特許第6681956号(P6681956)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6681956
(24)【登録日】2020年3月26日
(45)【発行日】2020年4月15日
(54)【発明の名称】不織布の製造方法
(51)【国際特許分類】
   D04H 18/02 20120101AFI20200406BHJP
   D04H 1/46 20120101ALI20200406BHJP
【FI】
   D04H18/02
   D04H1/46
【請求項の数】2
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2018-156809(P2018-156809)
(22)【出願日】2018年8月24日
(62)【分割の表示】特願2014-197701(P2014-197701)の分割
【原出願日】2014年9月29日
(65)【公開番号】特開2018-178357(P2018-178357A)
(43)【公開日】2018年11月15日
【審査請求日】2018年8月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004503
【氏名又は名称】ユニチカ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001298
【氏名又は名称】特許業務法人森本国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高橋 達
【審査官】 相田 元
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭61−012962(JP,A)
【文献】 特開昭61−055250(JP,A)
【文献】 特開平05−033253(JP,A)
【文献】 特開平07−003597(JP,A)
【文献】 特開2010−222738(JP,A)
【文献】 特開2011−179128(JP,A)
【文献】 特開2007−154320(JP,A)
【文献】 特公昭48−025036(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D04H 1/00−18/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
不織布の製造時にニードルパンチ針を用いてニードルパンチ処理を行うに際し、
進行する繊維ウェブへの差し込み方向の貫通時に繊維ウェブの構成繊維を引っ掛けることができる順切り掛け部を有することで、構成繊維同士を三次元的に交絡させることが可能であるとともに、ウェブへの差し込み方向の貫通後の引き戻し方向の移動時に繊維ウェブの構成繊維を引っ掛けて構成繊維同士を三次元的に交絡させることができる逆切り掛け部を有し、かつ逆切り掛け部の切り掛け角度が70度以上90度未満であるニードルパンチ針を用い、
逆切り掛け部を繊維ウェブの進行方向に沿った下流側に向けた状態で前記ニードルパンチ針を用いたニードルパンチ処理を行うことを特徴とする不織布の製造方法。
【請求項2】
逆切り掛け部が、針の長さ方向に沿って針先端より3mm以上10mm以内の範囲に形成されているニードルパンチ針を用いることを特徴とする請求項1記載の不織布の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カーマットや土木用資材などに多用されている嵩高不織布を、ニードルパンチ針を用いて製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
嵩高の不織布を得る手段として、従来からニードルパンチ方法が多く用いられている。それに伴って、ニードルパンチ針の形状や、針に設けられた切り掛け部(以下、「バーブ」とも称する)の形状や、バーブの位置などが、得られる不織布の物性に及ぼす影響や、不織布の意匠へ及ぼす影響などが、古くから検討されている。
【0003】
ニードルパンチ装置では、繊維ウェブをウェブの機械方向すなわち長手方向に進行させながらパンチングを行う。そのため、短時間とはいえ針がウェブに貫通した状態でウェブが進行していく。このため、ウェブに貫通した針がアンカーとなって、ウェブの構成繊維が進行方向の逆向きに引っ張られやすい。すると、それによって、ウェブの強力バランスが崩れたり、巾入り現象が起こったりするなどの問題がある。その対策として、針のストロークを楕円運動にする事や、針をウェブの進行方向に対し斜めに傾けて貫通させるなどの検討も行われている。
