特許第6682015号(P6682015)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6682015
(24)【登録日】2020年3月26日
(45)【発行日】2020年4月15日
(54)【発明の名称】繊維補強ポリプロピレン複合材料
(51)【国際特許分類】
   C08L 23/10 20060101AFI20200406BHJP
   C08J 5/00 20060101ALI20200406BHJP
   C08L 1/00 20060101ALI20200406BHJP
   C08K 7/02 20060101ALI20200406BHJP
   C08L 23/26 20060101ALI20200406BHJP
   C08L 53/00 20060101ALI20200406BHJP
【FI】
   C08L23/10
   C08J5/00CES
   C08L1/00
   C08K7/02
   C08L23/26
   C08L53/00
【請求項の数】13
【全頁数】39
(21)【出願番号】特願2018-560962(P2018-560962)
(86)(22)【出願日】2017年6月27日
(65)【公表番号】特表2019-521208(P2019-521208A)
(43)【公表日】2019年7月25日
(86)【国際出願番号】EP2017065849
(87)【国際公開番号】WO2018002046
(87)【国際公開日】20180104
【審査請求日】2019年2月15日
(31)【優先権主張番号】16176871.8
(32)【優先日】2016年6月29日
(33)【優先権主張国】EP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】511114678
【氏名又は名称】ボレアリス エージー
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【弁理士】
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【弁理士】
【氏名又は名称】岩池 満
(72)【発明者】
【氏名】ルンマーシュトルファー トーマス
(72)【発明者】
【氏名】イェラベック ミカエル
(72)【発明者】
【氏名】ソブチャク ルーカス
(72)【発明者】
【氏名】ハイデル アンドレアス
【審査官】 西山 義之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−056202(JP,A)
【文献】 特開2010−215887(JP,A)
【文献】 米国特許第05145892(US,A)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0264544(US,A1)
【文献】 特開2013−107987(JP,A)
【文献】 国際公開第2016/065614(WO,A1)
【文献】 国際公開第2008/072514(WO,A1)
【文献】 特開平09−024705(JP,A)
【文献】 中国特許出願公開第105462073(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00 − 101/14
C08K 3/00 − 13/08
B29B 11/16
B29B 15/08 − 15/14
C08J 5/04 − 5/10
C08J 5/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複合材料であって、
a)前記複合材料の総重量に基づいて50〜90重量%の、ISO 1133に従って測定して3.0〜140.0g/10分の範囲内のメルトフローレートMFR(230℃、2.16kg)を有するポリプロピレン基材であって、ここで前記ポリプロピレン基材が、
i)ポリプロピレン(PP)をエラストマー性プロピレンコポリマー(EC)が分散したマトリックスとして含む異相プロピレンコポリマー(HECO);または
ii)プロピレンホモポリマー(hPP)である、前記ポリプロピレン基材;および
b)前記複合材料の総重量に基づいて5〜30重量%のセルロースベースの繊維(CF);および
c)前記複合材料の総重量に基づいて1〜20重量%の、210℃以上の溶融温度を有するポリマーベースの繊維(PF);および
d)前記複合材料の総重量に基づいて0.1〜6.0重量%の量の、接着促進剤(AP)
を含み、前記ポリマーベースの繊維(PF)が、ポリビニルアルコール(PVA)繊維から選択されるものである、前記複合材料。
【請求項2】
前記異相プロピレンコポリマー(HECO)が
a)5.0〜120.0g/10分の範囲内のメルトフローレートMFR(230℃、2.16kg)、および/または
b)前記異相プロピレンコポリマー(HECO)の総重量に基づいて15.0〜50.0重量%のキシレン低温可溶性(XCS)画分(25℃)、および/または
c)前記異相プロピレンコポリマー(HECO)に基づいて30.0mol.−%以下のコモノマー含有量
を有する、請求項1に記載の複合材料。
【請求項3】
前記異相プロピレンコポリマー(HECO)の非晶質画分(AM)が
a)前記異相プロピレンコポリマー(HECO)の前記非晶質画分(AM)に基づいて30.0〜60.0mol.−%の範囲内のコモノマー含有量、および/または
b)1.8〜4.0dl/gの範囲内の固有粘度(IV)
を有する、請求項1または2に記載の複合材料。
【請求項4】
前記プロピレンホモポリマー(hPP)が
a)5.0〜120.0g/10分の範囲内のメルトフローレートMFR(230℃、2.16kg)、および/または
b)ISO 11357−3に従って測定して少なくとも150℃の溶融温度、および/または
c)キシレン低温可溶性(XCS)含有量、すなわち前記プロピレンホモポリマー(hPP)の総重量に基づいて4.5重量%未満のキシレン低温可溶性(XCS)含有量
を有する、請求項1〜3のいずれか一項に記載の複合材料。
【請求項5】
前記セルロースベースの繊維(CF)が木材、亜麻、ヘム、黄麻、わら、ハードボード、厚紙、紙、パルプ、セルロース、酢酸セルロース、三酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、酢酸プロピオン酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、ニトロセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、エチルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、エチルヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース(CMC)、およびそれらの任意の混合物からなる群から選択される、請求項1〜4のいずれか一項に記載の複合材料。
【請求項6】
前記セルロースベースの繊維(CF)が1〜1,200μmの体積モーメント平均(D[4.3])直径を有する、請求項1〜5のいずれかに記載の複合材料。
【請求項7】
前記ポリマーベースの繊維(PF)が
i)10〜30μmの範囲内の繊維平均直径、および/または
ii)0.4N/tex〜1.7N/texの引張強さ
を有する、請求項1〜6のいずれか一項に記載の複合材料。
【請求項8】
前記ポリマーベースの繊維(PF)のISO 11357−3による溶融温度Tmが前記ポリプロピレン基材のISO 11357−3による溶融温度Tmよりも42℃以上高い、請求項1〜7のいずれか一項に記載の複合材料。
【請求項9】
前記複合材料が935〜970kg/mの範囲内の密度を有するポリエチレン(PE)を含まない、請求項1〜8のいずれか一項に記載の複合材料。
【請求項10】
前記接着促進剤(AP)が酸変性ポリオレフィン、無水物変性ポリオレフィンおよび変性スチレンブロックコポリマーからなる群から選択される、請求項1に記載の複合材料。
【請求項11】
前記接着促進剤(AP)が無水マレイン酸官能化ポリプロピレンである、請求項1または10に記載の複合材料。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか一項に記載の複合材料を含む、成形品。
【請求項13】
自動車用物品である、請求項12に記載の成形品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セルロースをベースとする繊維およびポリマーをベースとする繊維を含む新たな複合材料、ならびに前記複合材料から製造した成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
補強複合材料は周知であり、自動車産業において非常に頻繁に適用される。自動車産業において、材料のカーボンフットプリントの減少の方向への傾向がある。これによって、伝統的な化石ベースの熱可塑性プラスチック、例えばポリプロピレンの、天然の繊維または木材から得られる再生可能な補強材との組み合わせがもたらされる。このアプローチは、視認可能な、および視認可能でない用途のための射出成形した自動車内装部品に立ち向かうと思われるが、いくつかのハードルが、それらの成功した使用を潜在的に妨げている。1つの主要な欠点は、かかる複合材料の乏しい衝撃強度であり、それは、木質繊維について、他の天然の繊維、例えば麻繊維もしくは亜麻、または人造のセルロース繊維、例えばテンセル(Tencel)(登録商標)よりも尚より顕著である。かなり高い平均粒径(大きな粒子は亀裂の開始を促進する欠陥として作用する)と低いアスペクト比との不利な組み合わせによって、特にそれが衝撃強度に至る場合に中程度ないし劣った機械的特性プロフィールがもたらされる。高いゴム含有量を有する異相ポリプロピレンコポリマーをマトリックスとしてかかる複合体中で用いた場合であっても、基材の優れた衝撃強度は、すでに低い充填剤レベルで木質繊維を添加した際に低下する。特定のポリエチレンをかかる複合体に添加することによってPP/木質繊維複合体のエラストマー相のキャビテーションを抑制することによって衝撃強度を改善するための努力の結果、改善された衝撃強度がもたらされる(例えば本出願人の未公開の特許文献1を参照)が、有意な効果を得るために必要とされるポリエチレンの量は、かなり高い。
【0003】
したがって、当該分野において、特に補強繊維材料としてのみセルロースベースの繊維(CF)を含む複合材料と比較して、軽量であり、加工するのが容易であり、改善された破断点伸びおよび靭性を有する複合材料についての必要性が、尚ある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】欧州特許出願第15 181 060.3号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の知見は、複合材料の総重量に基づいて50〜94重量%のポリプロピレン基材であって、ISO 1133に従って測定して3.0〜140.0g/10分の範囲内のメルトフローレートMFR(230℃、2.16kg)を有し、ここで当該ポリプロピレン基材がi)(半結晶性)ポリプロピレン(PP)をエラストマー性プロピレンコポリマー(EC)が分散したマトリックスとして含む異相プロピレンコポリマー(HECO);またはii)プロピレンホモポリマー(hPP)である前記ポリプロピレン基材;および複合材料の総重量に基づいて5〜30重量%のセルロースベースの繊維(CF);および複合材料の総重量に基づいて1〜20重量%のポリマーベースの繊維(PF)を含む複合材料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
したがって、本発明は、特に、以下を含む複合材料に関する。
a)複合材料の総重量に基づいて50〜94重量%の、ISO 1133に従って測定して3.0〜140.0g/10分の範囲内のメルトフローレートMFR(230℃、2.16kg)を有するポリプロピレン基材であって、ここでポリプロピレン基材が、
i)(半結晶性)ポリプロピレン(PP)をエラストマー性プロピレンコポリマー(EC)が分散したマトリックスとして含む異相プロピレンコポリマー(HECO);または
ii)プロピレンホモポリマー(hPP)であり;および
b)複合材料の総重量に基づいて5〜30重量%のセルロースベースの繊維(CF);および
c)複合材料の総重量に基づいて1〜20重量%の、210℃以上の溶融温度を有するポリマーベースの繊維(PF)。
【0007】
一実施形態において、異相プロピレンコポリマー(HECO)は、a)5.0〜120.0g/10分の範囲内のメルトフローレートMFR(230℃、2.16kg)、および/またはb)異相プロピレンコポリマー(HECO)の総重量に基づいて15.0〜50.0重量%のキシレン低温可溶性(XCS)画分(25℃)、および/またはc)異相プロピレンコポリマー(HECO)に基づいて30.0mol.−%以下のコモノマー含有量を有する。
【0008】
別の実施形態において、異相プロピレンコポリマー(HECO)の非晶質画分(AM)は、a)異相プロピレンコポリマー(HECO)の非晶質画分(AM)を基準にして30.0〜60.0mol.−%の範囲内のコモノマー含有量、および/またはb)1.8〜4.0dl/gの範囲内の固有粘度(IV)を有する。
【0009】
尚別の実施形態において、プロピレンホモポリマー(hPP)は、a)5.0〜120.0g/10分の範囲内のメルトフローレートMFR(230℃、2.16kg)、および/またはb)ISO11357−3に従って測定して少なくとも150℃の溶融温度、および/またはc)キシレン低温可溶性(XCS)含有量、すなわちプロピレンホモポリマー(hPP)の総重量に基づいて4.5重量%未満を有する。
【0010】
一実施形態において、セルロースベースの繊維(CF)を、木材、亜麻、ヘム、黄麻、わら、米、ハードボード、厚紙、紙、パルプ、生セルロース、セルロース、酢酸セルロース、三酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、酢酸プロピオン酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、ニトロセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、エチルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、エチルヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース(CMC)、およびそれらの任意の混合物からなる群から選択する。
