(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
通気口が形成された主壁を有する細長い装置本体と、上記装置本体に沿って延びるとともに上記装置本体にスライド可能及び/又は回動可能に支持されそのスライド及び/又は回動に伴って上記通気口を開閉する細長い作動板と、上記作動板を温度に応じて自動的に開閉制御する温度感応型アクチュエータと、を備えた換気装置において、
上記温度感応型アクチュエータは、
(ア)上記装置本体に設けられた支持構造と、
(イ)上記支持構造に対して上記装置本体の長手方向に移動可能な第1移動体と、
(ウ)上記第1移動体に対して上記装置本体の長手方向に移動可能な第2移動体と、
(エ)上記支持構造と上記第1移動体との間に配置され、上記第1移動体に、上記装置本体の長手方向に沿う互いに反対方向の力を付与する第1形状記憶バネおよび第1バイアスバネと、
(オ)上記第1移動体と上記第2移動体との間に配置され、上記第2移動体に、上記装置本体の長手方向に沿う互いに反対方向の力を付与する第2形状記憶バネおよび第2バイアスバネと、
(カ)上記第2移動体を上記作動板に連携し、上記第2移動体が上記装置本体の長手方向に沿う第1方向に移動する際に上記作動板を閉じ動作させ、上記第2移動体が上記第1方向とは逆の第2方向に移動する際に上記作動板を開き動作させる連携手段と、
(キ)上記第1移動体の上記支持構造に対する上記第2方向への移動を規制する第1規制手段と、
(ク)上記第2移動体の上記第1移動体に対する上記第2方向への移動を規制する第2規制手段と、
を備え、
上記第1、第2形状記憶バネのうちの一方が、これに対応する上記第1、第2移動体のうちの一方の移動体を上記第1方向に付勢し、上記第1、第2形状記憶バネのうちの他方が、これに対応する上記第1、第2移動体のうちの他方の移動体を上記第2方向に付勢しており、上記一方の形状記憶バネの変態温度が、上記他方の形状記憶バネより高く設定されていることを特徴とする換気装置。
さらに、上記第1移動体の上記支持構造に対する上記第1方向への移動を規制する第3規制手段と、上記第2移動体の上記第1移動体に対する上記第1方向への移動を規制する第4規制手段、を備えたことを特徴とする請求項1に記載の換気装置。
上記第1、第2の形状記憶バネと上記第1、第2のバイアスバネが、上記装置本体の長手方向に延びる引張コイルバネからなることを特徴とする請求項2に記載の換気装置。
上記支持構造は、上記第1スライダの両端部を係止するための一対の第1スライダ用ストッパ部を有し、これら一対の第1スライダ用ストッパ部が上記第1、第3規制手段として提供されることを特徴とする請求項5に記載の換気装置。
上記第1スライダの両端部に第2バネ掛け部が形成され、これら一対の第2バネ掛け部と上記第2スライダのスライド部との間に上記第2形状記憶バネと上記第2バイアスバネが掛けられ、これら第2形状記憶バネと第2バイアスバネが、スライド方向に沿って一直線上に配置されていることを特徴とする請求項6に記載の換気装置。
上記支持構造は、上記ベース部の両端部のそれぞれに、上記第1スライダ用ストッパ部と、この第1スライダ用ストッパ部と上記スライド方向と直交する方向に隣接する第1バネ掛け部とを有し、
上記第1スライダは、上記ベース部にスライド可能に支持されたスライド部と、このスライド部の中間部からスライド方向と直交する方向に突出する第3バネ掛け部とを有し、この第3バネ掛け部と上記一対の第1バネ掛け部との間に、上記第1形状記憶バネと上記第1バイアスバネが掛けられており、
上記第1形状記憶バネと上記第1バイアスバネは、上記第2形状記憶バネおよび上記第2バイアスバネと平行をなすとともにスライド方向と直交する方向に隣接して、一直線をなして配置されていることを特徴とする請求項7に記載の換気装置。
上記支持構造は、上記ベース部の両端部に第1バネ掛け部を有し、これら第1バネ掛け部と上記一対の第2バネ掛け部との間に上記第1形状記憶バネと上記第1バイアスバネが掛けられており、
上記第1、第2形状記憶バネと上記第1、第2バイアスバネが上記ベース部に沿って一直線上に配置され、
上記支持構造は、上記ベース部において上記一対の第1バネ掛け部から中央寄りに離れた箇所に上記一対の第1スライダ用ストッパ部を有することを特徴とする請求項7に記載の換気装置。
【背景技術】
【0002】
一般的な換気装置は、通気口を有する装置本体と、この装置本体に回動可能またはスライド可能に支持され通気口を開閉する作動板と、上記作動板を開閉操作する手動操作機構とを備えている。
【0003】
