特許第6682323号(P6682323)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6682323
(24)【登録日】2020年3月27日
(45)【発行日】2020年4月15日
(54)【発明の名称】子扉及び建具
(51)【国際特許分類】
   E06B 3/26 20060101AFI20200406BHJP
   E06B 7/32 20060101ALI20200406BHJP
   E06B 3/76 20060101ALI20200406BHJP
   E06B 5/00 20060101ALN20200406BHJP
【FI】
   E06B3/26
   E06B7/32 B
   E06B3/76
   !E06B5/00 B
【請求項の数】4
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2016-70434(P2016-70434)
(22)【出願日】2016年3月31日
(65)【公開番号】特開2017-179951(P2017-179951A)
(43)【公開日】2017年10月5日
【審査請求日】2018年10月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】390005267
【氏名又は名称】YKK AP株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】一色国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】岡本 麻友子
(72)【発明者】
【氏名】松村 心互
(72)【発明者】
【氏名】江口 武久
【審査官】 佐藤 美紗子
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第95/028543(WO,A1)
【文献】 特開平10−088931(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E06B 3/26
E06B 3/72
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
戸体の室内側に取り付けられ親扉の戸当たりをなす金属製の戸当たり部材と、
前記戸体の面内方向に沿い見込み方向に間隔を開けて配置される金属室外壁部と金属室内壁部とを備えた金属製の金属骨材と、
前記金属室内壁部の室内側に配置される室内配置部を有する合成樹脂製の樹脂骨材と、
を有し、
前記金属骨材は、前記金属室内壁部から室内側に延出され、前記金属室内壁部の見付け幅方向において前記戸当たり部材と反対側に位置している室内延出部を有し、
前記戸当たり部材は、前記室内配置部を介して前記室内延出部に固定されていることを特徴とする子扉。
【請求項2】
請求項1に記載の子扉であって、
前記室内配置部は、中空部を有することを特徴とする子扉。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の子扉であって、
前記樹脂骨材は、前記室内配置部と繋がって前記金属骨材の室外側に配置される樹脂室外壁部を有することを特徴とする子扉。
【請求項4】
請求項1乃至請求項のいずれかに記載の子扉と、
前記親扉と、を有することを特徴とする建具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、親扉とともに設けられる子扉及び子扉を備えた建具に関する。
【背景技術】
【0002】
子扉は、親扉を閉じたときに親扉が当たる戸当たりをなす部材を有している。戸当たりを有する扉としては、例えば、断面コ字状の金属芯材の外面部に硬質合成樹脂層を形成した枠材と、枠材の表面と裏面とに設けられた金属製の外面板と、を有し、戸当たりをなす当たり部材がビスのような固着具により金属芯材に取り付けられて断熱構造をなすドアが知られている(例えば、特許文献1参照)。戸当たりは、ドアを閉じる際に接触する部位なので、高い剛性と強度とが必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭56−73788号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のようなドアのコ字状の金属芯材は、室内側と室外側とにそれぞれドアの面内方向に沿う壁部を有しており、室内側の壁部と室外側の壁部との戸先側の端部が繋がっている。