特許第6682346号(P6682346)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6682346
(24)【登録日】2020年3月27日
(45)【発行日】2020年4月15日
(54)【発明の名称】紫外線照射装置
(51)【国際特許分類】
   C02F 1/32 20060101AFI20200406BHJP
【FI】
   C02F1/32
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2016-98142(P2016-98142)
(22)【出願日】2016年5月16日
(65)【公開番号】特開2017-205686(P2017-205686A)
(43)【公開日】2017年11月24日
【審査請求日】2019年3月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】504190548
【氏名又は名称】国立大学法人埼玉大学
(73)【特許権者】
【識別番号】390014074
【氏名又は名称】前澤工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100128358
【弁理士】
【氏名又は名称】木戸 良彦
(74)【代理人】
【識別番号】100086210
【弁理士】
【氏名又は名称】木戸 一彦
(72)【発明者】
【氏名】鎌田 憲彦
(72)【発明者】
【氏名】松本 公寿
【審査官】 山崎 直也
(56)【参考文献】
【文献】 特表2015−514001(JP,A)
【文献】 特開2014−065211(JP,A)
【文献】 特開2016−010789(JP,A)
【文献】 特開2013−240487(JP,A)
【文献】 特開2011−016074(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2014/0265039(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 1/20− 1/26
1/30− 1/38
1/70− 1/78
B01J 10/00−12/02
14/00−19/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状の処理槽の内部に複数の紫外線LEDを配置して処理槽内を流れる被処理水に紫外線を照射する紫外線照射装置において、前記処理槽の内部に、幅寸法が処理槽の直径より短く、かつ、半径より長く設定された複数のLED支持基板を、処理槽の周方向に隣接するLED支持基板同士を互いに組み合わせて、一つのLED支持基板の内端縁を隣接する一方のLED支持基板の裏面に当接させ、該一つのLED支持基板の裏面には隣接する他方のLED支持基板の内端縁を当接させるようにして処理槽の中央に通路を形成する状態で、処理槽の軸線を対称軸とした回転対称の状態で組み合わせて収納し、各LED支持基板の面に複数の紫外線LEDを配置するとともに、処理槽の内面及びLED支持基板の両面を紫外線反射面としたことを特徴とする紫外線照射装置。
【請求項2】
前記複数の紫外線LEDは、前記LED支持基板の幅方向に複数列が設けられていることを特徴とする請求項1記載の紫外線照射装置。
【請求項3】
前記複数の紫外線LEDは、隣接する列の紫外線LEDが千鳥配置されていることを特徴とする請求項2記載の紫外線照射装置。
【請求項4】
前記複数の紫外線LEDは、少なくとも一部の紫外線LEDの光軸が、前記LED支持基板の表面に対して傾斜して設けられていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載の紫外線照射装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紫外線照射装置に関し、詳しくは、浄水処理や下水処理等において、紫外線を用いて水中の微生物の殺菌や有機物の酸化を行う紫外線照射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、紫外線を照射して、水に含まれる微生物や病原性原虫の殺菌や消毒をする紫外線照射水処理装置が開発されており、この紫外線照射水処理装置として、被処理水が流通する処理槽の水路内に、紫外線光源を設置して紫外線照射を行うものが知られている。紫外線光源として、近年は、紫外線LEDが注目されている。紫外線LEDを用いた紫外線照射水処理装置としては、処理槽となる管体の内周に多数の紫外線LEDを配置したものが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2009−532200号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、処理槽の内周面に複数の紫外線LEDを適当に配置しただけでは十分な紫外線照射効率を得ることができず、各種条件に応じて紫外線LEDの配置状態を最適化することにより、紫外線LEDの設置数を最小化し、消費電力の低減を図りながら、紫外線照射水処理装置の効率向上を図ることができる。
