特許第6682021号(P6682021)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6682021道路陥没危険度評価装置および道路陥没危険度評価方法、ならびに道路陥没危険度評価用コンピュータプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6682021
(24)【登録日】2020年3月26日
(45)【発行日】2020年4月15日
(54)【発明の名称】道路陥没危険度評価装置および道路陥没危険度評価方法、ならびに道路陥没危険度評価用コンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
   E01C 23/01 20060101AFI20200406BHJP
   G08B 31/00 20060101ALI20200406BHJP
   G01V 3/12 20060101ALI20200406BHJP
【FI】
   E01C23/01
   G08B31/00 Z
   G01V3/12 Z
【請求項の数】10
【全頁数】34
(21)【出願番号】特願2018-567359(P2018-567359)
(86)(22)【出願日】2018年1月25日
(86)【国際出願番号】JP2018002316
(87)【国際公開番号】WO2018147086
(87)【国際公開日】20180816
【審査請求日】2019年5月9日
(31)【優先権主張番号】特願2017-21003(P2017-21003)
(32)【優先日】2017年2月8日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】397028016
【氏名又は名称】株式会社日水コン
(74)【代理人】
【識別番号】110002697
【氏名又は名称】めぶき国際特許業務法人
(74)【代理人】
【識別番号】100110973
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 洋
(72)【発明者】
【氏名】清水 康生
(72)【発明者】
【氏名】野村 恭悟
【審査官】 神尾 寧
(56)【参考文献】
【文献】 特開2017−2537(JP,A)
【文献】 特開2016−151954(JP,A)
【文献】 特開2009−295051(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0123969(US,A1)
【文献】 特開2011−32853(JP,A)
【文献】 特開2013−231698(JP,A)
【文献】 特開2014−98597(JP,A)
【文献】 特開平5−87945(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01C 23/01
G01V 3/12
G08B 31/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
道路陥没の危険度を評価するための道路陥没危険度評価装置であって、
道路陥没の危険度を判定するための式であって道路陥没の要因と前記危険度との関数式としての特定判定式を決定するために必要なデータであって、前記特定判定式作成用にサンプリングされた複数のサンプリング地点における道路陥没の要因を定量化した判定式用要因データを受け付ける判定式用要因データ受付手段と、
前記特定判定式の元になる下記の式(A)に示す一般判定式{Yは道路の陥没の有無を示す外的基準を、X1〜Xn:Xiは道路陥没の要因となる説明変数を、A1〜AnはそれぞれX1〜Xnに乗じる係数を、nはi番目の説明変数Xiの数であって1以上の整数を、xijはXiのj番目のカテゴリー変数を、aijはxijのカテゴリー係数を、miはXiのカテゴリー数を、それぞれ示す。}を記憶する一般判定式記憶手段と、
前記一般判定式記憶手段から読み出された前記一般判定式に、前記カテゴリー変数により構成される前記判定式用要因データを代入する第一代入手段と、
前記判定式用要因データを前記一般判定式に代入して数量化理論II類分析により2群の群間変動を全変動に対して相対的に最大にするように演算を実行して、前記カテゴリー係数(aij)を特定した前記特定判定式を決定する特定判定式決定手段と、
前記特定判定式を記憶する特定判定式記憶手段と、
評価対象となる複数の評価対象地点における道路陥没の要因を定量化した危険度用要因データを受け付ける危険度用要因データ受付手段と、
前記特定判定式記憶手段から読み出された前記特定判定式に、前記評価対象地点において前記カテゴリー変数により構成される前記危険度用要因データを代入する第二代入手段と、
前記第二代入手段の処理に基づき演算を行い、各評価対象地点における陥没の危険度を数値化した判定値を決定する判定値決定手段と、
を含む道路陥没危険度評価装置。
【数1】
【請求項2】
前記特定判定式によって算出される前記判定値を所定範囲に分類し、実際の陥没の有無に基づいて陥没発生の閾値を決定する閾値決定手段を、さらに含む請求項1に記載の道路陥没危険度評価装置。
【請求項3】
前記各評価対象地点を含むマップの情報を記憶するマップ情報記憶手段と、
前記マップ情報記憶手段から読み出された前記マップ上において、前記各評価対象地点における陥没の危険度を示す前記判定値に基づき色別若しくは濃淡別の表示を行うマップ表示手段と、
をさらに含む請求項1または請求項2に記載の道路陥没危険度評価装置。
【請求項4】
前記道路陥没の要因は、
地下の空洞の存在、埋戻し土の種類、地下水の状況、管路布設経過年数、管路上の土被り厚、管路の部位、管種、管路の破損状況、交通振動、夏期気温および活断層ハザードの内の2以上である請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の道路陥没危険度評価装置。
【請求項5】
道路陥没の危険度を評価するための装置を用いて道路陥没の危険度を評価する方法であって、
道路陥没の危険度を判定するための式であって道路陥没の要因と前記危険度との関数式としての特定判定式を決定するために必要なデータであって、前記特定判定式作成用にサンプリングされた複数のサンプリング地点における道路陥没の要因を定量化した判定式用要因データを受け付ける判定式用要因データ受付ステップと、
前記特定判定式の元になる下記の式(A)に示す一般判定式{Yは道路の陥没の有無を示す外的基準を、X1〜Xn:Xiは道路陥没の要因となる説明変数を、A1〜AnはそれぞれX1〜Xnに乗じる係数を、nはi番目の説明変数Xiの数であって1以上の整数を、xijはXiのj番目のカテゴリー変数を、aijはxijのカテゴリー係数を、miはXiのカテゴリー数を、それぞれ示す。}を記憶する一般判定式記憶手段から読み出された前記一般判定式に、前記カテゴリー変数により構成される前記判定式用要因データを代入する第一代入ステップと、
前記判定式用要因データを前記一般判定式に代入して数量化理論II類分析により2群の群間変動を全変動に対して相対的に最大にするように演算を実行して、前記カテゴリー係数(aij)を特定した前記特定判定式を決定する特定判定式決定ステップと、
評価対象となる複数の評価対象地点における道路陥没の要因を定量化した危険度用要因データを受け付ける危険度用要因データ受付ステップと、
前記特定判定式を記憶する特定判定式記憶手段から読み出された前記特定判定式に、前記評価対象地点において前記カテゴリー変数により構成される前記危険度用要因データを代入する第二代入ステップと、
前記第二代入ステップの処理に基づき演算を行い、各評価対象地点における陥没の危険度を数値化した判定値を決定する判定値決定ステップと、
を含む道路陥没危険度評価方法。
【数2】
【請求項6】
前記特定判定式によって算出される前記判定値を所定範囲に分類し、実際の陥没の有無に基づいて陥没発生の閾値を決定する閾値決定ステップを、さらに含む請求項5に記載の道路陥没危険度評価方法。
【請求項7】
前記各評価対象地点を含むマップの情報を記憶するマップ情報記憶手段から読み出された前記マップ上において、前記各評価対象地点における陥没の危険度を示す前記判定値に基づき色別若しくは濃淡別の表示を行うマップ表示ステップを、さらに含む請求項5または請求項6に記載の道路陥没危険度評価方法。
【請求項8】
コンピュータにインストールされて、該コンピュータを、道路陥没の危険度を評価するための道路陥没危険度評価装置として機能させるコンピュータプログラムであって、
該コンピュータを、
道路陥没の危険度を判定するための式であって道路陥没の要因と前記危険度との関数式としての特定判定式を決定するために必要なデータであって、前記特定判定式作成用にサンプリングされた複数のサンプリング地点における道路陥没の要因を定量化した判定式用要因データを受け付ける判定式用要因データ受付手段、
前記特定判定式の元になる下記の式(A)に示す一般判定式{Yは道路の陥没の有無を示す外的基準を、X1〜Xn:Xiは道路陥没の要因となる説明変数を、A1〜AnはそれぞれX1〜Xnに乗じる係数を、nはi番目の説明変数Xiの数であって1以上の整数を、xijはXiのj番目のカテゴリー変数を、aijはxijのカテゴリー係数を、miはXiのカテゴリー数を、それぞれ示す。}を記憶する一般判定式記憶手段から読み出された前記一般判定式に、前記カテゴリー変数により構成される前記判定式用要因データを代入する第一代入手段、
前記判定式用要因データを前記一般判定式に代入して数量化理論II類分析により2群の群間変動を全変動に対して相対的に最大にするように演算を実行して、前記カテゴリー係数(aij)を特定した前記特定判定式を決定する特定判定式決定手段、
評価対象となる複数の評価対象地点における道路陥没の要因を定量化した危険度用要因データを受け付ける危険度用要因データ受付手段、
前記特定判定式を記憶する特定判定式記憶手段から読み出された前記特定判定式に、前記評価対象地点において前記カテゴリー変数により構成される前記危険度用要因データを代入する第二代入手段、および
前記第二代入手段の処理に基づき演算を行い、各評価対象地点における陥没の危険度を数値化した判定値を決定する判定値決定手段として機能させる道路陥没危険度評価用コンピュータプログラム。
【数3】
【請求項9】
前記コンピュータを、
前記特定判定式によって算出される前記判定値を所定範囲に分類し、実際の陥没の有無に基づいて陥没発生の閾値を決定する閾値決定手段としてさらに機能させる請求項8に記載の道路陥没危険度評価用コンピュータプログラム。
【請求項10】
前記コンピュータを、
