【文献】
sigma c protein [Avian orthoreovirus], [online]. 1994-DEC-13 uploaded. NCBI Protein, ACCESSION No.AAA57268.1 (GI:601929) [Retrieved on 2018-DEC-07]. Retrieved from the internet:<URL:https://www.ncbi.nlm.nih.gov/protein/601929?sat=0&satkey=1065486>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明によって、遺伝的および血清学的に区別される、トリレオウイルスの2つの型が、米国およびカナダの全域でウイルス関節炎(VA)/腱滑膜炎の臨床症例から単離された。トリレオウイルスシグマCタンパク質の遺伝解析から、新規の1型および2型遺伝子型は、現行のトリレオウイルスワクチン株と無関係であることが明らかになった。ウイルスの血清学的評価は、現行の市販レオウイルスワクチンに対する既知の抗血清との交差中和が、わずかまたは皆無であることを明らかにした。加えて、病原性および子孫保護試験は、現行の市販ワクチンが、ワクチン接種種鶏からの子孫において、十分な防御を提供しないことを立証する。現行のレオウイルスワクチン株は1960年代から1970年代にかけて単離されており、ウイルス関節炎/腱滑膜炎の確認例から得られた目下広まっているレオウイルス単離物に対する防御は、提供しない。
【0031】
トリレオウイルスは、哺乳類レオウイルスと共に、レオウイルス科(Reoviridae)内でオルトレオウイルス属(Orthoreovirus)を構成する。これらのウイルスは、およそ80nmの無エンベロープの正二十面体二重カプシド内に封入された、10個のdsRNAゲノム部分を含有する。ゲノム部分は、電気泳動移動度を基準にして、それぞれ、タンパク質λ1、λ2、λ3、μ1、μ2、μNS、σ3、σ1、σ2、σNSをコードする、3つの大型(L1、L2、L3)、3つの中型(M1、M2、M3)、および4つの小型(S1、S2、S3、S4)断片に分割され得る。σ2タンパク質は、型特異的中和エピトープを有する外面カプシドタンパク質である。これはまた、二本鎖RNAを結合して、亜鉛金属タンパク質として同定された。σ1断片によってコードされる微量外側カプシドタンパク質であるシグマCタンパク質は、トリレオウイルスの分子特性決定のための標的であり、細胞付着、ならびに型特異的中和抗体誘導に関与する。
【0032】
トリレオウイルスビリオンは、カプシド、コア、および核タンパク質複合体を含む。ウイルスカプシドは、エンベロープに覆われていない。カプシド/ヌクレオカプシドは、等尺性で正二十面体対称性があり、約80〜82nmの直径を有する。ビリオンのカプシド殻は、2層から構成される。全ての殻が通常存在し、または外側シェルは、調製中に失われることが多い。カプシドは、丸く見える。カプシド表面構造は、顕著な特徴がある規則的パターンを示す。カプソメア配置は、明確に視認できる。表面突起は、存在しない。内部カプシドコアは、約60nmの直径を有する。ウイルス調製品は、単一粒子構成要素を含有する。コアは球状であり、直径約49nmのdsRNAゲノムからなる。繊維末端は、ほぼカプシド表面まで突出する。
【0033】
トリレオウイルスワクチン株S1133では、s1mRNA転写物は、1644ヌクレオチド長であり、位相を異にして部分的に重複する3つのシストロンを含有する。第1のシストロン(ORF−1、ヌクレオチド25−319)はp10を発現し、第2のシストロン(ORF−2、ヌクレオチド293−731)はp17を発現し、第3のシストロン(ORF−3、ヌクレオチド630−1608)は細胞付着タンパク質Cを発現する。
【0034】
レオウイルスワクチン株S1133、1733、2408、および2177のシグマCアミノ酸の配列解析は、これらのワクチン株間の>99%類似性を明らかにする。レオウイルスの圃場分離株の遺伝子型特性決定は、圃場分離株と、ワクチン株、ならびにパブリックドメインおよびPDRCデータベースで利用可能な全てのレオウイルス配列との比較を含む。圃場分離株について、圃場分離株またはワクチン株を問わない別の配列との最大類似性百分率として、遺伝子型類似性が報告される。
【0035】
本発明によれば、トリレオウイルスの2つの遺伝的および血清学的に区別されるグループが、腱滑膜炎臨床症例から単離される。トリレオウイルスシグマCタンパク質の遺伝解析は、現行のトリレオウイルスワクチン株とは無関係の新規遺伝子型を明らかにした。ウイルスの血清学的評価は、現行の市販レオウイルスワクチンに対する既知の抗血清との交差中和が、わずかまたは皆無であることを明らかにした。さらに、病原性および子孫保護試験が実施されて、現行の市販ワクチンが、ワクチン接種種鶏からの子孫に十分な防御を提供しないことが立証された。
【0036】
本明細書に記載される圃場分離株の2つの遺伝的/血清学的グループは、1型2012VA変異株(本明細書では「1型トリレオウイルス」とも称される)、および2型2012VA変異株(本明細書では、「2型トリレオウイルス」とも称される)と称される。1型2012VA変異株および/または2型2012VA変異株からのレオウイルスは、弱毒生および死滅化/不活性化ワクチンのいずれで使用されてもよい。いくつかの態様では、このようなワクチンは、自家ワクチンであってもよい。
【0037】
本発明の1型トリレオウイルスは、配列番号2と、少なくとも約50%の配列同一性、少なくとも約55%の配列同一性、少なくとも約60%の配列同一性、少なくとも約65%の配列同一性、少なくとも約70%の配列同一性、少なくとも約75%の配列同一性、少なくとも約80%の配列同一性、少なくとも約85%の配列同一性、少なくとも約90%の配列同一性、少なくとも約95%の配列同一性、少なくとも約96%の配列同一性、少なくとも約97%の配列同一性、少なくとも約98%の配列同一性、または少なくとも約99%の配列同一性があるアミノ酸配列がある、Cシグマタンパク質を有してもよい。いくつかの態様では、本発明の1型トリレオウイルスは、配列番号2のアミノ酸配列を有する、Cシグマタンパク質を有してもよい。いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるような1型トリレオウイルスは、配列番号2と比較して少なくとも1つの置換修飾がある、Cシグマタンパク質を有する。
【0038】
本発明の1型トリレオウイルスは、配列番号4と、少なくとも約50%の配列同一性、少なくとも約55%の配列同一性、少なくとも約60%の配列同一性、少なくとも約65%の配列同一性、少なくとも約70%の配列同一性、少なくとも約75%の配列同一性、少なくとも約80%の配列同一性、少なくとも約85%の配列同一性、少なくとも約90%の配列同一性、少なくとも約95%の配列同一性、少なくとも約96%の配列同一性、少なくとも約97%の配列同一性、少なくとも約98%の配列同一性、または少なくとも約99%の配列同一性があるアミノ酸配列がある、Cシグマタンパク質を有してもよい。いくつかの態様では、本発明の1型トリレオウイルスは、配列番号4のアミノ酸配列を有する、Cシグマタンパク質を有してもよい。いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるような1型トリレオウイルスは、配列番号4と比較して少なくとも1つの置換修飾がある、Cシグマタンパク質を有する。
【0039】
本発明の1型トリレオウイルスは、配列番号1と、少なくとも約50%の配列同一性、少なくとも約55%の配列同一性、少なくとも約60%の配列同一性、少なくとも約65%の配列同一性、少なくとも約70%の配列同一性、少なくとも約75%の配列同一性、少なくとも約80%の配列同一性、少なくとも約85%の配列同一性、少なくとも約90%の配列同一性、少なくとも約95%の配列同一性、少なくとも約96%の配列同一性、少なくとも約97%の配列同一性、少なくとも約98%の配列同一性、または少なくとも約99%の配列同一性があるヌクレオチド配列によってコードされる、Cシグマタンパク質を有してもよい。いくつかの態様では、本発明の1型トリレオウイルスは、配列番号1を有するヌクレオチド配列によってコードされる、Cシグマタンパク質を有してもよい。いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるような1型トリレオウイルスは、配列番号1と比較して少なくとも1つの置換修飾があるヌクレオチド配列によってコードされる、Cシグマタンパク質を有する。
【0040】