上記のように手動で作動板を開閉操作する場合、適切な開閉制御がなされない場合もある。例えば、冬季に暖房している状況で通気口を開いたまま放置すると、屋外の冷気が入り込んだり室内の暖気が逃げたりするため、暖房効率が低くなりエネルギーの浪費を招く。また、夏季に室内を冷房している状況で通気口を開いたまま放置すると、屋外の熱気が入り込んだり室内の冷気が逃げたりするため、冷房効率が低くなりエネルギーの浪費を招く。そのため、気温に応じて自動開閉制御を行う換気装置の開発が求められている。
【0004】
特許文献1には、温度感応型アクチュエータを備えた換気装置が開示されている。この換気装置では、細長い装置本体に作動板を長手方向にスライドさせることにより、通気口を開閉する。作動板の一端と装置本体との間には形状記憶バネ(形状記憶合金製のバネ)が取り付けられ、作動板の他端と装置本体との間にはバイアスバネが取り付けられている。作動板はこれら2つのバネの引張り力に応じて位置調節され、通気口を開閉するようになっている。低温時には形状記憶バネのバネ力が弱まるためバイアスバネの力で作動板は閉じ位置へ移動する。高温時には形状記憶バネの弾性力が強まってバイアスバネの力に打ち勝ち、作動板は開き位置へ移動する。
特許文献1の換気装置では、低温時に通気口が閉じられるため暖房効率を高めることができるが、高温時には通気口が開いたままのため冷房効率を高めることができない。
【0005】
特許文献2には、低温時と高温時に通気口を閉じることができる温度感応型アクチュエータを備えた換気装置が開示されている。
特許文献2の
図1〜
図3に開示された第1実施形態では、装置本体にスライド可能に支持された1枚の作動板に、2つの形状記憶合金バネと、2つのバイアスバネとが接続されている。一方の形状記憶バネと一方のバイアスバネは作動板を開き方向に付勢し(以下、これらバネを開き側の形状記憶バネ、開き側のバイアスバネと称す)、他方の形状記憶バネと他方のバイアスバネは作動板を閉じ方向に付勢する(以下、これらバネを閉じ側の形状記憶バネ、閉じ側のバイアスバネと称す)。閉じ側の形状記憶バネの変態温度は開き側の形状記憶バネより高い。
【0006】
特許文献2の第1実施形態では、低温時には閉じ側のバイアスバネの力が開き側の形状記憶バネおよび開き側のバイアスバネに打ち勝ち、作動板が閉じ方向に移動する。常温時には開き側の形状記憶バネの変態温度を超えるため、開き側の形状記憶バネと開側のバイアスバネの力が閉じ側の形状記憶バネおよび閉じ側のバイアスバネに打ち勝ち、作動板は開き方向に移動する。高温時には閉じ側の形状記憶バネの変態温度を超えるため、閉じ側の形状記憶バネと閉じ側のバイアスバネの力が開き側の形状記憶バネおよび開き側のバイアスバネに打ち勝ち、作動板が閉じ方向に移動する。
【0007】
特許文献2の
図4に示す第2実施形態では、第1、第2の2枚の作動板が重なった状態で装置本体にスライド可能に支持されている。第1作動板には、第1形状記憶バネが開き方向に第1バイアスバネが閉じ方向に作用している。第2作動板には第2形状記憶バネが閉じ方向に、第2バイアスバネが開き方向に作用している。第2形状記憶バネの変態温度は第1形状記憶バネより高い。
【0008】
特許文献2の第2実施形態では、低温時には、第2作動板が開き位置にあるものの、第1バイアスバネが第1形状記憶バネに打ち勝つために第1作動板が閉じ位置にあり、その結果、通気口は閉じられている。常温時には、第1形状記憶バネが第1バイアスバネに打ち勝つために第1作動板も開き位置にあり、その結果、通気口は開かれている。高温時には、第1作動板が開き位置にあるものの、第2形状記憶バネが第2バイアスバネに打ち勝つために第2作動板が閉じ位置にあり、その結果、通気口は閉じられている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献2の第1実施形態の換気装置では、1つの作動板に4つのバネが作用するため、バネの調整が困難であり、実用化することができない。
また、特許文献2の第2実施形態の換気装置では、重ねられた2つの作動板を用いるため、実用化することが困難である。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、通気口が形成された主壁を有する細長い装置本体と、上記装置本体に沿って延びるとともに上記装置本体にスライド可能及び/又は回動可能に支持されそのスライド及び/又は回動に伴って上記通気口を開閉する細長い作動板と、上記作動板を温度に応じて自動的に開閉制御する温度感応型アクチュエータと、を備えた換気装置において、