【0011】
別の実施形態において、セルロースベースの繊維(CF)は、1〜1,200μmの体積モーメント平均(D[4.3])直径を有する。
【0012】
尚別の実施形態において、ポリマーベースの繊維(PF)を、ポリビニルアルコール(PVA)繊維、ポリエチレンテレフタレート(PET)繊維、ポリアミド(PA)繊維およびそれらの混合物、好ましくはポリビニルアルコール(PVA)繊維から選択する。
【0013】
一実施形態において、ポリマーベースの繊維(PF)は、i)10〜30μmの範囲内の繊維平均直径、および/またはii)0.4N/tex〜1.7N/texの靭性を有する。
【0014】
一実施形態において、ポリマーベースの繊維(PF)のISO 11357−3による溶融温度Tmは、ポリプロピレン基材のISO 11357−3による溶融温度Tmよりも≧42℃、好ましくは42〜200℃高い。
【0015】
尚別の実施形態において、複合材料は、935〜970kg/mの範囲内の密度を有するポリエチレン(PE)を含まない。
【0016】
一実施形態において、複合材料は、接着促進剤(AP)を、好ましくは複合材料の総重量に基づいて0.1〜6.0重量%の量において含む。
【0017】
別の実施形態において、接着促進剤(AP)を、酸変性ポリオレフィン、無水物変性ポリオレフィンおよび変性スチレンブロックコポリマーからなる群から選択する。
【0018】
別の実施形態において、接着促進剤(AP)は、無水マレイン酸官能化ポリプロピレンである。
【0019】
本発明はまた、本発明において定義する複合材料を含む成形品に関する。成形品は、好ましくは自動車用物品である。
【0020】
本発明を、ここでより詳細に定義する。
【発明を実施するための形態】
【0021】
複合材料
上述のように、複合材料は、ポリプロピレン基材、セルロースベースの繊維(CF)、およびポリマーベースの繊維(PF)を含まなければならない。
【0022】
さらに、複合材料は、接着促進剤(AP)、アルファ核形成剤(NU)および/または添加剤(A)を含んでもよい。一実施形態において、複合材料は、接着促進剤(AP)を含む。この実施形態において、ポリプロピレン基材、セルロースベースの繊維(CF)、ポリマーベースの繊維(PF)および接着促進剤(AP)が複合材料の総重量に基づいて少なくとも80重量%、より好ましくは少なくとも85重量%、尚より好ましくは少なくとも90重量%、例えば少なくとも95重量%を一緒に構成することが、好ましい。
【0023】
したがって、1つの特定の実施形態において、複合材料は、ポリプロピレン基材、セルロースベースの繊維(CF)、およびポリマーベースの繊維(PF)、接着促進剤(AP)および任意のアルファ核形成剤(NU)および/または添加剤(A)からなる。
【0024】
1つの好ましい実施形態において、セルロースベースの繊維(CF)およびポリマーベースの繊維(PF)の重量比[(CF)/(PF)]は、0.25〜30.0の範囲内、より好ましくは1.0〜20.0の範囲内、尚より好ましくは2.0〜10.0の範囲内である。
【0025】
前の段落に対して代替的に、またはそれに加えて、ポリプロピレン基材(PBM)およびセルロースベースの繊維(CF)の重量比[(PBM)/(CF)]が0.25〜30.0の範囲内、より好ましくは0.5〜20.0の範囲内、尚より好ましくは1.25〜10.0の範囲内、例えば2.5〜4.3の範囲内であることが、好ましい。
【0026】
前の段落に対して代替的に、またはそれに加えて、ポリプロピレン基材(PBM)およびポリマーベース繊維(PF)の重量比[(PBM)/(PF)]が2.5〜94.0の範囲内、より好ましくは5.0〜19.8の範囲内、尚より好ましくは11.2〜17.8の範囲内、例えば12.2〜16.8の範囲内であることが、好ましい。
【0027】
1つの好ましい実施形態において、セルロースベースの繊維(CF)およびポリマーベースの繊維(PF)の総重量は、複合材料の総重量に基づいて6.0〜50.0重量%の範囲内、好ましくは10.0〜40.0重量%の範囲内、より好ましくは15.0〜35.0重量%の範囲内および最も好ましくは20.0〜30.0重量%の範囲内である。
【0028】
したがって、ポリプロピレン基材(PBM)対セルロースベースの繊維(CF)およびポリマーベースの繊維(PF)の合計の重量比[(PBM)/(CF+PF)]は、好ましくは1.0〜15.7の範囲内、より好ましくは1.0〜10.0の範囲内、尚より好ましくは2.0〜4.0の範囲内である。
【0029】
存在する場合、セルロースベースの繊維(CF)および接着促進剤(AP)の重量比[(CF)/(AP)]は、0.8〜300.0の範囲内、より好ましくは4.0〜15.0の範囲内、尚より好ましくは6.0〜12.0の範囲内である。
【0030】
前の段落に対して代替的に、またはそれに加えて、ポリマーベースの繊維(PF)および接着促進剤(AP)の重量比[(PF)/(AP)]が0.1〜200.0の範囲内、より好ましくは0.8〜5.0の範囲内、尚より好ましくは1.5〜4.0の範囲内であることが、好ましい。
【0031】
複合材料が以下のもの
a)複合材料の総重量に基づいて50.0〜94.0重量%、より好ましくは63.0〜90.0重量%、尚より好ましくは66.0〜84.0重量%、尚より好ましくは68.0〜82.0重量%および最も好ましくは70.0〜81.0重量%の、ISO 1133に従って測定して3.0〜140.0g/10分の範囲内のメルトフローレートMFR(230℃、2.16kg)を有するポリプロピレン基材であって、ここでポリプロピレン基材が
i)(半結晶性)ポリプロピレン(PP)をエラストマー性プロピレンコポリマー(EC)が分散したマトリックスとして含む異相プロピレンコポリマー(HECO);または
ii)プロピレンホモポリマー(hPP)である、前記ポリプロピレン基材;ならびに
b)複合材料の総重量に基づいて5.0〜30.0重量%、より好ましくは8.6〜28.0重量%、尚より好ましくは14.0〜26.0重量%、尚より好ましくは15.5〜23.0重量%および最も好ましくは16.0〜23.0重量%のセルロースベースの繊維(CF);ならびに
c)複合材料の総重量に基づいて1.0〜20.0重量%、より好ましくは1.4〜9.0重量%、尚より好ましくは2.0〜8.0重量%、尚より好ましくは2.5〜7.5重量%および最も好ましくは3.0〜7.0重量%の、210℃以上の溶融温度を有するポリマーベースの繊維(PF)
を含有することが、特に好ましい。
【0032】
一実施形態において、複合材料は、接着促進剤(AP)を含む。
【0033】
したがって、複合材料が以下のもの
a)複合材料の総重量に基づいて50.0〜94.0重量%、より好ましくは60.0〜89.0重量%、尚より好ましくは60.0〜82.8重量%、尚より好ましくは65.5〜80.6重量%および最も好ましくは67.0〜79.4重量%の、ISO 1133に従って測定して3.0〜140.0g/10分の範囲内のメルトフローレートMFR(230℃、2.16kg)を有するポリプロピレン基材であって、ここでポリプロピレン基材が
i)(半結晶性)ポリプロピレン(PP)をエラストマー性プロピレンコポリマー(EC)が分散したマトリックスとして含む異相プロピレンコポリマー(HECO);または
ii)プロピレンホモポリマー(hPP)である、前記ポリプロピレン基材;および
b)複合材料の総重量に基づいて5.0〜30.0重量%、より好ましくは8.6〜26.0重量%、尚より好ましくは14.0〜26.0重量%、尚より好ましくは15.5〜23.0重量%および最も好ましくは16.0〜23.0重量%のセルロースベースの繊維(CF);および
c)複合材料の総重量に基づいて1.0〜20.0重量%、より好ましくは1.4〜8.0重量%、尚より好ましくは2.0〜8.0重量%、尚より好ましくは2.5〜7.5重量%および最も好ましくは3.0〜7.0重量%の、210℃以上の溶融温度を有するポリマーベースの繊維(PF)、および
d)任意に、複合材料の総重量に基づいて6.0重量%まで、より好ましくは0.1〜6.0重量%、尚より好ましくは0.1〜6.0重量%、尚より好ましくは0.2〜4.0重量%および最も好ましくは0.2〜3.0重量%の接着促進剤(AP)
を含有し、好ましくはそれからなることが、特に好ましい。
【0034】
複合材料は、さらに、アルファ核形成剤(NU)および/または添加剤(A)を含んでもよい。本発明によれば、アルファ核形成剤(NU)は、添加剤(A)ではない。
したがって、複合材料が複合材料の総重量に基づいて、5.0重量%まで、好ましくは1.0×10−5〜4.0重量%、より好ましくは2.0×10−5〜2.0重量%のアルファ核形成剤(NU)および/または複合材料の総重量に基づいて8.0重量%まで、好ましくは0.1〜6.0重量%、より好ましくは0.5〜4.0重量%の添加剤(A)を含有することが、好ましい。
【0035】
ポリプロピレン基材、セルロースベースの繊維(CF)、ポリマーベースの繊維(PF)および任意の接着促進剤(AP)、アルファ核形成剤(NU)および添加剤(A)の合計が複合材料の総重量に基づいて100.0重量%であることが、理解される。
【0036】
一実施形態において、複合材料は、ポリエチレン(PE)を含まない。特に、複合材料がポリエチレン(PE)を含まず、935〜970kg/mの範囲内の密度を有することが、好ましい。したがって、複合材料が高密度ポリエチレン(HDPE)を含まないことが、好ましい。
【0037】
好ましくは、複合材料は、900〜1100kg/cmの範囲内、より好ましくは925〜1080kg/mの範囲内、尚より好ましくは930〜1070kg/cmの範囲内の密度を有する。
【0038】
複合材料が0.5〜45.0g/10分の範囲内、より好ましくは0.8〜42.0g/10分の範囲内、尚より好ましくは1.0〜41.0g/10分の範囲内、例えば1.2〜40.0g/10分の範囲内のメルトフローレートMFR(190℃、5kg)を有することが、特に好ましい。
【0039】
好ましくは、複合材料は、少なくとも1,200MPa、より好ましくは1,200〜3,200MPaの範囲内、尚より好ましくは2,150〜2,900MPaの範囲内の引張係数を有する。
【0040】
さらに、またはあるいはまた、複合材料は、少なくとも1.5kJ/m、より好ましくは1.5〜100.0kJ/mの範囲内、さらにより好ましくは1.8〜80.0kJ/mの範囲内および最も好ましくは1.8〜70.0kJ/mの範囲内のシャルピー切り欠き衝撃強度(Charpy notched impact strength)(23℃)を有する。本発明の複合材料のシャルピーノッチ衝撃強度(23℃)がセルロースベースの繊維(CF)のみを補強繊維材料として含む、すなわちポリマーベースの繊維(PF)を含まない同一の複合材料と比較して、例えば少なくとも100%高く、好ましくは100〜6000%高い範囲内であり、より好ましくは110〜5000%高い範囲内であり、例えば120〜5000%高い範囲内であることが、好ましい。
【0041】
例えば、複合材料のポリプロピレン基材がプロピレンホモポリマー(hPP)である場合、複合材料は、好ましくは、少なくとも1.5kJ/m、より好ましくは1.5〜100.0kJ/mの範囲内、さらにより好ましくは1.8〜80.0kJ/mの範囲内および最も好ましくは1.8〜70.0kJ/mの範囲内のシャルピー切り欠き衝撃強度(23℃)を有する。この実施形態において、本発明の複合材料のシャルピー切り欠き衝撃強度(23℃)は、セルロースベースの繊維(CF)のみを補強繊維材料として含む、すなわちポリマーベースの繊維(PF)を含まない同一の複合材料と比較して、例えば少なくとも100%高く、好ましくは100〜6000%高い範囲内であり、より好ましくは110〜5000%高い範囲内であり、例えば120〜4500%高い範囲内である。
【0042】
複合材料のポリプロピレン基材が異相プロピレンコポリマー(HECO)である場合、複合材料は、好ましくは、少なくとも1.5kJ/m、より好ましくは1.5〜100.0kJ/mの範囲内、さらにより好ましくは5.5〜80.0kJ/mの範囲内および最も好ましくは6.0〜70.0kJ/mの範囲内のシャルピー切り欠き衝撃強度(23℃)を有する。この実施形態において、本発明の複合材料のシャルピー切り欠き衝撃強度(23℃)は、セルロースベースの繊維(CF)のみを補強繊維材料として含む、すなわちポリマーベースの繊維(PF)を含まない同一の複合材料と比較して、例えば少なくとも100%高く、好ましくは100〜6000%高い範囲内であり、より好ましくは110〜1000%高い範囲内であり、例えば120〜500%高い範囲内である。
【0043】
さらに、またはあるいはまた、複合材料は、少なくとも1.3kJ/m、より好ましくは1.3〜80.0kJ/mの範囲内、例えば1.4〜60.0kJ/mの範囲内のシャルピー切り欠き衝撃強度(−20℃)を有する。本発明の複合材料のシャルピー切り欠き衝撃強度(−20℃)がセルロースベースの繊維(CF)のみを補強繊維材料として含む、すなわちポリマーベースの繊維(PF)を含まない同一の複合材料と比較して、例えば少なくとも100%高く、好ましくは100〜6000%高い範囲内であり、より好ましくは110〜5800%高い範囲内であり、例えば120〜5200%高い範囲内であることが、好ましい。
【0044】
例えば、複合材料のポリプロピレン基材がプロピレンホモポリマー(hPP)である場合、複合材料は、好ましくは、少なくとも1.3kJ/m、より好ましくは1.3〜80.0kJ/mの範囲内および最も好ましくは1.4〜60.0kJ/mの範囲内のシャルピー切り欠き衝撃強度(−20℃)を有する。この実施形態において、本発明の複合材料のシャルピー切り欠き衝撃強度(−20℃)は、セルロースベースの繊維(CF)のみを補強繊維材料として含む、すなわちポリマーベースの繊維(PF)を含まない同一の複合材料と比較して、例えば少なくとも100%高く、好ましくは100〜6000%高い範囲内であり、より好ましくは110〜800%高い範囲内であり、例えば130〜5200%高い範囲内である。
【0045】