前記各評価対象地点を含むマップの情報を記憶するマップ情報記憶手段から読み出された前記マップ上において、前記各評価対象地点における陥没の危険度を示す前記判定値に基づき色別若しくは濃淡別の表示を行うマップ表示手段として、さらに機能させる請求項8または請求項9に記載の道路陥没危険度評価用コンピュータプログラム。

【発明の詳細な説明】
【クロスリファレンス】
【0001】
本出願は、2017年2月8日に日本国において出願された特願2017−021003に基づき優先権を主張し、当該出願に記載された内容は、本明細書に援用する。また、本願において引用した特許、特許出願及び文献に記載された内容は、本明細書に援用する。
【技術分野】
【0002】
本発明は、道路陥没の危険度を評価する道路陥没危険度評価装置および道路陥没危険度評価方法、ならびにコンピュータにインストールされて道路陥没の危険度を評価する道路陥没危険度評価用コンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0003】
日本において、地方自治体の職員数は、人口減少や高齢化に加え、自治体財政の緊縮により減少を続けている。職員の減少については、道路や上下水道などのインフラの維持管理部署においても将来的な備えが必要である。日本の道路陥没は、大小を問わず、平均して毎年4000件を超える頻度で発生している。道路陥没が交通、電気・ガス等のライフラインを含めた経済全体に与える影響は、地方よりも都市部にて大きい。道路陥没を未然に防ぎ道路を保全するには、道路地盤情報(特に地下の空洞の存在)の早期取得が必要である。
【0004】
空洞の発生原因には、下水道管渠に起因するもの、例えば下水道管のズレや接合不良が、全体の約4割を占める。このような下水道管の不良は、交通量の増大や地震動に代表される外力の他、管の老朽化や施工不良等が原因で起こる。現在、政令都市においては、一般財団法人・道路管理センターの道路管理システムが一元管理する上下水道などの各種インフラ情報を相互に提供している。しかし、そのようなシステムでも、道路下インフラの状態を示す情報全てが盛り込まれているわけではない。さらに、日本の政令都市の中には、市内やその周辺域に多くの活断層がある。かかる活断層は、道路陥没の遠因となるハザードとも考えられる。先に説明したインフラ情報には、必ずしも前記ハザードの存在が盛り込まれているわけではない。
【0005】
ここで、国内外の道路陥没とその対応に目を向けると、韓国では、日本に比べて下水道管路を原因とする道路陥没の発生頻度が多いことが知られている。その対策の一つとして、ソウル市は、2015年に、東京都と道路陥没の技術協力に関する行政合意書を締結した。これをうけて、ソウル市は、地面透過レーダー(GPR)を用いた調査を行い、今後3年周期で主要な幹線道路の探査を実施することを決定した。現在、ソウル市では、空洞の調査および分析のためのプログラムを開発中にある。米国およびカナダでは、スモーク・テスティング(Smoke Testing)という方法にて下水道管の破損を探知している。この方法は、具体的には、マンホールを1つ定めた後、そのマンホールから無臭・無毒性の煙を下水道に入れ、そのマンホールと下水管を通って別のマンホールから煙を噴出させる方法である。このとき、煙の噴出しなかったマンホールにつながっている下水管の中に、破損等している下水管が存在すると判断される。
【0006】
日本では、スモーク・テスティングを適用すると、住居等密集市街地における稠密な管渠布設状況の下では道路上の観測が難しく、かつ道路下の管渠そのものの密度が高く配置されているため、正確な漏えい場所の特定は難しい。このため、日本では、GPRを適用する方が道路事情に符合している。日本では、近年、道路法等が改正され、国土交通省道路局は、道路の総点検実施要領を示し、その中でレーダーによる道路下の空洞調査を行うことを示している。レーダーを搭載した空洞探査車両は、国土交通省のマニュアルによれば、探査幅2.0m程度、探査深度1.5m程度、縦50cm×横50cm×厚さ10cm以上の空洞が検知できる探査能力を有する。このような車両を用いることにより、道路下の空洞の存在やその大きさを把握することが可能である。このような車両を使った空洞探査方法は特許文献1に例示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平05−087945号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、上記従来の空洞探査方法は、単に空洞の存在を把握する手段にすぎず、道路陥没の危険度を客観的かつ定量的に評価することは難しい。道路陥没を未然に防ぐとともに適切な対処をとるには、陥没発生の危険度を客観的かつ定量的に評価することが強く求められている。
【0009】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、道路陥没発生の危険度を客観的かつ定量的に評価することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(1)上記目的を達成するための一実施形態に係る道路陥没危険度評価装置は、道路陥没の危険度を評価するための道路陥没危険度評価装置であって、
道路陥没の危険度を判定するための式であって道路陥没の要因と前記危険度との関数式としての特定判定式を決定するために必要なデータであって、前記特定判定式作成用にサンプリングされた複数のサンプリング地点における道路陥没の要因を定量化した判定式用要因データを受け付ける判定式用要因データ受付手段と、
前記特定判定式の元になる下記の式(A)に示す一般判定式{Yは道路の陥没の有無を示す外的基準を、X1〜Xn:Xiは道路陥没の要因となる説明変数を、A1〜AnはそれぞれX1〜Xnに乗じる係数を、nはi番目の説明変数Xiの数であって1以上の整数を、xijはXiのj番目のカテゴリー変数を、aijはxijのカテゴリー係数を、miはXiのカテゴリー数を、それぞれ示す。}を記憶する一般判定式記憶手段と、
前記一般判定式記憶手段から読み出された前記一般判定式に、前記カテゴリー変数により構成される前記判定式用要因データを代入する第一代入手段と、
前記判定式用要因データを前記一般判定式に代入して数量化理論II類分析により2群の群間変動を全変動に対して相対的に最大にするように演算を実行して、前記カテゴリー係数(aij)を特定した前記特定判定式を決定する特定判定式決定手段と、
前記特定判定式を記憶する特定判定式記憶手段と、
評価対象となる複数の評価対象地点における道路陥没の要因を定量化した危険度用要因データを受け付ける危険度用要因データ受付手段と、
前記特定判定式記憶手段から読み出された前記特定判定式に、前記評価対象地点において前記カテゴリー変数により構成される前記危険度用要因データを代入する第二代入手段と、
前記第二代入手段の処理に基づき演算を行い、各評価対象地点における陥没の危険度を数値化した判定値を決定する判定値決定手段と、
を含む。
【0011】
【数1】
【0012】
(2)別の実施形態に係る道路陥没危険度評価装置は、好ましくは、前記特定判定式によって算出される前記判定値を所定範囲に分類し、実際の陥没の有無に基づいて陥没発生の閾値を決定する閾値決定手段を、さらに含む。
【0013】
(3)別の実施形態に係る道路陥没危険度評価装置は、好ましくは、前記各評価対象地点を含むマップの情報を記憶するマップ情報記憶手段と、
前記マップ情報記憶手段から読み出された前記マップ上において、前記各評価対象地点における陥没の危険度を示す前記判定値に基づき色別若しくは濃淡別の表示を行うマップ表示手段と、
をさらに含む。
【0014】
(4)別の実施形態に係る道路陥没危険度評価装置では、好ましくは、前記道路陥没の要因は、地下の空洞の存在、埋戻し土の種類、地下水の状況、管路布設経過年数、管路上の土被り厚、管路の部位、管種、管路の破損状況、交通振動、夏期気温および活断層ハザードの内の2以上である。
【0015】
(5)一実施形態に係る道路陥没危険度評価方法は、道路陥没の危険度を評価するための装置を用いて道路陥没の危険度を評価する方法であって、
道路陥没の危険度を判定するための式であって道路陥没の要因と前記危険度との関数式としての特定判定式を決定するために必要なデータであって、前記特定判定式作成用にサンプリングされた複数のサンプリング地点における道路陥没の要因を定量化した判定式用要因データを受け付ける判定式用要因データ受付ステップと、
前記特定判定式の元になる下記の式(A)に示す一般判定式{Yは道路の陥没の有無を示す外的基準を、X1〜Xn:Xiは道路陥没の要因となる説明変数を、A1〜AnはそれぞれX1〜Xnに乗じる係数を、nはi番目の説明変数Xiの数であって1以上の整数を、xijはXiのj番目のカテゴリー変数を、aijはxijのカテゴリー係数を、miはXiのカテゴリー数を、それぞれ示す。}を記憶する一般判定式記憶手段から読み出された前記一般判定式に、前記カテゴリー変数により構成される前記判定式用要因データを代入する第一代入ステップと、
前記判定式用要因データを前記一般判定式に代入して数量化理論II類分析により2群の群間変動を全変動に対して相対的に最大にするように演算を実行して、前記カテゴリー係数(aij)を特定した前記特定判定式を決定する特定判定式決定ステップと、
評価対象となる複数の評価対象地点における道路陥没の要因を定量化した危険度用要因データを受け付ける危険度用要因データ受付ステップと、
前記特定判定式を記憶する特定判定式記憶手段から読み出された前記特定判定式に、前記評価対象地点において前記カテゴリー変数により構成される前記危険度用要因データを代入する第二代入ステップと、
前記第二代入ステップの処理に基づき演算を行い、各評価対象地点における陥没の危険度を数値化した判定値を決定する判定値決定ステップと、
を含む。
【0016】
【数2】
【0017】
(6)別の実施形態に係る道路陥没危険度評価方法は、好ましくは、前記特定判定式によって算出される前記判定値を所定範囲に分類し、実際の陥没の有無に基づいて陥没発生の閾値を決定する閾値決定ステップを、さらに含む。
【0018】
(7)別の実施形態に係る道路陥没危険度評価方法は、好ましくは、前記各評価対象地点を含むマップの情報を記憶するマップ情報記憶手段から読み出された前記マップ上において、前記各評価対象地点における陥没の危険度を示す前記判定値に基づき色別若しくは濃淡別の表示を行うマップ表示ステップを、さらに含む。
【0019】
(8)一実施形態に係る道路陥没危険度評価用コンピュータプログラムは、コンピュータにインストールされて、該コンピュータを、道路陥没の危険度を評価するための道路陥没危険度評価装置として機能させるコンピュータプログラムであって、
該コンピュータを、
