(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の実施の形態について以下説明する。本実施形態は本発明を実施する一例であって、本発明は本実施形態に限定されるものではない。
【0016】
本発明の実施形態に係る水処理装置の一例の概略を
図1に示し、その構成について説明する。
【0017】
水処理装置1は、逆浸透膜を有する逆浸透膜処理装置12を備える。水処理装置1は、被処理水を貯留する被処理水槽10を備えてもよい。
【0018】
図1の水処理装置1において、被処理水槽10の入口には被処理水配管20が接続され、被処理水槽10の出口と逆浸透膜処理装置12の入口とは、ポンプ14を介して被処理水供給配管22により接続されている。逆浸透膜処理装置12の透過水出口には透過水配管24が接続され、濃縮水出口には濃縮水配管26が接続されている。濃縮水配管26の途中と被処理水槽10とは、濃縮水循環配管28により接続されていてもよい。被処理水供給配管22におけるポンプ14の吸込側には、pH調整剤を添加するpH調整剤添加手段としてpH調整剤添加配管30と、酸化剤を添加する酸化剤添加手段として酸化剤添加配管32とが接続されている。被処理水供給配管22におけるポンプ14の吐出側には、pH測定手段としてpH測定装置16が接続され、濃縮水配管26には、pH測定手段としてpH測定装置18が接続されている。
【0019】
本実施形態に係る水処理方法および水処理装置1の動作について説明する。
【0020】
シリカを含有する被処理水は、被処理水配管20を通して必要に応じて被処理水槽10に貯留される。被処理水は、ポンプ14により被処理水供給配管22を通して、逆浸透膜処理装置12に供給される。本実施形態に係る水処理方法では、以下の(1)〜(4)の工程が順次繰り返される。
【0021】
(1)シリカを含有する被処理水は、逆浸透膜の濃縮水のpHが6未満に保持されつつ、逆浸透膜処理装置12において逆浸透膜で処理されて、透過水と濃縮水とが得られる(採水工程)。ここで、濃縮水のpHが6以上の場合には、濃縮水のpHが6未満になるように、被処理水供給配管22におけるポンプ14の吸込側において、被処理水にpH調整剤として酸がpH調整剤添加配管30を通して添加され、被処理水が逆浸透膜処理装置12に供給される。濃縮水のpHが6未満の場合には、被処理水はそのまま逆浸透膜処理装置12に供給される。逆浸透膜処理装置12において被処理水の逆浸透膜処理が行われ、逆浸透膜処理で得られた透過水は、透過水配管24を通して排出され、濃縮水は、濃縮水配管26を通して排出される。濃縮水のpHは、濃縮水配管26において、pH測定装置18により測定される。濃縮水は、濃縮水循環配管28により、逆浸透膜処理装置12の前段側、例えば被処理水槽10に循環されてもよい。所定の期間、採水が行われた後、次の殺菌準備工程に移る。
【0022】
採水工程において逆浸透膜の濃縮水のpHが6未満に制御されない場合は、シリカ濃度が溶解度を超えるとシリカスケールが発生する可能性がある。採水工程において、逆浸透膜の濃縮水のpHは5.5以下に保持されることが好ましい。逆浸透膜の濃縮水のpHの下限値は特に限定されないが、逆浸透膜の阻止率を所定の値以上に維持する等の観点から、4.0以上が好ましい。
【0023】
(2)被処理水のpHを6以上として、逆浸透膜処理装置12において逆浸透膜に被処理水が通水される(殺菌準備工程)。ここで、被処理水のpHが6以上の場合には、逆浸透膜の被処理水への酸添加が停止され、被処理水のpHが6以上の条件で逆浸透膜に被処理水が通水される。被処理水のpHが6未満の場合には、被処理水のpHが6以上になるように、被処理水供給配管22におけるポンプ14の吸込側において、被処理水にpH調整剤としてアルカリ剤がpH調整剤添加配管30を通して添加され、逆浸透膜に被処理水が通水される。被処理水のpHは、被処理水供給配管22におけるpH調整剤の添加ポイントの後流側(例えば、ポンプ14の吐出側)において、pH測定装置16により測定される。被処理水のpHが6以上になったら、次の殺菌工程に移る。
【0024】
