(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6682487
(24)【登録日】2020年3月27日
(45)【発行日】2020年4月15日
(54)【発明の名称】超音波イメージングにおけるスペクトル拡散符号化波形
(51)【国際特許分類】
A61B 8/06 20060101AFI20200406BHJP
A61B 8/14 20060101ALI20200406BHJP
【FI】
A61B8/06ZDM
A61B8/14
【請求項の数】56
【全頁数】27
(21)【出願番号】特願2017-187288(P2017-187288)
(22)【出願日】2017年9月28日
(62)【分割の表示】特願2014-539114(P2014-539114)の分割
【原出願日】2012年10月29日
(65)【公開番号】特開2018-11997(P2018-11997A)
(43)【公開日】2018年1月25日
【審査請求日】2017年10月27日
(31)【優先権主張番号】61/553,137
(32)【優先日】2011年10月28日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】511053621
【氏名又は名称】ディスィジョン サイエンシズ インターナショナル コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100091096
【弁理士】
【氏名又は名称】平木 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100102576
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 敏章
(74)【代理人】
【識別番号】100101063
【弁理士】
【氏名又は名称】松丸 秀和
(72)【発明者】
【氏名】ウェグナー,アラン
【審査官】
冨永 昌彦
(56)【参考文献】
【文献】
特開2005−152608(JP,A)
【文献】
特開2010−082425(JP,A)
【文献】
特開2003−190157(JP,A)
【文献】
特開2000−041980(JP,A)
【文献】
特開昭62−117535(JP,A)
【文献】
特開2002−034985(JP,A)
【文献】
特表2007−510450(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2007/0055160(US,A1)
【文献】
特開2005−095576(JP,A)
【文献】
特表2002−539877(JP,A)
【文献】
米国特許第06213947(US,B1)
【文献】
特開平02−210286(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2005/0242985(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 8/00 − 8/15
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
音響信号から生体物質を特徴づける方法であって、
個々の直交する符号化波形を合成し、対象の生体物質に向けて送信する合成波形を生成することであって、前記合成した個々の直交する符号化波形が別個の周波数帯域に対応し、周波数符号化波形または位相符号化波形の1つまたは両方を含むことと、
前記対象の生体物質に向けて合成音響波形を送信することであって、前記送信することが、前記個々の直交する符号化波形を対応する音響波形に変換し、前記合成音響波形を生成することを含むことと、
前記合成音響波形を構成する前記送信した音響波形の少なくともいくつかに対応し、前記対象の生体物質の少なくとも一部から戻される応答音響波形を受信することと、
前記受信した応答音響波形を処理し、前記対象の生体物質の少なくとも一部のレンジドップラーデータを生成することと、
を含む、方法。
【請求項2】
請求項1において、
前記レンジドップラーデータは、前記対象の生体物質からの前記受信した応答音響信号から得られる、レンジデータと関連するドップラー周波数とを含むデータセットを有する、方法。
【請求項3】
請求項2において、
前記レンジドップラーデータは、前記受信した応答音響波形の振幅データを含む空間位置データセットと、前記受信した応答音響波形の位置データと、ドップラー周波数シフトデータと、を有し、前記位置データは、前記受信した応答音響波形が発生した前記対象の生体物質における位置に対応する、方法。
【請求項4】
請求項3において、
前記レンジドップラーデータは、時間遅延レート履歴データを含む時間−空間データセットと、前記位置データと、前記ドップラー周波数シフトデータと、を有し、前記時間遅延レートは、前記対象の生体物質の位置からの前記受信した応答音響波形の反射あるいは散乱と関連する時点に対応する、方法。
【請求項5】
請求項3において、
前記レンジドップラーデータは、前記応答音響波形が受信された前記対象の生体物質の位置に関連する前記位置データの少なくともいくつかの平均値を含む平均レンジ位置データセットを有する、方法。
【請求項6】
請求項2において、
前記レンジドップラーデータは、選択された持続時間に亘った前記対象の生体物質の前記ドップラー周波数シフトデータを含むスペクトル応答データセットを有する、方法。
【請求項7】
請求項6において、
前記スペクトル応答データセットにおける前記選択された持続時間に亘った前記ドップラー周波数シフトデータは、前記受信した応答音響波形が発生した前記対象の生体物質における位置に対応する受信した応答音響波形の位置データに関連付けられている、方法。
【請求項8】
請求項1において、
前記受信した応答音響波形を処理し、前記対象の生体物質の少なくとも一部のレンジドップラーデータを生成することは、
前記受信した応答音響波形をアナログ形式からデジタル形式に変換することと、
デジタル化された受信した応答音響波形に、対応する送信音響波形の複素共役の複製を乗算することと、
前記乗算の積をフィルタリングし、前記レンジドップラーデータを生成することと、を含み、
前記複素共役の複製は、少なくとも1つのタイムシフトの間シフトされた時間であり、前記対応する送信音響波形は、デジタル形式の信号である、方法。
【請求項9】
請求項8において、
前記フィルタリングすることは、窓関数によるフィルタリング、高速フーリエ変換(FFT)積分器によるフィルタリング、またはデジタルフィルタによるフィルタリングの1つ以上を用いる、方法。
【請求項10】
請求項8において、
前記受信した応答音響波形を処理し、前記対象の生体物質の少なくとも一部のレンジドップラーデータを生成することは、さらに、前記レンジドップラーデータに基づいて表示マップを生成することを含む、方法。
【請求項11】
請求項8において、
前記受信した応答音響波形を処理し、前記対象の生体物質の少なくとも一部のレンジドップラーデータを生成することは、さらに、トランスデューサ要素を2つ以上のサブアレイを選択し、対応する数の個々の直交する符号化波形を合成波形のサブグループに分割することを含み、
前記サブグループにおける個々の直交する符号化波形のそれぞれの、前記振幅または位相の少なくとも1つは、対応する周波数帯域の少なくとも1つに対してそれぞれ個別に重み付けされた振幅または位相である、方法。
【請求項12】
請求項1において、さらに、
前記レンジドップラーデータからのデータを含む前記対象の生体物質の少なくとも一部の画像を生成することを含む、方法。
【請求項13】
請求項1において、さらに、
前記受信した応答音響波形を、アナログ形式からデジタル形式に変換することと、
前記受信した応答音響波形を有するデジタルデータから合成応答波形を生成することと、を含み、
前記受信した応答音響波形は、前記合成応答波形の対応する周波数に関連する振幅と位相を含む、前記対象の生体物質の情報を有する、方法。
【請求項14】
請求項1において、
前記個々の直交する符号化波形を合成することは、
前記周波数帯域を選択することと、
個々の直交する符号化波形のそれぞれの、1つ以上の振幅、時間−帯域幅積パラメータ、および位相パラメータを決定することと、
を含む、方法。
【請求項15】
請求項14において、
前記位相パラメータは、一連の擬似ランダム数から、あるいは一連の決定論数から決定される、方法。
【請求項16】
請求項1において、
前記個々の直交する符号化波形は、コヒーレントな波形を含む、方法。
【請求項17】
請求項1において、さらに、
前記合成波形に基づいて、高周波(RF)波形を生成することを含み、
前記送信する音響波形は、前記合成波形に基づいて、前記生成したRF波形を変換することによって生成される、方法。
【請求項18】
請求項1において、さらに、
前記受信した応答音響波形を増幅させることを含む、方法。
【請求項19】
請求項1において、さらに、
前記送信することの動作モードを選択することを含み、
前記動作モードは、前記応答音響波形から得られる1以上の測定された特性の少なくとも1つの特徴に基づいてカラー画像符号化を可能とする生体組織を特徴づけるためのATSモードの少なくとも1つを含むか、あるいは、
前記動作モードは、前記応答音響波形から得られる1つ以上の測定された特性の少なくとも1つの特徴を用いて生体組織タイプを分類する1つ以上のアルゴリズム分類器を用いる生体組織のイメージングのためのCADモードの少なくとも1つを含む、方法。
【請求項20】
請求項1において、
前記個々の直交する符号化波形を合成し、対象の生体物質に向けて送信する合成波形を生成することは、前記個々の直交する符号化波形を合成し、前記対象の生体物質に向かって同時に送信される複数の異なる合成波形を生成することを含み、
それぞれの異なる合成波形の前記個々の直交する符号化波形は、異なるタイムエポックに対して、一連の擬似ランダム数あるいは一連の決定論数に基づいて、振幅あるいは位相パラメータを変化させることを含む、方法。
【請求項21】
音響信号を用いて対象の生体物質を特徴づけるシステムであって、
1以上の波形合成器と、波形生成器に接続された増幅器と、を有し、前記波形生成器によって提供される波形情報に従って前記1以上の波形合成器が生成する、別個の周波数に対応し、周波数符号化波形あるいは位相符号化波形の1つあるいは両方を含む個々の直交する符号化波形を含む合成波形を合成する波形生成ユニットと、
前記波形生成ユニットと通信し、前記個々の直交する符号化波形に基づいて合成音声波形を構成する音響波形を生体物質に向けて送信する、トランスデューサ要素の送信アレイと、
前記生体物質の少なくとも一部から戻る応答音響波形であって、前記合成音響波形の送信した音響波形の少なくともいくつかに対応する応答音響波形を受信するトランスデューサ要素の受信アレイと、
