(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
半導体基板の互いに対向する一方の主面と他方の主面との間に、前記一方の主面に形成された第1導電型の第1半導体領域と、第2導電型の第2半導体領域と、第1導電型の第3半導体領域と、第2導電型の第4半導体領域とが順に接合された半導体装置であって、 前記半導体基板の周縁部に形成され、前記第2半導体領域に接合する第1導電型のアイソレーション領域と、
前記半導体基板の前記他方の主面に前記第3半導体領域を取り囲むように形成され、前記第2半導体領域よりも高濃度の不純物を含有する第2導電型のチャネルストッパー領域と、を備え、
前記アイソレーション領域は、前記一方の主面から前記半導体基板の内部に延在し、前記第1半導体領域に接続する第1拡散領域と、前記他方の主面から前記半導体基板の内部に延在し、前記第1拡散領域に接続する第2拡散領域とを有し、
前記第2拡散領域と前記第2半導体領域との間の接合境界付近の領域(A)、および前記第1拡散領域と前記第2半導体領域との間の接合境界付近の領域(B)間で、逆バイアス印加状態における電界強度を均一化するために、前記チャネルストッパー領域と前記第1拡散領域との間の最短距離は、前記チャネルストッパー領域と前記第2拡散領域との間の最短距離よりも短いことを特徴とする半導体装置。
前記第1拡散領域に含有される第1導電型の不純物の拡散係数は、前記第2拡散領域に含有される第1導電型の不純物の拡散係数よりも大きいことを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
前記半導体基板の主面に垂直であり且つ前記第3半導体領域および前記アイソレーション領域を通る断面において、前記第1拡散領域と前記第2半導体領域との接合境界の曲率は、前記第2拡散領域と前記第2半導体領域との接合境界の曲率よりも大きいことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の半導体装置。
半導体基板の互いに対向する一方の主面と他方の主面との間に、前記一方の主面に形成された第1導電型の第1半導体領域と、第2導電型の第2半導体領域と、第1導電型の第3半導体領域と、第2導電型の第4半導体領域とが順に接合された半導体装置の製造方法であって、
第1拡散領域および第2拡散領域を有する第1導電型のアイソレーション領域を、前記半導体基板の周縁部に形成する工程と、
前記第2半導体領域よりも高濃度の不純物を含有する第2導電型のチャネルストッパー領域を、前記半導体基板の前記他方の主面に前記第3半導体領域を取り囲むように形成する工程と、を備え、
前記アイソレーション領域を形成する工程において、前記半導体基板の他方の主面から第1導電型の不純物を導入し拡散させることにより前記第2拡散領域を形成し、前記半導体基板の一方の主面から第1導電型の不純物を導入し拡散させることにより、前記第2拡散領域に接続し前記第2拡散領域より大きい前記第1拡散領域を形成し、
前記チャネルストッパー領域を形成する工程において、前記第2拡散領域と前記第2半導体領域との間の接合境界付近の領域(A)、および前記第1拡散領域と前記第2半導体領域との間の接合境界付近の領域(B)間で、逆バイアス印加状態における電界強度を均一化するために、前記チャネルストッパー領域と前記第1拡散領域との間の最短距離が前記チャネルストッパー領域と前記第2拡散領域との間の最短距離よりも短くなる位置に前記チャネルストッパー領域を形成することを特徴とする半導体装置の製造方法。
第1拡散係数を有する不純物を用いて前記第2拡散領域を形成し、前記第1拡散係数より大きい第2拡散係数を有する不純物を用いて前記第1拡散領域を形成することを特徴とする請求項5に記載の半導体装置の製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、アイソレート構造を有するサイリスタでは、バイアス印加状態において電界強度が不均一となることに起因して十分な逆方向耐圧を確保することが困難であるという課題があった。これについて、
図7を参照して詳しく説明する。なお、
図7は、サイリスタの半導体基板110の右半分のみを図示している。
【0005】
図7に示すように、サイリスタは、半導体基板110の下面に形成されたP型の半導体領域111と、N型の半導体領域112と、P型の半導体領域113と、N型の半導体領域114とが順に接合された構造を有する。なお、
