(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
後述する明細書及び図面の記載から、少なくとも以下の事項が明らかとなる。
【0011】
光ファイバと抗張力体とを有する光ケーブルの端部に固定されるとともに、光コネクタの外部ハウジングに固定されて収容されるクランプ部材であって、前記光ファイバを挿通するファイバ挿通穴と、前記抗張力体を挿入する抗張力体用穴とを備えた本体部と、前記抗張力体用穴に挿入された前記抗張力体を前記本体部に固定するための引留用ネジとを備えることを特徴とするクランプ部材が明らかとなる。このようなクランプ部材によれば、光ケーブルの抗張力体と光コネクタのハウジングとを簡易に固定することができる。
【0012】
前記引留用ネジを前記本体部に埋め込み可能であることが望ましい。これにより、引留用ネジの締め込み不足を防止しやすい構造になる。
【0013】
前記クランプ部材は、前記抗張力体の長手方向に垂直な方向から前記抗張力体を挟み込む一対の前記引留用ネジを備えることが望ましい。これにより、強い引留力を実現できる。
【0014】
前記抗張力体と前記引留用ネジとの間に介在部材が配置されており、前記抗張力体用穴に前記抗張力体が挿入された状態で前記引留用ネジが締められると、引留用ネジのネジ先が前記介在部材を押圧し、前記介在部材を介して前記抗張力体が前記引留用ネジによって前記本体部に固定されることが望ましい。これにより、抗張力体を圧迫する面積を広くさせることができるため、強い引留力を実現できる。
【0015】
前記介在部材として筒状のスリーブが前記抗張力体用穴に配置されており、前記スリーブに前記抗張力体が挿入された状態で前記引留用ネジが締められると、前記引留用ネジのネジ先が前記スリーブを押圧して前記スリーブが変形し、前記スリーブを介して前記抗張力体が前記引留用ネジによって前記本体部に固定されることが望ましい。これにより、筒状のスリーブの内壁面と抗張力体の外面との接触面積を広くさせることができるため、特に強い引留力を実現できる。
【0016】
前記引留用ネジを締める前の段階では、前記引留用ネジの前記ネジ先と前記介在部材との間に隙間が形成されていることが望ましい。これにより、安定した引き留め力を得やすい構造になる。
【0017】
前記抗張力体用穴に前記抗張力体が挿入された状態で前記引留用ネジが締められると、前記引留用ネジのネジ先が前記抗張力体を圧迫して、前記本体部に固定されることが望ましい。これにより、クランプ部材の小型化を図ることができる。
【0018】
前記本体部は、前記光ファイバの加工時に用いられるホルダのキー突起に適合するキー溝を有することが望ましい。これにより、ホルダに対するクランプ部材の位置ずれを抑制することができる。
【0019】
前記本体部は、前記外部ハウジングに前記クランプ部材を固定するための鍔部を有することが望ましい。これにより、外部ハウジングの内周面をクランプ部材の鍔部に接触させることによって、外部ハウジングにクランプ部材を固定することができる。
【0020】
光ファイバと抗張力体とを有する光ケーブルの端部に取り付けられる光コネクタであって、外部ハウジングと、前記光ケーブルの前記抗張力体に固定されるとともに、前記外部ハウジングに固定されて収容されるクランプ部材とを備え、前記クランプ部材は、前記光ファイバを挿通するファイバ挿通穴と、前記抗張力体を挿入する抗張力体用穴とを備えた本体部と、前記抗張力体用穴に挿入された前記抗張力体を前記本体部に固定するための引留用ネジとを備えることを特徴とする光コネクタが明らかとなる。このような光コネクタによれば、光ケーブルの抗張力体と光コネクタのハウジングとを簡易に固定することができる。
【0021】
前記引留用ネジを締めると、前記引留用ネジを前記本体部に埋め込み可能であり、前記引留用ネジのネジ頭が前記本体部から突出した状態では、前記引留用ネジの前記ネジ頭が外部ハウジングの内壁面に接触することによって、前記クランプ部材を前記外部ハウジングに収容することが阻害されることが望ましい。これにより、引留用ネジの締め込み不足を防止することができる。
【0022】
光ファイバと抗張力体とを有する光ケーブルの端部に取り付けられる光コネクタの製造方法であって、(1)クランプ部材のファイバ挿通に前記光ファイバを挿通させるとともに、前記クランプ部材の抗張力体用穴に前記抗張力体を挿入すること、(2)前記クランプ部材の引留用ネジを締めて、前記抗張力体用穴に挿入された前記抗張力体を前記クランプ部材に固定すること、及び、(3)前記クランプ部材を外部ハウジングに収容するとともに、前記クランプ部材を前記外部ハウジングに固定することを行うことを特徴とする光コネクタの製造方法が明らかとなる。このような光コネクタの製造方法によれば、光ケーブルの抗張力体と光コネクタのハウジングとを簡易に固定することができる。
【0023】
===第1実施形態===
<光コネクタ100の基本構成>
図1Aは、光コネクタ100の斜視図である。
図1Bは、光コネクタ100の分解図である。
図2は、光コネクタ100の断面図である。
【0024】
以下の説明では、図に示すように、各方向を定義する。すなわち、コネクタ着脱方向を「前後方向」とし、相手側の光コネクタの側を「前」とし、逆側を「後」とする。なお、光ケーブル1(若しくは光ファイバ3や抗張力体5)の長手方向は前後方向となる。また、扁平状の光ケーブル1の断面の長径方向(光ケーブル1の2本の抗張力体5の並ぶ方向)を左右方向とし、後側から前側に向かって見たときの右手側を「右」とし、逆側を「左」とする。また、前後方向及び左右方向に垂直な方向を「上下方向」とする。
【0025】
図中の光コネクタ100は、光ケーブル1の端部に取り付けられたコネクタであり、不図示のレセプタクル側光コネクタに対して着脱可能なコネクタである。本実施形態の光コネクタ100は、現場で処理された光ケーブル1の端部に取り付けられるコネクタであり、現場組立型光コネクタ、若しくは現場付け光コネクタなどと呼ばれコネクタである。光コネクタ100は、不図示のレセプタクル側光コネクタと接続されると、フェルール21の端面同士が突き当たることになる。これにより、光ファイバ3の端面同士が物理的に突き当たり、光ファイバ3が光接続することになる。光コネクタ100の後側から光ケーブル1が延び出ている。光コネクタ100の後側には、光ケーブル1を保護するためのブーツ44が取り付けられている。光コネクタ100を取り付けた光ケーブル1は、光コネクタ付き光ケーブルとなる。
【0026】
光ケーブル1は、光ファイバ3と、2本の抗張力体5とを有する(
