(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
土木工事を施工する建設機械と、該建設機械の位置、姿勢を測定する測定装置を具備する建設機械の制御システムであって、前記建設機械は該建設機械の所要位置に設置された少なくとも2のターゲットと、前後方向の傾斜を検出する傾斜検出部と、前記建設機械を駆動させる駆動部と、該駆動部を制御する機械制御部と、前記測定装置との間で通信可能な機械通信部とを具備し、前記測定装置は、測距光を射出し、反射測距光を受光して測距を行う測距部と、測距光、反射測距光の共通光路に設けられ、測距光、反射測距光の光軸を同一の偏角、同一の方向で偏向する光軸偏向部と、該光軸偏向部による偏角、偏向方向を検出する射出方向検出部と、前記測距部の測距結果と前記射出方向検出部の検出結果に基づき測定点の3次元位置を測定し、測定結果を前記機械制御部に通信する測定制御部とを具備し、該測定制御部は前記光軸偏向部を制御して前記測距部に前記ターゲットを交互に視準させ、前記ターゲットを時分割で交互に測定させ、該ターゲットの3次元位置と前記傾斜検出部の検出結果に基づき前記建設機械の向きと前後左右の傾斜を演算し、前記機械制御部は前記測定制御部の演算結果に基づき前記駆動部を制御する建設機械の制御システム。
前記ターゲットが前記建設機械の3箇所に設けられ、前記測定装置により3の前記ターゲットの3次元位置を測定し、前記測定制御部は3の前記ターゲットの3次元位置に基づき前記建設機械の向きと前後左右の傾斜を演算する様構成された請求項1に記載の建設機械の制御システム。
前記測定装置がターゲット検出光を射出するターゲット検出光射出部と、反射ターゲット検出光を受光するターゲット検出光受光部と、反射ターゲット検出光を受光することで前記ターゲットを検出し追尾する追尾部とを具備し、該追尾部は測定対象の前記ターゲットを切替える度に前記測距部に測定対象の前記ターゲットを検出させ視準させる請求項1〜請求項3のうちいずれか1項に記載の建設機械の制御システム。
前記測定装置は、前記測距部と、前記光軸偏向部と、前記射出方向検出部と、前記測定制御部とを収納する測定装置本体と、該測定装置本体を上下方向及び左右方向に回転可能に支持する支持部と、前記測定装置本体を上下方向及び左右方向に回転する回転駆動部と、前記測定装置本体の上下角、左右角を検出する角度検出器とを具備する請求項1〜請求項4のうちいずれか1項に記載の建設機械の制御システム。
前記光軸偏向部は、中心部に形成され、測距光を所要の偏角、所要の方向で偏向する測距光軸偏向部と、外周部に形成され、該測距光軸偏向部と同一の偏角、同一の方向で反射測距光を偏向する反射測距光軸偏向部とを有する請求項1〜請求項5のうちいずれか1項に記載の建設機械の制御システム。
前記光軸偏向部は、重なり合う一対の円板状の光学プリズムで構成され、該光学プリズムのそれぞれは独立して回転可能である請求項6に記載の建設機械の制御システム。
測距光の光軸と平行で既知の関係を有する撮像光軸を有する撮像部を更に具備し、前記光軸偏向部により偏向される測距光の偏向範囲と、前記撮像部の画角とが一致又は略一致する様構成された請求項1〜請求項8のうちいずれか1項に記載の建設機械の制御システム。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施例を説明する。
【0021】
先ず、
図1、
図2に於いて、本発明の実施例に係る建設機械の制御システムに適用される測定装置について説明する。
【0022】
測定装置1は、例えば追尾機能を有するトータルステーションであり、三脚(図示せず)上に設置される。前記測定装置1は、測定装置本体2、托架部3、台座部4、測量基盤5を有している。
【0023】
前記托架部3は、凹部を有する凹字形状であり、凹部に前記測定装置本体2が収納されている。該測定装置本体2は上下回転軸6を介して前記托架部3に支持され、前記上下回転軸6を中心に上下方向に回転自在となっている。
【0024】
該上下回転軸6の端部には、上下被動ギア7が嵌設されている。該上下被動ギア7は上下駆動ギア8と噛合し、該上下駆動ギア8は上下駆動モータ9の出力軸に固着されている。前記測定装置本体2は、前記上下駆動モータ9により上下方向に回転される様になっている。
【0025】
又、前記上下回転軸6と前記測定装置本体2との間には、上下角(前記上下回転軸6を中心とした回転方向の角度)を検出する上下回転角検出器11(例えば、エンコーダ)が設けられている。該上下回転角検出器11により、前記測定装置本体2の前記托架部3に対する上下方向の相対回転角が検出される。
【0026】
