(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記多糖類が、デンプン、水溶性デキストリン、難消化性デキストリン、キサンタンガム、グアガム、タラガム、カラギーナンおよびローカストビーンガムの少なくとも1種である請求項6に記載の製造方法。
前記乾燥すりおろしこんにゃく薄膜片が、前記すりおろしこんにゃく断片から得られる複数の乾燥すりおろしこんにゃく断片の凝集体からなり、該凝集体は、前記複数の乾燥すりおろしこんにゃく断片のうちの少なくとも2つの乾燥すりおろしこんにゃく断片が、少なくとも一部において互いに重なり合った積層構造を有する請求項11に記載の製造方法。
前記凝集体は、前記複数の乾燥すりおろしこんにゃく断片のうちの少なくとも2つの乾燥すりおろしこんにゃく断片が、少なくとも一部において互いに重なり合った積層構造を有する請求項14に記載の乾燥すりおろしこんにゃく薄膜片。
【背景技術】
【0002】
近年、生活習慣病の予防等を目的として食物繊維の摂取か推奨されている。日本国厚生労働省による日本人の食事摂取基準(2015年版)では、食物繊維の目標量は、18歳以上では1日あたり男性は19gまたは20g以上、女性は17gまたは18g以上とされている。しかしながら、実際には日本人の平均的な食物繊維摂取量は、約10〜15g/日程度であるとの報告があり、その不足分を如何に補うかが重要な課題となっている。
食物繊維は、人の消化酵素によって消化されない難消化性物質の総称である。食物繊維には、腸内細菌のバランスを調整し、腸の機能を整える働きがあることが知られている。更には、食物繊維と生活習慣病との直接的あるいは間接的な関連についても明らかとされつつあり、日常における食物繊維の摂取はより一層重要となってきている。
【0003】
低カロリー食品であるこんにゃくはダイエット用の食物繊維としても利用価値の非常に高い食品である。こんにゃくイモの主成分であるグルコマンナンは水溶性食物繊維である。
グルコマンナンを水で膨潤してアルカリ条件化で加熱すると、グルコマンナン中のアセチル基が脱離することで化学的な構造変化が起こって不溶性食物繊維となり、ゲル化する。このゲル化のプロセスを利用してこんにゃくが製造される。このように、グルコマンナンは本来水溶性食物繊維として分類されるが、こんにゃくの形態として摂取することによって、グルコマンナンには不溶性食物繊維としての働きが期待できる。不溶性食物繊維は水分を保持し、腸内の有害物質を体外へと排出させる働きを持つとの報告がある。
しかしながら、こんにゃくは95%以上の水分含量を有し、一般に、保持水を含む状態で包装した重量のある商品として市場に供給されるため、流通上でのその取扱いは容易ではない。更には、こんにゃく特有の臭み成分であるトリメチルアミン臭や、こんにゃくゲルへの味の滲み込みの困難さが調理法を難しくしている。こんにゃくの有するこれらの特性は、食物繊維不足が懸念されている若い世代でのこんにゃくの積極的な活用を阻害している要因となっている。
本発明者らは、この課題を克服するには、こんにゃくの最も優れた生理的機能である不溶性食物繊維としての機能を、トリメチルアミン臭の除去された状態で取り出し、さらには、乾燥製品としての新しい食品に生まれ変わらせることが必要との結論に至った。
【0004】
既に、こんにゃく中の不溶性食物繊維を取り出すことを目的にした、すりおろしこんにゃくの製造法が各種提案されており、本発明者らもすりおろしこんにゃくに関する発明を出願済みである(特願2014−264566号:不溶性食物繊維含有物の製造方法)。
これら既存の技術は、こんにゃくを細断して水と共に磨りおろし、脱水することでトリメチルアミン臭の低減化を図り、こんにゃくの不溶性食物繊維を回収することを主目的としている。
【0005】