上記温度感応型アクチュエータは、
(ア)上記装置本体に設けられた支持構造と、
(イ)上記支持構造に対して上記装置本体の長手方向に移動可能な第1移動体と、
(ウ)上記第1移動体に対して上記装置本体の長手方向に移動可能な第2移動体と、
(エ)上記支持構造と上記第1移動体との間に配置され、上記第1移動体に、上記装置本体の長手方向に沿う互いに反対方向の力を付与する第1形状記憶バネおよび第1バイアスバネと、
(オ)上記第1移動体と上記第2移動体との間に配置され、上記第2移動体に、上記装置本体の長手方向に沿う互いに反対方向の力を付与する第2形状記憶バネおよび第2バイアスバネと、
(カ)上記第2移動体を上記作動板に連携し、上記第2移動体が上記装置本体の長手方向に沿う第1方向に移動する際に上記作動板を閉じ動作させ、上記第2移動体が上記第1方向とは逆の第2方向に移動する際に上記作動板を開き動作させる連携手段と、
(キ)上記第1移動体の上記支持構造に対する上記第2方向への移動を規制する第1規制手段と、
(ク)上記第2移動体の上記第1移動体に対する上記第2方向への移動を規制する第2規制手段と、
を備え、
上記第1、第2形状記憶バネのうちの一方が、これに対応する上記第1、第2移動体のうちの一方の移動体を上記第1方向に付勢し、上記第1、第2形状記憶バネのうちの他方が、これに対応する上記第1、第2移動体のうちの他方の移動体を上記第2方向に付勢しており、上記一方の形状記憶バネの変態温度が、上記他方の形状記憶バネより高く設定されていることを特徴とする。
【0012】
上記構成によれば、変態温度の異なる2種類の形状記憶バネとこれら形状記憶バネにそれぞれ対抗するバイアスバネを用いることにより、低温領域と高温領域で作動板の閉じ動作を実行でき、常温領域で作動板を開き動作することができるので高い暖房効率と高い冷房効率の両方を確保することができる。
しかも、第1,第2の移動体の第2方向(作動板を開き動作させる方向)の移動を規制するため、上記閉じ動作の際に、第1形状記憶バネおよび第1バイアスバネからなるバネ系と、第2形状記憶バネおよび第2バイアスバネからなるバネ系との間で干渉や相殺が生じず、確実に閉じ動作を行うことができる。
【0013】
好ましくは、さらに、上記第1移動体の上記支持構造に対する上記第1方向への移動を規制する第3規制手段と、上記第2移動体の上記第1移動体に対する上記第1方向への移動を規制する第4規制手段、を備えている。
上記構成によれば、第1、第2移動体の第1方向(作動板を閉じ動作させる方向)の移動も規制され、これら第1、第2移動体の移動ストロークを確定することができる。
【0014】
好ましくは、上記第1、第2の形状記憶バネと上記第1、第2のバイアスバネが、上記装置本体の長手方向に延びる引張コイルバネからなる。
上記構成によれば、4つのバネを装置本体の細長い形状に合わせて配置することができる。
【0015】
好ましくは、上記支持構造が上記装置本体の長手方向に延びる細長いベース部を有し、上記第1移動体は、上記装置本体の長手方向に延びる細長い第1スライダとして構成され、この第1スライダは、上記ベース部より短く上記ベース部にスライド可能に支持されており、上記第2移動体は、上記第2スライダにスライド可能に支持された第2スライダとして構成される。
上記構成によれば、第1、第2移動体を装置本体の細長い形状に合わせて配置することができる。
【0016】
好ましくは、上記第2スライダは、上記第1スライダにスライド可能に支持されたスライド部と、このスライド部からスライド方向と直交する方向に突出する係合突出部とを有し、上記第1スライダの中間部には、互いに上記スライド方向に離れ上記第2スライダの上記係合突出部を係止する一対の第2スライダ用ストッパ部を有し、これら一対の第2スライダ用ストッパ部が上記第2、第4規制手段として提供される。
上記構成によれば、第2、第4規制手段の構成を簡略化することができる。
【0017】
好ましくは、上記支持構造は、上記第1スライダの両端部を係止するための一対の第1スライダ用ストッパ部を有し、これら一対の第1スライダ用ストッパ部が上記第1、第3規制手段として提供される。
上記構成によれば、第1、第3規制手段の構成を簡略化することができる。
【0018】
好ましくは、上記第1スライダの両端部に第2バネ掛け部が形成され、これら一対の第2バネ掛け部と上記第2スライダのスライド部との間に上記第2形状記憶バネと上記第2バイアスバネが掛けられ、これら第2形状記憶バネと第2バイアスバネが、スライド方向に沿って一直線上に配置されている。
【0019】
