(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記係数算出部は、前記載置面に試料を載置していない状態で前記熱量算出部に算出させた基準積分値を前記第一積分値から減算した結果を前記第一差分値で除算し、当該除算の結果で前記第一試料の熱容量を除算した結果を前記感度係数として算出し、
前記熱容量算出部は、前記基準積分値を前記第二積分値から減算した結果と前記感度係数との積を、前記第二差分値で除算した結果を、前記第二試料の熱容量として算出する請求項1に記載の熱容量測定装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記従来のDSC法では、二つの試料を同時にヒートシンクに載置する必要があるため、試料の大きさが制限されるという問題があった。また、二つの試料の表面温度を同一温度に維持しながら変化させるため、恒温槽内の空気温度やヒートシンクの温度制御が煩雑になるという問題があった。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされた発明であり、従来のDSC法よりも、容易な制御によって大きな試料の熱容量を測定できる熱容量測定装置及び熱容量測定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明による熱容量測定装置は、熱流測定装置を収容する試験槽と、前記試験槽内の空気温度を調整する空気調和機とを備え、前記熱流測定装置は、試料を直接的又は間接的に載置するための載置面を有するヒートシンクと、前記載置面を通過する熱流を測定する熱流センサと、前記試料の表面温度を測定する温度センサと、前記ヒートシンク、前記熱流センサ、前記温度センサ及び前記載置面に載置された試料を収容する遮蔽容器とを備え、前記空気調和機によって前記空気温度を第一温度から前記第一温度とは異なる第二温度に調整させ、当該調整中の所定期間に前記熱流センサが測定した熱流の積分値を算出する熱量算出部と、前記所定期間の開始時に前記温度センサが測定した表面温度と前記所定期間の終了時に前記温度センサが測定した表面温度との差分値を算出する温度差算出部と、熱容量が既知の第一試料を前記載置面に載置した状態で、前記熱量算出部によって算出させた第一積分値を前記温度差算出部によって算出させた第一差分値で除算し、当該除算の結果で前記第一試料の熱容量を除算した結果を感度係数として算出する係数算出部と、熱容量が未知の第二試料を前記載置面に載置した状態で、前記熱量算出部によって算出させた第二積分値と前記感度係数との積を、前記温度差算出部によって算出させた第二差分値で除算した結果を、前記第二試料の熱容量として算出する熱容量算出部と、を備える。
【0008】
また、本発明による熱容量測定方法は、熱流測定装置を収容する試験槽と、前記試験槽内の空気温度を調整する空気調和機とを備えた熱容量測定装置における熱容量測定方法であって、前記熱流測定装置は、試料を直接的又は間接的に載置するための載置面を有するヒートシンクと、前記載置面を通過する熱流を測定する熱流センサと、前記試料の表面温度を測定する温度センサと、前記ヒートシンク、前記熱流センサ、前記温度センサ及び前記載置面に載置された試料を収容する遮蔽容器とを備え、前記空気調和機によって前記空気温度を第一温度から前記第一温度とは異なる第二温度に調整させ、当該調整中の所定期間に前記熱流センサが測定した熱流の積分値を算出する熱量算出処理と、前記所定期間の開始時に前記温度センサが測定した表面温度と前記所定期間の終了時に前記温度センサが測定した表面温度との差分値を算出する温度差算出処理と、を熱容量が既知の第一試料を前記載置面に載置した状態で実行し、前記熱量算出処理によって算出させた第一積分値を前記温度差算出部によって算出させた第一差分値で除算し、当該除算の結果で前記第一試料の熱容量を除算した結果を感度係数として算出し、熱容量が未知の第二試料を前記載置面に載置した状態で、前記熱量算出処理と前記温度差算出処理とを実行し、前記熱量算出処理によって算出させた第二積分値と前記感度係数との積を、前記温度差算出処理によって算出させた第二差分値で除算した結果を、前記第二試料の熱容量として算出する。
【0009】
本構成によれば、遮蔽容器内に収容されたヒートシンクの載置面に第一試料が載置され、感度係数が算出された後、載置面に第二試料が載置され、前記算出された感度係数を用いて第二試料の熱容量が算出される。このため、従来のDSC法とは異なり、ヒートシンクの載置面に第一試料及び第二試料を同時に載置することを回避できる。これにより、従来のDSC法よりも、より大きい第一試料及び第二試料を個別にヒートシンクに載置して、第二試料の熱容量を算出できる。
【0010】
また、従来のDSC法とは異なり、第一試料及び第二試料の表面温度を同一温度に維持しながら変化させるための、試験槽内の空気温度やヒートシンクの煩雑な温度制御を行うことなく、空気温度の調整が可能な既存の試験槽を用いて、容易に第二試料の熱容量を算出できる。
【0011】
また、前記係数算出部は、前記載置面に試料を載置していない状態で前記熱量算出部に算出させた基準積分値を前記第一積分値から減算した結果を前記第一差分値で除算し、当該除算の結果で前記第一試料の熱容量を除算した結果を前記感度係数として算出し、前記熱容量算出部は、前記基準積分値を前記第二積分値から減算した結果と前記感度係数との積を、前記第二差分値で除算した結果を、前記第二試料の熱容量として算出することが好ましい。
【0012】
