特許第6682335号(P6682335)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6682335ユニットバス用壁パネルを成形するための、プレス成形用入れ子、プレス成形方法及びプレス成形装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6682335
(24)【登録日】2020年3月27日
(45)【発行日】2020年4月15日
(54)【発明の名称】ユニットバス用壁パネルを成形するための、プレス成形用入れ子、プレス成形方法及びプレス成形装置
(51)【国際特許分類】
   B29C 43/36 20060101AFI20200406BHJP
   B29C 43/02 20060101ALI20200406BHJP
   B29C 70/46 20060101ALI20200406BHJP
   E04B 2/72 20060101ALI20200406BHJP
   A47K 4/00 20060101ALI20200406BHJP
   B29K 105/08 20060101ALN20200406BHJP
【FI】
   B29C43/36
   B29C43/02
   B29C70/46
   E04B2/72
   A47K4/00
   B29K105:08
【請求項の数】9
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-84571(P2016-84571)
(22)【出願日】2016年4月20日
(65)【公開番号】特開2017-193107(P2017-193107A)
(43)【公開日】2017年10月26日
【審査請求日】2018年12月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】519446458
【氏名又は名称】ブレクスプロダクツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(72)【発明者】
【氏名】澤田 雄次
【審査官】 ▲来▼田 優来
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−129260(JP,A)
【文献】 韓国登録特許第10−1592843(KR,B1)
【文献】 特開2001−220855(JP,A)
【文献】 特開2009−013628(JP,A)
【文献】 特開平6−315970(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C33/76,43/00−43/58,70/46
E04B2/72
A47K4/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1モールドに形成された第1キャビティ面と、第2モールドに形成された第2キャビティ面との間に配置され、前記第1キャビティ面及び前記第2キャビティ面と共に、ユニットバス用壁パネルを形作るキャビティ空間を形成する第3キャビティ面が形成された、前記ユニットバス用壁パネルを成形するためのプレス成形用入れ子であって、
前記プレス成形用入れ子は、弾性を有すると共に前記第1モールドと前記第2モールドとの型締めによって型締め方向において圧縮される、ユニットバス用壁パネルを成形するためのプレス成形用入れ子。
【請求項2】
成形材料は、樹脂ペーストを含浸させたシート材である、請求項1に記載の、ユニットバス用壁パネルを成形するためのプレス成形用入れ子。
【請求項3】
前記プレス成形用入れ子は、ゴム製の入れ子である、請求項1又は2に記載の、ユニットバス用壁パネルを成形するためのプレス成形用入れ子。
【請求項4】
第1モールドに形成された第1キャビティ面と、第2モールドに形成された第2キャビティ面との間に、弾性を有すると共に前記第1モールドと前記第2モールドとの型締めによって型締め方向において圧縮される入れ子と、成形材料とを配置するステップと、
前記第1モールドと前記第2モールドとを相対的に接近させて、前記第1モールドと前記第2モールドとを型締めすることによって、前記第1キャビティ面と、前記第2キャビティ面と、前記入れ子に形成された第3キャビティ面とにより、ユニットバス用壁パネルを形作るキャビティ空間を形成し、当該キャビティ空間で、前記入れ子及び前記成形材料を型締め方向において圧縮させることにより、前記ユニットバス用壁パネルを成形するステップと、
