(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
撮像対象となる1種以上のガスの赤外光画像を結像する赤外光結像光学系と、該赤外光結像光学系による赤外光画像を結像され、前記赤外光画像を撮像する赤外光撮像素子と、
前記赤外光結像光学系と前記赤外光撮像素子との間に配置され、前記赤外光結像光学系による結像光束を赤外光画像用光束と分光画像用光束とに分離する分離手段と、
該分離手段により分離された分光画像用光束の結像面に配置された2次元のシャッタアレイと、
該シャッタアレイの各シャッタを通過する赤外光を前記シャッタごとに分光する赤外光分光手段と、を有し、
前記赤外光分光手段は、前記撮像対象となる1種以上のガスによる赤外光吸収波長を分光波長領域に含むガス画像センサ装置。
【発明を実施するための形態】
【0008】
具体的な実施の形態を説明するのに先立って、用語等を簡単に説明する。
前述の如く、この明細書において「赤外光」は、赤外光領域の電磁波である。赤外光領域は「可視光の波長領域の上限よりも長波長側の波長領域」であり、一般に、近赤外光、中赤外光、遠赤外光に分類される。近赤外光の波長域は「0.7〜2.5μm」、中赤外光の波長領域はその上限が必ずしも一義的には特定されていないが「2.5〜4.6μm程度」であり、これより長波長の領域の赤外光が遠赤外光であるとされる。
【0009】
赤外光は一般に「赤外線」とも称されるが、この明細書では、赤外線の光学的側面を問題とすることに鑑み「赤外光」と称する。
ガス画像センサ装置では、1種以上のガスを「撮像対象」とする。この撮像対象であるガスは「赤外光結像光学系」により「赤外光画像」として結像される。赤外光結像光学系は、赤外光に対して結像機能を有する光学系であり、結像素子としてレンズ系を含む。このレンズ系としては、例えば、Ge(ゲルマニウム)やZnSe(セルシウム化亜鉛)、MgF
2(2フッ化マグネシウム)を材料とするレンズを含むものとして構成できる。
これらの材料により形成されるレンズは、上述の中赤外光および遠赤外光の波長領域の赤外光に対してレンズ作用を有するので、以下の説明において「2波長帯透過レンズ」とも呼ぶ。
【0010】
なお、可視光領域から遠赤外光領域までの波長領域の電磁波に対してレンズ作用を持つレンズも知られており(例えば、特許文献1記載の「赤外線および可視光線の何れをも透過させるレンズ」)、このようなレンズも赤外光結像光学系に用い得る。
【0011】
赤外光は目視では不可視であるから、赤外光結像光学系により結像される赤外光画像は目視されない。赤外光画像は、赤外光撮像素子により撮像した出力に画像処理を施して、ディスプレイ上に目視可能な像として表示可能である。
「赤外光撮像素子」としては、周知の「サーモパイル」や「ボロメータ」の素子を2次元的に排列したもの(これらはすでに市販されている。)を用いることができ、サーモパイル等を用いる赤外光撮像素子を用いると、赤外光画像を「温度分布画像」に変換できる。
【0012】
また、赤外光の持つ連続スペクトルの強度は「黒体輻射に関するヴィーンの法則」に從って温度と共に変化するので、赤外光強度の波長依存性から赤外光の温度を特定でき、所謂「赤外光センサ」を用いて、赤外光画像の温度分布を生成することが従来から知られている。
【0013】
この発明のガス画像センサ装置では、赤外光結像光学系と赤外光撮像素子との間に「分離手段」が配置され、赤外光結像光学系により結像される結像光束を「赤外光画像用光束」と「分光画像用光束」との2部分に分離する。
分離手段は、赤外光結像光学系により結像される結像光束を「赤外光画像用光束と分光画像用光束」の2部分に分離できるものであれば適宜のものを用いることができる。
例えば「半透鏡」のように、前記結像光束を「所望の強度配分で互いに分離する」ものを用いることもできる。
分離手段は、例えば「分光透過膜を形成したダイクロイックフィルタ」のように、結像光束を、例えば、遠赤外領域と中赤外領域のように「波長領域の異なる赤外光成分」に分離するものを用いるのが好ましい。
【0014】
分離手段により分離された一方の光束である「赤外光画像用光束」は、赤外光撮像素子上に結像して赤外光画像を形成する。
分離された他方の光束である「分光画像用光束」は、その結像面に合致して配置されたシャッタアレイ上に結像する。
