(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
例えば溶鉱炉,高炉,転炉,溶融炉,加熱炉,均熱炉などのように、炉内温度が高温になる炉は、内部を含めて耐火物で構成される。耐火物を構成するにあたって、資材や廃材などを含む搬送物をバケットで搬送する必要がある。
【0003】
搬送物をバケットで搬送する装置として、従来では下記の特許文献1〜6に記載の技術が開示されている。特許文献1に記載の揚土装置は、バケットの昇降を案内するガイドレールが縦穴に固定され、ガイドレールに着脱可能に連結するレールキャッチャーが設けられたバケットが揚重装置に吊り下げられる。特許文献2に記載のバケットは、バケットワイヤーに吊るされ、引き上げ動作に伴って転倒させるために転倒用上部ガイドローラーや転倒用下部ガイドローラーを有する。特許文献3に記載の地下掘削物排出用バケットは、周面部と、周面部の下端部に対向して設けたヒンジにより底面が開閉可能な1対の底部材と、周面部の上端部に設けた吊下げ用係合部とを有する。
【0004】
特許文献4に記載のバケットは、上部の両側の同軸上に空転ローラと掛止軸を取り付け、懸下装置と底部間を転倒用のロープで接続する。特許文献5に記載のバケットは、走行キャリヤーに吊持され、両側下部に吊持支点の鉛直線より一側に偏位して設けられるストッパを有する。特許文献6に記載のバケットは、両側に中心線から偏心させて設けられ、ストッパの溝に係合してバケットが旋回する係合ピンを有する。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための形態について、図面に基づいて説明する。各図は、本発明を説明するために必要な要素を図示し、実際の全要素を図示しているとは限らない。上下左右等の方向を言う場合には、図面の記載を基準とする。バケットは搬送物が入れられる搬送用容器であって、本形態ではバケツを適用する。
【0013】
図1,
図2に示すバケット搬送装置10は、複数のバケット21,22,23,…を搬送する装置であって、吊下手段11,第1保持手段12,第2保持手段13,下方支柱14などを有する。バケット搬送装置10に含まれる各要素は、例えば金属,プラスチック,ゴム等のような材質や材料等を問わない。
【0014】
1個の吊下手段11は、
図3及び
図1に示すように、梁部11a,支柱11b,被係合部11cなどを有する。本形態の吊下手段11は、
図1に示すように、2個の支柱11b、被係合部11c及び梁部11aが一本の折曲する棒材で形成されている。梁部11aは、2個の支柱11bにかかる一端部(
図1では上端側の部位)を結ぶ部位である。梁部11aの一部は、
図8〜
図10に示す昇降装置30に着脱自在に保持される。当該「梁部11aの一部」は、例えば
図1に示すように梁部11aの中央部で逆V字状に曲げられた頂点部が相当する。2個一組の支柱11bは、他端部(
図1では下端側の部位)に被係合部11cが設けられる。被係合部11cと、第1保持手段12の係合軸部12bとは、回転自在に保持される。
【0015】
1個の第1保持手段12は、
図1,
図2に示すように、保持部12a,係合軸部12b,ストッパ12cなどを有する。保持部12aは、バケット21を保持する部位であって、
図1,
図2では中央部に設けられる。係合軸部12bは、保持部12aの互いに背向する両端側(
図1では左右側)に設けられる軸状の部位である。ストッパ12cは、係合軸部12bに設けられ、被係合部11cと被係合部14aが外れないように保持する板状の部位である。
【0016】
少なくとも1個の第2保持手段13は、
図1,
図2に示すように、第1保持手段12の下方に位置する。第2保持手段13は、第1保持手段12と同様に、保持部13a,係合軸部13b,ストッパ13cなどを有する。保持部12aに対応する保持部13aは、バケット22,23,…を保持する部位である。係合軸部13bに対応する係合軸部13bは、保持部13aの互いに背向する両端側に設けられる軸状の部位である。ストッパ12cに対応するストッパ13cは、係合軸部13bに設けられ、被係合部14aと被係合部14cが外れないように保持する板状の部位である。
【0017】
少なくとも一組の下方支柱14は、
図4に示すように、支柱本体14bを基体とし、支柱本体14bの両端部に被係合部14a,14cを有する。被係合部14a,14cは、互いに反対側の一部を切り欠いたリング状に形成される。被係合部14a,14cの内径は、第1保持手段12や第2保持手段13を回転自在にするため、係合軸部12b,13bの外径よりも遊び分だけ大きくする。
【0018】
被係合部11cに対応する被係合部14a,14cは、第1保持手段12の各係合軸部12bまたは第2保持手段13の各係合軸部13bと回転自在に保持される。下方支柱14の一端部(
図4では上端部)である被係合部14aは、2個一組の第1保持手段12の各係合軸部12bまたは第2保持手段13の各係合軸部13bにそれぞれ回転自在に保持される。下方支柱14の他端部(