本発明の1型トリレオウイルスは、配列番号3と、少なくとも約50%の配列同一性、少なくとも約55%の配列同一性、少なくとも約60%の配列同一性、少なくとも約65%の配列同一性、少なくとも約70%の配列同一性、少なくとも約75%の配列同一性、少なくとも約80%の配列同一性、少なくとも約85%の配列同一性、少なくとも約90%の配列同一性、少なくとも約95%の配列同一性、少なくとも約96%の配列同一性、少なくとも約97%の配列同一性、少なくとも約98%の配列同一性、または少なくとも約99%の配列同一性があるヌクレオチド配列によってコードされる、Cシグマタンパク質を有してもよい。いくつかの態様では、本発明の1型トリレオウイルスは、配列番号3を有するヌクレオチド配列によってコードされる、Cシグマタンパク質を有してもよい。いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるような1型トリレオウイルスは、配列番号3と比較して少なくとも1つの置換修飾があるヌクレオチド配列によってコードされる、Cシグマタンパク質を有する。
【0041】
いくつかの実施形態では、1型トリレオウイルスは、表21に示されるものの1つ、またはその子孫または誘導体である。
【0042】
いくつかの実施形態では、1型トリレオウイルスは、トリレオウイルスCK/945494/Tendon/GA/2012(本明細書では「1型2012VA変異株の圃場分離株94594」または「94594」とも称される)、またはその子孫または誘導体である。
【0043】
いくつかの実施形態では、1型トリレオウイルスは、トリレオウイルスCK/94826/Tendon/GA/2012(本明細書では「1型2012VA変異株の圃場分離株94826」または「94826」とも称される)、またはその子孫または誘導体である。
【0044】
本発明の2型トリレオウイルスは、配列番号6と、少なくとも約85%の配列同一性、少なくとも約90%の配列同一性、少なくとも約95%の配列同一性、少なくとも約96%の配列同一性、少なくとも約97%の配列同一性、少なくとも約98%の配列同一性、または少なくとも約99%の配列同一性がある、アミノ酸配列があるCシグマタンパク質を有してもよい。いくつかの態様では、本発明の2型トリレオウイルスは、配列番号6のアミノ酸配列を有する、Cシグマタンパク質を有してもよい。いくつかの実施形態では、上に記載されるような2型トリレオウイルスは、配列番号6と比較して少なくとも1つの置換修飾がある、Cシグマタンパク質を有する。
【0045】
本発明の2型トリレオウイルスは、配列番号5と、少なくとも少なくとも約85%の配列同一性、少なくとも約90%の配列同一性、少なくとも約95%の配列同一性、少なくとも約96%の配列同一性、少なくとも約97%の配列同一性、少なくとも約98%の配列同一性、または少なくとも約99%の配列同一性がある、ヌクレオチド配列によってコードされるCシグマタンパク質を有してもよい。いくつかの態様では、本発明の1型トリレオウイルスは、配列番号5を有するヌクレオチド配列によってコードされる、Cシグマタンパク質を有してもよい。いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるような1型トリレオウイルスは、配列番号5と比較して少なくとも1つの置換修飾があるヌクレオチド配列によってコードされる、Cシグマタンパク質を有する。
【0046】
いくつかの実施形態では、2型トリレオウイルスは、表21に示されるものの1つ、またはその子孫または誘導体である。
【0047】
いくつかの実施形態では、2型トリレオウイルスは、トリレオウイルスCK/96139/Tendon/GA/2012(本明細書では「2型2012VA変異株の圃場分離株96139」または「96139」とも称される)、またはその子孫または誘導体である。
【0048】
本明細書に記載されるようなトリレオウイルスは、またはこのようなウイルスに感染した細胞系は、米国微生物系統保存機関(ATCC(登録商標)),10801 University Boulevard,Manassas,VA 20110−2209,USAに寄託されてもよい。このような寄託は、「特許手続上の微生物の寄託の国際的承認に関するブダペスト条約」に従ってもよい。
【0049】
本発明によるトリレオウイルスは、本明細書に含まれる実施例セクションのいずれかに記載されるものをはじめとするが、これに限定されるものではない従来法によって調製され得る。手短に述べると、トリレオウイルスの複製を支持できる基質に、本発明のトリレオウイルスが接種され、ウイルスが所望の伝染性力価、または抗原質量含有率に複製されるまで増殖させる。次に、レオウイルスを含有する材料が収集される。適切な基質としては、例えば、ニワトリ胚肝細胞、ニワトリ胚線維芽細胞、またはニワトリ腎臓細胞などの初代(鳥類)細胞培養物;例えば、VERO細胞系またはBGM−70細胞系などの哺乳類細胞系;または例えば、QT−35、QM−7またはLMHなどの鳥類細胞系が挙げられる。いくつかの用途では、有胚の(embrynated)卵が使用されてもよい。
【0050】
本発明は、鳥から得られた抗血清サンプルが、本発明のウイルス、細胞系、細胞ペレット、上清、および/またはポリペプチドに特異的に結合するかどうかを判定するステップを含む、鳥において、1型および/または2型トリレオウイルスへの曝露を検出する方法を含む。例えば、本発明は、鳥から得られた抗血清サンプルが、本発明のトリレオウイルスに特異的に結合することを判定するステップを含む、鳥においてトリレオウイルスへの曝露を検出する方法における、本発明の1つまたは複数のトリレオウイルスの使用を含む。このようなトリレオウイルスとしては、トリレオウイルス94594、94826、または96139株をはじめとするが、これに限定されるものではない、
図21に収載されているトリレオウイルス株のいずれかをはじめとするがこれに限定されるものではない、本明細書に記載されるもののいずれが挙げられる。このようなトリレオウイルスは、不活性化、死滅化、および/または凍結乾燥されていてもよい。本発明はまた、本発明のトリレオウイルスの1つまたは複数を含む診断キットも含む。このようなキットは、例えば、陽性対照ウイルス、陰性対照ウイルス、二次抗体、および/または検出可能マーカーなどの追加的成分を含んでもよい。
【0051】
本発明は、配列番号2、配列番号4、および/または配列番号6と、少なくとも約50%の配列同一性、少なくとも約55%の配列同一性、少なくとも約60%の配列同一性、少なくとも約65%の配列同一性、少なくとも約70%の配列同一性、少なくとも約75%の配列同一性、少なくとも約80%の配列同一性、少なくとも約85%の配列同一性、少なくとも約90%の配列同一性、少なくとも約95%の配列同一性、少なくとも約96%の配列同一性、少なくとも約97%の配列同一性、少なくとも約98%の配列同一性、または少なくとも約99%の配列同一性があるアミノ酸配列を有する、単離シグマCポリペプチドを含む。いくつかの態様では、本発明は、配列番号2、配列番号4、および/または配列番号6のアミノ酸配列を有する、単離シグマCポリペプチドを含む。いくつかの態様では、本発明は、配列番号2、配列番号4、および/または配列番号6と比較して、少なくとも1つの(at least one least one)置換修飾がある、アミノ酸配列を有する単離シグマCポリペプチドを含む。
【0052】
本発明は、配列番号1、配列番号3、および/または配列番号5と、少なくとも約50%の配列同一性、少なくとも約55%の配列同一性、少なくとも約60%の配列同一性、少なくとも約65%の配列同一性、少なくとも約70%の配列同一性、少なくとも約75%の配列同一性、少なくとも約80%の配列同一性、少なくとも約85%の配列同一性、少なくとも約90%の配列同一性、少なくとも約95%の配列同一性、少なくとも約96%の配列同一性、少なくとも約97%の配列同一性、少なくとも約98%の配列同一性、または少なくとも約99%の配列同一性があるヌクレオチド配列によってコードされるアミノ酸配列を有する、単離シグマCポリペプチドを含む。いくつかの態様では、本発明は、配列番号1、配列番号3、および/または配列番号5のヌクレオチド配列によってコードされたアミノ酸配列を有する、単離シグマCポリペプチドを含む。いくつかの態様では、本発明は、配列番号1、配列番号3、および/または配列番号5と比較して、少なくとも1つの(at least one least one)置換修飾があるヌクレオチド配列によってコードされたアミノ酸配列を有する、単離シグマCポリペプチドを含む。
【0053】
本発明は、本明細書に記載されるようなポリペプチド、それらのトランケーションおよび断片を含む。トランケーションとしては、その中で、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10個以上のアミノ酸がアミノ酸配列のアミノ末端から除去された、および/または1、2、3、4、5、6、7、8、9、10個以上のアミノ酸がアミノ酸配列のカルボキシ末端から除去された、アミノ酸配列が挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0054】
断片としては、例えば、本明細書に記載される配列の約5、約10、約15、約20、約25、約50、約75、約100、約150、約200、約250、約300、約350、約400、約450、約500、約550、約600、約650、および約700の連続アミノ酸残基を有する断片が挙げられるが、これに限定されるものではない。断片としてはまた、例えば、上記断片サイズの任意の組み合わせのサイズ範囲の断片も挙げられる。
