特許第6682062号(P6682062)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6682062
(24)【登録日】2020年3月27日
(45)【発行日】2020年4月15日
(54)【発明の名称】杭頭接合構造
(51)【国際特許分類】
   E02D 27/12 20060101AFI20200406BHJP
   E02D 5/34 20060101ALI20200406BHJP
【FI】
   E02D27/12 Z
   E02D5/34 A
【請求項の数】4
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2016-89051(P2016-89051)
(22)【出願日】2016年4月27日
(65)【公開番号】特開2017-25695(P2017-25695A)
(43)【公開日】2017年2月2日
【審査請求日】2019年2月18日
(31)【優先権主張番号】特願2015-141946(P2015-141946)
(32)【優先日】2015年7月16日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】595067442
【氏名又は名称】システム計測株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】510333025
【氏名又は名称】パイルフォーラム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】240000327
【弁護士】
【氏名又は名称】弁護士法人クレオ国際法律特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】久保 豊
(72)【発明者】
【氏名】加倉井 正昭
【審査官】 佐々木 創太郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−034458(JP,A)
【文献】 特開2013−072184(JP,A)
【文献】 特開2003−055963(JP,A)
【文献】 特開2011−106241(JP,A)
【文献】 特開2004−183220(JP,A)
【文献】 特開2002−256570(JP,A)
【文献】 特開2010−090570(JP,A)
【文献】 特開平11−247184(JP,A)
【文献】 特開2002−256552(JP,A)
【文献】 特開2011−220073(JP,A)
【文献】 国際公開第02/016701(WO,A1)
【文献】 韓国公開特許第10−2006−0036336(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 27/12
E02D 5/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも杭頭に鋼管が配置されている杭と、前記杭頭の周囲が覆われるように形成される鉄筋コンクリート体とを接合させるための杭頭接合構造であって、
前記杭頭の鋼管の外周面に周方向に間隔を置いて溶接接合されている連結材部と、
前記連結材部に隣接して形成されている収容部と、
前記収容部に収められた突出材部と、
前記突出材部が下端に溶接接合されている鉄筋部とを備えたことを特徴とする杭頭接合構造。
【請求項2】
前記連結材部の側部には、前記収容部として切欠き部が形成されているとともに、前記切欠き部に前記突出材部が嵌められていることを特徴とする請求項1に記載の杭頭接合構造。
【請求項3】
前記連結材部は、前記鉄筋部の下端を挟んだ両側に板状部を有するとともに、前記板状部にそれぞれ前記切欠き部が形成されており、
前記突出材部は、前記鉄筋部の下端を挟んだ両側に溶接接合されていることを特徴とする請求項2に記載の杭頭接合構造。
【請求項4】
周方向に間隔を置いて配置されている複数の鉄筋部の外側を囲むように環状のフープ筋が配置されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の杭頭接合構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも杭頭に鋼管が配置される杭と、フーチングや建物の底版部などの鉄筋コンクリート体とを接合させる際の杭頭接合構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
杭の上部を鋼管コンクリート杭にし、下部を場所打ちコンクリート杭にした場所打ち鋼管コンクリート杭や鋼管杭などのように、頭部に鋼管が配置された杭が知られている(特許文献1−3など参照)。
【0003】
そして、これらの杭頭には、上部構造からの荷重を杭本体に伝達させるために、鉄筋コンクリート製のフーチングが設けられる。このフーチングと杭頭とは、設計において考慮された荷重の伝達が行われる構造で接合されていなければならない。
【0004】
特許文献1,2には、こうした杭頭接合構造として、鉄筋籠方式、ヒゲ筋方式及びカプラー方式が開示されている。また、特許文献3には、鋼管杭の内周に環状の補強材(ダイアフラム)を配置した構造が開示されている。
【0005】
