(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
潤滑油基油と、増ちょう剤と、モリブデンジチオカーバメート及びモリブデンジチオホスフェートから選ばれる少なくとも1種を含有する有機モリブデン化合物と、を含有するグリース組成物であって、
ASTM D3238によるn−d−M環分析値の%CAが2〜8、%CPが50〜75である第1の潤滑油基油と、
ASTM D3238によるn−d−M環分析値の%CAが1以下、%CPが70以上、尿素アダクト値が4質量%以下であり、40℃における動粘度が20mm2/s以上である第2の潤滑油基油と、
からなり、
前記潤滑油基油全量を基準として、前記第1の潤滑油基油の含有量が30〜60質量%であり、前記第2の潤滑油基油の含有量が40〜70質量%であり、
ちょう度が220〜300である、グリース組成物。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、粘性抵抗を低めつつ、機械システムに適用する場合の適正なちょう度を確保することは必ずしも容易ではない。つまり、グリースとして軟らか過ぎると、回転運動にともなう遠心力で飛散したり、あるいは機械要素から流出したりする。一方、硬すぎると、摺動抵抗となって所望の動きが妨げられる。つまり、従来のグリースの場合、基油組成、増ちょう剤量のバランスを図りつつ、最適処方を実践するしかなかった。
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、摺動抵抗が低く、機械要素の消費電力、特には軸受回転時の消費電力を大幅に低減しうるグリース組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を進めた結果、グリースの基油として、性状の異なる特定の基油を所定量混合することにより、それぞれの基油を単独で用いたグリースに比べ、軸受回転時の消費電力を大幅に低減することができることを見出した。
【0010】
なお、軸受を回転させる際に必要となるエネルギーを低減し省エネルギー化を図るには、軸受転動体(玉、ころ)と軌道輪(内輪及び外輪)間の転がり抵抗及びすべり抵抗を極力低めることが重要であり、一般的には潤滑油剤(潤滑油やグリース)の基油を低粘度化すること、摩擦低減効果のある油性剤を添加剤として配合することなどが有用と考えられている。しかし、グリースの場合、増ちょう剤を製造する過程で基油を高温条件に曝す必要があり、基油の蒸発、安全性の面で低粘度化には限界があった。さらに、摩擦を低減する添加剤は、使用時間とともにその効果が低減するという課題があった。一方、本発明者らは、軸受摺動部の油膜形成能、潤滑油基油の温度による粘度変化に着目し、軸受転動体と軌道輪間に十分な油膜を形成してこれらの直接接触によるエネルギー損失を低減するためには、基油の成分に立体構造の大きな分子、具体的には芳香族を含む成分(n−d−M環分析による%C
A)を含有させること、及び温度上昇にともなう粘度低下を避けるため粘度指数の高いパラフィン成分(n−d−M環分析による%C
P)をバランスよく含有させることが有効であることを見出した。
【0011】
本発明は、上記の知見に基づいてなされたものであり、下記[1]〜[9]に記載のグリース組成物を提供する。
【0012】
[1]潤滑油基油と、増ちょう剤とを含有するグリース組成物であって、前記潤滑油基油は、ASTM D3238によるn−d−M環分析値の%C
Aが2〜8、%C
Pが50〜75である第1の潤滑油基油と、ASTM D3238によるn−d−M環分析値の%C
Aが1以下、%C
Pが70以上、尿素アダクト値が4質量%以下である第2の潤滑油基油と、を含有し、前記潤滑油基油全量を基準として、前記第1の潤滑油基油の含有量が5〜90質量%であり、前記第2の潤滑油基油の含有量が10〜95質量%である、グリース組成物。
[2]ちょう度が220〜300である、[1]に記載のグリース組成物。
[3]有機モリブデン化合物を更に含有する、[1]又は[2]に記載のグリース組成物。
[4]前記有機モリブデン化合物が、モリブデンジチオカーバメート及びモリブデンジチオホスフェートから選ばれる少なくとも1種を含有する、[3]に記載のグリース組成物。
[5]前記第1の潤滑油基油は、40℃における動粘度10〜700mm
2/s、及び粘度指数90〜120を有する、[1]〜[4]のいずれかに記載のグリース組成物。
[6]前記第2の潤滑油基油は、40℃における動粘度10〜5000mm
2/s、及び粘度指数が110〜150を有する、[1]〜[5]のいずれかに記載のグリース組成物。
[7]前記第2の潤滑油基油は、鉱物油及び合成炭化水素から選ばれる少なくとも1種を含有する、[1]〜[6]のいずれかに記載のグリース組成物。
[8]前記増ちょう剤は、金属石けん系化合物及びウレア化合物から選ばれる少なくとも1種を含有する、[1]〜[7]のいずれかに記載のグリース組成物。
