(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
まず、本発明の実施形態にかかる溶剤回収システムについてその概要を説明する。
本発明の実施形態にかかる溶剤回収システムは、水と、水よりも沸点の高い溶剤とを含む原料液から、溶剤を回収するための溶剤回収システムであり、(a)原料液を、原料液よりも溶剤を高い濃度で含む逆浸透膜濃縮液と水とに分離する逆浸透膜ユニットと、(b)自己蒸気機械圧縮式蒸留設備である第1蒸留機構部とを備えている。
そして、上記自己蒸気機械圧縮式蒸留設備である第1蒸留機構部は、逆浸透膜濃縮液を蒸留する第1蒸留塔と、第1蒸留塔に供給される逆浸透膜濃縮液を加熱して蒸発させる第1リボイラと、第1蒸留塔の塔頂ベーパである第1塔頂ベーパを断熱圧縮し、昇温した圧縮ベーパを、第1リボイラに加熱源として供給する圧縮機を備えている。
さらに、第1蒸留機構部は、第1リボイラにおいて凝縮した圧縮ベーパの凝縮液の一部を、第1蒸留塔に還流液として供給する第1還流ラインと、第1リボイラにおいて凝縮した圧縮ベーパの凝縮液のうち、還流液として第1蒸留塔に戻される凝縮液を除いた残部の凝縮液を、逆浸透膜ユニットに戻す第1返送ラインとを備えている。
そして、第1蒸留塔の塔底液である第1塔底液における溶剤濃度が35重量%以上45重量%以下となるように構成されている。
【0014】
また、本発明の実施形態にかかる溶剤回収システムは、上述のように構成されており、相変化を伴わない逆浸透膜ユニットによる分離と、自己蒸気機械圧縮式蒸留設備を用いた蒸留による分離を適切に組み合わせて用いるとともに、第1蒸留塔の塔底液である第1塔底液における溶剤濃度が35重量%以上45重量%以下の範囲となるようにしているので、エネルギーの消費を抑制しつつ、原料液を所定の溶剤水溶液と水とに分離することができる。
【0015】
また、圧縮ベーパの凝縮液のうち、還流液として第1蒸留塔に戻される凝縮液を除いた残部の凝縮液を、逆浸透膜ユニットに戻すようにしているので、溶剤を含む水(第1塔頂ベーパの凝縮液)が系外に排出されることを防止することができる。
【0016】
すなわち、本発明の実施形態にかかる溶剤回収システムによれば、(a)相変化を伴わず、少ないエネルギーで、原料液よりも溶剤を高い濃度で含む溶剤水溶液と水とを分離することが可能であるが、溶剤濃度の制約のある逆浸透膜ユニットと、(b)省エネルギー性に優れた自己蒸気機械圧縮式蒸留設備と、を組み合わせて用い、かつ、自己蒸気機械圧縮式蒸留設備を、圧縮機の負荷が大きくなり過ぎない条件(圧縮機におけるエネルギー消費の少ない条件)で稼働させることにより、省エネルギー性に優れた溶剤回収システムを実現することができる。
【0017】
また、第1塔頂ベーパの凝縮液の一部を第1蒸留塔に還流する一方、残部を逆浸透膜ユニットに戻すことで、第1塔頂ベーパの凝縮液が系外に排出されないように構成されているため、第1塔頂ベーパの凝縮液を系外に排出するように構成した場合のように、第1蒸留塔の段数を確保して、第1塔頂ベーパ中の溶剤の含有率を大きく低減することが不要になる。
【0018】
したがって、第1蒸留塔の段数を十分に確保して、第1塔頂ベーパ中の溶剤をできるだけ減らすようにした場合に比べて、第1蒸留塔の高さを抑えることが可能になり、設備コストの増大を抑制することが可能になるとともに、第1蒸留塔における圧損の上昇を抑制することが可能になることから、圧縮機の負荷を軽減して、エネルギー消費の大幅な削減を図ることができる。
【0019】
また、第1蒸留塔においては、第1塔底液の溶剤濃度が35重量%以上45重量%以下となるような条件で蒸留を行うようにしているので、第1蒸留塔の段数を抑えて圧損の上昇を抑制することが可能になるだけでなく、第1蒸留塔における溶剤水溶液の沸点上昇を抑制することが可能になり、圧縮機の負荷を抑えて、エネルギーの消費を低減することができる。
【0020】
また、本実施形態にかかる溶剤回収システムは、第1蒸留塔の塔底液(第1塔底液)を蒸留する第2蒸留塔であって、塔頂ベーパ(第2塔頂ベーパ)における溶剤濃度が0.5重量%以上1重量%以下、塔底液(第2塔底液)における溶剤濃度が99重量%以上となるように蒸留を行う第2蒸留塔と、ボイラから供給される水蒸気を熱源とし、第2蒸留塔に供給される第2塔底液を加熱して蒸発させる第2リボイラと、第2塔頂ベーパを冷却して凝縮させるコンデンサと、コンデンサにおいて凝縮した凝縮液を前記第2蒸留塔の塔頂に還流させる第2還流ラインとを有する第2蒸留機構部をさらに備えている。
上述のような第2蒸留機構部を備えることで、より高濃度、高純度の溶剤を回収することが可能になる。
【0021】
さらに説明すると、上述の、(a)逆浸透膜ユニットと、(b)第1蒸留機構部(自己蒸気機械圧縮式蒸留設備)とを備えた溶剤回収システム(前段溶剤回収システム)Xに加えて、第2蒸留塔と、第2リボイラと、コンデンサと、第2還流ラインとを備えた第2蒸留機構部(後段溶剤回収システム)Yを備えた構成とした場合、
