(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
従来、槽体底部に設けられた排水口を開閉する装置として、遠隔操作によって弁体の上下動操作を行う、遠隔操作式排水栓装置が知られている。
【0003】
特許文献1に記載の遠隔操作式排水栓装置は、上下動を行うことにより排水口の開閉を行う弁体、手動操作又は電気信号に基づいて操作を行う操作部、操作部の操作を弁体へと伝達するレリースワイヤより構成されている。レリースワイヤは筒状のアウターチューブと、当該アウターチューブ内を摺動可能なインナーワイヤより構成されており、操作部に操作が加わると、インナーワイヤが弁体側へと突出し、弁体を突き上げることで弁体が上下動する構造となっている。又、特許文献1に記載の遠隔操作式排水栓装置は、操作部の操作を弁体へと伝達した際、弁体の上昇の保持及び保持の解除を行うためのロック機構が設けられている。
ロック機構はケーシング体、ロック軸、回転歯(回転ギア)、傾斜歯(下部ギア)、保持歯(上部ギア)より構成されている。回転歯はリング状の回転部材の周囲に突設されており、ロック軸を軸とした回動のみ可能となる様に取り付けられている。尚、傾斜歯及び保持歯はケーシング体に固定されている。又、ロック軸はレリースワイヤ端部に設けられたリターンスプリングによって常時操作部側へと付勢されている。
【0004】
上記ロック機構の動作について、
図11を用いて以下に説明する。尚、
図11はロック機構の回転歯の動きを容易に理解するため、回転歯、傾斜歯、保持歯を展開した参考図であって、回転歯の動きを矢印にて記載している。
まず、弁体が下降した状態より(この時、ロック軸及び回転歯は上昇した状態である)、操作部に操作を加えると、当該操作に伴いロック軸及び回転歯が押し下げられる。当該押し下げに伴い、インナーワイヤがアウターチューブ内を弁体側に摺動し、弁体を下方から突き上げ、排水口が開口する。そして、ロック軸及び回転歯が最大近傍まで押し下げられると、回転歯が傾斜歯に押し付けられることで摺接し、回転歯が所定角度回転する。
手動又は電動操作が終了すると、リターンスプリングの反発によって、ロック軸及び回転歯が操作部側へと押し戻され、回転歯は傾斜歯と対向する位置に設けられた保持歯に押し付けられて摺接し、所定角度回転するとともに保持歯と係止する。(
図11(a))この時、ロック軸は押し下げられた状態(インナーワイヤが弁体を突き上げた状態)のまま保持されるため、弁体の上昇状態がロック機構により保持される。
そして、再び操作部に操作を加えると、当該操作に伴い再びロック軸及び回転歯が押し下げられ、回転歯が傾斜歯と摺接し、回転歯が所定角度回転することで前記保持歯との係止が解除される。(
図11(b))即ち、操作部の操作毎に回転歯が保持歯に対する係脱が成されることによって、弁体の開閉状態を保持することができる。
【0005】
尚、その他のロック機構として、特開2004−278164号公報に記載のロック機構のように、傾斜歯が操作部の操作に応じて回転歯とともに軸方向に進退する構造が知られている。しかし、当該構造においては、操作部の操作に伴い傾斜歯と回転歯が当接した状態で進退を行うことから、回転歯が回動不可能な位置に配置されている状態であっても、回転歯には常に周方向に力が加わることとなる。従って、回転歯が回動可能となった瞬間に回転歯と保持歯(固定歯)の端部同士が擦れ、強い負荷が加わることで回転歯及び保持歯が摩耗・破損する恐れがある。
対して、特許文献1に記載のロック機構は、傾斜歯及び保持歯の位置は固定されており、回転歯が当該傾斜歯と保持歯の間を往復することによって回転を行う構造である。従って、特許文献1に記載のロック機構は前記特開2004−278164号公報のように回転歯と保持歯の端部同士が擦れることがなく、回転歯等の摩耗・破損を抑えることができる点において優れている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、上記特許文献1に記載のロック機構は、回転歯が傾斜歯や保持歯に押し付けられていない状態又は係止していない状態、即ち回転歯が傾斜歯と保持歯の間に位置している状態の時には、回転歯には何ら応力が加わっておらず自由に回動可能となっている。そのため、槽体側からの排水の逆流等の理由によってロック機構内に排水等が侵入した際、回転歯とロック軸やその他の部材との間に表面張力が働き、作動不良が生じていた。又、上記表面張力以外にも静電気、粘性のあるゴミの付着、熱による部品の歪み等、様々な外的要因によってロック機構に作動不良が生じていた。詳述すると、本来であれば
