特許第6682409号(P6682409)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6682409河川監視装置、河川監視方法及びプログラム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6682409
(24)【登録日】2020年3月27日
(45)【発行日】2020年4月15日
(54)【発明の名称】河川監視装置、河川監視方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G01F 23/292 20060101AFI20200406BHJP
   G01F 23/04 20060101ALI20200406BHJP
   G01C 13/00 20060101ALI20200406BHJP
【FI】
   G01F23/292 Z
   G01F23/04 F
   G01C13/00 D
【請求項の数】24
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2016-175886(P2016-175886)
(22)【出願日】2016年9月8日
(65)【公開番号】特開2018-40732(P2018-40732A)
(43)【公開日】2018年3月15日
【審査請求日】2019年4月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】598076591
【氏名又は名称】東芝インフラシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】特許業務法人 志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】横井 謙太朗
(72)【発明者】
【氏名】君山 健二
(72)【発明者】
【氏名】堀江 勝大
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 靖之
(72)【発明者】
【氏名】江幡 享
【審査官】 大森 努
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−033297(JP,A)
【文献】 特開2002−139320(JP,A)
【文献】 特開2000−146675(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0322462(US,A1)
【文献】 特開2008−057994(JP,A)
【文献】 特開2007−018347(JP,A)
【文献】 特開2007−226681(JP,A)
【文献】 特開2012−198079(JP,A)
【文献】 韓国公開特許第10−2009−0048847(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01F 23/292,23/00,23/04,
G01C 13/00,
G01B 11/00−11/30,
G06T 1/00,7/00−7/90,
E02B 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
河川の監視地点とは異なる他地点に設置されている水位計測装置から当該水位計測装置の計測した水位計測地点における第一水面標高の値を取得する他地点水面標高取得部と、
前記水位計測地点とは離れた前記河川における監視地点の監視画像であって少なくとも水面と水面から突出する物体とを映した監視画像を取得する画像取得部と、
前記監視地点における第二水面標高の前記監視画像中の検出領域を、前記水位計測地点から取得した第一水面標高に基づく前記監視地点における推定水面標高を用いて特定する水面標高検出部と、
を備える河川監視装置。
【請求項2】
前記他地点水面標高取得部は前記監視地点の上流または下流の異なる複数の水位計測地点に設置されている水位計測装置それぞれから前記第一水面標高を取得し、
前記水面標高検出部は、前記監視地点における第二水面標高の前記監視画像中の検出領域を、前記複数の水位計測地点それぞれから取得した前記第一水面標高に基づく前記監視地点における推定水面標高を用いて特定する
請求項1に記載の河川監視装置。
【請求項3】
前記監視地点における推定水面標高を、前記複数の水位計測地点それぞれにおける前記第一水面標高と、前記監視地点から前記水位計測地点までの各距離とに基づいて算出する推定水面標高算出部と、
を備える請求項2に記載の河川監視装置。
【請求項4】
前記監視地点における推定水面標高を、前記複数の水位計測地点それぞれにおける前記第一水面標高の基準面である零点高と前記監視地点における前記第二水面標高の基準面である零点高との差に基づいて算出する推定水面標高算出部と、
を備える請求項2に記載の河川監視装置。
【請求項5】
前記水面標高検出部は、前記監視画像の前記検出領域を用いて前記第二水面標高を推定する
請求項1に記載の河川監視装置。
【請求項6】
前記監視地点における前記推定水面標高と、その推定水面標高に対応する水面標高と当該水面から突出する物体との境界を示す前記監視画像内の座標との対応関係を示すデータテーブルを生成するデータテーブル生成部と、
を備える請求項5に記載の河川監視装置。
【請求項7】
前記データテーブル生成部は、前記第一水面標高または前記推定水面標高または前記第二水面標高の何れかの標高の安定度合に基づいて前記データテーブルを生成または更新するタイミングを決定する
請求項6に記載の河川監視装置。
【請求項8】
前記データテーブル生成部は、前記水面標高の補正値を含む補正指示を取得した場合に、前記補正値に基づいて前記データテーブルに含まれる全ての前記水面標高と前記監視画像内の座標との対応関係を補正する
請求項6に記載の河川監視装置。
【請求項9】
河川の監視地点とは異なる他地点に設置されている水位計測装置から当該水位計測装置の計測した水位計測地点における第一水面標高の値を取得し、
前記水位計測地点とは離れた前記河川における監視地点の監視画像であって少なくとも水面と水面から突出する物体とを映した監視画像を取得し、
前記監視地点における第二水面標高の前記監視画像中の検出領域を、前記水位計測地点から取得した第一水面標高に基づく前記監視地点における推定水面標高を用いて特定する
河川監視方法。
【請求項10】
前記監視地点の上流または下流の異なる複数の水位計測地点に設置されている水位計測装置それぞれから前記第一水面標高を取得し、