本構成によれば、第一積分値によって表される、載置面における第一試料と接触している領域及び載置面における空気と接触している領域を通過した熱流の積分値から、基準積分値によって表される、載置面における空気と接触している領域のみを通過した熱流の積分値を減算した結果に基づき、感度係数が算出される。
【0013】
このため、ヒートシンクと空気との熱交換によって生じた載置面を通過する熱流の積分値をキャンセルし、主にヒートシンクと第一試料との熱交換によって生じた載置面を通過する熱流の積分値に基づき、感度係数を精度良く算出できる。また、ヒートシンクと空気との熱交換によって生じた載置面を通過する熱流の積分値をキャンセルし、主にヒートシンクと第二試料との熱交換によって生じた載置面を通過する熱流の積分値と、上記精度良く算出された感度係数と、に基づき、第二試料の熱容量を精度良く算出できる。
【0014】
また、前記熱流センサは、前記載置面に取り付けられた薄板状のペルチェ素子によって構成されていることが好ましい。
【0015】
例えば、試料の表面に熱流センサを取り付け、当該試料を載置面に載置して、熱流センサが取り付けられた領域を通過する熱流を測定するとする。この場合、例えば、試料の表面の凹部に熱流センサが取り付けられたこと等が原因で、熱流センサが載置面に接触していない状態で試料が載置面に載置され、載置面を通過していない、空気と試料との熱交換によって生じた熱流が誤って測定される虞がある。
【0016】
しかし、本構成によれば、薄板状のペルチェ素子が載置面に取り付けられている。このため、載置面における薄板状のペルチェ素子が取り付けられている領域に、試料の少なくとも一部が接触するように試料を載置するだけで、ヒートシンクと載置面に載置された試料との熱交換によって生じた載置面を通過する熱流を精度良く測定できる。
【0017】
また、前記第一試料の前記載置面に載置される側の表面の面積は、前記ペルチェ素子の表面面積よりも小さいことが好ましい。
【0018】
本構成によれば、第一試料の載置面に載置される側の表面の面積がペルチェ素子の表面面積よりも小さいため、載置面におけるペルチェ素子が取り付けられている領域内に第一試料を載置することができる。これにより、載置面と第一試料の表面とが接触している領域を通過する全ての熱流を測定できる。その結果、載置面及び第一試料の表面とが接触している領域を通過する熱流の一部だけを測定する場合よりも、ヒートシンクと第一試料との熱交換によって生じた熱流を多く測定し、精度良く感度係数を算出できる。
【0019】
また、前記第二試料の前記載置面に載置される側の表面の面積は、前記ペルチェ素子の表面面積よりも小さいことが好ましい。
【0020】
本構成によれば、第二試料の載置面に載置される側の表面の面積がペルチェ素子の表面面積よりも小さいため、載置面におけるペルチェ素子が取り付けられている領域内に第二試料を載置することができる。これにより、載置面と第二試料の表面とが接触している領域を通過する全ての熱流を測定できる。その結果、載置面及び第二試料の表面とが接触している領域を通過する熱流の一部だけを測定する場合よりも、ヒートシンクと第二試料との熱交換によって生じた熱流を多く測定し、精度良く第二試料の熱容量を算出できる。
【0021】
また、前記第一試料と前記第二試料は、互いに同じ外形寸法であることが好ましい。
【0022】
本構成によれば、第一試料と第二試料が互いに同じ外形寸法であるので、第一試料及び第二試料を其々同じ姿勢で載置面に載置することで、載置面と第一試料とが接触している領域の面積と載置面と第二試料とが接触している領域の面積とを等しくすることができる。これにより、互いに等しい面積の領域を通過した熱流の積分値である第一積分値及び第二積分値を用いて、互いに異なる面積の領域を通過した熱流の積分値である第一積分値及び第二積分値を用いる場合よりも、精度良く第二試料の熱容量を算出できる。
【0023】
また、前記温度センサは、薄膜状に形成され、前記載置面に取り付けられていることが好ましい。
【0024】
本構成によれば、温度センサが、薄膜状に形成され、載置面に取り付けられているので、第一試料及び第二試料が其々載置面に載置された場合に、載置面及び試料の表面を通過する熱流にとって温度センサが大きな抵抗となることを回避できる。これにより、熱流センサが載置面及び試料の表面を通過する熱流を精度良く測定できなくなることを回避できる。
【0025】
また、第一試料及び第二試料の表面に取り付ける温度センサを用いた場合、当該温度センサが載置面に接触しない状態で載置され、試料の表面における載置面に接していない領域の表面温度しか測定できない虞がある。しかし、本構成によれば、温度センサが載置面に取り付けられているので、載置面における温度センサが取り付けられている領域に、試料の少なくとも一部が接触するように試料を載置するだけで、試料の表面における載置面と接触している領域の表面温度を精度良く測定できる。これにより、載置面と接触している試料の表面の表面温度を用いて、感度係数及び第二試料の熱容量を精度良く算出できる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、従来のDSC法よりも、容易な制御によって大きな試料の熱容量を測定できる熱容量測定装置及び熱容量測定方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0028】
(全体像)
以下、本発明に係る熱容量測定装置及び熱容量測定方法の一実施形態について説明する。
図1は、熱容量測定装置100の側面断面図の一例を示す図である。
図1に示すように、熱容量測定装置100は、空調室8と、熱流測定装置1を収容する試験槽9と、を備えている。
【0029】
空調室8には、空気調和機81と送風機82とが設けられている。空気調和機81は、吸込口89から空調室8内に吸い込まれた空気の温度を調整し、当該温度を調整した後の空気を送風機82に向けて吐き出す。