一実施態様では、上記支持構造は、上記ベース部の両端部のそれぞれに、上記第1スライダ用ストッパ部と、この第1スライダ用ストッパ部と上記スライド方向と直交する方向に隣接する第1バネ掛け部とを有し、上記第1スライダは、上記ベース部にスライド可能に支持されたスライド部と、このスライド部の中間部からスライド方向と直交する方向に突出する第3バネ掛け部とを有し、この第3バネ掛け部と上記一対の第1バネ掛け部との間に、上記第1形状記憶バネと上記第1バイアスバネが掛けられており、上記第1形状記憶バネと上記第1バイアスバネは、上記第2形状記憶バネおよび上記第2バイアスバネと平行をなすとともにスライド方向と直交する方向に隣接して、一直線をなして配置されている。
上記構成によれば、4つのバネを2列に配置したので、温度感応型アクチュエータを短くすることができる。
【0020】
他の実施態様では、上記支持構造は、上記ベース部の両端部に第1バネ掛け部を有し、これら第1バネ掛け部と上記一対の第2バネ掛け部との間に上記第1形状記憶バネと上記第1バイアスバネが掛けられており、上記第1、第2形状記憶バネと上記第1、第2バイアスバネが上記ベース部に沿って一直線上に配置され、上記支持構造は、上記ベース部において上記一対の第1バネ掛け部から中央寄りに離れた箇所に上記一対の第1スライダ用ストッパ部を有する。
上記構成によれば、4つのバネを1列に配置したので、温度感応型アクチュエータの幅を狭くすることができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、低温時と高温時に作動板の閉じ動作を実行するので、暖房効率、冷房効率を高めることができる。しかも、バネ調整が容易で、実用化が可能である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の第1実施形態に係る換気装置を
図1〜
図8を参照しながら説明する。
図1に示すように、換気装置1は紙面と直交する方向に細長く形成された装置本体10を備えている。この装置本体10は室内側に位置する内フレーム11と室外側に位置する外フレーム15を互いに連結することにより構成されている。
【0024】
内フレーム11は、垂直をなして室内に臨む主壁12と、この主壁12の上縁と下縁に連なる水平壁13と、これら水平壁13の室内側の縁からそれぞれ上下に垂直に延びる取付壁14とを有している。
外フレーム15は垂直をなして室外に臨む副壁16と、この副壁16の上下の縁から室内に向かって水平に延びる水平壁17とを有している。
【0025】
内フレーム11の上下の水平壁13の室外側端部と、外フレーム15の上下の水平壁17の室内側端部が連結されている。
装置本体10は後述する構成要素を内蔵した状態で、壁2の取付穴2aに挿入され、この壁2の室内側の面に上記取付鍔部14を固定することにより、水平に取り付けられている。
【0026】
上記主壁12には上下に細長い多数の通気口12aが長手方向に等ピッチで形成されている。上記副壁16にも垂直方向に細長い多数の通気口16aが長手方向に等ピッチで形成されている。
装置本体10は、その内部空間と上記通気口12a,16aにより構成された通気路19を有している。
【0027】
上記装置本体10には、装置本体10の長手方向に延びる細長い手動作動板21と自動作動板22が垂直をなして収容されている。これら作動板21,22と上記内フレーム11と外フレーム15は、アルミ等の押出型材により形成されている。
【0028】
手動作動板21は、上記副壁16の室内側の面に接するとともに装置本体10の長手方向にスライド可能に支持されており、上記通気口16aと同一形状、同一ピッチの多数の制御口21aを有している。制御口21aが通気口16aと完全に一致した時に通気口16aが全開となり、不一致の時に全閉となる。
手動作動板21は、内フレーム11にスライド可能に支持された操作つまみ(図示しない)に連結されており、操作つまみの操作により開閉される。
【0029】
自動作動板22は、上記主壁12の室外側の面に接するとともに装置本体10の長手方向にスライド可能に支持されており、上記通気口12aと同一形状、同一ピッチの多数の制御口22aを有している。制御口22aが通気口12aと完全に一致した時に通気口12aが全開となり、不一致の時に全閉となる。この自動作動板22は、温度感応型アクチュエータAにより温度に応じて自動開閉制御される。
【0030】
温度感応型アクチュエータAは、装置本体10の内部空間の長手方向一端部において、自動作動板22と室内外方向に重なるようにして収容されている。
