、Fe
2O
3≦5
*Cr
2Oを含み、またはさらにより良好には、ガラスシートの組成は、Fe
2O
3≦4
*Cr
2O
3を含む。より好ましくは、ガラスシートの組成は、Fe
2O
3≦3
*Cr
2O
3を含む。非常に好ましくは、ガラスシートの組成は、Fe
2O
3≦2
*Cr
2O
3を含む。そのような鉄−クロム関係のため、広範囲の産業条件における第一鉄から第二鉄へのほぼ完全な酸化と、したがって、最大赤外線透過が可能となる。
【0043】
本発明によると、組成は、ガラスの全重量に対して、0.0001重量%〜0.5重量%の範囲のコバルト(Coの形態で表される)含有量を含む。好ましくは、組成は、0.0001%〜0.2%、またはさらには、0.0001%〜0.1%の範囲のコバルト含有量を含む。より好ましくは、組成は、0.0001%〜0.05%の範囲のコバルト(Coの形態で表される)含有量を含む。なおより好ましくは、組成は、0.0001%〜0.025%の範囲のコバルト(Coの形態で表される)含有量を含む。最も好ましくは、組成は、0.0001%〜0.02%または0.0001%〜0.015%、またはさらにより良好には、0.0001%〜0.01%の範囲のコバルト含有量を含む。そのようなコバルト範囲によって、過度に光透過を低下させることなく、望ましい色を達成することが可能となる。
【0044】
有利に、組成は、0.001%〜0.5%、またはさらには、0.001%〜0.2%の範囲のコバルト(Coの形態で表される)含有量を含む。好ましくは、組成は、0.001%〜0.1%の範囲のコバルト含有量を含む。より好ましくは、組成は、0.001%〜0.05%の範囲のコバルト含有量を含む。より好ましくは、組成は、0.001%〜0.025%または0.001%〜0.02%、またはさらにより良好には、0.002%〜0.02%の範囲のコバルト含有量を含む。そのようなコバルト範囲によって、過度に光透過を低下させることなく、望ましい色を達成することが可能となる。
【0045】
本発明によると、組成は、ガラスの全重量に対して、0.001%〜0.5重量%の範囲のクロム(Cr
2O
3の形態で表される)含有量を含む。好ましくは、組成は、0.001%〜0.25%、またはさらには、0.001%〜0.15%の範囲のクロム(Cr
2O
3の形態で表される)含有量を含む。なおより好ましくは、組成は、0.001%〜0.1%、またはさらには、0.001%〜0.075%、またはさらにより良好には、0.001%〜0.05%の範囲のクロム含有量を含む。そのようなクロム範囲のため、望ましい色を達成すること、および広範囲の産業条件における第一鉄から第二鉄へのほぼ完全な酸化と、したがって、最大赤外線透過を保証することも可能となる。
【0046】
代わりに、かつ有利には、組成は、好ましくは、ガラスの全重量に対して、0.0015%〜0.5重量%の範囲のクロム(Cr
2O
3の形態で表される)含有量を含む。好ましくは、組成は、0.0015%〜0.25%、またはさらには、0.0015%〜0.15%の範囲のクロム(Cr
2O
3の形態で表される)含有量を含む。なおより好ましくは、組成は、0.0015%〜0.1%、またはさらには、0.0015%〜0.075%、またはさらにより良好には、0.0015%〜0.05%の範囲のクロム(Cr
2O
3の形態で表される)含有量を含む。最も好ましくは、組成は、0.002%〜0.05%またはさらには、0.0025%〜0.05%の範囲のクロム含有量を含む。そのようなクロム範囲のため、望ましい色を達成すること、および広範囲の産業条件における第一鉄から第二鉄へのほぼ完全な酸化と、したがって、光透過の損失をますます制御しながら、最大赤外線透過を保証することも可能となる。
【0047】
本発明によると、組成は、ガラスの全重量に対して、0.0003%〜0.5重量%の範囲のセレン(Seの形態で表される)含有量を含む。好ましくは、組成は、0.0003%〜0.25%、またはさらには、0.0003%〜0.15%、またはさらにより良好には、0.0003%〜0.1%の範囲のセレン含有量を含む。より好ましくは、組成は、0.0003%〜0.075%、またはさらには、0.0003%〜0.05%の範囲のセレン(Seの形態で表される)含有量を含む。代わりに、好ましくは、組成は、0.001%〜0.5%、またはより良好には、0.001%〜0.25%、またはさらにより良好には、0.001%〜0.15%、またはさらにより良好には、0.001%〜0.1%の範囲のセレン(Seの形態で表される)含有量を含む。より好ましくは、組成は、0.001%〜0.075%、またはさらには、0.001%〜0.05%の範囲のセレン含有量を含む。代わりに、また好ましくは、組成は、0.0015%〜0.075%、またはさらには、0.003%〜0.075%、またはさらにより良好には、0.005%〜0.075%の範囲のセレン(Seの形態で表される)含有量を含む。代わりに、また好ましくは、組成は、0.0015%〜0.05%、またはさらには、0.003%〜0.05%、またはさらにより良好には、0.005%〜0.05%の範囲のセレン(Seの形態で表される)含有量を含む。そのようなセレン範囲によって、過度に光透過を低下させることなく、望ましい色を達成することが可能となる。