図11に示すように、回転歯は傾斜歯と摺接後、当該位置状態のまま保持歯へ向けて軸方向に移動し、保持歯と摺接する。一方で、表面張力や静電気等の外的要因が加わった場合、
図12に示すように、回転歯が傾斜歯と摺接後、傾斜歯と摺接前の位置へと戻るように回動してしまうことがあった。その結果、回転歯が保持歯に係止されず、弁体の上昇状態の保持を行うことが不可能となる。特に、特許文献1に記載の遠隔操作式排水栓装置のように、手動及び電動操作に基づいて操作を行うことができる操作部を有する場合、電動操作に基づいて作動する駆動部分の下方にロック機構が配置されることから、槽体からの排水が逆流した際にロック機構内に排水が流入し易く、表面張力による作動不良が生じ易かった。
本発明は上記問題に鑑み、ロック機構に対して排水が流入する等、何らかの外的要因が加わった場合であっても作動不良の生じる恐れのない遠隔操作式排水栓装置の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するための請求項1に記載の本発明は、槽体の底部で排水口を形成する排水栓と、
上下動を行うことにより排水口の開閉を行う弁体と、
弁体の操作を行う操作部と、
操作部の操作を弁体へと伝達する、筒状にして可撓性を有するアウターチューブ、軸方向に剛性を有するとともにアウターチューブ内を進退可能なインナーワイヤを備えたレリースワイヤと、
インナーワイヤを操作部側に向けて付勢するリターンスプリングと、
からなる遠隔操作式排水栓装置について、
前記操作部は弁体の上昇状態の保持及び保持の解除を行うロック機構を有し、
当該ロック機構は、前記操作部の操作に伴い進退可能且つ周方向に回動可能な回転歯
を有する回転部材、回転歯を回動させる傾斜歯、回転歯の位置保持を行う保持歯を備え、
前記
回転部材は
保持歯との係合時及び非係合時において、リターンスプリングによって
弁体側端部がインナーワイヤ端部によって操作部側に向けて押圧されることで常時付勢されていることを特徴とする遠隔操作式排水栓装置である。
【0009】
請求項2に記載の本発明は、前記傾斜歯は、回転歯が弁体側へ前進した際に当接する位置に配置固定され、
前記保持歯は、上記傾斜歯と対向する位置であって、回転歯が操作部側へ後退した時に当接する位置に配置固定され、
前記回転歯は、操作部の操作に伴い傾斜歯及び保持歯によって回動され、保持歯に対して係脱を繰り返すことでレリースワイヤを介して弁体の上昇状態の保持及び保持の解除を行うことを特徴とする請求項1に記載の遠隔操作式排水栓装置である。
【0010】
請求項3に記載の本発明は、前記ロック機構はケーシング体を有し、
当該ケーシング体の内部に回転歯、傾斜歯、保持歯が配置されることで一体化されたユニットを形成することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の遠隔操作式排水栓装置である。
【0011】
請求項4に記載の本発明は、前記操作部は電気信号に基づいて可動し、弁体の操作を行う電動操作部を備え、
前記ロック機構は電動操作部の駆動部の下方に配置されることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1つに記載の遠隔操作式排水栓装置である。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に記載の本発明によれば、リターンスプリングによって回転歯が常時付勢されていることから、ロック機構の内部に排水が流入する等、ロック機構に対して外的要因が加わった場合であっても正常に作動することができる。
従来のロック機構の場合、回転歯は、何ら回転を規制するような応力が加えられていないため、傾斜歯や保持歯等の回転を規制する構成に当接していない状態では、外的要因が生じた際に、
図12(b)に示したように、回転歯の逆回転現象が生じる。
これに対し本発明では、リターンスプリングによって回転歯に常時付勢を行うことで回転歯に最低限の応力を加え、回転歯の意図しない回転を制限して、逆回転等の、外的要因による不適切な回転を規制している。
請求項2に記載の本発明によれば、回転歯と保持歯の端部同士が擦れることがなく、回転歯等の摩耗・破損を抑えることが可能となる。
請求項3に記載の本発明によれば、施工性が向上する。