[9]潤滑油基油と、増ちょう剤と、有機モリブデン化合物と、を含有するグリース組成物であって、前記潤滑油基油は、ASTM D3238によるn−d−M環分析値の%C
Aが2〜8、%C
Pが50〜75である第1の潤滑油基油と、ASTM D3238によるn−d−M環分析値の%C
Aが1以下、%C
Pが70以上である第2の潤滑油基油と、を含有し、前記潤滑油基油全量を基準として、前記第1の潤滑油基油の含有量が5〜90質量%であり、前記第2の潤滑油基油の含有量が10〜95質量%であり、ちょう度が220〜300である、グリース組成物。
【発明の効果】
【0013】
本発明のグリース組成物は、軸受回転に消費される電力量が少なくて済むという格別の効果を奏するものである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
【0015】
本発明の実施形態に係るグリース組成物は、潤滑油基油と、増ちょう剤とを含有する。潤滑油基油は、ASTM D3238によるn−d−M環分析値の%C
Aが2〜8、%C
Pが50〜75である第1の潤滑油基油と、ASTM D3238によるn−d−M環分析値の%C
Aが1以下、%C
Pが70以上、尿素アダクト値が4質量%以下である第2の潤滑油基油と、を含有する。第1の潤滑油基油と第2の潤滑油基油との混合比は、潤滑油基油全量を基準として、第1の潤滑油基油の含有量が5〜90質量%であり、第2の潤滑油基油の含有量が10〜95質量%である。
【0016】
本実施形態においては、軸受摺動部の油膜形成能、潤滑油基油の温度による粘度変化に着目し、軸受転動体と軌道輪間に十分な油膜を形成しこれらの直接接触によるエネルギー損失を低減するためには、軌道輪と軸受転動体の転がりに伴う“くさび効果”を利用し、基油の成分に立体構造の大きな基油構成分子、具体的には芳香族を含む成分(n−d−M環分析による%C
A)を含有させることが有効である、という本発明者の知見に基づき、第1の潤滑油基油が用いられる。
【0017】
ASTM D3238によるn−d−M環分析値に関して、第1の潤滑油基油の%C
Aは2〜8、好ましくは2〜6、より好ましくは4〜6である。%C
Aが2未満であるとエネルギー損失の低減効果が不十分となり、また、8を超えると相対的にパラフィン成分の含有量が少なくなりやすく、高温時の粘度低下が大きくなり、油膜形成能の点で不十分となる。
【0018】
第1の潤滑油基油の%C
Pは50〜75、好ましくは60〜70である。%C
Pが50未満であると高温時の粘度低下が大きく油膜形成能に劣り、また、75を超えると相対的に芳香族分を含む成分の含有量が少なくなりやすく、エネルギー損失の低減効果が不十分となる。
【0019】
第1の潤滑油基油の粘度指数は好ましくは90〜120、より好ましくは95〜115、更に好ましくは100〜110である。粘度指数が90以上であると温度上昇による粘度低下を抑制でき、油膜形成能が更に向上する。
【0020】
第1の潤滑油基油の40℃の動粘度は、特に制限されないが、優れた潤滑性を有するグリースを安全に調製する点から、好ましくは10〜700mm
2/s、より好ましくは20〜500mm
2/s、更に好ましくは25〜70mm
2/sである。
【0021】
本発明における粘度指数及び40℃の動粘度は、JIS K2283に準拠して測定された粘度指数及び40℃における動粘度をそれぞれ意味する。
【0022】
第1の潤滑油基油としては、原油を常圧蒸留し、あるいは更に減圧蒸留して得られる留出油を各種の精製プロセスで精製した潤滑油留分であって、ASTM D3238によるn−d−M環分析値の%C
Aが2〜8、%C
Pが50〜75のものが挙げられる。精製プロセスは、水素化精製、溶剤抽出、溶剤脱ろうなどであり、これらを適宜の順序で組み合わせて処理して本実施形態の第1潤滑油基油を得ることができる。異なる原油あるいは留出油を、異なるプロセスの組合せ、順序により得られた、性状の異なる2種以上の精製油の混合物も有用である。得られる第1の潤滑油基油の性状が前述した物性を満足するように調整されていれば、いずれの方法によって得られる第1の潤滑油基油であっても好ましく使用することができる。
【0023】
本実施形態においては、弾性流体潤滑となる軸受転動体と軌道輪の最接近部位にはトラクション係数の低い鎖状の炭化水素成分、パラフィン成分を基油中に含有させることが有効である、という本発明者の知見に基づき、第2の潤滑油基油が用いられる。
【0024】
一方、本発明者らは、潤滑油基油中のパラフィン成分が多くても、該パラフィン成分が適度な分岐を有しないと、低温域での粘度増加が大きくなり、低温での軸受起動においてトルクが高まり、実用上問題となることを熟慮し、更に検討を重ねた結果、低温での軸受起動におけるトルク上昇の原因となるパラフィン分の含有量の指標として、尿素アダクト値が有効であることを見出した。そして、本発明者らは、尿素アダクト値、%C
