(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
それぞれ透明板材の片側に、立設状態の帯状の光反射面が平行に並べて配置された第1、第2の光制御パネルが、それぞれの前記光反射面を平面視して直交状態にして重ね合わされた立体像結像装置において、
前記第1、第2の光制御パネルは、それぞれ前記透明板材の片側に、1)上底及び下底を有し側部に傾斜面及び垂直面を有して開放面側となる前記下底に向けて徐々に開く、平行配置された断面台形の複数の直線溝と、2)該各直線溝の間に形成された帯状平面部とを有し、
前記第1、第2の光制御パネルは、それぞれの前記直線溝が対向して配置され、前記第1、第2の光制御パネルは透光樹脂シートで接合されて、該透光樹脂シートは、該第1、第2の光制御パネルのそれぞれの前記帯状平面部が交差する領域がシート状透明体となり、他の部分は少なくとも片側が微小凹凸面となっており、
前記第1、第2の光制御パネルの前記垂直面が、それぞれ入射した光を全反射する前記光反射面を形成することを特徴とする立体像結像装置。
請求項1記載の立体像結像装置において、前記透光樹脂シートの表面又は裏面の、前記第1、第2の光制御パネルのそれぞれの前記直線溝が交差する領域には、非透光処理がなされていることを特徴とする立体像結像装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記した特許文献1における立体像結像装置においては以下のような問題があった。
透明板材に、断面直角三角形の三角溝76、77を形成するには、垂直面と傾斜面が交差する線状突出部を一定ピッチで多数有する金型を使用する必要があるが、線状突出部の先端は、刃物状となっているので、取り扱いに注意を必要とし、更に、繰り返し使用によって、刃先にへたりや潰れが生じる。従って、特許文献1においては、線状突出部の先端角度を40〜60度(90度−θj)として、金型の厚み及び成形精度を確保しているが、三角溝76、77が広い程、各三角溝76、77の間に形成されて光通過領域を形成する帯状平面部80の面積が減って、明るい像の形成は困難であった。
更に、三角溝76、77のピッチPを小さくすると、帯状平面部80の割合が減って明るい像の形成が困難となり、三角溝76、77のピッチPを大きくすると隣り合う光反射面の距離が大きくなって、形成される像の画素が粗くなるという問題があった。
【0007】
一方、特許文献1の第2の実施例に係る立体像結像装置においては、ガラス板又は透明樹脂板からなる透明板の表面に1枚毎アルミニウム又は銀の蒸着層を形成しているので、その作業において大型の蒸着炉を必要とし、しかも、1枚又は少数枚の透明板を蒸着炉に入れて脱気して高真空にした後、蒸着処理を行い、大気圧に開放して蒸着した透明板を取り出すという作業を百回以上繰り返す必要があり、極めて手間と時間のかかる作業であった。
また、金属蒸着された透明板を積層して積層体を形成し、極めて薄い所定厚で切断する作業を行って、この積層体から第1、第2の光制御パネルを切り出し、更にこれら第1、第2の光制御パネルの切り出し面(両面)の研磨作業等を行う必要があるため、作業性や製造効率が悪かった。
【0008】
特許文献2に開示された光学装置においては、直交する側面が形成された多数の角錘台状の筒状体を一定ピッチで基盤上に設けた第1、第2の光制御パネル(2面
コーナーリフレクタアレイ光学素子)を用意し、筒状体を対向させて第1、第2の光制御パネルを重ねて形成している。これによって、直交する側面(反射面)の上下方向の長さは長くなるが、対向する第1、第2の光制御パネルの筒状体の位置を合わせて重ねることは、極めて困難である。
【0009】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたもので、第1、第2の光制御パネルの製造及びこれらを一体化した立体像結像装置の製造が容易で、より鮮明な立体像を得ることが可能な立体像結像装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的に沿う本発明に係る立体像結像装置は、それぞれ透明板材の片側に、立設状態の帯状の光反射面が平行に並べて配置された第1、第2の光制御パネルが、それぞれの前記光反射面を平面視して直交状態にして重ね合わされた立体像結像装置において、