【0055】
断片としては、例えば、本明細書に記載される配列の少なくとも5、少なくとも10、少なくとも15、少なくとも20、少なくとも25、少なくとも50、少なくとも75、少なくとも100、少なくとも150、少なくとも200、少なくとも250、少なくとも300、少なくとも350、少なくとも400、少なくとも450、少なくとも500、少なくとも550、少なくとも600、少なくとも650、および少なくとも700の連続アミノ酸残基を有する断片が挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0056】
本発明は、本明細書に記載されるアミノ酸配列、またはそれらの断片から1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20個以上のアミノ酸変化があるアミノ酸配列を有するポリペプチドを含む。このようなアミノ酸変化としては、保存的アミノ酸変化が挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0057】
本発明は、鳥におけるトリレオウイルスへの曝露を検出する方法における、本発明のポリペプチドの1つまたは複数の使用を含み、方法は,鳥から得られた抗血清サンプルが、本発明のポリペプチドに特異的に結合することを判定するステップを含む。このようなポリペプチドとしては、配列番号2、配列番号4、および配列番号6、およびそれらの誘導体および断片をはじめとするが、これに限定されるものではない、本明細書に記載されるもののいずれかが挙げられる。本発明はまた、本発明のポリペプチドの1つまたは複数を含む診断キットも含む。このようなキットは、例えば、陽性対照ポリペプチド、陰性対照ポリペプチド、二次抗体、検出可能マーカーなどの追加的成分を含んでもよい。
【0058】
本発明は、配列番号1、配列番号3、または配列番号5と、少なくとも約50%の配列同一性、少なくとも約55%の配列同一性、少なくとも約60%の配列同一性、少なくとも約65%の配列同一性、少なくとも約70%の配列同一性、少なくとも約75%の配列同一性、少なくとも約75%の配列同一性、少なくとも約80%の配列同一性、少なくとも約85%の配列同一性、少なくとも約90%の配列同一性、少なくとも約95%の配列同一性、少なくとも約98%の配列同一性、または少なくとも約99%の配列同一性を有する単離ポリヌクレオチド配列を含む。本発明は、配列番号1、配列番号3、または配列番号5、トランケーション、またはその断片を有する、単離ポリヌクレオチド配列を含む。いくつかの態様では、本発明は、配列番号1、配列番号3、または配列番号5と比較して、少なくとも1つの(at least one least one)置換修飾がある、本明細書に記載されるような単離ポリヌクレオチド配列を含む。
【0059】
本発明は、配列番号2、配列番号4、または配列番号6をコードするヌクレオチド配列と、少なくとも約50%配列同一性、少なくとも約55%の配列同一性、少なくとも約60%の配列同一性、少なくとも約65%の配列同一性、少なくとも約70%の配列同一性、少なくとも約75%の配列同一性、少なくとも約75%の配列同一性、少なくとも約80%の配列同一性、少なくとも約85%の配列同一性、少なくとも約90%の配列同一性、少なくとも約95%の配列同一性、少なくとも約98%の配列同一性、または少なくとも約99%の配列同一性を有する単離ポリヌクレオチド配列を含む。いくつかの態様では、本発明は、配列番号2、配列番号4、または配列番号6を有する、単離ポリヌクレオチド配列を含む。いくつかの態様では、本発明は、配列番号2、配列番号4、または配列番号6と比較して、少なくとも1つの(at least one least one)置換修飾があるアミノ酸配列をコードする、本明細書に記載されるような単離ポリヌクレオチド配列を含む。
【0060】
本発明は、様々な条件下で、本明細書に記載されるヌクレオチド配列およびそれらの断片とハイブリダイズする、ポリヌクレオチド配列を含む。ストリンジェンシー条件としては、中程度および高ストリンジェンシーが挙げられるが、これに限定されるものではない。高ストリンジェンシーハイブリダイゼーション条件は、例えば、6×SSC、5×デンハート、0.5%ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、および100μg/ml断片化変性サケ精子DNA、65℃で一晩のハイブリダイズ、2×SSC、0.1%SDS、室温で約10分間の少なくとも1回の洗浄と、それに続く65℃で約15分間の少なくとも1回の洗浄と、それに続く0.2×SSC、0.1%SDS、室温で少なくとも3〜5分間の少なくとも1回の洗浄であってもよい。
【0061】
本発明は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、20以上のヌクレオチド置換を有する、本明細書に記載されるポリヌクレオチド配列を含む。本発明は、その中でコドン使用頻度が、所与の宿主細胞内における発現の最適化のために適応されている、本明細書に記載されるポリヌクレオチド配列もまた含む。例えば、コドン使用頻度は、バキュロウイルス、酵母、大腸菌(E.coli)、家禽、またはヒト細胞をはじめとするが、これに限定されるものではない、宿主細胞内における発現のために最適化されるように適応されてもよい。このような適応は、当該技術分野で公知の技術(techniques know in the art)によって実施され得る。
【0062】
本発明は、本明細書に記載されるプライマーのいずれか、およびPCR反応で本明細書に記載される配列またはその断片を作成するのに使用され得るプライマーをはじめとするが、これに限定されるものではない、プライマーを含む。いくつかの実施形態では、プライマーは、少なくとも5、少なくとも10、少なくとも15、少なくとも20、少なくとも25、少なくとも30、少なくとも35、または少なくとも40のヌクレオチド残基を含んでもよい。いくつかの実施形態では、プライマーは、10以下、15以下、20以下、25以下、30以下、35以下、40以下、45以下、50以下、55以下、または60以下のヌクレオチド残基を含んでもよい。このようなヌクレオチド残基は、連続的配列またはその補体であってもよい。本明細書に記載されるプライマーの少なくとも1つ、それらの補体、またはこのような配列に由来するプライマーを含む、プライマー対もまた含まれる。このようなプライマーによって産生された増幅産物もまた、本発明に包含される。
【0063】
本発明は、本発明のポリヌクレオチド配列を含むベクターを含む。いくつかの態様では、ベクターは、ワクチンベクターである。本発明は、本発明のポリヌクレオチドによってコードされる、単離ポリペプチドを含む。
【0064】
本発明は、サンプル中のトリレオウイルス感染性因子を検出する方法における、本発明の1つまたは複数のポリヌクレオチド配列の使用を含む。このような方法としては、例えば、本発明のポリヌクレオチド配列のサンプルへのハイブリダイゼーションを検出するステップを含む方法、および本発明のポリヌクレオチド配列に由来する少なくとも1つのプライマーによって、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)増幅産物を作成するステップを含む方法が挙げられる。このようなポリヌクレオチド配列としては、配列番号1、配列番号3、および配列番号5をはじめとするが、これに限定されるものではない、本明細書に記載されるもののいずれかが挙げられる。本発明はまた、本発明のポリヌクレオチド配列の1つまたは複数を含む、診断キットも含む。本発明は、本発明のウイルス、細胞系、細胞ペレット、上清、ポリヌクレオチド配列、ベクター、および/またはポリペプチドの1つまたは複数を含む、診断キットを含む。
【0065】
本明細書に記載されるようなトリレオウイルスは、不活性化または死滅化ウイルスであってもよい。ウイルス不活性化の目的は、ウイルスが複製するのを防止することであり、一般に、これは化学的または物理的手段によって達成され得る。化学的不活性化は、例えば、酵素、ホルムアルデヒド、s−プロピオラクトン、エチレンイミンまたはその誘導体で、ウイルスを処理することでもたらされ得る。物理的不活性化は、例えば、ウイルスをUV光などのエネルギー放射の対象とすることで実施され得る。
【0066】
