(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1に開示されている曲げ加工装置では、ロール状のプレッシャがパイプに接触する位置が、曲げローラの回転に連動して変動するので、曲げ部分を移動させることはできても、プレッシャがパイプと接触する位置、すなわち曲げ部分において、外側における引っ張り力及び内側における圧縮力を受けることには変わりはない。したがって、曲げ部分に割れ、しわ等の損傷が生じる可能性が低くはなるものの、損傷を回避することはできないという問題点があった。
【0007】
少しでも損傷を回避するべく、例えば特許文献2では、パイプに対して軸方向に加圧しながら曲げ加工を行うパイプの曲げ加工装置が開示されている。加圧しながら曲げ加工を実行するので、曲げ部分の割れ、しわ等の損傷を防止することはできるものの、装置の構造が複雑になり、製造コストが上昇するという問題点があった。
【0008】
本発明は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、線材が中空のパイプであっても、曲げ部分の割れ、しわ等の損傷が生じるのを回避することができる、簡易な構造の線材曲げ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために第1発明に係る線材曲げ装置は、塑性変形することが可能な金属製の線材(中空の線材を含む)を加工位置に配置した状態で、回転軸を中心として回転可能な曲げローラと、該曲げローラを回転することが可能に支持する外周部材と、前記線材を前記曲げローラとの間で把持する把持手段とを備え、前記線材を加工位置に配置した状態で、前記曲げローラと前記把持手段との間で前記線材を把持し、前記曲げローラを支点として前記曲げローラとともに前記把持手段を回動させて前記線材を曲げる線材曲げ装置において、前記把持手段は、前記曲げローラと同一中心で一体となって回転することが可能であり、前記線材を把持するか否かの動作を制御する制御手段を備えており、前記制御手段は、前記曲げローラの回転に応じて前記把持手段が前記線材を把持し、あるいは開放するよう動作を制御し、前記線材を前記把持手段が把持した状態で前記曲げローラが回転することにより、前記線材を曲げ加工する
ものであり、前記把持手段は、前記曲げローラと、前記曲げローラの周面との間で前記線材を把持するとともに、前記曲げローラの回転中心を含む面上で上端部と下端部とが互いに反対方向へ揺動する把持部材とで構成されており、前記制御手段は、前記外周部材に備えた、前記把持部材の下端部を前記曲げローラ側へ押し出す、内周面の一部分に有する突起部と、前記把持部材の下端部を前記曲げローラから離れる方向へ押し出すカム機構とで構成されていることを特徴とする。
【0010】
第1発明では、把持手段が、曲げローラと同一中心で一体となって回転する。制御手段は、曲げローラの回転に応じて把持手段が線材を把持し、あるいは開放するよう動作を制御し、線材を把持手段が把持した状態で曲げローラが回転することにより、線材を曲げ加工する。これにより、線材を曲げ加工する時点で、線材が把持手段により把持されているので、曲げ部分において、外側における引っ張り力及び内側における圧縮力が生じにくく、曲げ部分に割れ、しわ等の損傷が生じにくい。
また、把持手段は、曲げローラと、曲げローラの周面との間で線材を把持するとともに、曲げローラの回転中心を含む面上で上端部と下端部とが互いに反対方向へ揺動する把持部材とで構成されている。制御手段は、外周部材に備えた、把持部材の下端部を曲げローラ側へ押し出す、内周面の一部分に有する突起部と、把持部材の下端部を曲げローラから離れる方向へ押し出すカム機構とで構成されている。したがって、線材を曲げ加工する場合には、カム機構により把持部材の下端部が曲げローラから離れる方向へ押し出され、把持部材の上端部と曲げローラとの間で線材を把持することができる。曲げ加工をしない場合には、外周部材の内周面の一部分に備えた突起部により、把持部材の下端部が曲げローラ側へ押し出され、線材が開放される。
【0013】
また、第
2発明に係る線材曲げ装置は、第
1発明において、前記カム機構は、一端が前記外周部材の内周面と接触し、他端が前記把持部材の下端部と接触する摺動部材を含むことが好ましい。
【0014】
第
