特許第6682272号(P6682272)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6682272
(24)【登録日】2020年3月27日
(45)【発行日】2020年4月15日
(54)【発明の名称】レーザー駆動の熱水処理
(51)【国際特許分類】
   B23K 26/36 20140101AFI20200406BHJP
   B23K 26/122 20140101ALI20200406BHJP
   B23K 26/402 20140101ALI20200406BHJP
【FI】
   B23K26/36
   B23K26/122
   B23K26/402
【請求項の数】20
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2015-552826(P2015-552826)
(86)(22)【出願日】2014年1月10日
(65)【公表番号】特表2016-506869(P2016-506869A)
(43)【公表日】2016年3月7日
(86)【国際出願番号】US2014011120
(87)【国際公開番号】WO2014113293
(87)【国際公開日】20140724
【審査請求日】2017年1月6日
【審判番号】不服2018-13452(P2018-13452/J1)
【審判請求日】2018年10月9日
(31)【優先権主張番号】61/752,823
(32)【優先日】2013年1月15日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/752,901
(32)【優先日】2013年1月15日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/754,142
(32)【優先日】2013年1月18日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】510218043
【氏名又は名称】ローレンス リバモア ナショナル セキュリティー, エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100091982
【弁理士】
【氏名又は名称】永井 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100082991
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 泰和
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【弁理士】
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100137523
【弁理士】
【氏名又は名称】出口 智也
(72)【発明者】
【氏名】レイモンド、ピー.マリエラ、ジュニア
(72)【発明者】
【氏名】アレクサンダー、エム.リューベンチク
(72)【発明者】
【氏名】メアリー、エイ.ノートン
【合議体】
【審判長】 刈間 宏信
【審判官】 見目 省二
【審判官】 中川 隆司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−81453(JP,A)
【文献】 特開平11−183693(JP,A)
【文献】 特開2006−78336(JP,A)
【文献】 特開平7−246483(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 26/00 - 26/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
固形誘電物質を処理する方法であって、前記物質は表面を有し、前記方法は、
前記物質の前記表面ととの接触面をもたらすために、前記水で前記物質を覆うステップと、
光のパルスが前記を通過するように、前記が透過性を有する前記光のパルスを生成するレーザーをもたらすステップと、
前記レーザーから前記を通して前記物質の前記表面に前記光のパルスを方向付けるステップと、を備え、
前記物質による前記光パルスの吸収は、前記水と前記物質の前記表面との間の前記接触面に局所温度および局所圧力を生成し、前記固形誘電物質と前記水との間の前記接触面で絶縁破壊およびプラズマを引き起こすことなく一時的熱水層を生成し、前記一時的熱水層が前記物質の前記表面の一部を溶解する方法。
【請求項2】
物質を処理する方法であって、前記物質は表面を有し、光のパルスを前記物質の前記表面に方向付ける前記ステップは、前記物質の前記表面に光のパスを方向付けるための可視または紫外線波長のレーザーを使用することを備える請求項1に記載の方法。
【請求項3】
物質を処理する方法であって、前記物質は表面を有し、光のパルスを前記物質の前記表面に方向付ける前記ステップは、前記物質の前記表面と前記光のパルスとの相互作用が、前記と前記物質の前記表面との前記接触面において一時的熱水層を生成する局所圧力および温度を生じさせるように、前記物質の前記表面に前記光のパルスを方向付けることを備え、前記一時的熱水層は前記内に懸濁される粒子を生成する前記物質を少なくとも部分的に溶解する請求項1に記載の方法。
【請求項4】
物質を処理する方法であって、前記物質は表面を有し、汚染物質は前記物質に含まれ、光のパルスを前記物質の前記表面に方向付ける前記ステップは、前記物質の前記表面と前記光のパルスとの相互作用が、前記と前記物質の前記表面との前記接触面において一時的熱水層を生成する局所圧力および温度を生じさせるように、前記物質の前記表面に前記光のパルスを方向付けることを備え、前記一時的熱水層は前記内に懸濁される粒子を生成する前記物質を少なくとも部分的に溶解し、前記汚染物質を少なくとも部分的に溶解または除去する請求項1に記載の方法。
【請求項5】
物質を処理する方法であって、前記物質は表面を有し、ベリリウム汚染物質は前記物質に含まれ、光のパルスを前記物質の前記表面に方向付ける前記ステップは、前記物質の前記表面と前記光のパルスとの相互作用が、前記と前記物質の前記表面との前記接触面において一時的熱水層を生成する局所圧力および温度を生じさせるように、前記物質の前記表面に前記光のパルスを方向付けることを備え、前記一時的熱水層は前記内に懸濁される粒子を生成する前記物質を少なくとも部分的に溶解し、前記ベリリウム汚染物質を少なくとも部分的に溶解または除去する請求項1に記載の方法。
【請求項6】