【0030】
送風機82は、空気調和機81の吐き出した温度調整後の空気を、吹出口88から試験槽9内へ送り込む。
図1の矢印に示すように、吹出口88から試験槽9内へ空気が送り込まれることによって生じた気流によって、試験槽9内の空気は吸込口89から空調室8内に吸い込まれる。その結果、空調室8内に吸い込まれた空気の温度が再び空気調和機81によって調整される。これを繰り返すことで、試験槽9内の空気温度が調整される。尚、空気調和機81は、空気の温度に限らず、空気の湿度を調整するように構成されていてもよい。
【0031】
試験槽9には、試験槽9内の空気環境を測定する環境センサ91と熱流測定装置1を載置するための棚板92と試験槽9を開閉するための開閉扉93とが設けられている。環境センサ91は、例えば温度センサによって構成され、定期的に試験槽9内の空気温度を測定する。空気調和機81は、環境センサ91によって測定された試験槽9内の空気温度が所定の設定温度となるように、吸込口89から空調室8内に吸い込まれた空気の温度を調整する。
【0032】
尚、環境センサ91が、更に湿度センサによって構成され、定期的に試験槽9内の空気の湿度を更に測定するようにしてもよい。この場合、空気調和機81が、環境センサ91によって測定された試験槽9内の空気の湿度が所定の設定湿度となるように、吸込口89から空調室8内に吸い込まれた空気の湿度を調整するようにしてもよい。
【0033】
棚板92に載置される熱流測定装置1は、ヒートシンク18と遮蔽容器19とを備えている。ヒートシンク18は、試料SPを直接的に載置するための載置面18aと、試料SPを間接的に載置するための載置面18cと、を有している。載置面18aは、ヒートシンク18と同じ材質の板状の部材で構成され、不図示のボルト等で載置面18cと略平行となるように取り付けられている。載置面18aと載置面18cとの間には、後述の熱流センサ11が設けられている。これにより、試料SPは、載置面18aに載置されることによって、載置面18a及び熱流センサ11を介して間接的に載置面18cに載置される。ヒートシンク18は、例えば試料SPの約十数倍の重量を有するアルミニウム等、試料SPよりも十分に熱容量が大きな物質によって構成されている。
【0034】
また、載置面18aの下端には、試料SPを支持するガイド部18bが設けられている。これにより、試料SPが載置面18aに載置された状態を維持するようにしている。ガイド部18bは、ヒートシンク18と同じ材質で構成されている。
【0035】
尚、
図1は、ヒートシンク18が、
図1の紙面表裏の方向に延びる三角柱状に構成され、載置面18aが前記三角柱の斜面である載置面18cと略平行に構成されている例を示している。しかし、これに限らず、ヒートシンク18を例えば直方体状に構成し、当該直方体の上部の水平面を試料SPを間接的に載置するための載置面18cとしてもよい。そして、当該載置面18cと略平行となるように、試料SPを直接的に載置するための載置面18aを構成してもよい。この場合、当該載置面18aにガイド部18bを設けなくてもよい。
【0036】
載置面18aには、熱流センサ11と温度センサ12とが取り付けられている。
【0037】
熱流センサ11は、例えば、一面が載置面18aに接触し、他面が載置面18cに接触する一の薄板状のペルチェ素子によって構成されている。熱流センサ11は、定期的に載置面18aを通過する熱流を測定する。載置面18aに載置された試料SPの表面温度が載置面18aの温度よりも高い場合、試料SPの表面から載置面18aへと熱流が流れ込み、試料SPとヒートシンク18との間で熱交換が行われる。このとき、熱流センサ11は、ヒートシンク18が吸熱しているものとして、載置面18aを通過した熱流をプラス(+)で表した値を出力する。
【0038】
これとは反対に、載置面18aに載置された試料SPの表面温度が載置面18aの温度よりも低い場合、載置面18aから試料SPの表面へと熱流が流れ出て、ヒートシンク18と試料SPとの間で熱交換が行われる。このとき、熱流センサ11は、ヒートシンク18が放熱しているものとして、載置面18aを通過した熱流をマイナス(−)で表した値を出力する。
【0039】
尚、
図1に示すように、後述の第一試料及び第二試料等、試料SPの載置面18aに載置される側の表面SPaの面積は、熱流センサ11を構成するペルチェ素子の表面面積よりも小さいことが好ましい。この場合、載置面18aにおけるペルチェ素子が取り付けられている領域内に試料SPを載置することができる。これにより、試料SPが載置面18aに載置された場合に、熱流センサ11は、載置面18a及び試料SPの表面とが接触している領域を通過する全ての熱流を測定できる。
【0040】
しかし、試料SPの載置面18aに載置される側の表面SPaの面積が、熱流センサ11を構成するペルチェ素子の表面面積よりも大きくなることも考えられる。そこで、複数の薄板状のペルチェ素子を、一面が載置面18aに接触し、他面が載置面18cに接触するようにして並べて配置し、これらを電気的に直列に接続することによって、熱流センサ11を構成する等のようにしてもよい。
【0041】
温度センサ12は、薄膜状の熱電対によって構成され、載置面18aに載置された試料SPの表面温度を測定する。このため、試料SPが載置面18aに載置された場合に、載置面18a及び試料SPの表面を通過する熱流にとって、温度センサ12が大きな抵抗となることを回避できる。これにより、熱流センサ11が、載置面18a及び試料SPの表面を通過する熱流を精度良く測定できなくなることを回避できる。
【0042】