このため、室外側の外面板の近傍と室内側の外面板の近傍とにそれぞれ、広い面積を有する金属部分が配置されている。室外側の壁部は外部から暖められ又は冷やされ易いため金属芯材の温度が変化しやすく、また、金属芯材の温度変化は室内側の壁部を介して室内に伝わりやすいので、ドアの断熱性が損なわれてしまう虞がある。このとき、剛性や強度を必要とする為に金属で形成されている当たり部材が金属芯材にビス等により固定されていると、室外側の壁部の温度が当たり部材に伝達され、より断熱性が損なわれる虞がある。
【0005】
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、戸当たりを備えつつも断熱性に優れた子扉及び建具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる目的を達成するために本発明の子扉は、戸体の室内側に取り付けられ親扉の戸当たりをなす金属製の戸当たり部材と、前記戸体の面内方向に沿い見込み方向に間隔を開けて配置される金属室外壁部と金属室内壁部とを備えた金属製の金属骨材と、前記金属室内壁部の室内側に配置される室内配置部を有する合成樹脂製の樹脂骨材と、を有し、前記金属骨材は、前記金属室内壁部から室内側に延出され、前記金属室内壁部の見付け幅方向において前記戸当たり部材と反対側に位置している室内延出部を有し、前記戸当たり部材は、前記室内配置部を介して前記室内延出部に固定されていることを特徴とする。
【0007】
このような子扉によれば、戸体の室内側に取り付けられている戸当たり部材は、金属製なので高い剛性を備えており、戸当たり部材は金属製の金属骨材に固定されているので、高い強度を備えて取り付けられている。
【0008】
また、戸当たり部材が固定されている室内延出部は、金属骨材の金属室内壁部から室内側に延出されており、戸体の室内側の近傍においては面内方向に沿う面積が金属室内壁部より小さいので、室外側の温度が室内側に伝わり難い。戸当たり部材は、金属室内壁部より室内側にて室内延出部に合成樹脂製の樹脂骨材の室内配置部を介して固定されているので、戸当たり部材には、金属骨材の温度が伝わり難い。このため、剛性及び強度が高い戸当たり部材を備えつつも断熱性に優れた子扉を提供することが可能である。
【0009】
また、室内延出部は、金属室内壁部の見付け幅方向において戸当たり部材と反対側に位置しているので、室内延出部と戸当たり部材との間隔が、より広く空けられて、より断熱性を高めることが可能である。
【0010】
かかる子扉であって、前記室内配置部は、中空部を有することが望ましい。
このような子扉によれば、室内配置部が中空部を有しているので、中実の部材より断熱性が高い。このため、戸当たり部材が、中空部を有する室内配置部を介して室内延出部に固定されているので、より断熱性に優れた子扉を提供することが可能である
【0011】
かかる子扉であって、前記樹脂骨材は、前記室内配置部と繋がって前記金属骨材の室外側に配置される樹脂室外壁部を有することが望ましい。
このような子扉によれば、樹脂骨材が金属骨材の室外側に配置される樹脂室外壁部を有しているので、室外側からの要因による金属骨材の温度変化を抑制することが可能である。また、樹脂室外壁部が樹脂骨材に設けられているので、部材点数を減らすことができ、組立工数やコストを抑えることが可能である。
【0012】
また、上記子扉と、前記親扉と、を有することを特徴とする建具である。
このような建具によれば、剛性及び強度が高い戸当たりを備えつつも断熱性に優れた子扉を備えた建具を提供することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本実施形態に係る建具の横断面図である。
図2図1におけるA部の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一実施形態に係る子扉及び子扉を備えた建具について図面を参照して説明する。
【0015】