複合材料のポリプロピレン基材が異相プロピレンコポリマー(HECO)である場合、複合材料は、好ましくは、少なくとも1.3kJ/m、より好ましくは1.3〜80.0kJ/mの範囲内、および最も好ましくは3.0〜60.0kJ/mの範囲内のシャルピー切り欠き衝撃強度(−20℃)を有する。この実施形態において、本発明の複合材料のシャルピー切り欠き衝撃強度(−20℃)は、セルロースベースの繊維(CF)のみを補強繊維材料として含む、すなわちポリマーベースの繊維(PF)を含まない同一の複合材料と比較して、例えば少なくとも100%高く、好ましくは100〜6000%高い範囲内であり、より好ましくは110〜2000%高い範囲内であり、例えば120〜1000%高い範囲内である。
【0046】
以下において、複合材料の個々の成分を、より詳細に定義する。
【0047】
ポリプロピレン基材
本発明による複合材料は、ISO 1133に従って測定して3.0〜140.0g/10分の範囲内のメルトフローレートMFR(230℃、2.16kg)を有するポリプロピレン基材を含有しなければならない。好ましくは、ポリプロピレン基材は、5.0〜120.0g/10分の範囲内、より好ましくは5.5〜100.0g/10分の範囲内、尚より好ましくは6.0〜80.0g/10分の範囲内、例えば7.0〜65.0g/10分の範囲内のメルトフローレートMFR(230℃、2.16kg)を有する。
【0048】
ポリプロピレン基材が(半結晶性)ポリプロピレン(PP)をエラストマー性プロピレンコポリマー(EC)が分散したマトリックスとして含む異相プロピレンコポリマー(HECO);またはプロピレンホモポリマー(hPP)のいずれかであることが、理解される。
【0049】
ポリプロピレン基材が異相プロピレンコポリマー(HECO)のいずれかである場合、異相プロピレンコポリマー(HECO)は、ポリプロピレン(PP)をエラストマー性プロピレンコポリマー(EC)が分散したマトリックスとして含む。本発明において使用する表現「異相プロピレンコポリマー」または「異相」は、エラストマー性プロピレンコポリマー(EC)が(半結晶性)ポリプロピレン(PP)中に(微細に)分散していることを示す。換言すれば、(半結晶性)ポリプロピレン(PP)は、エラストマー性プロピレンコポリマー(EC)が含有物をマトリックス中に、すなわち(半結晶性)ポリプロピレン(PP)中に形成するマトリックスを構成する。したがって、マトリックスは、マトリックスの一部ではない(微細に)分散した含有物を含有し、前記含有物は、エラストマー性プロピレンコポリマー(EC)を含有する。本発明による用語「含有物」は、好ましくは、マトリックスおよび含有物が異相プロピレンコポリマー(HECO)内で異なる相を形成することを示すものとし、前記含有物は、例えば高分解能顕微鏡、例えば電子顕微鏡もしくは原子間力顕微鏡によって、または動的機械的熱分析(DMTA)によって視認可能である。特に、DMTAにおいて、多相構造の存在を、少なくとも2種の異なるガラス転移温度の存在によって同定することができる。
【0050】
好ましくは、異相プロピレンコポリマー(HECO)は、3.0〜140.0g/10分の範囲内、より好ましくは5.0〜120.0g/10分の範囲内、より好ましくは5.5〜100.0g/10分の範囲内、尚より好ましくは6.0〜80.0g/10分の範囲内、例えば7.0〜65.0g/10分の範囲内のメルトフローレートMFR(230℃、2.16kg)を有する。一実施形態において、異相プロピレンコポリマー(HECO)は、5.0〜75.0g/10分の範囲内、さらにより好ましくは5.0〜50.0g/10分の範囲内、尚より好ましくは5.0〜30.0g/10分の範囲内、および最も好ましくは6.0〜25.0g/10分の範囲内、例えば7.0〜20.0g/10分の範囲内のメルトフローレートMFR(230℃、2.16kg)を有する。
【0051】
上に述べたように、本発明の異相プロピレンコポリマー(HECO)は、好ましくは、
(a)マトリックス(M)としての(半結晶性)ポリプロピレン(PP)および
(b)エラストマー性プロピレンコポリマー(EC)
を含む。
【0052】
好ましくは、異相プロピレンコポリマー(HECO)は、異相プロピレンコポリマー(HECO)に基づいて30.0mol.−%に等しいかまたはそれより低い、より好ましくは10.0〜30.0mol.−%の範囲内、尚より好ましくは12.0〜25.0mol.−%の範囲内、尚より好ましくは14.0〜22.0mol.−%の範囲内のコモノマー含有量、好ましくはエチレンおよび/またはC〜C12α−オレフィンの含有量、より好ましくはエチレン含有量を有する。
【0053】
好ましくは、異相プロピレンコポリマー(HECO)は、15.0〜50.0重量%の範囲内、より好ましくは22.0〜50.0重量%の範囲内、尚より好ましくは25.0〜45.0重量%の範囲内および最も好ましくは26.0〜38.0重量%の範囲内のキシレン低温可溶性(XCS)画分(25℃)を有する。
【0054】
好ましくは、異相プロピレンコポリマー(HECO)の非晶質画分(AM)のコモノマー含有量、好ましくはエチレンおよび/またはC〜C12α−オレフィンの含有量、より好ましくはエチレンの含有量は、異相プロピレンコポリマー(HECO)の非晶質画分(AM)に基づいて30.0〜60mol.−%の範囲内、より好ましくは35.0〜55.0mol.−%の範囲内、尚より好ましくは38.0〜54.0mol.−%の範囲内、尚より好ましくは40.0〜52.0mol.−%の範囲内である。
【0055】
好ましい実施形態において、異相プロピレンコポリマー(HECO)の非晶質画分(AM)の固有粘度(IV)は、かなり高い。固有粘度(IV)のかなり高い値によって、衝撃強度が改善される。したがって、異相プロピレンコポリマー(HECO)の非晶質画分(AM)の固有粘度が1.8dl/gより高く、より好ましくは少なくとも2.0dl/gであることが、特に好ましい。他方、固有粘度(IV)は、過度に高くないべきであり、さもなければ流動性が低下する。したがって、異相プロピレンコポリマー(HECO)の非晶質画分(AM)の固有粘度は、好ましくは1.8〜4.0dl/gの範囲内であり、より好ましくは2.0〜3.6dl/gの範囲内であり、さらにより好ましくは2.0〜3.2dl/gの範囲内である。
【0056】
(半結晶性)ポリプロピレン(PP)は、好ましくは(半結晶)ランダムプロピレンコポリマー(R−PP)または(半結晶)プロピレンホモポリマー(H−PP)であり、後者が特に好ましい。
【0057】
本発明において使用する表現「プロピレンホモポリマー」は、実質的に、すなわち99.55mol%超、尚より好ましくは少なくとも99.70mol%のプロピレン単位からなるポリプロピレンに関する。好ましい実施形態において、プロピレンホモポリマー中のプロピレン単位のみが、検出可能である。
【0058】
(半結晶性)ポリプロピレン(PP)が(半結晶性)ランダムプロピレンコポリマー(R−PP)である場合において、(半結晶性)ランダムプロピレンコポリマー(R−PP)がプロピレンと共重合可能なモノマー、例えばコモノマー、例えばエチレンおよび/またはC〜C12α−オレフィン、特にエチレンおよび/またはC〜Cα−オレフィン、例えば1−ブテンおよび/または1−ヘキセンを含むことが、理解される。好ましくは、本発明による(半結晶性)ランダムプロピレンコポリマー(R−PP)は、エチレン、1−ブテンおよび1−ヘキセンからなる群からのプロピレンと共重合可能なモノマーを含み、特にそれからなる。より特定的には、本発明の(半結晶性)ランダムプロピレンコポリマー(R−PP)は、−プロピレンとは別に−エチレンおよび/または1−ブテンから誘導可能な単位を含む。好ましい実施形態において、(半結晶性)ランダムプロピレンコポリマー(R−PP)は、エチレンおよびプロピレンのみから誘導可能な単位を含む。
【0059】
さらに、(半結晶性)ランダムプロピレンコポリマー(R−PP)が好ましくは0.4〜1.5mol%を超える範囲内、より好ましくは0.3〜1.2mol%を超える範囲内、尚より好ましくは0.4〜1.0mol%の範囲内のコモノマー含有量を有することが、理解される。
【0060】
用語「ランダム」は、(半結晶性)ランダムプロピレンコポリマー(R−PP)のコモノマーがプロピレンコポリマー内にランダムに分布していることを示す。用語ランダムは、IUPAC(ポリマー科学における基本的用語の用語集;IUPAC推薦、1996)に従って理解される。
【0061】
以下に説明するように、異相プロピレンコポリマー(HECO)を、(半結晶性)ポリプロピレン(PP)およびエラストマー性プロピレンコポリマー(EC)をブレンドすることによって製造することができる。しかしながら、異相プロピレンコポリマー(HECO)を逐次ステッププロセスにおいて、連続的な配置における反応器を用い、種々の反応条件で操作して製造することが、好ましい。典型的には、(半結晶性)ポリプロピレン(PP)を、少なくとも1つの第1の反応器中で製造し、その後エラストマー性プロピレンコポリマー(EC)を、少なくとも1つの第2の反応器中で製造する。
【0062】
さらに、異相プロピレンコポリマー(HECO)の(半結晶性)ポリプロピレン(PP)、例えば(半結晶性)プロピレンホモポリマー(H−PP)が中程度のメルトフローMFR(230℃)を有することが、理解される。したがって、異相プロピレンコポリマー(HECO)の(半結晶性)ポリプロピレン(PP)、例えば(半結晶性)プロピレンホモポリマー(H−PP)がISO 1133に従って測定して3.0〜140.0g/10分、好ましくは5.0〜120.0g/10分の範囲内、より好ましくは5.5〜100.0g/10分の範囲内、尚より好ましくは6.0〜80.0g/10分の範囲内、例えば7.0〜65.0g/10分の範囲内のメルトフローレートMFR(230℃)を有することが、好ましい。
【0063】
用語「半結晶性」は、ポリマーが非晶質でないことを示す。したがって、本発明による半結晶性ポリプロピレン(PP)が10重量%より多くないキシレン可溶性画分(XCS)を有することが好ましく、(半結晶性)プロピレンホモポリマー(H−PP)の場合において、キシレン可溶性画分(XCS)はさらにより低く、すなわち6.0重量%より多くない。
【0064】
したがって、(半結晶性)プロピレンホモポリマー(H−PP)が5.0重量%より低い、より好ましくは0.5〜4.5重量%の範囲内、例えば1.0〜3.5重量%の範囲内のキシレン可溶性画分(XCS)を有することが、好ましい。
【0065】
好ましくは、本発明による(半結晶性)ポリプロピレン(PP)は、135℃より高い、より好ましくは140℃より高い溶融温度Tmを有する。(半結晶性)プロピレンホモポリマー(H−PP)の場合において、溶融温度Tmは、150℃より高く、例えば少なくとも156℃である。上限は168℃より高くなく、例えば167℃より高くない。
【0066】
異相プロピレンコポリマー(HECO)の第2の成分は、エラストマー性プロピレンコポリマー(EC)である。
【0067】
好ましくは、前記エラストマー性プロピレンコポリマー(EC)は、
− プロピレンならびに
− エチレンおよび/またはC〜C12α−オレフィン
から誘導される単位を含む。
【0068】
エラストマー性プロピレンコポリマー(EC)は、(i)プロピレンおよび(ii)エチレンおよび/または少なくとも別のC〜C12α−オレフィン、例えばC〜C10α−オレフィンから誘導可能な単位、より好ましくは(i)プロピレンならびに(ii)エチレンおよび/または1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテンおよび1−オクテンからなる群から選択された少なくとも別のα−オレフィンから誘導可能な単位を含み、好ましくはそれからなる。エラストマー性プロピレンコポリマー(EC)は、共役ジエン、例えばブタジエンまたは非共役ジエンから誘導される単位をさらに含んでもよいが、しかしながらエラストマー性プロピレンコポリマー(EC)が(i)プロピレンおよび(ii)エチレンおよび/またはC〜C12α−オレフィンのみから誘導可能な単位からなることが、好ましい。好適な非共役ジエンは、使用する場合、直鎖状および分枝状非環式ジエン、例えば1,4−ヘキサジエン、1,5−ヘキサジエン、1,6−オクタジエン、5−メチル−1,4−ヘキサジエン、3,7−ジメチル−1,6−オクタジエン、3,7−ジメチル−1,7−オクタジエン、ならびにジヒドロミルセンおよびジヒドロ−オシメンの混合異性体、ならびに単環式脂環式ジエン、例えば1,4−シクロヘキサジエン、1,5−シクロオクタジエン、1,5−シクロドデカジエン、4−ビニルシクロヘキセン、1−アリル−4−イソプロピリデンシクロヘキサン、3−アリルシクロペンテン、4−シクロヘキセンおよび1−イソプロペニル−4−(4−ブテニル)シクロヘキサンを含む。
【0069】
したがって、エラストマー性プロピレンコポリマー(EC)は、少なくともプロピレンおよびエチレンから誘導可能な単位を含み、前の段落において定義したさらなるα−オレフィンから誘導可能な他の単位を含んでもよい。しかしながら、エラストマー性プロピレンコポリマー(EC)がプロピレンおよびエチレン、ならびに任意に共役ジエン、例えばブタジエン、または前の段落において定義した非共役ジエン、例えば1,4−ヘキサジエンから誘導可能な単位のみを含むことが、特に好ましい。したがって、エラストマー性プロピレンコポリマー(EC)としてのエチレンプロピレン非共役ジエンモノマーポリマー(EPDM)および/またはエチレンプロピレンゴム(EPR)が特に好ましく、後者が最も好ましい。
【0070】
本発明において、エラストマー性プロピレンコポリマー(EP)中のプロピレンから誘導可能な単位の含有量は、キシレン低温可溶性(XCS)画分中で検出可能なプロピレンの含有量と大部分同等である。したがって、エラストマー性プロピレンコポリマー(EC)のコモノマー含有量、例えばエチレン含有量は、エラストマー性プロピレンコポリマー(EC)に基づいて30.0〜60mol.−%の範囲内、より好ましくは35.0〜55.0mol.−%の範囲内、尚より好ましくは38.0〜54.0mol.−%の範囲内、尚より好ましくは40.0〜52.0mol.−%の範囲内である。
【0071】
上で述べたように、異相プロピレンコポリマー(HECO)を、(半結晶性)ポリプロピレン(PP)およびエラストマー性プロピレンコポリマー(EC)をブレンドすることによって製造することができる。しかしながら、異相プロピレンコポリマー(HECO)を逐次ステッププロセスにおいて、連続的な配置における反応器を用い、種々の反応条件で操作して製造することが、好ましい。結果として、特定の反応器中で製造する各画分は、それ自体の分子量分布および/またはコモノマー含有量分布を有し得る。
【0072】