2発明では、カム機構は、一端が外周部材の内周面と接触し、他端が把持部材の下端部と接触する摺動部材を含むので、外周部材の内周面の形状によって、所望のタイミングで線材を把持する、あるいは開放することができる。
【0015】
次に、上記目的を達成するために第
3発明に係る線材曲げ装置は、
塑性変形することが可能な金属製の線材(中空の線材を含む)を加工位置に配置した状態で、回転軸を中心として回転可能な曲げローラと、該曲げローラを回転することが可能に支持する外周部材と、前記線材を前記曲げローラとの間で把持する把持手段とを備え、前記線材を加工位置に配置した状態で、前記曲げローラと前記把持手段との間で前記線材を把持し、前記曲げローラを支点として前記曲げローラとともに前記把持手段を回動させて前記線材を曲げる線材曲げ装置において、前記把持手段は、前記曲げローラと同一中心で一体となって回転することが可能であり、前記線材を把持するか否かの動作を制御する制御手段を備えており、前記制御手段は、前記曲げローラの回転に応じて前記把持手段が前記線材を把持し、あるいは開放するよう動作を制御し、前記線材を前記把持手段が把持した状態で前記曲げローラが回転することにより、前記線材を曲げ加工するものであり、前記把持手段は、前記曲げローラと、前記曲げローラの周面との間で前記線材を把持するとともに、前記曲げローラの回転中心を含む面上で摺動する把持部材とで構成されており、前記制御手段は、前記把持部材の下端部の両端に、前記外周部材の内周面と接触する一対のローラを有し、前記一対のローラが、前記外周部材の内周面との間でカム機構を構成していること
を特徴とする。
【0016】
第
3発明では、把持手段は、曲げローラと、曲げローラの周面との間で線材を把持するとともに、曲げローラの回転中心を含む面上で摺動する把持部材とで構成されており、制御手段は、把持部材の下端部の両端に、外周部材の内周面と接触する一対のローラを有し、一対のローラが、外周部材の内周面との間でカム機構が構成されている。したがって、線材を曲げ加工する場合には、カム機構により把持部材が曲げローラに近づく方向へ摺動し、把持部材の上端部と曲げローラとの間で線材を把持することができる。曲げ加工をしない場合には、カム機構により把持部材が曲げローラから離れる方向へ摺動し、線材が開放される。
【0017】
次に、上記目的を達成するために第
4発明に係る線材曲げ装置は、
塑性変形することが可能な金属製の線材(中空の線材を含む)を加工位置に配置した状態で、回転軸を中心として回転可能な曲げローラと、該曲げローラを回転することが可能に支持する外周部材と、前記線材を前記曲げローラとの間で把持する把持手段とを備え、前記線材を加工位置に配置した状態で、前記曲げローラと前記把持手段との間で前記線材を把持し、前記曲げローラを支点として前記曲げローラとともに前記把持手段を回動させて前記線材を曲げる線材曲げ装置において、前記把持手段は、前記曲げローラと同一中心で一体となって回転することが可能であり、前記線材を把持するか否かの動作を制御する制御手段を備えており、前記制御手段は、前記曲げローラの回転に応じて前記把持手段が前記線材を把持し、あるいは開放するよう動作を制御し、前記線材を前記把持手段が把持した状態で前記曲げローラが回転することにより、前記線材を曲げ加工するものであり、前記把持手段は、前記曲げローラと、前記曲げローラの周面との間で前記線材を把持するとともに、前記曲げローラの回転中心を含む面上で摺動する把持部材とで構成されており、前記制御手段は、前記把持部材の下端部を前記曲げローラから離れる方向へ押し出すカム機構と、前記下端部を前記曲げローラ側へ引き込む付勢部材とで構成されていること
を特徴とする。
【0018】
第
4発明では、把持手段は、曲げローラと、曲げローラの周面との間で線材を把持するとともに、曲げローラの回転中心を含む面上で摺動する把持部材とで構成されている。制御手段は、把持部材の下端部を曲げローラから離れる方向へ押し出すカム機構と、下端部を曲げローラ側へ引き込む付勢部材とで構成されている。したがって、線材を曲げ加工する場合には、カム機構により把持部材が曲げローラに近づく方向へ摺動し、把持部材の上端部と曲げローラとの間で線材を把持することができる。曲げ加工をしない場合には、付勢部材により把持部材が曲げローラから離れる方向へ摺動し、線材が開放される。
【0019】
また、第
5発明に係る線材曲げ装置は、第1乃至第