前記托架部3の下面からは、左右回転軸12が突設され、該左右回転軸12は軸受(図示せず)を介して前記台座部4に回転自在に嵌合している。前記托架部3は、前記左右回転軸12を中心に左右方向に回転自在となっている。
【0027】
該左右回転軸12と同心に、左右被動ギア13が前記台座部4に固着されている。前記托架部3には左右駆動モータ14が設けられ、該左右駆動モータ14の出力軸に左右駆動ギア15が固着されている。該左右駆動ギア15は前記左右被動ギア13と噛合している。前記托架部3は、前記左右駆動モータ14により左右方向に回転される様になっている。
【0028】
又、前記左右回転軸12と前記台座部4との間には、左右角(前記左右回転軸12を中心とした回転方向の角度)を検出する左右回転角検出器16(例えば、エンコーダ)が設けられている。該左右回転角検出器16により、前記托架部3の前記台座部4に対する左右方向の相対回転角が検出される。
【0029】
又、前記台座部4は前記測量基盤5上に設けられ、該測量基盤5は三脚(図示せず)上に設置される。該測量基盤5は自動整準機構を有し、前記測定装置本体2の自動整準を行う整準部として機能する。
【0030】
前記上下駆動モータ9と前記左右駆動モータ14との協働により、前記測定装置本体2を所望の方向へと向けることができる。尚、前記托架部3と前記台座部4とにより前記測定装置本体2の支持部が構成される。又、前記上下駆動モータ9と前記左右駆動モータ14とにより、前記測定装置本体2の回転駆動部が構成される。
【0031】
該測定装置本体2内には、測距光射出部17、受光部18、測距部19、撮像部21、射出方向検出部22、モータドライバ23、ターゲット検出光射出部24、ターゲット検出光受光部25、追尾部26、通信部30、測定制御部である演算制御部27が収納され、一体化されている。又、前記測定装置本体2には、操作部28、表示部29が設けられている。尚、該表示部29をタッチパネルとし、前記操作部28と兼用させてもよい。
【0032】
前記測距光射出部17は、射出光軸31を有し、該射出光軸31上に発光素子32、例えばレーザダイオード(LD)が設けられている。又、前記射出光軸31上に投光レンズ33が設けられている。更に、前記射出光軸31上に設けられた偏向光学部材としての第1反射鏡34と、受光光軸35(後述)上に設けられた偏向光学部材としての第2反射鏡36とによって、前記射出光軸31は前記受光光軸35と合致する様に偏向される。尚、前記第1反射鏡34と前記第2反射鏡36とで射出光軸偏向部が構成される。
【0033】
尚、前記第1反射鏡34は波長選択機能を有し、例えば測距光を反射し、後述するターゲット検出光を透過させる光学特性を有するビームスプリッタとなっている。
【0034】
前記受光部18は、前記受光光軸35を有し、前記受光部18には、測定対象物、例えばプリズムや反射鏡等の再帰反射性を有するターゲットからの反射測距光が入射する。
【0035】
前記受光光軸35上に受光素子37、例えばフォトダイオード(PD)が設けられ、又結像レンズ38が配設されている。該結像レンズ38は、反射測距光を前記受光素子37に結像する。該受光素子37は反射測距光を受光し、受光信号を発する。該受光信号は、前記測距部19に入力される。
【0036】
更に、前記受光光軸35(即ち、前記射出光軸31)上で、前記結像レンズ38の対物側には、光軸偏向部39が配設されている。以下、
図3に於いて、該光軸偏向部39について説明する。
【0037】
該光軸偏向部39は、一対の光学プリズム41a,41bから構成される。該光学プリズム41a,41bは、それぞれ円板状であり、前記受光光軸35上に該受光光軸35と直交して配置され、前記光学プリズム41a,41bは重なり合い、平行に配置されている。前記光学プリズム41a,41bとしては、それぞれフレネルプリズムが用いられることが、装置を小型化する為に好ましい。
【0038】
前記光軸偏向部39の中心部は、測距光が透過する第1光軸偏向部である測距光軸偏向部39aとなっており、中心部を除く部分は反射測距光が透過する第2光軸偏向部である反射測距光軸偏向部39bとなっている。
【0039】
前記光学プリズム41a,41bとして用いられるフレネルプリズムは、それぞれ平行に形成されたプリズム要素42a,42bと多数のプリズム要素43a,43bによって構成され、板形状を有する。各プリズム要素42a,42b及びプリズム要素43a,43bは同一の光学特性を有する。
【0040】
前記プリズム要素42a,42bは、前記測距光軸偏向部39aを構成し、前記プリズム要素43a,43bは前記反射測距光軸偏向部39bを構成する。
【0041】
前記フレネルプリズムは光学ガラスから製作してもよいが、光学プラスチック材料でモールド成形したものでもよい。光学プラスチック材料でモールド成形することで、安価なフレネルプリズムを製作できる。
