特許第6682431号(P6682431)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6682431
(24)【登録日】2020年3月27日
(45)【発行日】2020年4月15日
(54)【発明の名称】耐衝撃性スクラップ浸漬装置
(51)【国際特許分類】
   F27D 3/14 20060101AFI20200406BHJP
   F27B 3/04 20060101ALI20200406BHJP
   C22B 7/00 20060101ALI20200406BHJP
   C22B 21/00 20060101ALI20200406BHJP
【FI】
   F27D3/14 Z
   F27B3/04
   C22B7/00 F
   C22B21/00
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-524042(P2016-524042)
(86)(22)【出願日】2014年10月14日
(65)【公表番号】特表2017-500525(P2017-500525A)
(43)【公表日】2017年1月5日
(86)【国際出願番号】US2014060419
(87)【国際公開番号】WO2015057660
(87)【国際公開日】20150423
【審査請求日】2017年10月13日
(31)【優先権主張番号】14/258,348
(32)【優先日】2014年4月22日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/890,931
(32)【優先日】2013年10月15日
(33)【優先権主張国】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】511307030
【氏名又は名称】パイロテック インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100095898
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 満
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 泰史
(72)【発明者】
【氏名】ヴィルド クリス ティー
(72)【発明者】
【氏名】グロデック ロバート エル
【審査官】 橋本 憲一郎
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第06217823(US,B1)
【文献】 特表2014−526026(JP,A)
【文献】 特表2015−514954(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F27D 3/00−3/18
F27B 3/00−3/28
C22B 7/00
C22B 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属スクラップ浸漬装置であって、耐熱材料の側壁及び底壁を備えた開口形チャンバと、前記チャンバの前記側壁又は前記底壁に設けられていて溶融金属を受け入れる入口と、前記チャンバの前記底壁に設けられた出口と、前記チャンバの前記側壁に隣接して位置する傾斜路とを有し、前記傾斜路は、前記側壁に隣接して位置する第1の縁部及び第2の縁部を有し、前記第1の縁部と前記第2の縁部との間に位置する前記傾斜路の表面は、凹面であり、前記傾斜路は、前記出口の周囲で螺旋状に延び、内側柱状体が前記チャンバ内に中央キャビティを画定し、前記傾斜路の前記第2の縁部は、前記内側柱状体と交差し、前記内側柱状体は、前記チャンバの前記底壁から離れた端壁を有し、前記端壁は、少なくとも2つの丸形縁部を有する、スクラップ浸漬装置。
【請求項2】
前記凹面は、不連続であり、平坦な又は凸状の傾斜路の部分によって中断されている、請求項1記載のスクラップ浸漬装置。
【請求項3】
前記傾斜路は、水平領域と傾斜領域の両方を有する、請求項1記載のスクラップ浸漬装置。
【請求項4】
