(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
従来の遠隔操作式排水栓装置として、槽体の底部に形成された排水口を開閉する弁部材、弁部材を昇降操作する操作部、操作部の操作を弁部材に伝達するレリースワイヤ、弁部材の昇降状態を保持するロック機構より構成されているものが知られている。
弁部材は周囲にパッキンが嵌着されており、当該パッキンが排水口の周縁と水密に当接することによって槽体内に湯水を貯留することが可能となる。
操作部は使用者が触れるスイッチ部を備えており、スイッチ部は槽体の天面、槽体の側面や壁面等、様々な場所に配置され、使用者が当該スイッチ部を操作することで、直接弁部材に触れることなく排水口を開閉することが可能となっている。
レリースワイヤは樹脂製の筒体であるアウターチューブと、金属の撚り線であるインナーワイヤより成り、スイッチ部に加えられた押動操作によってインナーワイヤがアウターチューブ内を摺動し、弁部材を突き上げることで排水口の開閉を行う構造となっている。
ロック機構は内部に回転ギア、固定ギアを備え、回転ギアと固定ギアの噛合によって弁部材の上昇状態又は下降状態を保持する機構である。
【0003】
ここで、上記遠隔操作式排水栓装置において、スイッチ部が槽体の側面や壁面に配置されている場合、以下のような問題あった。
例えば、槽体が浴槽である場合、浴槽裏側には浴室の内壁が存在し、槽体がキッチンシンクや洗面ボウルである場合、シンクやボウル裏側にはキャビネットの内壁が存在することから、槽体裏側には十分な空間が存在しない。従って、スイッチ部端部と連結されたレリースワイヤは、上記狭い空間内において排水口(弁部材)へ向けて急激に曲げられて施工される。この時、金属の撚り線からなるインナーワイヤはあまりにも小さな曲げ半径で屈曲されると作動不良や破損の恐れがある。
【0004】
特許文献1に記載の遠隔操作式排水栓装置においては、ロック機構が槽体の内側に配置されることによって、レリースワイヤ曲げ半径を大きくすることで上記作動不良や破損を防いでいる。
【0005】
又、特許文献2に記載の遠隔操作式排水栓装置においては、スイッチ部が上下方向に摺動可能に配置されるとともに、レリースワイヤ端部が上下方向に配置され、レリースワイヤを曲げることなく施工可能とすることによって上記作動不良や破損を防いでいる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記従来の遠隔操作式排水栓装置は、レリースワイヤの作動不良や破損を防ぐための構造を備えているものの、以下の問題を有している。
【0008】
上記特許文献1に記載の遠隔操作式排水栓装置は、ロック機構が槽体の内側に配置されていることから、スイッチ部及びロック機構が槽体内側に大きく突出しており、意匠性が悪い。又、槽体が浴槽である場合において、槽体の側面は入浴者の背中が当接する部分であり、スイッチ部が槽体の内側に大きく突出する場合、快適な入浴が困難となる。更に、レリースワイヤは依然として狭い空間内で曲げられることから、作動不良や破損を完全に防ぐことはできていない。
【0009】
一方、上記特許文献2に記載の遠隔操作式排水栓装置においては、レリースワイヤ端部が上下方向に配置されていることから、狭い空間内で曲げられることによる破損は生じない。しかし、ロック機構が排水流路内に配置されているため、排水口側の排水がロック機構によって妨げられて排水流量が低下してしまっていた。尚、ロック機構をレリースワイヤのスイッチ部側端部に配置したとしても、やはりロック機構によってオーバーフロー流路の排水流量が低下してしまう。又、ロック機構をレリースワイヤのスイッチ部側端部に配置した場合には、ギア等が内蔵されたロック機構をオーバーフロー排水口から取り出すことは困難であり、メンテナンスが煩雑となっていた。
【0010】
