特許第6681950号(P6681950)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6681950
(24)【登録日】2020年3月26日
(45)【発行日】2020年4月15日
(54)【発明の名称】冷却装置
(51)【国際特許分類】
   F01P 11/04 20060101AFI20200406BHJP
   B60K 11/04 20060101ALI20200406BHJP
   F01P 11/00 20060101ALI20200406BHJP
   B60L 3/00 20190101ALN20200406BHJP
【FI】
   F01P11/04 C
   B60K11/04 Z
   F01P11/00 C
   F01P11/04 D
   !B60L3/00 H
【請求項の数】7
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2018-141689(P2018-141689)
(22)【出願日】2018年7月27日
(65)【公開番号】特開2020-16222(P2020-16222A)
(43)【公開日】2020年1月30日
【審査請求日】2020年1月31日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】390039929
【氏名又は名称】三桜工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】390009896
【氏名又は名称】愛知機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079049
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳
(74)【代理人】
【識別番号】100099025
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 浩志
(72)【発明者】
【氏名】門井 俊
(72)【発明者】
【氏名】安喰 義明
(72)【発明者】
【氏名】羽田 雅敏
(72)【発明者】
【氏名】羽根 伸晃
(72)【発明者】
【氏名】熊谷 聡
【審査官】 種子島 貴裕
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭61−135929(JP,A)
【文献】 特開平06−081643(JP,A)
【文献】 実開昭58−025618(JP,U)
【文献】 特開平11−141336(JP,A)
【文献】 実開昭50−009639(JP,U)
【文献】 実開平02−054333(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01P 11/04
B60K 11/04
F01P 11/00
B60L 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載される被冷却対象を熱源としたサイフォン循環により前記被冷却対象に冷媒を循環させる冷却装置において、
前記被冷却対象の上方に配置され、前記冷媒を貯留するタンクと、
前記タンク内に開口し、前記冷媒を流出させる流出路と、
前記タンクの内側から外側へ延出し、前記タンク内に位置する内側部分の開口端が前記流出路の開口よりも上方に位置する通路部材と、
前記通路部材の前記タンクの外側に位置する外側部分に備えられ、前記タンク内における前記開口端の位置を特定可能な特定手段と、
を有し、
前記通路部材は、前記タンクの外壁を貫通すると共に前記内側部分が前記外側部分に対して曲がっており、
前記特定手段は、前記外側部分の軸線回りの回転位置を確認可能な方向確認部を有する冷却装置。
【請求項2】
前記方向確認部は、前記外側部分に備えられ、一つの平面を有する一面幅部又は互いに反対向きかつ平行な一対の平面を有する二面幅部によって構成されている、請求項に記載の冷却装置。
【請求項3】
前記方向確認部は、前記外側部分が湾曲することにより構成されている、請求項に記載の冷却装置。
【請求項4】
前記通路部材の前記外側部分の外周に接合され、前記タンクの前記外壁に接するスリーブ状部品を有し、
前記一面幅部又は前記二面幅部が前記スリーブ状部品に設けられている、請求項に記載の冷却装置。
【請求項5】
前記タンクの前記外壁は、曲面状に形成されている、請求項4に記載の冷却装置。
【請求項6】