【0048】
本発明の一実施形態によると、組成は、0.0005%〜0.5%の範囲および好ましくは、0.002%〜0.1%の範囲の含有量でニッケル(Niの形態で表される)を含んでもよい。これは、本発明による範囲内であるが、必要とされるセレンの量を減少することを可能にし、したがって、それに関連する滞留問題を回避することを可能にする(ニッケルはその部分に関して揮発性ではない)という利点を有する。
【0049】
好ましくは、本発明によると、組成は、20ppm未満のFe
2+(FeOの形態で表される)含有量を含む。含有量のこのような範囲によって、特にIR線の透過に関して、非常に満足な特性を得ることが可能となる。組成は、好ましくは、10ppm未満のFe
2+(FeOの形態で表される)含有量を含む。非常に好ましくは、組成は5ppm未満のFe
2+(FeOの形態で表される)含有量を含む。
【0050】
本発明の1つの有利な実施形態によると、ガラスシートの組成は、15%以下の酸化還元を有する。好ましくは、酸化還元は、10%以下、または5%以下、またはさらには3%以下である。
【0051】
有利に、好ましくは、本発明のガラスシートは、TIR4>TLD4+2を有する。より好ましくは、本発明のガラスシートは、TIR4>TLD4+5、またはさらにより良好には、TIR4>TLD4+10を有する。代わりに、好ましくは、本発明のガラスシートは、TIR4>1.05
*TLD4、好ましくは、TIR4>1.05
*TLD4+5を有する。また代わりに、好ましくは、本発明のガラスシートは、TIR4>1.1
*TLD4を有する。また代わりに、好ましくは、本発明のガラスシートは、TIR4>0.95
*TLD4+5を有する。より好ましくは、本発明のガラスシートは、TIR4>0.95
*TLD4+10を有する。また代わりに、好ましくは、本発明のガラスシートは、TIR4>0.9
*TLD4+10を有する。より好ましくは、本発明のガラスシートは、TIR4>0.9
*TLD4+15を有する。また代わりに、好ましくは、本発明のガラスシートは、TIR4>0.85
*TLD4+15を有する。より好ましくは、本発明のガラスシートは、TIR4>0.85
*TLD4+20を有する。また代わりに、好ましくは、本発明のガラスシートは、TIR4>0.8
*TLD4+20を有する。TIR4およびTLD4の間の関係に関する全ての後者の実施形態は、本発明のガラスシートをより反選択的にさせるという利点を有する。
【0052】
本発明の特に有利である第1の主要な実施形態によると、組成は、
− 全鉄(Fe
2O
3の形態で表される)含有量≦0.7%;
− クロム(Cr2O3の形態で表される)含有量≦0.0465%;
− コバルト(Coの形態で表される)含有量≦0.004%;
− Se
*Fe
2O
3≦0.0012%;および
− (3000
*Co)+(260
*Cr
2O
3)+(10000
*Se
*Fe
2O
3)+(16.2
*Fe
2O
3)<12
を含む。
【0053】
そのような実施形態によって、ガラスシートの色に有意に影響を及ぼすことなく(色は中性から、非常にわずかに着色している)、IR領域における高い透過、80%より高い光透過TLD4が得られることを保証することが可能となる。
【0054】
本発明の第1の主要な実施形態によると、組成は、好ましくは、
− 全鉄(Fe
2O
3の形態で表される)含有量≦0.6%;
− クロム(Cr
2O
3の形態で表される)含有量≦0.0385%;
− コバルト(Coの形態で表される)含有量≦0.0033%;
− Se
*Fe
2O
3≦0.001%;および
− (3000
*Co)+(260
*Cr
2O
3)+(10000
*Se
*Fe
2O
3)+(16.2
*Fe
2O
3)<10;
を含み、ガラスシートの色に有意に影響を及ぼすことなく(色は中性から、非常にわずかに着色している)、IR領域における高い透過、82%より高い光透過TLD4が得られることを保証することの利益を有する。
【0055】
なお本発明の第1の主要な実施形態によると、なおより好ましくは、組成は、
− 全鉄(Fe
2O
3の形態で表される)含有量≦0.4%;
− クロム(Cr
2O
3の形態で表される)含有量≦0.027%;
− コバルト(Coの形態で表される)含有量≦0.0023%;
− Se
*Fe
2O
3≦0.0007%;および
− (3000
*Co)+(260
*Cr
2O
3)+(10000
*Se
*Fe
2O
3)+(16.2
*Fe
2O
3)<7;
を含み、ガラスシートの色に有意に影響を及ぼすことなく(色は中性から、非常にわずかに着色している)、IR領域における高い透過、85%より高い光透過TLD4が得られることを保証することの利益を有する。
【0056】
なお、本発明の第1の主要な実施形態によると、非常に好ましくは、組成は、
− 全鉄(Fe
2O