前記端壁は、その周囲全体にわたって2つの丸形縁部を有し、前記傾斜路の表面は、実質的に連続して湾曲している、請求項記載のスクラップ浸漬装置。
【請求項5】
前記傾斜路及び前記内側柱状体は、断面で見て全体として逆S字形を成している、請求項記載のスクラップ浸漬装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、典型的には金属再生利用プロセス、特にアルミニウムの再生利用で用いられる形式のスクラップ浸漬システムに関する。本発明の例示の実施形態は、流量を増大させる耐衝撃性スクラップ浸漬装置に関する。
【0002】
〔関連出願の説明〕
本願は、2013年10月15日に出願された米国特許仮出願第61/890,931号の権益主張出願であり、この米国特許仮出願を参照により引用し、その開示内容を本明細書の一部とする。
【背景技術】
【0003】
金属の再生利用において、処理及び加工のためにスクラップ片を溶融することが必要である。アルミニウムスクラップ片の大部分は、アルミニウムスクラップ片の形成手段である機械的付形又は造形作用、例えばシェービング、穴あけ及び冷間圧延の結果として薄肉のものである。薄肉スクラップ片を溶融することは、(i)伝統的な溶融炉内における過酷な雰囲気への長時間にわたる暴露の結果として極めて大きな酸化損失が生じるという理由及び(ii)薄肉スクラップ片が溶融金属上で浮遊すること(「浮遊スクラップ」)によって溶融金属中への迅速な浸漬が著しく阻まれるという理由で特に困難である。
【0004】
浮遊スクラップをインゴットに変換するために用いられる典型的な溶融作業では、溶融炉が密閉ハース及び連結状態の開放サイドウェルを備える。通常、サイドウェルは、ポンプウェルと溶融ベイに分割される。ポンプ又は他の溶融金属流れ誘導装置が溶融ベイの外部に(例えば、ポンプウェル内に)配置され、それにより溶融金属は、ハースから溶融ベイに流れる。典型的には、溶融ベイは、チャージウェル(chargewell)とドロスウェル(drosswell)に更に分割される。金属スクラップ片は、溶融ベイ、特にそのチャージウェル部分中に送り込まれる。
【0005】
溶融金属浴の表面下のスクラップ金属の浸漬を容易にするために様々な装置が溶融ベイ内に(具体的には、チャージウェル内に)用いられている。3つの主要な形式のシステムが存在する。第1の形式は、主としてロータで構成された機械的システムを含み、かかるロータにより、頂面からの溶融金属の流れが生じる。これら装置の例が米国特許第3,873,305号明細書、同第3,997,336号明細書、同第4,128,415号明細書及び同第4,930,986号明細書に示されている。第2の形式のシステムは、スクラップを物理的にメルト表面下に物理的に押すために機械的装置(例えば、いわゆる象の足(elephant foot)/ウェルウォーカー(well-walker))を用いている。第3の形式のシステムは、スクラップ片をチャージウェル内に浸漬させる金属の流れを生じさせるためにロータの回転なしでチャンバの形状を利用している。特に、チャージウェル内への溶融金属の流れは、チップを頂面から浴中に引き込む渦を生じさせるように操作される。これらシステムは、例えば、米国特許第3,955,970号明細書、同第3,984,234号明細書、同第4,286,985号明細書、同第6,036,745号明細書及び同第6,217,823号明細書に示されており、これら米国特許の各々を参照により引用し、その記載内容を本明細書の一部とする。本発明は、この第3の形式のスクラップ浸漬システムに関する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第3,873,305号明細書
【特許文献2】米国特許第3,997,336号明細書
【特許文献3】米国特許第4,128,415号明細書
【特許文献4】米国特許第4,930,986号明細書
【特許文献5】米国特許第3,955,970号明細書
【特許文献6】米国特許第3,984,234号明細書
【特許文献7】米国特許第4,286,985号明細書
【特許文献8】米国特許第6,036,745号明細書
【特許文献9】米国特許第6,217,823号明細書