4発明のいずれか1つにおいて、前記曲げローラに配置される前記線材の長手方向と交差する方向に装置全体を摺動させる摺動手段を備えることが好ましい。
【0020】
第
5発明では、曲げローラに配置される線材の長手方向と交差する方向に装置全体を摺動させる摺動手段を備えるので、装置の動作の制御プログラムを変更することなく、線材の曲げ方向を右曲げ、左曲げと自由に変更することが可能となる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、把持手段が、曲げローラと同一中心で一体となって回転する。制御手段は、曲げローラの回転に応じて把持手段が線材を把持し、あるいは開放するよう動作を制御し、線材を把持手段が把持した状態で曲げローラが回転することにより、線材を曲げ加工する。これにより、線材を曲げ加工する時点で、線材が把持手段により把持されているので、曲げ部分において、外側における引っ張り力及び内側における圧縮力が生じにくく、曲げ部分に割れ、しわ等の損傷が生じにくい。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に、本発明をその実施の形態を示す図面に基づいて説明する。なお、本明細書では、説明をわかりやすくするために、塑性変形することが可能な金属製の線材(中空の線材を含む)の加工位置として、曲げローラに接するように水平方向に保持するものとして説明する。また、曲げ加工される前の線材の長手方向をX軸方向(後述する
図4(a)中の矢印方向参照)として説明する。
【0024】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1に係る線材曲げ装置の要部構成を示す、把持部材(把持手段)の搖動面での断面図である。
図1では、線材曲げ装置10において、線材を曲げ加工する加工位置に配置する前の状態を示しており、線材は把持されていない。
【0025】
図1に示すように、本実施の形態1に係る線材曲げ装置10は、中央で略鉛直方向(X軸方向と直交するZ軸方向)を回転軸として回転軸を中心に回転可能な曲げローラ1と、曲げローラ1上部の外周面との間で線材を把持する把持部材(把持手段)2とが、曲げローラ1を回転可能に支持する外周部材3の内側に収容されている。
【0026】
曲げローラ1は、回動軸11に装着され、回動軸11と一体に回動駆動される。なお、回動軸11は、サーボモータ等の駆動手段によって0°〜180°の範囲内で回動駆動される。
【0027】
曲げローラ1の上部外周面には、線材の曲げの曲率(曲げ後の目標曲率)に合わせた曲率型溝12が形成されている。曲率型溝12が、配置された時点での線材の高さ位置(略鉛直方向の位置)に合致するように、曲げローラ1は固定されている。そして、曲率型溝12を上方から見た曲率の中心(線材の曲げR径の中心)は、回動軸11の回動中心と合致する。
【0028】
曲率型溝12は、線材の側面が強く押し付けられる。したがって、曲率型溝12の溝形状(凹みの形)は、線材の外周面の周方向の約1/2〜1/3と接触する断面円弧状で形成されている。
【0029】
本実施の形態1に係る線材曲げ装置10は、線材を把持するか否かの動作を制御する制御手段20を備えている。制御手段20は、曲げローラ1の回転に応じて把持部材(把持手段)2の動作を制御して、線材を把持し、あるいは開放する。
【0030】
本実施の形態1では、制御手段20は、把持部材(把持手段)2、外周部材3の突起部31、ロッド部材41で構成されている。ロッド部材(摺動部材)41は曲げローラ1に摺動することが可能に設けられており、外周部材3の突起部31は、外周部材3のカム面32の回転中心から距離が離れている側と回転中心を挟んで反対側に設けられている。
【0031】
本実施の形態1に係る把持部材(把持手段)2は、支点21を中心として、上端の線材の把持部22と、下端の突起部当接部23及びロッド部材当接部24とが、互いに反対方向へ搖動する。すなわち、突起部当接部23が外周部材3の突起部31で押し出される場合には、把持部材(把持手段)2が
図1の反時計回りに回転し、線材を開放する。また、外周部材3の内周面で構成されるカム面32にロッド部材41の一端41aが接触しているので、曲げローラ1の回転に伴ってロッド部材41によりロッド部材当接部24が押し出される場合には、把持部材(把持手段)2が
図1の時計回りに回転し、線材を把持する。