また、温度センサ12が載置面18aに取り付けられているので、載置面18aにおける温度センサ12が取り付けられている領域に、試料SPの少なくとも一部が接触するように試料SPを載置するだけで、試料SPの表面における載置面18aと接触している領域の表面温度を精度良く測定できる。
【0043】
遮蔽容器19は、ヒートシンク18、熱流センサ11、温度センサ12及び載置面18aに載置された試料SPを収容する容器である。つまり、遮蔽容器19は、吹出口88から試験槽9内に流れ込むことで生じた空気の気流から、ヒートシンク18、熱流センサ11、温度センサ12及び載置面18aに載置された試料SPを遮蔽するために設けられている。これにより、前記気流がヒートシンク18及び試料SPに当たることによって、試料SPとヒートシンク18との間の熱交換が促進又は停滞し、載置面18aを通過する熱流量が変化することを回避できる。
【0044】
(機能構成)
次に、熱容量測定装置100の機能構成について詳述する。
図2は、熱容量測定装置100の機能構成の一例を示すブロック図である。
図2に示すように、熱容量測定装置100は、更に、制御部10と、インターフェイス部30と、表示部40と、操作部50と、記憶部60と、を備えている。
【0045】
制御部10は、上述の空気調和機81、送風機82、環境センサ91、熱流センサ11及び温度センサ12等、熱容量測定装置100が備える各部の制御を行う。具体的には、制御部10は、CPU(Central Processing Unit)と、RAM(Random Access Memory)等の揮発性メモリーと、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read−Only Memory)等の不揮発性メモリー、時刻を計時するタイマー回路等を備えたマイクロコンピューターによって構成される。
【0046】
制御部10は、不揮発性メモリーに記憶された制御プログラムをCPUに実行させることにより、熱量算出部13、温度差算出部14、係数算出部15及び熱容量算出部16として機能する。熱量算出部13、温度差算出部14、係数算出部15及び熱容量算出部16の詳細については後述する。
【0047】
インターフェイス部30は、熱容量測定装置100が不図示のネットワークを介して外部装置と通信するための通信インターフェイス回路によって構成される。インターフェイス部30は、制御部10による制御の下、ネットワークを介して外部装置との間で通信する。例えば、インターフェイス部30は、制御部10による制御の下、外部装置からネットワークを介して試験槽9内の空気温度の設定温度を受信する。
【0048】
表示部40は、例えば、液晶ディスプレイによって構成され、制御部10による制御の下、熱容量測定装置100の操作画面やメッセージ等の各種情報を表示する。当該操作画面には、試験槽9内の空気温度の設定温度の入力操作が可能な操作画面等が含まれる。
【0049】
操作部50は、例えば、表示部40が有する各種情報の表示面上に設けられたタッチパネル装置によって構成される。操作部50は、前記表示面に表示された各種画面内のソフトキーが操作されると、当該ソフトキー及び操作に対応付けられた指示の入力を受け付ける。また、操作部50は、タッチパネル装置に限らず、各種情報を入力するためのキーボードや各種画面内のソフトキーを操作するためのマウス等を備えて構成してもよい。
【0050】
記憶部60は、HDD(Hard Disk Drive)やSSD(Solid State Drive)等の記憶装置によって構成され、制御部10による制御の下、各種データを記憶する。また、記憶部60は、表示部40に表示される操作画面を示す画像や、制御部10による制御に用いられる各種データ等を予め記憶している。
【0051】
(試料の熱容量の測定方法)
以下では、熱容量測定装置100における試料SPの熱容量の測定方法について説明する。
図3は、熱容量測定装置100における試料SPの熱容量の測定方法を示すフローチャートである。尚、当該説明において、熱量算出部13、温度差算出部14、係数算出部15及び熱容量算出部16の詳細について説明する。
【0052】
制御部10は、熱容量C(J/K)が既知の第一試料を載置面18aに載置することをユーザに案内する操作画面を、表示部40に表示させる。尚、第一試料としては、公知文献等によって比熱c(J/(kg・K))が知られている、例えばアルミニウム等の入手が容易な試料SPを用いてもよい。比熱c(J/(kg・K))が既知の試料SPを第一試料とする場合、当該第一試料の重量m(g)と当該比熱c(J/(kg・K))との積を1000で除算した結果(=m×c/1000)が、当該第一試料の熱容量C(J/K)となる。
【0053】
そして、
図3に示すように、ユーザによって、第一試料が載置面18aに載置され、操作部50を用いて当該載置の作業を終了したことを示す情報の入力操作が行われたとする(S11)。
【0054】
この場合、熱量算出部13は、第一試料が載置面18aに載置されている状態であると判断し、空気調和機81によって試験槽9内の空気温度を、第一温度から第一温度とは異なる第二温度に調整させる(S12)。尚、第一温度及び第二温度は、ユーザによって操作部50を用いて適宜入力され、制御部10による制御の下、揮発性メモリー又は記憶部60に予め記憶されている。
【0055】
S12における試験槽9内の空気温度の調整が開始されると、熱量算出部13は、当該調整中の所定期間(以降、測定期間と記載する)に、熱流センサ11が測定した熱流の積分値を第一積分値として算出する(S13)。つまり、S12及びS13は、熱量算出処理の一例である。
【0056】