道路陥没の危険度を判定するための式であって道路陥没の要因と前記危険度との関数式としての特定判定式を決定するために必要なデータであって、前記特定判定式作成用にサンプリングされた複数のサンプリング地点における道路陥没の要因を定量化した判定式用要因データを受け付ける判定式用要因データ受付手段、
前記特定判定式の元になる下記の式(A)に示す一般判定式{Yは道路の陥没の有無を示す外的基準を、X1〜Xn:Xiは道路陥没の要因となる説明変数を、A1〜AnはそれぞれX1〜Xnに乗じる係数を、nはi番目の説明変数Xiの数であって1以上の整数を、xijはXiのj番目のカテゴリー変数を、aijはxijのカテゴリー係数を、miはXiのカテゴリー数を、それぞれ示す。}を記憶する一般判定式記憶手段から読み出された前記一般判定式に、前記カテゴリー変数により構成される前記判定式用要因データを代入する第一代入手段、
前記判定式用要因データを前記一般判定式に代入して数量化理論II類分析により2群の群間変動を全変動に対して相対的に最大にするように演算を実行して、前記カテゴリー係数(aij)を特定した前記特定判定式を決定する特定判定式決定手段、
評価対象となる複数の評価対象地点における道路陥没の要因を定量化した危険度用要因データを受け付ける危険度用要因データ受付手段、
前記特定判定式を記憶する特定判定式記憶手段から読み出された前記特定判定式に、前記評価対象地点において前記カテゴリー変数により構成される前記危険度用要因データを代入する第二代入手段、および
前記第二代入手段の処理に基づき演算を行い、各評価対象地点における陥没の危険度を数値化した判定値を決定する判定値決定手段として機能させる。
【0020】
【数3】
【0021】
(9)別の実施形態に係る道路陥没危険度評価用コンピュータプログラムは、好ましくは、前記コンピュータを、
前記特定判定式によって算出される前記判定値を所定範囲に分類し、実際の陥没の有無に基づいて陥没発生の閾値を決定する閾値決定手段としてさらに機能させる。
【0022】
(10)別の実施形態に係る道路陥没危険度評価用コンピュータプログラムは、好ましくは、前記コンピュータを、
前記各評価対象地点を含むマップの情報を記憶するマップ情報記憶手段から読み出された前記マップ上において、前記各評価対象地点における陥没の危険度を示す前記判定値に基づき色別若しくは濃淡別の表示を行うマップ表示手段として、さらに機能させる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、道路陥没発生の危険度を客観的かつ定量的に評価することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1図1は、本発明の実施形態における道路陥没危険度を求めるための概念図を示す。
図1A図1に基づき説明した判定式の一般式(一般判定式)を説明するための図を示す。
図1B図1Aに示す一般判定式の詳細を示す。
図1C】道路陥没予兆判定式の作成に用いる各種データの一例を示す。
図1D図1Cに示す例と異なる道路陥没予兆判定式の作成に用いる各種データの一例を示す。
図2図2は、図1Cおよび図1Dと異なる道路陥没予兆判定式の作成に用いる各種データの一例を示す。
図3図3は、本発明の実施形態に係る道路陥没危険度評価装置の機能別の構成を示す。
図4図4は、本発明の実施形態に係る道路陥没危険度評価方法の主要ステップのフローを示す。
図5図5は、判定式作成用の地点100箇所における外的基準Yおよび各種説明変数X1〜X5を数値化した表であって、1〜50番目の各地点のデータを示す。
図6図6は、判定式作成用の地点100箇所における外的基準Yおよび各種説明変数X1〜X5を数値化した表であって、51〜100番目の各地点のデータを示す。
図7図7は、一般判定式を説明するための図(7A)、数値化された要因データを説明するための図(7B)、特定判定式を説明するための図(7C)および閾値を説明するための図(7D,7E)をそれぞれ示す。
図8図8は、危険度を評価する対象となる評価対象地点30箇所における各種説明変数X1〜X5を数値化した表を示す。
図9図9は、評価対象地点を含むエリアのマップ(9A)および当該マップ上に各地点を含む単位ブロックを色分け若しくは濃淡分けで表示した危険度評価マップ(9B)をそれぞれ示す。
図10図10は、特定判定式を説明するための図(10A)、閾値を説明するための図(10B,10C)およびマップ上に各地点を含む単位ブロックを色分け若しくは濃淡分けで表示した危険度評価マップ(10D)をそれぞれ示す。
図11図11は、判定式作成用の地点100箇所における各種説明変数X6〜X11を数値化した表であって、1〜50番目の各地点のデータを示す。
図12図12は、判定式作成用の地点100箇所における各種説明変数X6〜X11を数値化した表であって、51〜100番目の各地点のデータを示す。
図13図13は、特定判定式を説明するための図(13A)、閾値を説明するための図(13B,13C)および道路陥没要因11個について(13A)の式3のレンジの大きさを比較した図(13D)をそれぞれ示す。
図14図14は、危険度を評価する対象となる評価対象地点30箇所における各種説明変数X6〜X11を数値化した表を示す。
図15図15は、マップ上に各地点を含む単位ブロックを色分け若しくは濃淡分けで表示した危険度評価マップを示す。
【符号の説明】
【0025】
1:道路陥没危険度評価装置(単に「装置」ともいう)
10:判定式用要因データ受付部(判定式用要因データ受付手段)
11:一般判定式記憶部(一般判定式記憶手段)
13:第一代入部(第一代入手段)
14:特定判定式決定部(特定判定式決定手段)
15:閾値決定部(閾値決定手段)
16:特定判定式記憶部(特定判定式記憶手段)
18:危険度用要因データ受付部(危険度用要因データ受付手段)
19:第二代入部(第二代入手段)
20:判定値決定部(判定値決定手段)
21:マップ情報記憶部(マップ情報記憶手段)
23:マップ表示部(マップ表示手段)
【発明を実施するための形態】
【0026】
次に、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。なお、以下に説明する実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではなく、また実施形態の中で説明されている諸要素及びその組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0027】
<第一実施形態>
まず、本発明の第一実施形態に係る道路陥没危険度評価装置および道路陥没危険度評価方法ならびに道路陥没危険度評価用コンピュータプログラムについて説明する。
【0028】
<1.道路陥没危険度評価の概念>
図1は、本発明の実施形態における道路陥没危険度を求めるための概念図を示す。
【0029】
(1)ペリルデータおよび各種ハザードデータ
この実施形態において、道路陥没危険度を求めるには、例えば、ペリルデータ、ハザードデータ、現地調査工ハザードデータおよび拠点MH管理ハザードデータに代表される各種データが必要である。これらのデータは、いずれも道路陥没の要因となる。ペリルデータとは、危険をもたらす原因となるデータを意味する。この実施形態におけるペリルデータは、道路陥没に対する予防保全を道路管理者と下水道管理者が連携して収集される。ペリルデータとしては、具体的には、陥没履歴、道路改良履歴、空洞調査履歴(経過観察、原因調査、補修など)を例示できる。
【0030】
ハザードデータとは、道路陥没を危険事象と考えたときの危険事情(危険要因)を意味する。ハザードデータとしては、下水道管の属性として、管種・口径・経年値・劣化破損・工事履歴等が例示できる。水道管路も同様である。これらのデータは、台帳から入手可能である。道路陥没を惹起するハザードには、ガス管などの他のインフラもあり、前記各種データが必要となる。さらに、各種埋設物の埋戻し材料、地下水位の状況、交通量、路面温度もハザードデータに含まれ得る。
【0031】
現地調査工ハザードデータ(現地調査工道路調査ハザードデータともいう)とは、道路に関する調査データであり、道路陥没の危険事情をいう。このデータは、MMS(Mobile Mapping System)による路面情報と、その位置情報とを要する。このデータは、例えば、調査車両が時速40km以上の走行速度で測量を行って得られる。データ収集にあたり、交通規制は必要とされない。調査車両を用いると、搭載されるレーザスキャナーとカメラによる三次元地形モデルの計測が可能である。こうして得られるMMS情報によって、道路上の陥没状況がわかる。さらに、調査車両は、GPR(Ground Penetrating Rader)を搭載可能である。GPRは、調査車両にて測定したデータから異常信号(空洞や緩み等の信号の他、埋設管等の情報も含まれる)を抽出し、それらの中から空洞の特徴をもつ異常信号を特定する。当該異常信号は、調査車両が時速40km程度の走行速度で測量を行って得られる。データ収集にあたり、交通規制は必要とされない。探査精度としては、探査深度1.5m程度、縦50cm×横50cm×厚さ10cm以上の空洞を探査可能とするものである。なお、さらに高精度な手法を採用すれば、探査深度1.5mまでのデータから3.0m程度までの土層の空洞発生状況を推定することも可能である。
【0032】
拠点MH管理ハザードデータとは、管路内外のリアルタイムの環境に関わるデータであって道路陥没の危険事情をいう。例えば、下水道管路は、硫化水素に起因するコンクリート等の腐食によって劣化しやすい。このため、硫化水素濃度等の点検・調査は極めて重要である。また、管路内の劣化の進行した下水道管路では、道路荷重による破損も発生しやすい。このような点から、下水道管路内の硫化水素等のリアルタイムな情報が道路陥没のハザードデータとなり得る。その他に、下水道管路内の水温、水質、水位もこの種のハザードデータとなり得る。
【0033】
(2)データの座標値化
上記のペリルデータおよび各種ハザードデータは、台帳から、あるいは調査によって入手され、座標値化に供される。MMSおよびGPRを搭載した探査車両は、GPS(Global Positioning System)により走行位置を常時記録できる。このため、地下の空洞位置の座標値化が可能である。また、道路、各種地下埋設物は、台帳においてあるいは台帳から抽出後に座標値化できる。このように、上記ペリルデータおよび各種ハザードデータを座標値化することにより、資料調査、現地調査を併せて、道路陥没危険度の効率的な管理が可能である。また、道路陥没予兆判定式(単に、予兆判定式ともいう)に基づく陥没危険度の算定の自動化が可能である。このような座標値化については、後ほど詳述する。