本発明は上記問題に鑑み発明されたものであって、レリースワイヤの動作不良や破損を防ぐと共に、容易にメンテナンスが可能な遠隔操作式排水栓装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1に記載の本発明は、槽体に設けられた排水口と、
排水口内に配置されて上下動することで該排水口の開閉を行う弁部材と、
弁部材の開閉操作を行う、槽体の側面に配置される操作部と、
操作部に加えられた操作を弁部材に伝達するレリースワイヤと、からなる遠隔操作式排水栓装置において、
上記操作部は、
槽体の内面に沿って
直線方向に摺動可能に配置されたスイッチ部と、
弁部材の上昇状態又は下降状態を保持するロック機構を備え、
上記ロック機構は、槽体の内側に配置され
、
上記レリースワイヤの端部がロック機構下端よりも上方に配置されていることを特徴とする遠隔操作式排水栓装置である。
【0012】
請求項2に記載の本発明は、 槽体に設けられた排水口と、
排水口内に配置されて上下動することで該排水口の開閉を行う弁部材と、
弁部材の開閉操作を行う、槽体の側面に配置される操作部と、
操作部に加えられた操作を弁部材に伝達するレリースワイヤと、からなる遠隔操作式排水栓装置において、
上記操作部は、
槽体の内面に沿って摺動可能に配置されたスイッチ部と、
弁部材の上昇状態又は下降状態を保持するロック機構を備え、
上記スイッチ部は上下方向に摺動するとともに槽体の内側に突出し、
上記ロック機構は、
スイッチ部の突出部分に配置されていることを特徴とする遠隔操作式排水栓装置である。
【0013】
請求項3に記載の本発明は、 上記ロック機構はスイッチ部の操作によって動作するロック軸を有し、
当該ロック軸の軸方向はスイッチ部の摺動方向と略同一であることを特徴とする
請求項1又は請求項2に記載の遠隔操作式排水栓装置である。
【0014】
請求項4に記載の本発明は、槽体に設けられた排水口と、
排水口内に配置されて上下動することで該排水口の開閉を行う弁部材と、
弁部材の開閉操作を行う、槽体の側面に配置される操作部と、
操作部に加えられた操作を弁部材に伝達するレリースワイヤと、からなる遠隔操作式排水栓装置において、
上記操作部は、
槽体の内面に沿って摺動可能に配置されたスイッチ部と、
弁部材の上昇状態又は下降状態を保持するロック機構を備え、
上記ロック機構は、槽体の内側に配置され
、
上記ロック機構はスイッチ部の操作によって動作するロック軸を有し、
当該ロック軸の軸方向はスイッチ部の摺動方向と略同一であって、
筒状のロック軸の軸方向と、レリースワイヤの操作部側端部の軸方向が略平行であって、当該ロック軸とレリースワイヤの操作部側端部の中心軸が異なる位置に配置されていることを特徴とする遠隔操作式排水栓装置である。
【0015】
請求項5に記載の本発明は、上記レリースワイヤは、槽体の外側に配置されていることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1つに記載の遠隔操作式排水栓装置である。
【0016】
請求項6に記載の本発明は、上記スイッチ部は、レリースワイヤ及びロック機構と当接し、押動操作によってレリースワイヤとロック機構を可動させることを特徴とする請求項1乃至請求項
5のいずれか1つに記載の遠隔操作式排水栓装置である。
【発明の効果】
【0017】
請求項1
、請求項2、請求項4に記載の本発明によれば、ロック機構が槽体の内側に配置されていることにより、容易にメンテナンスを行うことが可能となる。又、本発明がオーバーフロー流路を有する槽体に取り付けられる場合、オーバーフロー流路内にロック機構が配置されることによるオーバーフロー流の排水流量の低下を防ぐことができる。又、
請求項2に記載の本発明によれば、スイッチ部の突出部分にロック機構が収納されていることにより、ロック機構が外部に露出せず意匠性に優れるとともに、槽体内側への突出量を低減することが可能となる。
