特許第6682470号(P6682470)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社東芝の特許一覧 ▶ 東芝デバイス&ストレージ株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6682470-増幅器 図000002
  • 特許6682470-増幅器 図000003
  • 特許6682470-増幅器 図000004
  • 特許6682470-増幅器 図000005
  • 特許6682470-増幅器 図000006
  • 特許6682470-増幅器 図000007
  • 特許6682470-増幅器 図000008
  • 特許6682470-増幅器 図000009
  • 特許6682470-増幅器 図000010
  • 特許6682470-増幅器 図000011
  • 特許6682470-増幅器 図000012
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6682470
(24)【登録日】2020年3月27日
(45)【発行日】2020年4月15日
(54)【発明の名称】増幅器
(51)【国際特許分類】
   H03F 3/45 20060101AFI20200406BHJP
   H03G 3/12 20060101ALI20200406BHJP
【FI】
   H03F3/45 109
   H03G3/12 B
【請求項の数】8
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2017-57305(P2017-57305)
(22)【出願日】2017年3月23日
(65)【公開番号】特開2018-160811(P2018-160811A)
(43)【公開日】2018年10月11日
【審査請求日】2018年12月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】317011920
【氏名又は名称】東芝デバイス&ストレージ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002907
【氏名又は名称】特許業務法人イトーシン国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】白根 篤史
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 類
(72)【発明者】
【氏名】三友 敏也
【審査官】 工藤 一光
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−343539(JP,A)
【文献】 特開昭63−175510(JP,A)
【文献】 欧州特許出願公開第1515431(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03F3/45
H03G3/10−3/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドレインが電流源に接続されゲートに正相又は逆相入力信号が入力される差動対の複数の第1群入力トランジスタと、
ドレインが前記電流源に接続されゲートに前記正相又は逆相入力信号が入力される差動対の複数の第2群入力トランジスタと、
前記複数の第1群入力トランジスタの各ソースと基準電位点との間に並列接続されオン,オフ制御可能な第1の抵抗回路であって、前記第1群入力トランジスタの差動対に対応する第1の抵抗回路同士が前記第1群入力トランジスタのソースとの接続点において相互に接続された第1の抵抗回路を複数有する動作点調整回路と、
前記複数の第2群入力トランジスタの各ソースと基準電位点との間に並列接続されオン,オフ制御可能な第2の抵抗回路を複数有する線形性改善回路と、
前記第1及び第2の抵抗回路をオン,オフ制御するための制御信号であって前記複数の前記第1の抵抗回路を前記複数の第1群入力トランジスタの各ソースに接続するか否かを制御すると共に、複数の前記第2の抵抗回路を前記複数の第2群入力トランジスタの各ソースに接続するか否かを制御する制御信号を発生することで、前記正相及び逆相入力信号に対する出力を前記第1及び第2群入力トランジスタのドレインから得る増幅動作において、動作点を制御しながら線形性改善効果を変更する制御回路と
を具備する増幅器。
【請求項2】