P及び%C
Aがそれぞれ特定条件を満たす第2の潤滑油基油を、第1の潤滑油基油に混合することによって、低温における起動トルクの急増を抑えつつ、常温から高温域にわたって軸受の低トルク化を図ることができることを見出した。
【0025】
ASTM D3238によるn−d−M環分析値に関して、第2の潤滑油基油の%C
Aは、1以下、好ましくは0.8以下である。%C
Aが1を超えると、弾性流体潤滑となる軸受転動体と軌道輪の最接近部位にトラクション係数の低い好適なパラフィン成分を十分に供給できなくなる。
【0026】
第2の潤滑油基油の%C
Pは、70以上、好ましくは75以上、より好ましくは80以上である。%C
Pが70未満であると、弾性流体潤滑となる軸受転動体と軌道輪の最接近部位におけるトラクション係数の低減効果が不十分となる。
【0027】
第2の潤滑油基油の尿素アダクト値は、低温域での粘度増加を抑制し、低温での軸受起動におけるトルク上昇を抑制する観点から、4質量%以下であり、好ましくは3.5質量%以下、より好ましくは3質量%以下である。第2の潤滑油基油の尿素アダクト値は、0質量%でもよいが、低温での軸受起動におけるトルク上昇を十分に抑制しつつ、より粘度指数の高い潤滑油基油を得ることができ、また脱ろう条件を緩和して経済性にも優れる点で、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上である。
【0028】
本発明における尿素アダクト値は、以下の方法により測定される。秤量した試料油(潤滑油基油)100gを丸底フラスコに入れ、尿素200g、トルエン360ml及びメタノール40mlを加えて室温で6時間攪拌する。これにより、反応液中に尿素アダクト物として白色の粒状結晶が生成する。反応液を1ミクロンフィルターでろ過することにより、生成した白色粒状結晶を採取し、得られた結晶をトルエン50mlで6回洗浄する。回収した白色結晶をフラスコに入れ、純水300ml及びトルエン300mlを加えて80℃で1時間攪拌する。分液ロートで水相を分離除去し、トルエン相を純水300mlで3回洗浄する。トルエン相に乾燥剤(硫酸ナトリウム)を加えて脱水処理を行った後、トルエンを留去する。このようにして得られた尿素アダクト物の試料油に対する割合(質量百分率)を尿素アダクト値と定義する。
【0029】
尿素アダクト値の測定においては、尿素アダクト物として、イソパラフィンのうち低温での軸受起動におけるトルク上昇の原因となる成分、さらには潤滑油基油中にノルマルパラフィンが残存している場合の当該ノルマルパラフィンを精度よく且つ確実に捕集することができるため、ノルマルパラフィン及び上記特定のイソパラフィンの含有割合の指標として優れている。本発明者らは、GC及びNMRを用いた分析により、尿素アダクト物の主成分が、ノルマルパラフィン及び主鎖の末端から分岐位置までの炭素数が6以上であるイソパラフィンの尿素アダクト物であることを確認している。
【0030】
第2の潤滑油基油の粘度指数は、110〜150、好ましくは115〜140、より好ましくは125〜140である。粘度指数が110以上であると、高温時の粘度低下を抑制でき、油膜形成能が更に向上する。粘度指数が150以下であると、潤滑油基油を得る際の製造コストの点で優れる。
【0031】
第2の潤滑油基油の40℃の動粘度は、好ましくは10〜5000mm
2/s、より好ましくは20〜3000mm
2/s、更に好ましくは25〜70mm
2/sである。40℃の動粘度が10mm
2/s以上であると、引火点の低下を抑制でき、安全にグリースを製造できる。40℃の動粘度が5000mm
2/s以下であると、粘性抵抗の増大を抑制でき、省エネルギー特性の点で更に優れる。
【0032】
第2の潤滑油基油は、上記の性状を有する鉱物油及び合成炭化水素油から選ばれる1種以上であることが好ましい。鉱物油と合成炭化水素油とを混合した基油を第2の潤滑油基油として用いてもよい。
【0033】
第2の潤滑油基油の鉱物油としては、原油を常圧蒸留し、あるいは更に減圧蒸留して得られる留出油を各種の精製プロセスで精製した潤滑油留分であって、ASTM D3238によるn−d−M環分析値の%C
Aが1以下、%C
Pが75以上、尿素アダクト値が4質量%以下のものが挙げられる。精製プロセスは、水素化分解、水素化精製、溶剤抽出、溶剤脱ろう、水素化脱ろうなどであり、これらを適宜の順序で組み合わせて処理して本発明の第2の潤滑油基油成分を得ることができる。異なる原油あるいは留出油を、異なるプロセスの組合せ、順序により得られた、性状の異なる2種以上の精製油の混合物も有用である。得られる第2の潤滑油基油の性状が前述した物性を満足するように調整されていれば、いずれの方法によって得られる第2の潤滑油基油であっても好ましく使用することができる。
【0034】