「シャッタアレイ」は、微小なシャッタを2次元的に配列してなり、個々のシャッタを選択的に開閉可能である。分光画像用光束は、シャッタアレイの個々のシャッタを通過すると、赤外光分光手段により分光される。
「赤外光分光手段」は、その分光波長領域に「撮像対象となる1種以上のガスによる赤外光吸収波長」を含む。
「赤外光分光手段」は後述の実施の形態のように、赤外光領域に感度を有する赤外光受光素子アレイと、シャッタアレイの個々を通過した光束を、赤外光受光素子アレイの受光領域に照射するリレー光学系と、赤外光受光素子アレイの受光領域に密接もしくは近接して配置され、該受光領域に入射する赤外光を分光する分光フィルタを有する構成とすることができる。
【0015】
「赤外光分光手段」はまた、シャッタアレイの各シャッタを通過した赤外光を平行光束化するマイクロレンズアレイと、該マイクロレンズアレイの個々のマイクロレンズにより平行光束化された赤外光を集光させる集光レンズと、該集光レンズにより集光される赤外光の「集光位置」を通過する赤外光の赤外光成分を分光して受光する分光器と、を有する構成とすることもできる。
「赤外光成分の分光」は、例えば、回折格子を用いて「回折により分光」させることもできるし、プリズム等による分散により分光させることもできる。
【0016】
付言すると、この発明のガス画像センサ装置では「1種以上のガス」を撮像対象とするのであるから、撮像対象となるガスは「1種類」である場合も含まれる。特定の1種類のガスを撮像対象とするのであれば、その吸収波長は撮像対象である「特定のガスに固有」である。従って、この場合、上記赤外光成分を分光して受光する分光器が有するべき「分光機能」は、この場合「特定の吸収波長とその近傍の波長領域」のみを他の波長の赤外光成分から分離できればよい。
この発明においては、このような「特定の吸収波長とその近傍の波長領域のみを他の波長の赤外光成分から分離する」ことも「分光」の概念に含める。
「特定の吸収波長とその近傍の波長領域のみを他の波長の赤外光成分から分離」するには、例えば、バンドパスフィルタを用いて上記「特定の吸収波長とその近傍の波長領域の赤外光成分のみ」を透過させ、他の波長領域の赤外光成分を反射させることにより実行することができる。
【0017】
以下、ガス画像センサ装置を用いる「ガス画像撮像測定システム」の実施の1形態を説明する。
以下に説明するガス画像撮像測定システムは「火山ガス監視システム」を想定したものである。
説明図として例示する
図1において、(a)は「火山ガスを噴出中の火山」の状況を示す可視画像である。火山の火口から「白煙状の火山ガス」が噴出している。
図1(b)は、
図1(a)に示す噴出中の火山ガスの「温度分布画像」を可視画像に重畳した画像である。
図1(c)は、噴出中の火山ガスに含まれる「水蒸気」、「CO
2(2酸化炭素ガス)」、「H
2S(硫化水素ガス)」の分布を可視画像に重畳して表示した画像である。
【0018】
図1(b)において、Aは2000℃、Bは1000℃、Cは800℃、Dは500℃、Eは300℃の領域を、それぞれ示している。また、
図1(c)において、Fは水蒸気、GはH
2S、HがCO
2の空間分布状態を示している。
【0019】
図1(b)に示す如き「温度分布画像」は、分離手段により分離された
赤外光画像用光束が赤外光撮像素子の2次元の撮像領域に結像する赤外光画像の強度分布を、画像処理により温度分布に変換することにより得られる。
図1(b)に示すのは、温度分布画像を、複数の温度領域に分けて「温度の段階的な変化」を示すように、温度分布画像を画像処理したものである。
【0020】
図1(c)に示す如き「ガス種の分布」の画像は、分離手段により分離された分光画像用光束を用いて得られる。
即ち、分光画像用光束を2次元のシャッタアレイ上に結像させ、シャッタアレイの個々のシャッタを画素とし、各画素を通った光束を赤外光分光手段により分光する。
そして、撮像されている火山ガスにおける「撮像対象」であるガス(説明中の例で、水蒸気と、H
2Sガス、CO
2ガス)の吸収波長が含まれている画像(吸収波長の赤外光が吸収されているので、暗い画像となる。)を吸収波長ごとに2次元画像化する。この処理も画像処理として行うことができる。
