特許第6682458号(P6682458)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6682458ファンを分離する手段を備えるターボ機械
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6682458
(24)【登録日】2020年3月27日
(45)【発行日】2020年4月15日
(54)【発明の名称】ファンを分離する手段を備えるターボ機械
(51)【国際特許分類】
   F02C 7/36 20060101AFI20200406BHJP
   F01D 25/00 20060101ALI20200406BHJP
   F01D 21/00 20060101ALI20200406BHJP
   F01D 21/02 20060101ALI20200406BHJP
   F02C 3/113 20060101ALI20200406BHJP
   F02C 9/00 20060101ALI20200406BHJP
   F16D 9/00 20060101ALI20200406BHJP
   F16D 9/08 20060101ALI20200406BHJP
【FI】
   F02C7/36
   F01D25/00 F
   F01D21/00 N
   F01D21/02 Z
   F02C3/113
   F01D21/00 V
   F02C9/00 A
   F16D9/00 300
   F16D9/08
【請求項の数】7
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-574387(P2016-574387)
(86)(22)【出願日】2015年6月17日
(65)【公表番号】特表2017-531116(P2017-531116A)
(43)【公表日】2017年10月19日
(86)【国際出願番号】FR2015051614
(87)【国際公開番号】WO2015197949
(87)【国際公開日】20151230
【審査請求日】2018年6月1日
(31)【優先権主張番号】1455939
(32)【優先日】2014年6月25日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】516227272
【氏名又は名称】サフラン・エアクラフト・エンジンズ
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】特許業務法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】タン−キム,アレクサンドル
(72)【発明者】
【氏名】ベクレ,ジュリアン・ファビアン・パトリック
【審査官】 中村 大輔
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−113580(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0326784(US,A1)
【文献】 欧州特許出願公開第2048330(EP,A2)
【文献】 特開2013−044328(JP,A)
【文献】 実開平04−105635(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02C 7/36
F01D 21/00
F01D 21/02
F01D 25/00
F02C 3/113
F02C 9/00
F16D 9/00
F16D 9/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タービンシャフト(16)の回転速度を低減するための減速装置(20)を介してタービンシャフト(16)によって駆動されるファン(12)のファンシャフト(18)を含むターボ機械(10)であって、減速装置(20)とタービンシャフト(16)との間に介在し、タービンシャフト(16)に対して減速装置(20)によって加えられる所定の抵抗トルクの超過に応えて、タービンシャフト(16)から減速装置(20)を分離することが可能である、分離手段(28)を含み、
前記分離手段(28)が、減速装置(20)とタービンシャフト(16)との間に介在し、抵抗トルク(C)、すなわち、タービンシャフト(16)に対して減速装置(20)によって加えられるいわゆる分離トルク、を受けたときに破損することが可能な、少なくとも1つのヒューズ接続要素(30)を含み、
ヒューズ接続要素(30)が金属ブレードを含むファン(12)に関連付けられていること、およびターボ機械(10)の最高速度条件下の通常トルクの120から140%の間の抵抗分離トルク(CD)を受けるとすぐに破損することが可能であることを特徴とする、または、ヒューズ接続要素(30)が複合材料のブレードを含むファン(12)に関連付けられていること、およびターボ機械の最高速度条件下の通常トルクの130から170%の間の抵抗分離トルク(CD)を受けるとすぐに破損することが可能であることを特徴とする、