前記監視地点における第二水面標高の前記監視画像中の検出領域を、前記複数の水位計測地点それぞれから取得した前記第一水面標高に基づく前記監視地点における推定水面標高を用いて特定する
請求項9に記載の河川監視方法。
【請求項11】
前記監視地点における推定水面標高を、前記複数の水位計測地点それぞれにおける前記第一水面標高と、前記監視地点から前記水位計測地点までの各距離とに基づいて算出する
請求項10に記載の河川監視方法。
【請求項12】
前記監視地点における推定水面標高を、前記複数の水位計測地点それぞれにおける前記第一水面標高の基準面である零点高と前記監視地点における前記第二水面標高の基準面である零点高との差に基づいて算出する
請求項10に記載の河川監視方法。
【請求項13】
前記監視画像の前記検出領域を用いて前記第二水面標高を推定する
請求項9に記載の河川監視方法。
【請求項14】
前記監視地点における前記推定水面標高と、その推定水面標高に対応する水面標高と当該水面から突出する物体との境界を示す前記監視画像内の座標との対応関係を示すデータテーブルを生成する
請求項13に記載の河川監視方法。
【請求項15】
前記第一水面標高または前記推定水面標高または前記第二水面標高の何れかの標高の安定度合に基づいて前記データテーブルを生成または更新するタイミングを決定する
請求項14に記載の河川監視方法。
【請求項16】
前記水面標高の補正値を含む補正指示を取得した場合に、前記補正値に基づいて前記データテーブルに含まれる全ての前記水面標高と前記監視画像内の座標との対応関係を補正する
請求項14に記載の河川監視方法。
【請求項17】
河川監視装置のコンピュータを、
河川の監視地点とは異なる他地点に設置されている水位計測装置から当該水位計測装置の計測した水位計測地点における第一水面標高の値を取得する水面標高取得手段、
前記水位計測地点とは離れた前記河川における監視地点の監視画像であって少なくとも水面と水面から突出する物体とを映した監視画像を取得する画像取得手段、
前記監視地点における第二水面標高の前記監視画像中の検出領域を、前記水位計測地点から取得した第一水面標高に基づく前記監視地点における推定水面標高を用いて特定する水面標高検出手段、
として機能させるプログラム。
【請求項18】
前記他地点水面標高取得手段は前記監視地点の上流または下流の異なる複数の水位計測地点に設置されている水位計測装置それぞれから前記第一水面標高を取得し、
前記水面標高検出手段は、前記監視地点における第二水面標高の前記監視画像中の検出領域を、前記複数の水位計測地点それぞれから取得した前記第一水面標高に基づく前記監視地点における推定水面標高を用いて特定する
請求項17に記載のプログラム。
【請求項19】
前記監視地点における推定水面標高を、前記複数の水位計測地点それぞれにおける前記第一水面標高と、前記監視地点から前記水位計測地点までの各距離とに基づいて算出する推定水面標高算出手段、
として機能させる請求項18に記載のプログラム。
【請求項20】
前記監視地点における推定水面標高を、前記複数の水位計測地点それぞれにおける前記第一水面標高の基準面である零点高と前記監視地点における前記第二水面標高の基準面である零点高との差に基づいて算出する推定水面標高算出手段、
として機能させる請求項18に記載のプログラム。
【請求項21】
前記水面標高検出手段は、前記監視画像の前記検出領域を用いて前記第二水面標高を推定する
請求項17に記載のプログラム。
【請求項22】
前記監視地点における前記推定水面標高と、その推定水面標高に対応する水面標高と当該水面から突出する物体との境界を示す前記監視画像内の座標との対応関係を示すデータテーブルを生成するデータテーブル生成手段、
として機能させる請求項21に記載のプログラム。
【請求項23】
前記データテーブル生成手段は、前記第一水面標高または前記推定水面標高または前記第二水面標高の何れかの標高の安定度合に基づいて前記データテーブルを生成または更新するタイミングを決定する
請求項22に記載のプログラム。
【請求項24】
前記データテーブル生成手段は、前記水面標高の補正値を含む補正指示を取得した場合に、前記補正値に基づいて前記データテーブルに含まれる全ての前記水面標高と前記監視画像内の座標との対応関係を補正する
請求項22に記載のプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、河川監視装置、河川監視方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
河川の水面標高(水位)の計測は、主に、橋脚などに設置された量水板の目盛にかかる水面の位置に基づいて行っている。また監視地点における量水板を含む水面の画像をカメラから取得し、その画像に含まれる量水板の目盛や水面の位置を検出して水面標高を計測することも考えられる。しかしながら、夜間や降水量が激しく多い時には遠隔からの量水板にかかる水面の位置が確認できない場合や、画像が不鮮明となり、より精度高く監視地点における水面標高を計測する技術が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第2933158号公報
【特許文献2】特許第3701167号公報
【特許文献3】特開2000−180247号公報
【特許文献4】特許第3583659号公報
【特許文献5】特許第3220339号公報
【特許文献6】特許第3583659号公報
【特許文献7】特開2001−201387号公報
【特許文献8】特開2000−329522号公報
【特許文献9】特開2015−094122号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、より精度高く監視地点における水面標高を計測することができる河川監視装置、河川監視方法及びプログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態の河川監視装置は、他地点水面標高取得部と、画像取得部と、水面標高検出部と、を持つ。他地点水面標高取得部は、河川の監視地点とは異なる他地点に設置されている水位計測装置から当該水位計測装置の計測した水位計測地点における第一水面標高の値を取得する。画像取得部は、水位計測地点とは離れた河川における監視地点の監視画像であって少なくとも水面と水面から突出する物体とを映した監視画像を取得する。水面標高検出部は、監視地点における第二水面標高の前記監視画像中の検出領域を、水位計測地点から取得した第一水面標高に基づく監視地点における推定水面標高を用いて特定する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】河川監視装置を含む河川監視システムの構成を示す図。
