特許第6682382号(P6682382)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ トルンプフ シュヴァイツ アクチエンゲゼルシャフトの特許一覧

特許6682382ノズルチェンジャ、及びノズルチェンジャを備えるレーザ加工機械
<>
  • 特許6682382-ノズルチェンジャ、及びノズルチェンジャを備えるレーザ加工機械 図000002
  • 特許6682382-ノズルチェンジャ、及びノズルチェンジャを備えるレーザ加工機械 図000003
  • 特許6682382-ノズルチェンジャ、及びノズルチェンジャを備えるレーザ加工機械 図000004
  • 特許6682382-ノズルチェンジャ、及びノズルチェンジャを備えるレーザ加工機械 図000005
  • 特許6682382-ノズルチェンジャ、及びノズルチェンジャを備えるレーザ加工機械 図000006
  • 特許6682382-ノズルチェンジャ、及びノズルチェンジャを備えるレーザ加工機械 図000007
  • 特許6682382-ノズルチェンジャ、及びノズルチェンジャを備えるレーザ加工機械 図000008
  • 特許6682382-ノズルチェンジャ、及びノズルチェンジャを備えるレーザ加工機械 図000009
  • 特許6682382-ノズルチェンジャ、及びノズルチェンジャを備えるレーザ加工機械 図000010
  • 特許6682382-ノズルチェンジャ、及びノズルチェンジャを備えるレーザ加工機械 図000011
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6682382
(24)【登録日】2020年3月27日
(45)【発行日】2020年4月15日
(54)【発明の名称】ノズルチェンジャ、及びノズルチェンジャを備えるレーザ加工機械
(51)【国際特許分類】
   B23K 26/70 20140101AFI20200406BHJP
   B23Q 3/155 20060101ALI20200406BHJP
【FI】
   B23K26/70
   B23Q3/155 K
【請求項の数】18
【外国語出願】
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2016-127695(P2016-127695)
(22)【出願日】2016年6月28日
(65)【公開番号】特開2017-13130(P2017-13130A)
(43)【公開日】2017年1月19日
【審査請求日】2018年7月11日
(31)【優先権主張番号】15174256.6
(32)【優先日】2015年6月29日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】518006075
【氏名又は名称】トルンプフ シュヴァイツ アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】TRUMPF Schweiz AG
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】マティアス トヴァイトマン
(72)【発明者】
【氏名】ユリアン ルドー
(72)【発明者】
【氏名】ズィーモン シュニーダー
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアス ビューラー
(72)【発明者】
【氏名】マクス モアシュ
【審査官】 黒石 孝志
(56)【参考文献】
【文献】 欧州特許出願公開第1905535(EP,A2)
【文献】 特開2009−166234(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0112668(US,A1)
【文献】 特開平5−57594(JP,A)
【文献】 特開昭59−230911(JP,A)
【文献】 特開平8−276335(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 26/00 − 26/70
B23Q 3/155
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
特にレーザ加工機械(37)の加工ヘッド(39)に形成されているノズル保持装置(41)に対してノズル(7)を装着及び/又は脱離するノズルチェンジャ(1)であって、
ノズル(7)を収納する複数のノズル保持ユニット(4)と、
前記複数のノズル保持ユニット(4)を収納する、それ自体閉じたガイド軌道(3)を有するノズルマガジン(2)であって、互いに結合されていない前記ノズル保持ユニット(4)は、前記それ自体閉じたガイド軌道(3)に沿って、プッシュ型のリンクチェーンを形成するようになっているノズルマガジン(2)と、
前記ノズル保持装置(41)に対するノズル(7)の装着及び/又は脱離を行なうための、前記それ自体閉じたガイド軌道(3)に沿った引き渡し位置(UP)に、前記複数のノズル保持ユニット(4)の1つのノズル保持ユニット(4)を位置決めすべく、前記それ自体閉じたガイド軌道(3)に沿って前記ノズル保持ユニット(4)を動かす位置決め用駆動装置(14)と、
を備えており、
前記ノズル保持ユニット(4)は、少なくとも1つのガイド区分(8a,8b)を有し、前記少なくとも1つのガイド区分(8a,8b)は、ノズルホルダ軸線(12)に関して回転対称の、周囲を取り巻く、特に円形の外輪郭(10)を有し、
周囲を取り巻く外輪郭(10)は、それぞれの前記ノズル保持ユニット(4)の外輪郭を画定し、
前記ノズル保持ユニット(4)は、中心軸線に対して垂直な方向で見て、前記周囲を取り巻く外輪郭(10)を越えて外方に張り出す領域を有しない、ことを特徴とするノズルチェンジャ。
【請求項2】
前記ノズル保持ユニット(4)は、少なくとも1つの、周囲を取り巻くように歯列が刻設された区分(11)を有する、請求項に記載のノズルチェンジャ。
【請求項3】
前記ガイド軌道(3)に沿って前記ノズル保持ユニット(4)を動かす前記位置決め用駆動装置(14)は、前記周囲を取り巻くように歯列が刻設された区分(11)に係合する歯付きベルト(13)を有する、請求項に記載のノズルチェンジャ。
【請求項4】
前記ガイド軌道(3)に沿って前記ノズル保持ユニット(4)を動かす前記位置決め用駆動装置(14)は、少なくとも2つの隣り合うノズル保持ユニット(4)の、前記周囲を取り巻くように歯列が刻設された区分(11)に係合するラック(15)を有する、請求項2又は3に記載のノズルチェンジャ。
【請求項5】
前記位置決め用駆動装置(14)は、回転軸線(22)周りに回転可能な駆動ディスク(23)を有し、前記駆動ディスク(23)は、前記ガイド軌道(3)に沿って前記ノズル保持ユニット(4)を動かすべく、隣り合うノズル保持ユニット(4)間に係合する、請求項1又は2に記載のノズルチェンジャ。
【請求項6】
前記駆動ディスク(23)は、前記駆動ディスク(23)の周方向で互いに間隔を置いた複数の凹部(24)を有し、前記凹部(24)は、それぞれ、前記ノズル保持ユニット(4)の1つを収容するように形成されている、請求項に記載のノズルチェンジャ。
【請求項7】
前記駆動ディスク(23)は、周方向で隣接する複数の凹部(24)を有し、前記凹部(24)は、それぞれ、前記ノズル保持ユニット(4)の前記少なくとも1つのガイド区分(8a,8b)の前記周囲を取り巻く外輪郭(10)に対応する、請求項に記載のノズルチェンジャ。
【請求項8】
前記引き渡し位置(UP)に配置されているノズル保持ユニット(4)をノズルホルダ軸線(12)周りに回転させるように形成されている着脱用駆動装置(32)をさらに備える、請求項1からまでのいずれか1項に記載のノズルチェンジャ。
【請求項9】
前記着脱用駆動装置(32)は、前記ノズル保持ユニット(4)を当該ノズル保持ユニット(4)のノズルホルダ軸線(12)周りに回転させるべく、少なくとも1つのノズル保持ユニット(4)の前記歯列が刻設された区分(11)に係合する歯車(31)を有する、請求項に記載のノズルチェンジャ。
【請求項10】
前記位置決め用駆動装置(14)及び前記着脱用駆動装置(32)用の1つの共通の駆動モータ(20)をさらに備える、請求項3、8又は9に記載のノズルチェンジャ。
【請求項11】
