特許第6682078号(P6682078)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6682078
(24)【登録日】2020年3月27日
(45)【発行日】2020年4月15日
(54)【発明の名称】SiC部材
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/3065 20060101AFI20200406BHJP
   H01L 21/683 20060101ALI20200406BHJP
【FI】
   H01L21/302 101G
   H01L21/68 N
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2018-121523(P2018-121523)
(22)【出願日】2018年6月27日
(65)【公開番号】特開2020-4811(P2020-4811A)
(43)【公開日】2020年1月9日
【審査請求日】2019年1月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】591034280
【氏名又は名称】株式会社フェローテックマテリアルテクノロジーズ
(74)【代理人】
【識別番号】100091306
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 友一
(72)【発明者】
【氏名】ワン・ジューダ
【審査官】 鈴木 聡一郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2016−046464(JP,A)
【文献】 特開平04−199614(JP,A)
【文献】 特開2010−185091(JP,A)
【文献】 特表2016−535432(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 16/00−16/56
H01L 21/205
H01L 21/302
H01L 21/3065
H01L 21/31
H01L 21/312−21/32
H01L 21/365
H01L 21/461
H01L 21/469−21/475
H01L 21/67−21/683
H01L 21/86
H05H 1/00−1/54
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1上面と第1下面とを有し、前記第1上面が凹凸を有する第1SiC層と、
第2上面と第2下面とを有し、前記第2下面が前記第1上面に接しており前記第1上面の凹凸に対応する凹凸を有する第2SiC層と、を備えており、
前記第2SiC層は、前記第2上面から前記第2下面側へと凹状となっている、平坦な底面を有する凹部を有し、
前記凹部の前記底面は、前記第2下面よりも上方に位置し、
さらに、第3上面と第3下面とを有し、前記第3上面が前記第1下面に接している第3SiC層を備えており、
前記凹部の底面は、前記第1上面から第1距離だけ離れており、
前記第3下面は、前記第1下面から前記第1距離と同じ第2距離だけ離れていることを特徴とするSiC部材。
【請求項2】
前記第1下面は凹凸を有し、
前記第3上面は前記第1下面の凹凸に対応する凹凸を有する
ことを特徴とする請求項に記載のSiC部材。
【請求項3】
前記第1上面の凹凸は、前記第1上面の全体的に湾曲した面により形成される
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のSiC部材。
【請求項4】
前記SiC部材は、ウェハを収容するための収容部として前記凹部を有するサセプタである
ことを特徴とする請求項1からのいずれか一項に記載のSiC部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面に凹部を有するSiC部材およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
SiC(Silicon Carbide;炭化ケイ素)を含有するSiC部材は、高耐久性、高耐強酸性、低比抵抗などの優れた特性を有し、半導体製造装置に利用される部品として広く利用されている。また、このようなSiC部材は、処理対象のウェハを収容する収容部として表面に凹部を有するものがある。例えば、特許文献1は、プラズマエッチング装置に利用されるフォーカスリングとして、表面に凹部を有するSiC部材を利用することを開示している。また、SiC部材には、高い耐久性や高い純度など厳しい仕様が要求される。これに対応するため、上記特許文献1は、物理的および化学的特性の優れたCVD−SiCを利用したSiC部材を開示している。CVD−SiCとは、CVD(Chemical Vapor Deposition;化学気相成長)により形成されるSiCをいう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012−49220号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