本発明による異相プロピレンコポリマー(HECO)を、好ましくは、逐次重合プロセス、すなわち当該分野において公知の多ステージプロセスにおいて製造し、ここで(半結晶性)ポリプロピレン(PP)を、少なくとも1つのスラリー反応器中で、好ましくはスラリー反応器中で、および任意に後続の気相反応器中で製造し、その後エラストマー性プロピレンコポリマー(EC)を、少なくとも1つ、すなわち1つまたは2つの気相反応器(単数または複数)中で製造する。
【0073】
したがって、異相プロピレンコポリマー(HECO)を以下のステップを含む逐次重合プロセスにおいて製造することが、好ましい。
(a)(1)プロピレン、および任意に少なくとも1種のエチレンおよび/またはC〜C12α−オレフィンを第1の反応器(R1)中で重合し、(半結晶性)ポリプロピレン(PP)の第1のポリプロピレン画分を得、好ましくは前記第1のポリプロピレン画分がプロピレンホモポリマーであるステップ、
(b)第1のポリプロピレン画分を第2の反応器(R2)中に移送するステップ、
(c)第2の反応器(R2)中で、および前記第1のポリプロピレン画分の存在下で、プロピレンおよび任意に少なくとも1種のエチレンおよび/またはC〜C12α−オレフィンを重合し、それによって第2のポリプロピレン画分を得、好ましくは前記第2のポリプロピレン画分が第2のプロピレンホモポリマーであり、前記第1のポリプロピレン画分および前記第2のポリプロピレン画分が(半結晶性)ポリプロピレン(PP)、すなわち異相プロピレンコポリマー(HECO)のマトリックスを形成するステップ、
(d)ステップ(c)の(半結晶性)ポリプロピレン(PP)を第3の反応器(R3)中に移送するステップ、
(e)第3の反応器(R3)中で、ステップ(c)において得られた(半結晶性)ポリプロピレン(PP)の存在下で、プロピレンおよび少なくとも1種のエチレンおよび/またはC〜C12α−オレフィンを重合し、それによって第1のエラストマー性プロピレンコポリマー画分を得、第1のエラストマー性プロピレンコポリマー画分を(半結晶性)ポリプロピレン(PP)中に分散させるステップ、
(f)(半結晶性)ポリプロピレン(PP)を移送し、ここで第1のエラストマー性プロピレンコポリマー画分を第4の反応器(R4)中で分散させるステップ、ならびに
(g)第4の反応器(R4)中で、およびステップ(e)において得られた混合物の存在下で、プロピレンおよび少なくとも1種のエチレンおよび/またはC〜C12α−オレフィンを重合し、それによって第2のエラストマー性プロピレンコポリマー画分を得、第1の、および第2のエラストマー性プロピレンコポリマー画分が一緒にエラストマー性プロピレンコポリマー(EC)を形成し;
(半結晶性)ポリプロピレン(PP)およびエラストマー性プロピレンコポリマー(EC)が異相プロピレンコポリマー(HECO)を形成するステップ。
【0074】
当然、第1の反応器(R1)中で、第2のポリプロピレン画分を製造することができ、第2の反応器(R2)中で、第1のポリプロピレン画分を得ることができる。同一のことが、エラストマー性プロピレンコポリマー相について事実である。したがって、第3の反応器(R3)中で、第2のエラストマー性プロピレンコポリマー画分を製造することができ、一方第4の反応器(R4)中で、第1のエラストマー性プロピレンコポリマー画分を製造する。
【0075】
好ましくは、第2の反応器(R2)と第3の反応器(R3)との間、および任意に第3の反応器(R3)と第4の反応器(R4)との間で、モノマーをフラッシュアウトする(flashed out)。
【0076】
用語「逐次重合プロセス」は、異相プロピレンコポリマー(HECO)を連続的に連結された少なくとも2つ、例えば3つまたは4つの反応器中で製造することを示す。したがって、本方法は、少なくとも第1の反応器(R1)および第2の反応器(R2)、より好ましくは第1の反応器(R1)、第2の反応器(R2)、第3の反応器(R3)および第4の反応器(R4)を含む。用語「重合反応器」は、主要な重合が起こることを示すものとする。したがって、プロセスが4つの重合反応器からなる場合において、この定義は、全体のプロセスが例えば前重合反応器中での前重合ステップを含むという選択肢を排除しない。用語「からなる」は、主要な重合反応器の観点において最終的な明確な語句であるに過ぎない。
【0077】
第1の反応器(Rl)は、好ましくはスラリー反応器(SR)であり、あらゆる連続的な、または単純な撹拌したバッチタンク反応器またはバルクもしくはスラリーにおいて動作するループ反応器であり得る。バルクは、少なくとも60%(w/w)のモノマーを含む反応媒体中での重合を意味する。
本発明によれば、スラリー反応器(SR)は、好ましくは(バルク)ループ反応器(LR)である。
【0078】
第2の反応器(R2)は、スラリー反応器、例えば第1の反応器と同様のループ反応器またはあるいはまた気相反応器(GPR)であり得る。
【0079】
第3の反応器(R3)および第4の反応器(R4)は、好ましくは気相反応器(GPR)である。
【0080】
かかる気相反応器(GPR)は、任意の機械的に混合された反応器または流動床反応器であり得る。
好ましくは、気相反応器(GPR)は、少なくとも0.2m/秒のガス速度を有する機械的に攪拌した流動床反応器を含む。したがって、気相反応器が好ましくは機械的撹拌機を備えた流動床タイプの反応器であることが、理解される。
【0081】
したがって、好ましい実施形態において、第1の反応器(Rl)は、スラリー反応器(SR)、例えばループ反応器(LR)であり、一方第2の反応器(R2)、第3の反応器(R3)および第4の反応器(R4)は、気相反応器(GPR)である。したがって、本方法のために、少なくとも4つ、好ましくは4つの重合反応器、すなわちスラリー反応器(SR)、例えばループ反応器(LR)、第1の気相反応器(GPR−1)、第2の気相反応器(GPR−2)および第3の気相反応器(GPR−3)を、連続的に連結して使用する。必要である場合、スラリー反応器(SR)の前に、前重合反応器を配置する。
【0082】
別の好ましい実施形態において、第1の反応器(Rl)および第2の反応器(R2)は、スラリー反応器(SR)、例えばループ反応器(LR)であり、一方第3の反応器(R3)および第4の反応器(R4)は、気相反応器(GPR)である。したがって、本方法のために、少なくとも4つ、好ましくは4つの重合反応器、すなわち2つのスラリー反応器(SR)、例えば2つのループ反応器(LR)、第1の気相反応器(GPR−1)および第2の気相反応器(GPR−2)を、連続的に連結して使用する。必要である場合、第1のスラリー反応器(SR)の前に、前重合反応器を配置する。
【0083】
好ましい多ステージプロセスは、「ループ−気相」プロセス、例えば、例えば特許文献、例えばEP 0 887 379、WO 92/12182、WO 2004/000899、WO 2004/111095、WO 99/24478、WO 99/24479またはWO 00/68315に記載されている、Borealis A/S、Denmarkによって開発されたもの(BORSTAR(登録商標)技術として公知である)である。
【0084】
さらなる好適なスラリー−気相プロセスは、BasellのSpheripol(登録商標)プロセスである。
【0085】
好ましくは、上記で定義した異相プロピレンコポリマー(HECO)を製造するための本プロセスにおいて、ステップ(a)の第1の反応器(R1)、すなわちスラリー反応器(SR)、例えばループ反応器(LR)についての条件は、以下の通りであり得る:
− 温度は、50℃〜110℃、好ましくは60℃〜100℃、より好ましくは68℃〜95℃の範囲内である。
− 圧力は、20bar〜80bar、好ましくは40bar〜70barの範囲内である。
− 水素を、自体公知の方式においてモル質量を制御するために添加することができる。
【0086】
その後、ステップ(a)からの反応混合物を、第2の反応器(R2)、すなわち気相反応器(GPR−1)に、すなわちステップ(c)に移送し、それによってステップ(c)における条件は、好ましくは以下の通りである:
− 温度は、50℃〜130℃、好ましくは60℃〜100℃の範囲内である、
− 圧力は、5bar〜50bar、好ましくは15bar〜35barの範囲内である、
− 水素を、自体公知の方式においてモル質量を制御するために添加することができる。
【0087】
第3の反応器(R3)および第4の反応器(R4)における、好ましくは第2の気相反応器(GPR−2)および第3の気相反応器(GPR−3)における条件は、第2の反応器(R2)と同様である。
【0088】
滞留時間を、3つの反応器帯域において変化させることができる。
【0089】
ポリプロピレンを製造する方法の一実施形態において、バルク反応器、例えばループ反応器中での滞留時間は、0.1〜2.5時間、例えば0.15〜1.5時間の範囲内であり、気相反応器中での滞留時間は、一般に0.2〜6.0時間、例えば0.5〜4.0時間である。
【0090】
所望により、重合を、既知の方式において、超臨界条件下で、第1の反応器(R1)中で、すなわちスラリー反応器(SR)、例えばループ反応器(LR)中で、および/または濃縮モードとして気相反応器(GPR)中で行ってもよい。
【0091】
好ましくは、本方法はまた、チーグラー−ナッタ前駆触媒、外部供与体、および任意に助触媒を含む、以下に詳細に記載する触媒系での前重合を含む。
【0092】
好ましい実施形態において、前重合を、液体プロピレン中でのバルクスラリー重合として行い、すなわち液相は、主にプロピレンを含み、少量の他の反応物および任意に不活性成分が、その中に溶解している。
【0093】
前重合反応を、典型的には、10〜60℃、好ましくは15〜50℃、およびより好ましくは20〜45℃の温度で行う。
【0094】
前重合反応器中の圧力は臨界的ではないが、反応混合物を液相に維持するために十分に高くなければならない。したがって、圧力は、20〜100bar、例えば30〜70barであり得る。
【0095】
触媒成分を、好ましくは、すべて前重合ステップに導入する。
しかしながら、固体触媒成分(i)および共触媒(ii)を別個に供給することができる場合には、共触媒の一部のみを前重合ステージ中に導入し、残りの部分をその後の重合ステージ中に導入することが、可能である。またかかる場合において、十分な重合反応がそれにおいて得られる程度に多量の共触媒を前重合ステージ中に導入することが、必要である。
【0096】
他の成分をまた前重合ステージに添加することが、可能である。したがって、当該分野において知られているように、水素を前重合ステージ中に添加して、プレポリマーの分子量を制御してもよい。さらに、帯電防止添加剤を使用して、粒子が互いに、または反応器の壁に付着するのを防止してもよい。
【0097】
前重合条件および反応パラメーターの正確な制御は、当業者の技術内である。
【0098】
本発明によれば、異相プロピレンコポリマー(HECO)は、成分(i)として低級アルコールおよびフタル酸エステルのエステル交換反応生成物を含有するチーグラー・ナッタ前駆触媒を含む触媒系の存在下で、上記のような多ステージ重合プロセスによって得られる。
【0099】
前駆触媒は、「非フタル酸」チーグラー−ナッタ前駆触媒または「フタル酸」チーグラー−ナッタ前駆触媒であってもよい。最初に、「非フタル酸」チーグラー−ナッタ前駆触媒を記載し、その後「フタル酸」チーグラー−ナッタ前駆触媒を記載する。
【0100】
「非フタル酸」チーグラー−ナッタ前駆触媒は、IUPACの4〜6族の遷移金属、例えばチタン、2族金属化合物(MC)、例えばマグネシウム、および非フタル酸化合物、好ましくは非フタル酸エステル、尚より好ましくは以下により詳細に記載する非フタル酸ジカルボン酸のジエステルである内部供与体(ID)の化合物(TC)を含む。したがって、「非フタル酸」チーグラー−ナッタ前駆触媒は、所望されないフタル酸化合物を完全に含まない。さらに、「非フタル酸」チーグラー−ナッタ前駆触媒は、いかなる外部担体材料、例えばシリカまたはMgClをも含まないが、触媒は、自立である。
【0101】
「非フタル酸」チーグラー−ナッタ前駆触媒を、得られる方法によってさらに定義することができる。したがって、「非フタル酸」チーグラー−ナッタ前駆触媒は、好ましくは以下のステップを含む方法によって得られる。
a)
)水酸基部分に加えて、任意に有機液体反応媒体中に少なくとも1つのエーテル部分を含む、2族金属化合物(MC)およびアルコール(A)の反応生成物である、少なくとも2族金属アルコキシ化合物(Ax)の溶液を提供するステップ;
または
)2族金属化合物(MC)ならびにアルコール(A)および式ROHで表される一価アルコール(B)のアルコール混合物の、任意に有機液体反応媒体中での反応生成物である、少なくとも2族金属アルコキシ化合物(Αx’)の溶液のステップ;
または
)2族アルコキシ化合物(Ax)と、2族金属化合物(MC)および一価アルコール(B)の反応生成物である2族金属アルコキシ化合物(Bx)との混合物の溶液を、任意に有機液体反応媒体中に提供するステップ;ならびに
b)ステップa)からの前記溶液を4〜6族の遷移金属の少なくとも1種の化合物(TC)に添加するステップ、ならびに
c)固体触媒成分粒子を得るステップ、
ならびに非フタル酸内部電子供与体(ID)をステップc)の前の任意のステップで添加するステップ。
【0102】
内部ドナー(ID)またはその前駆体を、好ましくはステップa)の溶液に添加する。
【0103】
上記の手順に従って、「非フタル酸」チーグラー−ナッタ前駆触媒を、物理的条件、特にステップb)およびc)において使用する温度に依存して、沈殿法によって、またはエマルジョン(液体/液体二相系)−凝固法によって得ることができる。
【0104】
両方の方法(沈殿またはエマルジョン−凝固)において、触媒化学は同一である。
【0105】
沈殿法において、ステップa)の溶液の、ステップb)における少なくとも1種の遷移金属化合物(TC)との組み合わせを行い、反応混合物全体を少なくとも50℃、より好ましくは55〜110℃の温度範囲内、より好ましくは70〜100℃の範囲内に保持して、固体粒子の形態における触媒成分の完全な沈殿を確保する(ステップc)。
【0106】
ステップb)におけるエマルジョン−凝固法において、ステップa)の溶液を、典型的には、少なくとも1つの遷移金属化合物(TC)に、より低い温度、例えば−10〜50℃より低温、好ましくは−5〜30℃で添加する。エマルジョンの撹拌の間、温度を、典型的には−10〜40℃より低温、好ましくは−5〜30℃に保持する。エマルジョンの分散相の液滴は、活性な「非フタル酸」チーグラー−ナッタ前駆触媒組成物を形成する。液滴の凝固(ステップc)を、エマルジョンを70〜150℃、好ましくは80〜110℃の温度に加熱することによって好適に行う。