図7においてアノード電極、カソード電極およびゲート電極は図示していないが、実際には、半導体領域111上にアノード電極が設けられ、半導体領域114上にカソード電極が設けられ、半導体領域113上にゲート電極が設けられる。
【0006】
上記サイリスタは、さらに、P型のガードリング115と、N型のチャネルストッパー領域116と、P型のアイソレーション領域117とを有する。ガードリング115は、半導体基板110の上面に半導体領域113を取り囲むように形成されている。チャネルストッパー領域116は、半導体基板110の上面にガードリング115を取り囲むように形成されており、半導体領域112よりも高濃度(N+)の不純物を含有する。
【0007】
アイソレーション領域117は、半導体基板110の周縁部に形成され、半導体領域112に接合する。このアイソレーション領域117は、半導体基板110の周縁部に導入された不純物を熱拡散させて形成された拡散領域からなる。すなわち、アイソレーション領域117は、半導体基板110の表側の拡散領域119と、半導体基板110の裏側の拡散領域118とが半導体基板110の内部で接続したものである。
【0008】
上記のサイリスタでは、拡散領域119と半導体領域112との間の接合境界付近の領域A、拡散領域118と半導体領域112との間の接合境界付近の領域B、半導体領域111と半導体領域112との間の接合境界付近の領域C間で、逆バイアス印加状態における電界強度の不均一性が大きい。具体的には、領域Aにおける電界強度が最も大きく、次いで領域Cにおける電界強度が大きく、領域Bにおける電界強度は最も小さい(
図3の「設計寸法85μm」の場合参照)。領域Bの電界強度が領域A,Cの電界強度に比べて小さいのは、逆バイアス印加状態における領域Bの空乏層幅が領域A,Cの空乏層幅に比べて広いためである。
【0009】
上記のように、従来のアイソレート構造を有するサイリスタでは、逆バイアス印加時に領域Aにおいて電界強度が最も高くなる。その結果、領域Aにおいて降伏(ブレークダウン)が最も起こりやすくなり、十分な逆方向耐圧を確保することが困難であった。
【0010】
本発明は、上記の技術的認識に基づいてなされたものであり、その目的は、アイソレート構造を有するサイリスタの逆方向耐圧を向上させることである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る半導体装置は、
半導体基板の互いに対向する一方の主面と他方の主面との間に、前記一方の主面に形成された第1導電型の第1半導体領域と、第2導電型の第2半導体領域と、第1導電型の第3半導体領域と、第2導電型の第4半導体領域とが順に接合された半導体装置であって、
前記半導体基板の周縁部に形成され、前記第2半導体領域に接合する第1導電型のアイソレーション領域と、
前記半導体基板の前記他方の主面に前記第3半導体領域を取り囲むように形成され、前記第2半導体領域よりも高濃度の不純物を含有する第2導電型のチャネルストッパー領域と、を備え、
前記アイソレーション領域は、前記一方の主面から前記半導体基板の内部に延在し、前記第1半導体領域に接続する第1拡散領域と、前記他方の主面から前記半導体基板の内部に延在し、前記第1拡散領域に接続する第2拡散領域とを有し、
前記チャネルストッパー領域と前記第1拡散領域との間の最短距離は、前記チャネルストッパー領域と前記第2拡散領域との間の最短距離よりも短いことを特徴とする。
【0012】
また、前記半導体装置において、
前記第1拡散領域に含有される第1導電型の不純物の拡散係数は、前記第2拡散領域に含有される第1導電型の不純物の拡散係数よりも大きくてもよい。
【0013】
また、前記半導体装置において、
前記第1拡散領域の前記一方の主面における幅は、前記第2拡散領域の前記他方の主面における幅よりも大きくてもよい。
【0014】
また、前記半導体装置において、
前記半導体基板の主面に垂直であり且つ前記第3半導体領域および前記アイソレーション領域を通る断面において、前記第1拡散領域と前記第2半導体領域との接合境界の曲率は、前記第2拡散領域と前記第2半導体領域との接合境界の曲率よりも大きくてもよい。
【0015】
本発明に係る半導体装置の製造方法は、
半導体基板の互いに対向する一方の主面と他方の主面との間に、前記一方の主面に形成された第1導電型の第1半導体領域と、第2導電型の第2半導体領域と、第1導電型の第3半導体領域と、第2導電型の第4半導体領域とが順に接合された半導体装置の製造方法であって、
第1拡散領域および第2拡散領域を有する第1導電型のアイソレーション領域を、前記半導体基板の周縁部に形成する工程と、