【0042】
前記光学プリズム41a,41bはそれぞれ前記受光光軸35を中心に独立して個別に回転可能に配設されている。前記光学プリズム41a,41bは、回転方向、回転量、回転速度を独立して制御されることで、射出される測距光の前記射出光軸31を任意の方向に偏向し、受光される反射測距光の前記受光光軸35を前記射出光軸31と平行に偏向する。
【0043】
前記光学プリズム41a,41bの外形形状は、それぞれ前記受光光軸35を中心とする円形であり、反射測距光の広がりを考慮し、充分な光量を取得できる様、前記光学プリズム41a,41bの直径が設定されている。
【0044】
前記光学プリズム41aの外周にはリングギア44aが嵌設され、前記光学プリズム41bの外周にはリングギア44bが嵌設されている。
【0045】
前記リングギア44aには駆動ギア45aが噛合し、該駆動ギア45aはモータ46aの出力軸に固着されている。同様に、前記リングギア44bには、駆動ギア45bが噛合し、該駆動ギア45bはモータ46bの出力軸に固着されている。前記モータ46a,46bは、前記モータドライバ23に電気的に接続されている。
【0046】
前記モータ46a,46bは、回転角を検出することができるもの、或は駆動入力値に対応した回転をするもの、例えばパルスモータが用いられる。或は、モータの回転量(回転角)を検出する回転角検出器、例えばエンコーダ等を用いてモータの回転量を検出してもよい。前記モータ46a,46bの回転量がそれぞれ検出され、前記モータドライバ23により前記モータ46a,46bが個別に制御される。
【0047】
前記駆動ギア45a,45b、前記モータ46a,46bは、前記測距光射出部17と干渉しない位置、例えば前記リングギア44a,44bの下側に設けられている。
【0048】
尚、前記投光レンズ33、前記測距光軸偏向部39a等は、投光光学系を構成し、前記反射測距光軸偏向部39b、前記結像レンズ38等は受光光学系を構成する。
【0049】
前記測距部19は、前記発光素子32を制御し、測距光としてレーザ光線を発光させる。前記プリズム要素42a,42b(前記測距光軸偏向部39a)により、前記測距光が測定点に向う様前記射出光軸31が偏向される。
【0050】
測定対象物から反射された反射測距光は、前記プリズム要素43a,43b(前記反射測距光軸偏向部39b)、前記結像レンズ38を介して前記受光部18に入射し、前記受光素子37に受光される。該受光素子37は、受光信号を前記測距部19に送出し、該測距部19は前記受光素子37からの受光信号に基づき測定点(測距光が照射された点)の測距を行う。
【0051】
前記撮像部21は、例えば50°の画角を有するカメラであり、測定対象物を含む画像データを取得する。該撮像部21は、前記測定装置本体2が水平姿勢で水平方向に延出する撮像光軸47を有し、該撮像光軸47と前記射出光軸31とは平行となる様に設定されている。又、前記撮像光軸47と前記射出光軸31との距離も既知の値となっている。
【0052】
前記撮像部21の撮像素子48は、画素の集合体であるCCD、或はCMOSセンサであり、各画素は画像素子上での位置が特定できる様になっている。例えば、各画素は、前記撮像光軸47を原点とした座標系での位置が特定される。
【0053】
前記射出方向検出部22は、前記モータ46a,46bに入力される駆動パルスをカウントすることで、前記モータ46a,46bの回転角を検出する。或は、エンコーダからの信号に基づき、前記モータ46a,46bの回転角を検出する。又、前記射出方向検出部22は、前記モータ46a,46bの回転角に基づき、前記光学プリズム41a,41bの回転位置を演算する。更に、前記射出方向検出部22は、前記光学プリズム41a,41bの屈折率と回転位置に基づき、測距光の偏角、射出方向を演算し、演算結果は前記演算制御部27に入力される。
【0054】
又、前記ターゲット検出光射出部24はターゲット検出光軸49を有し、該ターゲット検出光軸49上に発光素子51、例えば測距光とは異なる波長のターゲット検出光を射出するレーザダイオード(LD)が設けられている。又、前記ターゲット検出光軸49上に投光レンズ52が設けられている。更に、前記ターゲット検出光軸49上に偏向光学部材としての前記第1反射鏡34が設けられている。尚、前記発光素子51によるターゲット検出光の射出は、前記追尾部26によって制御される。
【0055】
該第1反射鏡34を透過したターゲット検出光は、該第1反射鏡34で偏向された前記射出光軸31と合致する。又、ターゲット検出光は前記第2反射鏡36に反射されることで、前記受光光軸35(即ち、前記射出光軸31)と合致する。