ターボ機械(10)。
【請求項2】
ヒューズ接続要素はタービンのシャフト(16)に締結された減速装置(20)の入力シャフト(26)のセグメント(30)からなり、前記セグメント(30)が、抵抗分離トルク(C)に対応する最大ねじりトルクを受けたときに破損することが可能であることを特徴とする、請求項1に記載のターボ機械(10)。
【請求項3】
減速装置(20)の入力シャフト(26)が、抵抗分離トルク(C)に対応するせん断応力を受けたときに破損することが可能な少なくとも1つの放射状のヒューズ接続要素(30’)を介してタービンシャフト(16)の補完的管状末端セグメント(40)と結合する管状末端セグメント(38)を含むことを特徴とする、請求項1に記載のターボ機械(10)。
【請求項4】
放射状のヒューズ接続要素が、入力シャフト(26)の末端セグメント(38)の放射状オリフィス(42)内、およびタービンシャフト(16)の末端セグメント(40)に対向するオリフィス(44)の中にまで受容されるピン(30’)を含むことを特徴とする、請求項3に記載のターボ機械(10)。
【請求項5】
ヒューズ接続要素(30)が、前記ファンシャフト(18)によって駆動されるファン(12)の少なくとも1つのブレードが喪失した場合に減速装置に対してファン(12)のファンシャフト(18)によって加えられる抵抗トルクに対応する抵抗分離トルク(C)を受けるとすぐに破損することが可能であることを特徴とする、請求項1に記載のターボ機械(10)。
【請求項6】
ヒューズ接続要素(30)が、前記ファン(12)によるブレードの喪失を全く伴わずに鳥を吸い込んだ場合に減速装置(20)に対してファン(12)のファンシャフト(18)によって加えられる抵抗トルクに対応するいかなるトルクよりも厳密に大きい抵抗トルク(C)を受けるとすぐに破損することが可能であることを特徴とする、請求項1に記載のターボ機械(10)。
【請求項7】
タービンの速度の低減および/またはターボ機械(10)の停止を制御することが可能な、タービンシャフト(16)からの減速装置(20)の分離を検出する手段を含むことを特徴とする、請求項1に記載のターボ機械(10)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の分野は航空ターボ機械の分野であり、より具体的には、ファンを駆動するための減速装置を含むデュアルフローターボ機械の分野である。
【背景技術】
【0002】
従来、ターボ機械は、上流から始めて、直列に配置された1つまたはいくつかの圧縮機モジュールを備え、これは吸気口で吸い上げた空気を圧縮する。空気はその後、燃焼室に導入され、そこで燃料と混合されて燃焼する。燃焼ガスは、関連するタービンシャフトを介して(1つまたは複数の)圧縮機を駆動する、1つまたはいくつかのタービンモジュールを通過する。これらのガスは最終的に、伝達シャフト上で回収される動力を発生するために、自由タービン上で推進力を発生するためのノズル内に注入される。
【0003】
強力な希釈率を有する本デュアルフローターボ機械は、一次流と交差するいくつかの圧縮機段、すなわち低圧(LP)圧縮機および高圧(HP)圧縮機を含む。これらの低圧(LP)および高圧(HP)圧縮機は各々、関連するそれぞれの低圧(LP)または高圧(HP)タービンシャフトによって駆動される。低圧(LP)圧縮機の上流には、LPおよびHP圧縮機と交差する一次流と、冷流ノズル、いわゆる二次ノズルに向けて直接配向される冷流、すなわち二次流と、の両方を供給する、大寸の可動ブレードまたは羽根、あるいはファンを含む、ホイールが位置している。ファンは、LPボディのLPタービンの回転シャフトによって駆動され、通常は同じ速度で回転する。
【0004】
空気力学的により良く適合させる目的のため、特にLPシャフトのサイズが非常に大きいとき、LPシャフトよりも遅い回転速度でファンを回転させることは、興味深い。このため、タービンシャフトLPとファンを支承するファンシャフトとの間に減速装置が配置されている。このような構成は特に、2012年2月23日出願の仏国特許第1251655号明細書および仏国特許第1251656号明細書に記載されている。
【0005】
この構成において、たとえば鳥などの異物を吸い込んだ場合に、ファンがブレードを喪失する可能性がある。「ファンブレードアウト(Fan Blade Out)」(FBO)とも称されるこの現象は、そのブレードの末端とファンのケースとの接触を引き起こす結果を有する、ファンの中心ずれを引き起こす。この接触は、減速装置およびタービンシャフトがLPタービンによってまだ駆動されている間でもファンを突然減速させる可能性があり、これはLPタービンシャフト内および減速装置内に高いねじりトルクを発生させる可能性がある。