半導体製造装置は、僅かな処理のばらつきによりウェハの製品不良を引き起こす可能性がある。また、半導体製造装置は、工場内で大量のウェハを扱うため、ウェハの製品不良の問題が、一枚のウェハだけに留まらず、大量のウェハに波及する可能性がある。したがって、半導体製造装置のユーザーは、半導体製造装置およびそれに利用される部品の品質を厳しく管理している。
【0005】
SiC部材は、SiC板の研削加工により所望の形状および寸法に形成される。SiC板は、例えば、複数回のCVDを繰り返すことで比較的肉厚に形成され、その結果、複数のSiC層からなる多層構造を有する。SiC部材の表面の凹部は、SiC板のザグリ加工により形成される。このとき、凹部の底面に上下のSiC層の界面が現れることがある。このような界面は、場合によっては、半導体製造装置のユーザーに懸念を与えてしまうことがある。
【0006】
本願発明は、このような課題を解決するためになされたものであり、その目的は、SiC部材の外観を良好に確保するための技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため第1の局面としては、第1上面と第1下面とを有し、前記第1上面が凹凸を有する第1SiC層と、第2上面と第2下面とを有し、前記第2下面が前記第1上面に接しており前記第1上面の凹凸に対応する凹凸を有する第2SiC層と、を備えており、前記第2SiC層は、前記第2上面から前記第2下面側へと凹状となっている、平坦な底面を有する凹部を有し、前記凹部の前記底面は、前記第2下面よりも上方に位置する、といったものが考えられる。
【0008】
この局面においては、第1SiC層の第1上面と第2SiC層の第2下面とが界面を形成する。そして、第1上面は凹凸を有しており第2下面はそれに対応する凹凸を有するので、第1上面と第2下面との界面も凹凸を有する。第1の局面によれば、凹部の底面に界面は現れない。したがって、SiC部材の外観を良好に確保することができる。
【0009】
凹凸に対応する凹凸とは、一方が凸の場合に他方が凹というように相補的であることを意味する。なお、上面、下面、上方、下方などの用語は、SiC部材の利用時の向きを規定するものではない。
【0010】
また、第2の局面のように、さらに、第3上面と第3下面とを有し、前記第3上面が前記第1下面に接している第3SiC層を備えており、前記凹部の底面は、前記第1上面から第1距離だけ離れており、前記第3下面は、前記第1下面から前記第1距離と同じ第2距離だけ離れている、というようにすることも考えられる。
【0011】
この場合、第1上面と第2下面とが第1界面を形成し、第1下面と第3上面とが第2界面を形成する。第2局面によれば、第2距離は第1距離と同じなので、凹部の底面に第1界面が現れないのと同様に、第3下面にも第2界面が現れない。
【0012】
また、第3の局面のように、前記第1下面は凹凸を有し、前記第3上面は前記第1下面の凹凸に対応する凹凸を有する、というようにすることも考えられる。
【0013】
また、第4の局面のように、前記第1上面の凹凸は、前記第1上面の全体的に湾曲した面により形成される、というようにすることも考えられる。
【0014】
また、第5の局面のように、前記SiC部材は、ウェハを収容するための収容部として前記凹部を有するサセプタである、というようにすることも考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】サセプタを示す平面図
図2】サセプタの平面図におけるAーA断面図
図3】サセプタの模式断面図
図4】サセプタの製造過程を示す図
図5】サセプタの上面および下面の位置の決定過程を示す図
図6】別の実施例のSiC板を示す模式断面図
図7】比較例のサセプタの模式断面図
図8】比較例のサセプタを示す平面図
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に本発明の実施形態を図面と共に説明する。
【0017】
(1)全体構成
サセプタ1は、図1図2に示すように、円板状のSiC部材である。サセプタ1は、上面に1または複数の円形の凹部9を有する。本実施の形態では、サセプタ1は、3つの凹部9を有する。この凹部9は、ウェハを収容するための収容部である。サセプタ1の外径は、例えば、300mmから500mmである。サセプタ1の厚みは、例えば、1mmから4mmである。凹部9の内径は、例えば、100mmから300mmである。