以下では、鋼管の外周面に鉄筋の下端を溶接接合させるヒゲ筋方式の杭頭接合構造について、さらに説明する。この鉄筋の溶接接合は、通常、杭の施工現場において行われる。また、この溶接接合は、鉄筋と鋼管との間の応力伝達が確実に行われるように、高い品質が要求される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−355940号公報
【特許文献2】特開平5−230841号公報
【特許文献3】特開2004−250984号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、杭の施工現場において高品質の溶接接合を行うには、熟練した作業者と良好な施工環境とが必要とされる。また、このような条件が揃ったとしても、溶接作業には時間がかかってしまう。
【0008】
そこで、本発明は、現場作業が省力化できるうえに、確実に応力の伝達が行える杭頭接合構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するために、本発明の杭頭接合構造は、少なくとも杭頭に鋼管が配置されている杭と、前記杭頭の周囲が覆われるように形成される鉄筋コンクリート体とを接合させるための杭頭接合構造であって、前記杭頭の鋼管の外周面に周方向に間隔を置いて溶接接合されている連結材部と、前記連結材部に隣接して形成されている収容部と、前記収容部に収められた突出材部と、前記突出材部が下端に溶接接合されている鉄筋部とを備えたことを特徴とする。
【0010】
ここで、前記連結材部の側部には、前記収容部として切欠き部が形成されているとともに、前記切欠き部に前記突出材部が嵌められている構成とすることができる。
【0011】
また、前記連結材部は、前記鉄筋部の下端を挟んだ両側に板状部を有するとともに、前記板状部にそれぞれ前記切欠き部が形成されており、前記突出材部は、前記鉄筋部の下端を挟んだ両側に溶接接合されている構成とすることができる。
【0012】
そして、連結材部は板状の連結板部とすることができ、突出材部は板状の突出板部とすることができる。
【0013】
例えば、前記切欠き部は前記連結板部の高さ方向の略中央の位置に略長方形に設けられているとともに、前記突出板部は前記切欠き部に嵌合可能な略長方形に成形されている構成とすることができる。
【0014】
また、前記切欠き部は前記連結板部の高さ方向の略中央の位置に略台形に設けられているとともに、前記突出板部は前記切欠き部に嵌合可能な略台形に成形されている構成であってもよい。
【0015】
さらに、前記切欠き部は前記連結板部の高さ方向の略中央の位置に略T字形又は略L字形に設けられているとともに、前記突出板部は前記切欠き部に嵌合可能な略T字形又は略L字形に成形されている構成とすることもできる。
【0016】
また、前記切欠き部は前記連結板部の下部に略長方形に設けられているとともに、前記突出板部は前記切欠き部に収容可能な略長方形に成形されている構成であってもよい。
【0017】
さらに、前記連結板部は、前記収容部を挟んだ上下の前記鋼管の外周面に溶接接合されている構成とすることもできる。
【0018】
そして、周方向に間隔を置いて配置されている複数の鉄筋部の外側を囲むように環状のフープ筋が配置されている構成とすることができる。
【0019】
さらに、前記連結板部の上部から前記鉄筋部に向けて張り出されているとともに、前記鉄筋部の両側に配置された一対の支え材を有する転倒防止材と、前記連結板部の下方から前記鉄筋部に向けて張り出されているとともに、前記鉄筋部の下端を載せるための載置面材を有する支持材とを備えた構成とすることができる。
【発明の効果】
【0020】
このように構成された本発明の杭頭接合構造は、杭頭の鋼管に溶接接合される連結材部と、その連結材部に隣接する収容部に収められる突出材部と、突出材部が下端に溶接接合される鉄筋部とを備えている。
【0021】
この鋼管と連結材部との溶接接合及び突出材部と鉄筋部との溶接接合は、工場などの施工現場以外の良好な環境下で行うことができる。また、杭の施工現場では、収容部に突出材部を収めることで、鉄筋部を杭頭に取り付けることができる。
【0022】
このため、現場作業が省力化できるうえに、高品質の溶接接合を介して、鉄筋部と突出材部と連結材部と鋼管との間で力が伝達されるので、確実に応力の伝達を行わせることができる。
【0023】
また、杭頭の定着筋となる鉄筋部が配置される位置が、杭軸から連結材部の幅分だけ外側になるため、鋼管の外周面に定着筋を密着させる場合に比べて、鉄筋部の抵抗モーメントを増加させることができる。
【0024】
さらに、連結材部の側部に形成された切欠き部に突出材部が嵌められる構成とすることで、連結材部の剛性による補強効果を期待することができる。このような連結材部の切欠き部と突出材部との嵌合の組み合わせは、平面視交差形、側面視略長方形、側面視略台形、側面視略T字形、側面視略L字形など、様々な形状にすることができる。
【0025】
また、周方向に間隔を置いて配置される複数の鉄筋部の外側をフープ筋で囲むことで、フープ筋の拘束による補強効果によって、接合強度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本実施の形態の杭頭接合構造の構成を説明する部分拡大断面図である。
図2】本実施の形態の場所打ち鋼管コンクリート杭の全体構成を説明する斜視図である。