前記波形生成ユニット、前記送信アレイ、および前記受信アレイと通信し、前記受信した応答音響波形を処理して、前記生体物質の少なくとも一部のレンジドップラーデータを生成する処理ユニットを有するコントローラユニットと、
を備える、システム。
【請求項22】
請求項21において、
前記レンジドップラーデータは、前記生体物質の、レンジデータと、関連するドップラー周波数と、を含むデータセットを有し、
前記コントローラユニットの前記処理ユニットは、
前記受信した応答音響波形をアナログ形式からデジタル形式に変換すること、
デジタル化された受信した応答音響波形に、対応する送信音響波形の複素共役の複製を乗算することと、および
前記乗算の積をフィルタリングし、前記レンジドップラーデータを生成すること、
によって、前記レンジドップラーデータを処理し、前記データセットを生成し、
前記複素共役の複製は、少なくとも1つのタイムシフトの間シフトされた時間であり、前記対応する送信音響波形は、デジタル形式の信号である、システム。
【請求項23】
請求項21において、さらに、
ディスプレイを含み、前記コントローラユニットと通信して、前記レンジドップラーデータを表示するユーザインタフェースユニットを備える、システム。
【請求項24】
請求項23において、
前記ユーザインタフェースユニットは、前記コントローラユニットと通信して、前記システムのオペレータから入力を受信する1以上のユーザインタフェースデバイスを備える、システム。
【請求項25】
請求項24において、
前記入力は、
前記応答音響波形から得られる1以上の測定された特性の少なくとも1つの特徴に基づいてカラー画像符号化を可能とする生体組織を特徴づけるためのATSモード(人工組織染色モード)、あるいは、
前記応答音響波形から得られる1つ以上の測定された特性の少なくとも1つの特徴を用いて生体組織タイプを分類する1つ以上のアルゴリズム分類器を用いる生体組織を特徴づけるCADモード(コンピュータ支援診断モード)、
を含む動作モードを含む、システム。
【請求項26】
請求項23において、
前記ユーザインタフェースユニットの前記ディスプレイは、前記分類された生体組織タイプに基づいて、前記生体組織のカラー符号化画像を表示するように動作する、システム。
【請求項27】
請求項21において、さらに、
前記受信アレイと前記コントローラユニットと通信して、前記受信した応答音響波形をアナログ形式からデジタル形式に変換する、アナログ/デジタル(A/D)変換器のアレイを備える、システム。
【請求項28】
請求項21において、
前記送信アレイと前記受信アレイとは、同一のトランスデューサ要素を含み、
さらに、前記波形生成ユニット、前記送信アレイ、および前記受信アレイと通信し、前記音響波形を送信する送信モードと前記応答音響波形を受信する受信モードとの間の切り替えを行う、送信/受信切替ユニットを備える、システム。
【請求項29】
請求項28において、
前記波形生成ユニットの前記1以上の増幅器は、前記送信/受信切替ユニットと前記1以上の波形合成器との間に通信可能に接続され、前記合成波形の前記個々の直交する符号化波形を変更する、システム。
【請求項30】
請求項28において、さらに、
前記受信アレイおよび前記コントローラユニットと通信し、前記受信した応答音響波形をアナログ形式からデジタル形式に変換する、アナログ/デジタル(A/D)変換器のアレイと、
前記送信/受信切替ユニットと前記A/D変換器のアレイとの間に構成され、前記受信した応答音響波形を変更する1以上の前置増幅器のアレイと、
を備える、システム。
【請求項31】
請求項28において、
前記トランスデューサ要素の送信アレイは、2つ以上のサブアレイに区切られ、前記送信した音響波形に対応する周波数帯域の少なくとも1つの周波数帯域について、前記2つ以上のサブアレイの少なくとも1つは、個別に振幅重み付けされ、前記2つ以上のサブアレイの少なくとも1つは、個別に位相重み付けされ、及び結合されて、クロスレンジ分解能を向上させる、システム。
【請求項32】
請求項28において、
前記トランスデューサ要素の受信アレイは、2つ以上のサブアレイに区切られ、前記受信した応答音響波形に対応する周波数帯域の少なくとも1つの周波数帯域について、前記2つ以上のサブアレイの少なくとも1つは、個別に振幅重み付けされ、前記2つ以上のサブアレイの少なくとも1つは、個別に位相重み付けされ、及び結合されて、クロスレンジ分解能を向上させる、システム。
【請求項33】
請求項21において、
前記コントローラユニットは、さらに、前記システムの要素の少なくとも1つにおける時間を同期させるマスタクロックを備える、システム。
【請求項34】
1以上の波形合成器と、波形生成器に接続された増幅器と、を有し、前記波形生成器によって提供される波形情報に従って前記1以上の波形合成器が生成する、別個の周波数に対応し、周波数符号化波形あるいは位相符号化波形の1つあるいは両方を含む個々の直交する符号化波形を含む合成波形を合成する波形生成ユニットと、
前記波形生成ユニットと通信し、前記個々の直交する符号化波形に基づいて合成音声波形を構成する音響波形を生体物質に向けて送信する、トランスデューサ要素の送信アレイと、
前記生体物質の少なくとも一部から戻る応答音響波形であって、前記合成音響波形の送信した音響波形の少なくともいくつかに対応する応答音響波形を受信するトランスデューサ要素の受信アレイと、
前記波形生成ユニット、前記送信アレイ、および前記受信アレイと通信し、前記受信した応答音響波形を処理して、前記生体物質の少なくとも一部の画像を生成する処理ユニットを有するコントローラユニットと、
を備える、音響イメージングシステム。
【請求項35】
請求項34において、さらに、
ディスプレイを含み、前記コントローラユニットと通信して、前記生成した画像を表示するユーザインタフェースユニットを備える、システム。
【請求項36】
請求項35において、
前記ユーザインタフェースユニットは、前記コントローラユニットと通信して、前記システムのオペレータから入力を受信する1以上のユーザインタフェースデバイスを備える、システム。
【請求項37】
請求項36において、
前記入力は、
前記応答音響波形から得られる1以上の測定された特性の少なくとも1つの特徴に基づいてカラー画像符号化を可能とする生体組織をイメージングするためのATSモード(人工組織染色モード)、あるいは、
前記応答音響波形から得られる1つ以上の測定された特性の少なくとも1つの特徴を用いて生体組織タイプを分類する1つ以上のアルゴリズム分類器を用いる生体組織をイメージングするCADモード(コンピュータ支援診断モード)、
を含む動作モードを含む、システム。
【請求項38】
請求項35において、
前記ユーザインタフェースユニットの前記ディスプレイは、前記分類された生体組織タイプに基づいて、前記生体組織のカラー符号化画像を表示するように動作する、システム。
【請求項39】
請求項34において、
前記受信アレイと前記コントローラユニットと通信して、前記受信した応答音響波形をアナログ形式からデジタル形式に変換する、アナログ/デジタル(A/D)変換器のアレイを備える、システム。
【請求項40】
請求項34において、
前記送信アレイと前記受信アレイとは、同一のトランスデューサ要素を含み、
さらに、前記波形生成ユニット、前記送信アレイ、および前記受信アレイと通信し、前記音響波形を送信する送信モードと前記応答音響波形を受信する受信モードとの間の切り替えを行う、送信/受信切替ユニットを備える、システム。
【請求項41】
請求項40において、
前記波形生成ユニットの前記1以上の増幅器は、前記送信/受信切替ユニットと前記1以上の波形合成器との間に通信可能に接続され、前記合成波形の前記個々の直交する符号化波形を変更する、システム。
【請求項42】
請求項40において、さらに、
前記受信アレイおよび前記コントローラユニットと通信し、前記受信した応答音響波形をアナログ形式からデジタル形式に変換する、アナログ/デジタル(A/D)変換器のアレイと、
前記送信/受信切替ユニットと前記A/D変換器のアレイとの間に構成され、前記受信した応答音響波形を変更する1以上の前置増幅器のアレイと、
を備える、システム。
【請求項43】
請求項40において、
前記トランスデューサ要素のアレイは、2つ以上のサブアレイに区切られ、前記送信した音響波形に対応する周波数帯域の少なくとも1つの周波数帯域について、前記2つ以上のサブアレイの少なくとも1つは、個別に振幅重み付けされ、前記2つ以上のサブアレイの少なくとも1つは、個別に位相重み付けされ、及び結合されて、クロスレンジ分解能を向上させる、システム。
【請求項44】
請求項40において、
前記トランスデューサ要素のアレイは、2つ以上のサブアレイに区切られ、前記受信した応答音響波形に対応する周波数帯域の少なくとも1つの周波数帯域について、前記2つ以上のサブアレイの少なくとも1つは、個別に振幅重み付けされ、前記2つ以上のサブアレイの少なくとも1つは、個別に位相重み付けされ、及び結合されて、クロスレンジ分解能を向上させる、システム。
【請求項45】
請求項40において、
前記コントローラユニットは、さらに、前記システムの要素の少なくとも1つにおける時間を同期させるマスタクロックを備える、システム。
【請求項46】
音響信号から生体物質を特徴づける方法であって、
個々の直交する符号化波形を合成し、対象の生体物質に向けて送信する合成波形を生成することであって、前記合成した個々の直交する符号化波形が、別個の周波数帯域に対応し、周波数符号化波形または位相符号化波形の1つまたは両方を含むことと、
前記対象の生体物質に向けて合成音響波形を送信することであって、前記送信することが、前記個々の直交する符号化波形を対応する音響波形に変換し、前記合成音響波形を生成することを含むことと、
前記合成音響波形を構成する前記送信した音響波形の少なくともいくつかに対応し、前記対象の生体物質の少なくとも一部から戻される応答音響波形を受信することと、
前記受信した応答音響波形を処理し、前記対象の生体物質の少なくとも一部の画像を生成することと、
を含む、方法。
【請求項47】
請求項46において、
個々の直交する前記周波数符号化波形を合成することは、それぞれの周波数帯域に対応する2以上のキャリア周波数を選択することと、個々の直交する符号化波形のそれぞれの、1以上の振幅と時間−帯域幅積パラメータとを決定することと、を含む、方法。
【請求項48】
請求項46において、
個々の直交する前記位相符号化波形を合成することは、個々の直交する符号化波形のそれぞれの、時間−帯域幅積パラメータと位相パラメータとを決定することを含む、方法。
【請求項49】
請求項48において、
