特許第6682451号(P6682451)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6682451
(24)【登録日】2020年3月27日
(45)【発行日】2020年4月15日
(54)【発明の名称】改変型宿主細胞およびその使用
(51)【国際特許分類】
   C12N 1/21 20060101AFI20200406BHJP
   A61K 39/104 20060101ALI20200406BHJP
   A61K 47/42 20170101ALI20200406BHJP
   A61P 31/04 20060101ALI20200406BHJP
   A61P 37/04 20060101ALI20200406BHJP
   C12N 15/52 20060101ALN20200406BHJP
   C12N 15/54 20060101ALN20200406BHJP
   C12N 9/00 20060101ALN20200406BHJP
   C12N 9/10 20060101ALN20200406BHJP
【FI】
   C12N1/21
   A61K39/104
   A61K47/42
   A61P31/04
   A61P37/04
   !C12N15/52 Z
   !C12N15/54
   !C12N9/00
   !C12N9/10ZNA
【請求項の数】10
【全頁数】46
(21)【出願番号】特願2016-562754(P2016-562754)
(86)(22)【出願日】2014年10月13日
(65)【公表番号】特表2017-513480(P2017-513480A)
(43)【公表日】2017年6月1日
(86)【国際出願番号】EP2014071898
(87)【国際公開番号】WO2015158403
(87)【国際公開日】20151022
【審査請求日】2017年9月7日
(31)【優先権主張番号】61/980,988
(32)【優先日】2014年4月17日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】305060279
【氏名又は名称】グラクソスミスクライン バイオロジカルズ ソシエテ アノニム
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】特許業務法人平木国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100091096
【弁理士】
【氏名又は名称】平木 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100118773
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 節
(74)【代理人】
【識別番号】100122389
【弁理士】
【氏名又は名称】新井 栄一
(74)【代理人】
【識別番号】100111741
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 夏夫
(74)【代理人】
【識別番号】100169971
【弁理士】
【氏名又は名称】菊田 尚子
(74)【代理人】
【識別番号】100194618
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴田 聡子
(72)【発明者】
【氏名】フェロン,クリスティアーヌ マリー−ポール シモーヌ ジャンヌ
(72)【発明者】
【氏名】ケムラー,シュテファン ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】コワリク,ミヒャエル
(72)【発明者】
【氏名】ケバッテ,ジュリアン エル.
【審査官】 宮岡 真衣
(56)【参考文献】
【文献】 特表2011−514155(JP,A)
【文献】 特表2008−539743(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/062615(WO,A1)
【文献】 国際公開第2013/034664(WO,A1)
【文献】 国際公開第2014/037585(WO,A1)
【文献】 FELDMAN M.F. et al.,Proc Natl Acad Sci USA,Vol.102, No.8(2005),p.3016-3022
【文献】 KNIREL Y. et al.,Journal of Endotoxin Research,VOL:12, NR:6(2006),p.324-336
【文献】 RAYMOND C.K. et al.,J. Bacteriol.,VOL:184, NR:13(2002),p.3614-3621
【文献】 CRYZ S. J. et al.,Antibiot. Chemother.,1987年,Vol.39,pp.249-255
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 1/21
A61K 39/104
A61K 47/42
A61P 31/04
A61P 37/04
C12N 9/00−9/99
C12N 15/52−15/61
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
PubMed
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/WPIDS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の核酸:
(i) O6抗原骨格構造の合成が可能な酵素的機構をコードする緑膿菌血清型O6のrfbクラスターを含む核酸;
(ii) ホルミルトランスフェラーゼ酵素をコードする核酸であって、配列番号2に対して少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%の同一性を有するタンパク質をコードするか、あるいは配列番号2をコードする、上記核酸;
(iii) オリゴサッカリルトランスフェラーゼをコードする核酸;および
(iv) N-グリコシル化コンセンサス配列D/E-X-N-X-S/T(Xはプロリン以外のいずれかのアミノ酸である)を含むキャリアタンパク質をコードする核酸
を含む宿主細胞。
【請求項2】
以下の核酸:
(i) O6抗原骨格構造の合成が可能な酵素的機構をコードする緑膿菌血清型O6のrfbクラスターを含む核酸;
(ii) wzyポリメラーゼをコードする核酸であって、配列番号3に対して少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%の同一性を有するタンパク質をコードするか、あるいは配列番号3をコードする、上記核酸;
(iii) オリゴサッカリルトランスフェラーゼをコードする核酸;および
(iv) N-グリコシル化コンセンサス配列D/E-X-N-X-S/T(Xはプロリン以外のいずれかのアミノ酸である)を含むキャリアタンパク質をコードする核酸
を含む宿主細胞。
【請求項3】
前記宿主細胞が大腸菌である、請求項1〜2のいずれか1項に記載の宿主細胞。
【請求項4】
タンパク質の産生に好適な条件下で請求項1〜3のいずれか1項に記載の宿主細胞を培養するステップを含む、キャリアタンパク質に連結された緑膿菌抗原を含むバイオコンジュゲートの製造方法。
【請求項5】
バイオコンジュゲートがキャリアタンパク質に連結された緑膿菌O6抗原を含む、請求項4に記載の方法により製造されるバイオコンジュゲートであって、該O6抗原がホルミル化される、上記バイオコンジュゲート
【請求項6】
少なくとも1つのN-グリコシル化コンセンサス配列D/E-X-N-X-S/T(Xはプロリン以外のいずれかのアミノ酸である)のN残基を介してキャリアタンパク質にコンジュゲート化されている緑膿菌血清型O6抗原を含む、バイオコンジュゲートであって、該O6抗原がホルミル化される、上記バイオコンジュゲート
【請求項7】
O6抗原が、少なくとも1個のGalNFmA残基に結合したホルミル基を含む、請求項6に記載のバイオコンジュゲート。
【請求項8】
O6抗原反復単位のうちの少なくとも10、20、30、40、50、60、70、80、90、95または100%がホルミル化される、請求項6または7に記載のバイオコンジュゲート。
【請求項9】
ヒト対象での緑膿菌感染により引き起こされる疾患の治療または予防での使用のための、請求項6〜8のいずれか1項に記載のバイオコンジュゲート。
【請求項10】
ヒト対象での緑膿菌により引き起こされる疾患の治療または予防のための医薬の製造での、請求項6〜8のいずれか1項に記載のバイオコンジュゲートの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
1.導入
シュードモナス属の感染に対して対象にワクチン接種するために用いることができるバイオコンジュゲートの製造で有用な改変型宿主細胞が、本明細書中に記載される。本明細書中に記載される改変型宿主細胞のゲノムは、タンパク質のグリコシル化に関与するタンパク質をコードする遺伝子ならびにシュードモナス属特異的抗原の産生に特異的な遺伝子を含む。
【背景技術】
【0002】
2.背景
シュードモナス属の菌株(例えば、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa))による感染によって引き起こされる疾患は、世界的に重大な脅威を代表する。そのような感染に対するワクチンの開発が進行中であるが、安全かつ大量に製造できる、シュードモナス属感染に対する効果的なワクチンについての大きなニーズが残っている。
【発明の概要】
【0003】
3.概要
一態様では、シュードモナス属抗原を含むバイオコンジュゲートを生成することが可能な酵素をコードする核酸を含む改変型原核生物宿主細胞が、本明細書中に提供される。そのような宿主細胞は、シュードモナス属抗原の産生に特異的な核酸を天然に発現することができるか、または宿主細胞がそのような核酸を発現するようにすることができ、すなわち、特定の実施形態では、該核酸は宿主細胞に対して異種である。特定の実施形態では、シュードモナス属抗原の産生に特異的な該核酸のうちの1種以上が、宿主細胞に対して異種であり、かつ宿主細胞のゲノムにインテグレートされている。特定の実施形態では、本明細書中に提供される宿主細胞は、タンパク質のN-グリコシル化にて活性な追加の酵素をコードする核酸を含み、例えば、本明細書中に提供される宿主細胞は、オリゴサッカリルトランスフェラーゼをコードする核酸および/または他のグリコシルトランスフェラーゼをコードする1種以上の核酸をさらに含む。特定の実施形態では、本明細書中に提供される宿主細胞は、キャリアタンパク質、例えば、それに対してオリゴ糖および/または多糖が結合してバイオコンジュゲートを形成できるタンパク質をコードする核酸を含む。具体的な実施形態では、宿主細胞は大腸菌である。
【0004】
具体的な実施形態では、シュードモナス属抗原を含むバイオコンジュゲートを生成することが可能な酵素をコードする核酸を含む改変型原核生物宿主細胞が本明細書中に提供され、このとき、該宿主細胞は、シュードモナス属由来のrfbクラスターまたはシュードモナス属由来のrfbクラスターから誘導されるグリコシルトランスフェラーゼを含む。具体的な実施形態では、前記のシュードモナス属由来のrfbクラスターまたはシュードモナス属由来のrfbクラスターから誘導されるグリコシルトランスフェラーゼが、該宿主細胞のゲノムにインテグレートされている。別の具体的な実施形態では、前記のシュードモナス属由来のrfbクラスターまたはシュードモナス属由来のrfbクラスターから誘導されるグリコシルトランスフェラーゼは、緑膿菌由来のrfbクラスターまたはグリコシルトランスフェラーゼである。Raymond et al., J Bacteriol., 2002 184(13):3614-22を参照されたい。具体的な実施形態では、緑膿菌由来の該rfbクラスターは、血清型O1〜O20のいずれか1種由来のrfbクラスターである。別の具体的な実施形態では、緑膿菌由来の該rfbクラスターは、Knirel et al., 2006, Journal of Endotoxin Research 12(6):324-336(その開示は、その全体が参照により本明細書中に組み入れられる)に記載される血清型のうちのいずれか1種由来のrfbクラスターである。具体的な実施形態では、緑膿菌由来の該rfbクラスターは、血清型O2、O5、O6、O11、O15、O16由来のrfbクラスターである。具体的な実施形態では、緑膿菌由来の該rfbクラスターは、血清型O6由来のrfbクラスターである。具体的な実施形態では、緑膿菌由来の該rfbクラスターは、血清型O11由来のrfbクラスターである。別の具体的な実施形態では、該宿主細胞は、オリゴサッカリルトランスフェラーゼ(例えば、カンピロバクター・ジェジュニ(Campylobacter jejuni)由来のpglB)をコードする核酸を含む。別の具体的な実施形態では、オリゴサッカリルトランスフェラーゼ(例えば、カンピロバクター・ジェジュニ由来のpglB)をコードする該核酸は、宿主細胞のゲノムにインテグレートされている。具体的な実施形態では、該宿主細胞は、キャリアタンパク質をコードする核酸を含む。別の具体的な実施形態では、宿主細胞は大腸菌である。
【0005】
特定の実施形態では、シュードモナス属抗原を含むバイオコンジュゲートを生成することが可能な酵素をコードする核酸を含む該改変型原核生物宿主細胞は、分岐させる、修飾する、アミド化する、鎖長を調節する、アセチル化する、ホルミル化する、多量体化する酵素をはじめとする、1種以上の補助的酵素(accessory enzyme)をさらに含む。具体的な実施形態では、該1種以上の補助的酵素は、宿主細胞に対して異種である。具体的な実施形態では、該1種以上の補助的酵素は、rfbクラスターに加えて、改変型原核生物宿主細胞のゲノムに挿入される。具体的な実施形態では、該1種以上の補助的酵素は、シュードモナス属、例えば、緑膿菌に由来する。
【0006】
具体的な実施形態では、本明細書中に提供される改変型原核生物宿主細胞は、ホルミルトランスフェラーゼをコードする核酸を含む。別の具体的な実施形態では、該ホルミルトランスフェラーゼは、配列番号2に表わされるホルミルトランスフェラーゼ、またはそのホモログである。別の具体的な実施形態では、該ホルミルトランスフェラーゼは、シュードモナス属rfbクラスターの一部分として該宿主細胞に組み込まれ(例えば、宿主細胞のゲノムまたは宿主細胞により発現されるプラスミドに挿入され)、このとき、該シュードモナス属rfbクラスターは、ホルミルトランスフェラーゼを含むように改変されている。別の具体的な実施形態では、該シュードモナス属rfbクラスターは、緑膿菌血清型O6 rfbクラスターである。
【0007】
別の具体的な実施形態では、本明細書中に提供される改変型原核生物宿主細胞は、wzyポリメラーゼをコードする核酸を含む。別の具体的な実施形態では、該wzyポリメラーゼは、配列番号3に表わされるwzyポリメラーゼ、またはそのホモログである。別の具体的な実施形態では、該wzyポリメラーゼは、シュードモナス属rfbクラスターの一部分として該宿主細胞に組み込まれ(例えば、宿主細胞のゲノムまたは宿主細胞により発現されるプラスミドに挿入され)、このとき、該シュードモナス属rfbクラスターは、wzyポリメラーゼを含むように改変されている。別の具体的な実施形態では、該シュードモナス属rfbクラスターは、緑膿菌血清型O6 rfbクラスターである。
【0008】
別の具体的な実施形態では、本明細書中に提供される改変型原核生物宿主細胞は、(i) ホルミルトランスフェラーゼをコードする核酸、および(ii) wzyポリメラーゼをコードする核酸を含む。具体的な実施形態では、該ホルミルトランスフェラーゼは、配列番号2に表わされるホルミルトランスフェラーゼ、またはそのホモログである。別の具体的な実施形態では、該wzyポリメラーゼは、配列番号3に表わされるwzyポリメラーゼ、またはそのホモログである。具体的な実施形態では、該ホルミルトランスフェラーゼおよび該wzyポリメラーゼは、シュードモナス属rfbクラスターの一部分として該宿主細胞に組み込まれ(例えば、宿主細胞のゲノムまたは宿主細胞により発現されるプラスミドに挿入され)、このとき、該シュードモナス属rfbクラスターは、ホルミルトランスフェラーゼおよびwzyポリメラーゼを含むように改変されている。別の具体的な実施形態では、該シュードモナス属rfbクラスターは、緑膿菌血清型O6 rfbクラスターである。
【0009】
別の態様では、改変型シュードモナス属rfbクラスター、例えば、緑膿菌血清型O6 rfbクラスターをコードする単離された核酸配列が本明細書中に提供され、このとき、該改変型シュードモナス属rfbクラスターは、(i) ホルミルトランスフェラーゼをコードする遺伝子(例えば、配列番号2をコードする遺伝子またはそのホモログ)、(ii) wzyポリメラーゼをコードする遺伝子(例えば、配列番号3をコードする遺伝子またはそのホモログ);または(iii) ホルミルトランスフェラーゼをコードする遺伝子(例えば、配列番号2をコードする遺伝子またはそのホモログ)およびwzyポリメラーゼをコードする遺伝子(例えば、配列番号3をコードする遺伝子またはそのホモログ)を含む。
【0010】
改変型シュードモナス属rfbクラスター、例えば、改変型緑膿菌血清型O6 rfbクラスターを作製するために用いられるホルミルトランスフェラーゼをコードする核酸およびwzyポリメラーゼをコードする核酸は、複数の位置で、かつ複数の方向でrfbクラスターに挿入することができる。
【0011】
具体的な実施形態では、該ホルミルトランスフェラーゼをコードする遺伝子および/または該wzyポリメラーゼをコードする遺伝子は、シュードモナス属rfbクラスター、例えば、緑膿菌血清型O6 rfbクラスターの遺伝子の下流に挿入される。具体的な実施形態では、該ホルミルトランスフェラーゼをコードする遺伝子および/または該wzyポリメラーゼをコードする遺伝子は、緑膿菌血清型O6 rfbクラスターのwbpM遺伝子の下流に挿入される。
【0012】
具体的な実施形態では、該ホルミルトランスフェラーゼをコードする遺伝子および/または該wzyポリメラーゼをコードする遺伝子は、シュードモナス属rfbクラスター、例えば、緑膿菌血清型O6 rfbクラスターの遺伝子の上流に挿入される。具体的な実施形態では、該ホルミルトランスフェラーゼをコードする遺伝子および/または該wzyポリメラーゼをコードする遺伝子は、緑膿菌血清型O6 rfbクラスターのwzz遺伝子の下流に挿入される。
【0013】
具体的な実施形態では、該ホルミルトランスフェラーゼをコードする遺伝子および/または該wzyポリメラーゼをコードする遺伝子は、シュードモナス属rfbクラスター、例えば、緑膿菌血清型O6 rfbクラスターの遺伝子に対して時計回りの方向で挿入される。
【0014】
具体的な実施形態では、該ホルミルトランスフェラーゼをコードする遺伝子および/または該wzyポリメラーゼをコードする遺伝子は、シュードモナス属rfbクラスター、例えば、緑膿菌血清型O6 rfbクラスターの遺伝子に対して反時計回りの方向で挿入される。
【0015】
別の態様では、キャリアタンパク質に連結されたシュードモナス属抗原を含むバイオコンジュゲートを製造する方法が本明細書中に提供され、該方法は、タンパク質の産生に好適な条件下で本明細書中に記載される宿主細胞を培養するステップ、およびN-グリコシル化されたキャリアタンパク質を精製するステップを含む。宿主細胞(例えば、大腸菌)を用いてタンパク質を産生させ、かつ宿主細胞により産生されたタンパク質を単離する方法は、当技術分野で周知である。
【0016】
別の態様では、本明細書中に提供される宿主細胞により製造されるバイオコンジュゲートが、本明細書中に提供される。
【0017】
具体的な実施形態では、シュードモナス属抗原に連結されたキャリアタンパク質を含むバイオコンジュゲートが、本明細書中に提供される。具体的な実施形態では、該シュードモナス属抗原は、緑膿菌のO抗原である。
【0018】
別の態様では、本明細書中に提供されるバイオコンジュゲートのうちの1種以上を含む組成物、例えば、医薬組成物が、本明細書中に提供される。
【0019】
具体的な実施形態では、シュードモナス属抗原に連結されたキャリアタンパク質を含むバイオコンジュゲートを含む組成物、例えば、医薬組成物が、本明細書中に提供される。具体的な実施形態では、該シュードモナス属抗原は、緑膿菌のO抗原である。
【0020】
別の態様では、シュードモナス属(例えば、緑膿菌)による対象(例えば、ヒト対象)の感染を予防する方法が本明細書中に提供され、該方法は、本明細書中に記載される有効量の組成物を対象に投与することを含む。
【0021】
別の態様では、シュードモナス属(例えば、緑膿菌)に感染している対象(例えば、ヒト対象)を治療する方法が本明細書中に提供され、該方法は、本明細書中に記載される有効量の組成物を対象に投与することを含む。
【0022】
別の態様では、シュードモナス属(例えば、緑膿菌)に対する対象(例えば、ヒト対象)での免疫応答を誘導する方法が本明細書中に提供され、該方法は、本明細書中に記載される有効量の組成物を対象に投与することを含む。