3の形態で表される)含有量≦0.3%;
− クロム(Cr
2O
3の形態で表される)含有量≦0.019%;
− コバルト(Coの形態で表される)含有量≦0.0017%;
− Se
*Fe
2O
3≦0.0005%;および
− (3000
*Co)+(260
*Cr
2O
3)+(10000
*Se
*Fe
2O
3)+(16.2
*Fe
2O
3)<5;
を含み、ガラスシートの色に有意に影響を及ぼすことなく(色は中性から、非常にわずかに着色している)、IR領域における高い透過、87%より高い光透過TLD4が得られることを保証することの利益を有する。
【0057】
なお、本発明の第1の主要な実施形態によると、また非常に好ましくは、組成は、
− 全鉄(Fe
2O
3の形態で表される)含有量≦0.2%;
− クロム(Cr
2O
3の形態で表される)含有量≦0.011%;
− コバルト(Coの形態で表される)含有量≦0.001%;
− Se
*Fe
2O
3≦0.0003%;および
− (3000
*Co)+(260
*Cr
2O
3)+(10000
*Se
*Fe
2O
3)+(16.2
*Fe
2O
3)<3;
を含み、ガラスシートの色に有意に影響を及ぼすことなく(色は中性から、非常にわずかに着色している)、IR領域における高い透過、89%より高い光透過TLD4が得られることを保証することの利益を有する。
【0058】
なお、本発明の第1の主要な実施形態によると、最も好ましくは、組成は、
− 全鉄(Fe
2O
3の形態で表される)含有量≦0.06%;
− クロム(Cr
2O
3の形態で表される)含有量≦0.004%;
− コバルト(Coの形態で表される)含有量≦0.0003%;
− Se
*Fe
2O
3≦0.0001%;および
− (3000
*Co)+(260
*Cr
2O
3)+(10000
*Se
*Fe
2O
3)+(16.2
*Fe
2O
3)<1;
を含み、ガラスシートの色に有意に影響を及ぼすことなく(色は中性から、非常にわずかに着色している)、IR領域における高い透過、90%より高い光透過TLD4が得られることを保証することの利益を有する。
【0059】
なお、本発明の第1の主要な実施形態によると、ガラスシートは、好ましくは、80%より高い光透過TLD4を有する。より好ましくはは、ガラスシートは、82%より高い、さらにより良好には、85%、87%、89%またはさらに良好には、90%より高い光透過TLD4を有する。
【0060】
本発明の第1の主要な実施形態によるガラスシートは、サイズが多少大きいパネルを必要とし、かつ(i)主要表面を通して、またはそれらの端縁から出発してのいずれかで、前記パネルを通しての赤外線の非常に良好な透過、および(ii)可視領域における非常に良好な透過、さらには「中性」着色を必要とする技術を使用するいずれのデバイスにおいても有利に使用することができる。ガラスシートの中性は、a
*b
*ダイヤグラムにおける起点(0,0)からの距離を考慮に入れることによって評価される。
【0061】
例えば、この第1の主要な実施形態によるガラスシートは、ガラスの端縁において伝播するIR線を使用するいずれの技術においても有利に使用されることができる。特に、この第1の主要な実施形態によるシートは、前記シートの表面において1つ以上の対象(例えば、指または針)の位置を検出するための「平面散乱検出」(PSD)または「フラストレーテッド・トータル・インターナル・リフレクション」(FTIR)光学技術において価値を強化する。
【0062】
可視領域におけるその良好な透過、および非常に中性からわずかな着色までのその着色を考慮して、この第1の主要な実施形態によるガラスシートは、特にディスプレイ表面上に適合されるタッチスクリーンまたはタッチパネルまたはタッチパッドとして有利に使用することができる。したがって、本発明は、タッチ表面を画定する、本発明の第1の主要な実施形態による少なくとも1つのガラスシートを含むタッチスクリーンまたはタッチパネルまたはタッチパッドに関する。この場合、そして好ましくは、タッチスクリーンまたはタッチパネルまたはタッチパッドは、有利にはFTIRまたはPSD光学技術を使用する。特に、この場合、ガラスシートは、ディスプレイ表面上に有利に適合される。
【0063】
本発明の特に有利である第2の主要な実施形態によると、組成は、(3000
*Co)+(260
*Cr
2O
3)+(10000
*Se
*Fe
2O
3)+(16.2
*Fe
2O
3)≧12を含む。そのような組成によって、可視領域において透過がほとんどないか、またはない状態で、赤外線の高い透過を保持しながら、不透明まで多少強く着色した、灰色または青銅色の色あいの着色ガラスシートを得ることが可能となる。
【0064】
本発明のこのような第2の主要な実施形態によると、組成は、好ましくは、1
*Co<Se<10
*Coを含む。より好ましくは、組成は、1
*Co<Se<8
*Co、またはさらにより良好には、1
*Co<Se<5
*Coを含む。なおより好ましくは、組成は、1
*Co<Se<3
*Co、またはさらにより良好には、2