図1A参照)。ここでは、光ファイバ3は、チューブ内にジェルを充填したチューブケーブル2内に収容されている。チューブケーブル2は1本の光ファイバ3を収容しているが、複数の光ファイバ3を収容することも可能である。また、光ファイバ3は、チューブを介さずに、光ケーブル1の外被7に直接収容されても良い。2本の抗張力体5は、光ファイバ3(チューブケーブル2)を挟むように配置されている。このため、光ファイバ3(チューブケーブル2)及び2本の抗張力体5を外被7で覆って構成された光ケーブル1は、断面が扁平状になっている。なお、光ケーブル1は、光ファイバ3や抗張力体5とは別の部材(例えばリップコードや吸水ヤーンなど)が外被7内に収容されていても良い。
【0027】
光コネクタ100は、クランプ部材10と、コネクタユニット20と、カップリングユニット30と、付与機構35と、ブーツユニット40とを有する。
【0028】
クランプ部材10は、光ケーブル1の端部に取り付けられるハウジングである。クランプ部材10は、光ケーブル1の端部に固定されるハウジングであるため、固定用ハウジングと呼ばれることもある。クランプ部材10は、ファイバ挿通穴11Aと、一対の抗張力体用穴11Bとを有する。クランプ部材10は、光ケーブル1から口出しされた抗張力体5に固定されることによって、光ケーブル1の端部に固定される。本実施形態では、クランプ部材10の引留用ネジ13を締めることによって、クランプ部材10を抗張力体5に固定することができる。クランプ部材10の詳しい構成について後述する。
【0029】
コネクタユニット20は、フェルール21と、メカニカルスプライス部23と、コネクタユニットハウジング25とを有する。フェルール21は、ここでは単心光コネクタに使用される円筒形状のフェルールである。フェルール21には予め内蔵ファイバの前側端部が固定されており、内蔵ファイバはフェルール21とともに端面研磨されている。内蔵ファイバの後側端部はメカニカルスプライス部23の調心溝に配置されている。メカニカルスプライス部23は、メカニカルスプライス法により内蔵ファイバと、光ケーブル1から口出しした光ファイバ3とを軸合わせ(調心)するとともに、内蔵ファイバと光ファイバ3とを付き合わせた状態で固定する部材である。光ケーブル1から口出しされた光ファイバ3は、コネクタユニット20の後側からメカニカルスプライス部23に挿入され、内蔵ファイバに突き当てられる。光ファイバ3の端面同士が突き当てられた状態でコネクタユニット20に装着されている介挿部材27(
図5A〜
図5C参照)を外すと、メカニカルスプライス部23によって光ファイバ3が固定されることになる。コネクタユニットハウジング25は、フェルール21の一部(フランジ部)やメカニカルスプライス部23を収容するためのハウジングである。本実施形態では、メカニカルスプライス法により内蔵ファイバと光ファイバ3とを接続することができるため、組立現場において簡単な組立作業で光コネクタを組み立てることができる。
【0030】
カップリングユニット30は、レセプタクル側ハウジング(不図示)と結合する部材である。カップリングユニット30は、回転部材31と、前側ハウジング33とを有し、バヨネットタイプの結合機構として構成されている。回転部材31は、前側ハウジング33に対して回転可能な筒状の部材であり、レセプタクル側ハウジング(不図示)の結合部を係止(引っ掛ける)ための係止部を有する。前側ハウジング33は、コネクタユニット20や付与機構35を収容するためのハウジングである。前側ハウジング33の前部は、筒状のレセプタクル側ハウジング(不図示)の内側に挿入される挿入部となる。前側ハウジング33の後部の外周面には雄ネジ部33A(図中にはネジ山は不図示)が形成されており、この雄ネジ部33Aは、ブーツユニット40の後側ハウジング42の雌ネジ部42Aと嵌合する。
【0031】
付与機構35は、コネクタ接続時に光コネクタ100(プラグ側光コネクタ)に後側への力を付与する機構である。付与機構35は、可動ハウジング35Aと、スプリング35Bとを有する。可動ハウジング35Aは、コネクタユニット20(フェルール21)の前部及びスプリング35Bを収容しつつ、フェルール21に対して前後方向に可動なハウジングである。可動ハウジング35Aは、筒状に形成されており、前側の開口からフェルール21の端面が露出している。可動ハウジング35Aには鍔部が形成されており、この鍔部が前側ハウジング33の内周面に形成された突出部に接触することによって、可動ハウジング35Aの前抜けを防止しつつ、コネクタ接続時に可動ハウジング35Aが前側ハウジング33に対して後側へ移動することが許容されている。スプリング35Bは、コネクタ接続時に光コネクタ100(プラグ側光コネクタ)に後側への力を付与する弾性部材である。スプリング35Bの中央の空洞には、フェルール21が挿通される。スプリング35Bは、可動ハウジング35Aとコネクタユニット20との間で収縮された状態で配置されており、両者の間で反発力を生成する。スプリング35Bの反発力によって、カップリングユニット30の回転部材31とレセプタクル側ハウジング(不図示)の結合部との結合(引っ掛かり)が強固になり、光コネクタ100が外れにくくなる。
【0032】
ブーツユニット40は、光コネクタ100の後部や光ケーブル1を保護する保護部材である。ブーツユニット40は、後側ハウジング42と、ブーツ44と、締付部材46とを有する。後側ハウジング42は、クランプ部材10を収容するためのハウジングである。後側ハウジング42の前部の内周面には雌ネジ部42A(図中にはネジ山は不図示)が形成されており、この雌ネジ部42Aは、カップリングユニット30の前側ハウジング33の雄ネジ部33Aと嵌合する。ブーツ44は、光ケーブル1を保護する部材である。ブーツ44にはケーブル用挿通穴が形成されており、ケーブル用挿通穴には光ケーブル1が挿通されている。締付部材46は、後側ハウジング42に対してブーツ44を固定するための筒状(ナット状)の部材である。後側ハウジング42の後部の外周面には雄ネジ部42B(図中にはネジ山は不図示)が形成されており、締付部材46の前部の内周面には雌ネジ部46A(図中にはネジ山は不図示)が形成されており、後側ハウジング42の後部と締付部材46の前部とが嵌合する。本実施形態では、締付部材46を後側ハウジング42にネジ止めすることによって、後側ハウジング42とブーツ44との隙間を狭め、また、ブーツ44と光ケーブル1との隙間を狭め、これにより、隙間からの浸水を抑制している。ブーツユニット40の詳しい構成について後述する。
【0033】
クランプ部材10とコネクタユニットハウジング25とによって、内部ハウジング51が構成される。クランプ部材10の前部には、外側に突出した後側鍔部11E(段差部)が形成されており、コネクタユニットハウジング25の後部には、外側に突出した前側鍔部25Aが形成されている。後側鍔部11E及び前側鍔部25Aによって、内側ハウジングの中央部には、外側に突出した鍔部51Aが形成されている。