前記位相パラメータは、一連の擬似ランダム数から、あるいは一連の決定論数から決定される、方法。
【請求項50】
請求項49において、
前記個々の直交する符号化波形は、コヒーレントな波形を含む、方法。
【請求項51】
請求項46において、
個々の直交する符号化波形のそれぞれは、1以上の振幅および1以上の位相を含む、方法。
【請求項52】
請求項51において、
前記1以上の振幅は、前記個々の直交する符号化波形の少なくとも1つの波形について個別に振幅重み付けされ、それによって前記音響波形のステアリング、フォーカシング、あるいは生成の少なくとも1つを提供する、方法。
【請求項53】
請求項51において、
前記1以上の位相は、前記個々の直交する符号化波形の少なくとも1つの波形について個別に位相重み付けされ、それによって前記音響波形のステアリング、フォーカシング、あるいは生成の少なくとも1つを提供する、方法。
【請求項54】
請求項46において、
前記受信した応答音響波形は、前記合成音響波形の対応する周波数帯域に関連付けられた振幅および位相を含む前記対象の生体物質の情報を含む、方法。
【請求項55】
請求項54において、
前記振幅は、前記合成音響波形の前記対応する周波数帯域の少なくとも1つの周波数帯域について個別に振幅重み付けされ、それによって前記合成音響波形のステアリング、フォーカス、あるいは生成の少なくとも1つを提供する、方法。
【請求項56】
請求項54において、
前記位相は、前記合成音響波形の前記対応する周波数帯域の少なくとも1つの周波数帯域について個別に位相重み付けされ、それによって前記合成音響波形のステアリング、フォーカス、あるいは生成の少なくとも1つを提供する、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本出願は、引用によって本願の一部として援用される2011年10月28日に出願された米国仮出願番号第61/553,137号、発明の名称「SPREAD SPECTRUM CODED WAVEFORMS IN ULTRASOUND IMAGING」の優先権を主張する。
【0002】
技術分野
本発明は、超音波イメージングに関する。
【背景技術】
【0003】
超音波イメージングは、媒体を伝播する音波の特性を用いて、視覚的な画像を生成するイメージング方式である。超音波イメージングは、数十年に亘って、様々な生体医療分野において、動物及び人間の内部構造及び機能を観察するためのイメージング方式として用いられている。生体医療イメージングで用いられる超音波は、異なる周波数、例えば、1〜20MHz、又はこれより高い周波数で動作することができる。従来の超音波イメージングでは、不十分な空間分解能及び組織の違いを含む幾つかの因子によって、望ましい画質が得られないことがあり、これによって、多くの臨床用途で超音波イメージングの使用が制約されている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
スペクトル拡散、コヒーレント、周波数符号化波形及び/又は位相符号化波形を使用し、広瞬時帯域幅を有する超音波イメージングのための技術、システム及び装置を開示する。
【0005】
本発明の一側面として、音響イメージングデバイスにおいて、音響波形から画像を生成する方法は、音響イメージングデバイスの送信/受信スイッチを、ターゲットに向けて音響波形を送信する送信モードに切り換えるステップと、音響波形の送信において、1つ以上の波形シンセサイザによって、ターゲットに向けて送信される音響波形として、合成波形を構成する複数の実質的に直交する符号化波形を合成するステップであって、各波形は、別個の周波数帯域に対応し、符号化波形は、周波数符号化波形又は位相符号化波形の少なくとも1つを含むステップと、音響イメージングデバイスの送信/受信スイッチを、ターゲットの少なくとも一部から戻る応答音響波形を受信する受信モードに切り換えるステップと、受信した応答音響波形を、ターゲットの情報を含む受信合成波形としてアナログ形式からデジタル形式に変換するステップと、受信合成波形を処理して、ターゲットの少なくとも一部の画像を生成するステップとを有する。
【0006】
他の側面として、音響波形イメージングシステムは、波形発生器に接続された1つ以上の波形シンセサイザを有する波形生成ユニットであって、波形発生器から提供される波形情報に基づいて、1つ以上の波形シンセサイザによって生成され、周波数帯域に対応する複数の実質的に直交する符号化波形を含む合成波形を合成し、符号化波形は、周波数符号化波形又は位相符号化波形の少なくとも1つを含む波形生成ユニットと、送信モードと受信モードとの間で切り換えられる送信/受信スイッチングユニットと、送信/受信スイッチングユニットと通信し、合成波形に基づいて、ターゲットに向けて音響波形を送信し、ターゲットの少なくとも一部から戻る応答音響波形を受信するトランスデューサ要素のアレイと、トランスデューサ要素のアレイが受信した応答音響波形を、ターゲットの情報を含む受信合成波形としてアナログ形式からデジタル形式に変換するアナログ/デジタル(A/D)変換器のアレイと、波形生成ユニット及びA/D変換器のアレイと通信し、受信合成波形を処理して、ターゲットの少なくとも一部の画像を生成する処理ユニットを含むコントローラユニットと、コントローラユニットと通信するユーザインタフェースユニットとを備える。
【0007】
他の側面として、音響波形から画像を生成する方法は、送信/受信スイッチを送信モードに切り換えるステップと、複数の動作モードから動作モードを選択するステップと、1つ以上の波形シンセサイザによって、合成波形を構成する複数の実質的に直交する符号化波形を合成するステップであって、各波形は、別個の周波数帯域に対応し、符号化波形は、周波数符号化波形又は位相符号化波形の少なくとも1つを含むステップと、合成波形に基づく音響波形をターゲットに向けて送信するステップと、送信/受信スイッチを受信モードに切り換えるステップと、ターゲットの少なくとも一部から戻る応答音響波形を受信するステップと、受信した応答音響波形を、ターゲットの情報を含む受信合成波形としてアナログ形式からデジタル形式に変換するステップと、受信合成波形を処理して、ターゲットの少なくとも一部の画像を生成するステップとを有する。
【0008】
他の側面として、音響波形から画像を生成する方法は、異なる周波数帯域に対応する複数の符号化波形を結合して、異なる周波数帯域において実質的に直交する波形信号を含む合成波形を生成するステップであって、符号化波形は、周波数符号化波形又は位相符号化波形の少なくとも1つを含むステップと、合成波形を用いて、ターゲットに向かう異なる周波数帯域を含む音響プローブ波を生成するステップと、音響プローブ波をターゲットに送信した後に、ターゲットの少なくとも一部から戻る音響エネルギを受信するステップと、受信した音響エネルギを、ターゲットの情報を含むデジタル合成波形に変換するステップと、受信合成波形を処理して、ターゲットの少なくとも一部の画像を生成するステップとを有する。
【0009】
他の側面として、音響波形から画像を生成するデバイスにおいて、異なる周波数帯域に対応する複数の符号化波形を結合して、異なる周波数帯域において実質的に直交する波形信号を含む合成波形を生成する手段であって、符号化波形は、周波数符号化波形又は位相符号化波形の少なくとも1つを含む手段と、合成波形を用いて、ターゲットに向かう異なる周波数帯域を含む音響プローブ波を生成する手段と、音響プローブ波をターゲットに送信した後に、ターゲットの少なくとも一部から戻る音響エネルギを受信する手段と、受信した音響エネルギを、ターゲットの情報を含むデジタル合成波形に変換する手段と、受信合成波形を処理して、ターゲットの少なくとも一部の画像を生成する手段とを備える。
【0010】
本明細書に開示する発明の主題は、以下の特徴の1つ以上を有することができ、多くの用途に応用される。例えば、通常の一次医療のスクリーニングにおいて、ここに開示する技術を用いて、早期段階の悪性腫瘍及び末期癌を特定し、及びその位置を検出することができ、潜在的に、例えば、診断が困難な無症状の患者の生存率を高めることができる。本発明によって、認定放射線専門医は、外科的生検又は切除介入の前に、腫瘍が良性であるか悪性であるかを診断することができ、これによって、不要な生検を回避しながら、患者の生存率を高めることができる。本発明は、細針生検器具に統合することによって、非侵襲的診断を確認するための医療的処置に用いることができ、これによって、このような生検処置による侵襲のレベルを低減することができる。本発明を侵襲が最小の外科的高精細度撮影器具に統合することによって、光学画像及び超音波画像を融合することができ、これによって、医師は、病変組織の位置を特定し、健全な組織を過剰に切除することなく、外科的に切除することができる。本発明を専門化された外科器具に統合することによって、超音波画像を他のデータと融合することができ、医師は、関心がある解剖学的領域の位置を特定し、構造近傍の不要なダメージを最小化しながら、この領域を処置することができる。本発明により、カテーテル及び密封された放射線源の挿入を適切な位置に正確に誘導することによって、悪性腫瘍の近接照射療法の時間を短縮できる。同様に、本発明は、治療のための高用量の局所的な投薬治療を補助することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1A】スペクトル拡散符号化波形を用いる例示的な超音波イメージングシステムのブロック図である。
【
図1B】スペクトル拡散符号化波形を用いる例示的な超音波イメージングシステムの動作のフローチャートである。
【
図2】例示的なスペクトル拡散、広瞬時帯域幅、周波数符号化波形及び/又は位相符号化波形の特徴を有する複数の波形のグラフを示す図である。
【
図3】例示的なスペクトル拡散符号化波形の不確定性関数の特徴を示す図である。
【
図4A】ビームステアリング、動的フォーカシング及びビーム成形の例を示す図である。
【
図4B】ビームステアリング、動的フォーカシング及びビーム成形の例を示す図である。
【
図4C】ビームステアリング、動的フォーカシング及びビーム成形の例を示す図である。
【
図5】スペクトル拡散符号化波形の相関処理のための例示的なブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
複数の図面における同様の参照符号は、同様の要素を示す。
【0013】
超音波イメージングで使用されるコヒーレントなスペクトル拡散、周波数符号化波形及び/又は位相符号化波形を生成し、送信し、受信し、及び処理する技術、システム及び装置を開示する。
【0014】