サセプタ1は、図3に示すように、第1上面11と第1下面13とを有する第1SiC層3と、第2上面15と第2下面17とを有する第2SiC層5とを備える。第1上面11は、凹凸を有する。第2下面17は、第1上面11に接しており第1上面11の凹凸に対応する凹凸を有する。第2SiC層5は、第2上面15から第2下面17側へと凹状となっている、平坦な底面23を有する凹部9を有する。本実施の形態では、第1上面11の凹凸は、第1上面11の全体的に湾曲した面により形成されている。具体的には、第1上面11は、上方に向けて突出した凸面である。この凸面の突出量は、例えば、50μmから100μmである。第2上面15は、平坦面である。凹部9の底面23は、第2上面15に略平行である。凹部9の深さは、例えば、300μmから500μmである。
【0018】
サセプタ1は、さらに、第3上面19と第3下面21とを有する第3SiC層7を備える。第3上面19は、第1下面13に接している。第1下面13は凹凸を有している。第3上面19は、第1下面13の凹凸に対応する凹凸を有する。本実施の形態では、第1下面13の凹凸は、第1下面13の全体的に湾曲した面より形成されている。具体的には、第1下面13は、下方に向けて突出した凸面である。この凸面の突出量は、例えば、50μmから100μmである。第3下面21は、第2上面15と略平行な平坦面である。
【0019】
図3に示すように、凹部9の底面23は、第2下面17よりも上方に位置する。すなわち、凹部9の底面23は、第1上面11から第1距離27だけ離れている。また、第3下面21は、第1下面13から第1距離27と同じ第2距離29だけ離れている。なお、これらの距離は、図3に示すように、サセプタ1の中心軸25上での距離をいう。第1距離27および第2距離29は、例えば、100μmから1000μmである。
【0020】
第1上面11の凹凸の態様は、サセプタ1の切断面の観察により知ることができるものの、非破壊で知ることは困難である。つまり、サセプタ1の製造過程において、凹凸の態様、すなわち、第1SiC層3および第2SiC層5の界面の態様は、未知である。第1下面13の凹凸の態様についても同様である。すなわち、サセプタ1の製造過程において、第1SiC層3および第3SiC層7の界面の態様は、未知である。本実施の形態では、上述のように、第1距離27および第2距離29が同じである。これにより、そのような界面が凹部9の底面23に現れる可能性と第3下面21に現れる可能性を等しく低減することができる。
【0021】
(2)製造方法
図4はサセプタ1の製造方法を示す。
【0022】
まず、円板形の黒鉛基板31を用意する。次に、CVDにより、黒鉛基板31を全体的に被覆するSiCの下層33を形成する。下層33は、図3に示す、サセプタ1の第3SiC層7を形成するCVD−SiCからなる層である。下層33を形成したのち、CVDにより下層33を全体的に被覆するSiCの中間層35を形成する。中間層35は、サセプタ1の第1SiC層3を形成するCVD−SiCからなる層である。中間層35を形成したのち、中間層35を全体的に被覆するSiCの上層37を形成する。上層37は、サセプタ1の第2SiC層5を形成するCVD−SiCからなる層である。このように、下層33と、中間層35、上層37をCVDにより形成することで、円板38が形成される。
【0023】
次に、形成された円板38の外周部分を機械加工により除去して、黒鉛基板31を露出させて、黒鉛基板31と、黒鉛基板31に円板形の上下面に接する2枚のSiC板39を形成する。その後、SiC板39を高温雰囲気41に曝す熱処理を実施することで、黒鉛基板31をガス化により除去する。具体的には、黒鉛基板31中の炭素を雰囲気中の酸素と反応させて二酸化炭素を生成する。これにより得られたSiC板39を研削加工およびザグリ加工して、サセプタ1を形成する。
【0024】
図5は、SiC板39から、界面が凹部9の底面23に現れないように、サセプタ1の第2上面15と、第3下面21を形成するために行う加工量を決定するための過程を示している。本実施形態で、SiC板39の上層37の表面から、第2上面15までの加工量は、図5(c)に示すF2であり、下層33の表面から、第3下面21までの加工量は、図5(c)に示すE2である。
【0025】
図5(a)は、上述の製造方法により形成されたSiC板39から、サセプタ1の第2上面15と、第3下面21を形成するために行う加工量を決定するために、最初に取得すべき値を示している。
【0026】
SiC板39は、下層33と、中間層35と、上層37を備える。ここで、SiC板39の中心軸25における厚さはD1であり、SiC板39の外周面における厚さはD2である。SiC板39の外周面において、下層33の厚さはA2であり、中間層35の厚さはB2であり、上層37の厚さはC2である。これらの実際の値は、SiC板39の外周面のマイクロスコープ観察により、A2、B2、C2、D2の測定が可能である。また、D1は、SiC板39の中央のマイクロメータ測定により、測定が可能である。一方、中心軸25における下層33の厚さA1と、中間層35の厚さB1と、上層37の厚さは不明である。