特許文献1では、こんにゃくを挽肉状に破砕後、水洗によるあく抜き、脱水を経て得られるこんにゃくペーストを、乾燥して、精粉機でパウダー化し、均質な状態とすることで、他の食品素材や調味料との混合を一層容易、かつ均一にできるこんにゃくパウダーが提案されている。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明にかかる、乾燥すりおろしこんにゃく薄膜片(以下、「乾燥こんにゃく薄膜片」と略称する)の製造方法は、以下の工程(A)〜(D)を有する。
(A)こんにゃくに水又は温水を加えて磨砕し、すりおろしこんにゃく断片(以下、「こんにゃく断片」と略称する)を含むすりおろしこんにゃくを調製する工程、
(B)すりおろしこんにゃくを脱水して、脱水すりおろしこんにゃくを得る工程、
(C)脱水すりおろしこんにゃくに含まれるこんにゃく断片を水性媒体に分散させて、こんにゃく断片と水性媒体を含む混合物を得る工程、及び
(D)混合物を乾燥させ、乾燥こんにゃく薄膜片を調製する工程。
上記の工程(A)〜(D)を有する製造方法によれは、磨砕により得られるこんにゃく断片の有する不定形の小断片形状に由来する独特な構造と微小サイズを有することで、そのまま摂取した場合においても良好な食感と違和感のない嚥下性を有する乾燥こんにゃく薄膜片を提供することができる。
本発明にかかる乾燥こんにゃく薄膜片の好ましい形態は、複数の乾燥こんにゃく断片の凝集体からなり、不定形の輪郭形状と、5μm〜400μmの範囲内にある不均一な厚さを有し、かつ凝集体が、複数の乾燥こんにゃく断片のうちの少なくとも2つの乾燥こんにゃく断片が、少なくとも一部において互いに重なり合った積層構造を有する。
更に、上記の工程(A)におけるこんにゃくの摩砕(擂り潰し)処理によって、複数の突出部(突起)が不均一に分布する部分を有する不定形の形状を、すりおろしこんにゃくに含まれるこんにゃく断片に与えることができる。突出部の形状としては、毛羽立ち状、ジグザグ状、並びに、紐状、帯状、半島状及び先鋭突起状を挙げることができる。各突出部はそれぞれ独立してこれらの形状から選択される少なくとも1種の形状を有することができる。
上記の工程(D)における乾燥及び薄膜片化のための処理時に、乾燥こんにゃく薄膜片に立体的形状を成さしめることで、最終的に得られる薄膜片状(例えば、フレーク状あるいはグリッツ状等の形状)の乾燥こんにゃくに、上記の効果を与える適度な大きさと独特な形状を得ることができる。
更に、乾燥こんにゃく薄膜片に、その厚さ方向と交叉する方向において、厚い部分と薄い部分とが不規則的に連続し、かつ適度にカールまたはねじれる構造を与えることもでき、この構造も上述した効果に寄与することができる。この厚さの不均一性に起因する乾燥時の立体的な構造変化は、摩砕(擂り潰し)により得られるこんにゃく断片の大きさ及び形状、さらには、複数のこんにゃく断片が部分的に重なり合うことで厚みのバラツキの程度が大きくなり、より大きな特徴として現れる。
【0014】
本発明において、すりおろしこんにゃくは、こんにゃくの磨砕処理により得られるこんにゃくの磨砕断片であるこんにゃく断片と水分とを含む混合物である。こんにゃくが磨砕処理によってすり潰されることで、様々なサイズ及び形のこんにゃく断片が形成される。この磨砕処理によってこんにゃくの塊が引きちぎられて小断片化することで、先に挙げたような不定形の形状を有するこんにゃく断片を得ることができる。
上記工程(A)および(B)を有するすりおろしこんにゃく製造工程では、こんにゃくを原料として用い、そのこんにゃくを、水またはお湯を加えて磨砕処理および脱水処理する。ここで用いるこんにゃくは特に制限されず、板こんにゃく、糸こんにゃく、白滝など任意のこんにゃくを用いることができる。
こんにゃくとしては、こんにゃく精粉を水に溶解させ、膨潤させたこんにゃく混練り物(所謂こんにゃく糊)にアルカリ凝固剤を添加し、これを加熱してゲル化させることによって得られる水分を含む生こんにゃくを用いることが好ましい。
こんにゃく混練り物におけるこんにゃく精粉の濃度は、2.0質量%〜3.5質量%の範囲内であってよい。こんにゃく精粉を溶解させる水の温度は、常温の水であってもよいし、70℃程度までの温水であってもよい。いずれの温度帯であっても、こんにゃく精粉が完全に膨潤していることが重要である。