を有する、ユニットバス用壁パネルを成形するためのプレス成形方法。
【請求項5】
前記成形材料は、樹脂ペーストを含浸させたシート材である、請求項4に記載の、ユニットバス用壁パネルを成形するためのプレス成形方法。
【請求項6】
前記入れ子は、ゴム製の入れ子である、請求項4又は5に記載の、ユニットバス用壁パネルを成形するためのプレス成形方法。
【請求項7】
第1キャビティ面が形成された第1モールドと、
第2キャビティ面が形成された第2モールドと、
前記第1キャビティ面と第2キャビティ面の間に配置されて、前記第1キャビティ面及び前記第2キャビティ面と共に、ユニットバス用壁パネルを形作るキャビティ空間を形成する第3キャビティ面が形成された、前記ユニットバス用壁パネルを成形するための入れ子とを備え、
前記入れ子は、弾性を有すると共に前記第1モールドと前記第2モールドとの型締めによって型締め方向において圧縮される、ユニットバス用壁パネルを成形するためのプレス成形装置。
【請求項8】
前記成形材料は、樹脂ペーストを含浸させたシート材である、請求項7に記載の、ユニットバス用壁パネルを成形するためのプレス成形装置。
【請求項9】
前記入れ子は、ゴム製の入れ子である、請求項7又は8に記載の、ユニットバス用壁パネルを成形するためのプレス成形装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プレス成形用入れ子、プレス成形方法及びプレス成形装置に関する。
【背景技術】
【0002】
第1モールドと第2モールドとの間で成形材料をプレス成形する方法及び装置としては、例えば、第1モールド及び第2モールド(上金型及び下金型)を用意し、第1モールドと第2モールドとの間に、成形材料(シートモールディングコンパウンド)をセットし、加圧加熱してプレス成形品(ユニットバス用壁パネル)を得るための方法及び装置がある(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−36378号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記のような従来のプレス成形方法や装置では、サイズの異なる複数のプレス成形品を、同じモールドを使用して成形することが困難であった。また、ユニットバス用のパネルのように美観が求められる成形品を成形する場合、表面にパーティングライン等の凹凸が生じると、成形品の美観が損なわれる虞がある。
【0005】
本発明の目的は、同一のモールドを使用しつつも、外観が損なわれることなく、サイズの異なる複数のプレス成形品を得ることができる、プレス成形用入れ子、プレス成形方法及びプレス成形装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るプレス成形用入れ子は、第1モールドに形成された第1キャビティ面と、第2モールドに形成された第2キャビティ面との間に配置され、前記第1キャビティ面及び前記第2キャビティ面と共にキャビティ空間を形成する第3キャビティ面が形成されたプレス成形用入れ子であって、前記プレス成形用入れ子は、弾性を有すると共に前記第1モールドと前記第2モールドとの型締めによって型締め方向において圧縮されるものである。
本発明に係るプレス成形用入れ子を用いれば、同一のモールドを使用しつつも、外観が損なわれることなく、サイズの異なる複数のプレス成形品を得ることができる。
【0007】
本発明に係るプレス成形用入れ子では、成形材料を、樹脂ペーストを含浸させたシート材とすることができる。
この場合、安定した外観のプレス成形品を得ることができる。
【0008】
本発明に係るプレス成形用入れ子では、前記プレス成形用入れ子をゴム製の入れ子とすることができる。
この場合、サイズの異なる複数のプレス成形品を得ることできるプレス成形用入れ子を簡易かつ安価に提供することができる。
【0009】
本発明に係るプレス成形方法は、第1モールドに形成された第1キャビティ面と、第2モールドに形成された第2キャビティ面との間に、成形材料を配置するステップと、前記第1モールドに形成された前記第1キャビティ面と、前記第2モールドに形成された前記第2キャビティ面との間に、弾性を有すると共に前記第1モールドと前記第2モールドとの型締めによって型締め方向において圧縮される入れ子と、成形材料とを配置するステップと、前記第1モールドと前記第2モールドとを相対的に接近させて、前記第1モールドと前記第2モールドとを型締めすることによって、前記第1キャビティ面と、前記第2キャビティ面と、前記入れ子に形成された第3キャビティ面とによりキャビティ空間を形成し、当該キャビティ空間で、前記入れ子及び前記成形材料を型締め方向において圧縮させるステップと、を有する。