【0056】
又、前記ターゲット検出光受光部25は、偏向光学部材であり波長選択機能を有する第3反射鏡53、集光レンズ54、偏向光学部材である第4反射鏡55、ターゲット検出光受光素子56を有している。
【0057】
前記第3反射鏡53は前記受光光軸35上に設けられ、反射ターゲット検出光を反射し、波長の異なる反射測距光を透過する光学特性を有している。又、前記ターゲット検出光受光部25は、前記第3反射鏡53によって前記受光光軸35から分岐されたターゲット検出光受光光軸57を有し、前記第4反射鏡55、前記ターゲット検出光受光素子56は前記ターゲット検出光受光光軸57上に設けられている。又、前記集光レンズ54は前記第3反射鏡53と前記第4反射鏡55の間に配設されている。
【0058】
ターゲットの検出、追尾が行われる場合は、測定対象物として再帰反射性を有する反射鏡、例えばプリズムが用いられる。プリズム(図示せず)で反射された反射ターゲット検出光は、前記光軸偏向部39を透過し、前記第3反射鏡53で反射され、前記集光レンズ54で集光され、前記第4反射鏡55により前記ターゲット検出光受光光軸57上に偏向され、前記ターゲット検出光受光素子56に受光される。該ターゲット検出光受光素子56は、画素の集合体であるCCD、或はCMOSセンサであり、各画素は画像素子上での位置が特定できる様になっている。該ターゲット検出光受光素子56は、反射ターゲット検出光を受光し、該ターゲット検出光受光素子56上での受光に基づく受光信号を発する。該受光信号は、前記追尾部26に入力される。
【0059】
該追尾部26は、反射ターゲット検出光の前記ターゲット検出光受光素子56上での受光を基にプリズムを検出し、前記ターゲット検出光受光素子56の中心とプリズムの位置との差を演算する。演算結果は前記演算制御部27に入力される。
【0060】
前記通信部30は、後述するペーバー61の機械制御部66との間で、測定結果やデータの送受信を行う様になっている。
【0061】
前記演算制御部27は、入出力制御部、演算器(CPU)、記憶部等から構成されている。該記憶部には測距作動を制御する測距プログラム、後述するターゲットを検出する為の検出プログラム、追尾作動を制御する追尾プログラム、前記モータドライバ23に前記モータ46a,46bの駆動を制御させる為の制御プログラム、前記上下駆動モータ9と前記左右駆動モータ14の駆動を制御する為の制御プログラム、前記射出方向検出部22からの測距光の射出方向の演算結果、前記上下回転角検出器11と前記左右回転角検出器16の検出結果に基づき前記射出光軸31の方向角(水平角、鉛直角)を演算する方向角演算プログラム、前記表示部29に画像データ、測距データ等を表示させる為の画像表示プログラム等のプログラムが格納されている。更に、前記記憶部には、測距データ、画像データ等の測定結果が格納される。
【0062】
次に、前記測定装置1による測定作動について、
図4(A)、
図4(B)を参照して説明する。尚、
図4(A)では説明を簡略化する為、前記光学プリズム41a,41bについて、前記プリズム要素42a,42b、前記プリズム要素43a,43bを分離して示している。又、
図4(A)で示される前記プリズム要素42a,42b、前記プリズム要素43a,43bは最大の偏角が得られる状態となっている。又、最小の偏角は、前記光学プリズム41a,41bのいずれか一方が180゜回転した位置であり、偏角は0゜となり、射出されるレーザ光線(測距光)の光軸は前記射出光軸31と平行となる。前記プリズム要素42a,42bは、例えば±20°の範囲で測定対象物或は測定対象エリアを測距光で走査できる様になっている。
【0063】
前記発光素子32から測距光が発せられ、測距光は前記投光レンズ33で平行光束とされ、前記測距光軸偏向部39a(前記プリズム要素42a,42b)を透して測定対象物或は測定対象エリアに向けて射出される。ここで、前記測距光軸偏向部39aを透過することで、測距光は前記プリズム要素42a,42bによって所要の方向に偏向されて射出される。
【0064】
測定対象物或は測定対象エリアで反射された反射測距光は、前記反射測距光軸偏向部39b(前記プリズム要素43a,43b)を透して入射され、前記結像レンズ38により前記受光素子37に集光される。
【0065】
反射測距光が前記反射測距光軸偏向部39bを透過することで、反射測距光の光軸は、前記受光光軸35と合致する様に前記プリズム要素43a,43bによって偏向される(
図4(A))。
【0066】
又、前記光学プリズム41aと前記光学プリズム41bとの回転位置の組合わせにより、射出する測距光を任意の偏向方向、偏角で偏向することができる。
【0067】