請求項4に記載の本発明によれば、遠隔操作式排水栓装置の構成をより具体化することができる。本発明は電動操作部を備えた操作部を有する遠隔操作式排水栓装置のように、ロック機構の位置が(電動操作部を備えない操作部に対して)低い配置されており、槽体からの排水に伴いロック機構の内部に排水が流入し易い構造であっても、ロック機構の誤作動を防ぐことができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しながら本発明の遠隔操作式排水栓装置を説明する。尚、以下に記載する説明は実施形態の理解を容易にするためのものであり、これによって発明が制限して理解されるものではない。又、以下の実施形態においては
図1に示す施工完了状態を基準として位置関係を説明する。
【0015】
本実施形態に係る遠隔操作式排水栓装置1は、
図1及び
図2に示すように、槽体B、排水栓2、弁体8、レリースワイヤ9、操作部16より構成されて、操作部16は内部にロック機構22を有している。尚、本実施形態において、槽体Bは浴槽である。
【0016】
図3に示すように、排水栓2は上端に鍔部を有する筒状部材であって、その内部において、槽体Bからの排水を排出する排水口3が形成されており、筒状部分外周において雄螺子が螺刻されている。排水栓2は槽体Bの底面に設けられた開口に対して挿入され、パッキンを介して槽体Bの周縁と当接しており、槽体Bの裏面に配置された排水エルボ5と螺合することで槽体Bの開口周縁を挟持している。又、排水栓2の内部には弁体8、ワイヤ受け4が配置されている。排水エルボ5は排水口3から流入した排水を下流側へと流出させる排水配管であって、排水栓2と螺合する開口と、排水口3から流入した排水を下流側へと排出する排出口6と、後述するレリースワイヤ9が挿通される枝管7を備えている。
弁体8は周囲にパッキンが嵌着された蓋部材であり、裏面にレリースワイヤ9端部の弁軸13が嵌合している。
ワイヤ受け4は排水栓2の内部に取り付けられたリング状部材であって、後述するレリースワイヤ9の一端に設けられた弁筒12を排水栓2内部に固定している。
【0017】
レリースワイヤ9はアウターチューブ10、インナーワイヤ11、弁筒12、弁軸13、リターンスプリング14から成り、ガイドチューブ15内に配置されて後述する操作部16の操作を弁体8へと伝達する伝達部材である。尚、レリースワイヤ9は一端が上記ワイヤ受け4に固定されており、他端は後述するケーシング体23に固定されている。
ガイドチューブ15は合成樹脂よりなる中空の筒状部材であって、一端が排水エルボ5の枝管7に、他端が後述する操作部16に取り付けられている。
アウターチューブ10は合成樹脂よりなる中空の筒状部材であって、軸方向に対して剛性を有するとともに側面からの応力に対して可撓性を有する。又、アウターチューブ10は一端が後述する弁筒12に固定されているとともに、他端が固定部材を介してロック機構22に固定されている。
インナーワイヤ11は金属をコイル状に巻いた撚り線であって、アウターチューブ10内を軸方向に進退可能に収納されている。尚、以降において、インナーワイヤ11が弁体8側(弁体8を突き上げる方向)へと進むことを「前進」、操作部16側(弁体8を降下させる方向)へと進むことを「後退」と記載する。インナーワイヤ11は操作部16側端部において金属製の棒体がカシメ固定されており、後述するリターンスプリング14によって後退方向に付勢されている。
弁筒12はアウターチューブ10の排水栓2側端部に固定された筒部材であり、内部に弁軸13が軸方向に進退可能に収納されている。
弁軸13はインナーワイヤ11の排水栓2側端部に緩衝用スプリングを介して取り付けられた筒部材であり、その端部が弁体8の裏面に嵌合している。尚、弁筒12と弁軸13の間、及び弁軸13の内部にはそれぞれ緩衝用スプリングが配置されており、弁体8の上昇時に弁体8が踏まれる等の衝撃が加わった際、当該緩衝用スプリングによって部材の破損を防ぐ役割を有している。
リターンスプリング14はレリースワイヤ9の操作部16側端部に配置された弾性部材であり、インナーワイヤ11を後退方向へ向けて常時付勢している。
【0018】
図4に示すように、操作部16は操作部上部17、操作部下部18、スイッチ部21、から成り、スイッチ部21に加えられた操作をレリースワイヤ9を介して弁体8へと伝達させることによって当該弁体8を上下動させることができる。又、操作部16は内部に設けられたロック機構22によって弁体8の上昇状態の保持及び保持の解除を行うことができる。