【0034】
(3)道路陥没予兆判定式の作成
道路陥没予兆判定式の作成とは、当該判定式の一般式に、上記座標値化された情報を入力し、数量化II類を適用することによって道路陥没予兆判定式を決定することをいう。この作業では、推定する目的変数をペリルデータ(F)として道路陥没の状況のレベルを2〜3段階程度で表し、そのハザードデータ(Xi)に関する情報として各種ハザードデータを考える。すなわち、この工程は、定性的に与えられるXiデータから、想定される陥没状況レベルを出力するものである。
【0035】
(4)単位ブロック別道路陥没危険度の数値化
当該数値化は、調査対象となる領域を複数ブロックに分け、各ブロック内の地点の座標値を先に求められた判定式に代入して、各ブロックの単位で危険度の数値化を図るものである。この結果、道路を有する調査対象領域内において、道路を単位ブロックに分けたときに、各ブロックがどの程度道路陥没の危険度を有するかを定量的かつ客観的に把握できる。
【0036】
以上のように、上記の道路陥没予兆判定式の作成は、判定式作成用の複数地点のペリルデータ及びハザードデータを使って判定式を特定する作業である。これに対して、単位ブロック別道路陥没危険度の数値化は、陥没危険度を求める対象地点(上記判定式作成用の地点と一部重複していても良い)のペリルデータや各種ハザードデータを上記の特定された判定式に代入して、陥没危険度を数値で表す作業である。
【0037】
図1Aおよび図1Bは、図1に基づき説明した判定式の一般式(一般判定式)を説明するための図を示す。図1Cおよび図1Dは、道路陥没予兆判定式の作成に用いる各種データの一例を示す。図2は、図1Cおよび図1Dと異なるデータであって、道路陥没予兆判定式の作成に用いる各種データの一例を示す。
【0038】
図1A〜1Dおよび図2に示す情報は、大きく、外的基準と、説明変数とに分けられる。外的基準とは、最も典型的な例では、道路陥没の有無であり、陥没という現象が生じているか否かという結果を意味する。また、外的基準は、道路陥没の有無のみならず、道路陥没の危険性のある各段階の状況をも含み得る。図1Aでは、外的基準(Y)が道路陥没の有無という2種類のみの場合には、k=2となり、YはB1とB2の2通りとなる。ここでは、B1は道路陥没なしを、B2は道路陥没ありを、それぞれ意味する。一方、外的基準(Y)が道路陥没の有無に加えて、「陥没兆候あり」というもう一つの状況を含む場合には、k=3となり、YはB1、B2およびB3の3通りとなる。B3は道路陥没の兆候ありを意味する。説明変数(X)とは、道路陥没の原因として想定される状況の調査結果を意味する。説明変数(X)は、道路陥没の原因と考えられる要因であって、Y=f(Xi)においては、好ましくは、少なくとも2つ(X1およびX2)を含む。ただし、Xの数は、1以上であれば制約は無い。Xは、X1、X2、X3、・・・、Xn(nはi番目の説明変数Xiの数であって1以上の整数)で表すことができ、X1、X2、X3などを一般化して、「Xi」と称することができる。外的基準(Y)と説明変数(X)の関係式は、図1Aに示す式、より詳しくは図1Bに示す式となる。これらの式において、Aは、説明変数Xiに乗じる係数である。X1に乗じる係数はA1、X2に乗じる係数はA2、Xnに乗じる係数はAnでそれぞれ表される。A1、A2、A3などを一般化して、「Ai」と称することができる。
【0039】
Y=f(Xi)という式は、下記式(A)のように示すことができる。式(A)において、xijはXiのj番目のカテゴリー変数を、aijはxijのカテゴリー係数を、miはXiのカテゴリー数を、それぞれ示す。式(A)において、カテゴリー係数aij同士の間に存在するカンマ(,)は、表記上、無くても良い。
【0040】
【数4】
【0041】
カテゴリー変数(xij)は、説明変数Xiを構成する変数であるが、Xiの種類によって種々の数を採り得る。例えば、図1Cに示す例では、X1は、x11、x12、x13という3つのカテゴリー変数を有する。X2は、x21、x22という2つのカテゴリー変数を有する。X3は、x31、x32、x33という3つのカテゴリー変数を有する。X4は、x41、x42、x43という3つのカテゴリー変数を有する。しかし、図1Dに示す例では、図1Cと一部異なり、例えば、X4はx41、x42、x43、x44という4つのカテゴリー変数を有する。このように、カテゴリー変数の個数は、説明変数に応じて種々変更できる。説明変数Xiを構成する各カテゴリー変数xijは、すべてゼロ、若しくは1個のみが1で他がゼロである。これについては、後ほど、詳述する。カテゴリー変数を複数に区分けする基準、およびカテゴリー変数の個数についても種々変更できる。この実施形態では、図1C図1Dおよび図2という3種類の説明変数を例示している。
【0042】
ここでは、道路陥没の要因の一例(すなわち、説明変数の一例)として、空洞の存在(X1とする)、埋戻し土(X2とする)、地下水の状況(X3とする)、経過年数(X4とする)、土被り厚(X5とする)、管路の部位(X6とする)、管種(X7とする)、下水管破損状況(X8とする)、交通振動(X9とする)、夏期気温(X10とする)および活断層ハザード(X11とする)を挙げることとする。以後に登場するX1〜X11については、上記各説明変数を意味する。
【0043】
図2に示すように、空洞の存在という説明変数(X1)は、空洞が無い場合、土被り1/2未満の位置に空洞がある場合、および土被り1/2以上の位置に空洞がある場合の3種類に分けられる。土被り1/2未満の位置とは、下水管等の管の上を覆っている土砂の厚さの1/2よりも下の位置である。土被り1/2以上の位置とは、下水管等の管の上を覆っている土砂の厚さの1/2またはそれよりも浅い位置である。埋戻し土という説明変数(X2)は、当該土の種類が砂礫土である場合と、当該土の種類が砂質土である場合の2種類に分けられる。地下水の状況という説明変数(X3)は、地下水が無い場合、地下水がある場合、および地下水があって変動もある場合の3種類に分けられる。地下水がある場合、地下水の変動がある場合と無い場合に分けられる。地下水の変動のある場合の方が陥没の危険性がより高い。よって、地下水がある場合を、地下水の変動の有無という観点で、地下水がある場合を2つに分けている。経過年数(管路設置からの経過年数)という説明変数(X4)は、20年未満経過、20年以上40年未満経過、および40年以上経過の3種類に分けられる。土被り厚という説明変数(X5)は、2m以上、1m以上2m未満、および1m未満の3種類に分けられる。管路の部位という説明変数(X6)は、取付管の場合、本管の場合、およびその他の3種類に分けられる。管種という説明変数(X7)は、陶管、鉄筋コンクリート、およびその他の3種類に分けられる。下水管破損状況という説明変数(X8)は、破損していない場合と、破損している場合の2種類に分けられる。交通振動という説明変数(X9)は、所定基準に対して多い場合と、少ない場合の2種類に分けられる。夏期気温という説明変数(X10)は、所定気温(例えば、月平均気温25〜35℃の範囲内の気温に設定可能)より高い場合と、低い場合の2種類に分けられる。活断層ハザードという説明変数(X11)は、活断層がある場合と、無い場合の2種類に分けられる。なお、上記各説明変数を構成する変数をカテゴリー変数と称することができる。カテゴリー変数は、上記の例示では、各説明変数において2つあるいは3つであるが、4つ以上でも良い。また、各説明変数中のカテゴリー変数の数は、上記の例示に限定されない。例えば、X1には3種のカテゴリー変数があるが、2つのみ、あるいは4つ以上としても良い。他の説明変数についても同様である。ただし、判定式作成用の説明変数と、危険度評価用の説明変数とは、その種類および各カテゴリー変数の基準・個数等も一致する必要がある。
【0044】
<2.道路陥没危険度評価装置および道路陥没危険度評価方法>
図3は、本発明の実施形態に係る道路陥没危険度評価装置の機能別の構成を示す。
【0045】
この実施形態に係る道路陥没危険度評価装置1は、道路陥没の危険度を評価するための装置である。道路陥没危険度評価装置(以後、単に「装置」ともいう)1は、判定式用要因データ受付部10、一般判定式記憶部11、一般判定式読出部12、第一代入部13、特定判定式決定部14、閾値決定部15、特定判定式記憶部16、特定判定式読出部17、危険度用要因データ受付部18、第二代入部19、判定値決定部20、マップ情報記憶部21、マップ情報読出部22およびマップ表示部23を備える。
【0046】
判定式用要因データ受付部10、一般判定式読出部12、第一代入部13、特定判定式決定部14、閾値決定部15、特定判定式読出部17、危険度用要因データ受付部18、第二代入部19、判定値決定部20、マップ情報読出部22およびマップ表示部23は、コンピュータ内の電子回路基板に搭載される中央処理装置(CPU)がコンピュータプログラム(道路陥没危険度評価用コンピュータプログラム)を実行することによって各処理を行う。一般判定式記憶部11、特定判定式記憶部16およびマップ情報記憶部21は、データを読み書き可能なRAMあるいはハードディスク等のメモリである。一般判定式記憶部11および/またはマップ情報記憶部21は、RAMやハードディスクに限定されず、例えば、一方的にデータを読み出しされるROMであっても良い。また、判定式用要因データ受付部10および/または危険度用要因データ受付部18は、装置1に有線または無線で接続される各種機器(サーバー、キーボード、ポインティングデバイス、タッチパネルなど)から各データを受け付けることが可能である。例えば、ユーザがキーボードから、後述の図7(7B)に示す数値を入力し、判定式用要因データ受付部10および/または危険度用要因データ受付部18がその入力された数値を受け付けても良い。このように、判定式用要因データ受付部10および/または危険度用要因データ受付部18は、図3にて不図示の入力機器、別のコンピュータあるいは通信機器と接続されていても良い。
【0047】
判定式用要因データ受付部10は、道路陥没の危険度を判定するための式であって道路陥没の要因と危険度との関数式としての特定判定式を決定するために必要なデータであって、特定判定式作成用にサンプリングされた複数のサンプリング地点における道路陥没の要因を定量化した判定式用要因データを受け付ける判定式用要因データ受付手段として機能する構成部である。ここで、道路陥没の要因としては、好ましくは、地下の空洞の存在、埋戻し土の種類、地下水の状況、管路布設経過年数、管路上の土被り厚、管路の部位、管種、管路の破損状況、交通振動、夏期気温および活断層ハザードの内の2以上である。また、判定式用要因データは、要因ごとに数値化されたデータであり、該当する場合には「1」であり、該当しない場合には「0」となるデータを称する。また、特定判定式とは、図7(7C)に例示される式を称する。これらについては、後ほど、図7を参照しながら詳述する。