【0023】
3.1 用語
OPS:O多糖;グラム陰性細菌のO抗原。OPSはまた、本明細書中でO抗原とも称される。
LPS:リポ多糖。
rfbクラスター:O抗原骨格構造の合成が可能な酵素的機構をコードする遺伝子クラスター。
waaL:ペリプラズムに位置する活性部位を有する膜結合型酵素をコードするO抗原リガーゼ遺伝子。コードされる酵素は、ウンデカプレニルリン酸(undecaprenylphosphate;UPP)結合型O抗原をリピドAコアへと転移させ、リポ多糖を形成させる。
RU:反復単位。本明細書中で用いる場合、RUは、生物学的反復単位(BRU)と一致する。BRUとは、in vivoで合成される場合のO抗原のRUを表わす。
Und-PP:ウンデカプレニルピロリン酸(undecaprenyl pyrophosphate)。
LLO:脂質連結型オリゴ糖。
【0024】
本明細書中で用いる場合、「バイオコンジュゲート」との用語は、宿主細胞バックグラウンド中で調製されるタンパク質(例えば、キャリアタンパク質)と抗原(例えば、シュードモナス属抗原)との間のコンジュゲートを意味し、このとき、宿主細胞の機構が抗原をタンパク質に結合(例えば、N結合)させる。
【0025】
「約」との用語は、数字と共に用いられる場合、参照された数字の±1%、±5%または±10%以内のいずれかの数を意味する。
【0026】
本明細書中で用いる場合、対象への療法(例えば、本明細書中に記載される組成物)の投与との関連での「有効量」との用語は、予防的効果および/または治療的効果を有する療法の量を意味する。特定の実施形態では、「有効量」とは、以下の効果のうちの1つ、2つ、3つ、4つ、またはそれ以上を達成するのに十分な療法の量を意味する:(i) シュードモナス属感染またはそれに伴う症状の重症度を低減または改善する;(ii) シュードモナス属感染またはそれに伴う症状の持続期間を減少させる;(iii) シュードモナス属感染またはそれに伴う症状の進行を防止する;(iv) シュードモナス属感染またはそれに伴う症状の退行を生じさせる;(v) シュードモナス属感染またはそれに伴う症状の発症または開始を防止する;(vi) シュードモナス属感染またはそれに伴う症状の再発を防止する;(vii) シュードモナス属感染に伴う臓器不全を減少させる;(viii) シュードモナス属感染を有する対象の入院を減少させる;(ix) シュードモナス属感染を有する対象の入院期間を減少させる;(x) シュードモナス属感染を有する対象の生存率を増加させる;(xi) 対象でのシュードモナス属感染を排除する;(xii) 対象でのシュードモナス属増殖を阻害するかまたは減少させる;かつ/または(xiii) 別の療法の予防的効果もしくは治療的効果を強化または改善する。
【0027】
本明細書中で用いる場合、対象への2種以上の療法の投与との関連で、「組み合わせて」との用語は、2種以上の療法の使用を意味する。「組み合わせて」との用語の使用は、療法が対象に投与される順序を制限するものではない。例えば、第1の療法(例えば、本明細書中に記載される組成物)を、対象への第2の療法の投与の前に(例えば、5分間、15分間、30分間、45分間、1時間、2時間、4時間、6時間、12時間、16時間、24時間、48時間、72時間、96時間、1週間、2週間、3週間、4週間、5週間、6週間、8週間、または12週間前)、それと同時に、またはその後に(例えば、5分間、15分間、30分間、45分間、1時間、2時間、4時間、6時間、12時間、16時間、24時間、48時間、72時間、96時間、1週間、2週間、3週間、4週間、5週間、6週間、8週間、または12週間後)に投与することができる。
【0028】
本明細書中に記載される場合、「対象」との用語は、動物(例えば、鳥類、爬虫類、および哺乳動物)を意味する。別の実施形態では、対象は、非霊長類(例えば、ラクダ、ロバ、シマウマ、ウシ、ブタ、ウマ、ヤギ、ヒツジ、ネコ、イヌ、ラット、およびマウス)および霊長類(例えば、サル、チンパンジー、およびヒト)をはじめとする哺乳動物である。特定の実施形態では、対象は非ヒト動物である。一部の実施形態では、対象は家畜またはペット(例えば、イヌ、ネコ、ウマ、ヤギ、ヒツジ、ブタ、ロバ、またはニワトリ)である。具体的な実施形態では、対象はヒトである。「対象」および「患者」との用語は、相互に交換可能に本明細書中で用いることができる。
4.図面の簡単な説明
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】バイオコンジュゲートを生成する改変型宿主細胞由来のペリプラズム抽出物のウエスタンブロットを示す図である。実施例に記載される通りの菌株を示す。「int」は、インテグレートされた構成要素を意味する。「*」は、トランスポゾン媒介アプローチを用いたインテグレーションを意味する。
図2】緑膿菌のO6 O抗原の反復単位構造を示す図である。*は、亜血清型の正体に応じてそれらの化学組成中で変化し得る位置を示す。変動性は、C6にあるGalNAcA残基の酸官能基をアミドへと変換して、GalNAcANを生じさせる(またはGalNFmAからGalNFmANへ;一部の亜血清型では、アセチル基がGalNAcAN*残基のC3を置換する)アミダーゼの活性により導入される。GalNX残基のうちの1つの反復単位(wzy)の多量体化、アセチル化、ホルミル化、およびアミド化のための遺伝子は、不明である。L-Rha、L-ラムノース;D-GalNAcAN、6-アミド-2-N-アセチル-D-ガラクトサミヌロン酸(6-amido-2-N-acetyl-D-galactosaminuronic acid);D-GalNFmAN、2-N-ホルミル-D-ガラクトサミヌロン酸(2-N-formyl-D-galactosaminuronic);D-QuiNAc、N-アセチル-D-キノサミン(N-acetyl-D-quinosamine)。
図3】緑膿菌O6ホルミルトランスフェラーゼの機能性試験を示す図である。3A:ウエスタンブロッティングによる、リピドAコアに結合したホルミル化型の単一のO6反復単位の検出。大腸菌W3110Δwecを、(不完全)rfbO6クラスターをコードするコスミドおよびO6ホルミルトランスフェラーゼ(fmtO6;配列番号2)をコードする発現プラスミドを用いて形質転換した。LB培地中にて37℃での増殖中の一晩の誘導後に、細胞抽出物を回収し、プロテイナーゼKを用いて消化し、SDS-PAGEにより分離し、ニトロセルロースメンブレン上に電気ブロットした。O6特異的抗血清を用いた免疫検出は、fmtO6の存在下ではシグナルを生じたが、空ベクター対照では生じなかった。この結果は、ホルミル化が、緑膿菌細胞上の重要な抗原であり、この抗血清を用いた検出のための必須条件であることを強く示す。3B:ウンデカプレニルピロリン酸から放出された単一のO6反復単位上のホルミル化の確認。大腸菌W3110ΔwecΔwaaLを、上記と同じプラスミドを用いて形質転換し、O6 O抗原の単一の反復単位(wzyポリメラーゼは、これらの菌株では欠損している)を産生させるために振盪フラスコにて増殖させ、糖脂質を分析した。簡潔には、反復単位を、乾燥細胞から糖脂質として抽出し、C18カートリッジに対する親和性により精製し、加水分解し(O6 O抗原反復単位からウンデカプレニルピロリン酸を除去するため)、還元的アミノ化を用いて2-アミノベンズアミドによって標識し、順相HPLCにより分析した。fmtO6の共発現は、61分の溶出時間での追加のシグナルを生じさせ、これは標識されたホルミル化型O6反復単位に対応するオリゴ糖を含有したが、一方で、遺伝子の非存在下では、主なシグナルは58分に見出され、標識されたN-アセチル化型O6反復単位を含んだ。
図4】緑膿菌O6候補wzyポリメラーゼの機能性試験を示す図である。(不完全)rfbクラスター(fmtO6遺伝子およびwzy遺伝子を欠損している)をコードするコスミドを含有する大腸菌W3110Δwec細胞を、fmtO6およびwzy候補遺伝子PAK_01823(配列番号3)をコードするプラスミドまたは対応する空ベクターを用いて形質転換した。細胞抽出物を、プロテイナーゼKを用いて処理し、SDS-PAGEおよびニトロセルロースメンブレンへの電気トランスファー後に、免疫検出によりLPSを分析した。
図5】人工的緑膿菌O6 O抗原発現クラスターのクローニング。まず、緑膿菌O6株stGVXN4017(緑膿菌O6「PAK」株)のrfbクラスターを、標準的技術を用いるPCRクローニングによりコスミドベクターへとクローニングした。バイオインフォマティクス支援相同性検索により、ホルミルトランスフェラーゼ(FT)およびO抗原ポリメラーゼ(wzy)を特定し、続いて、段階的にrfbクラスターの下流に挿入した。得られた遺伝子クラスターは、大腸菌W3110誘導体での完全な緑膿菌O6 O抗原反復単位生合成(rfbO6+、多量体なし)および多糖(rfbO6++、wzyが含まれる)生合成を行なうことができる。
図6A】バイオコンジュゲートを生成する改変型宿主細胞由来のペリプラズム抽出物のウエスタンブロットを示す図である。実施例に記載される通りの菌株を示す。6A:インテグレートされたpglBおよび緑膿菌O6由来のインテグレートされたrfbクラスターを含むように改変された「St7343」大腸菌株に関する結果。
図6B】バイオコンジュゲートを生成する改変型宿主細胞由来のペリプラズム抽出物のウエスタンブロットを示す図である。実施例に記載される通りの菌株を示す。6B:プラスミド担持pglBおよび緑膿菌O6由来のインテグレートされたrfbクラスターを含むように改変された「St7209」大腸菌株に関する結果。
図6C】バイオコンジュゲートを生成する改変型宿主細胞由来のペリプラズム抽出物のウエスタンブロットを示す図である。実施例に記載される通りの菌株を示す。6C:プラスミド担持pglBおよび緑膿菌O6由来のプラスミド担持rfbクラスターを含むように改変された「St2182」大腸菌株に関する結果。
図7】精製されたEPA-O6糖コンジュゲートを示す図である。EPA-O6は、金属キレートアフィニティークロマトグラフィー、アニオン交換クロマトグラフィーおよびサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)を用いて、改変型宿主細胞のペリプラズム抽出物から精製した。最終的なSEC溶出物を、SDS-PAGEとそれに続くクマシーブルー染色または示された抗体を用いるウエスタンブロットにより特性決定した。
図8】抗生物質選択圧の存在下および非存在下での1プラスミドおよび3プラスミド系のプラスミド保持率(PR)を示す図である。PRは、それぞれのプラスミドを含む細胞の%で表わされる。図8Aおよび8Bは、カナマイシンの存在下(A)および非存在下(B)でのインテグレートされたrfbクラスターおよびpglBを含む改変型宿主細胞でのEPAプラスミド(カナマイシン、黒色)のPRを示す。図8Cおよび8Dは、3種類すべての抗生物質の存在下(C)および非存在下(D)での改変型宿主細胞でのEPAプラスミド(カナマイシン、黒色)、pglBプラスミド(スペクチノマイシン、白色)およびrfbクラスタープラスミド(テトラサイクリン、点模様)のPRを示す。3種類すべてのプラスミドが保持されている細胞の割合(%)を、灰色で示す。Inoc=接種物;U=未誘導細胞;I4=誘導6時間後の細胞;I6=一晩誘導後の細胞。
図9】ワクチンの生物学的活性が抗O6抗血清を誘導したことを示す図である。9A:3回目の注入後の様々なワクチン接種群由来のプールされたマウス血清のELISA中間点力価。non ads=アジュバント化なし;O/W:水中油型エマルジョンアジュバントである、用いたアジュバントを示す。O/W単独は、糖コンジュゲートを含有しなかった対照群である。9B:オプソニン食作用殺菌中間点力価(対照と比較してcfuの50%の低下を引き起こす)が示される。プールpIIおよびプールpIIIは、2回目および3回目の注入後に回収されたプールされた血清である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
5.1 宿主細胞
キャリアタンパク質に連結されたシュードモナス属抗原を含むバイオコンジュゲートを産生することが可能な宿主細胞、例えば、原核生物宿主細胞が、本明細書中に提供される。本明細書中に記載される宿主細胞は、1種以上のDNA配列が挿入されたゲノムを含み、該DNA配列は、タンパク質をコードするか、またはタンパク質のグリコシル化(例えば、タンパク質のN-グリコシル化)に関与するオペロンを含む。例えば、特定の実施形態では、本明細書中に記載される宿主細胞は、以下のうちの1種以上が挿入されたゲノムを含む:オリゴサッカリルトランスフェラーゼをコードするDNA、グリコシルトランスフェラーゼをコードするDNA、キャリアタンパク質をコードするDNA、rfb遺伝子クラスターを含むDNA、莢膜多糖遺伝子クラスターを含むDNA、フリッパーゼをコードするDNA、エピメラーゼをコードするDNA、莢膜多糖遺伝子クラスターに関連するタンパク質をコードするDNA、莢膜多糖アセンブリに関与するタンパク質をコードするDNA、O抗原アセンブリに関与するタンパク質をコードするDNA、リポ多糖アセンブリに関与するタンパク質をコードするDNA、および/またはリポオリゴ糖アセンブリに関与するタンパク質をコードするDNA。具体的な実施形態では、宿主細胞は大腸菌である。
【0031】
シュードモナス属バイオコンジュゲートを生成する宿主細胞
別の態様では、シュードモナス属抗原を含むバイオコンジュゲートを生成することが可能な酵素をコードする核酸を含む、改変型原核生物宿主細胞が、本明細書中に提供される。そのような宿主細胞は、シュードモナス属抗原の産生に特異的な核酸を天然に発現することができるか、または宿主細胞がそのような核酸を発現するようにすることができ、すなわち、特定の実施形態では、該核酸は、宿主細胞に対して異種である。特定の実施形態では、シュードモナス属抗原の産生に特異的な該核酸のうちの1種以上が宿主細胞に対して異種であり、かつ宿主細胞のゲノムにインテグレートされている。特定の実施形態では、本明細書中に提供される宿主細胞は、タンパク質のN-グリコシル化にて活性を有する追加の酵素をコードする核酸を含み、例えば、本明細書中に提供される宿主細胞は、オリゴサッカリルトランスフェラーゼをコードする核酸および/または他のグリコシルトランスフェラーゼをコードする1種以上の核酸をさらに含む。特定の実施形態では、本明細書中に提供される宿主細胞は、キャリアタンパク質、例えば、オリゴ糖および/または多糖が結合してバイオコンジュゲートを形成できるタンパク質をコードする核酸を含む。具体的な実施形態では、宿主細胞は大腸菌である。
【0032】
具体的な実施形態では、シュードモナス属抗原を含むバイオコンジュゲートを生成することが可能な酵素をコードする核酸を含む改変型原核生物宿主細胞が本明細書中に提供され、該宿主細胞は、シュードモナス属由来のrfbクラスターまたはシュードモナス属由来のrfbクラスターから誘導されるグリコシルトランスフェラーゼを含む。具体的な実施形態では、前記のシュードモナス属由来のrfbクラスターまたはシュードモナス属由来のrfbクラスターから誘導されるグリコシルトランスフェラーゼは、該宿主細胞のゲノムにインテグレートされている。別の具体的な実施形態では、前記のシュードモナス属由来のrfbクラスターまたはシュードモナス属由来のrfbクラスターから誘導されるグリコシルトランスフェラーゼは、緑膿菌由来のrfbクラスターである。別の具体的な実施形態では、該宿主細胞は、オリゴサッカリルトランスフェラーゼ(例えば、カンピロバクター・ジェジュニ由来のpglB)をコードする核酸を含む。別の具体的な実施形態では、オリゴサッカリルトランスフェラーゼ(例えば、カンピロバクター・ジェジュニ由来のpglB)をコードする該核酸は、宿主細胞のゲノムにインテグレートされる。具体的な実施形態では、該宿主細胞は、キャリアタンパク質をコードする核酸を含む。別の具体的な実施形態では、宿主細胞は大腸菌である。
【0033】
別の具体的な実施形態では、以下の構成要素を含む改変型原核生物宿主細胞が、本明細書中に提供される:(i) 該宿主細胞のゲノムにインテグレートされている、シュードモナス属由来のrfbクラスター;(ii) 該宿主細胞のゲノムにインテグレートされている、オリゴサッカリルトランスフェラーゼ(例えば、カンピロバクター・ジェジュニ由来のpglB)をコードする核酸;および(iii) プラスミド担持であるかまたは宿主細胞のゲノムにインテグレートされている、キャリアタンパク質。別の具体的な実施形態では、シュードモナス属由来の該rfbクラスターは、緑膿菌由来のrfbクラスターである。別の具体的な実施形態では、宿主細胞は大腸菌である。
【0034】
別の具体的な実施形態では、以下の構成要素を含む改変型原核生物宿主細胞が、本明細書中に提供される:(i) 該宿主細胞のゲノムにインテグレートされている、シュードモナス属由来のrfbクラスターから誘導されるグリコシルトランスフェラーゼ;(ii) 該宿主細胞のゲノムにインテグレートされている、オリゴサッカリルトランスフェラーゼ(例えば、カンピロバクター・ジェジュニ由来のpglB)をコードする核酸;および(iii) プラスミド担持であるかまたは宿主細胞のゲノムにインテグレートされている、キャリアタンパク質。別の具体的な実施形態では、シュードモナス属由来のrfbクラスターから誘導される該グリコシルトランスフェラーゼは、緑膿菌由来のrfbクラスターである。別の具体的な実施形態では、宿主細胞は大腸菌である。
【0035】
具体的な実施形態では、シュードモナス属由来のrfbクラスターまたはシュードモナス属由来のrfbクラスターから誘導されるグリコシルトランスフェラーゼは、緑膿菌由来のrfbクラスターまたはグリコシルトランスフェラーゼである。別の具体的な実施形態では、シュードモナス属由来の該rfbクラスターまたはシュードモナス属由来のrfbクラスターから誘導されるグリコシルトランスフェラーゼは、緑膿菌血清型O1、O2、O3、O4、O5、O6、O7、O8、O9、O10、O11、O12、O13、O14、O15、O16、O17、O18、O19、またはO20由来のrfbクラスターまたはグリコシルトランスフェラーゼである。別の具体的な実施形態では、緑膿菌由来の該rfbクラスターは、Knirel et al., 2006, Journal of Endotoxin Research 12(6):324-336(その開示は全体が参照により本明細書中に組み入れられる)に記載される血清型のうちのいずれか1種由来のrfbクラスターである。具体的な実施形態では、シュードモナス属由来のrfbクラスターまたはシュードモナス属由来のrfbクラスターから誘導されるグリコシルトランスフェラーゼは、緑膿菌血清型O6 PAK株由来のrfbクラスターまたはグリコシルトランスフェラーゼである。具体的な実施形態では、シュードモナス属由来の該rfbクラスターまたはシュードモナス属由来のrfbクラスターから誘導されるグリコシルトランスフェラーゼは、緑膿菌血清型O11、例えば、緑膿菌PA103株(例えば、Genbank登録番号KF364633.1を参照されたい)由来のrfbクラスターまたはグリコシルトランスフェラーゼである。具体的な実施形態では、機能的に拡張するために、緑膿菌血清型O6 PAK株由来の該rfbクラスターに加えて、ホルミルトランスフェラーゼ酵素(GenBank: EOT23134.1;NCBI protein ID: PAK_01412;配列番号2)およびwzyポリメラーゼ(GenBank: EOT19368.1;NCBI protein ID: PAK_01823;配列番号3)をコードする遺伝子が導入される(例えば、プラスミドまたはインテグレーションを介して)。
【0036】
具体的な実施形態では、本明細書中に提供される改変型原核生物宿主細胞は、ホルミルトランスフェラーゼをコードする核酸を含む。別の具体的な実施形態では、該ホルミルトランスフェラーゼは、配列番号2に示されるホルミルトランスフェラーゼ、またはそのホモログである。別の具体的な実施形態では、該ホルミルトランスフェラーゼは、シュードモナス属rfbクラスターの一部分として該宿主細胞に組み込まれ(例えば、宿主細胞のゲノムまたは宿主細胞により発現されるプラスミドに挿入され)、このとき、該シュードモナス属rfbクラスターは、ホルミルトランスフェラーゼを含むように改変されている。別の具体的な実施形態では、該シュードモナス属rfbクラスターは、緑膿菌血清型O6 rfbクラスターである。
【0037】
別の具体的な実施形態では、本明細書中に提供される改変型原核生物宿主細胞は、wzyポリメラーゼをコードする核酸を含む。別の具体的な実施形態では、該wzyポリメラーゼは、配列番号3に示されるwzyポリメラーゼ、またはそのホモログである。別の具体的な実施形態では、該wzyポリメラーゼは、シュードモナス属rfbクラスターの一部分として該宿主細胞に組み込まれ(例えば、宿主細胞のゲノムまたは宿主細胞により発現されるプラスミドに挿入され)、このとき、該シュードモナス属rfbクラスターは、wzyポリメラーゼを含むように改変されている。別の具体的な実施形態では、該シュードモナス属rfbクラスターは、緑膿菌血清型O6 rfbクラスターである。