【発明の概要】
【0007】
本発明の種々の細部が基本的な理解を提供するために以下において概要説明されている。この概要説明は、本発明の多方面にわたる概観ではなく、また、本発明の或る特定の要素を識別しようとするものではなく、そしてまた、その範囲を定めようとするものでもない。これとは異なり、この発明の概要の主目的は、以下に提供される詳細な説明に先立って単純化された形態での本発明の幾つかの概念を提供することにある。
【0008】
第1の実施形態によれば、耐熱材料で構成されている壁を備えた開口形チャンバを有する金属スクラップ浸漬装置が提供される。チャンバは、側壁又は底壁に設けられた入口及びその底又はベースに設けられた出口を有する。一般的に言って、チャンバは、底部入口・底部出口型構造体として説明できる。傾斜路又は傾斜面がチャンバの壁上で上方に螺旋状に延びる状態でチャンバの壁に隣接して形成される。傾斜路は、壁に隣接して位置する第1の縁部及び内側柱状体に隣接して位置する第2の縁部を有する。傾斜路は、第1の縁部と第2の縁部との間に位置する凹面を有する。
【0009】
第2の実施形態によれば、耐熱材料で構成されている壁を備えた開口形チャンバを有する金属スクラップ浸漬装置が提供される。チャンバは、側壁に設けられた入口及びその底又はベースに設けられた出口を有する。一般的に言って、チャンバは、底部入口・底部出口型構造体として説明できる。傾斜路がチャンバの壁上で上方に螺旋状に延びる状態でチャンバの壁に隣接して形成される。傾斜路は、側壁から出口を備えた内側柱状体まで延びる。内側柱状体は、チャンバ底又はベースと反対側に設けられた端壁を有する。端壁は、少なくとも1つの丸形縁部を有する。
【0010】
第3の実施形態によれば、耐熱材料の側壁及び底壁を備えた開口形チャンバを有する金属スクラップ浸漬装置が提供される。溶融金属を受け入れる入口がチャンバの側壁又は底壁に設けられている。出口がチャンバの底又はベースに設けられている。傾斜路がチャンバの側壁から出口を備えた内側柱状体まで延びている。傾斜路は、壁に隣接して位置する第1の縁部及び内側柱状体に隣接して位置する第2の縁部を有する。第1の縁部と第2の縁部との間に位置する傾斜路の作用面は、凹状である。内側柱状体は、チャンバ底と反対側に設けられた端壁を有する。端壁は、丸形の内側縁部及び外側縁部を有する。
【0011】
別の実施形態によれば、本発明は、先行する段落に記載された装置を用いて金属、特にアルミニウムを再生利用する方法に関する。
【0012】
本発明は、図示すると共に説明する新規な部品、構造、配置、組み合わせ及び技術改良にある。本明細書に組み込まれたその一部をなす添付の図面は、本発明の一実施形態を示すと共に本明細書と一緒になって本発明の原理を説明するのに役立つ。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】溶融金属再生利用炉の略図である。
図2】先行技術のポンプウェル及びチャージウェルの断面図である。
図3】本発明のチャージウェルの縦断面斜視図である。
図4図3のチャージウェルの平面図である。
図5図3のチャージウェルの部分的に想像線で示された右側面断面図である。
図6図3のチャージウェルの部分的に想像線で示された左側面断面図である。
図7図3のチャージウェルの部分的に想像線で示された横断面斜視図である。
図8】本発明の実施例から得られる試験結果のグラフ図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、本発明の現時点において好ましい実施形態を詳細に参照し、この実施形態の一例が添付の図面に示されている。本発明を好ましい実施形態と関連して説明するが、理解されるように、本発明をその実施形態に限定するものではない。それどころか、添付の特許請求の範囲の記載に基づいて定められる本発明の精神及び範囲に含まれる全ての変形例、改造例、及び均等例を含むものである。
【0015】