第2の潤滑油基油の合成炭化水素油としては、例えばポリ−α−オレフィン、ポリブテンや2種以上の各種オレフィンの共重合体などのポリオレフィン、アルキルベンゼン、アルキルナフタレンなどであって、ASTM D3238によるn−d−M環分析値の%C
Aが1以下、%C
Pが75以上、尿素アダクト値が4質量%以下のものが挙げられる。これらの中でも、ポリ−α−オレフィンが、入手性、コスト面、粘度特性、酸化安定性、システム部材との適合性の面で好ましい。ポリ−α−オレフィンとしては、1−ドデセンや1−デセンなどの重合物がコスト面でより好ましい。
【0035】
本実施形態において、第2の潤滑油基油は、鉱物油及び合成炭化水素油の一方のみからなるものであってもよく、あるいは両方の混合物であってもよい。すなわち、第1の潤滑油基油と第2の潤滑油基油との好ましい組合せとしては、第1の潤滑油基油(鉱物油)と第2の潤滑油基油(鉱物油)、第1の潤滑油基油(鉱物油)と第2の潤滑油基油(合成炭化水素油)、あるいは第1の潤滑油基油(鉱物油)と第2の潤滑油基油(鉱物油と合成炭化水素との混合基油)が例示できる。第1の潤滑油基油(鉱物油)、第2の潤滑油基油(鉱物油)及び第2の潤滑油基油(合成炭化水素油)は、それぞれ1種であっても2種以上であってもよい。
【0036】
第1の潤滑油基油の含有量は、潤滑油基油全量を基準として、5〜90質量%、好ましくは10〜80質量%、更に好ましくは30〜60質量%である。第2の潤滑油基油の含有量は、潤滑油基油全量を基準として、10〜95質量%、好ましくは20〜90質量%、更に好ましくは40〜70質量%である。第1及び第2の潤滑油基油の含有量が上記の範囲外であると、所望の消費電力低減効果が得られなくなるおそれがある。
【0037】
潤滑油基油の含有量は、グリース組成物全量基準で、70〜98質量%であることが好ましく、80〜97質量%であることが特に好ましい。
【0038】
増ちょう剤は、金属石けん系化合物(「金属石けん系増ちょう剤」ともいう)及びウレア化合物(「ウレア系増ちょう剤」ともいう)から選ばれる1種以上を含有することが好ましい。
【0039】
金属石けん系増ちょう剤としては、単一石けんとコンプレックス石けんが挙げられる。単一石けんとは、脂肪酸又は油脂をアルカリ金属水酸化物又はアルカリ土類金属水酸化物などでケン化した金属石けんである。コンプレックス石けんとは、単一石けんで用いられている脂肪酸に加え、更に異なった分子構造の有機酸とを組み合わせて複合化したものである。脂肪酸は、ヒドロキシ基などを有する脂肪酸誘導体であってもよい。脂肪酸は、ステアリン酸などの脂肪族カルボン酸でも、テレフタル酸などの芳香族カルボン酸でもよい。脂肪酸としては、1価又は2価の脂肪族カルボン酸、例えば炭素数6〜20の脂肪族カルボン酸が用いられ、特には炭素数12〜20の1価脂肪族カルボン酸や炭素数6〜14の2価脂肪族カルボン酸が好ましく用いられる。脂肪酸としては、1個のヒドロキシル基を含む1価脂肪族カルボン酸が好ましい。コンプレックス石けんにおいて脂肪酸と組み合わせる有機酸としては、酢酸、アゼライン酸やセバシン酸などの二塩基酸、安息香酸などが好適である。
【0040】
金属石けん系増ちょう剤の金属としては、リチウム、ナトリウムなどのアルカリ金属、カルシウムなどのアルカリ土類金属、アルミニウムのような両性金属が用いられる。これらの中でも、アルカリ金属、特にはリチウムが好ましく用いられる。
【0041】
金属石けん系増ちょう剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。金属石けん系増ちょう剤の含有量は、例えば、グリース組成物全量基準で、好ましくは2〜30質量%、より好ましくは3〜20質量%、更に好ましくは10〜20質量%である。
【0042】
ウレア系増ちょう剤としては、例えば、ジイソシアネートとモノアミンとの反応で得られるジウレア化合物や、ジイソシアネートとモノアミン、ジアミンとの反応で得られるポリウレア化合物等を用いることができる。
【0043】
ジイソシアネートとしては、脂肪族ジイソシアネートや芳香族ジイソシアネートなどが挙げられる。脂肪族ジイソシアネートとしては、例えば飽和及び/又は不飽和の直鎖状、分岐状、又は脂環式の炭化水素基を有するジイソシアネートが挙げられる。例えば、フェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ジフェニルジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、オクタデカンジイソシアネート、デカンジイソシアネート、ヘキサンジイソシアネー卜等が好ましい。モノアミンとしては、脂肪族モノアミンや芳香族モノアミンなどが挙げられる。脂肪族モノアミンとしては、例えば飽和及び/又は不飽和の直鎖状、分岐状、又は脂環式の炭化水素基を有するモノアミンが挙げられる。例えば、オクチルアミン、ドデシルアミン、ヘキサデシルアミン、ステアリルアミン、オレイルアミン、アニリン、p−トルイジン、シクロヘキシルアミン等が好ましい。ジアミンとしては、脂肪族ジアミンや芳香族ジアミンなどが挙げられる。脂肪族ジアミンとしては、例えば飽和及び/又は不飽和の直鎖状、分岐状、又は脂環式の炭化水素基を有するジアミンが挙げられる。例えば、エチレンジアミン、プロパンジアミン、ブタンジアミン、ヘキサンジアミン、オクタンジアミン、フェニレンジアミン、トリレンジアミン、キシレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン等が好ましい。