【0032】
図2は、本発明の実施の形態1に係る線材曲げ装置10の動作の概要説明図である。まず
図2(a)に示すように、X軸方向に曲げ加工の対象となる線材Pを加工位置へと誘導する。この時点では、線材Pは曲げローラ1に接触しているものの、ロッド部材41の一端41aはカム面32の回転中心から最も離れている位置にあり、把持部材(把持手段)2の下端が突起部31と接触していることから、線材Pは開放されている。
【0033】
次に、
図2(b)に示すように、外周部材3に固定されているガイドローラ35を反時計回りに回転させる。
図3は、本発明の実施の形態1に係る線材曲げ装置10の要部構成を示す、把持部材(把持手段)2で線材Pが把持されている状態における搖動面での断面図である。
【0034】
図3に示すように、外周部材3の内周面であるカム面32が回転するので、ロッド部材41の一端41aは回転中心に最も近接している面と接触する。したがって、ロッド部材41が
図1より左側へ摺動するので、ロッド部材当接部24が曲げローラ1から離れる方向へ押し出され、把持部材(把持手段)2の下部が曲げローラ1から離れる方向へ搖動し、上部が曲げローラ1へ近づく方向へ搖動する。把持部材(把持手段)2の搖動により、線材Pは、把持部材(把持手段)2の把持部22と曲げローラ1の曲率型溝12との間で把持される。
【0035】
図2(c)に戻って、線材Pを把持した状態のまま、曲げローラ1を時計回りに回転させる。これにより、曲げローラ1の曲率型溝12の形状に沿って線材Pが曲げ加工される。線材Pが把持されている状態で曲げ加工されるので、曲げ部分において、外側における引っ張り力及び内側における圧縮力が生じにくく、線材Pがパイプ状であっても曲げ部分に割れ、しわ等の損傷が生じにくく、安定した曲げ加工を行うことが可能となる。
【0036】
そして、
図2(d)に示すように、ガイドローラ35を時計回りに回転させて、突起部当接部23が外周部材3の突起部31で押し出される位置まで移動することで、把持部材(把持手段)2が線材Pを開放する。最後に、
図2(e)に示すように、線材Pを開放した状態でガイドローラ35を反時計回りに回転させて、
図2(a)の初期位置まで戻すことで、曲げ加工が終了する。
【0037】
なお、
図2の例では、線材Pを右方向へ曲げ加工しているが、線材Pの加工位置を変更することにより左方向へ曲げ加工することもできる。
図4は、本発明の実施の形態1に係る線材曲げ装置10の横移動機構の構成を示す概要図である。
【0038】
図4に示すように、実施の形態1に係る線材曲げ装置10は、移動台座62上に設置されている。移動台座62は、サーボモータ61により、線材Pの送り出し方向であるX軸方向(
図2(a)の矢印方向)と直交するY軸方向にシフト移動することができる。右曲げ加工の場合には、
図4に示すように曲げローラ1の曲率型溝12の左側の位置に線材Pの送り出し位置が一致するよう移動台座62を移動させる。一方、左曲げ加工の場合には、
図4に示す、曲げローラ1の曲率型溝12の右側の位置Qに線材Pの送り出し位置が一致するよう移動台座62を移動させる。
【0039】
図5は、本発明の実施の形態1に係る線材曲げ装置10の左曲げ加工時の動作の概要説明図である。まず
図5(a)に示すように、X軸方向に曲げ加工の対象となる線材Pを加工位置へと誘導する。加工位置は、
図2に示す右曲げ加工時とは、曲げローラ1の回転中心を挟んで反対側になる。この時点では、線材Pは曲げローラ1に接触しているものの、ロッド部材41の一端41aはカム面32の回転中心から最も離れている位置にあり、把持部材(把持手段)2の下端が突起部31と接触していることから、線材Pは開放されている。
【0040】
次に、
図5(b)に示すように、外周部材3に固定されているガイドローラ35を時計回りに回転させる。これにより、外周部材の内周面であるカム面32が回転するので、ロッド部材41の一端41aは回転中心に最も近接している面と接触する。したがって、ロッド部材41が摺動して、ロッド部材当接部24が曲げローラ1から離れる方向へ押し出されるので、把持部材(把持手段)2の下部が曲げローラ1から離れる方向へ搖動し、上部が曲げローラ1へ近づく方向へ搖動する。把持部材(把持手段)2の搖動により、線材Pは、把持部材(把持手段)2の把持部22と曲げローラ1の曲率型溝12との間で把持される。