建具1は、図1に示すように、例えば、親扉2と子扉3とでなる親子扉タイプの玄関用の建具1である。親扉2及び子扉3は、枠組みされた枠体4において左右に配置される縦枠4aに、ヒンジ(不図示)を介して回動自在に設けられている。親扉2及び子扉3は、各々回動しつつ室外側に移動することにより開かれるように構成されている。図1においては親扉2が左側に、子扉3が右側に位置している。
【0016】
子扉3は、上下に各々位置する横框(不図示)と、ヒンジ側に位置して上下方向に沿って配置される戸尻框31と、親扉2側に位置して上下方向に沿って配置される戸先框32と、が矩形状に接合された框体33と、框体33により囲まれた領域内に設けられる、例えばペーパーハニカムのような断熱材34と、框体33を室内側及び室外側からそれぞれ覆い鋼板でなる外面材35と、を有する戸体33、及び、戸体33に取り付けられて親扉2の戸当たりをなす戸当たり部材36を有している。
【0017】
子扉3の戸先框32は、戸体30の室外側に設けられ、戸体30の面内方向に沿い見込み方向に間隔を開けて配置される金属室内壁部39aと金属室外壁部39bとを備えた金属製の金属骨材37と、戸体30を構成し金属室内壁部39aの室内側に配置される室内配置部38aを有する合成樹脂製の樹脂骨材38と、を有している。
【0018】
金属骨材37は、錠受け6、ラッチ受け7などの機能部品が収容される本体部材39と、本体部材39の親扉2側に固定されるエッジ材40とを有している。本体部材39及びエッジ材40は、上下方向を押し出し方向とするアルミニウム製の押出成形部材である。
【0019】
本体部材39は、見込み方向に対向する金属室内壁部39a及び金属室外壁部39bと、金属室外壁部39bと金属室内壁部39aとの戸尻側の縁を見込み方向に繋ぐ金属見込壁部39cと、金属室内壁部39aと金属室外壁部39bとの親扉2側の縁から互いに対向する側に延出されてエッジ材40がビス止めされるエッジ材固定部39dと、金属室内壁部39aの親扉2側の縁から室内側に延出された部位及び室外側のエッジ材固定部39dの端部に設けられエッジ材40が係合されるエッジ材係合部39eと、金属室内壁部39aから室内側に延出され金属室内壁部39aの戸尻側に偏らせて配置された板状をなす室内延出部39fと、を有している。
【0020】
本体部材39の親扉2側に位置する2つのエッジ材固定部39dは、見込み方向に間隔が空けられており、金属室内壁部39a及び金属室外壁部39b、2つのエッジ材固定部39d、及び、金属見込壁部39cにより形成される空間内に、前述した機能部品が収容される。金属室外壁部39bの戸尻側の部位は、戸尻側に向かって金属室内壁部39aとの間隔が狭くなるような傾斜部39gが設けられている。
【0021】
エッジ材40は、本体部材39の金属室外壁部39bより室外側から金属室内壁部39aより室内側に見込み方向に延びるエッジ壁部40aと、エッジ壁部40aの室外側の縁から戸尻側に延出されて室外側の外面材35に室外側から当接される室外エッジ部40bと、エッジ壁部40aの室内側の端に設けられ親扉2側に延びるタイト材9が嵌合されるタイト材嵌合部40cと、エッジ壁部40aから戸尻側に突出され本体部材39のエッジ材係合部39eと係合する2つの係合片40dと、を有している。
【0022】
樹脂骨材38は、上下方向を押し出し方向とする合成樹脂製の押出成形部材である。樹脂骨材38は、本体部材39が有する金属室内壁部39aの室内側に配置され、上下方向に貫通する中空部38bを有する室内配置部38aと、室内配置部38aの戸尻側に当該室内配置部38aと間隔を空けて設けられ室外側に延出されている樹脂見込壁部38cと、樹脂見込壁部38cの室外側の縁から親扉2側に延出された樹脂室外壁部38dと、を有している。
【0023】
室内配置部38aと樹脂見込壁部38cとは室内側の縁が繋がっており、室内配置部38aと樹脂見込壁部38cの室内側の部位との間には、室外側に向かって開放され室内側に窪む室内凹部38eが設けられている。また、室内配置部38aを構成し親扉2側に位置する戸先壁部38fからは親扉2側に向かって突出されてエッジ材40と戸当たり部材36との間を仕切る仕切り片38gが設けられている。仕切り片38gは、親扉2側に突出した親扉側突出部38hと、親扉側突出部38hの先端が室内側に延出した仕切り延出部38iとが戸先壁部38fとともに、室外側に窪む室外凹部38jを形成している。