【0044】
ウレア系増ちょう剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。ウレア系増ちょう剤の含有量は、例えば、グリース組成物全量基準で、好ましくは2〜30質量%、より好ましくは3〜20質量%、更に好ましくは10〜20質量%である。
【0045】
グリース組成物は、有機モリブデン化合物を含有することが好ましい。これにより、軸受の長寿命化が可能となる。有機モリブデン化合物としては、モリブデンジチオカーバメート、モリブデンジチオホスフェート、モリブデンのアミン錯体、モリブデンのコハク酸イミド錯体、有機酸のモリブデン塩、アルコールのモリブデン塩等を例示することができる。これらの中では、軸受の長寿命化の観点から、モリブデンジチオカーバメート、モリブデンジチオホスフェートが好ましい。
【0046】
モリブデンジチオカーバメートとしては、例えば、下記一般式(1)で表される化合物を用いることができる。
【化1】
【0047】
式(1)中、R
1、R
2、R
3及びR
4は同一でも異なっていてもよく、それぞれ炭素数2〜24、好ましくは炭素数4〜13のアルキル基又は炭素数6〜24、好ましくは炭素数8〜15のアリール基(アルキルアリール基を含む)等の炭化水素基を表す。X
1、X
2、X
3及びX
4は同一でも異なっていてもよく、それぞれ硫黄原子又は酸素原子を表す。ここでいうアルキル基には、1級アルキル基、2級アルキル基及び3級アルキル基が含まれる。これらは、直鎖状でも分枝状でもよい。
【0048】
アルキル基の好ましい例としては、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基等が挙げられる。これらは、1級アルキル基、2級アルキル基又は3級アルキル基でもよく、また直鎖状でも分枝状でもよい。(アルキル)アリール基の好ましい例としては、フェニル基、トリル基、エチルフェニル基、プロピルフェニル基、ブチルフェニル基、ペンチルフェニル基、ヘキシルフェニル基、オクチルフェニル基、ノニルフェニル基、デシルフェニル基、ウンデシルフェニル基、ドデシルフェニル基等が挙げられる。(アルキル)アリール基におけるアルキル基は、1級アルキル基、2級アルキル基又は3級アルキル基でもよく、また直鎖状でも分枝状でもよい。(アルキル)アリール基には、アリール基に対するアルキル基の置換位置が異なる全ての置換異性体が含まれる。
【0049】
より好ましいモリブデンジチオカーバメートとしては、具体的には、硫化モリブデンジエチルジチオカーバメート、硫化モリブデンジプロピルジチオカーバメート、硫化モリブデンジブチルジチオカーバメート、硫化モリブデンジペンチルジチオカーバメート、硫化モリブデンジヘキシルジチオカーバメート、硫化モリブデンジオクチルジチオカーバメート、硫化モリブデンジデシルジチオカーバメート、硫化モリブデンジドデシルジチオカーバメート、硫化モリブデンジ(ブチルフェニル)ジチオカーバメート、硫化モリブデンジ(ノニルフェニル)ジチオカーバメート、硫化オキシモリブデンジエチルジチオカーバメート、硫化オキシモリブデンジプロピルジチオカーバメート、硫化オキシモリブデンジブチルジチオカーバメート、硫化オキシモリブデンジペンチルジチオカーバメート、硫化オキシモリブデンジヘキシルジチオカーバメート、硫化オキシモリブデンジオクチルジチオカーバメート、硫化オキシモリブデンジデシルジチオカーバメート、硫化オキシモリブデンジドデシルジチオカーバメート、硫化オキシモリブデンジ(ブチルフェニル)ジチオカーバメート、硫化オキシモリブデンジ(ノニルフェニル)ジチオカーバメート、及びこれらの混合物等が例示できる。これらのモリブデンジチオカーバメート中のアルキル基は直鎖状でも分枝状でもよく、アルキルフェニル基におけるアルキル基の結合位置は任意である。これらのモリブデンジチオカーバメートとしては、1分子中に異なる炭素数及び/又は構造の炭化水素基を有する化合物も、好ましく用いることができる。
【0050】
モリブデンジチオホスフェートとしては、潤滑油添加剤として市販されているものを用いることができ、例えば下記一般式(2)で表される化合物を用いることができる。
【0052】
式(2)中、R
5及びR
6は、互いに同一でも異なっていてもよく、それぞれ炭素数1以上の炭化水素基を表す。X
5、X
6、X