(1)前段溶剤回収システムXを構成する第1蒸留機構部(自己蒸気機械圧縮式蒸留設備)により、エネルギーの消費を抑制しつつ、溶剤濃度が35重量%以上45重量%以下の溶剤水溶液と水とを効率よく分離することが可能になるとともに、
(2)前段溶剤回収システムXで得られる溶剤濃度が35重量%以上45重量%以下の溶剤水溶液(自己蒸気機械圧縮式蒸留設備を構成する第1蒸留塔の塔底液(第1塔底液))を、第2蒸留機構部(後段溶剤回収システム)Yに送り、第2蒸留塔において、第2塔頂ベーパにおける溶剤濃度が0.5重量%以上1重量%以下、第2塔底液における溶剤濃度が99重量%以上となるように(溶剤濃度ができるだけ高くなるように)蒸留することにより、高濃度、高純度の溶剤を回収することが可能になる。
【0022】
また、上述の第2蒸留機構部(後段溶剤回収システム)Yにおいては、第2蒸留塔に供給される第1塔底液を加熱して蒸発させる第2リボイラの熱源として、燃料を用いて水蒸気を発生させるボイラから供給される水蒸気を用いるようにしているが、第2蒸留塔の塔底液(第2塔底液)は溶剤濃度が99重量%以上と高く、しかるべき沸点上昇もあるため、自己蒸気圧縮式蒸留設備を用いるのにはなじまない(圧縮機で消費されるエネルギーが大きくなる)ため、ボイラから供給される水蒸気を用いる方が省エネルギーの見地からは有利であり、前段溶剤回収システムXと後段溶剤回収システムYの両方を備えた構成とすることで、設備全体としての省エネルギーを実現することが可能になる。
【0023】
ここで、表1に、第1蒸留塔の塔底液(第1塔底液)の溶剤濃度と沸点上昇(BPR)の値、圧縮機における昇温幅、および圧縮機の軸動力(圧縮機で消費されるエネルギー)の関係を示す。なお、ここでは、溶剤としてNMPを用いた場合について説明する。
【0025】
上記表1において、圧縮機における昇温幅(℃)とは、第1蒸留塔で蒸留を行うために必要な熱量を供給することができるように、第1塔頂ベーパを断熱圧縮して昇温させる場合に必要な昇温幅(℃)であり、圧縮機で断熱圧縮されて昇温した圧縮ベーパの温度(℃)の値から、圧縮機で断熱圧縮する前の第1塔頂ベーパの温度(℃)の値を差し引いた値である。
【0026】
また、圧縮機の軸動力(kW)は、上述の昇温幅(℃)となるように、第1塔頂ベーパを圧縮するのに要する圧縮機の軸動力(kW)である。
【0027】
なお、表1の各溶剤濃度での圧縮機における昇温幅(℃)および圧縮機の軸動力(kW)は、溶剤濃度が30重量%、沸点上昇値が1.9℃のときに、圧縮機における昇温幅が11.0℃、圧縮機の軸動力が77.4kWとなるような条件の機器構成の場合、具体的には、例えば、所定の伝熱面積や伝熱係数などの条件を備えている第1リボイラと、所定のエネルギー効率を有する圧縮機を用いた場合における、圧縮機での昇温幅および圧縮機の軸動力の値である。
【0028】
また、
図2は、表1の溶剤濃度と沸点上昇値、圧縮機における昇温幅、および圧縮機の軸動力の関係をグラフ化したものである。
【0029】
表1および
図2に示すように、溶剤(NMP)濃度が上昇すると、沸点上昇(BPR)値も大きくなり、圧縮機における昇温幅(℃)が大きくなる。加えて第1塔頂ベーパ中の溶剤濃度を維持するためには、第1蒸留塔の塔頂への還流量を増やすことが必要になることから、第1リボイラに供給すべき熱量が大きくなり、圧縮機の軸動力が増加してエネルギーコストの増大を招く。
【0030】
また、表1および
図2に示すように、圧縮機における昇温幅は、沸点上昇(BPR)値よりも大きくなっているが、これは、前述の還流量が増加することで、第1蒸留塔における蒸発量が増加し、第1リボイラの交換熱量が増加すること、つまり、第1リボイラに供給すべき熱量が大きくなることによる。
【0031】
第1リボイラの伝熱面積と伝熱係数を一定とすると、第1リボイラの交換熱量が増加した場合、熱交換器の基本式(1)
Q=U×A×ΔT……(1)
Q:交換熱量(kw)、
U:総括伝熱係数(kw/m
2hr℃)、
A:伝熱面積(m
2)、
Δt:温度差(℃)
のΔtの値が上昇するため、圧縮機における昇温幅が増大する。
【0032】
また、
図2のグラフからすると、圧縮機における昇温幅のカーブには、溶剤濃度60重量%付近に変曲点があり、昇温幅の増大を抑制する見地からは溶剤濃度を55重量%以下にすることが望ましいと考えられる。
【0033】
しかしながら、単段の圧縮機における最高圧縮度は、通常、昇温幅は14℃程度であり、これを超える圧縮度になると圧縮機を例えば直列2段式の構成としたりすることが必要になり、設備コストの増大を招くことになる。このように、昇温幅の増大を抑制して、設備コストの増大を回避する見地からは、第1蒸留塔の塔底液(第1塔底液)の溶剤濃度が45重量%を超えないようにすることが望ましい。
【0034】
したがって、本発明の溶剤回収システムにおいて、設備コストの増大を抑制しつつ、ランニングコストを低く抑えるためには、第1蒸留塔の塔底液(第1塔底液)の溶剤濃度が、35重量%以上45重量%以下の範囲となるように制御することが望ましい。
【0035】