図1、
図2に示すように、このアクチュエータAは、ユニット化されており、装置本体10に長手方向に移動不能に支持された支持構造30と、支持構造30に対して装置本体10の長手方向に移動可能な第1スライダ40(第1移動体)と、この第1スライダ40に対して装置本体10の長手方向に移動可能な第2スライダ50(第2移動体)と、4つの引張コイルバネ61〜64(
図2参照)と、これら構成要素を室外側から覆うカバー70とを有している。カバー70は断面コ字形をなし装置本体10の長手方向に間隔をおいて配置された多数の通気口71を有している。
【0031】
図2、
図5に示すように、上記支持構造30は、装置本体10の長手方向に細長いベース板31(ベース部)と、このベース板31の両端に固定された樹脂製のバネホルダ32,33とを有している。
図1、
図5に示すように、ベース板31は、金属板により断面コ字形に形成され、垂直をなす主板部と、左右に分かれた上側の鍔部31aと、左右に分かれた下側の鍔部31bとを有している。さらに、ベース板31の主板部は、中央部に位置する鍔部31cと複数の通気用の穴を有している。ベース板31の主板部は自動作動板22に対してわずかな隙間を介して対向配置され、上記鍔部31a,31b,31cが室外方向に水平に突出している。
【0032】
図2に示すように、バネホルダ32,33は、その上下端に突起32a,33aを有しており、この突起32a,33aが装置本体10の内フレーム11の水平壁部13の室外側端部に形成された切欠(図示しない)に係合することにより、支持構造30は装置本体10に対して長手方向に移動不能に支持されている。
【0033】
図2に示すように、上記バネホルダ32の上部がストッパ部32x(第3規制手段)として提供され、その下部がバネ掛け部32y(第1バネ掛け部)として提供される。同様に、上記バネホルダ33はその上部がストッパ部33x(第1規制手段)として提供され、その下部がバネ掛け部33y(第1バネ掛け部)として提供される。
【0034】
図6、
図7に示すように第1スライダ40は金属板からなり、装置本体10の長手方向に細長い断面L字形のスライド部40aを有している。このスライド部40aは、垂直板部41と、垂直板部41の下縁から室外方向に突出する水平板部42からなり、上記ベース板31より短く、ベース部31の上部に配置されている。第1スライダ40は、その垂直板部41がベース板31に接し、水平板部42がベース板31の中央鍔部31cに接し、ベース板31の上側鍔部31aと中央鍔部31cに案内されて、装置本体10の長手方向にスライド可能に支持されている。
上記第1スライダ40の両端部は、装置本体10の長手方向すなわちスライド方向において、上記バネホルダ32,33のストッパ部32x、33xと対向している。
【0035】
図1、
図6、
図7に示すように、第1スライダ40の水平板部42の中央部には切欠43が形成され、この切欠43の長手方向一端部には、下方に垂直に曲げられたバネ掛け部44(第3バネ掛け部)が形成されている。切欠43のバネ掛け部44から離れた側縁43xは後述のストッパ部(第2規制手段)としての役割を担う。また、バネ掛け部44の一方の側縁44xも後述するストッパ部(第4規制手段)としての役割を担う。
さらに第1スライダ40の水平板部42の両端部には、垂直に上方に切起こされたバネ掛け部45,46(第2バネ掛け部)が形成されている。
【0036】
図1、
図2に示すように、上記第2スライダ50は、第1スライダ40に対して装置本体10の長手方向にスライド可能に支持されている。
図6、
図7に示すように、第2スライダ50は、例えば樹脂により形成され、装置本体10の長手方向に細長いスライド部51と、このスライド部51の一端から下方に突出する係合突出部52とを有している。スライダ部51は第1スライダ40より短い。
【0037】
上記スライド部51と上記係合突出部52との間には溝53が形成されており、この溝53には、
図1に示すように上記第1スライダ40の水平板部42と上記ベース板31の中央鍔部31cが入り込んでいる。また、スライド部51の上面がベース板31の上側鍔部31aに接し、突出部52の下面がベース板31の下側鍔部31bに接している。このようにして、第2スライダ50がベース板31および第1スライダ40にスライド可能に支持されている。
【0038】
上記第2スライダ50の係合突出部52は、第1スライダ40の切欠43内に配置されており、そのスライダ方向の両端面が、切欠43の側縁43xおよびバネ受け部44の側縁44xとスライド方向に対向している。
【0039】