物質を処理する方法であって、前記物質は表面を有し、放射能汚染物質は前記物質に含まれ、光のパルスを前記物質の前記表面に方向付ける前記ステップは、前記物質の前記表面と前記光のパルスとの相互作用が、前記と前記物質の前記表面との前記接触面において一時的熱水層を生成する局所圧力および温度を生じさせるように、前記物質の前記表面に前記光のパルスを方向付けることを備え、前記一時的熱水層は前記内に懸濁される粒子を生成する前記物質を少なくとも部分的に溶解し、前記放射能汚染物質を少なくとも部分的に溶解または除去する請求項1に記載の方法。
【請求項7】
物質を処理する方法であって、前記物質は表面を有し、希土酸化物汚染物質は前記物質に含まれ、光のパルスを前記物質の前記表面に方向付ける前記ステップは、前記物質の前記表面と前記光のパルスとの相互作用が、前記と前記物質の前記表面との前記接触面において一時的熱水層を生成する局所圧力および温度を生じさせるように、前記物質の前記表面に前記光のパルスを方向付けることを備え、前記一時的熱水層は前記内に懸濁される粒子を生成する前記物質を少なくとも部分的に溶解し、前記希土酸化物汚染物質を少なくとも部分的に溶解または除去する請求項1に記載の方法。
【請求項8】
物質を処理する方法であって、前記物質は表面を有し、前記物質をで覆う前記ステップは、前記物質を酸性ので覆うことを備える請求項1に記載の方法。
【請求項9】
物質を処理する方法であって、前記物質は表面を有し、前記物質をで覆う前記ステップは、前記物質をアルカリ性ので覆うことを備える請求項1に記載の方法。
【請求項10】
物質を処理する方法であって、前記物質は表面を有し、光のパルスを前記物質の前記表面に方向付ける前記ステップは、前記物質の前記表面に時間で分離された光のパルスを方向付けるためのレーザーを使用することを備える請求項1に記載の方法。
【請求項11】
固形誘電物質を処理する方法であって、前記物質は表面を有し、汚染物質は前記物質に含まれ、前記方法は、

前記物質の前記表面ととの接触面をもたらすために、前記水で前記物質を覆うステップと、
光のパルスが前記を通過するように、前記が透過性を有する前記光のパルスを生成するレーザーをもたらすステップと、
前記レーザーから前記を通して前記物質の前記表面に前記光のパルスを方向付けるステップと、を備え、
前記物質による前記光パルスの吸収は、前記水と前記物質の前記表面との間の前記接触面に局所温度および局所圧力を生成し、前記固形誘電物質と前記水との間の前記接触面で絶縁破壊およびプラズマを引き起こすことなく一時的熱水層を生成し、前記一時的熱水層が前記物質の前記表面の一部を溶解する方法。
【請求項12】
物質を処理する方法であって、前記物質は表面を有し、汚染物質は前記物質に含まれ、ベリリウム汚染物質は前記物質に含まれ、光のパルスを前記物質の前記表面に方向付ける前記ステップは、前記物質の前記表面と前記光のパルスとの相互作用が、前記と前記物質の前記表面との前記接触面において一時的熱水層を生成する局所圧力および温度を生じさせるように、前記物質の前記表面に前記光のパルスを方向付けることを備え、前記一時的熱水層は前記内に懸濁される粒子を生成する前記物質を少なくとも部分的に溶解し、前記ベリリウム汚染物質を少なくとも部分的に溶解または除去する請求項11に記載の方法。
【請求項13】
物質を処理する方法であって、前記物質は表面を有し、汚染物質は前記物質に含まれ、放射能汚染物質は前記物質に含まれ、光のパルスを前記物質の前記表面に方向付ける前記ステップは、前記物質の前記表面と前記光のパルスとの相互作用が、前記と前記物質の前記表面との前記接触面において一時的熱水層を生成する局所圧力および温度を生じさせるように、前記物質の前記表面に前記光のパルスを方向付けることを備え、前記一時的熱水層は前記内に懸濁される粒子を生成する前記物質を少なくとも部分的に溶解し、前記放射能汚染物質を少なくとも部分的に溶解または除去する請求項11に記載の方法。
【請求項14】
物質を処理する方法であって、前記物質は表面を有し、汚染物質は前記物質に含まれ、希土酸化物汚染物質は前記物質に含まれ、光のパルスを前記物質の前記表面に方向付ける前記ステップは、前記物質の前記表面と前記光のパルスとの相互作用が、前記と前記物質の前記表面との前記接触面において一時的熱水層を生成する局所圧力および温度を生じさせるように、前記物質の前記表面に前記光のパルスを方向付けることを備え、前記一時的熱水層は前記内に懸濁される粒子を生成する前記物質を少なくとも部分的に溶解し、前記希土酸化物汚染物質を少なくとも部分的に溶解または除去する請求項11に記載の方法。
【請求項15】
物質を処理する方法であって、前記物質は表面を有し、汚染物質は前記物質に含まれ、鉛汚染物質は前記物質に含まれ、光のパルスを前記物質の前記表面に方向付ける前記ステップは、前記物質の前記表面と前記光のパルスとの相互作用が、前記と前記物質の前記表面との前記接触面において一時的熱水層を生成する局所圧力および温度を生じさせるように、前記物質の前記表面に前記光のパルスを方向付けることを備え、前記一時的熱水層は前記内に懸濁される粒子を生成する前記物質を少なくとも部分的に溶解し、前記鉛汚染物質を少なくとも部分的に溶解または除去する請求項11に記載の方法。
【請求項16】
物質を処理する方法であって、前記物質は表面を有し、汚染物質は前記物質に含まれ、含鉛ペイント汚染物質は前記物質に含まれ、光のパルスを前記物質の前記表面に方向付ける前記ステップは、前記物質の前記表面と前記光のパルスとの相互作用が、前記と前記物質の前記表面との前記接触面において一時的熱水層を生成する局所圧力および温度を生じさせるように、前記物質の前記表面に前記光のパルスを方向付けることを備え、前記一時的熱水層は前記内に懸濁される粒子を生成する前記物質を少なくとも部分的に溶解し、前記含鉛ペイント汚染物質を少なくとも部分的に溶解または除去する請求項11に記載の方法。
【請求項17】
固形誘電体物質を処理するための装置であって、前記物質は表面を有し、前記装置は、
前記物質の前記表面ととの接触面をもたらすために、前記水で前記物質を覆うための手段と、
光のパルスが前記を通過するように、前記が透過性を有する前記光のパルスを生成するレーザーをもたらす手段と、
前記レーザーから前記を通して前記物質の前記表面に前記光のパルスを方向付けるための手段と、を備え、
前記物質による前記光パルスの吸収は、前記水と前記物質の前記表面との間の前記接触面に局所温度および局所圧力を生成し、前記固形誘電物質と前記水との間の前記接触面で絶縁破壊およびプラズマを引き起こすことなく一時的熱水層を生成し、前記一時的熱水層が前記物質の前記表面の一部を溶解する装置。
【請求項18】