超音波イメージングは、2つの媒体(例えば、生体組織構造)間の境界において一部が反射し、一部か透過する時間ゲート型の単一周波数又は狭瞬時帯域幅音響波形(narrow instantaneous bandwidth acoustic waveform)(パルス)を出射することによって実行できる。反射は、2つの媒体間の音響インピーダンスの差に依存する。幾つかの技術の超音波イメージングでは、反射信号から振幅情報のみを使用する。例えば、1つのパルスが出射されると、反射信号が継続的にサンプリングされる。生体組織においては、音の速さは、略々一定であるとみなすことができ、波形の出射から反射信号の受信までの時間は、波形がその組織構造を伝播する距離(例えば、反射構造の深さ)に依存する。したがって、反射信号を複数の時間間隔でサンプリングして、複数の深さから反射した複数の反射信号を受信してもよい。また、異なる深さの異なる組織は、入射波形を、異なる量のエネルギで部分的に反射することもあり、したがって、異なる媒体からの反射信号は、異なる振幅を有することがある。深さに基づいて、対応する超音波画像を構築することができる。したがって、新たな波形を出射するまでの時間は、イメージングが望まれる最大の深さに基づいて決定してもよい。パルス式モノクロマティック及び/又は狭瞬時帯域幅波形(pulsed monochromatic and/or narrow instantaneous bandwidth waveforms)を採用する超音波イメージング技術では、画像処理及び画像生成の解像度が低いという問題があった。ここで、(例えば、周波数及び/又は位相によって)符号化することができるスペクトル拡散、広瞬時帯域幅特徴(wide instantaneous bandwidth characteristics)を用いることによって、超音波イメージングの実時間制御が可能になり、高品質の画像を得ることができる。
【0015】
図1Aは、スペクトル拡散、広瞬時帯域幅、コヒーレント、擬似ランダム雑音特徴、及び周波数符号化及び/又は位相符号化を含む拡張された波形特性を有する音響波形を生成する例示的な超音波システム(100)のブロック図である。システム(100)は、様々なシステム設計で構成することができる。一具体例として、システム(100)は、時間同期のためのマスタクロック(101)を備えていてもよい。マスタクロック(101)は、システムコントローラ(102)に接続してもよい。システムコントローラ(102)は、処理ユニット、例えば、中央演算処理装置(central processing unit:CPU)を備えていてもよく、CUPは、RISCベースの又は他のタイプのCPUアーキテクチャに基づいていてもよい。また、システムコントローラ(102)は、少なくとも1つの入出力(I/O)ユニット及び/又はメモリユニットを備えていてもよく、これらは、処理ユニットと通信して、システムコントローラ(102)の様々な機能をサポートする。例えば、処理ユニットは、システム制御バス、例えば、データ及び制御バス(103)に接続してもよい。システムコントローラ(102)は、様々なデータ処理アーキテクチャによって実現することができ、例えば、パーソナルコンピュータ(personal computer:PC)、ラップトップコンピュータ、タブレット及びモバイル通信デバイスアーキテクチャによって実現してもよい。
【0016】
メモリユニットは、命令、ソフトウェア、値、画像、及び処理ユニットによって処理又は参照される他のデータ等の他の情報及びデータを保存できる。メモリユニットのストレージ機能を実現するために、ランダムアクセスメモリ(Random Access Memory:RAM)デバイス、読取専用メモリ(Read Only Memory:ROM)デバイス、フラッシュメモリデバイス及び他の適切な様々なタイプのストレージ媒体を用いることできる。メモリユニットは、事前記憶波形(pre-stored waveforms)、係数データ及び情報を保存でき、これらを用いて、例えば、スペクトル拡散、広瞬時帯域幅、コヒーレント、擬似ランダム雑音、周波数符号化波形及び/又は位相符号化波形等の波形を生成することができる。メモリユニットは、受信及び処理された波形から得られたデータ及び情報を保存でき、これを用いて、新たな波形を生成及び送信することができる。メモリユニットは、システム制御バス、例えば、データ及び制御バス(103)に接続してもよい。
【0017】
入出力ユニットは、外部インタフェース、データストレージのソース及び/又はディスプレイデバイスに接続してもよい。入出力ユニットは、システム制御バス、例えば、データ及び制御バス(103)に接続してもよい。汎用シリアルバス(Universal Serial Bus:USB)、IEEE1394(ファイアワイヤ:FireWire)、IEEE802.111(ブルートゥース:Bluetooth)、無線ローカルエリアネットワーク(Wireless Local Area Network:WLAN)、無線パーソナルエリアネットワーク(Wireless Personal Area Network:WPAN)、無線ワイドエリアネットワーク(Wireless Wide Area Network:WWAN)、IEEE802.16(Worldwide Interoperability for Microwave Access:WiMAX)パラレルインタフェース等の一般的なデータ通信規格に互換性がある様々なタイプの有線又は無線インタフェースを用いて入出力ユニットを実現することができる。入出力ユニットは、外部インタフェース、データストレージのソース又はディスプレイデバイスに接続し、データ及び情報を受信又は出力してもよく、これらのデータ及び情報は、プロセッサユニットで処理し、メモリユニットに保存し、又は出力ユニットにおいて表示してもよい。
【0018】
システムコントローラ(102)は、例えば、データ及び制御バス(103)への接続を介して、システム(100)の全てのモジュールを制御できる。例えば、データ及び制御バス(103)は、システムコントローラ(102)を1つ以上の付属デジタルシグナルプロセッサ、例えば、デジタルシグナルプロセッサ(104)に接続し、その機能を制御して、波形を処理してもよい。デジタルシグナルプロセッサ(104)は、1つ以上のプロセッサ、例えば、以下に限定されるものではないが、特定用途向けIC(application-specific integrated circuit:ASIC)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(field-programmable gate array:FPGA)、デジタルシグナルプロセッサ(digital signal processors:DSP)、AsAP(asynchronous array of simple processors)及び他のタイプのデータ処理アーキテクチャを含んでいてもよい。また、データ及び制御バス(103)は、システムコントローラ(102)及びデジタルシグナルプロセッサ(104)をユーザインタフェースのためのモジュールを有する1つ以上のディスプレイユニット、例えば、モジュールユーザインタフェース(106)を有するディスプレイ(105)に接続し、ユーザ又はオペレータに情報を提供し、及びユーザ又はオペレータから入力/命令を受け取ってもよい。ディスプレイ(105)は、視覚的表示装置として、多くの適切なディスプレイユニット、例えば、以下に限定されるものではないが、陰極線管(cathode ray tube:CRT)、発光ダイオード(light emitting diode:LED)、液晶ディスプレイ(liquid crystal display:LCD)モニタ及び/又はスクリーンを含むことができる。また、ディスプレイ(105)は、様々なタイプのディスプレイ、スピーカ又はプリントインタフェースを含むことができる。他の具体例では、ディスプレイ(105)は、他のアウトプット装置、例えば、トナー、液体インクジェット、固体インク、昇華式又はインクレス(感熱式又は紫外線式)プリンタ、及び様々なタイプのオーディオ信号再生装置を含んでいてもよい。ユーザインタフェー
ス(106)は、適切な多くのインタフェース、例えば、様々なタイプのキーボード、マウス、音声コマンド、タッチパッド、ブレインマシンインタフェース(brain-machine interface)装置を含むことができる。
【0019】
例示的なシステム(100)は、システムコントローラ(102)によって制御されて、1つ以上のデジタル波形を生成する波形発生器(107)を備えていてもよい。波形シンセサイザ及びビームコントローラのアレイの少なくとも1つの要素、例えば、この具体例では、波形シンセサイザ及びビームコントローラ(108)として示されている要素によって、1つ以上のデジタル波形をアナログ電気信号(例えば、アナログ波形)として生成することができる。波形発生器(107)は、関数発生器及び任意波形発生器(arbitrary waveform generator:AWG)の少なくとも1つであってもよい。例えば、波形発生器(107)をAWGとして構成し、任意のデジタル波形を生成し、これを波形シンセサイザ及びビームコントローラ(108)によって、個々のアナログ波形及び/又は合成アナログ波形として合成してもよい。また、波形発生器(107)は、デジタル波形の生成に使用される事前記憶波形、係数データ及び情報を保存する少なくとも1つのメモリユニットを含むことができる。
【0020】
図1Aに示す例示的なシステム(100)は、I個のアレイ要素を含む波形シンセサイザ及びビームコントローラ(108)を備える。一具体例では、波形シンセサイザ及びビームコントローラ(108)は、I個のアレイ式波形シンセサイザの各ラインに少なくとも1つの波形シンセサイザ要素を含むように構成できる。他の具体例では、波形シンセサイザ及びビームコントローラ(108)は、I個のアレイ式ビームコントローラの各ラインに少なくとも1つのビームコントローラ要素を含むことができる。他の具体例では、波形シンセサイザ及びビームコントローラ(108)は、I個のアレイ式波形シンセサイザ及びビームコントローラの各ラインに少なくとも1つの波形シンセサイザ要素及びビームコントローラ要素を含むことができる。波形シンセサイザ及びビームコントローラ(108)は、電気信号、例えば、無線周波数(radio frequency:RF)波形を生成するための位相ロックループシステムを含んでいてもよい。例示的なRF波形は、波形シンセサイザ及びビームコントローラ(108)のアレイ要素によって生成された個々の波形から、波形シンセサイザ及びビームコントローラ(108)によって合成され、例えば、個々のRF波形は、波形シンセサイザ及びビームコントローラ(108)の他のアレイ要素によって生成される他の全ての個々の波形と実質的に同時に1つのアレイ要素によって生成してもよい。個々のRF波形のそれぞれは、周波数成分又は「チップ」とも呼ばれる特定の周波数帯域毎に定義され、個々の波形のそれぞれの波形特性は、波形発生器(107)によって決定され、チップに対応する少なくとも1つの振幅値及び少なくとも1つの位相値を含んでいてもよい。波形発生器(107)は、波形シンセサイザ及びビームコントローラ(108)に命令を発し、個々の波形のそれぞれの特性に関する情報を含む波形データを波形シンセサイザ及びビームコントローラ(108)に供給し、個々のRF波形を生成し、これらを合成して、合成RF波形を生成することができる。