前記第1の抵抗回路は、ドレインが前記第1群入力トランジスタのソースに接続され、ソースが基準電位点に接続され、ゲートに前記制御信号が供給される第1のトランジスタによって構成され、
前記第2の抵抗回路は、ドレインが前記第2群入力トランジスタのソースに接続され、ソースが基準電位点に接続され、ゲートに前記制御信号が供給される第2のトランジスタによって構成される
請求項1に記載の増幅器。
【請求項3】
前記制御回路は、前記制御信号によって前記第1群入力トランジスタのソースに接続されることになった前記第1の抵抗回路の抵抗値の和と前記制御信号によって前記第2群入力トランジスタのソースに接続されることになった前記第2の抵抗回路の抵抗値の和とを一定にするための制御信号を発生する
請求項1に記載の増幅器。
【請求項4】
前記制御回路は、前記制御信号によって前記第1群入力トランジスタのソースに接続されることになった前記第1のトランジスタのゲート幅の和と前記制御信号によって前記第2群入力トランジスタのソースに接続されることになった前記第2のトランジスタのゲート幅の和とを一定にするための制御信号を発生する
請求項2に記載の増幅器。
【請求項5】
複数の前記第1の抵抗回路と複数の前記第2の抵抗回路は、相互に抵抗値が同一の抵抗回路を備え、
前記制御回路は、前記相互に抵抗値が同一の抵抗回路同士を相補的に前記第1又は第2群入力トランジスタのソースに接続させるための制御信号を発生する
請求項1又は3に記載の増幅器。
【請求項6】
複数の前記第1のトランジスタと複数の前記第2のトランジスタは、相互にゲート幅が同一のトランジスタを備え、
前記制御回路は、前記相互にゲート幅が同一のトランジスタ同士を相補的にオンにする制御信号を発生する
請求項2又は4に記載の増幅器。
【請求項7】
複数の前記第1の抵抗回路及び複数の前記第2の抵抗回路の各抵抗回路の抵抗値は、所定の比率に設定される
請求項1,3,5のいずれか1つに記載の増幅器。
【請求項8】
複数の前記第1のトランジスタ及び複数の前記第2のトランジスタの各ゲート幅は、所定の比率に設定される
請求項2,4,6のいずれか1つに記載の増幅器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、増幅器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、増幅器の線形性を改善させる手法として、ディジェネレーション技術が採用されることがある。例えば、ソース接地トランジスタを用いた増幅器では、ディジェネレーション抵抗によって線形性を向上させることができる。しかし、ディジェネレーション技術は線形性を改善させると同時に利得を低下させるという性質がある。従って、増幅器の利得の可変範囲を大きくする場合には、非線形歪を低減する度合い(ディジェネレーション量)を調整する必要があることがある。
【0003】
しかしながら、ディジェネレーション抵抗の抵抗値を変更するとDC動作点が変化することがある。また、ディジェネレーション量を0にすることはできず、増幅器の利得の可変範囲を十分に大きくすることはできない。また、ディジェネレーション抵抗としてトランジスタのオン抵抗を利用する場合には、増幅器の利得の可変範囲を十分に広げるために、大きなトランジスタサイズのトランジスタを設ける必要があり、チップサイズの点及び寄生容量に伴う特性上の点から問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2009−145283号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
実施形態は、動作点を変化させることなく、また、サイズを大きくすることなく利得の可変範囲を増大させることができる増幅器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態の増幅器は、ドレインが電流源に接続されゲートに正相又は逆相入力信号が入力される差動対の複数の第1群入力トランジスタと、ドレインが前記電流源に接続されゲートに前記正相又は逆相入力信号が入力される差動対の複数の第2群入力トランジスタと、前記複数の第1群入力トランジスタの各ソースと基準電位点との間に並列接続されオン,オフ制御可能な第1の抵抗回路であって、前記第1群入力トランジスタの差動対に対応する第1の抵抗回路同士が前記第1群入力トランジスタのソースとの接続点において相互に接続された第1の抵抗回路を複数有する動作点調整回路と、前記複数の第2群入力トランジスタの各ソースと基準電位点との間に並列接続されオン,オフ制御可能な第2の抵抗回路を複数有する線形