図4では下端部)である被係合部14cは、第2保持手段13の各係合軸部13bにそれぞれ回転自在に保持される。
【0019】
図1,
図2に示すように、第1保持手段12と第2保持手段13との間隔Wは、バケット21,22,23,…が昇降する方向の長さLよりも大きくし、W>Lとなるように設定するとよい。第2保持手段13の相互間の間隔Wについても同様である。こうすれば、搬送時に隣り合うバケット21,22,23,…の間で干渉するのを防止できる。
【0020】
第1保持手段12と第2保持手段13の構成例について、
図5には平面図を示し、
図6には断面図を示す。
図5,
図6に示す保持部12a,13aは、バケット21,22,23,…の一部(例えば胴体部,開口側の上端部,底側の下端部など)を保持するように、リング状に形成されている。保持部12a,13aの半径Rは、バケット21,22,23,…の半径に合わせて設定するとよい。保持部12a,13aの半径Rは、同じでもよく、異なってもよい。ストッパ13cの間隔は、係合軸部12b,13bと係合する2つの被係合部11cと被係合部14aの幅や、被係合部14aと被係合部14cの幅に合わせるとよい。ストッパ13cは、係合軸部12b,13bの軸方向に力が加わっても曲がらない程度の剛性を有するのが望ましい。
【0021】
上述したバケット搬送装置10を用いて、昇降装置30により3個のバケット21,22,23を搬送する例について、
図7〜
図10を参照しながら説明する。本形態の昇降装置30は、
図8等に示すワイヤーロープ31やフック32のほか、図示しないモータや巻取機などを有する。ワイヤーロープ31の先端部にフック32が設けられる。フック32は、搬送前に梁部11aの一部に引っ掛けられる。なおバケット21,22,23には、取っ手で吊り下げると直立状になるように搬送物が入れられているものとする。
【0022】
搬送物がそれぞれ入れられたバケット21,22,23は、
図7に示す矢印D1方向に保持部12a,13aにそれぞれ設置する。昇降装置30を作動させると、ワイヤーロープ31が上昇方向(矢印D2方向)に巻き取られる。ワイヤーロープ31の巻き取りに伴って、
図8に示すようにフック32に吊された吊下手段11が上昇した後、第1保持手段12の保持部12aが上昇してバケット21を保持する。
【0023】
図8では、保持部12aがバケット21に対して水平状に保持した例を示す。もし、何らかの要因で保持部12aがバケット21に対して斜め(つまり水平状でない状態)で保持した場合には、
図9に二点鎖線で示すようになる。それでもバケット21は、自重によって直立状に保持されて搬送される。言い換えると、保持部12aによって保持された後は、入れられた搬送物のバランスに応じてバケット21の姿勢が変化する。
【0024】
引き続きワイヤーロープ31を巻き取ってゆくと、
図9に示すように保持部12aに保持されたバケット21が上昇するとともに、下方支柱14の上昇に伴って第2保持手段13の保持部13aが上昇してバケット22を保持する。この過程において、バケット22,23が下方支柱14の上昇に伴って矢印D3方向に移動する。
【0025】
さらにワイヤーロープ31を巻き取ってゆくと、
図10に示すようにバケット21に加えて保持部13aに保持されたバケット22が上昇するとともに、下方支柱14の上昇に伴って第2保持手段13の保持部13aが上昇してバケット23を保持する。この過程において、バケット23はさらに矢印D3方向に移動する。
【0026】
そして
図1に示すように、バケット21,22,23が第1保持手段12や第2保持手段13に保持された状態で搬送される。
【0027】
上述した形態では、昇降装置30によってワイヤーロープ31を巻き取ることで、バケット21,22,23を上昇させる搬送について説明した。これに対して、昇降装置30によってワイヤーロープ31を繰り出すことで、バケット21,22,23を降下させる搬送も行える。この場合は、
図1→
図10→
図9→
図8のように逆順に進む。
【0028】
上述した実施の形態によれば、以下に示す各作用効果を得ることができる。
【0029】
(1)バケット搬送装置10は、吊下手段11,第1保持手段12,第2保持手段13,下方支柱14などを有する。この構成によれば、第1保持手段12と第2保持手段13の保持部12a,13aはバケット21,22,23を保持するので、バケット21,22,23の姿勢を安定に保てる。支柱11bと下方支柱14は、第1保持手段12と第2保持手段13の各係合軸部12b,13bに回転自在に保持されるので、搬送口が小さい炉でもバケット21,22,23を一度に搬送できる。
【0030】
(2)保持部12a,13aは、バケット21,22,23の一部が保持されるリング状である。吊下手段11は、2個の支柱11b及び梁部11aが一本の折曲する棒材で形成されている。これらの構成によれば、保持部12a,13aはリング状であるので、バケット21,22,23の姿勢がより確実に安定する。支柱11bと梁部11aが一本の棒材であるので、部品点数が減って構造が簡単になる。