測定期間は、例えば、S12における試験槽9内の空気温度の調整が開始された時刻から、熱流センサ11の出力値に変化が見られなくなるまでの期間に定められ、不揮発性メモリー又は記憶部60に予め記憶されている。この場合、S13において、熱量算出部13は、S12の開始後、熱流センサ11の出力値が前回の熱流センサ11の出力値と等しくなるまで、熱流センサ11の出力値を累積加算し、当該累積加算結果を第一積分値として算出する。
【0057】
図4は、試験槽9内の空気温度の調整中における熱流センサ11の出力値の時系列変化の一例を示すグラフである。
図4において、左側の縦軸は、熱流センサ11の出力値(V)を示す。右側の縦軸は、環境センサ91が出力する試験槽9内の空気温度(℃)及び温度センサ12の出力値(℃)を示す。横軸は、熱量算出部13による試験槽9内の空気温度の調整処理の開始時点からの経過時間を示し、「0min」は、熱量算出部13による試験槽9内の空気温度の調整処理の開始時点を示す。
【0058】
図4の波形Wa〜Wcは、互いに異なる3種類の試料SPを其々載置面18aに載置した状態で前記調整処理が行われているときに、熱流センサ11が定期的に出力する出力値(V)の時系列変化を示す。
図4の波形Wdは、環境センサ91が定期的に出力する試験槽9内の空気温度(℃)の時系列変化を示す。
図4の波形Weは、載置面18aに試料SPを載置していない状態で前記調整処理が行われているときに、熱流センサ11が定期的に出力する出力値(V)の時系列変化を示す。
図4の波形Wfは、前記3種類の試料SPのうちのある一の試料SPを載置面18aに載置した状態で前記調整処理が行われているときに、温度センサ12が定期的に出力する出力値(℃)の時系列変化を示す。
【0059】
例えば、
図4の波形Wdに示すように、S12において、試験槽9内の空気温度を、第一温度「25℃(=298K)」から第二温度「15℃(=288K)」に調整する処理が行われたとする。また、測定期間が、上述のように、S12における試験槽9内の空気温度の調整が開始された時刻から、熱流センサ11の出力値に変化が見られなくなるまでの期間に定められているとする。
【0060】
この場合、S13において、熱量算出部13は、S12における調整の開始時点「0min」の後、例えば波形Waに示すように、熱流センサ11の出力値が連続して所定回数(例えば3回)同じ値になる等、熱流センサ11の出力値に変化が見られなくなる時点、例えば「360min」まで、熱流センサ11の出力値を累積加算し、当該累積加算結果を第一積分値として算出する。
【0061】
尚、測定期間は、S13を実行する前に、上記第一温度及び第二温度と同様、ユーザによって操作部50を用いて入力された固定値(例えば、120分(=2時間))に定められ、制御部10による制御の下、揮発性メモリー又は記憶部60に記憶されてもよい。この場合、S13において、熱量算出部13は、S12の開始後、測定期間が経過するまでの間、熱流センサ11の出力値を累積加算し、当該累積加算結果を第一積分値として算出する。
【0062】
例えば、
図4の波形Wdに示すように、S12において、試験槽9内の空気温度を、第一温度「25℃(=298K)」から第二温度「15℃(=288K)」に調整する処理が行われたとする。また、測定期間が、上述のように、ユーザによって操作部50を用いて入力された「120分」に定められているとする。
【0063】
この場合、S13において、熱量算出部13は、例えば波形Wbに示すように、S12における調整の開始時点「0min」から、測定期間である「120分」が経過した時点「120min」までの間、「0V」から「−0.005V」まで変化する熱流センサ11の出力値を累積加算し、当該累積加算結果を第一積分値として算出する。
【0064】
また、S12における試験槽9内の空気温度の調整が開始されると、温度差算出部14は、前記測定期間の開始時に温度センサ12が測定した第一試料の表面温度と、前記測定期間の終了時に温度センサ12が測定した第一試料の表面温度との差分値を、第一差分値として算出する(S14)。つまり、S14は、温度差算出処理の一例である。
【0065】
具体的には、上述のように、前記測定期間が、例えばS12における試験槽9内の空気温度の調整が開始された時刻から、熱流センサ11の出力値に変化が見られなくなるまでの期間に定められているとする。この場合、S14において、温度差算出部14は、例えば
図4の波形Wfに示すように、S12の開始時に温度センサ12が測定した第一試料の表面温度「25℃(=298K)」から、その後、熱流センサ11の出力値が前回の出力値と等しくなったときに温度センサ12が測定した第一試料の表面温度「15℃(=288K)」を減算した結果「10K」を、第一差分値として算出する。
【0066】
一方、上述のように、前記測定期間が、ユーザによって操作部50を用いて入力された固定値に定められ、例えば、「120分(=2時間)」に定められているとする。この場合、S14において、温度差算出部14は、例えば
図4の波形Wfに示すように、S12の開始時に温度センサ12が測定した第一試料の表面温度「25℃(=298K)」から、S12の開始時点から測定期間が経過したとき「120min」に温度センサ12が測定した第一試料の表面温度「17℃(=290K)」を減算した結果「8K」を、第一差分値として算出する。
【0067】
次に、係数算出部15は、S13で算出された第一積分値をS14で算出された第一差分値で除算し、当該除算の結果で第一試料の既知の熱容量を除算した結果を、感度係数として算出する(S15)。ここで、感度係数とは、熱流センサ11の出力値が単位値(例えば1V)であるときに、熱流センサ11を通過する熱量(例えば、W/V)を示す。