性改善回路と、前記第1及び第2の抵抗回路をオン,オフ制御するための制御信号であって前記複数の前記第1の抵抗回路を前記複数の第1群入力トランジスタの各ソースに接続するか否かを制御すると共に、複数の前記第2の抵抗回路を前記複数の第2群入力トランジスタの各ソースに接続するか否かを制御する制御信号を発生することで、前記正相及び逆相入力信号に対する出力を前記第1及び第2群入力トランジスタのドレインから得る増幅動作において、動作点を制御しながら線形性改善効果を変更する制御回路とを具備する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の一実施の形態に係る増幅器を示す回路図。
図2A】関連技術に係る増幅器を示す回路図。
図2B】関連技術に係る増幅器を示す回路図。
図3】本実施の形態におけるディジェネレーション量の調整手法を説明するための説明図。
図4図4は制御信号a1〜a3とディジェネレーション量との関係を示す図表であり、
図5図5は線形性改善トランジスタ回路21Dの各トランジスタのゲート幅の和(Trサイズ))と動作点調整トランジスタ回路21Nの各トランジスタのゲート幅の和(Trサイズ)との関係を示す図表である。
図6A】実施の形態の動作を説明するための説明図。
図6B】実施の形態の動作を説明するための説明図。
図6C】実施の形態の動作を説明するための説明図。
図7】実施の形態におけるディジェネレーション量の変化を示すグラフ。
図8】実施の形態における利得の変化を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0009】
図1は本発明の一実施の形態に係る増幅器を示す回路図である。また、図2A及び図2Bは関連技術に係る増幅器を示す回路図である。
【0010】
先ず、図2A及び図2Bを参照してディジェネレーション量の可変範囲について説明する。
【0011】
図2A及び図2Bは差動構成の増幅器を示しており、図2Aは同相入力に対応したものであり、図2Bは差動入力に対応したものである。
【0012】
図2Aの増幅器は、差動対を構成する入力トランジスタT1,T2により構成される。電源ライン9には、電流源10,11が接続されており、トランジスタT1のドレインには、電流源10から電流が供給され、トランジスタT2のドレインには、電流源11から電流が供給される。トランジスタT1のソースはトランジスタT3のドレイン・ソース路を介して基準電位点に接続される。また、トランジスタT2ソースはトランジスタT4のドレイン・ソース路を介して基準電位点に接続される。
【0013】
トランジスタT1,T2のゲートには、同相入力IN,/(図中はバーで示す)INが与えられる。トランジスタT1のドレインからは逆相出力が出力され、トランジスタT2のドレインからは正相出力が出力される。
【0014】
トランジスタT3,T4は、それぞれトランジスタT1,T2のディジェネレーション抵抗である。図2Aの回路が同相入力の増幅器として機能する場合には、トランジスタT3,T4は、ディジェネレーション抵抗として機能し、トランジスタT3,T4のオン抵抗に応じてディジェネレーション量が変化して、増幅器の非線形性が改善される。
【0015】
トランジスタT3,T4に代えて、例えばそれぞれ複数のトランジスタを採用して選択的にオンにすることによってオン抵抗可変のトランジスタ回路を採用した場合には、非線形歪を低減する度合い(ディジェネレーション量)を変化させることができる。しかし、この場合には、オン抵抗の変化に伴い動作点が変化してしまうと共に増幅率も変化する。
【0016】
しかも、この構成ではオン抵抗を0にすることはできず、増幅率の可変範囲を十分に広げることはできないことがある。また、オン抵抗を十分に小さくするためにトランジスタサイズを大きくする必要があり、チップ面積が増大してしまう。
【0017】
一方、図2Bの増幅器は、差動対を構成する入力トランジスタT1,T2のソース間に、可変抵抗VRを接続したものである。この可変抵抗VRは、図2Bの回路が差動入力の増幅器として機能する場合には、ディジェネレーション抵抗として機能し、可変抵抗VRの抵抗値に応じて、増幅器の非線形性が改善される。
【0018】
しかしながら、可変抵抗VRの抵抗値についても0にすることはできず、増幅率の可変範囲を十分に広げることはできないことがある。
【0019】
そこで、本実施の形態においては、差動対を構成する入力トランジスタのディジェネレーション抵抗として、複数のトランジスタを切換えることで、ディジェネレーション量を可変にする線形性改善トランジスタ回路を設けると共に、入力トランジスタ間を接続すると共に動作点を一定にするための動作点調整トランジスタ回路を備える。