【0034】
また、前側ハウジング33と後側ハウジング42とによって、外部ハウジング52が構成されている。外部ハウジング52は、内部ハウジング51(クランプ部材10及びコネクタユニットハウジング25)を収容するハウジングである。前側ハウジング33の後側端面は、コネクタユニットハウジング25の前側鍔部25A(段差部)の段差面に接触する接触部となる。後側ハウジング42の内周面には内側に突出した接触部(段差部)が形成されており、クランプ部材10の後側鍔部11Eと接触する。前側ハウジング33と後側ハウジング42とを嵌合すると(ネジ止めすると)、内部ハウジング51の鍔部51A(クランプ部材10の後側鍔部11Eとコネクタユニットハウジング25の前側鍔部25A)が前側ハウジング33と後側ハウジング42とによって前後方向から挟み込まれ、これにより、内部ハウジング51(クランプ部材10及びコネクタユニットハウジング25)が外部ハウジング52の内部で固定される。
【0035】
<光コネクタ100の組立方法>
次に、光コネクタ100の組立方法について説明する。
【0036】
図3A〜
図3Cは、光ケーブル1の端部にクランプ部材10を取り付けるときの様子の説明図である。光ケーブル1に予めブーツユニット40(
図6参照)を挿入した後、
図3Aに示すように、作業者は、光ファイバ3及び抗張力体5を光ケーブル1の外被7の端部(口出し部)から前側に突出させるように、光ケーブル1の端部を予め前処理(口出し処理)する。
図3A及び
図3Bに示すように、作業者は、光ケーブル1から口出しされた光ファイバ3をクランプ部材10のファイバ挿通穴11Aに挿通させるとともに、光ケーブル1から口出しされた抗張力体5をクランプ部材10の抗張力体用穴11Bに挿入する。このとき、光ファイバ3は、ファイバ挿通穴11Aを貫通して、クランプ部材10よりも前側に突出することになる。一方、抗張力体5の前端は、抗張力体用穴11Bを貫通せずに、抗張力体用穴11Bの内部に配置されている。
【0037】
作業者は、
図3Bに示すようにクランプ部材10の抗張力体用穴11Bに抗張力体5を挿入した後、
図3Cに示すように、引留用ネジ13を締めて、これにより、抗張力体5をクランプ部材10に固定する。このように、本実施形態では、接着剤を用いずに、抗張力体5とクランプ部材10とを固定することができる。なお、クランプ部材10の詳しい構成については後述する。
【0038】
ところで、
図3Aに示すように、クランプ部材10に抗張力体5を挿入する前には、引留用ネジ13のネジ頭は、クランプ部材10(本体部11)の外面から突出している。作業者は、抗張力体5とクランプ部材10とを固定するとき、引留用ネジ13のネジ頭がクランプ部材10の外面から隠れるまで、引留用ネジ13を締める。仮に引留用ネジ13のネジ頭がクランプ部材10の外面から突出していると、引留用ネジ13のネジ頭が外部ハウジング52(詳しくはブーツユニット40の後側ハウジング42)の内壁面に接触してしまい、クランプ部材10を外部ハウジング52に収容できなくなる。これにより、引留用ネジ13の締め込み不足を防止でき、所定の締め付け力で引留用ネジ13により抗張力体5を固定することができる。
【0039】
図4A〜
図4Eは、光ファイバ3の前処理の様子の説明図である。
図4A〜
図4Eは、光ファイバ3の前処理に用いられるホルダ60の説明図でもある。
【0040】
図4A及び
図4Bに示すように、作業者は、光ケーブル1を取り付けたクランプ部材10をホルダ60の保持部材70に装着する。
図4Bに示すようにクランプ部材10をホルダ60の保持部材70に装着した後、作業者は、
図4Cに示すように、保持部材70をスペーサ部材80に対して前側に移動させて(若しくは、スペーサ部材80を保持部材70に対して後側に移動させて)、クランプ部材10の前側端面をスペーサ部材80に突き当てる。作業者は、
図4Cに示す状態で、不図示のストリッパーを用いて光ファイバ3の端部の被覆を除去するとともに、不図示のカッターを用いて光ファイバ3の端部をカットする。このとき、ホルダ60(詳しくはスペーサ部材80)がスペーサとして機能することによって、所定長さの光ファイバ3がクランプ部材10から前側に延び出るように光ファイバ3の端部が前処理される。光ファイバ3の端部の前処理後、作業者は、
図4D及び
図4Eに示すように、保持部材70に対してスペーサ部材80を回転させることによって、クランプ部材10の前側からスペーサ部材80をどけることができる。なお、ホルダ60の詳しい構成については後述する。
【0041】
図5A〜
図5Eは、コネクタユニット20を取り付ける様子の説明図である。
【0042】
図5Aに示すように、介挿部材27の取り付けられたコネクタユニット20がスライダ90に予め保持されている。
図5Aに示すように、作業者は、クランプ部材10を保持したホルダ60をスライダ90にセットし、スライダ90に沿ってホルダ60をコネクタユニット20の側に移動させ、光ファイバ3をコネクタユニット20(詳しくはメカニカルスプライス部23)に挿入する。
図5Aに示すように、ホルダ60(詳しくは保持部材70)には爪部75が設けられており、作業者は、コネクタユニット20の前側鍔部25Aにホルダ60の爪部75が引っ掛かるまで、スライダ90に沿ってホルダ60をコネクタユニット20の側に移動させる。コネクタユニット20の前側鍔部25Aに爪部75が引っ掛かるまでホルダ60を移動させることによって、所定の長さの光ファイバ3をコネクタユニット20(詳しくはメカニカルスプライス部23)に挿入させることを作業者に促すことができ、これにより、確実に光ファイバ3をコネクタユニット20の内蔵ファイバ(不図示)の端面に突き当てることができる。また、コネクタユニット20の前側鍔部25Aにホルダ60の爪部75が引っ掛かることによって、光ファイバ3の端面同士が突き当てられた状態を維持することができる。
図5Bに示すようにコネクタユニット20の前側鍔部25Aにホルダ60の爪部75を引っ掛けた後、
図5Cに示すように、作業者は、コネクタユニット20から介挿部材27を外し、くさび27Aをメカニカルスプライス部23から外し、メカニカルスプライス部23によって光ファイバ3を固定する。
図5Dに示すように、コネクタユニット20は、介挿部材27が外れるとスライダ90から外すことができる。スライダ90からコネクタユニット20を外した後、
図5Eに示すように、作業者は、ホルダ60からクランプ部材10及びコネクタユニット20を取り出す。
【0043】
なお、
図5Aに示すように、コネクタユニット20のコネクタユニットハウジング25の後端部には、一対の突出部25Bが形成されている。また、クランプ部材10の前端部には、一対の係合穴11Dが形成されている。突出部25Bは係合穴11Dに対して若干大きく形成されており、