図3】鉄筋部を鋼管部の外周面側に取り付ける工程を説明する説明図である。
図4】杭頭接合構造に力が作用したときの伝達経路を説明する図であって、(a)は鉄筋部に引張力が作用したときの状態を示す説明図、(b)は鉄筋部に圧縮力が作用したときの状態を示す説明図である。
図5】鉄筋コンクリート体の配筋に合わせて鉄筋部の位置を調整する工程を説明する平面図である。
図6】実施例1の杭頭接合構造の構成を説明する部分拡大断面図である。
図7】実施例2の杭頭接合構造の構成を説明する部分拡大断面図である。
図8】実施例3の杭頭接合構造の構成を説明する部分拡大断面図である。
図9】実施例3の杭頭接合構造の構成を説明する部分拡大斜視図である。
図10】実施例4の杭頭接合構造の構成を説明する図であって、(a)は収容部の上下に連結板部が設けられる構成を示す部分拡大断面図、(b)は収容部の上方にのみ連結板部が設けられる構成を示す部分拡大断面図である。
図11】実施例5の杭頭接合構造の構成を説明する部分拡大斜視図である。
図12】実施例5の杭頭接合構造の構成を説明する部分拡大平面図である。
図13】実施例5の場所打ち鋼管コンクリート杭の全体構成を説明する平面図である。
図14】実施例6の杭頭接合構造の構成を説明する部分拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。図1は、本実施の形態で説明する杭としての場所打ち鋼管コンクリート杭1の杭頭11周辺の構成を説明するための部分拡大断面図、図2は、場所打ち鋼管コンクリート杭1の全体構成を説明する斜視図である。
【0028】
まず、全体構成から説明すると、場所打ち鋼管コンクリート杭1は、図2に示すように、上部に形成される鋼管コンクリート部2と、下部に形成される鉄筋コンクリート部12とを備えている。
【0029】
また、場所打ち鋼管コンクリート杭1の杭頭11は、鉄筋コンクリート体としてのフーチング3に接続される。そして、建物などの基礎に作用する上載荷重は、このフーチング3を介して場所打ち鋼管コンクリート杭1に伝達される。
【0030】
要するに、場所打ち鋼管コンクリート杭1の杭頭11の周囲は、フーチング3を形成するコンクリートによって覆われることになる。なお、フーチング3の下方には、均し地盤31を模式的に図示した。また、鉄筋コンクリート体は、建物の底版部や基礎梁などであってもよい。
【0031】
さらに、場所打ち鋼管コンクリート杭1は、鉄筋コンクリート部12の下部に截頭円錐状の拡底部が設けられる拡底杭にすることもできるし、全長の杭径が一定の円柱状の杭にすることもできる。
【0032】
フーチング3の下方に形成される鋼管コンクリート部2は、図1に示すように、円筒状の鋼管によって形成される鋼管部21と、その内空に充填されるコンクリート部22とによって主に構成される。ここで、鋼管部21には、例えば直径が700mm〜2500mm程度の鋼管が使用できる。
【0033】
そして、図2に示すように、杭頭11の鋼管部21の外周面21aには、複数の鉄筋部6,・・・が取り付けられる。この鋼管部21から上方に向けて突出された鉄筋部6,・・・は、フーチング3内に埋設される。
【0034】
地震時には、このフーチング3が杭下部より大きく水平移動することによって、杭頭11の接合部に大きな曲げモーメントやせん断力が作用することになる。以下では、この鉄筋部6と鋼管部21とを接続させる本実施の形態の杭頭接合構造について、図1を参照しながら詳細に説明する。
【0035】
この杭頭接合構造は、杭頭11の鋼管部21の外周面21aに周方向に間隔を置いて接合される連結材部としての連結板部4と、連結板部4の切欠き部42に嵌められる突出材部としての突出板部5と、突出板部5の側面に接合される鉄筋部6とによって主に構成される。
【0036】
連結板部4は、横向きの略凹字状に形成された鋼板などの板材である。すなわち、長方形の鋼板の長辺側の側部において、高さ方向の略中央の位置を略長方形に切り欠いて切欠き部42を設けることで、側面視略凹字状に形成される。
【0037】
要するに、本実施の形態の杭頭接合構造では、連結板部4に隣接して形成される収容部が、連結板部4に加工される長方形の鋼板の切り欠かれる部分となる切欠き部42として設けられる。
【0038】
この連結板部4の切欠き部42とは反対側の長辺は、アーク溶接などによる溶接接合部41を介して鋼管部21の外周面21aに接合される。この連結板部4の長辺は、鋼管部21の軸方向と略平行となる。
【0039】
一方、突出板部5は、切欠き部42の内形(内周形状)と略同じ又は僅かに小さい略長方形の外形(外周形状)に形成される。突出板部5を切欠き部42に嵌合させたときに、突出板部5が外れやすいようであれば、点付け溶接などで仮止めすることもできる。
【0040】
また、突出板部5の側面には、鉄筋部6の下端61がアーク溶接やフレア溶接などによる溶接接合部51を介して接合される。すなわち、突出板部5は、図3に示すように、鉄筋部6側に接合されている。この鉄筋部6には、異形鉄筋や丸鋼などが使用できる。
【0041】
次に、本実施の形態の場所打ち鋼管コンクリート杭1の構築方法について説明する。
【0042】
まず、工場などにおいて、杭頭11に配置される鋼管部21の外周面21aに対して、周方向に設計で決められた間隔を置いて連結板部4をアーク溶接によって接合し、溶接接合部41を設ける。