操作部上部17は操作部16を槽体Bの縁部B1に設けられた開口に固定するフランジ部171を有する筒状部材であって、筒状部分の外周に雄螺子部、係合溝19を備え、下端にはパッキンが嵌着されている。尚、フランジ部171は上記縁部B1の開口よりも大径であり、その他の部分は当該開口よりも小径である。操作部上部17は上記フランジ部171によって板状の平パッキンを介して槽体Bの縁部B1と当接しているとともに、槽体Bの裏側よりナットが螺合され、槽体Bの縁部B1周辺を挟持することで水密に接続されている。又、係合溝19には断面視略コ字状且つ平面視略C字状のリング体20が取り付けられることによって操作部下部18と連結されている。
操作部下部18は外周に係合溝19を有し、当該係合溝19に上記リング体20が係合することによって操作部上部17と連結されている。尚、
図1に示す施工完了状態において、操作部上部17外周と操作部下部18内周によって操作部上部17下端に嵌着されたパッキンが挟持されており、操作部上部17と操作部下部18は水密に連結されている。又、操作部下部18下端はガイドチューブ15内部に挿入されて、操作部16内部に侵入した排水を排水エルボ5の枝管7へと流出させる流路を形成している。
スイッチ部21は操作部上部17内部に配置され、弁体8が下降状態の時にはその上面が操作部上部17の上端と略面一となる位置に配置されており、裏面には後述するロック機構22のロック軸24が嵌合している。尚、スイッチ部21の外周は操作部上部17の内周と略同径であって、その上面を押動操作することによって操作部16内部を上下に移動可能となっている。
【0019】
ロック機構22は
図4乃至
図6に示すように、ケーシング体23、ロック軸24、回転部材25、傾斜歯26、保持歯27より成り、スイッチ部21の押動の度にインナーワイヤ11の前進状態を保持及び保持の解除を行う機構である。又、ロック機構22はケーシング体23の内部に回転部材25、傾斜歯26、保持歯27が配置されることで一体化されたユニットを形成している。
ケーシング体23は内部にロック軸24、回転部材25、傾斜歯26を収納し、内周に保持歯27が形成された筒状部材である。ケーシング体23は上端及び下端が開口しており、上端の開口からはロック軸24が突出している。又、下端には傾斜歯26及びアウターチューブ10が固定されることによってレリースワイヤ9が取り付けられている。
ロック軸24はケーシング体23の内に配置されるとともに、その上部はケーシング体23上部の開口から突出し、上端が前記スイッチ部21の裏面に嵌合しており、下端が回転部材25と当接している。
回転部材25はケーシング体23内部に回動自在に配置された略筒状のギアであって、その上端側面に略三角形状の回転歯251が3箇所、周方向に形成されている。又、回転部材25は上端が前記ロック軸24下端と当接しており、底面において凹設された溝にインナーワイヤ11の端部が挿入されている。従って、
図5に示すように、回転部材25はロック軸24とインナーワイヤ11によって軸方向に挟持されており、ロック軸24と連動して上下動することで、スイッチ部21の押動操作をインナーワイヤ11へと伝達する。ここで、前述の通り、インナーワイヤ11はリターンスプリング14によって後退方向に付勢されていることから、インナーワイヤ11と当接している回転部材25及び回転歯251も後退方向に常時付勢されている。
傾斜歯26はケーシング体23の底面に固定されたギアであり、上方へ向けて突出する鋸刃状の歯部が周方向に亘って複数形成されている。尚、傾斜歯26はその1つ1つが傾斜部261と垂直部262から構成されている。
保持歯27は傾斜歯26と対向する位置に設けられたギアであって、ケーシング体23の内周に形成され、傾斜部271と保持部272より構成されている。又、保持歯27は隣り合う保持歯27との間に溝部273が設けられている。
【0020】
上記各部材より構成される遠隔操作式排水栓装置1は、以下のようにして槽体Bに取り付けられる。
まず、排水栓2を槽体B底面の開口に挿入し、槽体Bの裏面に配置された排水エルボ5と螺合させて固定する。
次に、操作部上部17を槽体Bの縁部B1に設けられた開口に挿入し、縁部B1裏面よりナットを螺合させる。そして、操作部上部17に操作部下部18を差し込んだ状態で、係合溝19にリング体20を係合させて操作部上部17と操作部下部18を連結させる。
次に、排水エルボ5の枝管7及び操作部下部18にガイドチューブ15を取り付ける。
