特許第6682352号(P6682352)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6682352プレストング装置、およびプレストング装置を備えた成形機
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6682352
(24)【登録日】2020年3月27日
(45)【発行日】2020年4月15日
(54)【発明の名称】プレストング装置、およびプレストング装置を備えた成形機
(51)【国際特許分類】
   B30B 9/28 20060101AFI20200406BHJP
【FI】
   B30B9/28 Z
   B30B9/28 G
【請求項の数】6
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2016-102625(P2016-102625)
(22)【出願日】2016年5月23日
(65)【公開番号】特開2017-209686(P2017-209686A)
(43)【公開日】2017年11月30日
【審査請求日】2019年2月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000163095
【氏名又は名称】極東開発工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100074332
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 昇
(74)【代理人】
【識別番号】100114432
【弁理士】
【氏名又は名称】中谷 寛昭
(74)【代理人】
【識別番号】100138416
【弁理士】
【氏名又は名称】北田 明
(72)【発明者】
【氏名】山根 哲
(72)【発明者】
【氏名】上山 真喜
(72)【発明者】
【氏名】畠中 幸彦
(72)【発明者】
【氏名】新居 健次郎
(72)【発明者】
【氏名】野崎 成年
【審査官】 石川 健一
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−229284(JP,A)
【文献】 国際公開第2016/018142(WO,A1)
【文献】 特開2003−053726(JP,A)
【文献】 独国実用新案第29822904(DE,U1)
【文献】 欧州特許出願公開第0509381(EP,A2)
【文献】 欧州特許出願公開第1118455(EP,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B30B 9/28
B30B 9/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理物が投入される成形機に付設されて、該成形機から送られてくる被処理物を減容させるプレストング装置であって、
前記被処理物の圧縮路を対向壁どうしで形成する一対のトング部材と、前記圧縮路の下流側ほど断面積が縮小されるように、少なくとも一方のトング部材を押圧して他方のトング部材に対して位置保持させる押圧手段とを備え、
前記一対のトング部材のうち、少なくとも前記一方のトング部材が、前記他方のトング部材に対し、前記対向壁どうしを対向させた状態、および露出させた状態の二状態となるよう開閉移動可能に構成され、
前記押圧手段は、開閉移動可能な前記トング部材の開閉移動領域から退避可能に設けられていることを特徴とするプレストング装置。
【請求項2】
前記一方のトング部材が回動可能に構成されて、前記他方のトング部材に対し開閉移動可能とされ、
前記押圧手段は、前記他方のトング部材に対し前記一方のトング部材側に配置されて、前記一方のトング部材の回動による開閉移動領域から退避可能に設けられている請求項1に記載のプレストング装置。
【請求項3】
前記押圧手段は支軸回りに揺動可能に構成され、前記支軸が前記一方のトング部材の回動による開閉移動領域から外れた位置に配置されている請求項2に記載のプレストング装置。
【請求項4】
前記支軸は前記一方のトング部材に対し離間して該一方のトング部材側に配置され、
前記押圧手段は、前記支軸回りの揺動により先端部を前記一方のトング部材の外面である被押圧面に接触させた押圧姿勢、および先端部を前記被押圧面から離脱した押圧解除姿勢に切替え可能とされ、