図2】零点高と水面標高を説明する河川幅方向の断面図。
図3】河川監視装置の処理概要を示す図。
図4】第1の実施形態の河川監視装置の機能ブロック図。
図5】第1の実施形態の河川監視装置の処理フロー図。
図6】第1の実施形態の各地点と零点高と水面標高との関係図。
図7】第1の実施形態の変換テーブルと監視画像内の座標との関係図。
図8】第1の実施形態の変換テーブルと監視画像内の座標との別の関係図。
図9】第1の実施形態の監視画像において設定された検出領域を示す図。
図10】第2の実施形態の河川監視装置の機能ブロック図。
図11】第2の実施形態の各地点間の距離を記憶する距離テーブル。
図12】第2の実施形態の河川監視装置の処理フロー図。
図13】第2の実施形態の各地点と零点高と水面標高との関係(内挿)を示す図。
図14】第2の実施形態の各地点と零点高と水面標高との関係(外挿)を示す図。
図15】第3の実施形態の河川監視装置の機能ブロック図。
図16】第3の実施形態の各地点の零点高を記憶する零点高テーブル。
図17】第3の実施形態の河川監視装置の処理フロー図。
図18】第3の実施形態の各地点と零点高と水面標高との関係(内挿)を示す図。
図19】第3の実施形態の各地点と零点高と水面標高との関係(外挿)を示す図。
図20】第4の実施形態の河川監視装置の機能ブロック図。
図21】第4の実施形態の変換テーブルと監視画像内の座標との関係図。
図22】第4の実施形態の変換テーブルと監視画像内の座標との別の関係図。
図23】第5の実施形態の河川監視装置の機能ブロック図。
図24】第5の実施形態の河川監視装置の処理フロー図。
図25】第6の実施形態の河川監視装置の機能ブロック図。
図26】第6の実施形態の変換テーブルの補正概要を示す第一の図。
図27】第6の実施形態の変換テーブルの補正概要を示す第二の図。
図28】第6の実施形態の変換テーブルの補正概要を示す第三の図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、実施形態の河川監視装置、河川監視方法及びプログラムを、図面を参照して説明する。
【0008】
(第1の実施形態)
図1は河川監視装置を含む河川監視システム100の構成を示す図である。
河川監視システム100は図1に示すように河川監視装置1を備える。河川監視装置1は河川の監視地点Pcに設置され監視地点Pcの水面の画像を撮影する撮影装置2と通信接続されている。撮影装置2は具体的にはビデオカメラである。撮影装置2は状況に応じてパン、チルト動作を管理者の遠隔からの制御によって行って撮影動作を行う。河川監視装置1は撮影装置2より、少なくとも監視地点の水面とその水面から突出する物体とを映した監視画像を受信する。監視画像は動画像であってよい。
【0009】
河川の監視地点Pcよりも上流側には上流水位計測地点Paが設けられる。上流水位計測地点Paには上流水位計測装置3が備わる。河川監視装置1は上流水位計測装置3と通信ネットワークで接続されている。河川監視装置1は上流水位計測装置3から上流水位計側地点Paの水面標高Haの情報を受信する。
河川の監視地点Pcよりも下流側には下流水位計測地点Pbが設けられる。下流水位計測地点Pbには下流水位計測装置4が備わる。河川監視装置1は下流水位計測装置4と通信ネットワークで接続されている。河川監視装置1は下流水位計測装置4から下流水位計側地点Pbの水面標高Hbの情報を受信する。
上流水位計測装置3や下流水位計測装置4は各地点における河川の水面標高Hを物理的に計測する装置であり、予め上流水位計測地点Paや下流水位計測地点Pbに設置されている既知の装置である。
【0010】
図2は零点高と水面標高を説明する河川幅方向の断面図である。
図2で示すように河川の多くは河川幅の両側に設けられた堤防や土手の間を流れる。
河川の水面と川底との距離を水深と呼ぶ。また河川には零点高Zと呼ばれる基準面の高さが設定されている。この零点高Zは平均海面を0(ゼロ)とした場合の当該平均海面からの高さで示される値である。水面標高Hは零点高からの水位の高さを示している。上流水位計測装置3や下流水位計測装置4はこの当該計測装置が設置されている地点での河川の水面標高Hを計測する装置である。
【0011】
図3は河川監視装置の処理概要を示す図である。
河川監視装置1は少なくとも水面と水面から突出する物体とを映した監視画像を撮影装置2から取得する。この監視画像は監視地点の水面標高を検出するために予め設定された撮影装置2の所定の撮影方向および画角の画像である。河川監視装置1が水面標高の検出の為に取得する監視画像の撮影方向や画角は一定であることが望まれる。これにより河川監視装置1は所定の設置位置からの撮影方向や画角が同じ条件で撮影された異なる時刻の監視画像を取得して、それぞれの時刻における監視地点の水面標高を検出する。監視画像に写る水面から突出する物体とは土手や堤防の法面や、橋脚などであってよい。当該監視画像には法面や橋脚に設けられた水位標が写っていてよい。水位標(量水板)とは鋼製またはアルミ製などの板に幅20cm〜30cm程度の目盛が記されたものである。
【0012】
河川監視装置1は監視画像の所定の領域を示す関心領域(ROI;Region of Interest)の座標の情報を記憶する。この関心領域の画像内範囲は固定されている。関心領域には水面と水面から突出する物体との境界が含まれるようにその領域が設定される(S1)。
【0013】
河川監視装置1は監視地点Pc以外の河川の他地点の水位計測装置から当該水位計測装置の計測した第一水面標高の値を取得する。具体的には上流と下流の2つの水位計測地点において計測された2つ第一水面標高の値を取得する。河川監視装置1は取得した第一水面標高に基づいて監視地点の第二水面標高を簡易推定した結果である推定水面標高Hc’の算出を行う(S2)。河川監視装置1は監視地点Pcの水面標高に対応する監視画像内の座標との対応関係を示すデータテーブル(変換テーブル)を記憶している。河川監視装置1は算出した推定水面標高Hc’に対応する監視画像内の推定座標を変換テーブルに基づいて取得する。
【0014】
河川監視装置1は取得した推定座標の近辺の監視画像内の領域(検出領域)の各画素の情報に基づいて、監視画像中の水面標高Hの位置に対応する座標を検出する(S3)。水面標高Hと特定する座標は、水面と水面から突出する物体との境界を示す監視画像内の座標である。河川監視装置1は水面標高Hに対応する座標と変換テーブルとを用いて、水面標高の数値を算出する(S4)。