【0006】
シャフトのねじれは、欧州特許出願公開第2048330号明細書によって教示されている通り、ターボ機械の異なる点におけるシャフトの破損をもたらす可能性がある。
【0007】
欧州特許出願公開第2048330号明細書は、軸受に置かれた交点にあるタービンシャフトによってトルクをかけられた2つの異なる結合路を介してタービンシャフトによって各々駆動される、ファンシャフトおよび圧縮機のシャフトを含むターボ機械を開示している。結合路は、減速装置を介してファンを駆動する。いずれの結合路も、結合路の1つが思いがけず破損した場合でも、タービンの制御ユニットがタービンの速度を低減できる一方で、タービンの速度超過を回避するために他方の結合路にタービンが従事したままとなるように、設けられている。この文献に記載されるターボ機械は、たとえばタービンシャフトをファンに接続するものなど、可能性のある結合路の機械的誤作動が起こり得るという事実から始まっている。しかしながら、この文献はこの誤作動の性質を明確に指定しておらず、これは故障に存するかもしれないが存しないかもしれず、しかしいずれにせよ偶発的であって予測不可能である。ファンを有するタービンシャフトの結合路の故障の場合には、この偶発的な故障は、減速装置が既に著しいトルクに曝されていて、既に損傷しそうであるときにのみ、発生する。
【0008】
実際、ブレード喪失の場合のこのようなねじりトルクはまた、減速装置を深刻に損傷する危険性もあり、すると減速装置は遮断され、ファンの回転を不可能にする可能性がある。これは、エンジンの空力抵抗の急激に増加させる結果をもたらし、航空機の操縦を不可能にする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】仏国特許第1251655号明細書
【特許文献2】仏国特許第1251656号明細書
【特許文献3】欧州特許出願公開第2048330号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
この不都合の解消法を見出すために、解決法は、ファンの遮断を回避するための減速装置およびタービンシャフトLPを通るねじりトルクを制限することからなる。
【0011】
また、このトルクの制限は、減速装置および低圧タービンシャフトの部材のいかなる過大寸法も回避し、こうして減速装置およびLPタービンシャフトの設計を緩和する可能性を付与する。
【0012】
この目的のため、本発明は、減速装置とタービンシャフトとの間に介在し、減速装置によってタービンシャフトに加えられる所定の抵抗トルクの超過に応えて、タービンシャフトから減速装置を分離することができる、分離手段を含むことを特徴とする、先に述べられたタイプのターボ機械を提案する。
【0013】
有利なことに、分離はこのように、減速装置によってタービンシャフトに加えられる所定の抵抗トルクの超過に対する反応として提供される事象であり、すなわちこの抵抗トルクの超過によって調整される。
【0014】
本発明の好適な実施形態によれば、分離手段は、減速装置とタービンシャフトとの間に介在し、タービンシャフトの速度を低減する装置によって加えられるいわゆる分離抵抗トルクを受けたときに破損することが可能な、少なくとも1つのヒューズ接続要素を含む。
【0015】
本発明の第一の実施形態によれば、ヒューズ要素は、タービンシャフトに締結された減速装置の入力シャフトのセグメントからなり、前記セグメントは、分離抵抗トルクに対応する最大ねじりトルクを受けたときに破損することが可能である。
【0016】
本発明の第二の実施形態によれば、減速装置の入力シャフトは、抵抗分離トルクに対応するせん断応力を受けたときに破損することが可能な少なくとも1つの放射状要素を介してタービンシャフトの補完的管状末端セグメントと結合する、管状末端セグメントを含む。
【0017】
この構成において、放射状要素は、入力シャフトの末端セグメントの放射状オリフィス内、およびタービンシャフトの末端セグメントに対向するオリフィスの中にまで受容される、ピンを含む。
【0018】
本発明の優先的な方法において、ヒューズ接続要素は、ファンシャフトによって駆動されるファンの少なくとも1つのブレードが喪失した場合に減速装置に対してファンによって加えられる抵抗トルクに対応する所定の抵抗分離トルクを受けるとすぐに、破損することが可能である。
【0019】
また、ヒューズ接続要素は、ファンのブレードを全く喪失することなく鳥を吸い込んだ場合に減速装置に対して前記ファンによって加えられる抵抗トルクに対応するいかなるトルクよりも厳密に大きい抵抗トルクを受けるとすぐに、破損することが可能である。
【0020】