物質を処理するための装置であって、前記物質は表面を有し、光のパルスを前記物質の前記表面に方向付けるための前記手段は、前記物質の前記表面に光のパルスを方向付けるための可視または紫外線波長のレーザー手段を備える請求項17に記載の装置。
【請求項19】
物質を処理する方法であって、
前記物質の前記表面ととの接触面をもたらす前記で前記物質を覆う前記ステップは、前記物質の前記表面と水との接触面をもたらす前記水で前記物質を覆うステップを備え、
前記物質の前記表面上に光のパルスを方向付ける前記ステップが、1000nmから200nmの範囲の波長を有するレーザーを用いて前記物質の前記表面に光のパルスを方向付けるステップを備える、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
物質を処理するための装置であって、
前記物質の前記表面ととの接触面をもたらす前記で前記物質を覆う前記手段は、前記物質の前記表面と水との接触面をもたらす前記水で前記物質を覆う手段を備え、
前記物質の前記表面上に光のパルスを方向付ける前記手段は、1000nmから200nmの範囲の光のパルスを前記物質の前記表面に方向付けるレーザー手段を備える、請求項17に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、米国特許法第119条(e)項の下に、あらゆる目的のために参照により全体として本明細書に援用される、「method and apparatus for laser processing of solids」と題する、2013年1月15日に出願した米国仮特許出願第61/752、823号明細書の利益を主張するものである。
【0002】
本出願は、米国特許法第119条(e)項の下に、あらゆる目的のために参照により全体として本明細書に援用される、「efficient laser−enhanced dissolution of minerals and debris via acid chemistry and hydrothermal conditions」と題する、2013年1月15日に出願した米国仮特許出願第61/752、901号明細書の利益を主張するものである。
【0003】
本出願は、米国特許法第119条(e)項の下に、あらゆる目的のために参照により全体として本明細書に援用される、「periodic application of laser−driven sample processing」と題する、2013年1月18日に出願した米国仮特許出願第61/754、142号明細書の利益を主張するものである。
【0004】
連邦政府支援の研究または開発に基づいて行われた特許出願についての権利に関する陳述
米国政府は、ローレンスリバモア国立研究所(Lawrence Livermore National Laboratory)の運営に対する米国エネルギー省(United States Department of Energy)とローレンスリバモアナショナルセキュリティ(Lawrence Livermore National Security、LLC)との間の契約第DE−AC52−07NA27344号に従って本出願における権利を有する。
【0005】
本出願は、処理に関し、さらに詳細には、レーザー駆動の熱水処理に関する。
【背景技術】
【0006】
コンクリート、レンガ、および岩/鉱物のような物質の表面の除去は、コンクリートの研磨もしくは強力アブレイシブウォータージェットまたは電気放電衝撃チッピングおよびフレーキングを介して達成されうる。空中でコンクリートをその沸点/剥離点/亀裂点まで加熱するために5kWのレーザーを使用する、レーザースカブリングが実証されてきた。これらのプロセスはいずれも、その主要なメカニズムとして表面の一時的な溶解を採用するものではなく、いずれも物質除去の穏やかなμmスケールの制御をもたらすものではない。
【0007】
「レーザーピーニング」は、金属製ターゲットと水との接触面においてプラズマおよび逆伝搬衝撃波を生じさせるために、水中に浸漬されている金属製ターゲットにも方向付けられた強力レーザーパルスを使用する。レーザーパルスと金属製ターゲットとの相互作用は、浸漬されているか否かにかかわらず、レーザーパルスと、コンクリート、レンガ、または岩のような誘電性ターゲットとの間の相互作用とは基本的に異なっている。金属のような伝導体は、誘電体よりもはるかに高い電気伝導率を有し、金属製ターゲットに突き当たるレーザー光は、多くとも数μmの表皮厚さの範囲内に完全に吸収される。エネルギー効率のよい、穏やかな、制御されたプロセスに使用することは不適切とされるような、極めて高出力のレーザーパルスの場合を除いて、誘電体は、はるかに長い侵入深度にわたり光を吸収する。金属は、レーザーパルスを非常に強く吸収するので、浸漬された金属と浸漬流体との接触面において高い温度および圧力を生じさせることが比較的容易であることは、驚くにはあたらない。
【0008】
熱水処理は、石英[SiO]およびエメラルド[Be(Al、Cr)Si16]を含む物質の精製結晶を成長させるための技法である。熱水処理に関する情報は、論文「Pulsation processes at hydrothermal crystal growth(beryl as example)」Journal of Crystal Growth 206、203−214(1999)、V.G.Thomas、S.P.Demin、D.A.Foursenko、T.B.Bekker著、および論文「hydrothermal growth of α−quartz using high−purity α−cristobalite as feed material」Materials Research Bulletin 28、1201−1208(1993)、M. HosakaおよびT.Miyata著に提供されている。緑柱石の平均成長温度は約600°Cであり、所与の温度における純水について圧力は1.5kbarであった。実施の期間は、15から25日間であり、成長率は0.1mm/日であった。石英の場合、成長は、5〜22日間行われた。75%を超える高度な充填での成長において、石英の成長率は、Z方向に約0.2〜0.6mm/日であり、X方向に約0.1〜0.2mm/日であった。従来の熱水処理では、持続的な高い温度および圧力に耐えることができる格納容器を必要とし、プロセスには非常に時間がかかる。したがって、従来の熱水プロセスは、建物などの広大な表面を処理することには、実際的な応用が見込めない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