こんにゃく混練り物に添加するアルカリ凝固剤としては、こんにゃくを製造するのに一般的に用いられる任意の凝固剤、例えば、水酸化カルシウム(消石灰、貝焼成石灰)や炭酸ナトリウムなどを用いることができる。こんにゃく混練り物のゲル化の際の加熱は、75〜90℃の熱水中、或いは、水蒸気雰囲気中でこんにゃく混練り物を10〜240分間程度加熱することによって行うことができる。
【0015】
ゲル化後のこんにゃくは、水またはお湯と共に磨砕処理される。磨砕処理されたこんにゃく断片のサイズは、後工程の脱水処理および薄膜乾燥を実施するのに差支えないサイズであれば特に限定されない。
磨砕処理されたこんにゃく断片のサイズは、磨砕に使用されるグラインダーのクリアランスで規定することができる。グラインダーのクリアランスを、例えば、0.1〜0.5mmの範囲に設定することができるが、後工程での脱水をより効果的に行うのであれば、0.1〜0.15mmの範囲から選択することが、さらに好ましい。
磨砕処理に先だってこんにゃくの粗細断を行うこともできる。粗細断は、例えば、こんにゃくを磨砕機に供給できるサイズに細断し、磨砕を行い易くするための処理である。従って、すりおろしこんにゃくの製造に用いるこんにゃくが、磨砕処理を行うのに支障のないサイズであれば、この粗細断は不要である。
磨砕処理は、加水して行うことが好ましい。磨砕処理に先立って粗細断を行う場合は、加水しないで粗細断を行った後、加水して磨砕処理を行ってもよい。あるいは、加水して粗細断を行った後、水切りをし、その後、新たに加水して磨砕処理を行ってもよい。また、こんにゃくの製造に引き続いて磨砕処理および/または粗細断が行われる場合、これらの処理は、こんにゃく混練り物のゲル化のための加熱の直後に行ってもよいし、冷却後に行ってもよいし、ゲル化を十分に進めるための熟成後に行ってもよい。加水を行う場合は、こんにゃくの質量の2倍までの量の水を加水することが好ましい。
【0016】
上記工程(B)において、すりおろしこんにゃくは脱水処理される。脱水処理には、フィルタープレス方式やベルトプレス方式など濾布を用いる脱水方式や、遠心分離方式、振動篩方式などから任意に選択された脱水方式が利用できる。
例えば、濾布を用いる脱水機によって脱水処理を行う場合、磨砕処理でのこんにゃくの微細化サイズが小さ過ぎると、濾布が目詰まりする恐れがあるため、磨砕処理でのこんにゃくの微細化のサイズは、脱水機の性能が十分に発揮できるように選択されることが重要である。さらには、こんにゃくの磨砕処理を60℃以上で行うことは、すりおろしこんにゃく断片を適度に硬くする効果があり、脱水性能の向上を図ることができるので、好ましい形態である。
こんにゃくの磨砕処理温度は特に制約されないが、すりおろしこんにゃく自体を60℃以上の温度とすることで幾分硬化し、その後の脱水が容易になるので、磨砕後の脱水処理を効率的に行い、こんにゃく断片に適度な硬さを得るという観点から、磨砕処理の温度は、60℃以上が好ましく、65℃以上がより好ましい。
なお、磨砕処理の温度の上限は特に限定されないが、摩砕処理の温度は、90℃以下の温度から選択することができる。
脱水処理は洗浄と組み合わされてもよい。脱水処理の目的の一つは、こんにゃくのトリメチルアミン臭を除去することである。従って、微細化されたこんにゃくを脱水する前に水で洗浄するか、水による洗浄と脱水を繰り返すことにより、より効果的にこんにゃく臭を除去することができる。また、洗浄によってすりおろしこんにゃくのpHを低下させることができるが、より積極的にトリメチルアミン臭を抑えるためには、洗浄処理に加えて、脱水前に酸味料をすりおろしこんにゃくに添加してそのpHを調整して置くことが効果的である。酸味料は特に限定されないが、酢酸、クエン酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸。グルコン酸、リン酸等の食品添加物として許容されている有機酸を利用することができ、好ましいpHの範囲は、3〜7である。