請求項2及び請求項3に記載の本発明によれば、ロック軸の軸方向とスイッチ部の摺動方向が共に上下方向であり、互いに略同一方向であるため、ロック機構が槽体の内側に配置されていても、操作部の槽体内側への突出幅を短くすることができる。又、請求項4に記載の本発明のように、ロック軸の軸方向とレリースワイヤの操作部側端部の軸方向が
略平行且つその中心軸が異なる位置に配置されている場合、レリースワイヤを狭い空間内で曲げることによる破損を防ぐことができる。
請求項5に記載の本発明によれば、ロック機構がレリースワイヤとは直接接続されていないため、ロック機構のみ、又はレリースワイヤのみを取り外すことができ、メンテナンス性に優れている。
請求項
6に記載の本発明によれば、押動操作によってスイッチ部がレリースワイヤ及びロック機構を可動させることが可能になる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に、本発明の止水構造を、図面を参照しつつ説明する。尚、以下に記載する説明は実施形態の理解を容易にするものであり、これによって本発明が制限して理解されるものではない。又、以下の実施形態においては、特に断りの無い限り
図1に示す施工状態を基準として上下左右及び部材同士の位置関係を説明する。
【0020】
本実施形態は
図1乃至
図10に示すように、槽体Bの底部に形成された排水口2の開閉を遠隔的に行う、遠隔操作式排水栓装置であって、槽体B、排水栓1、弁部材18、レリースワイヤ20、操作部30より構成されている。
【0021】
槽体Bは上方が開放された箱状の浴槽であり、底部及び側面部には円形の孔部が開口され、底部の開口には排水栓1が取り付けられているとともに、側面部の開口には操作部30が取り付けられている。
【0022】
排水栓1は上端に鍔部を有する筒状部材であって、その内部において、槽体Bからの排水を排出する排水口2が形成されており、筒状部分の外周には雄螺子が螺刻されている。又、排水栓1は内部に形成された凸部にワイヤ受け15が取り付けられている。排水栓1の筒状部分は上記槽体B底面に形成された開口に挿通され、槽体Bの裏面に配置された排水器5と螺合されている。
排水器5は上流側に螺刻された雌螺子によって排水栓1下端と螺合されているとともに、その下流側には、内部に流入した排水を更に下流側の配管(図示せず)へと排出する排出口7が下端に形成されている。又、排水器5は側方において枝管部6を備え、当該枝管部6は可撓性を有するオーバーフロー管10を介して操作部30と連結されている。
ワイヤ受け15は爪部によって上記排水栓1の内部に形成された凸部に係止されており、レリースワイヤ20端部の弁軸26を固定する軸受部16を備えている。
【0023】
弁部材18は外周面にパッキンが嵌着された蓋部材であり、
図1に示すように、弁部材18が下降している状態においては当該パッキンが排水栓1と当接することによって排水口2を水密に閉塞している。又、弁部材18は裏面において弁軸26の先端が嵌合されており、当該弁軸26に突き上げられることによって上昇する。
【0024】
レリースワイヤ20はアウターチューブ21、インナーワイヤ22より構成された動作伝達部材であって、操作部30側端部にワイヤ軸23を、排水口2側端部に弁軸26を備えている。
アウターチューブ21は側面方向に可撓性を有する中空の樹脂製チューブであって、内部には側面方向に可撓性を有する金属の撚り線であるインナーワイヤ22が摺動可能に配置されている。
【0025】
ワイヤ軸23はインナーワイヤ22端部に接続された金属製の芯部材であって、支持筒24の内部に摺動可能に配置されており、その上端が操作部30に接続されている。
支持筒24は硬質の樹脂材から成る筒状体であって、オーバーフローエルボ31の固定部34に支持されている。又、支持筒24の下端にはアウターチューブ21端部が連結されており、内部に上記ワイヤ軸23、インナーワイヤ22、及び戻りスプリング25が配置されている。
戻りスプリング25は下端が支持筒24下端に形成された内鍔に当接しているとともに、上端がワイヤ軸23の下端に当接しており、ワイヤ軸23を上方に向けて付勢している。