クラッチ要素(29)を有する切り換え可能なクラッチ(30)であって、前記駆動モータ(20)と前記位置決め用駆動装置(14)との間の駆動接続を前記クラッチ要素(29)の第1の位置で形成し、前記駆動モータ(20)と前記着脱用駆動装置(32)との間の駆動接続を前記クラッチ要素(29)の第2の位置で形成するクラッチ(30)をさらに備える、請求項10に記載のノズルチェンジャ。
【請求項12】
前記位置決め用駆動装置(14)の前記駆動ディスク(23)の前記回転軸線(22)と、前記着脱用駆動装置(32)の前記歯車(31)の前記回転軸線(22)とは、一致する、請求項9から11までのいずれか1項に記載のノズルチェンジャ。
【請求項13】
前記引き渡し位置(UP)に送られた前記ノズル保持ユニット(4)を前記ガイド軌道(3)に沿って動かないようにロックする切り換え可能なロック装置(17)をさらに備える、請求項1から12までのいずれか1項に記載のノズルチェンジャ。
【請求項14】
前記ガイド軌道(3)は、2つの平行に延びる側方の縁部(5a,5b)により画定されている、請求項1から13までのいずれか1項に記載のノズルチェンジャ。
【請求項15】
少なくとも1つの、特にすべてのノズル保持ユニット(4)が、少なくとも1つのノズル(7)を格納するそれぞれ1つのノズル収容部(6)を有する、請求項1から14までのいずれか1項に記載のノズルチェンジャ。
【請求項16】
前記ガイド軌道(3)外の待機位置(WP1,WP2)に配置されているノズルホルダ(4)を前記ガイド軌道(3)に沿ったチェンジ位置(CH1,CH2)へ搬送する少なくとも1つの搬送装置(34a,34b)をさらに備える、請求項1から15までのいずれか1項に記載のノズルチェンジャ。
【請求項17】
前記搬送装置(34a,34b)は、前記待機位置(WP1,WP2)から前記チェンジ位置(CH1,CH2)への前記ノズル保持ユニット(4)の搬送中、前記チェンジ位置(CH1,CH2)に配置されているノズル保持ユニット(4)を前記ガイド軌道(3)外の排出位置(AS1,AS2)へと搬送するように形成されている、請求項16に記載のノズルチェンジャ。
【請求項18】
ワークピースを加工するレーザ加工機械(37)であって、
好ましくは加工ヘッド(39)に形成されている、ノズル(7)を取り付けるノズル保持装置(41)と、
前記ノズル保持装置(41)に対してノズル(7)を装着及び/又は脱離する、請求項1から17までのいずれか1項に記載のノズルチェンジャ(1)と、
を備えるレーザ加工機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特にレーザ加工機械の加工ヘッドに形成されているノズル保持装置に対してノズルを装着及び/又は脱離するノズルチェンジャ、及びこのようなノズルチェンジャを備えるレーザ加工機械に関する。
【0002】
例えば加工プロセスを実施すべくレーザ加工設備の加工ヘッドに取り付けられるノズルは、ワークピース部分との衝突、熱負荷、スパッタ及び加工プロセス由来の汚損により汚染されたり、損傷されたりする場合がある。この種のノズルは、これにより消耗品であり、プロセス信頼性の理由から定期的に交換されるべきものである。
【0003】
欧州特許第2589458号明細書には、複数のノズル保持ユニットあるいはノズル収容部が、マガジン内の不動の位置に配置されているノズルチェンジャが記載されている。ノズルの装着あるいは脱離のために、レーザ加工機械の加工ヘッドは、ノズル保持ユニットの上方に位置決めされる。ノズル保持ユニットは、ノズルを加工ヘッドに対して装着あるいは脱離すべく、歯付きベルトにより駆動され、それぞれの中心軸線周りに回転運動される。ノズルの着脱には、加工ヘッドがノズルホルダの収納領域全体にわたって走行される必要がある。
【0004】
レーザ加工機械用のノズルマガジンは、欧州特許出願公開第1602439号明細書にも記載されている。このノズルマガジンは、単列又は複数列又はマトリックス列内に配置されている複数のノズル保持ユニットを有している。ノズルマガジンは、塵埃に対して密なカバーを有していることができ、このカバーは、ノズルマガジンの上面を覆い、レーザ加工機械のノズルが交換されるときだけ開放される。
【0005】
独国実用新案第202008010577号明細書において、ノズルチェンジのために、複数のノズル保持ユニットがノズルマガジン内に収められているノズルチェンジャを使用することが公知である。ノズルマガジンは、例えばタレットマガジンとして形成されており、ノズルホルダキャリアを有していることができる。ノズルホルダキャリアは、駆動モータによりタレット回転軸線周りに回転可能であり、これにより、ノズルホルダキャリアに取り付けられたノズル保持ユニットを着脱位置に送ることができる。螺合可能なノズルの装着及び/又は脱離のために、着脱位置に配置されているノズル保持ユニットは、着脱用駆動装置により当該ノズル保持ユニットのノズルホルダ回転軸線周りに回転され得る。
【0006】
米国特許第3818580号明細書において、自動的な工具チェンジを行なう工作機械であって、スピンドルと、工具保管マガジンと、工具をマガジンとスピンドルとの間で動かすことが可能な工具チェンジ部材とを備える工作機械が公知となっている。マガジンは、無端のガイドレール又は走行レールであって、ガイドレール又は走行レールに沿って移動可能な一列のキャリッジを有し、キャリッジは、それぞれ解離可能に1つの工具を担持することが可能なガイドレール又は走行レールと、ガイドレールに沿ってキャリッジを駆動する装置とからなっている。
【0007】
旧東ドイツ国経済特許第248534号明細書において、工具から形成される無端のプッシュ型のリンクチェーン(Schubgliederkette)を有する工具貯蔵部が公知となっている。プッシュ型のリンクチェーンは、ガイド内を循環する工具用収容車両から形成されている。ガイドの、第2のガイド区分に接続されて1つの回転ユニットを形成する直線のガイド区分は、交換可能に形成されている。DD216601A3には、類似の工具貯蔵部が記載されている。この工具貯蔵部では、ガイドの一部が同時に、異なる工具を収容するガイド軌道の少なくとも2つの択一的な部分を有する別の工具貯蔵部の構成部分である。
【0008】
発明の課題
本発明の課題は、複数のノズル保持ユニットを省スペースに収めることが可能なノズルチェンジャ、及びこのようなノズルチェンジャを備えるレーザ加工機械を提供することである。
【0009】
発明の対象
この課題は、本発明により、冒頭で述べた形態のノズルチェンジャであって、ノズルを収納する複数のノズル保持ユニットと、複数のノズル保持ユニットを収納する、それ自体閉じたガイド軌道を有するノズルマガジンであって、互いに強固に結合されていないノズル保持ユニットは、それ自体閉じたガイド軌道に沿って、プッシュ型のリンクチェーンを形成するようになっているノズルマガジンと、例えばレーザ加工機械の加工ヘッドに形成されていることが可能なノズル保持装置に対するノズルの装着及び/又は脱離を行なう引き渡し位置に、ノズル保持ユニットを位置決めすべく、それ自体閉じたガイド軌道に沿ってノズルホルダを動かす位置決め用駆動装置と、を備えるノズルチェンジャにより解決される。
【0010】
本発明により、ノズル保持ユニットを省スペースに、原則任意に成形され、それ自体閉じた(無端の)ガイド軌道内に収納することを提案する。ノズル保持ユニットは、ガイド軌道内に一列に相前後して配置されており、隣り合うノズル保持ユニットは、典型的には接触面において互いに当接しており、その結果、多数のノズル保持ユニットが小さな空間に収納され得る。個々のノズル保持ユニットは、永続的に互いに結合されていないものの、相互の当接に基づいて従来慣用のチェーンのチェーンリンクのように運動あるいは移動可能である。すなわち、ガイド軌道に沿ったあるノズル保持ユニットの運動は、ガイド軌道に沿った他のノズル保持ユニットの相応の移動を引き起こし、その結果、ノズル保持ユニットは、ガイド軌道に沿った閉回路内を循環する。ノズル保持ユニットの、このような押動あるいはせん断に強い配置(schubfeste Anordnung)は、プッシュ型のリンクチェーンとも称呼される。場合によっては、プッシュ型のリンクチェーンのあるノズル保持ユニットを運動軌道の一区分に沿って、隣接するノズル保持ユニットと接触させないこと、例えばノズル保持ユニットが引き渡し位置において個別化されるべきときは接触させないことも、可能である。しかし、ノズル保持ユニットは、運動軌道のこの区分を離脱すると、再び、隣接するノズル保持ユニットと当接し、その結果、プッシュ型のリンクチェーンが連なる。