脱水処理後のこんにゃく、すなわち脱水すりおろしこんにゃくの含水率は、特に限定されることはないが、70〜95質量%であることが好ましく、70〜90質量%であることがより好ましい。
すりおろしこんにゃくの脱水は、こんにゃく断片を適度に硬化した状態として濾布の目詰まりを防ぐとの観点からは50℃以上で行うことが好ましく、より好ましくは60℃以上で行うことが良い。なお、脱水処理の温度の上限は特に限定されないが、90℃以下の温度から選択することができる。
こんにゃく断片の洗浄の温度も、上記の脱水用の温度から選択することが好ましい。
【0017】
以上のようにして得られた脱水すりおろしこんにゃくは、次いで工程(C)において水性媒体に分散され、少なくとも、脱水すりおろしこんにゃくに含まれていたこんにゃく断片と、水を含む混合物を得る。この混合物を工程(D)における乾燥処理用の材料として用いる。脱水すりおろしこんにゃくを水性媒体に分散させる方法は任意であってよい。混合物中のこんにゃく断片に基づく固形分濃度(質量基準)は、1〜10%であることが好ましく、より好ましくは2〜7%、さらに好ましくは3〜5%である。
混合物には、上記の工程(D)における混合物の乾燥及び薄膜片化における処理効率をより向上させる目的で、水の他に増粘剤を含んでもよい。増粘剤としては、固体片の分散液の増粘剤として食品製造用に利用できるものであれば特に限定されない。増粘安定剤の好ましい具体例としては、デンプン、水溶性デキストリン、難消化性デキストリン、キサンタンガム、グアガム、タラガム、カラギーナンおよびローカストビーンガム等の多糖類を挙げることができる。これらの少なくとも1種を増粘剤として混合液に添加することができる。キサンタンガム、グアガム、タラガム、カラギーナンおよびローカストビーンガムは、固体片の水性媒体中での分散安定効果を併せ持つ増粘安定剤として機能することができる。
増粘剤の添加量は、増粘剤を添加する目的に応じて適宜選択される。増粘剤の添加量は、例えば、混合物中に0.01〜5.0質量%の範囲から選択することができるが、好ましくは0.015〜3.0質量%、より好ましくは0.02〜2.5質量%である。
また、乾燥こんにゃく薄膜片の用途の多様性のために、混合物は、調味料、香辛料、香料、着色料およびエキス類などの添加物のうち少なくとも1種を含んでいてもよい。
脱水すりおろしこんにゃくからの混合物の調製に用いる水性媒体としては、水を利用することができ、水性媒体中に予め上述した増粘剤や添加物を混合してから、脱水すりおろしこんにゃくと混合してもよい。
【0018】
上記工程(D)における混合物の乾燥及び混合物からの薄膜片の形成は、混合物から水分を除去する乾燥工程と、乾燥により得られる混合物の硬化物を破砕して薄膜片を得る薄膜片化工程とを有することができる。これらの乾燥工程と薄膜片化工程は、それぞれ独立して、あるいは少なくとも一部を並行して行うことができる。例えば、以下の(1)または(2)の方法を用いることができる。
(1)混合物から水分を除去する乾燥工程を、乾燥こんにゃく薄膜片に求められる目的とする硬さの硬化物が得られる条件で行った後に、得られた硬化物の破砕処理を行って乾燥こんにゃくの薄膜片を得ることができる。
(2)混合物から水分を除去する乾燥工程を、薄膜片を得る上で混合物に適当な硬度が得られる段階まで行う第1の乾燥工程と、第1の乾燥工程により得られる乾燥物を破砕して薄膜片を得た後、更に乾燥工程を行って目的とする乾燥こんにゃく薄膜片を得る第2の乾燥工程に分割して行うこともできる。
乾燥工程は、送風乾燥法、減圧乾燥法、加熱乾燥法から目的に応じた乾燥方法を選択して用いることができ、これらの2種以上を併用してもよい。
【0019】
こんにゃく断片の複数の少なくとも1部が重なり合う状態で乾燥することで本発明にかかる独特な多層構造を得るには、支持体表面(乾燥処理面)に混合物の層を形成する工程と、こうして得られた混合物層から水分の少なくとも一部を除去する工程とを有する乾燥工程が好ましい。この混合物層の形成工程と、混合物層からの水分除去工程は、別々に行っても、連続的に行ってもよい。また、これらの工程を同時に進行させてもよい。