前記第2半導体領域よりも高濃度の不純物を含有する第2導電型のチャネルストッパー領域を、前記半導体基板の前記他方の主面に前記第3半導体領域を取り囲むように形成する工程と、を備え、
前記アイソレーション領域を形成する工程において、前記半導体基板の他方の主面から第1導電型の不純物を導入し拡散させることにより前記第2拡散領域を形成し、前記半導体基板の一方の主面から第1導電型の不純物を導入し拡散させることにより、前記第2拡散領域に接続し前記第2拡散領域より大きい前記第1拡散領域を形成し、
前記チャネルストッパー領域を形成する工程において、前記チャネルストッパー領域と前記第1拡散領域との間の最短距離が前記チャネルストッパー領域と前記第2拡散領域との間の最短距離よりも短くなる位置に前記チャネルストッパー領域を形成することを特徴とする。
【0016】
また、前記半導体装置の製造方法において、
前記アイソレーション領域を形成する工程において、第1拡散係数を有する不純物を用いて前記第2拡散領域を形成し、前記第1拡散係数より大きい第2拡散係数を有する不純物を用いて前記第1拡散領域を形成してもよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明では、アイソレーション領域は、半導体基板の一方の主面から半導体基板の内部に延在し、第1半導体領域に接続する第1拡散領域と、半導体基板の他方の主面から半導体基板の内部に延在し、第1拡散領域に接続する第2拡散領域とを有し、チャネルストッパー領域と第1拡散領域との間の最短距離がチャネルストッパー領域と第2拡散領域との間の最短距離よりも短い。これにより、逆バイアス印加時に第1拡散領域と第2半導体領域との間の接合境界付近の領域における空乏層幅が従来よりも短くなるため、当該領域の電界強度が大きくなり、これに伴って第2拡散領域と第2半導体領域との間の接合境界付近の電界強度が低下する。その結果、各領域間で電界強度が均一化される。
【0018】
よって、本発明によれば、アイソレート構造を有するサイリスタの逆方向耐圧を向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明に係る実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0021】
<半導体装置1>
図1および
図2を参照して、本発明の実施形態に係る半導体装置1の構成について説明する。なお、
図1において、領域Aは拡散領域19と半導体領域12との間の接合境界付近の領域であり、領域Bは拡散領域18と半導体領域12との間の接合境界付近の領域であり、領域Cは半導体領域11と半導体領域12との間の接合境界付近の領域である。
【0022】
半導体装置1は、アイソレート構造を有するサイリスタである。
図2に示すように、半導体基板10の互いに対向する主面10a(一方の主面)と主面10b(他方の主面)との間に、主面10aに形成された第1導電型の半導体領域11(第1半導体領域)と、第2導電型の半導体領域12(第2半導体領域)と、第1導電型の半導体領域13(第3半導体領域)と、第2導電型の半導体領域14(第4半導体領域)とが順に接合されている。
【0023】
半導体基板10は、第2導電型の不純物を含むシリコン基板である。なお、半導体基板10は、その他の半導体、例えば化合物半導体(GaAs,GaN,SiC等)からなる基板であってもよい。
【0024】
本実施形態では、第1導電型はP型であり、第2導電型はN型である。ただし、本発明はこれに限られず、第1導電型がN型であり、第2導電型がP型であってもよい。
【0025】
半導体装置1は、上記の半導体領域11〜14に加えて、
図1に示すように、ガードリング15と、チャネルストッパー領域16と、アイソレーション領域17と、アノード電極21と、カソード電極22と、ゲート電極23とを有している。アノード電極21は半導体領域11上に形成され、カソード電極22は半導体領域14上に形成され、ゲート電極23は半導体領域13上に形成されている。なお、半導体基板10の上面(主面10b)は絶縁膜25により被覆されている。
【0026】
ガードリング15は、順バイアス印加時に半導体領域13の端部付近で電界集中が発生することを抑制し、サイリスタの高耐圧化を図るために設けられている。このガードリング15は、半導体基板10の主面10bに半導体領域13を取り囲むように環状に形成されている。なお、ガードリングは、サイリスタに求められる性能に応じて省略してもよいし、あるいは多重に(二重、三重等)設けてもよい。
【0027】