本発明に係るプレス成形方法によれば、同一のモールドを使用しつつも、外観が損なわれることなく、サイズの異なる複数のプレス成形品を得ることができる。
【0010】
本発明に係るプレス成形方法では、前記成形材料は、樹脂ペーストを含浸させたシート材とすることができる。
この場合、安定した外観のプレス成形品を得ることができる。
【0011】
本発明に係るプレス成形方法では、前記入れ子をゴム製の入れ子とすることができる。
この場合、サイズの異なる複数のプレス成形品を簡易かつ安価に得ることができる。
【0012】
本発明に係るプレス成形装置では、第1キャビティ面が形成された第1モールドと、第2キャビティ面が形成された第2モールドと、前記第1キャビティ面と第2キャビティ面の間に配置されて、前記第1キャビティ面及び前記第2キャビティ面と共にキャビティ空間を形成する第3キャビティ面が形成された入れ子とを備え、前記入れ子は、弾性を有すると共に前記第1モールドと前記第2モールドとの型締めによって型締め方向において圧縮されるものである。
本発明に係るプレス成形装置によれば、同一のモールドを使用しつつも、外観が損なわれることなく、サイズの異なる複数のプレス成形品を得ることができる。
【0013】
本発明に係るプレス成形装置では、前記成形材料は、樹脂ペーストを含浸させたシート材とすることができる。
この場合、安定した外観のプレス成形品を得ることができる。
【0014】
本発明に係るプレス成形装置では、前記入れ子をゴム製の入れ子とすることができる。
この場合、サイズの異なる複数のプレス成形品を簡易かつ安価に得ることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、同一のモールドを使用しつつも、外観が損なわれることなく、サイズの異なる複数のプレス成形品を得ることができる、プレス成形用入れ子、プレス成形方法及びプレス成形装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の一実施形態に係るプレス成形装置の一形態であって、第1モールド及び第2モールドの間に、本実施形態に係るプレス成形用入れ子と、成形材料とが配置された状態を示す断面図である。
図2図1の形態のプレス成形装置において、第1モールド及び第2モールドを型締めしてプレス成形品を成形した状態を示す断面図である。
図3】(a)〜(c)は、それぞれ、図1の形態のプレス成形装置を用いてプレス成形を行ったときの時系列的な作用を示す要部断面図である。
図4図1のプレス成形装置の他の形態であって、第1モールド及び第2モールドの間に、成形材料が配置された状態を示す断面図である。
図5図4の形態のプレス成形装置において、第1モールド及び第2モールドを型締めしてプレス成形品を成形した状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態に係る、プレス成形用入れ子、プレス成形方法及びプレス成形装置を説明する。
【0018】
図1及び図2中、符号10は、本発明の一実施形態に係るプレス成形装置を示す。プレス成形装置10は、サイズの小さなプレス成形品30aと、プレス成形品30aよりもサイズの大きなプレス成形品30bと、を得ることができる。本実施形態では、プレス成形品30a及び30bはそれぞれ、同一の厚みT1を有する、矩形のユニットバス用壁パネルである。
【0019】
図1及び図2に示すように、プレス成形装置10は、第1キャビティ面f1が形成された第1モールド11と、第2キャビティ面f2が形成された第2モールド12と、第1キャビティ面f1と第2キャビティ面f2との間に配置されて、第1キャビティ面f1及び第2キャビティ面f2と共にキャビティ空間C1を形成する第3キャビティ面f3が形成された入れ子(プレス成形用入れ子)13とを有する。
【0020】
図1に示すように、本実施形態では、第1モールド11は上型であり、第2モールド12は下型である。また、本実施形態では、第1モールド11は、第2モールド12に合わさる凹部Nを有する雌型であり、第2モールド12は、第1モールド11に合わさる凸部Pを有する雄型である。
【0021】
また、本実施形態では、第1モールド11の凹部Nは、矩形の平面11aと、平面11aを取り囲むように形成された4つの側面11b(図面の表裏に配置された2つの側面11bについては、図示省略。)と、で形作られている。第2モールド12の凸部Pは、矩形の平面12aと、平面12aを取り囲むように形成された4つの側面12b(図面の表裏に配置された2つの側面12bについては、図示省略。)と、で形作られている。