殺菌準備工程において、被処理水のpHは6.5以上とされることが好ましい。殺菌準備工程における被処理水のpHの上限値は特に限定されないが、逆浸透膜の阻止率を所定の値以上に維持する等の観点から、pH10.0以下が好ましい。
【0025】
(3)被処理水に、酸化剤が添加され、逆浸透膜に被処理水が通水される(殺菌工程)。被処理水供給配管22におけるポンプ14の吸込側において、被処理水に酸化剤が酸化剤添加配管32を通して添加された後、逆浸透膜処理装置12に供給され、逆浸透膜の殺菌が行われる。殺菌工程において、被処理水のpHは殺菌準備工程と同様に6以上であり、6.5以上であることが好ましく、6.5以上10.0以下であることがより好ましい。このようにして酸化剤が添加された被処理水の通水が行われ、所定の期間、逆浸透膜の殺菌が行われた後、次の採水準備工程に移る。
【0026】
(4)被処理水への酸化剤の添加が停止され、逆浸透膜に被処理水が通水される(採水準備工程)。例えば、濃縮水に酸化剤が検出されなくなるまで、逆浸透膜に被処理水が通水される。採水準備工程において、被処理水のpHは殺菌準備工程、殺菌工程と同様に6以上であり、6.5以上であることが好ましく、6.5以上10.0以下であることがより好ましい。所定の期間、通水が行われ、例えば濃縮水に酸化剤が検出されなくなったら、採水工程に戻る。
【0027】
なお、pH調整剤、酸化剤は、被処理水槽10において被処理水に添加されてもよいし、被処理水供給配管22におけるポンプ14の吐出側において被処理水に添加されてもよい。
【0028】
本実施形態に係る水処理方法では、殺菌工程において、被処理水に酸化剤を添加し、逆浸透膜に被処理水を通水する。酸化剤としては、酸化作用があるものであればよく,特に制限はないが、例えば、塩素系酸化剤、臭素系酸化剤、安定化次亜塩素酸組成物、安定化次亜臭素酸組成物等が挙げられる。
【0029】
塩素系酸化剤としては、例えば、塩素ガス、二酸化塩素、次亜塩素酸またはその塩、亜塩素酸またはその塩、塩素酸またはその塩、過塩素酸またはその塩、塩素化イソシアヌル酸またはその塩等が挙げられる。これらのうち、塩としては、例えば、次亜塩素酸ナトリウム、次亜塩素酸カリウム等の次亜塩素酸アルカリ金属塩、次亜塩素酸カルシウム、次亜塩素酸バリウム等の次亜塩素酸アルカリ土類金属塩、亜塩素酸ナトリウム、亜塩素酸カリウム等の亜塩素酸アルカリ金属塩、亜塩素酸バリウム等の亜塩素酸アルカリ土類金属塩、亜塩素酸ニッケル等の他の亜塩素酸金属塩、塩素酸アンモニウム、塩素酸ナトリウム、塩素酸カリウム等の塩素酸アルカリ金属塩、塩素酸カルシウム、塩素酸バリウム等の塩素酸アルカリ土類金属塩等が挙げられる。これらの塩素系酸化剤は、1種を単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。塩素系酸化剤としては、取り扱い性等の点から、次亜塩素酸ナトリウムを用いるのが好ましい。
【0030】
臭素系酸化剤としては、臭素(液体臭素)、塩化臭素、臭素酸、臭素酸塩、次亜臭素酸等が挙げられる。次亜臭素酸は、臭化ナトリウム等の臭化物と次亜塩素酸等の塩素系酸化剤とを反応させて生成させたものであってもよい。
【0031】
安定化次亜塩素酸組成物は、塩素系酸化剤とスルファミン酸化合物とを含むものである。「塩素系酸化剤とスルファミン酸化合物とを含む安定化次亜塩素酸組成物」は、「塩素系酸化剤」と「スルファミン酸化合物」との混合物を含む安定化次亜塩素酸組成物であってもよいし、「塩素系酸化剤とスルファミン酸化合物との反応生成物」を含む安定化次亜塩素酸組成物であってもよい。
【0032】
安定化次亜臭素酸組成物は、臭素系酸化剤とスルファミン酸化合物とを含むものである。「臭素系酸化剤とスルファミン酸化合物とを含む安定化次亜臭素酸組成物」は、「臭素系酸化剤」と「スルファミン酸化合物」との混合物を含む安定化次亜臭素酸組成物であってもよいし、「臭素系酸化剤とスルファミン酸化合物との反応生成物」を含む安定化次亜臭素酸組成物であってもよい。
【0033】