前記押圧手段の押圧姿勢における押圧力を保持させる押圧力保持手段を備え、該押圧力保持手段は、前記支軸が取付けられる一方取付部と、前記他方のトング部材に取付けられる他方取付部とを備え、
前記押圧手段の押圧姿勢において、前記支軸、前記押圧手段の先端部、および前記押圧力保持手段の他方取付部は直線上に配置される請求項3に記載のプレストング装置。
【請求項5】
前記押圧手段は杆状であって、長手方向の長さを調節可能とされている請求項1ないし請求項4の何れか1項に記載のプレストング装置。
【請求項6】
請求項1〜5の何れか1項に記載のプレストング装置を備えたことを特徴とする成形機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被処理物が投入される成形機に付設されて、成形機から下流側へ送られる被処理物を減容させるプレストング装置、および当該プレストング装置を備えた成形機に関する。
【背景技術】
【0002】
この種のプレストング装置が、特許文献1に提案されている。特許文献1のプレストング装置は、被処理物の圧縮路を対向壁どうしで形成する一対のトング部材と、圧縮路の下流側ほど断面積が縮小されるように、一方のトング部材を押圧して他方のトング部材に対して位置保持させる押圧手段(押圧用シリンダ)とを備えている。
【0003】
この場合、一対のトング部材は、上トング部材および下トング部材であり、上トング部材は、下トング部材に接離方向に回動可能に構成され、押圧手段の支持部は、下トング部材に固定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−53726号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1には、上トング部材を下トング部材に接離方向に回動可能にした構成を用い、減容処理作業を終了する際には、上トング部材を押圧手段で押圧して圧縮路を縮径しておくことで、減容処理作業を再開する際に、対向壁に被処理物が固着するよう残存してたたとしても、圧縮路を拡径させることで、対向壁に固着した被処理物が対向壁から剥がれて取除かれる、という記載がある。
【0006】
しかしながら、上記のように、縮径しておいた圧縮路を拡径させるだけでは、対向壁に固着している被処理物の残留物を充分に取除くことはできない。また、押圧手段の支持部は、下トング部材に固定されている。このため上トング部材は、圧縮路を拡径、縮径できる程度しか回動できず、対向壁に固着している被処理物を充分に取除くことはできない。
【0007】
そこで本発明は、トング部材の対向壁に付着した被処理物の残留物を確実に取除くことのできるプレストング装置、およびプレストング装置を備えた成形機の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のプレストング装置は、被処理物が投入される成形機に付設されて、該成形機から送られてくる被処理物を減容させるプレストング装置であって、前記被処理物の圧縮路を対向壁どうしで形成する一対のトング部材と、前記圧縮路の下流側ほど断面積が縮小されるように、少なくとも一方のトング部材を押圧して他方のトング部材に対して位置保持させる押圧手段とを備え、前記一対のトング部材のうち、少なくとも前記一方のトング部材が、前記他方のトング部材に対し、前記対向壁どうしを対向させるあるいは露出させるよう開閉移動可能に構成され、前記押圧手段は、開閉移動可能な前記トング部材の開閉移動領域から退避可能に設けられていることを特徴としている。
【0009】
上記構成を備えた本発明のプレストング装置において、圧縮路を下流側ほど断面積が縮小されるよう、少なくとも一方のトング部材が他方のトング部材に対して押圧手段で押圧されて位置保持されていることで、成形機から送られてくる被処理物が圧縮路を通過する間に圧縮されて減容される。
【0010】
上記構成を備えた本発明のプレストング装置において、双方のトング部材の対向壁面であって、圧縮路を形成する対向壁面に付着して残存している被処理物を除去するために、押圧手段による押圧を解除し、開閉移動可能なトング部材を開閉移動させる際、押圧手段が開閉移動可能なトング部材の開閉移動領域から退避することで、少なくとも一方のトング部材を、他方のトング部材に対し押圧手段に干渉させることなく開いて、双方のトング部材の対向壁面を露出させられる。