【0038】
別の具体的な実施形態では、本明細書中に提供される改変型原核生物宿主細胞は、以下の構成要素を含む:(i) ホルミルトランスフェラーゼをコードする核酸および(ii) wzyポリメラーゼをコードする核酸。具体的な実施形態では、該ホルミルトランスフェラーゼは、配列番号2に示されるホルミルトランスフェラーゼ、またはそのホモログである。別の具体的な実施形態では、該wzyポリメラーゼは、配列番号3に示されるwzyポリメラーゼ、またはそのホモログである。具体的な実施形態では、該ホルミルトランスフェラーゼおよびwzyポリメラーゼは、シュードモナス属rfbクラスターの一部分として該宿主細胞に組み込まれ(例えば、宿主細胞のゲノムまたは宿主細胞により発現されるプラスミドに挿入され)、このとき、該シュードモナス属rfbクラスターは、ホルミルトランスフェラーゼおよびwzyポリメラーゼを含むように改変されている。別の具体的な実施形態では、該シュードモナス属rfbクラスターは、緑膿菌血清型O6 rfbクラスターである。
【0039】
改変型シュードモナス属rfbクラスター、例えば、改変型緑膿菌血清型O6 rfbクラスターを作製するために用いられるホルミルトランスフェラーゼをコードする核酸およびwzyポリメラーゼをコードする核酸は、複数の位置および複数の方向でrfbクラスターへと挿入することができる。
【0040】
具体的な実施形態では、該ホルミルトランスフェラーゼをコードする遺伝子および/または該wzyポリメラーゼをコードする遺伝子は、シュードモナス属rfbクラスター、例えば、緑膿菌血清型O6 rfbクラスターの遺伝子の下流に挿入される。具体的な実施形態では、該ホルミルトランスフェラーゼをコードする遺伝子および/または該wzyポリメラーゼをコードする遺伝子は、緑膿菌血清型O6 rfbクラスターのwbpM遺伝子の下流に挿入される。
【0041】
具体的な実施形態では、該ホルミルトランスフェラーゼをコードする遺伝子および/または該wzyポリメラーゼをコードする遺伝子は、シュードモナス属rfbクラスター、例えば、緑膿菌血清型O6 rfbクラスターの遺伝子の上流に挿入される。具体的な実施形態では、該ホルミルトランスフェラーゼをコードする遺伝子および/または該wzyポリメラーゼをコードする遺伝子は、緑膿菌血清型O6 rfbクラスターのwzz遺伝子の下流に挿入される。
【0042】
具体的な実施形態では、該ホルミルトランスフェラーゼをコードする遺伝子および/または該wzyポリメラーゼをコードする遺伝子は、シュードモナス属rfbクラスター、例えば、緑膿菌血清型O6 rfbクラスターの遺伝子に対して時計回りの方向で挿入される。
【0043】
具体的な実施形態では、該ホルミルトランスフェラーゼをコードする遺伝子および/または該wzyポリメラーゼをコードする遺伝子は、シュードモナス属rfbクラスター、例えば、緑膿菌血清型O6 rfbクラスターの遺伝子に対して反時計回りの方向で挿入される。
【0044】
具体的な実施形態では、シュードモナス属O6抗原を含むバイオコンジュゲートを生成することが可能な酵素をコードする核酸を含む改変型原核生物宿主細胞が、本明細書中に提供される。具体的な実施形態では、該宿主細胞は、緑膿菌血清型O6 rfbクラスター、wzyポリメラーゼをコードする核酸、およびホルミルトランスフェラーゼを含む。具体的な実施形態では、wzyポリメラーゼは、緑膿菌O6 wzyポリメラーゼ(配列番号3)、またはそのホモログ(例えば、緑膿菌のPAK株またはLESB58株由来のwzyポリメラーゼ)である。別の具体的な実施形態では、ホルミルトランスフェラーゼは、緑膿菌O6ホルミルトランスフェラーゼ(配列番号2)、またはそのホモログ(例えば、緑膿菌のPAK株またはLESB58株由来のホルミルトランスフェラーゼ)である。特定の実施形態では、rfbクラスター、wzyポリメラーゼ、および/またはホルミルトランスフェラーゼをコードする核酸のうちの1つ以上が、例えば、本明細書中に記載される方法を用いて、宿主細胞のゲノムに挿入される。具体的な実施形態では、rfbクラスター、wzyポリメラーゼ、およびホルミルトランスフェラーゼをコードする核酸のそれぞれが、例えば、本明細書中に記載される方法を用いて、宿主細胞のゲノムに挿入される。特定の実施形態では、宿主細胞は、オリゴサッカリルトランスフェラーゼ(例えば、カンピロバクター・ジェジュニ由来のpglB)をコードする核酸であって、プラスミド担持であるかまたは宿主細胞のゲノムにインテグレートされている、上記オリゴサッカリルトランスフェラーゼをコードする核酸;およびキャリアタンパク質をコードする核酸であって、プラスミド担持であるかまたは宿主細胞のゲノムにインテグレートされている、上記キャリアタンパク質をコードする核酸をさらに含む。具体的な実施形態では、該オリゴサッカリルトランスフェラーゼをコードする該核酸は、宿主細胞のゲノムにインテグレートされている。
【0045】
遺伝的バックグラウンド
本明細書中に記載される改変型宿主細胞を作製するために用いることができる例示的な宿主細胞としては、限定するものではないが、エシェリキア属(Escherichia)の種、シゲラ属(Shigella)の種、クレブシエラ属(Klebsiella)の種、キサントモナス属(Xhantomonas)の種、サルモネラ属(Salmonella)の種、エルシニア属(Yersinia)の種、ラクトコッカス属(Lactococcus)の種、ラクトバチルス属(Lactobacillus)の種、シュードモナス属(Pseudomonas)の種、コリネバクテリウム属(Corynebacterium)の種、ストレプトマイセス属(Streptomyces)の種、ストレプトコッカス属(Streptococcus)の種、スタフィロコッカス属(Staphylococcus)の種、バチルス属(Bacillus)の種、およびクロストリジウム属(Clostridium)の種が挙げられる。具体的な実施形態では、本明細書中で用いられる宿主細胞は大腸菌である。
【0046】
特定の実施形態では、宿主細胞の遺伝的バックグラウンドは、例えば、1種以上の遺伝子の欠失により、改変される。宿主細胞で欠失され(いくつかの場合には、その他の所望の核酸配列と置換され)得る例示的な遺伝子としては、waaL(例えば、Feldman et al., 2005, PNAS USA 102:3016-3021を参照されたい)、O抗原クラスター(rfbまたはwb)、腸内細菌共通抗原クラスター(wec)、リピドAコア生合成クラスター(waa)、およびgtrABSクラスターなどのプロファージO抗原修飾クラスターなどの糖脂質生合成に関与する宿主細胞の遺伝子が挙げられる。具体的な実施形態では、本明細書中に記載される宿主細胞は、例えば、O抗原シュードモナス属由来の、所望のO抗原以外のいずれのO抗原も産生しないように改変される。具体的な実施形態では、waaL遺伝子、gtrA遺伝子、gtrB遺伝子、gtrS遺伝子、またはwecクラスター由来の遺伝子(1種または複数)またはrfb遺伝子クラスター由来の遺伝子(1種または複数)のうちの1種以上が、本明細書中に提供される原核生物宿主細胞のゲノムから欠失されるかまたは機能的に不活性化される。一実施形態では、本明細書中で用いられる宿主細胞は、waaL遺伝子、gtrA遺伝子、gtrB遺伝子、gtrS遺伝子が宿主細胞のゲノムから欠失されているかまたは機能的に不活性化されている、大腸菌である。別の実施形態では、本明細書中で用いられる宿主細胞は、waaL遺伝子およびgtrS遺伝子が宿主細胞のゲノムから欠失されているかまたは機能的に不活性化されている、大腸菌である。別の実施形態では、本明細書中で用いられる宿主細胞は、waaL遺伝子およびwecクラスター由来の遺伝子が宿主細胞のゲノムから欠失されているかまたは機能的に不活性化されている、大腸菌である。
【0047】
キャリアタンパク質
コンジュゲートワクチン(例えば、ワクチンとしての使用のためのバイオコンジュゲート)の生成での使用に好適ないずれかのキャリアタンパク質を本明細書中で用いることができ、例えば、キャリアタンパク質をコードする核酸を、シュードモナス属抗原と連結されたキャリアタンパク質を含むバイオコンジュゲートの生成のために本明細書中に提供される宿主へと導入することができる。例示的なキャリアタンパク質としては、限定するものではないが、無毒化緑膿菌エキソトキシンA(EPA;例えば、Ihssen, et al., (2010) Microbial cell factories 9, 61を参照されたい)、CRM197、マルトース結合性タンパク質(MBP)、ジフテリアトキソイド、破傷風トキソイド、黄色ブドウ球菌(S.aureus)の無毒化溶血素A、クランピング因子A、クランピング因子B、大腸菌FimH、大腸菌FimHC、大腸菌易熱性エンテロトキシン、大腸菌易熱性エンテロトキシンの無毒化変異体、コレラトキシンBサブユニット(CTB)、コレラトキシン、コレラトキシンの無毒化変異体、大腸菌Satタンパク質、大腸菌Satタンパク質のパッセンジャードメイン、肺炎レンサ球菌ニューモリシン(Pneumolysin)およびその無毒化変異体、C.ジェジュニ(C.jejuni)AcrA、シュードモナス属PcrVタンパク質、およびC.ジェジュニ天然糖タンパク質が挙げられる。
【0048】
具体的な実施形態では、本明細書中に提供される改変型宿主細胞により発現されるキャリアタンパク質は、改変型宿主細胞のゲノムにインテグレートされている核酸から発現される。つまり、キャリアタンパク質をコードする核酸は、宿主細胞ゲノムにインテグレートされている。特定の実施形態では、本明細書中に提供される改変型宿主細胞により発現されるキャリアタンパク質は、改変型宿主細胞に導入されているプラスミドから発現される。
【0049】
特定の実施形態では、本明細書中に記載されるバイオコンジュゲートの生成で用いられるキャリアタンパク質は改変され、例えば、該タンパク質の毒性が低く、かつ/またはグリコシル化をより受けやすく改変される。具体的な実施形態では、本明細書中に記載されるバイオコンジュゲートの生成で用いられるキャリアタンパク質が改変され、それにより、そのバイオコンジュゲート形態での、例えば免疫原性組成物中の投与対象のタンパク質の比較的低い濃度を可能にする様式で、キャリアタンパク質中のグリコシル化部位の数が最大化される。
【0050】
特定の実施形態では、本明細書中に記載されるキャリアタンパク質は、該キャリアタンパク質に通常伴うであろうよりも(例えば、その未改変/天然(例えば、「野生型」)状態でキャリアタンパク質に伴うグリコシル化部位の数と比較して)、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10箇所、またはそれ以上のグリコシル化部位を含むように改変される。具体的な実施形態では、グリコシル化部位の導入は、タンパク質の一次構造のどこかでの、グリコシル化コンセンサス配列(例えば、Asn-X-Ser(Thr)、ここで、XはPro以外のいずれかのアミノ酸であり得る;またはAsp(Glu)-X-Asn-Z-Ser(Thr)、ここで、XおよびZは独立して、Pro以外のいずれかの天然アミノ酸から選択される(国際公開第2006/119987号を参照されたい))の挿入により達成される。そのようなグリコシル化部位の導入は、例えば、タンパク質の一次構造へと新規アミノ酸を付加する(すなわち、完全にまたは部分的に、グリコシル化部位が追加される)ことにより、またはグリコシル化部位を作製するためにタンパク質中の既存のアミノ酸を突然変異させる(すなわち、アミノ酸はタンパク質に追加されないが、タンパク質の選択されたアミノ酸が突然変異されて、グリコシル化部位を形成する)ことにより、達成できる。当業者は、タンパク質のアミノ酸配列が、当技術分野で公知のアプローチ(例えば、タンパク質をコードする核酸配列の改変を含む組み換えアプローチ)を用いて容易に改変できることを認識するであろう。具体的な実施形態では、グリコシル化コンセンサス配列は、キャリアタンパク質の特定の領域、例えば、タンパク質の表面構造中、タンパク質のNもしくはC末端で、および/またはタンパク質の塩基でジスルフィド橋によって安定化されているループ中に導入される。特定の実施形態では、古典的な5アミノ酸のグリコシル化コンセンサス配列が、より効率的なグリコシル化のためにリシン残基によって伸長され得、したがって、挿入されるコンセンサス配列は、挿入されるべき、もしくはアクセプタータンパク質アミノ酸と置き換わる5、6または7個のアミノ酸をコードし得る。
【0051】
特定の実施形態では、本明細書中に記載されるバイオコンジュゲートの生成で用いられるキャリアタンパク質は、「タグ」、すなわち、キャリアタンパク質の単離および/または同定を可能にするアミノ酸の配列を含む。例えば、本明細書中に記載されるキャリアタンパク質へタグを付加することは、そのタンパク質の精製、ひいては、タグのついたキャリアタンパク質を含むコンジュゲートワクチンの精製にて有用であり得る。本明細書中で用られ得る例示的タグとしては、限定するものではないが、ヒスチジン(HIS)タグ(例えば、ヘキサヒスチジンタグまたは6×His-タグ)、FLAG-タグ、およびHAタグが挙げられる。特定の実施形態では、本明細書中で用いられるタグは、除去可能であり、例えば、それらがもはや必要でなくなれば、例えば、タンパク質が精製された後に、化学薬剤によるか、または酵素的手段による除去で除去可能である。
【0052】
特定の実施形態では、本明細書中に記載されるキャリアタンパク質は、キャリアタンパク質を発現する宿主細胞のペリプラズム腔へとキャリアタンパク質を標的化するシグナル配列を含む。具体的な実施形態では、シグナル配列は、大腸菌DsbA、大腸菌外膜ポーリンA(porin A;OmpA)、大腸菌マルトース結合性タンパク質(MalE)、エルウィニア・コロトボランス(Erwinia carotovorans)ペクテートリアーゼ(pectate lyase)(PelB)、FlgI、NikA、またはバチルス属sp.エンドキシラナーゼ(XynA)、易熱性大腸菌エンテロトキシンLTIIb、バチルス属エンドキシラナーゼXynA、または大腸菌フラゲリン(flagellin)(FlgI)由来のものである。
【0053】
グリコシル化機構
オリゴサッカリルトランスフェラーゼ
オリゴサッカリルトランスフェラーゼは、脂質連結型オリゴ糖を、N-グリコシル化コンセンサスモチーフ、例えば、Asn-X-Ser(Thr)(ここで、XはPro以外のいずれかのアミノ酸であり得る);またはAsp(Glu)-X-Asn-Z-Ser(Thr)(ここで、XおよびZは独立に、Pro以外のいずれかの天然アミノ酸から選択される)(国際公開第2006/119987号を参照されたい)を含む新生ポリペプチド鎖のアスパラギン残基に転移させる。例えば、国際公開第2003/074687号および同第2006/119987号を参照されたい(これらの開示は、全体が参照により本明細書中に組み入れられる)。
【0054】
特定の実施形態では、本明細書中に提供される宿主細胞は、オリゴサッカリルトランスフェラーゼをコードする核酸を含む。オリゴサッカリルトランスフェラーゼをコードする核酸は、宿主細胞に対して天然(native)であり得るか、または上記の通りの遺伝学的アプローチを用いて宿主細胞に導入することができる。オリゴサッカリルトランスフェラーゼは、当技術分野で公知のいずれかの供給源からのものであり得る。具体的な実施形態では、オリゴサッカリルトランスフェラーゼは、カンピロバクター属由来のオリゴサッカリルトランスフェラーゼである。別の具体的な実施形態では、オリゴサッカリルトランスフェラーゼは、カンピロバクター・ジェジュニ由来のオリゴサッカリルトランスフェラーゼ(すなわち、pglB;例えば、Wacker et al., 2002, Science 298:1790-1793を参照されたい;また、例えば、NCBI Gene ID: 3231775、UniProt登録番号O86154も参照されたい)である。別の具体的な実施形態では、オリゴサッカリルトランスフェラーゼは、カンピロバクター・ラリ(Campylobacter lari)由来のオリゴサッカリルトランスフェラーゼ(例えば、NCBI Gene ID: 7410986を参照されたい)である。
【0055】
具体的な実施形態では、本明細書中に提供される改変型宿主細胞は、宿主細胞のゲノムにインテグレートされている、オリゴサッカリルトランスフェラーゼをコードする核酸配列を含む。
【0056】
補助的酵素
特定の実施形態では、1種以上の補助的酵素をコードする核酸が、本明細書中に記載される改変型宿主細胞に導入される。1種以上の補助的酵素をコードするそのような核酸は、プラスミド担持であるか、または本明細書中に記載される宿主細胞のゲノムにインテグレートされることができる。例示的な補助的酵素としては、限定するものではないが、エピメラーゼ、分岐させる、修飾する、アミド化する、鎖長を調節する、アセチル化する、ホルミル化する、多量体化する酵素が挙げられる。
【0057】
本明細書中に記載される宿主細胞に挿入できるエピメラーゼをコードする核酸配列は、当技術分野で公知である。特定の実施形態では、本明細書中に記載される宿主細胞に挿入されるエピメラーゼは、国際公開第2011/062615号(その開示は全体が参照により本明細書中に組み入れられる)に記載されるエピメラーゼである。具体的な実施形態では、エピメラーゼは、大腸菌O157株のZ3206遺伝子によりコードされるエピメラーゼである。例えば、国際公開第2011/062615号およびRush et al., 2009, The Journal of Biological Chemistry 285:1671-1680(これらの開示は全体が参照により本明細書中に組み入れられる)を参照されたい。具体的な実施形態では、本明細書中に提供される改変型宿主細胞は、宿主細胞のゲノムにインテグレートされている、エピメラーゼをコードする核酸配列を含む。
【0058】
特定の実施形態では、ホルミルトランスフェラーゼをコードする核酸配列が、本明細書中に記載される宿主細胞に挿入されるか、または該宿主細胞により発現される。ホルミルトランスフェラーゼは、アクセプター分子へのホルミル基の転移を触媒する酵素である。具体的な実施形態では、緑膿菌O6ホルミルトランスフェラーゼfmtO6(配列番号2)、またはそのホモログ(例えば、緑膿菌のPAK株またはLESB58株由来のwzyポリメラーゼ)をコードする核酸配列が、本明細書中に記載される宿主細胞に挿入されるか、または該宿主細胞により発現される。別の具体的な実施形態では、配列番号2に対して約または少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%の同一性または相同性を有するタンパク質をコードする核酸配列が、本明細書中に記載される宿主細胞に挿入されるか、または該宿主細胞により発現される。
【0059】
多糖生合成に関与する一部のホルミルトランスフェラーゼが公知であり、かつ本明細書中に記載される宿主細胞に挿入されるか、または該宿主細胞により発現されることができる。例えば、vioFは、P.アルカリファシエンス(P. alcalifaciens)血清型O30由来の酵素であり、これは、野兎病菌(Francisella tularensis)由来のホルミルトランスフェラーゼに対して48%同一である(Nagaraja et al. 2005)。これは、dTDP-D-Qui4NをdTDP-D-Qui4NFoへと変換し、かつO抗原生合成に関与する(Liu et al. 2012, Glycobiology 22(9):1236-1244)。多糖生合成に関与する別のホルミルトランスフェラーゼはarnA (例えば、大腸菌由来)であり、これは、二重機能性酵素であり、N末端ドメインがUDP-Ara4NをUDP-AraNFoへと変換し、C末端ドメインがUDP-グルクロン酸の酸化的脱カルボキシル化に関与する。両方の酵素的活性が、リピドAのL-Ara4N修飾およびポリミキシン(polymyxin)耐性に必要である(Breazeale et al., 2005, The Journal of Biological Chemistry 280(14):14154-14167)。多糖生合成に関与する別のホルミルトランスフェラーゼはwekDであり、これは大腸菌血清型O119由来の酵素であり、TDP-DRhaNAc3NFoの生合成に関与する(Anderson et al., 1992, Carbohydr Res. 237:249-62)。
【0060】