酸化剤としては、これらのうち、安定化次亜臭素酸組成物が好ましい。安定化次亜臭素酸組成物は次亜塩素酸等の塩素系酸化剤と同等以上のスライム抑制効果を発揮するにも関わらず、塩素系酸化剤と比較すると、逆浸透膜への劣化影響が低い。このため、本実施形態に係る水処理方法で用いられる安定化次亜臭素酸組成物は、殺菌剤としては好適である。
【0034】
本実施形態に係る水処理方法において、「臭素系酸化剤」が臭素である場合、塩素系酸化剤が存在しないため、逆浸透膜への劣化影響が著しく低く、逆浸透膜のスライム抑制効果を有する。塩素系酸化剤を含む場合は、塩素酸の生成が懸念される。
【0035】
本実施形態に係る水処理方法は、例えば、殺菌工程において被処理水に、「臭素系酸化剤」と「スルファミン酸化合物」との混合物を添加する方法である。これにより、被処理水中で、安定化次亜臭素酸組成物が生成すると考えられる。
【0036】
また、本実施形態に係る水処理方法は、例えば、殺菌工程において被処理水に、「臭素系酸化剤とスルファミン酸化合物との反応生成物」である安定化次亜臭素酸組成物を添加する方法である。
【0037】
具体的には本実施形態に係る水処理方法は、殺菌工程において被処理水に、例えば、「臭素」、「塩化臭素」、「次亜臭素酸」または「臭化ナトリウムと次亜塩素酸との反応物」と、「スルファミン酸化合物」との混合物を添加する方法である。
【0038】
また、本実施形態に係る水処理方法は、殺菌工程において被処理水に、例えば、「臭素とスルファミン酸化合物との反応生成物」、「塩化臭素とスルファミン酸化合物との反応生成物」、「次亜臭素酸とスルファミン酸化合物との反応生成物」、または「臭化ナトリウムと次亜塩素酸との反応物と、スルファミン酸化合物と、の反応生成物」である安定化次亜臭素酸組成物を添加する方法である。
【0039】
これらの方法により、シリカを含有する被処理水を逆浸透膜で処理する水処理方法において、逆浸透膜のフラックスの低下を抑制しつつ、シリカスケールの発生およびスライムの発生を抑制することができる。
【0040】
本実施形態に係る水処理方法では、殺菌工程において被処理水に、例えば、「臭素系酸化剤」と「スルファミン酸化合物」とを薬注ポンプ等により注入してもよい。「臭素系酸化剤」と「スルファミン酸化合物」とは別々に被処理水に添加してもよく、または、原液同士で混合させてから被処理水に添加してもよい。
【0041】
また、殺菌工程において被処理水に、例えば、「臭素系酸化剤とスルファミン酸化合物との反応生成物」を薬注ポンプ等により注入してもよい。
【0042】
本実施形態に係る水処理方法において、「臭素系酸化剤」の当量に対する「スルファミン酸化合物」の当量の比は、1以上であることが好ましく、1以上2以下の範囲であることがより好ましい。「臭素系酸化剤」の当量に対する「スルファミン酸化合物」の当量の比が1未満であると、膜を劣化させる可能性があり、2を超えると、製造コストが増加する場合がある。
【0043】
逆浸透膜に接触する全塩素濃度は有効塩素濃度換算で、0.01〜100mg/Lであることが好ましい。0.01mg/L未満であると、十分なスライム抑制効果を得ることができない場合があり、100mg/Lより多いと、逆浸透膜の劣化、配管等の腐食を引き起こす可能性がある。
【0044】
被処理水中のシリカ濃度は、0.1〜400mg/Lの範囲であることが好ましく、1.0〜100mg/Lの範囲であることがより好ましい。被処理水中のシリカ濃度が0.1mg/L未満の場合、回収率を高くしてもシリカスケールが発生する可能性が低く、安定化次亜臭素酸組成物であってもシリカ阻止率低下の影響が出る場合があり、400mg/Lを超えると、回収率を低くしてもシリカスケールが発生する可能性が高い。
【0045】
本実施形態に係る水処理方法において、臭素を用いた「臭素とスルファミン酸化合物(臭素とスルファミン酸化合物の混合物)」または「臭素とスルファミン酸化合物との反応生成物」の製剤は、「次亜塩素酸と臭素化合物とスルファミン酸」の製剤および「塩化臭素とスルファミン酸」の製剤等に比べて、臭素酸の副生が少なく、逆浸透膜をより劣化させないため、逆浸透膜用の殺菌剤としてはより好ましい。
【0046】