【0048】
一般判定式記憶部11は、前記特定判定式の元になる一般判定式を記憶する一般判定式記憶手段として機能する構成部である。ここで、一般判定式とは、後述の図7(7A)に例示する式を称する。上記一般判定式記憶部11は、一般判定式を記憶する構成部として説明されているが、別のデータをも記憶できる構成部、例えば、判定式用要因データ受付部10、一般判定式読出部12、第一代入部13、特定判定式決定部14、閾値決定部15、特定判定式読出部17、危険度用要因データ受付部18、第二代入部19、判定値決定部20、マップ情報読出部22およびマップ表示部23の各処理を行うために必要な1または2以上のコンピュータプログラム(道路陥没危険度評価用コンピュータプログラム)を記憶可能な構成部でも良い。
【0049】
一般判定式読出部12は、一般判定式記憶部11から一般判定式のデータを読み出す構成部である。
【0050】
第一代入部13は、一般判定式記憶部11から読み出された一般判定式に、判定式用要因データを代入する第一代入手段として機能する構成部である。
【0051】
特定判定式決定部14は、判定式用要因データを一般判定式に代入して演算を行って特定判定式を決定する特定判定式決定手段として機能する構成部である。
【0052】
閾値決定部15は、特定判定式によって算出される判定値を所定範囲に分類し、実際の陥没の有無に基づいて陥没発生の閾値を決定する閾値決定手段として機能する構成部である。閾値は、陥没発生の危険性が高くなる境界を意味する判定値である。判定値は、図7(7C)に例示される特定判定式におけるYの値である。図7(7D)の例示では、判定値が−0.2以下のときに道路陥没が認められる事実に基づいて、閾値=−0.2との決定がなされている。ただし、判定値=−0.2を境にして陥没の有無が明確に分かれるとは限らない。例えば、判定値=0でも陥没が発生している地点もある一方で、判定値=−0.3でも陥没が発生していない地点もあり得る。かかる状況にもかかわらず、閾値を−0.2と決定するのは、閾値=−0.2としたときに、陥没有無の判定正解率が高く、誤判定率が小さくなるからである。仮に閾値を0(ゼロ)とすると、判定値≦0の範囲内に陥没の発生していない地点も誤差として含まれやすくなる。一方、仮に閾値を−0.4とすると、判定値≧−0.4の範囲内に陥没の発生している地点も誤差として含まれやすくなる。このような誤差の大小を考慮して、最も判定誤差が小さくなる判定値(−0.2)を閾値としている。この点については、図7(7D)および(7E)を参照しながら、後ほど詳述する。なお、閾値決定部15は、必須の構成部ではなく、装置1に設けなくても良い。
【0053】
特定判定式記憶部16は、少なくとも特定判定式を記憶する特定判定式記憶手段として機能する構成部である。特定判定式記憶部16は、さらに閾値を記憶しても良い。
【0054】
特定判定式読出部17は、特定判定式記憶部16から特定判定式を読み出す構成部である。特定判定式読出部17は、さらに閾値を読み出しても良い。
【0055】
危険度用要因データ受付部18は、評価対象となる複数の評価対象地点における道路陥没の要因を定量化した危険度用要因データを受け付ける危険度用要因データ受付手段として機能する構成部である。上記判定式用要因データ受付部10および/または上記危険度用要因データ受付部18は、それぞれ特有のデータを受け付けることのできる構成部として説明されているが、別のデータをも受け付けることのできる構成部、例えば、ユーザが任意に入力したデータをも受け付ける構成部であっても良い。
【0056】
第二代入部19は、特定判定式記憶部16から読み出された特定判定式に、危険度用要因データを代入する第二代入手段として機能する構成部である。
【0057】
判定値決定部20は、第二代入部19の処理に基づき演算を行い、各評価対象地点における陥没の危険度を数値化した判定値を決定する判定値決定手段として機能する構成部である。
【0058】
マップ情報記憶部21は、各評価対象地点を含むマップの情報を記憶するマップ情報記憶手段として機能する構成部である。
【0059】
マップ情報読出部22は、マップ情報記憶部21から所定のマップ情報を読み出す構成部である。
【0060】
マップ表示部23は、マップ情報記憶部21から読み出されたマップ上において、各評価対象地点における陥没の危険度を示す判定値に基づき色別若しくは濃淡別の表示を行うマップ表示手段として機能する構成部である。色あるいは濃淡の情報は、マップ情報記憶部21内、あるいは別の記憶部(図3では不図示)に読み出し可能に格納することができる。前述のマップ情報読出部22は、マップ情報記憶部21からマップ情報と共に色あるいは濃淡の情報をも読み出すことができる。
【0061】
なお、マップ表示部23は、色を表示せずに、当該危険度を示す判定値のみを表示する構成部でも良い。また、マップ表示部23は、色と判定値の両方を表示する構成部でも良い。さらに、マップ表示部23は、色に代えて、モノクロの濃淡を表示しても良い。その場合、判定値をモノクロの濃淡と共に表示し、あるいは非表示とすることもできる。また、閾値決定部15を装置1に備える場合、マップ表示部23は、閾値の前後で大きく色や濃淡を変化させて表示しても良い。
【0062】
上記の形態の変形例として、装置1内に、第一陥没要因数値変換部30、第一記憶部31、第二陥没要因数値変換部40および第二記憶部41を備えるようにしても良い。第一陥没要因数値変換部30は、道路陥没要因を、後述の図7(7B)に示す数値に変換して、判定式用要因データ受付部10に当該数値のデータを送信する第一陥没要因数値変換手段として機能する構成部である。第一記憶部31は、道路陥没要因を上記数値に変換するためのデータテーブルを記憶する情報の読み書き可能な第一記憶手段である。第一陥没要因数値変換部30は、第一記憶部31に記憶されるデータテーブルを参照して、各道路要因を数値化し、その数値化されたデータを判定式用要因データ受付部10に送信する。同様に、第二陥没要因数値変換部40は、道路陥没要因を数値に変換して、危険度用要因データ受付部18に当該数値のデータを送信する第二陥没要因数値変換手段として機能する構成部である。第二記憶部41は、道路陥没要因を上記数値に変換するためのデータテーブルを記憶する情報の読み書き可能な第二記憶手段である。第二陥没要因数値変換部40は、第二記憶部41に記憶されるデータテーブルを参照して、各道路要因を数値化し、その数値化されたデータを危険度用要因データ受付部18に送信する。第一陥没要因数値変換部30および第二陥没要因数値変換部40は、CPUがコンピュータプログラム(道路陥没危険度評価用コンピュータプログラム)を実行することによって各処理を行う部分である。第一記憶部31および第二記憶部41は、情報の読み出しと書き込みを可能とするRAMやハードディスク等に代表されるメモリである。
【0063】
装置1は、より詳細には、道路陥没の危険度を評価するための道路陥没危険度評価装置であって、道路陥没の危険度を判定するための式であって道路陥没の要因と危険度との関数式としての特定判定式を決定するために必要なデータであって、特定判定式作成用にサンプリングされた複数のサンプリング地点における道路陥没の要因を定量化した判定式用要因データを受け付ける判定式用要因データ受付手段(判定式用要因データ受付部10に相当)と、特定判定式の元になる式(A)に示す一般判定式{Yは道路の陥没の有無を示す外的基準を、X1〜Xn:Xiは道路陥没の要因となる説明変数を、A1〜AnはそれぞれX1〜Xnに乗じる係数を、nはi番目の説明変数Xiの数であって1以上の整数を、xijはXiのj番目のカテゴリー変数を、aijはxijのカテゴリー係数を、miはXiのカテゴリー数を、それぞれ示す。}を記憶する一般判定式記憶手段(一般判定式記憶部11に相当)と、一般判定式記憶手段から読み出された一般判定式に、カテゴリー変数により構成される判定式用要因データを代入する第一代入手段(第一代入部13に相当)と、判定式用要因データを一般判定式に代入して数量化理論II類分析により2群の群間変動を全変動に対して相対的に最大にするように演算を実行して、カテゴリー係数(aij)を特定した特定判定式を決定する特定判定式決定手段(特定判定式決定部14に相当)と、特定判定式を記憶する特定判定式記憶手段(特定判定式記憶部16に相当)と、評価対象となる複数の評価対象地点における道路陥没の要因を定量化した危険度用要因データを受け付ける危険度用要因データ受付手段(危険度用要因データ受付部18に相当)と、特定判定式記憶手段から読み出された特定判定式に、評価対象地点においてカテゴリー変数により構成される危険度用要因データを代入する第二代入手段(第二代入部19に相当)と、第二代入手段の処理に基づき演算を行い、各評価対象地点における陥没の危険度を数値化した判定値を決定する判定値決定手段(判定値決定部20に相当)と、を含む。
【0064】
図4は、本発明の実施形態に係る道路陥没危険度評価方法の主要ステップのフローを示す。
【0065】
この実施形態に係る道路陥没危険度評価方法は、道路陥没の危険度を評価するための装置を用いて道路陥没の危険度を評価する方法である。図4に示すように、この評価方法は、判定式作成用の地点における各要因のデータ(判定式用要因データ)を受け付ける判定式用要因データ受付ステップ(S100)、特定判定式の元になる一般判定式に判定式用要因データを代入する第一代入ステップ(S200)、演算によって特定判定式を決定する特定判定式決定ステップ(S300)、陥没発生の閾値を決定する閾値決定ステップ(S400)、評価対象となる複数の評価対象地点における道路陥没の要因を定量化した危険度用要因データを受け付ける危険度用要因データ受付ステップ(S500)、特定判定式に危険度用要因データを代入する第二代入ステップ(S600)、演算によって各評価対象地点における陥没の危険度に基づく判定値を決定する判定値決定ステップ(S700)、マップ上において各評価対象地点における陥没の危険度を示す判定値に基づく色別若しくは濃淡別の表示を行うマップ表示ステップ(ステップS800)を行うことによって道路陥没危険度を評価する方法である。なお、ステップS400およびステップS800は、必須のステップではない。また、装置1にて説明したことと同様に、マップ表示ステップは、色や濃淡の表示を行うことなく、当該危険度を示す判定値のみを表示するステップでも良い。また、マップ表示ステップは、色や濃淡と、判定値とを両方表示するステップでも良い。さらに、マップ表示ステップは、色に代えて、モノクロの濃淡を表示するステップでも良い。その場合、判定値をモノクロの濃淡と共に表示し、あるいは非表示とすることもできる。また、閾値決定ステップ(S400)を行う場合、マップ表示ステップは、閾値の前後で大きく色や濃淡を変化させて表示しても良い。以下、上記各ステップについて図5〜9を参照しながら説明する。