【0005】
そこで本発明は、処理槽の内部に配置する紫外線LEDの配置状態を最適化した紫外線照射装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の紫外線照射装置は、円筒状の処理槽の内部に複数の紫外線LEDを配置して処理槽内を流れる被処理水に紫外線を照射する紫外線照射装置に
おいて、前記処理槽の内部に、幅寸法が処理槽の直径より短く、かつ、半径より長く設定された複数のLED支持基板を、処理槽の周方向に隣接するLED支持基板同士を互いに組み合わせて、一つのLED支持基板の内端縁を隣接する一方のLED支持基板の裏面に当接させ、該一つのLED支持基板の裏面には隣接する他方のLED支持基板の内端縁を当接させるようにして処理槽の中央に通路を形成する状態で、処理槽の軸線を対称軸とした回転対称の状態で組み合わせて収納し、各LED支持基板の面に複数の紫外線LEDを配置するとともに、処理槽の内面及びLED支持基板の両面を紫外線反射面としたことを特徴としている。
【0007】
さらに、本発明の紫外線照射装置は、前記複数の紫外線LEDが前記LED支持基板の幅方向に複数列が設けられていること、前記複数の紫外線LEDが隣接する列の紫外線LEDが千鳥配置されていること、前記複数の紫外線LEDは、少なくとも一部の紫外線LEDの光軸が、前記LED支持基板の表面に対して傾斜して設けられていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0008】
本発明の紫外線照射装置によれば、処理槽内を流れる被処理水に対して効率よく紫外線処理を行うことができる。これにより、紫外線LEDの設置数を最小化し、消費電力の低減を図りながら、紫外線処理効率の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の紫外線照射装置の第1形態例を示す断面正面図である。
図2】同じく断面側面図である。
図3】幅方向両側列の紫外線LEDの傾斜角度と、処理槽内に照射された紫外線量との関係を示す図である。
図4】紫外線LEDの配置状態の第2形態例を示す部分平面図である。
図5】同じく一端から奇数番目の紫外線LEDの配置状態を示す説明図である。
図6】同じく一端から偶数番目の紫外線LEDの配置状態を示す説明図である。
図7】各紫外線LEDの傾斜角度を変化させて紫外線量を測定した結果を示す図である。
図8】紫外線LEDの配置状態の第3形態例を示す部分平面図である。
図9】同じく一端から奇数番目の紫外線LEDの配置状態を示す説明図である。
図10】同じく一端から偶数番目の紫外線LEDの配置状態を示す説明図である。
図11】第3形態例における中央の紫外線LED同士の間隔を20mm、LED支持基板の幅方向中央と中央部の紫外線LED間の中心との距離を9mmとしたときの紫外線量を測定した結果を示す図である。
図12】第3形態例における中央の紫外線LED同士の間隔を変化させて紫外線量を測定した結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1及び図2は、本発明の紫外線照射装置の第1形態例を示している。紫外線照射装置11は、円筒状の処理槽12の内部に、長方形状の4枚のLED支持基板13,13を組み合わせて結合した状態で収納している。各LED支持基板13は、処理槽12の軸線方向の長さが処理槽12の長さより短く設定され、幅寸法は、処理槽12の直径より短く、半径より長く形成されており、処理槽12の中央に水密状態の断面正方形の角筒通路14を形成する状態で、処理槽12の軸線を対称軸とした4回回転対称の状態で組み合わされている。
【0011】
処理槽12の周方向に隣接するLED支持基板13同士は、互いに直角方向に組み合わされ、一つのLED支持基板13の内端縁13aを、隣接する一方のLED支持基板13の裏面13bに当接させ、該一つのLED支持基板13の裏面には、隣接する他方のLED支持基板13の内端縁13cが当接した状態になっている。
【0012】
各LED支持基板13の表面には、各LED支持基板13の幅方向に3列に並んだ状態で複数の紫外線LED15,16,17が、幅方向両側列の紫外線LED15,17に対して隣接する中央列の紫外線LED16が半ピッチずれた状態で千鳥配置されている。
【0013】
また、中央列の紫外線LED16は、LED支持基板13の表面から垂直方向に紫外線を照射する状態で設けられ、幅方向両側列の紫外線LED15,17は、中央列の紫外線LED16から照射する紫外線に対して離れる方向に紫外線を照射する状態で傾斜して設けられている。各紫外線LED15,16,17における傾斜角度は、処理槽12の内径やLED支持基板13の大きさ、紫外線LED15〜17の設置数、設置間隔などの条件によって適宜設定することができる。