又、前記光学プリズム41aと前記光学プリズム41bとの位置関係を固定した状態で(前記光学プリズム41aと前記光学プリズム41bとで得られる偏角を固定した状態で)、前記モータ46a,46bにより、前記光学プリズム41aと前記光学プリズム41bとを一体に回転することで、前記測距光軸偏向部39aを透過した測距光が描く軌跡は前記射出光軸31を中心とした円となる。
【0068】
従って、前記発光素子32よりレーザ光線(測距光)を発光させつつ、前記光軸偏向部39を回転させれば、測距光を円の軌跡で走査させることができる。
【0069】
尚、前記反射測距光軸偏向部39bは、前記測距光軸偏向部39aと一体に回転していることは言う迄もない。
【0070】
次に、
図4(B)は前記光学プリズム41aと前記光学プリズム41bとを相対回転させた場合を示している。前記光学プリズム41aにより偏向された光軸の偏向方向を偏向Aとし、前記光学プリズム41bにより偏向された光軸の偏向方向を偏向Bとすると、前記光学プリズム41a,41bによる光軸の偏向は、該光学プリズム41a,41b間の角度差θとして、合成偏向Cとなる。
【0071】
従って、角度差θを変化させる度に、前記光軸偏向部39を1回転させ、1回転毎に照射すれば、直線状に測距光を走査させることができる。又、角度差θを変化させる度に、測距光を照射した状態で回転させれば、同心多重円状に測距光を走査させることができる。又、前記光学プリズム41aと前記光学プリズム41bを同速度で反対方向に回転させれば、合成偏向C方向に直線で測距光を走査させることができる。
【0072】
更に、
図4(C)に示される様に、前記光学プリズム41aの回転速度に対して遅い回転速度で前記光学プリズム41bを回転させれば、角度差θは漸次増大しつつ測距光が回転されるので、測距光の走査軌跡は、スパイラル状となる。
【0073】
更に又、前記光学プリズム41a、前記光学プリズム41bの回転方向、回転速度を個々に制御することで、測距光の走査軌跡を前記射出光軸31を中心とした放射方向(半径方向の走査)とし、或は水平、垂直方向とする等、種々の走査状態が得られる。
【0074】
測定の態様としては、前記光軸偏向部39を所要偏角毎に固定して測距を行うことで、特定の測定点についての測距を行うことができる。更に、前記光軸偏向部39の偏角を変更しつつ、測距を実行することで、即ち測距光を走査しつつ測距を実行することで走査軌跡上の測定点についての測距データを取得することができる。
【0075】
各測距光の射出方向角は、前記モータ46a,46bの回転角及び前記上下回転角検出器11と前記左右回転角検出器16の検出結果により検知でき、射出方向角と前記測距データとを関連付けることで、3次元の測距データを取得することができる。
【0076】
又、上記した様に、前記測定装置1は前記撮像部21を具備し、該撮像部21で取得された画像は前記表示部29に表示される。
【0077】
ここで、前記撮像部21の画角は例えば50°であり、前記光学プリズム41a,41bによる偏向範囲は例えば±20°であるので、前記測距部19の測定範囲は前記撮像部21の撮像範囲と略一致している。従って、測定者は視覚によって容易に測定範囲を特定でき、前記表示部29に表示された画像から、測定対象物を探し、或は測定対象物を選択することができるので、測定対象物を視準する必要がない。
【0078】
尚、前記撮像部21の画角、前記光学プリズム41a,41bによる偏向範囲は上記したものに限られるものではなく、例えば前記測距部19の測定範囲と前記撮像部21の撮像範囲とが完全に一致する様にしてもよい。
【0079】
測定対象物が選択されると、測定対象物に向って測距光が偏向される様、前記光学プリズム41a,41bを回転させる。尚、測定対象物が前記撮像部21の撮像範囲外にある場合には、測定対象物が前記撮像部21の撮像範囲内に位置する様、前記上下駆動モータ9と前記左右駆動モータ14とを駆動させる。
【0080】
前記射出光軸31と前記撮像光軸47は平行であり、且つ両光軸は既知の関係であるので、前記演算制御部27は前記撮像部21で取得した画像上で、画像中心と前記射出光軸31とを一致させることができる。更に、前記演算制御部27は、測距光の射出方向角を検出することで、該射出方向角に基づき画像上に測定点を特定できる。従って、測定点の3次元の測距データと前記撮像部21で取得した画像の関連付けは容易に行え、該撮像部21で取得した画像を3次元データ付きの画像とすることができる。
【0081】