*Co<Se<3
*Coを含む。セレンおよびコバルトの含有量の間のそのような関係によって、可視領域において透過がほとんどないか、またはない状態で、赤外線の高い透過を保持しながら、不透明まで多少強く着色した、実質的に灰色の快適なガラスシートを得ることが可能となる。
【0065】
本発明の第2の主要な実施形態によると、好ましくは、コバルトおよびセレンに関連する上記実施形態との可能な組合せにおいて、組成は、好ましくは、1
*Co<Cr
2O
3<10
*Coを含む。より好ましくは、組成は、1
*Co<Cr
2O
3<8
*Co、またはさらにより良好には、1
*Co<Cr
2O
3<5
*Coを含む。なおより好ましくは、組成は、1
*Co<Cr
2O
3<4
*Co、またはさらにより良好には、2
*Co<Cr
2O
3<4
*Coを含む。最も好ましくは、組成は、3
*Co<Cr
2O
3<4
*Coを含む。クロムおよびコバルトの含有量の間のそのような関係によって、可視領域において透過がほとんどないか、またはない状態で、赤外線の高い透過を保持しながら、不透明まで多少強く着色した、実質的に灰色の快適なガラスシートを得ることが可能となる。
【0066】
上記のコバルトおよびセレンに関連する実施形態と、上記のクロムおよびコバルトに関連する実施形態とのいずれの組合せも特に有利である。
【0067】
代わりに、なお、本発明の第2の主要な実施形態によると、組成は、好ましくは、2
*Co<Se<17
*Coを含む。より好ましくは、組成は、5
*Co<Se<17
*Co、またはさらにより良好には、6
*Co<Se<17
*Coを含む。なおより好ましくは、組成は、7
*Co<Se<17
*Co、またはさらにより良好には、7
*Co<Se<15
*Coを含む。最も好ましくは、組成は、7
*Co<Se<11
*Coを含む。セレンおよびコバルトの含有量の間のそのような関係によって、可視領域において透過がほとんどないか、またはない状態で、赤外線の高い透過を保持しながら、不透明まで多少強く着色した、実質的に青銅色の快適なガラスシートを得ることが可能となる。
【0068】
なお、本発明の第2の主要な実施形態によると、好ましくは、コバルトおよびセレンに関連する上記実施形態との可能な組合せにおいて、組成は、好ましくは、2
*Co<Cr
2O
3<10
*Coを含む。より好ましくは、組成は、2
*Co<Cr
2O
3<8
*Co、またはさらにより良好には、2
*Co<Cr
2O
3<6
*Coを含む。なおより好ましくは、組成は、2
*Co<Cr
2O
3<5
*Co、またはさらにより良好には、3
*Co<Cr
2O
3<5
*Coを含む。クロムおよびコバルトの含有量の間のそのような関係によって、可視領域において透過がほとんどないか、またはない状態で、赤外線の高い透過を保持しながら、不透明まで多少強く着色した、実質的に青銅色の快適なガラスシートを得ることが可能となる。
【0069】
上記のコバルトおよびセレンに関連する実施形態と、上記のクロムおよびコバルトに関連する実施形態とのいずれの組合せも特に有利である。
【0070】
なお、本発明の第2の主要な実施形態によると、ガラスシートは、好ましくは、80%未満の光透過TLD4を有する。より好ましくは、ガラスシートは、75%未満、またはより良好には、70%未満、またはさらには、50%未満の光透過TLD4を有する。非常に暗色であるか、またはさらには、実質的に不透明までの色が必要とされる特定の用途に関して、ガラスシートは、10%未満の光透過TLD4を有してもよい。
【0071】
有利に、なお、本発明の第2の主要な実施形態によると、好ましくは、本発明のガラスシートは、TIR4>TLD4+15、またはさらにより良好には、TIR4>TLD4+20を有する。代わりに、なお、本発明の第2の主要な実施形態によると、好ましくは、本発明のガラスシートは、TIR4>1.05
*TLD4+10を有する。代わりに、なお、本発明の第2の主要な実施形態によると、好ましくは、TIR4>1.1
*TLD4+5を有する。代わりに、なお、本発明の第2の主要な実施形態によると、好ましくは、本発明のガラスシートは、TIR4>1.15
*TLD4、およびより良好には、TIR4>1.2
*TLD4を有する。代わりに、なお、本発明の第2の主要な実施形態によると、好ましくは、本発明のガラスシートは、TIR4>0.9
*TLD4+20を有する。TIR4およびTLD4の間の関係に関する全ての後者の実施形態は、本発明の着色ガラスシートをより反選択的にさせるという利点を有する。
【0072】
なお、本発明の第2の主要な実施形態によると、本発明のガラスシートは着色されている。好ましくは、ガラスシートは|b
*|<5および|a
*|<5を有する。これは、高い赤外線透過を保証しながら、市場で入手可能な全ての灰色ガラスの色を再現することが可能となるため、有利である。好ましくは、ガラスシートは、|b
*|<3および|a
*|<3を有し、より良好な中性および高い赤外線透過を保証しながら、市場で入手可能な全ての灰色ガラスの色を再現することを可能にする。