【0041】
次に、
図5(c)に示すように、線材Pを把持した状態のまま、曲げローラ1を反時計回りに回転させる。これにより、曲げローラ1の曲率型溝12の形状に沿って線材Pが曲げ加工される。線材Pが把持されている状態で曲げ加工されるので、曲げ部分において、外側における引っ張り力及び内側における圧縮力が生じにくく、線材Pがパイプ状であっても曲げ部分に割れ、しわ等の損傷が生じにくく、安定した曲げ加工を行うことが可能となる。
【0042】
そして、
図5(d)に示すように、ガイドローラ35を反時計回りに回転させて、突起部当接部23が外周部材3の突起部31で押し出される位置まで移動することで、把持部材(把持手段)2が線材Pを開放する。最後に、
図5(e)に示すように、線材Pを開放した状態でガイドローラ35を時計回りに回転させて、
図5(a)の初期位置まで戻すことで、曲げ加工が終了する。
【0043】
以上のように本実施の形態1によれば、線材Pを曲げ加工する場合には、カム機構により把持部材(把持手段)2の下端部が曲げローラ1から離れる方向へ押し出され、把持部材(把持手段)2の把持部22と曲げローラ1の曲率型溝12との間で線材Pを把持することができる。曲げ加工をしない場合には、外周部材3の内周面の一部分に備えた突起部31により、把持部材(把持手段)2の下端部が曲げローラ1側へ押し出され、線材Pが開放される。したがって、線材Pを曲げ加工する時点で、線材Pが把持部材(把持手段)2により把持されているので、曲げ部分において、外側における引っ張り力及び内側における圧縮力が生じにくく、曲げ部分に割れ、しわ等の損傷が生じにくい。
【0044】
(実施の形態2)
本発明の実施の形態2に係る線材曲げ装置10の要部の構成は、実施の形態1と同一であることから、同一の構成部材については同一の符号を付することにより、詳細な説明は省略する。本実施の形態2は、把持部材(把持手段)2の搖動ではなく、把持部材(把持手段)2の摺動により線材Pの把持あるいは開放を制御している点で実施の形態1と相違する。
【0045】
図6は、本発明の実施の形態2に係る線材曲げ装置の要部構成を示す、把持部材(把持手段)2の摺動面での断面図である。
図6では、線材曲げ装置10において、線材Pを曲げ加工する加工位置に配置する前の状態を示しており、線材Pは把持されていない。
【0046】
図6に示すように、本実施の形態2に係る線材曲げ装置10は、中央で略鉛直方向(X軸方向と直交するZ軸方向)を回転軸として回転する曲げローラ1と、曲げローラ1上部の外周面との間で線材Pを把持する把持部材(把持手段)2とが、外周部材3の内側に収容されている。
【0047】
本実施の形態2に係る線材曲げ装置10の曲げローラ1の構成は、実施の形態1と同様であることから、同一の符号を付することにより詳細な説明は省略する。
【0048】
本実施の形態2に係る線材曲げ装置10の制御手段20は、ローラを両端に有する把持部材(把持手段)2、及び外周部材3の内周面(カム面)32で構成されるカム機構である。本実施の形態2に係る把持部材(把持手段)2は、両端にローラ25、26を有し、ローラ25、26を結ぶ方向に摺動することが可能に保持されている。
【0049】
上部には線材Pの把持部22を有しており、ローラ25、26が外周部材3のカム面32と接触することにより把持部材(把持手段)2が摺動する。すなわち、カム面32は、突出している部分と回転中心を挟んで反対側の部分が窪んでいる形状を有しており、ローラ25、26が常にカム面32に接触するようになっている。カム面32によりローラ25が曲げローラ1から離れる方向へ移動する場合には、把持部材(把持手段)2が
図6の左方向へ摺動し、線材Pを開放する。また、カム面32によりローラ25が曲げローラ1に近づく方向へ移動する場合には、把持部材(把持手段)2が
図6の右方向へ摺動し、線材Pを把持する。
【0050】
図7は、本発明の実施の形態2に係る線材曲げ装置10の外周部材3のカム面32の形状を示す例示図である。
図7に示すように回転中心Оを挟んで、一端側に突出した突出面321を、突出面321と回転中心Оを挟んで反対側に他端側から一端側へと窪んだ窪み面322とを備えている。これにより、二基のローラ25、26がカム面32に接触しながら回転することにより、把持部材(把持手段)2を所望のタイミングで摺動させることが可能となる。
【0051】