さらに、ホルミルトランスフェラーゼ活性に関連するドメインが特徴付けられている。いわゆるFMT_コアドメインは、ホルミルトランスフェラーゼのうちの大部分に存在する。例としては、メチオニル-tRNA-ホルミルトランスフェラーゼ、ホスホリボシルグリシンアミドホルミルトランスフェラーゼ1、UDP-グルクロン酸デカルボキシラーゼ/UDP-4-アミノ-4-デオキシ-L-アラビノースホルミルトランスフェラーゼ、プロビデンシア・アルカリファシエンス(Providencia alcalifaciens)O30由来のvioF、および大腸菌由来のarnAが挙げられる。上述のホルミルトランスフェラーゼは、ホルミル供与体としてFTHF(N-10-ホルミルテトラヒドロフォレート)を用いる。基質としてFTHF(10-ホルミルテトラヒドロフォレート)を用いてホルメートを生成する酵素もまた、このドメインを含む。また、AICARFTが、ホスホリボシルアミノイミダゾールカルボキサミドホルミルトランスフェラーゼ/IMPシクロヒドロラーゼ(phosphoribosylaminoimidazolecarboxamide formyltransferase/IMP cyclohydrolase)に存在し、FDH_GDHはホスホリボシルグリシンアミドホルミルトランスフェラーゼ2(phosphoribosylglycinamide formyltransferase 2)に存在する。
【0061】
特定の実施形態では、O抗原ポリメラーゼ(wzy遺伝子)をコードする核酸配列が、本明細書中に記載される宿主細胞に挿入されるか、または該宿主細胞により発現される。O抗原ポリメラーゼは、複数回膜貫通型タンパク質である。それらは、ウンデカプレニルピロリン酸結合型O抗原反復単位を基質として用いて、該反復単位からなる直鎖状多量体を生成する。O抗原ポリメラーゼ(wzy)は、wzy依存的機構を介してO抗原多量体を合成するグラム陰性細菌に存在する。
【0062】
具体的な実施形態では、緑膿菌wzyポリメラーゼ(配列番号3)、またはそのホモログ(例えば、緑膿菌のPAK株またはLESB58株由来のwzyポリメラーゼ)をコードする核酸配列が、本明細書中に記載される宿主細胞に挿入されるか、または該宿主細胞により発現される。wzyポリメラーゼを含むことが公知である細菌の例としては、大腸菌、緑膿菌、シゲラ・フレックスネリ(Shigella flexneri)およびネズミチフス菌(Salmonella typhimurium)が挙げられる。別の具体的な実施形態では、配列番号3に対して約または少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%の同一性または相同性を有するタンパク質をコードする核酸配列が、本明細書中に記載される宿主細胞に挿入されるか、または該宿主細胞により発現される。
【0063】
遺伝子コピー数
特定の実施形態では、本明細書中に提供される改変型宿主細胞にインテグレートされる遺伝子のコピー数は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10である。具体的な実施形態では、本明細書中に提供される改変型宿主細胞にインテグレートされる遺伝子のコピー数は、1または2である。
【0064】
利点
本明細書中に記載される改変型宿主細胞は、染色体に挿入されたDNAの安定性、ひいては、発酵中での対象となるDNAの発現の増大のために、より少ないリスクで、治療剤として(例えば、免疫原性組成物中、ワクチン中で)使用できるシュードモナス属抗原を含むバイオコンジュゲートの大規模発酵を可能にするので、特に商業上重要であり、関連がある。本明細書中に記載される改変型宿主細胞は、とりわけ、ひとたび異種DNAが宿主細胞ゲノム中に挿入されると、発酵の間の抗生物質選択は必要ではないので、本明細書中に記載されるバイコンジュゲートの生成に必要とされる核酸のプラスミド担持性の発現に頼る宿主細胞を上回って有利である。すなわち、挿入DNAが染色体中に挿入される場合には、宿主ゲノムの複製と共に増殖するので、選択される必要がない。さらに、世代(すなわち、宿主細胞複製のサイクル)毎に、プラスミドを失うリスクが増大することが、プラスミド担持の系における公知の不利点である。このプラスミドの喪失は、細胞分裂の際の細胞分離の段階での娘細胞へのプラスミドの不適当な分布によることもある。大きな規模では、細菌細胞培養物は、より小さい発酵規模におけるよりも多く複製して、高細胞密度に達する。したがって、より高い細胞安定性および挿入DNA発現が、より高い生産収率につながり、明白な利点を提供する。細胞安定性は、さらに、規制当局による承認のためのプロセス合否基準であり、また、抗生物質選択は、一般に、種々の理由のために、例えば、抗生物質が、最終医薬品中に不純物として存在し、アレルギー反応を引き起こすリスクを有し、かつ、抗生物質は、抗生物質耐性を促進し得る(例えば、遺伝子導入または耐性病原体の選択によって)ために、発酵の間は望ましくない。
【0065】
本出願は、治療剤として(例えば、免疫原性組成物中、ワクチン中で)使用できるシュードモナス属抗原を含むバイオコンジュゲートの製造での使用のための改変型宿主細胞を提供し、このとき、バイオコンジュゲートの生成を行なわせるために必要とされる一部の遺伝的エレメントが、宿主細胞ゲノムに安定的にインテグレートされている。結果として、宿主細胞は、少ない数のプラスミドを含むか、ただ1つのプラスミドを含むか、またはプラスミドを全く含まないことができる。一部の実施形態では、単一のプラスミドの存在は、産生株の柔軟性の増大、および産生株の柔軟性の増大に容易につながる、コンジュゲート化の性質を変化させる(その糖またはキャリアタンパク質含有量に関して)能力をもたらし得る。
【0066】
一般的に、プラスミドの使用の低減は、医薬品の製造での使用のためにより適した産生株をもたらす。プラスミド上に存在する必須の遺伝材料の欠点は、宿主細胞中のエピソーム要素を維持するための選択圧に対する要求である。選択圧は抗生物質の使用を必要とし、抗生物質の使用は、例えば、抗生物質に対するアレルギー反応の危険性および追加の製造コストのために、医薬品の製造に対して望ましくない。さらに、選択圧は多くの場合に完全ではなく、一部のクローンがプラスミドを失い、つまりバイオコンジュゲートを産生していない、不均一な細菌培養物を生じさせる。したがって、本明細書中に記載される宿主細胞は、高収率で取得できる、より安全な製品を製造することができる。
【0067】
5.2 宿主細胞への核酸のインテグレーション/導入方法
当技術分野で公知の任意の方法を使用して、宿主細胞のゲノムに核酸(例えば、遺伝子またはオペロン、例としてrfbクラスター)をインテグレートすることができる。
【0068】
具体的な実施形態において、異種核酸は、国際特許出願PCT/EP2013/071328号に記載される挿入の方法を用いて、本明細書に記載の宿主細胞に導入する。この方法では、大きなDNAの連続配列を安定的に宿主細胞のゲノムに直接挿入することができる。簡単に説明すると、この方法は以下のステップのうち一部またはすべてを含む。
【0069】
ステップ1:ドナープラスミドを作製する。所望の異種挿入DNA配列(すなわち、1種以上の対象の遺伝子を含む異種挿入DNA配列)を、ドナープラスミドとして使用するのに適したプラスミドのクローニング部位(例えば、MCSと略される多重クローニング部位)中にクローニングする。相同領域として使用するのに適したDNA配列(すなわち、宿主細胞ゲノム上の挿入位置と相同であるDNA配列)もまた、相同領域が異種挿入DNAを挟むようにドナープラスミド中にクローニングする。これらのドナープラスミドのクローニングおよびアセンブリーの方法は、限定されるものではないが、制限酵素およびリガーゼ、トランスポザーゼ、化学合成などを使用する分子クローニングなど、DNAを改変および合成するための任意の確立された周知の技術に従って行うことができ、これらの技術は、当業者に公知である。
【0070】
ある特定の実施形態では、抗生物質耐性を付与するタンパク質をコードするオープンリーディングフレームを含む選択カセットは、相同性アームの間に位置する。それらのゲノム中に挿入される異種挿入DNAを含む宿主細胞は、それらを、選択カセットの抗生物質耐性遺伝子が耐性を提供する抗生物質を含む培地で培養することによって同定され得る。ある特定の実施形態では、選択カセットは、FRT部位に挟まれ、これによって、部位特異的組換えによるカセットの後の除去が可能になる。したがって、ドナープラスミド中にこのようにFRT部位を組み込むことによって、選択カセットが、宿主細胞ゲノム中にインテグレートされたままではないことが確実になる。別の実施形態では、選択カセットは、dif部位が媒介する部位特異的相同組換えによるまたはその他の部位特異的染色体突然変異誘発技術による組込み後に除去され得る。
【0071】
ドナープラスミドはさらに、対抗選択タンパク質をコードするオープンリーディングフレームを含むよう操作してもよい。対抗選択アプローチにおいて使用するのに適した当業者に公知のタンパク質をコードする任意の遺伝子が、本明細書において記載されるドナープラスミド中に組み込まれ得る。特定の実施形態では、sacB遺伝子は、対抗選択に使用される。
【0072】
ドナープラスミドはさらに、複製起点を含むよう操作してもよい。当業者ならば、ドナープラスミド中に組み込まれる複製起点が、ゲノム改変を受けている宿主細胞において使用するのに適したものでなくてはならないことは容易に理解するであろう。例えば、大腸菌(E. coli)複製起点は、クローニングが大腸菌(E. coli)において実施される場合には存在しなくてはならない。特定の実施形態では、複製起点は、oriTである。当業者ならば、当技術分野で公知の方法を使用して、シャトルプラスミド(すなわち、複数の宿主細胞、例えば、複数の細菌種において複製できるプラスミド)が作製され得、このようなプラスミドは、多数の種類の宿主細胞、例えば、原核細胞、古細菌細胞、真正細菌細胞または真核細胞中への挿入のために使用され得ることは容易に理解するであろう。このようなシャトルプラスミドは、生物特異的発現制御エレメントおよび複製起点を含み得る。
【0073】
ステップ2:ヘルパープラスミドを作製する。ヘルパープラスミドを、宿主細胞へのDNA挿入を媒介するため、および組換えを受ける宿主細胞内でヘルパープラスミドを維持するためのすべての必要な活性をコードするよう操作する。ある特定の実施形態では、ヘルパープラスミドは、(i)宿主細胞におけるプラスミド維持のための選択カセット、(ii)リコンビナーゼ、すなわち、相同DNAストレッチ間の交差効率を支援し、増強する酵素(単数または複数)の発現のためのレギュロン、(iii)相同組換えを受け得る末端相同配列をもたらす、DNA挿入部分を直線化する機能の発現のためのレギュロン、(iv)自身のrecAコピーを有さない宿主細胞のRecA相同体を発現するレギュロン、および(v)条件付きの複製起点を含む。
【0074】
ある特定の実施形態では、ヘルパープラスミドは、ヘルパープラスミドpTKRED(Gene bank GU327533.1)と同様である構成成分を含む。特定の実施形態では、本方法において、ヘルパープラスミドpTKRED(Gene bank GU327533.1)が使用される。
【0075】
ステップ3:ドナープラスミドおよびヘルパープラスミドを同一宿主細胞中に導入する。ドナーおよびヘルパープラスミドの挿入は、限定されるものではないが、エレクトロポレーション、化学的コンピテント細胞の使用、熱ショックおよびファージ形質導入を含めた当業者に公知の多数の異なる技術によって実施され得る。次いで、宿主細胞は、導入されたプラスミドを保持する細胞を濃縮する選択的条件下で培養され得る。
【0076】
ステップ4:挿入手順を開始する。例示的挿入手順は、以下のステップを含む:陽性クローン(すなわち、ヘルパーおよびドナープラスミドの両方を含む宿主細胞)の一晩培養物を、例えば、選択のために適切な抗生物質を含む培地中、30℃で増殖させることができる(このような抗生物質は、ドナー/ヘルパープラスミド中に存在する選択カセットに基づいて当業者によって容易に選択され得る)。次いで、培養物を希釈し、適当な抗生物質の存在下で対数期まで、例えば、30℃で増殖させることができる。これらの条件下で、ヘルパーおよびドナープラスミドは、維持されるがサイレントである。次に、培地を、選択のための抗生物質ならびにプラスミド中に存在する条件付きエレメント(例えば、誘導プロモーターまたは条件付き複製起点)の任意の誘導物質を含有する培地で置換し、続いて、細胞をさらにインキュベートする。この時間の間に、ヘルパープラスミド中の制限エンドヌクレアーゼ(例えば、SceI)およびヘルパープラスミド中のリコンビナーゼ(例えば、λredリコンビナーゼ)が発現され、相同性アームでのドナープラスミドの切断および宿主細胞のゲノム中の相同部位での相同性DNAの相同組換えにつながる。次いで、細胞をドナープラスミドの対抗選択マーカーが対応する構成成分(例えば、対抗選択マーカーがsacBである場合にはスクロース)を含有する培地上にプレーティングする。このステップは、ドナープラスミドを含む細胞、すなわち、ドナープラスミドが挿入されていない状態で存在する細胞の対抗選択をもたらす。このような培地はまた、異種挿入DNAを含有する細胞を選択するための、ドナープラスミドの挿入カセット中に存在する耐性マーカー(すなわち、ドナープラスミドのHRの間に存在する抗生物質耐性カセット)を含む。一晩インキュベートした後、次いで、細胞を、(i)ヘルパーおよびドナープラスミドの喪失と、(ii)異種DNA挿入部分の存在と一致する抗生物質耐性表現型を示す組換えられたクローンについてスクリーニングする。
【0077】
上に記載した挿入方法に加えて、他の手法を用いてDNAを宿主細胞のゲノム中に挿入することができる。特定の実施形態において、当技術分野で公知の任意の部位特異的挿入方法を使用してDNAを宿主細胞のゲノム中に挿入する。特定の実施形態において、当技術分野で公知の任意のランダムインテグレーション方法を使用してDNAを宿主細胞のゲノム中に挿入する。かかる方法を以下でより詳細に説明する。
【0078】
特定の実施形態において、トランスポゾン媒介挿入を含む方法を使用してDNAを宿主細胞(例えば大腸菌(E. coli))のゲノムに挿入する。かかるランダム挿入によって、宿主細胞ゲノムの複数の位置における目的のDNAの挿入が可能となり、したがってDNAが挿入された宿主細胞における最適な挿入部位の同定が可能となる。例えば、挿入されたDNAを有する複数の宿主細胞を、挿入されたDNAの産生効率に関して互いに比較することができ、最大効率を有する宿主細胞を将来的な用途のために選択することができる。宿主細胞ゲノムへの核酸配列のトランスポゾン媒介挿入の方法は当技術分野で公知である。例えば、特定の実施形態において、pUTminiTn5送達系(Biomedical; Sevilla, Spain)を使用して、宿主細胞(細菌宿主細胞など)のゲノムに安定的に遺伝子を挿入する。次に、DNAが挿入された菌株を同定し、単離する。Herrero et al., 1990, J. Bacteriology 172(11):6557-6567およびDeLorenzo et al., 1990, J. Bacteriology 172(11):6568-6572(そのそれぞれの全体を参照により本明細書に組み入れる)も参照のこと。さらに、特定の実施形態において、宿主細胞ゲノムへのDNAのトランスポゾン媒介挿入は、Tn-7に基づくDNA挿入方法を使用して行われる。McKenzie et al., 2006, BMC Microbiology 6:39およびSibley et al., 2012, Nucleic Acids Res. 40:e19(そのそれぞれの全体を参照により本明細書に組み入れる)を参照のこと。
【0079】
特定の実施形態において、部位特異的なDNAクローニングを可能にするStabyCloningTMキットまたはStabyCodon T7キット(Delphi Genetics, Charleroi, Belgium)を使用して宿主細胞(例えば大腸菌(E. coli))のゲノムにDNAを挿入する。
【0080】
特定の実施形態において、DNAのクローニングおよび染色体インテグレーションの「クローンテグレーション(clonetegration)」法を使用して宿主細胞(例えば大腸菌(E. coli))のゲノムにDNAを挿入する。St. Pierre et al, 2013, ACS Synthetic Biology 2:537-541(その開示内容の全体を参照により本明細書に組み入れる)を参照のこと。
【0081】
特定の実施形態において、Haldimann and Wanner, 2001, J. Bacteriology 183:6384-6393(その開示内容の全体を参照により本明細書に組み入れる)に記載されているような、条件的複製、インテグレーション、およびモジュラー(conditional-replication, integration, and modular:CRIM)プラスミドを利用する方法を使用して宿主細胞(例えば大腸菌(E. coli))のゲノムにDNAを挿入する。
【0082】
特定の実施形態において、例えばSharan et al., 2009, Nat. Protoc. 4:206-223;Yu et al., 2000, PNAS USA 97:5978-5983;Kuhlman et al., 2010, Nucleic Acids Res. 38:e92;およびZhang et al., 1998, Nat. Genet. 20:123-128(そのそれぞれの全体を参照により本明細書に組み入れる)に記載されているような方法であるレコンビニアリング(recombineering)を使用して宿主細胞(例えば大腸菌(E. coli))のゲノムにDNAを挿入する。
【0083】
ある特定の実施形態では、異種核酸を、エレクトロポレーション、熱ショックによる化学的形質転換、天然形質転換、ファージ形質導入および/またはコンジュゲーションにより、本明細書に記載の改変型宿主細胞中に導入する。特定の実施形態では、異種核酸は、プラスミドを使用して本明細書に記載の宿主細胞中に導入される、例えば、異種核酸は、プラスミド(例えば、発現ベクター)によって宿主細胞において発現され、プラスミドは、エレクトロポレーション、熱ショックによる化学的形質転換、天然形質転換、ファージ形質導入またはコンジュゲーションにより改変型宿主細胞に導入される。
【0084】
特定の実施形態では、改変型シュードモナス属rfbクラスター、例えば、緑膿菌血清型O6 rfbクラスターをコードする単離された核酸配列が宿主細胞(例えば大腸菌)にインテグレートされ、このとき、該改変型シュードモナス属rfbクラスターは、(i) ホルミルトランスフェラーゼをコードする遺伝子(例えば、配列番号2をコードする遺伝子またはそのホモログ)、(ii) wzyポリメラーゼをコードする遺伝子(例えば、配列番号3をコードする遺伝子またはそのホモログ);または(iii) ホルミルトランスフェラーゼをコードする遺伝子(例えば、配列番号2をコードする遺伝子またはそのホモログ)およびwzyポリメラーゼをコードする遺伝子(例えば、配列番号3をコードする遺伝子またはそのホモログ)を含む。
【0085】
5.3 バイオコンジュゲート
本明細書に記載の改変型宿主細胞を使用して、キャリアタンパク質に連結されたシュードモナス属抗原を含むバイオコンジュゲートを製造することができる。宿主細胞を使用したバイオコンジュゲートの製造方法は当技術分野で公知である。例えば、WO 2003/074687号およびWO 2006/119987号を参照のこと。本明細書に記載されるようなバイオコンジュゲートは、抗原−キャリアタンパク質の化学的コンジュゲートと比べて有利な特性を有し、それは製造において必要な化学物質がより少ないこと、生成される最終生成物の点でより一貫性があることである。
【0086】
特定の実施形態において、シュードモナス属抗原に連結されたキャリアタンパク質を含むバイオコンジュゲートを本明細書において提供する。特定の実施形態において、シュードモナス属抗原は緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)のO抗原である。特定の実施形態において、緑膿菌O抗原とキャリアタンパク質を含むバイオコンジュゲートを本明細書において提供し、ここで該キャリアタンパク質は、EPA、PcrV(LcrV、EspA、SseBとしても知られる)、PopB(YopB、YopD、FliC)、またはOprF、OprIである。
【0087】
特定の実施形態において、緑膿菌O抗原に連結されたキャリアタンパク質を含むバイオコンジュゲートを本明細書において提供し、ここで緑膿菌O抗原は、緑膿菌血清型O1、O2、O3、O4、O5、O6、O7、O8、O9、O10、O11、O12、O13、O14、O15、O16、O17、O18、O19またはO20由来のO抗原である。
【0088】
特定の実施形態において、緑膿菌O抗原に連結されたキャリアタンパク質を含むバイオコンジュゲートを本明細書において提供し、ここで緑膿菌O抗原は、Knirel et al., 2006, Journal of Endotoxin Research 12(6):324-336(この開示内容は、参照によりその全体を本明細書に組み入れる)に記載された血清型の1つである。
【0089】
特定の実施形態において、緑膿菌O抗原に連結されたキャリアタンパク質を含むバイオコンジュゲートを本明細書において提供し、ここで緑膿菌O抗原は、緑膿菌血清型O6に由来するO抗原である。
【0090】
特定の実施形態において、緑膿菌O抗原に連結されたキャリアタンパク質を含むバイオコンジュゲートを本明細書において提供し、ここで緑膿菌O抗原は、緑膿菌血清型O11に由来するO抗原である。特定の実施形態において、緑膿菌血清型O11由来のO抗原は、緑膿菌PA103株(例えばGenbankアクセッション番号KF364633.1参照)に由来するものである。