【0011】
加えて、プッシュ型のリンクチェーン内での、緩やかに互いに当接するノズル保持ユニットの、押動あるいはせん断に強い配置は、ノズル保持ユニットの個々を手動で又は場合によっては自動化されてガイド軌道から取り出し、別のノズル保持ユニットと交換することを可能にする。このことは、異なる型式のノズル(異なる外輪郭を有するノズル)が、ノズル保持ユニット内に収納されるべきであり、ノズル保持ユニットが、それぞれのノズル型式に適合された様々なノズル収容部あるいはノズルホルダを有している場合に、必要であり得る。加えてこのような緩い配置は、ノズル保持ユニットあるいはノズル収容部の個別化及び位置決め並びにそれぞれのノズルホルダ回転軸線周りの回転を容易にし、このことは、ノズル保持装置にねじ結合により取り付けられるべきノズルの着脱にとって有利である。
【0012】
ノズル保持ユニットは、典型的には、円筒状の基本形状(外部幾何学形状)を有しており、それぞれのノズルは、典型的には、ノズル保持ユニットの中心軸線あるいは円筒軸線に対して平行に延びるノズル取り出し方向に沿って、ノズル収容部から取り出されるか、又はノズル収容部内に格納される。ノズル保持ユニット、より正確に言えば、ノズル収容部は、この目的のために典型的には、上向きに(ノズル取り出し方向に)開口したノズル収納室を有している。
【0013】
一形態において、ノズル保持ユニットは、少なくとも1つの(軸方向の)ガイド区分を有し、少なくとも1つの(軸方向の)ガイド区分は、周囲を取り巻く、ノズルホルダ軸線に関して回転対称の、特に円形の外輪郭を有する。周囲を取り巻く外輪郭は、典型的には、それぞれのノズル保持ユニットの外輪郭を画定する。すなわち、ノズル保持ユニットは、中心軸線あるいは円筒軸線に対して垂直な方向で見て、周囲を取り巻く外輪郭を越えて外方に張り出す領域を有しない。(軸方向の)ガイド区分は、ノズル保持ユニットのスリーブの外面に形成され、そこに例えば一体成形されているか、リングの形態でプレスばめされているか、又はリングの形態で形成されて、軸受、特に玉軸受を介してノズル保持ユニットのスリーブあるいは基体に結合されていることができる。すなわち、ガイド区分は、玉軸受を形成していてもよい。玉軸受の使用は、ノズル保持ユニット間あるいはガイド軌道との摩擦を低く保つこと、特に、引き渡し位置に位置決めされているノズル保持ユニットがそのノズルホルダ回転軸線周りに回転されるときに、摩擦を低く保つことを可能にする。周囲を取り巻く外輪郭は、一方では、ノズル保持ユニットを、隣接するノズル保持ユニットに対して、押動を伝達するように支持するための接触面として用いられ、他方では、ノズル保持ユニットを側方からガイド軌道内において案内するために用いられることができる。ノズル保持ユニットは、2つ又はそれよりも多くの軸方向のガイド区分を有していてもよく、2つ又はそれよりも多くの軸方向のガイド区分は、円筒軸線の方向あるいは高さ方向で上下に配置されており、それぞれ1つの周囲を取り巻く外輪郭を有しており、これにより、ガイド軌道内でのノズル保持ユニットの支持を改善することができる。外輪郭は、典型的には、一般にノズル取り出し方向に沿って延びるノズルホルダ軸線周りに円形に、周囲を取り巻くように延びている。
【0014】
別の形態において、ノズル保持ユニットは、周囲を取り巻くように歯列が刻設された区分を有する。ノズル保持ユニットの、歯列が切られた(軸方向の)区分は、典型的には、半径方向で見て、ノズル保持ユニットのガイド区分の円形の外輪郭(支持部)を越えて張り出さない、あるいは外輪郭に対してセットバック、つまり奥まっている。周囲を取り巻くように歯列が刻設された区分は、ガイド軌道に沿ったノズル保持ユニットの運動及び/又はそれぞれのノズルホルダ軸線周りのそれぞれのノズル保持ユニットの回転のために使用可能である。
【0015】
一形態において、ガイド軌道に沿ってノズル保持ユニットを動かす位置決め用駆動装置は、周囲を取り巻くように歯列が刻設された区分に係合する歯付きベルトを有する。ガイド軌道に沿ったノズル保持ユニットの運動のために、歯付きベルトがガイド軌道の一区分に沿ってノズル保持ユニットの、それぞれの歯列が刻設された区分に係合すれば十分である。すなわち、歯付きベルトがガイド軌道の全長に沿って延在することは、必ずしも必要でない。
【0016】
一形態において、ガイド軌道に沿ってノズル保持ユニットを動かす位置決め用駆動装置は、少なくとも2つの隣り合うノズル保持ユニットの、周囲を取り巻くように歯列が刻設された区分に係合するラックを有する。ラックは、ガイド軌道の、歯付きベルトとは反対側の固定の位置に配置可能である。すなわち、ラックは、ガイド軌道に沿って動かず、隣り合うノズル保持ユニットの少なくとも2つの、歯列が刻設された区分に係合する。ノズル保持ユニットがガイド軌道に沿って歯付きベルトにより動かされるとき、ノズル保持ユニットは、ラックに支持されることができ、これにより、推進を引き起こすことができる。ラックは、場合によっては選択的に、ラックが側方からガイド軌道内に突入している係合位置と、ラックが、ノズルホルダの、周囲を取り巻くように歯列が刻設された区分に係合しておらず、その結果、推進が引き起こされない、引き戻し位置との間で移動可能である。このことは、着脱にとって好都合であり得る。それというのも、この場合、引き渡し位置に配置されているノズルホルダが、歯付きベルトによりノズルホルダ軸線周りに、このときにガイド軌道に沿って移動されることなく、回転され得るからである。
【0017】
別の形態において、位置決め用駆動装置は、回転軸線周りに回転可能な駆動ディスクを有し、駆動ディスクは、ガイド軌道に沿ってノズル保持ユニットを動かすべく、隣り合うノズル保持ユニット間に係合する。ノズル保持ユニット間の係合のために、駆動ディスクの外面に、凸部、例えば歯又はこれに類するものの形態の凸部が形成されており、凸部間に凹部が形成されている。この場合、駆動ディスクは、典型的には、凸部あるいは歯が少なくとも、複数あるガイド区分の少なくとも1つのガイド区分の高さにおいて延びているように、形成あるいは配置されている。ガイド区分にノズル保持ユニットは、周囲を取り巻く回転対称あるいは円形の外輪郭を有している。駆動ディスクにより、位置決め用駆動装置によるガイド軌道に沿ったノズル保持ユニットの移動は、簡単化される。この場合、位置決め用駆動装置の構成の可能性は、複数存在する。
【0018】
一形態において、駆動ディスクは、駆動ディスクの周方向で互いに隣接する複数の凹部を有し、凹部は、それぞれ、ノズル保持ユニットの1つを(隣り合う凸部間に)収容するように形成されている。この場合、駆動ディスクは、ノズル保持ユニットを個別化するために用いられる。すなわち、凹部内に略完全に収容されるノズル保持ユニットは、ガイド軌道の、ノズル保持ユニットが回転軸線周りの回転運動を実施する一区分に沿って、もはや、隣接するノズル保持ユニットと接触しない。この場合、位置決め用駆動装置は、ステッピングドライブ(Schrittantrieb)として形成されている。それというのも、他のノズル保持ユニットは、この時間中又は少なくともこの時間の一部の間、ガイド軌道に沿って移動されないからである。凹部に収容されたノズル保持ユニットがこの区分を後にすると直ちに、ノズル保持ユニットは、改めて、隣接するノズル保持ユニットと接触し、別のノズル保持ユニットが上述の区分内に移動され、個別化されるまで、ノズル保持ユニットの送り運動が実施される。引き渡し位置は、本形態において、典型的には、ガイド軌道の、個別化が行なわれる区分の領域内にある。本形態において、駆動ディスクは、例えば星形に又はマルタクロスの形態に形成されていることができる。すなわち、駆動ディスクの凸部あるいは歯は、周方向にかなりの延在長さ、例えば約30°より大きな角度にわたる延在長さを有している。凹部の幾何学形状は、ガイド区分の外輪郭に完全に適合されている必要はなく、例えば略三角形の基本形状を有していてもよい。
【0019】