本明細書に記載されるようなトリレオウイルスは、低下した病原性を示して、ワクチン接種の目的のために弱毒生ウイルスの役割を果たしてもよい。本発明の実施において有用なトリレオウイルスの弱毒化は、この目的のために当該技術分野で周知の方法によって達成され得る。例えば、本発明による単離トリレオウイルスは、有胚の(embrynated)鶏卵、生きた動物または適切な細胞系(cells lines)内で継代することで弱毒化させ得る。このような細胞系としては、例えば、ニワトリ胚肝細胞、ニワトリ胚線維芽細胞、またはニワトリ腎臓細胞などの初代(鳥類)細胞培養物;例えば、VERO細胞系またはBGM−70細胞系などの哺乳類細胞系;または例えば、QT−35、QM−7またはLMHなどの鳥類細胞系が挙げられる。このような戻し継代ウイルスは、例えば、約10〜約100継代によって得られてもよい。このような戻し継代ウイルスは、例えば、1回または複数回の戻し継代、2回以上の戻し継代、3回以上の戻し継代、4回以上の戻し継代、5回以上の戻し継代、10回以上の戻し継代、15回以上の戻し継代、20回以上の戻し継代、25回以上の戻し継代、50回以上の継代、75回以上の継代、または100回以上の継代によって得られてもよい。このような戻し継代ウイルスは、例えば、約1回の戻し継代、約2回の戻し継代、約3回の戻し継代、約4回の戻し継代、約5回の戻し継代、約10回の戻し継代、約15回の戻し継代、約20回の戻し継代、約25回の戻し継代、約50回の継代、約75回、約100回の継代、またはそれらの任意の範囲によって得られてもよい。
【0067】
例えば、本発明は、溶菌斑精製に続いて、初代ニワトリ胚線維芽細胞内の継代によって弱毒化された、トリレオウイルスを含む。この過程は、ウイルス弱毒化するために、例えば、約10〜約100回繰り返されてもよい。病原性試験が、例えば、25継代、50継代、75継代、100継代、および追加的な時点などの様々な時点で実施されてもよい。
【0068】
本発明は、本発明の単離ウイルス、細胞系、細胞ペレット、上清、ポリヌクレオチド配列、ベクター、および/またはポリペプチドを投与するステップを含む、家禽において、抗1型および/または2型トリレオウイルス免疫応答を生じさせる方法を含む。いくつかの態様では、免疫としては、体液性および/または細胞性免疫が挙げられる。いくつかの態様では、免疫としては、粘膜性免疫が挙げられる。
【0069】
本発明は、本発明の単離ウイルス、細胞系、細胞ペレット、上清、ポリヌクレオチド配列、ベクター、および/またはポリペプチドを含む組成物を投与するステップを含む、家禽においてトリレオウイルス感染症を予防する方法を含む。
【0070】
本発明の方法のいくつかの態様では、投与としては、注射、噴霧、経口投与、または呼吸器投与が挙げられる。本発明の方法のいくつかの態様では、投与は、粘膜性免疫を誘導する。本発明の方法のいくつかの態様では、投与としては、卵内投与が挙げられる。いくつかの態様では、卵内投与としては、約13日目、約14日目、約15日目、約16日目、約17日目、約18日目、約19日目、約20日目、またはそれらの任意の範囲の投与が挙げられる。
【0071】
本発明は、本明細書に記載される単離ウイルス、ポリヌクレオチド配列、ベクター、および/またはポリペプチドの1つまたは複数を含む、免疫原性組成物およびワクチンを含む。いくつかの実施形態では、ウイルスは、生きている。いくつかの実施形態では、ウイルスは、弱毒化または不活性化されている。いくつかの実施形態では、ウイルスは、不活性化または死滅化されている。いくつかの実施形態では、ウイルス、組成物、またはワクチンは、凍結乾燥されている。いくつかの実施形態では、ウイルス、組成物、またはワクチンは、凍結されている。
【0072】
このような組成物およびワクチンは、鳥を免疫化する活性成分として投与されて、1型および/または2型トリレオウイルスに対する免疫応答が引き起こされ、および/またはこのようなトリレオウイルスに対する免疫が誘導されてもよい。免疫は、ワクチン接種を受けていない群との比較で、ワクチン接種後に、鳥集団におけるより高レベルの防御の誘導を含んでもよい。免疫応答は、防御免疫を与えてもよく、または与えなくてもよい。免疫応答は、例えば、抗原への曝露に応答したリンパ球産生を伴う細胞媒介性免疫応答、および/または抗原曝露に応答した血漿リンパ球(B細胞)産生と引き続く抗体産生を伴う体液性免疫応答の1つまたは複数を含んでもよい。免疫化は、トリレオウイルス関連ウイルス関節炎(VA)/腱滑膜炎症状の1つまたは複数の低下、阻害、または予防をもたらしてもよい。このような症状としては、体重抑制、産卵数低下、斃死率、巨視的病変(腱腫脹、腱滑膜炎(tenosynovitits)、腱断裂、および心膜水腫をはじめとするが、これに限定されるものではない)、および組織学的変化(リンパ球性腱滑膜炎、リンパ球性心外膜炎、およびリンパ球性心筋炎をはじめとするが、これに限定されるものではない)の1つまたは複数が挙げられる。
【0073】
本発明の免疫原性組成物またはワクチンは、アジュバント活性がある1つまたは複数の化合物もまた含んでもよい。この目的のために適切な化合物または組成物としては、水酸化アルミニウム、リン酸アルミニウム、酸化アルミニウム、植物油、動物油、例えば、Bayol F(商標)またはMarcol 52(登録商標)などの鉱物油ベースの水中油型または油中水型エマルション、完全フロイントアジュバント、不完全フロイントアジュバント、またはビタミンE酢酸エステルなどの植物油、およびサポニンが挙げられる。
【0074】
本発明の免疫原性組成物またはワクチンは、1つまたは複数の適切な薬学的に許容可能な担体または希釈剤を含んでもよい。本発明の免疫原性組成物またはワクチンは、1つまたは複数の安定剤もまた含有してもよい。ソルビトール、マンニトール、デンプン、スクロース、デキストリン、またはグルコースなどの炭水化物;アルブミンまたはカゼインなどのタンパク質;およびアルカリ性金属リン酸塩などの緩衝液をはじめとする任意の適切な安定剤が使用され得る。安定剤は、凍結乾燥によって乾燥ワクチン製剤が調製される場合に、特に有利である。
【0075】
本発明の免疫原性組成物またはワクチンは、家禽に対して伝染性のその他の病原体に由来する、1つまたは複数の免疫原をさらに含んでもよい。このような免疫原は、例えば、マレック病ウイルス(MDV)、伝染性気管支炎ウイルス(IBV)、ニューカッスル病ウイルス(NDV)、産卵低下症候群(EDS)ウイルス、シチメンチョウ鼻気管炎ウイルス(TRTV)、ポックスウイルス、レオウイルス、ニワトリパルボウイルス、および鳥類腎炎ウイルス(ANV−1およびANV−2をはじめとするが、これに限定されるものではない)から誘導されてもよい。
【0076】
本発明の免疫原性組成物またはワクチンは、経鼻、点眼、注射、飲料水中、飼料中、曝露、卵内、母系性、呼吸吸入などをはじめとする、家禽接種の任意の適切な公知の方法によって投与されてもよい。免疫原性組成物またはワクチンは、ワクチンを飲料水に入れまたは環境噴霧するなどの集団投与技術によって投与されてもよい。注射投与される場合、免疫原性組成物またはワクチンは、非経口的に投与されてもよい。非経口投与としては、例えば、静脈内、皮下、筋肉内、または腹腔内注射による投与が挙げられる。
【0077】
いくつかの実施形態では、生ワクチンは、1羽あたり10
2抗体価単位以上の用量で投与されてもよく(抗体価単位は、連邦規則集の第9編113.332条で定義される)、不活性化ワクチンは、1羽あたり10
4〜10
10TCID
50抗原当量を含有してもよい(TCIDは組織培養感染量の略語である)。
【0078】
本発明の組成物およびワクチンは、実質的に純粋であってもよい。本明細書の用法では、「実質的に純粋」は、自然界に普通に見られるいかなる類似巨大分子またはその他の生物学的実体も、本質的に含まない素材を意味する。
【0079】
本発明の組成物およびワクチンは、家禽、キジ目(Galliformes)の鳥、および外来鳥類をはじめとするが、これに限定されるものではない、トリレオウイルスによる感染症に罹患し易い多様な鳥類のいずれかの鳥に投与されてもよい。キジ目(Galliformes)の鳥としては、ニワトリ、シチメンチョウ、ライチョウ、ウズラ、およびキジが挙げられるが、これに限定されるものではない。本明細書の用法では、家禽には、それらの卵を採取し、または肉および/または羽毛のために屠殺する目的で飼育される、家畜化された鳥が含まれる。これらは、最も典型的には、上目キジカモ類(Galloanserae)(鳥類)、特にキジ目(Galliformes)(例えば、ニワトリ、ウズラ、シチメンチョウ、およびライチョウをはじめとする)、および一般に「水鳥」として知られているカモ科(Anatidae)(カモ目(Anseriformes))(例えば、カモ、ガチョウ、およびハクチョウをはじめとする)の構成員である。家禽にはまた、ハト(pigeons)またはハト(doves)などのそれらの肉のために屠殺されるその他の鳥、またはキジなどの狩猟対象と見なされる鳥が含まれてもよい。ニワトリとしては、雌鶏、雄鶏、ブロイラー、ロースター、産卵鶏、種鶏、種鶏の子孫、および産卵鶏が挙げられるが、これに限定されるものではない。本明細書の用法では、「罹患し易い」という用語は、罹患し難い個体または集団と比較して、例えば、活力低下または成長障害などの言及される微生物に対する有害な反応の可能性または現実性、および/またはトリウイルス感染症の指標となる1つまたは複数の病的状態を意味する。
【0080】