図1、
図2、
図7に示すように、上記第2スライダ50はスライド部51から上方に突出した連結爪51xと、係合突出部52から下方に突出した連結爪52xを有している。これら連結爪51x、52x(連携手段)が、自動作動板22の上下の水平フランジ部22aに形成された切欠22xに嵌ることにより、第2スライダ50が自動作動板22に連結され、第2スライダ50と自動作動板22が一緒に装置本体10の長手方向に移動するようになっている。
【0040】
以下の説明において自動作動板22を閉じ方向に移動させる第1スライダ40、第2スライダ50の移動方向を、閉じ方向(第1方向)と称し、
図2(A)〜
図4(A)において、符号Dcで示す。自動作動板22を開き方向に移動させる第1スライダ40、第2スライダ50の移動方向を、開き方向(第2方向)と称し、
図2(A)〜
図4(A)において、符号Doで示す。
【0041】
図2に示すように、上記第1スライダ40は、第1形状記憶バネ61と第1バイアスバネ62により逆方向の力を受ける。第1形状記憶バネ61は閉じ方向Dcに作用し、第1バイアスバネ62は開き方向Doに作用する。
【0042】
第1形状記憶バネ61と第1バイアスバネ62は、第1スライダ40のスライド部40aの下方において、装置本体10の長手方向に延びるとともに、一直線をなして配置されている。第1形状記憶バネ61の一端は、バネホルダ32のバネ受け部32yに掛けられ、他端は第1スライダ40のバネ掛け部44に掛けられている。第1バイアスバネ62の一端はバネホルダ33のバネ受け部33yに装着されたピンに掛けられ、他端は第1スライダ40のバネ掛け部44に掛けられている。
なお、第2スライダ50の上記係合突出部52には、上記第1バイアスバネ62を通すための凹部52aが形成されている。
【0043】
上記第2スライダ50は、第2形状記憶バネ63と第2バイアスバネ64により逆方向の力を受ける。第2形状記憶バネ63は第2スライダ50に対して開き方向Doに作用し、第2バイアスバネ64は閉じ方向Dcに作用する。
【0044】
第2形状記憶バネ63と第2バイアスバネ64は、第1スライダ40のスライド部40aに沿って一直線をなして配置され、第1形状記憶バネ61と第1バイアスバネ62と平行をなしている。第2形状記憶バネ63は第1スライダ40のバネ掛け部45に掛けられ、他端は第2スライダ50のスライド部51のバネ掛け部に掛けられている。第2バイアスバネ64の一端は、第1スライダ40のバネ掛け部46に掛けられ、他端はスライド部51のバネ掛け部に装着されたピンに掛けられている。
【0045】
図8に示すように、第1形状記憶バネ61と第2形状記憶バネ63の温度―バネ定数の特性は、同様の曲線を描くが、第1形状記憶バネ61の変態温度は第2形状記憶バネ63より高温側にシフトしている。詳しくは後述する。
【0046】
上記構成をなす換気装置1の作用を
図8を参照しながら説明する。気温が6℃未満(低温領域)の低温時には、形状記憶バネ61,63のバネ定数は非常に小さい。そのため、
図2に示すように、第1バイアスバネ62が第1形状記憶バネ61に打ち勝ち、第1スライダ40は、開き方向Doに移動している。この際、第1スライダ40の左端部がバネホルダ33のストッパ33xに当たるため、第1スライダ40は開き方向Doへの移動を制限されている。他方、第2バイアスバネ64が第2形状記憶バネ63に打ち勝つので、第2スライダ50は閉じ方向Dcへ移動している。この際、第2スライダ50の係合突出部52の右端面が第1スライダ40のバネ受け部44の側縁44xに当たるので、第2スライダ50は閉じ方向Dcへの移動を制限されている。
その結果、第2スライダ50は、
図2(C)に示すように、作動板22により装置本体10の通気口12aを狭めた状態(2/3閉じ)にすることができる。そのため、屋外の冷気が侵入したり室内の暖気が逃げたりすることがなく、高い暖房効率を維持できる。なお、燃焼を伴わない暖房を行なう場合には、排気ガスを逃がす必要がないので、通気口12aを全閉にしてもよい。
【0047】
上記低温時において、第1スライダ40の開き方向Doへの移動が制限されているため、第2バイアスバネ64の力が第1バイアスバネ62の力により干渉ないしは相殺されない。その結果、上記の閉じ動作を確実に実行することができる。
【0048】
気温が6℃に達すると、第2形状記憶バネ62のバネ力が上昇して第2バイアスバネ64と等しくなる。さらに温度上昇すると、第2形状記憶バネ63のバネ力が略リニアに上昇し、温度上昇分だけ第2スライダ50を開き方向Doに移動させる。その結果、作動板22が開き方向に移動する。このようにして、6℃〜16℃の温度範囲(中間温度領域)では、通気口12aは温度に応じた開度になるように制御される。温度が高くなるほど開度が大きくなる。