本発明の溶剤回収システムにおいては、設備コストおよびランニングコストを考えた場合、自己蒸気機械圧縮式蒸留設備(第1蒸留機構部)を構成する第1蒸留塔の塔底液(第1塔底液)の溶剤濃度の適用可能な範囲は、上述のように35重量%以上45重量%以下となる。
【0036】
それゆえ、最終的に100%に近い高純度の溶剤を回収したい場合には、さらに溶剤濃度を高めるための構成が必要となるが、その場合には、上述のように、ボイラから供給される水蒸気を熱源とするいわゆる蒸気式の蒸留機構部(第2蒸留機構部)を備えることによって対応することができる。
【0037】
ここで、仮に、溶剤濃度3.5重量%の被処理液を7,000kg/hの割合で処理する溶剤回収システムを構築しようとした場合、溶剤3.5重量%を含む溶剤溶液を、逆浸透膜ユニットによる濃縮と、自己蒸気機械圧縮式蒸留設備(第1蒸留機構部)による蒸留を行うことにより、溶剤濃度を40重量%(本発明において規定されている35重量%以上45重量%以下の範囲内の濃度)にまで高め、さらに、溶剤濃度40重量%の溶剤溶液を、蒸気式の蒸留機構部(第2蒸留機構部)で蒸留して、溶剤濃度を40重量%から100重量%にまで高めるようにした溶剤回収システムが考えられる。
【0038】
そしてこのとき、
(a)逆浸透膜ユニットと自己蒸気機械圧縮式蒸留設備(第1蒸留機構部)で溶剤濃度を3.5重量%から40重量%にまで高めるのに必要な水分除去量は6289kg/hとなる。
(b)また、蒸気式の蒸留機構部(第2蒸留機構部)で溶剤濃度を40重量%から100重量%にまで高めるのに必要な水分除去量は459kg/hとなる。
(c)さらに、溶剤濃度を3.5重量%から100重量%にまで高めるのに必要な全水分除去量は6289kg/h+459kg/h=6748kg/hとなる。
【0039】
したがって、逆浸透膜ユニットと自己蒸気機械圧縮式蒸留設備(第1蒸留機構部)とにおける合計必要水分除去量(すなわち、溶剤濃度を3.5重量%から40重量%にまで高めるのに必要な水分除去量)6289kg/hは、溶剤濃度を3.5重量%から100重量%にまで高めるための全必要水分除去量(6748kg/h)のうちの大部分(93.2%)を占めることになる。そして、上述の必要水分除去量と消費エネルギーとの間には密接な関係があり、必要水分除去量が大きくなると消費エネルギーも大きくなる。
【0040】
したがって、上述のように構成された溶剤回収システムでは、自己蒸気機械圧縮式蒸留設備(第1蒸留機構部)の第1塔底液における溶剤濃度が35重量%以上45重量%以下の範囲に抑えられていても、相変化を伴わずエネルギー効率の高い逆浸透膜ユニットと、上述のように限られた溶剤濃度範囲において特に省エネルギー性に優れている自己蒸気機械圧縮式蒸留設備(第1蒸留機構部)とにおいて、すべての必要水分除去量のうちの93.2%が除去されることになるため、極めて効率のよい溶剤回収システムを構築することが可能になる。
【0041】
また、本発明の実施形態にかかる溶剤回収システムは、上記第2蒸留機構部を構成するコンデンサにおいて凝縮した凝縮液の一部を、逆浸透膜ユニットに戻す第2返送ラインを備えている。このような構成とすることにより、第2塔頂ベーパ中の溶剤濃度を低く抑えるために、第2蒸留塔の高さを高くする(段数を多くする)ことを必要とせずに、溶剤が系外に排出されることを抑制しつつ、効率よく高濃度の溶剤を分離回収することが可能な溶剤回収システムを実現することができる。
【0042】
また、本発明の実施形態にかかる溶剤回収システムにおいては、原料液を、溶剤を0.05重量%以上5重量%以下の割合で含有する溶剤水溶液とすることが望ましい。原料液が上記の要件を備えている場合、上述の前段溶剤回収システムXにおいて、逆浸透膜ユニットにより、原料液を、原料液よりも溶剤を高い濃度で含む逆浸透膜濃縮液と水とに分離しつつ、第1蒸留塔の塔底液(第1塔底液)の沸点上昇を抑制して、自己蒸気機械圧縮式蒸留設備の圧縮機の負荷が大きくなり過ぎることを回避することが可能になり、省エネルギーを図りつつ、効率のよい溶剤回収を行うことができる。
【0043】
すなわち、溶剤と分離すべき水のうちの相当量を、(a)逆浸透膜ユニットと、(b)第1蒸留機構部(自己蒸気機械圧縮式蒸留設備)とを備えた前段溶剤回収システムXにより効率よく分離し、その後さらに第2蒸留機構部(後段溶剤回収システム)Yにおいて、溶剤の分離、回収を行うようにすることで、前段溶剤回収システムXと、上述の第2蒸留機構部(後段溶剤回収システム)Yにおける負荷のバランスを良好に保ち、省エネルギーを図りつつ、効率のよい溶剤回収を行うことができるようになる。
【0044】
また、本発明の実施形態にかかる溶剤回収システムにおいては、逆浸透膜ユニットにおいて水と分離された逆浸透膜濃縮液の溶剤濃度が8重量%以下(本実施形態では7.27重量%)となるように構成することにより、逆浸透膜ユニットにおいて、原料液よりも溶剤を高い濃度で含む逆浸透膜濃縮液と水とを効率よく分離することが可能になり、本発明をより実効あらしめることができる。
【0045】