【0022】
第2モールド12の凸部Pの平面12aは、第1モールド11の凹部Nの平面11aと相似形である。このため、第1モールド11の凹部Nと第2モールド12の凸部Pと合わせて、第1モールド11と第2モールド12とを互いに接近させると、第1モールド11の凹部Nに第2モールド12の凸部Pを挿入させることができる。
【0023】
入れ子13は、弾性を有すると共に第1モールド11と第2モールド12との型締めによって圧縮される厚みT2を有する入れ子である。入れ子13は、第1モールド11と第2モールド12との型締めによって圧縮される弾性材料で形成されたものであれば、様々な材料を採用することができる。本実施形態では、入れ子13はゴム製の入れ子である。
【0024】
プレス成形装置10では、入れ子13は、厚みT2を有する矩形のパネルに形作られている。入れ子13は、第1モールド11の凹部Nの平面11a又は第2モールド12の凸部Pの平面12aと接触可能な、2つの平面13aを有している。2つの平面13aは、寸法T2だけ間隔を置いて配置されている。また、入れ子13は、2つの平面13aを取り囲むように形成された4つの側面13b(図面の表裏に配置された2つの側面13bについては、図示省略。)を有している。4つの側面13bのうちの3つの側面13bは、第1モールド11の凹部Nの4つの側面11bのうちの3つの側面11bに対して接触することができる。4つの側面13bのうちの1つの側面13bは、図1及び2に示すように、入れ子13と接触しない第1モールド11の凹部Nの側面11bに対して水平方向に間隔を置いて対向するように配置されている。
【0025】
このため、第1モールド11と第2モールド12との間に、入れ子13を配置し、第1モールド11と第2モールド12とを型締めすれば、図2に示すように、第1モールド11の凹部Nの平面11a及びその3つの側面11bと、第2モールド12の凸部Pの平面12aと、入れ子13の1つの側面13bと、で取り囲まれた、厚みT1を有する矩形のキャビティ空間C1が形成される。
【0026】
即ち、本実施形態では、第1モールド11と第2モールド12との間に、入れ子13を配置したとき、第1モールド11の凹部Nの平面11a及びその3つの側面11bは、第1キャビティ面f1を形成し、第2モールド12の凸部Pの平面12aは、第2キャビティ面f2を形成し、更に、入れ子13の1つの側面13bは、第3キャビティf3を形成する。
【0027】
また、本実施形態では、第1モールド11と第2モールド12との間に、入れ子13を配置することなく、第1モールド11と第2モールド12とを型締めすれば、図5に示すように、第1モールド11の凹部Nの平面11a及びその4つの側面11bと、第2モールド12の凸部Pの平面12aと、で取り囲まれた、厚みT1を有する矩形のキャビティ空間C2が形成される。
【0028】
即ち、プレス成形装置10では、第1モールド11と第2モールド12との間に、入れ子13を配置しないとき、第1モールド11の凹部Nの平面11a及びその4つの側面11bは、第1キャビティ面f1を形成し、第2モールド12の凸部Pの平面12aは、第2キャビティ面f2を形成する。
【0029】
本実施形態では、第2モールド12をプレス成形装置10のベース等の固定物に対して固定し、第1モールド11を、第2モールド12に対して接近及び離間させることができる。なお、本実施形態において、第1モールド11と第2モールド12との型締めは、第1モールド11と第2モールド12との少なくともいずれか一方を接近及び離間させればよい。
【0030】
図5のキャビティ空間C2はパネル形状を形作っている。詳細には、第1モールド11の凹部Nの平面11aと、第2モールド12の凸部Pの平面12aとがそれぞれ、プレス成形品30bの表面を形作り、第1モールド11の凹部Nの4つの側面11bがプレス成形品30bの外縁を形作っている。即ち、プレス成形品30bの厚みT1は、第1モールド11の凹部Nの平面11aと、第2モールド12の凸部Pの平面12aとの間の間隔で決定される。
【0031】
これに対し、図2のキャビティ空間C1は、キャビティ空間C2よりもサイズの小さいパネル形状を形作っている。詳細には、第1モールド11の凹部Nの平面11aと、第2モールド12の凸部Pの平面12aとがそれぞれ、プレス成形品30aの表面を形作り、第1モールド11の凹部Nの3つの側面11b及び入れ子13の1つの側面13bとがプレス成形品30aの外縁を形作っている。即ち、プレス成形品30aの厚みT1も、第1モールド11の凹部Nの平面11aと、第2モールド12の凸部Pの平面12aとの間の間隔で決定される。