チャネルストッパー領域16は、逆バイアス印加時に領域A,Bから伸びる空乏層が半導体領域13に達することを防止し、漏れ電流(チャネル電流)を抑制する。このチャネルストッパー領域16は、半導体領域12よりも高濃度(N+)の不純物を含有する第2導電型の半導体領域であり、半導体基板10の主面10bに半導体領域13を取り囲むように形成されている。なお、本実施形態では、
図1に示すように、チャネルストッパー領域16上を等電位にし、チャネル電流の発生を抑制するための電極24が設けられている。
【0028】
アイソレーション領域17は、
図1および
図2に示すように、半導体基板10の周縁部に形成されており、半導体領域12に接合する第1導電型の半導体領域である。ここで、「周縁部」とは、半導体基板10の側面10cを含む、半導体基板10の周縁の部分のことである。
【0029】
アイソレーション領域17は、拡散領域18(第1拡散領域)と、拡散領域19(第2拡散領域)とを有する。拡散領域19は、拡散領域18に接続しており、拡散領域18よりも小さい。
【0030】
拡散領域18は、半導体基板10の主面10aから導入された不純物が拡散して形成された領域である。同様に、拡散領域19は、半導体基板10の主面10bから導入された不純物が拡散して形成された領域である。
図2に示すように、拡散領域18は拡散領域19よりも大きく形成されている。
【0031】
拡散領域18は、主面10aから半導体基板10の内部に延在している。拡散領域19は、主面10bから半導体基板10の内部に延在している。拡散領域19は拡散領域18に接続し、拡散領域18は半導体領域11に接続している。拡散領域18は主面10aから半導体基板10の内部に進むにつれて側面10cからの幅が狭くなる。同様に、拡散領域19は主面10bから半導体基板10の内部に進むにつれて側面10cからの幅が狭くなる。
【0032】
なお、拡散領域18に含有される第1導電型の不純物の拡散係数は、拡散領域19に含有される第1導電型の不純物の拡散係数よりも大きくてもよい。例えば、拡散領域18に含有される不純物はアルミニウムであり、拡散領域19に含有される不純物はボロンである。また、
図2に示すように、拡散領域18の主面10aにおける幅W1は、拡散領域19の主面10bにおける幅W2よりも大きくてもよい。
【0033】
本実施形態においては、
図2に示すように、チャネルストッパー領域16と拡散領域18との間の最短距離D1は、チャネルストッパー領域16と拡散領域19との間の最短距離D2よりも短い。これにより、サイリスタに逆バイアスを印加した際に、拡散領域18と半導体領域12との間の接合境界付近の領域Bにおける空乏層幅が従来よりも短くなるため、領域Bの電界強度が大きくなる。また、これに伴って領域Aの電界強度が低下する。
図3を参照してさらに詳しく説明する。
【0034】
図3は、逆バイアス印加時における領域A、領域Bおよび領域Cの電界強度のシミュレーション結果を示している。なお、
図3中の「設計寸法」は、拡散領域18を形成する際の不純物導入領域の大きさを示している。「設計寸法85μm」の場合は、半導体基板10の表裏の不純物導入領域の大きさが等しく、拡散領域18と拡散領域19はほぼ同程度の大きさとなる。「設計寸法140μm」、「設計寸法250μm」、「設計寸法350μm」の場合については、拡散領域19を形成するための不純物導入領域の幅(後述の
図4(1)の露出幅X2に相当)は85μmのままとし、拡散領域18を形成するための不純物導入領域の幅(後述の
図4(1)の露出幅X1に相当)を各設計寸法の値とした。半導体基板10(シリコン基板)の厚さは350μmとした。
【0035】
シミュレーションの結果、チャネルストッパー領域16と拡散領域19との間の最短距離D2は217μmであった。これに対して、チャネルストッパー領域16と拡散領域18との間の最短距離D1は、設計寸法140μm、250μm、350μmに対してそれぞれ304μm、231μm、184μmであった。すなわち、本シミュレーションでは、設計寸法が350μmの場合に最短距離D1が最短距離D2より短くなった。そして、
図3に示すように、設計寸法が350μmの場合に、領域Bにおける電界強度の上昇と、それに伴う領域Aにおける電界強度の減少とによって、領域A、領域B、領域Cにおける電界強度はほぼ同じ(フラット)になった。すなわち、各領域A,B,C間で電界強度が均一化された。
【0036】