【0004】
一般に、ニードルパンチ法では、ニードルパンチ針に設けられたバーブが、ウェブを貫通する際、ウェブを形成する繊維と係合し、針の進入元側とは逆の方向に繊維を突き出すことを繰り返しながら、繊維同士を三次元的に交絡させていく。そのため、針の進入元側に存在していて針に係合されなかった繊維は、あまり交絡することがなく、それらが毛羽や浮遊糸となって、問題を起こす原因となっている。また、交絡する方向が針の進入方向の一方向だけであるため、これにより得られた不織布は層状に分離しやすいなどの問題を有している。
【0005】
これらの問題を解決する為、一般的には、複数のニードルパンチ機を用いて、ウェブの両面からニードリングを行う方法が採用されている(特許文献1)。しかしながら、例えば土木資材用途であったり、なにがしかの基材であったりするような、あまり高品位ではない不織布を製造するときには、複数のニードルパンチ機を準備設置し、これらのニードルパンチ機にウェブを通すことは、非常に不経済であり、また出来上がった嵩高不織布が過剰性能である場合も多い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平9−302564号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、大きな設備等の導入を行うことなく、簡単に一方向からのニードリングのみで、これら一方向からのみのニードリングが有していた課題を解決することを目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的を達成するために、本発明の不織布の製造方法は、
不織布の製造時にニードルパンチ針を用いてニードルパンチ処理を行うに際し、
進行する繊維ウェブへの差し込み方向の貫通時に繊維ウェブの構成繊維を引っ掛けることができる順切り掛け部を有することで、構成繊維同士を三次元的に交絡させることが可能であるとともに、ウェブへの差し込み方向の貫通後の引き戻し方向の移動時に繊維ウェブの構成繊維を引っ掛けて構成繊維同士を三次元的に交絡させることができる逆切り掛け部を有し、かつ逆切り掛け部の切り掛け角度が70度以上90度未満であるニードルパンチ針を用い、
逆切り掛け部を繊維ウェブの進行方向に沿った下流側に向けた状態で前記ニードルパンチ針を用いたニードルパンチ処理を行うことを特徴とする。
【0009】
本発明の不織布の製造方法によれば、逆切り掛け部が、針の長さ方向に沿って針先端より3mm以上10mm以内の範囲に形成されているニードルパンチ針を用いることが好適である。
【発明の効果】
【0011】
本発明の不織布の製造方法によれば、ニードルパンチ針として、ウェブへの差し込み方向の貫通後における引き戻し方向の移動時に繊維ウェブの構成繊維を引っ掛けて構成繊維同士を三次元的に交絡させることが可能な逆切り掛け部を有するものを用いるため、針の進入元側に存在していた繊維も逆切り掛け部によって他の繊維と交絡させることができ、したがってこの繊維が毛羽や浮遊糸となって問題を起こす原因となることを防止できる。また、針の進入方向のみならず引き戻し方向にも交絡させることができるため、得られた不織布を層状に分離しにくいものとすることができる。さらに逆切り掛け部を形成した針を用いて引き戻し方向の交絡を行うものであるため、複数のニードルパンチ機を用いてウェブの両面からニードリングを行うなどの処理を不要とすることができるうえに、出来上がった嵩高不織布を、土木資材用途や基材用途等に適した程度の品位とすることができる。加えて、逆切り掛け部を繊維ウェブの進行方向に沿った下流側に向けた状態でニードルパンチ針を用いたニードルパンチ処理を行うため、逆切り掛け部に引っ掛かっていた構成繊維は、繊維ウェブの進行に伴って容易に外れることが可能である。
【0012】
かつ、本発明によれば、ニードルパンチ針として逆切り掛け部の切り掛け角度が70度以上90度未満であるものを用いるため、つまり切り掛け部が比較的外側に開いた形状であるため、針の引き戻し時に引っ掛けた繊維を交絡処理後に容易に解放することができ、したがって、繊維ウェブをウェブの長手方向に進行させながらパンチングを行う場合に、ウェブの構成繊維が進行方向の逆向きに引っ張られることを防止できる。これは、連続繊維からなるウェブを交絡処理する際に特に効果的である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施の形態の不織布の製造方法で用いられるニードルパンチ針を示す図である。