【0091】
本明細書に記載のバイオコンジュゲートは、タンパク質の精製のための当技術分野で公知の任意の方法により、例えばクロマトグラフィ(例として、イオン交換、アニオン交換、アフィニティおよびサイズカラムクロマトグラフィ)、遠心分離、溶解度の差、またはタンパク質の精製のための他の標準的技術のいずれかにより、精製することができる。例えばSaraswat et al., 2013, Biomed. Res. Int. ID#312709 (p. 1-18)を参照のこと。またWO 2009/104074号に記載の方法も参照のこと。さらに、バイオコンジュゲートを、本明細書に記載のまたはそうでない場合には精製を容易にするために当技術分野で公知の異種ポリペプチドと融合してもよい。特定のバイオコンジュゲートを精製するために使用する実際の条件は、一部ではあるが、合成技法、ならびにバイオコンジュゲートの正味荷電、疎水性および/または親水性などの因子に応じて異なり、これは当業者には明らかであろう。
【0092】
5.4 分析方法
本明細書に記載のバイオコンジュゲートの構造組成および糖鎖の長さを分析するために、種々の方法を使用することができる。
【0093】
一実施形態では、グリカンを分析するためにヒドラジン分解が使用され得る。最初に、製造業者の説明書(Ludger Liberateヒドラジン分解グリカン放出キット、Oxfordshire、UK)に従ってヒドラジンとともにインキュベートすることによって、そのタンパク質キャリアから多糖が放出される。求核試薬ヒドラジンは、多糖とキャリアタンパク質間のグリコシド結合を攻撃し、結合しているグリカンの放出を可能にする。この処置の間にN-アセチル基は失われ、再N-アセチル化によって再構成されなくてはならない。遊離グリカンは、炭素カラムで精製され、その後、フルオロフォア(fluorophor)2-アミノベンズアミドを用いて還元末端で標識される。Bigge JC, Patel TP, Bruce JA, Goulding PN, Charles SM, Parekh RB: Nonselective and efficient fluorescent labeling of glycans using 2-amino benzamide and anthranilic acid. Anal Biochem 1995, 230(2):229-238を参照のこと。標識された多糖は、RoyleらのHPLCプロトコールに従って、GlycoSep-Nカラム(GL Sciences)で分離される。Royle L, Mattu TS, Hart E, Langridge JI, Merry AH, Murphy N, Harvey DJ, Dwek RA, Rudd PM: An analytical and structural database provides a strategy for sequencing O-glycans from microgram quantities of glycoproteins. Anal Biochem 2002, 304(1):70-90を参照のこと。得られる蛍光クロマトグラムは、多糖の長さおよび反復単位の数を示す。構造情報は、個々のピークを集めること、続いて、MS/MS分析を実施することによって収集され得る。それによって、単糖組成および反復単位の配列が確認され得、さらに、多糖組成の均一性が同定され得る。
【0094】
別の実施形態では、グリカンおよびバイオコンジュゲートを評価するためにSDS-PAGEまたはキャピラリーゲル電気泳動が使用され得る。O抗原グリカンのポリマーの長さは、直鎖状にアセンブルされている反復単位の数によって定義される。これは、通常のラダー様パターンは、グリカンを構成する異なる反復単位の数の結果であるということを意味する。したがって、SDS PAGEまたはサイズによって分離するその他の技術において互いに隣接する2つのバンドは、単一の反復単位のみで異なる。これらの個別の相違は、グリカンのサイズについて糖タンパク質を分析する場合に利用される。非グリコシル化キャリアタンパク質および異なるポリマー鎖長を有するバイオコンジュゲートは、その電気泳動移動度に従って分離する。バイオコンジュゲートに存在する第1の検出可能な反復単位の数(n1)および平均反復単位の数(naverage)が測定される。これらのパラメータは、バッチ間一貫性または多糖安定性を実証するために使用され得る。
【0095】
別の実施形態では、完全バイオコンジュゲートのサイズを測定するために、高質量MSおよびサイズ排除HPLCが適用され得る。
【0096】
別の実施形態では、多糖収量を測定するためにアンスロン-硫酸アッセイを使用することができる。Leyva A, Quintana A, Sanchez M, Rodriguez EN, Cremata J, Sanchez JC: Rapid and sensitive anthrone-sulfuric acid assay in microplate format to quantify carbohydrate in biopharmaceutical products: method development and validation. Biologicals : journal of the International Association of Biological Standardization 2008, 36(2):134-141を参照のこと。別の実施形態では、多糖収量を測定するためにメチルペントースアッセイを使用することができる。例えば、Dische et al., J Biol Chem. 1948 Sep;175(2):595-603を参照のこと。
【0097】
グリコシル化部位利用の変化
挿入される系とは対照的に、多プラスミド系において、特定のタンパク質中の部位利用が変更されることを示すために、グリコシル化部位利用を定量する必要がある。そうする方法を以下に列挙する。
【0098】
グリコペプチドLC-MS/MS:バイオコンジュゲートをプロテアーゼを用いて消化し、ペプチドを、適したクロマトグラフィー法(C18、親水性相互作用HPLC HILIC、GlycoSepNカラム、SE HPLC、AE HPLC)によって分離し、MS/MSを使用して種々のペプチドを同定する。この方法は、化学的(スミス分解)もしくは酵素的方法によるこれまでの糖鎖短縮とともに、またはそれを伴わずに使用され得る。215〜280nmでのUV検出を使用するグリコペプチドピークの定量化によって、グリコシル化部位利用の相対的決定が可能となる。
【0099】
サイズ排除HPLC:より高いグリコシル化部位利用は、SE HPLCカラムからの早い溶出時間によって反映される。
【0100】
均一性
バイオコンジュゲート均一性(すなわち、結合している糖残基の均一性)は、グリカンの長さおよび流体力学半径を測定する方法を使用して評価され得る。
【0101】
その他の可能性ある臨床/実際の適用
【0102】
インテグレートされた株は、3プラスミド系と比較して低減された抗生物質選択負荷のために、より高い収量のバイオコンジュゲートを作製し得る。さらに、細胞に対する、低減された代謝負荷のために、より少ないタンパク質分解が起こる。
【0103】
インテグレートされた株は、より短い、あまり広がっていない多糖の長さの分布を有するバイオコンジュゲートを作製する。したがって、バイオコンジュゲートは、特性決定しやすく、良好に定義される。さらに、挿入は、細胞に対するペリプラズムストレスの程度を低減し得、これは、3プラスミド系と比較して、低減された抗生物質選択負荷による、発酵プロセスの間の産物の少ないタンパク質分解につながり得る。
【0104】
タンパク質グリコシル化系は、産生宿主中に3つの組換えエレメント、すなわちキャリアタンパク質発現DNA、オリゴサッカリルトランスフェラーゼ発現DNAおよび多糖発現DNAを必要とする。先行技術の細菌産生系は、これら3種のエレメントをプラスミド上に含有する。したがって、特に、プラスミドの維持のために使用される抗生物質は、GMP材料の発酵の間に存在してはならないので、プラスミド喪失による製造の間の不安定性に対するリスクがある。挿入された株は1プラスミド少なく含有するので、多くの世代にわたってより安定である。これは、より大規模の発酵およびより長いインキュベーション時間(より多い世代数)が、より実現可能であることを意味する。さらに、選択のための抗生物質がないことは、感受性対象においてアレルギー反応を引き起こし得る微量の抗生物質がないために、より安全な産物を作製する。COMMITTEE WE, BIOLOGICAL O, STANDARDIZATION: WHO Technical Report Series 941. In: Fifty-sixth Report. Edited by Organization WH. Geneva: World Health Organization; 2007を参照のこと。
【0105】
挿入された株は、固定された染色体挿入のために、より遺伝的に安定であり、したがって、産生プロセスの間、例えば、挿入された異種DNAを含む宿主細胞の培養の間の、所望のタンパク質産物のより高い再現性につながる。
【0106】
利益を調べるための分析方法
収量。収量は、制御され、最適化された条件下、バイオリアクター中で増殖された1リットルの細菌産生培養物に由来する炭水化物量として測定される。バイオコンジュゲートを精製した後、炭水化物収量は、アンスロンアッセイまたは炭水化物特異的抗血清を使用するELISAのいずれかによって直接的に測定され得る。間接的測定は、タンパク質量(周知のBCA、ローリーまたはブラッドフォード(bardford)アッセイによって測定された)ならびにタンパク質1グラム当たりの理論上の炭水化物量を算出するためのグリカンの長さおよび構造を使用することによって可能である。さらに、収量はまた、揮発性バッファーから糖タンパク質調製物を乾燥させることおよび重量を測定するために天秤を使用することによって測定され得る。
【0107】
均一性。均一性とは、グリカンの長さ、およびおそらくは、グリコシル化部位の数の可変性を意味する。上記で列挙された方法は、この目的のために使用され得る。SE-HPLCは、流体力学半径の測定を可能にする。キャリア中のより多い数のグリコシル化部位が、より少ないグリコシル化部位を有するキャリアと比較して、流体力学半径のより多い変動につながる。しかし、単一グリカン鎖が分析される場合には、それらは、より制御された長さのために、より均質であり得る。グリカンの長さは、ヒドラジン分解、SDS PAGEおよびCGEによって測定される。さらに、均一性はまた、特定のグリコシル化部位利用パターンが、より広い/より狭い範囲に変化することを意味し得る。これらの因子は、グリコペプチドLC-MS/MSによって測定され得る。
【0108】
株安定性および再現性。選択圧の不在下での細菌発酵の間の株安定性は、産生培養細胞における組換えDNAの存在または不在を確認する直接および関節法によって測定される。培養容量の影響は、世代時間の増大を意味する培養時間の延長によってシミュレートされ得る。発酵において世代がより多いほど、組換えエレメントが失われる可能性がより高い。組換えエレメントの喪失は、不安定性と考えられる。間接法は、組換えDNAとの選択カセットの関連、例えば、プラスミド中の抗生物質耐性カセットを利用する。産生培養細胞を、選択培地、例えば、抗生物質または選択系と関連しているその他の化学物質を補充したLBプレート上にプレーティングし、耐性コロニーは、それぞれの選択化学物質と関連している組換えDNAについて陽性と考えられる。多プラスミド系の場合には、複数の抗生物質に対する耐性コロニーがカウントされ、3種すべての耐性を含有する細胞の割合が安定集団と考えられる。あるいは、選択の存在、不在下で、発酵の種々の時点での3種の組換えエレメントの組換えDNAの量を測定するために、定量的PCRが使用され得る。したがって、組換えDNAの相対量および絶対量が測定および比較される。産生プロセスの再現性は、本出願において記載された方法による一貫性バッチの完全分析によって測定される。
【0109】
5.5 組成物
宿主細胞を含む組成物
一態様では、本明細書において記載される宿主細胞(5.1節を参照のこと)を含む組成物が本明細書において提供される。このような組成物は、本明細書において記載されるバイオコンジュゲート(5.3節を参照のこと)を製造するための方法において使用され得、例えば、宿主細胞を含む組成物は、タンパク質の産生に適した条件下で培養され得る。その後、バイオコンジュゲートが、当技術分野で公知の方法を使用して、宿主細胞を含む前記組成物から単離され得る。
【0110】
本明細書において提供される宿主細胞を含む組成物は、本明細書において記載される宿主細胞の維持および生存に適したさらなる構成成分を含んでもよく、宿主細胞によるタンパク質の産生にとって必要または有益なさらなる構成成分、例えば、アラビノース、IPTGなどの誘導プロモーターのための誘導物質をさらに含んでもよい。
【0111】
バイオコンジュゲートを含む組成物
別の態様では、本明細書に記載するバイオコンジュゲートの1以上(5.3節を参照のこと)を含む組成物(例えば医薬組成物)を本明細書において提供する。本明細書に記載の組成物は、シュードモナス属(Pseudomonas)による対象(例えばヒト対象)の感染の治療および予防に有用である。5.6節を参照のこと。
【0112】
ある実施形態において、本明細書に記載のバイオコンジュゲート(5.3節参照)を含むことに加えて、本明細書に記載の組成物(例えば医薬組成物)は、製薬上許容される担体を含む。本明細書において使用する用語「製薬上許容される」とは、連邦もしくは州政府の規制当局により認可されている、または米国薬局方もしくは動物(より具体的にはヒト)における使用のために一般的に認識されている他の薬局方に記載されていることを意味する。製薬上許容される担体の文脈で本明細書において使用する用語「担体」とは、医薬組成物と一緒に投与される希釈剤、助剤、賦形剤またはビヒクルを指す。生理食塩水溶液および水性デキストロースおよびグリセロール溶液もまた液体担体として、特に注射用液のために使用することができる。好適な賦形剤には、デンプン、グルコース、ラクトース、スクロース、ゼラチン、麦芽、コメ、小麦粉、白亜、シリカゲル、ステアリン酸ナトリウム、グリセロールモノステアレート、タルク、塩化ナトリウム、乾燥スキムミルク、グリセロール、プロピレン、グリコール、水、エタノールなどが含まれる。好適な医薬担体の例は、「Remington's Pharmaceutical Sciences」(E.W. Martin著)に記載されている。
【0113】
特定の実施形態において、シュードモナス属抗原に連結されたキャリアタンパク質を含むバイオコンジュゲートを含む組成物(例えば医薬組成物)を本明細書において提供する。特定の実施形態において、緑膿菌のO抗原に連結されたキャリアタンパク質を含むバイオコンジュゲートを含む組成物(例えば医薬組成物)を本明細書において提供する。
【0114】
特定の実施形態において、緑膿菌O抗原に連結されたキャリアタンパク質を含むバイオコンジュゲートを含む組成物(例えば医薬組成物)を本明細書において提供し、ここで緑膿菌O抗原は、緑膿菌血清型O1、O2、O3、O4、O5、O6、O7、O8、O9、O10、O11、O12、O13、O14、O15、O16、O17、O18、O19またはO20由来のO抗原である。
【0115】
特定の実施形態において、緑膿菌O抗原に連結されたキャリアタンパク質を含むバイオコンジュゲートを含む組成物(例えば医薬組成物)を本明細書において提供し、ここで緑膿菌O抗原は、緑膿菌血清型O6に由来するO抗原である。
【0116】
特定の実施形態において、緑膿菌O抗原に連結されたキャリアタンパク質を含むバイオコンジュゲートを含む組成物(例えば医薬組成物)を本明細書において提供し、ここで緑膿菌O抗原は、緑膿菌血清型O11に由来するO抗原である。特定の実施形態において、緑膿菌血清型O11由来のO抗原は、緑膿菌PA103株(例えばGenbankアクセッション番号KF364633.1参照)に由来するものである。
【0117】
本明細書において提供されるバイオコンジュゲートを含む組成物は、組成物が投与される宿主において免疫応答を誘導するために用いることができる、すなわち組成物が免疫原性である。したがって、本明細書において記載される組成物は、シュードモナス属(Pseudomonas)感染に対するワクチンとして使用することができ、またはシュードモナス属感染の治療において使用することができる。
【0118】
本明細書において記載されるバイオコンジュゲートを含む組成物は、医薬投与において使用するのに適した任意のさらなる構成成分を含み得る。特定の実施形態では、本明細書において記載される組成物は、一価製剤である。その他の実施形態では、本明細書において記載される組成物は、多価製剤、例えば二価、三価および四価製剤である。例えば、多価製剤は、2種以上の本明細書において記載されるバイオコンジュゲートを含む。
【0119】
ある特定の実施形態では、本明細書において記載される組成物は、保存料、例えば、水銀誘導体チメロサールをさらに含む。特定の実施形態では、本明細書において記載される医薬組成物は、0.001%〜0.01%のチメロサールを含む。その他の実施形態では、本明細書において記載される医薬組成物は、保存料を含まない。
【0120】
ある特定の実施形態では、本明細書において記載される組成物(例えば、免疫原性組成物)は、アジュバントを含むか、またはそれと組み合わせて投与される。本明細書において記載される組成物と組み合わせて投与するためのアジュバントは、前記組成物の投与の前、それと同時にまたはその後に投与され得る。いくつかの実施形態では、用語「アジュバント」とは、本明細書において記載される組成物と併せて、またはその一部として投与される場合には、バイオコンジュゲートに対する免疫応答を増大、増強および/またはブーストするが、化合物が単独で投与される場合には、バイオコンジュゲートに対する免疫応答を発生させない化合物を指す。いくつかの実施形態では、アジュバントは、ポリバイオコンジュゲートペプチドに対する免疫応答を発生させ、アレルギーまたはその他の有害反応をもたらさない。アジュバントは、例えば、リンパ球動員、Bおよび/またはT細胞の刺激およびマクロファージの刺激を含めたいくつかの機序によって免疫応答を増強し得る。
【0121】
アジュバントの具体例として、それだけに限らないが、アルミニウム塩(ミョウバン)(水酸化アルミニウム、リン酸アルミニウムおよび硫酸アルミニウムなど)、3デ-O-アシル化モノホスホリルリピドA(MPL)(英国特許GB2220211を参照のこと)、MF59(Novartis)、AS03(GlaxoSmithKline)、AS04(GlaxoSmithKline)、ポリソルベート80(Tween 80、ICL Americas、Inc.)、イミダゾピリジン化合物(国際公開番号WO2007/109812として公開された国際出願番号PCT/US2007/064857を参照のこと)、イミダゾキノキサリン化合物(国際公開番号WO2007/109813として公開された国際出願番号PCT/US2007/064858を参照のこと)およびQS21(Kensilら、in Vaccine Design: The Subunit and Adjuvant Approach(Powell & Newman編、Plenum Press、NY、1995)、米国特許第5,057,540号を参照のこと)などのサポニンが挙げられる。いくつかの実施形態では、アジュバントは、フロイントのアジュバント(完全または不完全)である。その他のアジュバントとして、任意選択で、モノホスホリルリピドA(Stouteら、N. Engl. J. Med. 336、86〜91頁(1997)参照のこと)などの免疫刺激剤と組み合わせた、水中油型エマルジョン(スクアレンまたはピーナッツオイルなど)がある。別のアジュバントとして、CpG(Bioworld Today、1998年11月15日)がある。
【0122】
ある特定の実施形態では、本明細書において記載される組成物は、対象への意図する投与経路に好適なように製剤化される。例えば、本明細書に記載の組成物は、皮下、非経口、経口、皮内、経皮、直腸内、腹腔内および直腸投与に適するように製剤化することができる。具体的な実施形態において、医薬組成物は、静脈内、経口、腹腔内、鼻内、気管内、皮下、筋内、局所、皮内、経皮または肺内投与のために製剤化し得る。
【0123】
ある特定の実施形態では、本明細書において記載される組成物は、1種以上のバッファー、例えばリン酸バッファーおよびスクロースリン酸グルタミン酸バッファーをさらに含む。他の実施形態において、本明細書に記載の組成物はバッファーを含まない。
【0124】
ある特定の実施形態では、本明細書において記載される組成物は、1種以上の塩、例えば塩化ナトリウム、塩化カルシウム、リン酸ナトリウム、グルタミン酸ナトリウム、およびアルミニウム塩(例えば、水酸化アルミニウム、リン酸アルミニウム、ミョウバン(アルミニウム硫酸カリウム)、またはこのようなアルミニウム塩の混合物)をさらに含む。他の実施形態において、本明細書に記載の組成物は塩を含まない。