本発明は、典型的には金属再生利用プロセス、例えば、アルミニウムの再生利用で用いられる形式のスクラップ浸漬システムに関する。金属の再生利用において、処理及び加工のためにスクラップ片を溶融することが必要である。アルミニウムスクラップ片の大部分は、アルミニウムスクラップ片の形成手段である機械的付形又は造形作用、例えばシェービング、穴あけ及び冷間圧延の結果として薄肉のものである。薄肉スクラップ片を溶融することは、薄肉スクラップ片が溶融金属上で浮遊すること(「浮遊スクラップ」)によって溶融金属中への迅速な浸漬が著しく阻まれるという理由で特に困難である。問題点として、伝統的な溶融炉内における過酷な雰囲気への長時間にわたる暴露の結果として極めて大きな酸化損失が生じる。
【0016】
軽量スクラップをインゴットに変換するために用いられる典型的な溶融作業では、溶融炉が密閉ハース及び連結状態の開放サイドウェルを備える。通常、サイドウェルは、ポンプウェルと溶融ベイに分割される。ポンプ又は他の溶融金属流れ誘導装置が溶融ベイの外部に(例えば、ポンプウェル内に)配置され、それにより溶融金属は、ハースから溶融ベイに流れる。典型的には、溶融ベイは、チャージウェルとドロスウェルに更に分割される。金属スクラップ片は、溶融ベイ、特にそのチャージウェルコンポーネント中に送り込まれる。浮遊ドロスは、ドロスウェル内の溶融金属の表面からすくい取られる。
【0017】
次に図1を参照すると、アルミニウム再生利用炉10が示されている。炉10は、主要コンポーネントとしてのハース12を有し、このハースは、例えば、ガス若しくは油バーナ又は当該技術分野において知られている任意他の手段により加熱される。ハース12に隣接して且つこのハースと流体連通関係をなして(代表的には、浸漬アーチ路を介して)ポンプウェル14、チャージウェル16及びドロスウェル18で構成された一次再生利用流域が設けられている。図示していないが、ハース12の壁は、ポンプウェル14に開口し、ポンプウェルは、チャージウェル16に開口し、チャージウェルは、ドロスウェル18に開口し、ドロスウェルは、ハース12に開口し、それにより矢印で示された循環パターンの実現が可能である。ポンプウェルは、当業者に知られている任意形式の機械式溶融金属ポンプを有するのが良い。変形例として、ウェル及びポンプに代えて例えば電磁ポンプを用いても良い。溶融金属ポンプは、溶融金属をハース12からチャージウェル16に循環させ、チャージウェルにおいて、再生利用されるべき金属のスクラップチップがメルトの表面上に堆積する。チャージウェルは又、所望の合金を達成するために追加の金属又はフラックスを追加することができる場所である。チャージウェル16からの溶融金属は、ドロスウェル18内に流れ、このドロスウェル内において、ドロスの形態をした不純物が表面からすくい取られ、その後、メルトがハース12内に流れ戻る。この特定の開示内容は、チャージウェル16の改良設計に関している。
【0018】
次に図2を参照すると、図1のポンプウェル14及びチャージウェル16が示されている。ポンプ20は、ポンプウェル14内に配置され、このポンプは、溶融アルミニウムをハースから引き出し、これをチャージウェル16内に圧送する。具体的に説明すると、インペラ22の回転により溶融アルミニウムが浴24から引き出されてポンプ20内に引き込まれ、そして溶融アルミニウムは出口26を通り、通路28沿いに上方に圧送され、そして入口30を通ってチャージウェル16内に圧送される。溶融アルミニウムは、チャージウェル16内の傾斜路又は傾斜面32沿いに上方に流れて内側柱状体35の内縁部34を越えて内縁部34から溢れ出てキャビティ36内に入り、そして出口38を通って出る。傾斜路32の前縁44は、入口30に隣接して配置されるのが良い。
【0019】
本発明は、既存のチャージウェルを作り変えるためのコンポーネントとして利用できるので、この設計例は、キャビティ36の位置を高くして出口38のためにクリアランスを提供すると共に溶融金属が図1のドロスウェル18内に流れ込むことができるようにする耐火材のベース区分46を有することが図2から注目できる。当業者には認識されるように、再生利用対象の金属チップは、チャージウェル16内のメルト48の表面上に堆積する。
【0020】
