特許第6682315号(P6682315)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6682315
(24)【登録日】2020年3月27日
(45)【発行日】2020年4月15日
(54)【発明の名称】船舶
(51)【国際特許分類】
   B63B 11/04 20060101AFI20200406BHJP
   B63B 25/08 20060101ALI20200406BHJP
   B63B 3/56 20060101ALI20200406BHJP
【FI】
   B63B11/04 Z
   B63B25/08 N
   B63B3/56
【請求項の数】5
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-63972(P2016-63972)
(22)【出願日】2016年3月28日
(65)【公開番号】特開2017-177866(P2017-177866A)
(43)【公開日】2017年10月5日
【審査請求日】2018年11月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】503218067
【氏名又は名称】住友重機械マリンエンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100162640
【弁理士】
【氏名又は名称】柳 康樹
(72)【発明者】
【氏名】堤 慎之介
(72)【発明者】
【氏名】舟木 雄太
【審査官】 福田 信成
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−284526(JP,A)
【文献】 実開昭50−150991(JP,U)
【文献】 特開2006−273037(JP,A)
【文献】 韓国公開特許第10−2012−0068207(KR,A)
【文献】 特開2004−299457(JP,A)
【文献】 特開2006−248257(JP,A)
【文献】 特開2005−231528(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B63B 11/04
B63B 3/56 − 3/60
B63B 25/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上甲板と、カーゴタンクと、残渣タンクと、バラストタンクと、を備え、
前記残渣タンクは、前記カーゴタンクの上方であって、且つ前記上甲板の下面に設けられ、前記上甲板の一部領域が前記残渣タンクの天面として機能し、前記上甲板の一部領域と前記残渣タンクの底板とにより二重船体構造が形成され
前記バラストタンクは、前記カーゴタンク及び前記残渣タンクの船側側の側壁よりも船側側に設けられる船舶。
【請求項2】
前記残渣タンクの深さは6m以内である請求項1に記載の船舶。
【請求項3】
前記残渣タンクの側壁の一部は、内板の縦通隔壁と一体的となっている請求項1又は2に記載の船舶。
【請求項4】
前記残渣タンクの側壁の一部は、横隔壁と一体的となっている請求項1〜3のいずれか一項に記載の船舶。
【請求項5】
前記残渣タンクの底板は、前記横隔壁に設けられる点検用横桁と連続している請求項4に記載の船舶。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、船舶に関する。
【背景技術】
【0002】
タンカーにおいて、カーゴオイルの残渣を一時的に貯留するための残渣タンク(Residue Tank)を設ける場合がある。特許文献1では、カーゴタンクとバラストタンクとの間に、船体の船側に沿って縦方向に延びる残渣タンクが示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実用新案登録第3144883号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載のような残渣タンク構造を有している場合、以下の問題がある。すなわち、残渣タンクを支持するための部材等が必要となるため、建造に係る材料や作業に係るコストが増大する。また、残渣タンクの深さに応じて固定点検設備や艤装品の設置が必要となる点からも、これらに係るコストが増大となる。
【0005】
本発明は上記を鑑みてなされたものであり、建造に係るコストが低減された残渣タンクを備えた船舶を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の一形態に係る船舶は、上甲板と、カーゴタンクと、残渣タンクと、を備え、前記残渣タンクは、前記カーゴタンクの上方であって、且つ前記上甲板の下面に設けられ、前記上甲板の一部領域が前記残渣タンクの天面として機能し、前記上甲板の一部領域と前記残渣タンクの底板とにより二重船体構造が形成されていることを特徴とする。