図2図1のニードルパンチ針の要部を拡大して示す図である。
図3】ニードルパンチ装置におけるニードルパンチ針の配置状態を示す図である。
図4】ニードルパンチ装置における他のニードルパンチ針の配置状態を示す図である。
図5】ニードルパンチ装置におけるニードルパンチ針の逆切り掛け部の配置範囲を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1に示すニードルパンチ針においては、針の基端側から順に、シャンク1と、中間ブレード2と、ブレード3とが設けられている。図示のニードルパンチ針では、シャンク1および中間ブレード2は断面円形に形成されており、ブレード3は断面三角形に形成されている。シャンク1の基端部にはクランク4が形成されている。しかし、本発明において針の種類や材質は任意でよく、一般に用いられているものと同じで差し支えない。ブレード3の断面形状も、図示の三角形のほかに、四角形やその他のものを採用することが可能である。針先には、先端テーパ部5が形成されている。
【0016】
ブレード3には、切り掛け部(バーブ)が形成されている。詳細には、図1に示すように、ブレード3の三角形の頂点のうちの2か所には順切り掛け部(順バーブ)6が形成され、頂点のうちの残りの1か所には逆切り掛け部(逆バーブ)7が形成されている。図1および図2に示す順切り掛け部6および逆切り掛け部7において、8はキックアップで、ブレード3の三角形の輪郭よりも突出する尖った形態で形成されている。9スロートで、キックアップ8に近接して設けられた凹部の形態で形成されている。順バーブ6では、針の先端側からスロート9およびキックアップ8の順序で形成されており、これらスロート9およびキックアップ8は、針の先端側すなわちブレード3の先端側に向けて傾斜した姿勢で形成されている。これに対し逆バーブ7では、針の先端側からキックアップ8およびスロート9の順序で形成されており、これらキックアップ8およびスロート9は、針の基端側すなわちブレード3の先端側とは反対側に向けて傾斜した姿勢で形成されている。
【0017】
図2を参照して、逆バーブ7を詳細に説明する。ここで、θは逆バーブ7の切り掛け角度で、針すなわちブレード3の中心軸10に対するキックアップ8の開き角を意味する。後述の理由によって、切り掛け角θは70度以上90度未満である。
【0018】
図2において、11は、針の先端から逆バーブ7までの距離、すなわちテーパ部10の尖端からキックアップ8までの距離を示す。この距離は、後述の理由によって、3mm以上10mm以下であることが好ましい。
【0019】
本発明の実施の形態の不織布の製造方法では、ニードルパンチ装置において、図1および図2に示したニードルパンチ針が多数用いられる。そして同ニードルパンチ装置には帯状の長尺の繊維ウェブが供給され、この繊維ウェブをその機械方向すなわち長手方向に進行させながら、ニードルパンチ針を繊維ウェブに高速で突き刺して貫通させる処理が行われる。その場合に、図1図2に示したような順バーブ6と逆バーブ7を有したニードルパンチ針を用いることができ、逆バーブ7を繊維ウェブの進行方向に沿った下流側に向けた状態となるようにニードルパンチ針がニードルパンチ装置に設置されることが重要である。
【0020】
図3は、ブレード3の断面形状が三角形であるニードルパンチ針をニードルパンチ装置に用いて、繊維ウェブ12にニードルパンチ処理を施すときの様子を表す。矢印13は繊維ウェブ12の進行方向を示す。図示のように、ニードルパンチ針の逆バーブ7が、繊維ウェブ12の進行方向13に沿った下流側に向けられている。
【0021】
図4は、断面形状が長方形のブレード3すなわち板状のブレード3を有するニードルパンチ針を用いる場合を例示する。ニードルパンチ針は、断面形状である長方形の長辺が繊維ウェブ12の進行方向13に揃う姿勢で用いられる。逆バーブ7は、繊維ウェブ12の進行方向13に沿った下流側、すなわち板状のブレード3の断面の長方形の短辺の部分に形成されている。
【0022】