【0068】
具体的には、第一試料の既知の熱容量C
1は、感度係数Xと、測定期間Δtと、測定期間Δt中の熱流センサ11の出力値Q
1、及び、S14で算出された第一差分値、つまり、測定期間Δtの開始時と終了時における温度センサ12の出力値の差分ΔT
1と、を用いた下記の式(1)によって表すことができる。
【数1】
【0069】
式(1)の右辺の分子における感度係数Xと異なる項は、測定期間Δtの開始時点「0」から終了時点「Δt」までの間の熱流センサ11の出力値Q
1の積分値を表し、つまり、S13で算出された第一積分値を表している。式(1)を変形すると、感度係数Xを算出する下記式(2)が得られる。
【数2】
【0070】
したがって、係数算出部15は、S15において、式(2)に示すように、S13で算出された第一積分値をS14で算出された第一差分値ΔT
1で除算し、当該除算の結果で第一試料の既知の熱容量C
1を除算した結果を、感度係数Xとして算出する。
【0071】
次に、制御部10は、熱容量が未知の第二試料を載置面18aに載置することをユーザに案内する操作画面を表示部40に表示させる。例えば、第二試料としては、車両に搭載されるリチウムイオン電池等、複数種類の材料によって構成される試料SPを用いることができる。
【0072】
尚、第一試料と第二試料は、互いに同じ外形寸法であることが好ましい。ここで、試料SPの外形寸法とは、試料SPに外接する直方体の高さ、幅及び奥行きを示す。この場合、第一試料及び第二試料を其々同じ姿勢で載置面18aに載置することで、載置面18aと第一試料とが接触している領域の面積と載置面18aと第二試料とが接触している領域の面積とを等しくすることができる。これにより、第一試料及び第二試料が其々載置面18aに載置された場合に、熱流センサ11によって互いに等しい面積の領域を通過した熱流を測定させることができる。
【0073】
そして、ユーザによって第二試料が載置面18aに載置され、操作部50を用いて当該載置の作業を終了したことを示す情報の入力操作が行われたとする(S16)。この場合、熱量算出部13は、第二試料が載置面18aに載置されている状態であると判断し、S12と同様にして、空気調和機81によって試験槽9内の空気温度を、S12における第一温度と同じ第一温度から、S12における第二温度と同じ第二温度に調整させる(S17)。
【0074】
S17における試験槽9内の空気温度の調整が開始されると、熱量算出部13は、S13と同様にして、S13における測定期間と同じ測定期間に、熱流センサ11が測定した熱流の積分値を第二積分値として算出する(S18)。つまり、S17及びS18は、熱量算出処理の一例である。
【0075】
また、S17における試験槽9内の空気温度の調整が開始されると、温度差算出部14は、S14と同様にして、S17の調整中における前記測定期間の開始時に温度センサ12が測定した第二試料の表面温度と、測定期間の終了時に温度センサ12が測定した第二試料の表面温度との差分値を、第二差分値として算出する(S19)。つまり、S19は、温度差算出処理の一例である。
【0076】
そして、熱容量算出部16は、S18で算出された第二積分値とS15で算出された感度係数Xとの積を、S19で算出された第二差分値で除算した結果を、第二試料の熱容量として算出する(S20)。
【0077】
具体的には、第二試料の未知の熱容量C
2は、式(1)と同様、感度係数Xと、測定期間Δtと、測定期間Δt中の熱流センサ11の出力値Q
2、及び、S19で算出された第二差分値、つまり、測定期間Δtの開始時と終了時における温度センサ12の出力値の差分ΔT
2と、を用いた下記の式(3)によって表すことができる。
【数3】
【0078】
式(3)の右辺の分子における感度係数Xと異なる項は、測定期間Δtの開始時点「0」から終了時点「Δt」までの間の熱流センサ11の出力値Q
2の積分値を表し、つまり、S18で算出された第二積分値を表している。
【0079】
したがって、熱容量算出部16は、S20において、式(3)に示すように、S18で算出された第二積分値とS15で算出された感度係数Xとの積を、S19で算出された第二差分値ΔT
2で除算した結果を、第二試料の熱容量C
2として算出する。
【0080】
(算出結果の具体例)
以下では、上述の熱容量測定方法によって第二試料の熱容量C
2を算出した結果の具体例について、
図5を用いて説明する。
図5は、重量が異なる三個のアルミニウムの熱容量を算出した結果の一例を示す図である。
【0081】
本具体例では、
図5の第一行に示すように、重量mが「74g」であり、比熱cが「893.24J/(kg*K)」であり、熱容量Cid(=c×m/1000)が「66.10(=74×893.24/1000)J/K」であることが既知のアルミニウムを、第一試料とした。尚、当該アルミニウムの比熱c「893.24J/(kg*K)」は、以下のように推算した。先ず、公知文献で知られている、表面温度が「200K(=−73℃)」、「250K(=−23℃)」、「298.15K(=25.15℃)」、「350K(=77℃)」であるときのアルミニウムの比熱c「790.5J/(kg*K)」、「855.4J/(kg*K)」、「897J/(kg*K)」、「930.6J/(kg*K)」に基づき、アルミニウムの表面温度と比熱cとの関係を表す近似式を導出した。そして、当該近似式を用いて、表面温度が「293K(=20℃)」であるときのアルミニウムの比熱cを推算した。また、重量mが「74g」、「152g」及び「209g」の三個のアルミニウムを其々第二試料として、
図3に示す熱容量測定方法で各アルミニウムの熱容量を算出した。