択一的な形態において、駆動ディスクは、駆動ディスクの周方向で隣接する複数の凹部を有し、凹部は、それぞれ、ノズル保持ユニットの単数又は複数のガイド区分の、周囲を取り巻く外輪郭に対応する。凹部は、それぞれのノズル保持ユニットの円形の外輪郭の半径に一致した曲率半径を有する凹面状に湾曲した、特に円形の輪郭を有していてもよい。ノズルホルダのそれぞれのガイド区分が、回転対称の(凸面状の)外輪郭を有しているとき、この(凸面状の)外輪郭は、駆動ディスクに設けられたそれぞれの(凹面状の)凹部の幾何学形状と一致する。本形態において、それぞれのノズル保持ユニットの、比較的小さな、半径方向外側に位置する部分領域のみが、駆動ディスクの凹部内に配置されており、その結果、ノズル保持ユニットは、駆動ホイールの隣接する凹部内に配置されているとき、なおも互いに接触している。この場合、位置決め用駆動装置は、連続的な駆動装置を形成する。すなわち、駆動ディスクの回転運動は、ガイド軌道に沿ったノズル保持ユニットの連続的な移動に至る。
【0020】
例えばレーザ加工機械の加工ヘッドに設けられたノズル保持装置へのノズルの取り付けは、ねじ結合(ねじ式ノズル)によってか、又は差し込み結合(差し込み式ノズルあるいは差し込み式ノズルホルダ)によって実施可能である。ノズルが差し込み結合を介して例えば加工ヘッドのノズル保持装置に取り付けられる場合、ノズルチェンジャにおいて、それぞれのノズルを加工ヘッドにおいて螺動せしめる回転駆動装置は、省略可能である。この場合、加工ヘッドに設けられたノズル保持装置は、ノズルを取り付けるあるいは差し込んで留める好適なクラッチ装置を有している。
【0021】
別の形態において、ノズルチェンジャは、加えて、引き渡し位置に配置されているノズル保持ユニットをノズルホルダ軸線周りに回転させるように形成されている着脱用駆動装置を備える。上述したように、回転駆動装置は、ねじ式ノズルをノズル保持装置に取り付けるあるいはノズルをノズル保持装置から取り外すために用いられる。着脱用駆動装置は、例えば引き渡し位置に配置されているノズル保持ユニットに下面から、例えばノズル保持ユニットの下面に形成される溝に係合することで作用できる。ノズル保持ユニットは、引き渡し位置において、それぞれのガイド区分の円形の外輪郭で、隣接するノズル保持ユニットと接触しているとき、回転運動の際に、隣接するノズル保持ユニットの円形の外輪郭に沿って滑動可能であり、その結果、隣接するノズル保持ユニットは、それぞれのノズルホルダ軸線周りに連れ回されない。ガイド区分の円形の外輪郭が、玉軸受の外レースに形成されている場合、ノズル保持ユニットの回転運動時、外レースは、不動であり、ノズル保持ユニットの基体に取り付けられた内レースのみが、ノズルホルダ回転軸線周りに回転する。しかし、引き渡し位置に対して隣接配置されるノズル保持ユニットが同様にそれぞれのノズルホルダ軸線周りに回転されてもよい。着脱用駆動装置は、典型的には、ノズルホルダの、歯列が刻設された区分に作用する。
【0022】
一形態において、着脱用駆動装置は、ノズル保持装置を当該ノズル保持装置のノズルホルダ軸線周りに回転させるべく、少なくとも1つのノズルホルダの、歯列が刻設された区分に係合する歯車を有する。ノズル保持ユニットの、歯列が切られた(軸方向の)区分は、典型的には、半径方向で見て、ノズル保持ユニットの単数又は複数のガイド区分の円形の外輪郭を越えて張り出さない、あるいはこの円形の外輪郭に対してセットバック、つまり奥まっている。着脱用駆動装置が、歯列が刻設された区分への係合のために、例えば歯付きベルト又はこれに類するものを有していてもよいことは、自明である。例えば、上述した位置決め用駆動装置の歯付きベルトが、着脱用駆動装置のために使用されてもよい。
【0023】
別の形態において、ノズルチェンジャは、位置決め用駆動装置及び着脱用駆動装置用の1つの共通の、典型的には電動式の駆動モータを備える。本形態において、駆動モータは、選択的に位置決め用駆動装置又は着脱用駆動装置を、又は場合によっては両駆動装置を同時に作動させ、これにより、ノズルホルダをそれ自体閉じたガイド軌道に沿って移動させることができる、かつ/又は引き渡し位置に配置されているノズル保持ユニット(及び場合によっては別のノズル保持ユニット)をそれぞれのノズルホルダ軸線周りに回転させることができる。駆動モータは、例えば上述した歯付きベルトをガイド軌道に沿って動かすように形成されていることができる。上述したラックが、ノズル保持ユニットの、歯列が刻設された区分に係合していれば、歯付きベルトの運動は、ガイド軌道に沿ったノズル保持ユニットの送りを引き起こす。ラックがガイド軌道外に動かされれば、駆動モータによって、引き渡し位置に配置されているノズル保持ユニットは、ロックによりガイド軌道に沿った運動が阻止されている限り、当該ノズル保持ユニットのノズルホルダ軸線周りに回転される。
【0024】
別の形態において、ノズルチェンジャは、クラッチ要素を有する切り換え可能なクラッチであって、駆動モータと位置決め用駆動装置との間の駆動接続をクラッチ要素の第1の位置で形成し、駆動モータと着脱用駆動装置との間の駆動接続をクラッチ要素の第2の位置で形成するクラッチを備える。典型的には、クラッチ要素の第1の位置において、駆動モータと着脱用駆動装置との間の駆動接続は生じない。相応にクラッチ要素の第2の位置において、駆動モータと位置決め用駆動装置との間の駆動接続は生じない。しかし、クラッチ要素の第1の位置において、駆動モータと着脱用駆動装置との間の駆動接続を維持することも可能であり、その結果、着脱用駆動装置は、クラッチ要素が第1の位置にあるか、第2の位置にあるかにかかわらず、共通の駆動モータと常に駆動接続されている。切り換え可能なクラッチは、例えば、クラッチディスク又はこれに類するものの形態のクラッチ要素を有していることができ、クラッチ要素は、切り換え装置により2つの異なる位置間で往復可動であり、これにより、位置決め用駆動装置又は着脱用駆動装置との駆動接続を形成することができる。
【0025】
一形態において、位置決め用駆動装置の駆動ディスクの回転軸線と、着脱用駆動装置の歯車の回転軸線とは、一致する。この場合、駆動ディスクと歯車とは、同心的に上下に配置されており、典型的には、着脱用駆動装置の歯車は、位置決め用駆動装置の駆動ディスクと比較して、共通の回転軸線から小さな半径方向の延在長さを有している。着脱用駆動装置の歯車の歯は、典型的には、位置決め用駆動装置の駆動ディスクの凹部に突入し、これにより、それぞれのノズル保持ユニットの、歯列が刻設された区分に係合することができる。
【0026】
別の形態において、ノズルチェンジャは、加えて、引き渡し位置に位置決めされたノズル保持ユニットをガイド軌道に沿って動かないようにロックする切り換え可能なロック装置を備える。ロック装置は、ロック駆動装置を有していることができ、ロック駆動装置によりロック要素、例えば、クランプ状あるいは括弧形の構成部材又は単数又は複数のインデックスピン(Indexierbolzen)の形態のロック要素が、ロック位置へと動かされる。ロック位置において、位置決め用駆動装置によるノズル保持ユニットの送りは、阻止される。ロックのために、例えば駆動モータと駆動ディスクとの間の接続が断たれてもよい。これとは異なり又はこれに加えて、引き渡し位置に配置されたノズル保持ユニットは、引き渡し位置において固定、すなわち、ガイド軌道に沿った運動は、阻止され得る。ロック駆動装置として、例えば空気圧式又は液圧式の駆動装置が用いられてもよい。ロック装置は、典型的には数値制御されて操作される。ロック装置のロック要素は、切り換え可能なクラッチのクラッチ要素及び/又は切り換え要素に駆動接続されていてもよい。こうして、ロック要素によるロックは、時間的に第2の位置へのクラッチ要素の運動と並行して実施可能であり、その結果、クラッチ要素が第2の位置にあるとき、ロックは閉じられている。
【0027】
別の形態において、ガイド軌道は、2つの平行に延びる側方の縁部により画定されている。ノズル保持ユニット、より正確に言えば、ガイド区分は、ノズル保持ユニットを両縁部間に僅かな遊びを保ってガイド軌道に沿って案内することを可能にする幅あるいは外径を有している。
【0028】