【0007】
上記の船舶によれば、上甲板の下面に設けられる残渣タンクにおいて、天面として機能する上甲板の一部領域と残渣タンクの底板とにより二重船体構造が形成されていることで、残渣タンク自体が上甲板を補強可能な構成となる。したがって、上甲板を補強するための各種部材に係るコストを低減することができ、建造に係るコストを低減することができる。
【0008】
ここで、前記残渣タンクの深さは6m以内である態様とすることができる。
【0009】
上記のように、上甲板の下面に設けられる残渣タンクの深さが6m以内であることにより、法的に要求されている固定点検設備の設置が不要となる。したがって、固定点検設備の設置に係る材料コスト及び建造コスト(作業コスト)が低減される。
【0010】
前記残渣タンクの側壁の一部は、内板の縦通隔壁と一体的となっている態様とすることができる。
【0011】
残渣タンクの側壁の一部が内板の縦通隔壁と一体的となっている場合、残渣タンクが内板の縦通隔壁により補強されるため、残渣タンクを補強するための部材を低減することができる。
【0012】
前記残渣タンクの側壁の一部は、横隔壁と一体的となっている態様とすることができる。
【0013】
残渣タンクの側壁の一部が横隔壁と一体的となっている場合、残渣タンクが横隔壁により補強されるため、残渣タンクを補強するための部材を低減することができる。
【0014】
前記残渣タンクの底板は、前記横隔壁に設けられる点検用横桁と連続している態様とすることができる。
【0015】
上記のように、残渣タンクの底板が横隔壁の点検用横桁と連続している構成を備えることで、横隔壁に対して設置が要求されている固定点検設備のうち、点検用横桁の一部を省略することができるため、部材に係るコストを低減することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、建造に係るコストが低減された残渣タンクを備えた船舶が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の一実施形態に係る船舶を示す概略側面図である。
図2】船舶における残渣タンク及びその近傍の概略斜視図である。
図3図1のIII−III線に沿った断面の一部拡大図である。
図4図3のIV−IV線に沿った断面図である。
図5図4のV−V線に沿った断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための形態を詳細に説明する。なお、図面の説明においては同一要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。また、「前」「後」「左」「右」「上」「下」の語は、船体の前後方向、左右(幅)方向及び上下方向にそれぞれ対応したものである。また、「縦」の語は船体の前後方向に対応したものであり、「横」の語は船体の左右(幅)方向に対応したものである。また、図面においては、便宜上、各部材の板厚を省略している場合がある。
【0019】
図1は本発明の一実施形態に係る船舶を示す概略側面図である。図2は、船舶における残渣タンク及びその近傍の概略斜視図である。また、図3は、図1のIII−III線に沿った断面の一部拡大図である。また、図4は、図3のIV−IV線に沿った断面図である。また、図5は、図4のV−V線に沿った断面図である。
【0020】
図1に示すように、本実施形態の船舶1は、オイルタンカー等の肥大船であり、船体10、推進器2及び舵3を備えている。船体10は、横方向に沿って延在する横隔壁11で画成されてなる区画12を複数有している。推進器2は、船舶1を推進させるものであり、例えばスクリューシャフトが用いられている。舵3は、船舶1の推進方向を制御する。
【0021】
図2及び図3等に示すように、船体10は、上甲板13と、船体10の外殻を形成する外板(外壁)14と、この外板14の船体内側に水密に設けられた内板(内壁)15とを備え、外板14及び内板15によって二重船体構造(ダブルハル構造)とされている。
【0022】
上甲板13は、船体中央から船側側に行くに従い下方に傾斜するよう設けられている。換言すると、上甲板13においては、船体中央が船側側に対し高くなっている。これにより、上甲板13の水はけ効果が向上されている。
【0023】