開示される装置、システム、および方法の特徴および利点は、以下の説明から明らかとなろう。出願人は、装置、システム、および方法の広範な提示をもたらすために、図面および固有の実施形態の例を含むこの説明を提供する。本出願の精神および範囲内のさまざまな改変および変更は、この説明から、および装置、システム、ならびに方法の実施によって、当業者には明らかとなろう。装置、システム、および方法の範囲は、開示される特定の形態に限定されることが企図されているわけではなく、本出願は、特許請求の範囲によって定義される装置、システム、および方法の精神および範囲内に含まれるすべての変更、等価物、および代替を対象とする。
【0010】
本出願は、物質を処理するために、物質を流体に浸漬させて、流体および物質にレーザーパルスを方向付けることによって物質を処理するための装置、システム、および方法を対象とする。
【0011】
目的は、固形物質の表面から物体を除去するための改善された手段および方法を提供することである。
【0012】
さらなる目的は、除去される物質をさらに限定する、比較的穏やかな、エネルギー効率のよい、制御された方法で、コンクリート、レンガ、または岩もしくは鉱物の表面を除去するための、パルスレーザーベースの方法を提供することである。
【0013】
さらなる目的は、除去される物質をさらに限定する、比較的穏やかな、エネルギー効率のよい、制御されたプロセスで、少なくとも一時的な方法で、熱水処理を実行することのできる流体に浸漬されうるかまたは流動流体で覆われうるコンクリート、レンガ、または岩もしくは鉱物の表面を除去するための、パルスレーザーベースの方法を提供することである。
【0014】
さらなる目的は、除去される物質をさらに限定する、比較的穏やかな、エネルギー効率のよい、制御されたプロセスで、流体に浸漬されうるかまたは流動流体で覆われうる、鉛系ペイントを含む塗装表面、またはその他の重金属化合物で汚染されている表面に含まれる、コンクリート、レンガ、または岩もしくは鉱物の表面からの汚染物質を除去するための、パルスレーザーベースの方法を提供することである。
【0015】
さらなる目的は、コンクリート、レンガ、または岩もしくは鉱物の表面から汚染物質を除去するため、および汚染除去の進行中に、リアルタイムで、汚染物質の濃度を監視するための、パルスレーザーベースの方法を提供することである。
【0016】
さらなる目的は、汚染除去される表面上に水を沈滞または流体媒体として使用して、ベリリウムおよび/またはその酸化物ならびにその他のベリリウム化合物またはアクチニドおよび/またはそれらの酸化物ならびにその他のアクチニド化合物から表面の汚染除去を実行するための、パルスレーザーベースの方法を提供することである。
【0017】
さらなる目的は、鉱石の希土酸化物の濃度を分析するための方法を提供することである。
【0018】
さらなる目的は、コンクリート、レンガ、または岩もしくは鉱物におけるさまざまな元素対深度の濃度プロファイルを測定するための、パルスレーザーベースの分析方法を提供することである。
【0019】
さらなる目的は、熱水処理の影響を受けやすい物質を再結晶させるための、迅速で、比較的エネルギー効率のよい方法を提供することである。
【0020】
その他の目的および利点は、以下の説明および添付の図面から明らかとなろう。
【課題を解決するための手段】
【0021】
出願人の装置、システム、および方法に関する追加の情報は、R.Mariella、A.Rubenchik、M.Norton、およびG.Donohueによる論文「Laser comminution of submerged samples」Journal of Applied Physics 114(2013)において提供されている。R.Mariella、A.Rubenchik、M.Norton、およびG.Donohueによる論文「Laser comminution of submerged samples」Journal of Applied Physics 114(2013)は、あらゆる目的のためにこの参照により本明細書に援用される。
【0022】
装置、システム、および方法には、変更および代替的形態の余地がある。固有の実施形態は、一例として示される。装置、システム、および方法が、開示される特定の形態に限定されないことを理解されたい。装置、システム、および方法は、特許請求の範囲によって定義される本出願の精神および範囲に含まれるすべての変更、等価物、および代替を対象とする。
【0023】
本明細書に組み入れられ、その一部をなす添付の図面は、上記に示される概要と併せて、装置、システム、および方法の固有の実施形態を表し、固有の実施形態の詳細な説明は、装置、システム、および方法の原理を説明する役割を果たす。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1A】固形物質の表面の初期吸収および加熱を示す図である。
図1B】一時的に加熱されて加圧された水の層の拡大を示す図である。
図1C】後処理の岩および付近の水を示す図である。
図2】プロファイリングのための装置、システム、および方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図面、以下の詳細な説明、および組み入れられた資料を参照すると、固有の実施形態の説明を含む、装置、システム、および方法に関する詳細な情報が提供される。詳細な説明は、装置、システム、および方法の原理を説明する役割を果たす。装置、システム、および方法には、変更および代替的形態の余地がある。本出願は、開示される特定の形態に限定されることはない。本出願は、特許請求の範囲によって定義される装置、システム、および方法の精神および範囲に含まれるすべての変更、等価物、および代替を対象とする。
【0026】
本出願は、物質の除去または変質を扱う。開示されるのは、流体に浸漬される個体を除去および/または変質するために光エネルギーのパルスを使用する方法を実施する装置およびシステムである。わずかに沈滞しているかまたは意図的に流れている/対流している状態がありうる、浸漬流体は、光エネルギーのパルスを伝搬する必要があり、個体は、これらの光エネルギーのパルスをその表面で吸収する必要がある。1つの装置およびシステムは、パルス光エネルギーの光源としてレーザーからの紫外線光のパルスを使用するものであり、浸漬流体として水を使用するものである。新しい装置、システム、および方法により使用可能な操作には少なくとも次の3つの領域がある。
【0027】
領域1− より低い出力領域:一時的溶解を介する表面物質の精製/再結晶
領域2− 適度な出力領域:一時的溶解を介する表面物質の除去