別の形態において、少なくとも1つのノズル保持ユニット、特にすべてのノズル保持ユニットが、少なくとも1つのノズルを格納するそれぞれ1つのノズル収容部(ノズルホルダ又はノズル格納部ともいう)を有する。ノズル保持ユニットは、一般にスリーブ状の基体を有しており、基体内には、ノズル収容部が収容されているあるいは収容可能である。ノズル収容部は、基体内に特に回転軸線の方向でばね弾性的に支持されていることができる。加えてノズル収容部と、ノズル保持ユニットの基体との間には、欧州特許第2589458号明細書に記載されているように、半径方向の遊びが存在していてもよい。隣接するノズル保持ユニットに対する接触面として用いられる単数又は複数のガイド区分が形成されているノズル保持ユニットの基体ほどには、ノズル収容部が半径方向外方に延在しないことは、自明である。ノズル収容部内には、ノズル収納室が形成されており、ノズル収納室は、典型的には、上側の開口に向かって拡幅し、ノズル収納室内には、単数又は場合によっては複数のノズル収納場所が、様々な幾何学形状及び/又はサイズのノズルを格納するように形成されている。ノズル収納場所は、特に段状に互いにオフセットされていてもよい。この詳細については、欧州特許第2589458号明細書に記載されている。ノズル収納室内にはあるいはノズル収納場所には、ノズルの形状結合(formschluessig:形状による束縛)式の、これにより回り止めされた格納を可能にする、周囲を取り巻く収容輪郭が形成されていてもよい。複数あるノズル収納場所のうちの1つ又は複数のノズル収納場所は、差し込み可能なノズルを収容するように形成されていてもよく、場合によってはそれ自体がクランプ装置及び/又は係止装置を有していてもよい。
【0029】
ノズルチェンジャのノズル保持ユニット内には、異なる型式のノズル収容部が設けられていてもよい。特に、複数あるノズル保持ユニットの1つのノズル保持ユニット内に、ブラインドステーション(Blindstation)が設けられていてもよく、ブラインドステーションは、ワークピース加工中、引き渡し位置に位置決めされ、これにより、汚染粒子を捕捉することができる。汚染粒子は、さもなければ、そこに位置決めされているノズル収容部のノズル収納室内に到達しかねない。ノズルチェンジを容易ならしめるべく、ノズルチェンジャ内で使用されるすべてのノズル収容部が、同一の構造形態を有していると、有利である。しかし、このことは、必須ではない。それというのも、好適な制御を介して、様々な形態のノズル収容部も管理可能であるからである。
【0030】
別の形態において、ノズルチェンジャは、加えて、ガイド軌道外の待機位置に配置されているノズル保持ユニットをガイド軌道に沿ったチェンジ位置へ搬送する少なくとも1つの搬送装置を備える。ノズルチェンジ時、装備され、ノズル保持装置に取り付けられていたノズルをノズル保持装置から取り外し、引き渡し位置に配置されている空のノズル収容部に格納することが必要である。次に、ノズル保持装置に取り付けられるべきノズルをもったノズル保持ユニットは、引き渡し位置へ動かされねばならない。空のノズル収容部を有するノズル保持ユニットと、装備すべきノズルを有するノズル保持ユニットとの間の走行距離をできる限り短く維持し、ひいては装備時間を最短化すべく、まず、装備すべきノズルが収容されているノズル収容部を有するノズル保持ユニットが、位置決め用駆動装置により、チェンジ位置の近傍、典型的にはチェンジ位置に直接隣接して配置され得る。待機場所に、空のノズル収容部を有するノズル保持ユニットが位置決めされているとき、このノズル保持ユニットは、搬送装置によりチェンジ位置へと動かされることができ、その結果、空のノズル収容部を有するノズル保持ユニットと、装備すべきノズルを有するノズル保持装置とは、直接隣接してガイド軌道に沿って配置されている。ノズル保持ユニットの搬送中、位置決め用駆動装置が典型的には非作動状態にあることは、自明である。場合によっては、2以上の対応するチェンジ位置を有する2以上の搬送装置がノズルチェンジャ内に設けられていてもよいことも、自明である。ガイド軌道外の2以上の待機位置を有する搬送装置が設けられていてもよく、これにより、そこに存在するノズル保持ユニットを選択的に同一のチェンジ位置へ搬送することができる。搬送装置は、典型的には引き出し状のノズル保持ユニット収容部を有している。ノズル保持ユニット収容部には、それぞれ1つのノズル保持ユニットのための2以上の収容室が形成されている。収容室は、それぞれ、互いに隣接して例えば1本の線上に配置されていることができる。個々の格納室は、ガイド軌道の一区分のように形成されている。すなわち、格納室は、互いの間にノズル保持ユニットを1つだけ位置決め可能な2つの側方の縁部を有しており、格納室のこれらの側方の縁部は、チェンジ位置外にあるガイド軌道の縁部に対応するようになっている。
【0031】
一形態において、搬送装置は、待機位置からチェンジ位置へのノズル保持ユニットの搬送前又は搬送中、チェンジ位置に配置されているノズル保持ユニットをガイド軌道外の排出位置へと搬送するように形成されている。チェンジ位置に配置されているノズル保持ユニットが、待機位置からチェンジ位置へのノズル保持ユニットの運動前又は運動中に、ガイド軌道あるいはチェンジ位置から取り除かれねばならないことは、自明である。搬送装置は、例えば駆動モータを有していることができ、駆動モータは、待機位置に配置され、内部にノズル保持ユニットが配置されている格納室を、側方にガイド軌道内へ移動させ、それと同時に、隣接配置されている別の格納室が、そこに格納されているノズル保持ユニットとともに、排出位置へと動かされる。複数の待機位置がガイド軌道外に形成されている場合、本形態においては、単数又は場合によっては複数のノズル保持ユニット収容部の複数の格納室が、側方に相並んで配置されており、選択的に側方にガイド軌道内、より正確に言えば、チェンジ位置へと移動され得る。搬送装置が2以上の待機位置を有している場合、典型的には、選択的にそれぞれの格納室を待機位置からチェンジ位置に向かって搬送するために、制御される駆動軸が必要である。側方運動とは異なり又は側方運動に加えて、それぞれのノズル保持ユニットあるいはチェンジ位置に配置されている格納室を鉛直方向で動かすことも、可能である。両態様において、ノズルチェンジャは、特に上述のように形成されている、すなわち同様に閉じたガイド軌道を有する別のノズルマガジンを有していてもよい。特に好適なクラッチが設けられれば、別のノズルマガジンのノズル保持ユニットの運動のために、元のノズルマガジンのためのものと同じ位置決め用駆動装置及び場合によっては同じ駆動モータが使用され得る。この場合、例えば2つ又は場合によってはより多くのノズルマガジンが上下に配置されてもよい。
【0032】
ノズルチェンジャの好適な設計時及びレーザ加工機械内でのノズルチェンジャの好適な位置決め時、排出位置へと動かされたノズル保持ユニットは、例えば格納室がノズル保持ユニットとともにレーザ加工機械の外装の側壁又は前壁から走出あるいは進出せしめられたときに、有効稼働時間に並行して行なわれる装備作業あるいは外段取り作業のためにも使用可能であり、その結果、外部から、ノズル保持ユニットあるいはノズル収容部内に収納されているノズルにアクセスすることが可能である。
【0033】
本発明は、ワークピースを加工するレーザ加工機械であって、好ましくは加工ヘッドに形成されている、ノズルを取り付けるノズル保持装置と、ノズル保持装置に対してノズルを装着及び/又は脱離する上述のノズルチェンジャと、を備えるレーザ加工機械にも関する。ノズル保持装置は、ノズルを加工ヘッドに取り付けるために、ねじ山を有していてもよい。しかし、ノズル保持装置は、ノズルを係止固定あるいはクランプ固定するための係止装置及び/又はクランプ装置を有していてもよい。ノズル保持装置は、典型的にはレーザ加工機械、例えば2Dレーザ切断機械又は3Dレーザ加工機械の加工ヘッドに取り付けられている。加工ヘッドは、典型的には3つの空間方向に沿って可動であり、その結果、引き渡し位置に位置決め可能であり、かつノズルの着脱のためにノズル取り出し方向(典型的にはZ方向あるいは重力方向)に沿って可動である。加工ヘッドは、特に加工ロボットに取り付けられていることができる。ノズルチェンジャは、典型的には、レーザ加工機械の加工空間あるいは加工領域の縁部に配置されているか、又は搬送装置、例えば旋回可能なアーム又はリニア軸により、加工空間の縁部に位置決め可能である。
【0034】