本発明のワクチンは、孵化前または孵化後に家禽に投与されてもよい。家禽は、多様な齢数でワクチンを投与されてもよい。例えば、ブロイラーは、卵内で、1日齢で、または2〜3週齢で、ワクチン接種されてもよい。産卵用系統または繁殖用系統は、例えば、約6〜12週齢でワクチン接種され、約16〜20週齢で追加免疫されてもよい。このような産卵用系統または繁殖用系統は、約6、約7、約8、約9、約10、約11、または約12週齢でワクチン接種されてもよい。このような産卵用系統または繁殖用系統は、約16、約17、約18、約19、または約20週齢で追加免疫されてもよい。このような産卵用系統または繁殖用系統の子孫は、本明細書に記載されるようなポリペプチドに対する抗体力価を示してもよく、それは、子孫において、トリレオウイルス感染症の症状を予防または軽減してもよい。卵内でワクチン接種は、例えば、約13日目、約14日目、約15日目、約16日目、約17日目、約18日目、約19日目、約20日目、またはそれらの任意の範囲で行われてもよい。
【0081】
ニワトリは、任意の適切な齢数でワクチン接種されてもよく、通常は、最初のワクチン接種前に約1〜3日齢である。ニワトリは、1回のみワクチン接種されてもよい。あるいは2回のワクチン投与が使用される場合、1回目は、例えば、ニワトリが3日齢から1週齢の時点で投与され、引き続いてさらに1〜10週間後に投与される。
【0082】
組成物の複数回投与は、ニワトリの生涯を通じて投与され得る。母子免疫がブロイラー子孫に防御を提供する主要な供給源であることから、種鶏ニワトリが典型的にワクチン接種されるが、所望であれば、ブロイラー鶏もワクチン接種され得る。
【0083】
1型トリレオウイルスおよび/または2型トリレオウイルスに結合する抗血清および抗体もまた、本発明に包含される。いくつかの態様では、抗血清または抗体は、例えば、トリレオウイルスS1133、1733、2408、および/または2177株などのトリレオウイルスの現行の市販ワクチン株に、しない(does not to)。本発明の実施において有用な抗体としては、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、一本鎖抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、またはそれらの断片が挙げられ、また二重特異性抗体、合成抗体、Fab、Fv、F(ab)2、またはscFv断片などの抗体断片、一本鎖抗体、またはこれらのいずれかの化学修飾誘導体もまた含まれる。このような抗体は、診断法および診断キットで使用されてもよい。いくつかの態様では、抗トリレオウイルス抗体は、固体基質に付着してもよい。
【0084】
本発明は、鳥から得られるサンプル中の1型または2型トリレオウイルスの量を検出および/または測定する方法を提供する。いくつかの態様では、1型トリレオウイルスは、配列番号2または配列番号4、またはその断片または誘導体を有するシグマCタンパク質をはじめとするが、これに限定されるものではない、本明細書に記載されるようなアミノ酸配列があるシグマCタンパク質を含む。いくつかの態様では、2型トリレオウイルスは、配列番号6またはその断片または誘導体を有するシグマCタンパク質をはじめとするが、これに限定されるものではない、本明細書に記載されるようなアミノ酸配列があるシグマCタンパク質を含む。このような方法は、本明細書に記載されるようなトリレオウイルスおよび/または本明細書に記載されるようなシグマCタンパクと、質選択的に結合にする抗体に、サンプルを接触させて、サンプル中のウイルスまたはタンパク質への抗体結合量を測定するステップを含んでもよい。サンプルは、組織、骨、血液、尿または糞便などの任意の生物学的材料であってもよい。本発明のこの態様の方法は、例えば、家禽が、本発明のトリレオウイルスに感染しているかどうかを判定するのに有用である。感染動物は、他の動物へのレオウイルスの拡散を防止するために殺処分され得る。
【0085】
本明細書の用法では、「単離された」は、その元の環境(例えば、それが天然に存在する場合は天然環境)から取り出された物質を指し、したがって「人の手によって」その天然状態から改変されている。
【0086】
「および/または」という用語は、1つまたは全ての列挙された要素、または任意の2つ以上の列挙された要素の組み合わせを意味する。
【0087】
「好ましい」および「好ましくは」という語は、特定状況下で、特定の利点をもたらしてもよい本発明の実施形態を指す。しかし、同一またはその他の状況において、その他の実施形態もまた、好適であってもよい。さらに、1つまたは複数の好ましい実施形態の列挙は、その他の実施形態が有用でないことを暗示せず、本発明の範囲からその他の実施形態を排除することは意図されない。
【0088】
「含んでなる」という用語およびそのバリエーションは、これらの用語が説明および特許請求の範囲に出現した場合、限定的意味を有しない。
【0089】
特に断りのない限り、「a」、「an」、「the」、および「少なくとも1つ」は、同義的に使用されて、1つまたは2つ以上を意味する。
【0090】
また本明細書では、終点による数値範囲の列挙は、その範囲内に包含される全ての数を含む(例えば、1〜5は、1、1.5、2、2.75、3、3.80、4、5、などを含む)。
【0091】
個別のステップを含む本明細書で開示される任意の方法では、ステップは、任意の実行可能な順序で実施されてもよい。そして、必要に応じて、2つ以上のステップの任意の組み合わせが同時に実施されてもよい。
【0092】
特に断りのない限り、明細書および特許請求の範囲で使用される、成分量、分子量などを示す全ての数は、いかなる場合でも「約」という用語によって修飾されるものと理解される。したがって、特にそうでないという断りのない限り、明細書および特許請求の範囲に記載される数値パラメータは、本発明によって得られることが求められる、所望の性質次第で変動してもよい近似値である。最低限でも、特許請求の範囲に対する均等論の制限の試みとしてではなく、各数値パラメータは、少なくとも報告された有効桁数の観点から、通常の丸め技術を適用して解釈されるべきである。
【0093】
本発明の広範囲で示される数値的範囲及びパラメータは、近似値であるが、具体例に記載の数値は可能な限り正確に報告される。しかし、全ての数値は、それらのそれぞれの試験測定値に見られる標準偏差から必然的にもたらされる範囲を本質的に含有する。
【0094】
全ての見出しは、読者の利便性のためであり、そのように明記されない限り、見出しに続く本文の意味を制限するために利用されるべきではない。
【0095】
出願書全体を通じていくつかの箇所で、実施例の一覧を通じて指標が提供され、その実施例は様々な組み合わせで使用され得る。それぞれの場合において、列挙された一覧は、典型的なグループとしての役割のみを果たし、排他的一覧として解釈されるべきではない。特定の実施例、物質、量、および手順は、本明細書に記載される発明の範囲と精神に従って広義に解釈されるものと理解される。
【0096】
本発明は以下の実施形態を包含する:
1.(a)配列番号2および/または配列番号4と、少なくとも約80%の配列同一性、少なくとも約85%の配列同一性、少なくとも約90%の配列同一性、少なくとも約95%の配列同一性、少なくとも約96%の配列同一性、少なくとも約97%の配列同一性、少なくとも約98%の配列同一性、または少なくとも約99%の配列同一性があるアミノ酸配列を含んでなるシグマCタンパク質;
(b)配列番号1および/または配列番号3と、少なくとも約80%の配列同一性、少なくとも約85%の配列同一性、少なくとも約90%の配列同一性、少なくとも約95%の配列同一性、少なくとも約96%の配列同一性、少なくとも約97%の配列同一性、少なくとも約98%の配列同一性、または少なくとも約99%の配列同一性があるヌクレオチド配列を含んでなるS1遺伝子;
(c)配列番号6と、少なくとも約85%の配列同一性、少なくとも約90%の配列同一性、少なくとも約95%の配列同一性、少なくとも約96%の配列同一性、少なくとも約97%の配列同一性、少なくとも約98%の配列同一性、または少なくとも約99%の配列同一性があるアミノ酸配列を含んでなるシグマCタンパク質;または
(d)配列番号5と、少なくとも約85%の配列同一性、少なくとも約90%の配列同一性、少なくとも約95%の配列同一性、少なくとも約96%の配列同一性、少なくとも約97%の配列同一性、少なくとも約98%の配列同一性、または少なくとも約99%の配列同一性があるヌクレオチド配列を含んでなるS1遺伝子
を含んでなる、単離トリレオウイルス。
2.実施形態1(a)または1(b)に記載の単離トリレオウイルスを含んでなる、1型トリレオウイルス。
3.前記トリレオウイルスが、配列番号2と少なくとも約99%の配列同一性があるアミノ酸配列を含んでなるシグマCタンパク質を含んでなる、実施形態2に記載の1型トリレオウイルス。
3.前記トリレオウイルスが、配列番号4と少なくとも約99%の配列同一性があるアミノ酸配列を含んでなるシグマCタンパク質を含んでなる、実施形態2に記載の1型トリレオウイルス。
4.実施形態1(c)または1(d)に記載の単離トリレオウイルスを含んでなる、2型トリレオウイルス。
5.前記トリレオウイルスが、配列番号6と少なくとも約99%の配列同一性があるアミノ酸配列を含んでなるシグマCタンパク質を含んでなる、実施形態4に記載の2型トリレオウイルス。
6.前記トリレオウイルスが、卵または宿主細胞系における少なくとも25継代によって弱毒化されている、実施形態1〜5のいずれかに記載の1型または2型トリレオウイルス。