【0066】
(1)判定式用要因データ受付ステップ(S100)
このステップは、特定判定式作成用にサンプリングされた複数(この実施形態では100)箇所のサンプリング地点における道路陥没の要因を定量化した判定式用要因データを受け付けるステップである。このステップは、装置1の判定式用要因データ受付部10によって行うことができる。判定式用要因データは、特定判定式を決定するために必要なデータである。特定判定式は、道路陥没の危険度を判定するための式であって道路陥没の要因(説明変数Xiに相当)と危険度(外的基準Yに相当)との関数式である。
【0067】
図5および図6は、判定式作成用の地点100箇所における外的基準Yおよび各種説明変数X1〜X5を数値化した表をそれぞれ示す。図5は、1〜50番目の各地点のデータを、図6は、51〜100番目の各地点のデータをそれぞれ示す。
【0068】
図5および図6の表では、某市内の特定エリア内の道路の1〜100番目の地点における陥没の有無と、その要因となり得る5つの説明変数とを1〜3の数字で表している。これら1〜100の地点は、特定判定式作成用にサンプリングされたサンプリング地点である。図5および図6の表において、例えば、陥没の有無(Y)に関しては、「1」は陥没が無いことを意味し、「2」は陥没があることを意味する。また、空洞の存在(X1)に関しては、「1」は空洞が無いことを意味し、「2」は土被り厚さの1/2未満の位置に空洞があることを意味し、「3」は土被り厚さの1/2以上の位置に空洞があることを意味する。埋め戻し土(X2)に関しては、「1」は土の種類が砂礫土であることを意味し、「2」は土の種類が砂質土であることを意味する。地下水の状況(X3)に関しては、「1」は無しを意味し、「2」はありを意味し、「3」はあり・変動もありを意味する。経過年数(X4)に関しては、「1」は20年未満を意味し、「2」は20年以上40年未満を意味し、「3」は40年以上を意味する。土被り(X5)に関しては、「1」は2m以上を意味し、「2」は1m以上2m未満を意味し、「3」は1m未満を意味する。
【0069】
したがって、例えば、図5の表中の1番目のサンプリング地点は、YおよびX1〜X5が全て「1」であることから、陥没が無く、空洞が無く、埋め戻し土が砂礫土であり、地下水が無く、経過年数が20年未満であり、土被りが2m以上の地点である。他のサンプリング地点も、1〜3の数値によって同様に解釈される。ここで重要なことは、図5および図6における数値1〜3は、外的基準および各説明変数を単に種類別に分けるためのものに過ぎず、その数値の絶対値自体に意味を有していないことである。したがって、数値1,2,3に代えて、アルファベットa,b,cを用いても良い。また、図5および図6の表中の数字1〜3は、そのまま一般判定式に代入されるわけではないということも重要である。この点については後述する。
【0070】
図7は、一般判定式を説明するための図(7A)、数値化された要因データを説明するための図(7B)、特定判定式を説明するための図(7C)および閾値を説明するための図(7D,7E)をそれぞれ示す。
【0071】
図5および図6の例では、特定判定式の元になる一般判定式は、Y=f(Xi)=A1・X1+A2・X2+A3・X3+・・・+An・Xnで表される。ここで、nは、説明変数の数(正の整数)である。A1,A2,A3,・・・,An(これらを一般化すると「Ai」)は、それぞれ、X1,X2,X3,・・・,Xn(これらを一般化すると「Xi」)の係数である。図5および図6の例では、説明変数は5つであるから、n=5である。ここで、X1は、x11、x12、x13という1またはゼロをとり得る3つの変数(これをカテゴリー変数というが、以後、単に、変数ということもある。)をもつ。X2は、x21、x22という1またはゼロをとり得る2つの変数をもつ。X3は、x31、x32、x33という1またはゼロをとり得る3つの変数をもつ。X4は、x41、x42、x43という1またはゼロをとり得る3つの変数をもつ。X5は、x51、x52、x53という1またはゼロをとり得る3つの変数をもつ。
【0072】
(7A)では、X1〜X3までしか表示していないが、Y=f(Xi)を正確に記載すれば、Y=f(Xi)=A1・X1+A2・X2+A3・X3+A4・X4+A5・X5=(a11・x11+a12・x12+a13・x13)+(a21・x21+a22・x22)+(a31・x31+a32・x32+a33・x33)+(a41・x41+a42・x42+a43・x43)+(a51・x51+a52・x52+a53・x53)となる。
【0073】
ここで、代表してX1について説明すると、x11、x12、x13の内のいずれか1つは1となり、他の2つはゼロとなる。したがって、空洞が無い場合には、x11=1、x12=0、x13=0となる。同様に、土被り1/2未満の位置に空洞がある場合には、x11=0、x12=1、x13=0となる。土被り1/2以上の位置に空洞がある場合には、x11=0、x12=0、x13=1となる。すなわち、(7B)に示すように、x11、x12、x13の組み合わせは、x11、x12、x13のいずれか1つのみを1として他の2つを0とする3種類となる。これは、X2〜X5についても同様であり、X2の場合、x21、x22の内のいずれかが1であって、他はゼロとなる。X3の場合、x31、x32、x33の内のいずれか1つが1であって、他2つはゼロとなる。X4の場合、x41、x42、x43の内のいずれか1つが1であって、他2つはゼロとなる。X5の場合、x51、x52、x53の内のいずれか1つが1であって、他2つはゼロとなる。
【0074】
ステップS100は、特定判定式作成用にサンプリングされた各サンプリング地点における道路陥没の要因および陥没の有無を定量化した判定式用要因データとして、(x11,x12,x13)、(x21,x22)、(x31,x32,x33)、(x41,x42,x43)、(x51,x52,x53)およびYを受け付けるステップである。例えば、図5に示すサンプリング地点No.1では、目的変数Yのとり得る2つの分類(2群)の内の「陥没なし」という群において、(1,0,0)、(1,0)、(1,0,0)、(1,0,0)、(1,0,0)というデータが判定式用要因データ受付部10に受け付けられる。同様に、例えば、図5に示すサンプリング地点No.43では、目的変数Yのとり得る2つの分類(2群)の内の「陥没あり」という群において、(0,1,0)、(0,1)、(0,1,0)、(0,1,0)、(0,1,0)という判定式用要因データが判定式用要因データ受付部10に受け付けられる。かかるデータの受付は、他のサンプリング地点98箇所に対しても同様に行われる。
【0075】
(2)第一代入ステップ(S200)
このステップは、一般判定式(7A参照)に、上記判定式用要因データ、例えばサンプリング地点No.1の場合には、(1,0,0)、(1,0)、(1,0,0)、(1,0,0)、(1,0,0)というデータを代入するステップである。このステップは、装置1の第一代入部13によって行うことができる。図5および図6に示す合計100箇所のサンプリング地点の例では、陥没の無い地点が45箇所、陥没のある地点が55箇所存在する。したがって、陥没の無い群(Y1群と称する)において、判定式用要因データを代入した45個のY=f(Xi)が得られる。同様に、陥没のある群(Y2群と称する)において、判定式用要因データを代入した55個のY=f(Xi)が得られる。
【0076】
(3)特定判定式決定ステップ(S300)
このステップは、判定式用要因データを一般判定式に代入して演算を行って特定判定式を決定するステップである。具体的には、このステップでは、数量化理論II類分析により特定判定式が求められる。このステップは、装置1の特定判定式決定部14によって行うことができる。いま、A1〜A5中の係数(a11,a21等)をaijとする。iはA1〜A5の順番であり、1〜5のいずれかの正の整数である。jは、1つのAiの中の係数の順番である。A1であれば、3つの係数を有することから、jは1〜3のいずれかの正の整数である。目的変数Yの分類(2群)を最もよく判別するように、2群の群間変動を全変動に対して相対的に最大にするようにaijを定める。すなわち、相関比(η)=(群間分散SB/全分散ST)を最大にするようにaijを定める。このとき、一般に、全分散ST=群内分散SW+群間分散SBである。このような条件で、相関比が最大となるように式を解くと、この問題は固有値問題に帰着し、求める係数aijは最大固有値(η)に対応する固有ベクトルの成分として求められる。この結果、今回の計算例では、(7C)の式1に示すような特定判定式が得られる。なお、かかる解析手法は、例えば、「多変量統計解析法」(著者: 田中豊/脇本和昌、出版社: 現代数学社)に開示されている。特定判定式は、aijという係数が特定された状態にある説明変数Xiと目的変数Yとの関係式である。Yは、特定判定式において、道路の陥没リスクを示す「判定値」を意味する。すなわち、一般判定式において道路の陥没の有無や兆候を意味していたYは、特定判定式では道路の陥没リスクを示す「判定値」となる。このため、一般判定式におけるYを「Y1」と、特定判定式におけるYを「Y2」と区別して表記しても良い。
【0077】
(4)閾値決定ステップ(S400)
このステップは、陥没発生の閾値を決定するステップである。当該閾値は、陥没発生の危険性を判断するための判定値を意味する。このステップは、装置1の閾値決定部15によって行うことができる。このステップでは、特定判定式によって算出される判定値を所定範囲に分類し、実際の陥没の有無に基づいて陥没発生の閾値が決定される。(7D,7E)に示すように、この実施形態では、判定値は、0.2という所定範囲で16個に分類されている。また、No.1〜7まで(すなわち、判定値が−0.2以下)で道路の陥没が発生している。ただし、道路の陥没は、判定値が−0.2以下のときに100%生じ、判定値が−0.2より大きいときには100%生じないというわけではない。判定値が−0.2以下のときにも道路の陥没が生じていない場合もあれば、判定値が−0.2より大きいときにも道路の陥没が生じている場合もある。このような道路の陥没の集合と道路の非陥没の集合とが互いに重なりあう状況下では、判定値をNo.1〜16までの各段階に設定したときに、最も判定誤差が小さくなる位置を閾値と決めるのが妥当である。(7C,7E)に示す例では、閾値を−0.2より小さい値に設定すれば、閾値を−0.2に設定したときに比べて判定誤差が大きくなる(この場合、閾値以上の範囲に、陥没が生じるケースが多く含まれる)。また、閾値を−0.2より大きい値に設定しても、閾値を−0.2に設定したときに比べて判定誤差が大きくなる(この場合、閾値未満の範囲に陥没が生じていないケースが多く含まれる)。閾値を−0.2と設定したときに、陥没の生じている場合と生じていない場合とを高確率にて分離できる。なお、サンプル地点100箇所において閾値を−0.2としたときの陥没有無の判定的中率は96%である。これは、誤差が4%であることを意味する。ステップS100〜S400までは、サンプル地点の情報に基づき、一般判定式から特定判定式を求めるまでの処理である。