【0021】
波形シンセサイザ及びビームコントローラ(108)によって生成される個々のRF波形及び/又は合成RF波形は、I個の増幅器のアレイを含む出力増幅器(109)によって、例えば、波形を増幅し及び/又は波形の位相をシフトさせることによって、変更される。出力増幅器(109)は、トランスデューサドライバとして用いることができる。個々のRF波形及び/又は合成RF波形は、例えば、N極双投送信/受信スイッチ(N-pole double-throw transmit/receive switch)である送信/受信(Transmit/Receive:T/R)スイッチ(110)に供給される。T/Rスイッチ(110)は、トランスデューサモジュールに接続してもよい。生成されたRF波形、例えば、ターゲット媒体に送信される合成RF波形及び/又は少なくとも1つの個々のRF波形は、トランスデューサ要素のアレイを含むトランスデューサモジュール、例えば、I個の要素を含むトランスデューサアレイ(111)によって、例えば、音響波に変換できる。例えば、変換された音響波は、音響波形パルスの形式で出射することができる。トランスデューサアレイ(111)の各アレイ要素は、波形発生器(107)によって定義された個々の波形チップに対応する1つ以上の音響波形を生成することができる。
【0022】
例示的な、変換され、送信された音響波形は、ターゲット領域、例えば、生体組織に向けて送信され、空間的に結合された音響波形を形成することができる。送信波形は、ターゲット媒体を伝播し、ターゲット媒体は、例えば、送信された音響波形を部分的に透過し、部分的に反射する1つ以上の非一様な媒体を有することがある。部分的に反射される例示的な音響波形は、応答音響波形(returned acoustic waveforms)とも呼ばれ、トランスデューサアレイ(111)によって受信される。例えば、I個のアレイ要素を備えるトランスデューサアレイ(111)の各アレイ要素は、周波数チップに対応する応答音響波形を受信し、これをアナログRF波形に変換する。受信された個々の(アナログ)RF波形は、I個の増幅器のアレイを含む前置増幅器モジュール(112)によって、例えば、波形を増幅し及び/又は波形の位相をシフトすることによって、変更される。個々の受信波形は、I個のA/D変換器のアレイを含むアナログ/デジタル(A/D)変換器モジュール(113)によってアナログ形式からデジタル形式に変換できる。A/D変換器モジュール(113)は、最下位ビット(least significant bit:LSB)ジッタ、スプリアスフリーダイナミックレンジ(spurious-free dynamic range:SFDR)及び波形依存性を有するA/D変換器を有していてもよく、例示的な波形を適切に復号することができる。個々の受信波形の変換されたデジタル表現は、プロセッサ、例えば、デジタルシグナルプロセッサ(104)によって処理され、ターゲット媒体を表す画像が生成及び形成される。
【0023】
例示的なシステム(100)は、多くの動作モードの1つで動作することができる。一具体例では、マスタクロック(101)は、例えば、波形シンセサイザ(108)のための時間ベースとして、システム(100)を同期させるための時間ベースを提供してもよい。マスタクロック(101)は、例示的な波形を位相符号化できるように、低位相雑音クロックとして構成してもよい。オペレータは、ユーザインタフェース(106)によって、動作モードを選択できる。ユーザインタフェース(106)によってユーザが選択できる例示的な動作モードとしては、従来のA−モード(例えば、1D深さのみの画像)、従来のB−モード(例えば、2D平面画像−横断方向対深さの画像)、従来のC−モード(例えば、選択された深さにおける2D平面画像)、従来のD−モード(例えば、ドップラーモード)等が含まれる。例示的なドップラーモードは、カラードップラー(例えば、カラー符号化ドップラー画像及びBモードの重畳)、連続波ドップラー(例えば、1Dドップラープロファイル対深さ)、パルス波ドップラー(例えば、選択されたボリュームのドップラー対時間)、二重/三重ドップラー(例えば、従来のB−モード、従来のC−モード又はカラードップラー及びパルス波ドップラーの重畳)を含む。他の例示的な動作モードは、上述した動作モードの従来の3D及び4D(「実時間」3D)ボリュームレンダリングを含むことができる。例示的なシステム(100)は、スペクトル拡散、広瞬時帯域幅、周波数符号化波形及び/又は位相符号化波形を生成することができる新たな動作モードを実現することができる。例えば、ユーザは、顕微鏡組織学的研究のための組織染色と同様に、カラー画像符号化に組み合わされて組織の弁別を補助し、B−モード、C−モード、D−モード又は他のモードを含むことができる例示的な人工組織染色(Artificial Tissue Staining:ATS)モード及び組織タイプを弁別し、特定する例示的なコンピュータ支援診断(Computer Aided Diagnostic:CAD)モードを選択できる。ATSモードは、画像処理において、ターゲット領域からの応答エコー波形、例えば、例示的な送信されたスペクトル拡散、広瞬時帯域幅、符号化音響波形からの応答エコーから測定された複数の特性の1つ以上に基づく特徴を用いて、カラー画像符号化を行うことができる。CADモードは、分類器(アルゴリズム)を用いて、ターゲット領域からの応答エコー、例えば、例示的なスペクトル拡散、広瞬時帯域幅、符号化音響波形からの応答エコーについて測定された特性の特徴に基づいて、組織タイプを分類する。これらの特性の特徴としては、異なるインピーダンス、(波長の関数としての)振幅反射及び群遅延等が含まれる。CADモードで使用することができる幾つかの例示的な分類器としては、決定論的分類器、確率論的分類器(例えば、ベイズ分類器)、ニューラルネットワーク分類器等がある。
【0024】
図1Bは、超音波イメージングのためにシステム(100)を動作させる例示的な動作プロセス(150)を示している。各タイムエポック毎に、プロセス(150)は、プロセス(151)によって開始され、ここで、システム(100)を送信モードに切り換える。例えば、システムコントローラ(102)は、N極双投送信/受信スイッチ、例えば、T/Rスイッチ(110)を送信位置に切り換える。プロセス(150)は、ユーザが定義した動作モードを確認するプロセス(152)を含む。例えば、動作モードは、ユーザがユーザインタフェース(106)を用いて選択してもよく、他のエンティティによって又はシステム(100)の内部で動作モードを選択してもよい。システムコントローラ(102)は、例えば、プロセス(153)において、選択された動作モードに基づいて、波形発生器(107)に命令を発し、波形シンセサイザ及びビームコントローラ(108)の1つ以上の要素に対し、命令された所望の広帯域合成RF波形を形成する各周波数チップの周波数、振幅及び位相を定義するデジタルメッセージ(データ)を発行する。プロセス(152)は、プロセス(150)の間のどこで実行してもよく、複数回実行してもよい。プロセス(150)は、波形シンセサイザ及びビームコントローラ(108)等の波形シンセサイザ及びビーム形成器に波形データ(例えば、例示的なデジタルメッセージ/データ)を発行するプロセス(153)を含む。発行される波形データは、周波数符号化波形及び/又は位相符号化波形として合成される所望の周波数チップの周波数、振幅及び位相情報を含むことができ、各符号化波形(coded waveform)は、別個の周波数帯域に対応している。プロセス(150)は、定義された周波数チップに対応する個々のアナログRF波形を生成するプロセス(154)を含む。例えば、波形シンセサイザ及びビームコントローラ(108)のアレイの各要素は、波形発生器(107)からのデジタルメッセージ/データをコヒーレントなアナログ広帯域合成波形を構成する個々のアナログ波形に変換できる。プロセス(150)は、コヒーレントなアナログ広帯域合成波形を構成する個々のアナログ波形を増幅するプロセス(155)を含む。例えば、出力増幅器(109)のアレイ要素によって、各アナログ波形及び/又は広帯域合成波形を増幅することができる。そして、増幅されたアナログ広帯域合成波形は、T/Rスイッチ(110)を通過し、それぞれに対応する(例えば、超音波プローブ内の)トランスデューサアレイ(111)の各アレイ要素を励起する。プロセス(150)は、合成アナログ波形を、スキャンされるボリュームを伝播できる音響波形に変換するプロセス(156)を含む。例えば、トランスデューサアレイ(111)の各要素は、波形シンセサイザ及びビームコントローラ(108)で生成された周波数チップに対応する個々のアナログ波形のそれぞれからの音響波形を提供でき、これらは、広帯域合成音響波形を構成する。トランスデューサアレイ(111)は、ターゲット媒体、例えば、診断対象の生体組織ボリューム内を伝播する音響波ビームを形成できる。
【0025】