(ディジェネレーション量の調整手法)
図3は本実施の形態におけるディジェネレーション量の調整手法を説明するための説明図であり、図1の増幅器の概略構成を示すものである。
【0020】
図3の例は図2A図2Bの入力トランジスタT1に対応する2つのトランジスタT1A,T1Bを採用し、入力トランジスタT2に対応する2つのトランジスタT2A,T2Bを採用している。
【0021】
図3中の各トランジスタ記号に付した矢印は、各トランジスタのトランジスタサイズが可変であることを示している。例えば、各トランジスタを、ドレイン・ソース路を並列接続した複数のトランジスタにより構成し、動作させるトランジスタを適宜変更可能にすることで、実質的にトランジスタサイズ(ゲート幅)を調整可能である。
【0022】
また、正相入力トランジスタT1Aのソースは、ディジェネレーション抵抗を構成するトランジスタT3Dのドレイン・ソース路を介して基準電位点に接続され、逆相入力トランジスタT2Aのソースは、ディジェネレーション抵抗を構成するトランジスタT4Dのドレイン・ソース路を介して基準電位点に接続される。トランジスタT3D,T4Dのトランジスタサイズは可変であり、トランジスタT3D,T4Dのトランジスタサイズが変化することにより、ディジェネレーション量を変化させることができる。
【0023】
すなわち、トランジスタT3D,T4Dによるトランジスタ回路は、ディジェネレーション量の変化に寄与する線形性改善回路としての線形性改善トランジスタ回路13Dを構成する。
【0024】
しかし、単にトランジスタT3D,T4Dのトランジスタサイズを変化させた場合には、オン抵抗も変化しDC動作点が変化してしまう。そこで、本実施の形態においては、動作点を一定に維持するために、動作点調整回路としての動作点調整トランジスタ回路13Nが設けられている。
【0025】
正相入力トランジスタT1Bのソースは、ディジェネレーションに寄与しないトランジスタT1Nのドレイン・ソース路を介して基準電位点に接続され、逆相入力トランジスタT2Bのソースは、ディジェネレーションに寄与しないトランジスタT2Nのドレイン・ソース路を介して基準電位点に接続される。トランジスタT1N,T2Nのトランジスタサイズは可変である。
【0026】
また、本実施の形態においては、入力トランジスタT1A,T2Aのソース間は、配線12によって接続されている。この配線12によって図2Bの可変抵抗VRの抵抗値が0になったことと等価となり、配線12によるディジェネレーション量は0となる。従って、図3の回路におけるディジェネレーション量は、差動入力を考慮した場合には、線形性改善トランジスタ回路13Dによって決定される。
【0027】
本実施の形態では、正相入力トランジスタT1A,T1Bの各ゲート幅の和(=逆相入力トランジスタT2A,T2Bの各ゲート幅の和)が一定になるように、また、トランジスタT3D,T1Nの各ゲート幅の和(=トランジスタT4D,T2Nの各ゲート幅の和)が一定になるように、ゲート幅の調整が行われる。
【0028】
例えば、トランジスタT1A,T3Dのゲート幅(=トランジスタT2A,T4Dのゲート幅)を4段階に制御できるものとする。この場合には、トランジスタT1B,T1Nのゲート幅(=トランジスタT2B,T2Nのゲート幅)についても同様に4段階に制御できるように構成する。
【0029】
トランジスタT1A,T3Dのゲート幅(=トランジスタT2A,T4Dのゲート幅)を0,1k,2k,3k(kは所定値)に制御した場合には、夫々トランジスタT1B,T1Nのゲート幅(=トランジスタT2B,T2Nのゲート幅)を3k,2k,1k,0に制御する。この場合には、トランジスタT3D,T1Nの和のゲート幅(=トランジスタT4D,T2Nの和のゲート幅)は、常に3kとなり、オン抵抗は一定となる。また、線形性改善トランジスタ回路13Dの各トランジスタのゲート幅の変更によって、ディジェネレーション量の調整も可能である。しかも、線形性改善トランジスタ回路13Dの各トランジスタを全てオフにすることにより、ディジェネレーション量を0とすることができ、増幅器の利得を最大とすることができる。
(具体回路)
図1において、電源ライン9には電流源10,11が接続されている。電流源10,11は定電流を発生する。電流源10は図3のトランジスタT1Aに相当する正相入力トランジスタT1A1,T1A2,T1A3とトランジスタT1Bに相当するトランジスタT1B1,T1B2,T1B3のドレインに定電流を供給可能である。また、電流源11は、図3のトランジスタT2Aに相当する逆相入力トランジスタT2A1,T2A2,T2A3とトランジスタT2Bに相当するトランジスタT2B1,T2B2,T2B3のドレインに定電流を供給可能である。