【0032】
従って、第1モールド11と第2モールド12との間に入れ子13を配置したときも、プレス成形品30a及び30bの厚みT1を変更することなく、プレス成形品30aよりも、入れ子13を配置した分だけ、サイズの小さいプレス成形品30bを形成することができる。
【0033】
図1の符号40aは、プレス成形品30aの成形に用いられる成形材料である。図4の符号40bは、プレス成形品30bの成形に用いられる成形材料である。本実施形態では、成形材料40a及び40bは、それぞれ、樹脂ペーストを強化繊維に含浸させたシート材である。こうしたシート材には、繊維強化プラスチック(FRP)製のシート材が挙げられる。FRPの具体例としては、シートモールディングコンパウンド(SMC)が挙げられる。SMCは、基体樹脂に充填材、離型剤、硬化触媒などを混練した混合物に、増粘剤を混合した組成物をポリエチレンフィルム上に塗布し、この上に繊維(例えば、ガラス繊維)を敷き、両者を圧縮含浸させてシート状としてロール巻き又はつづら折りにし、タックフリーとしたものである。即ち、本発明に係るプレス成形には、SMC成形が含まれる。
【0034】
図1中、成形材料40aは、第1モールド11と第2モールド12との間でプレスされると、その体積を保ったまま、第1モールド11の凹部Nに形成された平面11aと、第2モールド12の凸部Pに形成された平面12aとに沿って、水平方向に広がるように変形する。入れ子13も同様に、第1モールド11と第2モールド12との間でプレスされると、その体積を保ったまま、第1モールド11の凹部Nに形成された平面11aと、第2モールド12の凸部Pに形成された平面12aとに沿って、水平方向に広がるように変形する。
【0035】
即ち、図1及び2に示すように、第1モールド11と第2モールド12との間に入れ子13を配置したプレス成形では、成形材料40aの厚みと、入れ子13の厚みT2とは、成形材料40aの体積と入れ子13の体積との和がキャビティ空間C2の体積を超えない範囲で、プレス成形品30aの厚みT1の設計寸法、プレス成形装置として与えられる第1モールド11(及び第2モールド12)の型締力、入れ子13の材質等に応じて適宜設定する。
【0036】
また、図4及び5に示すように、第1モールド11と第2モールド12との間に入れ子13を配置しないプレス成形では、成形材料40bの厚みは、成形材料40bの体積がキャビティ空間C2の体積を超えない範囲で、プレス成形品30bの厚みT1の設計寸法、プレス成形装置として与えられる第1モールド11(及び第2モールド12)の型締力等に応じて適宜設定する。
【0037】
ここで、図1図5を参照して、本発明の一実施形態に係るプレス成形方法を実施可能な、本発明の一実施形態に係るプレス成形装置10を用いて、異なるサイズのプレス成形品30a及び30bを製造する方法について説明する。
【0038】
先ず、図5のプレス成形品30bよりも表面積の小さなパネル形状のプレス成形品30aを成形する場合について説明する。この場合、入れ子13を配置した、図1〜3に示す形態のプレス成形装置10を用いて、本発明の一実施形態に係るプレス成形方法を実行する。
【0039】
第1のステップでは、図1に示すように、第1モールド11に形成された第1キャビティ面f1と、第2モールド12に形成された第2キャビティ面f2との間に、弾性を有すると共に第1モールド11と第2モールド12との型締めによって圧縮される厚みT2を有する入れ子13と、成形材料40aとを配置する。
【0040】
本実施形態では、第1のステップにおいて先ず、入れ子13を配置する。入れ子13は、例えば、第1モールド11を第2モールド12から外して第2モールド12の凸部Pに形成された平面12a上に配置することができる。次いで、本実施形態では、第1のステップにおいて、成形材料40aを配置する。成形材料40aは、本実施形態のようにシート状とすることにより、第2モールド12の凸部Pに形成された平面12a上に、入れ子13が配置された分だけ、第2モールド12の凸部Pの全平面12aよりも狭い範囲に、折り重ねた状態で配置することができる。
【0041】