【0011】
本発明のプレストング装置では、前記一方のトング部材が回動可能に構成されて、前記他方のトング部材に対し開閉移動可能とされ、前記押圧手段は、前記他方のトング部材に対し前記一方のトング部材側に配置されて、前記一方のトング部材の回動による開閉移動領域から退避可能に設けられた構成を採用できる。
【0012】
上記構成を備えたプレストング装置において、押圧手段は一方のトング部材の回動による開閉移動領域から退避可能に設けられていることから、他方のトング部材に対し、一方のトング部材を押圧手段に干渉させることなく回動させて、双方のトング部材の対向壁面を露出させられる。
【0013】
本発明のプレストング装置では、前記押圧手段は支軸回りに揺動可能に構成され、前記支軸が前記一方のトング部材の回動による開閉移動領域から外れた位置に配置された構成を採用できる。
【0014】
上記構成を備えたプレストング装置において、押圧手段を支軸回りに揺動させることで、一方のトング部材の回動による開閉移動領域から退避させられ、支軸は一方のトング部材の回動による開閉移動領域から外れていることで、一方のトング部材を回動させても、一方のトング部材を押圧手段および支軸に干渉させることなく、双方のトング部材の対向壁面を露出させられる。
【0015】
前記支軸は一方のトング部材に対し離間して該一方のトング部材側に配置され、前記押圧手段は、前記支軸回りの揺動により先端部を前記一方のトング部材の外面である被押圧面に接触させた押圧姿勢、および先端部を前記被押圧面から離脱した押圧解除姿勢に切替え可能とされ、前記押圧手段の押圧姿勢における押圧力を保持させる押圧力保持手段を備え、該押圧力保持手段は、前記支軸が取付けられる一方取付部と、前記他方のトング部材に取付けられる他方取付部とを備え、前記押圧手段の押圧姿勢において、前記支軸、前記押圧手段の先端部、および前記押圧力保持手段の他方取付部は直線上に配置された構成を採用できる。
【0016】
上記構成を備えたプレストング装置において、押圧手段の押圧姿勢において、支軸、押圧手段の先端部、および押圧力保持手段の他方取付部が直線上に配置されることで、押圧手段の押圧力が、支軸、一方取付部、および他方取付部で確実に支持される。
【0017】
本発明のプレストング装置では、押圧手段は杆状であって、長手方向の長さを調節可能とされた構成を採用できる。上記構成によれば、押圧手段の長手方向の長さを調節し、トング部材どうしを相対的に接近離間させることで、圧縮路の断面積が調節される。
【0018】
本発明の成形機は、上記何れかに記載のプレストング装置を備えたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0019】
本発明のプレストング装置、およびプレストング装置を備えた成形機によれば、トングの対向壁に付着した被処理物の残留物を確実に取除くことができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の一実施形態に係るプレストング装置の全体構成を表す一部破断側面図である。
図2】同図1におけるA−A線断面矢視図である。
図3】同成形機本体に取付けられたトング部材の断面図であり、上トング部材を最大限に傾斜させた状態の側面断面図である。
図4】同上トング部材を下トング部材と平行な状態にさせている側面断面図である。
図5】同図1におけるB−B線断面矢視図である。
図6】同図1におけるC線矢視図である。
図7】同図1におけるD−D線断面矢視図である。
図8】同退避手段の一部破断平面図である。
図9】同退避手段の一部破断側面図である。
図10】本発明の他の実施形態に係るプレストング装置の全体構成を表す一部破断側面図である。
図11】同図10におけるF−F線断面矢視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の一実施形態に係るプレストング装置について、図面を参照しつつ説明する。図1に示すように、プレストング装置1は、被処理物Nが投入される成形機の成形機本体2に付設される。成形機本体2は、廃棄物処理場に設置される。成形機本体2は、図示しないモータの駆動によるフライホイールの回転を、クランクを用いてプレスラムの往復運動に変換し、プレスラムの往復運動により被処理物が押されて下流側へ送るよう構成されている。