すなわち、本発明の実施形態に係る水処理方法は、殺菌工程において被処理水に、臭素と、スルファミン酸化合物とを添加する(臭素とスルファミン酸化合物の混合物を存在させる)ことが好ましい。また、殺菌工程において被処理水に、臭素とスルファミン酸化合物との反応生成物を添加することが好ましい。
【0047】
臭素化合物としては、臭化ナトリウム、臭化カリウム、臭化リチウム、臭化アンモニウムおよび臭化水素酸等が挙げられる。これらのうち、製剤コスト等の点から、臭化ナトリウムが好ましい。
【0048】
スルファミン酸化合物は、以下の一般式(1)で示される化合物である。
R
2NSO
3H (1)
(式中、Rは独立して水素原子または炭素数1〜8のアルキル基である。)
【0049】
スルファミン酸化合物としては、例えば、2個のR基の両方が水素原子であるスルファミン酸(アミド硫酸)の他に、N−メチルスルファミン酸、N−エチルスルファミン酸、N−プロピルスルファミン酸、N−イソプロピルスルファミン酸、N−ブチルスルファミン酸等の2個のR基の一方が水素原子であり、他方が炭素数1〜8のアルキル基であるスルファミン酸化合物、N,N−ジメチルスルファミン酸、N,N−ジエチルスルファミン酸、N,N−ジプロピルスルファミン酸、N,N−ジブチルスルファミン酸、N−メチル−N−エチルスルファミン酸、N−メチル−N−プロピルスルファミン酸等の2個のR基の両方が炭素数1〜8のアルキル基であるスルファミン酸化合物、N−フェニルスルファミン酸等の2個のR基の一方が水素原子であり、他方が炭素数6〜10のアリール基であるスルファミン酸化合物、またはこれらの塩等が挙げられる。スルファミン酸塩としては、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩、カルシウム塩、ストロンチウム塩、バリウム塩等のアルカリ土類金属塩、マンガン塩、銅塩、亜鉛塩、鉄塩、コバルト塩、ニッケル塩等の他の金属塩、アンモニウム塩およびグアニジン塩等が挙げられる。スルファミン酸化合物およびこれらの塩は、1種を単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。スルファミン酸化合物としては、環境負荷等の点から、スルファミン酸(アミド硫酸)を用いるのが好ましい。
【0050】
本実施形態に係る水処理方法において、さらにアルカリを存在させてもよい。アルカリとしては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の水酸化アルカリ等が挙げられる。低温時の製品安定性等の点から、水酸化ナトリウムと水酸化カリウムとを併用してもよい。また、アルカリは、固形でなく、水溶液として用いてもよい。
【0051】
本実施形態に係る水処理方法は、逆浸透膜として昨今主流であるポリアミド系高分子膜に好適に適用することができる。ポリアミド系高分子膜は、酸化剤に対する耐性が比較的低く、遊離塩素等をポリアミド系高分子膜に連続的に接触させると、膜性能の著しい低下が起こる。しかしながら、本実施形態に係る水処理方法ではポリアミド高分子膜においても、このような著しい膜性能の低下はほとんど起こらない。
【0052】
本実施形態に係る水処理方法において、被処理水のpHの上限値については、通常の逆浸透膜の適用上限pH(例えば、pH10)以下であれば特に制限はないが、カルシウム等の硬度成分のスケール析出を考慮すると、pHは例えば9.0以下で運転することが好ましい。
【0053】
本実施形態に係る水処理方法において、スケール抑制のためにスケール抑制剤(分散剤)を安定化次亜臭素酸組成物と併用してもよい。
【0054】
スケール抑制剤を併用する場合の水処理装置の一例の概略を
図2に示す。
図2の水処理装置3において、
図1の水処理装置1の構成に加えて、被処理水供給配管22におけるポンプ14の吸込側にスケール抑制剤を添加するスケール抑制剤添加手段としてスケール抑制剤添加配管34がさらに接続されている。スケール抑制剤は、スケール抑制剤添加配管34を通して被処理水供給配管22におけるポンプ14の吸込側において添加される。スケール抑制剤は、被処理水槽10において被処理水に添加されてもよいし、被処理水供給配管22におけるポンプ14の吐出側において被処理水に添加されてもよい。