【0125】
本明細書において記載される組成物は、投与のための説明書と共に、容器、パック又はディスペンサに含めることができる。
【0126】
本明細書において記載される組成物は、使用前に保存することができ、例えば組成物は、凍結保存(例えば約-20℃もしくは約-70℃)、冷蔵庫条件での保存(例えば約4℃)、または室温での保存をすることができる。
【0127】
5.6 予防的および治療的使用
一態様では、本明細書中に記載されるバイオコンジュゲート(5.3節を参照されたい)またはその組成物(5.5節を参照されたい)を対象に投与することを含む、対象でのシュードモナス属感染を治療する方法が、本明細書中に提供される。別の態様では、本明細書中に記載されるバイオコンジュゲート(5.3節を参照されたい)またはその組成物(5.5節を参照されたい)を対象に投与することを含む、対象でのシュードモナス属感染を予防する方法が、本明細書中に提供される。
【0128】
本明細書中に記載されるバイオコンジュゲート(5.3節を参照されたい)または本明細書中に記載される組成物(5.5節を参照されたい)を対象に投与することを含む、シュードモナス属に対する対象での免疫応答を誘導する方法もまた、本明細書中に提供される。一実施形態では、該対象は、投与時にシュードモナス属感染を有する。別の実施形態では、該対象は、投与時にシュードモナス属感染を有しない。
【0129】
具体的な実施形態では、対象でのシュードモナス属感染を予防する方法が本明細書中に提供され、該方法は、5.5節に記載される有効量の組成物を、それを必要とする対象に投与することを含む。本明細書中に提供される対象でのシュードモナス属感染を予防する方法は、対象での免疫応答の誘導を生じさせ、5.5節に記載される組成物を対象に投与することを含む。当業者は、本明細書中に記載される対象での免疫応答を誘導する方法が、組成物中にその抗原が存在するシュードモナス属菌株による感染に対する対象のワクチン接種をもたらすことを理解するであろう。
【0130】
具体的な実施形態では、対象でのシュードモナス属感染を治療する方法が本明細書中に提供され、該方法は、5.5節に記載される有効量の組成物を、それを必要とする対象に投与することを含む。
【0131】
特定の実施形態では、本明細書中に記載されるバイオコンジュゲート(5.3節を参照されたい)または本明細書中に記載される組成物(5.5節を参照されたい)により誘導される免疫応答は、緑膿菌により引き起こされるシュードモナス属感染を予防および/または治療するために有効である。特定の実施形態では、本明細書中に記載されるバイオコンジュゲート(5.3節を参照されたい)または本明細書中に記載される組成物(5.5節を参照されたい)により誘導される免疫応答は、緑膿菌の2種以上の菌株または血清型によるシュードモナス属感染を予防および/または治療するために有効である。
【0132】
具体的な実施形態では、本明細書中に記載されるバイオコンジュゲート(5.3節を参照されたい)または本明細書中に記載される組成物(5.5節を参照されたい)により誘導される免疫応答は、緑膿菌血清型O1、O2、O3、O4、O5、O6、O7、O8、O9、O10、O11、O12、O13、O14、O15、O16、O17、O18、O19、またはO20により引き起こされる感染を予防および/または治療するために有効である。別の具体的な実施形態では、緑膿菌由来の該rfbクラスターは、Knirel et al., 2006, Journal of Endotoxin Research 12(6):324-336(その開示は全体が参照により本明細書中に組み入れられる)に記載される血清型のうちのいずれか1種由来のrfbクラスターである。具体的な実施形態では、本明細書中に記載されるバイオコンジュゲート(5.3節を参照されたい)または本明細書中に記載される組成物(5.5節を参照されたい)により誘導される免疫応答は、緑膿菌血清型O6により引き起こされる感染を予防および/または治療するために有効である。具体的な実施形態では、本明細書中に記載されるバイオコンジュゲート(5.3節を参照されたい)または本明細書中に記載される組成物(5.5節を参照されたい)により誘導される免疫応答は、緑膿菌血清型O11により引き起こされる感染を予防および/または治療するために有効である。具体的な実施形態では、該緑膿菌血清型O11は、緑膿菌PA103株(例えば、Genbank登録番号KF364633.1)である。
【0133】
特定の実施形態では、本明細書中に記載されるバイオコンジュゲート(5.3節を参照されたい)または本明細書中に記載される組成物(5.5節を参照されたい)の投与後に対象で誘導される免疫応答は、シュードモナス属感染により生じる1種以上の症状を低減するために有効である。
【0134】
特定の実施形態では、本明細書中に記載されるバイオコンジュゲート(5.3節を参照されたい)または本明細書中に記載される組成物(5.5節を参照されたい)の投与後に対象で誘導される免疫応答は、シュードモナス属感染に罹患した対象の入院の見込みを低減するために有効である。一部の実施形態では、本明細書中に記載されるバイオコンジュゲート(5.3節を参照されたい)または本明細書中に記載される組成物(5.5節を参照されたい)の投与後に対象で誘導される免疫応答は、シュードモナス属感染に罹患した対象の入院期間を減少させるために有効である。
【0135】
5.7 アッセイ
免疫応答を誘導するバイオコンジュゲートの能力を評価するためのアッセイ
対象での免疫応答を生起する本明細書中に記載されるバイオコンジュゲート/組成物の能力は、当業者に公知であるかまたは本明細書中に記載されるいずれかのアプローチを用いて評価することができる。一部の実施形態では、対象での免疫応答を生起するバイオコンジュゲートの能力は、対象(例えば、マウス)または対象のセットを、本明細書中に記載されるバイオコンジュゲートを用いて免疫化し、かつ追加の対象(例えば、マウス)または対象のセットを、対照(PBS)を用いて免疫化することにより評価することができる。対象または対象のセットに、続いて、シュードモナス属を接種し、対象または対象のセットで疾患を引き起こすシュードモナス属の能力を決定することができる。対照を用いて免疫化された対象または対象のセットがシュードモナス属の接種に続いて疾患に罹患するが、本明細書中に記載されるバイオコンジュゲートまたはその組成物を用いて免疫化された対象または対象のセットが疾患にあまり罹患しないかまたは罹患しない場合に、バイオコンジュゲートは対象で免疫応答を生起できることを、当業者は理解するであろう。シュードモナス属抗原と交差反応する抗血清を誘導する本明細書中に記載されるバイオコンジュゲートまたはその組成物の能力は、例えば、ELISAなどの免疫アッセイにより試験することができる。
【0136】
in vitro殺菌アッセイ
対象で免疫応答を生起する本明細書中に記載されるバイオコンジュゲートの能力は、血清殺菌アッセイ(SBA)またはオプソニン食作用殺菌アッセイ(opsonophagocytotic killing assay;OPK)を用いて評価することができ、このアッセイは、糖コンジュゲートに基づくワクチンの承認を得るために用いられてきた確立され受け入れられた方法を代表する。そのようなアッセイは当技術分野で周知であり、簡潔には、抗体を生起させる化合物を対象(例えば、マウス)に投与することにより、対象となる標的(例えば、シュードモナス属の抗原)に対する抗体を生成および単離するステップを含む。続いて、抗体の殺菌能を、例えば、該抗体および補体ならびに(アッセイによっては)好中球の存在下で当該細菌を培養するステップおよび例えば、標準的な微生物学的アプローチを用いて、細菌を死滅および/または中和する抗体の能力をアッセイするステップにより評価することができる。
【実施例】
【0137】
実施例1:オリゴサッカリルトランスフェラーゼおよびrfbクラスターを挿入された細菌株は安定でありかつバイオコンジュゲートを産生する
本実施例は、(i) オリゴサッカリルトランスフェラーゼをコードする核酸および(ii) rfbクラスターをコードする核酸の挿入により遺伝的に改変された細菌宿主株により、バイオコンジュゲートが成功裏に産生され得ることを実証する。
【0138】
改変型大腸菌宿主細胞は、以下の核酸を宿主細胞ゲノムに直接的に挿入することにより作製した:(i) C.ジェジュニオリゴサッカリルトランスフェラーゼ(PglB)をコードする核酸および(ii) 緑膿菌PA103株由来のrfbクラスターをコードする核酸。このrfbクラスターは、緑膿菌血清群O11抗原のO抗原合成に必要な遺伝子をコードする。挿入は、PCT/EP2013/071328に記載される新規挿入法(上記の5.2節を参照されたい)またはpUT mini system(Biomedal Lifescience社)を用いて行なった。PCT/EP2013/071328に記載される挿入法は部位特異的であり、相同組み換えを利用するが、pUT mini systemは、無作為なトランスポゾン媒介アプローチであり、宿主細胞ゲノムにランダムに挿入された対象となる核酸配列を生じる。大腸菌宿主細胞を、宿主細胞への、キャリアタンパク質として無毒化シュードモナス属エキソトキシンA(EPA)を発現するプラスミドの導入によりさらに改変した。つまり、本実施例に記載される改変型大腸菌宿主細胞は、以下のものを発現する:(i) 宿主細胞ゲノムへのオリゴサッカリルトランスフェラーゼをコードする核酸のインテグレーションによって、C.ジェジュニオリゴサッカリルトランスフェラーゼ(PglB);(ii) 宿主細胞ゲノムへの緑膿菌PA103株由来rfbクラスターをコードする核酸のインテグレーションによって、O11抗原を生成する緑膿菌rfbクラスターの遺伝子;および(iii) キャリアタンパク質をコードする核酸を含むプラスミドを用いて宿主細胞を形質転換することによって、EPAキャリアタンパク質。
【0139】
二重インテグレーション(オリゴサッカリルトランスフェラーゼのインテグレーションおよびrfbクラスターのインテグレーション)を含む改変型宿主細胞がバイオコンジュゲート(EPA-O11)を産生する能力と、(i) オリゴサッカリルトランスフェラーゼまたはrfbクラスターの単独インテグレーションしかされず、残余の構成要素(キャリアタンパク質およびオリゴサッカリルトランスフェラーゼまたはrfbクラスター)が宿主細胞によりプラスミド発現されるか;または(ii) すべての構成要素(キャリアタンパク質およびオリゴサッカリルトランスフェラーゼおよびrfbクラスター)がプラスミド発現され、インテグレートされた構成要素がない宿主細胞によるバイオコンジュゲート産生との比較を可能にするために、追加の改変型大腸菌宿主細胞が作製された。
【0140】
3種類の異なる大腸菌バックグラウンド株を、分析で用いた:(i) 「St4167」(W3110ΔwaaL, ΔrfbO16::rfbP.a.O11)、大腸菌waaL遺伝子の欠失、大腸菌O16 rfbクラスターの欠失、および緑膿菌O11 rfbクラスターの挿入を含む(PCT/EP2013/071328);(ii) 「St1128」(W3110ΔwaaL)、大腸菌waaL遺伝子の欠失を含む;および(iii) 「St1935」(W3110ΔwaaL, ΔwzzE-wecG, ΔwbbIJK)、示された遺伝子の欠失を含む。St4167での緑膿菌O11 rfbクラスターの挿入のために、O11 rfbクラスターをpDOCプラスミドにクローニングし、PCT/EP2013/071328に従う方法を用いた。St4167株は、二重インテグレーション株を表わす。
【0141】
宿主細胞株へとEPAを導入するために用いられる具体的なプラスミドは、「p1077」および「p150」と記載される。後者はIhssen, et al., (2010) Microbial cell factories 9, 61に記載され、プラスミドは、p1077ではp150のAmpカセットがKanカセットで置き換えられていること以外は同じである。
【0142】
以下のSt4167変異体が作製された:(i) 宿主細胞yahL遺伝子の代わりにpglBが挿入されており(PCT/EP2013/071328の方法により)、EPAがプラスミドp1077により発現されるSt4167;(ii) 宿主細胞ompT遺伝子の代わりにpglBが挿入されており(pUT mini systemにより)、EPAがプラスミドp150により発現されるSt4167;(iii) pglBがプラスミドp1769(pDOC中のpglB)により発現され、EPAがプラスミドp1077により発現されるSt4167;(iv) pglBがプラスミドp939(HAタグを有し、コドン最適化されたPglB のためのpEXT21ベースの発現プラスミド)により発現され、EPAがプラスミドp1077により発現されるSt4167;および(v) pglBがプラスミドp1762(pDOC中のpglB)により発現され、EPAがプラスミドp1077により発現されるSt4167。
【0143】
以下のSt1128変異体が作製された:(i) pglBがプラスミドp939により発現され、緑膿菌O11 rfbクラスターがプラスミドp164(遺伝子操作されたことにより、緑膿菌O11 rfbクラスターを含むpLAFRプラスミド)により発現され、EPAがプラスミドp1077により発現されるSt1128;および(ii) 宿主細胞yahL遺伝子の代わりにpglBが挿入されており(PCT/EP2013/071328の方法により)、緑膿菌O11 rfbクラスターがプラスミドp164により発現され、EPAがプラスミドp1077により発現されるSt1128。
【0144】
以下のSt1935変異体が作製された:(i) 宿主細胞ompT遺伝子の代わりにpglBが挿入されており(PCT/EP2013/071328の方法により)、緑膿菌O11 rfbクラスターがプラスミドp164により発現され、EPAがプラスミドp1077により発現されるSt1935;(ii) 宿主細胞yahL遺伝子の代わりにpglBが挿入されており(PCT/EP2013/071328の方法により)、緑膿菌O11 rfbクラスターがプラスミドp164により発現され、EPAがプラスミドp1077により発現されるSt1935;およびpglBがプラスミドp939により発現され、緑膿菌O11 rfbクラスターがプラスミドp164により発現され、EPAがプラスミドp1077により発現されるSt1935。
【0145】
図1に示される通り、オリゴサッカリルトランスフェラーゼ、キャリアタンパク質およびrfbクラスターを発現するすべての菌株が、バイオコンジュゲートを産生した。EPA-O11に対応する、100kDaマーカーと130kDaマーカーとの間に示されるブロットを参照されたい。重要なことに、この知見は、オリゴサッカリルトランスフェラーゼおよびrfbクラスターの二重インテグレーションを含む菌株を含む。特に、St4167に対して示される結果を参照されたい。つまり、本実施例は、宿主細胞ゲノムへの遺伝子/遺伝子クラスターの二重挿入後に安定的宿主細胞が作製できることのみならず、遺伝子の機能が維持されることも実証する。具体的には、挿入されたオリゴサッカリルトランスフェラーゼおよび挿入されたrfbクラスターの機能は保存され、バイオコンジュゲートの産生をもたらした。
【0146】
実施例2:天然緑膿菌O6 O抗原オリゴ糖/多糖の合成に寄与するホルミルトランスフェラーゼ遺伝子の特定
本実施例は、緑膿菌O6ホルミルトランスフェラーゼの特定を記載する。
【0147】
そのゲノムが公知である緑膿菌O6株「LESB58」からのプロテオームデータを、原型クエリドメインである「ホルミルトランスフェラーゼ」および「FMT C末端ドメイン様」ドメインに対する相同性を含むドメインに関して、www.supfam.org/SUPERFAMILY/で提供されるアルゴリズムを用いて検索した。検索は、考えられる関連ドメインを有する9種類のタンパク質配列を特定した。
【0148】
特定された9種類の候補のうちのいずれかがO6に対して(そしてそれによりホルミル化型O抗原反復単位に対して)特異的であるか否かを評価するために、別の緑膿菌血清型(O5、PAO1株)のプロテオームでのその非存在を、BLAST検索(NCBIウェブサイト)を用いて解析した。緑膿菌O5 O抗原構造は、緑膿菌O6のものとは関連しない。具体的には、O5構造にはホルミル基は存在しない。9種類の候補のうちの8種類が、緑膿菌血清型O5でホモログを有し、このことは、これらのタンパク質が、緑膿菌O6 LESB58株に対して非特異的であることを示した。残りの候補(locus_tag=PLES_12061、GenBank:CAW25933.1;配列番号2)は、緑膿菌血清型O5では明らかなホモログを有さず、したがって、LESB58/緑膿菌血清型O6に特異的であると分類された。
【0149】
O6特異性を確認するために、他の緑膿菌血清型O6株での、見出された緑膿菌血清型O6ホルミルトランスフェラーゼ(配列番号2)の存在を検証した。緑膿菌血清型O6ホルミルトランスフェラーゼ(配列番号2)に同等なタンパク質が、「PAK」株でのlocus tag:PAK_01412およびM18株でのlocus tag:PAM18_1171をはじめとする4種類の他の緑膿菌血清型O6株で特定された。
【0150】
緑膿菌血清型O6ホルミルトランスフェラーゼ(配列番号2)に対して低いアミノ酸配列同一性を有するホルミルトランスフェラーゼはまた、メチロバクテリウム属の種(Methylobacterium sp.)(33%の同一性、登録番号WP_020093860)、チオスリックス・ニベア(Thiothrix nivea)(30%の同一性、登録番号WP_002707142)、アナエロファガ・テルオハロフィラ(Anaerophaga thermohalophila)(28%の同一性、登録番号WP_010422313)、ハロルブルム・カリフォルニエンセ(Halorubrum californiense)(27%の同一性、登録番WP_008445073)、アゾリゾビウム・カウリノダンス(Azorhizobium caulinodans)(25%の同一性、登録番号WP_012170036)およびブルクホルデリア・グラテイ(Burkholderia glathei)(24%の同一性、登録番号KDR39707)でも特定された。併せて考えると、これらの相同性解析は、関連遺伝子がホルミル化に関するO6特異的活性をコードすることを示した。
【0151】
非ホルミル化O6反復単位構造に対する緑膿菌血清型O6ホルミルトランスフェラーゼ(配列番号2)の機能的活性を試験するために、配列番号2をコードする遺伝子をクローニングした。遺伝子の稀なTTG開始コドンを、ATGに置き換えた。緑膿菌O6 rfbクラスターへの緑膿菌血清型O6ホルミルトランスフェラーゼ(配列番号2)のクローニングおよび遺伝子の相対的構成の模式的表示を、図5に示す。
【0152】
特定されたら、緑膿菌O6ホルミルトランスフェラーゼの機能を評価した。緑膿菌血清型O6ホルミルトランスフェラーゼ(配列番号2)を、機能的ECA(wec)クラスターを欠失している大腸菌株での緑膿菌O6のrfbクラスター遺伝子との共発現により、機能性について試験した。ホルミル化を示すために、リピドAコアに結合した単一抗原反復単位を分析した(waaL陽性菌株にて)。ホルミル化されたO6 O抗原反復単位を、O6特異的抗体を用いる免疫検出により特定し(図3A)、これにより、ホルミル基が緑膿菌O6 O抗原構造の重要なエピトープであることが示された。
【0153】
分子レベルでホルミル化を示すために、O6反復単位を、MALDI MSMSにより分析した。精製されて2AB標識された反復単位は、緑膿菌血清型O6ホルミルトランスフェラーゼ(配列番号2)と緑膿菌O6のrfbクラスター遺伝子との共発現が、2〜3分間シフトした主ピーク(58〜61分、図3B)の蛍光シグナルを生じたことを示した。
【0154】
58分でのピークに含有される物質のMALDI MSMS分析は、Yイオン断片化シリーズをもたらし、これは、非ホルミル化、Nアセチル化2-AB標識O6反復単位と一致する。プロトン化前駆体イオンm/z=905は、905→759→543→326の顕著なイオンシリーズへと断片化され、これは、146(デオキシヘキソース)、216(アミド化N-アセチルヘキソサミヌロン酸)、217(N-アセチルヘキソサミヌロン酸)単位の喪失に対応する。緑膿菌血清型O6ホルミルトランスフェラーゼ遺伝子を発現する細胞から取得された61分で回収された物質は、891の顕著な前駆体イオンを含有し、これは、891→745→529→326で断片化され、146(上記の通り)、216(上記の通り)、および203(アミド化N-ホルミルヘキソサミヌロン酸)の喪失に対応する。このデータは、ホルミル化が緑膿菌血清型O6ホルミルトランスフェラーゼの発現に依存すること、およびしたがって、遺伝子がホルミルトランスフェラーゼをコードしていることを証明した。結果として、緑膿菌血清型O6ホルミルトランスフェラーゼをコードする遺伝子は、fmtO6と命名された。アミド化型N-アセチルヘキソサミヌロン酸のアセチル基がホルミル基により置換されているという事実は、最初にアセチル基が除去され、その後にホルミル基を付加することができる二段階機構を示唆する。このモデルは、遊離アミン基が、中間体としてC2に存在し、その後にホルミルトランスフェラーゼドメインがホルミル基を単糖に連結させるであろうことを暗示する。つまり、脱アセチル化非ホルミル化O抗原が、実質的な、免疫学的に重要な、化学量論的な量よりも少ない量で(substochiometrically)存在する、緑膿菌血清型O6の多糖形態であり得る。