前記通路部材は、斜め上向きに延びて前記タンクの外壁を貫通している、請求項1〜のいずれか一項に記載の冷却装置。
【請求項7】
前記タンクは、両端が塞がれた円筒状とされ、横向きに寝かされた姿勢で前記被冷却対象の上方に配置されている、請求項に記載の冷却装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載された被冷却対象を冷却するための冷却装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、過給機冷却通路の下流側に接続される冷却水貯留タンクを過給機より高い所に設置し、熱サイフォンを利用して冷却水を循環させて、エンジン停止後も無給電で過給機の冷却を継続する技術について開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭61−135929号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、冷却水貯留タンクの底壁を貫通してパイプがタンク内に挿入されている。冷却水貯溜タンクとパイプ等の組み立て後は、タンク内を目視できないため、タンク内におけるパイプの開口端の位置を確認することができない。
【0005】
本発明は、上記事実を考慮して、タンクの内側から外側へ通路部材が延出する構成において、タンク内が目視できなくても、タンク内における通路部材の開口端の位置を確認できる冷却装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1態様の冷却装置は、車両に搭載される被冷却対象を熱源としたサイフォン循環により前記被冷却対象に冷媒を循環させる冷却装置において、前記被冷却対象の上方に配置され、前記冷媒を貯留するタンクと、前記タンク内に開口し、前記冷媒を流出させる流出路と、前記タンクの内側から外側へ延出し、前記タンク内に位置する内側部分の開口端が前記流出路の開口よりも上方に位置する通路部材と、前記通路部材の前記タンクの外側に位置する外側部分に備えられ、前記タンク内における前記開口端の位置を特定可能な特定手段と、を有する。
【0007】
第1態様の冷却装置では、通路部材のタンク外側に位置する外側部分に特定手段が設けられており、この特定手段によって、タンク内における通路部材の開口端の位置を特定することができる。このため、上記冷却装置によれば、タンク内が目視できなくても、タンク内における通路部材の開口端の位置を確認することができる。
【0008】
本発明の第2態様の冷却装置は、第1態様の冷却装置において、前記通路部材は、前記タンクの外壁を貫通すると共に前記内側部分が前記外側部分に対して曲がっており、前記特定手段は、前記外側部分の軸線回りの回転位置を確認可能な方向確認部を有する。
【0009】
第2態様の冷却装置では、通路部材の内側部分が外側部分に対して曲がっており、通路部材の外側部分には、該外側部分の軸線回りの回転位置を確認可能な方向確認部が設けられている。内側部分が外側部分に対して曲がっている通路部材は、タンクに対して外側部分が軸線回りに回転するとタンク内において通路部材の開口端の位置が変化する。つまり外側部分の回転位置が決まればタンク内における通路部材の開口端の位置も決まる。第2態様の冷却装置によれば、方向確認部で通路部材の外側部分の回転位置を確認できるから、タンク内を目視できなくても、タンク内における通路部材の開口端の位置をタンクの外側から正確に把握することができる。
【0010】
本発明の第3態様の冷却装置は、第2態様の冷却装置において、前記方向確認部は、前記外側部分に備えられ、互いに反対向きかつ平行な一対の平面を有する二面幅部によって構成されている。
【0011】
第3態様の冷却装置では、互いに反対向きかつ平行な一対の平面を有する二面幅部によって通路部材の外側部分の回転位置を確認することができる。すなわち、第3態様の冷却装置によれば、簡単な構成の方向確認部でタンク内における通路部材の開口端の位置を正確に把握することができる。
【0012】
本発明の第4態様の冷却装置は、第2態様の冷却装置において、前記方向確認部は、前記外側部分が湾曲することにより構成されている。
【0013】
第4態様の冷却装置では、外側部分の湾曲部分を挟んで両側の2点で位置決めをすることで、外側部分の軸線回りの回転位置を確認することができる。すなわち、第4態様の冷却装置によれば、外側部分を湾曲させる簡単な構成の方向確認部でタンク内における通路部材の開口端の位置を正確に把握することができる。
【0014】