7、X
8及びX
9は、互いに同一でも異なっていてもよく、それぞれ酸素原子又は硫黄原子を表す。a、b及びcは、それぞれ1〜6の整数を表す。ただし、X
5、X
6、X
7、X
8及びX
9の少なくとも一つは硫黄原子を表す。R
5及びR
6で表される炭化水素基としては、例えば、炭素数1〜24のアルキル基、炭素数5〜7のシクロアルキル基、炭素数6〜11のアルキルシクロアルキル基、炭素数6〜18のアリール基、炭素数7〜24のアルキルアリール基及び炭素数7〜12のアリールアルキル基が挙げられる。
【0053】
有機モリブデン化合物の含有量は、軸受の長寿命化の観点から、グリース組成物全量基準で、モリブデン元素量換算として、好ましくは300質量ppm以上、より好ましくは500質量ppm以上、更に好ましくは600質量ppm以上、特に好ましくは700質量ppm以上である。有機モリブデン化合物の含有量は、軸受性能への添加効果及び製造コストの観点から、グリース組成物全量基準で、モリブデン元素量換算として、好ましくは50000質量ppm以下、より好ましくは40000質量ppm以下、更に好ましくは30000質量ppm以下である。また、有機モリブデン化合物の含有量は、グリース組成物全量基準で、モリブデン化合物重量として、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上、更に好ましくは1質量%以上である。有機モリブデン化合物の含有量は、軸受性能への添加効果及び製造コストの観点から、グリース組成物全量基準で、モリブデン化合物重量として、好ましくは15質量%以下、より好ましくは10質量%以下、更に好ましくは5質量%以下である。
【0054】
グリース組成物は、上記成分に加えて、必要に応じて、一般に潤滑油やグリースに用いられている添加剤を含有することができる。かかる添加剤としては、例えば、清浄剤、分散剤、摩耗防止剤、粘度指数向上剤、酸化防止剤、極圧剤、防錆剤、腐食防止剤、金属不活性化剤、固体潤滑剤などが挙げられる。これらの添加剤の含有量は、グリース組成物全量基準で、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下である。
【0055】
グリース組成物のちょう度は、220〜300であることが好ましく、225〜295であることがより好ましく、230〜290であることが更に好ましく、230〜285であることが特に好ましい。グリース組成物のちょう度が上記の範囲内であると、軸受回転に消費される電力量を大幅に低減することができる。グリース組成物のちょう度を調整する方法としては、前述の第1の潤滑油基油、第2の潤滑油基油及び増ちょう剤の種類及び混合割合、並びに、後述のグリース組成物を製造する際の各成分の混合方法(例えば混合回数、加熱温度、冷却速度、ロール条件)などを調整する方法が挙げられる。
【0056】
本発明におけるちょう度は、JIS K2220に準拠して測定される混和ちょう度を意味する。具体的な測定条件は、以下のとおりである。ちょう度測定用つぼに試料を詰め、25℃に保持した後、規定の混和器を用いて1分間で60往復混和する。次いで、過剰の試料をへらで除き、試料の表面を平らにした後、規定の円錐を5秒間試料の中に落下させ、侵入した深さ(mm)の10倍の値を混和ちょう度とする。
【0057】
本発明の他の実施態様は、潤滑油基油と、増ちょう剤と、有機モリブデン化合物と、を含有するグリース組成物であって、前記潤滑油基油は、ASTM D3238によるn−d−M環分析値の%C
Aが2〜8、%C
Pが50〜75である第1の潤滑油基油と、ASTM D3238によるn−d−M環分析値の%C
Aが1以下、%C
Pが70以上である第2の潤滑油基油と、を含有し、前記潤滑油基油全量を基準として、前記第1の潤滑油基油の含有量が5〜90質量%であり、前記第2の潤滑油基油の含有量が10〜95質量%であり、ちょう度が220〜300である、グリース組成物である。この実施態様は、軸受回転時の消費電力の低減及び軸受の長寿命化を両立できるという格別の効果を奏する。
【0058】
本実施形態に係るグリース組成物の製造方法は、第1の潤滑油基油と、第2の潤滑油基油と、増ちょう剤と、を混合してグリース組成物を得る工程を備える。第1の潤滑油基油と第2の潤滑油基油とは、潤滑油基油全量を基準として、第1の潤滑油基油の含有量が5〜90質量%、第2の潤滑油基油の含有量が10〜95質量%となるように混合される。
【0059】
本実施形態においては、予め調製した増ちょう剤を第1及び第2の潤滑油基油と混合してもよく、あるいは、第1の潤滑油基油若しくは第2の潤滑油基油又はこれらの混合基油に増ちょう剤の原料を配合し、基油中で当該原料同士を反応させて増ちょう剤を得てもよい。例えば、金属石けん系増ちょう剤を用いる場合は、金属石けんの形で潤滑油基油に配合してもよいが、カルボン酸及び金属源(金属塩、金属塩水酸化物等)を別々に潤滑油基油に配合し、グリース作製時にカルボン酸と金属源とを反応させて金属石けん増ちょう剤としてもよい。ウレア系増ちょう剤を用いる場合は、ウレア化合物の形で潤滑油基油に配合してもよいが、ジイソシアネート及びアミン(モノアミン、ジアミン等)を潤滑油基油に配合し、グリース作製時にジイソシアネートとアミンとを反応させてウレア系増ちょう剤としてもよい。