【0082】
S12及びS17では、
図4の波形Wdに示すように、試験槽9内の空気温度を第一温度「25℃(=298K)」から第二温度「15℃(=288K)」に調整する処理を行った。重量mが「74g」のアルミニウムを第二試料とした場合、当該S17が行われている間、熱流センサ11の出力値は、
図4の波形Waに示すように変化した。また、重量mが「152g」のアルミニウムを第二試料とした場合、熱流センサ11の出力値は、
図4の波形Wbに示すように変化し、重量mが「209g」のアルミニウムを第二試料とした場合、熱流センサ11の出力値は、
図4の波形Wcに示すように変化した。また、上記三個のアルミニウムの何れを第二試料とした場合であっても、S19で算出された第二差分値は「10K」であった。
【0083】
そして、重量mが「74g」のアルミニウムを第二試料とした場合、
図5の一行目に示すように、S20において、式(3)の右辺の分子に示す、第二積算値と感度係数Xとの積(以降、熱流積算値と記載する)は「681.66J」と算出された。当該熱流積算値「681.66J」をS19で算出された第二差分値「10K」で除算した結果、当該第二試料の熱容量Ccalは、「68.17J/K」と算出された。当該算出された第二試料の熱容量Ccal「68.17J/K」は、公知文献において知られている第二試料の熱容量Cid「66.10J/K」の「3.13%」に相当する誤差を含む結果となった。
【0084】
同様にして、重量mが「152g」のアルミニウムを第二試料とした場合、
図5の二行目に示すように、S20で算出された第二試料の熱容量Ccal「136.58J/K」は、公知文献において知られている当該第二試料の熱容量Cid「135.77J/K」の「0.60%」に相当する誤差を含む結果となった。
【0085】
また、重量mが「209g」のアルミニウムを第二試料とした場合、
図5の三行目に示すように、S20で算出された第二試料の熱容量Ccal「180.42J/K」は、公知文献において知られている当該第二試料の熱容量Cid「186.69J/K」の「−3.36%」に相当する誤差を含む結果となった。
【0086】
このように、
図3に示す熱容量測定方法によれば、公知文献において知られている熱容量の「4%」以内に相当する誤差を含む程度に、精度良く熱容量を算出できることがわかった。
【0087】
以上の通り、本実施形態の構成によれば、遮蔽容器19内に収容されたヒートシンク18の載置面18aに第一試料が載置され、感度係数Xが算出された後、載置面18aに第二試料が載置され、前記算出された感度係数Xを用いて第二試料の熱容量が算出される。このため、従来のDSC法とは異なり、ヒートシンク18の載置面18aに第一試料及び第二試料を同時に載置することを回避できる。これにより、従来のDSC法よりも、より大きい第一試料及び第二試料を個別にヒートシンク18に載置して、第二試料の熱容量を算出できる。
【0088】
また、従来のDSC法とは異なり、第一試料及び第二試料の表面温度を同一温度に維持しながら変化させるための、試験槽9内の空気温度やヒートシンク18の煩雑な温度制御を行うことなく、空気温度の調整が可能な既存の試験槽を用いて、容易に第二試料の熱容量を算出できる。
【0089】
(変形実施形態)
尚、上記実施形態は、本発明に係る実施形態の例示に過ぎず、本発明を上記実施形態に限定する趣旨ではない。例えば、以下に示す変形実施形態であってもよい。
【0090】
(1)S13の後、載置面18aに試料SPを載置していない状態で、熱量算出部13が、S12を行い、S13と同様に、S13における測定期間と同じ測定期間に、熱流センサ11が測定した熱流の積分値を、基準積分値として算出するようにしてもよい。
【0091】
そして、S15では、係数算出部15が、S13で算出された第一積分値をS13の後に算出した基準積分値で減算した結果を、S14で算出された第一差分値で除算し、当該除算の結果で第一試料の既知の熱容量を除算した結果を、感度係数として算出するようにしてもよい。
【0092】
具体的には、感度係数Xは、第一試料の既知の熱容量C
1と、測定期間Δtと、載置面18aに第一試料を載置した時の測定期間Δt中の熱流センサ11の出力値Q
1、載置面18aに試料SPを載置していない時の測定期間Δt中の熱流センサ11の出力値Q
0、及び、S14で算出された第一差分値、つまり、測定期間Δtの開始時と終了時における温度センサ12の出力値の差分ΔT
1と、を用いた下記の式(4)によって表すことができる。当該式(4)を変形することで、感度係数Xは、下記の式(5)によって表すことができる。
【数4】
【0093】
式(5)の右辺の分母における第一項は、測定期間Δtの開始時点「0」から終了時点「Δt」までの間の熱流センサ11の出力値Q
1の積分値を表し、つまり、S13で算出された第一積分値を表している。また、式(5)の右辺の分母における第二項は、測定期間Δtの開始時点「0」から終了時点「Δt」までの間の熱流センサ11の出力値Q
0の積分値を表し、つまり、S13の後に熱量算出部13によって算出された基準積分値を表している。したがって、S15において、係数算出部15が、式(5)を用いて感度係数Xを算出するようにしてもよい。
【0094】
尚、S13の後、例えば、載置面18aに試料SPを載置していない状態で、試験槽9内の空気温度を第一温度「25℃(=298K)」から第二温度「15℃(=288K)」に調整する処理を行ったとする。この場合、載置面18aに試料SPを載置していない時の測定期間Δt中の熱流センサ11の出力値Q
0は、例えば、
図4の波形Weに示すように変化する。
【0095】