本発明の第5態様の冷却装置は、第1態様の冷却装置において、前記通路部材は、直線的に延びて前記タンクの外壁を貫通しており、前記特定手段は、前記内側部分の軸線に沿った長さを確認可能な長さ確認部を有する。
【0015】
第5態様の冷却装置では、通路部材が直線的に延びてタンクの外壁を貫通しており、通路部材の外側部分には、内側部分の軸線に沿った長さを確認可能な長さ確認部が設けられている。この長さ確認部で内側部分の軸線に沿った長さを確認することで、タンク内における通路部材の開口端の位置を正確に把握することができる。
【0016】
本発明の第6態様の冷却装置は、第5態様の冷却装置において、前記長さ確認部は、前記外側部分から前記軸線と直交する方向に張り出し、前記タンクの前記外壁に接する張り出し部によって構成されている。
【0017】
第6態様の冷却装置では、長さ確認部をタンクの外壁に接する張り出し部によって構成していることから、例えば、張り出し部がタンクの外壁に接するまで通路部材をタンクに挿入することで、通路部材の挿入長の精度を向上させることがきる。
【0018】
本発明の第7態様の冷却装置は、第3態様の冷却装置において、前記通路部材の前記外側部分の外周に接合され、前記タンクの前記外壁に接するスリーブ状部品を有し、前記二面幅部が前記スリーブ状部品に設けられている。
【0019】
第7態様の冷却装置では、タンクと通路部材をろう付けする場合には、スリーブ状部品とタンク外壁との間にろう溜まりが形成されるため、スリーブ状部品を介して通路部材とタンクとが強固に接合(ろう付け)される。
【0020】
本発明の第8態様の冷却装置は、第7態様の冷却装置において、前記タンクの前記外壁は、曲面状に形成されている。
【0021】
第8態様の冷却装置では、スリーブ状部品をタンク外壁に接触させた状態でろう付けにて接合する場合、タンクの外壁が曲面状であるとタンク外壁とスリーブ状部材との間のろう溜まりを増加させやすい。したがって、タンクの外壁が曲面状の場合にスリーブ状部品を適用するメリットがある。これにより、通路部材とタンクの接合強度を向上させることができる。
【0022】
本発明の第9態様の冷却装置は、第1態様〜第8態様のいずれか一態様の冷却装置において、前記通路部材は、斜め上向きに延びて前記タンクの外壁を貫通している。
【0023】
第9態様の冷却装置では、通路部材が斜め上向きに延びてタンク外壁を貫通していることから、例えば、通路部材が上方に延びてタンク底壁を貫通する構成と比べて、タンクの高さを低くすることができる。これにより、車両においてタンク上方に位置する空間を広く確保できる。
【0024】
本発明の第10態様の冷却装置は、第9態様の冷却装置において、前記タンクは、両端が塞がれた円筒状とされ、横向きに寝かされた姿勢で前記被冷却対象の上方に配置されている。
【0025】
第10態様の冷却装置では、両端が塞がれた円筒状のタンクを横向きに寝かせた姿勢で被冷却対象の上方に配置していることから、例えば、円筒状のタンクを縦向きに起こした姿勢で被冷却対象の上方に配置する構成と比べて、車両においてタンク上方に位置する空間を広く確保できる。
【発明の効果】
【0026】
以上説明したように、本発明によれば、タンクの内側から外側へ通路部材が延出する構成において、タンク内が目視できなくても、タンク内における通路部材の開口端の位置を確認できる冷却装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明の一実施形態の冷却装置を検査装置にセットした状態を示す斜視図である。
図2図1の冷却装置の通路部材を示す側面図である。
図3図1の3X−3X線断面図である。
図4図1に示す検査装置の検査治具で通路部材の方向を検査した結果が良好な状態を示す検査部分の正面図である。
図5図1に示す検査装置の検査治具で通路部材の方向を検査した結果が良好でない状態を示す検査部分の正面図である。
図6】本発明の一実施形態の冷却装置を被冷却対象の上方に配置した状態を示す断面図(図3に対応する断面図)である。
図7】本発明の他の実施形態の冷却装置を別の検査装置にセットした状態を示す断面図(図3に対応する断面図)である。
図8】本発明の他の実施形態の冷却装置を検査装置にセットした状態を示す断面図(図3に対応する断面図)である。
図9】本発明の他の実施形態の冷却装置を検査装置にセットした状態を示す断面図(図3に対応する断面図)である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、図面を参照しながら本発明に係る一実施形態の冷却装置について説明する。なお、各図において適宜図示される矢印UPは、重力方向における上方を示している。また、以下において上方と言うときは、重力方向における上方側を指す。