前記第1、第2の光制御パネルは、それぞれ前記透明板材の片側に、1)上底及び下底を有し側部に傾斜面及び垂直面を有して開放面側
となる前記下底に向けて徐々に開く、平行配置された断面台形の複数の直線溝と、2)該各直線溝の間に形成され
た帯状平面部とを有し、
前記第1、第2の光制御パネルは、それぞれの前記直線溝が対向して配置され、前記第1、第2の光制御パネルは透光樹脂シートで接合されて、該透光樹脂シートは、該第1、第2の光制御パネルのそれぞれの前記帯状平面部が交差する領域がシート状透明体となり、他の部分は少なくとも片側が微小凹凸面となっており、
前記第1、第2の光制御パネルの前記垂直面が、それぞれ入射した光を全反射する前記光反射面を形成する。これによって、第1、第2の光制御パネルの金型での製造が容易となる。
【0011】
本発明に係る立体像結像装置において、前記第1、第2の光制御パネルの接合面
に透光樹脂シートが配置されている
ことによって、第1、第2の光制御パネルを接合することになるが、流動性を有する樹脂(例えば、接着剤)で接合する場合に比較して、接合部周囲の樹脂滲みが無くなる。
【0012】
また、前記透光樹脂シートの表面又は裏面の、前記第1、第2の光制御パネルのそれぞれの前記直線溝が交差する領域には、非透光処理がなされているのが好ましい。
なお、前記透光樹脂シートの表裏面には、熱硬化性、常温硬化性、又は紫外線硬化性の樹脂が塗布されているのがよい。
【0013】
参考例に係る立体像結像装置は、透明板材の両側(一側及び他側)に、立設状態の帯状の光反射面が平行に並べて配置された第1、第2の光制御パネルが、それぞれの前記光反射面を平面視して直交状態にして形成された立体像結像装置において、
前記透明板材の両側に、それぞれ上底及び下底を有し側部に傾斜面及び垂直面を有して開放面側に開く、断面台形の複数の直線溝が、帯状平面部を介して複数平行に形成され、前記光反射面が前記帯状平面部を通過した光を全反射させる前記垂直面からなる。
【0014】
参考例に係る立体像結像装置において、前記直線溝が形成された前記透明板材の両側に、前記直線溝を覆う透光樹脂シートが配置されているのが好ましい。
ここで、前記直線溝を覆う領域にある前記透光樹脂シートには、非透光処理がなされているのが好ましい。
【0015】
これらの立体像結像装置において、前記垂直面の高さhを、隣り合う該垂直面のピッチpの1.5〜6(より好ましくは、3を超え5以下)倍の範囲にすることによって、アスペクト比(h/p)を確保できて、より明るい像を得ることができる。また、前記下底の幅aを、前記ピッチpの0.1〜0.4倍の範囲にすることによって、垂直面に入射する光の量を多くできる。
更に、前記垂直面に対する前記傾斜面の傾斜角度θを、1〜10度の範囲にすることによって、金型の抜き勾配を確保できる。
そして、前記上底の幅bは、前記下底の幅aの0.3〜0.7倍の範囲にあるのが好ましい。
【0016】
また、これらの立体像結像装置において、前記傾斜面には光散乱層又は不透光層が形成されているのが好ましい。この場合、光散乱層は、ブラスト処理又は梨地処理によって形成されるのが好ましく、更にその表面に顔料等を塗布する(着色処理)ことによって、不透光層を形成することもできる。
【0017】
参考例に係る立体像結像装置の製造方法は、それぞれ透明板材の片側に、1)上底及び下底を有し側部に傾斜面及び垂直面を有して開放面側に開く、平行配置された断面台形の複数の直線溝と、2)該各直線溝の間に形成される帯状平面部とを有する第1、第2の光制御パネルを、インジェクション成型又はプレス成形によって製造し、
前記第1、第2の光制御パネルの前記垂直面を、平面視して直交状態にして、前記第1、第2の光制御パネルを透光樹脂シートを介して接合する。
【0018】
ここで、前記透光樹脂シートはそれぞれの前記直線溝が対向した状態で配置された前記第1、第2の光制御パネルを接合するものであって、前記第1、第2の光制御パネルの前記帯状平面部で両側から押圧される受圧部は、シート状透明体となって、他の部分は少なくとも片側が微小凹凸面となっているのが好ましい。