プロセス(156)が終了すると、プロセス(150)は、システム(100)を受信モードに切り換えるプロセス(157)を実行できる。例えば、システムコントローラ(102)は、N極双投T/Rスイッチ(110)を受信位置に切り換える。プロセス(150)は、1つ以上の応答音響波形(また、音響波形エコーとも呼ぶ。)の形式で、応答音響波形を受信するプロセス(158)を含む。また、プロセス(158)は、応答音響波形エコーを、例えば、生成された個々の波形の周波数チップに対応する個々の受信アナログ波形に変換するプロセスを含んでいてもよい。例えば、応答音響波形は、戻り方向に伝播して、トランスデューサアレイ(111)によって受信される。トランスデューサアレイ(111)の各要素は、受信した音響波形をアナログ信号(波形)に変換できる。プロセス(150)は、個々の受信アナログ波形を増幅するプロセス(159)を含む。例えば、各受信アナログ波形は、前置増幅器モジュール(112)内のそれぞれの低雑音前置増幅器要素によって増幅することができる。プロセス(150)は、個々の受信アナログ波形をデジタル波形データに変換するプロセス(160)を含む。例えば、受信され(及び増幅された)各アナログ波形信号は、A/D変換器モジュール(113)の各A/D要素によって、デジタルワードに変換できる。デジタル形式のデータは、信号処理のためにデジタルシグナルプロセッサ(104)に供給することができる。プロセス(150)は、デジタル波形データをターゲット媒体を表す画像フレームに処理するプロセス(161)を含む。また、プロセス(161)は、デジタル波形データを、個々の及び合成された受信アナログ波形を表す合成デジタル信号に合成するプロセスを含んでいてもよい。例えば、デジタルシグナルプロセッサ(104)は、各トランスデューサアレイ要素が受信した、広帯域合成音響波形を構成する各周波数チップの振幅及び位相を検出できる。デジタルシグナルプロセッサ(104)は、受信ビームを形成し、ビームの各分解要素の振幅及びドップラー成分を分離し、先にオペレータが選択したモードに関連する画像フレームを形成できる。デジタルシグナルプロセッサ(104)によって形成された画像フレームは、ディスプレイ(105)によってユーザに表示できる。他の後続するタイムエポックにおいて、システムコントローラ(102)は、例えば、波形発生器(107)に命令を発し、広帯域合成波形を含む各周波数チップの振幅及び位相を定義する他のデジタルメッセージを波形シンセサイザ(108)の各要素に発行し、及びT/Rスイッチ(110)に命令を発し、送信位置に戻すことによって、この例示的なプロセスを繰り返すことできる。
【0026】
システム(100)は、超音波イメージングのためのスペクトル拡散、広瞬時帯域幅(例えば、最大100%以上の断片的な帯域幅)、コヒーレント、擬似ランダム雑音(pseudo-random noise:PRN)、周波数符号化波形及び/又は位相符号化波形を生成するように構成できる。このような波形には、限りなく多くの実施形態がある。
図2に示す一具体例は、複数の個々の波形(例えば、周波数チップ)から構成される、生成された合成波形(200)の例示的なプロットを示している。幾つかの実施形態では、合成波形(200)の個々の波形は、シーケンス又は符号期間(T)の後に繰り返される各周波数チップのパルスのシーケンスを含むPRN波形であってもよく、シーケンスは、周波数チップの組内の他の全てのシーケンスに対する、又は有意に異なる時間フレームにおける同じシーケンスに対する、又は狭帯域干渉又は熱雑音に対する相関性が極めて低い。例えば、システム(100)は、送信側及び受信側の両方において、例示的なPRN波形の同じシーケンスを生成することができ、(送信された信号シーケンスに基づく)受信信号シーケンスは、ターゲットに関する音響画像を生成する信号処理において、高い相関性を示す。
【0027】
図2に示すように、合成波形(200)の例示的な個々の波形又はチップ(201)は、周波数チップf
N−2に対応しており、例えば、
図1Bのプロセス(156)について説明したように、時間フレームt
0において開始される送信期間Tの間に送信される。
図2に示すように、送信期間Tの後には、受信時間インターバルT
Rが続き、ここで、
図1Bのプロセス(158)について説明したように、応答音響波形エコーが受信される。送信期間T及び受信時間インターバルT
Rは、フレーム期間T
fを構成し、フレーム期間T
fは、後続する時間フレーム(t
1,t
2,t
3…)において繰り返すことができる。
【0028】
例示的な合成波形(200)は、式(1)によって与えられる複素数として、時間領域で表される波形Wの式によって表すことができる。
【数1】
【0029】
Wは、M個の個々の直交する波形(例えば、直交周波数チップ)から構成され、j=√−1である。式(1)において、Tは、符号化シーケンスのチップ持続時間又は期間を表し、f
0は、チップの基本周波数を表し、f
0=1/NTであり、ここで、Nf
0は、最高周波数であり、(M−N+1)0は、最低周波数であり、nは、N−M+1からNまでの正の整数のシーケンスを表す。波形繰返し周波数は、1/T
fであり、T
fは、フレーム又はエポックの持続時間であり、0≦x≦T
fについて、U(x)=1である。Φ
nkは、第kのタイムエポック内の第nのチップの周波数チップ位相項を表し、A
nは、第nのチップの振幅である。周波数チップ位相項Φ
nkは、擬似乱数位相項であってもよく、この場合、擬似乱数的にスクランブルされた開始位相Φ
nkは、集合{I
nk2π/N}内の乱数であり、I
nkは、Nを大きな数として、数列I=0,1,2,3,…Nから置き換えなしで選択されたランダムな正の整数のシーケンスである。追加的位相項であるC
nは、0〜2πの間の数である。例えば、周波数チップ位相擬似乱数値Φ
nkは、システムコントローラ(102)及び/又は波形発生器(107)のメモリユニット内の例示的なデータベースに予め保存しておくことができる。
【0030】
合成波形Wは、実質的に直交する符号化波形(例えば、周波数チップ)を合成することによって形成でき、ここで、各符号化波形は、別個の周波数帯域に対応し、符号化波形は、周波数符号化波形又は位相符号化波形の少なくとも1つ、例えば、波形シンセサイザ(108)で合成された符号化波形を含む。符号化波形は、周波数チップの搬送波周波数を定義する(例えば、最低周波数及び最高周波数を選択することを含む。)2つ以上の周波数を選択し、周波数チップのA
n振幅値を決定することによって周波数符号化波形として合成できる。また、周波数符号化波形の合成は、符号化波形の各波形の時間−帯域幅積(Mf
0T)パラメータを決定することを含んでいてもよい。幾つかの実施形態では、特定の周波数チップの振幅は、特定のタイムエポックの間、その周波数チップのための単一の値として定義でき、後続するタイムエポックにおいて、その特定の周波数チップについては、この振幅が繰り返される。他の実施形態では、特定の周波数チップの振幅は、特定のタイムエポックの間、その周波数チップの単一の値として定義でき、後続するタイムエポックでは、その特定の周波数チップに異なる単一の値を割り当てる。他の実施形態では、特定の周波数チップの振幅は、特定のタイムエポックの間、その周波数チップのための複数の振幅値を含むように定義でき、後続するタイムエポックでは、特定の周波数チップについて、A
nの複数の値を繰り返してもよく、変化させてもよい。最高周波数(Nf
0)から最低周波数((M−N+1)f
0)までの周波数範囲及び個々の波形振幅項(A
n)の集合の選択では、多くの既知のコードシーケンス(例えば、プッシングシーケンス(pushing sequence)、バーカ符号(Barker Code)等)の1つを利用してもよく、或いは、例えば擬似乱数符号又は不確定サイドローブを最小化するための他のあらゆる符号についての数値検索を利用してもよい。
【0031】
これに加えて又はこれに代えて、符号化波形は、符号化波形の各波形の個々の波形位相項(Φ
nk)を決定することによって、位相符号化波形として合成することができる。例えば、合成波形Wのバリエーションを提供するために、位相Φ
nkは、送信期間T内の周波数チップについて1つ以上の位相を含むことができる。幾つかの実施形態では、特定の周波数チップの位相Φ
nkは、特定のタイムエポックの間、その周波数チップのための単一の値として定義でき、後続するタイムエポックにおいて、その特定の周波数チップについては、この単一の値が繰り返される。他の実施形態では、特定の周波数チップの位相Φ
nkは、特定のタイムエポックの間、その周波数チップの単一の値として定義でき、後続するタイムエポックでは、その特定の周波数チップに異なる単一の値を割り当てる。他の実施形態では、特定の周波数チップの位相Φ
nkは、特定のタイムエポックの間、その周波数チップのための複数の値を含むように定義でき、後続するタイムエポックでは、特定の周波数チップについて、Φ
nkの複数の値を繰り返してもよく、変化させてもよい。例えば、第1のタイムエポック(t
0)における波形(201)は、例えば、送信期間Tの開始部分の位相シフトとして、第1の位相Φ
Aと、例えば、送信期間Tの次の部分の位相シフトとして、第2の位相Φ
Bとを含むことができる。次のタイムエポック(t1)の波形(201)は、始めの及び次の位相シフトとして、例示的な位相Φ
A及びΦ
Bを繰り返してもよく、他の位相シフトシーケンス(例えば、Φ
A,Φ
B,Φ
C、又はΦ
B及びΦ
A、又は他の構成)を含んでいてもよい。また、周波数符号化波形の合成は、符号化波形の各波形の時間−帯域幅積(Mf
0T)パラメータを決定することを含んでいてもよい。
【0032】
例示的な送信波形Wは、
図2に示すように、f
N−M+1からf
Nまでの周波数範囲の全体に亘る互いに直交するM個の波形の集合から構成してもよい。Wが広瞬時帯域幅を有するように、パラメータNは、大きな数となるように選択できる。最低周波数f
N−M+1=1/Tである特別な場合、Wは、この周波数の範囲内に含むことができるあらゆる広帯域波形を表すことができる。M個の波形内の如何なる波形についても、インターバルTの間、単一の波形内に1つ以上の位相(例えば、Φ
nk)を符号化できる。更に、M個の波形内の如何なる波形も、単一の波形内に符号化された複数の振幅を含むことができる。これは、振幅重み付け及び位相重み付けによって実現できる。
【0033】
式(1)によって記述される個々の波形の一群は、コヒーレント、擬似ランダム雑音、周波数符号化及び/又は位相符号化、スペクトル拡散合成波形を形成できる。パラメータ選択に基づき、個々の波形は、望まれる任意の程度で、統計的に直交するように設定できる。例えば、後述する式(2)に現れる所定の波形の不確定性関数のサイドローブレベルは、その波形の直交性の程度を表す。波形の特定のパラメータを決定することによって、医療用超音波画像の解像度を大幅に改善できる。例えば、医療用超音波画像の解像度に影響するパラメータは、生来的に結合された軸の範囲(例えば、ドップラー解像度)及び波形のスペックル低減能力を決定する時間−帯域幅積(Mf
0T)パラメータと、統計的な直交性の程度を決定し、更に、例えば、波形が生体組織の非一様な媒体内で機能できる程度を決定する個々の波形位相項(Φ
nk)とを含む。例えば、サイドローブが小さければ、直交性が高まり及び解像度が高まる(雑音が少なくなる)。個々の波形位相項(Φ
nk)の集合の選択では、既知のコードシーケンス(例えば、バーカ(Barker)、フランク(Frank)、ゴレイ(Golay)等)の1つを利用してもよく、或いは、例えば擬似乱数符号又は不確定サイドローブを最小化するための他のあらゆる符号についての数値検索を利用してもよい。
【0034】
幾つかの実施形態では、例えば、式(1)によって表される合成波形(200)は、単一の広帯域、コヒーレント、周波数符号化波形及び/又は位相符号化波形であってもよい。例えば、パラメータの選択に基づいて、単一の波形は、他の全ての信号波形又はターゲット媒体内に存在する雑音信号に対して統計的に直交させることができる。