本実施形態では、第1ステップでは、第1モールド11を第2モールド12から外したままで、順次実行することが好ましい。また、本実施形態では、第1キャビティ面f1と第2キャビティ面f2との間に、成形材料40aを配置した後、入れ子13を配置することもできる。即ち、本発明のプレス成形方法では、入れ子13と成形材料40aとを配置する順番を前後させることができる。
【0042】
次いで、第2のステップでは、図2に示すように、第1モールド11と第2モールド12とを相対的に接近させて、第1モールド11と第2モールド12とを型締めすることによって、第1キャビティ面f1と、第2キャビティ面f2と、入れ子13に形成された第3キャビティ面f3とによりキャビティ空間C1を形成し、当該キャビティ空間C1で、入れ子13及び成形材料40aを圧縮させて、プレス成形品30aを得る。
【0043】
本実施形態では、第2のステップにおいて、成形材料40aを加熱すると共に、図3(a)、(b)及び(c)の時系列に従い、第1モールド11を第2モールド12に接近させることによって、第1モールド11に形成された第1キャビティ面f1と、第2モールド12に形成された第2キャビティ面f2とにより、入れ子13及び成形材料40aをプレスして入れ子13及び成形材料30aを、図2に示すように圧縮量Δt1まで圧縮させる。
【0044】
詳細には、先ず、図3(a)に示すように、成形材料40aを圧縮する。このとき、成形材料40aは、その体積を保ったまま、第1モールド11の凹部Nに形成された平面11aと、第2モールド12の凸部Pに形成された平面12aとに沿って、水平方向に広がるように変形する。
【0045】
図3(a)の状態からプレスが進むと、図3(b)に示すように、入れ子13の圧縮を開始する。このとき、成形材料40aは、その体積を保ったまま、第1モールド11の凹部Nに形成された平面11aと、第2モールド12の凸部Pに形成された平面12aとに沿って、水平方向に広がるように変形する。
【0046】
図3(b)の状態から、更にプレスが進むと、成形材料40aと共に入れ子13を圧縮する。このとき、入れ子13も、その体積を保ったまま、第1モールド11の凹部Nに形成された平面11aと、第2モールド12の凸部Pに形成された平面12aとに沿って、水平方向に広がるように変形する。
【0047】
そして、図3(c)の状態に達すると、第1モールド11に形成された第1キャビティ面f1と、第2モールド12に形成された第2キャビティ面f2と、入れ子13に形成された第3キャビティ面f3とで区画されたキャビティ空間C1の形状に形作られた、厚みT1を有する、プレス成形品30bに対比して表面積の小さなプレス成形品30aを得ることができる。
【0048】
次いで、プレス成形品30aよりも表面積が大きなパネル形状の成形品30bを成形する場合について説明する。この場合、入れ子13を配置しない、図4及び5に示す形態のプレス成形装置10を用いる。
【0049】
第1のステップでは、図4に示すように、第1モールド11に形成された第1キャビティ面f1と、第2モールド12に形成された第2キャビティ面f2との間に、成形材料40bを配置する。本実施形態では、第1モールド11を第2モールド12から外して第2モールド12の凸部Pに形成された平面12a上に、シート状の成形材料40bを折り重ねた状態で配置している。
【0050】
次いで、第2のステップでは、図5に示すように、第1モールド11と第2モールド12とを相対的に接近させて、第1モールド11と第2モールド12とを型締めすることによって、第1キャビティ面f1と、第2キャビティ面f2とによりキャビティ空間C2を形成し、当該キャビティ空間C2で、成形材料40bを圧縮する。この例では、第2のステップにおいて、成形材料40bを加熱すると共に、第1モールド11を第2モールド12に接近させることによって、第1モールド11のキャビティ面f1と、第2モールド12のキャビティ面f2とにより、成形材料40bをプレスして成形材料40bを圧縮させて、プレス成形品30bを得る。
【0051】
詳細には、成形材料40bを圧縮する。このとき、成形材料40bは、その体積を保ったまま、第1モールド11の凹部Nに形成された平面11aと、第2モールド12の凸部Pに形成された平面12aとに沿って、水平方向に広がるように変形する。
【0052】
これにより、図5に示すように、第1モールド11に形成された第1キャビティ面f1と、第2モールド12に形成された第2キャビティ面f2と、で区画されたキャビティ空間C2の形状に形作られた、厚みT1を有する、表面積の大きなプレス成形品30bを得ることができる。
【0053】
プレス成形品30a及び30bのような、サイズの異なるプレス成形品を得ようとする場合、サイズに応じて複数のモールドを準備することはコスト面等で不利である。