この混合物層の形成工程を含む乾燥工程は、上記の(1)の方法における乾燥工程及び上記(2)の方法における第1の乾燥工程として好ましく用いることができる。
混合物層の厚さは、特に限定されず、混合物層に含まれるこんにゃく断片の量などに応じて目的とする乾燥こんにゃく薄膜片を得ることができる程度に設定すればよい。混合物層を薄膜状に乾燥することによって、乾燥こんにゃく断片からなる乾燥薄膜を得ることができる。
混合物層の厚さは、最終的に得られる乾燥こんにゃく薄膜片の厚さが5μm〜400μmの範囲内にあるように、混合物の固形分濃度等に応じて調整することが好ましい。このような観点から、混合物に含まれるすりおろしこんにゃく断片由来の固形分の割合は、1〜10質量%とすることが好ましく、より好ましくは2〜8質量%、さらに好ましくは3〜6質量%とする。
【0020】
混合物層を形成するための支持体としては、平板状、ドラム状の加熱用としての熱伝導率を有する金属等の材料からなる支持体を用いることができる。平板状の支持体を用いる場合には、目的とする混合物層の厚さを得るための高さを有する仕切り壁を、混合物層を形成する平面領域を取り囲むように設けてもよい。
また、ドラム状の支持体を用いる乾燥機としては、ドラム乾燥機(ドラムドライヤー)を用いることができる。ドラムドライヤーによる乾燥処理では、ドラムの加熱可能な乾燥処理面(例えばドラム外周面)に混合物を層状に塗布し、混合物層から乾燥薄膜を形成する。
ドラムドライヤーは、目的とする乾燥薄膜の形成が可能であれば特に限定されない。シングルドラム型、ダブルドラム型及びツインドラム型のドラムドライヤーから適宜選択して用いることができる。シングルドラム型における混合物のフィード方式も特に限定されず、ディップフィード方式、下部ロール転写方式、上部ロールフィード方式等から適宜選択することができる。
混合物層の乾燥温度及び乾燥時間は目的とする乾燥度が得られるように設定される。乾燥温度は、例えば、120℃〜180℃から選択される温度に設定することができ、より好ましくは130℃〜140℃である。乾燥時間は、例えば、10秒〜5分から選択することができるが、好ましくは15秒〜3分、より好ましくは20秒〜2分である。
支持体上により安定して効率良く混合物層を形成するには、先に述べたように、増粘剤を混合物に必要に応じて添加することができる。
【0021】
支持体の乾燥処理面上に得られた乾燥薄膜は、乾燥処理面と接する面(底面)が乾燥処理面により成形された形状、例えば、乾燥処理面に対応する面を連続的または不連続的に形成する形状を有し、この底面の反対側の開放面にはこんにゃく断片に由来する不規則な凹凸形状が形成されている。こんにゃく断片は、乾燥により体積が減り、変形するものの、磨砕により得られる先に述べた独特な形状の少なくとも一部を基本的な形状として維持しており、最終的に得られる乾燥こんにゃく薄膜片にこの独特な形状の少なくとも一部が反映される。
図1に、混合物層の乾燥処理により乾燥薄膜が形成される工程を模式的に示す。
図1(A)は、乾燥処理面を有する支持体2の上に混合物層1が形成された状態を厚さ方向における模式的断面図である。混合物は種々の大きさ及び形状の生こんにゃく断片1−1とこれを分散する水性媒体1−2からなる。
図1(B)は混合物層1から水分を除去した状態を示す。生こんにゃく断片1−1の一部は乾燥状態で支持体2の乾燥処理面上に積み重ねられた状態で乾燥薄膜3を形成する。この際、乾燥薄膜3の支持体2の乾燥処理面に接する面は、乾燥処理面に応じた平面状の部分を有する。この平面状の部分の反対側の開放面には、乾燥こんにゃく断片の有する形状に基づく凹凸形状が表れる。更に、複数の乾燥こんにゃく断片のすくなくとも2が重なる部分において積層構造が形成され、この積層構造も、独特な不均一な厚さに基づく乾燥こんにゃく薄膜片の形成に寄与している。