図5Bに示すようにコネクタユニット20の前側鍔部25Aに爪部75が引っ掛かるまでホルダ60を移動させると、突出部25Bが係合穴11Dに圧入され、締まり嵌めのように突出部25Bと係合穴11Dとが嵌合する。締まり嵌めのように突出部25Bと係合穴11Dとが嵌合することによって、ホルダ60からクランプ部材10及びコネクタユニット20を取り出した後においても、コネクタユニット20は、クランプ部材10に対して固定された状態になっている(
図5E参照)。
【0044】
図6は、光コネクタ100の組立時の様子の説明図である。なお、
図6には、外部ハウジング52(前側ハウジング33と後側ハウジング42)に内部ハウジング51(クランプ部材10及びコネクタユニットハウジング25)を収容する様子が示されている。
【0045】
作業者は、コネクタユニット20の前側に付与機構35を配置させつつ、カップリングユニット30の前側ハウジング33とブーツユニット40の後側ハウジング42とをネジ締めにより締結させ、外部ハウジング52(前側ハウジング33と後側ハウジング42)に内部ハウジング51(クランプ部材10及びコネクタユニットハウジング25)を収容する。前側ハウジング33と後側ハウジング42とを嵌合させると、内部ハウジング51の鍔部51A(クランプ部材10の後側鍔部11Eとコネクタユニットハウジング25の前側鍔部25A)が前側ハウジング33と後側ハウジング42とによって前後方向から挟み込まれ、これにより、内部ハウジング51(クランプ部材10及びコネクタユニットハウジング25)が外部ハウジング52の内部で固定される。また、カップリングユニット30の取り付け後、作業者は、防水のため、締付部材46を後側ハウジング42にネジ締めする(締結する)。なお、ブーツユニット40の詳しい構成について後述する。
【0046】
本実施形態では、引留用ネジ13のネジ頭が本体部11から突出した状態では(
図3B参照)、内部ハウジング51を外部ハウジング52に収容するときに、引留用ネジ13のネジ頭が外部ハウジング52の内壁面に接触し、内部ハウジング51を外部ハウジング52に収容できなくなる(クランプ部材10を外部ハウジング52に収容することが阻害される)。これにより、引留用ネジ13の締め込み不足を防止でき、所定の締め付け力で引留用ネジ13により抗張力体5を固定することができる。
【0047】
本実施形態の光コネクタ100は、上記の組立手順によって、組み立てられる(製造される)。本実施形態の光コネクタ100の製造方法によれば、接着剤を用いずに、抗張力体5とクランプ部材10とを固定することができる。なお、本実施形態のように光コネクタ100が現場組立型光コネクタの場合には、接着剤を用いずに抗張力体5とクランプ部材10とを固定することができることは、特に便利である。
【0048】
<クランプ部材10について>
図7A〜
図7Cは、クランプ部材10の説明図である。
図7Aは、クランプ部材10の斜視図である。
図7Bは、クランプ部材10の本体部11を透過させた透過斜視図である。
図7Cは、クランプ部材10の抗張力体用穴11Bに光ケーブル1の抗張力体5を挿入した状態での透過斜視図である。
図8Aは、引留用ネジ13を締める前の状態でのクランプ部材10の断面図である。
図8Bは、引留用ネジ13を締めた後の状態でのクランプ部材10の断面図である。
【0049】
クランプ部材10は、本体部11と、引留用ネジ13とを有する。また、本実施形態のクランプ部材10は、介在部材となる金属スリーブ15も有する。
【0050】
本体部11は、クランプ部材10の本体を構成する部材である。本体部11は、ファイバ挿通穴11Aと、一対の抗張力体用穴11Bと、ネジ穴11Cと、係合穴11Dと、後側鍔部11Eと、キー溝11Fと、突出部11Gとを有する。
【0051】
ファイバ挿通穴11Aは、光ケーブル1から口出しされた光ファイバ3を挿通させるための貫通穴である。メカニカルスプライス法により光ファイバ3を内蔵ファイバに突き合わせた時に光ファイバ3が撓むため、ファイバ挿通穴11Aの断面形状は、上下方向に延びた形状をしている。
【0052】
抗張力体用穴11Bは、光ケーブル1から口出しされた抗張力体5を挿入するための穴である。抗張力体用穴11Bは、ここでは貫通穴であるが、後側から抗張力体5を挿入できれば良いので、前側の閉じた非貫通穴でも良い。一対の抗張力体用穴11Bは、ファイバ挿通穴11Aを左右方向から挟むように配置されている。本実施形態では、抗張力体用穴11Bの中に、金属スリーブ15が配置されている(
図7B参照)。
【0053】
ネジ穴11Cは、引留用ネジ13のための雌ネジの形成されたネジ穴11Cである。ネジ穴11Cは、上下方向に沿って形成されており、本体部11の外部との間を貫通するように、形成されている。左右方向から見たとき、一対のネジ穴11Cが、抗張力体用穴11Bを挟んで上下対称に配置されている。また、左右方向から見たとき、上下対称に配置されたネジ穴11Cの対は、前後方向に並んで2対配置されている。すなわち、それぞれの抗張力体用穴11Bの上側に2つのネジ穴11Cが前後方向に並んで配置されており、下側にも2つのネジ穴11Cが前後方向に並んで配置されており、上側のネジ穴11Cと下側のネジ穴11Cとは抗張力体用穴11Bを挟んで対向配置されている。このため、本実施形態では、計8個のネジ穴11Cが本体部11に形成されている。それぞれのネジ穴11Cには引留用ネジ13が配置されている。
【0054】
引留用ネジ13は、クランプ部材10(本体部11)に抗張力体5を引き留めるためのネジである。引留用ネジ13が締められると、引留用ネジ13によって抗張力体5が締め付けられ、これにより、光ケーブル1が抗張力体5を介してクランプ部材10(本体部11)に引き留められることになる。引留用ネジ13は、抗張力体5を引き留めるためのアンカーとしての機能を有する。引留用ネジ13を締め込む力(トルク)に対して引留用ネジ13が抗張力体5を締め付ける力が大きいため、本実施形態では、大きな引留力を得ることができる。なお、クランプ部材10(内部ハウジング51)は外部ハウジング52に収容可能な寸法であることが要求されるため、本実施形態のクランプ部材10のように小型でも大きな引留力を得られることは、特に重要である。
【0055】
本実施形態では、引留用ネジ13は、ネジ穴11Cの長さ(深さ)よりも短く形成されており、引留用ネジ13のネジ頭は軸部と同じ太さになっている。つまり、引留用ネジ13は、イモネジ・止めネジである。これにより、引留用ネジ13のネジ頭をネジ穴11Cに埋め込み可能となり、引留用ネジ13のネジ頭がクランプ部材10(本体部11)の外面から隠れるまで(