【0030】
正相入力トランジスタT1A1,T1A2,T1A3の各ソースは夫々ディジェネレーション抵抗を構成するトランジスタT3D1,T3D2,T3D3のドレイン・ソース路を介して基準電位点に接続される。また、逆相入力トランジスタT2A1,T2A2,T2A3の各ソースは夫々ディジェネレーション抵抗を構成するトランジスタT4D1,T4D2,T4D3のドレイン・ソース路を介して基準電位点に接続される。これらのトランジスタT3D1,T3D2,T3D3,T4D1,T4D2,T4D3(以下、代表してトランジスタTDともいう)によって線形性改善トランジスタ回路21Dが構成される。
【0031】
正相入力トランジスタT1B1,T1B2,T1B3の各ソースは夫々ディジェネレーションに寄与しないトランジスタT1N1,T1N2,T1N3のドレイン・ソース路を介して基準電位点に接続される。また、逆相入力トランジスタT2B1,T2B2,T2B3の各ソースは夫々ソースディジェネレーションに寄与しないトランジスタT2N1,T2N2,T2N3のドレイン・ソース路を介して基準電位点に接続される。これらのトランジスタT1N1,T1N2,T1N3,T2N1,T2N2,T2N3(以下、代表してトランジスタTNともいう)によって動作点調整トランジスタ回路21Nが構成される。
【0032】
本実施の形態においては、トランジスタT1N1,T2N1,T3D1,T4D1の各ゲート幅は相互に同一であり、トランジスタT1N2,T2N2,T3D2,T4D2の各ゲート幅は相互に同一であり、また、トランジスタT1N3,T2N3,T3D3,T4D3の各ゲート幅は相互に同一である。
【0033】
また、トランジスタT1A1,T2A1,T1B1,T2B1のゲート幅は相互に同一であり、トランジスタT1A2,T2A2,T1B2,T2B2のゲート幅は相互に同一であり、トランジスタT1A3,T2A3,T1B3,T2B3のゲート幅は相互に同一である。
【0034】
差動対を構成するトランジスタT1B1,T2B1のソース同士は配線L1によって接続されている。また、トランジスタT1B2,T2B2のソース同士は配線L2によって接続され、トランジスタT1B3,T2B3のソース同士は配線L3によって接続されている。
【0035】
正相入力トランジスタT1A1〜T1A3,T1B1〜T1B3のゲートには、コンデンサC1を介して正相入力信号INが入力される。また、逆相入力トランジスタT2A1〜T2A3,T2B1〜T2B3のゲートには、コンデンサC2を介して逆相入力信号/(図中はバーで示す)INが入力される。
【0036】
本実施の形態においては、線形性改善トランジスタ回路21D及び動作点調整トランジスタ回路21Nを制御するための制御回路30が設けられている。制御回路30は制御信号a1〜a3及び制御信号a1〜a3の各反転制御信号/(図中はバーで示す)a1〜/(図中はバーで示す)a3を発生する。
【0037】
動作点調整トランジスタ回路21N中のトランジスタT1N1,T2N1のゲートには制御信号a1が供給され、線形性改善トランジスタ回路21D中のトランジスタT3D1,T4D1のゲートには反転制御信号/a1が供給される。トランジスタT1N2,T2N2のゲートには制御信号a2が、トランジスタT3D2,T4D2のゲートには反転制御信号/a2が供給される。トランジスタT1N3,T2N3のゲートには制御信号a3が、トランジスタT3D3,T4D3のゲートには反転制御信号/a3が供給される。
【0038】
制御信号a1〜a3はハイレベル(以下、Hレベルという)又はローレベル(以下、Lレベルという)の信号である。従って、トランジスタT1N1,T2N1がオンの場合にはトランジスタT3D1,T4D1はオフであり、トランジスタT1N1,T2N1がオフの場合にはトランジスタT3D1,T4D1はオンである。また、トランジスタT1N2,T2N2とトランジスタT3D2,T4D2とは、一方がオンで他方がオフとなる。同様に、トランジスタT1N3,T2N3とトランジスタT3D3,T4D3とは一方がオンで他方がオフとなる。
【0039】