ヒューズ接続要素は、金属ブレードを含むファンに関連付けられてもよい。この場合、ヒューズ要素は、ターボ機械の最高速度での通常トルクの120から140%の分離トルクを受けるとすぐに、破損することが可能である。
【0021】
また、ヒューズ接続要素は、複合材料のブレードを含むファンと関連付けられてもよい。この場合、ヒューズ要素は、ターボ機械の最高速度条件での通常トルクの130から170%の分離トルクを受けるとすぐに、破損することが可能である。
【0022】
最後に、分離の場合にタービンの暴走を回避するために、本発明によるターボ機械は有利なことに、タービンの速度の低減および/またはターボ機械の停止を制御することが可能なタービンシャフトのからの減速装置の分離を検出する手段を含む。
【0023】
以下の添付概略図面を参照して、純粋に説明的で非限定的な例として示される本発明の実施形態の、以下の詳細な説明において、本発明はより良く理解され、本発明のその他の目的、詳細、特徴、および利点はより明らかに明確になるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】従来技術によるターボ機械の全体図である。
図2A】減速装置を備える、本発明の第一の実施形態によるターボ機械の前部の断面図である。
図2B図2Aの詳細図である。
図3A】減速装置を備える本発明の第二の実施形態によるターボ機械の前部の断面図である。
図3B図3Aの詳細図である。
図4】タービンシャフトに対して減速装置によって加えられる抵抗トルク対ファンのブレードの喪失の間の時間を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下の説明において、同一の参照番号は、同一の部品または類似の機能を有する部品を示す。
【0026】
図1には、従来技術にしたがって作成されたタービンエンジン10のようなターボ機械が示されている。周知のように、タービンエンジン10は、ガス流「F」に沿って上流から下流に向かって、ファン12と、低圧圧縮機14と、高圧圧縮機と、燃焼室と、高圧タービンと、低圧タービンと(図示せず)、を含む。ファン12はブレード13を含む。高圧圧縮機および高圧タービンは、高圧シャフトを通じて接続されており、これとともに高圧ボディを形成する。低圧圧縮機14および低圧タービンは、低圧シャフト16を通じて接続されており、これとともに低圧ボディを形成する。これに関してファン12は、図示される例において、両方のシャフト16、18の間の回転速度を低減するための装置20を通じて、LPシャフト16に回転的に締結されたファンシャフト18によって、支承されている。
【0027】
実際、空気力学的により良く適合させる目的のため、特にLPシャフト16のサイズが非常に大きいとき、LPシャフト16よりも遅い回転速度でファン12を回転させることは、興味深い。
【0028】
HPおよびLPシャフト16は、タービンエンジン10の回転の軸「A」に沿って延在する。
【0029】
タービンエンジン10はまた、従来、LPおよびHPボディと交差する一次流の脈管22と、LPおよびHPボディのケースを包囲し、タービンエンジンのノズル(図示せず)内で一次流脈管と連結する、二次流脈管(図示せず)と、に向かってファン12によって吸い上げられるガスのチャネリングを可能にする、ファンケース(図示せず)も備える。
【0030】
図1によって示されるように、減速装置20は、ファンシャフト18とLPシャフト16との間に位置している。たとえば遊星タイプの、この減速装置は、その輻輳のみを示す長方形の模式的形態で示されている。これは、LPシャフト16に回転的に接続された入力シャフト26によって支承される遊星ピニオン24によって駆動され、シャフト16は、単なる一例として、シャフト26内に嵌め込まれることによって遊びを全く伴わずに受容される。
【0031】
この構成において、たとえば鳥などの異物を吸い込んだ場合、または不適切なメンテナンスに起因する疲労に続いて、ファン12がブレード13を喪失する事態が生じる可能性がある。「ファンブレードアウト(Fan Blade Out)」(FBO)とも称されるこの現象は、そのブレード13の末端とファン12のケース(図示せず)との接触を引き起こす結果を有する、軸「A」に対するファン12の中心ずれを引き起こす。この接触は、減速装置20およびLPタービンシャフト16がLPタービンによってまだ駆動されている間でもファン12を突然減速させる可能性があり、これはLPタービンシャフト16内および減速装置20内に高いねじりトルクを発生させる可能性がある。
【0032】
ブレード13の喪失の場合のこのようなねじりトルクは減速装置20を深刻に損傷する危険性があり、すると減速装置20は遮断され、ファン12の回転を不可能にする可能性がある。これは、結果的にエンジンの空力抵抗を急激に増加させ、航空機の操縦を不可能にする。
【0033】