【0035】
第nのチップの振幅であるパラメータA
n及び追加的位相項であるC
nは、これらの組合せによって、トランスデューサアレイ(111)の個々の要素を励起するアナログ信号をプリエンファシスし、Wの周波数範囲に亘って所望の振幅及び位相特性を有する送信音響波形を生成する。送信波形のプリエンファシスによって、周波数の関数としてのトランスデューサ要素の一定ではない振幅及び位相応答、及び介在する組織層の非一様な伝播特性の両方を補償することができる。例えば、プリエンファシス項によって、一定の(例えば、平坦な)振幅を有する振幅が等しい複数のチップ及び既知の位相対周波数特性を有する音響波形を提供できる。このような振幅対周波数が一定の音響波形は、「白(white)」波形と呼ぶことができる。一方、プリエンファシスを行わない場合、送信音響波形は、トランスデューサの周波数応答を反映し、このような波形は、「色付き(colored)」波形と呼ばれる。受信波形のデエンファシスによって、ターゲット媒体のボリューム、例えば、生体組織ボリュームの反射特性を判定することができる。
【0036】
検証の結果、単一周波数モード(例えば、従来のA−モード、B−モード及びC−モード)では、そのモノクロマティックな性質のために、プリエンファシスの必要がない。このような単一周波数波形は、例えば、生物学的に安全な音の強さの限界を超えないように、振幅制御を必要とすることがある。
【0037】
各チップの位相がランダムである場合、送信波形Wは、ランダム雑音と同様の特徴を有することができる。各チップの位相(Φ
nk+C
n)を一意的に決定し、繰返し可能に(
図1Aに示す)マスタクロックに同期させる場合、送信波形Wは、擬似ランダム雑音として分類できる。このような擬似ランダム雑音波形は、コヒーレントであり、これによって、コヒーレント受信機を実現することができる。
【0038】
広瞬時帯域幅、擬似ランダム雑音波形の画像処理の利点は、適切な波形選択によるスペックル、例えば、従来の医療用超音波画像に一般的に関連している相互干渉波形によって生成されるランダムな強度パターンであるスペックル/スペックルパターンの低減及び潜在的排除を含む。スペックルのこの例示的な低減は、広帯域のガウス雑音状の白色光によって照射されたシーンには観察可能なスペックルがなく、狭帯域レーザ照射では、同じシーンで強いスペックルが生じることと同様である。
【0039】
コヒーレント、擬似ランダム雑音、周波数符号化波形及び/又は位相符号化波形の信号処理の利点は、波形の時間サイドローブ及びドップラーサイドローブを非常に小さくできることを含む。例えば、不確定性関数A(τ,ν)は、ドップラーシフト(ν)又は伝搬遅延(τ)の効果のために受信機のマッチドフィルタによって処理される受信波形の歪みを表す二次元表現であってもよい。具体的には、例示的な不確定性関数A(τ,ν)は、式(2)によって定義され、シナリオによらず、波形特性及び受信機の特徴のみによって決定される。不確定性関数A(τ,ν)は、以下のように定義される
【数2】
【0040】
式(1)で示したタイプの波形については、以下の式を得ることができる。
【数3】
【0041】
ここで、Δt=τ−t、Δf=ν−(f
n−f
m)及びΔΦ=Φ
n−Φ
mであり、これにより、式(4)に示す完全な不確定性の式が得られる。
【数4】
【0042】
ここで、n及びmの両方は、N−M+1からNまでの正の整数のシーケンスである。
【0043】
図3は、波形Wのための式によって表される擬似ランダム雑音、周波数符号化波形(301)の例示的な不確定性関数の特徴を示している。例示的な符号化波形(301)は、128のコード長を有する。
図3に示すように、この不確定性関数のサイドローブ(302)は、チップ間の位相の相互作用に起因し、N
2の関数であるピークより低いプラトーレベルを有する。
【0044】
検証の結果、選択された特定の乱数コード(I
nk)に基づき、多くの波形(W)が可能である。しかしながら、サイドローブ性能は、定義された全ての波形について保証することはできず、したがって、可能な符号の集合の数値検索によって、サイドローブを十分に小さくすると判定された符号のみを使用する。
【0045】
例えば、医用超音波用途では、伝搬媒質としての生体組織は、非一様である。伝搬媒質の非一様性によって、差動時間遅延が導入され、生体組織は、不要な動きに誘発されたドップラーを導入することがある。超音波トランスデューサアレイは、(例えば、物理的なサイズ制限のために)超音波ビームの軸外部分に不要なサイドローブ及びグレーティングローブを有することもあり、これによって、メインローブ応答に不要な時間遅延及びドップラー応答が追加されてしまう。不確定性関数サイドローブが小さい波形は、差動時間遅延、動き誘発ドップラー、トランスデューササイドローブ効果からの干渉の低減によって、フォーカシング及びターゲットコントラストを大幅に改善する。
【0046】
コヒーレント、擬似ランダム雑音、周波数符号化波形及び/又は位相符号化波形により、より高次のクロスレンジフォーカシング技術を採用でき、サイズが制限されている超音波トランスデューサアレイ、例えば、医用用超音波トランスデューサアレイの横方向分解能を改善できる。
【0047】
例えば、各生物学的組織タイプ及び各疾患組織タイプは、周波数及び空間的形態の関数として、それぞれ固有の超音波エコー応答を示す。従来のエラストグラフィ(Elastograph)モード(E−モード)の方式では、例えば、重なり合う非一様な媒体を介する超音波波動伝搬を正確に特徴付ける能力の不足等による測定誤差のために、このような特性を利用して組織を分類することが困難である場合がある。例示的なシステム(100)によって生成される例示的な波形、例えば広瞬時帯域幅、コヒーレント、擬似ランダム雑音、周波数符号化波形及び/又は位相符号化波形により、介在する組織層を介する各音線の伝搬遅延を同時に判定し、調査中のターゲットボリュームの空間的なエコー特性を正確に判定することによって、組織を弁別することができる。例えば、分類器、例えば、ベイズ推定分類器(Bayesian inference Classifier)を、受信エコーの測定された特徴から得られた特徴データに適用して、ターゲットボリュームにおいて観測される組織タイプを自動的に分類することができ、コンピュータ支援診断モード(CADモード)を実現できる。
【0048】
生来的に画質を大幅に低下させ、個々のオペレータの技術に頼る従来のE−モードとは異なり、式(1)によって表される例示的な波形は、生来的に、画質を向上させ、同時に、ATSモード及び/又はCADモードにおいて、組織タイプによって結果の画像を色付けすることができる。この利点によって、ユーザの技術を補完でき、病巣の周縁を認識でき、したがって、診断を向上させることができる。
【0049】
更に、(
図1Aに示すように、)送信側に配置された波形シンセサイザ(108)及び受信側に配置されたデジタルシグナルプロセッサ(104)によって、ビーム制御(例えば、ビームステアリング、動的ビームフォーカシング、及びビーム成形)機能を実現できる。
図4A〜
図4Cは、フェイズドアレイの各要素の間に、差動時間遅延又はこれと同等な位相シフト及び振幅重み付けを導入することによる、これらのデジタル電子回路機能の基礎を示している。
図4Aに示すように、差動位相シフトによって、各音線(r
1,r
2,…r
i,…)が第iの要素から焦点(p)まで伝播する距離(d)の差動的変化を補償することができる。ターゲット媒体のターゲットに向かうトランスデューサアレイ(111)の直接目標/アラインメントのz軸方向に焦点(p)が沿っていないために、角度(θ)が形成される。更に、各要素に差動振幅重みを適用して、ビーム形状を制御し、サイドローブ及びグレーティングローブを抑圧することができる。また、例示的な波形内の1つ以上のチップについて、波形発生器(107)は、位相遅延を予め符号化し、トランスデューサアレイ(111)内の各トランスデューサ要素から送信される1つ以上のチップの位相を遅らせることができる。この機能の結果を
図4B及び
図4Cに示す。1つ以上のチップの例示的な位相遅延値をデジタルシグナルプロセッサ(104)及び/又はシステムコントローラ(102)に伝達し、受信合成波形の信号処理において、位相遅延値を反映させることができる。
【0050】
狭瞬時帯域幅超音波デバイスでは、この機能は、各要素を駆動する合成アナログ信号に位相シフト及び振幅減衰を導入することによって実現できる。しかしながら、システム(100)によって生成される例示的なスペクトル拡散、広瞬時帯域幅、周波数符号化波形及び/又は位相符号化波形では、式(5)に示すように、波形(W
i)の個々のチップは、各アレイ要素(i)の周波数(n)の関数として、全てのI要素について個別に、それぞれ別個に振幅重み付け(B
ni)及び位相重み付け(D
ni)が行われている。
【数5】
各チップに要求される振幅及び位相の重みは、送信時に、システムコントローラ(102)によって算出でき、波形発生器(107)に命令として供給することができる。そして、波形発生器(107)は、デジタルワード(実数及び虚数成分)を波形シンセサイザ及びビームコントローラ(108)に送り、波形シンセサイザ及びビームコントローラ(108)は、アナログ駆動信号を生成し、アナログ駆動信号は、増幅器(109)で増幅されて、トランスデューサアレイ(111)の各アレイ要素に送られる。
【0051】
受信時には、逆のプロセスが行われる。A/D変換器モジュール(113)は、各アレイ要素の各チップの振幅及び位相情報を表すデジタルワードをデジタルシグナルプロセッサ(104)に送り、次に、デジタルシグナルプロセッサ(104)は、各チップについての受信ビームをデジタル的に形成する。
【0052】
受信波形、例えば、広帯域幅、スペクトル拡散、周波数符号化波形及び/又は位相符号化波形を処理するために、多くの手法を用いることができる。
図5は、例示的な相関処理技術を示している。例えば、例示的な相関処理技術への入力は、デジタル化された受信信号Y
i(τ,ν)を含むことができ、これに、送信されたデジタル波形の複素共役の複製W
i*(τ)を乗算できる。複素共役の複製W
i*(τ)は、乗算の前に、1・τ0だけタイムシフトさせてもよい。
図5に示すように、この乗算は、複数のタイムシフトのために、複数回、例えば、J回、繰り返してもよい。複数のタイムシフトのための複数の乗算は、平行に繰り返してもよいが、各演算における複製は、