又、前記測定装置1は前記追尾部26を具備している。前記発光素子51からターゲット検出光が発せられ、ターゲット検出光は前記投光レンズ52で平行光束とされ、前記測距光軸偏向部39a(前記プリズム要素42a,42b)を透して測定対象物、例えばプリズムや反射鏡等の再帰反射性を有するターゲットに向けて射出される。ここで、前記測距光軸偏向部39aを透過することで、ターゲット検出光は前記プリズム要素42a,42bによって所要の方向に偏向されて射出される。
【0082】
ターゲットで反射された反射ターゲット検出光は、前記反射測距光軸偏向部39b(前記プリズム要素43a,43b)を透して入射され、前記結像レンズ38、前記第3反射鏡53、前記集光レンズ54、前記第4反射鏡55により前記ターゲット検出光受光素子56に集光される。
【0083】
前記追尾部26は、反射ターゲット検出光の前記ターゲット検出光受光素子56上での受光を基に、ターゲットを検出し、前記ターゲット検出光受光素子56の中心とターゲットの位置との差を演算する。演算結果は前記演算制御部27に入力される。
【0084】
該演算制御部27は、前記追尾部26での演算結果を基に、前記モータ46a,46bの駆動を制御する。ターゲットからの反射ターゲット検出光が前記ターゲット検出光受光素子56の中心に受光される様、前記演算制御部27が前記光学プリズム41a,41bを回転させ、前記測定装置本体2を上下方向及び左右方向に回転させる。これにより、該測定装置本体2は静止した状態で測距光のみをターゲットの動きに追従させ、ターゲットを追尾する。
【0085】
尚、前記光軸偏向部39による追尾範囲を超える様な場合は、前記上下駆動モータ9、前記左右駆動モータ14を駆動し、前記測定装置本体2をターゲットに向ける様回転させるのは言う迄もない。
【0086】
次に、
図5に於いて、前記測定装置1を建設機械、例えばコンクリートやアスファルトの舗装を行うペーバーの制御システムに適用する場合について説明する。
【0087】
図5中、61はペーバーを示している。又、前記測定装置1は、三脚62を介して既知の点に設置されている。
【0088】
前記ペーバー61は、前記測定装置1から発せられる測距光、ターゲット検出光の受光範囲内で、且つ前記測定装置1により所定の精度で測定可能な範囲内で、稼働する様に工事範囲が設定されている。又、前記ペーバー61は、井桁状(矩形)に構成された機体フレーム63と、該機体フレーム63の4隅に上下方向に伸縮可能な脚部64を介して設けられた走行装置65と、前記機体フレーム63に設けられた前記機械制御部66とを有している。
【0089】
前記走行装置65としては、例えば無限軌道走行装置が用いられ、該走行装置65は前記機械制御部66によりそれぞれ個別に制御可能となっている。
【0090】
前記機体フレーム63の中央下面には、スクリード67が設けられている。該スクリード67は、混練されたコンクリート等を貯留し、更に打設しつつ、締固め成型する一連の工程を高精度に行うものである。該スクリード67の高さ制御、即ち打設表面の高さ制御は、主に前記脚部64の伸縮制御により行われる。前記スクリード67、前記走行装置65は、前記ペーバー61の作業機械部として機能し、該作業機械部は前記機械制御部66によって制御される。
【0091】
尚、前記脚部64、前記走行装置65、前記スクリード67により、前記ペーバー61を駆動させる為の駆動部が構成される。
【0092】
又、前記機体フレーム63は、進行方向と平行に延在する2本の縦ビーム68と、該縦ビーム68と直交する2本の横ビーム69とで構成され、施工環境に応じて該横ビーム69は伸縮される。
【0093】
前記縦ビーム68の上面には、傾斜検出部として傾斜センサ71が設けられる。該傾斜センサ71は前記機体フレーム63の前後方向の傾斜(進行方向の水平に対する傾斜)を検出し、検出結果は前記機械制御部66に送出される。又、該機械制御部66は、機械通信部(図示せず)を介して前記傾斜センサ71の検出結果を前記測定装置1に送信する。
【0094】
前記機体フレーム63の所要位置の2箇所に、好ましくは前記縦ビーム68上面の進行方向後側の2隅に、支柱72a,72bがそれぞれ立設される。該支柱72a,72b上端には、それぞれ反射鏡やプリズム等の再帰反射性を有するターゲット73a,73bが設けられている。
【0095】
尚、前記支柱72a,72bの立設位置は既知であればよく、後側の2隅に限られるものではない。又、装置基準位置(例えば前記スクリード67の設置中心)に対する前記ターゲット73a,73bの高さも既知となっている。更に、前記ターゲット73a,73bを結ぶ直線は、前記ペーバー61の進行方向に直交する様に設定され、前記ターゲット73a,73b間の距離Aも既知となっている。
【0096】