【0029】
本実施形態の冷却装置20は、車両に搭載される被冷却対象100(図6参照)を熱源としたサイフォン循環により被冷却対象100に冷媒を循環させる装置である。
【0030】
被冷却対象100としては、ターボチャージャ、排ガス再循環クーラ(EGRクーラ)、EVやHVに適用される電動モータ、発電機、及びモータジェネレータ等の回転電機、EVに適用されるレンジエクステンダー、並びに内燃機関等が挙げられる。つまり車両停止後の余熱がサイフォン循環の熱源となり得る対象を被冷却対象100とすることができる。なお、本実施形態の被冷却対象100は、ターボチャージャである。
【0031】
図1及び図6に示されるように、冷却装置20は、タンク22と、流出路24と、通路部材26と、スリーブ状部品34と、を有している。
【0032】
(タンク)
タンク22は、両端が塞がれた円筒状とされている。このタンク22は、横向きに寝かされた姿勢で被冷却対象100の上方に配置されるようになっている。なお、ここでいうタンク22の横向きに寝かされた姿勢とは、タンク22の軸方向が重力方向に対して略直交する方向(横向き)となる姿勢を指している。また、タンク22の内部には、冷媒Lが貯溜されるようになっている。
【0033】
また、タンク22の下部には、ブラケット32、33が取り付けられている。ブラケット32、33は、被冷却対象100にタンク22を取り付けるための金具である。これらのブラケット32、33には、被冷却対象100へのねじ取付用の取付孔(不図示)がそれぞれ形成されている。また、ブラケット32、33は、タンク22を後述する検査装置50に設置する際にも用いられ、タンク22を位置決めする基準となる。
【0034】
なお、本実施形態のタンク22は、円筒状とされているため、外壁22Aが曲面状の一例である円筒面状に形成されている。
【0035】
(流出路)
図1及び図3に示されるように、流出路24は、タンク22内に開口し、タンク22内の冷媒Lをタンク22の外側へ流出させるための流路である。この流出路24は、タンク22の下部に設けられ、タンク22の内側から外側へ延出する配管によって構成されている。
【0036】
(通路部材)
図1及び図3に示されるように、通路部材26は、管状に形成されており、タンク22内への冷媒Lの流入路を構成している。なお、流出路24と通路部材26とによって構成される流入路は、冷却装置20の冷媒Lの循環経路CR(図6参照)の一部を構成している。この循環経路CR上に被冷却対象100が配置されるようになっている。
【0037】
通路部材26は、図3に示されるように、タンク22の内側から外側へ延出している。
また、通路部材26は、タンク22内に位置する内側部分26Aの開口端26Cが流出路24の開口24Aよりも上方に位置している。具体的には、通路部材26は、斜め上向きに延びており、タンク22の曲面形状とされた外壁22Aを貫通している。なお、本実施形態では、通路部材26は、外壁22Aに形成された貫通孔23からタンク22内へ挿入されているため、通路部材26の内側部分26A及び後述する外側部分26Bをそれぞれ挿入部分及び非挿入部分と言い換えてもよい。
【0038】
図2に示されるように、通路部材26は、パイプの両端を互いに逆向きに曲げた形状とされており、両側の曲げ部26D間の直線状部分26Eが貫通孔23を貫通している。通路部材26の直線状部分26Eのうち、貫通孔23を含めてタンク22の内側に位置する部分が内側部分26Aの一部を構成し、貫通孔23よりもタンク22の外側に位置する部分が外側部分26Bの一部を構成している。なお、本実施形態では、通路部材26の内側部分26Aに含まれる曲げ部26Dが外側部分26Bに含まれる直線状部分26Eに対して曲がっている。すなわち、通路部材26の内側部分26Aが外側部分26Bに対して曲がっている。具体的には、通路部材26の内側部分26Aに含まれる曲げ部26Dは、外側部分26Bに含まれる直線状部分26Eに対して上方に向けて曲がっている。
【0039】
(スリーブ状部品)
通路部材26の直線状部分26E上には、円筒状のスリーブ状部品34が装着されている。具体的には、スリーブ状部品34は、直線状部分26Eのうち、タンク22の外側に位置する外側部分26Bの外周に接合(本実施形態ではろう付け)されている。
【0040】