ここで、ワイヤ軸23及び支持筒24はその中心軸が上下方向となるように配置されており、ワイヤ軸23と支持筒24とレリースワイヤ20の操作部30側端部の軸方向は後述するスイッチ部35の摺動方向と略同一方向となっている。
【0026】
弁軸26はレリースワイヤ20の排水口2側端部に形成された筒状体であって、外筒27及び内筒28から成る。外筒27はアウターチューブ21が連結された中空の筒状体であって、内部に内筒28を収納すると共に、外側面がワイヤ受け15の軸受部16に係止されている。内筒28はインナーワイヤ22が連結された筒体であって、外筒27内部において上下方向に摺動可能に配置されているとともに、内部にショックアブソーバスプリングが収納されている。又、内筒28の上端は弁部材18の裏面と嵌合されており、インナーワイヤ22がアウターチューブ21内を摺動することによって内筒28が外筒27より突出し、弁部材18を上昇させることが可能となっている。尚、内筒28が突出した状態で弁軸26に対し上方より衝撃が加わった際には、上記ショックアブソーバスプリングが収縮することによって当該衝撃を吸収し、部材の破損を防ぐことができる。
【0027】
図1乃至
図6に示すように、操作部30は槽体Bの側面部に形成された開口に取り付けられ、オーバーフローエルボ31、スイッチ部35、ロック機構40、補助部材50より構成されている。
【0028】
図2及び
図3に示すように、オーバーフローエルボ31は管路が約90度屈曲された略L字状の配管部材であって、上流側端部において外側方向に周設された鍔部を有するとともに、側面方向(
図2における左方向)に向けて流入口32が形成されており、下流側端部には下方に向けて流出口33が形成されている。オーバーフローエルボ31の流入口32側の内周面には凸部が複数箇所形成されており、当該凸部にロック機構40が係止されている。又、流出口33側の内周面には一部に切り欠きを備えた略円形の固定部34が形成されており、当該固定部34にはレリースワイヤ20の支持筒24が取り付けられている。固定部34は略U字状であって、その内径は支持筒24の内径と略同一である。
【0029】
スイッチ部35は
図3及び
図4に示すように、押動部36、支承部37、接続部38を備えており、使用者操作を行われた際、槽体Bの内面に沿って上下に摺動可能となっている。
押動部36は槽体B内部に突出された上面及び側面より成り、断面視略L字状であって内部にロック機構40が配置されている。又、押動部36は下方が開放されており、槽体Bの湯水が流入口32へと流入可能となっている。尚、押動部36は
図4(a)に示すように正面視略矩形状であって、補助部材50のガイド部52間に配置されているとともに、弁部材18が
下降状態にある時、その上端及び下端が隣接するガイド部52と面一となるよう形成されている。
支承部37は押動部36裏面(
図2における右方)よりオーバーフローエルボ31内へと延設されており、端部において接続部38が形成されている。
接続部38は断面視略L字状であって、ワイヤ軸23の先端が当接しており、押動部36に加えられた操作をワイヤ軸23へと伝達する。
上記の通り、スイッチ部35は押動部36がロック機構40と、接続部38はレリースワイヤ20と当接しており、押動操作によってスイッチ部35が下降した際には、レリースワイヤ20及びロック機構40を同時に可動させることが可能となっている。
【0030】
図2及び
図3に示すように、ロック機構40はスラストロック機構と呼ばれる保持機構であって、ケーシング内周に固定ギアが形成されているとともに、ケーシングの中心に回転ギアを備えたロック軸41が配置されている。
ロック軸41はケーシング上面を貫通し、押動部36上面の裏側まで延設されているとともに、ケーシング内部を上下動可能に配置されており、回転ギアが回動可能且つロック軸41に対して上下動不能に取り付けられている。ロック機構40は当該ロック軸41が下降した際、回転ギアと固定ギアの噛合によってロック軸41の下降状態を保持することが可能となっている。