【0027】
しかし、発明者らの知見によれば、CVD−SiCの成膜の特性により、外周面における下層33と、中間層35と、上層37の厚さの割合は、中心軸25においても同一である。そこで、A1と、B1と、C1は、以下式において予測可能である。
【0028】
A1=A2×D1/D2
B1=B2×D1/D2
C1=C2×D1/D2
図5(b)は、サセプタ1の第2上面15と、第3下面21を形成するために行う加工量を決定するために、次に決定すべき値を示している。
【0029】
ここで、Gはサセプタ1の厚さを示している。Hは凹部9の深さであり、ザグリ加工の深さを示す。GとHはサセプタ1の仕様によって決定される値であり、既知な値である。そこで、まず、SiC板39の下層33の下面の加工量E1と、上層37の上面の加工量F1を同じ値と仮定する。そして、凹部9の底面23から第1上面11までの第1距離K1と、第3下面21から中心軸25における第1下面13までの第2距離J1を予想する。
【0030】
このとき、加工量E1,F1を同一の値とすると、第1距離K1と第2距離J1が不均衡の場合は、次のように第1距離K1と第2距離J1を均等となるように、加工量E2とF2を決定する。
E2=E1+(J1−K1)/2
F2=F1−(J1−K1)/2
すなわち、上述のように加工量E2とF2を決定することで、図5(c)に示すように、第1距離K2と第2距離J2が同じになる。
【0031】
このように、第1距離K2と第2距離J2が同じになるように加工量E2とF2が決定されることで、中間層35と上層37の境界に対して、凹部9の底面23が十分な距離をとることができる。同様に、中間層35と下層33の境界に対して、第3下面21が十分な距離をとることができる。これにより、凹部9の底面23に界面が現れることを防止できる。また、第3下面21に界面が現れることを防止できる。
【0032】
(3)変形例
本発明の実施の形態は、以上の実施例に限定されることなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の形態をとりうることはいうまでもない。
【0033】
発明者らの知見によれば、同じ形状の黒鉛基板31であっても、図6に示すようなSiC板39が形成される。図6(a)は、下層33と、中間層35と、上層37の中心軸25の厚さが外周面の厚さより小さく、SiC板全体として凹形状となる場合である。図6(b)は、下層33と、中間層35と、上層37の中心軸25の厚さと外周面での厚さが均等である一方で、全体として凸形状となる場合である。図6(c)は、下層33と、中間層35と、上層37の中心軸25の厚さと外周面での厚さが均等である一方で、全体として凹形状となる場合である。これらいずれの場合であっても、下層33と、中間層35と、上層37の厚さの割合は、中心軸25と外周面とで同じであり、上述の計算方法が適応できる。
【0034】
上述の実施の形態では第1SiC層から第3SiC層までの3層で説明したが、これに限定されるものではなく、2層であっても4層以上でもよい。
【0035】
SiC部材としてサセプタ1を例示したが、凹部を有するSiC部材であれば、これに限られない。エッチャーリングやその他のCVD−SiC部材であってもよい。
【0036】
(4)作用,効果
図7および図8が示すように、比較例におけるサセプタ51は、第1SiC層53と、第2SiC層55と、第3SiC層57と、凹部59と、を備える。凹部59は底面63を有する。底面63には、第1SiC層53と第2SiC層55とで形成される界面65が現れている。
【0037】
しかし、本発明の構成であれば、第1SiC層3の第1上面11と第2SiC層5の第2下面17とが界面を形成する。そして、第1上面11は凹凸を有しており第2下面17はそれに対応する凹凸を有するので、第1上面11と第2下面17との界面も凹凸を有する。この界面は、凹部9の底面23には現れない。したがって、SiC部材1の外観を良好に確保することができる。
【0038】
また、本発明の構成であれば、第1上面11と第2下面17とが第1界面を形成し、第1下面13と第3上面19とが第2界面を形成する。第2距離29は第1距離27と同じなので、凹部9の底面23に第1界面が現れないのと同様に、第3下面21にも第2界面が現れない。
【符号の説明】
【0039】
1…SiC部材、3…第1SiC層、第2SiC層、7…第3SiC層
9…凹部、11…第1上面、13…第1下面、15…第2上面、17…第2下面
19…第3上面、21…第3下面、23…底面、27…第1距離、29…第2距離
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8