スリーブ状部品34には、その外周から径方向外側へ張り出すフランジ部28が形成されている。スリーブ状部品34の軸線と通路部材26の直線状部分26Eにおける軸線XLは一致しており、スリーブ状部品34の径方向と直線状部分26Eにおける軸線XLと直交する方向は同じ方向を指している。すなわち、本実施形態では、外側部分26Bが軸線XLと直交する方向に張り出すフランジ部28を備えている。
【0041】
また、フランジ部28は、円環板状に形成されており、タンク22の外壁22Aに接している。具体的には、外壁22Aが曲面形状とされているため、フランジ部28は、貫通孔23の周縁部に接している。なお、外壁22Aとフランジ部28との間の隙間には、ろう付け時に溶融したろう材が溜まるろう溜まりが形成されている。
【0042】
図4に示されるように、スリーブ状部品34のフランジ部28には二面幅部30が形成されている。二面幅部30は、外側部分26Bの軸線XL回りの回転位置を確認可能な方向確認部の一例である。
【0043】
二面幅部30は、互いに反対向きかつ平行な一対の平面30Aを有している。すなわち、二面幅部30は、フランジ部28の外周の対向する部位を直線状に切り落として形成されている。
【0044】
本実施形態の冷却装置20は、タンク22、流出路24を構成するパイプ、通路部材26、ブラケット32、ブラケット33及びスリーブ状部品34が金属材料によって構成されており、これらの部材はそれぞれろう付けによって接合されている。なお、上記金属材料としては、例えば、ステンレスを用いてもよい。
【0045】
次に、冷却装置20の製造工程について説明する。
【0046】
まず、冷却装置20を構成するタンク22、流出路24を構成するパイプ、通路部材26、ブラケット32、ブラケット33及びスリーブ状部品34を準備する。
【0047】
次に、通路部材26にスリーブ状部品34を仮組みし、この通路部材26をタンク22の外壁22Aを貫通させる。具体的には、通路部材26を外壁22Aの貫通孔23からタンク22内に挿入する。フランジ部28が外壁22Aに接するまで通路部材26を挿入した後は、通路部材26をタンク22に仮組みする。また、流出路24を構成するパイプをタンク22の外壁22Aを貫通させた状態で仮組みする。次に、タンク22の下部にブラケット32、33を仮組みする。なお、冷却装置20を構成する上記構成部材の仮組みは、専用の治具で各構成部材を仮固定した状態で行われる。
【0048】
次に仮組み状態の冷却装置20を加熱炉内に配置して、上記構成部材間をろう付け固定する。上記のようにして、冷却装置20が製造される。
【0049】
次に、製造後の冷却装置20を検査する検査装置50について説明する。
【0050】
図1に示されるように、検査装置50は、検査台52と、アーム54、支持壁56と、検査冶具58とを備えている。
【0051】
検査台52は、タンク22を横向きに寝かせた姿勢で固定するための台である。この検査台52には、ブラケット32、33をねじで固定するための固定部52Aが形成されている。
【0052】
アーム54は、一端が支持壁56にスライド移動可能に支持され、他端がアーム54に連結されている。
【0053】
支持壁56は、検査台52に立設されている。この支持壁56には、スライド溝56Aが形成されており、このスライド溝56Aに挿入されたアーム54の一端をスライド溝56Aに沿ってスライド移動可能に支持している。なお、支持壁56には、アーム54をスライド溝56Aに沿ってスライド移動させるための図示しない駆動源が設けられている。なお、上記駆動源としては、例えば、電動モータ、流体圧シリンダ(油圧シリンダ、エアシリンダ等)が挙げられる。
【0054】
検査冶具58は、アーム54の他端に連結されるベース部58Aと、ベース部58Aから突出する板状の一対の突出部58Bとを備えている。具体的には、一対の突出部58Bは対向配置さており、両者の間の間隔W1が上記二面幅部30の幅W2以上で且つ、フランジ部28の外径W3未満とされている。
【0055】
次に、製造後の冷却装置20を検査装置50で検査する検査工程について説明する。
【0056】
まず、図1に示されるように、検査台52にタンク22を横向きに寝かせた姿勢でブラケット32、33を固定する。
【0057】
次に、アーム54を検査冶具58と共に通路部材26の外側部分26Bに備えられたフランジ部28の二面幅部30に向けてスライド移動させる。二面幅部30の幅W2は、検査冶具58の間隔W1以下のため、二面幅部30を構成する平面30Aがフランジ部28のスライド方向に沿った基準面に対して傾いていない場合には、図4に示されるように、一対の突出部58B間に二面幅部30が入り込む。一方、二面幅部30を構成する平面30Aが上記基準面に対して傾いている場合には、図5に示されるように、一対の突出部58B間に二面幅部30が入り込めず、通路部材26が回転していることが確認できる。以上のようにして、ろう付け後において通路部材26の外側部分26Bの軸線XL回りの回転位置を確認することができる。