【0014】
さらに、処理槽12の内周面及び各LED支持基板13の表裏両面は、紫外線を反射する材料で形成され、あるいは、紫外線を反射する処理が施されており、各紫外線LED15〜17から照射された紫外線は、反射しながら処理槽12内を流れる被処理水の紫外線処理を行えるように形成されている。
【0015】
処理槽12の中央に設けられた角筒通路14内には、処理槽12の中央を、水密状態で軸線方向に貫通する角軸18が挿通されており、該角軸18内や角筒通路14内には、紫外線LED15〜17への電源ケーブル(図示せず)が挿通されている。
【0016】
このように形成した紫外線照射装置11は、処理槽12の中央から四方に延びる状態で設けた4枚のLED支持基板13の表面に複数の紫外線LED15〜17をそれぞれ配置しているので、隣接する直交状態の2枚のLED支持基板と処理槽12の内周面とに囲まれた1/4円の区画内を流れる被処理水の全体に効果的に紫外線を照射することができる。
【0017】
これにより、被処理水の紫外線処理を効率よく行うことができ、紫外線LED15〜17の設置数を最小化し、消費電力の低減を図りながら、紫外線処理効率の向上を図ることができる。また、紫外線LED15〜17の電源ケーブルを中央の角筒通路14内に収納できるので、電気配線も容易に行うことができる。
【0018】
図3は、幅方向両側列の紫外線LED15,17の傾斜角度と、処理槽12内に照射された紫外線量との関係を示すものである。この結果から、紫外線LED15,17の傾斜角度は、約40度が最適であることがわかる。
【0019】
図4乃至図6は、紫外線LEDの配置状態の第2形態例を示している。この配置例では、処理槽軸線方向の一端から1番目A、3番目Cといった奇数番目の紫外線LED15,17は、図5に示すように、基板中央から離れる方向に紫外線を照射するように配置し、2番目B、4番目Dといった偶数番目の紫外線LED15,17は、図6に示すように、基板中央に向かって紫外線を照射するように配置している。
【0020】
また、中央列には、2個の紫外線LED16a,16bを、奇数番目は互いに離れる方向に紫外線を照射するように配置し、偶数番目は互いに近付く方向(交叉する方向)に紫外線を照射するように配置している。
【0021】
このように配置した各紫外線LEDの傾斜角度を変化させて紫外線量を測定した結果を図7に示す。この結果から、この配置状態における傾斜角度は、約35度が最適であることがわかる。
【0022】
図8乃至図10は、紫外線LEDの配置状態の第3形態例を示している。この配置例は、両側の前記第2形態例と同様に、紫外線LED15,17は、奇数番目は基板中央から離れる方向に、偶数番目は基板中央に向かう方向にそれぞれ傾斜させて配置し、中央列の紫外線LED16a,16bは、基板中央部から離れた部分に位置する一方の紫外線LED16aは基板表面に直交する方向に、他方の基板中央部に近い紫外線LED16bは、一方の紫外線LED16aの紫外線から離れる方向に紫外線を照射するようにそれぞれ配置している。
【0023】
ここで、LED支持基板の幅寸法を120mm、一方の紫外線LED15を一側から10mm、他方の紫外線LED17を他側から10mmの位置に配置し、紫外線LED16a,16bの間隔を20mmとしたときに、LED支持基板の幅方向中央CLから紫外線LED16a,16bを距離m移動させて紫外線量を測定したところ、m=6mmでは5.151、m=9mmでは5.456、m=12mmでは5.313となり、m=9mm程度が最適であることがわかった。このときの処理槽内の紫外線量を測定した結果を図11に示す。
【0024】
さらに、m=9mmとし、紫外線LED16a,16b間の間隔を変化させたときの紫外線量を測定した結果を図12に示す。この結果から、紫外線LED16a,16bの間隔は20mm程度が最適であることがわかる。
【0025】
なお、LED支持基板の枚数は、複数のLED支持基板を組み合わせて中央に配線用の通路を形成することができれば任意であり、処理槽の内径や長さ、被処理水の流量などの各種条件に応じて適宜選択することができる。また、各LED支持基板に設ける紫外線LEDは、列数を含む設置数や、照射方向を含む配置状態も任意であり、各種条件に応じて適宜設定することができる。さらに、使用する紫外線LEDは、一般的なものを使用することができる。
【符号の説明】
【0026】
11…紫外線照射装置、12…処理槽、13…LED支持基板、13a…内端縁、14…角筒通路、15,16,16a,16b,17…紫外線LED、18…角軸
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
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