上記ロック機構40はスイッチ部35内部に配置されており、ロック軸41の上端が押動部36上面の裏側に当接している。又、ロック軸41の軸方向が上下方向となるように配置されていることから、ロック軸41の軸方向とスイッチ部35の摺動方向、及びレリースワイヤ20端部の軸方向は略平行(略同一)となっている。尚、ロック機構40は槽体Bの内側に配置されていることから、ロック軸41の中心軸とレリースワイヤ20の操作部30側端部の中心軸は異なる位置となるように配置されている。
図5に示すように、上記ロック機構40はケーシング外側において、環状部42が一体に形成されている。環状部42は外径が流入口32と略同一であって、爪部がオーバーフローエルボ31内の凸部と係合されることによってオーバーフローエルボ31内に固定されている。
【0031】
補助部材50は
図6に示すように、下方から上方にかけて切り欠き部51が形成された平面視略U字状であって、平面視略矩形状のガイド部52が両端に立設されている。
ここで、補助部材50は
図2及び
図4等に示すように、ガイド部52の長手方向が上下方向を向くようにして切り欠き部51がオーバーフローエルボ31の鍔部裏面に差し込まれており、槽体B側壁とオーバーフローエルボ31の鍔部によって挟持されている。
【0032】
上記遠隔操作式排水栓装置は、以下のように施工される。尚、以下に説明する施工手順において、排水器5より下流側の排水配管についてはその記載を省略する。
【0033】
まず、槽体B底部に形成された開口に排水栓1及び排水器5を取り付けた後、補助部材50の切り欠き部51を差し込んだ状態で槽体B側面部に形成された開口にオーバーフローエルボ31を取り付け、オーバーフロー管10を排水器5の枝管部6とオーバーフローエルボ31の流出口33に接続する。この時、排水口2から流入した排水が流れる排水流路と、流入口32から流入した排水が流れるオーバーフロー流路が形成される。尚、オーバーフローエルボ31の鍔部裏面は図示しない位置決め機構が備えられており、ガイド部52の長手方向が上下方向を向くように配置される。
次に、
図7に示すように、レリースワイヤ20の弁軸26側を、流入口32を通じてオーバーフローエルボ31内へと挿入し、固定部34にレリースワイヤ20の支持筒24を取り付ける。この時、レリースワイヤ20はオーバーフロー管10によってガイドされて、弁軸26が枝管部6より排水器5内に到達する。当該弁軸26を排水口2より槽体B内に取り出し、弁軸26をワイヤ受け15に固定した後、当該ワイヤ受け15の爪部を排水栓1の凸部に係合させて固定する。
そして、
図8に示すように、ロック機構40を流入口32より挿入し、オーバーフローエルボ31内に固定した後、
図9に示すように、スイッチ部35を流入口32に取り付ける。この時、スイッチ部35は補助部材50のガイド部52の間に配置され、上下方向にのみ摺動可能となるようガイドされるとともに、接続部38にワイヤ軸23先端が当接し、スイッチ部35の摺動がワイヤ軸23に伝達可能となる。
最後に、弁軸26に弁部材18を嵌合させて施工が完了する。
【0034】
上記本願発明の遠隔操作式排水栓装置において、ロック機構40のメンテナンスを行う際には、スイッチ部35を取り外すことでオーバーフローエルボ31よりロック機構40が着脱可能となり、メンテナンスを行うことができる。又、レリースワイヤ20のメンテナンスを行う際には、上記ロック機構40を取り外した後、ワイヤ受け15を排水栓1から取り外し、ワイヤ受け15と弁軸26の固定を解除し、支持筒24を固定部34から取り外す。そして、流入口32よりレリースワイヤ20を引き出すことでメンテナンスを行うことができる。
尚、本願発明においては、ロック機構40とレリースワイヤ20が直接接続されてはいないため、ロック機構40のみを取り外してメンテナンスを行うことが可能である。