【0107】
エマルジョン−凝固法によって製造した「非フタル酸」チーグラー−ナッタ前駆触媒を、本発明において好ましく使用する。
【0108】
ステップa)の好ましい実施形態において、a)またはa)の溶液、すなわち(Αx’)の溶液、または(Ax)および(Bx)の混合物の溶液を、使用する。
【0109】
好ましくは、2族金属(MC)は、マグネシウムである。
【0110】
マグネシウムアルコキシ化合物(Ax)、(Αx’)および(Bx)を、触媒製造プロセスの第1ステップ、ステップa)において、上記のようにマグネシウム化合物をアルコール(単数または複数)と反応させることによってin situで製造することができ、または前記マグネシウムアルコキシ化合物は、別個に製造したマグネシウムアルコキシ化合物であり得、またはそれらは、さらに既製のマグネシウムアルコキシ化合物として商業的に入手でき、本発明の触媒製造プロセスにおいてそれ自体で使用することができる。
【0111】
アルコール(A)の例示的な例は、二価アルコールのモノエーテル(グリコールモノエーテル)である。好ましいアルコール(A)は、C〜Cグリコールモノエーテルであり、ここでエーテル部分は、2〜18個の炭素原子、好ましくは4〜12個の炭素原子を含む。
好ましい例は、2−(2−エチルヘキシルオキシ)エタノール、2−ブチルオキシエタノール、2−ヘキシルオキシエタノールおよび1,3−プロピレン−グリコール−モノブチルエーテル、3−ブトキシ−2−プロパノールであり、2−(2−エチルヘキシルオキシ)エタノールおよび1,3−プロピレン−グリコール−モノブチルエーテル、3−ブトキシ−2−プロパノールが、特に好ましい。
【0112】
例示的な一価アルコール(B)は、式ROHで表され、Rは、直鎖状または分枝状C〜C10アルキル残基である。最も好ましい一価アルコールは、2−エチル−1−ヘキサノールまたはオクタノールである。
【0113】
好ましくは、Mgアルコキシ化合物(Ax)および(Bx)の混合物またはアルコール(A)および(B)の混合物を、それぞれ使用し、8:1〜2:1、より好ましくは5:1〜3:1のBx:AxまたはB:Aのモル比において使用する。
【0114】
マグネシウムアルコキシ化合物は、上記で定義したアルコール(単数または複数)と、ジアルキルマグネシウム、アルキルマグネシウムアルコキシド、マグネシウムジアルコキシド、アルコキシマグネシウムハロゲン化物およびアルキルマグネシウムハロゲン化物から選択されたマグネシウム化合物との反応生成物であってもよい。アルキル基は、同様の、または異なるC〜C20アルキル、好ましくはC〜C10アルキルであり得る。典型的なアルキル−アルコキシマグネシウム化合物は、使用する場合、エチルマグネシウムブトキシド、ブチルマグネシウムペントキシド、オクチルマグネシウムブトキシドおよびオクチルマグネシウムオクトキシドである。好ましくは、ジアルキルマグネシウムを使用する。最も好ましいジアルキルマグネシウムは、ブチルオクチルマグネシウムまたはブチルエチルマグネシウムである。
【0115】
マグネシウム化合物を、アルコール(A)およびアルコール(B)に加えて、また式R’’(OH)で表される多価アルコール(C)と反応させて、前記マグネシウムアルコキシド化合物を得ることができることがまた、可能である。好ましい多価アルコールは、使用する場合、R’’が直鎖状、環状または分枝状のC〜C10炭化水素残基であり、mが2〜6の整数であるアルコールである。
【0116】
ステップa)のマグネシウムアルコキシ化合物を、したがってマグネシウムジアルコキシド、ジアリールオキシマグネシウム、アルキルオキシマグネシウムハロゲン化物、アリールオキシマグネシウムハロゲン化物、アルキルマグネシウムアルコキシド、アリールマグネシウムアルコキシドおよびアルキルマグネシウムアリールオキシドからなる群から選択する。さらに、二ハロゲン化マグネシウムとマグネシウムジアルコキシドとの混合物を、用いることができる。
【0117】
本触媒の製造のために用いるべき溶媒を、5〜20個の炭素原子、より好ましくは5〜12個の炭素原子を有する芳香族および脂肪族の直鎖状、分枝状および環状の炭化水素、またはそれらの混合物から選択してもよい。好適な溶媒には、ベンゼン、トルエン、クメン、キシロール、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタンおよびノナンが含まれる。ヘキサンおよびペンタンが、特に好ましい。
【0118】
Mg化合物を、典型的には、上で示した溶媒に溶解した10〜50重量%溶液として提供する。典型的な商業的に入手できるMg化合物、特にジアルキルマグネシウム溶液は、トルエンまたはヘプタンに溶解した20〜40重量%溶液である。
【0119】
マグネシウムアルコキシ化合物の製造のための反応を、40℃〜70℃の温度で行うことができる。最も好適な温度を、使用するMg化合物およびアルコール(単数または複数)に依存して選択する。
【0120】
4〜6族の遷移金属化合物は、好ましくはチタン化合物、最も好ましくはハロゲン化チタン、例えばTiClである。
【0121】
本発明において使用する触媒の製造において使用する内部供与体(ID)を、好ましくは、非フタル酸カルボン(二)酸、1,3−ジエーテル、それらの誘導体および混合物の(ジ)エステルから選択する。特に好ましい供与体は、モノ不飽和ジカルボン酸のジエステル、特にマロン酸塩、マレイン酸塩、コハク酸塩、シトラコン酸塩、グルタル酸塩、シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸塩および安息香酸塩を含む群に属するエステル、ならびにそれらの任意の誘導体および/または混合物である。好ましい例は、例えば置換マレイン酸塩およびシトラコン酸塩、最も好ましくはシトラコン酸塩である。
【0122】
エマルジョン法において、二相液−液系が、単純な撹拌、ならびに任意に(さらなる)溶媒(単数または複数)および添加剤、例えば乱流最小化剤(TMA)および/または乳化剤および/またはエマルジョン安定剤、例えば界面活性剤を添加することによって生成し得、それを、当該分野において公知の方式において、エマルジョンの生成および/または安定化を促進するために使用する。好ましくは、界面活性剤は、アクリルまたはメタクリルポリマーである。特に好ましいのは、非分枝C12〜C20(メタ)アクリレート、例えばポリ(ヘキサデシル)−メタクリレートおよびポリ(オクタデシル)−メタクリレートならびにそれらの混合物である。乱流最小化剤(TMA)を、使用する場合、好ましくは、6〜20個の炭素原子を有するα−オレフィンモノマーのα−オレフィンポリマー、例えばポリオクテン、ポリノネン、ポリデセン、ポリウンデセンもしくはポリドデセンまたはそれらの混合物から選択する。最も好ましくは、それは、ポリデセンである。
【0123】
沈殿またはエマルジョン−凝固法によって得られた固体粒子状生成物を、少なくとも1回、好ましくは少なくとも2回、最も好ましくは少なくとも3回、芳香族および/または脂肪族炭化水素で、好ましくはトルエン、ヘプタンまたはペンタンで洗浄してもよい。触媒を、例えば蒸発もしくは窒素でフラッシュすることによってさらに乾燥させることができ、またはそれを、いかなる乾燥ステップをも伴わずに油性液体にスラリー化することができる。
【0124】
最終的に得られた「非フタル」チーグラー−ナッタ前駆触媒は、望ましくは、一般に5〜200μm、好ましくは10〜100の平均粒子サイズ範囲を有する粒子の形態にある。粒子は、低い多孔性でぎっしり詰まっており、20g/mより低い、より好ましくは10g/mより低い表面積を有する。典型的には、Tiの量は触媒組成物の1〜6重量%、Mgは10〜20重量%および供与体は10〜40重量%である。
【0125】
触媒の製造の詳細な説明は、WO 2012/007430、EP2610271、EP261027およびEP2610272に開示されており、それを、参照により本明細書に組み込む。
【0126】
「フタル酸」チーグラー−ナッタ前駆触媒を、以下によって製造する。
a)MgClおよびC〜Cアルコールの噴霧結晶化した、またはエマルジョン固化した付加物をT1Clと反応させるステップ、
b)ステージa)の生成物を式(I)
【化1】
式中、R1’およびR2’は、独立して少なくともCアルキルである、
で表されるジアルキルフタレートと、
前記C〜Cアルコールと前記式(I)で表されるジアルキルフタレートとの間のエステル交換反応が起こって内部供与体を形成する条件下で反応させるステップ、
c)ステージb)の生成物を洗浄するステップまたは
d)任意にステップc)の生成物を追加のTiClと反応させるステップ。
【0127】
「フタル酸」チーグラー−ナッタ前駆触媒を、例えば特許出願WO 87/07620、WO 92/19653、WO 92/19658およびEP 0 491 566に定義されているように製造する。これらの文献の内容を、本明細書中に参照により組み込む。
【0128】
最初に、MgClおよび式MgCl*nROHで表され、式中Rがメチルまたはエチルであり、nが1〜6であるC〜Cアルコールの付加物を、生成する。エタノールを、アルコールとして好ましく用いる。
【0129】
最初に溶融させ、次いで噴霧結晶化またはエマルジョン固化させた付加物を、触媒担体として使用する。
【0130】
次のステップにおいて、式MgCl*nROHで表され、式中Rがメチルまたはエチル、好ましくはエチルであり、nが1〜6である噴霧結晶化させた、またはエマルジョン固化させた付加物をTiClと接触させて、チタン化担体を生成し、続いて以下のステップを行う。
・前記チタン化担体に、
(i)R1’およびR2’が独立して少なくともCアルキル、例えば少なくともCアルキルである、式(I)で表されるジアルキルフタレート、
または好ましくは
(ii)R1’およびR2’が同一であり、少なくともCアルキル、例えば少なくともCアルキルである、式(I)で表されるジアルキルフタレート、
またはより好ましくは
(iii)プロピルヘキシルフタレート(PrHP)、ジオクチルフタレート(DOP)、ジ−イソ−デシルフタレート(DIDP)、およびジトリデシルフタレート(DTDP)からなる群から選択され、尚より好ましくは式(I)で表されるジアルキルフタレートがジオクチルフタレート(DOP)、例えばジ−イソ−オクチルフタレートもしくはジエチルヘキシルフタレート、特にジエチルヘキシルフタレートである、式(I)で表されるジアルキルフタレート
を添加して、
第1の生成物を生成するステップ、
・前記第1の生成物を好適なエステル交換反応条件、すなわち100℃より高い温度、好ましくは100〜150℃、より好ましくは130〜150℃の温度に曝露して、前記メタノールまたはエタノールを前記式(I)で表されるジアルキルフタレートの前記エステル基とエステル交換して、好ましくは少なくとも80mol−%、より好ましくは90mol−%、最も好ましくは95mol−%の式(II)
【化2】
で表され、RおよびRがメチルまたはエチル、好ましくはエチルであり、
式(II)で表されるジアルキルフタレートが内部供与体である
ジアルキルフタレートを生成するようにするステップ、ならびに
・前記エステル交換反応生成物を前駆触媒組成物(成分(i))として回収するステップ。
【0131】
式MgCl*nROHで表され、式中Rがメチルまたはエチルであり、nが1〜6である付加物を、好ましい実施形態において溶融し、次いで溶融物を、好ましくは、ガスによって冷却した溶媒または冷却したガス中に注入し、それによって付加物を、例えばWO 87/07620に記載されているように形態学的に有利な形態に結晶化させる。
【0132】
この結晶化した付加物を、好ましくは触媒担体として使用し、WO 92/19658およびWO 92/19653に記載されているように本発明において有用な前駆触媒に対して反応させる。
【0133】
触媒残留物を抽出により除去するに伴って、チタン化担体および内部供与体の付加物が得られ、ここでエステルアルコールから誘導される基が変化した。
【0134】
十分なチタンが担体上に残存する場合において、それは、前駆触媒の活性元素として作用する。
【0135】
他の方法では、チタン化を、十分なチタン濃度およびしたがって活性を確実にするために上記の処理の後に繰り返す。
【0136】
好ましくは、本発明に従って使用する「フタル酸」チーグラー−ナッタ前駆触媒は、最大で2.5重量%、好ましくは最大で2.2重量%およびより好ましくは最大で2.0重量%のチタンを含有する。その供与体含有量は、好ましくは4〜12重量%およびより好ましくは6〜10重量%である。
【0137】
より好ましくは、本発明に従って使用する「フタル酸」チーグラー−ナッタ前駆触媒を、エタノールをアルコールとして使用し、ジオクチルフタレート(DOP)を式(I)で表されるジアルキルフタレートとして使用し、ジエチルフタレート(DEP)を内部供与体化合物として得ることによって製造した。
【0138】
尚より好ましくは、本発明に従って使用する「フタル酸」チーグラー−ナッタ前駆触媒は、実施例の節に記載する触媒であり;特にジオクチルフタレートの式(I)で表されるジアルキルフタレートとしての使用を伴う。
【0139】
本発明による異相プロピレンコポリマー(HECO)の製造のために、使用する触媒系は、好ましくは、特別なチーグラー−ナッタ前駆触媒(「非フタル酸」または「フタル酸」)に加えて、有機金属共触媒を成分(ii)として含む。
【0140】
したがって、共触媒をトリアルキルアルミニウム、例えばトリエチルアルミニウム(TEA)、ジアルキルアルミニウムクロリドおよびアルキルアルミニウムセスキクロリドからなる群から選択することが、好ましい。
【0141】
使用する触媒系の成分(iii)は、式(IIIa)または(IIIb)によって表される外部供与体である。式(IIIa)を、以下によって定義する。
Si(OCH (IIIa)
式中、Rは、3〜12個の炭素原子を有する分枝状アルキル基、好ましくは3〜6個の炭素原子を有する分枝状アルキル基、または4〜12個の炭素原子を有するシクロアルキル、好ましくは5〜8個の炭素原子を有するシクロアルキルを表す。
【0142】
をイソ−プロピル、イソ−ブチル、イソ−ペンチル、tert.−ブチル、tert.−アミル、ネオペンチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、メチルシクロペンチルおよびシクロヘプチルからなる群から選択することが、特に好ましい。
【0143】
式(IIIb)を、以下によって定義する。
Si(OCHCH(NR) (IIIb)
式中、RおよびRは、同一であるかまたは異なり得、1〜12個の炭素原子を有する炭化水素基を表す。