次に、このように構成された実施の形態の動作について図4乃至図8を参照して説明する。図4は制御信号a1〜a3とディジェネレーション量との関係を示す図表であり、図5は線形性改善トランジスタ回路21Dの各トランジスタのゲート幅の和(Trサイズ))と動作点調整トランジスタ回路21Nの各トランジスタのゲート幅の和(Trサイズ)との関係を示す図表である。また、図6A図6Cは線形性改善トランジスタ回路21Dの各トランジスタと動作点調整トランジスタ回路21Nの各トランジスタのオン,オフの状態をハッチングの有無により示す説明図である。
【0040】
図4及び図5は、トランジスタT1N1,T2N1,T3D1,T4D1の各トランジスタ(以下、これらを区別しない場合にはトランジスタTa1という)のゲート幅と、トランジスタT1N2,T2N2,T3D2,T4D2の各トランジスタ(以下、これらを区別しない場合にはトランジスタTa2という)のゲート幅と、トランジスタT1N3,T2N3,T3D3,T4D3の各トランジスタ(以下、これらを区別しない場合にはトランジスタTa3という)のゲート幅の比は、例えば、1:2:4に設定された例を示している。例えば、トランジスタTa1,Ta2,Ta3のゲート幅がそれぞれ、1K,2K,4K(Kは所定値)であるものとする。
【0041】
配線L1,L2,L3は、それぞれトランジスタT1B1,T2B1のソース相互間、トランジスタT1B2,T2B2のソース相互間、又は、トランジスタT1B3,T2B3のソース相互間を接続しており、差動入力を考慮した場合、これらの配線L1〜L3によるディジェネレーション量は0である。
【0042】
いま、制御回路30が図4の最上段に示すようにHレベル(論理値1)の制御信号a1〜a3を発生するものとする。この場合には、動作点調整トランジスタ回路21Nの全てのトランジスタTNがオンとなる一方、線形性改善トランジスタ回路21Dの全てのトランジスタTDはオフである。従って、線形性改善トランジスタ回路21Dの各トランジスタTDによるディジェネレーション量は0である。動作点調整トランジスタ回路21Nの各トランジスタTNはディジェネレーションに寄与しておらず、増幅器全体のディジェネレーション量は0となる。従って、この場合には、図1の増幅器は最大の利得が得られる。
【0043】
また、線形性改善トランジスタ回路21Dの全てのトランジスタはオフであるので、これらのトランジスタのゲート幅の和は0と考えてよい。一方、この場合には、動作点調整トランジスタ回路21Nの全てのトランジスタがオンであり、図5の最上段に示すように、これらのトランジスタのゲート幅の和は7Kとなる。なお、トランジスタのゲート幅の和は、差動対の一方の各トランジスタについての和を示している。
【0044】
次に、制御回路30が図4の2段目に示すようにLレベル(論理値0)の制御信号a1と、Hレベル(論理値1)の制御信号a2,a3を発生するものとする。図6Aはこの状態を示している。この場合には、図6Aのハッチングに示すように、線形性改善トランジスタ回路21DのトランジスタT3D1,T4D1がオンである。また、トランジスタT3D2,T4D2,T3D3,T4D3はオフである。従って、この場合には、線形性改善トランジスタ回路21Dのゲート幅の和は1Kである。一方、動作点調整トランジスタ回路21NのトランジスタT1N1,T2N1はオフで、トランジスタT1N2,T2N2,T1N3,T2N3がオンである(図6A参照)。従って、この場合には、動作点調整トランジスタ回路21Nのゲート幅の和は6Kである(図5の2段目)。
【0045】
次に、制御回路30が図4の3段目に示すようにHレベル(論理値1)の制御信号a1,a3と、Lレベル(論理値0)の制御信号a2を発生するものとする。図6Bはこの状態を示している。この場合には、線形性改善トランジスタ回路21DのトランジスタT3D1,T4D1,T3D3,T4D3がオフで、トランジスタT3D2,T4D2がオンである。従って、この場合には、線形性改善トランジスタ回路21Dのゲート幅の和は2Kである。一方、動作点調整トランジスタ回路21NのトランジスタT1N2,T2N2がオフで、トランジスタT1N1,T2N1,T1N3,T2N3がオンである。従って、この場合には、動作点調整トランジスタ回路21Nのゲート幅の和は5Kである(図5の3段目)。
【0046】
次に、制御回路30が図4の4段目に示すようにLレベル(論理値0)の制御信号a1,a2と、Hレベル(論理値1)の制御信号a3を発生するものとする。図6Cはこの状態を示している。この場合には、線形性改善トランジスタ回路21DのトランジスタT3D1,T4D1,T3D2,T4D2がオンで、トランジスタT3D3,T4D3がオフである。従って、この場合には、線形性改善トランジスタ回路21Dのゲート幅の和は3Kである。一方、動作点調整トランジスタ回路21NのトランジスタT1N1,T2N1,T1N2,T2N2がオフで、トランジスタT1N3,T2N3がオンである。従って、この場合には、動作点調整トランジスタ回路21Nのゲート幅の和は4Kである(図5の4段目)。