【0021】
説明中の例において、水蒸気の吸収波長は2.66μm、CO
2ガスの吸収波長は4.26μm、H
2Sガスの吸収波長は3.81μmである。
從って、これらのガスは何れも「中赤外光の波長領域」に吸収波長を有している。
上に概略を説明した「火山ガス監視システムを想定したガス画像撮像測定システム」の実施の形態例を以下に説明する。
【0022】
図2は、ガス画像撮像測定システムの実施の1形態の概念図である。
符号100で示す部分は「ガス画像撮像測定装置」の部分を示す。
ガス画像撮像測定装置100は、ガス画像センサ装置101、画像処理手段103、ディスプレイ手段105および制御手段110を有する。
図中の符号201は「可視画像撮像手段」、符号203は「可視画像用画像処理手段」を、それぞれ示す。
画像処理手段103は、ガス画像センサ装置101の出力に対する画像処理を行う。
可視画像撮像手段201は、ガス画像撮像測定装置100の撮像領域(ガス画像センサ装置101の撮像領域)の可視画像を撮像し、その撮像出力を可視画像用画像処理手段203に入力させる。
可視画像用画像処理手段203は、可視画像撮像手段201の撮像出力に対する画像処理を行う。
ディスプレイ手段105は、画像処理手段103の出力や、可視画像用画像処理手段203の出力を画像として表示する。即ち、ディスプレイ手段105は、画像処理手段103と、可視画像用画像処理手段203に共用されており、可視画像用画像処理手段203との関連で「可視画像用ディスプレイ手段105」と言う場合もある。
【0023】
上記ガス画像センサ装置101、画像処理手段103、可視画像用画像処理手段203およびディスプレイ手段105は、制御手段110の制御を受ける。制御手段110は、コンピュータやCPU等として構成され、種々の制御内容が記憶されており、各種インタフェイス手段により所望の制御内容を外部から指定することもできる。
即ち、
図2に示すガス画像撮像測定システムは、ガス画像撮像測定装置100と、可視画像撮像装置と、を有し、可視画像撮像装置は、可視画像撮像手段201と、可視画像用画像処理手段203と、可視画像用ディスプレイ手段105と、を有する。
可視画像用ディスプレイ手段105は、ガス画像撮像測定装置のディスプレイ手段105を兼ねている。後述のように、ディスプレイ手段105には、ガス画像撮像測定装置100による「1種以上のガス画像および赤外光画像および表示用可視画像の1以上」が、選択的に、もしくは合成画像として表示される。
なお、
図2に示す、画像処理手段103と可視画像用画像処理手段203とは、図示の如くに別体として構成できることは勿論であるが、これらを「1つの手段として共通化」することもできる。このように共通化した場合を破線で示し、符号1030を付する。このように共通化した部分を、以下において「画像処理手段1030」と呼ぶ。
【0024】
図3を参照する。
図3は、
図2に示したガス画像撮像測定システムのうち、ディスプレイ手段105と制御手段110の部分を除いた部分の具体的な構成の2例を示している。
図3(a)を参照すると、この図において、符号OLは「撮像対象からの可視光成分」を示し、符号OLIは「撮像対象からの赤外光成分」を示す。
赤外光成分OLIは、中赤外光成分と遠赤外光成分を含んでいる。
図3(a)において符号L0は「レンズ」を示し、符号10Aは「可視画像撮像素子」を示す。レンズL0は「可視画像結像光学系」であって、撮像対象(説明中の例では「火山の火口部」)からの可視光成分OLの入射を受けて、可視画像撮像素子10Aの受光面上に「撮像対象の可視画像」として結像させる。
可視画像撮像素子10Aとしては、CCDセンサやCMOSセンサ等「可視光の波長領域に感度を有する受光素子」を2次元に配列して「エリアセンサ」としたものを用いることができる。勿論、可視画像撮像素子10Aは、モノクローム画像対応のものもカラー画像対応のものも用いることができる。
【0025】
図2に示した可視画像撮像手段201は、
図3に示す例では、レンズL0と可視画像撮像素子10Aとを含む。
図3(a)において、符号LIは「赤外光結像光学系」である2波長帯透過レンズを示す。2波長帯透過レンズLIは、赤外光成分OLIに含まれる中赤外光成分と遠赤外光成分に対してレンズ作用を有する。赤外光成分OLIは、2波長帯透過レンズLIに入射すると、2波長帯透過レンズLIの光学作用を受けて「結像光束」となり、「分離手段」であるダイクロイックフィルタSPに入射する。