また、前記透光樹脂シートの表面又は裏面の、前記第1、第2の光制御パネルのそれぞれの前記直線溝が交差する領域に、非透光処理を行うのが好ましい。
なお、前記透光樹脂シートの表裏面に、熱硬化性、常温硬化性、又は紫外線硬化性の樹脂を塗布して、接着作用を発揮させるのがよい。
【0019】
別の参考例に係る立体像結像装置の製造方法は、透明板材の両側(一側及び他側)に、それぞれ立設状態で平行に並べて配置された帯状の垂直面が平面視して直交状態にある第1、第2の光制御パネルを有する立体像結像装置の製造方法であって、
前記第1、第2の光制御パネルは、1)上下に上底及び下底を有し側部に傾斜面及び前記垂直面を有して開放面側に開く、平行配置された断面台形の複数の直線溝と、2)該各直線溝の間に形成される帯状平面部とを有し、
前記透明板材の両側に一体となって形成される前記第1、第2の光制御パネルを、インジェクション成型又はプレス成形によって製造する。
【0020】
前記別の参考例に立体像結像装置の製造方法において、前記直線溝が形成された前記透明板材の両側に、前記直線溝を覆う透光樹脂シートを配置するのが好ましい。
ここで、前記直線溝を覆う領域にある前記透光樹脂シートに、非透光処理を行うのが好ましい。
【0021】
これらの参考例に係る立体像結像装置の製造方法において、前記垂直面に対する前記傾斜面の傾斜角度θは1〜10度の範囲にあり、前記垂直面の高さhは、隣り合う該垂直面のピッチpの1.5〜6倍の範囲にあり、前記下底の幅aは、前記ピッチpの0.1〜0.4倍の範囲にあるのが好ましい。
【0022】
また、前記傾斜面に梨地処理又はブラスト処理を行って光散乱層を形成するのが好ましいが、光を散乱させる他の方法であってもよい。
そして、前記梨地処理又はブラスト処理が行われた前記傾斜面に着色処理を行うのが更に好ましい。
【0023】
なお、以上の発明及び参考例において、透明板材を形成する樹脂は、熱可塑性樹脂が好ましく、例えば、アクリル系樹脂、酢酸セルローズ、ポリカーボネイト、ポリエチレンテレフタレート、三フッ化塩化エチレン、ポリスチレン、ポリスチレン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、スチレン・アクリロニトリル共重合体、スチレン・ブタジエン・アクリロニトリル共重合体、エチレン酢酸ビニル共重合体、ポリメチルメタクリルート、ポリメタクリル酸メチル等があり、このうち、屈折率が例えば1.3〜2の範囲(可能であれば、屈折率が2以上)の樹脂を使用するのが好ましい。なお、透明板材を形成する樹脂は複数種の透明樹脂の混合体であってもよい。また、第1、第2の光制御パネルを形成する樹脂は、その種類や屈折率が異なるものであってもよい。
【発明の効果】
【0024】
本発明に係る立体像結像装置は、直線溝が上底及び下底を有し側部に傾斜面及び垂直面を有する断面台形となっているので、金型の製造が容易となり、かつ金型の寿命を長く保持できる。
更に、本発明に係る立体像結像装置
は、第1、第2の光制御パネルの接合面に透光樹脂シートを配置し、帯状平面部で両側から押圧される受圧部がシート状透明体となって、他の部分が少なくとも片側が微小凹凸面となっ
ているので、
光反射面で反射する光以外の光を遮ることができ、より鮮明な像を得ることができる。また、透光樹脂シートの表面又は裏面の直線溝が交差する領域に非透光処理がなされた場合
も、光反射面で反射する光以外の光を遮ることができ、より鮮明な像を得ることができる。
また、本発明に係る立体像結像装置において、直線溝の垂直面の高さhを、隣り合う垂直面のピッチpの1.5〜6(より好ましくは、3を超え5以下)倍の範囲にすることによって、アスペクト比(h/p)を確保できて、より明るい像を得ることができる。
そして、下底の幅aを、ピッチpの0.1〜0.4倍の範囲とすることによって、隣り合う溝の間領域を通過して垂直面で反射する光の量を多くでき、明るい像を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0026】
続いて、本発明の実施例に係る立体像結像装置及びその製造方法について、図面を参照しながら説明する。
図1(A)、(B)、
図4に示すように、本発明の