前記測定装置1は、前記ターゲット73a,73bを交互に検出し、該ターゲット73a,73bの3次元位置を交互に測定する。前記測定装置1は、前記ターゲット73a,73bの測定結果(測距、水平角、鉛直角)及び前記機械制御部66から受信した前記傾斜センサ71の検出結果を基に、前記ペーバー61の進行方向に対する向き(或は姿勢)(ヨー角)、進行方向に対する傾斜(ピッチ角、以下、前後方向の傾斜)、左右方向(進行方向に対して直交する方向)の傾斜(ロール角、以下、左右方向の傾斜)を測定することができる。
【0097】
又、前記測定装置1は、前記ターゲット73a,73bの測距結果、前記ペーバー61の向き(或は姿勢)、左右の傾斜、前後の傾斜、前記ターゲット73a,73bの3次元位置とに基づき、前記ペーバー61の装置基準位置を測定する。
【0098】
更に、前記測定装置1は、前記ペーバー61の向き(或は姿勢)、前後左右方向の傾斜、前記ターゲット73a,73bの3次元位置、前記ペーバー61の装置基準位置等の測定結果は、前記通信部30より前記機械制御部66に送信される。該機械制御部66は、受信した情報に基づき、前記脚部64、前記走行装置65、前記スクリード67等を所要のタイミングで、所要の状態に制御し、前記ペーバー61に所要の状態で工事施工させる様作動を制御する。
【0099】
次に、前記測定装置1を用いた前記ペーバー61の制御システムの作用について説明する。
【0100】
本実施例では、前記測定装置本体2は前記光軸偏向部39の偏向作用により、前記測距部19に前記ターゲット73a,73bを切替える度に交互に視準させ、該ターゲット73a,73bを交互に測定する。
【0101】
ここで、前記ターゲット73aから前記ターゲット73bへの偏向、該ターゲット73bから前記ターゲット73aへの偏向は、それぞれ前記光学プリズム41a,41bの協働により、任意の経路で実現することができるが、予め、経路の形状を設定しておく。例えば、それぞれ前記光学プリズム41a,41bの関係を固定し(即ち、前記光軸偏向部39による偏角を固定し)、前記光学プリズム41a,41bを一体に回転すれば、2倍の偏角を中心角とする円弧の軌跡74が得られる。
【0102】
前記ターゲット73aと前記ターゲット73b間の偏向を前記円弧の軌跡74で実行する様に設定すると、前記光軸偏向部39による偏角を設定した後、前記光学プリズム41a,41bを一体に回転するだけでよいので、制御が簡単になる。
【0103】
前記撮像部21の撮像範囲内に前記ターゲット73a,73bが入る様、前記測定装置本体2を前記ペーバー61へと向けた後、一方のターゲット、例えば前記ターゲット73aを前記測定装置1により視準する。尚、前記光軸偏向部39は、±20°の範囲で光軸の偏向が可能であり、前記ペーバー61の通常の施工環境では、前記ターゲット73a,73bは前記光軸偏向部39の偏向範囲に捉えることができる。
【0104】
前記ターゲット73aが視準されると、前記測定装置1は前記ターゲット73aの測距、測角を行い、該ターゲット73aの3次元位置を測定する。
【0105】
前記演算制御部27は、前記ターゲット73aの測定結果及び該ターゲット73aと前記ターゲット73b間の距離Aに基づき、前記測定装置本体2を基準とした前記ターゲット73aから前記ターゲット73bへの偏角を演算し、又偏向方向を演算する。
【0106】
演算された偏角、偏向方向に基づき、前記光学プリズム41a,41bをそれぞれ回転させ、前記ターゲット73bへ前記射出光軸31を偏向する。この時、前記光学プリズム41a,41bの回転方向、回転量を前記演算制御部27の記憶部に記憶しておくのが望ましい。
【0107】
測距可能な範囲は、例えば1.5°であり、前記射出光軸31を前記ターゲット73bに向けた状態で、該ターゲット73bが測距可能な範囲内である場合には、直ちに該ターゲット73bの3次元位置を測定することができる。又、測距可能な範囲となっていない場合は、ターゲット検出光の前記ターゲット検出光受光素子56に於ける受光位置を該ターゲット検出光受光素子56の中心に移動させる様、前記光学プリズム41a,41bをそれぞれ回転させ、前記ターゲット73bの検出を行う。
【0108】
該ターゲット73bが前記ターゲット検出光受光素子56の受光範囲内であれば、反射ターゲット検出光の前記ターゲット検出光受光素子56上での受光を基に、該ターゲット検出光受光素子56の中心からの偏差を求め、偏差が0になる様、前記光学プリズム41a,41bをそれぞれ回転させ、視準を行う。
【0109】
前記ターゲット73bの測定後、前記ターゲット73a,73bの3次元位置と、前記機械制御部66から受信した前記機体フレーム63の前後方向の傾斜角を基に、前記演算制御部27は前記ペーバー61の向き(或は姿勢)、前後左右方向の傾斜を演算する。又、前記演算制御部27は、前記ペーバー61の向き(或は姿勢)、前後左右方向の傾斜に基づき、前記ペーバー61の装置基準位置を演算し、前記通信部30より前記機械制御部66へと送信する。