【0043】
また、鉄筋部6の下端61に対しては、フレア溶接によって突出板部5の側面を接合し、溶接接合部51を設ける。これらの溶接された部材は、他の場所打ち鋼管コンクリート杭1を構成する部材とともに、杭の施工現場まで搬送される。
【0044】
一方、杭の施工現場においては、地中にアースドリル工法やリバース工法などによって杭孔(図示省略)が掘削される。そして、クレーンによって杭孔の上方に鋼管部21を吊り上げ、杭孔の上部に鋼管部21を建て込む。この段階では、鋼管部21の内側は、空洞又は掘削用の安定液で満たされた状態となっている。
【0045】
続いて、杭孔の上方に鉄筋籠(図示省略)を吊り上げ、鋼管部21の中に鉄筋コンクリート部12用の鉄筋籠を挿入し、沈降させる。鉄筋籠は、鉄筋コンクリート部12となる杭孔の下部まで沈降される。
【0046】
このように鋼管部21と鉄筋籠を杭孔の所定の位置に配置した後に、杭孔にトレミー管を建て込んで、鉄筋コンクリート部12及び鋼管部21の内部側のコンクリート部22となるコンクリートを流し込む。
【0047】
このコンクリート部22は、図1に示すように鋼管部21の上端まで連続して打ち上げられる。そして、図3の左側に図示したように、鋼管部21の上端付近に取り付けられた連結板部4の切欠き部42に対して、鉄筋部6の下端61の突出板部5を嵌合させる。
【0048】
この切欠き部42と突出板部5との嵌合が、密着度の高い組み合わせであれば、ハンマなどで下端61を側方から叩くなどして押し込むだけで、鉄筋部6は連結板部4に固定される。
【0049】
一方、切欠き部42と突出板部5との嵌合が、密着度の低い組み合わせである場合は、点付け溶接によって突出板部5を連結板部4に仮固定する。突出板部5と連結板部4とは、フーチング3のコンクリートによって固定されるので、簡単な点付け溶接による仮固定であっても問題ない。
【0050】
そして、すべての連結板部4,・・・に対して鉄筋部6,・・・を取り付け、フーチング3用の鉄筋を組んだ後に、コンクリートを打設してフーチング3を完成させる。
【0051】
次に、本実施の形態の場所打ち鋼管コンクリート杭1の杭頭接合構造の作用について説明する。
【0052】
このように構成された本実施の形態の場所打ち鋼管コンクリート杭1の杭頭接合構造は、側部に切欠き部42が形成されて杭頭11の鋼管部21に溶接接合部41によって接合される連結板部4と、その切欠き部42に嵌められる突出板部5と、突出板部5の側面に溶接接合部51によって接合される鉄筋部6とを備えている。
【0053】
この鋼管部21と連結板部4との溶接接合部41及び突出板部5と鉄筋部6との溶接接合部51は、工場などの施工現場以外の良好な環境下で、熟練した工員の作業によって設けることができる。
【0054】
また、場所打ち鋼管コンクリート杭1の施工現場では、連結板部4の切欠き部42に突出板部5を嵌めることで、鉄筋部6を杭頭11に位置する鋼管部21に取り付けることができる。
【0055】
このため、現場作業が省力化できるうえに、高品質の溶接接合部41,51を介して、鉄筋部6と突出板部5と連結板部4と鋼管部21との間で力が伝達されるので、確実に応力の伝達を行わせることができる。
【0056】
図4には、本実施の形態の杭頭接合構造の応力伝達経路を示した。図4(a)は、鉄筋部6に矢印で示すような上向きの引張力P1が作用したときの応力伝達経路を示している。
【0057】
せん断力や付加モーメントによる鉄筋部6の内部を伝達された応力は、溶接接合部51を介して突出板部5に伝達される。そして、上向きの力が作用する突出板部5の上面は、連結板部4の切欠き部42の上方の部分から支圧(抗力)を受ける。
【0058】
さらに、連結板部4に伝達された応力は、溶接接合部41を介して鋼管部21に伝搬され、杭頭11から場所打ち鋼管コンクリート杭1の杭本体に伝達されることになる。
【0059】
また、鉄筋部6の外側に環状のフープ筋62(図8,9参照)が配置される場合は、鉄筋部6の下端61が外側に開く力がフープ筋62の拘束力によって抑えられるので、接合強度をより高めることができる。
【0060】
一方、図4(b)は、鉄筋部6に矢印で示すような下向きの圧縮力P2が作用したときの応力伝達経路を示している。せん断力や付加モーメントによる鉄筋部6の内部を伝達された応力は、溶接接合部51を介して突出板部5に伝達される。
【0061】
そして、下向きの力が作用する突出板部5の下面は、連結板部4の切欠き部42の下方の部分から支圧(抗力)を受ける。さらに、連結板部4に伝達された応力は、溶接接合部41を介して鋼管部21に伝搬され、杭頭11から場所打ち鋼管コンクリート杭1の杭本体に伝達されることになる。
【0062】
このように、鉄筋部6に対して施工現場で溶接を行わなくても、鉄筋部6と鋼管部21との間で、高い接合強度が確保される構造によって応力を伝達させることができる。
【0063】
また、杭頭11の定着筋となる鉄筋部6が配置される位置が、杭軸(杭中心)から連結板部4の幅分(杭の径方向長さ分)だけ外側になるため、鋼管の外周面に定着筋を密着させる場合に比べて、鉄筋部6,・・・の抵抗モーメントを増加させることができる。
【0064】