【0015】
上述のように河川監視装置1は、監視画像の関心領域における推定水面標高Hc’の座標の近傍の領域から、実際の水面標高Hに対応する監視画像内の座標を特定する。したがって河川監視装置1は監視画像全体から実際の水面標高に対応する監視画像内の座標を検出する必要が無いため処理が軽減される。また監視地点Pcとは異なる他の水位計測地点における水面標高に基づいて監視地点Pcの撮影画像内の推定水面標高Hc’に対応する座標を特定するので、撮影画像内における著しくずれた座標を水面標高として特定する不具合が軽減される。したがって、夜間や降雨量の激しい時間帯における監視画像からの水面標高の検出の精度を向上させることができる。
【0016】
図4は、第1の実施形態の河川監視装置の機能ブロック図である。
河川監視装置1はコンピュータであり、内部にCPU(Central Processing Unit)、記憶部、通信モジュールなどのハードウェアを備える。河川監視装置1の記憶部は、具体的にはROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)などであってよい。河川監視装置1のCPUが記憶部に記録される河川監視のためのアプリケーションプログラムを実行する。これにより河川監視装置1には画像取得部101、他地点水面標高取得部102、推定水面標高算出部103、水面標高座標検出部104、変換部105の機能が備わる。
【0017】
画像取得部101は撮影装置2が河川監視装置1へ送信した監視画像を取得する。
他地点水面標高取得部102は河川の監視地点Pcとは異なる他地点に設置されている水位計測装置から水位計測地点における水面標高(第一水面標高)の値を取得する。具体的には他地点水面標高取得部102は上流水位計測装置3から上流水位計測地点Paの水面標高Ha(第一水面標高)を取得する。また他地点水面標高取得部102は下流水位計測装置4から下流水位計測地点Pbの水面標高Hb(第一水面標高)を取得する。
【0018】
推定水面標高算出部103は監視地点Pcにおける推定水面標高Hcを、監視地点Pcとは異なる水位計測地点における水面標高と、監視地点Pcから他の水位計測地点までの各距離とに基づいて算出する。本実施形態において推定水面標高算出部103は監視地点Pcとは異なる2つの上流水位計測地点Paと下流水位計測地点Pbにおける各水面標高と、監視地点Pcから各水位計測地点までの各距離とに基づいて監視地点Pcにおける推定水面標高を算出する。
【0019】
水面標高座標検出部104は監視地点Pcにおける推定水面標高Hc’に対応する監視画像内の推定座標を変換部105から取得し、その推定座標の近辺の監視画像内の領域の各画素の情報に基づいて監視画像中の水面標高の位置を示す座標を検出する。
変換部105は推定水面標高算出部103から取得した監視地点Pcにおける推定水面標高’を監視画像内の推定座標に変換し水面標高座標検出部104に出力する。また変換部105は水面標高座標検出部104から取得した水面標高の位置を示す座標を監視地点Pcの水面標高Hcの数値に変換して出力する。
【0020】
図5は第1の実施形態の河川監視装置のフローチャートである。
図6は第1の実施形態の各地点と零点高と水面標高との関係図である。
次に河川監視装置の処理フローについて順を追って説明する。
まず、河川監視装置1の画像取得部101は監視画像を撮影装置2から取得する(ステップS501)。撮影装置2の撮影した監視画像は夜間であっても降雨量の激しい時間帯の画像であってもよい。画像取得部101は監視画像を水面標高座標検出部104へ出力する。
【0021】
他地点水面標高取得部102は、上流水位計測装置3から上流水面標高Haを取得する(ステップS502)。上流水面標高Haの値は上流水位計測装置3が零点高Zaに計測した水位Laを加算して出力した値である。また他地点水面標高取得部102は、下流水位計測装置4から下流水面標高Hbを取得する(ステップS503)。下流水面標高Hbの値は下流水位計測装置4が零点高Zbに計測した水位Lbを加算して出力した値である。他地点水面標高取得部102は、上流水面標高Haと下流水面標高Hbとを推定水面標高算出部103へ出力する。
【0022】
推定水面標高算出部103は、上流水面標高Haと下流水面標高Hbとを用いて監視地点Pcにおける推定水面標高Hc’を算出する(ステップS504)。具体的には推定水面標高算出部103は上流水面標高Haと下流水面標高Hbを加算して2分の1を乗じた値、つまり上流水面標高Haと下流水面標高Hbの各高さの中間の高さを示す推定水面標高Hc’を算出する。監視地点Pcが上流水位計測地点Paと下流水位計測地点Pbの中間であって、上流水位計測地点Paから下流水位計測地点Pbに向って河川の距離に比例して水面標高が低くなる場合を考える。この場合には上流水面標高Haと下流水面標高Hbの各高さの中間の高さを監視地点Pcの水面標高として良い。しかしながら実際には河川の距離に比例して水面標高が低くなることはない。したがって推定水面標高Hc’は実際の監視地点Pcにおける水面標高とは異なる値であるが、推定水面標高Hc’を用いて監視画像において監視地点Pcの水面標高を検出するために利用する画像領域を狭める。これにより監視地点Pcにおける水面標高Hcの検出の処理能力が軽減できる。推定水面標高算出部103は推定水面標高Hc’を変換部105へ出力する。
【0023】
変換部105は変換テーブルを記憶部から読み取る。変換部105は変換テーブルに基づいて推定水面標高Hc’を監視画像内の推定座標に変換する(ステップS505)。そして変換部105は推定水面標高Hc’に対応する監視画像内の推定座標を水面標高座標検出部104へ出力する。
【0024】
図7は第1の実施形態の変換テーブルと監視画像内の座標との関係図である。
図7が示すように変換テーブルの一例は、水面標高と監視画像内のY座標(縦軸座標)との対応関係を複数記憶している。変換部105は変換テーブルを読み込んで、推定水面標高Hc’に対応する監視画像内の推定座標(Y座標)を特定することで変換する。または変換部105は変換テーブルを読み込んで、推定水面標高Hc’に対応する監視画像内の推定座標(Y座標)を、変換テーブルに含まれる水面標高と監視画像内のY座標の対応関係に基づいて補間計算を行って算出する。
【0025】
図8は第1の実施形態の変換テーブルと監視画像内の座標との別の関係図である。