【0058】
次に、本実施形態の冷却装置の作用効果について説明する。
図6に示されるように、冷却装置20は、エンジンEの上方に設置される。エンジンEの駆動時には、後述するタンク22内の冷媒Lが図示しないポンプによって押し出され、循環経路CRを循環し、循環経路CR上の被冷却対象100を冷却する。一方、エンジンEの停止時には、ポンプも停止するが、被冷却対象100の熱で沸騰した冷媒Lがタンク22内に溜まると、タンク22内の圧力と重力によってタンク22内の冷媒Lが後述する流出路24からサイフォンの原理によって排出される。サイフォンの原理で冷媒Lが排出されると、タンク22内が負圧となり、後述する通路部材26を介して冷媒Lがタンク22内に吸い上げられる。そして、被冷却対象100の熱で沸騰した冷媒Lがタンク22内に溜まると、タンク22内の冷媒Lが排出される。これら一連の動作が繰り返される。なお、被冷却対象100の温度が冷媒Lの沸点よりも低くなると、冷媒Lの循環サイクルが自動的に停止する。
【0059】
本実施形態の冷却装置20では、通路部材26の内側部分26Aが外側部分26Bに対して曲がっており、通路部材26の外側部分26Bには、該外側部分26Bの軸線XL回りの回転位置を確認可能な方向確認部の一例としての二面幅部30が設けられている。この二面幅部30で外側部分26Bの回転位置を確認することで、タンク22内における通路部材26の開口端26Cの位置を特定することができる。また、二面幅部30は、タンク22の外側に位置する外側部分26Bに設けられている、すなわち、タンク22の外部に露出している。このため、上記冷却装置20によれば、タンク22内が目視できなくても、タンク22内における通路部材26の開口端26Cの位置を確認することができる。
【0060】
上記冷却装置20では、互いに反対向きかつ平行な一対の平面を有する二面幅部30によって通路部材26の外側部分26Bの回転位置を確認することができる。すなわち、上記冷却装置20によれば、簡単な構成でタンク22内における通路部材26の開口端26Cの位置を正確に把握することができる。
【0061】
また、上記冷却装置20では、タンク22と通路部材に26に装着されたスリーブ状部品34をろう付けする場合には、フランジ部28と外壁22Aとの間にろう溜まりが形成されるため、フランジ部28を介して通路部材26とタンク22とが強固に接合(ろう付け)される。
【0062】
また、フランジ部28に二面幅部30を形成していることから、例えば、通路部材26に装着される他の部品に二面幅部を形成する構成と比べて、部品点数が少なく、ろう付け箇所の増加を抑制できる。
【0063】
冷却装置20では、タンク22の外壁22Aが円筒面状であるので外壁22Aとフランジ部28との間のろう溜まりを増加させやすい。これにより、通路部材26とタンク22の接合強度を向上させることができる。
【0064】
また、タンク内における通路部材の開口端の流出路の開口に対する高さを稼ぐためにはタンクの底壁から通路部材を挿入することがサイフォンの原理を利用する観点から都合がよい。従来技術も上記構成を採用しているものが多い。しかし、そうした場合、被冷却対象の上方に設置するタンクの高さが高くなってしまう。例えば、被冷却対象の搭載箇所が自動車のフロントコンパートメントの場合には、タンクの高さが高くなるとエンジン等の構造物とエンジンフードとの間の空間確保による歩行者保護の観点から都合が悪い。そこで、円筒状のタンクを横向きに寝かせた姿勢とし、その円筒面に環状の通路部材を挿入する形態を開発した。これにより、タンクの高さ方向の余裕がなくなり、通路部材の開口端の位置精度を高める必要が生じ、開口端の位置を特定できる技術が開発された。
上記冷却装置20では、円筒状のタンク22を横向きに寝かせた姿勢で被冷却対象100の上方に配置していることから、例えば、タンクを縦向きに起こした姿勢で被冷却対象100の上方に配置する構成と比べて、車両においてタンク上方に位置する空間を広く確保できる。
さらに冷却装置20では、通路部材26が斜め上向きに延びてタンク22の外壁22Aを貫通していることから、例えば、通路部材26が上方に延びてタンク22の底壁を貫通する構成と比べて、タンク22の高さを低くすることができる。これにより、車両においてタンク上方に位置する空間を広く確保できる。