図5に示すように、先の複製から、増分τ0によってタイムシフトされる。各タイムステップについて得られた積は、例えば、ハン(Hann)、ハミング(Hamming)、チューキー(Tukey)、カイザー−ベッセル(Kaiser-Bessel)、ドルフ−チェビシェフ、ブラックマン−ハリス(Blackman-Harris)窓等の窓関数によってフィルタリングされ、高速フーリエ変換(fast Fourier Transform:FFT)積算器を経て、デジタルフィルタを通過する。例えば、特定の波形Wに依存するタイプのデジタルフィルタを用いてフィルタリングを行い、入力信号をデシメートする。この例示的なプロセスにより、トランスデューサアレイ第iの要素のそれぞれのレンジドップラー応答(range-Doppler return)が得られる。そして、従来の技術を用いて、例示的な検出アルゴリズムからの出力データストリームを処理して、表示用の画像を生成することができる。更に、処理されるレンジドップラー波形は、I個のトランスデューサ要素を2つ以上のサブアレイ(subarray)に分割することによって処理してもよい。処理される第iのレンジドップラー応答は、その第iの要素がどのサブアレイに属するかに基づいて、振幅及び/又は位相において重み付けしてもよい。これらの重み付けされた応答は、加算及び減算することができる。これらの和又は差を処理して、システムのクロスレンジ画像分解能を向上させることができる。
【0053】
ここに開示した技術の幾つかの応用例及び用途は、上述のしたシステム、方法及びデバイスのここに開示した特徴を利用して実現することができる。ここに開示した技術の臨床的な使用の幾つかの具体例について説明する。
【0054】
1つの例示的な応用例では、例示的なスペクトル拡散超音波デバイスのATS及びCADモードにより得られる画質によって、一次医療の医師は、通常の検査選別プロトコルにこの方式を組み込み、初期の悪性腫瘍(例えば、ステージ0又はステージ1)及び末期癌の位置を検出することができる。この応用例の結果として、デバイスによって、潜在的に、例えば、診断が困難な胃癌、膵臓癌、膀胱癌等を罹患した無症状の患者の生存率を高めることができる。
【0055】
他の例示的な応用例では、例示的なスペクトル拡散超音波デバイスのATS及びCADモードにより得られる画質によって、認定放射線専門医は、外科的生検又は切除介入の前に、腫瘍が良性であるか悪性であるかを診断することができる。この応用例により、放射線専門医は、初期の悪性腫瘍(例えば、ステージ0又はステージ1)の位置を特定及び診断することができ、潜在的に患者の生存率を高めることができる。更に、治療が困難で、致命的な場合もある合併症、例えば、耐性黄色ブドウ球菌(MRSA(methicillin resistant staphylococcus aureus)ブドウ球菌)感染等のリスクを伴う潜在的に不要な生検を回避することができる。
【0056】
他の例示的な応用例では、細針生検及び他の医療的処置において、例示的なスペクトル拡散超音波デバイスから得られる3D画質及びその4Dイメージング能力を用いることができる。例えば、例示的なスペクトル拡散超音波デバイスを例示的な細針生検器具(例えば、デバイスのトランスデューサプローブ)に統合し、非常に小さく、初期(例えば、ステージ0又はステージ1)の腫瘍の細針生検によって、非侵襲的診断を確認することができる。この応用例によって、医師は、切開生検及びこの結果として生じる治療が困難で、致命的にもなり得る合併症の可能性を回避することができ、患者にとって有益であることは明らかである。
【0057】
他の例示的な応用例では、このデバイスのスペクトル拡散トランスデューサプローブを侵襲が最小の外科的高精細度撮影器具に統合することによって、光学画像及び超音波画像を融合することができる。このスペクトル拡散超音波デバイスの改善された3D画質、その4Dイメージング能力、及びATS及びCADモードによって、医師は、このような融合された映像及び超音波画像に基づいて、病変組織の位置を特定し、健全な組織を過剰に切除することなく、外科的に切除することができる。
【0058】
他の例示的な応用例では、このスペクトル拡散超音波デバイスの改善された3D画質、その4Dイメージング能力及びATSモードによって、例示的なスペクトル拡散超音波デバイスは、カテーテル及び密封された放射線源の挿入を適切な位置に正確に誘導することによって、悪性腫瘍の近接照射療法の時間を短縮できる。このスペクトル拡散超音波デバイスの近接照射療法への応用は、位置及び周縁の特定が困難な小さい腫瘍の治療に特に有用である。
【0059】
他の例示的な応用例では、このスペクトル拡散超音波デバイスの改善された3D画質、その4Dイメージング能力、及びATSモードによって、例示的なスペクトル拡散超音波デバイスは、カテーテル及び薬剤の挿入を適切な位置に正確に誘導することによって、高用量の局所的な投薬治療を可能にする。このスペクトル拡散超音波デバイスの近接照射療法への応用は、位置の特定が困難な小さい腫瘍の治療に特に有用である。
【0060】
本明細書に開示した実施の形態及び機能的動作は、デジタル電子回路で実現してもよく、本明細書に開示した構造及びこれらの構造的な均等物を含むコンピュータソフトウェア、ファームウェア又はハードウェアで実現してもよく、これらの1つ以上の組合せで実現してもよい。ここに開示した実施の形態及び他の実施の形態は、1つ以上のコンピュータプログラム製品、例えば、実体がある不揮発性の媒体内に符号化され、データ処理装置によって実行され、又はデータ処理装置の動作を制御するコンピュータプログラム命令の1つ以上のモジュールとして実現することもできる。コンピュータが読取可能な媒体は、機械可読のストレージデバイス、機械可読のストレージ基板、メモリデバイス、機械可読の伝播信号に作用する組成物又はこれらの1つ以上の組合せであってもよい。用語「データ処理装置」は、データを処理するための全ての装置、デバイス及び機械を包含し、一例としてプログラミング可能なプロセッサ、コンピュータ、複数のプロセッサ又はコンピュータがこれに含まれる。装置は、ハードウェアに加えて、当該コンピュータプログラムの実行環境を作成するコード、例えば、プロセッサファームウェアを構成するコード、プロトコルスタック、データベース管理システム、オペレーティングシステム又はこれらの1つ以上の組合せを含むことができる。
【0061】
コンピュータプログラム(プログラム、ソフトウェア、ソフトウェアアプリケーション、スクリプト又はコードとも呼ばれる。)は、コンパイラ言語又はインタープリタ言語を含む如何なる形式のプログラミング言語で書いてもよく、例えば、スタンドアロンプログラムとして、若しくはモジュール、コンポーネント、サブルーチン又は演算環境での使用に適する他のユニットとして、如何なる形式で展開してもよい。コンピュータプログラムは、必ずしもファイルシステム内のファイルに対応していなくてもよい。プログラムは、他のプログラム又はデータを含むファイル(例えば、マークアップ言語文書内に保存された1つ以上のスクリプト)の一部に保存してもよく、当該プログラムに専用の単一のファイルに保存してもよく、連携する複数のファイル(例えば、モジュール、サブプログラム又はコードの一部を保存する1つ以上のファイル)に保存してもよい。コンピュータプログラムは、1つのコンピュータ上で実行されるように展開してもよく、1つの場所に設けられた又は複数の場所に亘って分散され、通信ネットワークによって相互接続された複数のコンピュータ上で実行されるように展開してもよい。
【0062】
本明細書に開示したプロセス及びロジックフローは、入力データを処理し、出力を生成することによって機能を実現する1つ以上のコンピュータプログラムを実行する1つ以上のプログラミング可能なプロセッサによって実現してもよい。プロセス及びロジックフローは、例えば、フィールドプログラマブルゲートアレイ(field programmable gate array:FPGA)又は特定用途向け集積回路(application specific integrated circuit:ASIC)等の専用論理回路等として実現できる装置によって実行してもよい。
【0063】
コンピュータプログラムの実行に適するプロセッサには、一例として、汎用マイクロプロセッサ及び専用マイクロプロセッサの両方、例えば、デジタルシグナルプロセッサ(digital signal processor:DSP)並びにあらゆる種類のデジタルコンピュータの1つ以上のプロセッサの何れかを含ませてもよい。プロセッサは、通常、読出専用メモリ若しくはランダムアクセスメモリ、又はこれらの両方から命令及びデータを受け取る。コンピュータの基本的な要素は、命令を実行するプロセッサと、命令及びデータを保存する1つ以上のメモリデバイスである。また、コンピュータは、通常、データを保存するための1つ以上の大容量記憶装置、例えば、磁気ディスク、光磁気ディスク又は光ディスクを含み、若しくは、大容量記憶装置からデータを受信し、大容量記憶装置にデータを送信し、又はこの両方の動作を行うように大容量記憶装置に動作的に接続されている。但し、コンピュータは、必ずしもこのような装置を有する必要はない。コンピュータプログラム命令及びデータの格納に適するデバイスには、一例として挙げれば、半導体記憶デバイス、例えば、EPROM、EEPROM及びフラッシュメモリデバイスを含む全ての形式の不揮発性メモリが含まれる。プロセッサ及びメモリは、専用論理回路によって補ってもよく、専用論理回路に組み込んでもよい。
【0064】
本明細書は、多くの詳細事項を含んでいるが、これらの詳細事項は、特許請求している又は特許請求することができる本発明の範囲を限定するものとは解釈されず、本発明の特定の実施の形態の特定の特徴の記述として解釈される。本明細書において、別個の実施の形態の文脈で開示した幾つかの特徴を組み合わせて、単一の実施の形態として実現してもよい。逆に、単一の実施の形態の文脈で開示した様々な特徴は、複数の実施の形態に別個に具現化してもよく、適切な如何なる部分的組合せとして具現化してもよい。更に、以上では、幾つかの特徴を、ある組合せで機能するものと説明しているが、初期的には、そのように特許請求している場合であっても、特許請求された組合せからの1つ以上の特徴は、幾つかの場合、組合せから除外でき、特許請求された組合せは、部分的組合せ又は部分的な組合せの変形に変更してもよい。
【0065】
同様に、図面では、動作を特定の順序で示しているが、このような動作は、所望の結果を達成するために、図示した特定の順序又は順次的な順序で行う必要はなく、また、図示した全ての動作を行う必要もない。ある特定の状況では、多重タスキング及び並列処理が有利であることもある。更に、上述した実施形態における様々なシステムの構成要素の分離は、全ての実施形態においてこのような分離が必要であることを意図してはいない。
【0066】
幾つかの具体例及び実施例のみを開示した。ここに開示した内容に基づいて、上述した具体例及び実施例及び他の実施例を変形、変更及び拡張することができる。