【0078】
(5)危険度用要因データ受付ステップ(S500)
このステップは、評価対象となる複数の評価対象地点における道路陥没の要因を定量化した危険度用要因データを受け付けるステップである。このステップは、装置1の危険度用要因データ受付部18によって行うことができる。この実施形態では、30箇所の評価対象地点の危険度用要因データが受け付けられる。評価対象地点はサンプリング地点と同じ市町村、同じ市町村内の同じ地区などのように、地理的に近い位置にある方が好ましい。
【0079】
図8は、危険度を評価する対象となる評価対象地点30箇所における各種説明変数X1〜X5を数値化した表を示す。
【0080】
図8のX1〜X5の数値1〜3は、図5及び図6の数値と同じ意味である。例えば、評価対象地点No.1では、X1〜X4までに「1」が入り、X5だけが「2」となっている。これは、当該No.1の地点では、空洞が無く、埋め戻し土が砂礫土であり、地下水が無く、経過年数が20年未満であり、土被りが1m以上2m未満であることを意味している。他の29箇所も、表中の数字に基づき同様に解釈される。
【0081】
ここで重要なことは、図8における数値1〜3は、図5および図6と同様、各説明変数を単に種類別に分けるためのものに過ぎず、その数値の絶対値自体に意味を有していないことである。したがって、数値1,2,3に代えて、アルファベットa,b,cを用いても良い。また、図8の表中の数字1〜3は、そのまま特定判定式に代入されるわけではないということも重要である。
【0082】
ステップS500は、危険度用要因データとして、(x11,x12,x13)、(x21,x22)、(x31,x32,x33)、(x41,x42,x43)、(x51,x52,x53)を受け付けるステップである。例えば、図8に示す評価対象地点No.1では、(1,0,0)、(1,0)、(1,0,0)、(1,0,0)、(0,1,0)というデータが危険度用要因データ受付部18に受け付けられる。同様に、例えば、図8に示す評価対象地点No.7では、(1,0,0)、(0,1)、(0,1,0)、(0,1,0)、(0,0,1)という危険度用要因データが危険度用要因データ受付部18に受け付けられる。かかるデータの受付は、他のサンプリング地点28箇所に対しても同様に行われる。
【0083】
(6)第二代入ステップ(S600)
このステップは、特定判定式に危険度用要因データを代入するステップである。このステップは、装置1の第二代入部19によって行うことができる。このステップは、特定判定式(7C参照)に、上記危険度用要因データ、例えば評価対象地点No.1の場合には、(1,0,0)、(1,0)、(1,0,0)、(1,0,0)、(0,1,0)というデータを代入するステップである。このステップでは、他の29箇所の評価対象地点についても同様の代入が行われる。
【0084】
(7)判定値決定ステップ(S700)
このステップは、特定判定式を用いた演算によって各評価対象地点における陥没の危険度に基づく判定値を決定するステップである。このステップは、装置1の判定値決定部20によって行うことができる。この演算の結果、特定判定式のY(危険度を意味する判定値)が評価対象地点ごとに求められる。
【0085】
(8)マップ表示ステップ(ステップS800)
このステップは、マップ上において各評価対象地点における陥没の危険度を示す判定値に基づく色別若しくは濃淡別の表示を行うステップである。このステップは、装置1のマップ表示部23によって行うことができる。
【0086】
図9は、評価対象地点を含むエリアのマップ(9A)および当該マップ上に各地点を含む単位ブロックを色分け若しくは濃淡分けで表示した危険度評価マップ(9B)をそれぞれ示す。
【0087】
(9A)に示すように、マップ上には、1〜30までの符号を付けた評価対象地点が明示されている。(9B)のマップは、(9A)に示すマップ上の各評価対象地点を中心とした単位ブロック(例えば、左右50mの長さ、半径50mの範囲等任意に決められる)に、S700にて求められた判定値(危険度といっても良い)とその判定値に基づく色とを表示したものである。(9B)のマップは、危険度評価マップと称しても良い。危険度評価マップ内の30箇所の数値は、道路陥没の危険性を意味しており、数値が小さいほど陥没の危険度が高い。陥没の危険度の高いブロックは、例えば濃い赤色で示し、危険度が低くなるに従い薄い赤色、オレンジ色、黄色、薄い青色、濃い青色と色を変えて表示するのが好ましい。また、カラーを使用せず、モノクロの濃淡で危険度を表示しても良い。(9B)の危険度評価マップは、モノクロの濃淡で危険度を視覚的に表した例であり、黒色に近いほど危険度を高くしている。なお、危険度評価マップは、判定値のみ、色若しくはモノクロの濃淡のみ、判定値と色若しくはモノクロの濃淡との組み合わせのいずれで表示されても良い。
【0088】
なお、図4のフローにおいて、ステップS100に先立ち、道路陥没要因を、図7(7B)に示す数値に変換して、判定式用要因データ受付部10に当該数値のデータを送信する第一陥没要因数値変換ステップ(ステップS50)を行っても良い。このステップは、第一陥没要因数値変換部30が第一記憶部31のデータテーブルを参照して実行するステップである。また、ステップS500に先立ち、道路陥没要因を数値に変換して、危険度用要因データ受付部18に当該数値のデータを送信する第二陥没要因数値変換ステップ(ステップS450)を行っても良い。このステップは、第二陥没要因数値変換部40が第二記憶部41のデータテーブルを参照して実行するステップである。
【0089】
上記の道路陥没危険度の評価は、道路陥没の要因を5つとしたときのものである。次に、道路陥没の要因を2つに絞ったときの評価について、図10を参照しながら説明する。
【0090】
図10は、特定判定式を説明するための図(10A)、閾値を説明するための図(10B,10C)およびマップ上に各地点を含む単位ブロックを色分け若しくは濃淡分けで表示した危険度評価マップ(10D)をそれぞれ示す。
【0091】
一般判定式の説明変数はできるだけ少ない方がデータ収集などの手間が省けて都合が良い。ただし、判定のための精度は確保されなければならない。ここで、道路陥没の要因となる説明変数を5つとした前述の分析例を踏まえ、説明変数を2つに絞り込んだ場合の例について説明する。なお、説明変数の数が異なっても、装置1内の構成および評価方法のフローについては、前述の例と共通する。
【0092】
この絞り込みでは、判定結果に影響する度合いの大きな説明変数(レンジの大きな要因)は、優先して残し、それ以外の説明変数を捨象するものとする。ここで、レンジとは、説明変数Xiのカテゴリー数量の有する数値幅のことであり、Yへの影響の度合いを示す。前述の例では、空洞の存在(X1)、経過年数(X4)および地下水の状況(X3)の3種の道路陥没要因のレンジがこの順に大きく、他はこれらに比べて小さい。そこで、レンジの大きな方から2要因を選定し、X1とX4を説明変数として採用する。2要因に数量化理論II類分析を適用して演算を行うと、(10A)の特定判定式(式2)が得られる。
【0093】
(10B)の表は、判定値(サンプルスコア)の分布を示す。判定値が小さくなるほど陥没の危険度は高くなることは前述の結果と同様である。この事例では、判定値が−0.2以下(NO.7)になると100%道路陥没を起こし、判定値を0以下(NO.8)とすると14件中6件の誤判別(陥没無し)を含む結果となる。このため、閾値は−0.2ということになる。この場合、判別的中率は、94%である。この結果から、陥没要因を2つに絞った場合でも、陥没要因の選択次第で、十分に高い評価を行うことが可能であると考えられる。
【0094】
(10A)の特定判定式に、図8に示す表中のX1およびX4の各データを代入して、各評価対象地点の陥没危険度の判定を行い、続いてマップ上に判定値とそれに基づく濃淡の表示を行った結果、(10D)に示す危険度評価マップが得られる。このマップにおいても、図9(9B)の危険度評価マップと同様、数値が小さいほど陥没の危険度が高くなる。なお、評価対象地点No.1〜30以外の「境界部」や「交差点部」の数値は、表記上、(9B)と同様の値としている。(10D)より、評価対象地点No.13とNo.15の各地点で陥没が発生する可能性が高く、(9B)の危険度評価マップと同様の結果が得られている。他の評価対象地点については、陥没要因を絞り込んだことから、判定値の差異(濃淡差)が小さくなっている。また、評価対象地点No.10とNo.16は、判定値がマイナスから0またはプラスに変化している。これらは、陥没要因を絞り込んだ特定判定式を用いた影響であると考えられる。ただし、相対的に危険度の高い場所であることは読み取ることができる。
【0095】
次に、道路陥没の要因を11個としたときの評価について説明する。
【0096】
図11および図12は、判定式作成用の地点100箇所における各種説明変数X6〜X11を数値化した表をそれぞれ示す。図11は、1〜50番目の各地点のデータを、図12は、51〜100番目の各地点のデータをそれぞれ示す。なお、YおよびX1〜X5は、図5および図6に示すとおりである。図13は、特定判定式を説明するための図(13A)、閾値を説明するための図(13B,13C)および道路陥没要因11個について(13A)の式3のレンジの大きさを比較した図(13D)をそれぞれ示す。
【0097】
判定式の説明変数として、目的変数(Y)に対して説明力の高いものを選定すれば式の説明力は高くなるが、単に項目数が多ければ良いというものではない。相対的に説明力の低い要因を多く取り込んでも、判定精度を向上するための寄与は小さいものとなり、データ入手の困難さが増すこととなる。さらに、変数を多くすると、同定された判定式の係数が実際の影響内容を適切に記述していない係数符号となる場合もあるため注意が必要である。従って、図2に挙げた11個の陥没要因から、対象とする都市の道路特性、下水道管路特性などを考慮して適切な説明変数を選定する必要がある。ここでは、候補として挙げた11個の陥没要因を全て取り込んだ場合の計算例について説明する。図11および図12に示す追加データは、管路の部位(X6)、管種(X7)、下水管破損状況(X8)、交通振動(X9)、夏期気温(X10)および活断層ハザード(X11)に関するデータである。