なお、本発明の実施形態にかかる溶剤回収システムの逆浸透膜ユニットで用いられている逆浸透膜は、通常、被処理液の溶剤濃度が高くなりすぎると、水との分離効率が低下するため、効率のよい分離を行うためには、逆浸透膜濃縮液の溶剤濃度は8重量%以下となるようにすることが望ましい。
ただし、水と分離された逆浸透膜濃縮液の溶剤濃度を低く抑えすぎると、第1蒸留機構部や、第2蒸留機構部の負荷が大きくなり、省エネルギーの効率が悪くなるため、通常は、濃縮液の溶剤濃度は5重量%以上とすることが望ましい。
【0046】
また、本発明の実施形態にかかる溶剤回収システムでは、第1塔頂ベーパにおける
溶剤濃度は、0.5重量%以上1重量%以下となるようにすることが望ましい
。これは、
(1)第1塔頂ベーパの溶剤濃度を、0.5重量%以上とすることにより、第1蒸留塔の段数が多くなる(すなわち、第1蒸留塔の高さが高くなる)ことを抑制して、第1蒸留塔における圧損の増大を抑制することが可能になること、および、
(2)第1塔頂ベーパの溶剤濃度を、1重量%以下とすることにより、第1蒸留塔における溶剤の分離の効率が悪くなりすぎることを抑制して、逆浸透膜ユニットの負荷を過剰に高めずに、効率のよい蒸留操作を行うことが可能になること
などの理由による。
【0047】
また、本発明の溶剤回収システムにおいては、逆浸透膜ユニットにおいて逆浸透膜濃縮液と分離される水における溶剤濃度が5ppm以上100ppm以下となるように構成することが好ましい。これは、以下の理由による。
【0048】
すなわち、逆浸透膜ユニットにおいて逆浸透膜濃縮液と分離される水の溶剤濃度を低く設定すると、系外への溶剤の排出量を少なくすることが可能になり、好ましいが、その一方で、逆浸透膜ユニットへの負荷が大きくなって逆浸透膜ユニットの大型化を招くという問題が生じ、また、逆浸透膜ユニットにおいて逆浸透膜濃縮液と分離される水の溶剤濃度を高く設定すると、逆浸透膜ユニットにかかる負荷を小さくすることができる反面、系外に排出される溶剤の量が増大するという問題が生じる。したがって、このような点を勘案すれば、逆浸透膜ユニットにおいて逆浸透膜濃縮液と分離される水における溶剤濃度の好ましい範囲は、5ppm以上100ppm以下の範囲となる。
【0049】
次に、
図1を参照しつつ、本発明の実施形態にかかる溶剤回収システムの特徴とするところをさらに詳しく説明する。
【0050】
本実施形態では、水と、水よりも沸点の高い溶剤であるNMP(N−メチル−2−ピロリドン)とを含む溶剤水溶液(原料液)から、溶剤(NMP)を回収するための溶剤回収システム100を例にとって説明する。なお、NMPは、沸点が202℃で、水と相溶性を有する溶剤である。また、本実施形態における原料液は、NMPを3.5重量%の割合で含有するNMP水溶液である。
【0051】
本実施形態にかかる溶剤回収システム100は、
1)原料液を水と、溶剤を原料液よりも高い濃度で含む溶剤水溶液とに分離するための前段側の溶剤回収システムであって、(a)逆浸透膜ユニット10と、(b)第1蒸留塔21、第1リボイラ22、圧縮機23、第1還流ライン31、第1返送ライン32などを備えた第1蒸留機構部(自己蒸気機械圧縮式蒸留設備)20とを備えた溶剤回収システム(前段溶剤回収システムX)と、
2)上述の第1蒸留機構部(自己蒸気機械圧縮式蒸留設備)20における第1塔底液からさらに高濃度の溶剤を回収するための蒸留機構部であって、第1塔底液の蒸留を行う第2蒸留塔121、図示しないボイラから供給される水蒸気を熱源とし、第2蒸留塔121に供給される第2塔底液を加熱して蒸発させる第2リボイラ122、その周辺器機や配管などを備えた第2蒸留機構部120(後段溶剤回収システムY)とを備えている。
【0052】
なお、第1蒸留塔21および第1リボイラ22の場合と同様に、第2蒸留塔121および第2リボイラ122についても型式などに特別の制約はなく、公知の種々の構造のものを用いることが可能である。
【0053】
以下、本実施形態にかかる溶剤回収システムについて、さらに詳しい説明を行う。
前段溶剤回収システムXは、
図1に示すように、原料液を、逆浸透膜を通過させて、原料液よりも溶剤を高い濃度で含む液(逆浸透膜濃縮液)と水とに分離する逆浸透膜ユニット10を備えている。
また、逆浸透膜ユニット10に供給される原料液を濾過するための限外濾過膜を用いた限外濾過装置(ウルトラフィルター)11を備えている。
【0054】
さらに、前段溶剤回収システムXは、逆浸透膜ユニット10において水と分離された逆浸透膜濃縮液を蒸留する第1蒸留塔21と、第1蒸留塔21に供給される逆浸透膜濃縮液を加熱して蒸発させる第1リボイラ22と、第1蒸留塔21の塔頂から取り出される塔頂ベーパである第1塔頂ベーパを断熱圧縮し、昇温した圧縮ベーパを、第1リボイラ22加熱源として供給する圧縮機23とを備え、第1塔底液における溶剤濃度が35重量%以上45重量%以下となるように構成された第1蒸留機構部(自己蒸気機械圧縮式蒸留設備)20を備えている。
【0055】
なお、本実施形態では、第1蒸留塔21として充填塔が用いられている。ただし、充填塔に限らず、棚段塔など、公知の種々の構造のものを用いることができる。
【0056】