【0022】
プレストング装置1は、成形機本体2から前記プレスラムの往復運動によって下流側へ送られてくる被処理物Nを導入して、円柱形状に減容処理するのに用いられる。なお、被処理物Nとして、粉砕されたプラスチック片や木屑等が挙げられ、減容処理された被処理物Nは、例えば燃料として再利用される。
【0023】
プレストング装置1は、一対のトング部材である下トング部材3および上トング部材4を備える。一対のトング部材は、被処理物Nの圧縮路5を上下の対向壁30,40どうしで形成する。圧縮路5は、断面略円形とされる。この圧縮路5は下流側ほど断面積を縮小するように、上トング部材4が回動可能に構成されている。
【0024】
図2ないし図5に示すように、下トング部材3は、下トング本体31と、下対向壁30とを備える。下トング本体31は、上側を開放した断面U字型に形成されている。下トング本体31は、成形機本体2の下流側端に固定されている。下対向壁30は、上側を開放する半円筒状に形成され、下トング本体31の内壁面の底に設置されている。下対向壁30は、上流側、下流側に亘って同一の高さに形成されている(図1、3、4参照)。
【0025】
図2に示すように、下トング部材3は、ガイド壁32をさらに備える。ガイド壁32は、下対向壁30の両側の上端面30aに設置されている。下トング本体31、下対向壁30、およびガイド壁32は、その上流側から下流側へ向けて所定の長さに形成され、ともに水平方向に沿って配置されるよう、着脱可能に取り付けられている。なお上対向壁30の高さは異なる高さ(下流側が高い、または低い)としてもよい。
【0026】
上トング部材4は、上トング本体41と、上対向壁40とを備える。上トング本体41は、下トング本体31と略同一の長さに形成された略直方体形状に形成され、下トング本体31の開放部に上側から挿入可能とされている。上トング本体41の基端部は、上トング本体41の長手方向に直交する方向に中心軸6を介して、回動により開閉移動可能に構成されている(図1参照)。上トング本体41は、中心軸6回りに回動量により、先端側の高さが調節される。
【0027】
図3、4に示すように、上トング本体41の上面(外面)は、後述する押圧手段7によって押圧される面である。特に、前記上面のうち先端側の面は、基端側の面に対してわずかに段落ちされた被押圧面41aであり、平面である。
【0028】
上トング本体41の下面である内壁面は、上方に向けて凸となる湾曲面とされている。上対向壁40は、下側を開放する半円筒状に形成され、上トング本体41の内壁面に設置されている。上対向壁40の両側の側面40aは、下対向壁30の上端面30aに直交する上下方向(鉛直方向)に沿う面である。上対向壁40の側面40aは、ガイド壁32に上下方向に摺接可能に案内される。上対向壁40は上トング本体41に対して着脱可能であり、上流側、下流側に亘って同一の高さに形成されている。なお、下対向壁40の高さは異なる高さ(下流側が高い、または低い)としてもよい。
【0029】
図2ないし図6に示すように、プレストング装置1は、下トング本体31および上トング本体41を、成形機本体2の下流側端に固定する固定手段8を備えている。固定手段8は、固定用ブロック80と、締付部材81とを備えている。
【0030】
固定用ブロック80は板状に形成されている。その板面略中心に下トング本体31を挿通させる挿通開口80aが形成されている。固定用ブロック80は、下トング本体31の基端側に形成された段付面31aにその前側(下流側)から当接する当接面80bを備えている。固定用ブロック80には、上トング本体41の回動による開閉移動を許容する(上トング本体41が開閉する際に通る)切欠80cが、挿通開口80aに連続して挿通開口80aの上側に形成されている。固定用ブロック80の背面には、上トング部材4の回動中心となる中心軸6が挿通される中心軸挿通部材82が取付けられている。中心軸6は、上トング本体の幅方向に沿う軸である。
【0031】
図5に示すように、締付部材81は、タイロッド810と、締付ナット811とを備える。タイロッド810は、固定用ブロック80の四隅部を挿通して、成形機本体2側(後方側)の所定の部位に螺合するよう延長されている。タイロッド810において、固定用ブロック80の前方に突出した部分に締付ナット811が螺合されている。締付ナット811を固定用ブロック80の前面に対して締付けることにより、下トング部材3および上トング部材4が、成形機本体2の下流側端面に位置保持される。