ダイクロイックフィルタは、入射してくる結像光束を、波長領域の異なる2光束に分離する。即ち、赤外光成分OLI中の遠赤外成分(波長:5μm以上)は透過させて「赤外光画像用光束」とし、中赤外成分(波長:2μm〜5μm)は反射させて「分光画像用光束」とする。
【0026】
ダイクロイックフィルタSPを透過した赤外光画像用光束は、赤外光撮像素子10Bの受光面上に遠赤外成分による「赤外光画像」として結像し、赤外光撮像素子10Bにより撮像される。赤外光撮像素子10Bは「遠赤外光の波長領域に感度を有する受光素子」を2次元にアレイ配列した撮像素子であり、市販されているものを用いることができる。
從って、赤外光撮像素子10Bにより遠赤外光による「赤外光画像」が撮像される。
【0027】
ダイクロイックフィルタSPに反射された「分光画像用光束」も、2波長帯透過レンズLIのレンズ作用により中赤外光画像として結像するが、その結像面に合致させてシャッタアレイSAが配置されている。シャッタアレイSAは、2枚のリレーレンズRL1、RL2により挟まれ、中赤外光画像を結像する光束光線は、リレーレンズRL1によりシャッタアレイSAに直交する方向に向かわされ、シャッタアレイSAに直交するように入射する。2枚のリレーレンズRL1、RL2はリレー光学系RLを構成する。
シャッタアレイSAは「独立して開閉できる微小なシャッタ」を2次元的に配列してなり、中赤外光画像がシャッタアレイ上に結像している状態で、任意の1つのシャッタを開くと、このシャッタを「画素」とする中赤外光が、シャッタアレイSAを通過する。
シャッタアレイSAの任意のシャッタを通過した中赤外光は、リレーレンズRL2を透過し、発散しつつ赤外光受光素子アレイ10CAに投射される。
説明中の例では、ダイクロイックフィルタSPにより反射された分光画像用光束は中赤外光であるので、赤外光受光素子アレイ10CAとしては、中赤外光の波長領域を含む波長:2〜5μm程度の赤外光に対して感度を持つ受光素子のアレイが用いられる。このような赤外光受光素子アレイ10CAとしても市販の「中赤外光用の受光素子アレイ」を用いることができる。
【0028】
なお、
図3(a)に示す例においては、赤外光受光素子アレイ10CAは「エリアセンサ」であり、受光領域は2次元である。
シャッタアレイSAの任意のシャッタを通過した光束は発散光束である。リレーレンズRL2は、任意のシャッタを通過した発散光束の「光束中心光線」を、赤外光受光素子アレイ10CAの中心部に向かわせる機能を有する。また、赤外光受光素子アレイ10CAは、シャッタアレイSAの任意のシャッタを通過した光束が、全て受光エリアに入射するように、シャッタアレイSAに対する位置関係を設定されている。
図3(a)に符号SPFで示す「分光フィルタ」は、赤外光受光素子アレイ10CAの受光面に密接もしくは近接して配置され、上記受光面に入射する赤外光(中赤外光)を分光する。即ち、分光フィルタSPFは「透過波長が図の上下方向に変化するフィルタ」であり、図の上端側での透過波長が2μm、下端での透過波長が5μmとなるように設定されている。
このような分光フィルタとしては、例えば、「VOLTEX OPTICAL COATING Ltd.製の赤外線リニア可変フィルタ」を好適に用いることができる。
【0029】
このような分光フィルタSPFを用いると、赤外光受光素子アレイ10CAにおける図の上側の受光素子には「波長:2μmの中赤外光」が入射し、図の下側の受光素子には「波長:5μmの中赤外光」が入射することになる。
シャッタアレイSAにおけるシャッタの個々をパラメータ:i,jを用いて「STij」のように表すことにする。
パラメータ:iは、図の上下方向の位置に対応するパラメータ、パラメータ:jは、図面に直交する方向の位置に対応するパラメータである。
そこで、1個のシャッタSTijが開いている状態において、赤外光受光素子アレイ10CAの受光素子のうち「水蒸気の吸収波長:2.66μm相当の中赤外光を受光する受光素子群(便宜的に「水蒸気検出用受光素子群」と呼ぶ。)」の出力に着目する。