本発明の別の利点は、明細書及び図面から看取可能である。同様に、前述した特徴及びさらに後述する特徴は、それ自体単独でも、複数の特徴の任意の組み合わせでも使用可能である。図示し、説明する実施の形態は、限定列挙と解すべきものではなく、むしろ、発明を説明するための例示的な性質をもつものである。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1】それ自体閉じたガイド軌道と、歯付きベルトを有する位置決め用駆動装置とを備えるノズルチェンジャの第1の実施の形態の斜視図である。
図2】ガイド軌道に沿って配置されている複数のノズル保持ユニットの斜視図である。
図3】ガイド軌道に沿って連続して延びるプッシュ型のリンクチェーンを形成する複数のノズル保持ユニットの平面図である。
図4】駆動ディスクを有する位置決め用駆動装置を備えるノズルチェンジャの第2の実施の形態の斜視図である。
図5図4のノズルチェンジャの一部を切開した図である。
図6図4及び図5のノズルチェンジャ用の切り換え可能なクラッチを含む斜視断面図である。
図7】それぞれ1つのノズル保持ユニットをガイド軌道外の待機位置からガイド軌道内のチェンジ位置に搬送する2つの搬送装置を備えるノズルチェンジャの第3の実施の形態を示す図である。
図8】1つのノズル保持ユニットがガイド軌道外の排出位置にある、図7と類似の図である。
図9】ノズル保持ユニットを引き渡し位置において個別化するように形成されている駆動ディスクを備える図7及び図8のノズルチェンジャの詳細図である。
図10】加工ヘッドとノズルチェンジャとを備えるレーザ加工機械を示す図である。
【0036】
図面の以下の説明中、同一あるいは機能同一の構成部材には同一の符号を使用する。
【0037】
図1は、ノズルチェンジャ1を示している。ノズルチェンジャ1は、上向きに開口したボックス状のノズルマガジン2を有している。ノズルマガジン2は、複数のノズル保持ユニット4(図示の形態では、19個のノズル保持ユニット4)を有している。これらのノズル保持ユニット4は、それ自体閉じた(無端の)ガイド軌道3に沿って配置されている。ガイド軌道3は、ノズルマガジン2内に形成されており、ノズルマガジン2の底と、ノズルマガジン2の内側の側方の縁部5aと、平行に延びる外側の側方の縁部5bとにより画定されており、その結果、ガイド軌道3は、一定の幅を有している。ノズル保持ユニット4は、平たんな底を有しており、この平たんな底でもってノズルマガジン2あるいはガイド軌道3の底に沿って滑動する。
【0038】
ノズル保持ユニット4は、それぞれ1つの上下のガイド区分8a,8b(図2参照)を有している。ガイド区分8a,8bは、金属製のリングの形態で形成されている。リングは、それぞれの玉軸受あるいはこの玉軸受の内レースを介してノズル保持ユニット4のスリーブ状の基体9に支持されている。両ガイド区分8a,8bは、それぞれのノズル保持ユニット4を半径方向外向きに画定するそれぞれ1つの円形の外輪郭10を有している。ノズル保持ユニット4のガイド区分8a,8bの円形の外輪郭10は、一方では、それ自体閉じたガイド軌道3に沿ってノズル保持ユニット4を案内するのに用いられ、他方では、隣り合うノズル保持ユニット4間の接触面として用いられる。ガイド軌道3の両側方の縁部5a,5bは、鉛直方向Zで見て、両軸方向のガイド区分8a,8bが両側方の縁部5a,5bに当接するような大きさの高さにわたって延在している。鉛直方向Zは、図示の形態では、ノズル取り出し方向に相当し、この方向に沿って、ノズル保持装置4のそれぞれのノズル収容部6内に収納されているノズル7が、ノズル収容部6あるいはノズルチェンジャ1から取り出し可能である。ノズル収容部6は、ノズル保持ユニット4のスリーブ状の基体9内に支持されており、場合によっては好適なロック手段により、ノズル7の取り出し時にノズル保持ユニット4から不都合な解離が起こらないようにされていてもよい。
【0039】
上側のガイド区分8aと下側のガイド区分8bとの間には、それぞれのノズル保持ユニット4のスリーブ状の基体9に、周囲を取り巻くように歯列が刻設された区分11が形成されている。この歯列が刻設された区分11は、ノズルホルダ軸線12(中心軸線)を起点とする半径方向で見て、ガイド区分8a,8bほどには外方に延在していない。これにより、周囲を取り巻くように歯列が刻設された区分11の歯は、ガイド区分8a,8bの外輪郭10に対して半径方向でセットバック、つまり奥まっている。
【0040】
図1及び特に図2に看取可能であるように、ガイド軌道3に沿ったノズル保持ユニット4の運動のために、歯付きベルト13が、側方から、ノズル保持ユニット4の、歯列が刻設された区分11に係合する。歯付きベルト13は、図示しない駆動モータにより駆動される。駆動モータの駆動軸は、好適に適合されていて図2に示した駆動ピニオンあるいは駆動ホイール9aの内部に係合する。駆動ピニオンあるいは駆動ホイール9aは、ガイド軌道3外に配置されている。駆動モータ(図示せず)と、駆動ピニオン9aと、歯付きベルト13とは、相俟って1つの位置決め用駆動装置14を形成している。図3に看取可能であるように、歯付きベルト13は、側方から、すべてのノズル保持ユニット4の、歯列が刻設された区分11に作用するのではなく、ガイド軌道3に沿って配置されている複数のノズル保持ユニット4の一部にのみ作用する。この場合、歯付きベルト13は、ガイド軌道3の外側の縁部5bの内面に沿って、ノズル保持ユニット4の、歯列が刻設された区分11の高さにおいて延びている。
【0041】
図2及び図3に同様に看取可能であるように、ノズルマガジン2内にラック15が取り付けられている。ラック15は、空気圧式の駆動装置16により、図3に示した引き戻し位置から側方に、ガイド軌道3の内側の縁部5a内に設けられた開口を通して、図2に示した係合位置へと移動可能である。係合位置において、ラック15の歯は、側方からガイド軌道3内に突入し、隣り合うように配置される2つのノズル保持ユニット4の、歯列が刻設された区分11に係合する。
【0042】
ラック15が係合位置にあるとき、歯列が刻設された区分11にラック15が係合している両ノズル保持ユニット4は、ラック15に支持されることになり、これにより、位置決め用駆動装置を作動させると、駆動ピニオン9aを介して、それ自体閉じたガイド軌道3に沿ったノズル保持ユニット4の推進を引き起こすことができる。このとき利用されるのは、ノズル保持ユニット4がガイド軌道3に沿ってプッシュ型のリンクチェーンを形成し、その結果、複数あるノズル保持ユニット4の1つをガイド軌道3に沿って移動させると、その他すべてのノズル保持ユニット4がガイド軌道3に沿って移動することを結果として伴うようにしたことである。プッシュ型のリンクチェーンを形成すべく、ガイド軌道3内に配置されているそれぞれ隣接するノズル保持ユニット4が、ノズル保持ユニット4のガイド区分8a,8bの円形の外輪郭10でもって、押動あるいはせん断に対して十分な強さをもって互いに当接しており、その結果、これらのノズル保持ユニット4は、永続的に互いに結合されていなくても、従来慣用のチェーンのリンクのように動かされることができる。それゆえ、位置決め用駆動装置により、駆動ピニオン9aを介してあるいは位置決め用駆動装置14を介して、ノズル保持ユニット4は、ガイド軌道3に沿った閉回路内を動かされることになり、その結果、ノズル保持ユニット4の各々は、ガイド軌道3に沿って所望の位置にもたらされ得る。
【0043】
ノズル7の装着又は脱離が予定される1つのノズル保持ユニット4が、図3に示すように位置決め用駆動装置14により駆動ピニオン9aあるいは歯付きベルト13を介してガイド軌道3に沿って引き渡し位置UPに位置決めされているとき、まず、ラック15が空気圧式の駆動装置16により、図2に示した係合位置から、図3に示した引き戻し位置に移動される。引き戻し位置において、ラック15は、ノズル保持ユニット4の、歯列が刻設された区分11に係合していない。引き渡し位置UPに配置された1つのノズル保持ユニット4のノズル7をノズル保持装置(図示せず)にねじ結合を用いて装着するために、ノズル保持ユニット4は、まず、切り換え可能なロック装置17により、引き渡し位置UPに固定される。すなわち、このノズル保持ユニット4あるいはすべてのノズル保持ユニット4の、ガイド軌道3に沿った運動が、阻止される。図示の形態では、ロック装置17は、この目的のために空気圧式のロック駆動装置18を有している。ロック駆動装置18は、ロック要素19を、引き戻し位置から、ガイド軌道3の内側の縁部5aに設けられた開口を通して、図3に示したロック位置へ動かす。ロック要素19は、図示の形態では、略C字形に形成されており、ロック位置においてロック要素19の両脚片でもって、引き渡し位置UPに配置されているノズル保持ユニット4に、より正確に言えば、このノズル保持ユニット4の両ガイド区分8a,8bに当接する。ロック要素19は、確かに、ガイド軌道3に沿ったノズル保持ユニット4の運動を阻止するものの、ガイド区分8a,8bの円形の外輪郭10がC字形のロック要素19の当接面に沿って滑動可能であるため、あるいはガイド区分8a,8bが例えば玉軸受として形成されているため、ノズル保持ユニット4のノズルホルダ軸線12周りのノズル保持ユニット4の回転運動を可能にする。