この抵抗モーメントは、定着筋を鋼管に密着させる場合の2倍程度まで増加させることができる。この結果、鉄筋部6,・・・の配筋量を減らすことができる。配筋量が削減できれば、鉄筋部6,・・・の周方向の間隔が広くなるなど過密配筋が解消されるので、フーチング3のコンクリートを鉄筋部6,・・・の周囲に充分にまわり込ませることができる。
【0065】
また、図5に示すように、連結板部4に対して突出板部5が傾くように切欠き部42に収容させることもできる。例えば、フーチング3の鉄筋が、連結板部4に対して真っ直ぐに収容された突出板部5の鉄筋部6(実線で図示)と干渉する場合に、矢印で示した方向に鉄筋部6(二点鎖線で図示)を避けることができる。
【0066】
鉄筋コンクリートは、配筋の位置の僅かなずれで強度が変わることはない。このため、連結板部4に対して突出板部5を傾けた場合でも、所望される接合強度が確保できるのであれば、干渉や局所的な過密状態を避けるために、鉄筋部6の位置を微調整することができる。
【0067】
本実施の形態の杭頭接合構造のように、連結板部4の切欠き部42に突出板部5を収容させる鉄筋部6の取り付け構造であれば、連結板部4との接続状態を保ったままで簡単に突出板部5を傾けることができる。
【0068】
そして、このような杭頭接合構造が設けられた場所打ち鋼管コンクリート杭1であれば、曲げ耐力及びせん断耐力が向上し、耐震性能の高い杭とすることができる。
【実施例1】
【0069】
以下、前記した実施の形態とは別の形態である実施例1の場所打ち鋼管コンクリート杭1Aの杭頭接合構造について、図6を参照しながら説明する。なお、前記実施の形態で説明した内容と同一乃至均等な部分の説明については、同一用語又は同一符号を付して説明する。
【0070】
この実施例1では、前記実施の形態で説明した連結板部4の切欠き部42及び突出板部5の形状とは異なる形状の連結材部としての連結板部4Aの切欠き部42A及び突出材部としての突出板部5Aの形状について説明する。
【0071】
前記実施の形態の切欠き部42及び突出板部5は、側面視略長方形の形状であった。これに対して、本実施例1の切欠き部42A及び突出板部5Aの形状は、側面視略台形となる。
【0072】
詳細には、切欠き部42A及び突出板部5Aの形状は、鋼管部21側が台形の上底(短辺)となって、鉄筋部6側が台形の下底(長辺)となる。そして、鉄筋部6に向けて広がるテーパが、切欠き部42A及び突出板部5Aの上下に形成される。
【0073】
このような嵌合の組み合わせとなる切欠き部42A及び突出板部5Aは、切欠き部42Aの内周形状と突出板部5Aの外周形状とが略同一の大きさであっても、ハンマ等で押し込むことによって、これらを嵌合させることができる。
【0074】
このため、点付け溶接などの仮固定を行わなくとも、鉄筋部6を鋼管部21に取り付けることができるようになる。また、切欠き部42Aに対して突出板部5Aを隙間なく嵌合させることで、応力の伝達性能を向上させることができる。
【0075】
なお、他の構成及び作用効果については、前記実施の形態又は他の実施例と略同様であるので説明を省略する。
【実施例2】
【0076】
以下、前記した実施の形態及び実施例1とは別の形態である実施例2の場所打ち鋼管コンクリート杭1Bの杭頭接合構造について、図7を参照しながら説明する。なお、前記実施の形態又は実施例1で説明した内容と同一乃至均等な部分の説明については、同一用語又は同一符号を付して説明する。
【0077】
この実施例2では、前記実施の形態及び実施例1で説明した連結板部4,4A及び突出板部5,5Aの形状とは異なる形状の連結材部としての連結板部4B及び突出材部としての突出板部5Bの形状について説明する。
【0078】
この連結板部4Bは、側面視略C字状に形成された鋼板などの板材である。すなわち、長方形の鋼板の長辺側の側部から中央部にかけて、高さ方向の略中央の位置を横向きの略T字形に切り欠いて切欠き部42Bを設けることで、略C字状に形成される。
【0079】
一方、突出板部5Bは、切欠き部42Bとなる内空より一回り小さい側面視略T字形の外形に形成される。そして、切欠き部42Bの狭隘部43に対しては、突出板部5Bの首部52が収容される。
【0080】
このように略T字形の切欠き部42Bに略T字形の突出板部5Bを嵌合させる組み合わせにすることで、鉄筋部6が鋼管部21から離隔する方向への転倒を防ぐことができる。
【0081】
また、突出板部5Bの幅(図7の紙面直交方向)がある程度以上に広く形成されていれば、鉄筋部6が紙面直交方向に傾いても、切欠き部42Bの内周面に突出板部5Bの外周面が接触して外れないので、鉄筋部6の転倒を防ぐことができる。
【0082】
このため、点付け溶接などの仮固定を行わなくとも、鉄筋部6を鋼管部21に取り付けることができるようになる。また、鉄筋部6と鋼管部21との距離が広がる方向の力に対しては、突出板部5Bの拡幅部が連結板部4Bに引っ掛かることによって連結力を高めることができる。
【0083】
なお、他の構成及び作用効果については、前記実施の形態又は他の実施例と略同様であるので説明を省略する。
【実施例3】
【0084】
以下、前記した実施の形態及び実施例1,2とは別の形態である実施例3の場所打ち鋼管コンクリート杭1Cの杭頭接合構造について、図8,9を参照しながら説明する。なお、前記実施の形態又は実施例1,2で説明した内容と同一乃至均等な部分の説明については、同一用語又は同一符号を付して説明する。