上記のように、本実施形態では、チャネルストッパー領域16と拡散領域18との間の最短距離D1をチャネルストッパー領域16と拡散領域19との間の最短距離D2よりも短くすることで、領域Bの空乏層幅を狭めて電界強度を大きくし、それにより領域A、領域Bおよび領域Cにおける電界強度の差を小さくすることができる。よって、本実施形態によれば、従来のサイリスタでは最も電界強度が高い領域Aにおける降伏(ブレークダウン)を抑制することができ、半導体装置1(サイリスタ)の逆方向耐圧を向上させることができる。
【0037】
さらに、逆方向耐圧を向上させることで、繰り返しピーク逆電圧V
RRMを確保することが容易となり、サイリスタの信頼性を向上させることができる。また、従来と同程度の逆方向耐圧で良ければ、サイリスタを小型化することができる。
【0038】
なお、領域Bにおける電界強度を上昇させるために、拡散領域18が拡散領域19よりも半導体基板10の内部に向かって尖った形状を有するようにしてもよい。すなわち、半導体基板10の主面10a,10bに垂直であり且つ半導体領域13およびアイソレーション領域17を通る断面(つまり、半導体基板10の縦断面)において、
図2に示すように、拡散領域18と半導体領域12との接合境界J1の曲率が、拡散領域19と半導体領域12との接合境界J2の曲率よりも大きくなるようにしてもよい。ここで、接合境界J1,J2の曲率とは、接合境界J1,J2に内接する円の半径の逆数である。
【0039】
厳密には、接合境界J1の曲率は、半導体基板10の主面10aからの深さに応じて変化する。すなわち、接合境界J1の曲率は、半導体基板10の主面10aからの位置が深くなるにつれて大きくなり、拡散領域18と拡散領域19が接続する部分より少し浅い位置で最大となり、その後減少する。接合境界J2の曲率についても同様である。接合境界J1の曲率のうち少なくとも、当該曲率の最大値は、接合境界J2の曲率の最大値よりも大きくなるようにすることが好ましい。
【0040】
<半導体装置1の製造方法>
次に、上記半導体装置1の製造方法について、
図4〜
図6を参照して説明する。
【0041】
まず、第2導電型(本実施形態ではN型)の半導体基板10を用意する。そして、
図4(1)に示すように、半導体基板10の主面10aに酸化膜31を形成し、反対側の主面10bに酸化膜32を形成する。酸化膜31,32は、例えば熱酸化膜であり、半導体基板10を加熱することにより形成される。
【0042】
次に、
図4(1)に示すように、酸化膜31および酸化膜32上にそれぞれレジスト膜33およびレジスト膜34を形成する。レジスト膜33は、酸化膜31の周縁部を被覆しておらず、酸化膜31の周縁部には露出幅X1の環状の領域が露出している。同様に、レジスト膜34は、酸化膜32の周縁部を被覆しておらず、酸化膜32の周縁部には幅X2の環状の領域が露出している。なお、レジスト膜33,34は、X1>X2となるように形成される。
【0043】
次に、
図4(2)に示すように、レジスト膜33,34をエッチングマスクとして、レジスト膜33,34に被覆されていない酸化膜31,32を除去する。その後、レジスト膜33,34を除去する。これにより、半導体基板10の主面10a,10bの周縁部は酸化膜31,32で被覆されておらず、露出した状態となる。
【0044】
次に、デポジション法により、半導体基板10の周縁部に第1導電型のアイソレーション領域17を形成する。より詳しくは、
図4(3)に示すように、酸化膜32で被覆されていない主面10bの領域から半導体基板10内に第1導電型の不純物を導入し拡散させることにより、拡散領域19を形成する。同様に、酸化膜31で被覆されていない主面10aの領域から半導体基板10内に第1導電型の不純物を導入し拡散させることにより、拡散領域19に接続し拡散領域19より大きい拡散領域18を形成する。なお、導入する不純物は、例えば、アルミニウム、ボロン等である。
【0045】
前述のようにレジスト膜33,34がX1>X2となるように形成されているため、主面10bから導入される不純物の量よりも主面10aから導入される不純物の量の方が多い。このため、
図4(3)に示すように、拡散領域18は拡散領域19よりも大きく形成され、半導体基板10の厚さ方向の中心よりも主面10b側で拡散領域19に接続するようになる。なお、
図4(3)に示すように、主面10a,10bの周縁部の露出領域は、デポジション工程における加熱により形成された酸化膜により覆われる。
【0046】
次に、
図5(1)に示すように、酸化膜32上にレジスト膜37を形成する。レジスト膜37には、開口37aと、環状の開口37bとが設けられている。開口37aは半導体領域13の形成予定領域に対応して設けられ、開口37bはガードリング15の形成予定領域に対応して設けられている。