【0032】
図1および図7に示すように、プレストング装置1は、圧縮路5の下流側ほど断面積が縮小されるように、上トング本体41を押圧して下トング本体31に対して位置保持させる押圧手段7を備える。
【0033】
押圧手段7は、下トング部材3に対し上トング部材4側に配置されている。押圧手段7は、後述する押圧姿勢Xと、押圧解除姿勢Yとに切替可能とされている。押圧手段7は、全体として杆状に形成されている。押圧手段7は、基端杆70と、基端杆70に対して長手方向に沿って移動可能な移動杆71と、移動杆71の先端にあって、上トング本体41の被押圧面41aに当接可能な押圧部材72とを備える。押圧部材72は、被押圧面41aに当接する押圧面72aを備える。押圧面72aは平面に形成されている。
【0034】
基端杆70の外周面には、雄ねじが形成されている。移動杆71は、基端杆70の先端側にねじ部73を介して螺合されている。移動杆71は、押圧手段7の軸心回りに回転させることで、基端杆70に対して長手方向(軸心方向)に沿うよう移動できる。移動杆71を長手方向に移動させることで、押圧手段7の長さを調節することができる。押圧部材72は、被押圧面41aに当接可能な押圧面72aを備えている。押圧部材72は、移動杆71の先端に、微動可能に取付けられている。このような押圧手段7は、上トング本体41の幅方向中心位置に配置され、垂直面内において、後述する支軸9回りに揺動可能とされている。
【0035】
図7に示すように、プレストング装置1は、押圧手段7における上トング本体41の押圧力を保持させる押圧力保持手段10を備える。押圧力保持手段10は、保持枠体11と、前記支軸9とを備える。
【0036】
保持枠体11は、他方取付部である底壁110、底壁110の幅方向両側から上方へ向けて延長される一方取付部である側壁111、および側壁111の上端どうしに渡された天壁112を備える。保持枠体11は、トング部材の前方寄り(下流側寄り)に配置されている。底壁110は取付ボルトB1により下トング本体31に固定され、側壁111の内面間の距離は下トング本体31の径に略一致して該内面が下トング本体31の側部に当接していることから、保持枠体11は、下トング本体31に確実に固定されている。
【0037】
天壁112は側壁111の上端に、ボルトB2を介して取付けられている。天壁112の中心には、切欠112aが形成されている。支軸9は幅方向に沿う軸である。支軸9は、側壁111の上端寄りに配置され、軸端部9aが側壁に挿通支持されている。支軸9の長手方向中心に、フランジナット12のナット部120が挿通されている。ナット部120の周面に雌ねじが形成されている。押圧手段7の基端杆70が、下方からフランジナット12のナット部120、天壁112の切欠112aに挿通されている。基端杆70のうち、天壁112から上方に突出した部分に、ロックナット13が螺合されている。
【0038】
ロックナット13を天壁112に対して締付けることで、基端杆70はその軸心回りに非回転となり、ロックナット13の締付けを緩めることにより、基端杆70が支軸9軸心回りに回転可能となって、押圧手段7をその支軸軸心回りに回転させることで、押圧手段7は、天壁112に対して上下動可能となる。
【0039】
支軸9は側壁111の上端寄りに配置されていることにより、上トング部材4が中心軸6回りに垂直面内で回動して移動する際に、上トング部材4の移動領域から外れて干渉しない位置に配置されている。また、上トング部材4の移動領域は、側壁111の内面の間にある。
【0040】
上トング部材4が下トング部材3に対して閉じられた状態において、保持枠体11の底壁110、上トング本体41の被押圧面41a、および支軸9は、同一の鉛直面内に配置される。
【0041】
図7ないし図9に示すように、プレストング装置1は、上トング部材4の移動領域から押圧手段7を退避させ得る退避手段14を備えている。退避手段14は、互いに噛合するウォーム140およびウォームホイール141と、ウォーム140をその軸心回りに回転させる操作ハンドル142とを備える。ウォーム140およびウォームホイール141は、一方の側壁111に組付けられたギヤボックス143に内装されている。