領域3− より高い出力領域:一時的溶解および個体内の密着力/付着力の阻害を介する表面物質の除去
領域1および2は、個体の表面を除去および/または変質するための、制御された、比較的穏やかな、良好に限定された方法を提供する。次いで、ターゲットは、例として、コンクリート、レンガ、またはさまざまな岩または鉱物であってもよい。表面の不揮発性の有毒性および/または放射能汚染がある場合、このレーザー駆動熱水処理[「LDHP」]は、除去された有害物質を、特に処理中に有害浮遊粒子を解放することなく収容しながら、表面を汚染除去するための新しい方法および手段を提供する。
【0028】
水に浸漬されるケイ酸塩物質の場合、二酸化ケイ素[SiO]の精製/再結晶は、LDHPにより通常観察される。
【0029】
ターゲットが、浸漬されるコンクリートである場合、LDHPは、コンクリートの表面自体と共に、表面に付着/結合している物質をセメント除去するように効果的に調整されうる。これは、塗料内または塗料の下の、固体表面にもありうる汚染を含む、コンクリート表面の塗料および汚染を除去することを含む。
【0030】
本出願の1つの態様は、物質の除去であるが、精製結晶の成長は、その成長が熱水プロセスを介して達成されえる場合、種結晶の生成または既存の結晶の表面の精製に適用可能となりうるもう1つの態様である。
【0031】
LDHPが提供する物質の穏やかで制御された除去の1つの適用は、すでに実行されている場合もある汚染除去の検証を含む、分析を目的とする、汚染対深度のプロファイリングである。
【0032】
基本的に、この適用は、化学および物理学における新しい領域、つまり一時的熱水状態、の発見に基づいており、この状態には、適度な出力のレーザーパルスを透過性浸漬流体に通し、それらのパルスを、塗装済みのものを含むコンクリート、レンガ、または岩のような、多結晶誘電体の表面に方向付けることによって到達されてもよい。この新しい領域は、浸漬されるターゲット物質が、可視または最も紫外線光[「UV」光]の場合のような、レーザー光に透過的である場合に、およびターゲットが、たとえば[UVグレードの石英ガラス]の場合は、到達されえない。この理由により、装置、システム、および方法は、報告されるようにパルスを望ましい表面に当てるために、UVグレードの石英ガラスウィンドウおよび水またはその他の透明流体にレーザーパルスを通すことによって、塗装済みサンプルを含むコンクリート、レンガ、岩のようなサンプルと共に使用することができる。パルス幅およびエネルギー密度[「フルエンス」]は、かなり広い範囲内に含まれ、しかもエネルギー効率のよい、穏やかで制御され、限定された、ターゲット物質の除去および/または再結晶を生成するが、ターゲットと水のような隣接の流体の両方を、より高い温度、および流体がターゲット物質の多くまたは全部の大幅に増大した溶解力を呈する温度まで迅速に加熱するために、ターゲット物質の表面に十分なエネルギーが沈積される必要がある。このプロセスは、いくつかの原理に基づいている。
【0033】
− レーザーパルスに対する流体の透過性
− 浸漬される固体ターゲット物質の表面のレーザーパルスの吸収
− レーザーパルス吸収の大きさに対して吸収されるレーザーパルスエネルギーの熱伝導の率よりも小さいレーザーパルスの幅
− 流体の溶解力の増大が圧力の増大に依存する場合、レーザーパルスの幅は、固体の表面におけるより高い流体圧力が消散する時間よりも短くなくてはならない
− 固体表面の局所的加熱、およびこの熱の隣接流体への急速な伝導による、流体の溶解力の増大
レーザー駆動の熱水処理[「LDHP」]
本出願において使用されるように、「熱水(hydrothermal)」という用語は、流体が室温を超える温度および大気圧を超える圧力の条件に追い込まれる状況を意味し、この条件において流体は関心対象の物質の溶解力の大幅な増大を呈する。たとえば、水の場合、これをその超臨界状態に追い込むには、>374°Cの温度および>218atmの圧力が必要になり、超臨界水は石英およびその他の酸化物を、室温および大気圧において水が溶解するよりもはるかに大きく溶解する。
【0034】
本出願において使用されるように、「汚染物質(contaminants)」という用語は、主要物質に見出される少数元素または少数化合物を意味する。
【0035】
出願人の方法およびシステムの実施の例では、以下のものを使用する。
【0036】
#1− 浸漬されるターゲット物質の急速な加熱をもたらすために十分な輝度「単位面積あたりの出力」およびフルエンス[単位面積あたりのエネルギー]を持つ光のパルスをターゲット物質に供給することができるレーザー
#2− 液体水のような流体に懸濁されるかまたは流体で覆われるターゲット物質を収容するための、レーザーパルスに透過的な、石英ガラスのような、少なくとも1つのウィンドウを持つ、チャンバーまたはその他の方法、または商用レーザーピーニングにおいて使用される水のような、ターゲット物質の表面上に被覆または覆いの流体の流れを生成するための方法
#3− レーザー光に透過的であり、高圧および高温において、関心対象の物質の溶解力の大幅な増大を呈する流体
#4− 浸漬流体と適合し、加熱されるのに十分な強さのレーザー光を吸収し、溶解力を増大させるように隣接する流体を同時に、一時的に加熱して加圧するターゲット物質

出願人は、装置、システム、および方法のさまざまな例を構成し、試験した。コンクリート、レンガ、および珪岩ターゲットについて、2つのレーザーおよび光の3つの波長、ならびにフルエンスおよび光度の範囲が、良好に使用された。[珪岩は、本来砂岩であったものから形成された、変成岩である。]
1つのレーザーは、1053nmの基本出力を備え、倍周波数装置により527nmの光を放出することができるか、または3倍周波数装置により出力が15mm×17mmのほぼ長方形である351nmの光を放出することができ、名目上平坦な輝度プロファイル、および8から20nsの間で調整可能なパルス幅を備える、Nd:ガラスのジグザグスラブ増幅器に基づくカスタムメイドのレーザーであった。一部の実験について、UV透過レンズが、ターゲット表面上のスポットサイズを減らすために使用された。
【0037】
第2のレーザーは、12×30mmスポットに248nm波長で25nsの光パルスを生成する、商用エキシマレーザー[Coherent−Lambda Physik LPX300レーザー]であった。この後者のレーザーは、ターゲット表面上のスポットサイズを減らすためにUV透過レンズと共に使用された。
【0038】