【0144】
およびRは、独立して、1〜12個の炭素原子を有する直鎖状脂肪族炭化水素基、1〜12個の炭素原子を有する分枝状脂肪族炭化水素基および1〜12個の炭素原子を有する環状脂肪族炭化水素基からなる群から選択される。RおよびRが独立してメチル、エチル、n−プロピル、n−ブチル、オクチル、デカニル、イソ−プロピル、イソ−ブチル、イソ−ペンチル、tert.−ブチル、tert.−アミル、ネオペンチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、メチルシクロペンチルおよびシクロヘプチルからなる群から選択されることが、特に好ましい。
【0145】
より好ましくは、RおよびRの両方は同一であり、尚より好ましくはRおよびRの両方はエチル基である。
【0146】
より好ましくは、外部供与体は、式(IIIa)で表されるもの、例えばジシクロペンチルジメトキシシラン[Si(OCH(シクロ−ペンチル)]、ジイソプロピルジメトキシシラン[Si(OCH(CH(CH]である。
【0147】
最も好ましくは、外部供与体は、ジシクロペンチルジメトキシシラン[Si(OCH(シクロ−ペンチル)]である。
【0148】
さらなる実施形態において、チーグラー−ナッタ前駆触媒を、ビニル化合物を特殊なチーグラー−ナッタ前駆触媒(成分(i))、外部供与体(成分(iii)および任意に共触媒(成分(iii))を含む触媒系の存在下で重合させることによって変性させることができ、当該ビニル化合物は、次式を有し:
CH=CH−CHR
式中、RおよびRは、一緒に5員環もしくは6員環の飽和、不飽和もしくは芳香族環を形成するか、または独立して1〜4個の炭素原子を含むアルキル基を表し、変性させた触媒を、本発明による異相プロピレンコポリマー[HECO]の製造のために使用する。重合したビニル化合物は、α−核形成剤として作用することができる。
【0149】
触媒の変性に関しては、国際出願WO 99/24478、WO 99/24479および特にWO 00/68315を参照し、触媒の変性に関する反応条件に関して、ならびに重合反応に関して参照により本明細書中に組み込む。
【0150】
あるいはまた、ポリプロピレン基材は、プロピレンホモポリマー(hPP)である。
【0151】
ポリプロピレン基材がプロピレンホモポリマー(hPP)である場合、プロピレンホモポリマー(hPP)は広く理解され、したがってまた、種々のホモポリマーを混合する実施形態を網羅する。より正確には、用語「プロピレンホモポリマー(hPP)」はまた、それらのメルトフローレートにおいて異なる2種以上の、例えば3種のプロピレンホモポリマーを混合する実施形態を網羅し得る。したがって、一実施形態において、用語「プロピレンホモポリマー(hPP)」は、好ましくは以下に定義する範囲内の、1種の特定のメルトフローレートを有する1種のみのプロピレンホモポリマーを網羅する。別の実施形態において、用語「プロピレンホモポリマー(hPP)」は、2種または3種の、好ましくは2種のプロピレンホモポリマーの混合物を意味し、それは、それらのメルトフローレートにおいて異なる。好ましくは、2種または3種のプロピレンホモポリマーは、以下に定義する範囲内のメルトフローレートを有する。本発明によれば、メルトフローは、2種のプロピレンホモポリマーのメルトフローレートMFR(230℃)間の差異が少なくとも5g/10分、好ましくは少なくとも10g/10分、例えば少なくとも15g/10分である場合、互いに異なる。
【0152】
本明細書中で使用する表現「プロピレンホモポリマー(hPP)」は、実質的に、すなわち99.5重量%を超える、尚より好ましくは少なくとも99.7重量%の、例えば少なくとも99.8重量%のプロピレン単位からなるポリプロピレンに関する。好ましい実施形態において、プロピレンホモポリマー中のプロピレン単位のみが、検出可能である。
【0153】
本発明によるプロピレンホモポリマー(hPP)は、3.0〜140.0g/10分の範囲内のメルトフローレートMFR(230℃)を有さなければならない。好ましくは、プロピレンホモポリマー(hPP)は、5.0〜120.0g/10分の範囲内、より好ましくは5.5〜100.0g/10分の範囲内、尚より好ましくは6.0〜80.0g/10分の範囲内、例えば7.0〜65.0g/10分の範囲内のメルトフローレートMFR(230℃、2.16kg)を有する。
【0154】
プロピレンホモポリマー(hPP)は、好ましくはアイソタクチックプロピレンホモポリマーである。したがって、プロピレンホモポリマー(hPP)は、かなり高い5個一組の濃度、すなわち90mol−%より高い、より好ましくは92mol−%より高い、尚より好ましくは93mol−%より高い、および尚より好ましくは95mol−%より高い、例えば99mol−%より高いものを有することが、理解される。
【0155】
好ましくは、プロピレンホモポリマー(hPP)は、ISO 11357−3に従って測定して少なくとも150℃、より好ましくは少なくとも155℃、より好ましくは150〜168℃の範囲内、尚より好ましくは155〜167℃の範囲内および最も好ましくは160〜167℃の範囲内の溶融温度Tmを有する。
【0156】
さらに、プロピレンホモポリマー(hPP)は、かなり低いキシレン低温可溶性(XCS)含有量、すなわち4.5重量%より低い、より好ましくは4.0重量%より低い、尚より好ましくは3.7重量%より低いものを有する。したがって、キシレン低温可溶性(XCS)含有量は、0.5〜4.5重量%の範囲内、より好ましくは1.0〜4.0重量%の範囲内、尚より好ましくは1.5〜3.5重量%の範囲内であることが、理解される。
【0157】
さらに、またはあるいはまた、プロピレンホモポリマー(hPP)は、850〜1000kg/cmの範囲内、より好ましくは875〜950kg/mの範囲内、尚より好ましくは890〜925kg/cmの範囲内の密度を有する。
【0158】
一実施形態において、プロピレンホモポリマー(hPP)は、23℃、ISO 179−leAで、1.0〜10.0kJ/m、好ましくは1.0〜8.0kJ/mおよび最も好ましくは1.5〜5.0kJ/mの範囲内のシャルピー切り欠き衝撃強度を有する。
【0159】
本発明の複合材料に適したプロピレンホモポリマー(H−PP)は、多種多様な商業的供給源から入手でき、当該分野において公知のように製造することができる。例えば、プロピレンホモポリマー(hPP)を、シングルサイト触媒またはチーグラー−ナッタ触媒の存在下で製造することができ、後者が好ましい。
【0160】
プロピレンホモポリマー(hPP)の重合は、バルク重合であり得、好ましくはいわゆるループ反応器中で行う。あるいはまた、プロピレンホモポリマー(hPP)の重合は、スラリー相において動作するループ反応器と、例えばBorstar(登録商標)ポリプロピレンプロセスにおいて適用する1つ以上の気相反応器との組合せ中で実施する2ステージ以上の重合である。
【0161】
好ましくは、上記で定義したプロピレンホモポリマー(hPP)の製造方法において、ステップのバルク反応器についての条件は、以下の通りであり得る:
− 温度は、40℃〜110℃、好ましくは60℃〜100℃、70℃〜90℃の範囲内である、
− 圧力は、20bar〜80bar、好ましくは30bar〜60barの範囲内である、
− 水素を、自体公知の方式においてモル質量を制御するために添加することができる。
【0162】
その後、バルク(バルク)反応器からの反応混合物を、気相反応器に移送することができ、それによって条件は、好ましくは以下の通りである:
− 温度は、50℃〜130℃の範囲内、好ましくは60℃〜100℃である、
− 圧力は、5bar〜50barの範囲内、好ましくは15bar〜35barである、
− 水素を、自体公知の方式においてモル質量を制御するために添加することができる。
【0163】
滞留時間は、両方の反応器帯域において変化し得る。プロピレンポリマーを製造する方法の一実施形態において、バルク反応器、例えばループにおける滞留時間は、0.5〜5時間、例えば0.5〜2時間の範囲内であり、気相反応器中での滞留時間は、一般に1〜8時間である。
【0164】
所望により、重合を、公知の方式において、超臨界条件下で、バルク反応器、好ましくはループ反応器中で、および/または凝縮モードとして気相反応器中で行ってもよい。
【0165】
上で述べたように、プロピレンホモポリマー(hPP)を、好ましくは、チーグラー−ナッタ系を用いて得る。
【0166】
したがって、上で討議したプロセスを、チーグラー−ナッタ触媒、特に高収率チーグラー−ナッタ触媒(低収率、いわゆる第2世代チーグラー−ナッタ触媒と区別するためのいわゆる第4および第5世代タイプ)を用いて行う。本発明に従って使用するべき好適なチーグラー−ナッタ触媒は、触媒成分、共触媒成分、ならびに少なくとも1種の電子供与体(内部および/または外部電子供与体、好ましくは少なくとも1種の外部供与体)を含む。好ましくは、触媒成分は、Ti−Mgベースの触媒成分であり、典型的には共触媒は、Al−アルキルベースの化合物である。好適な触媒は、特に、US 5,234,879、WO 92/19653、WO 92/19658およびWO 99/33843に開示されている。
【0167】
好ましい外部供与体は、既知のシランベースの供与体、例えばジシクロペンチルジメトキシシラン、ジエチルアミノトリエトキシシランまたはシクロヘキシルメチルジメトキシシランである。
【0168】
所望により、チーグラー−ナッタ触媒系を、ビニル化合物を触媒系の存在下で重合させることによって変性させ、ここでビニル化合物は、次式を有する:
CH=CH−CHR
式中、RおよびRは、一緒に5員環もしくは6員環の飽和、不飽和もしくは芳香族環を形成するか、または独立して1〜4個の炭素原子を含むアルキル基を表す。そのように変性させた触媒を、所望によりプロピレンホモポリマー(hPP)の製造のために使用して、ポリマー、組成物(Co)およびしたがって全成形品のα核形成を達成する(BNT技術)。
【0169】
プロピレンホモポリマー(hPP)についての方法の1つの実施形態は、上記で議論したように、例えばEP 0 887 379 A1およびWO 92/12182に記載されている、ループ相プロセスまたはループ気相プロセス、例えばBorealisによって開発され、Borstar(登録商標)技術として公知のものものである。
【0170】
セルロースベースの繊維(CF)
本発明の複合材料は、セルロースベースの繊維(CF)を含まなければならない。セルロースベースの繊維(CF)は、補強(高アスペクト比)繊維または非補強(低アスペクト比)繊維であり得る。アスペクト比を、繊維粒子の有効直径に対する長さの比として定義する。好ましくは、セルロースベースの繊維(CF)は、2.0〜13.0の範囲内、より好ましくは2.5〜7.0の範囲内、尚より好ましくは3.0〜5.0の範囲内のアスペクト比を有する。
【0171】
好ましくは、セルロースベースの繊維(CF)は、1〜1,200μm、より好ましくは40〜1,000μm、尚より好ましくは100〜600μmの体積モーメント平均(D[4.3])直径を有する。
【0172】
セルロースは、木材/森林および農業副産物を含む任意の供給源から誘導され得る。したがって、セルロースベースの繊維(CF)は、好ましくは、木材、亜麻、ヘム、黄麻、わら、米、ハードボード、厚紙、紙、パルプ、生セルロース、セルロース、酢酸セルロース、三酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、酢酸プロピオン酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、ニトロセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、エチルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、エチルヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース(CMC)、およびそれらの任意の混合物からなる群から選択される。セルロースベースの繊維(CF)は、特に、木粉、紙、パルプ、生セルロースおよびセルロースからなる群から選択される。最も好ましくは、セルロースベースの繊維(CF)は、木粉である。
【0173】
ポリマーベースの繊維(PF)
本発明の複合材料は、210℃以上の溶融温度を有するポリマーベースの繊維(PF)を含まなければならない。
【0174】
ポリマーベースの繊維(PF)は、特に補強繊維材料のみとしてセルロースベースの繊維(CF)を含む複合材料と比較して改善された破断点伸びおよび靭性を本発明の複合材料に付与することが、理解される。
【0175】
本出願の意味における用語「ポリマーベースの繊維(PF)」は、セルロースベースではない繊維を指す。すなわち、ポリマーベースの繊維(PF)は、セルロースベースの繊維(CF)とは異なる。さらに、本出願の意味における用語「ポリマーベースの繊維(PF)」は、ポリプロピレン、例えばポリプロピレン繊維ではない繊維を指す。
【0176】
ポリマーベースの繊維(PF)が210℃以上の溶融温度Tmを有することが、1つの特定の要件である。好ましくは、ポリマーベースの繊維(PF)は、210〜350℃の範囲内、より好ましくは210〜300℃の範囲内の溶融温度(Tm)を有する。
【0177】
したがって、ポリマーベースの繊維(PF)のISO 11357−3による溶融温度Tmは、ポリプロピレン基材のISO 11357−3による溶融温度Tmよりも42℃以上、好ましくは42〜200℃高い。より好ましくは、ポリマーベースの繊維(PF)のISO 11357−3による溶融温度Tmは、ポリプロピレン基材のISO 11357−3による溶融温度Tmよりも50℃以上、尚より好ましくは50〜200℃および最も好ましくは50〜180℃、例えば50〜120℃高い。
【0178】
1つの実施形態において、ポリマーベースの繊維(PF)は、10〜30μm、好ましくは12〜24μmの平均直径を有する。
【0179】
一実施形態において、ポリマーベースの繊維(CF)は、少なくとも0.4N/tex〜1.7N/texまで、より好ましくは少なくとも0.6N/tex〜1.4N/texまでおよび最も好ましくは少なくとも0.7N/tex〜1.2N/texまでの引張強さを有する。
【0180】
例えば、ポリマーベースの繊維(CF)は、ポリビニルアルコール(PVA)繊維、ポリエチレンテレフタレート(PET)繊維、ポリアミド(PA)繊維およびそれらの混合物から選択される。