【0055】
スケール抑制剤は、(1)採水工程、(2)殺菌準備工程、(3)殺菌工程、(4)採水準備工程のうちの少なくとも1つの工程にて添加されればよいが、pH6以上でシリカスケールが発生しやすい等の点から、殺菌準備工程、殺菌工程および採水準備工程において添加されることが好ましい。特に、逆浸透膜への被処理水の供給量に対する透過水量の割合で表される回収率を採水工程と同程度の高いままで維持しながら殺菌準備工程、殺菌工程および採水準備工程を行う場合には、スケール抑制剤は殺菌準備工程、殺菌工程および採水準備工程において添加されることが好ましい。
【0056】
スケール抑制剤としては、例えば、ポリアクリル酸、ポリマレイン酸、アクリル酸と2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸との共重合体、アクリル酸と2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸と置換アクリルアミドとの三元共重合体、ホスホン酸、ホスフィン酸等が挙げられる。スケール抑制剤の被処理水への添加量は、例えば、RO濃縮水中の濃度として0.1〜1,000mg/Lの範囲である。
【0057】
また、スケール抑制剤を使用しなくてもスケールの発生を抑制するためには、例えば、RO濃縮水中のシリカ濃度を溶解度(4*温度(℃)+20(mgSiO
2/L))以下になるように、または、カルシウムスケールの指標であるランゲリア指数を0以下になるように、回収率等の運転条件を調整することが挙げられる。例えば、RO濃縮水中のシリカ濃度を溶解度以下になるように、または、カルシウムスケールの指標であるランゲリア指数を0以下になるように、逆浸透膜の回収率を低下させればよい。特に、逆浸透膜への被処理水の供給量に対する透過水量の割合で表される回収率を、殺菌準備工程、殺菌工程および採水準備工程において、採水工程よりも低くすることが好ましい。
【0058】
具体的には、
(1)逆浸透膜の濃縮水のpHを6未満に保持しつつ、逆浸透膜に被処理水を通水し、透過水と濃縮水とを得る採水工程と、
(2)逆浸透膜の回収率を採水工程よりも低下させ、被処理水のpHを6以上として、逆浸透膜に被処理水を通水する殺菌準備工程と、
(3)被処理水に酸化剤を添加し、逆浸透膜に被処理水を通水する殺菌工程と、
(4)被処理水への酸化剤の添加を停止し、逆浸透膜に被処理水を通水する採水準備工程と、
(1’)逆浸透膜の回収率を殺菌準備工程、殺菌工程および採水準備工程よりも上昇させ、逆浸透膜の濃縮水のpHを6未満に保持しつつ、逆浸透膜に被処理水を通水し、透過水と濃縮水とを得る採水工程と、
の工程を順次繰り返せばよい。
【0059】
より具体的には、
(1)逆浸透膜の濃縮水のpHを6未満に保持しつつ、逆浸透膜に被処理水を通水し、透過水と濃縮水とを得る採水工程と、
(2)逆浸透膜の回収率を、シリカ濃度が溶解度(4*温度(℃)+20(mgSiO
2/L))以下になるまで低下させ、被処理水のpHを6以上として、逆浸透膜に被処理水を通水する殺菌準備工程と、
(3)被処理水に酸化剤を添加し、逆浸透膜に被処理水を通水する殺菌工程と、
(4)被処理水への酸化剤の添加を停止し、逆浸透膜に被処理水を通水する採水準備工程と、
(1’)逆浸透膜の回収率を殺菌準備工程、殺菌工程および採水準備工程よりも上昇させ、逆浸透膜の濃縮水のpHを6未満に保持しつつ、逆浸透膜に被処理水を通水し、透過水と濃縮水とを得る採水工程と、
の工程を順次繰り返せばよい。
【0060】
逆浸透膜装置の用途としては、例えば、純水製造、海水淡水化、排水回収等が挙げられる。
【0061】
<逆浸透膜用殺菌剤>
本実施形態に係る逆浸透膜用殺菌剤は、好ましくは、「臭素系酸化剤」と「スルファミン酸化合物」との混合物を含む安定化次亜臭素酸組成物を含有するものであり、さらにアルカリを含有してもよい。
【0062】
また、本実施形態に係る逆浸透膜用殺菌剤は、好ましくは、「臭素系酸化剤とスルファミン酸化合物との反応生成物」を含む安定化次亜臭素酸組成物を含有するものであり、さらにアルカリを含有してもよい。