【0054】
また、大きめのモールドを用いることにより、予め大きめのプレス成形品を得ておき、このプレス成形品を、所望のサイズに合わせて裁断することは、裁断に要する切断代が無駄になり、更に裁断後に余った部分が生じると廃棄物となる。
【0055】
一方、金属製の入れ子を用いることにより、同一のモールドのキャビティ空間の大きさを変更させる方法も考えられる。しかしながら、金属製の入れ子を用いる場合、例えば、キャビティ面に凹所を形成し、当該凹所に入れ子を挿入するなどして、成形材料のプレスに要するモールドの移動量を確保する必要があるが、プレス成形品に入れ子と凹所との間に形成される隙間に沿ったパーティングラインが形成されてしまうことがある。また、金属製の入れ子は、形状変化に自由度がないため、既存のモールドに適用することが困難な場合がある。更に、入れ子の交換は、モールドに対するセット性が悪いと、入れ子の交換作業に時間を労してしまう。
【0056】
加えて、金属製の入れ子を用いる場合、入れ子がモールドからの圧力を受けてモールドの型締めが制限されてしまうと、モールドからの成形圧力が成形材料に適正に加わらないため、成形品に外観不良が生じる虞がある。特に、成形材料がSMCの場合、成形品の外観形状を安定させるため、成形品に若干のカット部分(バリ)が生じるように、例えば、第1モールド及び第2モールドは、これらを型締めしたときに、第1モールドと第2モールドとの合わせ部分で形作られる輪郭部分に断面楔形状の隙間が生じるように構成されている(シェアエッジ構造)。この場合、モールドからの成形圧力が適正に加わった成形材料は、断面楔形状の隙間を流れつつその流動は楔形の先端部分で止まることで成形品に若干のバリを生じさせることができる。しかしながら、入れ子の厚みを薄くしてモールドからの成形圧力が成形材料に適正に加わるようにしようとする場合、成形材料の流動が入れ子の部分を堰として抑えられない虞がある。
【0057】
これに対し、本実施形態に係る入れ子13は、第1モールド11に形成された第1キャビティ面f1と、第2モールド12に形成された第2キャビティ面f2との間に配置され、第1第1キャビティ面f1及び第2キャビティ面f2と共にキャビティ空間C1を形成する第3キャビティ面f3が形成されたプレス成形用入れ子であって、弾性を有すると共に第1モールド11と第2モールド12との型締めによって圧縮される厚みT2を有する。
【0058】
本実施形態に係る入れ子13を用いれば、同一の第1モールド11及び第2モールド12を使用しつつも、サイズの異なる複数のプレス成形品(30a,30b)を得ることができるので、コスト面等で有利である。
【0059】
また、本実施形態に係る入れ子13を用いれば、予め大きめのプレス成形品を成形しておき、このプレス成形品を、所望のサイズに合わせて裁断する必要がない。このため、裁断に要する切断代が無駄にならず、更に、裁断後に余った部分が生じないために廃棄物が出ることがなく、ひいては、成形材料の大幅な削減が可能となる。
【0060】
また、本実施形態に係る入れ子13は、弾性を有していることから、例えば、第1キャビティ面f1又は第2キャビティ面f2に、入れ子13を位置決めするための凹所を形成しなくとも、外力が加わったときの形状変化によって、入れ子13とモールド(11,12)との間の隙間がシールされる。このため、結果物としてのプレス成形品30aには、入れ子13とモールド(11,12)との間に形成される隙間に沿ってパーティングラインが形成されない。また、入れ子13は、単に第1キャビティ面f1又は第2キャビティ面f2に載せ置くだけでセットできる。このため、図4に例示する、第1モールド11及び第2モールド12のみの基本的な構成のプレス成形装置のような、既存のプレス成形装置(モールド)に適用することが容易である。更に、入れ子13には、例えば、ゴム等の弾性材料を適用できる。弾性材料は、金属材料と対比して軽量であるため、セットの作業性が良く、入れ子の交換作業に時間を労しないほか、クレーン等の機械を使用せずに済む。
【0061】