また、第1リボイラ22としては、シェル&チューブ式の熱交換器が用いられている。ただし、例えばプレート式熱交換器など公知の種々の構造のものを用いることが可能である。
【0057】
なお、上述の本実施形態にかかる前段溶剤回収システムXを構成する第1蒸留機構部(自己蒸気機械圧縮式蒸留設備)20は、さらに第1還流ライン31、第1返送ライン32、循環ポンプ36、第2供給ライン34、第2蒸留塔供給ポンプ37を備えている。
【0058】
第2蒸留塔供給ポンプ37は、第1蒸留塔21の塔底液(第1塔底液)を、第2供給ライン34を経て、第2蒸留機構部120(後段溶剤回収システムY)に供給するための供給手段として機能するポンプである。
【0059】
第1リボイラ22において凝縮した圧縮ベーパの凝縮液は、循環ポンプ36、第1還流ライン31を経て、その一部が、第1蒸留塔21の塔頂に還流液として還流(供給)されるように構成されている。
【0060】
また、第1リボイラ22において凝縮した圧縮ベーパの凝縮液のうち、還流液として第1蒸留塔21に戻される凝縮液を除いた残部の凝縮液は、循環ポンプ36、第1返送ライン32を経て逆浸透膜ユニット10に戻されるように構成されている。
【0061】
また、逆浸透膜ユニット10と、第1リボイラ22の間には、逆浸透膜濃縮液を第1リボイラ22に供給するための第1供給ライン33が配設されている。
【0062】
さらに、本実施形態にかかる前段溶剤回収システムXは、逆浸透膜ユニット10において水と分離された逆浸透膜濃縮液を予熱するための予熱器(熱交換器)35を備えており、第1供給ライン33を通流する逆浸透膜濃縮液は、予熱器35において、第1返送ライン32を通流する凝縮液(すなわち、還流液として第1蒸留塔21に戻される凝縮液を除いた残部の凝縮液(逆浸透膜ユニット10に戻される凝縮液))と熱交換することで予熱され、第1リボイラ22に供給されるように構成されている。
【0063】
このように、逆浸透膜ユニット10に戻される凝縮液が予熱器35で熱交換され、冷却されることにより、逆浸透膜ユニット10を構成する逆浸透膜が熱によるダメージを受けることが抑制される。
【0064】
なお、第1蒸留機構部(自己蒸気機械圧縮式蒸留設備)20は、系内を所定の減圧(真空)状態に保つための真空ポンプ38を備えており、真空吸引ライン39には、真空吸引ライン用コンデンサ40が配設されている。
【0065】
本実施形態にかかる溶剤回収システム100においては、上述の逆浸透膜ユニット10、自己蒸気機械圧縮式蒸留設備20、およびその周辺器機やラインなどが、本実施形態にかかる溶剤回収システムの前段溶剤回収システムXを構成している。
【0066】
さらに、本実施形態にかかる溶剤回収システム100は、上述のように、第1蒸留機構部(自己蒸気機械圧縮式蒸留設備)20の第1塔底液からさらに高濃度の溶剤を回収するための第2蒸留機構部120(後段溶剤回収システムY)を備えている。以下に、この後段溶剤回収システムYの構成について詳しく説明する。
【0067】
本実施形態にかかる溶剤回収システム100を構成する第2蒸留機構部120(後段溶剤回収システムY)は、上述の第1蒸留機構部(自己蒸気機械圧縮式蒸留設備)20から供給される第1塔底液を蒸留する第2蒸留塔121と、図示しないボイラから供給される水蒸気を熱源とし、第2蒸留塔121に供給される第2塔底液を加熱して蒸発させる第2リボイラ122とを備えている。
なお、本実施形態では、第2蒸留塔121として充填塔が用いられている。
【0068】
なお、第1蒸留機構部(自己蒸気機械圧縮式蒸留設備)20から供給される第1塔底液は、上述の第2蒸留塔供給ポンプ37によって、第2供給ライン34を経て第2蒸留塔121に供給されるように構成されている。
【0069】
また、第2蒸留塔121の塔底液は、その一部が回収溶剤として回収され、残部は、第2リボイラ122において加熱され、第2蒸留塔121の塔底に戻されるように構成されている。
【0070】
そして、第2蒸留機構部120(後段溶剤回収システムY)は、第2蒸留塔121の塔頂から取り出される塔頂ベーパである第2塔頂ベーパを冷却して凝縮させるコンデンサ123と、第2真空ポンプ124と、コンデンサ123において凝縮した凝縮液を第2蒸留塔121の塔頂に還流させる第2還流ライン131とをさらに備えており、第2蒸留塔121において必要な蒸留を行うことができるように構成されている。
なお、第2蒸留塔121においては、塔頂から取り出される第2塔頂ベーパにおける溶剤濃度が0.5重量%以上1重量%以下となり、塔底から取り出される第2塔底液における溶剤濃度が99重量%以上(できるだけ100%に近い濃度)となるように蒸留が行われるように構成されている。
【0071】
また、第2蒸留機構部120(後段溶剤回収システムY)は、コンデンサ123において凝縮した凝縮液の一部を、逆浸透膜ユニット10に戻す第2返送ライン132を備えている。
【0072】