7.前記1型トリレオウイルスが、トリレオウイルス94594株およびその誘導体および子孫を含んでなる、実施形態2に記載の1型トリレオウイルス。
8.前記トリレオウイルス94594株が、卵または宿主細胞系における少なくとも25継代によって弱毒化されている、実施形態7に記載のトリレオウイルス94594株。
9.前記1型トリレオウイルスが、トリレオウイルス94826株およびその誘導体および子孫を含んでなる、実施形態2に記載の1型トリレオウイルス。
10.前記トリレオウイルス948264株が、卵または宿主細胞系における少なくとも25継代によって弱毒化されている、実施形態9に記載のトリレオウイルス948264株。
11.前記トリレオウイルスが、トリレオウイルス96139株およびその誘導体および子孫を含んでなる、実施形態4に記載の2型トリレオウイルス。
12.前記トリレオウイルスが、卵または宿主細胞系における少なくとも25継代によって弱毒化されている、実施形態11に記載のトリレオウイルス96139株。
13.前記トリレオウイルスが、弱毒化、不活性化、または死滅化されている、実施形態1〜12のいずれかに記載のトリレオウイルス。
14.前記トリレオウイルスが、不活性化または死滅化トリレオウイルス94594株を含んでなる、実施形態13に記載のトリレオウイルス。
15.前記トリレオウイルスが、不活性化または死滅化トリレオウイルス94826株を含んでなる、実施形態13に記載のトリレオウイルス。
16.前記トリレオウイルスが、不活性化または死滅化トリレオウイルス96139株を含んでなる、実施形態13に記載のトリレオウイルス。
17.実施形態1〜16のいずれかに記載のトリレオウイルスを含んでなる、組成物。
18.実施形態1〜16のいずれかに記載のトリレオウイルスを含んでなる、ワクチン。
19.実施形態1〜16のいずれかに記載のトリレオウイルスを含んでなる、家禽に抗体を生じさせるための免疫学的組成物。
20.アジュバントをさらに含んでなる、実施形態17〜19のいずれかに記載の組成物またはワクチン。
21.家禽に伝染性の1つまたは複数の追加的な病原体からの抗原決定基をさらに含んでなる、実施形態17〜20のいずれかに記載の組成物またはワクチン。
22.実施形態1〜16のいずれかに記載のウイルスを含んでなる、診断キット。
23.実施形態1〜16のいずれかに記載の単離トリレオウイルスまたは実施形態17〜21のいずれかに記載の組成物またはワクチンを鳥に投与するステップを含んでなる、家禽において抗レオウイルス抗体を生成する方法。
24.実施形態1〜16のいずれかに記載の単離トリレオウイルスまたは実施形態17〜21のいずれかに記載の組成物またはワクチンを鳥に投与するステップを含んでなる、トリレオウイルスによって誘発される病変または疾患に対する、キジ目(Galliformes)の鳥を防御する方法。
25.実施形態1〜16のいずれかに記載の単離トリレオウイルスまたは実施形態17〜21のいずれかに記載の組成物またはワクチンを鳥に投与するステップを含んでなる、トリレオウイルスによって誘発される病変または疾患に対する、キジ目(Galliformes)の鳥の易罹患性を低下させる方法。
26.実施形態1〜16のいずれかに記載の単離トリレオウイルスまたは実施形態17〜21のいずれかに記載の組成物またはワクチンを鳥に投与するステップを含んでなる、キジ目(Galliformes)の鳥において、ウイルス関節炎および/または腱滑膜炎を低下させる方法。
27.実施形態1〜16のいずれかに記載の単離トリレオウイルスまたは実施形態17〜21のいずれかに記載の組成物またはワクチンを鳥に投与するステップを含んでなる、キジ目(Galliformes)の鳥において、ウイルス関節炎および/または腱滑膜炎を予防する方法。
28.前記鳥が、ニワトリまたはシチメンチョウである、実施形態23〜27のいずれかに記載の方法。
29.投与が、孵化前または後の投与を含んでなる、実施形態23〜28のいずれかに記載の方法。
30.投与が、卵内投与を含んでなる、実施形態23〜28のいずれかに記載の方法。
31.卵内投与が、約13日目、約14日目、約15日目、約16日目、約17日目、約18日目、約19日目、約20日目、またはそれらの任意の範囲における投与を含んでなる、実施形態29に記載の方法。
32.投与が、種鶏への投与を含んでなる、実施形態23〜28のいずれかに記載の方法。
33.実施形態1〜16のいずれかに記載のトリレオウイルスと結合し、トリレオウイルスS1133、1733、2408、および/または2177株とは結合しない、抗体。
34.前記抗体がモノクローナル抗体である、実施形態33に記載の抗体。
35.鳥から得られた抗血清サンプルが、実施形態1〜16のいずれかに記載のトリレオウイルスまたはその構成要素に特異的に結合することを判定するステップを含んでなる、鳥においてトリレオウイルスへの曝露を検出する方法。
36.実施形態1に記載のトリレオウイルスの単離シグマCタンパク質、またはその断片。
37.鳥から得られた抗血清サンプルが、実施形態36に記載の単離シグマCタンパク質またはその断片に特異的に結合することを判定するステップを含んでなる、鳥においてトリレオウイルスへの曝露を検出する方法。
38.配列番号1、配列番号3、または配列番号5、またはその断片を含んでなるポリヌクレオチドが、サンプルにハイブリダイゼーションすることを検出するステップを含んでなる、サンプル中のトリレオウイルス感染性因子を検出する方法。
39.配列番号1、配列番号3、または配列番号5に由来する少なくとも1つのプライマーによって、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)増幅産物を生成するステップを含んでなる、サンプル中のトリレオウイルスを検出する方法。
本発明を以下の実施例によって例示する。特定の実施例、物質、量、および手順は、本明細書に記載される発明の範囲と精神に従って広義に解釈されるものと理解される。
【実施例】
【0097】
実施例1
変異レオウイルス株の単離および特性決定
本実施例は、家禽疾病診断研究センター(Poultry Diagnostic and Research Center)に提出された、2.5〜8週齢の範囲のブロイラーにおける、腱滑膜炎および/または跛行の多数の臨床症例の腱からの変異レオウイルス株の単離を説明する。トリレオウイルスは、シグマCタンパク質の配列決定、および血清学的アッセイによって、特性決定された。
【0098】
材料と方法
ウイルス単離。レオウイルス圃場分離株Ck/94594 Tendon/GA/2012、Ck/94826 Tendon/GA/2012andCk/96139 Tendon/GA/2012が、ジョージア大学家禽疾病診断研究センターにおいて、ウイルス関節炎および腱滑膜炎の臨床徴候を示す商業的ブロイラーの腱から単離された。臨床的に罹患したニワトリからの腱および滑液吸引液は、抗生物質を添加したウイルス輸送媒体中で個別に均質化された。均質化組織は、0.45ミクロンシリンジフィルターを通して濾過された。濾液は、レオウイルスS1133抗血清(Charles River,SPAFAS,Wilmington,MA)と共に37℃で1時間インキュベートされた。中和に続いて、0.2mlのホモジネートが、合計4回の継代で、初代ニワトリ胚肝細胞に接種された。合胞体形成として観察される70〜80%の細胞変性効果が生じたら、細胞培養物は冷凍され、−80℃で保存された。細胞培養物は、後続の細胞培養継代前に、3回、冷凍され解凍された。
【0099】
RNA抽出物。製造業者の推奨に従って、RNeasyキット(Qiagen,Valencia,CA)を使用して、全ウイルスRNAが、初代ニワトリ胚肝細胞継代から抽出された。簡単に述べると、製造業者によって推奨されるように、感染の48時間後に、細胞培養液がデカントされ、0.143Mのβ−メルカプトエタノールを含有する300μlのRLT緩衝液が単層に重ね合わされて、細胞スクレーパーで掻き取られた。
【0100】
RT−PCR。S1遺伝子に対応するcDNAは、以前公開されたP1(AGTATTTGTGAGTACGATTG(配列番号7))およびP4(GGCGCCACACCTTAGGT(配列番号8))プライマー(Kant et al.,2003,Vet Res;34:203−212)を用いて、SUPERSRIPT(商標)III RNase H−逆転写酵素およびPLATINUM(登録商標)Taq DNAポリメラーゼ(Invitrogen,Carlsbad,CA)を使用した逆転写およびPCRによって、作成された。1.1kbの増幅産物は、1.0%アガロースゲル上で分離され、臭化エチジウムで染色されて、UVトランスイルミネーターによって視覚化された。断片が切除されてQIAEX IIゲル抽出キット(Qiagen Inc.,Valencia,CA)で精製され、ジエチルピロ炭酸(DEPC)処理水中で溶出され、−80℃で保存された。
【0101】