【0063】
臭素系酸化剤、臭素化合物、塩素系酸化剤およびスルファミン酸化合物については、上述した通りである。
【0064】
本実施形態に係る逆浸透膜用殺菌剤としては、逆浸透膜をより劣化させないため、臭素と、スルファミン酸化合物とを含有するもの(臭素とスルファミン酸化合物の混合物を含有するもの)、例えば、臭素とスルファミン酸化合物とアルカリと水との混合物、または、臭素とスルファミン酸化合物との反応生成物を含有するもの、例えば、臭素とスルファミン酸化合物との反応生成物と、アルカリと、水との混合物が好ましい。
【0065】
このような逆浸透膜用殺菌剤は、クロロスルファミン酸等の結合塩素系殺菌剤と比較すると、酸化力が高く、スライム抑制力、スライム剥離力が著しく高いにもかかわらず、同じく酸化力の高い次亜塩素酸のような著しい膜劣化をほとんど引き起こすことがない。通常の使用濃度では、膜劣化への影響は実質的に無視することができる。このため、逆浸透膜用殺菌剤としては最適である。
【0066】
本実施形態に係る逆浸透膜用殺菌剤は、次亜塩素酸とは異なり、逆浸透膜をほとんど透過しないため、処理水水質への影響がほとんどない。また、次亜塩素酸等と同様に現場で濃度を測定することができるため、より正確な濃度管理が可能である。
【0067】
逆浸透膜用殺菌剤のpHは、例えば、13.0超であり、13.2超であることがより好ましい。逆浸透膜用殺菌剤のpHが13.0以下であると殺菌剤中の有効ハロゲンが不安定になる場合がある。
【0068】
逆浸透膜用殺菌剤中の臭素酸濃度は、5mg/kg未満であることが好ましい。逆浸透膜用殺菌剤中の臭素酸濃度が5mg/kg以上であると、RO透過水の臭素酸イオンの濃度が高くなる場合がある。
【0069】
<逆浸透膜用殺菌剤の製造方法>
本実施形態に係る逆浸透膜用殺菌剤は、例えば、臭素系酸化剤とスルファミン酸化合物とを混合することにより得られ、さらにアルカリを混合してもよい。
【0070】
臭素と、スルファミン酸化合物とを含む安定化次亜臭素酸組成物を含有する逆浸透膜用殺菌剤の製造方法としては、水、アルカリおよびスルファミン酸化合物を含む混合液に臭素を不活性ガス雰囲気下で添加して反応させる工程、または、水、アルカリおよびスルファミン酸化合物を含む混合液に臭素を不活性ガス雰囲気下で添加する工程を含むことが好ましい。不活性ガス雰囲気下で添加して反応させる、または、不活性ガス雰囲気下で添加することにより、逆浸透膜用殺菌剤中の臭素酸イオン濃度が低くなり、RO透過水中の臭素酸イオン濃度が低くなる。
【0071】
用いる不活性ガスとしては限定されないが、製造等の面から室素およびアルゴンのうち少なくとも1つが好ましく、特に製造コスト等の面から窒素が好ましい。
【0072】
臭素の添加の際の反応器内の酸素濃度は6%以下が好ましいが、4%以下がより好ましく、2%以下がさらに好ましく、1%以下が特に好ましい。臭素の反応の際の反応器内の酸素濃度が6%を超えると、反応系内の臭素酸の生成量が増加する場合がある。
【0073】
臭素の添加率は、逆浸透膜用殺菌剤全体の量に対して25重量%以下であることが好ましく、1重量%以上20重量%以下であることがより好ましい。臭素の添加率が逆浸透膜用殺菌剤全体の量に対して25重量%を超えると、反応系内の臭素酸の生成量が増加する場合がある。1重量%未満であると、殺菌力が劣る場合がある。
【0074】
臭素添加の際の反応温度は、0℃以上25℃以下の範囲に制御することが好ましいが、製造コスト等の面から、0℃以上15℃以下の範囲に制御することがより好ましい。臭素添加の際の反応温度が25℃を超えると、反応系内の臭素酸の生成量が増加する場合があり、0℃未満であると、凍結する場合がある。
【0075】
1,3 水処理装置、10 被処理水槽、12 逆浸透膜処理装置、14 ポンプ、16,18 pH測定装置、20 被処理水配管、22 被処理水供給配管、24 透過水配管、26 濃縮水配管、28 濃縮水循環配管、30 pH調整剤添加配管、32 酸化剤添加配管、34 スケール抑制剤添加配管。