【0073】
非常に好ましくは、ガラスシートは、0<a
*<1;−3<b
*<0を有し、これによって、市場で入手可能な淡灰色ガラス(例えば、「Planibel Grey」)を再現することが可能となる。
【0074】
代わりに、好ましくは、ガラスシートは、−2.5<a
*<1.5および−2.5<b
*<1.5を有し、これによって、市場で入手可能な濃灰色ガラス(例えば、「Planibel Dark Grey」)を再現することが可能となる。
【0075】
代わりに、また好ましくは、ガラスシートは、2<a
*<5;3<b
*<7を有し、これによって、市場で入手可能な青銅色ガラス(例えば、「Planibel Bronze」)を再現することが可能となる。
【0076】
本発明の第2の主要な実施形態によるガラスシートは、サイズが多少大きいパネルを必要とし、かつ(i)主要表面を通して、またはそれらの端縁から出発してのいずれかで、前記パネルを通しての赤外線の非常に良好な透過、および(ii)可視領域における特定の色または(仮想的)不透明度を必要とするいずれのデバイスにおいても有利に使用することができる。
【0077】
例えば、この第2の主要な実施形態によるガラスシートは、ガラスの端縁において伝播するIR線を使用するいずれの技術においても有利に使用されることができる。特に、これは、不透明までの多少強い色を考慮して、その後ろ/下に見られる対象/成分を部分的に、または完全に隠すことが可能である前記シートの表面において1つ以上の対象(例えば、指または針)の位置を検出するための「平面散乱検出」(PSD)または「フラストレーテッド・トータル・インターナル・リフレクション」(FTIR)光学技術において価値を強化することが可能である。
【0078】
さらなる実施例として、本発明の第2の主要な実施形態によるガラスシートは、以下の価値を向上させることもできる:
(1)加熱素子の見栄えが悪い側面を(部分的に、または完全に)隠すが、IR線の通過を可能にし、したがって、上記加熱デバイスからの良好なアウトプットを可能にする、放射加熱素子の前方/周囲に配置された装飾パネルとして(デバイスとして、壁面加熱デバイス、または他のIRクックトップが特に考慮され得る);
(2)構造的または装飾スパンドレルガラスとして;
(3)赤外線を必要とする技術を使用することもある(一般に「タッチパッド」として知られる)ポータブルコンピュータ上のポインティングデバイスとして。この場合、ガラスシートは、好ましくは色が非常に暗く、実際には不透明でさえもあり、したがって、その下に位置する電子部品を隠している;
(4)家具、特に、遠隔制御可能な電気/電子機器電気機器を含むことが意図される家具の、そのような電気機器の見栄えが悪い側面を視界から隠すが、リモコンから送られるシグナルが通過することを可能にする前面要素として。これは、大部分の家庭用電気/電子機器電気機器(テレビ、ハイファイ、DVDプレーヤー、ゲームコンソールなど)が、近赤外線領域のシグナルを送るハウジングを使用して遠隔制御可能であるためである。しかしながら、この遠隔制御システムは、特に2つの不都合を示す:(i)シグナルは、その感応性を低下させる可視領域(太陽、ライト)における二次放射線の存在によって、しばしば混乱すること、および(ii)電気機器が、遠隔操作のIRシグナルが到達可能であることを必要とし、したがって、たとえ要求が、美的な理由のために、この方向で進展するにもかかわらず、これらは家具の内部に隠されることができないこと。
【0079】
本発明によると、上記の第1または第2の主要な実施形態のいずれによっても、ガラスシートはIR線の高い透過を有する。より詳しくは、本発明のガラスシートは、750〜1200nmの範囲において、近赤外線領域における放射線の高い透過を有する。好ましくは、ガラスシートは、透過TIR4>70%、または>80%、またはさらには、>85%、またはさらにより良好には、>87%または>90%を有する。
【0080】
例えば、PSDまたはFTIR技術を必要とするデバイスを使用する用途に関して、透過TIRに加えて、上記用途に関して興味深い特定の波長における赤外線領域におけるガラスの良好な透過を定量化するために、波長1050、950および850nmにおける吸収係数は、したがって、良好な透過を得るために可能な限り低くなければならないが、使用される。吸収係数は、吸光度と、所与の媒体における電磁放射によって移動する光学距離の長さとの比率によって定義される。これは、m
−1で表される。これは、したがって、材料の厚さから独立しているが、吸収される放射線の波長および材料の化学的性質に関係する。
【0081】
ガラスの場合、選択された波長λにおける吸収係数(μ)は、透過(T)の測定、ならびに材料の屈折率nから計算することができ(thick=厚さ)、n、ρおよびTの値は、選択された波長λの関数である。
式中、ρ=(n−1)
2/(n+1)
2である。
【0082】
本発明の第1の主要な実施形態によると、ガラスシートは、波長1050、950および850nmで、従来技術の「透明」ガラスの、または従来技術の「エクストラ−クリア」ガラスの吸収係数より低い吸収係数を有する。