外板14は、船底側の外殻を構成する船底外板と、船側側の外殻を構成する船側外板と、を含む。一方、内板15は、船底側において縦方向に延在する内底板と、船側側において縦方向に延在する縦通隔壁と、を含む。つまり、船体10は、船底外板及び内底板による二重底構造とされ、船側外板及び縦通隔壁による二重船側構造とされている。
【0024】
この船体10では、内板15よりも船体内側の空間をカーゴタンク16とし、外板14と内板15との間の空間(二重底構造とした船底部及び二重船側構造とした船側部)をバラストタンク17としている。カーゴタンク16は、重油等の液体を積載するためのタンクである。また、バラストタンク17は、バラスト水を張水するためのタンクである。
【0025】
なお、本実施形態における「カーゴタンク」には、スロップタンクも含められる。スロップタンクは、オイルタンカーにおいて、洗浄後のタンクから排出する油と水の混合物を集めるために使用するタンクであるが、カーゴタンクとして運用することもある。このように、カーゴタンクとして運用されるスロップタンク又はカーゴタンクとして運用されないスロップタンクも本実施形態における「カーゴタンク」に含まれる。
【0026】
図2に示すように、船体10は、カーゴタンク16の天面を構成する上甲板13の裏面側に、縦方向に延在する複数の縦通部材21を備えている。縦通部材21は、ロンジ材又は縦骨としても称される。縦通部材21は、上甲板13の下面13a(内側の壁面であり、カーゴタンク16の天面を構成する面)に対して、溶接等により固定されている。
【0027】
縦通部材21は、外板14の船体内側の壁面及び内板15の船体外側の壁面等にも設けられるが、縦通部材21の設置位置等は適宜変更できる。
【0028】
上記の縦通部材21は、船体10の剛性を高めるためのものであり、船体10の縦方向の補強材として機能する。ここでの縦通部材21は、断面T字形状とすることができるが、断面形状は、例えば断面L字形状や断面I字形状等でもよく、種々の形状とすることができる。
【0029】
また、船体10は、カーゴタンク16の天面を構成する上甲板13の裏面側に、横方向に延在する複数の甲板横桁22を備えている。甲板横桁22は、甲板横桁又は横骨としても称される。甲板横桁22は、上甲板13の下面13a(カーゴタンク16の天面を構成する面)に対して、溶接等により固定されている。なお、外板14及び内板15にも、縦通部材21を支持するための船側横桁が別途設けられるが、甲板横桁22及び船側横桁の設置位置等は適宜変更できる。
【0030】
上記の甲板横桁22は、船体10の剛性を高めるためのものであり、特に船体10の上甲板における横方向の補強材として機能する。図2等に示すように、甲板横桁22は、縦通部材21よりも幅(上下方向の高さ)が大きく、隣接する甲板横桁22同士の距離は、隣接する縦通部材21同士の距離よりも大きくすることができる。
【0031】
また、船体10は、上甲板13下に残渣タンク18(Residue Tank)を有する。残渣タンク18は、カーゴタンク16に投入される貨物油の残滓を一時的に貯留するタンクである。残渣タンク18は、船体10の前後方向に配置された複数の区画12のうちの後方の区画に配置された右舷側のカーゴタンク16の上方であり、上甲板13の下面13aに対して取り付けられている。残渣タンク18の取り付け位置は上記に限定されない。残渣タンク18は、貨物油を貯留するタンクとして用いることもできるタンクである。
【0032】
残渣タンク18は、底板181と、底板181に対して連続する前方側壁182、後方側壁183、右側側壁184、及び、左側側壁185を有する。また、残渣タンク18は、上甲板13下に取り付けられることから、上甲板13の下面13aが残渣タンク18の天面として機能する。
【0033】
残渣タンク18の後方側壁183は、横隔壁11により形成されている。すなわち、横隔壁11が後方側壁183として機能する。そして、図4等に示すように、横隔壁11の一方の面11aが残渣タンク18の後方側の内壁面として機能する。残渣タンク18の右側側壁184は、内板15の縦通隔壁により形成されている。すなわち、内板15が右側側壁184として機能する。そして、図3図4等に示すように、内板15の内側の壁面15aが残渣タンク18の右側の内壁面として機能する。
【0034】
残渣タンク18の底板181は、図2等に示すように、水平方向に延びているが、傾斜していてもよい。また、底板181には、上甲板13の下面13aに設けられた縦通部材21と対向する位置に同じく縦方向に延びる縦通部材23を有する。
【0035】
また、上甲板13の下面13aに設けられた甲板横桁22が残渣タンク18の底板181まで延び、底板181側の縦通部材23を補強している。なお、甲板横桁22に対して、縦通部材21と縦通部材23とを連結する防撓材を別途設ける構成としてもよい。