図3C参照)、引留用ネジ13を締めることができる。言い換えると、本実施形態では、本体部11は、引留用ネジ13を埋め込み可能なネジ穴11Cを有する。なお、引留用ネジ13はイモネジに限られるものではなく、引留用ネジ13のネジ頭が軸部より太くても、ネジ穴11Cの開口部を大きくすれば、引留用ネジ13を本体部11に埋め込み可能なネジ穴11Cを構成できる。本実施形態では、引留用ネジ13のネジ頭(頭部)には六角穴が形成されているが、六角穴の代わりにプラス溝やマイナス溝が形成されても良い。
【0056】
左右方向から見たとき、一対の引留用ネジ13が、抗張力体用穴11B(本実施形態では金属スリーブ15)を上下方向から挟むように配置されている(
図8A及び
図8B参照)。これにより、一対の引留用ネジ13によって上下方向の両側から抗張力体5を挟み付けることができ、強い引留力を実現できる。なお、上下方向の片側のみから引留用ネジ13で抗張力体5を締め付けた場合には、均等な力で抗張力体5を挟み込むことができず、抗張力体5が曲がり、引留力が弱まってしまう。
【0057】
また、左右方向から見たとき、上下に配置された引留用ネジ13の対は、前後方向に並んで2対配置されている(
図8A及び
図8B参照)。すなわち、それぞれの抗張力体用穴11Bの上側に2つの引留用ネジ13が前後方向に並んで配置されており、下側にも2つの引留用ネジ13が前後方向に並んで配置されており、上側の引留用ネジ13と下側の引留用ネジ13とは抗張力体用穴11Bを挟んで対向配置されている。このように、複数の引留用ネジ13を前後方向に配置することによって、強い引留力を実現できる。
【0058】
係合穴11Dは、コネクタユニットハウジング25の後端部の突出部25B(
図5A参照)が嵌合する穴である。係合穴11Dは、クランプ部材10の前端部(前端面)に形成されている。係合穴11Dは、突出部25Bよりも若干小さく形成されており、締まり嵌めのように突出部25Bが嵌合することになる。締まり嵌めのように突出部25Bと係合穴11Dとが嵌合することによって、内部ハウジング51を外部ハウジング52に収容する前においても(
図5E参照)、クランプ部材10に対してコネクタユニット20を固定することができる。
【0059】
後側鍔部11Eは、クランプ部材10の前部において外側に突出した部位(段差部)である。後側鍔部11Eは、コネクタユニットハウジング25の前側鍔部25Aとともに、内部ハウジング51の中央部において外側に突出した鍔部51Aを構成する。後側鍔部11Eは、内部ハウジング51を外部ハウジング52に収容したときに、後側ハウジング42の内周面から内側に突出した接触部(段差部)と接触することになる(
図2参照)。
【0060】
キー溝11Fは、クランプ部材10の外周面に形成された溝状の部位である。キー溝11Fは、ホルダ60のキー突起72に適合するように構成されており、クランプ部材10をホルダ60に収容したときのクランプ部材10の姿勢を規制する。キー溝11Fは、上下方向に沿った溝状に形成されており、ホルダ60に対するクランプ部材10の回転ずれや、ホルダ60に対するクランプ部材10の前後方向及び左右方向の位置ずれを制限している。
【0061】
突出部11Gは、クランプ部材10の後端部から後側に突出して形成された部位である。クランプ部材10の後端部の上下には、それぞれ突出部11Gが後側に突出して形成されている。上下一対の突出部11Gは、扁平状の光ケーブル1の外被7を上下方向(光ケーブル1の短径方向)から把持する。これにより、引留用ネジ13を締め込む前においても(
図3B参照)、光ケーブル1に対するクランプ部材10の位置ずれ(特に回転方向の位置ずれ)を抑制できる。
【0062】
介在部材は、抗張力体5と引留用ネジ13との間に介在する部材である。本実施形態では、介在部材として、筒状の金属スリーブ15が用いられている。本実施形態のように抗張力体5と引留用ネジ13との間に介在部材(金属スリーブ15)を配置することによって、引留用ネジ13のネジ先を抗張力体5に直接接触させる場合と比べて、抗張力体5を圧迫する面積を広くさせることができ、強い引留力を実現できる。
【0063】
ところで、抗張力体5がガラス繊維強化プラスチック(GRP)の場合、抗張力体5の局所に強い力がかかると抗張力体5が破損するおそれがある。これに対し、本実施形態のように介在部材を介して抗張力体5を締め付ける構成であれば、抗張力体5を圧迫する面積を広くさせることができ、抗張力体5の局所に強い力がかかることを抑制できるため、抗張力体5の破損を抑制することができる。
【0064】
金属スリーブ15は、抗張力体5を挿入可能な筒状の部材である。金属スリーブ15は、断面C字状に形成されており、上下方向から力が加わると弾性変形可能に構成されている。金属スリーブ15は、抗張力体用穴11Bに予め挿入されている。抗張力体用穴11Bに抗張力体5が挿入されると、筒状の金属スリーブ15に抗張力体5が挿入される。金属スリーブ15を上下方向から挟むように、一対の引留用ネジ13が配置されている。引留用ネジ13が締められると、引留用ネジ13のネジ先が金属スリーブ15を押圧して金属スリーブ15が変形し、金属スリーブ15の内壁面が抗張力体5を締め付けて、これにより、光ケーブル1が抗張力体5を介してクランプ部材10に引き留められることになる。筒状の金属スリーブ15の内壁面は、抗張力体5の外面に沿って湾曲した曲面(円筒面)になっているため、介在部材と抗張力体5との接触面積(抗張力体5を圧迫する面積)を広くさせることができるので、特に強い引留力を実現できる。
【0065】
本実施形態では、引留用ネジ13を締める前の段階では、引留用ネジ13のネジ先と金属スリーブ15との間には、隙間が形成されている(
図8A参照)。加えて、金属スリーブ15と抗張力体5との間にも、若干の隙間が形成されている(金属スリーブ15に抗張力体5を挿入可能にするため)。このため、作業者が引留用ネジ13を締めると、まず、第1段階として、引留用ネジ13のネジ先が金属スリーブ15に接触し、締め付ける力に抵抗を感じることになる。この第1段階(抵抗を感じた段階、引留用ネジ13のネジ先が金属スリーブ15に接触した段階)では、未だ抗張力体5は金属スリーブ15から圧迫されておらず、抗張力体5は引き留められていないため、第2段階として、第1段階から更に作業者が引留用ネジ13を締めて、金属スリーブ15を弾性変形させて抗張力体5を圧迫することになる(
図8B参照)。本実施形態では、第1段階後の第2段階における引留用ネジ13の締め込み量(回転量)を一定量(例えば半回転)に定めることによって、安定した引き留め力を得ることができる。言い換えると、予め引留用ネジ13のネジ先と金属スリーブ15との間に隙間を形成するとともに、金属スリーブ15と抗張力体5との間に隙間を形成することによって、安定した引き留め力を得やすい構造になる。また、引留用ネジ13が過剰に締め込まれることを防止できるため、抗張力体5の破損を抑制できる。