増幅産物およびS1クローンのヌクレオチド配列決定。ゲル精製PCR産物は、蛍光標識ジデオキシヌクレオチドおよびTaqポリメラーゼを用いて、ABI9700自動化配列決定装置(Applied Biosystems Inc.,Foster City,CA)上で実施される二本鎖DNA配列決定を使用して、直接配列決定された。配列決定のためにPCRプライマーP1およびP4が使用され、ならびに配列決定を完了するために必要に応じて、保存内部S1遺伝子プライマーが使用された。配列決定のために使用されるプライマー配列は、要求に応じて利用できる。さらに、ゲル精製製品は、製造業者の推奨に従って、プラスミドpCR2TOPO(Invitrogen)にクローン化され、大腸菌(E.coli)に形質転換された。1.1kbの挿入物があるプラスミドを含有する各単離物からのいくつかのクローンは、M13順方向および逆方向プライマーを使用したPCRによって同定された。クローンは伸長され、プラスミドは、製造業者の方法に従って、プラスミドミニプレップキット(Qiagen,Valencia,CA)を使用して精製された。配列決定のためにM13ユニバーサル順方向および逆方向プライマーが使用され、ならびに配列決定を完了するために必要に応じて、内部S1プライマーが使用された。S1遺伝子を含有する3回の増幅からの少なくとも3つのクローンまたはPCR産物が、両方向で配列決定されて、共通配列を得るために使用された。単離株94594、94826、および96139のヌクレオチドおよびアミノ酸配列は、
図1〜6で同定される。
【0102】
配列解析。S1遺伝子およびシグマCタンパク質のヌクレオチド、予測アミノ酸配列分析、および多重アラインメントは、CLUSTAL W(Lasergene,v.5.0,DNASTAR,Madison,WI)を使用して実施された。以前公開されたトリレオウイルスのS1遺伝子配列は、GenBankから入手された。
【0103】
系統発生解析を使用するParsimony v 4.10bソフトウェア(PAUP)を使用した発見的探索で、近隣結合クラスタリングおよび1000ブートストラップ反復試を使用して、整合配列が比較され系統樹が作成された(信頼水準は括弧内に列挙される)。
【0104】
GenBank受入番号。ニワトリ単離株94594、94826、および96139について得られた配列はGenBankに提出され、それぞれKJ803966、KJ803967、およびKJ803990の受入番号が与えられた。
【0105】
結果と考察
今までに、VA/腱滑膜炎の臨床症例から、レオウイルス圃場分離株の2つの主要な変異遺伝子型が浮上しており、データベース中の現行のレオウイルスワクチン株(S1133、1733、2408、2177)およびその他のウイルスとの類似性の欠如のために、変異遺伝子型として特徴付けられる(
図7)。圃場分離株の大部分は、1型(1型2012VA変異株として同定される)に属する。この遺伝子型に属するレオウイルスのシグマCアミノ酸配列は、互いに>99%類似し、パブリックドメインおよびPDRCデータベース中の配列との比較で、ワクチン株と<50%類似する(
図8)。2型(2型2012VA変異株として同定される)中のレオウイルスは、互いに>99%類似し、1型2012VA変異株と<50%と類似する(
図8)。2型2012VA変異株およびワクチン株の間のシグマC類似性は、80%である(
図8)。この型は、より高い配列類似性を共有するが、80%の類似性が、現行のワクチン株とのいくらかのレベルの交差防御につながるがどうかは、明らかでない。ウイルスの血清学的関連性に関する必要な情報を提供するために、双方の型からの圃場分離株の血清学的評価が実施された。
【0106】
1型および2型変異株からの典型的なウイルスは、S1133、2408に対する抗血清、および1型2012VA変異株に対して調製された過免疫血清を使用して、一方向性交差中和アッセイで評価された。圃場分離株および血清パネルの間のVN力価は2〜16であり、圃場分離株が、S1133、2408と、または相互に、血清学的に関連していない証拠が提供される。
【0107】
実施例2
1型変異レオウイルス株の病原性および子孫保護試験
本実施例は、ニワトリにおける、レオウイルス変異株1型2012VA単離株94826および94594の病原性を判定した。
【0108】
実験#1
この実験は、A社の種鶏ワクチン接種プログラムが、レオウイルス圃場分離株94826を攻撃投与された子孫において、変異株1型2012VA単離株に対する適切な防御を提供するかどうかを判定するためのものであった。
【0109】
ニワトリ。A社のワクチン接種種鶏からの80羽の1日齢市販ブロイラーが使用された。
【0110】
【表1】
【0111】
ウイルス。圃場分離株94826が、初代ニワトリ胚肝細胞内で増殖され力価測定されて、負荷用量10
3TCID50/羽で、1日齢の雛の足蹠に接種するために使用された。初代ニワトリ胚肝細胞内で力価測定されたS1133原液もまた、10
3TCID50/羽の用量で、1日齢雛を足蹠接種するために使用される。陰性対照は、滅菌PBSによる足蹠を介した模擬攻撃投与である。
【0112】
レオウイルス負荷。60羽の市販のブロイラーは、孵化当日に投与されて、20羽毎の3群に分割されて、Horsfall Bauer隔離ユニットに入れられた。第1群からの雛は、レオウイルスELISA(IDEXX)のために採血され、殺処分された。2〜4群の雛には、足蹠を介して、1)滅菌PBS、2)S1133、または3)94826が接種された。これは、表1に詳述される。鳥は毎日観察され、飛節の腫脹は、各処置群においてデジタル式キャリパーによって隔日で測定され記録された。14日目に、全ての鳥を安楽死させて、計量し解剖した。鳥類は、任意の巨視的な病変について検査され、飛節関節は、腫脹、出血および/または断裂について検査された。防御のパラメータには、孵化当日血清学、臨床徴候、斃死率、体重、巨視的病変、および試験全体を通じた飛節腫脹評価/測定値が含まれた。
【0113】
実験#2
この実験は、B社の種鶏ワクチン接種プログラムが、最近のB農場のレオウイルス圃場分離株を攻撃投与された子孫において、ウイルス関節炎に対する適切な防御を提供するかどうか、そして1日齢における市販レオウイルスワクチンの使用が、何らかの防御を提供するかどうかを判定するためのものであった。
【0114】
ニワトリ。B社ワクチン接種種鶏からの100羽の1日齢市販ブロイラーが使用された。
【0115】
【表2】
【0116】
ウイルス。レオウイルス圃場分離株94594は、試験前に、初代ニワトリ胚肝細胞内で増殖され力価測定された。孵化日のワクチン接種のために、製造業者の推奨に従って、VA ChickVac(Zoetis)が使用された。陰性対照は、滅菌PBSを模擬攻撃投与された。
【0117】
レオウイルス負荷。100羽の市販の雛羽は、孵化当日に投与されて、20羽毎の等しい5群に分割された。第1群は、レオウイルスELISA(IDEXX)のために採血された。残る4群の雛は、強制空気陽圧下のHorsfall Bauer隔離ユニットに入れられた。孵化当日に、第3群には、皮下投与により全用量のVA ChickVacがワクチン接種された一方で、第4群には、皮下投与により半用量のVA ChickVacがワクチン接種された。これは、表2に詳述される。10日目に、全ての雛について足蹠測定値が得られた。10日目に、第2群には、0.1mlの滅菌リン酸緩衝食塩水が、足蹠を介して接種された一方で、第3〜5群の雛には、1羽当たり10
3TCID50の圃場分離株94594が、足蹠接種を介して攻撃投与された。鳥は毎日モニターされて、飛節測定値は、10日齢に始まって隔日で得られた。22日齢で、試験が終了された。防御のために使用されたパラメータは、孵化当日血清学、臨床徴候、斃死率、体重、巨視的病変であった。
【0118】
結果と考察
病原性および子孫保護試験が、1型2012VA変異遺伝子型からの代表株を使用して、市販のブロイラーにおいて実施された。第1の試験では、孵化日の雛に、足蹠を介して、S1133または1型2012VA変異株単離株のどちらかが攻撃投与され、1つの群は陰性対照とされた。さらに、20羽の孵化当日雛の別の群は、レオウイルスELISAのために採血された。全ての雛は、新鮮なかんな屑上の別個の隔離ハウス内の床式畜舎に入れられて、飼料および水を自由摂取で与えられた。足蹠測定値は、隔日で得られ、鳥は14日目の実験終了時まで、臨床徴候について毎日モニターされた(
図9)。群れのレオウイルスELISA幾何平均力価(GMT)は1,212であり、これは孵化当日雛では低いと見なされる。臨床腱滑膜炎および有意な体重抑制は、S1133および変異レオウイルス株攻撃投与群の双方で観察された(
図10および12)。S1133雛が、変異株で攻撃投与された雛よりも、より重度に跛行に冒された一方で、変異株攻撃投与群では、指屈筋腱周囲の腫脹の発生率がより高かった(
図11)。攻撃投与群で観察されたその他の臨床徴候には、心膜水腫および飛節炎症が含まれた(
図12)。レオウイルスの孵化当日力価は低く、したがってA社のワクチン接種プログラムからの母親由来抗体は、1型変異株の負荷に対する十分な防御を提供しなかった。加えて、圃場分離株は、圃場で観察された臨床疾患を再現し、疾患の病原体であることが確認された。
【0119】