【0044】
これにより、ノズルチェンジのために、より正確に言えば、ノズル保持装置におけるノズル7のねじ回しのために、引き渡し位置UPに配置され、ロック要素19によりガイド軌道3に沿った運動が阻止されているノズル保持ユニット4は、位置決め用駆動装置により駆動ホイール14を介してこのノズル保持ユニット4のノズルホルダ軸線12周りに回転運動される。位置決め用駆動装置14は、この場合、すなわち、ノズル保持ユニット4が引き渡し位置UPにおいてロックされているとき、ノズル7をノズル保持装置に装着するための着脱用駆動装置として用いられる。ノズル7をノズル保持装置から脱離するには、位置決め用駆動装置14が反対の回転方向で運転されねばならないことは、自明である。
【0045】
図1乃至図3に示したノズルチェンジャ1は、ガイド軌道3に沿った一列のノズル保持ユニット4の配置により、特にノズル保持ユニット4の省スペースの収納を可能にする。ノズルチェンジャ1は、特に単純に構成されており、ノズル7の位置決めと着脱との間での切り換えのために、クラッチを必要としない。しかし、そこに示したノズルチェンジャ1は、問題なくスケーリング可能とはいえない。すなわち、このノズルチェンジャ1は、問題なくより多数又はより少数のノズルの収納には供され得ない。それというのも、この目的のためには、歯付きベルト13の長さが変更されねばならないからである。また、位置決め用駆動装置14(駆動ピニオン/駆動ホイール9a参照)用の駆動モータは、場合によっては、ノズルマガジン2の、ガイド軌道3の内側の縁部5aにより画定される内部領域内に配置され得ない。それというのも、そこには既に両空気圧式の駆動装置16,18が配置されてしまっているからである。
【0046】
図4乃至図6は、位置決め用駆動装置14の駆動モータ20が、ガイド軌道3の内側の縁部5a内の、ノズルマガジン2の領域に配置されているノズルチェンジャ1を示している。駆動モータ20は、相対回動不能に駆動軸に結合される歯車(図示せず)を有している。この歯車は、ノズルマガジン2の下面に取り付けられており、ノズルマガジン2の下面に配置される別の歯車(図示せず)と噛み合い、これにより、位置決め用駆動装置14の駆動軸21を、ノズル取り出し方向Zで延びる回転軸線22周りに回転させることができる。駆動モータ20から駆動軸21への力伝達が別の形式で、例えば歯付きベルト等を介して実施されてもよいことは、自明である。
【0047】
ノズルチェンジャ1の位置決め用駆動装置14は、ガイド軌道3に沿ったノズル保持ユニット4の運動あるいは送りのために、駆動ディスク23を有している。駆動ディスク23は、駆動モータ20により回転軸線22周りに回転可能である。駆動ディスク23は、ガイド軌道3に沿ったノズル保持ユニット4の送りのために、隣り合うノズル保持ユニット4間に係合するように形成されており、その結果、ノズル保持ユニット4は、駆動ディスク23の回転時に駆動ディスク23に連行され、ガイド軌道3に沿って移動される。この目的のために駆動ディスク23は、歯車の形態で形成される外輪郭を有している。この外輪郭は、複数の凹面状の凹部24を有しており、凹部24は、それぞれのノズル保持ユニット4のガイド区分8a,8bの、周囲を取り巻く円形の外輪郭10に対応しており、すなわち、ガイド区分8a,8bの、周囲を取り巻く外輪郭10と同じ曲率半径を有している。駆動ディスク23の外輪郭には、凹部24間に歯25が形成されている。歯25は、それぞれ、隣り合うノズル保持ユニット4間に係合する。駆動ディスク23により回転運動時に連行されるノズル保持ユニット4は、ノズル保持ユニット4のガイド区分8a,8bにおいて接触する。すなわち、ノズル保持ユニット4は、回転軸線22周りの回転時、個別化されず、その結果、位置決め用駆動装置14は、ガイド軌道3に沿ったノズル保持ユニット4の連続的な運動を引き起こす。
【0048】
図4乃至図6に示したノズルチェンジャ1の場合、同様に引き渡し位置UPが形成されている。詳細には、引き渡し位置UPは、ボックス状のノズルマガジン2の短辺側において、ガイド軌道3に沿った、駆動ディスク23がガイド軌道3に係合している区分に形成されている。ノズルチェンジャ1は、本形態でも、ロック装置17を有しており、これにより、ノズル保持ユニット4を引き渡し位置UPにおいてロックする、すなわち、ガイド軌道3に沿った運動を阻止することができる。ロック装置17は、本形態では、2つのインデックスピン19a,19bの形態のロック要素を有している。インデックスピン19a,19bは、図6に示した引き戻し位置から、駆動ディスク23の半径方向内側の区分23a内に形成されている2つの貫通孔を通して、ロック位置に移動可能である。ロック位置においてインデックスピン19a,19bは、貫通孔に係合し、回転軸線22周りの駆動ディスク23の回転運動を阻止する。
【0049】
ノズル取り出し方向Zでのあるいはノズル取り出し方向Zとは逆方向でのインデックスピン19a,19bの運動は、空気圧式のピストン駆動装置18により実現される。ピストン駆動装置18の、水平方向(X方向)で移動可能なピストンロッド18aには、H字形の中間部材26が取り付けられており、中間部材26は、ピストンロッド18aの移動運動の、X方向からZ方向への90°の力伝達に用いられる。H字形の中間部材26の両脚片の各々には、それぞれのインデックスピン19a,19bの上側の区分を収容する中空室が形成されている。H字形の中間部材26のそれぞれの脚片の側壁内には、長孔27が形成されている。長孔27は、Z方向に対してもX方向に対しても約45°の角度をなして延びており、長孔27内において、インデックスピン19a,19bは、インデックスピン19a,19bの上端部に設けられ、側方に突出するピンでもって案内されている。インデックスピン19a,19bは、水平に延びる定置のプレート28(図4参照)の貫通孔を通してZ方向で延びており、ピストンロッド18aの、X方向での運動時、上述した力の変向に基づいて、鉛直方向(Z方向)で移動される。
【0050】
インデックスピン19a,19bは、ロック位置にあるとき、切り換え可能なクラッチ30の一部であるクラッチディスク29の形態のクラッチ要素に作用する。ロック位置においてクラッチディスク29は、インデックスピン19a,19bにより押し下げられ、これにより、クラッチディスク29の下面に形成され、半径方向で延びるリブが、着脱用駆動装置32の一部である歯車31の、半径方向で延びるリブに係合する。着脱用駆動装置32は、引き渡し位置UPに配置されているノズル保持ユニット4をこのノズル保持ユニット4のノズルホルダ軸線12周りに回転させるのに用いられる。この場合、歯車31は、歯車31の外面に形成された、軸方向で延びる歯でもって、駆動ホイール23の凹部24内に収容されているノズル保持ユニット4の、歯列が刻設された区分11に係合する。図示の形態では、駆動ホイール23の凹部24内に収容されているすべてのノズル保持ユニット4が、歯車31の回転に基づいてこれらのノズル保持ユニット4のそれぞれのノズルホルダ軸線12周りに回転される。
【0051】
インデックスピン19a,19bがロック位置にあるとき、切り換え可能なクラッチ30のクラッチディスク29も、第2の下側の位置に配置されている。第2の位置においてクラッチディスク29は、着脱用駆動装置32の歯車31を連動し、その結果、クラッチ30は、駆動モータ20への駆動接続を形成する。これに対して、インデックススタッド19a,19bが、図6に示した位置に引き戻されており、駆動ディスク23に設けられた穴に係合していないとき、クラッチディスク29も、第1の軸方向(Z方向)上側の位置にある。第1の位置において、クラッチディスク29の上面に形成される、半径方向で延びるリブあるいは歯が、駆動ディスク23の内側の区分23aの下面に形成される、半径方向で延びるリブに噛み合い、その結果、駆動ディスク23は、クラッチディスク29の回転時に連行される。これにより、クラッチディスク29の第1の上側の位置において、駆動モータ20と駆動ディスク23あるいは位置決め用駆動装置14との間の駆動接続が形成される。