この「水蒸気検出用受光素子群」の出力の高底は「シャッタSTijの位置に結像している中赤外光画像」における水蒸気成分の大小に対応する。即ち、水蒸気成分が大きいほど、波長:2.66μm相当の中赤外光は強く吸収されるので上記出力は小さくなり、水蒸気成分が小さいほど上記出力は大きくなる。
【0030】
從って、シャッタアレイSAを構成する全てのシャッタについて、水蒸気検出用受光素子群の出力(水蒸気検出用受光素子群を構成する全ての受光素子の出力)を求め、シャッタアレイに対応する「2次元の出力分布」を求めると、この2次元の出力分布は、シャッタアレイSAに結像している中赤外光画像における「水蒸気の濃度分布」に対応する。
【0031】
この水蒸気の濃度分布に対応するシャッタアレイSAにおける「2次元の出力分布」を、以下、便宜的に「水蒸気出力分布」と呼ぶ。
【0032】
同様に、赤外光受光素子アレイ10CAの受光素子のうち「CO
2ガスの吸収波長:4.26μm相当の中赤外光を受光する受光素子群の出力」のシャッタアレイに対応する「2次元の出力分布」を求めると、この2次元の出力分布はシャッタアレイSAに結像している中赤外光画像における「CO
2ガスの濃度分布」に対応する。
このCO
2ガスの濃度分布に対応するシャッタアレイSAにおける「2次元の出力分布」を、以下、便宜的に「CO
2ガス出力分布」と呼ぶ。
赤外光受光素子アレイ10CAの受光素子のうち「H
2Sガスの吸収波長:3.81μm相当の中赤外光を受光する受光素子群の出力」のシャッタアレイに対応する「2次元の出力分布」を求めると、この2次元の出力分布はシャッタアレイSAに結像している中赤外光画像における「H
2Sガスの濃度分布」に対応する。
このH
2Sガスの濃度分布に対応するシャッタアレイSAにおける「2次元の出力分布」を、以下、便宜的に「H
2Sガス出力分布」と呼ぶ。
図3(a)において、可視画像撮像素子10Aからの出力(便宜上「可視画像データ」と称する。)は、画像処理手段1030に入力する。同様に、赤外光撮像素子10Bからの出力(便宜上「赤外光画像データ」と称する。」)、赤外光受光素子アレイ10CAの出力(便宜上「中赤外光画像データ」と称する。)も、画像処理手段1030に入力する。
【0033】
画像処理手段1030は、これらの入力データに対し画像処理を行う。
前述の如く、画像処理手段1030は、
図2に示す画像処理手段103と可視画像用画像処理手段203とを共通化したものであり、可視画像データに対する画像処理と、赤外光画像データに対する画像処理と、中赤外光画像データに対する画像処理を行うことができる。
「画像処理」は、ノイズの除去や、画像輝度の調整、コントラストの強調、複数画像の重畳、色付け等、公知の種々の処理が可能である。
【0034】
画像処理手段1030における画像処理は、上記可視画像データ、赤外光画像データ、中赤外光画像データに対する処理を、同時並列的に行うことも「データごとに別箇」に行うことも可能である。これらの処理の選択や切り替えは、制御手段110に予め設定してある設定内容に從って行うことも、また外部入力により行うこともできる。
画像処理手段1030は、画像処理を施されて表示可能となったデータをディスプレイ手段105(
図2参照)に送って画像として表示させる。
画像処理手段1030により画像処理された「可視画像データ」を、ディスプレイ手段105に表示すれば、可視画像撮像素子10Aにより撮像され、画像処理された可視画像が表示される。このようにして、例えば、
図1(a)に示したような「火山ガスを噴出中の火山」の状況を示す可視画像が表示される。
【0035】
また、赤外光撮像素子10Bでは、遠赤外による「赤外光画像」が撮像されるので、赤外光撮像素子10Bからの赤外光画像データに「ノイズ除去や輝度調整等の画像処理」を施して画像処理手段1030から出力させれば、ディスプレイ手段105に通常の「赤外線写真」に相当する画像を表示できる。
画像処理として、前述した「温度分布画像に変換する処理」を行い、さらに、温度分布画像を複数の温度領域に分けて「温度の段階的な変化」を示すように画像処理し、その結果を、上述の「可視画像」に重畳させてディスプレイ手段105に表示すれば、例えば
図1(b)に示す如き画像が得られる。
赤外光受光素子アレイ10CAからは「中赤外光画像データ」として「水蒸気出力分布」と「CO