また、これに合わせて、S20では、熱容量算出部16が、S18で算出された第二積分値からS13の後に熱量算出部13によって算出された基準積分値を減算した結果とS15で算出された感度係数Xとの積を、S19で算出された第二差分値で除算した結果を、第二試料の熱容量として算出するようにしてもよい。
【0096】
具体的には、第二試料の未知の熱容量C
2は、感度係数Xと、測定期間Δtと、載置面18aに第二試料を載置した時の測定期間Δt中の熱流センサ11の出力値Q
2、載置面18aに試料SPを載置していない時の測定期間Δt中の熱流センサ11の出力値Q
0、及び、S19で算出された第二差分値、つまり、測定期間Δtの開始時と終了時における温度センサ12の出力値の差分ΔT
2と、を用いた下記の式(6)によって表すことができる。当該式(6)を変形することで、第二試料の未知の熱容量C
2は、下記の式(7)によって表すことができる。
【数5】
【0097】
式(7)の右辺の分子における第二項内の第一項は、測定期間Δtの開始時点「0」から終了時点「Δt」までの間の熱流センサ11の出力値Q
2の積分値を表し、つまり、S18で算出された第二積分値を表している。式(7)の右辺の分子における第二項内の第二項は、測定期間Δtの開始時点「0」から終了時点「Δt」までの間の熱流センサ11の出力値Q
0の積分値を表し、つまり、S13の後に熱量算出部13によって算出された基準積分値を表している。したがって、S20において、熱容量算出部16が、式(7)を用いて第二試料の未知の熱容量C
2を算出するようにしてもよい。
【0098】
本構成によれば、第一積分値によって表される、載置面18aにおける第一試料と接触している領域及び載置面18aにおける空気と接触している領域を通過した熱流の積分値から、基準積分値によって表される、載置面18aにおける空気と接触している領域のみを通過した熱流の積分値を減算した結果に基づき、感度係数Xが算出される。
【0099】
このため、ヒートシンク18と空気との熱交換によって生じた載置面18aを通過する熱流の積分値をキャンセルして、主にヒートシンク18と第一試料との熱交換によって生じた載置面18aを通過する熱流の積分値に基づき、感度係数Xを精度良く算出できる。また、ヒートシンク18と空気との熱交換によって生じた載置面18aを通過する熱流の積分値をキャンセルし、主にヒートシンク18と第二試料との熱交換によって生じた載置面18aを通過する熱流の積分値と、上記精度良く算出された感度係数Xと、に基づき、第二試料の熱容量C
2を精度良く算出できる。
【0100】
(2)熱流センサ11は、載置面18aに取り付けられた薄板状のペルチェ素子に限らず、例えば、載置面18cに取り付けられた薄板状のペルチェ素子または試料SPの表面に貼り付け可能な薄膜状のペルチェ素子等によって構成されてもよい。この場合、ヒートシンク18に載置面18aを備えず、載置面18cの下端にガイド部18bを設けるようにしてもよい。そして、S11及びS16において、第一試料及び第二試料に貼り付けた当該熱流センサ11が載置面18cと接触するように、第一試料及び第二試料を直接的に載置面18cに載置するようにしてもよい。また、S13及びS18において、当該熱流センサ11が定期的に出力する、第一試料及び第二試料の表面と載置面18cとを通過する熱流の測定値が、上述の載置面18aを通過する熱流の測定値であるものとして、第一積分値及び第二積分値を算出するようにしてもよい。また、温度センサ12は、載置面18aに取り付けられた薄膜状の熱電対に限らず、例えば、試料SPの表面に貼り付け可能な薄膜状の熱電対によって構成されてもよい。
【0101】
(3)第二試料の重量mが既知の場合、熱容量算出部16は、S20で算出した第二試料の熱容量を、当該既知の重量mで除算することによって、当該除算結果を第二試料の比熱として更に算出するようにしてもよい。
【0102】
(4)上述の実施形態では、例えば
図4の波形Wdに示すように、S12及びS17において、試験槽9内の空気温度を、第一温度「25℃(=298K)」から、第一温度よりも低い第二温度「15℃(=288K)」に下げる調整を行うことで、第二試料の熱容量を算出する具体例について説明した。しかし、これに限らず、S12及びS17において、試験槽9内の空気温度を、第一温度(例えば「15℃(=288K)」)から、第一温度よりも高い第二温度(例えば「25℃(=298K)」)に上げる調整を行うことによって、第二試料の熱容量を算出するようにしてもよい。
【0103】
(5)試験槽9内の複数箇所に、各箇所の周囲の空気環境を測定する環境センサ91を其々設けてもよい。この場合、熱流測定装置1の最も近くに配置されている環境センサ91によって測定された空気温度を用いて、S12及びS17における空気温度の調整を行うようにしてもよい。又は、前記複数箇所に設けられた環境センサ91によって測定された空気温度の平均値を用いて、S12及びS17における空気温度の調整を行うようにしてもよい。これらにより、試験槽9内の複数箇所における各空気温度に偏差が生じている場合に、S12及びS17において空気温度の調整をより精度良く行えるようにしてもよい。
【0104】
(6)ヒートシンク18の載置面18a又は載置面18cの複数箇所に温度センサ12を設けてもよい。又は、第一試料及び第二試料の表面に複数の温度センサ12を貼り付けるようにしてもよい。この場合、S14及びS18において、複数の温度センサ12の出力値の平均値を、第一試料及び第二試料の表面温度として用いるようにしてもよい。これらにより、第一試料及び第二試料の表面における各表面温度に偏差が生じている場合に、S14における第一差分値の算出及びS18における第二差分値の算出が精度良く行えるようにしてもよい。