混合物層1から水分を除去する過程において、こんにゃく断片1−1は混合物層1の膜厚方向と交差する方向、すなわち支持体2の乾燥処理面に沿った方向に配向して薄片化し、
図1(B)に示すような乾燥薄膜3が形成されるものと推定される。
【0022】
乾燥薄膜を支持体の乾燥処理面から剥離し、薄膜化することにより本発明にかかる乾燥こんにゃく薄膜片を得ることができる。乾燥薄膜の剥離工程と薄膜片化工程は、これらを別々に行っても、連続的に行ってもよい。
乾燥薄膜の支持体上からの剥離と薄膜片化をより効率良く行うには、支持体からのスクレーパーによる乾燥薄膜の剥離時の引き剥がし力を利用して、乾燥薄膜を支持体から剥離すると同時に薄膜片化する連続処理を利用することが好ましい。
支持体上に形成された乾燥薄膜は、乾燥おろしこんにゃく断片間の隙間、乾燥おろしこんにゃく断片間の結合が弱い部分、あるいは乾燥膜厚が薄く千切れ易い部分等を有する。スクレーパーによる剥離時における支持体上方への乾燥薄膜を引き上げる際の力によってこれらの部分を利用した薄膜片化を自動的に行うことができる。
支持体上の乾燥薄膜の厚さが5μm〜400μmの範囲内にあることによって、スクレーパーによる剥離時に乾燥薄膜の薄膜片化をより効率良く行うことができる。
なお、支持体の乾燥処理面上に形成される乾燥薄膜、あるいは乾燥薄膜から得られる乾燥こんにゃく薄膜片は半乾燥の状態としてもよく、目的とする乾燥度を得るために、必要に応じて更に乾燥処理を行ってもよい。
本発明にかかる乾燥こんにゃく薄膜片のサイズ、すなわち乾燥こんにゃく薄膜片の同一直線上にある任意の一方の端部から他方の端部までの長さの最大値は、30〜50mmにあることが好ましい。
【0023】
上記の方法によれば、混合物の乾燥薄膜から得られる種々の大きさ及び様々な形状の(すなわち不定形の)多数の乾燥こんにゃく薄膜片を得ることができる。
本発明にかかる不溶性食物繊維含有食品に含まれる乾燥こんにゃく薄膜片は、こんにゃくの磨砕によって得られるこんにゃく断片の有する形状に由来する独特な不定形の形状及び不均一な膜厚をする。この乾燥こんにゃく薄膜片の有する独特な形状は、顕微鏡等による乾燥こんにゃく薄膜片の二次元投影像(任意の配置状態で平面上に得られる平行光線による投影像)の輪郭に観察することができる。この乾燥こんにゃく薄膜片の有する独特な形状は複数の突出部を有し、各吐出部は独立して、毛羽立ち状、ジグザグ状、並びに、紐状、帯状、半島状及び先鋭突起状から選択される少なくとも1種の形状を有することができる。
更に、乾燥こんにゃく薄膜片の好ましい形態は、複数の乾燥こんにゃく断片を構成ユニットとする凝集体からなる。この凝集体は、複数の乾燥こんにゃく断片の少なくとも一部が重なり合う積層構造からなる部分を有することが好ましい。なお、複数の乾燥こんにゃく断片から形成されるこの積層構造は、複数の乾燥こんにゃく断片のうちの少なくとも2つから形成することができる。
図2に、各乾燥こんにゃく断片を平板状として模式化した場合の凝集体の模式的断面図を示す。
図2(A)は、2つの乾燥こんにゃく断片の一部が重なり合って凝集した状態を示す。
図2(B)及び(C)は、3つの乾燥こんにゃく断片のそれぞれの一部が重なり合って凝集した状態を示す。
凝集体を構成する乾燥こんにゃく断片の数、積層構造からなる部分の数、積層構造の層数は特に限定されないが、積層構造は
図2に示すように少なくとも2つの乾燥こんにゃく断片の一部により形成される。
凝集体における各乾燥こんにゃく断片の結合は、基本的には、先に述べた混合物の乾燥処理に伴う凝集、すなわち物理的な結合である。この結合は、凝集体に水または温水を加えることによって弱まり、各乾燥こんにゃく断片を分離することができる。
なお、工程(D)においては、水または温水によってそれ以上分割されない最小単位の形態としての乾燥こんにゃく断片からなる乾燥こんにゃく薄膜片と、水または温水によって分割可能な凝集体としての乾燥こんにゃく薄膜片の混合物を得ることができる。
【0024】