2ガス出力分布」と「H
2Sガス出力分布」とが得られる。
これらの分布は、シャッタアレイSAに結像している中赤外光画像における「これらのガスの濃度分布」に対応するので、これら3種類の出力分布に対して画像処理手段1030により画像処理を行う。
画像処理として、例えば、各ガスの出力分布を「色分け」したり、画像濃度を相互に異ならせたりする処理を行い、その結果を上述の「可視画像」に重畳させてディスプレイ手段105に表示すれば、例えば
図1(c)に示す如き画像が得られる。
【0036】
図3(b)は、
図3(a)に示す実施の形態の変形例である。
図3(a)に示す例では、赤外光受光素子アレイ10CAは「2次元の受光領域を持つエリアセンサ」である。一方、分光フィルタSPFは、図の上下方向にのみ分光機能をもち、図面に直交する方向には分光機能を持たない。この点を鑑みると、分光フィルタSPFにより分光された中赤外光を受光する赤外光受光素子アレイは、必ずしもエリアセンサである必要はない。
図3(b)に示す例は、かかる観点に基づくもので、赤外光受光素子アレイとして「赤外光受光素子のライン状のアレイ配列」を有するものを用いている。即ち、この例において赤外光受光素子アレイ10CLは「赤外光受光素子を図の上下方向にライン状に配列したラインセンサ」である。この場合、分光フィルタSPFも、図面に直交する方向における幅は、赤外光受光素子アレイ10CLの受光面幅をカバーできる大きさがあればよい。
【0037】
図3(b)において、符号CYLはシリンダレンズ等のシリンダ光学系である。シリンダ光学系CYLは、長手方向に直交する方向にのみ集光機能を有し、長手方向を図の如く上下方向に平行にして、分光フィルタSPFとリレーレンズRL2との間に配備され、リレー光学系側からの光束を赤外光受光素子アレイ10CLの受光領域に集光させる。
図3(b)には図示を省略されているが、可視画像撮像素子10Aからの出力、赤外光撮像素子10Bからの出力、赤外光受光素子アレイ10CLの出力は、
図3(a)に示すのと同様に、画像処理手段1030に入力して画像処理される。
この例のようにしても、
図3(a)の例と同様に、可視画像、赤外光画像、中赤外光画像を適宜に画像処理した画像をディスプレイ手段に表示することができる。
【0038】
図4は、
図2に示したガス画像撮像測定システムのうち、ディスプレイ手段105と制御手段110の部分を除いた部分の具体的な構成の他の2例を示している。
繁雑を避けるため、混同の恐れがないと思われるものについては、
図3におけると同一の符号を付した。
図4に示す2例は、図において「シャッタアレイSAよりも右側の部分」が、
図3に示した例と異なっている。
図4(a)に示す例において、ダイクロイックフィルタSPに反射された「分光画像用光束」は2波長帯透過レンズLIのレンズ作用により、シャッタアレイSA上に中赤外光画像として結像する。この結像光束の光線は、リレーレンズRL1によりシャッタアレイSAに直交する方向に向かわされ、シャッタアレイSAに直交するように入射する。
【0039】
シャッタアレイSAの射出側には、マイクロレンズアレイMLAが配置されている。
マイクロレンズアレイMLAは、凸レンズであるマイクロレンズを2次元的に配列した構成であるが、個々のマイクロレンズは、シャッタアレイSAにおける個々のシャッタと1:1に対応している。そして、任意のシャッタを通過した中赤外光は、このシャッタに対応するマイクロレンズにより平行光束化される。
任意のシャッタを透過し、このシャッタに対応するマイクロレンズにより平行光束化された中赤外光は集光レンズLFに入射し、この集光レンズLFの焦点位置に向かって集光される。
【0040】
図4において符号SFは「分光器」を示している。分光器SFは、入射口を上記焦点位置に合致させて配置され、入射光位置に集光して入射する赤外光を「分光して受光する機能」を有している。
説明中の例においては、分光器SFには、中赤外光が入射するので、分光器SFの分光波長領域は、例えば2μm〜5μm程度である。
このような分光器SFとしては、例えば、浜松ホトニクス社製の「マイクロ分光器(分光は回折により行われる)」を好適に用いることができる。
【0041】