【0047】
このように制御信号a1〜a3を変更しても、常に、線形性改善トランジスタ回路21Dの各トランジスタTDと動作点調整トランジスタ回路21Nの各トランジスタTNとは、図1の図面上縦に並んだトランジスタ同士では一方がオンで他方はオフとなる。従って、オンとなることによって各正相入力トランジスタに接続されるトランジスタのゲート幅の和、各逆相入力トランジスタに接続されるトランジスタのゲート幅の和は、それぞれ常に7Kとなり、一定である。従って、図5に示すように、制御信号に拘わらず、動作点は一定のままである。
【0048】
また、線形性改善トランジスタ回路21Dのゲート幅の和は、制御信号a1〜a3を変更することによって図5に示すように変化する。これにより、図4に示すように、制御信号a1〜a3によって、ディジェネレーション量を8段階に変更することができる。しかも、本実施の形態においては、ディジェネレーション量を0にすることも可能である。
【0049】
なお、トランジスタTa1,Ta2,Ta3のゲート幅の比を1:2:4とすることによって、3ビットの制御信号により、ディジェネレーション量を等間隔で8段階に調整可能であるが、ゲート幅の比はこれに限定されるものではない。
【0050】
図7は横軸に動作点調整トランジスタ回路のゲート幅の和に対応する指標(REG−Degen)をとり、縦軸に線形性の指標であるIIP3(入力換算3次インターセプトポイント)をとって、ディジェネレーション量の変化を示すグラフである。また、図8は横軸に動作点調整トランジスタ回路のゲート幅の和に対応する指標(REG−Degen)をとり、縦軸に増幅器の利得をとって、利得の変化を示すグラフである。
【0051】
図7に示すように、動作点調整トランジスタ回路21Nのゲート幅の和を小さくして線形性改善トランジスタ回路21Dのゲート幅の和を大きくするほど、線形性が良好になることが分かる。逆に、図8に示すように、動作点調整トランジスタ回路21Nのゲート幅の和を大きくして線形性改善トランジスタ回路21Dのゲート幅の和を小さくするほど、利得が大きくなることが分かる。
【0052】
このように本実施の形態においては、差動対を構成する入力トランジスタのディジェネレーション抵抗として、複数のトランジスタを切換えることでディジェネレーション量を可変にする線形性改善トランジスタ回路を設ける。そして、入力トランジスタのソース間を接続すると共に、線形性改善トランジスタ回路の各トランジスタと相補的にオンオフして、動作点を一定にするための動作点調整トランジスタ回路を設ける。これにより、動作点を変更することなくディジェネレーション量を変更することができ、ディジェネレーション量の制御時に動作点が変動することを防止することができる。また、線形性改善トランジスタ回路の全トランジスタをオフにすることにより、ディジェネレーション量を0にすることができ、増幅器の利得を最大にすることができる。この場合においても、ゲート幅が大きいトランジスタを用いる必要はなく、装置を小型化することができる。
【0053】
上記実施の形態においては、ディジェネレーション抵抗として、トランジスタを利用する例を説明したが、抵抗とスイッチ素子による抵抗回路を並列接続し、制御信号によりスイッチ素子をオン,オフ制御することで抵抗値を可変にしたディジェネレーション抵抗を採用してもよい。
【0054】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で種々に変形することが可能である。また、上記実施形態には種々の段階の発明が含まれており、開示される複数の構成要件における適当な組み合わせにより種々の発明が抽出され得る。例えば、実施形態に示される全構成要件からいくつかの構成要件が削除されても、発明が解決しようとする課題の欄で述べた課題が解決でき、発明の効果の欄で述べられている効果が得られる場合には、この構成要件が削除された構成が発明として抽出され得る。
【符号の説明】
【0055】
10,11…電流源、T1A1〜T1A3,T2A1〜T2A3,T1B1〜T1B3,T2B1〜T2B3,T3D1〜T3D3,T4D1〜T4DA3,T1N1〜T1N3,T2N1〜T2N3…トランジスタ、C1,C2…コンデンサ。
図1
図2A
図2B
図3
図4
図5
図6A
図6B
図6C
図7
図8