【0035】
以下に、本願発明の遠隔操作式排水栓の動作及び湯水の流れについて説明する。
【0036】
まず、
図1に示すように、弁部材18が下降している状態においては、弁部材18の周囲に嵌着されたパッキンが排水栓1の上面と水密に当接しており、槽体B内に湯水を貯留することが可能となっている。
上記弁部材18の下降状態より、使用者によってスイッチ部35の押動部36上面が下方へ向けて押動されると、支承部37を介して接続部38及びワイヤ軸23が押し下げられる。インナーワイヤ22はワイヤ軸23と接続されているため、ワイヤ軸23の押し下げに伴いアウターチューブ21内を弁部材18側へ向けて摺動し、内筒28が外筒27より突出することによって弁部材18を上昇させる。この時、
図10に示すように、押動部36の押し下げに伴いロック軸41も下降しており、ロック軸41の下降に伴って回転ギアが回動し、固定ギアと噛合することによって弁部材18の上昇状態が保持される。尚、
図4(b)に示すように、弁部材18が上昇状態にある時、スイッチ部35は平面視において、押動部36が隣接するガイド部52よりも下方に位置し、使用者はスイッチ部35を目視することで弁部材18の状態を把握することができる。
【0037】
上記弁部材18の上昇状態より、再び使用者によってスイッチ部35の押動部36上面が下方へ向けて押動されると、支承部37、接続部38、ワイヤ軸23、インナーワイヤ22も下降し、弁部材18がやや上昇する。この時、ロック軸41が再び下降することによって回転ギアが回動し、上記固定ギアとの噛合が解除される。従って、押動部36への押動操作が終了すると、弁部材18は自重及び戻りスプリング25の弾性によって下降し、押動部36も
図4(a)に示すように、上端及び下端が隣接するガイド部52の上端及び下端と略面一となる位置に復帰する。この時、弁部材18に嵌着されたパッキンは再び排水栓1上面と水密に当接し、排水口2が閉口される。
【0038】
上記のように、弁部材18が上昇状態にある時、槽体B内に貯留された湯水は排水口2より排水栓1内に流入し、排水器5を介して図示しない更に下流側の排水配管へと排出される。
一方、弁部材18が下降状態にある時には槽体B内に湯水が貯留可能となる。ここで、流入口32の下端を超えて槽体B内に湯水が貯留されると、当該湯水は押動部36下端から流入口32、及びオーバーフローエルボ31内へと流入し、オーバーフロー管10を通じて枝管部6より排水器5へと流入し、図示しない更に下流側の排水配管へと排出される。この時、本願発明においては、オーバーフロー流路内にロック機構40が配置されていないため、オーバーフロー流路の排水流量が低下することはない。
【0039】
上記本願発明の遠隔操作式排水栓装置においては、ロック機構40が槽体Bの内側に配置されているため、容易にメンテナンスを行うことができる。又、本願発明においては、レリースワイヤ20とロック機構40がそれぞれ独立して配置されており、直接接続されていないため、ロック機構40のみを取り外してメンテナンスを行うことも可能である。
又、ロック軸41の軸方向とスイッチ部35の摺動方向が共に上下方向であり、互いに略同一方向(略平行)であるため、ロック機構40が槽体Bの内側に配置されていても、操作部30の槽体B内側への突出幅も短くすることができる。更に、本願発明においてはレリースワイヤ20の操作部30側端部の軸方向も上下方向となっているため、レリースワイヤ20が屈曲される必要がなく、動作不良や部材の破損を防ぐことができる。
【0040】
本願発明の第一実施形態は以上であるが、本願発明は上記第一実施形態の構成に限られるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の形状変更を行うことが可能である。尚、以下に示す他の実施形態において、特に説明の無い限り、第一実施形態と同一の構成に対しては同一の番号を付してその説明を省略している。