分光器SFは「中赤外光の分光波長に応じた光強度」を出力する。これらの出力のうちから、水蒸気の吸収波長:2.66μm相当の中赤外光に対応する出力を選択し、この出力をシャッタアレイSAの全てのシャッタについて求めれば、前述の「水蒸気出力分布」が得られる。
また、分光器SFの出力のうち、CO
2ガスの吸収波長:4.26μm相当の中赤外光に対応する出力を選択し、この出力をシャッタアレイSAの全てのシャッタについて求めれば、前述の「CO
2ガス出力分布」が得られる。
同様に、分光器SFの出力のうち、H
2Sガスの吸収波長:3.81μm相当の中赤外光に対応する出力を選択し、この出力をシャッタアレイSAの全てのシャッタについて求めれば、前述の「H
2Sガス出力分布」が得られる。
可視画像撮像素子10Aや赤外光撮像素子10Bの出力に対する画像処理手段1030による画像処理は、
図3の例と同様である。
從って、分光器SFから得られる各出力分布に対して、
図3の場合と同様の画像処理を画像処理手段1030で行い、可視画像撮像素子10Aの出力に基づいて得られる可視画像に重畳させて、
図2に示すディスプレイ手段105に表示すれば、
図1(c)の如き画像を得ることができる。
また、可視画像撮像素子10Aの出力と、赤外光撮像素子10Bの出力とに基づいて、
図1(b)の如き画像を表示できることは、
図3の実施形態と同様である。
【0042】
分光器SFにおける分光を「回折により行う」場合、分光を行う回折格子は1次元的であるのが簡便でよい。上に例示した「浜松ホトニクス社製のマイクロ分光器」でも、回折格子は1次元的である。このような場合、入射口は、分光方向に直交するスリット状であることが好ましく、スリット幅も狭いことが好ましい。
図4(b)は、このような観点を鑑みたものであって、分光器SFの入射口が、図面の上下方向に長いスリット状である場合に、集光レンズLFにより集光される赤外光を、前記入射口のスリットの幅方向(図面に直交する方向)にさらに集光させるシリンダ光学系CYL(具体的にはシリンドリカルレンズである。混同の恐れは無いと思われるので、
図3におけると同一の符号を付した。)が設けられている。
このようにすると、入射口のスリット幅を狭くしつつ、分光される光量を十分に確保できる。
【0043】
前述の如く、この発明のガス画像センサ装置では「特定の1種のガス(例えばCO
2ガス)のみ」を撮像対象とする場合もある。この場合には、赤外光成分を分光して受光する分光器SFとしては、CO
2ガスの吸収波長:4.26μmとその近傍の波長領域のみを透過させるバンドパスフィルタと、このバンドパスフィルタを透過した赤外光成分を受光する「焦電素子」とを含んで構成でき、焦電素子の出力により「CO
2ガス出力分布」を構成できる。このようにして、簡便なCO2ガス用のガス画像センサ装置を実現できる。
【0044】
以上のように、この発明によれば、以下の如き、ガス画像センサ装置およびガス画像撮像測定装置およびガス画像撮像測定システムを実現できる。
【0045】
[1]
撮像対象となる1種以上のガスの赤外光画像を結像する赤外光結像光学系(LI)と、該赤外光結像光学系による赤外光画像を結像され、前記赤外光画像を撮像する赤外光撮像素子(10B)と、前記赤外光結像光学系と前記赤外光撮像素子との間に配置され、前記赤外光結像光学系による結像光束
を赤外光画像用光束と分光画像用光束とに分離する分離手段(SP)と、該分離手段により分離された分光画像用光束の結像面に配置された2次元のシャッタアレイ(SA)と、該シャッタアレイの各シャッタを通過する赤外光を前記シャッタごとに分光する赤外光分光手段と、を有し、前記赤外光分光手段は、前記撮像対象となる1種以上のガスによる赤外光吸収波長を分光波長領域に含むガス画像センサ装置(
図3)。
【0046】
[2]
[1]記載のガス画像センサ装置であって、前記赤外光分光手段は、赤外光領域に感度を有する赤外光受光素子アレイ(10CA、10CL)と、前記シャッタアレイ(SA)の個々を通過した光束を、前記赤外光受光素子アレイの受光領域に照射するリレー光学系(RL)と、前記赤外光受光素子アレイ(10CA、10CL)の前記受光領域に密接もしくは近接して配置され、前記受光領域に入射する赤外光を分光する分光フィルタ(SPF)と、を有するガス画像センサ装置(
図3)。
【0047】