【0066】
<ホルダ60について>
図9Aは、ホルダ60の斜視図である。
図9Bは、ホルダ60の分解図である。
【0067】
ホルダ60は、光ケーブル1を取り付けたクランプ部材10を保持するための治具である。ホルダ60は、例えば光ファイバ3の端部の前処理を行う加工工具(例えばストリッパーやカッター等)にクランプ部材10をセットするための治具として用いられる。また、ホルダ60は、コネクタユニット20に光ファイバ3を挿入する際に、スライダ90(
図5A参照)にクランプ部材10をセットするための治具として用いられる。
【0068】
ホルダ60は、保持部材70と、スペーサ部材80とを有する。なお、保持部材70は、スペーサ部材80に対して前後方向に沿って移動可能であるとともに(
図4B及び
図4C参照)、回転軸73を軸として回転可能である(
図4D参照)。
【0069】
保持部材70は、クランプ部材10を保持するための部材である。保持部材70は、収容部71と、キー突起72と、回転軸73と、案内部74と、爪部75とを有する。
【0070】
収容部71は、クランプ部材10を収容するための部位である。収容部71は、断面U字状に構成されており、一対の側壁部と、一対の側壁部を連結する底壁部とを有する。収容部71には、クランプ部材10を把持するための把持部71Aが形成されている。把持部71Aの内壁面は、クランプ部材10の外周面に適合するように形成されており、若干の弾性変形を許容するように構成されている。把持部71Aがクランプ部材10を把持することによって、クランプ部材10が保持部材70から上側に外れることが抑制される。
【0071】
キー突起72は、収容部71の側壁部から内側に突出した部位である。キー突起72は、クランプ部材10のキー溝11Fに適合するように構成されており、クランプ部材10をホルダ60(詳しくは保持部材70)に収容したときのクランプ部材10の姿勢を規制する。
【0072】
回転軸73は、保持部材70に対するスペーサ部材80の回転中心となる部位である。回転軸73は、保持部材70の側壁部から左右方向外側に突出して構成されており、スペーサ部材80の長穴82Aに挿通されている。なお、回転軸73は、スペーサ部材80の長穴82Aによって前後方向に案内されるため、スペーサ部材80に対して保持部材70を前後方向に案内する機能も有する。
【0073】
案内部74は、スライダ90に沿って前後方向にホルダ60を案内するための部位である。案内部74は、保持部材70の底面に前後方向に沿って溝状に形成されている。
【0074】
爪部75は、コネクタユニット20に係合する部位(係合部)である。爪部75がコネクタユニット20に係合することによって、保持部材70とコネクタユニット20との前後方向の位置合わせが行われ、これにより、保持部材70に保持されているクランプ部材10とコネクタユニット20との前後方向の位置合わせが行われる。本実施形態では、爪部75は、コネクタユニット20(詳しくはコネクタユニットハウジング25)の前側鍔部25Aに引っ掛かるように構成されているが、爪部75の引っ掛かる部位は、前側鍔部25Aに限られるものではない。例えば、コネクタユニット20の側面に溝部を形成し、その溝部に爪部75が引っ掛かるように構成されても良い。
図5Bに示すように、爪部75がコネクタユニット20(詳しくは前側鍔部25A)に引っ掛かることによって、所定の長さの光ファイバ3をコネクタユニット20(詳しくはメカニカルスプライス部23)に挿入させることを作業者に促すことができ、これにより、確実に光ファイバ3をコネクタユニット20の内蔵ファイバ(不図示)の端面に突き当てることができる。また、爪部75がコネクタユニット20に引っ掛かることによって、
図5Dに示すように、光ファイバ3の端面同士が突き当てられた状態を維持することができる。
【0075】
爪部75は、収容部71の前端部から前側に突出したアーム部76の先端(前端部)に形成されている。保持部材70には、一対のアーム部76が設けられており、一対のアーム部76の先端には、それぞれ爪部75が内側に突出するように形成されている。一対の爪部75や一対のアーム部76は、左右方向に対向して配置されている。爪部75をコネクタユニット20に引っ掛けるとき、コネクタユニット20(詳しくはコネクタユニットハウジング25)の後部が一対のアーム部76の内側に入り込むことになる。アーム部76は、前後方向に延び出た部位であり、スペーサ部材80に対して保持部材70を前後方向に案内する機能も有する。
【0076】
スペーサ部材80は、光ファイバ3の端部の前処理を行う加工工具(例えばストリッパーやカッター等)に対するクランプ部材10の位置を合わせる部材である。スペーサ部材80は、スペーサ部81と、外枠部82とを有する。
【0077】
スペーサ部81は、加工工具とクランプ部材10との間隔を所定の長さに保つための部位である。スペーサ部81は、突き当て面81Aと、ファイバ用溝81Bと、爪収容部81Cと、規制部81Dとを有する。
【0078】
突き当て面81Aは、クランプ部材10の前側端面を突き当てるための面である。
図4Cに示すように、保持部材70をスペーサ部材80に対して前側に移動させて(若しくは、スペーサ部材80を保持部材70に対して後側に移動させて)、クランプ部材10の前側端面をスペーサ部81の突き当て面81Aに突き当てることによって、ホルダ60に対するクランプ部材10の位置を合わせることになる。突き当て面81Aとスペーサ部材80の前側端面との間は所定の長さに設定されており、これにより、ストリッパーは、クランプ部材10の前側から延び出た光ファイバ3の所定の位置から被覆を除去することができ、カッターは、クランプ部材10の前側から延び出た光ファイバ3を所定の位置でカットすることができる。
【0079】
ファイバ用溝81Bは、スペーサ部81の上面に設けられた溝状の部位である。クランプ部材10をホルダ60にセットすると、クランプ部材10の前側から延び出た光ファイバ3は、ファイバ用溝81Bの上に配置されることになる(
図4B及び
図4C参照)。
【0080】
爪収容部81Cは、保持部材70の爪部75を収容するための部位である。爪収容部81Cは、爪部75(及びアーム部76)の前後方向の移動を許容できるように、前後方向に沿って形成されている。爪収容部81Cの底面は、保持部材70のアーム部76を前後方向に案内する案内面としての機能も有する。爪収容部81Cは、溝部811C及び孔部812Cを有する。
【0081】