図8が示すように変換テーブルの他の例では、変換テーブルは水面標高と監視画像内の直線を示す数式のパラメータとの対応関係を複数記憶している。図8で示す対応関係は、水面標高に基づいて監視画像内の座標を特定できるため、推定水面標高である水面と当該水面から突出する物体との境界を示す監視画像内の座標との対応関係の一態様である。変換部105は変換テーブルを読み込んで、推定水面標高Hc’に対応する監視画像内の直線の数式のパラメータを特定する。パラメータは一次関数Y(縦軸の値)=aX(横軸の値)+bに含まれる係数aとbである。監視画像に写る水面と水面から突出する物体との境界が、監視画像に斜めに直線的に出現する場合においては、図8のような変換テーブルが用いられる。変換部105はこのパラメータに基づいて監視画像の横軸範囲それぞれの縦軸の座標を算出することで、推定水面標高Hc’に対応する監視画像内の座標を特定する。
【0026】
図7図8で示す変換テーブルは、画像に出現する水面と水面から突出する物体(量水板)との境界を示す座標と、ユーザが実際に量水板の目盛を読んで自ら検出した水面標高とを対応付けて作成したデータであってよい。図7図8で示すように監視画像の縦軸は下方に従って座標の数値を大きく取っている。そして監視画像内のY座標の値が大きいほど水面標高が低いことを示している。
【0027】
水面標高座標検出部104は変換部105の出力した推定水面標高Hc’に対応する監視画像内の推定座標を取得する。推定座標は横軸Xの範囲の各画素の縦軸Yの座標を示している。水面標高座標検出部104は推定座標それぞれについて所定の縦プラス方向の範囲y1と所定の縦マイナス方向の範囲y2で囲まれる検出領域を監視画像において決定する(ステップS506)。範囲y1と範囲y2は例えば100画素分などの範囲であってよい。この範囲は予め設定されており、過去に算出された推定水面標高Hc’と実際の水面標高Hcとの差に基づいて設定される。具体的には推定水面標高Hc’に基づいて監視画像において設定した検出領域から水面標高Hcが必ずまたは所定の高い確率(99%以上など)以上で特定できる範囲であってよい。
【0028】
図9は第1の実施形態の監視画像において設定された検出領域を示す図である。
この図が示すように監視画像において、推定水面標高Hc’に対応する監視画像内の座標の上下所定範囲の領域が検出領域として設定される。
【0029】
河川監視装置1の水面標高座標検出部104はこの検出領域の中において、水面と水面から突出する物体との境界を検出する(ステップS507)。この境界の検出は公知の技術を利用する。例えば検出領域の画素値の動きベクトルを用いて動いている画素と、動いていない画素とを判定し、動いている画素を含む領域を水面、動いていない画素の領域を水面から突出している物体と判定して、それらの2種類の画素の境界を検出する。または、監視画像を取得した時刻における過去の画像中の水面の色と、水面から突出している物体の色との間の各画素の色の類似度に基づいて、グラフカットの手法を用いてどちらの色に近い画素かを判定して境界を検出する。水面標高座標検出部104はそれ以外の手法で境界を検出してよい。
【0030】
水面標高座標検出部104はその境界を、監視地点の水面標高Hcを示す真の座標と特定する(ステップS508)。また水面標高座標検出部104は特定した水面標高Hcを示す真の座標を変換部105へ出力する。変換部105は変換テーブルを用いて座標を水面標高Hcの値に変換する(ステップS509)。変換部105はこの水面標高Hcの値を例えばモニタなどの外部装置へ出力する(ステップS510)。
【0031】
上述のように河川監視装置1は、監視画像の関心領域における推定水面標高Hc’の座標の近傍の検出領域から、実際の水面標高Hcに対応する監視画像内の座標を特定する。したがって河川監視装置1は監視画像全体から実際の水面標高Hcに対応する監視画像内の座標を検出する必要が無く、限られた検出領域の中から水面標高Hcに対応する座標を検出するため処理が軽減される。また監視地点Pcとは異なる他の水位計測地点における水面標高に基づいて監視地点Pcの撮影画像内の推定水面標高Hc’に対応する座標を特定するので、撮影画像内における著しく位置のずれた座標を水面標高として特定する不具合が軽減される。したがって、夜間や降雨量の激しい時間帯における監視画像からの水面標高の検出の精度を向上させることができる。
【0032】
なお上述の例では2つの他の水位計測地点の水面標高を用いて監視地点Pcの推定水面標高Hc’を算出しているが、他の1つの水位計測地点の水面標高(例えば上流の水面標高)を用いて推定水面標高Hc’を算出してもよい。また推定水面標高Hc’の算出に他の水位計測地点で計測された水面標高の計測時刻からの経過時間や、その時の気象条件などのパラメータを、水面標高算出式に代入して推定水面標高Hc’を算出してもよい。
【0033】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態について、説明する。第2の実施形態は、各地点間の距離を記憶する距離テーブルを用いて、推定水面標高Hc’を算出する手法である。
図10は第2の実施形態の河川監視装置の機能ブロック図である。
図10で示す本実施形態の河川監視装置1は記憶部106に監視地点から水位計測地点までの距離を記憶している。第2の実施形態の河川監視装置1の処理は、第1の実施形態の処理と比較して推定水面標高算出部103による推定水面標高Hc’の算出手法が異なる。それ以外の処理は第1の実施形態と同じである。
【0034】
図11は第2の実施形態の各地点間の距離を記憶する距離テーブルである。
河川監視装置1の記憶部106は図11で示すような距離テーブルを記憶する。距離テーブルには監視地点Pcや上流水位計測地点Pa、下流水位計測地点Pbごとに、他の地点までの距離を記憶したテーブルである。
【0035】
図12は第2の実施形態の河川監視装置の処理フロー図である。
図13は第2の実施形態の各地点と零点高と水面標高との関係(内挿)を示す図である。
河川監視装置1は図5で示したステップS501〜S503までの処理を同様に行う。次に上記ステップS504の代わりに推定水面標高算出部103は、上流水面標高Haと下流水面標高Hbと、監視地点Pcから他の水位計測地点(Pa,Pb)までの各距離とに基づいて推定水面標高Hc’を算出する(ステップS5041)。
【0036】