【0041】
上記第一実施形態において、インナーワイヤ22は金属の撚り線であったが、当該金属の撚り線は引張応力に対しては耐性が高いが、圧縮応力に対する耐性が低い。従って、
図11及び
図12に示す第二実施形態のように、スイッチ部35に対して押動操作が加わった際、レリースワイヤ20が操作部30側に引き上げられるように構成しても良い。
第二実施形態に係る遠隔操作式排水栓装置は、オーバーフローエルボ31内部に回転部材60を有し、スイッチ部35の接続部38及びワイヤ軸23は回転部材60と係合するギア部を備えている。
上記第二実施形態は、押動部36が押し下げられた際、接続部38は回転部材60を介してワイヤ軸23を上昇させ、インナーワイヤ22を引き上げる構造となっている。従って、
図11に示すように、ロック軸41が下降している状態の時に弁部材18は下降状態となり、排水口2が閉口される。一方、
図12に示すように、ロック軸41が上昇している状態の時、弁部材18は上昇状態となり、排水口2が開口される。ここで、第一実施形態においては、弁部材18が下降している状態には押動部36が隣接するガイド部52と上端及び下端が略面一となっていたが、第二実施形態においては、弁部材が上昇している状態には押動部36が隣接するガイド部52と上端及び下端が略面一となる。
上記第二実施形態は、インナーワイヤ22に対し、押動操作が直接圧縮方向に加わることを防ぐ構造となっている。従って、押動操作時に瞬間的に強く加わる圧縮方向の応力を回避することによって、インナーワイヤ22の破損を防止することができる。
【0042】
尚、第一及び第二実施形態において、ロック軸41が上昇している状態の時に押動部36の上端及び下端が隣接するガイド部52と略面一となっていたが、ロック軸41が下降している状態の時に押動部36の上端及び下端が隣接するガイド部52と略面一となっても良いものである。即ち、第一及び第二実施形態において、押動部36は隣接するガイド部52に対して下方に対して突出していたが、ロック軸41が上昇した際、押動部36は隣接するガイド部52に対して上方に突出した状態となっても良いものである。
【0043】
又、第一実施形態においては、オーバーフローエルボ31は1つの部材より構成されており、槽体B裏面よりナットにより螺合されていたが、
図13に示す第三実施形態のように、オーバーフローエルボ31を2つ部材から構成しても良い。この場合においては、槽体B内側より螺合を行うことが可能となり、オーバーフローエルボ31の取り付けが容易となる。
【0044】
又、上記各実施形態において、ロック機構40はケーシングが流入口32に固定されており、ロック軸41が押し下げられる構造であったが、
図14に示す第四実施形態のように、ロック軸41が流入口32に固定されており、ケーシングが押し下げられる構造であっても良い。
【0045】
又、上記各実施形態において、スイッチ部35の摺動方向は上下方向であったが、左右方向に摺動しても良い。この場合においては、ロック軸41の軸方向を左右方向にすることによって、装置の大型化を防ぐ構造を採っても良い。
又、レリースワイヤ22の操作部30側端部も水平方向にしても良い。この場合、槽体B裏側の空間は水平方向に対してある程度の幅を有するため、レリースワイヤ20を大きな曲げ半径で屈曲することが可能となる。尚、ここにいう「左右方向」とは、
図2における左右方向ではなく、
図4における左右方向を指すものである。即ち、
図4に示すスイッチ部35及び補助部材50を90度回転させ、スイッチ部35を左右方向に摺動させる構造であっても良い。この場合、ロック機構40及びワイヤ軸23もスイッチ部35の摺動方向に伴い90度回転された向きに配置されると好適である。
【0046】
本発明は上記各実施形態において、オーバーフロー流路を有する槽体に取り付けられていたが、本発明が施工される槽体は当該槽体に限られるものではない。又、本発明はキッチンシンクや洗面ボウル等の槽体に取り付けられても良い。