溝部811Cは、爪収容部81Cの後部に形成された溝状の部位である。溝部811Cは、上側の開放された溝状の部位であり、爪部75の上下方向の移動(詳しくは回転軸73を中心とする回転移動)を許容する形状である。
図4Bに示す状態では、爪部75は爪収容部81Cの溝部811Cに位置しているため、保持部材70に対するスペーサ部材80の回転移動が許容されている。
【0082】
孔部812Cは、爪収容部81Cの前部に形成された孔状の部位である。孔部812Cは、上側の閉じた孔状の部位であり、爪部75の上方向への移動を規制する形状である。
図4Cに示す状態では、爪部75は爪収容部81Cの孔部812Cに挿入されているため、孔部812Cによって爪部75の上方向への移動が規制され、これにより、保持部材70に対するスペーサ部材80の回転移動が規制されている。
【0083】
規制部81Dは、クランプ部材10の脱落を防止する部位である。規制部81Dは、突き当て面81Aの上部から後側に突出した部位である。クランプ部材10の前側端面をスペーサ部材80の突き当て面81Aに突き当てると、規制部81Dがクランプ部材10の前部の上側に配置され、これにより、クランプ部材10が上側に外れることが防止される。規制部81Dの突出量(突き当て面81Aからの突出量)は、スペーサ部材80が保持部材70に対して前後方向に移動可能な長さよりも短く設定されている。言い換えると、規制部81Dの突出量は、クランプ部材10を保持部材70に装着してから(
図4B参照)、クランプ部材10の前側端面をスペーサ部材80の突き当て面81Aに突き当てるまで(
図4C参照)の間における保持部材70とスペーサ部材80との移動量よりも短く設定されている。
【0084】
外枠部82は、保持部材70の側面を覆う枠状の部材である。外枠部82は、一対の側板で構成されており、一対の側板の間に保持部材70が配置される。外枠部82を構成する側板の面は、前後方向に平行な面になっており、これにより、保持部材70とスペーサ部材80との前後方向の相対移動や、回転軸73を中心とする回転移動が許容されている。外枠部82には長穴82Aが形成されている。長穴82Aには、保持部材70の回転軸73が挿通されている。長穴82Aは、前後方向に長く延びた穴になっており、これにより、保持部材70とスペーサ部材80との前後方向の相対移動が許容されている。また、長穴82Aは、保持部材70の回転軸73を前後方向に沿って案内する機能も有する。
【0085】
<ブーツユニット40について>
図10Aは、ブーツユニット40の断面図である。
図10Bは、
図10Aの点線の領域の拡大図であり、締付部材46を締め付けたときのブーツ44の状態の説明図である。
【0086】
既に説明したように、ブーツユニット40は、後側ハウジング42と、ブーツ44と、締付部材46とを有する。ブーツ44にはケーブル用挿通穴が形成されており、ケーブル用挿通穴には光ケーブル1が挿通されている。後側ハウジング42及び締付部材46は、比較的硬い材質(例えばプラスチック製又は金属製)で構成されているのに対し、ブーツ44は、光ケーブル1の保護のため、比較的柔軟な材質(例えばゴム製)で構成されている。締付部材46は、後側ハウジング42の後部とブーツ44の前部とを外側から覆うように配置されている。
【0087】
ブーツ44の前部には、受け部44Aが形成されている。受け部44Aは、締付部材46から力を受ける部位である。ここでは、受け部44Aは、前側ほど外形が大きくなるように勾配したテーパ部として形成されている。これにより、受け部44Aは、締付部材46から、前側への力と、内側への力とを受けることができる(
図10Bの矢印参照)。
【0088】
締付部材46の後側には、押圧部46Bが形成されている。押圧部46Bは、ブーツ44の受け部44Aを押圧する部位である。ここでは、押圧部46Bは、後側ほど内径が小さくなるように勾配した内壁面を有する。但し、締付部材46を後側ハウジング42にネジ締めにより締結したときに押圧部46Bがブーツ44の受け部44Aを押圧できれば、押圧部46Bの形状は、これに限られるものではない。
【0089】
図10Aに示すように、後側ハウジング42と締付部材46の押圧部46Bとの間に、ブーツ44の受け部44Aが配置されている。締付部材46を後側ハウジング42にネジ締めすると、締付部材46の押圧部46Bが後側ハウジング42に向かって移動して、
図10Bに示すように、締付部材46の押圧部46Bがブーツ44の受け部44Aを押圧することになる。言い換えると、締付部材46を後側ハウジング42にネジ締めすると、ブーツ44の受け部44Aが後側ハウジング42と締付部材46の押圧部46Bとの間に挟み込まれ、ブーツ44の受け部44Aが押圧部46Bから力を受けることになる。本実施形態では、ブーツ44の受け部44Aは、押圧部46Bから前側への力と、内側(
図10Bの下側、光ケーブル1の側)への力を受けることになる。
【0090】
後側ハウジング42の後側端面とブーツ44の前側端面とが対向している。後側ハウジング42の後側端面とブーツ44の前側端面との間の隙間から水が浸入すると、光コネクタ100の故障の原因になってしまう。そこで、本実施形態では、締付部材46を後側ハウジング42にネジ締めすると、後側ハウジング42の後側端面とブーツ44の前側端面との間の隙間が狭まるように構成されている。つまり、本実施形態では、締付部材46を後側ハウジング42にネジ締めすると、後側ハウジング42の後側端面とブーツ44の前側端面とが密着するように構成されている。具体的には、締付部材46を後側ハウジング42にネジ締めすると、
図10Bに示すように、締付部材46の押圧部46Bがブーツ44の受け部44Aを前側(後側ハウジング42の側)に押圧し、ブーツ44の前側端面が後側ハウジング42の後側端面に向かって変形するように構成されている。これにより、後側ハウジング42の後側端面とブーツ44の前側端面との間の隙間からの浸水を抑制できる。
【0091】
また、ブーツ44の光ケーブル挿通穴と光ケーブル1との間の隙間から水が進入すると、光コネクタ100の故障の原因になってしまう。そこで、本実施形態では、締付部材46を後側ハウジング42にネジ締めすると、ブーツ44の光ケーブル挿通穴と光ケーブル1との間の隙間が狭まるように構成されている。すなわち、締付部材46を後側ハウジング42にネジ締めすると、
図10Bに示すように、締付部材46の押圧部46Bがブーツ44の受け部44Aを内側(光ケーブル1の側)に押圧し、ブーツ44の光ケーブル挿通穴の内壁面が光ケーブル1に向かって変形するように構成されている。これにより、ブーツ44の光ケーブル挿通穴の内壁面と光ケーブル1の外面とが密着し、ブーツ44の光ケーブル挿通穴と光ケーブル1との間の隙間からの浸水を抑制できる。
【0092】
<小括>