ニードルパンチ装置において、ニードルパンチ処理を行うときには、繊維ウェブ12は水平方向に進行され、ニードルパンチ針は、進行する繊維ウェブ12の上側から下向きにこの繊維ウェブ12に差し込まれて、繊維ウェブ12を貫通する。このとき、図1の(a)に示すように、順バーブ6が繊維ウェブ12の構成繊維14を引っ掛けて繊維ウェブ12の厚み方向に移動させることで、構成繊維14同士の三次元的な交絡が行われる。
【0023】
その後、ニードルパンチ針の引き戻しが行われる。このときには、図1の(b)に示すように、逆バーブ7が構成繊維14を引っ掛けて繊維ウェブ12の厚み方向に移動させることで、構成繊維14同士の三次元的な交絡が行われる。このように、ニードルパンチ針が差し込み方向へ移動するときのみならず、引き戻し方向に移動するときにも、構成繊維14同士の三次元的な交絡が行われるため、繊維ウェブ12における上側の部分すなわち繊維ウェブ12におけるニードルパンチ針の基端側の部分においても、良好に構成繊維同士の交絡が行われる。
【0024】
逆バーブ7においては、ニードルパンチ針が繊維ウェブ12から抜き出されたときに、この逆バーブ7に引っ掛けられている構成繊維14が、繊維ウェブ12の進行とともに速やかに外れてしまうことが必要である。
【0025】
この場合において、ニードルパンチ装置においては、上記のように逆バーブ7が繊維ウェブ12の進行方向13に沿った下流側に向けられているため、この逆バーブ7に引っ掛かっていた構成繊維14は、繊維ウェブ12の進行に伴って容易に外れることが可能である。
【0026】
詳しくは、図5に示すように、逆バーブ7を平面視で繊維ウェブ12の進行方向13の軸心15から±45度の範囲16,16に向けて配置することで、構成繊維14が外れる効果が良好となる。範囲16、16が±30度であると、この効果をより良好に発揮させることができる。上記以外の範囲では、すなわち逆バーブ7が繊維ウェブ12の進行方向13に向いているとは言い難くなる場合には、繊維ウェブ12の進行にともなう構成繊維14の外れが生じにくくなりやすく、つまり構成繊維14が逆バーブ7に引っ掛かったままの状態となりやすくなる。このため、極端な場合には、繊維ウェブ12がその進行とともにその進行方向とは逆方向に大きく引っ張られたり、構成繊維14が切断されたり、ニードルパンチ針が折れたりする等の事態が生じかねない。
【0027】
ニードルパンチ装置においては、図1図2に示すような逆バーブ7の切り掛け角θが70度以上90度未満の針、すなわち逆バーブが外向きに大きく開いた針を用いると、逆バーブ7に引っ掛かっていた構成繊維14がよりいっそう容易に外れることが可能である。切り掛け角θが70度未満であると、逆バーブ7への構成繊維14の引っ掛かりの度合いが大きくなって、ニードルパンチ針が繊維ウェブ12から抜き出されたときに、構成繊維14が速やかにニードルパンチ針から外れることが困難になりやすい。逆に切り掛け角θが90度以上であると、そもそも構成繊維14が逆バーブ7に引っ掛かりづらく、もしくは引っ掛からず、所期の効果を達成することが困難になる。あるいは著しく目標から相違した結果となってしまうおそれがある。
【0028】
上述のように、図2に示される針の先端から逆バーブ7までの距離11は、3mm以上10mm以下であることが好ましい。順バーブ6の場合は、針の差し込み深さとバーブの形成位置とが、構成繊維14の押出長さ、つまり交絡の大きさの程度を決定する要因の一つである。これに対し逆バーブ7の場合は、ニードルパンチ装置においてニードルパンチ針が繊維ウェブに向かって突出するストリッパプレートの表面と、ニードルパンチ針における逆バーブ7の形成位置とが、繊維ウェブ12からの構成繊維14の引き出し長さ、すなわち交絡の大きさの程度を決定する要因の一つとなる。しかし、構成繊維14を繊維ウェブ12の表面からあまり大きく引き出させると、ケバの発生等の原因となる。ところが、この引き出し長さは、図2に示される針先端から逆バーブ7までの距離11を下回ることはできない。そこで、この距離はできるだけ短いことが好ましい。ところが、ニードルパンチ針の先端付近はテーパ状となっていて細く、剛性や強度が高くない。よって、あまり針の先端側に逆バーブ7を設けると、構成繊維14が引っ掛かることによる針負荷の増大により、ニードルパンチ針が折れたり曲がったりする不具合が発生しやすい。このため、上述のように、ニードルパンチ針の先端から逆バーブ7までの距離11は、3mm以上10mm以下であることが好ましい。
図1
図2
図3
図4
図5