【0155】
実施例3:緑膿菌O6 O抗原の多量体化のためのwzy遺伝子の特定および試験
本実施例は、緑膿菌O6 wzyポリメラーゼの特定を記載する。
【0156】
O抗原多糖は、多数のグラム陰性細菌の細胞外表面を構成する。O抗原の生合成を担う酵素的機構は、多くの場合、rfbクラスターと称される単一遺伝子クラスター中にコードされる。緑膿菌血清型O6株は、多量体O抗原を発現する(図2)。しかしながら、個別のO抗原クラスターには、O抗原ポリメラーゼ(wzy)をコードする遺伝子が存在しない。このことは、大腸菌で緑膿菌O6 O抗原を組み換え的に発現させるためには、wzy遺伝子の特定が必要であることを意味する。O抗原ポリメラーゼ(wzy)は、LPSを形成するために、リピドAコアオリゴ糖への「一括」(en bloc)ライゲーションに先立つ、ペリプラズム腔でのO抗原反復単位の多量体化を触媒する、不可欠な内膜タンパク質である。wzyポリメラーゼは、それらの反復単位オリゴマーに対して高度に特異的であり、wzy遺伝子間での相同性は低い。
【0157】
緑膿菌O19のO抗原は、緑膿菌O6のものとの構造的類似性を有する。両方の構造を認識するwzyタンパク質は、似通った性質、例えば、構造、配列、膜貫通ドメイン数も共有し得るであろうことが推測された。緑膿菌O19のO19 Wzyタンパク質の配列(登録番号AAM27560)は公知であり、相同性検索のための対象として緑膿菌O6 PAK株プロテオームを用いるBlast解析での一次クエリとして用いた。
【0158】
特定された候補が緑膿菌O6に特異的であるか否かを評価するために、別の緑膿菌血清型(O5、PAO1株)のプロテオームでのその存在を解析した。O5 O抗原構造は、O6およびO19のものとは関連しない。上位100種類の結果を、blast解析を用いて緑膿菌O5プロテオームでの存在について個別に分析した。PAKプロテオーム由来の100種類の候補のうちの97種類が、緑膿菌血清型O5プロテオーム中でホモログを有し、このことにより、これらのタンパク質が、緑膿菌株に一般的に存在し、O6 O抗原生合成にはおそらく関連しないことが示された。100種類の候補のうちの3種類は、緑膿菌O5プロテオームには明らかなホモログを有さず、したがって、緑膿菌O6に特異的であると判定された。
【0159】
3種類の特定された候補タンパク質のうちの1種類が緑膿菌O6 wzyであるか否かを調べるために、3種類のタンパク質をBlast解析でのクエリとして用いた。3種類の候補のうちの1種類であるPAK_01823(O6wzy PAK_01823;配列番号3)は、他の公知のオリゴ糖反復単位ポリメラーゼに対してアミノ酸配列同一性を有し、例えば、ストレプトコッカス・サングイニス(Streptococcus sanguinis)オリゴ糖反復単位ポリメラーゼ(登録番号WP_004192559)に対して25%の同一性、大腸菌O139オリゴ糖反復単位ポリメラーゼ(登録番号AAZ85718)に対して22%の同一性を有した。その結果、PAK_01823(O6wzy PAK_01823;配列番号3)は、緑膿菌O6 wzyとして特定された。
【0160】
緑膿菌O6 wzyによりコードされるタンパク質として配列番号3をさらに確認するために、タンパク質の細胞内局在を、PSORTb(www.psort.org/psortb/)を用いてバイオインフォマティクスによって予測した。タンパク質は、O抗原ポリメラーゼに共通な特徴である11個の膜貫通ドメインを有して細胞膜中に局在することが予測された。
【0161】
PAK_01823(O6wzy PAK_01823;配列番号3)と同等なタンパク質が、LESB58株(PAK株および内部で試験された菌株と比較して1アミノ酸しか異ならない緑膿菌O6 wzyタンパク質を有した)をはじめとする他のO6陽性緑膿菌株で見出された。
【0162】
次に、緑膿菌O6 wzyの機能性試験を行なった。緑膿菌O6 rfbクラスター、fmtO6遺伝子(すなわち、上記の実施例2で議論された配列番号2をコードする遺伝子)、および緑膿菌O6 wzyをコードする遺伝子(すなわち、配列番号3をコードする遺伝子)を、大腸菌W3110Δwec細胞で共発現させ、形成されたリポ多糖を免疫ブロッティングにより分析した(図4)。抗O6抗血清は、3種類すべての導入遺伝子を含む細胞に由来するサンプルのみでラダー様シグナルを検出し、このことは、PAK_01823(O6wzy PAK_01823;配列番号3)が、実際に緑膿菌O6のポリメラーゼであることを示す。結果として、PAK_01823をコードする遺伝子がO6wzyと命名された。
【0163】
大腸菌が緑膿菌O6 O抗原を組み換え的に発現できるようにするために必要なすべての遺伝的エレメントを含む単一の遺伝子クラスターを作製するために、fmtO6遺伝子およびO6wzy遺伝子(すなわち、それぞれ配列番号2および3をコードする遺伝子)を、緑膿菌O6 rfbクラスターの下流にクローニングした。コドン使用頻度が最適化された緑膿菌O6 O抗原ポリメラーゼO6wzyの、クローニングされた緑膿菌O6 rfbクラスターへのO6ホルミルトランスフェラーゼと併せたクローニングおよび遺伝子の相対的構成の模式的表示を、図5に示す。fmtO6遺伝子およびO6wzy遺伝子(すなわち、それぞれ配列番号2および3をコードする遺伝子)を、複数の位置で緑膿菌O6 rfbクラスターへと挿入できたことがさらに決定された。具体的には、fmtO6遺伝子は、別個のプロモーターの制御下にて、rfbクラスターの下流またはrfbクラスターの上流にrfbクラスターに対して時計回りの方向で挿入することができた。また、fmtO6遺伝子は、rfbクラスターの上流または下流にrfbクラスターに対して反時計回りの方向で挿入することができた。O6wzy遺伝子は、rfbクラスターの上流もしくは下流に、または別個のプロモーターの制御下にてrfbクラスターの上流に、rfbクラスターに対して時計回りの方向で挿入することができた。上記のすべての構築物は、緑膿菌O6 O抗原生合成に関して活性であった(データは示していない)。
【0164】
実施例4:オリゴサッカリルトランスフェラーゼが挿入され、rfbが挿入され、完全なrfbO6クラスターを有する細菌株は安定でありかつバイオコンジュゲートを産生する
実施例1は、(i) オリゴサッカリルトランスフェラーゼをコードする核酸および(ii) rfbクラスターをコードする核酸の挿入により遺伝的に改変された細菌宿主菌株により、バイオコンジュゲートを成功裏に生成させることができることを実証する。本実施例では、キャリアタンパク質としてシュードモナス属タンパク質PcrVを用いて、実施例1に記載されるものに類似した実験が行なわれた。
【0165】
天然では、PcrV(例えば、UniProt O30527を参照されたい)の一次アミノ酸配列は、N-グリコシル化コンセンサス配列(「糖化部位」(glycosite))を含まない。国際公開第2006/119987号に記載される方法を用いて、1、2、3、4、または5箇所の糖化部位を含むPcrVの組み換え変異体を作製した。特に、PcrVをコードする核酸配列の操作により、最適化されたN-グリコシル化コンセンサス配列(consensuss sequence)であるAsp(Glu)-X-Asn-Z-Ser(Thr)(ここで、XおよびZは独立に、Pro以外のいずれかの天然アミノ酸から選択される)を1、2、3、4、または5個発現するPcrV変異体を作製した。
【0166】
改変型大腸菌宿主細胞は、以下の核酸を宿主細胞ゲノムに直接的に挿入することにより作製した:(i) C.ジェジュニオリゴサッカリルトランスフェラーゼ(PglB)をコードする核酸および(ii) 緑膿菌血清型O6 PAK株由来のrfbクラスターをコードする核酸。このrfbクラスターは、緑膿菌血清群O6抗原のO抗原合成に必要な遺伝子をコードする。挿入は、PCT/EP2013/071328に記載される新規挿入法(上記の5.2節を参照されたい)またはpUT mini system(Biomedal Lifescience社)を用いて行なった。大腸菌宿主細胞を、上記の通りの1〜5箇所の糖化部位を含むPcrVを発現するプラスミドの導入によりさらに改変した。つまり、本実施例に記載される改変型大腸菌宿主細胞は、以下のものを発現する:(i) 宿主細胞ゲノムへのオリゴサッカリルトランスフェラーゼをコードする核酸のインテグレーションによって、C.ジェジュニオリゴサッカリルトランスフェラーゼ(PglB);(ii) 宿主細胞ゲノムへの緑膿菌PAK株由来rfbクラスターをコードする核酸のインテグレーションによって、O6抗原を生成する緑膿菌rfbクラスターの遺伝子;および(iii) キャリアタンパク質をコードする改変型核酸(核酸は、上記の通り、1〜5箇所の糖化部位をコードするように改変されている)を含むプラスミドを用いて宿主細胞を形質転換することによって、改変型PcrVキャリアタンパク質。
【0167】
二重インテグレーション(オリゴサッカリルトランスフェラーゼのインテグレーションおよびrfbクラスターのインテグレーション)を含む改変型宿主細胞がバイオコンジュゲート(PcrV-O6)を産生する能力と、(i) オリゴサッカリルトランスフェラーゼまたはrfbクラスターの単独インテグレーションしかされず、残余の構成要素(キャリアタンパク質およびオリゴサッカリルトランスフェラーゼまたはrfbクラスター)が宿主細胞によりプラスミド発現されるか;または(ii) すべての構成要素(キャリアタンパク質およびオリゴサッカリルトランスフェラーゼおよびrfbクラスター)がプラスミド発現され、インテグレートされた構成要素がない宿主細胞によるバイオコンジュゲート産生との比較を可能にするために、追加の改変型大腸菌宿主細胞が作製された。
【0168】
3種類の異なる大腸菌株が、分析で用いられ、比較された:「St7343」、宿主細胞ゲノムに挿入されたpglBおよび完全なO6 rfbクラスターの両方(すなわち、二重インテグレーションされた菌株)およびPcrVキャリアタンパク質(1、2、3、4、または5箇所の糖化部位を含む)をコードするプラスミドを含む;(ii) 「St7209」、プラスミド発現pglB、宿主細胞ゲノムに挿入されたO6 rfbクラスターおよびPcrVキャリアタンパク質(1、2、3、4、または5箇所の糖化部位を含む)をコードするプラスミドを含む;(iii) 「St2182」、プラスミド発現pglB、プラスミド発現O6 rfbクラスターおよびPcrVキャリアタンパク質(1、2、3、4、または5箇所の糖化部位を含む)をコードするプラスミドを含む。図6は、各菌株の特徴を示す(図6A:St7343;図6B:St7209;図6C:St2182)。
【0169】
図6に示される通り、オリゴサッカリルトランスフェラーゼ、キャリアタンパク質およびrfbクラスターを発現するすべての菌株が、バイオコンジュゲートを産生した。PcrV-O6に対応する、40〜70kDaマーカーの間(55kDaマーカー付近)に示されるブロットを参照されたい。重要なことに、実施例1に示される通り、この知見は、オリゴサッカリルトランスフェラーゼおよびrfbクラスターの二重インテグレーションを含む菌株を含む。特に、図6Aに示される結果を参照されたい。つまり、実施例1と同様、本実施例は、宿主細胞ゲノムへの遺伝子/遺伝子クラスターの二重挿入後に安定的宿主細胞が作製できることのみならず、遺伝子の機能が維持されることも実証する。具体的には、挿入されたオリゴサッカリルトランスフェラーゼおよび挿入されたrfbクラスターの機能は保存され、バイオコンジュゲートの生成をもたらした。
【0170】
実施例5:EPA-O6バイオコンジュゲートの産生および精製
本実施例は、緑膿菌O6抗原を含むバイオコンジュゲートの産生を記載する。
【0171】
大腸菌W3110ΔwaaLΔwecΔrfbを、緑膿菌O6 rfbクラスター、C.ジェジュニ由来オリゴサッカリルトランスフェラーゼpglB、無毒化キャリアタンパク質EPAをコードする遺伝子、およびQuiNAc生合成/トランスフェラーゼ遺伝子wbpVLM(緑膿菌O6株由来)を含むプラスミドを用いて形質転換した。プラスミド保持率分析の結果を、図8に示す。テトラサイクリン、スペクチノマイシン、カナマイシンおよびアンピシリンを添加した培地(LBブロス)に、4種類すべてのプラスミドを含む宿主細胞を接種した。前培養物を、37℃にて一晩増殖させた。次の日、MgCl2、テトラサイクリン、スペクチノマイシン、カナマイシンおよびアンピシリンを添加した培地(TB)に、OD600 0.1まで前培養物を希釈することにより接種した。細胞を、約OD600 0.8〜1.0に到達するまで37℃にて増殖させ、続いて、pglb、epaおよびwbpVLMの発現を、1mM IPTGおよび0.1%アラビノースの添加により誘導した。一晩の誘導後に、遠心分離により細胞を回収した。
【0172】
EPA-O6バイオコンジュゲートを、金属キレートアフィニティクロマトグラフィー(IMAC)、アニオン交換クロマトグラフィー(Source Q)およびサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)を用いて、改変型宿主細胞のペリプラズム抽出物から精製した。糖コンジュゲートを含有する溶出画分をプールし、続いて、次のクロマトグラフィーステップに供した。最終的なSEC溶出物を、SDS-PAGEおよびそれに続くクマシーブルー染色または図7に示した抗体を用いるウエスタンブロットにより特性決定した。
【0173】
EPA-O6バイオコンジュゲートを、一連の分析法を用いて特性決定した。エンドトキシンのレベルは、LALアッセイを用いて測定した(13EU/mL)。純度は、SDS-PAGEおよびキャピラリーゲル電気泳動により決定した(CGE、86%純度)。タンパク質の量は、BCAアッセイを用いて測定した(1.75mg/mL)。多糖の量は、アンスロンアッセイを用いて測定した(Dubois et al., 1956;311.6ug/mL)。O6多量体の平均サイズは、高分解能「グリコシル化度」(DOG)SDS-PAGEを用いて決定した(多量体1個当たり平均で7.9個の反復単位)。バイオコンジュゲートの電気的異性体(electric isoform)の決定は、等電点電気泳動(IEF)により行なった。最後に、バイオコンジュゲートの正体を、タンパク質(EPA)または多糖(O6)に対する抗体を用いる免疫ブロッティングにより確認した。
【0174】
実施例6:免疫化試験
本実施例は、緑膿菌O6-EPAバイオコンジュゲートが免疫原性であることを実証する。
【0175】
雌性6週齢BALB/c OlaHsdマウス(25頭の群)を、非アジュバント化またはアジュバント化(水中油型エマルジョンアジュバントを含む)製剤中で、0.2μgまたは2μgのO6-EPAコンジュゲート(実施例5を参照されたい)を用いて、0日目、14日目、および28日目に筋内に免疫化した。10頭のマウスの対照群には、アジュバント(O/W)のみをワクチン接種した。抗O6 ELISAおよびオプソニン力価を、42日目(IIIの14日後)に採取した個別の血清およびプールされたII後およびIII後血清で決定した。結果を図9に示し、以下で詳細に説明する。
【0176】
図9Aは、抗O6 ELISA応答を示す。精製したO6 LPS-O6(PaO6a,6c)を、4℃にて一晩、高結合性マイクロタイタープレート(Nunc Maxisorp社)に、リン酸緩衝生理食塩液(PBS)中の8μg/mLにてコーティングした。プレートを、PBS-BSA 1%を用いて、30 分間、RTで振盪しながらブロッキングした。マウス抗血清を1/10に予備希釈し、続いて、さらなる2倍希釈をマイクロプレート中で作製し、室温で30分間、振盪しながらインキュベートした。洗浄後、結合したネズミ抗体を、Jackson ImmunoLaboratories社ペルオキシダーゼコンジュゲート化AffiniPureヤギ抗マウスIgG(H+L)(ref: 115-035-003)をPBS-tween 0.05%-BSA 0.2%中で1/5000に希釈して用いて検出した。検出抗体は、室温で30分間、振盪しながらインキュベートした。10 mLのpH4.5 0.1Mクエン酸バッファー当たり4mg OPD+5μL H2O2を用いて、室温にて暗条件で15分間、発色させた。50μL HClを用いて反応を停止させ、光学密度(OD)を650nmに対して490nmで読み取った。
【0177】
血清中に存在する抗O6抗体のレベルを、中間点力価で表わした。個々の血清のGMTを、各処置群中の25サンプル(対照群に対しては10サンプル)に関して算出した。
【0178】
アジュバントと共に製剤化したバイオコンジュゲートの注入後のマウスでの免疫応答を観察した。用量間では差異は観察されなかった。同様の観察が、セロコンバージョンの割合(%)に関して行なわれた。非アジュバント化製剤では、応答が観察されないか、非常に弱い応答が観察された。
【0179】
図9Bは、アジュバントを用いるかまたは用いずに製剤化されたO6-EPAバイオコンジュゲートを用いて免疫化されたマウス由来のHL60細胞でのオプソニン力価を示す。
【0180】
オプソニン食作用アッセイ(OPA)を、15μLのHL-60貪食細胞(5 10e6細胞/mLに調整)、15μLの緑膿菌(TSA寒天平板上で増殖させた)、15μLの試験血清希釈物、および15μLの子ブタ補体を含む丸底マイクロプレート中で行なった。不活性化試験プール血清を、まずHBSS-BSA 1%中で希釈し(1/16または1/50最終希釈)、試験の最後に200〜250 CFU/ウェルのカウントにするために希釈した緑膿菌O6株(strain ID: HNCMB 170009、Hungarian National Collection of Medical Bacteriaから入手)に添加した。
【0181】
HL-60細胞(5.10e6/mLに調整)および子ブタ補体(最終濃度12.5%)を、続いて各ウェルに加えた。不活性化補体を用いる対照を、各試験サンプルに含めた。
【0182】
反応混合物を、37℃にて90分間、振盪しながらインキュベートした。1/200希釈した後、50μLの体積を平底マイクロプレートに移した。50μLのMH寒天および続いてPBS-0.9%寒天を加えた。34℃にて一晩のインキュベーション後、自動化コロニー計数を行なった。
【0183】
オプソニン貪食活性を、少なくとも50%の殺菌率をもたらした血清希釈の逆数として表わす。
【0184】
データは、アジュバント化群を用いた注入後に誘導された抗体の機能性を実証する。
【0185】
結論として、本実施例は、緑膿菌O6-EPAバイオコンジュゲートが、免疫原性かつ機能的である(すなわち、in vivoで緑膿菌O6を殺菌する抗体を生じる)ことを実証する。
【0186】
本発明は、例えば以下の実施形態を包含する:
1.以下の核酸:
(i) 宿主細胞のゲノムに安定的に挿入されている、シュードモナス属のrfbクラスター由来のグリコシルトランスフェラーゼをコードする核酸;
(ii) オリゴサッカリルトランスフェラーゼをコードする核酸;および
(iii) N-グリコシル化コンセンサス配列を含むキャリアタンパク質をコードする核酸を含む、宿主細胞。
2.以下の核酸:
(i) 宿主細胞のゲノムに安定的に挿入されている、シュードモナス属のrfbクラスターをコードする核酸;
(ii) オリゴサッカリルトランスフェラーゼをコードする核酸;および
(iii) N-グリコシル化コンセンサス配列を含むキャリアタンパク質をコードする核酸を含む、宿主細胞。
3.シュードモナス属が緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)である、実施形態1または2に記載の宿主細胞。
4.前記緑膿菌が、血清型O1、O2、O3、O4、O5、O6、O7、O8、O9、O10、O11、O12、O13、O14、O15、O16、O17、O18、O19、またはO20である、実施形態3に記載の宿主細胞。
5.前記緑膿菌が血清型O6である、実施形態4に記載の宿主細胞。
6.前記緑膿菌が血清型O11である、実施形態4に記載の宿主細胞。
7.前記オリゴサッカリルトランスフェラーゼをコードする前記核酸が、宿主細胞のゲノムに安定的に挿入されている、実施形態1〜6のいずれかに記載の宿主細胞。
8.前記オリゴサッカリルトランスフェラーゼをコードする前記核酸が、宿主細胞により発現されるプラスミド上に存在する、実施形態1〜6のいずれかに記載の宿主細胞。
9.前記キャリアタンパク質をコードする前記核酸が、宿主細胞により発現されるプラスミド上に存在する、実施形態1〜8のいずれかに記載の宿主細胞。
10.前記キャリアタンパク質をコードする前記核酸が、宿主細胞のゲノムに安定的に挿入されている、実施形態1〜8のいずれかに記載の宿主細胞。