次に、操作部上部17の上方からレリースワイヤ9の弁軸13側を挿入し、排水エルボ5の枝管7を介し、排水栓2内にまでレリースワイヤ9を挿通する。この時、操作部上部17より挿入されたレリースワイヤ9は、ガイドチューブ15によってガイドされて、弁軸13側端部が枝管7へと容易に到達する。そして、排水栓2上からペンチその他の治具を使用し、レリースワイヤ9を引き上げた上で、レリースワイヤ9端部をワイヤ受け4に取り付け、ワイヤ受け4を排水栓2内に嵌合させる。
最後に、操作部上部17側から治具を挿入し、スイッチ部21の上面が操作部上部17の上端と面一となるようにロック機構22の位置調整を行い、ロック軸24にスイッチ部21を嵌合させて遠隔操作式排水栓装置1の施工が完了する。
【0021】
上記手順により施工された遠隔操作式排水栓装置1は、以下のように作動する。尚、
図1に示すように、弁体8が下降状態にあって、排水口3が閉塞されている状態より排水口3を開口させる際の遠隔操作式排水栓装置1の動作を説明する。又、以下の説明において、
図7及び
図8を用いてロック機構22の動作について説明するが、当該
図7及び
図8はロック機構22の回転歯251の動きを容易に理解するため、回転歯251、傾斜歯26、保持歯27を展開し、回転歯251の動きを矢印にて記載している。
【0022】
まず、弁体8が下降状態にある時、回転歯251は溝部273の間に配置されている。
当該状態よりスイッチ部21を押動操作するとスイッチ部21、ロック軸24、回転部材25、インナーワイヤ11が下方へと押し下げられる。当該押し下げに伴い、インナーワイヤ11がアウターチューブ10内を弁体8側に摺動(前進)し、弁軸13が弁筒12より突出することで弁体8を下方から突き上げ、排水口3が開口する。そして、ロック軸24及び回転部材25が最大近傍まで押し下げられると、回転歯251が傾斜歯26の傾斜部261に押し付けられて摺接し、回転歯251(回転部材25)が所定角度回転する。(
図7(a))尚、回転歯251が傾斜歯26の垂直部262に当接することで最大までスイッチ部21が押し下げられた際の回転歯251の位置が位置決めされる。
スイッチ部21の押動操作が終了し、使用者がスイッチ部21から手を離すと、リターンスプリング14の反発によって付勢され、インナーワイヤ11が後退方向に押し戻される。同様に、インナーワイヤ11が当接している回転部材25、回転部材25が当接しているロック軸24、ロック軸24が当接しているスイッチ部21もリターンスプリング14の反発によって付勢され、後退方向に押し戻される。この時、インナーワイヤ11の付勢によって回転歯251は無回転のまま軸方向に後退した後に傾斜歯26と対向する位置に設けられた保持歯27の傾斜部271に押し付けられて摺接し、回転歯251(回転部材25)が所定角度回転する。(
図7(b))そして、傾斜部271によって回転した回転歯251は保持部272に係止することによって回転が制御されるとともに、
図2に示すように、弁体8の上昇状態が保持される。即ち、弁体8はスイッチ部21の押動操作により、弁軸13によって突き上げられ、所定距離降下した後に当該位置が保持される。
【0023】
次に、
図8を用いて弁体8が上昇状態にあって、排水口3が開口されている状態より排水口3を閉塞させる際の遠隔操作式排水栓装置1の動作を説明する。
【0024】
上記
図2に示す弁体8の上昇状態より、再びスイッチ部21を押動操作すると、スイッチ部21、ロック軸24、回転部材25、インナーワイヤ11が下方へと押し下げられる。そして、上記排水口3の開口させた際と同様に、ロック軸24及び回転部材25が最大近傍まで押し下げられると、保持部272に係止していた回転歯251が軸方向に前進して傾斜歯26の傾斜部261に押し付けられて摺接し、回転歯251(回転部材25)が所定角度回転する。(
図8(a))
スイッチ部21の押動操作が終了し、使用者がスイッチ部21から手を離すと、リターンスプリング14の反発によって付勢され、インナーワイヤ11が後退方向に押し戻される。同様に、インナーワイヤ11が当接している回転部材25、回転部材25が当接しているロック軸24、ロック軸24が当接しているスイッチ部21もリターンスプリング14の反発によって付勢され、後退方向に押し戻される。この時、回転歯251はインナーワイヤ11の付勢によって無回転のまま軸方向に後退した後に傾斜歯26と対向する位置に設けられた保持歯27の傾斜部271に押し付けられて摺接し、回転歯251(回転部材25)が所定角度回転する。そして、当該回転によって溝部273の下方に位置した回転歯251は、リターンスプリング14の付勢によって溝部273内にまで後退する。(