【0060】
第1の潤滑油基油と、第2の潤滑油基油と、増ちょう剤と、を混合して得られるグリース組成物について、必要に応じてロール又はミルによる分散処理等を行うことができる。
【実施例】
【0061】
以下、実施例に基づいて本発明を更に具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではない。
【0062】
[基油A]
常圧蒸留残渣を減圧蒸留した留出油を溶剤精製して得られた、以下の性状の潤滑油基油を基油Aとして用いた。
40℃における動粘度:37.6mm
2/s
粘度指数:107
引火点:220℃
%C
P:66
%C
A:5.2
【0063】
[基油B]
燃料油水素化分解装置から得られるボトム留分を潤滑油基油の原料として用い、水素化処理触媒を用いて水素化処理を行った。このとき、原料油中のノルマルパラフィンの分解率が10質量%以下となるように、反応温度及び液空間速度を調整した。さらに、水素化処理により得られた被処理物について、貴金属含有量0.1〜5質量%に調整されたゼオライト系水素化脱ろう触媒を用い、315〜325℃の温度範囲で水素化脱ろうを行い、脱ろう油を得た。さらに、この脱ろう油を、水素化精製触媒を用いて、水素化精製した。その後、蒸留により得られた下記性状の潤滑油基油を基油Bとして用いた。
40℃における動粘度:36.8mm
2/s
粘度指数:130
引火点:240℃
%C
P:79
%C
A:0
尿素アダクト値:2質量%
【0064】
[基油C]
以下の性状の合成炭化水素であるポリ−α−オレフィン(INEOS社製Durasyn166)を基油Cとして用いた。
40℃における動粘度:30.8mm
2/s
粘度指数:135
引火点:250℃
%C
P:91
%C
A:0
尿素アダクト値:0質量%
【0065】
[基油D]
溶剤精製基油の減圧蒸留で分離した留分を、フルフラールで溶剤抽出した後で水素化処理し、次いで、メチルエチルケトン−トルエン混合溶剤で溶剤脱ろうした。溶剤脱ろうの際に除去され、スラックワックスとして得られたワックス分を、潤滑油基油の原料として用い、水素化処理を行った。このとき、反応温度及び液空間速度を調整し、水素化処理により得られた被処理物の水素化脱ろうの温度条件を300℃程度と低く調整し、得られた脱ろう油の水素化精製した。その後、蒸留により得られた下記性状、尿素アダクト値5質量%の潤滑油基油を基油Dとして用いた。
40℃における動粘度:32.0mm
2/s
粘度指数:130
引火点:240℃
%C
P:75
%C
A:0
尿素アダクト値:5質量%
【0066】
[供試油1−1〜1−10]
基油A、B、C及びDを表1〜2に示す配合量(質量%で示す)でステンレス製容器に入れた。増ちょう剤としてウレア系化合物を用いる場合、ウレア系化合物の原料であるアミン及びイソシアネートを容器内の潤滑油基油に加え、150℃に加熱し、マグネチックスターラーで攪拌して、アミン及びジイソシアネートを反応させた。そして、脱水後、室温に冷却することで半固体状の組成物を得た。増ちょう剤として金属石けん系化合物を用いる場合、ステアリン酸リチウムを潤滑油基油に加え、200℃に加熱し、その後冷却することで半固体状の組成物を得た。さらに、得られた各半固体状の組成物にフェノール系酸化防止剤であるジ−t−ブチル−p−クレゾールを加え、3本ロールで分散処理を行い、表1〜2に示す組成を有するグリース組成物を得た。
【0067】
[評価試験1]
各グリース組成物を用いた場合の軸受回転時における消費電力量を以下の手法により計測した。軸受は、NTN社製複列円すいころ軸受4T−CRI−0868を用いた。試験前に軸受内部を有機溶剤で十分洗浄した後、実験油剤(グリース組成物)を軸受のころ、軌道輪、保持器の隙間に注射器で注入した。実験は、同一油剤を充填した計4個の軸受(2軸受×2組)を用いた。軸受内輪を固定し、プーリーを介した電動機(安川電機社製、TYPE:FEQ、2.2kW)で一定方向に回転させ、電動機の消費電力量を電力計(HIOKI社製、CE3169、CLAMP ON POWER HiTESTER)で計測した。軸受回転数を1300rpm、温度を室温とし、2時間の連続回転における積算消費電力(kW)を比較した。繰り返し実験回数は3回とした。得られた結果を表1〜2に示す。なお、表1〜2中の軸受消費電力及び電力削減率(%:供試油1−6基準)は、3回の実験の平均値である。本実施例での電力削減率は、消費電力が基準より少ないときを、負の値で示している。
【0068】
【表1】
【0069】