【0047】
次に、
図5(2)に示すように、レジスト膜37をエッチングマスクとして、レジスト膜37に被覆されていない酸化膜32を除去する。その後、レジスト膜37を除去する。また、半導体基板10裏面の酸化膜31も除去しておく。
【0048】
次に、
図5(3)に示すように、デポジション法により、酸化膜32で被覆されていない主面10bの領域、および主面10aから半導体基板10内に第1導電型の不純物を導入する。導入する不純物は、例えば、アルミニウム、ボロン等である。これにより、半導体領域11、半導体領域13およびガードリング15が形成される。なお、
図5(3)中の酸化膜38は、デポジション工程における加熱により形成される熱酸化膜である。
【0049】
次に、
図6(1)に示すように、酸化膜32上にレジスト膜40を形成する。レジスト膜40には、開口40aと、環状の開口40bとが設けられている。開口40aは半導体領域14の形成予定領域に対応して設けられ、開口40bはチャネルストッパー領域16の形成予定領域に対応して設けられている。
【0050】
次に、
図6(2)に示すように、レジスト膜40をエッチングマスクとして、レジスト膜40に被覆されていない酸化膜32を除去する。その後、レジスト膜40を除去する。
【0051】
次に、半導体基板10の主面10bに、半導体領域13を取り囲むように、第2導電型のチャネルストッパー領域16を形成する。より詳しくは、
図6(3)に示すように、デポジション法により、酸化膜32で被覆されていない主面10bの領域から半導体基板10内に第2導電型の不純物を導入する。導入する不純物は、例えば、リン、ヒ素等である。これにより、チャネルストッパー領域16が形成される。また、チャネルストッパー領域16とともに、本工程において半導体領域13内に半導体領域14が形成される。
【0052】
チャネルストッパー領域16を形成する工程では、
図6(3)に示すように、チャネルストッパー領域16と拡散領域18との間の最短距離D1がチャネルストッパー領域16と拡散領域19との間の最短距離D2よりも短くなる位置にチャネルストッパー領域16を形成する。すなわち、拡散領域18が拡散領域19より大きく形成されていても、チャネルストッパー領域16を拡散領域19に近づけて形成した場合は、最短距離D1は最短距離D2より長くなってしまう。このため、チャネルストッパー領域16は、最短距離D1が最短距離D2より短くなる程度に拡散領域19から離れた位置に形成する。
【0053】
次に、酸化膜32,38を除去した後、半導体基板10の主面10b上に、所定位置(各種電極を形成する位置)に開口が設けられた絶縁膜25を形成する。その後、アルミニウム等の金属蒸着を行って、アノード電極21、カソード電極22、ゲート電極23および電極24を形成する。以上の工程を経て、
図1に示す半導体装置1が作製される。
【0054】
なお、アイソレーション領域17を形成する工程において、拡散領域18は、拡散領域19よりも拡散係数の大きい不純物を用いて形成してもよい。すなわち、第1拡散係数を有する不純物を用いて拡散領域19を形成し、第1拡散係数より大きい第2拡散係数を有する不純物を用いて拡散領域18を形成してもよい。例えば、拡散領域18は、拡散係数の大きいアルミニウムを用いて形成し、一方、拡散領域19は、アルミニウムより拡散係数の小さいボロンを用いて形成する。これにより、拡散領域18をより大きく形成することが可能となり、チャネルストッパー領域16と拡散領域18との間の最短距離D1を、チャネルストッパー領域16と拡散領域19との間の最短距離D2よりも短くすることが容易になる。
【0055】
また、上記のように拡散係数の異なる不純物を用いて拡散領域18および拡散領域19を形成する場合、前述の露出幅X1,X2をX1>X2とすることは必須ではなく、例えばX1=X2としてもよい。
【0056】
なお、上記実施形態の説明において半導体装置1はサイリスタであったが、本発明はこれに限るものではなく、他の半導体装置、例えばダイオード、各種トランジスタ(MOSFET、バイポーラトランジスタ等)にも適用することが可能である。
【0057】
上記の記載に基づいて、当業者であれば、本発明の追加の効果や種々の変形を想到できるかもしれないが、本発明の態様は、上述した実施形態に限定されるものではない。特許請求の範囲に規定された内容及びその均等物から導き出される本発明の概念的な思想と趣旨を逸脱しない範囲で種々の追加、変更及び部分的削除が可能である。