【0036】
残渣タンク18における天面となる上甲板13と、底面となる底板181とは、二重船体構造(ダブルハル構造)における外板14及び内板15の関係と共通している。すなわち、上甲板13は上面において船体10の外殻を形成していて、底板181は上甲板13の船体内側に水密に設けられている点が、船体10の側面及び船底における二重船体構造と共通している。また、上甲板13及び底板181には、縦方向に延在する縦通部材21,23が対向して設けられていると共に、それぞれが横方向に延在する甲板横桁22によって支持されている点も、二重船体構造と共通している。すなわち、残渣タンク18は、上甲板13の一部領域の下方に形成された二重船体構造部分をタンクとして活用したものということもできる。
【0037】
また、本実施形態に係る船舶1では、残渣タンク18が上甲板13の下面13aに対して取り付けられているが、残渣タンク18の深さが6m以内とされている。残渣タンク18の深さとは、残渣タンク18の底板181により形成されるタンク内の底面と上甲板13の下面13aにより形成されるタンク内の天面間の距離の最大値により定義される。すなわち、残渣タンク18内の天面と底面との距離の最大値が6m以内である。なお、残渣タンク18の前後方向及び左右方向の大きさは、残渣タンク18として必要なタンク容量に応じて設定することができる。
【0038】
図2及び図4等に示すように、カーゴタンク16内には、横隔壁11に沿って水平方向に延びる点検用横桁19が設けられる。残渣タンク18の底板181は、図2に示すように、点検用横桁19に対して水平方向に連続して面一となるように設けられている。また、横隔壁11には、上甲板13の縦通部材21に連続して、上下方向に延びる垂直防撓材20が複数設けられている。点検用横桁19は、垂直防撓材20を補強する機能も有している。
【0039】
ここで、本実施形態に係る船舶1の残渣タンク18は、上甲板13の下であって且つカーゴタンク16の上方に設けられていることを特徴とする。従来の船舶における残渣タンクは、カーゴタンクの容量低下を防ぐために、骨材や配管等に囲まれた空間に設けることも多かった。しかしながら、このような空間に残渣タンクを設ける場合、建造時の溶接や塗装作業が困難となる可能性があった。これは、従来の残渣タンクは、タンクの幅及び長さと比較して深さが大きくなる傾向があり、この場合、平面視におけるタンク面積が小さいにもかかわらず交通設備やカーゴパイプ等の艤装品が設置されることから、作業スペースが狭くなることに由来する。これに対して、上甲板13の下であって且つカーゴタンク16の上方に残渣タンク18が設けられることで、平面視におけるタンク面積を広く確保することが可能となり、骨材や配管等との干渉が回避されて、残渣タンク18内の建造作業についての作業性が向上する。
【0040】
また、本実施形態に係る船舶1の残渣タンク18のように上甲板13の下であって且つカーゴタンク16の上方に設ける構成とすると、従来の構造と比較して、カーゴタンク16内に貯留された貨物油からの残渣タンク18にかかる圧力が小さくなる。したがって、従来の残渣タンクと比較して、残渣タンク18の強度を小さくしても貨物油からの圧力に耐えることが可能となるため、使用する板材の板厚等を小さくすることができる点においても船体重量の軽量化が可能となる。
【0041】
さらに、上甲板13下に二重船体構造の領域を形成し、当該領域を残渣タンク18とする構成とした場合、上甲板13及び底板181を補強する縦通部材21,23及び甲板横桁22に係る曲げ応力を小さくすることが可能となるため、これらの部材の軽量化が可能となる。また、残渣タンク18自体が上甲板13を補強する構成となるため、上甲板13を補強するための各種部材に係るコストを低減することができる。
【0042】
また、上記のように、残渣タンク18の深さが6m以内であると、残渣タンク18の建造に係る種々のコストを削減することができる。従来の船舶における残渣タンクのように、深さが6mよりも大きいタンクを船舶に設置しようとすると、SOLAS条約(海上における人命の安全のための国際条約)で要求された固定点検設備の設置が必要となる。具体的には、SOLAS条約では、タンクの深さが6m以上となると、タンクの上面から3m以内に固定点検設備を設置することが義務付けられている。しかしながら、本実施形態に係る船舶1のように、残渣タンク18の深さを6m以内とすると、SOLAS条約で規定された固定点検設備の設置が不要となる。したがって、固定点検設備の設置に係る材料コスト及び建造コスト(作業コスト)が低減される。また、固定点検設備を省略することができると、船舶1における船体重量も軽量化される。