上記第2スライダ50による開度制御の際に、第1スライダ40の端部がバネホルダ33のストッパ部33xに当たった位置を維持されているため、第1形状記憶バネ61および第1バイアスバネ62は、上記開度制御に影響を与えない。
【0049】
さらに気温が上昇して16℃に達すると、
図3に示すように第2スライダ50が第1スライダ40の切欠43の側縁43xに当たり、作動板22は通気口12aを全開にする。この作動板22の全開状態は、気温が16℃〜26℃(常温領域)の間で維持される。
【0050】
気温が26℃に達すると、第1形状記憶バネ61のバネ力が上昇し第1バイアスバネ62と等しくなる。さらに温度上昇すると、第1形状記憶バネ61のバネ力が略リニアに上昇し、温度上昇分だけ第1スライダ40を閉じ方向Dcへ移動させる。その結果、第2スライダ50も同方向に移動し、作動板22が通気口12aを閉じ始める。このようにして、26℃〜36℃の温度範囲(中間温度領域)では、通気口12aが温度に応じた開度になるように作動板22が制御される。温度が高くなるほど開度が小さくなる。
上記第1形状記憶バネ61による第1スライダ40の移動に伴う開度制御の際に、第2スライダ50はその突出部52が第1スライダ40の切欠43の側縁43xに当たった状態を維持しており、上記開度制御に影響を与えない。すなわち、第1形状記憶バネ61の力が、第2形状記憶バネ63の力によって干渉ないしは相殺されない。
【0051】
気温が36℃に達すると、
図4に示すように第1形状記憶バネ61が第1バイアスバネ62に完全に打ち勝ち、作動板22は通気口12aを全閉にする。そのため、屋外の熱気が侵入したり室内の冷気が逃げることがなく、高い冷房効率を維持できる。この際、第1スライダ40の端部がバネホルダ32のストッパ部32xに当たる。第2スライダ50はその係合突出部52が第1スライダ40の切欠43の側縁43xに当たった状態を維持されている。
【0052】
上記温度アクチュエータAは、火災時にも気温が高い時と同様に作動し、通気口12aを閉じることができるので、室内への酸素供給を抑制し、火災の広がりを遅らせることができる。この役割を果たすためには、少なくともバネホルダ32の難燃性を高めることが好ましい。バネホルダ32の代わりに、ベース板の端部を切起こして第1形状記憶バネの一端を引っ掛けるためのバネ掛け部を形成してもよい。
【0053】
上記実施形態において、第1形状記憶バネ61と第1バイアスバネ62を逆に配置し、第2形状記憶バネ63と第2バイアスバネ64を逆に配置してもよい。この場合、第1形状記憶バネ61が第1スライダ40を開き方向に付勢し、第2形状記憶バネ63が第2スライダ60を閉じ方向に付勢する。この場合、第2形状記憶バネ63の変態温度が第1形状記憶バネ61より高温側にシフトするように設定される。
【0054】
以下、本発明の他の実施形態について図面を参照しながら説明する。これら実施形態において先行して説明する実施形態に対応する構成部には同番号または類似番号を付けて詳細な説明を省略する。
【0055】
図9、
図10に示す第2実施形態の換気装置1’は、窓サッシに上框として組み込まれるものである。この換気装置1’の装置本体10’は
図9の紙面と直交する方向に細長く形成されている。装置本体10’は垂直をなす主壁12を有し、この主壁12には多数の通気口12aが長手方向に間隔をおいて形成されている。
【0056】
主壁12の上縁部には軸支部18が形成されており、この軸支部18には作動板25の上縁部が回動可能に支持されている。作動板25が主壁12に接近すると、通気口12aが閉じられ、作動板25が主壁12から離れると通気口12aが開かれる。
【0057】
温度感応型アクチュエータAは、4つのバネ61〜64が2列をなして水平面上に配置されている。
図10に示すように、アクチュエータAは、第2スライダ50を作動板25に連携する連携手段としてカム部材80を有している。カム部材80は、主壁12に対して傾斜したカム溝81を有しており、このカム溝81に作動板25の下縁に形成された突起25a(
図9にのみ示す)が収容されている。
【0058】
第2スライダ50は、第1実施形態の連結爪51x,52xの代わりに、連結片59を有している。この係合片59は、主壁12の下部を装置本体10’の長手方向にスライド可能に貫通し、カム部材81の係合穴(図示しない)に係合されている。これにより、カム部材80は第2スライダ50と一緒に装置本体10’の長手方向に移動するようになっている。