本出願において説明されるLDHPの例示の実験では、大気に開放され、脱イオン水で部分的に満たされ、レーザーパルスがシステム内に入るのを許容するUVグレードの石英ガラスのウィンドウを備える、ステンレススチールチャンバーを使用した。出願人は、LDHPが研究されたチャンバーを密閉しようと試みなかったが、中間の温度および圧力において動作することができる密閉チャンバーが使用されえなかった根本的な理由はなく、また密閉チャンバーが、LDHPレーザーパルスによってターゲット表面から放出されたガスをサンプリングすることができた水またはその他の流体上に設置されたチューブまたはその他のガスフローデバイスと共に使用されえなかった根本的な理由もない。これは、質量分析計またはイオン易動度分光測定式探知機のような、監視装置に、放出されたガスを押し流すための、窒素またはアルゴンのようなサンプリングガスのフローの意図的な使用を含むことができる。これは、たとえば、続いて固体内に取り込まれたラドンまたはその他の希ガスに崩壊した固体ターゲット内の放射性物質があった場合、有用となりうる。
【0039】
本出願において説明されるLDHPの例示の実験では、水を浸漬流体として使用し、数cm以下の伝達距離の場合、水は、1000nmから200nmの波長の光に透過的である。
【0040】
珪岩、コンクリート、レンガの効果的な吸収は、物質の熱水処理の条件を達成するのに十分に高かった。527nmおよび351nmのレーザー波長は共にLDHPを実証し、前者は主として、ほぼ0.8J/cmのフルエンスで珪岩の表面上に二酸化珪素の再結晶を生成し、351nmレーザーパルスは主として、7J/cmおよび3.5J/cmのフルエンスで珪岩から物質を除去した。コンクリートの場合、コンクリートへの0.4J/cmの351nmレーザーパルスは、セメントを優先的に除去した。ほぼ2mm×5mmスポットに集光された0.6Jの、248nmエキシマレーザーは主として、商用珪岩床張りから物質を除去し、コンクリート砂利から、優先的にセメントを除去した。
【0041】
レーザー強化された溶解および再結晶
LDHP後の珪岩サンプルの検査は、1つの驚くべき現象を明らかにした−物質除去ゾーンの周囲は比較的大きい、無色の結晶であったが、後に比較的純粋なSiOと識別した。珪岩上に出現した無色の結晶は、たとえ通常の研磨しきい値に満たないレーザーフルエンスであっても物質の何らかの変化が行われていたことの現れであったので、次の実験において、コンクリートの破片に向けて2.5cm面積の未集光のレーザーを使用して、目に見えるくぼみを生じることなく進んだ除去物質を測定した。結果として得られたサブpmスケールの粒子の分布は、事実上、珪岩[岩]への集光レーザーから観察した粒子の分布と同一であった。サンプルを計量すると、除去率4.5*10g/Jまたは除去エネルギー2.2kJ/gで重量減少を示したが、これは二酸化ケイ素の蒸発エネルギー10kJ/gよりもはるかに小さく、したがって我々のメカニズムは直接蒸発よりもはるかに効率が高い。一時的な表面付近の、高温高圧水が大幅に高められた溶解力を有し、たとえSiOが大気圧条件下で水に溶けないとしても、珪岩のSiO成分を含む、加熱された固体表面を効果的に溶解したという事実によって、我々はこの結果を説明する。
【0042】
これ以降、図面、特に図1A図1B、および図1Cを参照するが、紫外線レーザーパルス、吸収固体としてケイ酸塩岩、および浸漬流体として水を使用する、プロセスの概略的な表示が提供される。図1Aは、固形物質の表面の初期吸収および加熱を示す図であり、同時に水を加熱して、表面層の多くまたは全部を一時的に溶解する。図1Bは、一時的に加熱されて加圧された水の層の拡大を示す図であり、層が冷えて拡大すると、形成する過飽和溶液からナノ結晶を生成する。図1Cは、プロセス後の岩および近隣の水を示す図であり、形成されたナノ結晶および固体表面に再結晶したSiOの可能な懸濁を示している。レーザーパルスが関心対象の表面を照射し、その表面がレーザーパルスエネルギーを吸収することができる限りにおいて、固体ターゲット物質の物理的な配向は関連しない。
【0043】
試験装置100は、図1A図1B、および図1Cに示される。試験装置100は、容器102、レーザー104、レーザービーム106、水槽108、加熱層110、および固体112を含む。図1Aは、固形物質112の表面の初期吸収および加熱を示すが、同時に水108を加熱して、表面層110の多くまたは全部を一時的に溶解する。
【0044】
図1Bは、一時的に加熱されて加圧された水の層114の拡大を示すが、層が冷えて拡大すると、形成する過飽和溶液からナノ結晶116を生成する。
【0045】
図1Cは、プロセス後の岩および近隣の水を示すが、形成されたナノ結晶118および固体表面に再結晶したSiOの可能な懸濁を示している。レーザーパルスが関心対象の表面を照射し、その表面がレーザーパルスエネルギーを吸収することができる限りにおいて、固体ターゲット物質の物理的な配向は関連しない。
【0046】
出願人は、次のようなイベントのシーケンスが生じると判断した:個体ターゲットの表面上のレーザーパルスの吸収が、表面を加熱し、並行して、コンクリートまたはその他の表面と接触して、おそらくはわずかnsまたはμsほどの時間スケールで、慣性により保持された高圧および高温の水の一時的な薄い層を生成する。この時間中、酸素およびその他の成分の熱水強化された溶解が進行する。薄い層が拡大して冷えると、一時的に溶解した素地は沈殿して、かなりの程度までサブμmスケールの粒子を形成し、固体表面と直接接触すると、付着性結晶を形成する。
【0047】
第2のレーザーパルスが、つぶれる気泡が表面に当たるのと同時、または少し前に、表面に当たる場合、局所の圧力および温度、ひいては溶解が高められると出願人は判断した。コンクリートまたはその他の表面のレーザー粉砕の任意の適用がいずれにせよパルス列により行われる可能性が高いので、気泡の形成およびつぶれの自然な緩和周波数と合うようにパルスの時間分離を調整することはかなり適合する。出願人は、15nsの0.4J/cm、351nmの光を使用した研究について、以下に示されるAlloncleらによる公開されたデータに基づいて、緩和時間が140μsであったと推定する。すなわち、表面に形成される気泡の自然関係時間に基づいて、表面の粉砕の特に効率的な繰り返し率がありうる。
【0048】
出願人は、浸漬水に現れた細い粒径の粒子の分布を観察した。異なるサンプルからの粒径分布は、相互に類似しており、固体ターゲットの粒状物および粒径とは異なっていた。
【0049】