なお、本実施形態にかかる溶剤回収システム100においては、不溶解固形分を含む原料液を用いているので、限外濾過装置(ウルトラフィルター)11で濾過を行い、分離した不溶解固形分と付着液(溶媒水溶液)を含む固形分を固形分乾燥設備41に送って乾燥し、分離した溶剤(水分を含む)を、第2供給ライン34を経て第2蒸留塔121に送るとともに、固形分乾燥設備41で乾燥された固形分を廃棄固形分として系外に排出するようにしている。
【0073】
本実施形態にかかる溶剤回収システム100を構成する前段溶剤回収システムXは、相変化を伴わない逆浸透膜ユニット10による分離と、自己蒸気機械圧縮式蒸留設備(第1蒸留機構部)20による蒸留とを適切に組み合わせて用いているので、エネルギーの消費を抑制しつつ、原料液を、溶剤濃度が40重量%の溶剤水溶液と、水とに効率よく分離することができる。
【0074】
なお、本発明では、前段溶剤回収システムXにおいては、第1塔底液の溶剤濃度が35重量%以上45重量%以下の範囲となるように、運転条件が制御される。
【0075】
また、圧縮ベーパの凝縮液のうち、還流液として第1蒸留塔21に戻される凝縮液を除いた残部の凝縮液を、逆浸透膜ユニット10に戻すようにしているので、溶剤を含む水(第1塔頂ベーパの凝縮液)が系外に排出されることを防止することができる。
【0076】
また、第1塔底液の溶剤濃度が40重量%(35重量%以上45重量%以下の範囲)となるようにしているので、確実に第1蒸留塔21における溶剤水溶液の沸点上昇を抑制することが可能で、圧縮機23の負荷を抑えて、エネルギーの消費を低減することができる。
【0077】
また、圧縮ベーパの凝縮液のうち、還流液として第1蒸留塔21に戻される凝縮液を除いた残部の凝縮液を、逆浸透膜ユニット10に戻すようにしているので、第1塔頂ベーパの溶剤含有率を減らす目的で第1蒸留塔21の段数を多くすることが不要になり、この点でも、第1蒸留塔21の小型化、低背化を図ることができる。
【0078】
さらに、後段溶剤回収システムYにおける塔頂ベーパの凝縮液のうち、還流液として第2蒸留塔121に戻される凝縮液を除いた残部の凝縮液も、逆浸透膜ユニット10に戻して、そのまま系外に排出しないようにしているので、第2塔頂ベーパの溶剤含有率を減らす目的で第2蒸留塔121の段数を多くすることが不要になり、第2蒸留塔121の小型化を図ることができる。
【0079】
また、本実施形態にかかる溶剤回収システム100においては、溶剤濃度が3.5重量%の溶剤水溶液を原料液としているので、逆浸透膜ユニット10により、原料液を逆浸透膜濃縮液と水とに効率よく分離することができるとともに、第1塔底液の沸点上昇を抑制して、自己蒸気機械圧縮式蒸留設備の圧縮機23の負荷を軽減することができる。なお、本発明においては、原料液の溶剤濃度を0.05重量%以上5重量%以下とすることが好ましい。
【0080】
また、上述の条件で、本実施形態の溶剤回収システム100を運転することにより、前段溶剤回収システムXと、後段溶剤回収システムYにおける負荷のバランスを良好に保ち、省エネルギーを図りつつ、効率のよい溶剤回収を行うことができる。
【0081】
さらに、本実施形態の溶剤回収システム100においては、逆浸透膜ユニット10において水と分離された逆浸透膜濃縮液の溶剤濃度を8重量%以下(7.27重量%)としているので、逆浸透膜ユニット10において、原料液よりも溶剤を高い濃度で含む逆浸透膜濃縮液と水とを効率よく分離することができる。
【0082】
また、第1塔頂ベーパにおける溶剤濃度が0.85重量%、すなわち、0.5重量%以上1重量%以下となるようにしているので、第1蒸留塔21の段数が多くなることを抑制して、第1蒸留塔21の圧損の増大を抑制することが可能になるとともに、逆浸透膜ユニットの負荷を過剰に高くせずに、圧縮機23の負荷の低減を図ることができる。
【0083】
なお、本発明の溶剤回収システムにおいては、第1塔頂ベーパの溶剤濃度を、0.5重量%以上1重量%以下とすることで、第1蒸留塔21における溶剤の分離の効率が悪くなりすぎることを抑制して、効率のよい蒸留操作を行うことができる。
【0084】
本実施形態にかかる溶剤回収システム100においては、逆浸透膜ユニット10において、逆浸透膜濃縮液と分離される水の溶剤濃度を低く設定すると、系外に排出される溶剤の量を少なくすることが可能になって好ましいが、その一方で、逆浸透膜ユニット10にかかる負荷が増大し、逆浸透膜ユニット10が大型化するという問題が生じ、また、逆浸透膜濃縮液と分離される水における溶剤濃度を高く設定すると、逆浸透膜ユニット10にかかる負荷を小さくすることができる反面、系外に排出される溶剤の量が増大するという問題が生じる。
【0085】
したがって、逆浸透膜ユニット10において逆浸透膜濃縮液と分離される水における溶剤濃度は、通常5ppm以上100ppm以下の範囲とすることが好ましい。
【0086】
次に、本実施形態にかかる溶剤回収システム100を用いて、水と、水よりも沸点の高い溶剤であるNMP(N−メチル−2−ピロリドン)とを含む溶剤水溶液(原料液)から、溶剤(NMP)を回収する場合の運転状況の一例について説明する。
【0087】
本実施形態では、以下の条件の溶剤水溶液を原料液とした。