【0110】
又、前記ターゲット73bの測定後、記憶した回転方向、回転量に基づき、該ターゲット73bの測定時とは反対方向に、同じ回転量だけ前記光学プリズム41a,41bを一体に回転させ、再度前記ターゲット73aを検出する。尚、該ターゲット73aが測距可能な範囲であれば直ちに測定が行われ、測距可能な範囲にない場合は、前記ターゲット73bの測定時と同様に視準を行う。
【0111】
前記ターゲット73aが視準されると、前記測定装置1は前記ターゲット73aの3次元位置の測定を行う。該ターゲット73aの3次元位置と、1回前に測定された前記ターゲット73bの3次元位置と、前記機械制御部66から受信した前記機体フレーム63の前後方向の傾斜を基に、前記演算制御部27は前記ペーバー61の向き(或は姿勢)、前後左右方向の傾斜、装置基準位置を演算する。更に、前記演算制御部27は、演算結果を前記機械制御部66に送信する。
【0112】
同様に、前記ターゲット73a,73bの測定は順次繰返され、即ち時分割で交互に測定され、前記演算制御部27による演算結果が順次前記機械制御部66に送信される。尚、前記光学プリズム41a,41bは小型で軽量であるので高速で回転でき、前記ターゲット73a,73b共に略リアルタイムで測定できる。前記機械制御部66は、前記測定装置1から受信した前記ペーバー61の向き(或は姿勢)、前後左右方向の傾斜、装置基準位置を基に、前記脚部64、前記走行装置65、前記スクリード67を制御する。
【0113】
上記した前記ターゲット73a,73bの交互測定は、前記ペーバー61による作業中は常時連続して行われており、前記ターゲット73a,73bの測定結果及び前記機体フレーム63の前後方向の傾斜から演算された前記ペーバー61の向き(或は姿勢)、前後左右方向の傾斜、装置基準位置を基に、前記機械制御部66は前記ペーバー61をリアルタイムで制御することができる。
【0114】
上述の様に、本実施例では、一方の前記ターゲット73aの3次元位置を測定した後、他方の前記ターゲット73bを視準する際に、小型で軽量の前記光学プリズム41a,41bを回転させるだけでよい。
【0115】
従って、他方の前記ターゲット73bを視準する際に、前記上下駆動モータ9、前記左右駆動モータ14を駆動させて前記測定装置本体2を回転させる必要がなく、前記ターゲット73a,73bの検出を前記射出光軸31に対して±20°の範囲で略タイムラグなく高速で行うことができる。
【0116】
又、前記測定装置1は、測定対象のターゲットを切替えて前記ターゲット73a,73bを交互に高速で視準、検出することができるので、2つの前記ターゲット73a,73bに対して前記測定装置1は1台でよく、前記ペーバー61の制御システムのシステムコストの低減を図ることができる。
【0117】
又、使用する前記測定装置1を1台のみとすることで、設備費が抑えられると共に、従来の複数台の測定装置を用いる際の相互の位置関係の把握が不要となり、セットアップ作業の時間短縮及び作業性の向上を図ることができる。
【0118】
更に、前記ターゲット73a,73bの視準、測定を1台の前記測定装置1で行っているので、該測定装置1が測定対象のターゲットを視準しているかどうかの確認が不要となり、作業性を向上させることができる。
【0119】
尚、前記測定装置1と前記ペーバー61との距離が近い等、前記光学プリズム41a,41bの偏向範囲である±20°の範囲内に前記ターゲット73a,73bが存在しない場合には、前記光学プリズム41a,41bの回転と前記上下駆動モータ9、前記左右駆動モータ14の駆動との協働により、前記ターゲット73a,73bの視準を行うことができる。この場合も、前記上下駆動モータ9と前記左右駆動モータ14のみにより前記ターゲット73a,73bを視準する場合と比べ、大幅に時間の短縮が図れる。
【0120】
又、該ターゲット73a,73bに加え、例えば進行方向後方の前記横ビーム69に別途ターゲット73c(図示せず)を設けてもよい。この場合も、時分割で前記ターゲット73a,73b,73c、該ターゲット73a,73b,73c……の順序で測定を行う。前記ペーバー61について3点を測定することで、前後方向の傾斜も測定できる。この場合、3つの前記ターゲット73a,73b,73c及び前記測定装置1は、傾斜検出部の機能を兼ねるので、前記傾斜センサ71を省略することができる。
【0121】
尚、本実施例では、前記測定装置1を用いて前記ペーバー61を制御する制御システムについて説明したが、ブルドーザ等、他の建設機械に対しても適用可能であることは言う迄もない。