原理上は、出願人の装置、システム、および方法は、パルスあたりより低い総エネルギーおよびより小さいレーザースポットまたはガウスもしくはその他のピーク輝度プロファイルにより実施されうるが、好ましい実施形態は、より高いパルスエネルギーの、SLABレーザーによって生成されるようなフラットトップの輝度プロファイル、または商用エキシマレーザーによって一般に生成されるような準フラットトップの輝度プロファイルを使用するものとし、ピークプロファイルによるレーザーが使用される必要がある場合、好ましい実施形態は、ビームホモジェナイザーを、おそらくは結像光学系と組み合わせて、スポットサイズを望ましい面積に調整し、処理を実行するものとする。これらの考慮事項の理由は、LDHPには輝度とフルエンスの最小しきい値があって、フラットトップの輝度プロファイルのより大きいビームが、LDHPのターゲット物質上で合計ビームスポットのより多くの部分を使用して、ピーク輝度プロファイルのレーザースポットの場合よりもさらに均一にプロセスを実行するようになっているためである。最小しきい値は物質によって異なり、出願人が観察した最小しきい値は、コンクリート内のセメントの場合の8から25nsのUVレーザーパルスの約0.4J/cmであり、最大値は、淡色の砂または石英の場合の同様の幅のUVレーザーパルスの約1.5から2J/cmである。
【0050】
ピコ秒またはフェムト秒のレーザーパルスを放射するレーザーがあるとしても、それらは好ましい実施形態には含まれないが、その1つの主要な理由は、たとえどのようなパルス幅であっても、光の所与の波長に対して、個体ターゲット物質は、レーザーパルスが直接にターゲット物質を加熱するために十分な光エネルギーを吸収する必要があるからである。したがって、より短いレーザーパルスは、ターゲット物質および隣接する流体を加熱するために同量のエネルギーを供給するよう、より高い輝度を有する必要がある[フルエンス=輝度*パルス幅]。より高い輝度は、個体ターゲットとその浸漬流体との間の接触面に絶縁破壊およびプラズマを生じさせる高い可能性を伴っている。絶縁破壊およびプラズマの発生は、LDHPが浸漬流体とレーザーパルスにより加熱される固体ターゲットとの間の密接な接触を必要とするため、LDHPにとって望ましくない。
【0051】
通常はポルトランドセメント[加熱CaCO]、砂、およびおそらくはより大きい砂利を含むコンクリートは、このプロセスにより効果的にセメント除去される不純物を含む物質の例である。プロセスが一時的溶解のステップを組み入れていることの証拠は、観察された粒径が出発物質[たとえば、セメントの場合、サイズ分布自体が極めて広範であり、通常、サブマイクロメーター程度から100μmまでの20または30にわたる]の粒状物または粒径に依存しないが、一連の固体ターゲットについて相互に類似していることである。粒径の分布のサブμmの特性はまた、核形成および粒子の成長を通じて、懸濁またはコロイドを形成する、過飽和層を経た溶解層からの急速な変化と一致する。
【0052】
適度な輝度およびフルエンスは、エネルギー効率の高い限定されたプロセスをもたらすために使用されてもよく、また使用される必要があるが、それは、絶縁破壊がなく、プロセスがプラズマの形成を介して進行しないからである。実際、前述のように、固体ターゲットと浸漬流体との密接な接触が直接溶解に必要とされ、プラズマの形成は密接な接触を阻害するので、絶縁破壊およびプラズマの形成は望ましくない。また、ターゲット物質は、昇華または沸点まで加熱される必要はなく、このことは、このプロセスの十分に改善されたエネルギー効率とその比較的穏やかで限定された特性を明らかにしている。
【0053】
照射される表面に隣接する層を囲む流体は、表面に隣接する流体の層の圧力および温度の増加を限定する役割を果たすので、圧力容器は必要ない。[CaCOとCaOの混合物である]コンクリート内のセメントの迅速な除去のためのメカニズムは、現時点では知られていないが、高圧の高温(high−T)の水が、CaCOの形状である方解石を溶解するという証拠がある。
【0054】
これ以降図2を参照して、プロファイリングのための装置、システム、および方法が説明される。装置、システム、および方法は、概して参照数表示200によって指定される。装置、システム、および方法は、プロファイリングされる表面202に方向付けられた水204を使用する。水204は、水被覆208を形成する。レーザー光源210は、レーザービーム212を生成する。レーザービーム212は、水被覆208、およびプロファイリングされる表面202に方向付けられる。水204は、フロー方向214を経て廃棄物コレクタ216に移動する。これは、流体収集およびアーカイブシステム220のためのフローをもたらす。汚染のリアルタイム分析監視またはその他の組成的分析のためのICP−MSへのオプションのフロー218が示される。
【0055】
説明されているLDHPは、ここでは、パルス化プロセスである。そのようなものとして、各パルスエネルギーおよびフルエンスは、物質を、穏やかに、被包された方法で除去するように調整されてもよい。物理的配置が流れる被覆の1つである場合、水のような通過する流体は、そのパルス中に除去されたすべての非ガス物質を収集して、それらをレーザーが表面に当たるスポットから運び出す。たとえば流体をチューブに吸い込み、そのフローを複数容器の受液器に通すことによってなど、液体フローを各パルスから収集することによって、各パルスによって除去された物質は、後の分析のために流体の各自のアリコートでアーカイブされてもよい。関心対象の物質についての全体的プロセスをあらかじめ知っていること、または関心対象の場所のLDHP中に行われた測定のいずれかにより、オペレータは、スポットエリアおよび除去される物質の深度を知った上で、関心対象の物質の濃度を、各アリコートごとに、表面濃度対深度に定量的に変換することができ、したがって関心対象の物質の濃度をプロファイリングすることができる。このようにして、汚染物質の濃度対深度のプロファイルを測定することができる。
【0056】
例:エネルギーコストO*=4kJ/g[10.6kJ/cmと同等]による、珪岩または類似した床張りまたは建築材料[密度=2.65g/cm]のベリリウムとその化合物対深度のプロファイル、珪岩表面上の流動被覆として水、および248nm波長のUVレーザーパルスを使用。
【0057】
0.1cmのスポットサイズおよび0.2JのパルスエネルギーによるパルスUVレーザーを使用すると、各レーザーパルスは、珪岩の0.00019cm厚さの層を除去することになり、これはレーザーパルスあたり1.9μmの深度が除去されたと表明されてもよい。したがって、原理上、汚染物質としてのベリリウムの濃度は、およそ2μmの精度で測定されうる。流水の速さおよびベリリウムのさまざまな化学形態の分析技法の感度のような、実際的な考慮事項は、このプロファイリング測定の全体的な感度を制限することになる。