【0043】
また、深さが6mよりも大きい残渣タンクを設ける場合には、固定点検設備の他にも、交通設備やカーゴパイプ等の艤装品の必要量が増大となっていた。艤装品は、タンクの深さに応じて必要量が変化するので、深さが大きくなるにつれて艤装品の必要量が増大する。これに対して、残渣タンク18の深さを6m以内とすると、艤装品を減らすことができるため、艤装品に係る材料コスト及び建造コストの低減が可能となり、船体重量の軽量化にもつながる。
【0044】
また、上記の残渣タンク18のように、深さが6m以内となっていると天面側の上甲板13及び底面側の底板181の双方を甲板横桁22によって補強することができる。また、甲板横桁22によって接続された残渣タンク18の底板181自体も上甲板13を補強する横桁として取り扱うことができる。
【0045】
また、上記の残渣タンク18のように残渣タンク18の後方側壁183が横隔壁11により形成されているか、又は、後方側壁183と横隔壁11とが接して一体的となっている場合、残渣タンク18が横隔壁11により補強されるため、残渣タンク18を補強するための部材等を低減することができる。特に、残渣タンク18の深さが3m以内であって、底板181が横隔壁11の点検用横桁19に対して水平方向に連続して設けられている場合、SOLAS条約により横隔壁11に対して設置が要求されている固定点検設備のうち、上甲板13下から3m以内に設置が要求されている設備の一部を省略することができる。また、このような構成である場合、底板181は、横隔壁11に設けられる垂直防撓材20における上下方向の長さを短縮するスパンキラーとして機能する。したがって、固定点検設備を艤装品として設ける場合と比較して、垂直防撓材20のサイズの小型化が可能となり、軽量化することができる。
【0046】
同様に、上記の残渣タンク18のように残渣タンク18の右側側壁184が内板15の縦通隔壁により形成されているか、又は、右側側壁184と内板15の縦通隔壁とが接して一体的となっている場合、残渣タンク18が内板15の縦通隔壁により補強されるため、残渣タンク18を補強するための部材を低減することができる。
【0047】
また、上記の残渣タンク18は、船舶1を建造する際の作業性及び安全性も向上させる効果を有する。すなわち、船舶1のような肥大船を建造する際には、船舶に含まれる各部分を建造ブロック単位で建造した後に、建造ブロックを組み合わせる方法が一般的である。このとき、従来の船舶における残渣タンクを含む建造ブロックは、残渣タンクの深さに対応して大型の建造ブロック単位で建造する必要があった。残渣タンクを細かい建造ブロックに分割して建造することも可能ではあるが、建造ブロック数の増加は作業コストの増加につながるため、大型の建造ブロックで建造することが一般的であった。しかしながら、建造ブロックの大型化は、作業場での危険性の増加や作業性の低下を引き起こす可能性があった。これに対して、本実施形態に係る船舶1における残渣タンク18は、深さが6m以内、特に3m以内とすることで、建造ブロックが大型化をすることが防がれる。特に、建造ブロックの高さが大きくなることを防ぐことができることから、船舶1の建造時の作業性及び安全性が向上する。
【0048】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、本発明に係る残渣タンクを含む船舶の構造は特に限定されない。
【0049】
また、上記実施形態では、残渣タンク18の前方側壁182及び左側側壁185は、横隔壁11及び内板15の縦通隔壁とは別体であり離間して配置されている場合について説明したが、前方側壁182又は左側側壁185が横隔壁11又は内板15の縦通隔壁と接している等により一体的となっていてもよい。
【0050】
また、残渣タンク18は、横隔壁11及び内板15から離間した状態で上甲板13下に取り付けられていてもよい。この場合、前方側壁182、後方側壁183、右側側壁184、及び、左側側壁185はそれぞれ横隔壁11及び内板15とは別に上甲板13下に取り付けられる。したがって、必要に応じて、これらの側壁及び底板181を補強するための補強材が別途設けられていてもよい。
【符号の説明】
【0051】
1…船舶、10…船体、11…横隔壁、12…区画、14…外板、15…内板、16…カーゴタンク、17…バラストタンク、18…残渣タンク、21,23…縦通部材、22…甲板横桁、181…底板、182…前方側壁、183…後方側壁、184…右側側壁、185…左側側壁。
図1
図2
図3
図4
図5