この不都合の解消法を見出すために、解決法は、ファン12の遮断を回避するための減速装置20およびLPタービンシャフト16を通る可能性のあるねじりトルクを制限することからなる。
【0034】
ねじりトルクの制限はもう1つの利点を有するが、これは、タービンシャフト16に対して減速装置20によって加えられる所定の抵抗トルクが超過している間、このようなねじりトルクに対するこれらの抵抗を保証することが可能な、減速装置20およびLPタービンシャフト16の部材の過大寸法を回避する可能性を、付与することである。
【0035】
また、このトルクの制限は、減速装置20および低圧タービンシャフト16の部材のいかなる過大寸法も回避し、こうして減速装置20およびLPタービンシャフト16の設計を緩和する可能性を付与する。
【0036】
この目的のため、本発明は、減速装置20とタービンシャフト16との間に介在し、減速装置20によってタービンシャフト16に加えられる所定の抵抗トルクの超過に応えて、タービンシャフトから減速装置20を分離することができる、分離手段28を含むことを特徴とする、先に述べられたタイプのターボ機械を提案する。
【0037】
より具体的には、図2Aおよび図3Aに示されるように、分離手段28は、減速装置20とタービンシャフト16との間に介在し、減速装置によってタービンシャフトに加えられる抵抗トルク、いわゆる分離トルクを受けたときに破損することが可能であり、減速装置20に対してファン12によって加えられ、その後前記減速装置に伝達される、所定の抵抗トルクに特に対応する、少なくとも1つのヒューズ接続要素30、30’を含む。
【0038】
減速装置20とタービンシャフト16との間のヒューズ接続要素30、30’の配置は、いくつかの利点を有する。
【0039】
第一に、ファンのシャフト18は2つの軸受32、34によって支持されているため、およびLPタービンのシャフト16もそれ自体、そのうちの1つの軸受36が図2Aおよび図3Aに示されている2つの軸受によって支持されているため、減速装置20とタービンシャフト16との間のヒューズ接続要素30、30’のこの配置は、減速装置20において実現することが容易である。したがって、ヒューズ要素30、30’の故障は、LPタービンのシャフト16またはファンのシャフト18の回転を維持できなくする。
【0040】
第二に、減速装置20およびタービンシャフト16の分離は、ファン12を分離することなくタービンエンジンが停止する従来のタービンエンジンにおいて同じファンが有するものよりも大きい、タービンエンジンを停止した後のファン12の自由回転速度を伴う。このため、ファンは、タービンエンジンが低抵抗しか発生できないようにする自由回転速度または「風車状態」となる。
【0041】
第三に、減速装置20とタービンシャフト16との間のヒューズ接続要素30、30’の配置は、本説明の続きで後に見られるように、タービンのシャフト16が速度超過した場合に、減速装置20の保護を可能にする。
【0042】
図2Aおよび特に図2Bに示される第一の実施形態によれば、ヒューズ要素は、タービンのシャフト16に締結された減速装置の入力シャフト26のセグメント30からなる。このセグメント30は、シャフト16に対して減速装置20によって加えられる所定の分離抵抗トルクに対応する最大ねじりトルクを受けたときに、破損することが可能である。
【0043】
従来技術のいずれの周知の解決法も、ねじれ剛性が低いセグメント30を適切に作り出すのに適しているだろう。具体的には、セグメントは、図2Aに示されるような、薄い厚さ「e」を有する管状セグメントであってもよい。これはまた、透かしのあるセグメント30であってもよく、および/または故障を開始するための領域(図示せず)を含んでもよい。
【0044】
図3Aおよび特に図3Bに示された第二の実施形態によれば、減速装置の入力シャフト26は、少なくとも1つの放射状要素30’を介してタービンシャフト16の補完的管状末端セグメント40と分離してヒューズ接続要素を形成する、管状末端セグメント38を含む。この放射状要素30’は、抵抗分離トルクに対応するせん断応力を受けたときに破損することが可能である。
【0045】
ヒューズ要素を形成する放射状要素30’が多くの実施形態に適合することは、理解されるだろう。しかしながら、本発明の優先的な方法では、放射状要素30’はピンからなり、とりわけ入力シャフト26の末端セグメントの放射状オリフィス42内で、タービンのシャフト16の末端セグメントに対向するオリフィス44の中まで受容される、円筒形のピンからなる。
【0046】
これら2つの実施形態の各々において、入力シャフト上のヒューズ接続要素30、30’の配置が、分離後の減速装置の遊星歯車24の支持を保証する能力を付与することは、理解されるだろう。
【0047】