第1の実施例に係る立体像結像装置10は、合成樹脂製の透明板材11、12の片側にそれぞれ、直線溝13、14が所定ピッチpで平行に配置された第1、第2の光制御パネル15、16を有している。なお、直線溝13、14のピッチpがそれぞれ一定であることは必須の要件ではない。透明合成樹脂はアクリル系樹脂、酢酸セルローズ、ポリカーボネイト、ポリエチレンテレフタレート、三フッ化塩化エチレン、ポリスチレン、ポリスチレン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、スチレン・アクリロニトリル共重合体、スチレン・ブタジエン・アクリロニトリル共重合体、エチレン酢酸ビニル共重合体、ポリメチルメタクリルートのうち、熱可塑性で、成形性がよい樹脂を選択するのが好ましい。
この実施例において、第1、第2の光制御パネル15、16は同一形状、同一ピッチpの直線溝13、14を用いたが、第1、第2の光制御パネルの直線溝の断面形状、及びピッチが異なるものであっても本発明は適用される。
【0027】
直線溝13、14は断面台形で、それぞれ上底17、18及び下底19、20と、側部に設けられ、上底17、18と下底19、20とを連結する傾斜面21、22及び垂直面23、24を有し、開放面側に向けて徐々に開き、第1、第2の光制御パネル15、16の各直線溝13、14はそれぞれ平行に配置されている。
これにより、隣り合う直線溝13と直線溝13との間に、表面が平面(平坦)となった帯状平面部25が、隣り合う直線溝14と直線溝14との間に、表面が平面(平坦)となった帯状平面部26が、それぞれ形成され、第1、第2の光制御パネル15、16それぞれの片側に、垂直面23、24からなる帯状の光反射面が立設状態で平行に並べて配置されることになる。
【0028】
そして、第1、第2の光制御パネル15、16はそれぞれの直線溝13、14を対向させ、各直線溝13、14の垂直面23、24が平面視して直交するよう(直交状態)にして重ね合わされて、第1、第2の光制御パネル15、16は、その接合面に配置された両面接合型の透光樹脂シートの一例である光学透明テープ27(又は透明接着剤)によって接合されている。この光学透明テープ27の厚みは、例えば、2mm以下(好ましくは、1mm以下)程度である。
なお、この光学透明テープ27には紫外線硬化型樹脂を用いるのが好ましいが、常温硬化型、二液硬化型の透明樹脂テープ、あるいは加熱硬化型のものを用いることもできる。
また、光学透明テープ27の代わりに、表裏面に、熱硬化性、常温硬化性、又は紫外線硬化性の樹脂が塗布された透光樹脂シートを用いることもできる。
【0029】
垂直面23、24に対する傾斜面21、22の傾斜角度θは、1〜10度(より好ましくは2〜5度)の範囲にあって、直線溝13、14は透明板材11、12の片側にピッチpで形成され、直線溝13、14の垂直面23、24の高さhは、隣り合う垂直面23、24のピッチpの1.5〜6倍の範囲にある。これによって、垂直面23、24のアスペクト比(h/p)は、1.5〜6倍となって、明るい像を形成できる。
直線溝13、14の断面台形の下底19、20の幅aは、垂直面23、24のピッチpの0.1〜0.4倍(より好ましくは、0.15〜0.3倍)の範囲にある。これによって、各直線溝13、14の間にある帯状平面部25、26から入る光の量を確保でき、垂直面23、24で全反射させることができる。
【0030】
この立体像結像装置10によって、断面台形の直線溝13、14を形成する金型の先部が平坦となるので、金型の傾斜面の傾斜角も1〜10度とすることができ、金型の寿命が伸び、製造も容易となる。
また、この立体像結像装置10において、上底17、18の幅bは、下底19、20の幅aの0.3〜0.7の範囲にあるようにするのが好ましい。これによって、上底17、18の幅bを確保でき、傾斜面21、22の傾斜角度θをより適正に維持でき、結果として金型の製造が容易となる。
【0031】
立体像結像装置10において、傾斜面21、22には、例えば梨地処理(又はブラスト処理)によって光散乱層が形成され、更には梨地処理(又はブラスト処理)が行われた傾斜面21、22に、又は直接傾斜面21、22に着色処理によって不透光層が形成されているのが好ましい。これによって、金型の脱型性が向上すると共に、傾斜面21、22に当たった光が乱反射するので、より鮮明な像が得られる。