好ましくは、ポリマーベースの繊維(CF)は、ポリビニルアルコール(PVA)繊維である。
【0181】
PVA繊維は、当該分野において周知であり、好ましくは湿式紡糸プロセスまたは乾式紡糸プロセスにより製造する。
【0182】
PVA自体を、アセチレン[74−86−2]またはエチレン[74−85−1]から、触媒、例えば酢酸亜鉛の存在下で酢酸(およびエチレンの場合においては酸素)との反応によって合成して、酢酸ビニル[108−05−4]を生成し、それを、次いでメタノール中で重合させる。得られたポリマーを、水酸化ナトリウムでのメタノール分解に供し、それによってPVAがメタノール溶液から沈殿する。
【0183】
繊維の製造のために使用するPVAは、一般に、1000以上、好ましくは1200以上およびより好ましくは1500以上の重合度を有する。最も好ましくは、PVAは、約1700、例えば1500〜2000までの重合度を有する。酢酸ビニルの加水分解度は、一般に少なくとも99mol.−%である。
【0184】
PVA繊維の機械的特性は、繊維製造の条件、例えば紡糸プロセス、延伸プロセス、およびアセタール化条件、ならびに原料PVAの製造条件に依存して変化する。
【0185】
PVA繊維は、(マルチ)フィラメントまたはステープルファイバーの形態にあり得る。
【0186】
PVA繊維は、高い強度、低い伸びおよび高い係数によって特徴づけられる。好適なPVA繊維は、好ましくは、0.4N/tex〜1.7N/tex、より好ましくは0.6N/tex〜1.4N/texおよび最も好ましくは0.7N/tex〜1.2N/texの引張強さを有する。
【0187】
さらに、かかるPVA繊維は、好ましくは、3.0〜35.0N/texの範囲内、好ましくは10.0〜30.0N/texの範囲内およびより好ましくは15.0〜25.0N/texの範囲内のヤング率を有する(ISO 5079)。
【0188】
好適なPVA繊維の繊維平均直径は、10〜30μmの範囲内、好ましくは12〜24μmの範囲内、尚より好ましくは12〜20μmの範囲内および最も好ましくは12〜18μmの範囲内である。
【0189】
一実施形態において、PVA繊維は、1100〜1400kg/mの範囲内、好ましくは1200〜1400kg/mの範囲内の密度を有する。
【0190】
本発明に適したPVA繊維をさらに、いわゆるサイジング剤で表面処理する。これを、公知の方法、例えば繊維をサイジング剤を配置するタンク中に浸漬し、はさみ、次いで熱風炉内で、またはホットローラーもしくはホットプレートで乾燥することで行うことができる。
【0191】
サイジング剤の例には、ポリオレフィン樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、デンプン、植物油、変性ポリオレフィンが含まれる。ポリビニルアルコール繊維に関連するサイジング剤の量は、当業者の通常の知識内であり、例えば、ポリビニルアルコール繊維100重量部に対してサイジング剤0.1〜10重量部の範囲内にあり得る。
【0192】
表面処理剤を、サイジング剤中に包含させて、ポリビニルアルコール繊維とポリプロピレン組成物との間の湿潤性または接着性を改善してもよい。
【0193】
表面処理剤の例には、シランカップリング剤、チタン酸塩カップリング剤、アルミニウムカップリング剤、クロムカップリング剤、ジルコニウムカップリング剤、ボランカップリング剤が含まれ、好ましいのは、シランカップリング剤またはチタン酸塩カップリング剤、およびより好ましくはシランカップリング剤である。
【0194】
接着促進剤(AP)
ポリプロピレン基材、すなわち異相プロピレンコポリマー(HECO)またはプロピレンホモポリマー(hPP)と、セルロースベースの繊維(CF)およびポリマーベースの繊維(PF)との間の適合性を改善するために、接着促進剤(AP)を使用することができる。
【0195】
接着促進剤(AP)は、好ましくは、変性(官能化)ポリマーおよび任意に反応性極性基を有する低分子量化合物を含み、より好ましくはそれである。
【0196】
変性α−オレフィンポリマー、特にプロピレンホモポリマーおよびコポリマー、例えばエチレンおよびプロピレンの互いとの、または他のα−オレフィンとのコポリマーは、それらが本複合材料のポリマーと高度に適合性であるので、最も好ましい。変性ポリエチレンおよび変性スチレンブロックコポリマー、例えば変性ポリ(スチレン−b−ブタジエン−b−スチレン)(SBS)またはポリ(スチレン−b−(エチレン−コブチレン)−b−スチレン)(SEBS)を、同様に使用することができる。
【0197】
構造に関して、変性ポリマーを、好ましくは、グラフトまたはブロックコポリマーから選択する。
【0198】
この文脈において、好ましいのは、極性化合物から誘導される基、特に酸無水物、カルボン酸、カルボン酸誘導体、第一および第二アミン、ヒドロキシル化合物、オキサゾリンおよびエポキシ、ならびにまたイオン性化合物からなる群から選択された基を含有する変性ポリマーである。
【0199】
前記極性化合物の具体例は、不飽和の環状無水物およびそれらの脂肪族ジエステル、ならびに二酸誘導体である。特に、無水マレイン酸、ならびにC〜C10直鎖状および分枝状ジアルキルマレエート、C〜C10直鎖状および分枝状ジアルキルフマレート、無水イタコン酸、C〜C10直鎖状および分枝状イタコン酸ジアルキルエステル、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸およびそれらの混合物から選択された化合物を、使用することができる。
【0200】
接着促進剤(AP)として特に好ましいのは、無水マレイン酸官能化ポリプロピレンである。
【0201】
変性ポリマー、例えば変性ポリプロピレン中の極性基から誘導される基、例えば無水マレイン酸の量は、好ましくは、極性変性ポリマーの総重量に基づいて0.1〜5.0重量%、より好ましくは0.2〜5.0重量%および最も好ましくは0.3〜4.0重量%、例えば0.4〜3.0重量%である。
【0202】
特に好ましいのは、変性プロピレンコポリマーである接着促進剤(AP)または変性プロピレンホモポリマーであり、後者が特に好ましい。
【0203】
一実施形態において、接着促進剤(AP)は、上記で定義した極性基を含有する変性(ランダム)プロピレンコポリマーである。1つの特定の実施形態において、接着促進剤(AP)は、無水マレイン酸でグラフトした(ランダム)プロピレンコポリマーである。したがって、1つの特定の好ましい実施形態において、接着促進剤(AP)は、無水マレイン酸でグラフトした(ランダム)プロピレンエチレンコポリマーであり、より好ましくは、ここでランダムプロピレンエチレンコポリマーの総量に基づくエチレン含有量は、1.0〜8.0重量%の範囲内、より好ましくは1.5〜7.0重量%の範囲内である。
【0204】
極性変性(ランダム)プロピレンコポリマー中の、または変性プロピレンホモポリマー中の極性基から誘導される基の必要量は、好ましくは、極性変性(ランダム)プロピレンコポリマーの総重量に基づいて0.1〜5.0重量%、より好ましくは0.2〜5.0重量%および最も好ましくは0.3〜4.0重量%、例えば0.4〜3.0重量%である。
【0205】
接着促進剤(AP)についてISO 1133に従って測定したメルトフローレートMFRの好ましい値(190℃;2.1kg)は、1.0〜500.0g/10分、例えば1.0〜150.0g/10分の範囲内である。
【0206】
変性ポリマー、すなわち接着促進剤(AP)を、例えばEP 0 572 028に開示されているように、簡単な方式において、フリーラジカル発生剤(例えば有機過酸化物)の存在下での、例えば無水マレイン酸との、ポリマーの反応性押出成形により製造することができる。
【0207】
接着促進剤(AP)は、当該分野において公知であり、商業的に入手できる。好適な例は、BYKのSCONA TPPP 8112 FAである。
【0208】
アルファ核形成剤(NU)
本発明によれば、アルファ核形成剤(NU)は、以下に定義する添加剤(A)のクラスに属さない。
【0209】
複合材料は、アルファ核形成剤(NU)を含有してもよい。尚より好ましくは、本発明は、ベータ核形成剤を含まない。したがって、アルファ核形成剤(NU)は、好ましくは、以下からなる群から選択される。
(i)モノカルボン酸およびポリカルボン酸の塩、例えば安息香酸ナトリウムまたはtert−ブチル安息香酸アルミニウムの塩、ならびに
(ii)ジベンジリデンソルビトール(例えば1,3:2,4ジベンジリデンソルビトール)およびC〜Cアルキル置換ジベンジリデンソルビトール誘導体、例えばメチルジベンジリデンソルビトール、エチルジベンジリデンソルビトールもしくはジメチルジベンジリデンソルビトール(例えば1,3:2,4ジ(メチルベンジリデン)ソルビトール)、または置換ノニトール誘導体、例えば1,2,3,−トリデオキシ−4,6:5,7−ビス−O−[(4−プロピルフェニル)メチレン]−ノニトール、ならびに
(iii)リン酸のジエステルの塩、例えば2,2’−メチレンビス(4,6,−ジ−t−ブチルフェニル)リン酸ナトリウムまたはアルミニウム−ヒドロキシ−ビス[2,2’−メチレン−ビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)ホスフェート、ならびに
(iv)ビニルシクロアルカンポリマーおよびビニルアルカンポリマー、ならびに
(v)それらの混合物
【0210】
好ましくは、複合材料は、アルファ核形成剤として、ビニルシクロアルカンポリマーおよび/またはビニルアルカンポリマーを含有する。このアルファ核形成剤(NU)は、上記のように、すなわち異相プロピレンコポリマー(HECO)の製造のために含まれる。
【0211】
かかる添加剤および核形成剤は、一般に商業的に入手でき、例えばHans Zweifelの”Plastic Additives Handbook”、第5版、2001に記載されている。
【0212】
添加剤(A)
本発明の複合材料は、添加剤(A)を含んでもよい。典型的な添加剤は、酸スカベンジャー、酸化防止剤、着色剤、光安定剤、可塑剤、スリップ剤、傷防止剤、分散剤、加工助剤、潤滑剤、および顔料である。
【0213】
かかる添加剤は、商業的に入手でき、例えばHans Zweifelの”Plastic Additives Handbook”、第6版、2009(1141〜1190頁)に記載されている。
【0214】
さらに、本発明による用語「添加剤」はまた、以下に定義するように担体材料、特にポリマー担体材料(PCM)を含む。
【0215】
好ましくは、複合材料は、(a)複合材料中に含まれるポリマー(単数または複数)とは異なるさらなるポリマー(単数または複数)、すなわちポリプロピレン基材、セルロースベースの繊維(CF)、ポリマーベースの繊維(PF)および任意の接着促進剤(AP)を、複合材料の重量に基づいて10重量%を超える、好ましくは5重量%を超える量において含まない。追加のポリマーが存在する場合、かかるポリマーは、典型的には、添加剤(A)のためのポリマー担体材料(PCM)である。
【0216】
複合材料は、ポリマー担体材料(PCM)を、複合材料の総重量に基づいて10.0重量%以下の量において、好ましくは5.0重量%以下の量において、より好ましくは2.5重量%以下の量において、例えば1.0〜10.0重量%の範囲内で、好ましくは1.0〜5.0重量%の範囲内で、尚より好ましくは1.0〜2.5重量%の範囲内で含むことが、理解される。
【0217】
ポリマー担体材料(PCM)は、複合材料中の均一な分布を確実にするための添加剤(A)のための担体ポリマーである。ポリマー担体材料(PCM)は、特定のポリマーに限定されない。ポリマー担体材料(PCM)は、エチレンホモポリマー、エチレンおよびα−オレフィンコモノマー、例えばC〜Cα−オレフィンコモノマーから得られるエチレンコポリマー、プロピレンホモポリマーならびに/またはプロピレンおよびα−オレフィンコモノマー、例えばエチレンおよび/もしくはC〜Cα−オレフィンコモノマーから得られるプロピレンコポリマーであり得る。
【0218】
好ましい実施形態によれば、ポリマー担体材料(PCM)は、ポリプロピレンホモポリマーである。
【0219】
プロセス
本発明の複合材料を、樹脂配合技術分野で周知であり、一般に使用されている種々の配合およびブレンド方法のいずれかを用いてペレット化し、配合してもよい。
【0220】
物品/用途
本発明の複合材料を、好ましくは、成形品、好ましくは射出成形品の製造に使用する。尚より好ましいのは、洗濯機または食器洗い機の部品ならびに自動車用物品、特に車の内装および外装、例えばバンパー、サイドトリム、ステップアシスト、ボディパネル、スポイラー、ダッシュボード、インテリアトリムなどの製造のための使用である。
【0221】
本発明はまた、好ましくは少なくとも60重量%、より好ましくは少なくとも80重量%、尚より好ましくは少なくとも95重量%の本発明の複合材料を含む、例えばそれからなる物品、例えば射出成形品を提供する。したがって、本発明は、特に、洗濯機または食器洗い機の部品ならびに自動車用物品、特に車の内装および外装、例えばバンパー、サイドトリム、ステップアシスト、ボディパネル、スポイラー、ダッシュボード、インテリアトリムなどであって、好ましくは少なくとも60重量%、より好ましくは少なくとも80重量%、尚より好ましくは少なくとも95重量%の本発明の複合材料を含み、例えばそれからなるものに関する。
【0222】
本発明を、ここで以下に提供する実施例によりさらに詳細に説明する。
【実施例】
【0223】
実施例
1.定義/測定方法
用語および決定方法の以下の定義は、他に定義しない限り本発明の上記の一般的な説明ならびに以下の実施例に適用される。
【0224】
NMR分光法による微細構造の定量