具体的には水面標高算出部103は上流水位計測地点Paから計測地点Pcまでの距離Dacを記憶部106の距離テーブルから取得する。また水面標高算出部103は下流水位計測地点Pbから計測地点Pcまでの距離Dbcを記憶部106の距離テーブルから取得する。ここで図13に示すように上流水面標高Haと水面標高Hcとの差を水面標高差Hac、下流水面標高Hbと水面標高Hcとの差を水面標高差Hbcとする。この場合、幾何学的に距離Dacと距離Dbcとの比は、水面標高差Hacと水面標高差Hbcとの比に等しい。したがって図13に示すように各地点の水面標高が各地点の距離に応じて比例すると仮定し、また水面標高算出部103は上記の幾何学的な性質を利用して、式(1)により監視地点Pcの水面標高Hcを算出することができる。式(1)は内挿法を利用した水面標高Hcの推定方法である。
【0037】
【数1】
【0038】
図14は第2の実施形態の各地点と零点高と水面標高との関係(外挿)を示す図である。
図14で示す各地点の位置関係は監視地点Pcが最も下流側に位置し、他の水位計測地点が監視地点Pcよりも上流側に位置する関係である。図14に示すように上流水面標高Haと水面標高Hcとの差を水面標高差Hac、下流水面標高Hbと水面標高Hcとの差を水面標高差Hbcとする。この場合、幾何学的に距離Dacと距離Dbcとの比は、水面標高差Hacと水面標高差Hbcとの比に等しい。したがって図14に示すように各地点の水面標高が各地点の距離に応じて比例すると仮定し、また水面標高算出部103は上記の幾何学的な性質を利用して、式(2)により監視地点Pcの水面標高Hcを算出することができる。式(2)は外挿法を利用した水面標高Hcの推定方法である。
【0039】
【数2】
【0040】
河川監視装置1は上記ステップS5041の後は、第1の実施形態のステップS505〜ステップ510の処理を行う。
【0041】
以上のような処理により第1の実施形態と同様の効果と共に、さらに水面標高が距離に応じて下流方向に低くなると仮定した場合の水位計測地点と監視地点Pcとの距離の関係に応じたより精度高い監視地点Pcの水面標高Hcを算出することができる。上述の処理によれば監視地点Pcが上流水位計測地点Paと下流水位計測地点Pbのどちらかに近い場合にその近さに応じた重みを付した監視地点Pcにおける水面標高Hcを推定することができる。
【0042】
(第3の実施形態)
次に、第3の実施形態について説明する。第3の実施形態は、零点高情報を記憶する零点高テーブルを用いて、推定水面標高Hc’を算出する手法である。
図15は第3の実施形態の河川監視装置の機能ブロック図である。
図15で示す本実施形態の河川監視装置1は記憶部106に監視地点Pcや水位計測地点における零点高の情報を記憶している。第3の実施形態の河川監視装置1の処理は、第1の実施形態や第2の実施形態の処理と比較して推定水面標高算出部103による推定水面標高Hc’の算出手法が異なる。それ以外の処理は第1の実施形態や第2の実施形態の処理と同じである。
【0043】
図16は第3の実施形態の各地点の零点高を記憶する零点高テーブルである。
河川監視装置1の記憶部106は図16で示すような零点高テーブルを記憶する。零点高テーブルには監視地点Pcや上流水位計測地点Pa、下流水位計測地点Pbごとの各地点の零点高Zが記録されている。
【0044】
図17は第3の実施形態の河川監視装置の処理フロー図である。
図18は第3の実施形態の各地点と零点高と水面標高との関係(内挿)を示す図である。
河川監視装置1は図5で示したステップS501〜S503までの処理を同様に行う。次に上記ステップS504やステップS5041の代わりに推定水面標高算出部103は、上流水面標高Haと下流水面標高Hbと、監視地点Pcの零点高Zcおよび他の水位計測地点(Pa,Pb)の零点高(Za,Zb)による零点高差と、に基づいて推定水面標高Hc’を算出する(ステップS5042)。
【0045】
具体的には水面標高算出部103は上流水位計測地点Paの零点高Zaと、下流水位計測地点Pbの零点高Zbと、監視地点Pcの零点高Zcとを記憶部106の零点高テーブルから読み取る。水面標高算出部103は上流水位計測地点Paの零点高Zaと監視地点Pcの零点高Zcとの差を示す第一零点高差Zacを算出する。水面標高算出部103はまた下流水位計測地点Pbの零点高Zbと監視地点Pcの零点高Zcとの差を示す第二零点高差Zbcを算出する。水面標高算出部103は観測地点Pcと各水位計測地点の零点高差に基づいて、第2の実施形態と同様の幾何学的な性質を利用して式(3)により監視地点Pcの水面標高Hcを算出する。式(3)は内挿法を利用した水面標高Hcの推定方法である。
【0046】
【数3】
【0047】
図19は第3の実施形態の各地点と零点高と水面標高との関係(外挿)を示す図である。
図19で示す各地点の位置関係は監視地点Pcが最も下流側に位置し、他の水位計測地点が監視地点Pcよりも上流側に位置する関係である。図17と同様に上流水位計測地点Paの零点高Zaと監視地点Pcの零点高Zcとの差を第一零点高差Zacとする。また下流水位計測地点Pbの零点高Zbと監視地点Pcの零点高Zcとの差を第二零点高差Zbcとする。水面標高算出部103は観測地点Pcと各水位計測地点の零点高差に基づいて、第2の実施形態と同様の幾何学的な性質を利用して式(4)により監視地点Pcの水面標高Hcを算出する。式(4)は外挿法を利用した水面標高Hcの推定方法である。
【0048】
【数4】
【0049】
河川監視装置1は上記ステップS5042の後は、第1の実施形態のステップS505〜ステップ510の処理を行う。
【0050】
以上のような処理により観測地点Pcの水面標高Hcを、零点高差の小さい水位計測地点の水面標高に近い値をとると想定して推定する。このように監視地点Pcの近隣の水位計測地点との零点高差の小さい水面標高に近づくように監視地点Pcの水面標高に重み付けを行って推定することで、さらに観測地点Pcでの水面標高をより精度高く推定することができる。
【0051】
(第4の実施形態)
次に、第4の実施形態について説明する。
図20は第4の実施形態の河川監視装置の機能ブロック図である。
図21は第4の実施形態の変換テーブルの監視画像内の座標との関係を示す図である。
河川監視装置1は記憶部106の記憶する変換テーブルを生成するようにしてもよい。
図20で示す河川監視装置1は、第1の実施形態において図4で示した河川監視装置1の機能ブロックに加え、変換テーブル生成部107の機能を備える。変換テーブル生成部107は、監視地点PcについてステップS504で算出した推定水面標高Hc’と、その推定水面標高Hc’に対応する水面から突出する物体との境界を示す監視画像内の座標との対応関係を示す変換テーブルを生成する。
【0052】