なお、この実施例では傾斜面21、22は平面であったが、湾曲面、凹凸面であってもよい。また、直線溝13、14の周囲を完全に封じて内部を真空、又はガスを充填することもできる。これによって、垂直面23、24を全反射面とすることができる。
【0032】
全反射の条件は、スネルの法則より、臨界角をθm、媒質A、Bの屈折率をNa、Nbとすると、sinθm=Na/Nb、Nb>Naとなる。
ここで、媒質Aが空気の場合、屈折率Na≒1、媒質Bとして透明樹脂で屈折率Nb=2程度のものを使用すると、入射角θiが30度を超えた範囲で全反射が起こる。
透明樹脂の屈折率は通常約1.4〜1.6程度であるが、より屈折率の高い光学材料を使用するのが好ましい。また、直線溝13、14内には、透明樹脂よりも屈折率の低い樹脂を充填することもできる。
【0033】
従って、
図1(A)、(B)に示すように、図示しない物体(又はディスプレイ)から第1の光制御パネル15に入った光Xは垂直面23で全反射し、第2の光制御パネル16に入り、垂直面24で全反射し、外部に結像する。なお、空気中から第1の光制御パネル15に光が入る場合、及び第2の光制御パネル16から空気中に光が出る場合、屈折するが、屈折する方向が相殺する。
【0034】
続いて、この立体像結像装置10の製造方法について、
図1〜
図3を参照しながら説明する。
第1、第2の光制御パネル15、16を製造するに当たって、
図2、
図3(A)、(B)、(C)に示すように、一方に平行に並べて配置された帯状突出部(線状突起)28を有する金型29と、他方に平面30が設けられた金型31を対向配置して使用する。この場合の帯状突出部28の高さh、ピッチp、上底の幅b、下底の幅a、傾斜面の角度θは、前記した直線溝13、14と同一である。なお、金型29においては、基台32の上に帯状突出部28が設けられているが、帯状突出部28の上端に平面となる上底33が設けられているので、帯状突出部28は刃物とはならない。更に、帯状突出部28の断面は下方に拡幅する断面台形となっているので、より精度が高く、形状保持性のよい帯状突出部28を形成できる。
なお、金型29、31を有して金型装置を構成する。
【0035】
このような金型29、31を用いて射出成型(インジェクション成型)をする場合は、金型29、31を第1、第2の光制御パネル15、16の形状を内側に有する合わせ形状とし、金型装置は1又は複数箇所の樹脂注入口を有する。注入する透明樹脂は前述したが、硬化することによって、体積が僅少の範囲で増加するのが好ましい。
この金型29、31を用いてプレス成形を行うこともできるが、この場合の透明樹脂は紫外線硬化型、温度降下によって固化する樹脂、2液硬化型、常温硬化型の樹脂を用いる。
以上のようにして製造された第1、第2の光制御パネル15、16の垂直面23、24を、平面視して直交状態にして、第1、第2の光制御パネル15、16を透光樹脂シートの一例である光学透明テープ27を介して接合する
【0036】
続いて、
図4を参照しながら、この立体像結像装置10の動作について説明する。立体像結像装置10は以上のように、透明板材11、12の片側に、断面台形の直線溝13、14が設けられた第1、第2の光制御パネル15、16を、平面視して直線溝13、14が直交するようにして重ねて配置又は接合されているので、直線溝13、14の垂直面23、24が光反射面となり、立体像を形成する。
【0037】
従って、物体Aからの光Xは、第1の光制御パネル15の帯状の光反射面(垂直面23)で反射(全反射)し、第2の光制御パネル16の帯状の光反射面(垂直面24)によって、再反射(全反射)し、像Bを形成する。
なお、透明板材11、12の厚みt1は、垂直面23、24の高さhの2〜5倍程度が好ましい。
【0038】
以上の実施例に示す立体像結像装置10においては、直交する帯状の光反射面を全反射面によって形成したが、透明板材11、12のそれぞれの一側に形成した垂直面23、24に金属光反射面を形成することもできる。なお、この金属光反射面は全反射面ではないが、臨界角が存在しない。