図8は、本発明の実施の形態2に係る線材曲げ装置10の動作の概要説明図である。まず
図8(a)に示すように、X軸方向に曲げ加工の対象となる線材Pを加工位置へと誘導する。この時点では、線材Pは曲げローラ1に接触しているものの、ローラ25はカム面32の突出面321に、ローラ26は、カム面32の窪み面322に、それぞれ接触している。したがって、把持部材(把持手段)2は、
図6の最も左側に位置しており、線材Pは開放されている。
【0052】
次に、
図8(b)に示すように、外周部材3に固定されているガイドローラ35を反時計回りに回転させる。
図9は、本発明の実施の形態2に係る線材曲げ装置10の要部構成を示す、把持部材(把持手段)2で線材Pが把持されている状態における把持部材(把持手段)2の摺動面での断面図である。
【0053】
図9に示すように、外周部材3の内周面であるカム面32が回転して、ローラ25がカム面32の回転中心からの距離が最も短い面と接触する。したがって、把持部材(把持手段)2が
図6より右側、すなわち曲げローラ1へ近づく方向へ摺動する。把持部材(把持手段)2の摺動により、線材Pは、把持部材(把持手段)2の把持部22と曲げローラ1の曲率型溝12との間で把持される。
【0054】
図8(c)に戻って、線材Pを把持した状態のまま、曲げローラ1を時計回りに回転させる。これにより、曲げローラ1の曲率型溝12の形状に沿って線材Pが曲げ加工される。線材Pが把持されている状態で曲げ加工されるので、曲げ部分において、外側における引っ張り力及び内側における圧縮力が生じにくく、線材Pがパイプ状であっても曲げ部分に割れ、しわ等の損傷が生じにくく、安定した曲げ加工を行うことが可能となる。
【0055】
そして、
図8(d)に示すように、ガイドローラ35を時計回りに回転させて、カム面32の突出面321がローラ25に、カム面32の窪み面322がローラ26に、それぞれ接触する位置まで移動することで、把持部材(把持手段)2が線材Pを開放する。最後に、
図8(e)に示すように、線材Pを開放した状態でガイドローラ35を反時計回りに回転させて、
図8(a)の初期位置まで戻すことで、曲げ加工が終了する。
【0056】
なお、
図8の例では、線材Pを右方向へ曲げ加工しているが、線材Pの加工位置を変更することにより左方向へ曲げ加工することもできる。実施の形態1の
図4と同様の横移動機構により、曲げローラ1の曲率型溝12の右側の位置Qに線材Pの送り出し位置が一致するよう移動台座62を移動させることで、左曲げ加工を行うことができる。
【0057】
図10は、本発明の実施の形態2に係る線材曲げ装置10の左曲げ加工時の動作の概要説明図である。まず
図10(a)に示すように、X軸方向に曲げ加工の対象となる線材Pを加工位置へと誘導する。加工位置は、
図8に示す右曲げ加工時とは、曲げローラ1の回転中心を挟んで反対側になる。この時点では、線材Pは曲げローラ1に接触しているものの、ローラ25はカム面32の突出面321に、ローラ26は、カム面32の窪み面322に、それぞれ接触している。したがって、線材Pは開放されている。
【0058】
次に、
図10(b)に示すように、外周部材3に固定されているガイドローラ35を時計回りに回転させる。これにより、外周部材3の内周面であるカム面32が回転して、ローラ25がカム面32の回転中心からの距離が最も短い面と接触する。したがって、把持部材(把持手段)2が曲げローラ1へ近づく方向へ摺動する。把持部材(把持手段)2の摺動により、線材Pは、把持部材(把持手段)2の把持部22と曲げローラ1の曲率型溝12との間で把持される。
【0059】
図10(c)に戻って、線材Pを把持した状態のまま、曲げローラ1を反時計回りに回転させる。これにより、曲げローラ1の曲率型溝12の形状に沿って線材Pが曲げ加工される。線材Pが把持されている状態で曲げ加工されるので、曲げ部分において、外側における引っ張り力及び内側における圧縮力が生じにくく、線材Pがパイプ状であっても曲げ部分に割れ、しわ等の損傷が生じにくく、安定した曲げ加工を行うことが可能となる。
【0060】
そして、
図10(d)に示すように、ガイドローラ35を反時計回りに回転させて、カム面32の突出面321がローラ25に、カム面32の窪み面322がローラ26に、それぞれ接触する位置まで移動することで、把持部材(把持手段)2が線材Pを開放する。最後に、