【0083】
有利には、本発明の第1の主要な実施形態によるガラスシートは、波長1050nmで5m
−1未満の吸収係数を有する。好ましくは、波長1050nmで2m
−1以下の吸収係数を有する。非常に好ましくは、波長1050nmで1m
−1以下の吸収係数を有する。
【0084】
再び有利には、本発明の第1の主要な実施形態によるガラスシートは、波長950nmで5m
−1未満の吸収係数を有する。好ましくは、波長950nmで2m
−1以下の吸収係数を有する。非常に好ましくは、波長950nmで1m
−1以下の吸収係数を有する。
【0085】
再び有利には、本発明の第1の主要な実施形態によるガラスシートは、波長850nmで5m
−1未満の吸収係数を有する。好ましくは、波長850nmで2m
−1以下の吸収係数を有する。非常に好ましくは、波長850nmで1m
−1以下の吸収係数を有する。
【0086】
本発明の第2の主要な実施形態によると、ガラスシートは、波長1050、950および850nmで、同等の色および/または光透過を有する従来技術のガラスの吸収係数より有意に低い吸収係数を有する。
【0087】
本発明によるガラスシートは、有利には、化学的または熱的にテンパリング可能である。それは、有利には、(例えば、熱成形によって)変形されてもよい。通常の例は、自動車グレイジングのために意図されたガラスシートに関して既知の屈曲であるが、ガラスシートの他のいずれかの変形も、本発明の範囲を逸脱することなく想像され得る。
【0088】
本発明によるガラスシートは、有利には、ラミネート構造を形成するために、(一般に、PVBまたはポリビニルブチラールの)ポリマー中間層フィルム、および任意に、第2の同一または異なるガラスシートとラミネートされてもよい。
【0089】
本発明によるガラスシートは、有利には、少なくとも1つの透明かつ電導性の薄層でコーティング可能である。本発明による透明かつ導電性の薄層は、例えば、SnO
2:F、SnO
2:SbまたはITO(酸化インジウムスズ)、ZnO:AlまたはZnO:Gaをベースとする層であることができる。
【0090】
またガラスシートは、少なくとも1つの反射防止層でコーティング可能である。これは、本発明のガラスシートをスクリーンの前面として使用する場合、特に有利である。本発明による反射防止層は、例えば、低屈折率を有する多孔性シリカをベースとする層であることができるか、またはいくつかの層(積層)、特に、低屈折率を有する層と高屈折率を有する層とを交互に有し、かつ低屈折率を有する層を末端とする誘電体物質の層の積層から構成可能である。
【0091】
本発明によるガラスシートは、有利には、少なくとも1つの抗指紋層でコーティング可能である。本発明のガラスシートがタッチ表面として使用される場合、これは有利である。そのような層は、反対の表面に堆積された透明かつ導電性の薄層と組み合わせることができる。そのような層は、同一面に堆積された反射防止層と組み合わせることができ、この場合、抗指紋層は積層の外側であって、したがって、反射防止層を被覆する。
【0092】
本発明によるガラスシートは、例えば、抗指紋特性、または他に反反射または反フリッカー特性を生じるように、酸または塩基によるフロスティングによって、あるいは他に、抗菌特性を生じる処理(例えば、銀ベースの処理)によって、その主要表面の少なくとも1つにおいて処理されることも可能である。これはまた、タッチまたは非タッチスクリーンの前面としての本発明のガラスシートの使用に関して、特に有利である。
【0093】
加えて、本発明は、タッチ表面を画定する少なくとも1つの本発明によるガラスシートを含むタッチスクリーンまたはタッチパネルまたはタッチパッドにも関する。この実施形態によると、タッチスクリーンまたはタッチパネルまたはタッチパッドは、有利にはFTIRまたはPSD光学技術を使用する。特に、スクリーンに関して、ガラスシートは、ディスプレイ表面上に有利に適合される。
【0094】
所望の用途および/または特性によって、本発明によるガラスシートの1つの表面および/または他の表面に他の層/他の処理を堆積/実行することができる。
【0095】
最後に、本発明は、前記シート内部を本質的に伝播する赤外線を使用するデバイスにおける本発明によるガラスシートの使用にも関する。本発明によるガラスシートの2つの主要な実施形態およびまた全てのそれらの特定の実施形態も、使用の実施形態としての本発明による使用に適用される。
【0096】
「シート内部を本質的に伝播する放射線」という用語は、シートの2つの主要な表面間をガラスシートの内部で移動する放射線を意味するものとして理解される。
【0097】
有利には、本発明による使用の特定の実施形態によると、赤外線の伝播は全内部反射によって生じる。この実施形態によると、赤外線は、前記シートの1つ以上の端縁から出発してガラスシート内部に注入されることができる。「シートの端縁」という用語は、シートの厚さによって画定され、かつシートの2つの主要表面に対して実質的に垂直である4つの表面のそれぞれを意味するものとして理解される。さらにこの実施形態によると、代わりに、赤外線は、特定の角度で一方または両方の主要表面から出発してガラスシート内部に注入されることができる。