この金属反射面の形成にあっては、断面台形の直線溝13、14の内部にアルミニウム、銀等の金属蒸着を行う。この場合、透明板材11、12の他側は、剥離可能な樹脂等でコーティングしておく。また、透明板材11、12の一側から金属蒸着を行うと、透明板材11、12の一側全面が金属蒸着されるので、金属蒸着後、透明板材11、12の一側(表面)を研磨して、直線溝13、14が形成されていない平面領域から蒸着金属を除くと共に、平面領域を平面とする。これによって、垂直面23、24が金属光反射面となり、金属光反射面の反射効率は多少落ちるが、入射角度の制限がないので、総合的な反射効率が上昇する。
また、金属蒸着を行って光反射面を形成することは、以下の実施例(立体像結像装置及びその製造方法)にも適用可能である。
【0039】
続いて、
図5を参照しながら、参考例に係る立体像結像装置40について説明する。なお、立体像結像装置10と同一の構成要素には同一の符号を付記する。
図5(A)、(B)に示すように、この立体像結像装置40においては、透明板材41の両側に平行配置された直線溝42、43が平面視して直交状態で設けられている。
直線溝42、43は、それぞれ上下に上底17、18、下底19、20を、側部に傾斜面21、22、垂直面23、24を有する断面台形となって、隣り合う直線溝42と直線溝42との間に、表面が平面(平坦)となった帯状平面部44が、隣り合う直線溝43と直線溝43との間に、表面が平面(平坦)となった帯状平面部45が、それぞれ形成され、垂直面23、24が平面視して直交状態にある立設状態で帯状の光反射面を形成している。なお、下底19、20は直線溝42、43の開口部となって、直線溝42、43が開放面側に向けて徐々に開いている。
【0040】
直線溝42、43の構成、垂直面23、24の高さh、傾斜角度θ、寸法、ピッチp等は、第1の実施例に係る立体像結像装置10と同一であるが、本発明はこれらの数値に限定されるものではない。
また、透明板材41の厚みt2は直線溝42、43の垂直面23、24の高さhの2.5〜5倍とするのがよい。透明板材41の中間位置mより上側が第1の光制御パネル46を構成し、透明板材41の中間位置mより下側が第2の光制御パネル47を構成し、この
参考例では、第1、第2の光制御パネル46、47が一体化している。
【0041】
以上の構成となっているので、帯状平面部44を介して第1の光制御パネル46に入光した光Yは、第1の光制御パネル46の垂直面23で全反射し、第2の光制御パネル47の垂直面24で全反射して結像する。
なお、この
参考例においても、直線溝42、43内を金属蒸着して、透明板材41の両面を磨いて蒸着層を除去して、垂直面23、24を鏡面とすることもできる。
この立体像結像装置40の製造方法は、透明板材41の両側に一体となって形成される第1、第2の光制御パネル46、47を、金型装置によって、プレス成形又はインジェクション成型で製造する。
立体像結像装置40をプレス成形又はインジェクション成型によって製造する場合は、成型(成形)時に発生する残留応力を除くため、アニーリング処理を行うのが好ましい。
【0042】
次に、
図6を参照しながら、
本発明の第2の実施例に係る立体像結像装置50について説明する。なお、立体像結像装置10と同一の構成要素には同一の符号を付記する。また、
図6(A)においては、説明の便宜上、隠れ線も実線にして記載している。
図6(A)、(B)に示す立体像結像装置50は、合成樹脂製の透明板材11、12の片側にそれぞれ、直線溝13、14が平行に配置された第1、第2の光制御パネル15、16を有している。
【0043】
第1、第2の光制御パネル15、16は各直線溝13、14の垂直面23、24が平面視して直交するようにして重ね合わされて、第1、第2の光制御パネル15、16は、その接合面に配置された両面接合型の透光樹脂シートの一例であるOCAテープ(機能性フィルム)51によって接合されている。このOCAテープ51は、その表裏面に、熱硬化性、常温硬化性、又は紫外線硬化性の樹脂がそれぞれ塗布された接着作用を発揮するものであり、例えば、アクリル系、シリコン系、ウレタン系のものがあり、厚みは、例えば、2mm以下(好ましくは、1mm以下0.1mm以上)程度である。
なお、OCAテープの代わりに、液状のOCR(粘接着剤)を用いることもでき、このOCRが硬化することで透光樹脂シートとなる。このOCRには、アクリル系やシリコン系のものがある。
【0044】