より具体的には変換テーブル生成部107は第一の実施形態のステップS504で算出した推定水面標高Hc’と、ステップS508の後に水面標高座標検出部104から取得した水面標高Hcを示す真の座標とを対応づけて変換テーブルに格納する。変換テーブル生成部107はこの処理を異なる時刻において行って、変換テーブルを生成する。
【0053】
監視画像中に水面と水面から突出する物体の境界が水平に出現している場合にはステップS508で検出される境界の座標はY座標によって表すことができる。この場合、変換テーブル生成部107は図21で示すような変換テーブルを生成することができる。
【0054】
図22は第4の実施形態の変換テーブルと監視画像内の座標との別の関係を示す図である。
また監視画像中に水面と水面から突出する物体の境界が傾きをもって出現している場合にはステップS508で検出される境界の座標はその境界の直線を表す関数の係数を用いて表すことができる。この場合、変換テーブル生成部107は境界に基づいてその直線が表す傾きや画像左端のY座標に基づいて一次関数Y(縦軸の値)=aX(横軸の値)+bのaおよびbのパラメータを特定する。変換テーブル生成部107は、図22で示すように推定水面標高Hc’と特定したパラメータa、b(監視画像内の座標を特定する情報)を対応付けた変換テーブルを生成する。
【0055】
変換テーブル生成部107は、変換テーブルを初回に生成した後も、一定期間毎に同様の処理を繰り返して変換テーブルを更新するようにしてもよい。
【0056】
図7図8で示す変換テーブルでは、人間が量水板の目盛を目視して河川監視装置1に入力することを想定している。しかしながら、図21図22で示す変換テーブルは、推定した推定水面標高を用いている点が異なる。これにより、目視で量水板などの目盛を読んで変換テーブルを生成する等の管理者の労力を軽減することができる。この変換テーブルは推定水面標高Hc’の値と画像中の座標とを対応関係を示すものであり、推定水面標高Hc’が真の値から誤差がある。しかし第1の実施形態で説明したように、ある程度の誤差マージンを取った検出領域を特定した上で水面と物体との境界を探索することで真の水面標高に対応する座標を見つけることができる。
【0057】
(第5の実施形態)
次に、第5の実施形態について説明する。
図23は第5の実施形態の河川監視装置の機能ブロック図である。
図23で示す河川監視装置1は、第4の実施形態の図20で説明した河川監視装置1の機能ブロックに加え、標高安定度合判定部108の機能を備える。
標高安定度合判定部108は、上流水面標高Haと下流水面標高Hbの安定度合を判定する。そして変換テーブル生成部107は各水位計測地点における水面標高の安定度合に基づいて、変換テーブルを生成または更新するタイミングを決定する。
【0058】
図24は第5の実施形態の河川監視装置の処理フロー図である。
標高安定度合判定部108は他地点水面標高取得部102の取得した上流水面標高Haと下流水面標高Hbとを取得する(ステップS241)。標高安定度合判定部108は過去から継続して取得した上流水面標高Haと下流水面標高Hbとを記憶部106等に記録する。標高安定度合判定部108は一定期間経過する毎に上流水面標高Haと下流水面標高Hbの安定度を算出する(ステップS242)。具体的には標高安定度合判定部108はある一定期間Tの間に得られたN個の上流水面標高Haのサンプルに対して分散Vを求める。標高安定度合判定部108は上流水面標高Haや下流水面標高Hbが不安定か否かを判定する(ステップS243)。標高安定度合判定部108はこの分散Vがあるしきい値TH_Vよりも大きい場合には上流水面標高Haの変動が大きく上流水面標高Haが不安定だと判定する。また標高安定度合判定部108は同様に下流表面標高Hbの変動が大きいかを判定する。標高安定度合判定部108は上流水面標高Haや下流水面標高Hbが不安定である場合、不安定を示す情報を変換テーブル生成部107へ出力する。なお標高安定度合判定部108は上流水面標高Haの安定度合を判定し、上流水面標高Haが不安定である場合に不安定を示す情報を変換テーブル生成部107へ出力してもよい。
変換テーブル生成部107は不安定を示す情報を取得する。変換テーブル生成部107は不安定を示す情報を取得すると変換テーブルの生成や更新を停止すると判定する(ステップS244)。この判定を行った場合、河川監視装置1の変換テーブル生成部107は第4の実施形態で説明した変換テーブルの生成や更新を停止する。
【0059】
上記の処理によれば分散Vが閾値以上に大きくなることは、河川の水量が増水または減水しているタイミングで、水面標高の増減が激しく起きているタイミングである。このような場合には水位計測地点での水面標高の変化に対して観測地点Pcの水面標高の変化が遅れる、または先行するなどして変化にズレが生じる可能性が高く、変換テーブルに誤差が生じる可能性が高まる。そのため、水位計測地点での水面標高の変動が不安定と判定された場合は変換テーブルの生成、更新を停止する。以上のような処理により、より正確な変換テーブルの生成を行うことができる。
【0060】
なお標高安定度合判定部108は監視地点Pcにおける推定水面標高Hc’の安定度合が不安定を示すかを判定してもよい。この場合、変換テーブル生成部107は推定水面標高Hc’が不安定である場合に変換テーブルの生成や更新を停止する。第5の実施形態で示す変換テーブル生成部107は、第一水面標高または推定水面標高または第二水面標高の何れかの標高の安定度合に基づいて変換テーブルを生成または更新するタイミングを決定する態様の一例である。
【0061】
(第6の実施形態)
次に、第6の実施形態について説明する。
図25は第6の実施形態の河川監視装置の機能ブロック図である。
図24で示す河川監視装置1は、第4または第5の実施形態において示した河川監視装置1の機能ブロックに加え、標高入力部109の機能を備える。
最初に変換テーブルが生成された状態において、標高入力部109は、変換テーブルに記録されている水面標高の補正値を含む補正指示を入力する。この場合、標高入力部109は補正指示を変換テーブル生成部107へ出力する。変換テーブル生成部107は補正指示から水面標高の補正値を抽出する。そして変換テーブル生成部107はその補正値に基づいて変換テーブルに含まれる全ての水面標高と監視画像内の座標との対応関係を補正する。
【0062】
図26は第6の実施形態の変換テーブルの補正概要を示す第一の図である。