実際、遊星歯車24は、減速装置20の出力シャフト(図示せず)を用いてサテライトベアラを介して支持されている。
【0048】
これら2つの実施形態の各々において、ヒューズ要素30は、前記ファンシャフト18によって駆動されるファンの少なくとも1つのブレード13を喪失した場合に、それぞれセグメント30またはピン30’が減速装置20に対してファンによって加えられて減速装置20に伝達される抵抗トルクに対応する分離トルクを受けたときに破損するように、較正される。
【0049】
こうして故障は、単一のブレード13を喪失するとすぐに、最小限のものとしてもたらせられる。
【0050】
反対に、故障はブレード13の故障または喪失の場合にのみ発生し、ファン12の単純な速度低下の場合には発生しないことも考えられる。
【0051】
このため、前記ファン12によるブレードの喪失を全く伴わずに鳥を吸い込んだ場合、所定の抵抗トルクは、減速装置20に対してファン12によって加えられて装置20を通じて伝達される抵抗トルクに対応するいかなるトルクよりも厳密に大きいということになり、このような事象は、ファン12を減速させる接線力を発生させる可能性があるが、しかし減速装置20を損傷したり、または関連する運動学的連鎖を遮断したりする危険性がない。
【0052】
図4は、ファンのブレード13の故障の場合の、伝達された抵抗トルク「C」を縦軸に、時間「t」を横軸に、比較のために示す。
【0053】
実線の曲線に見られるように、従来のターボ機械において、最適動作トルクCより、ブレード13の故障は瞬間Tにおいて発生する。この故障は、減速装置20およびファン12の遮断に対応する極限値Cmaxまでの抵抗トルクの増加をもたらし、またはより正確には減速装置の仕様に応じた遮断の危険性をもたらし、ファン12を使用不可能にする。
【0054】
本発明によるターボ機械では、最大トルクは結合Cまたは分離トルクを用いて風袋測定される。結果的に、動作中、ブレード13の故障はやはり瞬間Tにおいて発生し、これは値Cまたは分離トルク値までの抵抗トルクの増加をもたらす。その後トルクは、点線の曲線にしたがって、ファン12の自由回転状態に対応する値Cminまで低下する。
【0055】
一例として、および本発明の非限定的な方法において、ファンが金属ブレードを含むときの、所定の伝達分離トルクの規模は、ターボ機械の最高速度条件での通常トルクの120から140%である。
【0056】
ファンが複合材料のブレードを含むとき、所定の伝達分離トルクの規模は、ターボ機械の最高速度条件下の通常トルクの130から170%である。
【0057】
したがって、単なる一例として、および本発明の非限定的な方法において、いずれの場合も所定の伝達分離トルクの値は、実質的に50,000N.mから400,000N.mの間で変動する。
【0058】
当然ながら、これらの値は指標的なものに過ぎず、使用されるブレードのタイプ、ならびにエンジンのアーキテクチャおよび寸法の両方に依存することは、理解されるだろう。
【0059】
ファンがタービンシャフト16から分離した瞬間から、タービンが前記ファンからの抵抗トルクを受けなくなることは、理解されるだろう。したがって、タービンが暴走する危険性がある。
【0060】
なお、減速装置20とタービンシャフト16との間のヒューズ接続要素30、30’の配置のもう1つの本質的な利点は、タービンの暴走の場合に減速装置20の保護を可能にすることであり、減速装置20は意図されない高回転速度を受ける危険がなくなる。
【0061】
しかしながら、本発明によれば、ターボ機械またはタービンエンジン10は、少なくともタービンの速度の低下、またはタービンエンジンの完全な停止さえも制御することが可能な、減速装置20およびタービンシャフト16の分離を検出する手段を含む。
【0062】
このため、速度センサを用いてタービンシャフトの速度を測定する方法が知られている。このため測定された速度の暴走の検出は分離として解釈され、エンジンの制御部材の有効化を始動する。結果的に、タービンの速度を下げるために燃料流量を制限することが可能であり、あるいは、ロータ部とステータ部との間に軸ブレーキを備えるタービンを有する場合、タービンを減速および/または停止させるためにこのブレーキを始動することが可能である。
【0063】
したがって、本発明は、ターボ機械のファンのブレードの故障の危険性に対する安全対策を提供する。
【0064】
最後に、本発明はまた、伝達トルクを制限することによって、ブレード喪失の場合に前記トルクの上昇の周知の危険性を克服するために、減速装置20および低圧タービンシャフト16の部材のいかなる過大寸法も回避する実現性も付与する。これらの部材は高いねじり拘束に見合う過剰寸法となる必要がないので、寸法を縮小することができ、減速装置20およびLPタービンシャフト16の設計を全体的に緩和する結果をもたらす。
図1
図2A
図2B
図3A
図3B
図4