【0085】
この実施例3では、前記実施の形態及び実施例1,2で説明した連結板部4,4A,4B及び突出板部5,5A,5Bの形状とは異なる形状の連結材部としての連結板部4C及び突出材部としての突出板部5Cの形状について説明する。
【0086】
連結板部4Cは、側面視略逆L字状に形成された鋼板などの板材である。すなわち、長方形の鋼板の長辺側の側部の下部を略長方形に切り欠いて切欠き部42Cを設けることで、略逆L字状に形成される。
【0087】
一方、突出板部5Cは、切欠き部42Cの内周形状と略同一の外周形状を有する略長方形の外形に形成される。また、突出板部5Cは、底面の位置が鉄筋部6の下端面の位置と略同じ高さになるように、溶接接合部51によって下端61に接合される。
【0088】
また、周方向に間隔を置いて配置される複数の鉄筋部6,・・・の外側を囲むように、環状のフープ筋62が下端61の高さに配置される。さらに、連結板部4Cの上部には、転倒防止材7が取り付けられる。
【0089】
この転倒防止材7は、連結板部4Cの上端面に固定される上面材72と、その上面材72に取り付けられる一対の支え材71,71とによって主に構成される。
【0090】
支え材71,71は、図9に示すように、短冊状に形成されて鉄筋部6に向けて張り出される。そして、鉄筋部6の両側は、支え材71,71の先端に挟まれることになる。
【0091】
また、連結板部4Cの下部には、支持材8が取り付けられる。この支持材8は、連結板部4Cの下端面に固定される載置面材81と、その載置面材81に取り付けられる一対の繋ぎ材82,82とによって主に構成される。
【0092】
この繋ぎ材82,82は、短冊状に形成されて、連結板部4Cの鋼管部21側から切欠き部42Cの側面に張り出される。このため、切欠き部42Cに収容された突出板部5Cの下部は、一対の繋ぎ材82,82に挟まれることになる。
【0093】
また、載置面材81は、先端がフープ筋62の位置まで張り出される。このため、載置面材81の上には、鉄筋部6の下端61とフープ筋62とを載せることができる。
【0094】
このように連結板部4Cに転倒防止材7と支持材8とが予め取り付けられていれば、鉄筋部6の下端61に接合された突出板部5Cを切欠き部42Cに収容した状態で、鉄筋部6を安定させることができる。
【0095】
すなわち、鉄筋部6が周方向(図8の紙面直交方向)に傾こうとすると、支え材71,71に接触して転倒が防止される。また、突出板部5Cは、繋ぎ材82,82に接触して、切欠き部42Cからの抜け出しが防止される。
【0096】
また、鉄筋部6の下端面は、載置面材81に載せられて起立状態を保つことができる。さらに、鉄筋部6の下端61の外側に配置されるフープ筋62も、載置面材81に載せられて、落下が防止される。
【0097】
このように鉄筋部6の転倒防止材7と支持材8とを備えた構成であれば、点付け溶接などによる仮止めなども行う必要がなくなり、施工現場において短時間で鉄筋部6,・・・を鋼管部21の外周面21a側に取り付けることができる。
【0098】
なお、他の構成及び作用効果については、前記実施の形態又は他の実施例と略同様であるので説明を省略する。
【実施例4】
【0099】
以下、前記した実施の形態及び実施例1−3とは別の形態である実施例4の場所打ち鋼管コンクリート杭1D,1Eの杭頭接合構造について、図10を参照しながら説明する。なお、前記実施の形態又は実施例1−3で説明した内容と同一乃至均等な部分の説明については、同一用語又は同一符号を付して説明する。
【0100】
本実施例4では、比較的杭径の小さい小径杭に適した杭頭接合構造について説明する。まず、図10(a)に示した、杭としての場所打ち鋼管コンクリート杭1Dについて説明する。
【0101】
この杭頭接合構造は、杭頭11の鋼管部21の外周面21aに周方向に間隔を置いて接合される連結板部4D1,4D2と、上下の連結板部4D1,4D2間に隣接して形成される収容部44と、その収容部44に収められる突出板部5Dと、突出板部5Dの側面に接合される鉄筋部6とによって主に構成される。
【0102】
この連結板部4D1,4D2は、長方形の鋼板などの一対の板材によって形成される。それぞれの連結板部4D1,4D2は、収容部44の高さ分だけの間隔を高さ方向(杭軸と平行する方向)に置いて、溶接接合部41を介して鋼管部21の外周面21aに接合される。すなわち連結板部4D1,4D2は、収容部44を挟んだ上下に溶接接合される。
【0103】
そして、略長方形となる収容部44は、上辺と下辺とが連結板部4D1の下縁と連結板部4D2の上縁とによって形成され、1側辺が鋼管部21の外周面21aによって形成される。
【0104】
また、突出板部5Dは、収容部44の内形(内周形状)と略同じ又は僅かに小さい略長方形の外形(外周形状)に形成される。突出板部5Dを収容部44に嵌合させたときに、突出板部5Dが外れやすいようであれば、点付け溶接などで仮止めすることもできる。
【0105】
一方、図10(b)に示した杭としての場所打ち鋼管コンクリート杭1Eの杭頭接合構造は、杭頭11の鋼管部21の外周面21aに周方向に間隔を置いて接合される連結板部4Eと、連結板部4Eの下方に隣接して形成される収容部45と、その収容部45に収められる突出板部5Eと、突出板部5Eの側面に接合される鉄筋部6とによって主に構成される。