本発明にかかる乾燥こんにゃく薄膜片は、そのまま、あるいは他の食品との組合せて直接摂取する製品として、あるいは、他の食品への不溶性食物繊維強化用の添加物として利用することができる。
【実施例】
【0025】
(実験例−1)
水道水(15℃)97kgに、こんにゃく精粉(特等粉)3kgを撹拌しながら添加し、混合した。これを室温(20℃)で60分間放置し、これに、水道水100kgに消石灰(水酸化カルシウム:井上石灰工業(株)製、商品名;蒟太郎)1.3kgを添加して分散させた懸濁液を10%の容量比で加え、練り機(オリヒロ(株)製、型式:M30R型)を用いて練り込むことによって、こんにゃく混練り物を得た。
得られたこんにゃく混練り物を成型用の缶(縦1300mm×横300mm×高さ100mm)に流し込み、90℃雰囲気の蒸気室内で140分間加熱し、ゲル化させることによりこんにゃくを得た。加熱後缶からこんにゃくを取り出し、これを細断器で短冊状に粗切断した(長さ40mm×幅5mm×厚さ5mm)。
次に、粗切断したこんにゃくを、磨砕機(増幸産業(株)製、MKZA15−40J)を用い、重量比で10倍の水道水を加水しながら0.15mmのクリアランスで磨砕処理した。
磨砕されたこんにゃくは形状が不規則であるが、おおよそのサイズとしては縦の長さ×横の長さが最少のもので0.2mm×0.2mm、最大のもので14.9mm×8.2mmであった。次いで、磨砕されたこんにゃくを、濾過圧搾機(薮田機械(株)製、型式:40D−6型)を用いて脱水した。これによって、含水率85質量%のすりおろしこんにゃく21kgを得た。
上記で得られた脱水すりおろしこんにゃく(含水率85質量%)100gに、400gの水を加え、よくほぐして均一に分散させ、加熱した鉄板上に薄く広げて130〜140℃に保ち3分間で全体の水分を蒸発させ、薄膜状の半乾燥物を得、次いで60℃の熱風乾燥機で水分含量9%として本発明にかかる薄片化試作品Aとした。
実験対照品として上記粗切断前のこんにゃくを、長さと幅を2cm、厚さ1mmにスライスし、網の上に並べて60℃の熱風乾燥機(大紀産業(株)製、食品乾燥機、型式プチミニII)を用いて8時間で、水分10質量%のシート状のこんにゃく乾燥物Bを得た。
実体顕微鏡((株)モリテックス製、MSX−500Di)により、拡大観察した結果を写真A−1及び写真B−1とした。さらに、これら試作品A並びにBに80℃の熱水を加えて5分後に拡大観察した結果を写真A−2及びB−2として示した。写真A−1及びA−2を
図3に、写真B−1及びB−2を
図4にそれぞれ示す。
従来のこんにゃくを薄膜シート状に乾燥した乾燥物B(写真B−1)は、80℃の熱水添加5分後には水を吸収する(写真B−2)ものの、ゴムシートの食感を呈しており、噛み切れず、全く呑み込むことの出来ないものであった。これに対し、試作品A(写真A−1)は、80℃の熱水添加5分後には水を吸ってすりおろしこんにゃく片の重なり合っている箇所が白く浮かび上がっている様子が認められる。噛みしめると適度の硬さの食感で、噛みしめると乾燥こんにゃく薄膜片が水分を吸収して適度にほどけて呑み込み易くなるという状態のものであった。
以上の結果により、脱水後のすりおろしこんにゃくを水に分散させ、薄膜状として高温短時間乾燥すれば、重なり合い、乾燥時に接着した乾燥こんにゃく断片が、水やお湯を吸収することによって、噛む力により適度にほどけ、呑み込み易くなるということが証明された。これは、従来のこんにゃく薄片の乾燥シートが、全く噛み切ることの出来ないゴムシート状である事実からすると、明らかなる技術的飛躍である。
【0026】
(実験例−2)
実験例―1で得られたすりおろしこんにゃく8.0kgに、3.4kgの水と0.4kgのデキストリン(松谷化学工業(株)製、H−PDX)を加えて均一に分散させた後、ドラムドライヤー(ジョンソンボイラー(株)製、型式JM−T01)で140℃、30秒の加熱乾燥を行い、水分8質量%の0.8kgの乾燥物(本発明品)を得た。