【0042】
ウォームホイール141は、支軸9の一方側の軸端部9aに取付けられている。ウォーム140は、ギヤボックス143に回転可能に支持されている。操作ハンドル142は、ギヤボックス143の外にあって、ウォーム140の回転中心軸140aに連結されている。
【0043】
上記構成のプレストング装置1において、図1の仮想線で示すように、上トング部材4を、下トング部材3から離れるように中心軸6回りに移動させた状態では、上下の対向壁30,40は、露出した露出状態にある。対向壁30,40の露出状態から対向壁30,40どうしを対向させ、対向壁30,40によって圧縮路5を形成するには、上トング部材4を中心軸6回りに下トング部材3側へ向けて回動させる。
【0044】
この場合、支軸9は上トング部材4の移動領域から外れて干渉しない位置にあるが、押圧手段7が上下方向に沿った姿勢にあると、押圧手段7が上トング部材4に干渉してしまい、対向壁30,40どうしを対向させられない。そこで、押圧手段7を上トング部材4の移動領域から退避させる必要がある。
【0045】
押圧手段7を上トング部材4の移動領域から退避させるには、ユーザーは、ロックナット13を緩めて上方に移動あるいは取外す、退避手段14における操作ハンドル142を回転させる、という作業を順に行う。ロックナット13を緩めて上方に移動あるいは取外す作業によれば、天板112に対する基端杆70の規制が解除され、基端杆70は移動可能となる。操作ハンドル142を回転させることによれば、押圧手段7を上トング部材4の移動領域から退避した位置とすることができる。
【0046】
すなわち、操作ハンドル142の回転は、ウォーム140、ウォームホイール141を介して支軸9の回動に変換される。押圧手段7の基端杆70は、天壁112および支軸9を挿通してこれらに支持されているから、支軸9がその軸心回りに回動する動作に伴って、押圧手段7は支軸9回りに回動する。
【0047】
操作ハンドル142を、押圧手段7の下部が前方へ移動する方向に回転させて、図1の仮想線で示すように、押圧手段7を、上トング部材4の移動領域から退避した位置に傾斜させることができる。操作ハンドル142の回転を停止することで、押圧手段7の回動は停止し、その時点での押圧手段7の姿勢が保持される。
【0048】
なお、押圧手段7の上下方向に対する傾斜角度は、上トング部材4の移動領域から退避する角度でありさえすればよい。具体的には、中心軸6を中心とした移動領域における円弧状軌跡の接線と略平行な傾斜角度が好ましい。
【0049】
押圧手段7を上トング部材4の移動領域から退避させれば、上トング部材4を中心軸6回りに、閉じる方向に回動させて、対向壁30,40の露出状態から対向壁30,40どうしを対向させ、対向壁30,40によって圧縮路5を形成することができる。
【0050】
プレストング装置1の使用に際しては、上流側から圧縮路5に向けて送られてくる被処理物により上トング部材4が上方へ押されて、下トング部材3に対して上トング部材4が開かないよう上トング部材4を押圧することで位置保持しておく必要がある。
【0051】
このようにするために、ユーザーは、図1の実線で示すように、押圧手段7を、上トング部材4を上方から押圧可能な押圧姿勢Xとする。上記のように、上トング部材4の移動領域から退避した位置にある押圧手段7を押圧姿勢Xとするために、ユーザーは、押圧手段7の下部を後方へ移動する方向に、操作ハンドル142を回転させる。押圧姿勢Xは、押圧手段7の略垂直な姿勢であり、押圧手段7が略垂直な姿勢となるまで操作ハンドル142を回転させる。
【0052】
押圧手段7において、上トング部材4の被押圧面41aに接触する部分は押圧部材72の押圧面72aであり、押圧面72aは平面である。また、被押圧面41aも平面である。そして、押圧手段7は支軸9回りに回動するよう移動する。しかしながら、押圧部材72は、移動杆71の先端に、微動可能に取付けられているから、平面である被押圧面41aに平面である押圧面72aを円滑に当接させることができる。
【0053】
上トング部材4は、中心軸6回りに回動可能である。すなわち、下トング部材3に対して上トング部材4を閉じた状態(対向壁30,40どうしを対向させた状態)であっても、押圧手段7において、支軸9の中心から押圧面72aまでの長さを調節することで圧縮路5の径、すなわち、水平方向に対する上トング部材4の、中心軸6回りに回動可能な傾斜角度を調節して、被処理物Nの減容量を調節することが可能である。