【0024】
戸当たり部材36は、上下方向を押し出し方向とするアルミニウム製の押出成形部材である。戸当たり部材36は、室内配置部38aの親扉2側に位置し樹脂骨材38の戸先壁部38fと室内側の外面材35を介して対向する戸当たり固定部36aと、戸当たり固定部36aの室内側の縁から戸尻側に延出され室内配置部38aと外面材35を介して対向する室内当接部36bと、室内当接部36bの戸尻側の縁から室内側に延出された戸当たり延出部36cと、戸当たり延出部36cの室内側の縁から、親扉2と見込み方向において対向する位置まで延出された親扉対向壁部36dと、を有している。
【0025】
戸当たり固定部36aの室外側の端部は、樹脂骨材38の仕切り片38gと戸先壁部38fとにより形成されている室外凹部38jに挿入されている。また、本体部材39のエッジ材係合部39eに係合片40dが係合されてエッジ材40が本体部材39に取り付けられた状態で、エッジ材40の室内側の端部は、仕切り延出部38iの室内側の端部より室外側に位置している。このため、戸当たり部材36とエッジ材40とは樹脂骨材38の仕切り片38gにより仕切られている。親扉対向壁部36dは、室外側に位置する親扉2と見込み方向において対向する位置に、親扉2の室外側面に当接されるタイト材9が嵌合されるタイト材嵌合部36eを有している。
【0026】
戸当たり部材36の戸当たり固定部36aと本体部材39の室内延出部39fとは、それらの間に室内配置部38aの室内側の部位と室内側から折り曲げられた外面材35とを介して配置され、見付け幅方向、すなわち、左右方向において親扉2側から進入するビス10が、戸当たり固定部36a、外面材35、室内配置部38aを貫通して室内延出部39fに螺合されることにより戸当たり部材36が戸体30に固定されている。
【0027】
本実施形態の子扉3によれば、戸体30の室内側に取り付けられている戸当たり部材36は、金属製なので高い剛性を備えており、戸当たり部材36は金属製の金属骨材37に固定されているので、高い強度を備えて取り付けられている。
【0028】
また、戸当たり部材36が固定されている板状の室内延出部39fは、金属骨材37の金属室内壁部39aから室内側に延出されており、戸体30の室内側の近傍においては面内方向に沿う面積が金属室内壁部39aより小さいので、室外側の温度が室内側に伝わり難い。戸当たり部材36は、金属室内壁部39aより室内側にて室内延出部39fに合成樹脂製の樹脂骨材38の室内配置部38aを介して固定されているので、戸当たり部材36には、金属骨材37の温度が伝わり難い。このため、高い剛性を有し、高い強度を備えた戸当たり部材36を備えつつも断熱性に優れた子扉3を提供することが可能である。
【0029】
また、室内配置部38aは中空部38bを有しているので、中実の部材より断熱性が高い。このため、戸当たり部材36が、中空部38bを有する室内配置部38aを介して室内延出部39fに固定されているので、より断熱性に優れた子扉3を提供することが可能である。
【0030】
また、室内延出部39fは、金属室内壁部39aの見付け幅方向において戸当たり部材36と反対側に位置しているので、室内延出部39fと戸当たり部材36との間隔が、より広く空けられて、より断熱性を高めることが可能である。
【0031】
また、樹脂骨材38が金属骨材37の室外側に配置される樹脂室外壁部38dを有しているので、室外側からの要因による金属骨材37の温度変化を抑制することが可能である。また、樹脂室外壁部38dが樹脂骨材38に設けられているので、部材点数を減らすことができ、組立工数とコストを抑えることが可能である。
【0032】
また、高い剛性を有し、高い強度を備えて設けられた戸当たり部材36を備えつつも断熱性に優れた子扉3を有する建具1を提供することが可能である。
【0033】
また、上記実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0034】
1 建具、2 親扉、3 子扉、4 枠体、30 戸体、36 戸当たり部材、
37 金属骨材、38 樹脂骨材、38a 室内配置部、38b 中空部、
38d 樹脂室外壁部、39a 金属室内壁部、39f 室内延出部
図1
図2