対照のため、上記含水率85%のすりおろしこんにゃく200gを、60℃の熱風乾燥機(大紀産業(株)製、食品乾燥機、型式プチミニII)で細かい目の網上に薄く広げ、1時間毎に全体をほぐす様にして風通しを良くしながら7時間掛け、水分10質量%まで乾燥、これを5回繰り返し合計155gの乾燥物(対照品)を得た。
実験例−1で使用した実体顕微鏡により、本発明品(写真1及び2)と対照品(写真3及び4)についてそれぞれの形態、並びに、熱水(80℃)添加1分後についての拡大観察を行った。
図5に写真1及び2を、
図6に写真3及び4を示す。
その結果、本発明品の乾燥状態(写真1)は薄膜状で、部分的に重なり合ったすりおろしこんにゃくが、一部立体的な構造を取っていることが認められる。また、80℃熱水戻し品(写真2)は熱水添加1分後であるが、熱水添加と同時に花びらが開く様に広がった。それに対して対照品(写真3)は、乾燥時にすりおろしこんにゃく片が互いに絡み合って収縮したグリッツ状で、さらには、80℃での熱水戻し品(1分後)もその形状を保ったままの状態であることが認められる。
さらに、乾燥スープ(ポタージュ味、粉末17g)に対し、本発明品、対照品それぞれを3g添加、熱水(150g)を加えて復元後のそれぞれの食感、喉越し、嚥下性、総合評価について官能評価試験(5点評価法:1点悪い〜5点良い)を12名で実施、その結果を表1に示した。それによると、食感、喉越し、嚥下性において、本発明品の評価は3.3点、3.5点、3.4点であり、対照品の評価は1.7点、1.7点、1.7点であった。また、総合評価は、本発明品が3.4点、対照品が1.6点であった。
【0027】
【表1】
【0028】
官能検査での代表的なコメントは、本発明品は(a)口に入れた瞬間の舌触りが良い、(b)食べ応えがあるが、口の中でほどける、(c)対照品に比べて呑み込み易さが改善されている。それに対して、対照品は(d)硬くトゲトゲとして、異物感がある、(e)非常に硬く、噛みきれない、(f)口の中に残り易く、呑み込めない、であった。
この様に、本発明品では、従来のこんにゃく乾燥物、或いは、すりおろしこんにゃく乾燥物の水やお湯を吸収し難く、硬く、噛み切れず、のみ込み難くいという欠点が改良され、水やお湯を速やかに吸収し、「新しい食感を有するすりおろしこんにゃくの乾燥物」との評価が得られた。
【0029】
(実施例1)
水道水(16℃)900kgにこんにゃく精粉(特等粉)30kgを撹拌しながら添加混合した。これを室温(20℃)で90分間放置し、これに水道水150kgに消石灰(井上石灰工業(株)製、商品名;蒟太郎)1.95kgを添加分散させた懸濁液を10%の容量比で加え、練り機(オリヒロ(株)製、型式M30RA型)を用いて練り込むことによって、こんにゃく混練り物を得た。以上の工程をタンク1本分として2本分用意した。
得られたこんにゃく混練り物を成型用の缶(縦1300mm×横300mm×高さ100mm)に流し込み、90℃雰囲気の蒸気室内140分間加熱し、ゲル化させることにより蒟蒻を得た。加熱後缶からこんにゃくを取り出し、これを細断機で短冊状に粗切断した(長さ40mm×幅12mm×厚さ12mm)。
次に、粗切断したこんにゃくを磨砕機(増幸産業(株)製、型式MKZA15−40J)を用い、重量比で2倍の70℃の温水を加水しながらクリアランス0.1mmで磨砕処理した。次いで、磨砕されたこんにゃくを濾過圧搾機(薮田機械(株)製、型式:100D−20型)を用いて脱水した。これによって含水率87質量%のすりおろしこんにゃく421kgを得た。
上記で得られた脱水処理されたすりおろしこんにゃく20kgに8.5kgの水と0.25kgのデキストリン(松谷化学工業(株)製、H−PDX)を加えて均一に分散させて混合物を調製した後、得られた混合物をドラムドライヤー(ジョウソンボイラー(株)製、型式JM−T019)で140℃、30秒の加熱乾燥を行い、スクレーバーにより乾燥薄膜の掻き取りにより、乾燥こんにゃく薄膜片からなる水分8質量%の2kgの乾燥物を得た。
得られた乾燥こんにゃく薄膜片の厚さは、5μm〜400μmの範囲内であった。