【0098】
特に本有利なことに、本発明の使用によると、組成は、本発明によるガラスシートの第1の主要な実施形態による。
【0099】
以下の実施例は、いずれかの形態でその範囲を限定することを意図せずに、本発明を例示する。
【実施例】
【0100】
本発明による様々なガラスシートは、全鉄、クロム、コバルトならびにセレンおよび/またはニッケルの可変量を用いて、5つの組合せの形態で調製または計算/シミュレートされた。
【0101】
本発明によるガラスシートの調製のために、下記の表に明示される同一基本組成に従って、出発材料を粉末形態で混合し、そして溶解させるために、るつぼに配置し、そしてこれに、最終組成において目標とされる含有量の関数としての可変量の鉄、クロム、コバルトならびにセレンおよび/またはニッケルを含む出発材料を添加した(鉄は、不純物として基本組成の出発材料に少なくとも部分的にすでに存在することに留意する必要がある)。
【0102】
【0103】
シートの形態の融解によって調製されたそれぞれの組成物の光学特性は、直径150mmの積分球を備えたPerkin Elmer Lambda 950分光光度計において決定し、特に
− 透過TIR4は、4mmの厚さに関して、および780〜2500nmの波長範囲に関してのISO 9050規格に従って決定され;
− 光透過TLD4も、2°の観察立体角で4mmの厚さ(発光物D65)に関して、および380〜780nmの波長範囲に関してのISO 9050規格に従って決定され;
− CIE L
*a
*b
*パラメータは、以下の測定パラメータを有する透過において決定された:発光物D65、10°、厚さ5mm。
【0104】
本発明によるガラス組成のシミュレーションのために、種々のガラスシートの光学特性を、種々の着色剤の光学特性に基づき計算した(Bamfordの理論による吸収係数)。
【0105】
実施例12および13からのガラスシートを融解によって調製し、そしてそれらの光学特性を測定した。比較例として、市販のガラスシートに関しても、同一光学特性を測定した(実施例3、6、9、11および14)。
【0106】
実施例1、2、4、5、7、8および10の光学特性は、シミュレーション/計算から誘導される。
【0107】
組合せ1
実施例1および2は、本発明によるガラスシートに対応した。実施例3(比較例)は、高い鉄含有量を有する従来技術からの着色ガラス(「Planibel Grey」の名称で販売される灰色ガラス)に対応する。本発明による組成のそれぞれの実施例1〜2は、比較例の灰色ガラス(市場に提供されたガラス)に類似の比色パラメータ(a
*b
*)の値および光透過(TLD4)の値を達成するが、赤外線の透過(TIR4)を最大化するように最適化された。
【0108】
表1は、実施例1および2に関して計算され、そして比較例3に関して測定された光学特性、ならびに鉄、クロム、コバルト、セレンおよびニッケルのそれぞれの量を提示する。
【0109】
図1(a)は、本発明による実施例1および2ならびに従来技術による実施例3(「Planibel Grey」灰色ガラス)の290〜2500nm(したがって、可視および近赤外領域を含む)の全く同一のガラス厚さに対する透過の曲線を示す。
図1(b)は、400〜1250nmの波長の
図1(a)の拡大を示す。
【0110】
【表1】
【0111】
得られた結果(
図1および表1を参照のこと)によると、低い鉄含有量と組み合わせて、本発明(第2の主要な実施形態)による含有量の範囲内のクロム、コバルトならびにセレンおよび/またはニッケルの添加により、赤外線領域において透過を非常に有意に増加させながら(非常に増加したTIR4または非常に低いμ)、市販の灰色ガラスに高度に匹敵するT
Lおよび色を有するガラスシートを得ることが可能であることが示される。
【0112】
組合せ2
実施例4および5は、本発明によるガラスシートに対応した。実施例6(比較例)は、高い鉄含有量を有する従来技術からの着色ガラス(「Planibel Dark Grey」の名称で販売される暗灰色ガラス)に対応する。本発明による組成のそれぞれの実施例4〜5は、比較例6の暗灰色ガラス(市場に提供されたガラス)に類似の比色パラメータ(a
*b
*)の値および光透過(TLD4)の値を達成するが、赤外線の透過(TIR4)を最大化するように最適化された。
【0113】
表2は、実施例4および5に関して計算され、そして実施例6に関して測定された光学特性、ならびに鉄、クロム、コバルト、セレンおよびニッケルのそれぞれの量を提示する。
【0114】
図2(a)は、本発明による実施例4および5ならびに従来技術による実施例6(「Planibel Dark Grey」暗灰色ガラス)の290〜2500nm(したがって、可視および近赤外領域を含む)の全く同一のガラス厚さに対する透過の曲線を示す。
図2(b)は、400〜1250nmの波長の
図2(a)の拡大を示す。