11.前記オリゴサッカリルトランスフェラーゼが、原核生物に由来する、実施形態1〜10のいずれかに記載の宿主細胞。
12.前記オリゴサッカリルトランスフェラーゼが、カンピロバクター属に由来する、実施形態11に記載の宿主細胞。
13.前記オリゴサッカリルトランスフェラーゼが、カンピロバクター・ジェジュニ(Campylobacter jejuni)に由来する、実施形態12に記載の宿主細胞。
14.前記オリゴサッカリルトランスフェラーゼが、C.ジェジュニのpglB遺伝子である、実施形態13に記載の宿主細胞。
15.前記オリゴサッカリルトランスフェラーゼが、真核生物に由来する、実施形態1〜10のいずれかに記載の宿主細胞。
16.前記オリゴサッカリルトランスフェラーゼをコードする核酸配列のコピー数が、1、2、3、4、5、6、7、8、9または10である、実施形態1〜15のいずれかに記載の宿主細胞。
17.前記オリゴサッカリルトランスフェラーゼをコードする核酸配列のコピー数が、1または2である、実施形態16に記載の宿主細胞。
18.キャリアタンパク質が、緑膿菌(P. aeruginosa)の無毒化エキソトキシンA(EPA)、CRM197、マルトース結合性タンパク質(MBP)、ジフテリアトキソイド、破傷風トキソイド、黄色ブドウ球菌(S.aureus)の無毒化溶血素A、クランピング因子A、クランピング因子B、大腸菌FimH、大腸菌FimHC、大腸菌易熱性エンテロトキシン、大腸菌易熱性エンテロトキシンの無毒化変異体、コレラトキシンBサブユニット(CTB)、コレラトキシン、コレラトキシンの無毒化変異体、大腸菌Satタンパク質、大腸菌Satタンパク質のパッセンジャードメイン、肺炎レンサ球菌(Streptococcus pneumoniae)ニューモリシンおよびその無毒化変異体、C.ジェジュニ(C.jejuni)AcrA、C.ジェジュニ天然糖タンパク質、PcrV(LcrV、EspA、SseBとしても知られる)、PopB(YopB、YopD、FliC)、またはOprF、OprIである、実施形態1〜17のいずれかに記載の宿主細胞。
19.前記宿主細胞が大腸菌である、実施形態1〜18のいずれかに記載の宿主細胞。
20.タンパク質の産生に好適な条件下で実施形態1〜19のいずれかに記載の宿主細胞を培養するステップを含む、前記キャリアタンパク質に連結されたシュードモナス属抗原を含むバイオコンジュゲートの製造方法。
21.バイオコンジュゲートが前記キャリアタンパク質に連結されたシュードモナス属抗原を含む、実施形態20に記載の方法により製造されるバイオコンジュゲート。
22.前記シュードモナス属抗原が緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)抗原である、実施形態21に記載のバイオコンジュゲート。
23.前記緑膿菌抗原が、緑膿菌血清型O1、O2、O3、O4、O5、O6、O7、O8、O9、O10、O11、O12、O13、O14、O15、O16、O17、O18、O19、またはO20由来のO抗原である、実施形態22に記載のバイオコンジュゲート。
24.前記緑膿菌抗原が、緑膿菌血清型O6由来のO抗原である、実施形態23に記載のバイオコンジュゲート。
25.前記緑膿菌抗原が、緑膿菌血清型O11由来のO抗原である、実施形態23に記載のバイオコンジュゲート。
26.実施形態21〜25のいずれかに記載のバイオコンジュゲートを含む組成物。
27.実施形態26に記載の組成物を対象に投与することを含む、対象でのシュードモナス属感染を治療または予防する方法。
28.実施形態26に記載の組成物を対象に投与することを含む、対象でのシュードモナス属に対する免疫応答を誘導する方法。
29.対象がヒトである、実施形態27または28に記載の方法。
30.宿主細胞の少なくとも1種の遺伝子が機能的に不活性化または欠失されている、実施形態1〜19のいずれかに記載の宿主細胞。
31.前記遺伝子がwaaLである、実施形態30に記載の宿主細胞。
32.前記宿主細胞が原核生物宿主細胞である、実施形態1〜19のいずれかに記載の宿主細胞。
33.キャリアタンパク質に共有結合した抗原を含むバイオコンジュゲートであって、キャリアタンパク質が、PcrV、EPA、PopB、OprF、およびOprIからなる群より選択されるシュードモナス属タンパク質である、上記バイオコンジュゲート。
34.抗原がシュードモナス属抗原である、実施形態33に記載のバイオコンジュゲート。
35.抗原が緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)O抗原である、実施形態34に記載のバイオコンジュゲート。
36.抗原が、緑膿菌血清型1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、または20由来のO抗原である、実施形態35に記載のバイオコンジュゲート。
37.抗原が、緑膿菌血清型O6またはO11由来のO抗原である、実施形態36に記載のバイオコンジュゲート。
38.抗原が、緑膿菌血清型O6由来のO抗原である、実施形態36に記載のバイオコンジュゲート。
39.キャリアタンパク質がシュードモナス属PcrVである、実施形態33〜38のいずれかに記載のバイオコンジュゲート。
40.PcrVキャリアタンパク質がD/E-X-N-X-S/T(Xがプロリン以外のいずれかのアミノ酸である)の少なくとも1つのグリコシル化コンセンサス配列を含む、実施形態39に記載のバイオコンジュゲート。
41.抗原が、D/E-X-N-X-S/Tコンセンサス配列のN残基を介してPcrVキャリアタンパク質に共有結合している、実施形態40に記載のバイオコンジュゲート。
42.PcrVタンパク質が、1個、2個、3個、4個または5個のグリコシル化コンセンサス配列を含む、実施形態40または41に記載のバイオコンジュゲート。
43.キャリアタンパク質が緑膿菌EPAである、実施形態33〜38のいずれかに記載のバイオコンジュゲート。
44.EPAキャリアタンパク質がD/E-X-N-X-S/T(Xがプロリン以外のいずれかのアミノ酸である)の少なくとも1つのグリコシル化コンセンサス配列を含む、実施形態43に記載のバイオコンジュゲート。
45.抗原が、D/E-X-N-X-S/Tコンセンサス配列のN残基を介してEPAキャリアタンパク質に共有結合している、実施形態44に記載のバイオコンジュゲート。
46.EPAキャリアタンパク質が、1個、2個、3個、4個または5個のグリコシル化コンセンサス配列を含む、実施形態44または45に記載のバイオコンジュゲート。
47.ホルミルトランスフェラーゼ酵素をコードする遺伝子および/またはwzyポリメラーゼをコードする遺伝子が宿主細胞のゲノムに安定的に挿入されている、実施形態5に記載の宿主細胞。
48.ホルミルトランスフェラーゼ酵素をコードする遺伝子および/またはwzyポリメラーゼをコードする遺伝子が宿主細胞により発現されるプラスミド上に存在する、実施形態5に記載の宿主細胞。
49.キャリアタンパク質が、緑膿菌(P. aeruginosa)の無毒化エキソトキシンA(EPA)、CRM197、マルトース結合性タンパク質(MBP)、ジフテリアトキソイド、破傷風トキソイド、黄色ブドウ球菌(S.aureus)の無毒化溶血素A、クランピング因子A、クランピング因子B、大腸菌FimH、大腸菌FimHC、大腸菌易熱性エンテロトキシン、大腸菌易熱性エンテロトキシンの無毒化変異体、コレラトキシンBサブユニット(CTB)、コレラトキシン、コレラトキシンの無毒化変異体、大腸菌Satタンパク質、大腸菌Satタンパク質のパッセンジャードメイン、肺炎レンサ球菌(Streptococcus pneumoniae)ニューモリシンおよびその無毒化変異体、C.ジェジュニ(C.jejuni)AcrA、C.ジェジュニ天然糖タンパク質、PcrV(LcrV、EspA、SseBとしても知られる)、PopB(YopB、YopD、FliC)、またはOprF、OprIである、実施形態47または48に記載の宿主細胞。
50.以下の核酸:
(i) シュードモナス属のrfbクラスター由来のグリコシルトランスフェラーゼをコードする核酸;
(ii) ホルミルトランスフェラーゼ酵素をコードする核酸であって、配列番号2に対して約または少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%の同一性または相同性を有するタンパク質をコードするか、あるいは配列番号2をコードする、上記核酸;
(ii) オリゴサッカリルトランスフェラーゼをコードする核酸;および
(iii) N-グリコシル化コンセンサス配列D/E-X-N-X-S/T(Xはプロリン以外のいずれかのアミノ酸である)を含むキャリアタンパク質をコードする核酸
を含む宿主細胞。
51.以下の核酸:
(i) シュードモナス属のrfbクラスター由来のグリコシルトランスフェラーゼをコードする核酸;
(ii) wzyポリメラーゼをコードする核酸であって、配列番号3に対して約または少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%の同一性または相同性を有するタンパク質をコードするか、あるいは配列番号3をコードする、上記核酸;
(iii) オリゴサッカリルトランスフェラーゼをコードする核酸;および
(iv) N-グリコシル化コンセンサス配列D/E-X-N-X-S/T(Xはプロリン以外のいずれかのアミノ酸である)を含むキャリアタンパク質をコードする核酸
を含む宿主細胞。
52.グリコトランスフェラーゼ(glycotransferase)が緑膿菌のrfbクラスターに由来する、実施形態50または51に記載の宿主細胞。
53.グリコトランスフェラーゼ(glycotransferase)が緑膿菌血清型6のrfbクラスターに由来する、実施形態50〜52のいずれかに記載の宿主細胞。
54.シュードモナス属のrfbクラスター由来の少なくとも2種類、3種類、4種類、5種類のグリコシルトランスフェラーゼを含む、実施形態50〜53のいずれかに記載の宿主細胞。
55.(i)および(ii)の核酸が宿主細胞中に局在する、実施形態50〜54のいずれかに記載の宿主細胞。
56.(i)の核酸が宿主細胞のゲノムに安定的に挿入されている、実施形態50〜55のいずれかに記載の宿主細胞。
57.前記オリゴサッカリルトランスフェラーゼをコードする前記核酸が、宿主細胞のゲノムに安定的に挿入されている、実施形態50〜56のいずれかに記載の宿主細胞。
58.前記オリゴサッカリルトランスフェラーゼをコードする前記核酸が、宿主細胞により発現されるプラスミド上に存在する、実施形態50〜56のいずれかに記載の宿主細胞。
59.前記キャリアタンパク質をコードする前記核酸が、宿主細胞により発現されるプラスミド上に存在する、実施形態50〜58のいずれかに記載の宿主細胞。
60.前記キャリアタンパク質をコードする前記核酸が、宿主細胞のゲノムに安定的に挿入されている、実施形態50〜58のいずれかに記載の宿主細胞。
61.前記オリゴサッカリルトランスフェラーゼが、原核生物に由来する、実施形態50〜60のいずれかに記載の宿主細胞。
62.前記オリゴサッカリルトランスフェラーゼが、カンピロバクター属に由来する、実施形態61に記載の宿主細胞。
63.前記オリゴサッカリルトランスフェラーゼが、カンピロバクター・ジェジュニ(Campylobacter jejuni)に由来する、実施形態62に記載の宿主細胞。
64.前記オリゴサッカリルトランスフェラーゼが、C.ジェジュニのpglb遺伝子である、実施形態63に記載の宿主細胞。
65.前記オリゴサッカリルトランスフェラーゼが、真核生物に由来する、実施形態50〜60のいずれかに記載の宿主細胞。
66.前記オリゴサッカリルトランスフェラーゼをコードする核酸配列のコピー数が、1、2、3、4、5、6、7、8、9または10である、実施形態1〜65のいずれかに記載の宿主細胞。
67.前記オリゴサッカリルトランスフェラーゼをコードする核酸配列のコピー数が、1または2である、実施形態66に記載の宿主細胞。
68.キャリアタンパク質が、緑膿菌(P. aeruginosa)の無毒化エキソトキシンA(EPA)、CRM197、マルトース結合性タンパク質(MBP)、ジフテリアトキソイド、破傷風トキソイド、黄色ブドウ球菌(S.aureus)の無毒化溶血素A、クランピング因子A、クランピング因子B、大腸菌FimH、大腸菌FimHC、大腸菌易熱性エンテロトキシン、大腸菌易熱性エンテロトキシンの無毒化変異体、コレラトキシンBサブユニット(CTB)、コレラトキシン、コレラトキシンの無毒化変異体、大腸菌Satタンパク質、大腸菌Satタンパク質のパッセンジャードメイン、肺炎レンサ球菌(Streptococcus pneumoniae)ニューモリシンおよびその無毒化変異体、C.ジェジュニ(C.jejuni)AcrA、C.ジェジュニ天然糖タンパク質、PcrV(LcrV、EspA、SseBとしても知られる)、PopB(YopB、YopD、FliC)、またはOprF、OprIである、実施形態50〜67のいずれかに記載の宿主細胞。
69.前記宿主細胞が大腸菌である、実施形態50〜68のいずれかに記載の宿主細胞。
70.タンパク質の産生に好適な条件下で実施形態50〜69のいずれかに記載の宿主細胞を培養するステップを含む、キャリアタンパク質に連結されたシュードモナス属抗原を含むバイオコンジュゲートの製造方法。
71.バイオコンジュゲートがキャリアタンパク質に連結されたシュードモナス属抗原を含む、実施形態70に記載の方法により製造されるバイオコンジュゲート。
72.少なくとも1つのN-グリコシル化コンセンサス配列D/E-X-N-X-S/T(Xはプロリン以外のいずれかのアミノ酸である)のN残基を介してキャリアタンパク質にコンジュゲート化されている緑膿菌血清型O6抗原を含む、バイオコンジュゲート。
73.キャリアタンパク質が、緑膿菌(P. aeruginosa)の無毒化エキソトキシンA(EPA)、CRM197、マルトース結合性タンパク質(MBP)、ジフテリアトキソイド、破傷風トキソイド、黄色ブドウ球菌(S.aureus)の無毒化溶血素A、クランピング因子A、クランピング因子B、大腸菌FimH、大腸菌FimHC、大腸菌易熱性エンテロトキシン、大腸菌易熱性エンテロトキシンの無毒化変異体、コレラトキシンBサブユニット(CTB)、コレラトキシン、コレラトキシンの無毒化変異体、大腸菌Satタンパク質、大腸菌Satタンパク質のパッセンジャードメイン、肺炎レンサ球菌(Streptococcus pneumoniae)ニューモリシンおよびその無毒化変異体、C.ジェジュニ(C.jejuni)AcrA、C.ジェジュニ天然糖タンパク質、PcrV(LcrV、EspA、SseBとしても知られる)、PopB(YopB、YopD、FliC)、OprF、およびOprIからなる群より選択される、実施形態71または72に記載のバイオコンジュゲート。
74.キャリアタンパク質が1個、2個、3個、4個または5個のN-グリコシル化コンセンサス配列D/E-X-N-X-S/T(Xがプロリン以外のいずれかのアミノ酸である)を含む、実施形態70〜73のいずれかに記載のバイオコンジュゲート。
75.前記シュードモナス属抗原が緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)抗原である、実施形態71に記載のバイオコンジュゲート。
76.前記緑膿菌抗原が、緑膿菌血清型O1、O2、O3、O4、O5、O6、O7、O8、O9、O10、O11、O12、O13、O14、O15、O16、O17、O18、O19、またはO20由来のO抗原である、実施形態75に記載のバイオコンジュゲート。
77.前記緑膿菌抗原が、緑膿菌血清型O6由来のO抗原である、実施形態76に記載のバイオコンジュゲート。
78.O抗原がホルミル化される、実施形態77に記載のバイオコンジュゲート。
79.O6抗原が、少なくとも1個のGalNFmA残基に結合したホルミル基を含む、実施形態77に記載のバイオコンジュゲート。
80.O抗原反復単位のうちの少なくとも10、20、30、40、50、60、70、80、90、95または100%がホルミル化される、実施形態78または79に記載のバイオコンジュゲート。
81.実施形態21〜25、33〜46または71〜80のいずれかに記載のバイオコンジュゲートおよび製薬上許容される賦形剤を含む組成物。
82.実施形態81に記載の組成物を対象に投与することを含む、対象でのシュードモナス属感染を治療または予防する方法。
83.実施形態81に記載の組成物を対象に投与することを含む、対象でのシュードモナス属に対する免疫応答を誘導する方法。
84.対象がヒトである、実施形態82または83に記載の方法。
85.ヒト対象でのシュードモナス属感染により引き起こされる疾患の治療または予防での使用のための、実施形態21〜25、33〜46もしくは71〜80のいずれかに記載のバイオコンジュゲートまたは実施形態83に記載の組成物。
86.ヒト対象でのシュードモナス属により引き起こされる疾患の治療または予防のための医薬の製造での、実施形態21〜25、33〜46もしくは71〜80のいずれかに記載のバイオコンジュゲートまたは実施形態81に記載の組成物の使用。
87.wzyポリメラーゼをコードする核酸をさらに含み、該核酸は配列番号3に対して約または少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%の同一性または相同性を有するタンパク質をコードする、実施形態50に記載の宿主細胞。
88.ホルミルトランスフェラーゼ酵素をコードする遺伝子を含む改変型緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)血清型O6 rfbクラスターをコードする、単離された核酸配列。
89.wzyポリメラーゼをコードする遺伝子を含む改変型緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)血清型O6 rfbクラスターをコードする、単離された核酸配列。
90.wzyポリメラーゼをコードする遺伝子をさらに含む、実施形態90に記載の核酸配列。
91.前記ホルミルトランスフェラーゼ酵素をコードする遺伝子および/または前記wzyポリメラーゼをコードする遺伝子が、緑膿菌血清型O6 rfbクラスターの遺伝子の下流に挿入される、実施形態88〜90のいずれかに記載の核酸配列。
92.前記ホルミルトランスフェラーゼ酵素をコードする遺伝子および/または前記wzyポリメラーゼをコードする遺伝子が、緑膿菌血清型O6 rfbクラスターのwbpM遺伝子の下流に挿入される、実施形態91に記載の核酸配列。
93.前記ホルミルトランスフェラーゼ酵素をコードする遺伝子および/または前記wzyポリメラーゼをコードする遺伝子が、緑膿菌血清型O6 rfbクラスターの遺伝子の上流に挿入される、実施形態88〜90のいずれかに記載の核酸配列。
94.前記ホルミルトランスフェラーゼ酵素をコードする遺伝子および/または前記wzyポリメラーゼをコードする遺伝子が、緑膿菌血清型O6 rfbクラスターのwzz遺伝子の上流に挿入される、実施形態93に記載の核酸配列。
95.ホルミルトランスフェラーゼをコードする核酸が、rfbクラスターの上流に挿入される、実施形態50または52〜69のいずれかに記載の宿主細胞。
96.ホルミルトランスフェラーゼをコードする核酸が、rfbクラスターの下流に挿入される、実施形態50または52〜69のいずれかに記載の宿主細胞。
97.ホルミルトランスフェラーゼをコードする核酸が、rfbクラスターに対して時計回りの方向に挿入される、実施形態50、52〜69、95、または96のいずれかに記載の宿主細胞。
98.ホルミルトランスフェラーゼをコードする核酸が、rfbクラスターに対して反時計回りの方向に挿入される、実施形態50、52〜69、95、または96のいずれかに記載の宿主細胞。
99.wzyポリメラーゼをコードする核酸が、rfbクラスターの上流に挿入される、実施形態51または52〜69のいずれかに記載の宿主細胞。
100.wzyポリメラーゼをコードする核酸が、rfbクラスターの下流に挿入される、実施形態51または52〜69のいずれかに記載の宿主細胞。
101.wzyポリメラーゼをコードする核酸が、rfbクラスターに対して時計回りの方向に挿入される、実施形態51、52〜69、99、または100のいずれかに記載の宿主細胞。
102.wzyポリメラーゼをコードする核酸が、rfbクラスターに対して反時計回りの方向に挿入される、実施形態51、52〜69、99、または100のいずれかに記載の宿主細胞。
本開示は、本明細書中に記載される具体的な実施形態による範囲に限定されるものではない。実際、本明細書中に提供される対象の様々な改変物が、記載されるものに加えて、上記の説明および添付の図面から当業者には明らかになるであろう。そのような改変物は、添付の特許請求の範囲に含まれることが意図される。
【0187】
様々な刊行物、特許および特許出願が本明細書中で引用され、それらの開示はその全体が参照により組み入れられる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図6C
図7
図8
図9
【配列表】
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