図10(e)に示すように、線材Pを開放した状態でガイドローラ35を時計回りに回転させて、
図10(a)の初期位置まで戻すことで、曲げ加工が終了する。
【0061】
以上のように本実施の形態2によれば、線材Pを曲げ加工する場合には、カム機構により把持部材(把持手段)2の下端部が曲げローラから離れる方向へ摺動し、把持部材の上端部と曲げローラとの間で線材を把持することができる。曲げ加工をしない場合には、カム機構により把持部材の下端部が曲げローラ側へ摺動し、線材が開放される。したがって、線材Pを曲げ加工する時点で、線材Pが把持手段により把持されているので、曲げ部分において、外側における引っ張り力及び内側における圧縮力が生じにくく、曲げ部分に割れ、しわ等の損傷が生じにくい。
【0062】
(実施の形態3)
本発明の実施の形態3に係る線材曲げ装置10の要部の構成は、実施の形態1及び2と同一であることから、同一の構成部材については同一の符号を付することにより、詳細な説明は省略する。本実施の形態3は、把持部材(把持手段)2の摺動をカム機構及び付勢部材で制御している点で実施の形態2と相違する。
【0063】
図11は、本発明の実施の形態3に係る線材曲げ装置10の要部構成を示す、把持部材(把持手段)2の摺動面での断面図である。
図11では、線材曲げ装置10において、線材Pを曲げ加工する加工位置に配置する前の状態を示しており、線材Pは把持されていない。
【0064】
図11に示すように、本実施の形態3に係る線材曲げ装置10は、中央で略鉛直方向(X軸方向と直交するZ軸方向)を回転軸として回転する曲げローラ1と、曲げローラ1上部の外周面との間で線材Pを把持する把持部材(把持手段)2とが、外周部材3の内側に収容されている。
【0065】
本実施の形態3に係る線材曲げ装置10の曲げローラ1の構成は、実施の形態1及び2と同様であることから、同一の符号を付することにより詳細な説明は省略する。
【0066】
本実施の形態3に係る線材曲げ装置10の制御手段20は、ローラを一端に、弾性バネ等の付勢部材29を他端に、それぞれ有する把持部材(把持手段)2、及び外周部材3の内周面32(カム面)で構成されるカム機構である。本実施の形態3に係る把持部材(把持手段)2は、一端にローラ25を、他端に付勢部材29を、それぞれ有し、ローラ25と付勢部材29とを結ぶ方向に摺動することが可能に保持されている。
【0067】
上部には線材Pの把持部22を有しており、ローラ25が外周部材3のカム面32と接触することにより把持部材(把持手段)2が摺動する。カム面32によりローラ25が曲げローラ1から離れる方向へ移動する場合には、把持部材(把持手段)2が
図11の左方向へ摺動し、線材Pを開放する。このとき、付勢部材29により、把持部材(把持手段)2はカム面32に押し付けられる方向の付勢力を付与されている。また、カム面32によりローラ25が曲げローラ1に近づく方向へ移動する場合には、付勢部材29の付勢力に抗して、カム面32に沿って
図11の右方向へ摺動し、線材Pを把持する。
【0068】
図12は、本発明の実施の形態3に係る線材曲げ装置10の動作の概要説明図である。まず
図12(a)に示すように、X軸方向に曲げ加工の対象となる線材Pを加工位置へと誘導する。この時点では、線材Pは曲げローラ1に接触しているものの、ローラ25はカム面32に接触している。したがって、把持部材(把持手段)2は、付勢部材29の付勢力により
図11の最も左側に位置しており、線材Pは開放されている。
【0069】
次に、
図12(b)に示すように、外周部材3に固定されているガイドローラ35を反時計回りに回転させる。
図13は、本発明の実施の形態3に係る線材曲げ装置10の要部構成を示す、把持部材(把持手段)2で線材Pが把持されている状態における把持部材(把持手段)2の摺動面での断面図である。
【0070】
図13に示すように、外周部材3の内周面であるカム面32が回転して、ローラ25がカム面32の回転中心からの距離が最も短い面と接触する。したがって、付勢部材29の付勢力に抗して、把持部材(把持手段)2が
図11より右側、すなわち曲げローラ1へ近づく方向へ摺動する。把持部材(把持手段)2の摺動により、線材Pは、把持部材(把持手段)2の把持部22と曲げローラ1の曲率型溝12との間で把持される。
【0071】