【0065】
前述の実施形態では、スリーブ状部品34のフランジ部28に二面幅部30を形成したが、本発明はこの構成に限定されない。フランジ部28と二面幅部30を別々に設ける構成としてもよい。
【0066】
また、前述の実施形態では、方向確認部の一例として二面幅部30を用いたが本発明はこの構成に限定されない。例えば、フランジ部28に一つの平面を形成する構成であってもよい。その平面がある程度の面積を持っていれば、前述した検査冶具58と同様のフォーク状の冶具をその平面が形成されている部位に差し込むことにより、外側部分26Bの回転位置が規定の状態にあるか否かを検査できる。
【0067】
さらに、前述の実施形態では、検査装置50の検査冶具58で二面幅部30の平面30Aの傾きを確認しているが、本発明はこの構成に限定されない。例えば、図7に示されるように、通路部材26の外側部分26Bの曲げ部26Dを折り返し、曲げ部26Dと折り返し部26Fとで外側部分26Bの軸線XL回りの回転位置を確認してもよい。外側部分26Bが曲げ部26Fと折り返し部26Fとの間で湾曲することにより、その湾曲部分が方向確認部の一例として機能する。
【0068】
またさらに、前述の実施形態では、タンク22に接続される配管として、一本のパイプで構成された通路部材26が設けられているが、通路部材26の形状に限定されない。例えば、図8に示されるように、タンク22に接続される配管として、タンク22に接合されるエルボ状の通路部材72とこの通路部材72に接続される接続パイプ74とが設けられてもよい。通路部材72は両端部が円筒状の部品として構成されている。通路部材72はL字状の金属材の両端部を円柱状に切削加工し、その後円柱状に加工された両端部から互いに直交する方向にボーリング加工して通路を形成することにより製作される。通路部材72は、タンク22内に配置される内側部分72Aと、タンク22の外壁22Aを貫通して内側部分72Aからタンク22の外部側に延出する円筒状の外側部分72Bとを含む。この円筒状の外側部分72Bに前述の形態と同様の二面幅部30が形成されている。なお、接続パイプ74は外側部分72Bの内周に挿入されることにより通路部材72に接続されている。
【0069】
前述の実施形態では、通路部材26をパイプの両端を互いに逆向きに曲げた形状としているが本発明はこの構成に限定されない。例えば、図9に示されるように、通路部材60を直線的に延ばす構成、すなわち、通路部材60として直管を用いてもよい。通路部材60の外側部分60Bには、タンク22への挿入長(内側部分60Aの長さS)を確認するための張り出し部62が設けられている。この張り出し部62は、特定手段として機能する長さ確認部の一例であり、パイプを軸方向に圧縮して形成されたスプール部である。タンク22に挿入されるパイプが直管である場合、張り出し部62によって、タンク22内を目視できなくても、タンク22内における通路部材60の開口端60Cの位置を確認することができる
【0070】
以上、実施形態を挙げて本発明の実施の形態を説明したが、これらの実施形態は一例であり、要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施できる。例えば、上述した二面幅部や一面幅部の代わりに、ポンチやペイント等の目印を通路部材の外側部分に付与し、その目印を方向確認部の一例として機能させることもできる。また、直管に適用される上述した張り出し部の代わりに、通路部材60の外側部分60Bに突起を設け、その突起を長さ確認部の一例として機能させることもできる。さらに、スリーブ状部品34のフランジ部28は、タンク22の外壁22Aに突き当てることにより内側部分26Aの長さを確認することも可能であるので、フランジ部28を長さ確認部の一例として機能させることもできる。本発明の権利範囲がこれらの実施形態に限定されないことは言うまでもない。
【符号の説明】
【0071】
20 冷却装置
22 タンク
22A 外壁
24 流出路
24A 開口
26 通路部材
26A 内側部分
26B 外側部分
26C 開口端
28 フランジ部
30 二面幅部(方向確認部)
30A 平面
60 通路部材
60A 内側部分
60B 外側部分
60C 開口端
62 張り出し部(長さ確認部)
72 通路部材
72A 内側部分
72B 外側部分
100 被冷却対象
L 冷媒
XL 軸線
UP 上方
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9