上述のクランプ部材10は、光ファイバ3と抗張力体5とを有する光ケーブル1の端部に固定されるとともに(
図3B参照)、光コネクタ100の外部ハウジング52に固定されて収容され(
図2参照)、クランプ部材10の本体部11は、光ファイバ3を挿通するファイバ挿通穴11Aと、抗張力体5を挿入する抗張力体用穴11Bとを備えている。本実施形態のクランプ部材10は、抗張力体用穴11Bに挿入された抗張力体5を本体部11に固定するための引留用ネジ13を備えている。これにより、接着剤を用いなくても、引留用ネジ13を締めれば、抗張力体5とクランプ部材10とを固定することができる。
【0093】
また、本実施形態では、クランプ部材10の本体部11は、引留用ネジ13を埋め込み可能なネジ穴11Cを有する。これにより、引留用ネジ13がネジ穴11Cに埋め込まれるまで引留用ネジ13を締め込むようにすれば、引留用ネジ13の締め込み不足を防止できる。
【0094】
また、本実施形態のクランプ部材10は、上下方向(抗張力体5の長手方向に垂直な方向)から抗張力体5を挟み込む一対の引留用ネジ13を備えている。これにより、上下方向の両側から抗張力体5を挟み付けることができるため、強い引留力を実現できる。
【0095】
また、本実施形態では、抗張力体5と引留用ネジ13との間に介在部材(ここでは金属スリーブ15)が配置されており、抗張力体用穴11Bに抗張力体5が挿入された状態で引留用ネジ13が締められると、引留用ネジ13のネジ先が介在部材を押圧し、介在部材を介して抗張力体5が引留用ネジ13によって本体部11に固定される。これにより、抗張力体5を圧迫する面積を広くさせることができるため、強い引留力を実現できる。
【0096】
加えて、本実施形態では、介在部材として筒状の金属スリーブ15が抗張力体用穴11Bに配置されており、金属スリーブ15に抗張力体5が挿入された状態で引留用ネジ13が締められると、引留用ネジ13のネジ先が金属スリーブ15を押圧して金属スリーブ15が変形し、金属スリーブ15を介して抗張力体5が引留用ネジ13によって本体部11に固定される。これにより、筒状の金属スリーブ15の内壁面と抗張力体5の外面との接触面積を広くさせることができるため、特に強い引留力を実現できる。
【0097】
また、本実施形態では、引留用ネジ13を締める前の段階では、引留用ネジ13のネジ先と介在部材(ここでは金属スリーブ15)との間に隙間が形成されている(
図8A参照)。これにより、作業者が引留用ネジ13を締めたときに、締め付ける力に抵抗を感じた段階(引留用ネジ13のネジ先が介在部材に接触した段階)からの引留用ネジ13の締め込み量(回転量)を一定量にすれば、安定した引き留め力を得ることができるとともに、抗張力体5の破損を抑制できる。
【0098】
また、本実施形態では、本体部11は、ホルダ60のキー突起72に適合するキー溝11Fを有する(
図4A参照)。これにより、ホルダ60に対するクランプ部材10の位置ずれを抑制することができる。
【0099】
また、本実施形態では、本体部11は、外部ハウジング52にクランプ部材10を固定するための後側鍔部11Eを有する。これにより、外部ハウジング52の内周面から内側に突出した段差部をクランプ部材10の後側鍔部11Eと接触させることによって、外部ハウジング52にクランプ部材10を固定することができる。
【0100】
===別の実施形態===
図11Aは、第2実施形態のクランプ部材10の説明図である。
図11Aは、
図7Cと同様に、クランプ部材10の抗張力体用穴11Bに光ケーブル1の抗張力体5を挿入した状態で本体部11を透過させた透過斜視図である。
【0101】
前述の実施形態では、抗張力体5ごとにそれぞれ介在部材(金属スリーブ15)が設けられていた。但し、第2実施形態のように、2本の抗張力体5に掛け渡すように配置された板状の介在部材16を介して抗張力体5が引留用ネジ13によって本体部11に固定されても良い。
【0102】
第2実施形態では、
図11Aに示すように、介在部材16の前縁及び後縁が抗張力体5に向かって突出している。このため、抗張力体5の前後方向の2箇所において、上下方向の両側から抗張力体5を挟み付けることができる。但し、介在部材16の形状は、これに限られるものではない。
【0103】
図11Bは、第3実施形態のクランプ部材10の説明図である。
図11Bも、
図11Aと同様に、クランプ部材10の抗張力体用穴11Bに光ケーブル1の抗張力体5を挿入した状態で本体部11を透過させた透過斜視図である。
【0104】
第3実施形態では、板状の介在部材16の抗張力体5の側の面(一対の介在部材16の対向面)は、平面で構成されている。第3実施形態によれば、第2実施形態と比べて、抗張力体5を圧迫する面積を広くさせることができるため、強い引留力を実現できる。また、第3実施形態によれば、第2実施形態と比べて、抗張力体5の局所にかかる力を抑制できるため、抗張力体5の破損を抑制できる。
【0105】
図11Cは、第4実施形態のクランプ部材10の説明図である。
図11Cは、クランプ部材10の抗張力体用穴11Bに光ケーブル1の抗張力体5を挿入した状態で本体部11を透過させた透過斜視図である。
【0106】
前述の実施形態では、抗張力体5と引留用ネジ13との間に介在部材(例えば金属スリーブ15や介在部材16)が配置されており、介在部材を介して抗張力体5が引留用ネジ13によって本体部11に固定されていた。これに対し、第4実施形態では、引留用ネジ13のネジ先が抗張力体5を直接圧迫し、これにより、抗張力体5が本体部11に固定される。このように、クランプ部材10が介在部材を有していなくても良い。第4実施形態によれば、クランプ部材10の小型化を図ることができる。なお、第4実施形態のように引留用ネジ13のネジ先が抗張力体5に直接接触する場合には、抗張力体5の破損を抑制するために、引留用ネジ13のネジ先が平ら(平先)であることが望ましい。
【0107】
上記の第2〜第4実施形態においても、クランプ部材10は、抗張力体用穴11Bに挿入された抗張力体5を本体部11に固定するための引留用ネジ13を備えている。これにより、接着剤を用いなくても、引留用ネジ13を締めれば、抗張力体5とクランプ部材10とを固定することができる。
【0108】
また、本実施形態のクランプ部材10は、上下方向(抗張力体5の長手方向に垂直な方向)から抗張力体5を挟み込む一対の引留用ネジ13を備えている。これにより、上下方向の両側から抗張力体5を挟み付けることができるため、強い引留力を実現できる。
【0109】
===その他===
上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更・改良され得ると共に、本発明には、その等価物が含まれることは言うまでもない。