河川監視装置1は、例えば図26の補正前の変換テーブル261を記憶しているとする。この変換テーブル261は、監視画像内のY座標=150と推定水面標高13mの対応関係を保持している。この状態において標高入力部109が推定水面標高13mを12.5mと補正するための補正指示をユーザから入力する。この場合、標高入力部109は、監視画像内のY座標=150と推定水面標高13mの対応関係を示す情報と推定水面標高を12.5mに補正することを示す情報とを含む補正指示を出力する。変換テーブル生成部107は変換テーブルを読み取り、その変換テーブルに含まれる監視画像内のY座標=150と推定水面標高を13mの対応関係を、監視画像内のY座標=150と推定水面標高を12.5mの対応関係へと補正する。また変換テーブル生成部107は、その他の監視画像内のY座標に対応する推定水面標高の値を同様に、0.5m減じる。これにより、ユーザが1つの対応関係についての補正指示を入力すると、変換テーブルに記録されている水面標高と監視画像内座標との対応関係が全て補正される。これにより変換テーブルが補正され、図26中の符号262で示す変換テーブルが記憶部106に記録される。
【0063】
図27は第6の実施形態の変換テーブルの補正概要を示す第二の図である。
図27は変換テーブルの第二の補正例を示している。河川監視装置1は、例えば図27の補正前の変換テーブル271を記憶しているとする。この変換テーブル271は、監視画像内のY座標=150と推定水面標高13mの対応関係などの複数の対応関係の情報を保持している。この状態において標高入力部109が監視画像内Y座標150に対応する推定水面標高13mを12.5mと補正するための補正指示をユーザから入力する。また標高入力部109が監視画像内Y座標550に対応する推定水面標高4mを3mと補正するための補正指示をユーザから入力する。標高入力部109はそれら2つの補正指示を変換テーブル生成部107に出力する。変換テーブル生成部107は、2つの補正指示を入力した場合、2つの補正指示に含まれる補正後の推定水面標高と現在の補正前の推定水面標高の差の平均を算出する。補正前の推定水面標高から補正後の推定水面標高までの変換がそれぞれ−0.5mと−1mとであるため、その平均は−0.75mである。したがって変換テーブル生成部107は補正前の変換テーブルに記録されている推定水面標高を全て0.75m減じる。
【0064】
図28は第6の実施形態の変換テーブルの補正概要を示す第三の図である。
図28は変換テーブルの第三の補正例を示している。河川監視装置1は、例えば図28の補正前の変換テーブル281を記憶しているとする。この変換テーブル281は、監視画像内のY座標=150と推定水面標高13mの対応関係などの複数の対応関係の情報を保持している。この状態において標高入力部109が監視画像内Y座標150に対応する推定水面標高13mを12.5mと補正するための補正指示をユーザから入力する。また標高入力部109が監視画像内Y座標550に対応する推定水面標高4mを3mと補正するための補正指示をユーザから入力する。標高入力部109はそれら2つの補正指示を変換テーブル生成部107に出力する。変換テーブル生成部107は、2つの補正指示を入力した場合、それら2つの補正指示から監視画像内Y座標と、推定水面標高との対応関係を読み取る。変換テーブル生成部107は、監視画像内Y座標の増加分に対応する推定水面標高の増加分を示す傾きを示す係数を算出する。変換テーブル生成部107はこの傾きを示す二次関数に基づいて線形補間した、各画像内Y座標に対応する推定水面標高を算出する。または傾きを示す係数を算出せずに、何らかの手法によって、画像内Y座標の変換に応じた推定水面標高の変化を線形補間してもよい。図28の補正後の変換テーブル282に示すように、例えば変換テーブル生成部107は監視画像内Y座標100に対応する推定水面標高の減少値を−0.4m、監視画像内Y座標150に対応する推定水面標高の減少値を−0.5m、・・監視画像内Y座標500に対応する推定水面標高の減少値を−0.9m、監視画像内Y座標550に対応する推定水面標高の減少値を−1.0mなどと決定してもよい。
【0065】
なお上記各実施形態では、河川監視装置1内に設けられる各機能部がソフトウェアにより実現される機能部であるものとして説明したが、それら各機能部はLSI等のハードウェアによって実現される機能部として構成されていてもよい。
【0066】
以上説明した少なくともひとつの実施形態によれば、監視地点Pcにおける水面標高の画像中の検出領域を、上流や下流の水位計測地点Pa,Pbから取得した水面標高に基づく監視地点Paにおける推定水面標高を用いて特定する。これにより監視地点Paにおける水面標高の検出領域をある程度絞ることができるので、その水面と水面から突出する物体の境界を示す水面標高の位置を大きく誤ることなく検出することができる。
【0067】
上述の各装置は内部にコンピュータシステムを有している。そして、各装置に上述した各処理を行わせるためのプログラムは、それら各装置のコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記憶されており、このプログラムを各装置のコンピュータが読み出して実行することによって、上記処理が行われる。ここでコンピュータ読み取り可能な記録媒体とは、磁気ディスク、光磁気ディスク、CD−ROM、DVD−ROM、半導体メモリ等をいう。また、このコンピュータプログラムを通信回線によってコンピュータに配信し、この配信を受けたコンピュータが当該プログラムを実行するようにしても良い。
【0068】
また、上記プログラムは、前述した各処理部の機能の一部を実現するためのものであっても良い。さらに、前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であっても良い。
【0069】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0070】
1…河川監視装置、2…撮影装置、3…上流水位計測装置、4…下流水位計測装置、101…画像取得部、102…他地点水面標高取得部、103…推定水面標高算出部、104…水面標高座標検出部、105…変換部、106…記憶部、107…変換テーブル生成部、108…標高安定度合判定部、109…標高入力部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
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図26
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図28