更に、入れ子13が弾性を有するため、プレス成形された後の、プレス成形品30aの厚みT1が入れ子13の厚みT2よりも薄くなるように、入れ子13の厚みT2を設定しても、入れ子13に生じる圧縮分Δt1が第1モールド11と、第2モールド12の移動を許容するため、第1モールド11からの成形圧力及び第2モールド12からの成形圧力が成形材料に適正に加わり、プレス成形品30aに外観不良が生じ難い。特に、成形材料40aがSMCの場合、第1モールド11及び第2モールド12をシェアエッジ構造としても、入れ子13が圧縮されることで、第1モールド11と入れ子13との接触部分と、第2モールド12と入れ子13との接触部分と、がシールされる。このため、成形材料40aの流動が入れ子13の変形部分を堰として抑えられる。これにより、第1モールド11からの成形圧力及び第2モールド12からの成形圧力が適正に加わった成形材料40aは、断面楔形状の隙間を流れつつその流動は断面楔形状の先端部分は勿論、入れ子13の変形部分でも止まることで、プレス成形品30aの外観形状を安定させるため、プレス成形品30aに若干のカット部分(バリ)を生じさせることができる。
【0062】
このように、本実施形態に係る入れ子13を用いた、本実施形態に係る、プレス成形方法及びプレス成形装置によれば、同一の第1モールド11及び第2モールド12を使用しつつも、外観が損なわれることなく、サイズの異なる複数のプレス成形品30a及び30bを得ることができる。
【0063】
更に、本実施形態に係る入れ子13を用いた、本実施形態に係る、プレス成形方法及びプレス成形装置のように、成形材料40aが、樹脂ペーストを含浸させたシート材である場合も、安定した外観のプレス成形品30aを得ることができる。
【0064】
また、本実施形態に係る入れ子13を用いた、本実施形態に係る、プレス成形方法及びプレス成形装置では、当該入れ子13は、ゴム製の入れ子である。
【0065】
ここで、ゴム製の入れ子13の製造方法を説明する。
【0066】
本実施形態では、まず、未加硫ゴムを原料として用い、実施したいモールド(11,12)で基本となるゴム製品を加硫成形する。ここで、ゴム入れ子は、プレス成形品30a及び30bの厚みT1よりも若干厚く製造する。また、加硫成形の条件は、ゴムの成形条件に準じて決定する。
【0067】
次いで、加硫成形されたゴム製品を、入れ子にしたい部分で切断し、本実施形態に係る入れ子13が完成する。
【0068】
このように、本実施形態に係る入れ子13として、ゴム製の入れ子を用いれば、サイズの異なるプレス成形品30a及び30bを得るためのプレス成形用入れ子を簡易かつ安価に提供することができる。本実施形態に係る入れ子13を用いた、本実施形態に係る、プレス成形方法及びプレス成形装置によれば、サイズの異なる複数のプレス成形品30a及び30bを簡易かつ安価に得ることができる。
【0069】
上述したところは、本発明の実施形態の例示であって、特許請求の範囲の記載によれば、種々の変更が可能である。例えば、プレス成形品は、ユニットバス用壁パネルに限定されることなく、キャビティ空間C1及びC2の形状もパネル形状に限定されることなく、様々な形状とすることができる。成形材料もプレス成形に用いられるものであれば、樹脂ペーストを含浸させたシート材に限定されない。また、入れ子の形状も、本明細書に開示した形状に限定されることなく、第1及び第2キャビティ面の形状に応じて段差を設ける等、適宜変更することができる。第1モールド11及び第2モールド12の材質も、鉄、鋼又は鋳鉄等の金属の他、成形材料等に応じて適宜、選択することができる。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明は、成形材料をプレス成形するための、プレス成形用入れ子、プレス成形方法及びプレス成形装置として利用することができる。
【符号の説明】
【0071】
10;(本発明の一実施形態に係る)プレス成形装置, 11;第1モールド, 11a;第1モールドの凹部の平面(第1キャビティ面), 11b;第1モールドの凹部の側面(第1キャビティ面), 12;第2モールド, 12a;第2モールドの凸部の平面(第2キャビティ面), 12b;第2モールドの凸部の側面, 13;入れ子(プレス成形用入れ子), 13a;入れ子の平面, 13b;入れ子の側面(第3キャビティ面), 30a;(入れ子を用いて成形した)プレス成形品, 30b;(入れ子を用いることなく成形した)プレス成形品, 40a;(入れ子を用いたプレス成形に使用される)成形材料, 40b;(入れ子を用いないプレス成形に使用される)成形材料, C1;(入れ子を用いて区画された)キャビティ空間, C2;(入れ子を用いることなく区画された)キャビティ空間, f1;第1キャビティ面, f2;第2キャビティ面, f3;第3キャビティ面, N;第1モールドの凹部, P;第2モールドの凸部, T1;プレス成形品の厚み, T2;入れ子の厚み, Δt1;入れ子の圧縮量
図1
図2
図3
図4
図5