[3]
[2]記載のガス画像センサ装置であって、前記赤外光受光素子アレイ(10CL)が、赤外光受光素子のライン状のアレイ配列であり、前記分光手段が、前記リレー光学系(RL)と、前記分光フィルタ(SPF)との間に、前記ライン状のアレイ配列の方向に直交する方向にのみ集光機能を持ち、前記リレー光学系側からの光束を前記赤外光受光素子アレイ(10CL)の受光領域に集光させるシリンダ光学系(CYL)を有するガス画像センサ装置(
図3(b))。
【0048】
[4]
[1]記載のガス画像センサ装置であって、前記赤外光分光手段は、前記シャッタアレイ(SA)に結像する赤外光を前記シャッタアレイ(SA)に直交させるリレーレンズ(RL1)と、前記シャッタアレイの各シャッタを通過した赤外光を平行光束化するマイクロレンズアレイ(MLA)と、該マイクロレンズアレイの個々のマイクロレンズにより平行光束化された赤外光を集光させる集光レンズ(LF)と、該集光レンズにより集光される赤外光の集光位置を通過する赤外光の赤外光成分を分光して受光する分光器(SF)と、を有するガス画像センサ装置(
図4)。
【0049】
[5]
[4]記載のガス画像センサ装置であって、前記分光器(SF)は、スリット状の入射口を有し、前記集光レンズ(LF)により集光される赤外光を前記入射口のスリットの幅方向にさらに集光させるシリンダ光学系(CYL)を有するガス画像センサ装置(
図4(b))。
【0050】
[6]
[1]ないし[5]の何れか1に記載のガス画像センサ装置であって、前記赤外光撮像素子(10B)は、遠赤外光に対する受光機能を有し、前記赤外光分光手段は、中赤外光領域の赤外光に対する分光機能を有するガス画像センサ装置(
図3、
図4)。
【0051】
[7]
ガス画像センサ装置(101)と、前記赤外光撮像素子の出力により、
前記赤外光画像を生成し、前記赤外光分光手段の出力により、前記撮像対象となる1種以上のガスの画像を生成する画像処理手段(103)と、前記ガス画像センサ装置(101)および前記画像処理手段(103)を制御する制御手段(110)と、を有し、前記ガス画像センサ装置が、[1]ないし[6]の何れか1に記載のものであるガス画像撮像測定装置(100、
図2、
図3、
図4)。
【0052】
[8]
[7]記載のガス画像撮像測定装置であって、前記画像処理手段(103)が、赤外光の画像として温度分布画像を形成する機能を有するガス画像撮像測定装置(
図2、
図3、
図4)。
【0053】
[9]
[7]または[8]記載のガス画像撮像測定装置であって、前記制御手段(110)による制御を受けて、前記画像処理手段(103)による前記赤外光画像と前記1種以上のガスの画像とを、選択的に、もしくは合成画像として表示するディスプレイ手段(105)を有するガス画像撮像測定装置(
図2、
図3、
図4)。
【0054】
[10]
[9]記載のガス画像撮像測定装置(100)と、可視画像撮像装置と、を有し、前記可視画像撮像装置は、前記ガス画像撮像測定装置の撮像領域の可視画像を結像する可視画像結像光学系(L0)と、該可視画像結像光学系による可視画像を撮像する可視画像撮像素子(10A)と、を有する可視画像撮像手段(201)と、前記可視画像撮像素子の出力により、表示用可視画像を生成する可視画像用画像処理手段(203、1030)と、該可視画像用画像処理手段により生成された表示用可視画像を表示する可視画像用ディスプレイ手段(105)と、を有し、前記可視画像用ディスプレイ手段は、前記ディスプレイ手段を兼ね、前記ガス画像撮像測定装置による前記1種以上のガス画像および前記赤外光画像および前記表示用可視画像の1以上を、選択的に、もしくは合成画像として表示するものであるガス画像撮像測定システム(
図2、
図3、
図4)。
【0055】
以上、発明の好ましい実施の形態について説明したが、この発明は上述した特定の実施形態に限定されるものではなく、上述の説明で特に限定していない限り、特許請求の範囲に記載された発明の趣旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
この発明の実施の形態に記載された効果は、発明から生じる好適な効果を列挙したに過ぎず、発明による効果は「実施の形態に記載されたもの」に限定されるものではない。