【0054】
例えば、固まりにくい被処理物Nを成形する場合ほど、図3に示すように、上トング部材4の先端側(下流側)を下げた位置で保持することが行われている。但し、そうなると被処理物Nの押し出し抵抗が大きくなる。このため、押圧手段7の長さを調節する必要がある。
【0055】
押圧手段7において、移動杆71は、基端杆70の先端側にねじ部73を介して螺合されている。したがって、支軸9の中心から押圧面72aまでの長さを調節するには、基端杆70に対して移動杆71を回転させて、移動杆71を基端杆70に対して長手方向(軸心方向)に沿うよう移動させることができる。
【0056】
押圧面72aを被押圧面41aに確実に接触させるために、ロックナット13を、天壁112に対して圧接するよう回転させて締付ける。ロックナット13を回転させることで、ロックナット113の下面と天板112の上面とが圧接すれば、移動杆71を回転しねじ部73により基端杆70に対して長手方向(軸心方向)に沿うよう移動する際、基端杆70は天板112に対してその姿勢を保持するから、押圧面72aが被押圧面41aを確実に押圧する。
【0057】
上記のようにすることで、被処理物Nが圧縮路5に送られてきて圧縮路5を下流側へ移動する際に、対向壁30,40を介してトング本体が相対的に開く(上トング部材4が下トング部材3に対して移動する)方向の圧力を受けても、上トング部材4を押圧手段7で押圧していることで上トング部材4の位置が保持され、圧縮路5の径を不要に拡大させない。
【0058】
上トング部材4を下トング部材3に対して閉じ、押圧手段7で上トング部材4の位置を保持することで、上下の対向壁30,40(対向壁30,40の対向壁面)により、下流側ほど断面積が縮小した圧縮路5が形成されている。そして、上トング部材4が押圧手段7によって上方から下方へ押圧され、上トング部材4が下トング部材3に対して位置保持されていることにより、上流側、すなわち成形機本体2から送られてくる被処理物Nが、圧縮路5を下流側へ移動する間に圧縮され、圧縮路5の出口から排出される。
【0059】
しかも、上トング部材4が下トング部材3に対して閉じられた状態において、保持枠体11の底壁110、上トング本体41の被押圧面41a、および支軸9は、同一の鉛直面内に配置されており、押圧手段7の押圧姿勢Xにおいて、押圧部材72の押圧面72aは、被押圧面41aに当接している。このことにより、支軸9、押圧部材72、および保持枠体11(押圧力保持手段10)の底壁110は、同一の鉛直面内で直線上に配置され、支軸9の中心軸線と、押圧手段7の中心軸線とは直交する。したがって、押圧手段7の押圧力を、支軸9を介して、保持枠体11により確実に支持することができる。
【0060】
被処理物Nの処理が終了し、対向壁30,40に付着している残留物を除去する場合には、図1の実線で示すように押圧姿勢Xにある押圧手段7を、退避手段14を用いて、仮想線で示す押圧解除姿勢Yとする。ロックナット13は、天壁112に対して圧接するよう締付けられているから、押圧手段7を押圧解除姿勢Yとする際、ロックナット13を緩める方向へ回転させて、押圧手段7全体を上方へ位置ずれさせて、押圧面72aを被押圧面41aから離脱させる。
【0061】
操作ハンドル142を回転操作することで、押圧手段7は、支軸9回りに回動され、押圧手段7を、その先端部である押圧部材72の押圧面72aが上トング部材4の外面である被押圧面41aに接触した押圧姿勢Xから、前述したように、上トング部材4の移動領域から退避した位置となるよう傾斜させて、押圧面72aを被押圧面41aから大きく離脱させた押圧解除姿勢Yに切替えられる。支軸9は、側壁111の上端寄りに配置されていることにより、上トング部材4の移動領域から外れて干渉しない。
【0062】
押圧手段7を押圧解除姿勢Yとすれば、上トング部材4は中心軸6回りに大きく回動することができ、対向壁30,40どうしが離間する方向に上トング部材4を中心軸6回りに回動することで、上トング部材4は側壁111の間を通るように移動し、対向壁30,40を露出させられる。対向壁30,40が露出すれば、対向壁30,40の対向壁面に付着している残留物を、容易に除去し得る状態となる。