【0031】
〔他の実施の形態〕
以上では本発明を実施するための形態について説明したが、本発明は当該形態に何ら限定されるものではない。言い換えれば、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々なる形態で実施することもできる。例えば、次に示す各形態を実現してもよい。
【0032】
上述した実施の形態では、
図1に示すように、下方支柱14を直線状に構成した。この形態に代えて、
図11に実線で示す下方支柱14のように、被係合部14aが係合軸部13bの端側に位置し、被係合部14cが係合軸部12bの中心側に位置するように支柱本体14bを曲げて構成してもよい。また、
図11に一点鎖線で示す支柱11bや下方支柱14のように、被係合部14aが係合軸部13bの中心側に位置し、被係合部14cが係合軸部12bの端側に位置するように支柱本体14bを曲げて構成してもよい。
図11に示す曲げ形状は一例に過ぎず、クランク形状や曲線状などで曲げて構成してもよい。下方支柱14の形状が相違するに過ぎないので、上述した実施の形態と同様の作用効果が得られる。
【0033】
上述した実施の形態では、
図1,
図2,
図4に示すように、板状のストッパ12c,13cを被係合部11c,14a,14cと同等の大きさとし、平面を円形状に構成した。この形態に代えて、
図12,
図13に示すように、下方側よりも上方側が大きくなるようにストッパ12c,13cを構成してもよい。こうすれば、上方側に位置する支柱11bや下方支柱14が振れたときに被係合部11c,14cが係合軸部12b,13bから外れるのを抑止できる。なお、
図12に示すストッパ12c,13cは、平面を四角形状に構成しているが、平面を他の形状(例えば五角形状や六角形状など)で構成しても同様の作用効果が得られる。
【0034】
上述した実施の形態では、
図1,
図2に示すように、被係合部11c,14a(あるいは被係合部14a,14c)を挟むように2枚のストッパ12c,13cを係合軸部12b,13bに設ける構成とした。この形態に代えて、
図12,
図13に示すように、被係合部11c,14aの相互間(あるいは被係合部14a,14cの相互間)に対応して、さらに1枚のストッパ12c,13cを係合軸部12b,13bに設ける構成としてもよい。こうすれば、係合軸部12b,13bが一方の被係合部と係合した後でも、他方の被係合部を入れるスペースが確保されるので、他方の被係合部も係合軸部12b,13bと係合し易くなる。したがって、作業性が向上する。
【0035】
上述した実施の形態では、
図1,
図2に実線で示すバケット搬送装置10のように、1個の吊下手段11、1個の第1保持手段12、2個の第2保持手段13、2組の下方支柱14を有する構成とした。この形態に代えて、さらに1個以上の第2保持手段13と、1組以上の下方支柱14を有する構成としてもよい。こうすれば、1個の第2保持手段13と1組の下方支柱14が増えるごとに1個のバケットを増して搬送することができる。
【0036】
上述した実施の形態では、
図7〜
図10に示すように、第1保持手段12および第2保持手段13はバケット21,22,23,…の胴体部を保持する構成とした。この形態に代えて、図示を省略するが、バケット21,22,23,…の取っ手を保持する構成としてもよい。ただし、バケット21,22,23,…が昇降する方向の長さLは、取っ手を含めた長さとする。また、保持部12aは取っ手を保持するように断面が凹形状となる形状とする。こうすれば、胴体部の代わりに取っ手を保持して複数のバケット21,22,23,…を搬送することができる。
【0037】
上述した実施の形態では、
図8〜
図10に示すように、昇降装置30によってバケット搬送装置10を昇降させてバケット21,22,23,…を搬送する構成とした。この形態に代えて、図示を省略するが、昇降装置30以外の動力によってバケット搬送装置10を昇降させてもよい。動力には人力を含めてよく、例えば梁部11aにロープを括り付けて昇降させてもよい。動力としてのモータに代えて内燃機関を用いてもよく、ワイヤーロープ31に代えて縄やロープ等を用いてもよい。動力や連結部材が相違するに過ぎないので、上述した実施の形態と同様の作用効果が得られる。
【0038】
上述した実施の形態では、
図1,
図2,
図7〜
図10に示すバケット21,22,23,…のように円錐台状のバケツを適用した。この形態に代えて、図示を省略するが、円錐台状以外の形状(例えば三角錐台や四角錐台等を含む多角錐台など)のバケツを適用してもよく、バケツ以外であって他の搬送用容器を適用してもよい。他の搬送用容器は、例えば上方が開口する箱,袋,缶などが該当する。要するに、搬送物を入れて搬送できる容器であればよい。この場合の保持部12a,13aは、バケット21,22,23,…の形状に合わせた形状(例えば三角形状や四角形状等を含む多角形状など)にしてもよい。搬送用容器の形状や種類が相違するに過ぎないので、上述した実施の形態と同様の作用効果が得られる。