【0106】
この連結板部4Eは、長方形の鋼板などの板材によって形成され、溶接接合部41を介して鋼管部21の上端付近の外周面21aに接合される。一方、収容部45は、連結板部4Eの下縁と鋼管部21の外周面21aとによって形成される内周形状と略同一の外周形状を有する略長方形の外形に形成される。
【0107】
また、突出板部5Eは、底面の位置が鉄筋部6の下端面の位置と略同じ高さになるように、溶接接合部51によって下端61に接合される。突出板部5Eを収容部45に収容させる際には、点付け溶接などで仮止めすることができる。
【0108】
また、前記実施例3で説明した転倒防止材7を連結板部4Eに取り付け、鋼管部21の外周面21aに支持材8を取り付けておくことによっても、鉄筋部6に接合された突出板部5Eを収容部45に収容した状態で、鉄筋部6を安定させることができる。
【0109】
このように簡略化した連結板部4D1,4D2,4Eを使用し、突出板部5D,5Eの側面を鋼管部21の外周面21aに対峙させる構成であっても、小径杭であれば、鉄筋部6と鋼管部21との間で確実に応力の伝達を行わせることができる。
【0110】
また、連結板部4D1,4D2が収容部44を挟んだ上下に溶接接合部41を介して接合されていれば、鉄筋部6に作用する引張力P1と圧縮力P2の両方向の力に対して抵抗させることができる。
【0111】
なお、他の構成及び作用効果については、前記実施の形態又は他の実施例と略同様であるので説明を省略する。
【実施例5】
【0112】
以下、前記した実施の形態及び実施例1−4とは別の形態である実施例5の場所打ち鋼管コンクリート杭1Fの杭頭接合構造について、図11−13を参照しながら説明する。なお、前記実施の形態又は実施例1−4で説明した内容と同一乃至均等な部分の説明については、同一用語又は同一符号を付して説明する。
【0113】
この実施例5では、前記実施の形態及び実施例1−4で説明した板状の連結板部4,4A−4C及び突出板部5,5A−5Cの形状とは異なる形態の連結材部91及び突出材部92について説明する。
【0114】
連結材部91は、略平行な一対の板状部911,911と、その板状部911,911の側縁間を接続する接続部912とによって主に構成される。例えば、鋼板などを折り曲げ加工することによって平面視略U字状に成形することができる。
【0115】
接続部912によって一体化される板状部911,911の間隔は、鉄筋部6の径と略同じ又は僅かに広い間隔に設定される。そして、側面視略長方形の板状部911の長辺側の側部の高さ方向の略中央を略長方形に切り欠いて切欠き部914を設けることで、側面視略C字状(略凹字状)に連結材部91が形成される。
【0116】
この連結材部91は、アーク溶接などによる溶接接合部913,913を介して鋼管部21の外周面21aに接合される。この連結材部91は、鋼管部21の軸方向と略平行に延伸される。
【0117】
一方、突出材部92は、切欠き部914の高さと略同じ又は僅かに短い長さの柱状材によって形成される。例えば、鉄筋部6と同じ径の鉄筋を切断して突出材部92とすることができる。
【0118】
鉄筋部6の下端61の先端より少し上方の両側面に、一対の突出材部92,92がアーク溶接やフレア溶接などによる溶接接合部921,921を介してそれぞれ接合される。
【0119】
このようにして下端61を挟んだ両側に突出材部92,92が溶接接合された鉄筋部6は、図11に示すように、鋼管部21の上端付近に取り付けられた連結材部91の切欠き部914,914に対して突出材部92,92を嵌合させる。
【0120】
この切欠き部914,914と突出材部92,92との嵌合が、密着度の高い組み合わせであれば、ハンマなどで下端61を側方から叩くなどして押し込むだけで、鉄筋部6は連結材部91に強固に固定される。
【0121】
一方、切欠き部914と突出材部92との嵌合が、密着度の低い組み合わせである場合は、必要に応じて点付け溶接によって突出材部92を連結材部91の板状部911に仮固定することもできる。
【0122】
但し、鉄筋部6の両側に突出材部92,92が接合され、その両側の突出材部92,92を同じく鉄筋部6の両側に配置された板状部911,911に嵌める構成であるため、点付け溶接などによる仮止めなどを行わなくても安定しており、施工現場において短時間で鉄筋部6,・・・を鋼管部21の外周面21a側に取り付けることができる。
【0123】
図12は、連結材部91に鉄筋部6が取り付けられた状態を示した平面図である。この図を見るとわかるように、鉄筋部6の下端61に側面が溶接接合された突出材部92は、一部が切欠き部914に収容されるとともに残りは側方にはみ出して、板状部911に対して平面視略十字形又は略L字形に交差された構成となる。
【0124】
このため、鉄筋部6に上向き又は下向きの力が作用しても、連結材部91の板状部911,911に平面視で交差する突出材部92,92が引っ掛かりとなって、連結材部91から支圧(抗力)を受けることができる。
【0125】
このように、鋼管部21に溶接接合された連結材部91に鉄筋部6が強固に連結されれば、鉄筋部6と鋼管部21との間で高い接合強度が確保される構造となって応力を伝達させることができる。
【0126】