上述の説明は、先行技術の装置に関するが、注目されるように、この説明で取り上げられている幾つかの特徴は、本発明に同様に利用でき、従って、以下の説明に等しく関連する。したがって、上述の説明は又、本実施形態の説明に組み込まれる。
【0021】
炉のターンオーバーを増強させるため、溶融金属ポンプコンポーネント(図2に示されている)を高いRPMで動かすのが良い。同様に、多量の流れをもたらす大型溶融金属ポンプを採用するのが良い。しかしながら、チャージウェル(図2の符号16)は、かかる増大した溶融金属の流れを十分に利用しているわけではないことが判明した。と言うのは、溶融金属の流れ中に生じる渦が流れを制限する場合があるからである。さらに、チャージウェル中へのポンプにより出力された溶融金属の流れを単に増加させることによっては、スクラップ浸漬を向上させることができないことが判明した。と言うのは、かかる増加は、溶融金属の流れ中に生じる渦の最適形状を変化させる場合があるからである。さらに、典型的な炉構造体中の空間に関する制約のために、チャージウェルの寸法を大きくして大型の浸漬ボウルを設置し、それにより高いポンプスループットを利用することができるようにすることは、常に実行可能なオプションであるとは限らない。したがって、本発明は、劣化した渦の生成なしに稼働されるべき溶融金属ポンプの比較的高いRPMを容易にする新規なチャージウェル構成に関する。さらに、新規なチャージウェル構成は、先行技術の設計例と比較して向上した耐衝撃性及び耐熱性を提供することが判明した。
【0022】
本発明のチャージウェルは、耐熱材料で構成されている壁を備えた開口形(頂部が開口している)チャンバを有するのが良い。黒鉛及びセラミックスは、適当な耐熱材料の良好な例である。チャンバは、側壁又は底壁に設けられると共にポンプウェルと流体連通状態にある入口及びドロスウェルと流体連通関係をなして底壁に設けられた出口を有する。代表的には、チャンバは、チャンバ底壁に設けられた出口を備えると共に側部出口を形成するエルボ及び内部導管に通じる内側柱状体を有する。一般に、チャンバの内部形態を底壁又は下側の側壁の入口及び底部の出口として説明する場合があり、傾斜路が内側柱状体と側壁との間に形成される。
【0023】
次に、本発明の第1の実施形態に関し、図3図6を参照する。この実施形態では、スクラップ溶融装置100は、耐火材のブロック102で構成されるのが良く、このブロックは、既存のチャージウェル(例えば、図1のチャージウェル16)の寸法と合致する比較的厳密な公差を提供するのに適した寸法のものである。好ましくは、ブロック102は、硬化済みの材料、例えばアルミナ‐シリカ耐熱材又は当業者に知られている他の注型可能な耐火材で構成される。注型物の表面は、加熱処理に先立って窒化硼素で処理されるのが良い。
【0024】
ブロック102は、全体として円筒形の側壁118、傾斜路121を備えた底又はベース120、及び出口124及び出口ダクト125に通じる中央に設けられたキャビティ123を形成する内側柱状体122を含むチャンバ116を有する。内側柱状体122は、底部120と反対側に位置する端壁126を有するのが良い。図示の端壁126は、底部120の上方に突き出た一定高さを有する。しかしながら、内側柱状体122の端壁126は、傾斜路と一緒に上方に螺旋状に延びて各々の高さが比較的一定であるようにすることも又想定される。傾斜路121は、チャンバ116の入口128に隣接して位置する前縁127で始まっている。
【0025】
傾斜路121は、側壁118に係合する第1の縁部129及び内側柱状体122に係合する第2の縁部131を有する。凹状作用面130がこの装置の機能を向上させるものであることが判明した。凹状作用面130は、縁部129,131相互間に形成されている。凹状作用面は、必ずしも傾斜路の広がり全体にわたって延びる必要はない。これとは異なり、凹面は、不連続であっても良い。具体的に説明すると、凹面は、傾斜路螺旋の最初の0〜180°、最初の0〜270°、最後の270〜360°、又は最後の90〜360°だけにわたって延びても良いことが想定される。非凹状部分は、平坦であっても良くそれどころか凸状であっても良い。
【0026】