【0115】
【表2】
【0116】
得られた結果(
図2および表2を参照のこと)によると、比較的低い鉄含有量と組み合わせて、本発明(第2の主要な実施形態)による含有量の範囲内のクロム、コバルトならびにセレンおよび/またはニッケルの添加により、赤外線領域において透過を非常に有意に増加させながら(非常に増加したTIR4または非常に低いμ)、T
Lおよび色に関して従来技術からの暗灰色ガラスに高度に匹敵する暗灰色ガラスシートを得ることが可能であることが示される。
【0117】
組合せ3
実施例7および8は、本発明によるガラスシートに対応した。実施例9(比較例)は、高い鉄含有量を有する従来技術からの着色ガラス(「Planibel Bronze」の名称で販売される青銅色ガラス)に対応する。本発明による組成のそれぞれの実施例7および8は、比較例9の青銅色ガラス(市場に提供されたガラス)に類似の比色パラメータ(a
*b
*)の値および光透過(TLD4)の値を達成するが、赤外線の透過(TIR4)を最大化するように最適化された。
【0118】
表3は、実施例7および8に関して計算され、そして比較例9に関して測定された光学特性、ならびに鉄、クロム、コバルト、セレンおよびニッケルのそれぞれの量を提示する。
【0119】
図3(a)は、本発明による実施例7および8ならびに従来技術による実施例9(「Planibel Bronze」青銅色ガラス)の290〜2500nm(したがって、可視および近赤外領域を含む)の全く同一のガラス厚さに対する透過の曲線を示す。
図3(b)は、400〜1250nmの波長の
図3(a)の拡大を示す。
【0120】
【表3】
【0121】
得られた結果(
図3および表3を参照のこと)によると、低い鉄含有量と組み合わせて、本発明(第2の主要な実施形態)による含有量の範囲内のクロム、コバルトならびにセレンおよび/またはニッケルの添加により、赤外線領域において透過を非常に有意に増加させながら(非常に増加したTIR4または非常に低いμ)、T
Lおよび色に関して市販の青銅色ガラスに高度に匹敵する青銅色ガラスシートを得ることが可能であることが示される。
【0122】
組合せ4
実施例10は、本発明によるガラスシートに対応した。実施例11(比較例)は、高い鉄含有量を有する従来技術からの着色ガラス(「Optigrey」の名称で販売される淡灰色ガラス)に対応する。本発明による組成の実施例10は、比較例10の淡灰色ガラス(市場に提供されたガラス)に類似の比色パラメータ(a
*b
*)の値および光透過(TLD4)の値を達成するが、赤外線の透過(TIR4)を最大化するように最適化された。
【0123】
表4は、実施例10に関して計算され、そして実施例11に関して測定された光学特性、ならびに鉄、クロム、コバルトおよびセレンのそれぞれの量を提示する。
【0124】
図4(a)は、本発明による実施例10および従来技術による実施例11(「Optigrey」淡灰色ガラス)の290〜2500nm(したがって、可視および近赤外領域を含む)の全く同一のガラス厚さに対する透過の曲線を示す。
図4(b)は、400〜1250nmの波長の
図4(a)の拡大を示す。
【0125】
【表4】
【0126】
得られた結果(
図4および表4を参照のこと)によると、低い鉄含有量と組み合わせて、本発明(第2の主要な実施形態)による含有量の範囲内のクロム、コバルトおよびセレンの添加により、赤外線領域において透過を非常に有意に増加させながら(非常に増加したTIR4または非常に低いμ)、T
Lに関して市販の淡灰色ガラスに高度に匹敵するが、美的により中性である淡灰色ガラスシートを得ることが可能であることが示される。
【0127】
組合せ5
実施例12および13は、本発明による着色ガラスシートに対応した。実施例14(比較例)は、従来技術からの透明ガラス(「Planibel clear」の名称で販売される透明ガラス)に対応する。
【0128】
表5は、実施例12〜14に関して測定された光学特性、ならびに鉄、クロム、コバルトおよびセレンのそれぞれの量を提示する。
【0129】
図5(a)は、本発明による実施例12〜13ならびに従来技術による実施例14(透明ガラス)の290〜2500nm(したがって、可視および近赤外領域を含む)の全く同一のガラス厚さに対する透過の曲線を示す。
図5(b)は、400〜1250nmの波長の
図5(a)の拡大を示す。
【0130】
【表5】
【0131】
得られた結果(
図5および表5を参照のこと)によると、低い鉄含有量と組み合わせて、本発明による含有量の範囲内のクロム、コバルトおよびセレンの添加により、(対応する従来技術からの着色ガラスに関してであるが、従来技術からの透明ガラス、実施例14との比較においても)赤外線領域において透過をより有意に増加させながら、市販の灰色ガラスに高度に匹敵する(より低いT
Lを有する)着色ガラスシートを得ることが可能であることが示される。
【0132】
さらに、本発明による実施例12および13の着色ガラスシートは、従来技術からの透明ガラス(実施例14)のものよりも低いIR領域における吸収係数を示す。