溶剤(NMP)濃度:3.5重量%、
不溶解固形分含有率(濃度):1000ppm、
水:残、
温度:50℃、
【0088】
そして、この原料液を7000kg/hrの割合で、本実施形態にかかる溶剤回収システム100に供給して、溶剤(NMP)の回収を行った。
【0089】
なお、溶剤回収システム100に供給される原料液に含まれる各成分の1時間あたりの供給量は、
溶剤(NMP):245kg/hr、
不溶解固形分 :7kg/hr、
水 :6748kg/hr
となる。
【0090】
原料液は、まず、限外濾過装置(ウルトラフィルター)11に供給され、不溶解固形分が分離される。
【0091】
限外濾過装置(ウルトラフィルター)11で不溶解固形分が分離された原料液は、逆浸透膜ユニット10に供給される。
【0092】
また、分離された不溶解固形分には、溶剤(NMP)を含む原料液が付着するが、固形分乾燥設備41において、乾燥分離され、第2供給ライン34を経て第2蒸留塔121に送られる。
【0093】
さらに、逆浸透膜ユニット10には、第1リボイラ22において凝縮した圧縮ベーパの凝縮液のうち、第1蒸留塔21の塔頂に還流液として還流される一部を除いた残部が第1返送ライン32を経て逆浸透膜ユニット10に戻される。
【0094】
その結果、逆浸透膜ユニット10には、
図1に示すように、10497kg/hrの割合で、溶剤(NMP)2.64重量%を含み、温度が64℃の溶剤水溶液が供給されることになる。
【0095】
そして、逆浸透膜ユニット10において分離された原料液よりも溶剤(NMP)を高い濃度で含む、以下の条件の逆浸透膜濃縮液が、予熱器35で予熱された後、自己蒸気機械圧縮式蒸留設備である第2蒸留機構部120に送られて溶剤(NMP)の分離に供される。
溶剤(NMP)濃度:7.27重量%
温度:64℃
供給量:3749kg/hr
【0096】
また、第1蒸留機構部20における第1蒸留塔21の、以下の条件の第1塔頂ベーパが、圧縮機23に送られて断熱圧縮され、103.2℃に昇温された後、第1リボイラ22に熱源として供給される。
溶剤(NMP)濃度:0.85重量%
供給量:3407kg/hr
ここで、圧縮機23に送られて断熱圧縮される第1塔頂ベーパの量3407kg/hrが、逆浸透膜ユニット10から第1蒸留塔に送られる逆浸透膜濃縮液の量3134kg/hrより多いのは、第1蒸留塔21には、第1還流ライン31を経て第1リボイラ22の凝縮液が第1蒸留塔21の塔頂に還流されることによる。
【0097】
さらに、第1リボイラ22において凝縮した圧縮ベーパの凝縮液は、その一部が、第1蒸留塔21の塔頂に還流液として還流(供給)され、残部が上述のように第1返送ライン32を経て逆浸透膜ユニット10に戻される。
【0098】
また、圧縮機23から入力されるエネルギーのうちの過剰分は、圧縮機23からの圧縮ベーパが第1リボイラ22で用いられた後、真空吸引ライン39から真空吸引ライン用コンデンサ40に導かれて冷却され、真空吸引ライン用コンデンサ40用の冷却水とともに外部に排出される。これにより、自己蒸気機械圧縮式蒸留設備(第1蒸留機構部)20の熱収支がとられることになる。
なお、真空吸引ライン用コンデンサ40で凝縮した凝縮液は、特に図示しないが、循環ポンプ36の吸い込み側に戻されるように構成されている。
【0099】
さらに、自己蒸気機械圧縮式蒸留設備である第1蒸留機構部20で分離された第1塔底液は、
溶剤(NMP)濃度:40重量%
温度:95℃
供給量:615kg/hr
の条件で、第2蒸留機構部120(後段溶剤回収システムY)に供給される。
【0100】
そして、第2蒸留機構部120(後段溶剤回収システムY)では、上述の第1塔底液が、ボイラから供給される水蒸気を熱源として、第2蒸留塔121において蒸留が行われ、
溶剤(NMP)濃度:100重量%
温度90℃、
回収量:245kg/hr
の条件で溶剤が回収される。
【0101】
すなわち、本実施形態にかかる溶剤回収システム100に供される原料液に含まれる溶剤(NMP)の量は245kg/hrであり、溶剤回収システム100においては、その全量245kgが回収されることになる。
【0102】
また、本実施形態にかかる溶剤回収システム100においては、前段溶剤回収システムXにおける水分除去量が6289kg/hrとなり、後段溶剤回収システムYにおける水分除去量(すなわち、第2蒸留塔121の塔頂ベーパとして取り出される水分)は、459kg/hr(463×(1−0.0097)=459kg/hr)となる。
【0103】
第1塔頂ベーパおよび第2塔頂ベーパの凝縮液は、第1返送ライン32および第2返送ライン132を経て、逆浸透膜ユニット10に戻されて、水と逆浸透膜濃縮液に分離された後、溶剤濃度が10ppmと低濃度の排水として系外に排出される。
【0104】
なお、前段溶剤回収システムXと後段溶剤回収システムYを備えた本実施形態の溶剤回収システム100における水分除去量の全量6748kg/hr(7000−245(溶剤)−7(不溶解固形分)=6748kg/hr)は、逆浸透膜ユニット10において分離される水分として系外に排出されることになる。