【表2】
【0070】
[供試油2−1〜2−12]
基油A、B、C及びD、並びに増ちょう剤を表3〜5に示す配合量(質量%で示す)でステンレス製容器に入れた。増ちょう剤として金属石けん系化合物(単一石けん)を用いる場合には、ステアリン酸リチウムを潤滑油基油に加え、200℃に加熱した後に冷却することで、半固体状の組成物を得た。増ちょう剤として金属石けん系化合物(コンプレックス石けん)を用いる場合には、12−ヒドロキシステアリン酸、アゼライン酸、及び水酸化リチウムを潤滑油基油に加え、200℃に加熱し反応させコンプレックス石けんとし、冷却することで、半固体状の組成物を得た。増ちょう剤としてウレア系化合物を用いる場合には、ウレア系化合物の原料であるアミン及びイソシアネートを容器内の潤滑油基油に加え、150℃に加熱し、マグネチックスターラーで攪拌して、アミン及びジイソシアネートを反応させた。そして、脱水後、室温に冷却することで、半固体状の組成物を得た。さらに、得られた各半固体状の組成物にフェノール系酸化防止剤であるジ−t−ブチル−p−クレゾールを加え、3本ロールで分散処理を行い、表3〜5に示す組成を有するグリース組成物を得た。また、得られたグリース組成物について、JIS K2220に準拠してちょう度(混和ちょう度)を測定した。
【0071】
[評価試験2−1]
各グリース組成物を用いた場合の軸受回転時における消費電力量を以下の手法により計測した。軸受は、NSK社製複列玉軸受7008A−DFを用いた。試験前に軸受内部を有機溶剤で十分洗浄した後、実験油剤(グリース組成物)を軸受の玉、軌道輪、保持器の隙間に注射器で注入した。実験は、同一油剤を充填した計4個の軸受(2軸受×2組)を用いた。軸受内輪を固定し、プーリーを介した電動機(安川電機社製、TYPE:FEQ、2.2kW)で一定方向に回転させ、電動機の消費電力量を電力計(HIOKI社製、CE3169、CLAMP ON POWER HiTESTER)で計測した。軸受回転数を1300rpm、温度を室温とし、2時間の連続回転における積算消費電力(kW)を比較した。繰り返し実験回数は3回とした。得られた結果を表3〜5に示す。なお、表3〜5中の軸受消費電力及び電力削減率(%:供試油2−11基準)は、3回の実験の平均値である。
【0072】
[評価試験2−2]
各グリース組成物について、評価試験1と同様の試験を実施した。得られた結果を表3〜5に示す。なお、表3〜5中の軸受消費電力及び電力削減率(%:供試油2−11基準)は、3回の実験の平均値である。
【0073】
【表3】
【0074】
【表4】
【0075】
【表5】
【0076】
[供試油3−1〜3−8]
基油A及びB、増ちょう剤、並びに有機モリブデン化合物として、モリブデンジチオカーバメート(モリブデン元素含有量が29質量%、硫黄元素含有量が28質量%)及びモリブデンジチオホスフェート(モリブデン元素含有量が8質量%、りん元素含有量が6質量%、硫黄元素含有量が12質量%)を表6〜7に示す配合量(質量%で示す。モリブデン元素量換算値も併記)でステンレス製容器に入れた。増ちょう剤として金属石けん系化合物(単一石けん)を用いる場合には、ステアリン酸リチウムを潤滑油基油に加え、200℃に加熱した後に冷却することで、半固体状の組成物を得た。増ちょう剤として金属石けん系化合物(コンプレックス石けん)を用いる場合には、12−ヒドロキシステアリン酸、アゼライン酸、及び水酸化リチウムを潤滑油基油に加え、200℃に加熱し反応させコンプレックス石けんとし、冷却することで、半固体状の組成物を得た。増ちょう剤としてウレア系化合物を用いる場合には、ウレア系化合物の原料であるアミン及びイソシアネートを容器内の潤滑油基油に加え、150℃に加熱し、マグネチックスターラーで攪拌して、アミン及びジイソシアネートを反応させた。そして、脱水後、室温に冷却することで、半固体状の組成物を得た。さらに、得られた各半固体状の組成物にその他添加剤(フェノール系酸化防止剤、腐食防止剤など)を加え、3本ロールで分散処理を行い、表6〜7に示す組成を有するグリース組成物を得た。また、得られたグリース組成物について、JIS K2220に準拠してちょう度(混和ちょう度)を測定した。
【0077】
[評価試験3−1(軸受寿命)]
各グリース組成物について、高温グリース軸受寿命試験を行った。具体的には、ASTM−D3336に準拠して、軸受(6204ZZ)に試料グリースを2g充填し、温度150℃において、回転数10000rpm、スラスト荷重66Nで軸受を連続運転させ、潤滑不良に伴う異常運転に至るまでの時間を軸受寿命(hr)として記録した。
【0078】
[評価試験3−2(軸受消費電力)]
各グリース組成物について、評価試験2−1と同様の試験を実施した。得られた結果を表6〜7に示す。なお、表6〜7中の軸受消費電力及び電力削減率(%:供試油3−7基準)は、3回の実験の平均値である。
【0079】
【表6】
【0080】
【表7】