第2の試験では、12日齢時に、市販のブロイラー雛に、足蹠を介して1型変異株が攻撃投与され、試験は23日齢で終了した。孵化当日に採取された血清から得られたレオウイルスELISA GMTは、4,900であった。この試験では、平均体重は、陰性対照との比較で、攻撃投与群においてわずかにより低いだけであった(
図13)。しかし、攻撃投与群は、ウイルス関節炎/腱滑膜炎に特徴的な臨床徴候および巨視的病変を示した(
図14)。第1の試験と同様に、指屈筋腱周囲の腫脹ならびに心膜水腫が、攻撃投与された鳥で観察された(
図12および13)。この試験から、より高レベルの母親由来レオウイルス抗体がある雛は、1型変異株の負荷に対して、防御されないことが結論づけられ得る。
【0120】
さらに、孵化当日の市販のブロイラーに全用量および半用量で皮下投与され、12日齢での1型変異株による負荷がそれに続く、市販のレオウイルスワクチンの使用が評価された。先の試験と同じパラメータを使用して、本発明者らは、全ての攻撃投与群で、VA/腱滑膜炎に特徴的な臨床徴候および巨視的病変を観察した。興味深いことに、心膜水腫および腫脹飛節の発生率は、負荷のみの群と比較して、ワクチン接種され攻撃投与された群で、用量にかかわりなくより高かった(
図14)。
【0121】
要約すると、変異レオウイルス株が、ウイルス関節炎/腱滑膜炎の臨床症例から単離されて、現行のレオウイルスワクチン株と遺伝的および抗原的に異なった。2つの特徴的なグループは、遺伝的および血清学的特性決定に基づいて、1型および2型2012変異株VAレオウイルスとして同定された。生体内試験は、現行の市販ワクチンが、母親由来レオウイルス抗体がある雛において、1型2012変異株の負荷に対する防御を提供しないことを示唆する。典型的な2型単離株の生体内試験は、実施例3で下述される。1型および2型変異レオウイルス株が、米国の多数の州から、およびカナダからの腱滑膜炎の臨床症例から単離または検出され、1型に属する単離株の数は2型を超えていた。これらのウイルスの起源は、不明である。
【0122】
実施例3
2型変異レオウイルス株の病原性試験
実施例2でより詳細に記載される手順を使用して、市販のブロイラーにおいて2型変異レオウイルス株の病原性が特性決定された。2型2012VA変異遺伝子型からの典型的な株(Ck/96139 Tendon/GA/2012)が使用された。処置群は、表3に記載されるようである。
【0123】
【表3】
【0124】
雛に、足蹠を介して、0.1mlの滅菌リン酸緩衝食塩水または1羽あたり10
3TCID50の圃場分離株996139が接種された。防御のために使用されたパラメータは、孵化当日血清学、臨床徴候、斃死率、体重、および巨視的病変であった。足蹠腫脹および腱腫脹が、試験全体を通じて評価され測定された。
【0125】
結果と考察
レオウイルスELISA(IDEXX)による孵化日の血清学的検査は、図(Figured)17に示される。具体的には、平均値は511であり、GMTは385であり、SDは343であり、%CVは66.8%である。
【0126】
図18に示されるように、2型負荷は体重を低下させる。具体的には、2型攻撃投与された鳥で8%の体重抑制が観察された。
【0127】
図19は、体重の百分率としての足蹠腫脹の14日目の測定値を示す一方で、
図20は、2型攻撃投与された鳥について、体重の百分率としての腱腫脹の測定値を示す。
【0128】
2型攻撃投与された鳥の剖検および組織学的知見は、次のとおりである:2/10の鳥に破裂した腱;5/10の鳥にリンパ球性腱滑膜炎(腱鞘);2/10の鳥に心膜水腫;および2/10の鳥にリンパ球性心外膜炎および心筋炎がある。肝臓または十二指腸では、顕著な病変は観察されはなかった。
【0129】
したがって、2型負荷は、わずかな体重抑制をもたらした。2型攻撃投与された鳥では、心膜水腫、腫脹腱、および少数の破裂した腱が観察された。そしてレオウイルスに一致する組織学的病変が、心臓および腱で観察された。
【0130】
結論として、1型および基2型変異株の双方が、市販のブロイラーにおけるウイルス関節炎の臨床症例から単離された。1型および2型変異株の双方が、巨視的に観察される心膜水腫および腱腫脹をはじめとする、腱滑膜炎を再現し、レオウイルスに一致する組織学的変化が心臓および腱で観察された。1型変異株の方が、より蔓延している。現行の市販ワクチンは、ブロイラーにおいて適切な防御を提供しないようである。したがって、自家ワクチンが、防除のための現行の唯一の選択肢のようである。
【0131】
実施例4
トリレオウイルスの溶菌斑アッセイ
ニワトリ胚肝細胞を35mmプレートに播種する:
− アッセイ前日に、ニワトリ胚肝細胞(CELiC)を35枚のペトリ皿(2ml/ペトリ皿)に添加する。
− 35mmプレートを37℃のインキュベーターに入れる(一晩、少なくとも12時間より長く)。
【0132】
溶菌斑アッセイ手順:
− コンフルエントなCELiCから、培地(M199/F10+10%FBS)を除去する。
− 200μlのウイルス(10
2TCID
50)をプレートに添加する。
− 30分間後、希釈ウイルスと共に2mlのM199/F10+2%CSをプレートに添加し、プレート穏やかに旋回させる。
− プレートを37℃で3〜4時間培養する。
− その間に、プレートあたり2mlで次を調製する:細胞等級H
2O中の1ml(2×濃度のM199/F10+5%CS)+および1mlの3%SeaPlaqueアガロース。
− 3〜4時間後、プレートをインキュベーターから取り出して、上清(1,200μl)を除去する。
− この時点で、2ml/ウェルで調製物を重ねて、37℃で2〜3日目培養する。
【0133】
2〜3日後に染色する(通常、接種の2日後に染色を試みる、3日を超えると細胞は死滅し始めて溶菌斑が良好でなくなることもある):
− 細胞培養等級水で希釈した10%の濾過ニュートラルレッドを調製する。
− 1ml/プレートで添加する。
− インキュベーター内で少なくとも2時間(2〜4時間)インキュベートする。
− 2〜3時間後、溶菌斑が明確に出現する。
【0134】
結果:生細胞は、赤色に染色される。溶菌斑は、未染色のままである。
【0135】
実施例5
I型および2型シグマCタンパク質配列
実施例1でより詳細に記載される手順に従って、122の1型および基2型変異トリレオウイルス株のシグマCタンパク質をコードするヌクレオチド配列、およびコードされるシグマCアミノ酸配列が決定された。
図21は、122の単離株について、GenBank受入番号、配列ID、単離株名称、ウイルスがそれから単離された組織型、採取日、単離された国および州、および単離源を示す。ニワトリ胚肝細胞は、全ての122単離株で、研究室宿主の役割を果たす。
【0136】
実施例5
I型および2型トリレオウイルス変異株の弱毒化
94826および94594単離株(どちらも1型単離株)および96139単離株(2型単離株)をはじめとするが、これに限定されるものではない、
図21に列挙されるI型および2型トリレオウイルス単離株は、卵または例えば、ニワトリ胚肝細胞(CELiC)などの細胞系における継代によって弱毒化される。クローン溶菌斑精製ウイルス調製品が、各継代後に調製されて、続く弱毒化ラウンドのために使用される。単離株の病原性およびワクチン有効性は、例えば、約25、約50、約75、約100、および約125継代後など、約25継代毎に試験される。弱毒型株について、Cシグマタンパク質のアミノ酸配列が得られてもよい。
【0137】
本明細書で引用される、全ての特許、特許出願、および文献、および電子的に利用できる情報(例えば、GenBankおよびRefSeq中のヌクレオチド配列登録、および例えば、SwissProt、PIR、PRF、PDBなどのアミノ酸配列登録、およびGenBankおよびRefSeq中の注釈付きコード領域からの翻訳物をはじめとする)の完全な開示は、参照により援用される。本出願の開示と、参照により本明細書に援用される任意の文献の開示との間に何らかの矛盾が存在する場合、本出願の開示が効力を持つものとする。前述詳細な説明および実施例は、理解を明確にするためにのみ示された。不要な制限が、それから解釈されるべきではない。本発明は、示されて説明される正確な詳細に限定されず、当業者には明白である多様性は、特許請求の範囲によって定義される本発明に含まれる。
【0138】
配列なしの一覧
配列番号1
1型2012VA変異株の圃場分離株94594からのシグマCタンパク質(塩基対1〜931)をコードするS1ヌクレオチド配列
配列番号2
1型2012VA変異株の圃場分離株94594からのシグマC(アミノ酸1〜310)のS1アミノ酸配列
配列番号3
1型2012VA変異株の圃場分離株94826からのシグマCタンパク質(塩基対1〜931)をコードするS1ヌクレオチド配列
配列番号4
1型2012VA変異株の圃場分離株94826からのシグマC(アミノ酸1〜310)のS1アミノ酸配列
配列番号5
1型2012VA変異株の圃場分離株96139からのシグマCタンパク質(塩基対1〜931)をコードするS2ヌクレオチド配列
配列番号6
2型2012VA変異株の圃場分離株96139からのシグマCタンパク質(アミノ酸1〜310)のS1アミノ酸配列
配列番号7P1PCRプライマー
配列番号8P4PCRプライマー