【0105】
上述のように、本実施形態にかかる溶剤回収システム100においては、相変化を伴わず省エネルギー効率の高い逆浸透膜ユニット10において多くの水を分離するとともに、省エネルギー効率の高い自己蒸気機械圧縮式蒸留設備(第2蒸留機構部)20において、逆浸透膜ユニット10で除去されずに残った水分のうちの大部分(6289kg/hr)を蒸発させる一方、蒸発させるべき水の量は459kg/hrと多くはないが、溶剤濃度が高く、沸点上昇幅が大きくて自己蒸気機械圧縮式蒸留設備を適用することが困難な、後段溶剤回収システムYでは、ボイラから供給される水蒸気を熱源とする蒸留装置(第2蒸留機構部120)を用いて蒸留を行うようにしているので、従来型の溶剤回収システム(すなわち、逆浸透膜ユニットと自己蒸気機械圧縮式蒸留設備とを組み合わせて用いるようにした構成を備えず、ボイラから供給される水蒸気を熱源とする蒸留装置のみを用いて蒸留を行い、本発明の場合と同様の高濃度の溶剤を回収しようとした場合の溶剤回収システム)と比べて、エネルギー消費量を大幅に削減することが可能になる。
【0106】
また、本実施形態にかかる溶剤回収システム100においては、第1リボイラ22において凝縮した圧縮ベーパの凝縮液のうち、還流液として第1蒸留塔21に戻される凝縮液を除いた残部の凝縮液を、逆浸透膜ユニット10に戻す第1返送ライン32とを備えているので、上述の返送ラインを備えていない点を除いて、本実施形態の溶剤システムに準じる構成を備えた溶剤回収システム(第1返送ラインを備えていない溶剤回収システム)と比べて、エネルギー消費量を削減することができる。
これは、圧縮ベーパの凝縮液のうち、還流液として第1蒸留塔に戻される凝縮液を除いた残部の凝縮液が第1返送ラインから逆浸透膜ユニット10に戻され、系外に排出されることがないことから、第1返送ラインを設けずに、上記残部の凝縮液を系外に排出するようにした場合のように、塔頂ベーパの溶剤濃度を低く抑える必要がなく、第1蒸留塔の高さを抑えて圧損を小さくすることが可能になるとともに、第1蒸留塔の塔頂への還流液量を減らして第1蒸留塔での蒸発量を少なくすることが可能になるため、圧縮機の負荷が削減されることによる。
【0107】
表2は、従来型の回収システム(蒸気式蒸留装置)を用いた場合と、上述の第1返送ラインを備えていない溶剤回収システムを用いた場合と、本発明の実施形態にかかる溶剤回収システム100を用いた場合のエネルギー消費量を示している。
【0109】
表2に示すように、従来型の溶剤回収システムにおいては、5454kW時のエネルギーが必要となるが、本実施形態にかかる溶剤回収システム100によれば710kW時のエネルギー消費量となり、大幅な省エネルギーを実現できることがわかる。
【0110】
また、本実施形態にかかる溶剤回収システム100のように、第1塔頂ベーパの溶剤濃度が0.5重量%以上1重量%以下の範囲となるように構成した場合、以下の点で、設備コストの削減を図ることが可能になる。
1)例えば、第1塔頂ベーパにおける溶剤濃度を50ppm程度に抑えるようにした場合に比べて、第1蒸留塔の高さを十分に低くすること、例えば約1/3程度にまで低背化することができる。
2)第1蒸留塔の塔頂への還流量を低減することが可能になるため、第1蒸留塔の断面積を削減して、第1蒸留塔を小径化することができる。
3)第1蒸留塔の高さを十分に低くすることができるので、圧損が小さくなり、圧縮機の必要ヘッドを抑えることが可能になるとともに、第1蒸留塔への還流量が少なくなり、第1蒸留塔での蒸発量が少なくなるため、圧縮機としてより小型で、圧縮率の低い、経済的な圧縮機を用いることができる。
【0111】
なお、上記実施形態では、溶剤がNMP(N−メチル−2−ピロリドン)である場合を例に挙げて説明したが、溶剤の種類に特別の制約はなく、溶剤としてDMF(ジメチルホルムアミド)、DMAc(ジメチルアセトアミド)などを含む水溶液から溶剤を回収する場合などに広く適用することが可能である。
【0112】
また、上記実施形態で説明し、あるいは、
図1に示した、原料液や、各部における被処理液の量、温度、溶剤濃度、圧力などに関する値は、あくまでも例示であって、本発明は、それらの値が上記実施形態の値とは異なる値となる場合を排除するものではない。
【0113】
本発明は、さらにその他の点においても上記実施形態に限定されるものではなく、発明の範囲内において、応用、変形を加えることが可能である。
(a)原料液を逆浸透膜濃縮液と水とに分離する逆浸透膜ユニット10と、(b)逆浸透膜濃縮液を蒸留する第1蒸留塔21と、第1リボイラ22と、第1蒸留塔の塔頂ベーパである第1塔頂ベーパを断熱圧縮し、第1リボイラに加熱源とする圧縮機23と、圧縮ベーパの凝縮液の一部を第1蒸留塔に還流するための還流ライン31と、残部の凝縮液を、逆浸透膜ユニットに戻す第1返送ライン32とを備え、かつ、第1蒸留塔の塔底液である第1塔底液の溶剤濃度が35重量%以上45重量%以下となるように構成された自己蒸気機械圧縮式蒸留設備(第1蒸留機構部)20とを備えた構成とする。