【0059】
上記第2実施形態の換気装置1’の作用を簡単に説明する。
図10は常温時の状態を示す。この時、第1スライダ40が第1コイルスプリング62の力で開き方向Doに移動して、その端部がストッパ部33xに当たり、第2スライダ50が第2形状記憶バネ63の力で開き方向Doに移動し、その係合突出部52が切欠43の側縁43xに当たる。これにより、カム部材80が開き方向Doに移動し、カム溝81のカム作用で作動板25が主壁12から離れ、通気口12aを開く。
【0060】
低温時には、第2バイアスバネ64の力で第2スライダ50が閉じ方向Dcに移動し、その係合突出部52がバネ受け部44の側縁44xに当たる。これによりカム部材80が閉じ方向Dcに移動し、カム溝81のカム作用で作動板25が主壁12に近づくように回動し、通気口12aを閉じる。
【0061】
高温時には、第1形状記憶バネ61の力で第1スライダ40が閉じ方向Dcに移動し、その端部がバネ受け部32xに当たる。これによりカム部材80が閉じ方向Dcに移動し、カム溝81のカム作用で作動板25が主壁12に近づくように回動し、通気口12aを閉じる。
【0062】
第2実施形態において、カム部材80を装置本体10’に固定し、作動板25を換気装置10’の長手方向にスライドさせるようにしてもよい。作動板25はスライドに伴ってカム溝81のカム作用により主壁12に接近したり離れたりする。この場合、第2スライダ50は作動板25に、作動板25の回動を許容し換気装置10’の長手方向に移動不能に連結される。
【0063】
図11、
図12に示す第3実施形態の温度感応アクチュエータA’では、4つのバネ61〜64が装置本体の長手方向に延びる直線上において一列をなして(一直線上に)配置されている。支持構造30’は、ベース板31’(ベース部)と、その両端部に固定されたバネホルダ32’,33’を有している。ベース板31’は、第1、第2実施形態のベース板31に比べて長いが、幅は狭い。
【0064】
第1スライダ40’のスライド部40a’は、ベース板31’より短い。第1スライダ40’は、スライド部40a’の両端部に、バネ掛け部48,49(第2バネ掛け部)を有している。バネホルダ32’のバネ掛け部32yとバネ掛け部48との間に第1形状記憶バネ61が掛けられている。バネホルダ33’のバネ掛け部33yとバネ掛け部49との間に、第1バイアスバネ62が掛けられている。
【0065】
第2スライダ50’のスライド部51’とバネ掛け部48との間に第2バイアスバネ64が掛けられ、スライド部40a’とバネ掛け部49との間に第2形状記憶バネ63が掛けられている。
【0066】
ベース板31’には、ストッパ部31x,31y(第1スライダ用ストッパ部)が切起こされている。これらストッパ部31x,31yは、バネホルダ32’,33’より中央寄りに位置しており、これらストッパ部31x,31y間に第1スライダ40’が配置されている。第1スライダ40’の開き方向Doの移動は、その一端部がストッパ部31x(第1規制手段)に当たることにより規制され、閉じ方向Dcの移動はその端部がストッパ部31y(第3規制手段)に当たることにより規制される。
【0067】
第2スライダ50’は、第1実施形態と同様の連結爪51x、51xを有している。このこれら連結爪51xは、作動板22(
図1参照)に連結する連携手段としての役割を担う。また、下側の2つの連結爪51xは後述の係合突出部としての役割も担う。
【0068】
第1スライダ40’の水平片部42には、切欠43が形成され、この切欠43の両側縁43x、43yが第2スライダ用ストッパ部としての役割を担う。上記第2スライダ50’の下側の連結爪51xは、上記切欠43内に配置されている。第2スライダ50’の開き方向Doの移動は、左側の連結爪51xが切欠43の左側の側縁43x(第2規制手段)に当たることにより規制され、閉じ方向Dcの移動は、右側の連結爪51xが切欠43の右側の側縁43y(第4規制手段)に当たることにより規制される。
【0069】
本発明は、上記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において各種の変形例を採用することができる。例えば、第1実施形態の換気装置を窓サッシの上框として用いてもよい。ただしこの場合、装置本体は第2実施形態と同様の形状にする必要がある。
支持構造は、装置本体と一体に形成されていてもよい。
温度感応型アクチュエータの温度特性は適宜変更可能である。