【0058】
ベリリウムに汚染された表面の汚染除去に関して認識している人々との出願人の議論において、そのような表面に関連する主な健康リスクは、ベリリウムおよび/またはその化合物の[再]エーロゾル化であり、これは吸入および場合によっては急性の化学肺臓炎またはベリリウム肺症をまねく可能性がある。
【0059】
浸漬された岩、コンクリート、またはレンガを一時的に溶解して、表面と共に除去される何らかの汚染物質を本質的に含む、一時的熱水プロセスの上記で説明される装置、システム、および方法において、汚染除去を実行する際に建物周囲を移動する大型機器の存在は、水の被覆の下に浸漬されていないベリリウム汚染物質をかき乱してエーロゾル化する可能性がある。装置、システム、および方法は、レーザー処置に先だって、ベリリウム汚染物質の偶発的なエーロゾル化を防ぎ、しかもレーザー処理を大きく妨げることのない方法で、表面を下処理することを含む。実際、これは、表面処置−表面の塗装の進捗の目に見える指示としての役割を果たすことができる。通常の塗料は、二酸化チタンから成り、ラテックスまたはその他の有機結合材を伴う。これらの物質は、パルスUVレーザー駆動の熱水プロセスによって、引き続き水の被覆の下に浸漬されているため、依然としてベリリウム汚染物質を限定して含んでいる、基礎をなすコンクリート、石、またはレンガを露出させることによって、容易に除去される。最終的な効果は、全体的な汚染除去プロセスを、健康リスクを低減しながら、環境的に安全なものにすることである。
【0060】
直前の段で説明されている、プロファイリング技法を実行する間、主フローとICP−MSとの間に正確に測定された[60マイクロリットル/sのような]流量のAgilent7500のような小型チューブを、入力噴霧器[および必要に応じて溶媒剥離剤]に取り付けることができ、分析計器が、ベリリウムおよびその化合物ならびに類似する汚染物質による汚染のレベルに関して即座のフィードバックを提供し、同時に、必要に応じて、除去のポイントの物理的位置を追跡可能な、アリコートで、除去された物質の大多数をアーカイブする機能を提供できるようにすることができる。
【0061】
ICP−MSシステムへの流量と主フローへの流量との比率を測定することによって、ICP−MSで測定されたベリリウムの濃度を、プロファイリングされる表面上のベリリウムの濃度に変換することができる。これは、LDHPプロファイリング分析手順が、表面上にベリリウムの存在がないことの確認として使用されるとすれば、かなり価値のあるものとなりうる。
【0062】
プロセスを加速するため、出願人は、浸漬液体として、酸または塩基もしくは特定のターゲット物質に最適な塩を使用して、溶解速度を高めることを提案する、ただし、これらの流体への追加化学物質の存在がターゲット物質の表面へのレーザーパルスの伝達を妨げない限りにおいて使用するものとする。たとえば、すべての硝酸塩および酢酸塩は溶解性であるため、希硝酸または希酢酸をすべての金属を溶液内に保持することができる。このプロセスを最適化するために、実証的研究が必要とされる。
【0063】
上記の説明は、多くの詳細および細部を含むが、これらは本出願の範囲を限定するものと解釈されるべきではなく、装置、システム、および方法の現在好ましい実施形態の一部の例示を単に提供するものとして解釈されるべきである。その他の実施態様/機能強化および変形は、本特許文献において説明され例示される内容に基づいて行われてもよい。本明細書において説明される実施形態の特徴は、方法、装置、モジュール、システム、およびコンピュータプログラム製品のすべての可能な組み合わせにおいて一体化されてもよい。別個の実施形態のコンテキストで本特許文献において説明される特定の特徴はまた、単一の実施形態において組み合わせて実施されてもよい。逆に、単一の実施形態のコンテキストで説明されるさまざまな特徴はまた、別個に、または任意の適切な部分的組み合わせで、複数の実施形態において実施されてもよい。さらに、特徴は、上記で特定の組み合わせにおいて動作するものとして説明され、そのようなものとして当初請求項の範囲に記載されうるが、請求項に係る組み合わせからの1つまたは複数の特徴は、場合によっては、組み合わせから削除されてもよく、請求項に係る組み合わせは、部分的組み合わせ、または部分的組み合わせの変形を対象にしてもよい。同様に、操作は、図面において特定の順序で示されているが、これはそのような操作が示されている特定の順序または順次に実行されること、または望ましい結果を達成するためにすべての例示されている操作が実行されることを要求するものと解釈されるべきではない。さらに、上記で説明される実施形態におけるさまざまなシステムコンポーネントの分離は、すべての実施形態においてそのような分離を要求するものと解釈されるべきではない。
【0064】
したがって、本出願の範囲が、当業者には明らかとなりうるその他の実施形態を完全に包含することが理解されよう。特許請求の範囲において、単数形での要素の参照は、特に明示的に記載のない限り、「1つまたは複数(one or more)」を意味し、「唯一の(one and only one)」を意味することは企図されていない。当業者に知られている上記で説明される好ましい実施形態の要素に対するすべての構造的および機能的等価物は、参照により本明細書に明確に援用され、本特許請求の範囲によって包含されることが企図される。さらに、デバイスが、本発明の装置、システム、および方法による解決が求められているありとあらゆる問題に対処する必要はなく、デバイスは本特許請求の範囲によって包含される。その上、本開示における要素またはコンポーネントはいずれも、その要素またはコンポーネントが特許請求の範囲に明示的に記載されているかどうかにかかわらず、公衆に専用であることを企図されていない。本明細書におけるクレームエレメントはいずれも、「手段(means for)」という句を使用する明示的な記載がない限り、米国特許法第112条6節の下に解釈されるものとする。
【0065】
装置、システム、および方法は、さまざまな変更および代替の形態の余地があってもよいが、固有の実施形態は、図面において例として示されており、本明細書において詳細に説明されている。しかし、本出願が、開示される特定の形態に限定されることは企図されていないことを理解されたい。むしろ、本出願は、以下の添付の特許請求の範囲によって定義される、本出願の精神および範囲に含まれるすべての変更、等価物、および代替を対象とするものである。
図1A
図1B
図1C
図2