図8(b))この時、回転歯251は前記弁体8が下降状態にある時と同様の位置に配置されて、弁体8の上昇状態の保持が解除される。即ち、弁体8はスイッチ部21の押動操作により、弁軸13によって突き上げられ、排水口3を閉塞するまで降下する。
【0025】
以上のように、本発明の遠隔操作式排水栓装置1は、回転歯251が保持歯27に対して係脱を繰り返すことでレリースワイヤ9を介して弁体8の上昇状態の保持及び保持の解除を行う。又、回転歯251が進退する際に、周方向に対する力が加わっていないため、摩耗等による破損の恐れが生じ難い。そして、本発明は回転歯251(回転部材25)がリターンスプリング14によって後退方向に付勢されているため、ロック機構22内部に排水等が流入していても、表面張力に影響されることなく作動する。又、同様に、ロック機構22に対して静電気、粘性のあるゴミ、熱による部材の歪み等が生じた場合であっても正常に作動する。即ち、何らかの外的要因によって回転歯251が逆回転する等作動不良に繋がる方向に力が加わったとしても、回転部材25が当該外的要因よりも強い力でリターンスプリング14により付勢されていることから、外的要因に基づく作動不良が生じない。更に、本発明はレリースワイヤ9に配置されたリターンスプリング14の反発を利用して回転歯251を付勢しているため、回転歯251の付勢のために別途スプリングを用意する必要がない。
【0026】
本発明の第一実施形態は以上であるが、本発明の遠隔操作式排水栓装置1は上記第一実施形態の形状に限られるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えても良い。例えば、上記第一実施形態には、手動操作に基づいて弁体8を操作可能な操作部16のみが記載されていたが、以下に説明する第二実施形態のように、操作部16が電気信号に基づいて弁体8を操作可能な電動操作部を備えていても良い。尚、第二実施形態の遠隔操作式排水栓装置1の構成は、後述する電動操作部、駆動部28を除いて同一であり、同一箇所については既に記載した第一実施形態と同一の番号を付して説明を省略する。
【0027】
図9に示す第二実施形態の遠隔操作式排水栓装置1の操作部16は、スイッチ部21とロック機構22との間にモータ及びギアを備えた駆動部28を有している。駆動部28は浴室と隣接する洗面所やリビング(図示せず)の壁面等、浴室以外の箇所に設けられた電動操作部(図示せず)の操作によって駆動し、ロック軸24を押し下げることによって排水口3の開閉操作が可能となっている。尚、駆動部28は電動操作部に対して操作が加えられた際、ロック軸24を押し下げた後に作動前の位置に復帰する構造となっている。従って、電動操作部を操作した後にスイッチ部21への押動操作を妨げることはなく、使用者は任意の操作方法を選択することができる。
【0028】
上記第二実施形態の遠隔操作式排水栓装置1においては、ロック機構22が駆動部28の下方に設けられていることから、第一実施形態と比べてロック機構22が低い位置に配置されている。従って、第二実施形態においては、槽体Bから大量に排水が排出された際、当該排水がガイドチューブ15を通じてロック機構22内に流入し易くなっている。しかし、本発明によれば、回転歯251(回転部材25)がリターンスプリング14によって後退方向に付勢されているため、ロック機構22内部に排水等が流入していても、表面張力に影響されることなく正常にロック機構22が作動可能である。
【0029】
本発明の遠隔操作式排水栓装置1は上記各実施形態に限られるものではない。例えば、
図10に示す第三実施形態のようにロック軸24の底面に凸部241を、回転部材25の上面に凹部252をそれぞれ設けても良い。この場合においては、凸部241が凹部252に嵌合することにより、ロック軸24と回転部材25の中心軸が確実に同一線上に配置されるため、部材間の動きがスムーズに伝達される。又、第一実施形態においては、弁体8が上昇状態にある時、スイッチ部21及びロック軸24は自重によって降下しているが、当該第三実施形態においては、スイッチ部21及びロック軸24は回転部材25と連動して移動するため、弁体8が上昇している状態にある時には必ずスイッチ部21が下降している状態となり、使用者はスイッチ部21を目視することで排水口3の開閉状態を確認することが可能となる。