定量核磁気共鳴(NMR)分光法を用いて、ポリマーのコモノマー含有量を定量した。定量的13C{H}NMRスペクトルを、溶液状態において、それぞれHおよび13Cについて400.15および100.62MHzで動作するBroker Advance III 400 NMR分光計を使用して記録した。すべてのスペクトルを、13C最適化10mm拡張温度プローブヘッドを125℃で用いてすべての空気力学について窒素ガスを用いて記録した。約200mgの物質を、3mlの1,2−テトラクロロエタン−d(TCE−d)に、クロム−(III)−アセチルアセトネート(Cr(acac))と共に溶解し、溶媒に溶解した緩和剤の65mM溶液を得た(Singh,G.,Kothari,A.,Gupta,V.,Polymer Testing 28 5(2009),475)。均質な溶液を確実にするために、加熱ブロック中での初期の試料製造の後、NMR管を、回転オーブン中で少なくとも1時間さらに加熱した。磁石中に挿入した際に、管を10Hzで回転させた。この設定を、主に高い分解能のために選択し、正確なエチレン含有量定量のために定量的に必要とされた。標準的な単一パルス励起を、NOEなしで、最適化された先端角度、1秒のリサイクル遅延および2レベルWALTZ16デカップリングスキームを使用して使用した(Zhou,Z.,Kuemmerle,R.,Qiu,X.,Redwine,D.,Cong,R.,Taha,A.,Baugh,D.Winniford,B.,J.Mag.Reson.187(2007)225;Busico,V.,Carbonniere,P.,Cipullo,R.,Pellecchia,R.,Severn,J.,Talarico,G.,Macromol.Rapid Commun.2007,28,1128)。合計6144(6k)の過渡信号が、スペクトルあたり得られた。
【0225】
定量的13C{H}NMRスペクトルを、加工し、積分し、関連する定量的特性を、独自のコンピュータプログラムを用いて積分から決定した。すべての化学シフトを、30.00ppmで、溶媒の化学シフトを用いて、エチレンブロック(EEE)の中央メチレン基に対して間接的に参照した。このアプローチによって、この構造単位が存在しない場合でさえも比較可能な参照が可能になった。エチレンの包含に対応する特徴的なシグナルが、観察された、Cheng,H.N.,Macromolecules 17(1984),1950)。
【0226】
2,1エリトロ領域欠陥に対応する特徴的シグナルが観察されて(Cheng,H.N.,Macromolecules 1984,17,1950ならびにW−J.WangおよびS.Zhu,Macromolecules 2000,33 1157中のL.Resconi,L.Cavallo,A.Fait,F.Piemontesi,Chem.Rev.2000,100(4),1253に記載されているように)、決定した特性に関する領域欠陥の影響力についての補正が、必要であった。他のタイプの領域欠陥に対応する特性信号は、観察されなかった。
【0227】
コモノマー画分を、Wang et.al.(Wang,W−J.,Zhu,S.,Macromolecules 33(2000),1157)の方法を用いて、13C{H}スペクトルの全スペクトル域にわたる複数シグナルの積分により定量した。この方法を、その頑強な性質および必要である場合には領域欠陥の存在を説明する能力について選択した。積分領域をわずかに調整して、適用性を遭遇したコモノマー含有量の全範囲にわたって増加させた。
【0228】
PPEPP配列中の単離されたエチレンのみが観察された系について、Wang et.al.の方法を、存在しないことが知られている部位の非ゼロ積分の影響を低減するように改変した。このアプローチによって、かかる系のエチレン含有量の過大評価が低減され、絶対エチレン含量を決定するために使用する部位の数を以下のように減少させることによって達成された:
E=0.5(Sββ+Sβγ+Sβδ+0.5(Sαβ+Sαγ))
【0229】
部位のこの組の使用により、対応する積分方程式は、Wang et.al.(Wang,W−J.,Zhu,S.,Macromolecules 33(2000),1157)の記事において使用されたのと同一の表記法を使用して以下になる:
E=0.5(I+I+0.5(I+I))
絶対的なプロピレン含有量に使用した方程式は、修正しなかった。
【0230】
モルパーセントコモノマー包含を、モル分率から計算した:
E[mol%]=100*fE
【0231】
重量パーセントコモノマー包含を、モル分率から計算した:
E[wt%]=100*(fE*28.06)/((fE*28.06)+((1−fE)*42.08))
【0232】
三つ組レベルでのコモノマー配列分布を、Kakugo et al.(Kakugo,M.,Naito,Y.,Mizunuma,K.,Miyatake,T.Macromolecules 15(1982)1150)の分析方法を用いて決定した。この方法を、その頑強な性質およびコモノマー含有量のより広い範囲への適用性を増加させるようにわずかに調整した積分領域について選択した。
【0233】
DSC分析、溶融温度(T)および融解の熱(H)、結晶化温度(T)および結晶化の熱(H):5〜7mgの試料に関してTA Instrument Q2000示差走査熱量測定法(DSC)で測定した。DSCを、ISO 11357/3部/方法C2に従って、−30〜+225℃の温度範囲内で10℃/分の走査速度で加熱/冷却/加熱サイクルにおいて実施する。結晶化温度および結晶化の熱(H)を、冷却ステップから決定し、一方溶融温度および融解の熱(H)を、第2の加熱ステップから決定する。
【0234】
密度を、ISO 1183−1−方法A(2004)に従って測定する。試料の製造を、ISO 1872−2:2007に従って圧縮成形によって行う。
MFR(230℃)を、ISO 1133(230℃、2.16kg荷重)に従って測定する。
MFR(190℃)を、ISO 1133(190℃、5kgまたは2.1kg荷重)に従って測定する。
キシレン低温可溶物(XCS、重量%):キシレン低温可溶物(XCS)の含有量を、ISO 16152;第1版;2005−07−01に従って25℃で決定する。
【0235】
非晶質含有量(AM)を、上記のキシレン低温可溶性画分(XCS)を分離し、非晶質部分をアセトンで沈殿させることによって測定する。沈殿物を濾過し、真空オーブン中で90℃で乾燥させた。
【数1】
式中
「AM%」は、非晶質画分であり、
「m0」は、初期ポリマー量(g)であり、
「m1」は、沈殿物の重量(g)であり、
「v0」は、初期容量(ml)であり、
「v1」は、分析した試料の体積(ml)である。
【0236】
固有粘度を、DIN ISO 1628/1、1999年10月に従って測定する(デカリン中135℃で)。
【0237】
シャルピー切り欠き衝撃強度を、ISO 179/1eAに従って、23℃および−20℃で、EN ISO 19069−2に従って製造した80×10×4mmの射出成形試験片を用いることによって決定する。
【0238】
シャルピー切り欠きなし衝撃強度を、ISO 179/1eUに従って23℃で、EN ISO 19069−2に従って製造した80×10×4mmの射出成形試験片を使用することにより決定する。
【0239】
引張弾性率を、ISO 527−3(クロスヘッド速度=1mm/分;23℃)に従って、EN ISO 1873−2に記載されている射出成形試験片(ドッグボーン形状、厚さ4mm)を使用して測定する。
【0240】
降伏点伸びを、ISO 527−3(クロスヘッド速度=50mm/分;23℃)に従って、EN ISO 1873−2に記載されている射出成形試験片(ドッグボーン形状、厚さ4mm)を使用して測定する。
【0241】
引張強度を、ISO 527−2(クロスヘッド速度=50mm/分;23℃)に従って、EN ISO1873−2に記載されている射出成形試験片(ドッグボーン形状、厚さ4mm)を用いて測定する。
【0242】
破断点伸びを、ISO 527−4(クロスヘッド速度=50mm/分;23℃)に従って、EN ISO 1873−2に記載されている射出成形試験片(ドッグボーン形状、厚さ4mm)を使用して測定する。
【0243】
平均繊維径および平均繊維長を、光学顕微鏡を用いることによって測定した。試料を、Struers CaldoFix樹脂中に真空下で包埋した。
摩耗/研磨を、Struers LaboPol−5機器上で、0.04μmまでの粒子サイズを有する粉砕媒体を用いて行った。このようにして製造した試料を、Olympus光学顕微鏡を用いて明視野モードにおいて分析した。マトリックス中の繊維の繊維断面の寸法を測定して、平均の繊維直径を得た(典型的には約30本の個々の繊維を測定し、繊維断面の最短寸法を使用して、繊維直径を得た)。対照的に、平均繊維長を、約30本の個々の繊維に関して測定し、繊維断面の最長寸法を用いて、繊維長を得た。
【0244】
セルロースベースの繊維(CF)、例えば木粉繊維の粒度および粒度分布を、自動乾燥粉末分散ユニットを備えたHoriba Partica LA 950 V2(Horiba Co.、日本国)レーザー回折粒度分析器によって決定した。3回の並行測定を実施し、得られた結果をそれらの平均とした。体積モーメント平均(D[4.3])を計算し、セルロースベースの繊維(CF)、例えば木粉繊維の平均粒度として用いた。
【0245】
セルロースベースの繊維(CF)、例えば木粉繊維のアスペクト比を、走査電子顕微鏡(SEM)の補助で決定した。SEM顕微鏡写真を、Jeol JSM 6380 LA装置によって撮影した。SEM顕微鏡写真上の粒子を、画像分析ソフトウェア(Image Pro Plus)の補助で測定し、粒子の長さおよび直径を、個別に手作業で測定した。少なくとも500個の粒子を、評価の標準偏差を低下させるために数枚の顕微鏡写真上で分析し、そのアスペクト比を計算した。
【0246】
熱たわみ温度Bを、ISO75−2に従って0.45MPaで決定する。
【0247】
2.例
HECOの製造
触媒
最初に、0.1molのMgCl×3EtOHを、不活性条件下で250mlのデカン中に、反応器中で大気圧で懸濁させた。溶液を、−15℃の温度に冷却し、300mlの低温TiClを、温度を上記レベルに維持しながら添加した。次に、スラリーの温度を、20℃までゆっくりと上昇させた。この温度で、0.02molのフタル酸ジオクチル(DOP)を、スラリーに添加した。フタレートの添加後、温度を、90分間135℃に上昇させ、スラリーを、60分間放置した。次いで、さらに300mlのTiClを添加し、温度を135℃で120分間保持した。この後、触媒を液体から濾過し、300mlのヘプタンで80℃で6回洗浄した。次いで、固体触媒成分を濾過し、乾燥した。触媒およびその製造概念は、例えば特許公報EP491566、EP591224およびEP586390に一般的に記載されている。
【0248】
触媒を、さらに変性させた(触媒のVCH変性)。
【0249】
35mlの鉱油(Paraffinum Liquidum PL68)を、125mlのステンレス鋼反応器に添加し、続いて0.82gのトリエチルアルミニウム(TEAL)および0.33gのジシクロペンチルジメトキシシラン(供与体D)を、不活性条件下で室温で添加した。10分後、5.0gの上記で製造した触媒(Ti含有量1,4重量%)を添加し、さらに20分後、5.0gのビニルシクロヘキサン(VCH)を添加した。温度を30分間60℃に上昇させ、20時間保持した。最後に、温度を20℃に低下させ、油/触媒混合物中の未反応VCHの濃度を分析し、200ppm重量であると見出された。
【0250】
表1:HECOの重合
【表1】
【0251】
個々の反応器から得られる生成物の特性を、当然、均質化した材料に関してではなく、反応器試料(スポット試料)に関して測定する。最終的な樹脂の特性を、均質化した材料に関して測定し、MFRを、以下に記載する押出混合プロセスにおいてそれから製造したペレットに関して測定する。
【0252】
HECOを、二軸押出機中で、BASF AGによって供給される0.1重量%のペンタエリトリチル−テトラキス(3−(3’,5’−ジ−tert.ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート(CAS番号6683−19−8、商品名Irganox 1010)、BASF AGによって供給される0.1重量%のトリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスフェート(CAS番号31570−04−4、商品名Irgafos 168)、およびCroda Polymer Additivesによって供給される0.05重量%のステアリン酸カルシウム(CAS番号1592−23−0)と混合した。
【0253】
表2:HECOの特性
【表2】
AM 非晶質画分
C2 エチレン含有量
MFRは、MFR(230℃;2.16kg)である。
【0254】
表3:例
【表3】
【0255】
「hPP」は、Borealisによって提供される、核形成および帯電防止添加剤を含有する商業的なポリプロピレンホモポリマー「HJ325MO」(CAS−No:9003−070)である。このポリマーは、狭い分子量分布、905kg/mの密度(ISO 1183)および50g/10分のMFR(230℃;2.16kg;ISO 1133);2.2重量%のXCSおよび164℃の溶融温度、および2.0kJ/mの23℃でのシャルピー切り欠き衝撃強度を有するCR(制御されたレオロジー)等級である。
「CF」は、467μmの体積モーメント平均(D[4.3])直径および4のアスペクト比を有する、Rettenmaier und Soehneの商業的なセルロース製品Arbocel C320である。
「PF」は、商業的な短PVA繊維Mewlon 2000T−750F HM1(高い係数)であり、平均繊維長4mm、1N/texの引張強さ、21.5N/texのヤング率、240℃の溶融温度Tmであり、PPのための特定の表面処理を伴い、ユニチカ、日本国によって供給される。
「AP」は、80g/10分を超えるMFR(190℃)および1.4重量%の無水マレイン酸含有量を有する、BYK Co.Ltd.、ドイツ国のエチレンポリプロピレンコポリマー(無水マレイン酸で官能化した)「TPPP8112FA」である。
「NIS」は、切り欠き衝撃強度である。
「UNIS」は、切り欠きなし衝撃強度である。
「HDF」は、熱たわみ温度Bである。
【0256】
配合のために、ECON EUP50水中ペレタイザー(UP)と連結した平行な同時回転二軸押出機Brabender DSE20を、使用した。DSE20は、20mmのスクリュー直径(d)および800mmの長さを有する。
【0257】
ポリプロピレン基材、すなわちhPPおよびHECOの両方について、+23℃および−20℃での切り欠き衝撃強度は、少量のみのPF繊維、すなわちPVA繊維を添加した場合でさえも有意に改善される。当該改善は、接着促進剤(AP)を含まない複合材料において尚より顕著である。全体的な最終的な機械的特性は、引張強さが接着促進剤(AP)の存在下で有意に増加するので、接着促進剤(AP)を含む複合材料についてより均衡する。さらに、降伏点引張伸びおよび破断点引張伸びは、これらのハイブリッド複合材料のより延性のある材料挙動を示すすべての本発明の実施例について同様に改善される。引張係数は、5重量%のPVA繊維を複合材料に添加した際に約300MPa増加した。