また、連結材部91に対して平面視で突出材部92,92を結ぶ線が傾くように切欠き部914,914に収容させることもできる。例えば、フーチング3の鉄筋が鉄筋部6と干渉する場合に、少しずらして干渉を避けることができる。
【0127】
鉄筋コンクリートは、配筋の位置の僅かなずれで強度が変わることはない。このため、連結材部91に対して突出材部92,92を傾けた場合でも、所望される接合強度が確保できるのであれば、干渉や局所的な過密状態を避けるために、鉄筋部6の位置を微調整することができる。
【0128】
なお、他の構成及び作用効果については、前記実施の形態又は他の実施例と略同様であるので説明を省略する。
【実施例6】
【0129】
以下、前記した実施の形態及び実施例1−5とは別の形態である実施例6の場所打ち鋼管コンクリート杭1Gの杭頭接合構造について、図14を参照しながら説明する。なお、前記実施の形態又は実施例1−5で説明した内容と同一乃至均等な部分の説明については、同一用語又は同一符号を付して説明する。
【0130】
この実施例6では、前記実施例2で説明した連結板部4Bと類似した形状の連結材部としての連結板部4G及び突出材部としての突出板部5Gの形状について説明する。
【0131】
この連結板部4Gは、長方形の鋼板などの板材である。そして、この鋼板の長辺側の側部から中央部にかけて、高さ方向の略中央又は下方側の位置が鉤形(横向きの略L字形)に切り欠かれて切欠き部42Gが設けられる。
【0132】
一方、突出板部5Gは、切欠き部42Gとなる内空より一回り小さい側面視略L字形の外形に形成される。すなわち突出板部5Gは、切欠き部42Gの狭隘部43Gに収容される胴部53と、胴部53の側部から略直角に垂下される垂下部54とによって主に構成される。
【0133】
このように略L字形(鉤形)の切欠き部42Gに略L字形(鉤形)の突出板部5Gを嵌合させる組み合わせにすることで、鉄筋部6が鋼管部21から離隔する方向への転倒を防ぐことができる。
【0134】
また、突出板部5Gの幅(図14の紙面直交方向)がある程度以上に広く形成されていれば、鉄筋部6が紙面直交方向に傾いても、切欠き部42Gの内周面に突出板部5Gの外周面が接触して外れないので、鉄筋部6の転倒を防ぐことができる。
【0135】
このため、点付け溶接などの仮固定を行わなくとも、鉄筋部6を鋼管部21に取り付けることができるようになる。また、鉄筋部6と鋼管部21との距離が広がる方向の力に対しては、突出板部5Gの拡幅部が連結板部4Gに引っ掛かることによって連結力を高めることができる。
【0136】
なお、他の構成及び作用効果については、前記実施の形態又は他の実施例と略同様であるので説明を省略する。
【0137】
以上、図面を参照して、本発明の実施の形態及び実施例を詳述してきたが、具体的な構成は、この実施の形態及び実施例に限らず、本発明の要旨を逸脱しない程度の設計的変更は、本発明に含まれる。
【0138】
例えば、前記実施の形態又は実施例では、少なくとも杭頭11に鋼管部21が配置される杭として場所打ち鋼管コンクリート杭1,1A,1B,1C,1D,1E,1Fを例に説明したが、これに限定されるものではなく、全長が鋼管となる鋼管杭でも、杭頭11の外殻に鋼管が配置されたプレストレスト杭であっても、本発明の杭頭接合構造を適用することができる。さらに、杭は円柱状の丸杭だけでなく、角柱状の角杭にも適用することができる。
【0139】
また、前記実施例3では、転倒防止材7及び支持材8を備えた構成について説明したが、これらの転倒防止材7や支持材8は、前記実施の形態又は実施例1,2の連結板部4,4A,4Bにおいても、同様に適用することができる。
【0140】
さらに、前記実施例5では、平面視略U字形の連結材部91について説明したが、これに限定されるものではなく、平面視略凹字形、又は略平行な一対の板状部が直接、鋼管部21の外周面21aに溶接接合される構成などであってもよい。
【0141】
また、前記実施例5では、鉄筋部6と同じ径の鉄筋によって形成された突出材部92を例に説明したが、これに限定されるものではなく、角材や形鋼などを突出材部にして、鉄筋部6の側面に突合わせ溶接などによって接合させることもできる。
【符号の説明】
【0142】
1 場所打ち鋼管コンクリート杭(杭)
11 杭頭
21 鋼管部(鋼管)
21a 外周面
3 フーチング(鉄筋コンクリート体)
4 連結板部
41 溶接接合部
42 切欠き部(収容部)
5 突出板部
51 溶接接合部
6 鉄筋部
61 下端
62 フープ筋
1A 場所打ち鋼管コンクリート杭(杭)
4A 連結板部
42A 切欠き部(収容部)
5A 突出板部
1B 場所打ち鋼管コンクリート杭(杭)
4B 連結板部
42B 切欠き部(収容部)
5B 突出板部
1C 場所打ち鋼管コンクリート杭(杭)
4C 連結板部
42C 切欠き部(収容部)
5C 突出板部
7 転倒防止材
71 支え材
8 支持材
81 載置面材
1D,1E 場所打ち鋼管コンクリート杭(杭)
4D1,4D2,4E 連結板部
44,45 収容部
5D,5E 突出板部
1F 場所打ち鋼管コンクリート杭(杭)
91 連結材部
911 板状部
913 溶接接合部
914 切欠き部
92 突出材部
921 溶接接合部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14