【0098】
図11および図12の表において、管路の部位(X6)に関しては、「1」は取付管を意味し、「2」は本管を意味し、「3」はその他を意味する。管種(X7)に関しては、「1」は陶管を意味し、「2」は鉄筋コンクリートを意味し、「3」はその他を意味する。下水管破損状況(X8)に関しては、「1」はありを意味し、「2」は無しを意味する。交通振動(X9)に関しては、「1」は所定基準より多いことを意味し、「2」は所定基準以下を意味する。夏期気温(X10)に関しては、「1」は所定気温より高いことを意味し、「2」は所定気温以下であることを意味する。活断層ハザード(X11)に関しては、「1」はありを意味し、「2」は無しを意味する。これらの数値1〜3は、各説明変数X6〜X11を単に種類別に分けるためのものに過ぎず、その数値の絶対値自体に意味を有していない。したがって、数値1,2,3に代えて、アルファベットa,b,cを用いても良い。また、図11および図12の表中の数字1〜3は、そのまま一般判定式に代入されるわけではない。この点については、YおよびX1〜X5に関して前述したとおりである。
【0099】
判定式用要因データ受付部10は受け付けるデータは、地下の空洞の存在、埋戻し土の種類、地下水の状況、管路布設経過年数、管路上の土被り厚に加え、管路の部位、管種、管路の破損状況、交通振動、夏期気温および活断層ハザードに関するデータである。かかるデータ(判定式用要因データ)は、図7(7B)を参照しながら説明したように、要因ごとに数値化されたデータであり、該当する場合には「1」であり、該当しない場合には「0」となるデータを称する。
【0100】
判定式用要因データ受付部10において11種類の要因に関する数値データを受け付けた後、装置1内の各構成部11〜23は、前述と同様、図4のフローにて各処理を行う。特定判定式決定部14の処理の結果、(13A)に示す式3が決定される。(13B,13C)の判定値(サンプルスコア)の分布において、判定値が小さくなるほど道路陥没の危険度は高くなることは、前述と同様である。この例でも、閾値はー0.2である。11個の陥没要因を用いると、判別的中率は約97%となった。的中率は、陥没要因が2つあるいは5つの場合(いずれも94%)に比べて高くなっていることがわかる。なお、経過年数(X4)など一部の説明変数のカテゴリー数量で、実際の影響内容を適切に記述していない結果が表れている(例えば、X4では老朽化度が低い新しい管でもマイナスのカテゴリー数量が生じている)。
【0101】
(13D)の図によれば、空洞の存在(X1)、経過年数(X4)および地下水の状況(X3)が上位にあることがわかる。このことから、これら3種類の要因が道路陥没の危険度を評価する上で考慮されるのが好ましいと考えられる。
【0102】
図14は、危険度を評価する対象となる評価対象地点30箇所における各種説明変数X6〜X11を数値化した表を示す。説明変数X1〜X5については、図8に示すとおりである。図15は、マップ上に各地点を含む単位ブロックを色分け若しくは濃淡分けで表示した危険度評価マップを示す。
【0103】
図4のフロー中のステップS500(変形例としては、ステップS450)以降の処理を行うと、図15のマップが表示される。マップ内の各ブロックの危険度および色若しくは濃淡は、図9(9B)あるいは図10(10D)のそれらと一致はしないが、類似したマップが得られることがわかる。
【0104】
上述のようなこの実施形態に係る道路陥没危険度評価方法は、詳細には、道路陥没の危険度を評価するための装置1を用いて道路陥没の危険度を評価する方法であって、
道路陥没の危険度を判定するための式であって道路陥没の要因と危険度との関数式としての特定判定式を決定するために必要なデータであって、特定判定式作成用にサンプリングされた複数のサンプリング地点における道路陥没の要因を定量化した判定式用要因データを受け付ける判定式用要因データ受付ステップと、
特定判定式の元になる式(A)に示す一般判定式{Yは道路の陥没の有無を示す外的基準を、X1〜Xn:Xiは道路陥没の要因となる説明変数を、A1〜AnはそれぞれX1〜Xnに乗じる係数を、nはi番目の説明変数Xiの数であって1以上の整数を、xijはXiのj番目のカテゴリー変数を、aijはxijのカテゴリー係数を、miはXiのカテゴリー数を、それぞれ示す。}を記憶する一般判定式記憶手段から読み出された一般判定式に、カテゴリー変数により構成される判定式用要因データを代入する第一代入ステップ(S200)と、
判定式用要因データを一般判定式に代入して数量化理論II類分析により2群の群間変動を全変動に対して相対的に最大にするように演算を実行して、カテゴリー係数(aij)を特定した特定判定式を決定する特定判定式決定ステップ(S300)と、
評価対象となる複数の評価対象地点における道路陥没の要因を定量化した危険度用要因データを受け付ける危険度用要因データ受付ステップ(S500)と、
特定判定式を記憶する特定判定式記憶手段から読み出された特定判定式に、評価対象地点においてカテゴリー変数により構成される危険度用要因データを代入する第二代入ステップ(S600)と、
第二代入ステップの処理に基づき演算を行い、各評価対象地点における陥没の危険度を数値化した判定値を決定する判定値決定ステップ(S700)と、
を含む。
【0105】
<3.道路陥没危険度評価用コンピュータプログラム>
【0106】
道路陥没危険度評価用コンピュータプログラムは、コンピュータにインストールされて、該コンピュータを、道路陥没の危険度を評価するための道路陥没危険度評価装置1として機能させるコンピュータプログラムである。道路陥没危険度評価用コンピュータプログラムは、装置1に代表されるコンピュータを、判定式用要因データ受付部10、第一代入部13、特定判定式決定部14、危険度用要因データ受付部18、第二代入部19および判定値決定部20として機能させるものである。また、道路陥没危険度評価用コンピュータプログラムは、装置1に代表されるコンピュータを、一般判定式読出部12、閾値決定部15、特定判定式読出部17、マップ情報読出部22、第一陥没要因数値変換部30および第二陥没要因数値変換部40の少なくともいずれか1つとして機能させるものであるのが好ましい。
【0107】
道路陥没危険度評価用コンピュータプログラムは、装置1に代表されるコンピュータをして、判定式用要因データ受付ステップ(S100)、第一代入ステップ(S200)、特定判定式決定ステップ(S300)、危険度用要因データ受付ステップ(S500)、第二代入ステップ(S600)および判定値決定ステップ(S700)を実行させるものである。また、道路陥没危険度評価用コンピュータプログラムは、装置1に代表されるコンピュータをして、第一陥没要因数値変換ステップ(S50)、一般判定式読出ステップ(ここではS150とする)、閾値決定ステップ(S400)、第二陥没要因数値変換ステップ(S450)、特定判定式読出ステップ(ここではS550とする)、マップ情報読出ステップ(ここではS750とする)およびマップ表示ステップ(S800)の少なくともいずれか1つのステップを実行させるものであるのが好ましい。
【0108】
また、道路陥没危険度評価用コンピュータプログラムは、装置1と物理的に分離される別のコンピュータ(サーバとする)から装置1内のメモリにインストールされてから実行され、あるいは情報記録媒体(例えば、コンパクトディスク、携帯型フラッシュメモリ、FD、MD等)に一旦格納され当該情報記録媒体を装置1に挿入若しくは接続することを通じて装置1内のメモリにインストールされてから実行され若しくはインストールされずにそのまま読み出されて実行されても良い。上記情報記録媒体は、非一時的な有形の記録媒体を意味する。道路陥没危険度評価用コンピュータプログラムは、1つのプログラムの形態あるいは2以上のプログラムの形態であっても良い。道路陥没危険度評価用コンピュータプログラムを格納した情報記録媒体も同様に、1あるいは2以上であっても良い。
【0109】
この実施形態に係る道路陥没危険度評価用コンピュータプログラムは、詳細には、コンピュータにインストールされて、該コンピュータを、道路陥没の危険度を評価するための道路陥没危険度評価装置1として機能させるコンピュータプログラムであって、
該コンピュータを、
道路陥没の危険度を判定するための式であって道路陥没の要因と危険度との関数式としての特定判定式を決定するために必要なデータであって、特定判定式作成用にサンプリングされた複数のサンプリング地点における道路陥没の要因を定量化した判定式用要因データを受け付ける判定式用要因データ受付手段(判定式用要因データ受付部10に相当)、
特定判定式の元になる式(A)に示す一般判定式{Yは道路の陥没の有無を示す外的基準を、X1〜Xn:Xiは道路陥没の要因となる説明変数を、A1〜AnはそれぞれX1〜Xnに乗じる係数を、nはi番目の説明変数Xiの数であって1以上の整数を、xijはXiのj番目のカテゴリー変数を、aijはxijのカテゴリー係数を、miはXiのカテゴリー数を、それぞれ示す。}を記憶する一般判定式記憶手段から読み出された一般判定式に、カテゴリー変数により構成される判定式用要因データを代入する第一代入手段(第一代入部13に相当)、
判定式用要因データを一般判定式に代入して数量化理論II類分析により2群の群間変動を全変動に対して相対的に最大にするように演算を実行して、カテゴリー係数(aij)を特定した特定判定式を決定する特定判定式決定手段(特定判定式決定部14に相当)、
評価対象となる複数の評価対象地点における道路陥没の要因を定量化した危険度用要因データを受け付ける危険度用要因データ受付手段(危険度用要因データ受付部18に相当)、
特定判定式を記憶する特定判定式記憶手段から読み出された特定判定式に、評価対象地点においてカテゴリー変数により構成される危険度用要因データを代入する第二代入手段(第二代入部19に相当)、および
第二代入手段の処理に基づき演算を行い、各評価対象地点における陥没の危険度を数値化した判定値を決定する判定値決定手段(判定値決定部20に相当)として機能させる。
【産業上の利用可能性】
【0110】
本発明は、道路陥没の危険性を予想する技術や産業に利用できる。
図1
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