図12(c)に戻って、線材Pを把持した状態のまま、曲げローラ1を時計回りに回転させる。これにより、曲げローラ1の曲率型溝12の形状に沿って線材Pが曲げ加工される。線材Pが把持されている状態で曲げ加工されるので、曲げ部分において、外側における引っ張り力及び内側における圧縮力が生じにくく、線材Pがパイプ状であっても曲げ部分に割れ、しわ等の損傷が生じにくく、安定した曲げ加工を行うことが可能となる。
【0072】
そして、
図12(d)に示すように、ガイドローラ35を時計回りに回転させることにより、ローラ25がカム面32のうち回転中心からの距離が最も長い面に接触するので、付勢部材29の付勢力により把持部材(把持手段)2が摺動して、線材Pを開放する。最後に、
図12(e)に示すように、線材Pを開放した状態でガイドローラ35を反時計回りに回転させて、
図12(a)の初期位置まで戻すことで、曲げ加工が終了する。
【0073】
なお、
図12の例では、線材Pを右方向へ曲げ加工しているが、線材Pの加工位置を変更することにより左方向へ曲げ加工することもできる。実施の形態1の
図4と同様の横移動機構により、曲げローラ1の曲率型溝12の右側の位置Qに線材Pの送り出し位置が一致するよう移動台座62を移動させることで、左曲げ加工を行うことができる。
【0074】
図14は、本発明の実施の形態3に係る線材曲げ装置10の左曲げ加工時の動作の概要説明図である。まず
図14(a)に示すように、X軸方向に曲げ加工の対象となる線材Pを加工位置へと誘導する。加工位置は、
図12に示す右曲げ加工時とは、曲げローラ1の回転中心を挟んで反対側になる。この時点では、線材Pは曲げローラ1に接触しているものの、ローラ25はカム面32のうち回転中心からの距離が最も長い面に、付勢部材29の付勢力により押し付けられて接触している。したがって、線材Pは開放されている。
【0075】
次に、
図14(b)に示すように、外周部材3に固定されているガイドローラ35を時計回りに回転させる。これにより、外周部材3の内周面であるカム面32が回転して、ローラ25がカム面32の回転中心からの距離が最も短い面と接触する。したがって、付勢部材29の付勢力に抗して、把持部材(把持手段)2が曲げローラ1へ近づく方向へ摺動する。把持部材(把持手段)2の摺動により、線材Pは、把持部材(把持手段)2の把持部22と曲げローラ1の曲率型溝12との間で把持される。
【0076】
そして、
図14(c)に示すように、線材Pを把持した状態のまま、曲げローラ1を反時計回りに回転させる。これにより、曲げローラ1の曲率型溝12の形状に沿って線材Pが曲げ加工される。線材Pが把持されている状態で曲げ加工されるので、曲げ部分において、外側における引っ張り力及び内側における圧縮力が生じにくく、線材Pがパイプ状であっても曲げ部分に割れ、しわ等の損傷が生じにくく、安定した曲げ加工を行うことが可能となる。
【0077】
そして、
図14(d)に示すように、ガイドローラ35を反時計回りに回転させて、ローラ25がカム面32のうち回転中心からの距離が最も長い面に接触する位置まで移動することで、付勢部材29の付勢力により把持部材(把持手段)2が摺動して、線材Pを開放する。最後に、
図14(e)に示すように、線材Pを開放した状態でガイドローラ35を時計回りに回転させて、
図14(a)の初期位置まで戻すことで、曲げ加工が終了する。
【0078】
以上のように本実施の形態3によれば、線材Pを曲げ加工する場合には、カム機構により把持部材(把持手段)2が曲げローラ1に近づく方向へ摺動し、把持部材(把持手段)2の上端部と曲げローラ1との間で線材Pを把持することができる。曲げ加工をしない場合には、付勢部材29により把持部材(把持手段)2が曲げローラ1から離れる方向へ摺動し、線材Pが開放される。したがって、線材Pを曲げ加工する時点で、線材Pが把持手段により把持されているので、曲げ部分において、外側における引っ張り力及び内側における圧縮力が生じにくく、曲げ部分に割れ、しわ等の損傷が生じにくい。
【0079】
なお、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨の範囲内であれば多種の変形、置換等が可能であることは言うまでもない。例えばカム機構、付勢部材等の構成は上述した実施例に限定されるものではなく、曲げローラの回転に応じて把持手段が線材を把持し、あるいは開放するよう動作を制御することができれば、特に限定されるものではない。