本発明の別の実施形態によれば、内側柱状体122は、丸形内縁部133及び丸形外縁部135のうちの一方又は両方を含む端壁126を有するのが良い。有利には、端壁の丸形縁部133/135は、より頑丈な装置を提供することが判明した。さらに、丸形縁部は、チャンバ116内に表面と対応関係にある溶融金属流れプロフィールとの両方を提供し、このことは、もしそのように構成されていなければ内側柱状体の表面の亀裂及び/又は欠けを生じさせるような大きなスクラップ片との直接的な衝突の恐れを最小限に抑える。同様に、丸形縁部133/135を設けることは、装置を熱的に頑丈にすることが判明した。具体的に言えば、耐火材の鋭利な縁部は、熱歪の影響を受けやすいことが判明した。したがって、丸形縁部133/135は、溶融金属にさらされたときの亀裂発生に抵抗することができるブロック102をもたらす。
【0027】
傾斜路121には勾配が付いているが、このことは、一定の勾配で達成される必要はない。これとは異なり、傾斜路121は、最初の180°部分にわたって傾けられるのが良く、そして最後の約120°部分にわたって水平のままであるのが良い。同様に、本発明は、チャージウェルの周囲の45°という小さな角度から360°にわたる傾斜路を含むものである。しかしながら、180°〜270°にわたって延びる傾斜路が代表的である。
【0028】
有利には、凹状傾斜路及び柱状体の丸形端壁は、翼形を生じさせる。翼形形態により、比較的高いポンプRPMでも空気の取り込みに抵抗する望ましい渦の生成が可能であることが判明した。さらに、この渦は、有利には、これが出口のエルボ部分に達する前に閉じられる。少なくとも実質的に連続した湾曲面が存在することが有益な場合がある。具体的に言えば、側壁に隣接して位置する傾斜路の縁部から内側柱状体の内縁部まで延びる断面表面が頂点のない表面であることが望ましいと言える。本明細書で用いられる渦がないという表現は、断面で見て表面には2つの平べったい部分が互いに交差する箇所がないということを意味するようになっている。一般的に言って、傾斜路の形状及び柱状体の頂壁は、逆“S”字形のものであるのが良い。
【0029】
本発明の設計は、少なくとも2つの顕著な利点をもたらすことが判明した。具体的に言えば、(i)傾斜路及び内側柱状体の丸形表面は、溶融金属中に同伴された固形物との衝突に起因する破損の影響を受けにくいことが判明すると共に(ii)傾斜路及び内側柱状体の2つの丸形表面が熱歪の影響を受けにくいことが判明しており、更に(iii)傾斜路及び内側柱状体の翼形設計により達成される流量が特定のポンプRPMで先行技術の設計例の場合よりも高い。
【0030】
以下の実施例は、本発明の説明を容易にするために提供されているが、本発明を本明細書において開示した特定の実施形態に限定するものではない。
【0031】
実施例
【0032】
水モデル化
【0033】
本システムの水モデル化試験を実施して性能を評価した。具体的に説明すると、図2に示された形式の浸漬ウェル(「クラシック型」)を図3図7の設計例(「レジスタント型」)と比較した。結果の実証するところによれば、より有効な渦が同等のポンプ速度においてレジスタント型設計例で作られる。レジスタント型に対するクラシック型の浸漬ウェル設計例により達成される流量の視覚的記載が図8に見える。
【0034】
レジスタント型LOTUSS
48インチボウルID付きのJ‐50ポンプ(なお、1インチ=2.54cm)
23.5インチ浴深さ
27.6インチ浴深さ
33.5インチ浴深さ
クラシック型LOTUSS
48インチボウルID付きのJ‐50ポンプ(なお、1インチ=2.54cm)
23.5インチ浴深さ
27.6インチ浴深さ
33.5インチ浴深さ
【0035】
好ましい実施形態を参照して例示の実施形態について説明した。明らかなこととして、上述の詳細な説明を読んで理解すると、当業者には改造例及び変形例が想到されよう。例示の実施形態は、かかる全ての改造例及び変形例は添付の特許請求の範囲の記載に基づいて定められた本発明の範囲又はその均等範囲に含まれる限り、かかる全ての改造例及び変形例を含むものと解されるものである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8