OCAテープ51のうち、第1、第2の光制御パネル15、16の帯状平面部25、26で両側から押圧される受圧部は、押圧によりシート状透明体となって、他の部分、即ち、平面視して第1、第2の光制御パネル15、16のそれぞれの直線溝13、14が交差する領域(
図6(A)の実線ハッチング領域)と直線溝13又は直線溝14がある領域(
図6(A)に2点鎖線のハッチングで示す領域)は、押圧されずに両側(少なくとも片側)が微小凹凸面となっている。この微小凹凸面の高さは、例えば、1mm以下0.001mm以上程度である。
なお、OCAテープ51の表面又は裏面の、第1、第2の光制御パネル15、16のそれぞれの直線溝13、14が交差する領域(
図6(A)の実線ハッチング領域)に、非透光処理(例えば、黒色処理、黒色インクの印刷)をなすこともできる。また、OCAテープ51の代わりに、押圧される領域が透明体となり、押圧されない領域が非透光となるテープ(感圧着色テープ)を用いることもできる。
これにより、光反射面(垂直面23、24)で反射する光以外の光を遮ることができ、より鮮明な像を得ることができる。
【0045】
なお、
図7に示す
本発明の第3の実施例に係る立体像結像装置(基本構成は立体像結像装置10と同じ)55のように、平面視して第1、第2の光制御パネル15、16のそれぞれの直線溝13、14が存在する領域(
図7の実線ハッチング領域)に、以下の処理を行うこともできる。なお、立体像結像装置50と同一の構成要素には同一の符号を付記する。
具体的には、傾斜面21、22に、例えば梨地処理(又はブラスト処理)によって光散乱層が形成され、更には梨地処理(又はブラスト処理)が行われた傾斜面21、22に、又は直接傾斜面21、22に、着色処理によって不透光層が形成されているのが好ましい(上底17、18についても同様)。また、第1、第2の光制御パネル15、16を接合するOCAテープの表面又は裏面の、上記した直線溝13、14が存在する領域に、非透光処理(例えば、黒色処理)をなすこともできる。
これによって、金型の脱型性が向上すると共に、傾斜面21、22に当たった光が乱反射するので、より鮮明な像が得られる。
【0046】
図8を参照しながら、別の参考例に係る立体像結像装置60について説明する。なお、立体像結像装置40と同一の構成要素には同一の符号を付記する。
図8(A)、(B)に示すように、この立体像結像装置60においては、透明板材41の両側に平行配置された直線溝42、43が平面視して直交状態で設けられている。
透明板材41の両側には、直線溝42、43を覆う板状の透光樹脂シート61、62が配置されている。この透光樹脂シート61、62は、その片面に、熱硬化性、常温硬化性、又は紫外線硬化性の樹脂がそれぞれ塗布された接着作用を発揮するものであり、例えば、アクリル系、シリコン系、ウレタン系のものがあり、厚みは、例えば、5mm以下(好ましくは、2mm以下)程度である。
【0047】
透光樹脂シート61、62の、第1、第2の光制御パネル46、47のそれぞれの直線溝42、43が交差する領域(
図8(A)の実線ハッチング領域)には、非透光処理(例えば、黒色処理)がなされている。この非透光処理は、直線溝42、43を覆う領域全体に行ってもよい(
図8(A)実線及び2点鎖線によるハッチング領域参照)。
なお、透明板材41の両側表面に透光樹脂シート61、62を貼り付けるに際しては、直線溝42、43内に、透明板材41を構成する透明樹脂よりも屈折率の低い樹脂を充填することができるが、直線溝42、43の周囲を完全に封じて内部を真空、又はガスを充填することもできる。
【0048】
また、以上の実施例又は参考例において、直線溝内に銀ペーストを充填することもできるが、この場合、垂直面での全反射は無くなり、鏡面反射となる。また、直線溝内に透明樹脂を充填する代わりに、色付き(特に、黒色)の樹脂を充填することも可能であるが、垂直面での光反射は悪くなると考えられる。
更に、以上の実施例又は参考例に係る立体像結像装置及びその製造方法の一部の構成要素を、他の実施例又は参考例に係る立体像結像装置及びその製造方法に適用する場合も本発明は適用される。
そして、本発明に係る立体像結像装置において、第1、第2の光制御パネル
を重ねる場合、直線溝を当接又は対向させて配置したが、直線溝の一方又は双方を背向かいに配置することもできる。