【0063】
上記実施形態では、長手方向に伸縮できる押圧手段7として、ねじ機構を用いた場合を例示した。しかしながら、押圧手段7として、図10、11に示すように、油圧配管が接続されて、油圧の供給、排出により長手方向に伸縮可能な油圧ジャッキ装置(油圧シリンダ装置)15を用いることができる。このジャッキ装置15は、シリンダ部150に対してロッド部151が長手方向に移動可能とされ、ロッド部151の先端に押圧部材72が取付けられている。ジャッキ装置15は、上記実施形態と同様の構成の基端杆70の先端側に取付けられている。
【0064】
図10、11に示す実施形態では、圧縮路5の断面積を調節する場合、すなわち、水平方向に対する上トング部材4の、中心軸6回りの傾斜角度を調節するには、油圧ジャッキ装置15に供給する作動油を調節することで行うことができる。
【0065】
また、この構成によれば、圧縮路5内の被処理物Nから上トング部材4を介して油圧ジャッキ装置15が受ける圧力により、油圧ジャッキ装置15内の作動油がわずかに吸排され、ロッド部151がわずかに上下動する。このため、特に、被処理物Nが硬質である場合に、被処理物Nが均質化され易い。他の構成は上記実施形態と同様であるので、同一の機能を有する構成部品については同一の符合を付して、その説明を繰り返さない。
【0066】
本発明は、上記実施形態に限定されない。上記各実施形態では、押圧手段7の回動中心となる支軸9は、上トング部材4の上側に配置され、押圧手段7が鉛直面内で揺動可能に支軸9に支持された構成を例示した。
【0067】
しかしながら、例えば、上記各実施形態と同様に、上トング部材4が中心軸6回りに回動することで移動するよう構成されている場合で、軸心方向を前後方向(圧縮路5の中心に沿う方向)とした支軸を、トング部材の側方(トング部材に幅方向で外れた位置)に設け、この支軸回りに押圧手段を揺動可能とする構成が考えられる。
【0068】
この構成の場合では、押圧手段を支軸回りに一方向に回動させて上トング部材4に当接させることで押圧姿勢とし、押圧手段を支軸回りに他方向に回動させて押圧解除姿勢とすることができる。そして、押圧手段は押圧解除姿勢において、上トング部材4の回動による移動領域から退避していることから、上トング部材4を大きく開いて対向壁を露出させられる。
【0069】
上記各実施形態では、一対のトング部材のうち上トング部材4は、鉛直面内で回動する構成を例示した。しかしながら、一対のトング部材は、何れか一方のトング部材を水平面内で回動させる構成であってもよく、また、双方のトング部材が、鉛直面内、あるいは水平面内で、互いに回動可能とした構成であってもよい。さらに、双方のトング部材が、別々の押圧手段によって押圧される構成であってもよい。
【0070】
トング部材は、回動による移動に限定されず、トング部材どうしが圧縮路の径方向に沿って相対的に移動する構成とし、押圧手段をトング部材の移動領域はから退避させたうえで、トング部材どうしを圧縮路の径方向に沿って相対的に移動させて、対向壁どうしを露出させることもできる。
【0071】
成形機(成形機本体)は、モータの駆動によるフライホイールの回転を、クランクを用いてプレスラムの往復運動に変換し、プレスラムの往復運動により被処理物が押されて下流側へ送るよう構成を例示した。しかしながら、スクリュなど他の機構により被処理物が押されて下流側に送る構成であってもよい。
【符号の説明】
【0072】
1…プレストング装置、2…成形機本体、3…下トング部材、4…上トング部材、5…圧縮路、6…中心軸、7…押圧手段、8…固定手段、9…支軸、10…押圧力保持手段、11…保持枠体、14…退避手段、30…下対向壁、31…下トング本体、40…上対向壁、41…上トング本体、41a…被押圧面、70…基端杆、71…移動杆、72…押圧部材、72a…押圧面、73…ねじ部、110…底壁、111…側壁、112…天壁、140…ウォーム、141…ウォームホイール、142…操作ハンドル、B2…調整ボルト、N…被処理物、X…押圧姿勢、Y…押圧解除姿勢
図1
図2
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図4
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図6
図7
図8
図9
図10
図11