【実施例1】
【0012】
次に本発明の実施例を、図面を参照して説明する。図中20は圧縮機を示しており、この圧縮機20から吐出された高温、高圧の冷媒は凝縮器21で凝縮される。ここで使用される冷媒は二酸化炭素と低GWP値のフロンガス、特にHFO−1224yd(ハイドロフルオロオレフィン)の混合ガスで非共沸混合冷媒となっており、この混合比は二酸化炭素50%、HFOが50%、即ち、1:1が好ましい。凝縮器21では圧縮機20から吐出された高温、高圧の冷媒ガスを常温外気・或いは冷却水で凝縮するとともに凝縮潜熱を内包した気液二相の冷媒となる。圧縮機20より吐出された冷媒ガスは100〜150℃の過熱蒸気帯なので常温凝縮熱源温度でも冷却熱交換できる。過熱蒸気域で一部凝縮した凝縮潜熱を内包する気液二相の冷媒となる。
【0013】
凝縮器21を通過した冷媒は気液二相の湿り蒸気帯に入る。本発明で使用する非共沸混合冷媒は、液相・気相で組成が異なり、熱交換器における蒸発及び凝縮の開始温度と終了温度が異なる(温度勾配もしくは温度すべり)、特に非共沸混合冷媒ではその混合比によっては温度勾配が10℃〜20℃以上発生する。そのため凝縮開始温度が低温で熱源温度に格別な低温を必要とするか未凝縮状態となってしまう。
【0014】
ここで、非共沸混合冷媒は他の混合冷媒と異なり、全組成範囲において、露点と沸点が分離した単なる混合物としての性質しか有しない。しかし、混合した各々の冷媒特性は存在しているので、理論的に計算された沸点が算出できる。温度勾配は特に凝縮温度(高圧域)において大きく、完全凝縮化するには凝縮開始温度(各飽和蒸気温度)以下の凝縮熱源が必要となり、そのため外気による凝縮は非常に困難である。本来、凝縮用外部熱源は凝縮温度より低温熱源が必要であり、この完全な低温熱源は常時取り込むことはできない。
【0015】
ここで本発明の最も大きな特徴は、凝縮用低温熱源を多段式蒸発減圧機構Dで可能としたことである。凝縮器21を通過した冷媒は多段式蒸発減圧機構Dに導入される。この多段式蒸発減圧機構Dの構成は後に詳述するが、その全体の導入前に設けられている減圧弁(絞り弁)22によって僅かに減圧される。この減圧弁22は多段式蒸発減圧機構Dの全体の圧力を調整する。尚、
図3のチャート図で減衰装置あるいは減圧装置と記載してあるのは多段式蒸発減圧機構を意味している。
【0016】
減圧弁22を通過した冷媒は本実施例では三段式としてある多段式蒸発減圧機構Dの一段目となる熱交換器23の一次側24へ導入される。この熱交換器23はケーシング内を一枚の伝熱プレートを設け、その伝熱プレートによって冷媒の流通する同一の容量を有する一次側24及び二次側25を形成してあり、伝熱プレートの伝熱面積は一次側24と二次側25で同一となっている。この一次側24に流入した、凝縮器21で放熱冷却した気液二相の冷媒は伝熱プレートを介して二次側25の蒸発熱源となり、同時に冷却される。一次側24へ導入された冷媒は二次側25の蒸発熱源(蒸発冷媒温度より高温)であり、二次側25の蒸発冷媒温度で冷却されて僅かに凝縮液化する。
【0017】
一次側24を通過した冷媒はキャピラリチューブ(細管)26を通って、その一次側24における圧力より低圧とされて二次側25へ流入する。この二次側25に流入した冷媒は内包している凝縮潜熱を消耗する。キャピラリチューブ26を最大限に絞ると圧力、
温度は膨張弁から蒸発器のレベルまで下がり、熱交換器23の一次側24と二次側25はバーター熱交換して互いの潜熱を消耗する。高圧冷媒の減圧度はキャピラリチューブ(細管)26によって調節される。
【0018】
こうして、一段目となる熱交換器23を通過した冷媒は二段目となる熱交換器23aの一次側24aに導入され、一段目の熱交換器23と同様の作用を繰り返し、三段目となる熱交換器23bの一次側24bへ導入され、この三段目の熱交換器23bにおいても前記した一段目、二段目の熱交換器23、23aと同様の作用を行なう。多段式蒸発減圧機構Dにあっては、外部との断熱状態で、凝縮、減圧、蒸発を繰り返し、設定する冷媒の中間圧力(3.0MPa以下)と冷媒の温度となる。多段式蒸発減圧機構D内の各熱交換器にあっては一次・二次熱交換器の熱交換により、凝縮潜熱・蒸発潜熱を製造して自己サイクルのみで冷却能力を生み出すことが可能である。