【0052】
クラッチディスク29の第1の上側の位置は、基本位置をなしている。すなわちクラッチディスク29は、インデックスピン19a,19bがクラッチディスク29を押し下げたときしか、上側の位置を離脱しない。クラッチディスク29を上側の位置に保持すべく、クラッチディスク29は、クラッチディスク29の下面において圧縮ばね(図示せず)により付勢されている。圧縮ばねは、相対回動不能に軸21に支持されるディスク33の上面に取り付けられている。ディスク33は、軸方向で堅固に軸21に支持されており、その結果、圧縮ばねは、ディスク33に支持されており、クラッチディスク29を押し上げる。
【0053】
図7乃至図9に示したノズルチェンジャ1の別の実施の形態は、図4乃至図6に示したノズルチェンジャ1とは、主として、ガイド軌道3の、引き渡し位置UPとは反対側の区分に、2つの搬送装置34a,bが形成されている点において相違する。搬送装置34a,bは、それぞれのノズル保持ユニット4をガイド軌道3外の待機位置WP1,WP2からガイド軌道3内の対応するチェンジ位置CH1,CH2に搬送するのに用いられる。待機位置WP1,WP2及びチェンジ位置CH1,CH2には、図7で見て、引き出し状のノズルホルダ収容部35a,35bのそれぞれ1つの格納室が形成されており、格納室には、ノズル保持ユニット4が1つずつ格納され得る。それぞれのノズルホルダ収容部35a,35bは、ピストンロッドに取り付けられており、空気圧式のピストン駆動装置36a,36bによりX方向、すなわち、ガイド軌道3の区分が両チェンジ位置CH1,CH2の領域で延びる方向としてのY方向に対して横方向で移動され得る。それぞれのピストン駆動装置36a,36bのピストンロッドが、図7に示した引き戻し位置から、第2の搬送装置34bのための図8に示した走出位置へと移動されると、待機位置WP2に配置されていたノズル保持ユニット4は、ガイド軌道3内のチェンジ位置CH2にもたらされる。搬送装置34a,34bのそれぞれのノズル保持ユニット収容部35a,35bは、それぞれ1つのノズル保持ユニット4のための、X方向で相並んで配置される2つの格納室を有している。それぞれのノズル保持ユニット収容部35a,35bの格納室は、ガイド軌道のそれぞれ1つの区分に相当する。すなわち、それぞれの格納室は、チェンジ位置CH1,CH2の領域におけるガイド軌道3のそれぞれの区分に相当する、平行に延びる2つの縁部を有している。
【0054】
ノズル保持ユニット収容部35a,35bの移動をガイド軌道3に対して横方向に実施する、図7及び図8に示した実施の形態の場合、待機位置WP2に配置されているノズル保持ユニット4の搬送と同時に、チェンジ位置CH2に配置されているノズル保持ユニット4が、ガイド軌道3外の排出位置AS2に移動される。排出位置AS2に配置されているノズル保持ユニット4は、場合によってはノズルチェンジャ1から取り出され、別のノズル保持ユニット4と交換可能である一方、同時に、引き渡し位置UPに配置されているノズル保持ユニット4内にあるノズル7は、ノズル保持装置に装着される。
【0055】
ノズル保持ユニット4をノズルチェンジャ1内に取り込むあるいはノズルチェンジャ1から取り出す際には、どの要素が取り込まれたか、すなわち、例えばノズル保持ユニット4あるいはそのノズル収容部6内に格納されたノズルがどのノズル直径を有しているか、オペレータが機械制御装置又はノズルチェンジャ制御装置に入力することが必要な場合がある。しかし、好ましくは、この情報は、ノズル又はノズル保持ユニット4に、例えばバーコードの形態で格納されていてもよく、バーコードは、ノズルチェンジャ1に設けられた好適な読み取り装置により検出可能である。この場合、機械始動時に、まず、ノズルチェンジャ1内に収納されているノズルの在庫確認を行なうことも可能である。在庫確認時、それぞれのノズルが検出されるとともに、ノズルチェンジャ1内でのそれぞれの位置が検出される。
【0056】
ガイド軌道3に沿ったノズル保持ユニット4の送りが実施されていないときだけ、搬送装置34a,34bが作動されることは、自明である。図7及び図8に示したものとは異なり、ノズル保持ユニット収容部35a,35bは、それぞれ1つのノズル保持ユニット4が格納され得る、2つより多くの、例えば3つ又はそれよりも多くの、一列に配置される収容室を有していてもよい。こうして、同一の搬送装置34a,34b内に、3つ以上のノズル保持ユニット4が、それぞれ異なる待機位置WP1,WP2に位置決めされ、それぞれのチェンジ位置CH1,CH2へと搬送され得る。搬送装置34a,34bによるノズルホルダ4の側方運動とは別の可能性として、ノズル保持ユニット4あるいはノズル保持ユニット格納部の格納室を鉛直方向(Z方向)又は別の方向で、それぞれのチェンジ位置CH1,CH2にもたらすべく動かすことも可能である。また、ノズルチェンジャ1は、上述したノズルマガジン2と同様に形成されている、すなわち、同様に閉じたガイド軌道3を有する別のノズルマガジンを有していてもよい。例えば、この場合、2つ又は場合によってはそれよりも多くのノズルマガジンが、上下に配置されてもよい。
【0057】
図9は、位置決め用駆動装置14の駆動ディスク23を含むノズルチェンジャ1の詳細図である。この駆動ディスク23は、図4乃至図6との関連で説明した駆動ディスク23とは、凹部24が半径方向で駆動ディスク23の内側の区分23aまで延在している点と、凹部24が駆動ディスク23の周方向で互いに間隔を置いている点とで相違する。図示の形態では、隣り合う凹部24は、それぞれ、駆動ディスク23の、周方向で約50°の角度にわたって延在する、凹部24に対して半径方向で突出する凸部により離隔されている。ガイド軌道3に沿ったノズル保持ユニット4の送り時、半径方向で突出する複数ある凸部の1つの凸部のエッジは、側方から、2つの隣り合うノズル保持ユニット4間に係合し、その結果、複数あるノズル保持ユニット4の1つのノズル保持ユニット4は、凹部24内に収容される。図9に示した凹部24は、まさに1つのノズル保持ユニット4を収容することができ、この目的のために半径方向で、ガイド軌道3の幅に概ね相当する延在長さを有するように寸法設定されている。図8に示した駆動ディスク23により、それぞれのノズル保持ユニット4は、引き渡し位置UPにおいて個別化され得る。
【0058】
位置決め用駆動装置14及び着脱用駆動装置32は、その他の点では、図4乃至図6との関連で説明した実施の形態に相当する。しかし、位置決め用駆動装置14は、図7乃至図9に示した形態では、ステッピングドライブとして形成されている。それというのも、他のノズル保持ユニット4は、駆動ホイール23の完全な1回転(360°)に相当する時間の少なくとも一部において、ガイド軌道3に沿って移動されないからである。
【0059】
図10は、レーザ加工機械37内に設けられたノズルチェンジャ1を示している。レーザ加工機械37は、定置の機械本体38と加工ヘッド39とを有している。加工ヘッド39は、3つの空間方向X,Y,Zで機械本体38に対して相対的に可動である。定置の機械本体の代わりに、レーザ加工機械37は、例えばロボットアームの形態の機械本体を有していてもよい。ノズルチェンジャ1は、加工空間の縁部領域に存在するか、又は加工空間内に旋回あるいは走入されてもよい。レーザ加工機械37は、レーザビーム源40も有している。レーザビーム源40を介して、図10に略示したレーザビームが、ワークピース(図示せず)に向けられることができる。レーザ源40が、ノズルチェンジ中、非作動であることは、自明である。加工ヘッド39の下端部には、ノズル保持装置41が取り付けられている。ノズル保持装置41は、図示の形態では、ねじ結合によるノズル7の装着を可能にする。これとは異なり又はこれに加えて、ノズル保持装置41が、ノズル7を例えば係止結合あるいは差し込み結合により加工ヘッド39に保持するように形成されていてもよいことは、自明である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10