【0019】
多段式蒸発減圧機構Dを通過した冷媒は、冷凍回路としての膨張弁27へ導入され、減圧された低温の冷媒ガスとなり、蒸発器28を通過して圧縮機20へ循環される。蒸発器28では凝縮潜熱の残量が蒸発潜熱となる。
【0020】
通常、飽和液線から飽和蒸気線すべてを冷却、凝縮、液化して相関して蒸発潜熱を引き出す。本発明では、全凝縮潜熱を液化しなくとも、高温な過熱蒸気域で熱交換する凝縮器で、凝縮潜熱を冷媒に内包させ、引き出される蒸発潜熱で冷却能力とすることが出来る。
【0021】
凝縮器21を通過すると多段式蒸発減圧機構Dに導入され、設定の中間圧力(3.0MPa以下)と冷媒温度となり、その後、膨張弁27を通過して設定の蒸発圧力、蒸発温度となる。多段式蒸発減圧機構D内で完全に蒸発にしないで、僅かな減圧にすれば内包する凝縮潜熱を消耗し切らずに残存し、この残存した凝縮潜熱と相関する蒸発潜熱が発生して冷却能力となる。
【0022】
冷媒ガス温度が高温な過熱蒸気域で凝縮器21を通過して、常温外気温度で冷却、液化可能な範囲(凝縮熱源温度よりも高温な冷媒過熱蒸気域)にして冷却、液化する(エンタルピーを消耗)。
【0023】
前記した各熱交換器23、23a、23bでは一次側24、24a、24bの冷媒熱源は二次側25、25a、25bの蒸発熱源となり、二次側25、25a、25bの冷媒潜熱は一次側24、24a、24bの凝縮熱源となり一次側と二次側はバーター熱交換しながら、凝縮潜熱を残存して、次工程に活用させる。この構成で、冷媒は膨張、減圧されて3.0MPa以下の圧力で循環させることが出来る。
【0024】
ここで、凝縮潜熱の放出域で冷媒よりも高温の外部熱源では凝縮はしない。圧縮機20からの吐出した冷媒はプラス100℃〜150℃であり、飽和蒸気線上ではプラス30℃〜40℃となり、プラス30℃〜150℃の吐出された冷媒をプラス27℃〜32℃の外気熱源温度で冷却する。この間で、吐出冷媒は凝縮潜熱を内包する。
【0025】
吐出冷媒が飽和蒸気線を越えて湿り蒸気域に入れば冷媒温度は低下して外気熱源温度では温度差がなく、冷却凝縮は不可能となる。吐出冷媒は湿り蒸気域で断熱膨張させて過熱蒸気域で内包した凝縮潜熱を利用した断熱蒸発等を作動させ、減圧させる。高圧冷媒を減圧させるために冷媒温度が低温となり外気熱源温度では冷却不可能となる。
【0026】
高圧低沸点の非共沸混合冷媒の特性である大きな温度勾配による湿り蒸気域では冷媒温度は低温となり、この特性も常温熱源温度では冷却不可能となる原因である。
【0027】
高圧の冷凍回路のどこかに低圧部が発生すると、高圧冷媒の冷凍回路全体が同圧となる。湿り蒸気域で断熱膨張させれば高圧の冷凍回路は蒸発熱源によって減圧する。圧縮機20から
吐出して減圧され、以後も当該圧力に構成される。
【0028】
多段式蒸発減圧機構Dでは繰り返して僅かな凝縮、減圧、蒸発を行ない、残存する凝縮潜熱と低温の冷媒液を構成して蒸発潜熱(冷却能力)を実現する。各熱交換器では一次側、二次側の熱交換によって凝縮潜熱、蒸発潜熱を製造し、自己サイクルのみで冷却能力を生み出すことを可能とし、三段目では次第に冷却された冷媒は十分な凝縮状態となる。
【0029】
低沸点・高圧の冷媒を蒸気圧縮式冷凍機に使用した時、凝縮温度が常温帯であれば、冷媒の凝縮は不可能であり、高圧になるため高圧耐用の特殊な構造にするか、二段圧縮構造に改修する必要があるが、多段式蒸発減圧機構に採用される熱交換器は、その各々が一次側と二次側が一体となっており、各々の熱交換器で冷媒を冷却、低圧にするため、僅かづつの凝縮、蒸発エンタルピーを消耗して最終的に効率よく冷却のための蒸発を可能とする。
【0030】
自己の持つエンタルピーで冷媒を冷却、低圧にして最終的に冷却機能を発揮させることが可能となり、これは熱交換器が一つのみの構成では凝縮潜熱が不足して高圧異常となる。低沸点を高沸点の冷媒の非共沸混合冷媒を常温凝縮熱源温度で凝縮するとき、常温凝縮熱源温度より高温な冷媒過熱蒸気域で凝縮する。非共沸混合冷媒の特性として、湿り蒸気域では冷媒温度が急激に低下し、低温の凝縮熱源が必要となるが、この凝縮用低温熱源を各熱交換器の二次側で実現し、凝縮を可能としている。